説明

感圧記録材料

【課題】特に色材を使用することなく、弱い圧力で不可逆的に印字することができる感圧記録材料を提供すること。
【解決手段】結晶性を有するポリマーを含むポリマー組成物からなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムを含んでなる感圧記録材料であって、前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たすことを特徴とする感圧記録材料である。[但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に色材を使用することなく、筆圧やプリンター等の圧力により印字することができる感圧記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂を主原料とし、内部に微細な空洞を含有する空洞含有フィルム又はシートは、その断熱性、クッション性、遮光性(又は光透過性)などの特性から、例えば、電子機器の照明用部材、一般家庭用部材、内照看板、ディスプレー、装飾素材などに使用されている。
近年では、前記空洞含有フィルム又はシートは、耐水性、吸湿寸法安定性、機械的強度、軽量性、柔軟性などに優れていることから、紙に代替される各種記録材料の基材として用いられている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1〜4に開示される空洞含有フィルムはいずれも、インク等の色材を空洞含有フィルムの表面に付着させることによって、文字等が記録されるものである。したがって、特許文献1〜4に開示される空洞含有樹脂フィルムでは、記録した領域以外の領域が色材により汚れてしまったり、記録された色材の劣化により文字等が消えてしまったりする虞がある。
したがって、特に色材を使用することなく、弱い圧力により不可逆的に印字することができる感圧記録材料は、未だ満足なものが提供されていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開平05−345361号公報
【特許文献2】特開平05−3454776号公報
【特許文献3】特開平04−157818号公報
【特許文献4】特開平05−329969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、特に色材を使用することなく、弱い圧力により不可逆的に印字することができる感圧記録材料を提供することを目的とする。
【0006】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)又はPP(ポリプロピレン)からなるポリマーフィルムを高速延伸すると、空洞含有フィルムになり、前記高速延伸されたフィルム(空洞含有フィルム)は、PBT層(屈折率約1.5)と空気(空洞)層(屈折率1)からなる空洞含有(多重層(数十層))構造、PBS層(屈折率約1.5)と空気(空洞)層(屈折率1)からなる空洞含有(多重層(数十層))構造、又は、PP層(屈折率約1.5)と空気(空洞)層(屈折率1)からなる空洞含有(多重層(数十層))構造をとっていたこと;高い反射率及び低い透過率を有する前記空洞含有樹脂フィルムに対し、圧力を印加したところ、印加された部分において内部の空洞が圧縮されて反射率の低下及び透過率の増加が観察されたことから、感圧記録材料として好適に利用できること;を知見した。
なお、前記空洞含有樹脂フィルムが有する高い反射率は、前記多重層間の構造的な光干渉(構造発色)による。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 結晶性を有するポリマーを含むポリマー組成物からなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムを含んでなる感圧記録材料であって、
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たすことを特徴とする感圧記録材料である。
[但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。]
<2> 空洞含有樹脂フィルムにおける空洞含有率が、3〜50体積%であり、
空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である<1>に記載の感圧記録材料である。
<3> 空洞含有樹脂フィルムの厚さが、10μm〜2mmである<1>から<2>のいずれかに記載の感圧記録材料である。
<4> 結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、シンジオタクチック・ポリスチレン、シンジオタクチックポリメチルメタクリレートのうち、少なくとも1つである<1>から<3>のいずれかに記載の感圧記録材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、特に色材を使用することなく、弱い圧力により不可逆的に印字することができる感圧記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(感圧記録材料)
本発明の感圧記録材料は、空洞含有樹脂フィルムを含んでなることを特徴とする。
<空洞含有樹脂フィルム>
前記空洞含有樹脂フィルムは、ポリマー組成物からなり、必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0010】
[ポリマー組成物]
前記ポリマー組成物は、結晶性を有するポリマーを含み、必要に応じて、空洞の発現に寄与しないその他の成分を含んでなる。前記ポリマー組成物は、結晶性を有するポリマーのみからなることが特に好ましい。
【0011】
−結晶性を有するポリマー−
一般に、ポリマーは、結晶性を有するポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性を有するポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。
したがって、前記空洞含有樹脂フィルムにおける前記結晶性を有するポリマーとしては、分子構造の中に少なくとも前記結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
【0012】
前記結晶性を有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレンなど)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、ポリエステル類(例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PBN、PBS、PES、PBSAなど)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、シンジオタクチックポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂、などが挙げられる。その中でも、力学強度や製造の観点から、ポリエステル類、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー類(LCP)が好ましく、ポリエステル類がより好ましい。また、これらのうちの2種以上のポリマーをブレンドしたり、共重合させたりして使用してもよい。
【0013】
前記結晶性を有するポリマーの溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形状が安定し、均一に製膜しやすくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、溶融製膜時の粘度が適切になって押出ししやすくなったり、製膜時の溶融膜がレベリングされて凹凸を低減できたりする点で好ましい。
ここで、前記溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。前記レオメーターとしては、例えば、レオロジカ インスツルメント AB社製 ビスコアナライザーVAR100、株式会社 島津製作所製 キャピラリーレオメータCFT−500Dなどが挙げられる。
【0014】
前記結晶性を有するポリマーの極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.4が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが0.4〜1.4であると、製膜されたフィルムの強度が高くなり、効率よく延伸することができる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0015】
前記結晶性を有するポリマーの融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜350℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、150〜260℃が更に好ましい。前記融点が100〜350℃であると、通常の使用で予想される温度範囲で形を保ちやすくなる点で好ましく、高温での加工に必要とされる特殊な技術を特に用いなくても、均一な製膜ができる点で好ましい。
ここで、前記融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0016】
−−ポリエステル樹脂−−
前記ポリエステル類(以下、「ポリエステル樹脂」と称する。)は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。したがって、前記結晶性を有するポリマーとして好適な前記ポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタエレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBSA(ポリブチレンサクシネートアジペート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0017】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられ、中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0018】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
【0019】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p−オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0020】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられ、中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0021】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステル樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0023】
前記ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.4が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.4であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。更に、前記IVが0.4〜1.4であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.4であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
【0024】
前記ポリエステル樹脂の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150〜300℃が好ましく、180〜270℃がより好ましい。
【0025】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0026】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0027】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加しても良い。
【0028】
−ポリオレフィン樹脂−
前記ポリオレフィン類(以下、「ポリオレフィン樹脂」と称する。)は、エチレンを基本とするαオレフィンを重合して得られるポリマーを意味する。前記結晶性を有するポリマーとして好適な前記ポリオレフィン樹脂としては、前記したように、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−シクロオレフィン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1などが挙げられる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0029】
前記ポリオレフィン樹脂の溶融粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
【0030】
また、前記ポリオレフィン樹脂として、異なる種類の樹脂により共重合されたものを使用してもよく、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
また、前記ポリオレフィン樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリオレフィン樹脂に対してポリオレフィン系以外の樹脂を添加してもよい。
【0031】
このように、前記空洞含有樹脂フィルムは、無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程でボイドを形成させることができる。更に、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、空洞含有樹脂フィルムの製造方法については、後記する。
【0032】
ここで、空洞含有樹脂フィルムは、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、分散剤、カップリング剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性を有するポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0033】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のヒンダードフェノール類を添加してもよい。前記ヒンダードフェノール類としては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA−80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わせて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP−Dなどの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
【0034】
−空洞−
前記空洞含有樹脂フィルムは、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有し、空洞含有率及び前記空洞のアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、樹脂フィルム内部に存在する、真空状態のドメイン又は気相のドメインを意味する。
【0035】
前記空洞含有率とは、樹脂フィルムの固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。
前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましい。
前記空洞含有率が、3〜50体積%であると、印字の際に弱い圧力で空洞を圧縮できる点、及び、印字したときに、印字部分と印字のない部分との差異が大きくなり、印字部分の視認性が向上する点で有利である。印字部分と印字のない部分との前記差異としては、例えば、透過率、反射率などが挙げられる。
なお、「空洞が圧縮される」とは、印字された部分において空洞の厚み方向の長さが短くなることを意味する。空洞の厚み方向の長さが無くなり、空洞がほぼ消失することが特に好ましい。空洞が圧縮されることにより、多重層間の構造的な光干渉が大幅に減少し、印字部分と印字のない部分との間に、視覚上の大きな差異が生じる。
ここで、前記空洞含有率は、比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。
具体的には、前記空洞含有率は、下記の(1)式により求めることができる。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の空洞含有樹脂フィルムの密度)/(延伸前のポリマーフィルムの密度)} ・・・(1)
【0036】
前記アスペクト比とは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比を意味する。
前記アスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上であることが好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。前記アスペクト比が、10以上であると、印字の際に弱い圧力で空洞を圧縮できる点で有利である。
図2A〜2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、空洞含有樹脂フィルムの斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【0037】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚さr(図2B参照)に相当する。また、「前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、前記空洞含有樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。
【0038】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時にフィルムの流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時にフィルムの流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
ここで、前記アスペクト比は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0039】
また、前記空洞含有樹脂フィルムは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数P、結晶性を有するポリマー組成物層と空洞層との屈折率差ΔN、及び、前記ΔNと前記Pとの積に、特徴を有している。
前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pとしては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5個以上が好ましく、10個以上がより好ましく、15個以上が更に好ましい。
【0040】
前記空洞含有樹脂フィルムの製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。したがって、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の個数」は、空洞含有樹脂フィルム1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)において、膜厚方向に含まれる空洞100の個数に相当する。
ここで、前記空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均の個数Pは、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0041】
前記ポリマー組成物層と空洞層との屈折率差ΔNとは、具体的には、波長400〜800nmから選択される1つの波長の光に対するポリマー組成物層の屈折率をN1として、前記選択される1つの波長の光に対する空洞層の屈折率をN2とした際に、N1とN2との差であるΔN(=N1−N2)の値を意味する。
ここで、ポリマー組成物層や空洞層の屈折率N1、N2は、アッベ屈折計などにより測定することができる。
前記ΔNと前記Pとの積は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。
【0042】
このように、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記空洞を含有していることにより、例えば、反射率、光沢性、透過率などにおいて、様々な優れた特性を有している。言い換えると、前記空洞含有樹脂フィルムに含有される空洞の態様を変化させることで、反射率、光沢性、透過率などの特性を調節することができる。
【0043】
−−光沢度−−
前記光沢度とは、JIS規格のZ8741に記載される定義に準ずる。
前記空洞含有樹脂フィルムの光沢度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、入射角60度で、波長400〜800nmの光を入射して測定したときに、60以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、100以上であることが更に好ましい。
ここで、前記光沢度は、変角光沢計により測定することができる。
【0044】
−−透過率−−
前記透過率とは、前記空洞含有樹脂フィルムの表面に対し、垂直に、所定波長の光を入射したときの、透過光の光強度/入射光の光強度×100(%)の値を意味する。
【0045】
前記空洞含有樹脂フィルムの、前記400〜800nmから選択される1つの波長の光に対する透過率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。前記透過率が、20%以下であると、印字のない部分における光線の遮蔽性が高くなるので、印字部分と印字のない部分との透過率の差が大きくなり、印字部分の視認性が向上する点で有利である。前記透過率が、20%以下であると、特に光を照射せずにそのまま観察した場合であっても印字部分を充分に視認できるが、観察位置に対して感圧記録材料を介して対向する位置から光を照射した場合には、印字部分の視認性が顕著に向上する。
【0046】
また、前記空洞含有樹脂フィルムの好適な透過率は、相対的な値として規定することもできる。即ち、空洞含有樹脂フィルムの、波長400〜800nmから選択される1つの波長の光に対する透過率をM(%)として、前記空洞含有樹脂フィルムと同じ厚さで、前記空洞含有樹脂フィルムを構成するポリマー組成物と同一のポリマー組成物からなり、空洞を含有しないポリマーフィルムの、前記選択される1つの波長の光に対する透過率をN(%)とした際のM/N比が、0.2以下であることが好ましく、0.18以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。前記M/N比が、0.2以下であると、感圧記録材料に圧力を印加して印字したときに、印字部分と印字のない部分との透過率の差が大きくなり、印字部分の視認性が向上する点で有利である。
ここで、前記透過率は、分光光度計により測定することができる。
【0047】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、前記空洞を含有しつつも、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂、不活性ガスなどが添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
前記空洞含有樹脂フィルムの表面平滑性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、Ra=0.3μm以下が好ましく、Ra=0.25μm以下が更に好ましく、Ra=0.1μm以下が特に好ましい。
【0048】
更に、前記空洞含有樹脂フィルムは、フィルム表面だけでなく、フィルム表面から所定の距離においても空洞が形成されていないことを特徴とする。
即ち、前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たす。
但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
前記h(avg)が、T/100より大きいと、内部の空洞が透けて見えないので、印字しない状態におけるフィルム表面の外観が均一になる点で有利である。また、フィルム表面の外観が均一であることにより、印字したときに印字部分の視認性が高まる点でも有利である。
【0049】
前記「空洞の中心」とは、前記断面における空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「空洞含有樹脂フィルムの表面」とは、厚み方向における、空洞含有樹脂フィルムの最外面を意味する。通常、前記空洞含有樹脂フィルムを載置したときの上面を意味する。
【0050】
具体的には、空洞含有樹脂フィルムの表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像する。前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出する。厚みの算術平均値Tは、例えば、キーエンス社製 ロングレンジ接触式変位計 AF030及びAF350、アンリツ社製 FILM THICKNESS TESTER KG601Bなどを用いて測定することができる。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画する。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の空洞を選択する。なお、前記「空洞の中心から空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に空洞含有樹脂フィルムの表面に接したときの円の半径とする。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(2)式により算出する。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(2)
なお、前記「各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)」は、前記空洞含有樹脂フィルムが、湾曲していたり、応力がかかっていたりすると、正確に測定することができないため、測定の際には平面状に載置した状態で測定することが好ましい。
前記空洞含有樹脂フィルムは、前記空洞を含有しつつも、空洞含有樹脂フィルムの表面近くに空洞が形成されていないので、優れた表面平滑性を有している。
【0051】
また、前記空洞含有樹脂フィルムの厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2mmが好ましく、20〜500μmがより好ましく、30〜200μmが特に好ましい。前記厚さが、10μm〜2mmであると、フィルムの物理強度を充分に保ちつつ、弱い圧力で空洞を圧縮できる点で好ましい。前記特に好ましい範囲であると、フィルムの物理強度を充分に保ちつつ、より低い圧力で空洞を圧縮でき、印字の視認性が向上し、更には、紙のごとく容易に取り扱うことができる点で有利である。
【0052】
(感圧記録材料の製造方法)
本発明の感圧記録材料の製造方法は、少なくとも空洞含有樹脂フィルムを製造する工程を含み、更に必要に応じて、積層工程や着色工程等のその他の工程を含んでなる。
【0053】
−空洞含有樹脂フィルムの製造方法−
前記空洞含有樹脂フィルムの製造方法としては、少なくともポリマーフィルム(原反)を延伸する延伸工程を含み、更に必要に応じて製膜工程などのその他の工程を含んでなる。
なお、前記ポリマーフィルムとは、前記結晶性を有するポリマーを含むポリマー組成物からなり、特に空洞を含有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
【0054】
−−延伸工程−−
前記延伸工程では、前記ポリマーフィルムが少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、ポリマーフィルムが延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、空洞含有樹脂フィルムが得られる。
【0055】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマーフィルムを構成する少なくとも1種類の結晶性を有するポリマーが、微小な結晶領域又は分子のあるレベルでの規則性を持った微小な領域を形成していて、延伸時に伸張し難い結晶又は微細構造領域を含む相間の樹脂が引きちぎられるような形で、剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって、空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性を有するポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性を有するポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0056】
前記延伸の方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時にフィルムの流れる方向に沿って縦延伸を行う工程を少なくとも含むことが好ましい。
【0057】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
なお、2段目以降の延伸における延伸条件(例えば、延伸速度、延伸温度など)は、1段目の延伸条件と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0058】
−−−延伸速度−−−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10〜36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0059】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000〜36,000mm/minが好ましく、1,100〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。
【0060】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10〜300mm/minが好ましく、40〜220mm/minがより好ましく、70〜150mm/minが更に好ましい。
【0061】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜15,000mm/minが更に好ましい。
【0062】
前記延伸速度の測定方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、以下の方法により測定できる。
バッチ式の場合には、ポリマー成形体の端部を把持したクランプが、延伸方向へ移動する際の移動速度、即ち、クランプの移動距離/クランプの移動に要した時間(mm/min)、を延伸速度とする。本実施形態において規定される延伸速度は、特に記載のない限り、前記バッチ式の場合の延伸速度である。
【0063】
また、ポリマー成形体が2対(又はそれ以上)のニップロールを通過する際の、ニップロールの表面速度の差によって、ポリマー成形体が延伸される場合(一般に、「Roll to Roll延伸」という。)には、ポリマー成形体の把持位置がニップロールで固定されており、移動しない。したがって、前記Roll to Roll延伸の場合には、延伸された倍率/延伸に要した時間(%/min)、を延伸速度とする。なお、前記ニップロールは、図1におけるロール15aに相当する。
【0064】
なお、前記バッチ式における延伸速度と、前記Roll to Roll延伸における延伸速度とは、いずれかの延伸方法において、ポリマー成形体の延伸前の長さ(mm)及び延伸後の長さ(mm)を測定していれば、互いに換算することが可能である。バッチ式における延伸速度から、Roll to Roll延伸における延伸速度に換算した例を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
−−−延伸温度−−−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、
延伸温度をT(℃)、結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg−30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg−25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+45)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg−20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+40)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0067】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)−30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+50}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、充分に空洞が発現する点で好ましい。
【0068】
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0069】
なお、前記延伸工程において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸工程を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の空洞含有樹脂フィルムは、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしても良い。
【0070】
前記ポリマーフィルムの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性を有するポリマーがポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂である場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。
また、前記ポリマーフィルムの製造は、前記延伸工程と独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0071】
図1は、本発明の感圧記録材料における空洞形成樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。図1に示す二軸延伸フィルム製造装置は、Roll to Roll延伸を行うフィルム製造装置である。
図1に示すように、原料樹脂(ポリマー組成物)11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で冷却固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマーフィルム」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、空洞含有樹脂フィルム1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、空洞形成樹脂フィルム1として使用してもよい。
【0072】
以上のようにして、前記空洞含有樹脂フィルムの製造方法により、空洞含有樹脂フィルムを得ることができ、前記空洞含有樹脂フィルムは、そのままで、本発明の感圧記録材料として使用することができる。
また、前記感圧記録材料に所望の機能を付与する目的で、前記空洞含有樹脂フィルムと、他の機能性ポリマーフィルムとを積層することで、本発明の感圧記録材料とすることもできる。前記空洞含有樹脂フィルムと、前記他の機能性ポリマーフィルムとを積層する方法としては、特に制限はなく、従来公知の積層方法を適宜利用することができる。
また、前記感圧記録材料の反射率を更に高めたり、透過率を更に低下させたりすることを目的として、前記空洞含有樹脂フィルムを着色することで、本発明の感圧記録材料とすることもできる。前記空洞含有樹脂フィルムの着色方法としては、特に制限はなく、従来公知の着色方法を適宜利用することができる。
【0073】
<使用>
前記感圧記録材料に印加する圧力としては、前記感圧記録材料の内部に含有される空洞を圧縮することができる限り、特に制限はないが、先端が直径0.7mmの半球形状であるステンレス製スティックを用いた場合には、100〜1,000gの荷重を印加することが好ましく、200〜500gがより好ましい。前記荷重が100〜1,000gであると、視認性の高い印字部分を形成するのに充分な程度に空洞を圧縮することができ、かつ、ポリマー組成物層(感圧記録材料の表面を含む)を破損せずに空洞を圧縮できる点で有利である。
【0074】
前記感圧記録材料に圧力を印加する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、筆記、タイプライター、ワイヤードットプリンター、プリンター、プレス機などが挙げられる。前記筆記においては、例えば、ボールペン、竹べら、先の丸いガラス棒、ステンレス棒、モバイル端末用のプラスチックペンなどを用いることができる。
なお、前記タイプライターやボールペンは、インクが出ない状態で使用しても、本発明の感圧記録材料の空洞を圧縮して好適に印字することができるが、インクが出る状態で使用してもよい。インクが出る状態で使用した場合には、本発明の感圧記録材料の空洞を圧縮して印字するとともに、印字部分の感圧記録材料表面に色材を付着させることができる。また、前記感圧記録材料に印字をする際には、加熱しながら印字すると、効率的に印字できることがある。
【0075】
前記感圧記録材料は、弱い圧力で、不可逆的に記録できるので、例えば、ラベル、複写用紙、伝票などに使用することができる。また、前記感圧記録材料を複数枚積層して圧力を印加することで、一度に複数枚に記録することも可能である。
また、前記感圧記録材料は、印字された部分の透過率が高まるので、例えば、視認する位置に対して前記感圧記録材料を介して対向する位置から光を照射したり、視認する位置に対して前記感圧記録材料を介して対向する位置に色のついた部材を設置することで、印字された部分を選択的に発光又は発色させることができる。したがって、内照看板、ディスプレー、装飾素材、容器内の色を確認できるラベル(化粧品、インクなど、色彩が鮮やかなものが好ましい。)、フォトリソグラフィにおけるパターン形成などに使用することができる。
また、前記感圧記録材料は、印字された部分において、感圧記録材料内部の空洞が不可逆的に圧縮されることにより記録されるものであり、表面のみの形状が変形するものではないので、偽造を防止することができる。したがって、チケットなどに使用することができる。
また、前記感圧記録材料は、一度印字された部分を含む広い領域に対し、1回目の印字の際に印加した圧力よりも高い圧力を印加することで、1回目の印字部分が上書されて、1回目の印字部分を判読不能とすることができる。したがって、印字された感圧記録材料に対して上記処理を施すことにより、印字された情報が他者に漏れないように廃棄することができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全ての本発明の技術的範囲に包含される。
【0077】
本実施例では、本発明の要件を満たす感圧記録材料(実施例1〜4)と、要件を満たさない感圧記録材料(比較例1〜5)を調製し、その特性についての評価を行った。
なお、本実施例においては、ポリマーフィルム(原反)の延伸を全てバッチ式でおこなった。
【0078】
<実施例1>
IV=0.72であるPBT1(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂)を溶融押出機を用いて255℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約120μmのポリマーフィルム(原反)を得た。このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,500mm/minの速度で、初めと同一方向に更に1軸延伸した。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例1の感圧記録材料として使用した。
【0079】
<実施例2>
IV=0.86であるPBS(ポリブチレンサクシネート100%樹脂)を溶融押出機を用いて220℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約135μmのポリマーフィルム(原反)を得た。このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、15℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、6,500mm/minの速度で、初めと同一方向に更に1軸延伸した。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例2の感圧記録材料として使用した。
【0080】
<実施例3>
MFI=35であるアイソタクティックPP(ポリプロピレン100%樹脂)を溶融押出機を用いて210℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約150μmのポリマーフィルム(原反)を得た。このポリマーフィルムを1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、35℃の加温雰囲気下で、11,000mm/minの速度で1軸延伸した。得られた空洞含有樹脂フィルムを、実施例3の感圧記録材料として使用した。
【0081】
<実施例4>
実施例1において、延伸時の温度を40℃に代えて35℃としたこと、及び、2段目の延伸速度を6,500mm/minに代えて20,000mm/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感圧記録材料を作成した。
【0082】
<比較例1>
樹脂フィルムとして、ルミラー(東レ株式会社製)を用いた。
【0083】
<比較例2>
樹脂フィルムとして、クリスパーボイドPET(K2323)(東洋紡績株式会社製)を用いた。
【0084】
<比較例3>
樹脂フィルムとして、ニューユポ(ユポコーポレーション社製)を用いた。
【0085】
<比較例4>
実施例1において、ポリマーフィルムの厚さを120μmに代えて130μmとしたこと、延伸時の温度を40℃に代えて100℃としたこと、及び、2段目の延伸速度を6,500mm/minに代えて5,500mm/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感圧記録材料を作成した。
比較例4の感圧記録材料においては、空洞が形成されなかった。
【0086】
<比較例5>
実施例1において、延伸時の温度を40℃に代えて60℃としたこと、及び、2段目の延伸速度を6,500mm/minに代えて600mm/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感圧記録材料を作成した。
【0087】
本実施例で作製した実施例1〜4及び比較例1〜5の感圧記録材料について、表2にまとめて示す。
【0088】
なお、表2における透過率、厚さ、空洞含有率、アスペクト比及びh(avg)は、以下の方法で測定した。
【0089】
−透過率の測定−
日立製作所製分光光度計U−4100を用いて測定した。感圧記録材料の表面に対して垂直に光を入射させ、感圧記録材料を透過する光の強度を、感圧記録材料を置かないブランクの値と比較した。波長は660nmを使用した。
【0090】
−厚さの測定−
キーエンス社製、ロングレンジ接触式変位計AF030(測定部)、AF350(指示部)を用いて測定した。
【0091】
−空洞含有率の測定−
比重を測定し、この比重に基づいて算出した。
具体的には、空洞含有率を下記の(1)式により算出した。
空洞含有率(%)={1−(延伸後の感圧記録材料の密度)/(延伸前のポリマーフィルムの密度)} ・・・(1)
【0092】
−アスペクト比の測定−
感圧記録材料の表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2B参照)と、前記感圧記録材料の表面に垂直で、かつ、前記縦延伸方向に平行な断面(図2C参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、前記各断面写真において測定枠をそれぞれ設定した。この測定枠は、その枠内に空洞が50〜100個含まれるように設定した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
次に、測定枠に含まれる空洞の数を計測し、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の数をm個、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の数をn個とした。
そして、前記縦延伸方向に直角な断面の測定枠(図2B参照)に含まれる空洞の1個ずつの厚さ(r)を測定し、その平均の厚さをrとした。また、前記縦延伸方向に平行な断面の測定枠(図2C参照)に含まれる空洞の1個ずつの長さ(L)を測定し、その平均の長さをLとした。
即ち、r及びLは、それぞれ下記の(3)式及び(4)式で表すことができる。
r=(Σr)/m ・・・(3)
L=(ΣL)/n ・・・(4)
そして、L/rを算出し、アスペクト比とした。
【0093】
−感圧記録材料表面に最も近くに位置する空洞から感圧記録材料表面までの距離の測定−
感圧記録材料の表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像した。
撮像の際には、前記感圧記録材料を平面状に載置した状態で走査型電子顕微鏡にセットして撮像した。
前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出した。各感圧記録材料において算出された厚みの算術平均値Tは、上記「−厚さの測定−」で測定された厚さ(表3参照)と同じであった。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画した。また、前記走査型電子顕微鏡による検鏡により、空洞が縦延伸方向に沿って配向していることを確認した。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とした。
そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から感圧記録材料上面までの距離が最も近い10個の空洞を選択した。なお、前記「空洞の中心から感圧記録材料上面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に感圧記録材料の表面に接したときの円の半径とした。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記感圧記録材料の上面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(2)式により算出した。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(2)
【0094】
【表2】

【0095】
−評価方法−
前記実施例1〜4及び比較例1〜5の感圧記録材料について、下記の評価を行った。
【0096】
(1)筆記試験
感圧記録材料を、岡村製作所製のデスクシステムの平机DS20XF−MB51(天板がメラミン化粧板張り)上に固定し、先端が直径0.7mmの半球形状であるステンレス製スティックを用いて、約500gの押付け荷重で、縦横5mm角程度の大きさの任意の漢字を20文字記載した。
感圧記録材料を、100Luxの白色照明の下で、官能試験を行う試験官から相対する位置に30cm離して設置し、感圧記録材料に記載された文字の状態を目視により評価した。なお、目視による評価は、感圧記録材料を挟んで対向する位置から、赤色光(赤色発光ダイオード、波長660nm)を照射して目視した場合(バックライト有り)、及び、照射せずに目視した場合(バックライト無し)について行った。評価基準は以下の通りである。
【0097】
−−評価基準(バックライト無し)−−
〇 :通常の印刷物を見る場合と変わらず、文字が判別できる。
△ :印字した感圧記録材料を様々な方向に傾けることによってなんとか文字が判別できる。
× :殆ど文字が判読できない。
××:全く判読できない。
【0098】
−−評価基準(バックライト有り)−−
〇 :文字が途切れることなく綺麗に光り、文字以外の部分との差がはっきり分かるため、文字が判読できる。
△ :文字がところどころ暗く、途切れてみえるが、文字部分と文字以外の部分との差があるため、透過光により、文字はほぼ判読できる。
× :一部光るものの文字部分と文字以外との差がほとんどないため、透過光による判読はできない。
××:透過光を全く認識できない。
【0099】
(2)タイプライター試験
感圧記録材料に対し、オリベッティ製タイプライター「レッテラ32」を使用して、任意の文字を20文字印字した。印字の際には、インクリボンを外した状態で印字した。
感圧記録材料を、100Luxの白色照明の下で、官能試験を行う試験官から相対する位置に30cm離して設置し、感圧記録材料に記載された文字の状態を目視により評価した。なお、目視による評価は、感圧記録材料を挟んで対向する位置から、赤色光(赤色発光ダイオード、波長660nm)を照射して目視した場合(バックライト有り)、及び、照射せずに目視した場合(バックライト無し)について行った。なお、評価基準は、上記した筆記試験と同じである。
【0100】
(3)圧力を印加した部位における透過率の測定
感圧記録材料を、滑らかなガラス板上に固定し、先端の半径が0.35mmの、インクの出なくなったボールペンを用いて、250gの押付け荷重で、隙間なく、かつ、重複せずに直線を引くことにより、縦横10mm角の領域に圧力を印加し、圧力を印加した領域について、透過率を測定した。
透過率は、日立製作所製分光光度計U−4100を用いて測定した。感圧記録材料の表面に対して垂直に光を入射させ、感圧記録材料を透過する光の強度を、感圧記録材料を置かないブランクの値と比較した。波長は660nmを使用した。
【0101】
(4)総合評価
感圧記録材料の総合評価を、下記基準により行った。
○ :好適に印字でき、実用レベルである。
× :印字が不充分であり、実用レベルにない。
【0102】
以上の評価結果について、表3にまとめた。
【表3】

【0103】
本実施例の結果から、実施例1〜4のみが、筆圧により好適に印字することができることを確認した。また、実施例1〜4のみが、圧力を印加された領域の透過率が高くなり、圧力を印加されない領域と比較したときに、高いコントラストを示すことを確認した。
また、上記筆記試験及び上記タイプライター試験において記録した実施例1〜4の感圧記録材料を、室温で30日間放置した後に観察したが、記録した文字に変化は見られなかった。
【0104】
図3Aは、実施例1の感圧記録材料について、記録前の断面を、走査型顕微鏡により撮像した断面写真であり、図3Bは、実施例1の感圧記録材料について、記録後の断面を、走査型顕微鏡により撮像した断面写真である。
図3Aに示すように、記録前においては、感圧記録材料の表面から裏面までの厚さが43μmであり、そのうち、空洞層を除く樹脂層の厚さの合計は、約31μmであった。
一方で、図3Bに示すように、記録後においては、空洞層は圧縮されて厚みを有しておらず、感圧記録材料の表面から裏面までの厚さは約30μmであった。
即ち、図3A及び図3Bの結果から、本発明の感圧記録材料が、圧力を印加されて記録されたときには、正味の樹脂層の厚さは変化しておらず、空洞層が圧縮されることで記録されていることが確認できた。
【0105】
図4Aは、実施例1の感圧記録材料に対し、先端の丸いSUS棒を用いて筆記し、感圧記録材料を挟んで対向する位置から、赤色光(赤色発光ダイオード、波長660nm)を照射したときの写真である。図4Aによれば、文字を印字した部分のみ、赤色光が透過しており、文字を印字していない領域には赤色光が透過していないことが確認できた。
【0106】
図4Bは、実施例1の感圧記録材料に対し、インクリボンを外したタイプライターで印字したときの写真である。図4Bによれば、感圧記録材料を挟んで対向する位置から特に光を照射しなくても、印字した文字を容易に判別できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、本発明の感圧記録材料における空洞形成樹脂フィルムの製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、空洞含有樹脂フィルムの斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂フィルムのB−B’断面図である。
【図2D】図2Dは、フィルム表面から最も近くに位置する10個の空洞の、フィルム表面からの距離を測定する方法を説明するための図であって、図2AにおけるA−A’断面図である。
【図3A】図3Aは、実施例1の感圧記録材料について、記録前の断面を、走査型顕微鏡により撮像した断面写真である。
【図3B】図3Bは、実施例1の感圧記録材料について、記録後の断面を、走査型顕微鏡により撮像した断面写真である。
【図4A】図4Aは、実施例1の感圧記録材料に対し、先端の丸いSUS棒を用いて筆記し、感圧記録材料を挟んで対向する位置から、赤色光(赤色発光ダイオード、波長660nm)を照射したときの写真である。
【図4B】図4Bは、実施例1の感圧記録材料に対し、インクリボンを外したタイプライターで印字したときの写真である。
【符号の説明】
【0108】
1 空洞含有樹脂フィルム
1a 表面
100 空洞
L アスペクト比における空洞の長さ
r アスペクト比における空洞の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有するポリマーを含むポリマー組成物からなり、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂フィルムを含んでなる感圧記録材料であって、
前記空洞含有樹脂フィルムにおける、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂フィルムの表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たすことを特徴とする感圧記録材料。
[但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。]
【請求項2】
空洞含有樹脂フィルムにおける空洞含有率が、3〜50体積%であり、
空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比が10以上である請求項1に記載の感圧記録材料。
【請求項3】
空洞含有樹脂フィルムの厚さが、10μm〜2mmである請求項1から2のいずれかに記載の感圧記録材料。
【請求項4】
結晶性を有するポリマーが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、シンジオタクチック・ポリスチレン、シンジオタクチックポリメチルメタクリレートのうち、少なくとも1つである請求項1から3のいずれかに記載の感圧記録材料。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公開番号】特開2009−190202(P2009−190202A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31043(P2008−31043)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】