説明

感染性物質を検出及び同定するための方法及び装置

【課題】超小型電子機器、チップアレー及び他の固相空間的にアドレス可能なアレーが診断及び他の用途のため開発されている。現在、ポジティブ結果を検出するための方法は不十分であり、不都合である。改良された、特により迅速な検出方法が要望されており、この目的を達するための検出手段及び方法を提供する。
【解決手段】バイオルミネセンスを用いて生物学的媒体、例えば体液中のアナライトを同定するための固相法が提供される。前記方法を実施し、バイオルミネセンスを検出するために設計されたチップも提供される。マトリックス支持体上にシリコンを堆積させるためにバイオミルラル化を用いる方法も提供される。合成シナプスも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオルミネセンスを用いて生物学的媒体中のアナライトを同定するための方法に関する。より詳しくは、固相方法及びルシフェラーゼ−ルシフェリンバイオルミネセンス発生系を用いて病気を診断する方法が提供される。本発明ではマトリックス支持体上にシリコンを堆積するためにバイオミネラル化を用いる方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
バイオルミネセンス
ルミネセンスは、エネルギーが分子に特異的に向けられて励起状態を生ずる現象である。光子(hν)が放出されると低エネルギー状態に戻る。ルミネセンスは蛍光、リン光、ケミカルルミネセンス及びバイオルミネセンスを含む。バイオルミネセンスは、生存生物が他の生物に目に見える光を発する過程である。ルミネセンスは次のように表される。
【0003】
A+B→X+Y
→X+hν
ここで、Xは電子的に励起した分子、hνはXが低エネルギー状態に戻ったときに光を発することを示す。ルミネセンスがバイオルミネセンスの場合、励起状態は酵素触媒反応により生ずる。バイオルミネセント(またはケミカルルミネセントまたは他のルミネセント)反応において生じた光の色は励起分子に特有であり、励起ソース及び温度に依存しない。
【0004】
バイオルミネセンスの必須条件は、ルシフェラーゼの存在下で結合もしくは遊離状態の分子状酸素を使用しなければならないことである。ルシフェラーゼは分子状酸素の存在下で基質であるルシフェリンに対して作用するオキシゲナーゼであり、基質を励起状態に変換する。低エネルギーレベルに戻ると、エネルギーは光の形態で放出される(参考のために、例えばMcElroyら,Molecular Architecture in Cell Physiology,Hayashiら編,Prentice−Hall,Inc.,Englewood Chiffs,NJ,pp.63−80(1966);Wardら,Chemi−and Bioluminescence,7章,Burr編,Marcel Dekker,Inc.,NY,pp.321−358;Hastings,J.W.,Cell Physiology:Source Book,N.Speralakis編,Academic Press,pp.665−681(1995);Luminescence,Narcosis and Life in the Deep Sea,Johnson,Vantage Press,NY,特にpp.50−56参照)。
【0005】
総体的な割合であるが、バイオルミネセンスは陸生生物よりも海洋生物においてより一般的である。バイオルミネセンスは30の進化的に区別される起源で発生し、各種生物におけるバイオルミネセンスに関与する生化学的及び生理学的メカニズムが異なるように各種方法で発現された。バイオルミネセンス種は多くの属にわたり、例えば細菌(主としてVibrio種を含めた海洋細菌)、真菌、藻類及び渦鞭藻類のような極微な生物、節足動物、軟体動物、棘皮動物及び脊索動物を含めた海洋生物、並びに環形動物及び昆虫を含めた陸生生物が含まれる。
【0006】
バイオルミネセンス及び他のタイプのケミカルルミネセンスは、生物学及び医学において特定物質を定量するために使用される。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子はクローン化され、多くの目的のために各種アッセイにおいてレポーター遺伝子として使用されている。ルシフェラーゼ系の種類により特定要件も異なるので、各種ルシフェラーゼ系が各種物質の検出及び同定のために使用され得る。一般的なバイオルミネセンス用途の多くはホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼに基づく。最初に使用され、なお広く使用されているアッセイの1つでは、ATPの存在を検出するためにホタルルシフェラーゼを使用する。ホタルルシフェラーゼは反応中の他の物質または補因子を検出及び定量するためにも使用される。直接的または間接的にNAD(H)、NADP(H)または長鎖アルデヒドを生成または使用する反応を細菌ルシフェラーゼの発光反応に結合し得る。
【0007】
分析目的で一般的に使用されている他のルシフェラーゼ系はAequorin系である。精製クラゲ発光タンパク質のエクオリンは各種実験条件下で細胞内Ca2+及びその変化を検出及び定量するために使用される。Aequorin発光タンパク質は比較的小さく(〜20kDa)、非毒性であり、広い濃度範囲(3×10−7〜10−4M)でカルシウムを検出するのに十分な量細胞に注入され得る。
【0008】
その分析用途のために、多くのルシフェラーゼ及び基質が研究され、十分特徴付けられ、市販されている(例えば、ホタルルシフェラーゼはミズーリ州セントルイスに所在のSigma及びインディアナ州インディアナポリスに所在のBoehringer Mannheim Biochemicalsから市販されている;組換え産生されたホタルルシフェラーゼ及びこの属に基づくまたはこのタンパク質と共に使用するための他の試薬はウィスコンシン州マジソンに所在のPromega Corporationから市販されている;クラゲ由来のエクオリン発光タンパク質ルシフェラーゼ及びRenilla由来のルシフェラーゼはジョージア州ボガートに所在のSealite Sciencesから市販されている;これらのルシフェラーゼに対する天然基質であるセレンテラジンはオレゴン州ユージーンに所在のMolecular Probesから入手可能である)。これらのルシフェラーゼ及び関連試薬は診断、定性コントロール、環境テスト及び他の分析用試薬として使用される。
【0009】
チップ、アレー及び超小型電子機器
超小型電子機器、チップアレー及び他の固相空間的にアドレス可能なアレーが診断及び他の用途のために開発されている。現在、ポジティブ結果を検出するための方法は不十分であり、不都合である。改良された、特により迅速な検出方法が要望されている。
【0010】
従って、本発明の目的は検出手段及び方法を提供することである。
【0011】
(発明の要旨)
チップ及びルシフェラーゼ−ルシフェリン発生系を用いて疾患、特に感染性疾患を診断するための方法を提供する。本発明では前記方法を実施するためのチップデバイスも提供される。前記チップは、バイオルミネセンス発生系より放出される光子を検出する集積光検出系を含む。前記方法は、バイオルミネセンス発生系より生成した光子を検出するために本明細書に記載したように変更した自己アドレス可能及び非自己アドレス可能なフォーマットを含めた適当なチップデバイスを用いて実施され得る。本発明で提供されるチップデバイスは、生物学的サンプル中の感染性物質を検出及び同定するためにアレーフォーマットで使用するのに適している。
【0012】
チップを製造するために、チップ製造用の適当なマトリックスを選択し、光発生を測定するためのフォトダイオード、光電子増倍管、CCD(電荷結合デバイス)または他の適当な検出器の結合を含めたマクロ分子を結合するためにマトリックスを適当に誘導化し、適当なマクロ分子、例えば生物学的分子または抗リガンド、例えば抗体のようなレセプターをチップに好ましくはその割り当て位置に結合することにより製造される。フォトダイオードが現在好ましい検出器であり、本明細書に特に記載されている。しかしながら、フォトダイオードの代わりに他の適当な検出器も使用され得ることも理解されよう。
【0013】
1つの実施態様では、チップは光検出器のアレー、例えばX−Yアレーを有する集積回路を使用して製造される。回路の表面は、チップが意図する診断アッセイの条件に対して不活性となるように処理され、例えば抗体のような分子を結合するために誘導化することにより適合される。1つもしくは複数の特定抗体、例えば特に細菌抗原に対して特異的な抗体を各フォトダイオード上のチップ表面に固定する。チップを試験サンプルと接触させた後、チップを抗原に対して特異的なバイオルミネセンス発生系の成分、例えばルシフェラーゼまたはルシフェリンに結合させた第2抗体と接触させる。バイオルミネセンス発生系の残りの成分を添加し、バイオルミネセンス発生系の成分に結合した抗体がチップ上に存在する場合には光が発生し、その光を隣接の光検出器により検出する。光検出器は、結合抗体を同定する情報をプログラム化し、事象を記録し、それにより試験サンプル中に存在する抗原を同定するコンピュータと作動的に接続している。
【0014】
チップは、例えば1つまたは複数の抗体を表面に結合し、チップを体液、例えば尿、血液、脊髄液(CFS)の試験サンプルとアッセイフォーマットに依存してサンプル中の標的を結合するのに十分な時間接触させ、チップを洗浄し、その後ルシフェラーゼまたは抗体−ルシフェラーゼ融合タンパク質に複合化した第2抗体とインキュベートし、バイオルミネセント反応を開始し、チップ中のフォトダイオードを介して標的に結合した各位置で生じた光を検出し、チップからの電子信号を分析のためにコンピュータに移すことにより感染性疾患または抗生物質感受性のためのアッセイのような所望のアッセイに使用される。
【0015】
1つの実施態様では、チップは、発光化学反応より生じた光の光子を検出するための非自己アドレス可能な超小型電子デバイスである。このデバイスは、基板と、基板上に規定された位置(本明細書ではミクロ位置と呼ぶ)のアレーと、各ミクロ位置に光学的に結合した独立の光検出器とを含む。各ミクロ位置は、各ミクロ位置で反応が起こったときに光の光子を放出する別個の化学反応物質を保持している。各光検出器は、各ミクロ位置で反応が起こったときに相当するミクロ位置で放出された光子に応じて検知信号を発生し、各光検出器は他の光検出器とは独立である。前記デバイスは、各光検出器より生じた検知信号を読みとり、そこから出力データ信号を発生する電子回路を含む。出力データ信号は各ミクロ位置で生じた光を示す。
【0016】
別の実施態様では、発光反応を用いて流体サンプル中のアナライトを検出し、同定するための超小型電子デバイスが提供される。このデバイスは、基板と、基板上に規定された分析される流体サンプルを受容するためのミクロ位置のアレーと、各ミクロ位置の結合層に結合した別個の標的剤と、各ミクロ位置に光学的に結合した独立の光検出器とを含む。各標的剤は受容サンプル中に存在する可能性がある特定アナライトの結合に対して特異的であることが好ましい。各光検出器は、結合した特定アナライトを該特定アナライトまたは標的剤−特定アナライト複合体の結合に対して特異的であり、発光反応の1つ以上の成分に結合した第2結合剤に接触させたときに相当するミクロ位置で生ずる光の光子に応じて検知信号を発生する。次いで、チップは残りの成分と反応して、特定アナライトが存在するときには光子を放出する。電子回路は各光検出器より発生した検知信号を読みとり、そこから各ミクロ位置で生じた光を示す出力データ信号を発生する。
【0017】
更に別の実施態様では、ルシフェラーゼ−ルシフェリンバイオルミネセンスを用いて生物学的流体中のアナライトを検出し、同定するための超小型電子デバイスが提供される。このデバイスは、基板と、基板上に規定された分析するサンプルを受容するためのミクロ位置のアレーと、各ミクロ位置の結合層に結合したレセプター抗体のような別個の抗リガンドと、各ミクロ位置に光学的に結合した独立した光検出器とを含む。各レセプター抗体は受容サンプル中に存在する可能性がある特定アナライトの結合に対して特異的である。各光発生器は、対応するレセプター抗体に結合した特定アナライトを該特定アナライトまたはレセプター−特定アナライト複合体に対して特異的であり、ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応の1つ以上の成分に結合した第2抗体と接触させ、次いで特定アナライトが存在するときにバイオルミネセンスを発生させるために残りの成分と反応させたときに相当するミクロ位置で生ずるバイオルミネセンスに応じて検知信号を発生する。電子回路は各光検出器より発生した検知信号を読みとり、そこから出力データ信号を発生する。出力データ信号は反応により各ミクロ位置で生ずるバイオルミネセンスを示す。
【0018】
別の実施態様では、ルシフェラーゼ−ルシフェリンバイオルミネセンスを用いて生物学的流体中に存在するアナライトを検出し、同定する方法を提供する。この方法は、その上に規定されたミクロ位置のアレーを含む表面を有する超小型電子デバイスを用意し、各ミクロ位置で表面への1つもしくは複数のレセプター抗体の結合を強化するために表面を誘導化し、各ミクロ位置で1つもしくは複数の特定レセプター抗体を結合させることを含む。特定抗体はサンプル中に存在する可能性のある特定アナライトに対して特異的である。前記方法は、特定アナライトが各ミクロ位置で表面に結合したレセプター抗体に結合するようにサンプルを表面に適用し、特定アナライトが各ミクロ位置でレセプター抗体と結合するのに十分な時間待機した後サンプルを表面から洗浄し、各ミクロ位置でレセプター抗体に既に結合している特定アナライトの結合に対して特異的であり、特定アナライトが存在するときルシフェラーゼ及びルシフェリンの一方に結合する第2抗体に表面を接触させ、表面にルシフェラーゼ及びルシフェリンの他方を適用することにより反応を開始させることを含む。前記方法はまた、各ミクロ位置で光学的に結合した光検出器を用いて反応により生じた光の光子を検出することをも含む。前記光検出器は各ミクロ位置においてバイオルミネセント活性を示す検知信号を発生し、各光検出器からの検知信号を読みとり、各ミクロ位置で反応により生じたバイオルミネセンスを示す出力データ信号を発生させる。
【0019】
別の実施態様では、ルシフェラーゼ−ルシフェリンバイオルミネセンスを用いて生物学的サンプル中のアナライトを検出し、同定するためのシステムを提供する。このシステムは、サンプルを受容するためのミクロ位置のアレーを含む超小型デバイスと、各ミクロ位置の結合層に結合させた、受容したサンプル中に存在する可能性のある特定アナライトに対して特異的な別個のレセプター抗体と、対応するレセプター抗体に結合した特定アナライトを該特定アナライトに特異的であり、ルシフェラーゼ及びルシフェリンの一方に結合した第2抗体に接触させ、特定アナライトが存在するときにはバイオルミネセンスを発生させるためにルシフェラーゼ及びルシフェリンの他方と反応させたときに相当するミクロ位置で生ずるバイオルミネセンスに応じて検知信号を発生する光検出器と、各光検出器からの検知信号を読みとり、そこから各ミクロ位置で反応により生じたバイオルミネセンスを示す出力データ信号を発生させる電子回路とを含む。前記システムは、各ミクロ位置で生ずるバイオルミネセンスを示す出力データ信号を受け取るための入力インターフェース回路、各ミクロ位置に関連する位置を有するデータ獲得アレーを保存する記憶回路、出力デバイス信号に応じて目に見える兆候を発生させるための出力デバイス及び処理回路を含む処理機器を含む。前記処理回路は、入力インターフェース回路が受け取った出力データ信号を読みとり、前記信号を対応するミクロ位置と相関させ、相関させた出力データ信号をデータ獲得アレーに蓄積することにより所望の時間前記信号を集積し、出力デバイスに適用したときに出力デバイスにより特定アナライトの存在に関連する目に見える兆候が生ずる出力デバイス信号を発生させる。
【0020】
他の実施態様では、チップは自己アドレス可能である。本発明の方法に自己アドレス可能なチップを使用するとき、現在好ましいものは、国際特許出願公開第WO95/12808号明細書、同第WO96/01836号明細書及び同WO96/07917号明細書に記載されているような超小型電子自己アドレス可能な自己組立可能なチップ及びシステムに適合し得るもの及び米国特許第5,451,683号明細書に記載されているようなアレーに適合し得るものである。上記刊行物は援用により本明細書に含まれるとする。自己アドレス可能なチップは、1つのミクロ位置の電荷を変化させた後自由流動電気泳動によりアナライトまたは試薬を全部送ることにより各ウェルがレストの存在下で一度にアドレス指定され得るが、アセンブリはチップが組み立てられた後前記位置でのみ起こるようなものである。これらのデバイスは、記載されている検出手段をルシフェラーゼ/ルシフェリン系で置換することにより本発明の方法で使用するために変更される。
【0021】
本明細書に記載の別の実施態様では、アノード電極及びカソード電極は、自由流動電気泳動によりアナライト及び試薬を送達するためにそれぞれ各ウェルの底部及び頂部に配置されている。チップを(例えばドット印字装置を用いて)組み立てる前にMYLAR(配向ポリエチレンテレフタレート)層上の各位置に抗体を結合させる。従って、その底部の半導体層に組み入れたフォトダイオードを含有するウェルを複数有する点で非自己アドレス可能である。
【0022】
実際、例えば特異的抗リガンド、例えば抗体をチップのマトリックスまたは各ウェルの中央に配置した熱安定性MYLARのような中間反射性支持体マトリックスに直接結合させる。サンプルをチップと接触させ、洗浄し、複数の第2抗体−ルシフェラーゼ複合体またはタンパク質融合物を添加する。ウェルを洗浄し、バイオルミネセント反応の残りの成分を添加して反応を開始させる。ウェルで生じた光を半導体層中の光検出器、光電子増幅管、CCD(電荷結合デバイス)または他の適当な検出器により検出し、信号を処理装置、通常はコンピュータに中継する。処理装置はウェルがポジティブであることを表示する。各ウェルは特定のリガンドに対応し、それにより感染性物質が同定される。ステップはすべて自動化される。
【0023】
バイオルミネセント反応の電磁気放出を検出するために微視的フォーマットで制御されたマルチステップ及びマルチプレックス反応を活性的に実施する非自己アドレス可能でプログラム可能な、自己アドレス可能で自己組立可能な超小形電子システム及びデバイスの設計、製造及び使用が本発明で提供される。前記反応には、核酸及びタンパク質核酸ハイブリダイゼーション、抗体/抗原反応及び関連する臨床診断のような多くの分子生物学的方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
こうしてシリコンマトリックス及び光検出器または他の光検出手段を含むチップが提供される。シリコンは、放散虫類及び珪藻類による酵素堆積と同様の酵素堆積を用いて堆積され得る。シリカまたはその誘導体の吸収を有利には検出手段として使用するチップも提供される。前記シリカは、Aristostomiasバイオルミネセンス発生系より発生する波長である約705nmに最大吸収を有する。シリコンをマトリックスの表面上に堆積させる酵素反応も本発明で提供される。
【0025】
本発明では合成シナプスも提供される。適当な酵素、特にアセチルコリンエストラーゼを例えば組換え発現によりルシフェラーゼに融合する。ルシフェラーゼは不活性でも活性の配座であってもよい。ルシフェラーゼが本明細書に記載されている適当な配座変化を確実に受け得るためにいずれかのタンパク質における適当な突然変異を選択する。生じた融合物をチップ、例えば本明細書に記載のチップに結合する。リガンドを酵素に結合すると、例えばアセチルコリンをエストラーゼに結合すると、結合したルシフェラーゼは予め不活性の場合には結合により活性化され、また予め活性の場合には結合により不活性となる。バイオルミネセンス発生系の残りの成分の存在下で、光が発生し(または消光し)、その変化がチップに付属させた光検出器により検出される。この検出により、例えばコンピュータにより処理される信号が発生し、信号は適当な手段、例えばファイバにより所望のデバイスまたはエフェクタ、特に筋肉に取り付けた電極に伝送される。信号を受け取ると、筋肉の単収縮のような動きが生ずる。
【0026】
好ましい実施態様の詳細な記載
内容の表
A.定義
B.バイオルミネセンス発生系
1.一般的記載
a.ルシフェラーゼ
b.ルシフェリン
c.アクチベータ
d.反応
2.有櫛動物及び腔腸動物系
a.エクオリン系
(1)エクオリン発光タンパク質
(2)ルシフェリン
b.Renilla系
3.甲殻類、特にCyrpidina(Vargula)系
a.Vargulaルシフェラーゼ
(1)Cyrpidinaからの精製
(2)組換え法による調製
b.Vargulaルシフェリン
c.反応
4.ホタル、コメツキムシ及び他の昆虫系を含めた昆虫バイオルミネセンス発生系
a.ルシフェラーゼ
b.ルシフェリン
c.反応
5.細菌バイオルミネセンス発生系
a.ルシフェラーゼ
b.ルシフェリン
c.反応
6.他の系
a.渦鞭藻バイオルミネセンス発生系
b.LatiaやPholasのような軟体動物由来の系
c.地虫及び他の環形動物
d.発光キノコバエ
e.海洋多毛蠕虫系
f.南米線路甲虫
7.蛍光タンパク質
a.緑色及び青色蛍光タンパク質
b.フィコビリンタンパク質
C.チップの設計及び製造
1.非自己アドレス可能チップ
2.自己アドレス可能チップ
a.マトリックス材料
b.製造方法
i.ミクロリソグラフィ
ii.微細機械加工
c.チップの自己アドレス化
3.生物学的分子のチップへの結合
a.シリカ基板の誘導化
b.生物学的分子の結合
D.ルシフェラーゼ複合体の形成
1.リンカー
2.ルシフェラーゼ融合タンパク質
3.核酸及びペプチド核酸複合体
E.マトリックス上へのシリコンの堆積のための放散虫類及び珪藻類
F.チップの使用方法
【0027】
A.定義
特記しない限り、本明細書に記載されている技術用語及び科学用語はすべて本発明の属する当業者が通常理解していると同じ意味を有する。本明細書で参照した特許及び刊行物はすべて援用により本明細書に含まれるとする。
【0028】
本明細書中、ケミカルルミネセンスは、エネルギーが分子に対して特異的に伝達されて該分子が電子的に励起され、その後光子を放出するようになり、それにより目に見える光が発生される化学反応を指す。温度は前記した伝達エネルギーに関与しない。従って、ケミカルルミネセンスでは化学エネルギーが光エネルギーに直接変換される。バイオルミネセンスは、ルシフェリン及びルシフェラーゼ(または発光タンパク質)を含むケミカルルミネセンス反応の一部を指す。本発明のバイオルミネセンスはりん光を含まない。
【0029】
本明細書中、ケミカルルミネセンスの一種であるバイオルミネセンスは、生物学的分子、特にタンパク質による光の放出を指す。バイオルミネセンスの必須条件は、基質であるルシフェリンに対して作用するオキシゲナーゼのルシフェラーゼの存在下で結合しているかもしくは遊離の分子状酸素である。バイオルミネセンスは、分子状酸素の存在下で基質ルシフェリン(バイオルミネセンス基質)に対して作用し、基質を励起状態に変換するオキシゲナーゼである酵素または他のタンパク質(ルシフェラーゼ)より発生する。基質が低エネルギーレベルに戻ると光の形態のエネルギーを放出する。
【0030】
本明細書中、バイオルミネセンスを発生させるための基質及び酵素はそれぞれ及びルシフェリン及びルシフェラーゼと総称されている。特定種を参照する場合、明瞭にするために各用語は例えば細菌ルシフェリンまたはホタルルシフェラーゼのように由来となる生物の名前を付けて使用する。
【0031】
本明細書中、ルシフェラーゼは、発光反応を触媒するオキシゲナーゼを指す。例えば、細菌ルシフェラーゼは、反応して光を発するフラビンモノヌクレオチド分子(FMN)及び脂肪族アルデヒドの酸化を触媒する。海洋節足動物の中に見られる他のクラスのルシフェラーゼはCypridina(Vargula)ルシフェリンの酸化を触媒し、他のクラスのルシフェラーゼはColeopteraルシフェリンの酸化を触媒する。
【0032】
従って、ルシフェラーゼは、バイオルミネセント反応(バイオルミネセンスを生ずる反応)を触媒する酵素または光タンパク質を指す。ホタルルシフェラーゼやRenillaルシフェラーゼのようなルシフェラーゼは、バイオルミネセンス発生反応中触媒的に作用するが変化を受けない酵素を指す。ルシフェリンが非共有的に結合するエクオリンやオベリン発光タンパク質のようなルシフェラーゼ発光タンパク質はバイオルミネセンス発生反応中、例えばルシフェリンの遊離により変化を受ける。ルシフェラーゼは生物中に元々存在するタンパク質またはその変異体もしくは突然変異体、例えば天然に存在するタンパク質とは異なる1つ以上の特性、例えば熱もしくはpH安定性を有する突然変異により産生される変異体である。ルシフェラーゼ、その修飾突然変異体もしくは変異体は公知である。
【0033】
よって、例えば“Renillaルシフェラーゼ”を指すとき、属Renillaのメンバーから単離された酵素、または他のソース、例えば他の花虫網から得るかまたは合成した均等分子を指す。
【0034】
ルシフェラーゼ及びルシフェリン及びそのアクチベータをバイオルミネセンス発生試薬または成分と呼ぶ。通常、これらの試薬の一部がアッセイ中用意されるか、またはチップの表面上の特定位置に固定化されている。チップ表面に他の試薬が接するとバイオルミネセンスが生じ、発生した光が特定標識が固定化抗リガンドにより検出されたアレーの位置でフォトダイオードにより検出される。従って、本明細書中、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及び他の要素、例えばO、Mg2+、Ca2+もバイオルミネセンス発生試薬(または物質または成分)と呼ぶ。
【0035】
本明細書中、「厳密には触媒的でなく」という表現は、発光タンパク質が基質の酸化を促進するための触媒として作用するが、結合基質が酸化し、結合分子状酸素が反応に使用されるので反応において変化を受けることを意味する。そのような光タンパク質は当業者に公知の適当な条件下で基質及び分子状酸素を添加することにより再生される。
【0036】
本明細書中、バイオルミネセンス基質は、ルシフェラーゼ及び必要なアクチベータの存在下で酸化されて光を発する化合物を指す。前記基質は、バイオルミネセント反応において酸化を受ける基質であるルシフェリンと呼ばれる。バイオルミネセンス基質には、ルシフェリンまたはそのアナログ、またはルシフェラーゼと相互作用して光を発する合成化合物が含まれる。発光反応においてルシフェラーゼまたはタンパク質の存在下で酸化される基質が好ましい。よって、バイオルミネセンス基質には当業者がルシフェリンと認識している化合物が含まれる。ルシフェリンには例えば、ホタルルシフェリン、Cypridina(Vargulaとしても公知)ルシフェリン(セレンテラジン)、細菌ルシフェリン及びこれらの基質の合成アナログ、または反応中にルシフェラーゼの存在下で酸化されてバイオルミネセンスを発生する他の化合物が含まれる。
【0037】
本明細書中、「バイオルミネセンス基質に変換し得る」という表現は、酸化または還元のような化学反応を受けやすくバイオルミネセンス基質を生ずることを意味する。例えば、バイオルミネセント細菌のルミネセンス生成反応には、フラビンレダクターゼ酵素によるフラビンモノヌクレオチド基(FMN)の還元型フラビンモノヌクレオチド(FMNH)への還元が含まれる。次いで、還元型フラビンモノヌクレオチド(基質)は酸素(アクチベータ)及び細菌ルシフェラーゼと反応して中間体ペルオキシフラビンを形成し、この中間体ペルオキシフラビンは長鎖アルデヒドの存在下で反応を受けると光を発生する。この反応に関して、還元型フラビン及び長鎖アルデヒドは共に基質である。
【0038】
本明細書中、バイオルミネセンス系(またはバイオルミネセンス発生系)は、バイオルミネセンス発生反応に必要な試薬の組合せを指す。すなわち、特定のルシフェラーゼ、ルシフェリン及び他の基質、溶媒並びにバイオルミネセント反応を完了するのに必要な他の試薬がバイオルミネセンス系を形成する。従って、バイオルミネセンス系(または同義的に、バイオルミネセンス発生系)は、適当な反応条件下でバイオルミネセンスを生ずる試薬の組合せを指す。適当な反応条件とは、バイオルミネセント反応を起こすのに必要な条件、例えばpH、塩濃度及び温度を指す。一般的に、バイオルミネセンス系はバイオルミネセンス基質(ルシフェリン)、酵素ルシフェラーゼ及び発光タンパク質を含めたルシフェラーゼ、及び1つ以上のアクチベータを含む。特定のバイオルミネセンス系はルシフェラーゼの誘導元である特定生物を参照して同定され得る。例えば、Vargula(Cypridinaとも呼ばれる)バイオルミネセンス系(すなわち、Vargula系)はVargulaルシフェラーゼ、例えば貝虫Vargulaから単離されたか組換え法により産生されたルシフェラーゼ、及び前記ルシフェラーゼの修飾体を含む。この系はまた、バイオルミネセント反応を完了するのに必要な特定アクチベータ、例えば酸素及び酸素の存在下でルシフェラーゼと反応して光を発生する基質を含む。
【0039】
本明細書中、ATP、AMP、NAD及びNADHはそれぞれ、アデノシントリホスフェート、アデノシンモノホスフェート、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(酸化型)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型)を指す。
【0040】
本明細書中、「組換えDNA法を用いて組換え手段により産生」という表現は、クローン化DNAによりコードされるタンパク質を発現するための分子生物学の公知の方法を用いることを意味する。
【0041】
本明細書中、「物質と実質的に同一」という表現は、重要な特性が実質的に同一な物質が当該物質の代わりに使用することができるように殆ど未変化であるほど十分に類似していることを意味する。
【0042】
本明細書中、「実質的に純粋」とは、純度を評価するために当業者が使用する標準の分析方法、例えば薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定したときに容易に検出され得る不純物がないと見えるほどに十分に均質であること、または更に精製しても物質の物理的及び化学的性質、例えば酵素活性及び生物学的活性の変化が検出できないほどに十分に純粋であることを意味する。実質的に化学的に純粋な化合物を精製するための化合物の精製方法は当業者に公知である。しかしながら、実質的に化学的に純粋な化合物は立体異性体の混合物であってもよい。その場合、更に精製すると化合物の特定活性が上昇し得る。
【0043】
本明細書中、核酸の2つの配列を指すときに均等とは、当該2つの配列がアミノ酸または均等タンパク質の同じ配列をコードすることを意味する。2つのタンパク質またはペプチドを指すときに「均等」を使用するとき、均等とは、2つのタンパク質またはペプチドがタンパク質またはペプチドの活性または機能を実質的に変化させない同類置換(例えば、下記表2参照)のみを有する実質的に同一のアミノ酸配列を有することを意味する。均等を性質について指すとき、性質が同程度である必要はないが(例えば、同一種の酵素活性に関して2つのペプチドは異なる活性度を示し得る)、活性は実質的に同一であることが好ましい。2つのヌクレオチド配列を指すときに「相補的」とは、ヌクレオチドの2つの配列が好ましくは25%未満で、より好ましくは15%未満で、更に好ましくは5%未満で、最も好ましくは0%のヌクレンチド間誤対合でハイブリダイズすることができることを意味する。好ましくは、2つの分子は高緊縮条件でハイブリダイズする。
【0044】
本明細書中、誤対合%を測定するときのハイブリダイゼーションの緊縮度は次の通りである。
1)高緊縮度:0.1×SSPE、0.1%SDS、65℃
2)中緊縮度:0.2×SSPE、0.1%SDS、50℃
3)低緊縮度:1.0×SSPE、0.1%SDS、50℃
均等の緊縮度は別の緩衝液、塩及び温度を用いても達成され得ることは理解されよう。
【0045】
本明細書中、ペプチド核酸は、リボース−ホスフェート骨格がアミド結合により保持されている骨格で置換された核酸アナログを指す。
【0046】
用語「実質的」とは、当業者が理解するように状況により変わり、通常少なくとも70%、好ましくは少なくと80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を意味する。
【0047】
本明細書中、生物学的活性は、化合物のインビボ活性、または化合物、組成物または他の混合物を投与したときに生ずる生理学的応答を指す。生物学的活性は該活性を試験または使用するために設計されたインビトロシステムで認められ得る。従って、本発明の目的では、ルシフェラーゼの生物学的活性はそのオキシゲナーゼ活性であり、この活性により基質が酸化すると光を発する。
【0048】
本明細書中、組成物は任意の混合物を指す。組成物は水性もしくは非水性の溶液、懸濁液、液体、粉末、ペーストまたはその組合せであり得る。
【0049】
本明細書中、組合せとは2つもしくはそれ以上のアイテムの結合を指す。
【0050】
本明細書中、流体は流動することができる任意の組成を指す。従って、流体には半固体、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームの形態の組成物及び他の組成物が含まれる。
【0051】
本明細書中、マクロ分子には、診断アッセイ用固体支持体に結合するすべての分子が包括的に包含される。前記マクロ分子には、タンパク質、有機分子、核酸、ウィルス、ウィルスカプシド、ファージ、細胞もしくはその膜、その一部が含まれるが、これらに限定されない。本発明では重要なアナライトに特異的に結合するマクロ分子が特に興味深い。重要なアナライトは体液及び他の生物学的サンプル中に存在するものである。
【0052】
本明細書中、レセプターは所与のリガンドに対して親和性を有する分子を指す。レセプターは天然に存在する分子でも合成分子でもよい。レセプターは当業界では抗リガンドとも呼ばれる。本明細書中、レセプター及び抗リガンドは互換可能に使用される。レセプターはその未変化状態でまたは他の種との凝集体として使用され得る。レセプターは結合メンバーに対して直接的にまたは特定結合物質もしくはリンカーを介して間接的に共有的もしくは非共有的に結合し得るか、または物理的に接触し得る。レセプターの例には、抗体、細胞膜レセプター、表面レセプター、内在化レセプター、モノクローナル抗体及び(例えばウィルス、細胞または他の材料上の)特異的抗原決定基と反応性の抗血清、薬物、ポリヌクレオチド、核酸、ペプチド、補因子、レクチン、糖、多糖類、細胞、細胞膜及び細胞小器官が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
レセプター及びそのレセプターを用いる用途の例は次の通りであるが、これらに限定されない。
a)酵素:抗生(リガンド)選択のための標的として使用され得る、微生物の生存に必須の特定輸送タンパク質または酵素。
b)抗体:当該抗原のエピトープと結合する抗体分子上のリガンド結合部位の同定が研究され得る。抗原エピトープに模擬の配列が決定されると、免疫原が前記配列の1つ以上に基づくワクチンが開発され得、または自己免疫疾患に対するような治療に有用な関連診断薬または化合物が開発され得る。
c)核酸:例えばタンパク質またはRNAのようなリガンドの結合部位の同定。
d)触媒ポリペプチド:1つ以上の反応物質の1つ以上の生成物への変換を含む化学反応を促進し得るポリマー、好ましくはポリペプチド。前記ポリペプチドは通常少なくとも1つの反応物質または反応中間体に対して特異的な結合部位及び前記結合部位に近い、結合した反応物質を化学的に修飾し得る活性官能基を含む(例えば、米国特許第5,215,899号明細書参照)。
e)ホルモンレセプター:レセプターに対して高い親和性で結合するリガンドの決定はホルモン置換療法の開発に有用である。例えば、前記レセプターに結合するリガンドが同定されると、血圧をコントロールする薬物が開発され得る。
f)アヘン剤レセプター:脳中のアヘン剤レセプターに結合するリガンドの決定はモルヒネまたは関連薬物にかわる低中毒性薬物の開発に有用である。
【0054】
本明細書中、抗体は、Fab断片のような軽鎖及び重鎖の可変領域を含む抗体断片を含む。
【0055】
本明細書中、相補性とはレガンド分子及びそのレセプターの表面と相互作用するトポロジー的和合性または対合性を指す。よって、レセプター及びそのリガンドは相補的と記載され、更に接触表面特性は互いに相補的である。
【0056】
本明細書中、リガンド−レセプター対または複合体は、複合体を形成するために2つのマクロ分子が分子認識を介して結合したときに形成される。
【0057】
本明細書中、エピトープは、抗体として公知のレセプータのサブクラスとの相互作用領域により規定される抗原分子の部分である。
【0058】
本明細書中、リガンドは、特定レセプターにより特異的に認識される分子を指す。リガンドの例には、細胞膜レセプターに対するアゴニスト及びアンタゴニスト、毒素及び毒液、ウィルスエピトープ、ホルモン(例えば、ステロイド)、ホルモンレセプター、アヘン剤、ペプチド、酵素、酵素基質、補因子、薬物、レクチン、糖、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴサッカライド、タンパク質及びモノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書中、抗リガンド(AL.sub.i):抗リガンドは所与リガンドに対する親和性が既知か未知の分子であり、表面の所定領域上に固定化され得る。抗リガンドは天然に存在する分子または合成分子であり得る。また、抗リガンドはその未変化状態でまたは他の種との凝集体として使用され得る。抗リガンドは結合メンバーに対して直接的にまたは特定結合物質を介して共有的もしくは非共有的に可逆的に結合され得る。「可逆的に結合」とは、抗リガンド(または特定の結合メンバーまたはリガンド)の結合が可逆的であり、従って実質的に非ゼロ可逆的、すなわち非結合割合を有することを意味する。前記した可逆的結合は、静電力、ファン・デル・ワールス力、疎水性(すなわち、エントロピー)力等のような非共有相互作用により生じ得る。また、可逆的結合は全てではなく一部は共有結合反応によっても生じ得る。例には、ヘミアセタール、ヘミケタール、イミン、アセタール、ケタール等の形成による結合が含まれる(援用により本明細書に含まれるとするMorrisonら,“Organic Chemistry”,第2版,19章(1966)参照)が、これらに限定されない。本発明の方法及びデバイスに使用され得る抗リガンドの例には、細胞膜レセプター、モノクローナル抗体、(例えばウィルス、細胞または他の材料上の)特定抗原決定基と反応性の抗血清、ホルモン、薬物、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ペプチド核酸、酵素、基質、補因子、レクチン、糖、オリゴサッカライド、細胞、細胞膜及び細胞器官が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書中、基質は、直接または適当な誘導化後化学合成、アッセイ及び他の方法のための固体支持体として使用されるマトリックスを指す。本発明の好ましい基質はシリコン表面、または抗リガンド、リガンド、及び蛍光タンパク質、フィコビリンタンパク質や他の放射シフト剤を含めた他のマクロ分子の結合のために意図された表面上で誘導化されたシリコン処理基質である。
【0061】
本明細書中、マトリックスは、重要な分子、典型的には生物学的分子、マクロ分子、有機分子または生物特異的リガンドが結合または接触する固体、半固体もしくは不溶性支持体を指す。通常、マトリックスは剛性または半剛性表面を有する基質材料である。多くの実施態様では基質の少なくとも1表面が実質的に平坦であるが、幾つかの実施態様では例えばウェル、一段高い領域、エッチングされた溝または他のトポロジーを用いて各種ポリマーにする合成領域を物理的に離すことが望ましい場合もある。マトリックス材料には、化学的及び生物学的分子合成のためのアフィニティーマトリックスまたは支持体として使用される材料が含まれる。その例には、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、ガラス、デキストラン、キチン、砂、軽石、ポリテトラフルオロエチレン、アガロース、多糖類、デンドリマー、バッキーボール(buckyballs)、ポリアクリルアミド、珪そう土−ポリアクリルアミド非共有コンポジット、ポリスチレン−ポリアクリルアミド共有コンポジット、ポリスチレン−PEG(ポリエチレングリコール)コンポジット、シリコン、ゴム、及び固相合成、アフィニティー分離及び精製、ハイブリダイゼーション反応、イムノアッセイ及び他の用途のための支持体として使用される他の材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書、結合層は分子が結合しているチップデバイスの表面を指す。通常、チップは半導体デバイスであり、分子の結合のために適し且つデバイスがさらされる反応に対して不活性となるように表面の少なくとも一部の上に被覆されている。分子は表面に直接的もしくは間接的に結合し、結合は共有結合、イオン相互作用または他の相互作用を介する吸収または吸着により起こり得る。必要ならば、結合層は例えば分子の結合のために誘導化することにより適合される。
【0063】
B.バイオルミネセンス発生系
バイオルミネセンス発生系は、バイオルミネセンスを発生するために必要且つ十分な諸成分を指す。これらの成分にはルシフェラーゼ、ルシフェリン及び必要な補因子または条件が含まれる。実際上当業者に公知のバイオルミネセンス発生系が本発明で提供される装置、システム、組合せ及び方法において使用できる。バイオルミネセンス発生系を選択するときに考慮される因子には、バイオルミネセンスと一緒に使用される所望のアッセイ及び生物学的流体、反応を行う媒体、成分の安定性(例えば、温度またはpH感受性)、成分の貯蔵寿命、連続的または断続的にかかわらず発光の持続性、成分の入手可能性、所望の光度及び他の因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
1.一般的記載
一般に、バイオルミネセンスは特定の化学基質のルシフェリンがルシフェラーゼ酵素により触媒されて酸化を受けるエネルギー生成化学反応を指す。バイオルミネセント反応は、該反応を継続または再開させるために消耗したルシフェリンまたは他の基質、補因子または他のタンパク質を補充するだけで簡単に維持される。バイオルミネセンス発生反応は当業者に公知であり、こうした反応は本発明で提供される装置、システム及び方法で一緒に使用するために適応され得る。
【0065】
バイオルミネセンス発生系の生物及びソースは多数あり、幾つかの代表的なバイオルミネセンスを示す属及び種を下表に示す(Cell Physiology:Source Book, N.Sperelakis編,Academic Press,pp.665−681(1995)中のHastingsから一部複製した)。
【0066】
【表1】


【0067】
本発明のバイオルミネセンス発生系のソースとしての使用が考えられる他のバイオルミネセント生物にはGonadostomias、Gaussia、Halisturia、Vampireイカ、Glyphus、Mycotophids(魚)、Vinciguerria、Howella、Florenciella、Chaudiodus(ホウライエソ)、Malanocostus、Paracanthus、Atolla(ムラサキカムリクラゲ)、Pelagia(オキクラゲ)、Pitilocarpus、Acanthophyra(トゲノリ)、Siphonophore(ギボシヤスデ)、Periphylla(クロカムリクラゲ)及びウミエラ(Stylata)が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
バイオルミネセンス発生系は、例えば上表に示したような天然ソースから単離され得るか、または合成され得る。また、本発明で使用するためには、成分はその混合物が適切な条件下でグローを生成するように十分純粋でさえあればよい。従って、幾つかの実施態様では、粗な抽出物または生成物を単に砕いたものでも十分であり得る。しかしながら、実質的に純粋な成分が通常使用され、所要により正確な純度を実験的に求めることができる。また、成分が天然ソースから単離されない合成成分であってもよい。ルシフェラーゼをコードするDNAが利用され得(例えば、配列番号1〜13参照)、修飾され(例えば、配列番号3及び10〜13)、及び合成代替基質が案出された。本明細書には、利用可能なルシフェラーゼをコードするDNAの代表例の一部が記載されているにすぎない。
【0069】
合成されるかまたは本明細書の表1等に記載または当業者に公知の天然ソースから単離されるかのいずれにせよ、任意のバイオルミネセンス発生系が本発明で提供されるチップデバイス、組合せ、システム及び方法において使用される。オキシゲナーゼ(ルシフェラーゼ)を利用しないケミカルルミネセンス系それ自体は本発明に包含されない。
【0070】
a.ルシフェラーゼ
ルシフェラーゼは、バイオルミネセンス基質(ルシフェリン)が低エネルギーに戻ったときに発光するような低エネルギー状態〜高エネルギー状態の遊離もしくは結合分子状酸素の存在下での前記基質の酸化を所要のアクチベータの存在下で触媒する化合物を指す。本発明の目的において、ルシフェラーゼは、触媒的に作用して基質の酸化により光を発生する酵素、及び(発光タンパク質が反応中に消耗しないので)厳密には触媒的ではないが酸素の存在下で基質と一緒になって作用して光を発生する発光タンパク質、例えばエクオリンを包含するように広義に使用される。エクオリンのような発光タンパク質を含めたルシフェラーゼが本発明のルシフェラーゼの中に含まれる。上記反応物質には、発光タンパク質を含めた天然に存在するルシフェラーゼ、組換えDNAにより産生されるタンパク質、及び適当な基質、補因子及びアクチベータの存在下で光を発生する能力を保持する前記タンパク質の突然変異体もしくは修飾変異体、または基質を酸化して光を発生させるための触媒として作用する他のタンパク質が含まれる。
【0071】
包括的に、バイオルミネセント反応を触媒または開始するタンパク質をルシフェラーゼと称し、酸化され得る基質をルシフェランと称する。酸化された反応生成物をオキシルシフェリン、或るルシフェリン前駆体をエチオルシフェリンと称する。従って、本発明の目的のために、バイオルミネセンスには、生物学的タンパク質、またはそのアナログ、誘導体もしくは突然変異体により(酵素的に作用するルシフェラーゼの場合には)触媒され、(反応により再生されない発光タンパク質、例えばエクオリンの場合には)開始される反応により生ずる光が包含される。
【0072】
明瞭にするために、上記した触媒タンパク質をルシフェラーゼと称し、その中にはルシフェリンの酸化を触媒して光を発し、オキシルシフェリンを放出するルシフェラーゼのような酵素が含まれる。また、ルシフェラーゼの中には、ルシフェリンの酸化を触媒して光を発するが反応中に変化し、再使用するためには再構築されなければならない発光タンパク質も含まれる。ルシフェラーゼは天然に存在するものでも、特定の性質を改良または変更するために例えば遺伝子工学により修飾したものであってもよい。生じた分子がバイオルミネセント反応を触媒する能力を保持している限り、こうした分子も本発明に包含される。
【0073】
ルシフェラーゼ活性を有するタンパク質(分子状酸素の存在下での基質の酸化を触媒して本明細書に定義する光を生ずるタンパク質)を本発明で使用することができる。好ましいルシフェラーゼは、本明細書に記載されているものまたはマイナーな配列変化を有するものである。前記したマイナーな配列変化には、マイナー対立遺伝子もしくは種変化、及び残基、特にシステイン残基の挿入もしくは欠失が含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸の適当な同類置換は当業者に公知であり、通常生じる分子の生物学的活性を変更することなく実施し得る。当業者は認識しているように、一般的にポリペプチドの非必須領域中の単一アミノ酸置換により生物学的活性は実質的に変化しない(例えば、Watsonら,Molecular Biology of the Gene,第4版,The Benjamin/Cummings Pub.co.(1987),p.224参照)。前記置換は好ましくは下表2に示す置換に従って実施される。
【0074】
【表2】

【0075】
他の置換も許容され得、実験的にまたは公知の同族置換に従って決定され得る。前記したポリペプチドの修飾は当業者に公知の方法により実施され得る。
【0076】
ルシフェラーゼは市販されているか、天然ソースから単離、ルシフェラーゼをコードするDNAを用いて宿主細胞中で発現、または当業者に公知の方法で得ることができる。本発明の目的のために、特定のソース生物を砕いて得られる粗抽出物で十分である。大量のルシフェラーゼが所望されるので、宿主細胞からルシフェラーゼを単離することが好ましい。前記した目的のDNAはその修飾形態と同様に広く利用され得る。
【0077】
ルシフェラーゼの例には、有櫛動物Mnemiopsis(ムネミンプシン)及びBeroe ovata(ベロビン)から単離されたルシフェラーゼ、腔腸動物Aequorea(エクオリン)、Obelia(オベリン)、Pelagiaから単離されたルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、軟体動物Pholas(フォラシン)から単離されたルシフェラーゼ、Aristostomias及びPorichthys魚並びに貝虫、例えばCypridina(Vargulaとも呼ばれる)から単離されるルシフェラーゼが含まれるが、これらに限定されない。本発明で使用するための好ましいルシフェラーゼはエクオリンタンパク質、Renillaルシフェラーゼ及びCypridina(Vargulaとも呼ばれる)ルシフェラーゼ(例えば、配列番号1、2及び4〜13参照)である。また、反応して赤色光及び/または近赤外光を生じるルシフェラーゼも好ましい。これらには、Aristostomias(例えば、A.scintillans)、Pachystomias、Malacosteus(例えば、M.niger)の種に存在するルシフェラーゼが含まれる。
【0078】
b.ルシフェリン
前記反応のための基質には、ルシフェラーゼと反応して光を生ずる任意の分子が含まれる。前記分子には、天然に存在する基質、その修飾形態及び合成基質(例えば、米国特許第5,374,534及び同第5,098,828号明細書参照)が含まれる。例示のルシフェリンには、本明細書に記載のルシフェリン及びその誘導体、そのアナログ、合成基質、例えばジオキセタン(例えば、米国特許第5,004,565号明細書及び同第5,455,357号明細書参照)、及び光発生反応においてルシフェラーゼにより酸化される他の化合物(例えば、米国特許第5,374,534号明細書;同第5,098,828号明細書及び同第4,950,588号明細書参照)が含まれる。前記基質は、バイオルミネセント反応において酸化される化合物を選択することにより実験的に同定され得る。
【0079】
c.アクチベータ
バイオルミネセンス発生系は、本明細書に記載されており、当業者に公知の追加成分をも必要とする。バイオルミネセント反応はすべて溶存もしくは結合酸素形態の分子状酸素を必要とする。従って、水中に溶解しているか、空気中、または発光タンパク質に結合している分子状酸素がバイオルミネセント反応に対するアクチベータである。成分の形態に応じて、他のアクチベータにはATP(ホタルルシフェラーゼに対して)、FMNからFMNHを再生するためのフラビンレダクターゼ(細菌系に対して)、またはCa2+及び他の適当な金属イオン(エクオリン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明で提供される系の多くは、ルシフェラーゼ及びルシフェリンを混合し、空気または水にさらしたときに光を発生する。しかしながら、結合酸素を有する発光タンパク質、例えばエクオリンを使用する系では、カルシウム塩の水性組成物の形態で提供され得るCa2+(または他の適当な金属イオン)に接触させなければならない。これらの場合、ルシフェラーゼ(エクオリン)及びルシフェリン(例えば、セレンテラジン)の混合物にCa2+(または他の適当な金属イオン)を添加すると光が発生する。Renilla系及び他のAnthozoa系もCa2+(または他の適当な金属イオン)を必要とする。
【0081】
Cypridina(シュリンプ)を砕いたものまたは粉砕ホタルのような粗調製物を使用する場合には、水のみを添加すればよい。ホタル(またはホタルもしくは甲虫ルシフェラーゼ)を使用する場合には、反応は追加のATPのみを必要とする。正確な成分は、本明細書の記載にてらして当業者には自明であり、実験で容易に決定され得る。
【0082】
上記した混合物が反応を進めるために必要な追加の塩、緩衝成分またはイオンをも含むことは理解されよう。上記した反応は十分に特徴付けられているので、当業者は正確な割合及び必要な成分を決定することができる。成分の選択は、チップデバイス及びシステム、実施されるアッセイ及びルシフェラーゼに依存する。各種実施態様が本明細書に記載されており、例示されている。本明細書の記載にてらして、他の実施態様も自明である。
【0083】
d.反応
全ての実施態様において、バイオルミネセンス発生系の1つの成分以外の全部もしくはそれ未満の成分は、チップの適当な場所に直接もしくは間接的に結合されるか、またはアナライト、好ましくは感染性物質の存在が検出されるアレーの位置に固定化される。バイオルミネセンスが所望される場合、残りの成分はチップの表面に添加され、アレーの上記位置で生じた光はチップのフォトダイオードにより検出される。
【0084】
一般に、本発明の目的のために達成すべき結果はチップのフォトダイオードにより検出され得るかまたは肉眼で見ることができる光を発生させることであるので、バイオルミネセント反応の成分の正確な比率及び量は厳密に決定または満たされなくてよい。それらは光を生成するのに十分であればよい。通常、容易に検出可能な信号または目に見えるグローを発生するのに十分な量のルシフェリン及びルシフェラーゼを使用する。この量は実験的に容易に決定され得、特定のシステム及び特定の用途に依存する。
【0085】
本発明の目的のために、前記した量は好ましくは少なくとも当業者が分析目的で使用される濃度及び比率である。グローがチップ中のフォトダイオードにより検出するには十分に明るくないときには、より高濃度またはより長い集積時間が使用される。反応を使用する条件が実験室条件ではなく、成分が貯蔵されるので、活性の損失を解消するためにより高濃度が使用され得る。通常、前記量は反応混合物1リッターあたり1mg、好ましくは10mg、より好ましくは100mgのルシフェラーゼである。前記ルシフェラーゼは、各成分を少なくとも約0.01mg/l、通常0.1mg/l、1mg/l、10mg/l以上またはそれ以上含む組成物を乾燥して製造され得る。ルシフェリンの量も、約0.01〜100mg/l、好ましくは0.1〜10mg/lである。反応を継続させるために追加のルシフェリンが多くの反応に添加され得る。ルシフェラーゼが触媒的に作用し、再生させる必要がない実施態様では、より低量のルシフェラーゼを使用することができる。ルシフェラーゼが反応中に変化する実施態様では、ルシフェラーゼを補充することもできる。通常、より高濃度が選択される。各成分の濃度範囲(または、前記組成物を接触させて生ずる基板上の被覆量)としては、0.1〜20mg/lのオーダー、好ましくは0.1〜10mg/lのオーダー、より好ましくは約1〜10mg/lのオーダーで十分である。本明細書に記載の被覆基板を使用する場合、より高濃度のルシフェラーゼまたはルシフェリンを含む被覆組成物を大量使用し得る。
【0086】
従って、例えば、カルシウムの存在下で水1リッター中5mgのルシフェリン、例えばセレンテラジンは、約10mgのルシフェラーゼ、例えばエクオリン発光タンパク質ルシフェラーゼまたはRenillaルシフェラーゼを添加すると水の温度に依存して少なくとも10〜20分間明るく輝く。ルシフェラーゼの濃度を例えば100mg/lまで上昇させると、特に輝く光ディスプレイが提供される。
【0087】
所望により、バイオルミネセンス発生反応の阻害剤、例えばマグネシウムを添加するとバイオルミネセント反応の開始を遅らすことができる。また、阻害を所望しないときには、十分量のキレート剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を添加することにより遊離マグネシウムの濃度を低下させることができる。EDTA及びカルシウムの量は、所望のバイオルミネセンスを阻害または防止することなくマグネシウムを適切にキレートするために実験的に決定することができる。
【0088】
使用される濃度及び量が選択されるルシフェラーゼ、所望の細菌標的、固定化抗リガンドにより吸収される光の濃度及び量、フォトダイオードアレーのサイズに依存し、これらは実験的に容易に決定され得ることは理解されよう。比率、特に実験的測定を始めるときに使用する比率は、通常分析目的に使用される比率であり、量または濃度は少なくとも分析目的に使用される量または濃度であるが、その量を特に持続的且つより明るいグローが所望されるときには増加させることができる。
【0089】
2.クシクラゲ及び腔腸動物系
クシクラゲ、例えばMnemiopsis(ムネミオプシン)及びBeroe ovata(ベロビン)並びに腔腸動物、例えばAequorea(エクオリン)、Obelia(オベリン)及びPelagiaは、類似の化学を用いてバイオルミネセント光を生ずる(例えば、Stephensonら,Biochimica et Biophysica Acta 678:65−75(1981);Hartら,Biochemistry 18:2204−2210(1979);米国特許出願第08/017,116号に基づく国際出願公開WO94/18342号明細書;米国特許第5,486,55号明細書及び本明細書に引用される他の参考資料及び特許参照)。Aequorin系及びRunilla系が代表的であり、現在好ましい系の中の例として本明細書に詳細に記載する。Aequorin及びRunilla系は同じルシフェリンを使用し得、同じ化学を用いて光を生じ得るが、各ルシフェラーゼは異なる。Aequorinルシフェラーゼのエクオリン及び例えばルシフェラーゼムネミンプシン及びベロビンは、結合酸素及び結合ルシフェリンを含み、反応を誘発させるためにCa2+(または他の適当な金属イオン)を必要とし、繰り返し使用するために再生されなければならない発光タンパク質である。一方、Renillaルシフェラーゼは、反応中に変化を受けず、溶存分子状酸素を必要とするので真の酵素として作用する。
【0090】
a.エクオリン系
エクオリン系は公知である(例えば、Tsujiら,“Site−specific mutagenesis of the calcium−binding photoprotein aequorin”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8107−8111(1986);Prasherら,“Cloning and Expression of the cDNA Coding for Aequorin,a Bioluminescent Calcium−Binding Protein”,Biochemical and Biophysical Research Communications 126:1259−1268(1985);Prasherら,Methods in Enzymology 133:288−297(1986);Prasherら,“Sequence Comparisons of cDNAs Encoding for Aequorin Isotypes”,Biochemistry 26:1326−1332(1987);Charbonneauら,“Amino Acid Sequence of the Calcium−Dependent Photoprotein Aequorin”,Biochemistry 24:6762−6771(1985);Shimomuraら,“Resistivity to denaturation of the apoprotein of aequorin and reconstitution of the luminescent photoprotein from the partially denatured apoprotein”,Biochem.J. 199:825−828(1981);Inouyeら,J.Biochem. 105:473−477(1989);Inouyeら,“Expression of Apoaequorin Complementary DNA in Escherichia coli”,Biochemistry 25:8425−8429(1986);Inouyeら,“Cloning and sequence analysis of cDNA for the luminescent protein aequorin”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3154−3158(1985);Prendergastら,“Chemical and Physical Properties of Aequorin and the Green Fluorescent Protein Isolated from Aequorea forskales”,J.Am.Chem.Soc. 17:3448−3453(1978);欧州特許出願公開第0540064号;同第0226979号;同第0245093号;欧州特許第0245093号明細書;米国特許第5,093,240号明細書;同第5,360,728号明細書;同第5,139,937号明細書;同第5,422,266号明細書;同第5,023,181号明細書;同第5,162,227号明細書;及びアポタンパク質をコードするDNAを記載している配列番号5〜13参照;並びに米国特許第5,162,227号明細書,欧州特許出願公開第0540064号明細書及びSealite Sciences Technical Report No.3(1994)に記載されている形態はAQUALITE(登録商標)としてジョージア州ボガートに所在のSealite Sciencesから市販されている)。
【0091】
この系は本発明で使用するための好ましい系の1つである。自明のようにエクオリン発光タンパク質は非共有結合ルシフェリン及び分子状酸素を含むので、この形態を凍結乾燥粉末または選択送達ベヒクル中のカプセルとして貯蔵するのが適当である。系はペレット、例えばリポソームまたは他の送達ベヒクル中にカプセル化され得るか、または単一チャンバまたは2つもしくはそれ以上のチャンバを有するアンプル中に貯蔵され得る。使用する場合、発光タンパク質は抗リガンドに複合化し、アレーの特定位置に結合し、Ca2+(または他の適当な金属イオン)を含有する組成物、場合によっては水道水と接触させて、アレーの特定位置で輝く混合物を作成する。光はチップ中のフォトダイオードにより検出され、データ信号は関連コンピュータープロセッサーにより分析される。この系は本明細書の各種実施態様で使用するために好ましい。
【0092】
(1)エクオリン及び関連発光タンパク質
刺胞動物Aequoreaから単離された発光タンパク質のエクオリンは、Ca2+(または他の適当な金属イオン)を添加すると発光する。結合ルシフェリンとCa2+により遊離される結合酸素を含むエクオリン発光タンパク質は溶存酸素を必要としない。ルミネセンスはカルシウムにより誘発され、酸素を遊離し、ルシフェリン基質はアポエクオリンを生成する。
【0093】
バイオルミネセンス発光タンパク質のエクオリンは刺胞動物Aequoreaの多数の種から単離される。これは22キロダルトン(kD)の分子量を有するペプチド複合体である(例えば、Shimomuraら,J.Cellular and Comp.Physiol. 59:233−238(1962);Shimomuraら,Biochemistry 8:3991−3997(1969);Kohamaら,Biochemistry 10:4149−4152(1971);及びShimomuraら,Biochemistry 11:1602−1608(1972)参照)。天然タンパク質は酸素及びこの酸素に非共有結合したヘテロ環式化合物セレンテラジンのルシフェリン(以下参照)を含む。このタンパク質は3つのカルシウム結合サイトを含む。発光タンパク質に微量のCa2+(または他の適当な金属イオン)を添加すると、タンパク質結合酸素を用いて結合セレンテラジンの酸化を触媒する立体配座変化を受ける。この酸化からのエネルギーが469nmに集中する青色光のフラッシュとして放出される。酸化反応を誘発させるには10−6M程度の低濃度のカルシウムイオンで十分である。
【0094】
天然に存在するアポエクオリンは単一化合物ではなく、むしろミクロ不均一分子種の混合物である。Aequoria刺胞動物抽出物は、12種ほど多くのタンパク質を含む(例えば、Prasherら,Biochemistry 26:1326−1332(187);Blinksら,Fed.Proc. 34:474(1975)参照)。多数の形態をコードするDNAが単離された(例えば、配列番号5〜9及び13参照)。
【0095】
発光タンパク質は、大腸菌中で組換え技術により産生されたタンパク質のようなアポタンパク質を酸素及び2−メルカプトエタノールのような還元剤(例えば、Shimomuraら,Nature 256:236−238(1975);Shimomuraら,Biochemistry J. 199:825−828(1981)参照)の存在下、及び所望するまで酸化反応の誘発を防止するためにCa2+を拘束するEDTAまたはEGTA(本発明での使用に対しては約5〜約100mM、またはそれ以上の濃度)の存在下でセレンテラジン、例えば合成セレンテラジンと組合わせることにより再構築され得る(例えば、米国特許第5,023,181号明細書)。再構築のために2−メルカプトエタノールを必要としない修飾アポタンパク質をコードするDNAも利用され得る(例えば、米国特許第5,093,240号明細書)。再構築された発光タンパク質は市販されており(例えば、AQUALITE(登録商標)の商品名で市販されており、米国特許第5,162,227号明細書に記載されている。
【0096】
光反応は、キレート剤の影響を解消し、10−6M濃度を達成するのに十分な濃度のCa2+を添加することにより誘発される。本発明の方法で使用するためにはこのような低濃度のCa2+が反応を誘発し得るので、高濃度のキレート剤を発光タンパク質の組成物中に含めることができる。従って、カルシウムの形態で添加されるより高濃度のCa2+が必要である。正確な量は実験的に決定され得る。本発明で使用する場合、濃縮組成物の形態または凍結乾燥もしくは粉末形態で提供される発光タンパク質に水を添加するだけで十分である。従って、本発明の目的では、殆どの水道水、リン酸緩衝食塩液(PBS)または他の適当な緩衝液、または皮膚上の水分中に存在するような少量のCa2+を添加してバイオルミネセント反応を誘発すべきである。
【0097】
多数のイソ型のエクオリンアポタンパク質が単離され、同定された。これらのタンパク質をコードするDNAをクローン化し、タンパク質及びその修飾型を適当な宿主細胞を用いて産生した(例えば、米国特許第5,162,227号明細書、同第5,360,728号明細書、同第5,093,240号明細書参照;またPrasherら,Biophys.Biochem.Res.Commun. 126:1259−1268(1985);Inouyeら,Biochemistry 25:8425−8429(1986);米国特許第5,093,240号明細書、同第5,360,728号明細書、同第5,139,937号明細書、同第5,288,623号明細書、同第5,422,266号明細書、同第5,162,227号明細書及びアポタンパク質をコードするDNAを記載している配列番号5〜13も参照;形態はAQUALITE(登録商標)としてジョージア州ボガートに所在のSealite Sciencesから市販されている)。アポエクアリンをコードするDNAまたはその変異型は高量のアポタンパク質を組換え産生するために有用である。ルシフェリンセレンテラジン、好ましくはその硫酸化誘導体、またはそのアナログ及び分子状酸素を添加すると発光タンパク質が再構築される(例えば、米国特許第5,023,181号明細書参照)。アポタンパク質と発光タンパク質及びバイオルミネセンス発生反応の他の成分を特性な条件下で混合して、発光タンパク質を再生し、付随して発光タンパク質は光を生ずることができる。下記するような還元剤を必要としないように設計されている変異型を除いて、再構築にはメルカプトエタノールのような還元剤の存在を必要とする(例えば、米国特許第5,093,240号明細書参照)。
【0098】
本発明の使用のためには、エクオリンをDNA、例えば配列番号5〜13に記載されていたり当業者に公知のDNAまたはその変異型を用いて産生することが好ましい。エクオリンをコードするDNAを大腸菌のような宿主細胞において発現し、単離し、再構築して発光タンパク質を産生する(例えば、米国特許第5,418,155号明細書、同5,292,658号明細書、同5,360,728号明細書、同5,422,266号明細書、同5,162,227号明細書参照)。
【0099】
本発明において興味深いものは、バイオルミネセント活性が未修飾型のアポエクオリンよりも高いように修飾されたアポタンパク質である(例えば、米国特許第5,360,728号明細書、配列番号10〜12参照)。未修飾型アポエクオリンよりも高いバイオルミネセント活性を示す修飾型には、アスパルテート124、グルタメート135及びグリシン129がそれぞれセリン、セリン及びアラニンに変っている配列番号10〜12に記載の配列を有するタンパク質が含まれる。高いバイオルミネセンスを有する他の修飾型も入手可能である。
【0100】
本明細書に記載の特定実施態様において使用するために、アポタンパク質とエクオリンバイオルミネセンス発生系の他の成分を混合物としてパッケージされるかまたは提供され、その混合物は所望のときにアポタンパク質、ルシフェリン及び酸素から発光タンパク質を再構築する条件にかけられる(例えば、米国特許第5,023,181号明細書及び同5,093,240号明細書参照)。特に好ましいのは、再構築のために2−メルカプトエタノールのような還元剤を必要としないアポタンパク質の形態である。これらの形態は例えば米国特許第5,093,240号明細書(例えば、Tsujiら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 83:8107−8111(1986)参照)に記載されており、1つ以上、好ましくは全ての3つのシステイン残基を例えばセリンで置換することにより修飾されている。置換は、例えば配列番号5に記載されているようなエクオリンアポタンパク質をコードするDNAを修飾し、シスインコドンをセリンで置換することによりなし得る。
【0101】
発光タンパク質及び関連種、例えばObelia由来のルシフェラーゼも本発明のために使用される。ハイドロイドpolyp Obelia longissima由来のCa2+−活性化オベリンをコードするDNAは公知であり、入手可能である(例えば、Illarionovら,Gene 153:273−274(1995)及びBondarら,Biochim.Biophys.Acta 1231:29−32(1995)参照)。この発光タンパク質はMn2+によっても活性化され得る(例えば、Vysotskiら,Arch.Bioch.Biophys. 316:92−93(1995);Vysotskiら,J.Biolumin.Chemilumin. 8:301−305(1993)参照)。
【0102】
通常、本発明の使用のためにバイオルミネセンス成分は反応を誘発するためには不十分な金属イオンしか存在しないようにパッケージまたは提供される。使用に際し、微量の誘発金属イオン、特にCa2+を他の成分と接触させる。グローをより持続させるためには、エクオリンを連続的に再構築させるか、添加するか、または高過剰で提供することができる。
【0103】
(2)ルシフェリン
エクオリンルシフェリンはセレンテラジン及びそのアナログであり、下記構造(式(I))を有する分子または活性を有する他のアナログが含まれる。
【0104】
【化1】

上記式中、RはCHまたはCH、RはC、Rはp−COHまたはCHである。好ましいセレンテラジンは、Rがp−CHOH、RがC、Rはp−COHの構造を有するものであり、公知の方法により製造され得る(例えば、Inouyeら,Jap.Chem.Soc.Chemistry Lttrs. pp.141−144(1975)及びHaltら,Biochemistry 18:2204−2210(1979)参照)。好ましいセレンテラジンは下記構造(式(II))を有するもの及びその硫酸化誘導体である。
【0105】
【化2】

【0106】
エクオリン発光タンパク質に結合しているセレンテラジンと結合酸素とのCa2+の存在下での反応は、次のように表すことができる。
【0107】
【化3】

【0108】
発光タンパク質エクオリン(セレンテレートルシフェリン分子に結合したアポタンパク質を含む)及び以下に記載するRenillaルシフェラーゼは同じセレンテレートルシフェリンを使用することができる。エクオリン発光タンパク質はセレンテトレートルシフェリン(セレンテラジン)のオキシルシフェリン(セレンテラミド)への酸化を触媒し、付随して青色光(λmax=469nm)を生ずる。
【0109】
重要なことは、セレンテレートルシフェリンの硫酸塩誘導体(ラウリル−ルシフェリン)は水中で特に安定であり、よってセレンテレート様バイオルミネセンス発生系において使用できる。この系において、アデノシンジホスフェート(ADP)及びサルファ−キナーゼがセレンテラジンを硫酸化形態に変換するために使用される。次いで、スルファターゼを使用してラウリル−ルシフェリンを天然のセレンテラジンに再変換する。このように、より安定なラウリル−ルシフェリンがイルミネーションを施すべきアイテムにおいて使用され、イルミネーションが所望されるときにルシフェリン混合物にルシフェラーゼとスルファターゼが添加される。
【0110】
従って、Aequoreaのバイオルミネセンス発生系は本発明の方法及び装置に使用するのに特に適している。特定量及び成分を提供する方法は選択されるアッセイ、ルシフェラーゼ及び抗リガンドに依存する。この系はCa2+を添加すると輝く凍結乾燥形態で提供され得る。この系は好ましくは反応の誘発を防止するために十分量のキレート剤の存在下で、カプセル化されるか、多孔質ガラスのようなマトリックスに結合されるか、または溶液もしくは懸濁液のような組成物であってもよい。エクオリン発光タンパク質の濃度は変わり、実験的に決定され得る。典型的には、少なくとも0.1mg/l、より好ましくは少なくとも1mg/l及びそれ以上の濃度が選択される。特定実施態様では、特定容量中に1〜10mgのルシフェリン/100mgのルシフェラーゼが使用され、所望の濃度で使用される。
【0111】
b.Renilla系
セレンテレート系の代表例がRenilla系である。ウミシイタケとしても知られるRenillaは腔腸動物の花虫網に属し、この属にはCavarnularia、Ptilosarcus、Stylatula、Acanthoptilum及びParazoanthusのような他のバイオルミネセント属が含まれる。花虫網属のバイオルミネセントメンバーは構造的に類似のルシフェリン及びルシフェラーゼを含む(例えば、Cormierら,J.Cell.Physiol. 81:291−298(1973)参照;またWardら,Proc.Ntal.Acad.Sci.U.S.A. 72:2530−2534(1975)参照)。これらの花虫網の各々に由来するルシフェラーゼ及びルシフェリンは交差に反応して、特徴的な青色ルミネセンスを生ずる。
【0112】
Renillaルシフェラーゼ、他のセレンテレート及びエクオリン発光タンパク質のようなクシクラゲルシフェラーゼはイミダゾピラジン基質、特に包括的にセレンテラジンと呼ばれる基質を使用する(例えば、上記式(I)及び(II)参照)。セレンテラジンを使用するルシフェラーゼを有する他の属には、Chiroteutis、Eucleoteuthis、Onychoteuthis及びWataseniaのようなイカ、Sepiolinaのようなコウイカ、Oplophorus、Sergestes及びGnathophausiaのようなシュリンプ、Argyropelecus、Yarella、Diaphus及びNeoscopelusのような深海魚が含まれる。
【0113】
しかしながら、Renillaルシフェラーゼは結合酸素を有していないので、適当なルシフェリン基質の存在下で光を発するためには溶存酸素が必要である。Renillaルシフェラーゼは真の酵素(すなわち、更なる使用のために再構築される必要がない)として作用するので、生じたルミネセンスは飽和レベルのルシフェリンの存在下で長く持続し得る。また、Renillaルシフェラーゼは熱に対して比較的安定である。
【0114】
Renillaルシフェラーゼ、RenillaルシフェラーゼをコードするDNA及び該DNAの組換えルシフェラーゼを産生するための使用、並びに他のセレンテレート由来のルシフェラーゼをコードするDNAは公知であり、入手可能である(例えば、配列番号1,米国特許第5,418,155号明細書及び同第5,292,658号明細書参照;またPrasherら,Biochem.Biophys.Res.Commun. 126:1259−1268(1985);Cormier,“Renilla and Aequorea bioluminescence”,Bioluminescence and Chemiluminescence,pp.225−233(1981);Charbonneauら,J.Biol.Chem. 254:769−780(1979);Wardら,J.Biol.Chem. 254:781−788(1979);Lorenzら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 88:4438−4442(1981);Horiら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:4285−4287(1977);Horiら,Biochemistry 14:2371−2376(1975);Horiら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:4285−4287(1977);Inouyeら,Jap.Soc.Chem.Lett. 141−144(1975);及びMatthewsら,Biochemistry 16:85−91(1979)参照)。RenillaルシフェラーゼをコードするDNA及び該DNAを含む宿主細胞は、大量の酵素を産生するための便利な手段を提供する(例えば、Renillaルシフェラーゼの組換え産生及び前記DNAの他のルシフェラーゼ、特に関連生物に由来のルシフェラーゼをコードするDNAを単離するための使用を記載している米国特許第5,418,155号明細書及び同第5,292,658号明細書参照)。高レベルで組換え酵素を発現できるRenillaルシフェラーゼの組換え産生方法(米国特許第5,418,155号明細書及び同第5,292,658号明細書)の改変方法は本明細書の実施例に記載されている。
【0115】
本発明で使用する場合、Renillaルシフェラーゼを場合によりルシフェリン基質と組合せて、凍結乾燥形態でパッケージするかまたはベヒクル中にカプセル化することができる。使用する前に、混合物を水性組成物、好ましくはリン酸緩衝食塩液または他の適当な緩衝液、例えばpH7〜8、好ましくはpH8のTris緩衝液(例えば、0.1mmのTris、0.1mmのEDTA)と接触させる。溶存Oが反応を促進する。グリセロール(約1%)を添加すると光度が高くなる。増殖混合物中のルシフェラーゼの最終濃度は0.01〜1mg/lまたはそれ以上のオーダーである。ルシフェリンの濃度は少なくとも約10−8Mであるが、長く持続するバイオルミネセンスを生ずるためには1〜100またはそれ以上のオーダーである。
【0116】
本明細書の特定実施態様では、約1〜100mg、または好ましくは2〜5mg、より好ましくは約3mgのセレンテラジンを約100mgのRenillaルシフェラーゼと共に使用する。正確な量は勿論実験的に決定され得るが、ある程度最終濃度及び用途に依存する。特に、Renillaを発現する細菌由来の粗抽出物約0.25mlの適当なアッセイ緩衝液100ml及び約0.005μgへの添加が目に見えるグローを長時間発生させるために十分であった(例えば、Renillaルシフェラーゼの組換え産生を記載している米国特許第5,418,155号明細書及び同第5,292,658号明細書参照)。
【0117】
凍結乾燥混合物及びRenillaルシフェラーゼ含有組成物も提供される。ルシフェラーゼ、またはルシフェラーゼとルシフェリンの混合物を適当な送達ベヒクル、例えばリポソーム、ガラス粒子、毛細管、薬物送達ベヒクル、ゼラチン、持続性コーティングまたは他のベヒクルにカプセル化することもできる。これらの混合物、組成物またはベヒクルを含むキット、チップデバイス及び生物学的分子をチップの表面に結合させるための試薬も提供する。ルシフェラーゼを本発明の方法で使用するために化学的もしくは組換え手段を用いて抗リガンドに結合させてもよい。
【0118】
Renilla reniformisルシフェラーゼの組換え産生
ファージミドpTZ18R(Pharmacia)は、インビトロ転写のために設計され、細菌宿主中で組換えタンパク質を発現させるために使用される多目的DNAベクターである。このベクターは、アンピシリン耐性により形質転換体を選択できるbla遺伝子及びlacZ’遺伝子に隣接するポリリンカー部位を含む。当該異種遺伝子をポリリンカーに挿入し、例えばイソプロピル−β−D−トリガラクトピラノシド(IPTG)を用いて誘導することによりlacプロモータから転写される。
【0119】
Renilla reniformisルシフェラーゼをコードするDNAはクローン化されている(例えば、米国特許第5,292,658号明細書及び同第5,418,155号参照)。プラスミドpTZELuc−1は、pTZ18RのEcoRIサイトとSstIサイトに挿入した2.2KbpのEcoRIからSstIDNA断片のRenillaルシフェラーゼをコードする(プラスミドの構築は米国特許第5,292,658号明細書及び同第5,418,155号明細書に記載されている;またLorenzら,“Isolation and Expression of a cDNA encoding Renilla reniformis Luciferase”,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 88:4438−4442(1991)も参照)。RenillaルシフェラーゼcDNAの転写開始はlacZ’プロモータの制御下にある。プラスミドpTZRLuc−1を持つ大腸菌菌株は、バイオルミネセンスアッセイにおいて機能的であり、天然酵素の特性を保持しているRenillaルシフェラーゼを発現する(例えば、米国特許第5,292,658号明細書及び同第5,418,155号明細書参照)。
【0120】
pTZRLuc−1の誘導体であるpTZRLuc−3.6は、同じ大腸菌宿主に形質転換したときに組換え体RenillaルシフェラーゼをpTZRLuc−1に比して約7倍高いレベルで産生する。コンピテント大腸菌菌株XL−1を製造業者の指示に従って精製pTZRLuc−3.6を用いて形質転換した(XL−1スーパーコンピテント細胞及びプロトコル;カリフォルニア州ラ・ホーヤに所在のStratagene,Inc.)。形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを補充したルリアブロス(LB)プレートで平板培養することにより選択した。
【0121】
単一のアンピシリン耐性コロニーを、細胞増殖が中間log相(すなわち、細胞培養物がO.D.600nm=0.6〜0.8単位に達する)に達するまで室温で連続振盪しながら100μg/mlのアンピシリンを補充したLB培地で増殖させた。lacプロモータからの転写は1mMのIPTGを添加することにより誘導し、細胞培養物を室温で更に8時間振盪させた。
【0122】
細胞を10,000×gで遠心して収集し、−20℃で凍結させた。細胞ペレットを融解し、4mg/mlのリゾチーム(Sigma Chemical Corp.)を含有する10mM EDTA(pH8.0)の溶液中に1:5の比率(w/w)で再懸濁させた。細胞を25℃の水浴に30分間置いた後、氷に1時間移した。細胞をUltrasonics,Inc.細胞破壊装置からの1分パルスを用いて0℃で音波溶解した。
【0123】
溶解させた細胞破片を30,000×gで3時間遠心して除去し、上清をデカントし、残した。ペレットを上記した溶液に1:5の比率で再懸濁させ、その後のインキュベーション、溶解及び遠心ステップを繰り返した。2つの上清を合わせ、−70℃で保存した。
【0124】
得られた清澄化ライゼートを組換え体ルシフェラーゼのソースとして使用した。或いは、ライゼートを追加の精製ステップ(例えば、イオン交換クロマトグラフィーまたはイムノアフィニティークロマトグラフィー)にかけてライゼートを更に精製したりまたは精製酵素の均質ソースを提供してもよい(例えば、米国特許第5,292,658号明細書及び同第5,418,155号明細書参照)
【0125】
3.甲殻類動物、特にCyrpidina系
Vargula serrata、hilgendorfii及びnoctilucaのような貝虫は、時々ウミホタルと呼ばれる小さな海洋甲殻類動物である。これらのウミホタルは日本の海岸沖の領海で発見され、水中にルシフェリン及びルシフェラーゼをかけると光を発し、そこで明るい青色に輝く雲状物を発生させる反応が起こる。前記反応にはルシフェリン、ルシフェラーゼ及び分子状酸素のみが関与し、よって本発明の用途には非常に適している。
【0126】
Vargulaバイオルミネセンス発生系のような系は、乾燥及び粉末化するときに成分が室温で安定であり、たとえ汚染されても反応を続けるので本発明では特に好ましい。更に、バイオルミネセント反応を進行せるには、1:40ppb〜1:100ppbほどの低濃度のルシフェリン/ルシフェラーゼ成分、水及び分子状酸素のみが必要である。ルシフェリンを添加することにより消耗した系を再生することができる。
【0127】
a.Vargulaルシフェラーゼ
Vargulaルシフェラーゼは、Vargulaから単離し、適当な細菌及び哺乳動物宿主においてDNAを発現させることにより組換え技術を用いて産生された555アミノ酸ポリペプチドである(例えば、Thompsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86:6567−6571(1989);Inouyeら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 89:9548−9587(1992);Johnsonら,Methods in Enzymology LVII:331−349(1978);Tsujiら,Methods Enzymol. 57:364−72(1978);Tsuji,Biochemistry 13:5204−5209(1974);特開平3−30678号公報(Osaka);及び欧州特許出願公開第0387355号明細書参照)。
【0128】
(1)Cypridinaからの精製
Vargula(Cypridina)ルシフェラーゼの精製方法は公知である。例えば、活性分を含む粗抽出物は、Vargulaシュリンプを砕くかまたは粉砕することにより容易に調製され得る。他の実施態様では、Cypridina hilgendorfiルシフェラーゼの調製物を、凍結保存したC.hilgendorfiを抽出のために0〜30℃(好ましくは0〜10℃)で0.5〜5.0Mの塩(好ましくは0.5〜2.0Mの塩化ナトリウムもしくはカリウム)を含む蒸留水中に1〜48時間(好ましくは10〜24時間)浸した後、疎水性クロマトグラフィー、次いでイオン交換またはアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより調製される(1993年9月14日に公開された特開平4−258288号公報(TORAY);また他の方法についてはTsujiら,Methods Enzymol. 57:364−72(1978)参照)。
【0129】
ルシフェリンは、ルシフェラーゼを破壊するがルシフェリンは無傷のまま残っている抽出物を加熱することにより粉砕乾燥したValgulaから単離され得る(例えば、米国特許第4,853,327号明細書参照)。
【0130】
(2)組換え法による作成
好ましくは、ルシフェラーゼはルシフェラーゼをコードするクローン化DNAを発現することにより産生される(欧州特許出願公開第0387355号明細書;国際特許出願公開第WO90/01542号明細書;また特開平3−30678号公報からの配列を記載している配列番号5、及びThompsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86:6567−6571参照)。ルシフェラーゼをコードするDNAまたはその突然変異体を適当なベクターを用いて大腸菌に導入し、標準的な方法を用いて単離する。
【0131】
b.Vargulaラシフェラーゼ
下記式(III)の化合物のような置換イミダゾピラジン核中の天然ルシフェリン
【0132】
【化4】

【0133】
そのアナログ及び光発生反応においてルシフェラーゼと反応する他の化合物をも使用することができる。
【0134】
Vargulaルシフェリンと反応し得るルシフェラーゼを有する他のバイオルミネセント生物にはApogon属、Parapriacanthus属及びPorichthys属が含まれる。
【0135】
c.反応
酸素と反応するとルシフェリンはジオキセタノン中間体(ホタル環式ペルオキシド分子中間体と類似の環式ペルキシドを含む)を形成する。バイオルミネセント反応の最終ステップで、ペルオキシドは分解してCO及び励起カルボニルを形成する。次いで、励起分子は青色〜青緑色の光を発する。
【0136】
反応の最適pHは約7である。本発明の目的のためには、反応が起こる任意のpHを使用することができる。試薬の濃度は分析反応のために通常使用される濃度またはそれ以上である(例えば、Thompsonら,Gene 96:257−262(1990)参照)。通常、0.1〜10mg/l、好ましくは0.5〜2.5mg/lのルシフェラーゼ濃度を使用する。類似濃度またはより高濃度のルシフェリンを使用してもよい。
【0137】
4.ホタル、コメツキムシ及び他の昆虫系を含めた昆虫バイオルミネセンス発生系
ホタルバイオルミネセンスの生化学は最初に特徴付けられたバイオルミネセンス発生系であり(例えば、Wienhausenら,Photochemistry and Photobiology 42:609−611(1985);McElroyら,Molecular Architecture in Cell Physiology Hayashiら編,Prentice Hall,Inc.,Englewood Cliffs,NJ,pp.63−80(1966)参照)、市販されている(例えば、ウィスコンシン州マジソンに所在のPromega Corporationから市販;例えばLeachら,Methods in Enzymology 133:51−70,特に表1参照)。別の種のホタル由来のルシフェラーゼは抗原的に類似である。これらの種には、Photinus属、Photurins属及びLuciola属のメンバーが含まれる。更に、バイオルミネセント反応は20℃よりも30℃でより多くの光を生じ、ルシフェラーゼは少量のウシ血清アルブミンにより安定化され、反応をトリシンにより緩衝させ得る。
【0138】
a.ルシフェラーゼ
各種昆虫由来のルシフェラーゼをコードするDNAクローン及びコード化ルシフェラーゼを産生するための使用は公知である。例えば、Photinus pyralis、Luciola cruciata由来のルシフェラーゼをコードするDNAクローン(例えば、deWeら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 82:7870−7873(1985);deWetら,Methods in Enzymology 133:3(1986);米国特許第4,968,613号明細書参照;また配列番号3も参照)が入手可能である。前記DNAはSaccharomyces(例えば、1988年12月26日に公開された特開昭63−317079号公報(KIKKOMAN CORP)参照)及びタバコで発現された。
【0139】
野生型ルシフェラーゼの他に、修飾昆虫ルシフェラーゼも産生された。例えば、ルシフェラーゼを産生するための熱安定性ルシフェラーゼ突然変異体、該突然変異体をコードするDNA、ベクター及び形質転換細胞が入手可能である。Photinus pyralis、Luciola mingrelica、L.cruciataまたはL.lateralis由来のルシフェラーゼと60%のアミノ酸相同性を有し、ルシフェラーゼ活性を有するタンパク質が入手可能である(例えば、国際特許出願公開第WO95/25798号明細書参照)。このタンパク質は30℃を越える温度で天然の昆虫ルシフェラーゼよりも安定であり、37℃またはそれ以上の温度でより高い収率で産生され得る。
【0140】
修飾ルシフェラーゼは(天然ルシフェラーゼと比較して)異なる波長で光を発し、よって発色特性に関して選択され得る。例えば、野生型ルシフェラーゼとは異なる波長でバイオルミネセンスを生ずる合成突然変異体甲虫ルシフェラーゼ及び該ルシフェラーゼをコードするDNAは公知である(米国特許出願第08/177,081号(1/3/94)に基づく国際特許出願公開第WO95/18853,Promega Corp.)。突然変異体甲虫ルシフェラーゼは、1つもしくは2つの位置が置換されていることにより対応する野生型Luciola cruciataとは異なるアミノ酸配列を有する(例えば、米国特許第5,182,202号明細書、同第5,219,737号明細書、同第5,352,598号明細書参照)。突然変異体ルシフェラーゼは、野生型ルシフェラーゼが産生するものとは少なくとも1nmだけ異なるピーク強度の波長を有するバイオルミネセンスを生ずる。
【0141】
他の突然変異体ルシフェラーゼも産生された。野生型ルシフェラーゼのアミノ酸配列を有するが233のバリンがイソロイシンに、239のバリンがイソロイシンに、286のセリンがアスパラギンに、326のグリシンがセレンに、433のヒスチジンがチロシンに、または452のプロリンがセリンに置換されているという少なくとも1つの突然変異を有する突然変異型ルシフェラーゼが公知である(例えば、米国特許第5,219,737号明細書及び同第5,330,906号明細書参照)。前記ルシフェラーゼは、各突然変異体ルシフェラーゼをコードするDNAを大腸菌中で発現し、タンパク質を単離することにより産生される。これらのルシフェラーゼは、野生型とは異なる色を有する光を生ずる。突然変異体ルシフェラーゼはルシフェリンを触媒して赤色(λ609nm及び612nm)、橙色(λ595nm及び607nm)または緑色(λ558nm)の光を生ずる。突然変異体ルシフェラーゼの他の物理的及び化学的特性は天然の野生型ルシフェラーゼと実質的に同一である。突然変異体のルシフェラーゼは、Ser286のAsnによる置換、Gly326のSerによる置換、His433のTyrによる置換またはPro452のSerによる置換から選択される変更を含む以外、Luciola cruciataルシフェラーゼアミノ酸配列を有する。熱安定性ルシフェラーゼは入手可能である(例えば、米国特許第5,229,285号明細書参照;また354のグルタメートがリシンで置換されているPhotinusルシフェラーゼ及び356のグルタメートがリシンで置換されているLuciolaルシフェラーゼを提供している国際特許出願第95/25798号明細書参照)。
【0142】
本発明において、特に様々な色が所望されるときまたはより高温度の安定性が所望されるときに好ましいルシフェラーゼの中には、上記した突然変異体ルシフェラーゼ及び野生型ルシフェラーゼが含まれる。ホタルルシフェラーゼがアルカリpH最適値(7.5〜9.5)を有し、よってアルカリpHで実施される診断アッセイで使用するのに好適であることは注目に値する。
【0143】
b.ルシフェリン
ホタルルシフェラーゼはベンゾチアゾールである。
【0144】
【化5】

このルシフェリンのアナログ及び合成ホタルルシフェリンも当業者に公知である(例えば、米国特許第5,374,534号明細書及び同第5,098,828号明細書参照)。これらには、式(V)の化合物が含まれる(例えば、米国特許第5,098,828号明細書参照)。
【0145】
【化6】

上記式中、
はヒドロキシ、アミノ、直鎖もしくは分枝鎖C−C20アルコキシ、C−C20アルケニルオキシ、α−アミノ基を介して結合したL−アミノ酸基、最高10個のL−アミノ酸単位が末端単位のα−アミノ基を介して結合したオリゴペプチド基であり、
は水素、HPO、HSO、任意にフェニル置換された直鎖もしくは分枝鎖C−C20アルコキシまたはC−C20アルケニル、6〜18個の炭素を含有するアリールまたはR−C(O)−であり、
は任意にフェニル置換された直鎖もしくは分枝鎖C−C20アルコキシまたはC−C20アルケニル、6〜18個の炭素を含有するアリール、1〜3個のリン酸基を有するヌクレオチドまたはグリコシド結合したモノ−もしくはジ−サッカライドであり、ただし式(IV)がD−ルシフェリンまたはD−ルシフェリンメチルエステルである場合を除く。
【0146】
c.反応
反応はホタルルシフェラーゼにより触媒され、関連昆虫ルシフェラーゼはATP、Mg2+及び分子状酸素を必要とする。ルシフェリンは外部から添加されなければならない。ホタルルシフェラーゼはホタルルシフェリン活性化及び励起生成物へのその後のステップを触媒する。ルシフェリンはATPと反応してルシフェリルアデニレート中間体を形成する。次いで、この中間体は酸素と反応して、セレンテレート中間体の環式ペルオキシドと類似の環式ルシフェリルペルオキシ種を形成し、この環式ルシフェリルペルオキシ種は分解してCO及び励起状態のカルボニル産物を生ずる。その後、励起分子は黄色の光を発する。しかしながら、色はpHによって変わる。pHが低くなると、バイオルミネセンスの色は黄緑色から赤色に変わる。
【0147】
異なる種のホタルは、反応の色はルシフェラーゼのソースである種に依存するように異なる色のバイオルミネセンスを発する。反応の最適pHは7.8である。
【0148】
消耗した反応にATP及びルシフェリンを添加すると更に発光する。このようにいったん確立された系は比較的簡単に維持される。従って、前記系はグローの持続が望まれるかアイテムの再使用が意図される実施態様において使用するために特に適している。ホタル系の成分はチップと一緒にパッケージされ得る。
【0149】
5.細菌系
発光細菌は通常青−緑色の連続光を発する。強く発現させたとき、1つの細菌は1秒あたり10〜10の光子を放出し得る。細菌バイオルミネセンス発生系には、特にPhotobacterium属、Vibrio属及びXenorhabdus属のバイオルミネセント種に見られる系が含まれる。これらの系は公知であり、十分特徴付けられている(例えば、Baldwinら,Biochemistry 23:3663−3667(1984);Nicoliら,J.Biol.Chem. 249:2393−2396(1974);Welchesら,Biochemistry 20:512−517(1981);Engebrechtら,Methods in Enzymology 133:83−99(1986);Frackmanら,J. of Bacteriology 172:5767−5773(1990);Miyamotoら,Methods in Enzymology 133:70(1986);米国特許第4,581,335号明細書参照)。
【0150】
a.ルシフェラーゼ
Vivrio harveyi(EC 1.14.14.3,アルカノール還元−FMN−酸素オキシドレダクターゼ1−ヒドロキシル化,ルミネッシング)由来のルシフェラーゼにより例示されるような細菌ルシフェラーゼは、2つの異なるタンパク質サブユニットα及びβが結合して形成される混合機能オキシダーゼである。α−サブユニットは約42,000kDの見かけ分子量を有し、β−サブユニットは約37,000kDの見かけ分子量を有する(例えば、Cohnら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 90:102−123(1989)参照)。これらのサブユニットは結合して、バイオルミネセント細菌、例えばVibrio harveyi(米国特許第4,581,335号明細書;Belasら,Science 218:791−793(1982))、Vibrio fischeri(Engebrechtら,Cell 32:773−781(1983);Engebrechtら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 81:4154−4158(1984))及び他の海洋細菌の発光反応を触媒する2鎖複合体ルシフェラーゼ酵素を形成する。
【0151】
細菌ルシフェラーゼ遺伝子はクローン化されている(例えば、米国特許第5,221,623号明細書、同第4,581,335号明細書;欧州特許出願公開第386691号明細書参照)。Vibrio harveyiのような細菌ルシフェラーゼを発現させるためのプラスミドには、pFIT001(NRRL B−18080)、pPALE001(NRRL B−18082)及びpMR19(NRRL B−18081)が含まれ、公知である。例えば、Vibrio fischeri由来の全luxレギュロンの配列は決定されている(Baldwinら,Biochemistry 23:3663−3667(1984);Baldwinら,Biochem. 20:512−517(1981);Baldwinら,Biochem. 23:3663−3667(1984);また米国特許第5,196,318号明細書、同第5,221,623号明細書及び同第4,581,335号明細書参照)。このレギュロンは、自己誘導合成のために必要なタンパク質をコードするluxI遺伝子(例えば、Engebrechtら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 81:4154−4158(1984)参照)、アルデヒド基質と共にルシフェラーゼを与える酵素をコードするluxC、luxD及びluxE遺伝子、並びにルシフェラーゼのα及びβサブユニットをコードするluxA及びluxB遺伝子を含む。
【0152】
他の細菌に由来するlux遺伝子もクローン化されており、入手可能である(例えば、Cohnら,J.Biol.Chem. 260:6139−6146(1985);Vibrio harveyi由来のluxA及びluxB遺伝子の融合を提供している米国特許第5,196,524号明細書参照)。よって、ルシフェラーゼα及びβサブユニットをコードするDNAが提供され、ルシフェラーゼを産生するために使用することができる。α(1065bp)及びβ(984bp)サブユニットをコードするDNA、2124bpのルシフェラーゼ遺伝子をコードするDNA、α及びβサブユニットをコードするDNA、両サブユニットをコードするDNAを含有する組換えベクター、並びにコードされたルシフェラーゼの発現及び産生のための形質転換された大腸菌及び他の細菌宿主は入手可能である。更に、細菌ルシフェラーゼも市販されている。
【0153】
b.ルシフェリン
細菌ルシフェリンは以下を含む。
【0154】
【化7】

Rは例えば
【0155】
【化8】

である。
ここでは、テトラデカナール及び還元フラビンモノヌクレオチドがルシフェリンと考えられる。なぜならば、両者が発光反応中に酸化されるからである。
【0156】
c.反応
細菌系は、バイオルミネセント反応を完結するために還元フラビンに加えて5つのポリペプチド、すなわち細菌ルシフェリンのα及びβの2つのサブユニットとテトラデカナールを供給する脂肪酸レダクターゼ系複合体の3つのユニットを必要とする。本発明で提供される装置及び方法において有用な細菌バイオルミネセンス発生系の例には、Vibrio fisheri及びVibrio harveyi由来のものが含まれる。この系の1つの利点は、低温で操作する能力である。従って、この系は好冷生物の抗生感受性を検出及び監視するためにチップを用いる方法に特に適している。細菌系の全ての成分は氷結させたり0℃以下で保存される溶液中に入れたりすることができる。0℃近い温度でインキュベーション後、チップをより温かい温度に移すことができ、反応は進行し、それにより持続的なグローが提供される。
【0157】
細菌ルシフェラーゼは長鎖アルデヒドのフラビン仲介ヒドロキシル化を触媒して、カルボン酸及び励起フラビンを生ずる。フラビンは基底状態に崩壊し、同時に青緑色の光(λmax=490nm;例えば、Legockiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:9080(1986)参照;米国特許第5,196,824号参照)を発する。
【0158】
【化9】

反応は、還元フラビンモノヌクレオチド(FMNH)を細菌ルシフェラーゼ、酸素及び長鎖アルデヒド、通常n−デシルアルデヒドの混合物と接触させることにより開始され得る。
【0159】
蛍光性細菌Alteromonas hanedai由来のルシフェラーゼをコードするDNAは公知である(1995年8月22日に公開された特開平7−222590号公報,CHISSO CORP参照)。還元フラビンモノヌクレオチド(FMNH;ルシフェリン)は細菌ルシフェラーゼの存在下で酸素と反応して、中間体ペルオキシフラビンを生成する。この中間体は長鎖アルデヒド(テトラデカナール)と反応して、酸及び励起状態のルシフェラーゼ結合ヒドロキシフラビンを形成する。次いで、励起状態のルシフェラーゼ結合ヒドロキシフラビンは光を発し、ルシフェラーゼから酸化フラビンモノヌクレオチド(FMN)及び水として解離する。インビボにおいてFMNは再び還元され、再循環され、アルデヒドは酸から再生される。
【0160】
フラビンレダクターゼはクローン化されている(例えば、米国特許第5,484,723号参照;この特許に記載されている代表的な配列について配列番号14参照)。前記フラビンレダクターゼ及びNAD(P)Hは、細菌ルシフェラーゼ及び長鎖アルデヒドとの反応用にFMNHを再生するための反応に含めることができる。フラビンレダクターゼは、ルシフェラーゼ反応であるFMNのFMNHへの反応を触媒する。従って、仮にルシフェラーゼ及びレダクターゼを反応系に含めた場合、バイオルミネセント反応を維持することができる。すなわち、細菌ルシフェラーゼは何回も代謝回転するので、バイオルミネセンスは長鎖アルデヒドが反応系に存在する限り継続する。
【0161】
バイオルミネセント細菌により生ずる光の色はバイオルミネセント反応に青色蛍光タンパク質(BFP)が関与することから生ずる。このタンパク質は公知であるが(例えば、Leeら,Methods in Enzymology LVII:226−234(1978)参照)、色を変えるために細菌バイオルミネセント反応に添加してもよい。
【0162】
6.他の系
a.渦鞭藻バイオルミネセンス発生系
渦鞭藻では、バイオルミネセンスはシンチロンと呼ばれる細胞小器官で生ずる。これらの細胞小器官は細胞質の細胞液胞へのポケット状突出である。シンチロンは渦鞭藻ルシフェラーゼ及びルシフェリン(その結合タンパク質と共に)のみを含み、他の細胞質成分はどういうわけか含まれていない。渦鞭藻ルシフェリンはクロロフィルに関連するテトラピロールまたはそのアナログである。
【0163】
【化10】

【0164】
ルシフェラーゼは、pH6.5で活性であるがpH8では不活性の135kD短鎖タンパク質である(例えば、Hastings,Bioluminescence and Chemiluminescence,DeLucaら編,Academic Press,NY,pp.343−360(1981)参照)。ルミネセント活性はpH8で調製された抽出物中でpHを8から6に変化させることにより得ることができる。これは可溶性及び粒状画分中で起こる。無傷のシンチロン内で、ルミネセントフラッシュはインビボでのフラッシュ期間である〜100msecの間生ずる。溶液中では、酵素反応の場合のようにキネティックは希釈に依存する。pH8ではルシフェリンはタンパク質(ルシフェリン結合タンパク質)に結合しており、ルシフェリンとルシフェラーゼの反応が防止されている。しかしながら、pH6ではルシフェリンは放出され、遊離となって酵素と反応する。
【0165】
b.LatiaやPholasのような軟体動物由来の系
軟体動物のLatia neritoides及びPholasの種はバイオルミネセント動物である。ルシフェリンは以下の構造を有し、
【0166】
【化11】

【0167】
合成されている(例えば、Shimomuraら,Biochemistry 7:1734−1738(1968);Shimomuraら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 69:2086−2089(1972)参照)。反応はルシフェラーゼ及びルシフェリンの他に第3の成分“紫色タンパク質”を有する。外部から還元剤を添加することにより開始され得る反応は以下のように表される。
【0168】
【化12】

ここで、XHは還元剤である。
【0169】
本発明を実施するためには、反応は紫色タンパク質と還元剤を必要とする。
【0170】
c.地虫及び他の環形動物
Diplocardia longa、Chaetopterus及びHarmonthoeのような地虫種はバイオルミネセンスを示す。ルシフェリンは以下の構造を有する。
【0171】
【化13】

反応はルシフェリン及びルシフェラーゼの他に過酸化水素を必要とする。ルシフェラーゼは発光タンパク質である。
d.グロー蠕虫
ニュージーランド洞窟、オーストラリア及び英国で発見されたグロー蠕虫(glow worms)由来のルシフェラーゼ/ルシフェリン系も本発明で使用され得る。
【0172】
e.海洋多毛類蠕虫系
Phyxotrix及びChaetopterusのような海洋多毛類蠕虫バイオルミネセンス発生系も本発明で使用され得る。
【0173】
f.南米線路甲虫
南米線路甲虫(South American railway beetle)由来のルシフェラーゼ/ルシフェリン系も本発明で使用され得る。
【0174】
g.魚
本発明において興味深いものは、赤色光を生ずるルシフェラーゼ及びバイオルミネセンス発生系である。これらには、Aristostomias scintillans(例えば、O’Dayら,Vision Res. 14:545−550(1974)参照)のようなAristostomias、Pachystomias、Malacosteus nigerのようなMalacosteusの種で発見されたルシフェラーゼが含まれる。
【0175】
7.蛍光タンパク質
a.緑色及び青色蛍光タンパク質
本明細書に記載されているように、青色光はCa2+及びセレンテラジンルシフェリンまたはそのアナログの存在下でRenillaルシフェラーゼまたはAequorea発光タンパク質を用いて生ずる。この光は、反応に緑色蛍光タンパク質(GFP)を添加すると緑色光に変換され得る。精製され(例えば、Prasherら,Gene 111:229−233(1992)参照)、クローン化もされている(例えば、援用により本明細書に含まれるとする米国特許出願第08/119,678号及び同第08/192,274号に基づく国際特許出願公開第WO95/07463号明細書参照)緑色蛍光タンパク質はエネルギー変換アクセプタとして腔腸動物により使用される。インビボにおいてGFPはルシフェラーゼ−オキシルシフェリン励起状態複合体またはCa2+活性化発光タンパク質からエネルギーを受けると蛍光発光する。発色団はポリペプチド内のアミノ残基を修飾する。最も特徴付けられているGPFは、Aequorea及びRenillaのGPFである(例えば、Prasherら,Gene 111:229−233(1992);Hartら,Biochemistry 18:2204−2210(1979)参照)。例えば、Aequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)は238アミノ酸を含み、青色光を吸収し、緑色光を発する。従って、このタンパク質をセレンテラジン及び酸素を充填したエクオリン発光タンパク質含有組成物中に含めると、カルシウムの存在下で緑色光を生成させ得る。従って、GFPは、生じたバイオルミネセンスの色を強くしたりまたは変更するためにエクオリンまたはRenillaルシフェラーゼまたは他の適当なルシフェラーゼを用いるバイオルミネセンス発生系に含有させることができる。
【0176】
GFPは青色光により活性化されて緑色光を発し、よってルシフェラーゼの非存在下、本明細書に記載の新規アイテムと外部光源と共に使用することができる。同様に、Vibrio fischeri、Vibrio harveyiまたはPhotobacterium phosphoreumのような青色蛍光タンパク質(BFP)は、青色光を生ずるために適切な波長を有する外部光源と共に使用することができる(例えば、Karataniら,“A blue fluorescent protein from a yellow−emitting luminous bacterium”,Photochem.Photobiol. 55(2):293−299(1992);Leeら,“Purification of a blue−fluorescent protein from the bioluminescent bacterium Photobacterium phosphoreum”,Methods Enzymol.(Biolumin.Chemilumin.)57:226−234(1978);及びGastら,“Separation of a blue fluorescence protein from bacterial luciferase”,Biochem.Biophys.Res.Commun. 80(1):14−21(1978)参照、これらの文献はそれぞれ援用により本明細書に含まれるとする)。特に、GFP及び/またはBFPまたは他の蛍光タンパク質は、アナライトを複数位置で1つ以上の抗リガンド−GFPコンジュゲートに結合させ、蛍光タンパク質を蛍光発光させるために適当な波長を有する光をチップに照射して、生じた蛍光をチップ中のフォトダイオードにより検出することにより感染性物質を検出するための本発明の方法に使用され得る。
【0177】
GFP及び/またはBFPまたは他の蛍光タンパク質は、本明細書に記載のチップまたはデバイスと一緒に使用され得る。前記蛍光タンパク質は色のアレーを生成するために単独でまたはバイオルミネセンス発生系と組み合わせて使用され得る。前記蛍光タンパク質は、チップのフォトダイオードによる検出のために使用される光の量を最大にすべく生じた光の例えば色を変更できるように組み合わせることができる。
【0178】
b.フィコビリンタンパク質
フィコビリンタンパク質はシアノバクテリア及び真核藻類由来の水溶性蛍光タンパク質である(例えば、Aptら,J.Mol.Biol. 238:79−96(1995);Glazer,Ann.Rev.Microbiol. 36:173−198(1982);及びFairchildら,J.Biol.Chem. 269:8686−8694(1994)参照)。前記タンパク質はイムノアッセイにおいて蛍光標識として使用された(例えば、Kronick,J.of Immunolog.Meth. 92:1−13(1986)参照)。前記タンパク質は単離され、該タンパク質をコードするDNAも入手可能である(例えば、Pilotら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 81:6983−6987(1984);Luiら,Plant Physiol. 103:293−294(1993);及びHoumardら,J.Bacteriol. 170:5512−5521(1988)参照)。前記タンパク質は例えばカリフォルニア州サンリアンドロに所在のProZyme Inc.から市販されている。
【0179】
これらの生物において、フィコビリンタンパク質はフィコビリソームと呼ばれる細胞下構造に配列されており、可視光線を吸収し、誘導エネルギーを直接蛍光エネルギー伝達メカニズムによりクロロフィルに移動することにより光合成反応に関与する補助色素として機能する。
【0180】
その色に基づいて、それぞれ490〜570nm及び610〜665nmの吸収極大を有すると報告されているフィコエリトリン(赤色)及びフィコシアニン(青色)の2種のフィコビリンタンパク質が公知である。フィコエリトリン及びフィコシアニンは、1種以上の線状テトラピロール発色団が共有結合しているα及びβモノマーを異なる比率で含む不均質複合体である。特定のフィコビリンタンパク質はしばしば(αβ)凝集タンパク質と結合している第3のγサブユニットをも含む。
【0181】
フィコビリンタンパク質はすべてフィコトロンビリンまたはフィコエリトビリン発色団を含み、フィコウロビリン、クリプトビオリンまたは697nmビリンのような他のビリンをも含み得る。γサブユニットはフィコウロビリンと共有結合して、B−及びR−フィコエリトリンの490〜500nm吸収ピークが生ずる。従って、フィコビリンタンパク質は、フィコビリンタンパク質の3次及び4次構造に影響を及ぼす異なる発色団、アポフィコビリンタンパク質のサブユニット組成及び/または局部的環境の組合せにより影響され得る。
【0182】
GFP及びBFPについて上記したように、フィコビリンタンパク質も適当な波長を有する可視光により活性化され、よってフィコビリンタンパク質はルシフェラーゼの非存在下、アナライトを検出した複数位置でチップに結合したフィコビリンタンパク質を照射するための外部光源と一緒に使用され得る。特に、フィコビリンタンパク質は標的アナライトに対して特異的な1つ以上の抗リガンドに共有結合し、適当な波長の光を照射して蛍光タンパク質を蛍光発光させることができ、蛍光をアレーの特定位置でチップのフォトダイオードにより測定する。データ信号をコンピュータプロセッサに送り、分析する。上記したように、前記タンパク質は複数の色のアレーを生成するためまたはチップのフォトダイオードにより検出可能な経時的に異なる色を与えるために他の蛍光タンパク質及び/またはバイオルミネセンス発生系と組み合わせて使用することができる。
【0183】
フィコビリンタンパク質の固体支持体マトリックスへの結合は公知である(例えば、米国特許第4,714,682号明細書、同第4,767,206号明細書、同第4,774,189号明細書及び同第4,867,908号明細書参照)。従って、フィコビリンタンパク質は、バイオルミネセント反応から生じた光の波長を変えるためにバイオルミネセント反応の1つ以上の成分、好ましくはルシフェラーゼに結合したミクロ担体に結合させることができる。1つ以上のフィコビリンタンパク質に結合したミクロ担体は、本発明の方法に使用される抗リガンドまたはチップに結合させるときに使用され得る。
【0184】
C.チップの設計、製造及び使用
本発明では診断デバイスとして使用されるチップが提供される。このチップは非自己アドレス可能または自己アドレス可能であり得、通常96メンバーまたはそれ以上に密なアレーまたは本明細書に記載されているようなアレーの形態を有する。
【0185】
1.非自己アドレス可能チップ
図1を参照すると、バイオルミネセンスを用いて生物学的サンプル中のアナライトを検出し、同定するための非自己アドレス可能な超小型電子デバイス100は、アドレス制御回路102、光検出器アレー104、アナログマルチプレクサー106、比較器108、基準回路110、フィードバック制御回路112及び出力制御回路114を含む。アドレス制御回路102は外部発振器からのクロック入力信号116を受け取り、出力制御回路114はデータ出力信号118を発生する。デバイス100はまた、外部電源(例えば、AC−DCコンバータ)からそれぞれ電力及び接地を受けるための電気接続120及び122をも含む。従って、デバイス100は4つの電気接続、すなわちクロック入力信号116、データ出力信号118、電力120及び接地122のみを必要とする。
【0186】
アドレス制御回路102はクロック入力信号116を受け取り、バス124−128上でアドレス信号を発生させ、前記バスはアドレス信号に応じてアレー104内の各画素素子を順次アドレス指定する。各画素素子は、画素をアドレスするために使用される行及び列アドレスを有する。アドレス制御回路102は、バス124上に表明された行アドレスを用いてアレー104内の画素素子の各行を順次アドレス指定する。各行について、アドレス制御回路102はバス126上にアナログマルチプレクサー106により選択信号として使用されるアドレス信号を発生し、またバス128上に下記するように画素素子に対してフィードバック信号を発生させるためにフィードバック制御回路112により使用されるアドレス信号をも発生する。アドレス制御回路102は、アドレス制御回路102、アレー104、マルチプレクサー106及び/またはフィードバック制御回路112に配置されている1つ以上のアドレスデコード回路により個々の行及び列アドレス許可信号にデコードされる二値アドレス信号を発生する。電子回路におけるアレーのアドレス指定は当業者に公知である。
【0187】
アレー104はアドレス制御回路102からの行アドレス信号124及びフィードバック制御回路112からのフィードバック信号130を受け取る。アレー104内の各素子は光検出器を含み、この光検出器は該光検出器に光学的に結合した化学反応からの光の光子を受け取る。これらの入力に基づいて、アレー104はアナログマルチプレクサー106に加えられるアナログ列出力信号132を発生する。アレーは、画素素子の各行をアドレス指定するために行アドレス信号124を使用し、下記する各画素素子でデルタ−シグマ−アナログ・デジタル(A/D)変換を実施するときにはフィードバック信号130を使用し、デルタ−シグマA/D変換でも使用される列出力信号132を発生する。
【0188】
アナログマルチプレクサー106は、列出力信号132を多重化アナログ出力信号134に多重化するためにアドレス信号126を使用する。比較器108は多重化出力信号134を基準回路110が発生した基準信号136(例えば、基準電流)と比較し、比較の結果に基づいて量子化出力信号138を発生する。量子化出力信号138及びアドレス信号128はフィードバック制御回路112により使用されると、下記するようにアレー104に加えられるフィードバック信号130を発生する。また、アレー104中の各素子で検出される光の光子を示す量子化出力信号138が出力制御信号114により使用されると、データ出力信号118が発生する。
【0189】
1つの実施態様では、出力制御回路114は量子化出力信号138をアレー104中の各画素素子で検出される光を示すRS−232直列データストリームにフォーマットする。外部機器またはコンピュータで、受領したRS−232直列データストリームをアレー104中の特定画素素子と相関させるために、出力制御回路114は直列データストリームを同期信号(sync)により分離されたフレームに伝送する。各フレームはアレー104中の各画素素子に対する出力データ信号を含み、sync信号は各データフレームの開始を同定するためのコントロール信号として使用される任意の値(例えば、バイトは0.255の値を有する)である。外部コンピュータは、受領したフレームデータをアレー104中の適当な画素素子に相関させる前にsync信号を待つ。或いは、出力制御回路114は画素素子を同定する直列データストリームに標識を含み得る。並列データインターフェースを使用することもできる。
【0190】
以下の記載から明らかとなるように、アレー104は、デバイス100のために使用される半導体基板の表面上の複数のミクロ位置のアレーに配置された画素素子を含む。各素子は、各ミクロ位置で光学的に結合した化学反応により発せられる光の光子を受け取るため且つ受け取った光子を電荷に変換するための光検出器を含む。各素子は電荷を積算するために容量性回路を有する画素単位格子回路をも含む。積算された電荷はデルタ−シグマA/D変換方法を用いて量子化され、デジタル信号は外部コンピュータに連動する直列データ出力ストリームに多重化される。コンピュータはコントロールプログラムを実行して、所望の分解能に応じて数秒から数時間に亘る所望積算期間デルタ−シグマ信号を積算する。1つの実施態様では、デルタ−シグマA/D変換は56Kボーインターフェースに対して計測し、約10秒の積算時間では12ビット分解能、約3分の時間では16ビット分解能を達成する。
【0191】
図2を参照すると、デバイス100はその表面上に規定されたアレー104を有する半導体基板またはダイ140を含む。アレー104は複数のミクロ位置142のアレー及び各ミクロ位置に光学的に結合した独立光検出器144を含む。(明瞭にするために図2には各行の最左のミクロ位置142及び光検出器144のみをラベルしている。)アレー104は、サイズが異なる3つのミクロ位置142を有する3つのサブアレー146、148及び150を含む。サブアレー146は50ミクロン平方画素の4×16アレー、サブアレー148は100ミクロン平方画素の2×8アレー、及びサブアレー150は200ミクロン平方画素の1×4アレーを含む。光検出器144は各ミクロ位置142でダイ140の表面の一部の上に配置されている。光検出器144が占める部分は大きな画素素子の場合表面の約90%、より小さい画素素子の場合約50%である。1つの実施態様では、光検出器は144はその表面に入射する光の光子を光電流に変換するシリコン光検出器である。この変換の量子効率は500〜800nmの波長で約40%である(すなわち、受容した光の100光子につき40電子の光電流が発生する)。すなわち、フォトダイオード144は低光子レベルを測定可能な信号に変換することができる。基板140の表面は、デバイス100に適用される流体サンプルの収容を助けるために各ミクロ位置142でわずかに(例えば、1ミクロン)凹んでいる。
【0192】
アレー104は、デバイス100を低コストで製造するために比較的小さいダイ140(例えば、2.4×2.4mm)で形成される。ダイ140は、その上に形成されたデバイス100の電子回路(図2には図示せず)をも有し、ダイ140の外周辺はダイ上に形成されたトレースを介して電子回路に接続するボンディングパッド152を含む。パッド152は図3に示すようにワイヤーボンドまたは他のコンダクタによりダイ140の超小型電子パッケージの外部リードまたはコンダクタに結合している。パッド152はクロック入力信号116、データ出力信号118、電力120、接地122及び所望により各種試験信号のためのパッドを含む。1つの実施態様では、超小型電子デバイス100は当業者に公知の標準CMOS方法を用いて製造される一体化回路デバイスである。
【0193】
アレー104中の大きな(例えば、200um)画素素子は小さな(例えば、50um)画素素子に比して低濃度アナライトの検出に対してより高い感度を有する。なぜならば、本明細書で説明するように化学反応が各ミクロ位置で起こったときにより多くの光子が放出されるように多数の受容体抗体が広い表面積に結合し得るからである。より多くのアッセイを同時に実施し得るように所与のダイサイズで大きなマトリックスを形成するためにより小さな画素を使用することができる。特定のアナライトを検出するための最適画素サイズは実験的に決定され得る。デバイス100上にサイズの異なる画素素子を使用することには2つの利点がある。第1は、高感受性を必要とするアナライトを検出するためにはより大きな画素素子を使用することができ、低感受性を有するアナライトのためにマトリックス中の画素素子の数を多くするためにはより小さな画素素子を使用することができる。第2に、特定アナライトに対する最適サイズを実験的に決定するために異なるサイズを使用することができ、最適サイズを他の実施態様のアレー104に対して使用される。
【0194】
アレー104の代替配置は当業者には明らかである。例えば、アレー104は(図2に示すように)サイズの異なる画素素子のサブアレーを含み得、またはアレーは単一の画素サイズ(例えば、50ミクロン画素の12×16アレー)を有する。各画素のサイズ(例えば、図2では50、100、200ミクロン)は変更可能である(例えば、400ミクロンの画素を使用し得る)。また、アレーまたはサブアレー(例えば、図2には4×16、2×8または1×16)中の画素の数は、n行及びm列(n及びmは整数)を有するn×mアレーまたはサブアレーを含むように変更させ得る。更に、各画素素子に対して正方形以外の形状(例えば、長方形または円形)を使用し得る。より大きなダイを使用するとデバイス100のコストは高くなるが、ダイ140のサイズは異なる配置のアレー104を収容するように変更し得る。クロック入力信号116、データ出力信号118、電力120及び接地122のための別個のパッドがあるが(図1)、ダイ140はより多くもしくはより少ないボンディングパッド152を含めることができる。
【0195】
図3及び3Aを参照すると、ダイ140は40ピンまたはリード156を有するセラミック製デュアルインラインパッケージ(DIP)154に収容されている。4つのピン156がクロック入力信号116、データ出力信号118、電力120及び接地122のためである。他のピン156はテスト信号のために使用される。他の超小型電子パッケージ、例えば4つの必須コンダクタを含めたより多いもしくはより少ないコンダクタを有するプラスチック製パッケージも使用することができる。
【0196】
パッケージ154は、上表面160を有する上層158、上表面164を有する中間層162及び上表面168を有する下層166を有する。層158及び162は非導電性誘電材料(セラミック)から製造され、下層166はパッケージ154の接地ピン156に電気的に結合した導電性接地プレーン170を形成する。上層158の上表面160は第1の四角開口172を有する。上表面160上に形成された接地コンダクタトレース174は開口172を包囲し、パッケージ154の外周辺に形成されたカット180を通過して接地プレーン170に結合している、同じく上表面160上に形成された接地トレース176により接地に電気的に結合している。開口172は、第2四角開口182を有する中間層162の四角い部分を示す。第2開口182の大きさは、中間層162の上表面164の一部がパッケージ154の上から見えるように第1開口172の大きさよりも小さい。上表面164の目に見える部分は導電性パッド184を有し、この導電性パッド184は層158と162の間を通過するトレース(部分的に示す)を介してパッケージ154のピン156に電気的に接続している。開口182は、適当な接着剤186を用いて接着させたダイ140を有する接地プレーン170の四角い部分を示す。ダイ140の各ボンディングパッド152は結合ワイヤー188により1つの導電性パッド184に電気的に接続している。
【0197】
結合ワイヤー188は分析すべき流体サンプルに対して不浸透性の材料(例えば、エポキシ)で被覆されている。ピン156を除くパッケージ154の他の導電性構成部分も流体サンプルとの直接接触を防止するために前記材料で被覆してよい。パッケージ154のピン156は、パッケージ154を外部コンピュータまたは機器で読みとるときに該外部コンピュータまたは機器とピン156が電気的に接触するように前記材料で被覆しない。
【0198】
アッセイを実施する場合、分析すべき流体サンプルは開口172及び182を介してパッケージ内に収容されたダイ140(及びその上に形成されたミクロ位置)に適用される。流体サンプルをピペットを用いて開口172及び182により形成された試験ウェルに移すかまたは簡単にはサンプルが充填されている容器(図示せず)中にパッケージ154を浸すことにより流体サンプルは適用される。デバイス100の各電気構成部分は、パッケージ154それ自体の材料またはエポキシコーティングによりサンプルから保護されている。流体サンプルを適用後、ミクロ位置142に光学的に結合させた発光反応を生じさせるのに必要な残りの成分も開口172及び182を介してダイ140の表面に適用される。次いで、生じた発光反応を図4に関連して以下に記載する光検出器144を用いて検出する。
【0199】
図4を参照すると、アレー104中の各画素素子の光検出器144は関連する画素単位格子回路200を含む。好ましくは、各光検出器144はその表面に入射する光202の光子に応じて検知信号(すなわち、光電流)を発生するフォトダイオードである。各画素単位格子回路200はこの検知信号を積算し、積算した信号をデルタ−シグマA/D変換方法を用いて量子化する。回路200は図番204−212で示される5つのMOSFETトランジスタT−Tを含み、各トランジスタはゲート端子G、ソース端子S(矢印は酸化層に対する方向を示す)、ドレーン端子D及びベース端子(ラベルなし)を有する。トランジスタTのゲートGは214で示す行許可入力信号Renに接続しており、そのソースSは電力供給電圧VDDに接続しており、そのドレインDはTのソースSに接続している。トランジスタTのゲートGは216で示すフィードバック許可信号Fenに接続しており、そのソースSはTのドレインDに接続しており、そのドレインDはノード3においてTのソースSに接続している。トランジスタTのゲートGは218で示す次の行許可信号Ren1に接続しており、そのソースSはノード3に接続しており、そのドレインDはノード1においてTのゲートGに接続している。フォトダイオード144のカソードもノード1に接続しており、そのアノードは接地に接続している。トランジスタTのゲートGはノード1に接続しており、そのソースSはVDDに接続しており、そのドレインDはノード2においてTのソースSに接続している。トランジスタTのゲートGはRen(214)に接続しており、そのソースSはノード2に接続しており、そのドレインDは出力端子220に接続している。各トランジスタT−TのベースはVDDに接続している。トランジスタTはトランジスタ間の僅かに狭い間隔を置いてそのゲートGに対してポリシリコンの第2層を使用し、トランジスタT及びT−Tはポリシリコンの第1層のみを使用する。
【0200】
で示されるフォトダイオード144を流れる電流は2つの成分を含む。第1成分は、フォトダイオード144を流れる一定値を有する漏れ電流である。第2成分は、フォトダイオードの量子効率を考慮して場合により各ミクロ位置142に光学的に結合した、発光化学反応のためにフォトダイオード144に入射する光子02により生ずる電流である。電流Iは、漏れ電流及びフォトダイオード144に入射する光子の数に依存する割合でノード1を接地に対して放電する。ノード1は大量の光を受け取ったときには比較的素早く、光が殆どもしくは全く存在しないときには比較的ゆっくり放電する。光が存在しないときでも、ノード1はIの漏れ成分のために放電する。Iの光電流成分は、発光反応が起こらないときには暗読みとり値を取り、反応が起こるときには試験読みとり値を取り、暗読みとり値を用いて試験読みとり値を補正することにより(例えば、試験読みとり値から暗読みとり値を引くことにより)漏れ電流成分から分離することができる。暗読みとり値を実際の試験を実施する前及び/またはその後に得ることができる。
【0201】
少しの間図1に戻ると、出力端子220から流れる出力電流IOUTは、アナログマルチプレクサ106により多重化されて比較器108に入力される多重化出力信号134を形成する列出力信号132である。比較器108は検知信号が電流であるのでIOUTを一定電圧に維持し、信号134と基準電流136との比較に基づいて量子化出力信号138を発生する。フィードバック制御回路112は量子化出力信号138及びアドレス信号128に基づいてフィードバック信号130を発生し、この信号130は許可信号Fen(216)を形成する。各画素素子のFenは、次の画素素子がアドレス指定される間発生する。アドレス制御回路102が次の行の画素素子をアドレス指定して、Ren(214)をその行に対して表明させると、次の行許可信号Ren1(218)も当業界で公知のアドレスデコード回路を用いて前の列の画素素子に対して表明される。
【0202】
図4に戻ると、画素単位格子回路200は以下のように作動する。フォトダイオード144に入射した光子202は、受け取った光の光子の数、フォトダイオードの量子効率及び一定の漏れ電流に依存する割合でノード1を放電する電流Iを発生する。この画素素子がアドレス制御回路102によりアドレス指定される(すなわち、Renが活性化される)と、トランジスタT及びTが作動する(すなわち、導電性になる)。Tが導電性で、出力端子220が比較器108によりVDD未満の一定電圧に保持される場合、トランジスタTはVDD−V間の差及びノード1における電圧に比例して電流を生ずる。Vはトランジスタしきい値電圧(例えば、約1V)である。この電流はIOUTとしてトランジスタTを流れる。マルチプレクサ106を通過した後、IOUTを差動電流増幅器を含む比較器を用いて基準電流136と比較する。量子化出力信号138は、IOUTが基準電流136未満のときには比較器108により0にリセットされ、IOUTが基準電流136より大きいときには1にセットされる。
【0203】
OUTが基準電流136未満(すなわち、量子化出力信号138=0)のとき、フィードバック制御回路112はフィードバック信号130(すなわち、Fen=0)の割り込みを抑制して、トランジスタTを非導電性状態に維持する。従って、ノード3における電圧は変化を受けず、Iはノード1を放電し続ける。IOUTが基準電流136を越えるとき(すなわち、量子化出力信号138=1)、フィードバック制御回路112はフィード信号130(すなわち、Fen=1)を作動させて、TをRenによりなお作動させながらTを作動させる。これにより、ノード3における静電容量(すなわち、MOSFETの固有ソース及びドレイン−バルク静電容量)はVDDにセットされる。T及びTのトランジスタはその直線領域に入り、電流が流れないので、TまたはTを横切る明白な電圧低下はない。次の行をアドレス指定する(Ren1を1にセットする)と、容量性回路上の電荷がノード1に移り、ノード1における電圧が上昇する。従って、IOUTが基準電流136を越えて遷移するときにはいつでも容量性回路は初期電圧にリセットされる。この電荷移動は切換容量性回路において一般的であり、当業者に公知である。ノード1の放電が比較器108をトリップさせるに十分になる前の期間Iは静電容量を放電するので、静電容量はフォトダイオード144を流れるIを効果的に積算する。
【0204】
初期値にリセットされた後、IOUTが再び基準電流136を越え、ノード1が再び再充電されるまでノード1における静電容量も再びIの大きさに依存する割合でフォトダイオード144により放電される。従って、ノード1は、基準電流136を生成するためにTが必要とする電圧値に近い電圧に維持される。比較器108が超過した基準電流136を検知する回数(すなわち、比較器ポジティブ遷移“comparator positive transitions”)はフォトダイオード144を流れた総電荷に比例する。上記したように、Iは一定漏れ電流と検知した光子202による電流の和である。よって、ある期間中の比較器ポジティブ遷移の数をフォトダイオード144を流れる漏れ電流に対して暗読みとり値を引くことにより調節した後その数をacc放出反応のために使用することができる。上記したように、量子化出力信号138は、データ出力信号118として外部コンピュータに伝送されるRS−232直列データストリームにフォーマットされる。
【0205】
図5を参照すると、デバイス100の操作中のノード1、2及び3の電圧が示されている。ノード1、2及び3の電圧をそれぞれ曲線222、224及び226で示す。x軸は時間(msec)、y軸は電圧(V)を示す。ノード1及び3における電圧は、曲線222及び226の下向き勾配部分の殆どの間本質的に等しく、違いは図5に示す通りである。各サイクルの開始時(すなわち、ノード3で電圧が大きくスパイクする度に生ずる各比較器ポジティブ遷移時)、ノード1の電圧はノード3がVDDにセットされるときの初期値に再充電される。その後、ノード1は、フォトダイオード144により検出される光の量に依存する割合でIにより放電される。フォトダイオード144が比較的大量の光を受け取るときには曲線222の勾配は急激に減少し、フォトダイオード144が光を殆どもしくは全く受け取らないときには勾配は緩やかに減少する。ノード1における電圧とVDD−Vの差により生ずる電流IOUTを画素をアドレス指定する度に(約0.1msec毎に)基準電流136と比較する。IOUTが基準電流136未満のときには、回路200はノード1を放電し続けることによりフォトダイオード144からの検知信号を積算し、ノード1の電圧は曲線222に示すように低下する。IOUTが基準電流136を越えるときには、Fenによりノード3における静電容量がVDDにリセットされる。その後、次の行がアドレス指定されると(すなわち、Ren1がセットされる)、この容量性回路上の電荷がノード1に移され、それによりノード1の電圧が高まる。このサイクルは積算期間中繰り返される。外部コンピュータは、データ出力信号118を用いて積算期間中に生じる比較器ポジティブ遷移の数を計数する。積算が完了したら、コンピュータは暗読みとり値を用いて漏れ電流を補正する。補正した計数が流体サンプル中のアナライトの濃度に比例する。
【0206】
図6を参照すると、発光反応を用いて流体サンプル中のアナライトを検出・同定するためのシステム300はアダプタ回路ボード302、コンピュータ304,入力デバイス306及び出力デバイス308を含む、システム300は試験機器を形成する。ボード302は分析すべき流体サンプルに浸漬させ、次いで発光化学反応の残りの成分に接触させた後、パッケージ154内に収容されているデバイス100を受容するための無挿入力(ZIF)ソケット(図示せず)を含む。ボード302はクロック入力信号116を発生させるための発振器回路310及び外部AC電源314からのAC電力を受け取り、そこからDC電力信号を発生させるためのAC−DC電源312をも含む。RS−232直列データケーブル316は、ボード302からの直列データ出力信号をコンピュータ304に運ぶ。
【0207】
コンピュータ304は処理回路318,記憶回路320及び直列インターフェース回路322を含む。処理回路318は、入力デバイス306からの入力信号324を受け取り、出力信号326をI/Oインターフェース回路(図示せず)を介して出力デバイス308に伝送するマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラのような中央処理装置を含む。記憶回路320は、揮発性メモリ及び非揮発性メモリを含めた3つの記憶領域328−332を含む。記憶領域328は処理回路318により実行される制御プログラム及び実行中に必要な固定及び可変データ(例えば校正及び実験テストデータ)を蓄積している。任意の記憶領域330はアレー104中の各ミクロ位置で試験される特定アナライトを同定するために処理回路318により使用されるアナライトマップを蓄積している。マップがあるとき、処理回路318は、受け取ったデータ出力信号118をマップ中の同定されるアナライトと相関させることにより流体サンプル中で検出されたアナライトを同定し、出力信号326を発生して出力デバイス308で検出したアナライトを同定するためのプログラムを組み込むことができる。記憶領域332は、積算期間中に各画素素子に対する比較器ポジティブ遷移を蓄積させるために処理回路318により使用されるデータ獲得アレーを蓄積する。この期間に受け取った比較器ポジティブ遷移の数が各画素素子で光検出器144が受け取った光の数を示す。
【0208】
入力デバイス306は、例えばキーボード、マウス、タッチスクリーンまたはシステム300の動作を制御するために使用される入力信号324を発生させるための他の入力デバイスを含む、デバイス306からの入力信号324により、使用者は例えばシステム300の動作のスタート・ストップ、アナライトマップデータの入力、所望積算時間の入力、及び分析すべき流体サンプル中のアナライトを検出及び同定するために処理回路318が必要な他のデータまたはコマンドの入力を行うことができる。入力信号324は、所定の配置のアレー104を有する特定デバイス100を読みとるべくコンピュータ304を構成するために使用することもできる。出力デバイス308は、出力信号326に応じて分析される流体サンプル中の存在及び/または濃度を表示するための電子ディスプレイを含み得る。出力デバイス308は前記データを表示するためのプリンタをも含み得る。
【0209】
1つの実施態様において、使用者は試験を始める前に所望の積算時間を入力デバイス306を用いてコンピュータ304に入力する。例えば、使用者は12ビット分解能の場合10秒、16ビット分解能の場合3分を入力する。次いで、使用者は分析すべき流体サンプルを(例えば、サンプルを保持している容器中にパッケージ154を浸すことにより)デバイス100に適用し、発光反応の残りの成分を添加し、パッケージ154をボード302上のZIFソケットに挿入する。その後、デバイス100はケーブル上の複数のデータフレームをコンピュータ304に伝送する。各フレームはアレー104中の各画素素子につき量子化デルタ−シグマA/D変換データを含む。処理回路318はデータフレームの開始を決定するためにsyncバイトを待機する。いったんフレームが開始すると、処理回路318は(アレー104の公知の配置に基づいて)各フレームで受け取ったデータをアレー104中のミクロ位置142と相関させ、各ミクロ位置142と相関させた出力データ信号をデータ獲得アレー332中のそれぞれの位置の比較器ポジティブ遷移を蓄積することにより積算する。遷移は所望の積算期間蓄積される。積算期間が終了したら、処理回路318は積算データを補正して、(発光反応を始める前にボード302にパッケージ154を挿入することにより)既に得た暗読みとり値に基づいて光検出器144により漏れ電流を補正する。この時点で、アレー332の各位置における補正データは試験される流体サンプル中のアナライトの存在に関連している。次いで、処理回路318は出力信号326を発生し、この出力信号326が出力デバイス308に適用されると出力デバイス308が補正データを表示する。この補正データは、公知濃度のアナライトを用いて実験的に求めた関係により試験した各アナライトの存在及び/または濃度と相関している。
【0210】
別の実施態様では、試験を始める前に、アレー104中の各ミクロ位置142において試験されるアナライトの身元を含む任意のアナライトマップを(恐らく入力デバイス306を用いて)記憶領域330に組み入れた。次いで、出力デバイス308上に表示するために補正データを簡便に出力する代わりに、処理回路318はアナライトを同定するためにデータ獲得アレー332中の位置をアナライトマップと相関させる別のステップを実施し、補正データが示すアナライトを同定するために出力信号326を発生する。
【0211】
更に別の実施態様では、記憶領域328に蓄積されているデータは分析する流体サンプル中の各アナライトの存在を示すしきい値データを含む。各アナライトに関するしきい値データは、既知の最小濃度のアナライトを含む流体サンプルを用いて実験的に決定され得るか、または単に暗読みとり値からのオフセットとして蓄積され得る。その後、処理回路318はしきい値に対して補正データ(またはオフセットを使用するときには暗読みとり値に対して未補正データ)を比較して、分析される流体サンプル中にアナライトが存在するかを調べる。その後、流体サンプル中に存在するアナライトが表示または印刷されるように出力信号326を発生させる。この実施態様では、アナライトマップを使用して処理回路318によりサンプル流体中の存在を検出するアナライトを同定することができる。
【0212】
更に別の実施態様では、記憶領域328内のデータは補正データと試験されるアナライトの濃度との関係を示す実験的に求めた方程式、曲線または表を含む。前記方程式、曲線または表を求める方法は当業界で公知であり、その方法にはコンピュータ曲線のあてはめ法が含まれ得る。処理回路318はサンプル中の各アナライトの濃度を決定するために補正データを上記方程式、曲線または表に対する入力データとして使用する。サンプル中に存在するアナライトの濃度を表示または印刷するように出力信号326が発生する。この実施態様でも、処理回路318によりサンプル流体中の濃度を決定したアナライトを同定するためにアナライトマップを含むことができる。
【0213】
システム300はデバイス100を評価するために有用なキットを提供する。このシステムでは使用者がパッケージ154を直接取り扱う必要があり、そのためピン156が機械的に損傷したり、回路100が静電放電により損傷する恐れがある。使用者が直接取り扱う必要がなくなるように、デバイス100を図7に示すように使い捨て試験回路ボード400上に載置させることができる。デバイス100をセラミックDIPパッケージ154にパツケージしたり、またはボード400上に載置される別の形式の超小型電子パッケージ402(例えば、リードレスチップ担体)にパツケージすることができる。多種多様の超小型電子パッケージが当業界で公知である。使用者がボード400を取り扱うだけで十分であり、パッケージ402を直接取り扱う必要がないようにパッケージ402をボード400に接着(例えば蝋接)させる。
【0214】
パッケージ402は、それぞれクロック入力信号、データ出力信号、電力及び接地のためのボード上400に形成されたトレース116−122に電気的に結合されるリードまたはピン156を含む。パッケージ402が高圧用途のコストを下げるために上記した4つのピンのみを使用することができる。トレース116−122はコネクタ406に連結しているケーブル404に電気的に結合しており、コネクタ406は試験機器またはコンピュータ上の合わせコネクタに結合している。パッケージ402、トレース116−122及びボード400の表面の導線はエポキシコーティング408により分析すべき流体サンプルから保護されている。コーティング408は、流体サンプル及び発光反応の残りの成分をデバイス100に適用させ得るように開口172及び182またはダイ140には適用されない。
【0215】
また、マルチウェルチップは3層から構成される(例えば、図8〜11)。下層は各ウェルの下部部分を形成し、半導体層、各ウェルの底部にフォトダイオード及びアノード電極、すなわち各ウェルを包囲している金属ワイヤーを組み込んでいる。中間層は下層の溝に嵌合しており、反射性金属層、絶縁層、好ましくはMYLAR(E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.から市販されている配向ポリエチレンテレフタレート)のような誘導化プラスチックまたはシリコンからなり、絶縁層に各ウェルにつき特異的抗体またはリガンドが結合している(例えば、MYLARに結合した抗体、図10参照)。上部キャップ層は各ウェルの残りの上部を形成しており、カソード電極を含んでいる。アナライトまたは試薬は、直流を供給するかまたは電流の極性を反転させることによる自由電解電気泳動により上部カソード及び下部アノードを介してウェル内またはその中に輸送され得る(例えば、図11参照)。
【0216】
使用する場合、チップをサンプルと接触させ、十分洗浄する。レベルがカソード位置よりも上になるまで緩衝液または他の適当な組成物を各ウェルに添加する。次いで、チップを、抗体またはその抗体結合部分に複合化、融合または他の方法で結合させたルシフェリンまたは好ましくはルシフェラーゼ、または前記した複数の融合物を含む組成物と接触させる。抗体またはその一部のそれぞれは当該抗原に対して特異的である。バイオルミネセンス発生系の残りの成分を添加し、チップをワイヤーハーネスを用いて電源に接続する(例えば、図11の下参照)。生じた光は各ウェル内に含まれ、各ウェルの底部に配置されているフォトダイオードにより検出される。反射性表面により信号は強化される。検出された信号は本質的に上記したコンピュータ処理装置に中継し、コンピュータは検出したウェルを同定し、その後検出された特定の感染性物質を付属モニターまたはプリントアウト上に表示する(例えば、図20参照)。
【0217】
2.自己アドレス可能なチップ
自己アドレス可能なチップ(例えば、図12〜16参照)はマトリックス、絶縁層及び金属層を含み、この金属層に結合層及び透過層が固定されている。チップは放出された光を検出する光検出器を含む。
【0218】
a.マトリックス材料
マトリックスまたはチップは、本発明で提供されるデバイスを製造するための基板として使用され得る。前記基板は粒子、ステランド、沈殿物、ゲル、シート、管、球、容器、毛細管、パッド、薄片、フィルム、プレート、スライド等として存在する生物学的もしくは非生物学的で有機もしくは無機材料またはその組合せからなり得る。前記基板は円板、四角、球及び円形のような任意の形状をとり得る。基板及びその表面は好ましくは、その上で本明細書に記載の反応を実施する剛性支持体を形成する。基板及びその表面は、適切な光吸収特性を与えるように選択されなければならない。例えば、基板は重合Langmuir Blodgettフィルム、機能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、修飾シリコン、(ポリ)テトラフルオロエチレンや(ポリ)ビニリデンジフルオリド、またはその組合せのような各種ポリマーであり得る。他の基板材料は本明細書の記載から当業者に自明である。現在好ましくは、シリカ基板が超小型電子チップデバイスを製造するために使用される。
【0219】
b.製造方法
i.ミクロリソグラフィ
国際特許出願公開第WO95/12808号明細書及び同第WO96/07917号明細書には、小さなミクロ位置を多数有する複雑な“チップ”型デバイスの製造のために使用され得る一般的なミクロリソグラフィまたはフォトリソグラフィが記載されている。デバイスの製造には複雑なフォトリソグラフィを必要としないが、材料の選択及び電子デバイスが水溶液中で実際機能する要件を特に考慮する必要がない。
【0220】
国際特許出願公開第WO95/12808号明細書の図14に示されている64ミクロ位置デバイスは、比較的簡単なマスクデザイン及び標準的なミクロリソグラフィを用いて製造され得る。通常、ベース基板材料は1〜2cmシリコンウェハまたは約0.5mm厚さのチップである。シリコンチップをまず、プラズマ強化化学蒸着方法(PECVD)により1〜2μm厚さの二酸化ケイ素(SiO)絶縁コートで被覆する。
【0221】
好ましくは、チップは、半導体層に組み込まれ、導波管または他の手段のような光学パスによりチップの他の光学パスに結合した検出器素子、例えば光検出器を含むように設計される。好ましい実施態様では、検出器素子は1〜5ミクロン、好ましくは1〜2ミクロンの概略分解能を有するフォトダイオードの直線アレーからなる。チップを有して配置された検出器を用いて、試験サンプル中の標的は生物学的分子または抗リガンドの結合部位で同定され得る。
【0222】
次のステップでは、0.2〜0.5μmの金属層(例えば、アルミニウム)を真空蒸発により蒸着させる。アルミニウムの他に、電子回路のために適当な金属には、金、銀、スズ、銅、白金、パラジウム、炭素及び各種金属の組合せが含まれる。異なる金属を用いて絶縁基板材料(SiO)への適切な結合を確実にするための特別な方法が使用される。
【0223】
次に、チップをポジティブホトレジスト(Shipley,Microposit AZ 1350 J)で被覆し、電子回路パターンでマスクし(光照射野)、露光し、現像する。光溶解したレジストを除去し、露出したアルミニウムをエッチングして除去する。レジスト島を除去するとチップ上にアルミニウム回路パターンが残る。これには、金属接触パッドの外周辺、接続回路(ワイヤー)、及びアドレス可能なミクロ位置の基層として作用するミクロ電極の中央アレーが含まれている。
【0224】
PECVDを用いて、チップにまず0.2〜0.4ミクロンのSiO層、次に0.1〜0.2ミクロンの窒化ケイ素(Si)層を被覆する。次いで、チップをポジティブレジストで被覆し、接触パッド及びミクロ電極位置をマスクし、露光し、現像する。光溶解したレジストを除去し、SiO層及びSi層をエッチングして除去してアルミニウム接触パッド及びミクロ電極を露出させる。その後、周囲の島レジステを除去し、接触パッド及びミクロ電極間の接続ワイヤーがSiO層及びSi層により絶縁されて残る。
【0225】
SiO層及びSi層はデバイスの機能のために重要な特性を与える。第1に、SiO層はアルミニウム回路とのより良好な接触及び改良されたシール特性を有する。絶縁しシールするためにレジスト材料を使用することも可能である。これにより、ミクロ電極が作動しているときに電解効果のために回路が浸食されるのが防止される。Siの最終表面層コーティングは、特定結合物(specific binding entities)の結合のためのミクロ電極表面を修飾するためにその後使用される試薬との反応性が非常に低いので使用される。
【0226】
この時点で、デバイス上のミクロ電極位置は、デバイスの活性機能のために必要な重要な素子である特別の透過・結合層で修飾されている。その目的は、ミクロ電極上に選択的な拡散特性を有する中間透過層及び最適の結合特性を有する結合表面層を生成させることにある。結合層は特定結合物を最適に結合させるために10〜10官能化位置/μmを有することが好ましい。特定結合物の結合は下層のミクロ電極の機能を妨げるように表面を被覆または絶縁してはならない。機能デバイスは、溶媒(HO)分子が接近でき、対イオン(例えば、Na及びCl)及び電解ガス(例えば、O及びH)が拡散できるように実際の金属電子−電極表面の一部(〜5%〜25%)を必要とする。
【0227】
中間の透過層は拡散を生じ得るものでなければならない。また、透過層は、大きな結合物、反応物質及びアナライトがミクロ電極表面と物理的に接触するのを防止または妨害する細孔限界特性を有していなければならない。透過層により活性ミクロ電極表面はミクロ位置の結合物層から物理的に離れている。
【0228】
主要なデバイス機能に関して、この設計により電気泳動輸送に必要な電解反応がミクロ電極表面上で起こるが、結合物、反応物質及びアナライトに対する好ましくない電気化学的影響を避けることができる。
【0229】
金属のミクロ電極表面を誘導化させるための1つの好ましい方法はアミノプロピルトリエトキシシラン(APS)を使用する。APSは迅速に金属及びシリコン表面上のオキシド及び/またはヒドロキシル基と反応する。APSにより、その後結合物を共有結合するための第1級アミン基で浸透層及び結合層が合体される。表面結合部位に関して、APSはわずかに酸化したアルミニウム表面に対しては比較的高レベルの官能化(すなわち、多数の第1級アミン基)、SiO表面に対しては中間レベルの官能化及びSi表面に対しては非常に低い官能化を生ずる。
【0230】
APS反応は、デバイス(例えば、チップ)の全表面を10%−APSのトルエン溶液と50℃で30分間処理することにより実施される。次いで、チップをトルエン、エタノールで洗浄し、50℃で1時間乾燥する。ミクロ電極の金属表面は多数の第1級アミン基(10〜10/μ)で官能化される。結合物を誘導化したミクロ電極表面に共有結合させることができる。
【0231】
ii.微細機械加工
国際特許出願公開第WO95/12808号明細書及び同WO96/07917号明細書には、デバイスを製造するための微細機械加工方法(例えば、ドリリング、ミリング等)及び非リソグラフィ方法が記載されている。通常、ミクロリソグラフィで製造されるデバイスよりも比較的大きなミクロ位置(>100ミクロン)を有するデバイスが得られる。得られたデバイスは分析用途及びバイオポリマー合成のような製造用途に使用することができる。大きなアドレス可能位置が、多量の結合物を担持するために3次元フォーマット(例えば、チューブまたはシリンダー)で製造され得る。前記デバイスは各種材料を用いて製造され得、その材料にはプラスチック、ゴム、シリコン、ガラス(例えば、ミクロチャネル、ミクロキャピラリー等)、セラミックスが含まれるが、これらに限定されない。微細機械加工されるデバイスの場合、接続回路及び大きな電極構造物は当業界で公知の一般的な回路ボード印刷法を用いて材料の上に印刷することができる。
【0232】
本発明の用途では、半導体層に組み込まれ、例えば導波管または他の手段を用いて光学パスを介してチップの他の光学パスに結合させた検出素子、例えばフォトダイオードを含むようにチップを設計することが好ましい。好ましい実施態様では、検出素子は1〜5ミクロン、好ましくは1〜2ミクロンの概略分解能を有するフォトダイオードの直線アレーからなる。チップと配置された検出器を用いて、試験サンプル中の標的は生物学的分子または抗リガンドの結合部位で同定され得る。
【0233】
アドレス可能なミクロ位置デバイスは、微細機械加工方法を用いて比較的簡単に製造され得る。WO95/12808の図15には、代表的な96ミクロ位置デバイスの概略図が示されている。このミクロ位置デバイスは適当な材料ストック(2cm×4cm×1cm)から、材料に96個のバランスよく離れた穴(直径1mm)をあけることにより製造される。プラスチック材料ストックの薄シート上に電極回路ボードを形成し、この回路ボードをミクロ位置の構成成分の上部の上に正確に取り付ける。回路ボードの下側は各ミクロ位置に対して個々のワイヤー(印刷回路)を含む。短い白金電極構造物(〜3〜34mm)が各ミクロ位置のチャンバに延びるように設計されている。印刷回路配線を適当な防水性絶縁材料で被覆する。印刷回路配線を、多重スイッチコントローラ及びDC電源に接続するソケットに集中させる。デバイスを一般的な緩衝液リザーバ中に部分的に浸漬し、作動させる。
【0234】
デザインは違うが、微細機械加工方法及びミクロリソグラフィ方法により製造されたデバイス中のミクロ位置の主要機能は同じである。ミクロリソグラフィ法により製造されたデバイスでは、透過層及び結合層は下層の金属ミクロ電極上に直接形成される。微細機械加工方法により製造したデバイスでは、透過層及び結合層はそれぞれの金属電極構造物から各リザーバの各チャンバ中の緩衝溶液により物理的に離れている。微細機械加工されたデバイスでは、透過層及び結合層は官能化親水性ゲル、膜または他の適当な多孔性材料を用いて形成され得る。
【0235】
一般に、合体された透過層及び結合層の厚みは10μm〜10mmの範囲である。例えば、デバイス中の各ミクロ位置チャンバを部分的に(〜0.5mm)充填するために26%〜35%ポリアクリルアミド(0.1%ポリリシンと一緒に)の変性親水性ゲルを使用することができる。ゲルのこの濃度は2nm〜3mmの細孔限界を有する理想的な透過層を形成する。ゲル中に含まれるポリシランにより、その後の特定結合物の結合のための第1級アミン官能基が与えられる。このタイプのゲル透過層により、電極はDCモードで活性的に機能し得る。電極が活性化されると、小さな対イオンはゲル透過層を通過できるが大きな特定結合物分子は外表面に集中する。この大きな特定結合物分子は第1級アミンの外層に共有結合するようになり、効果的に結合層になる。
【0236】
透過層及び結合層を形成するための別の方法では、各ミクロ位置チャンバのベースに多孔性膜材料を含有させる。次いで、膜の外表面を化学官能基で誘導化して結合層を形成する。この方法を実施するための適当な方法及び材料は当業者に公知である。
【0237】
デバイスの設計及び製造に関する上記記載は基本デバイスの他の変形または形態を限定するものと考えるべきではない。各種分析及び製造用途のためにアドレス可能なミクロ位置の数がより多いもしくは少ないデバイスの多く変更が考えられる。より多くのアドレス可能位置を有するデバイスの変更はバイオポリマー合成用に考えられる。変更例は、ミクロリソグラフィ法で製造されるデバイスを含めた他のデバイスと共に使用される電気的にアドレス可能で制御可能な試薬デイスペンサとしても考えられる。
【0238】
c.チップの自己アドレス化
国際特許出願公開第WO95/12808号明細書及び同WO96/07917号明細書に記載されているチップ及びデバイスは、特定結合物を有する各ミクロ位置を電子的にアドレスし得る。このデバイスそれ自体が、特定結合物の特定ミクロ位置への輸送及び結合に直接作用したり生起させる。このデバイスそれ自体は、特定結合物を特定ミクロ位置に物理的に方向付けたり、位置づけたりまたは配置するために必要な外部方法、機構または装置がない点で自己組立される。この自己アドレス方法は迅速で特異的であり、連続もしくは並行方法で実施され得る。
【0239】
デバイスは、特定ミクロ位置をDCモード及び特定結合物とは反対の電荷(ポテンシャル)で維持することにより特定結合物で連続的にアドレス指定され得る。他のミクロ位置は全て特定結合物と同じ電荷で維持される。結合物がミクロ位置の結合部位を越えないときには、特定ミクロ位置への静電輸送に作用するためにたった1つの他のミクロ電極を活性化する必要がある。特定結合物は溶液中を迅速に(数秒で、好ましくは1秒未満で)輸送され、特定ミクロ位置に直接集中し、そのミクロ位置で直ちに特定表面に共有結合するようになる。特定ミクロ位置(72)上に反応物質またはアナライト(70)が電子的に集中する能力は上記特許の図7に記載されている。他のミクロ位置はすべて特定結合物による影響を受けずそのままである。未反応結合物は、特定ミクロ位置の極性を逆転させ、廃棄位置に電気泳動することにより除去される。所望のミクロ位置がすべてその特定結合物でアドレス指定されるまで上記サイクルは繰り返される。上記特許の図8には、特定のミクロ位置(81、83、85)が特定のオリゴヌクレオチド結合物(82、84、86)でアドレス指定するための一連の方法が示されている。
【0240】
ミクロ位置をアドレス指定するための並行方法は、同じ特定結合物が輸送され、集中し、1つ以上の特定ミクロ位置と反応するように多数(特定のグループ及びライン)のミクロ電極を同時に活性化することを含む。
【0241】
使用する場合、チップを体液(特に、尿、唾液、血液)のようなサンプルと接触させる。次いで、チップを抗体またはその抗体結合部分に複合化、結合または融合したルシフェリン、好ましくはルシフェラーゼまたはその融合物の組合せを含む組成物と接触させる。抗体及びその一部はそれぞれ当該抗原に対して特異的である。検出は、チップをフォトダイオードにより検出される光を発生するバイオルミネセンス発生系と反応させて実施される。
【0242】
3.チップ表面への生物学的分子の結合
タンパク質、核酸及びペプチド核酸を含めた生物学的分子を固体支持体に結合させるために多種多様の方法が公知である(例えば、Affinity Techniques.Enzyme Purication:Part B, Methods in Enzymol.,Vol.34,B.Jakoby,M.Wilchek編,Acad.Press,N.Y.(1974)及びImmobilized Biochemicals and Affinity Chromatography,Advances in Experimental Medicine and Biology,vol.42,R.Dunlap編,Plenum Press N.Y.(1974);米国特許第5,451,683号明細書参照;また米国特許第5,624,711号明細書、同第5,412,087号明細書、同第5,679,773号明細書、同第5,143,854号明細書参照)。特にシリコンチップは公知である。
【0243】
これらの方法は通常、固体支持体表面上に反応性基の均一層を形成するための固体支持体の誘導化及びその後の反応性基と生物学的分子上に存在する反応性部分との共有結合を介する誘導化された表面への生物学的分子の結合を含む。現在好ましい方法は、誘導化及びシリカ基板に対する生物学的分子の結合のために適用され得る方法、特に超小型電子チップデバイスのシリカ表面を誘導化するための方法である。
【0244】
a.シリカ基板の誘導化
シリカ表面を誘導化する方法または表面をシリカで被覆した後その表面を誘導化する方法は多く公知である。シリカ表面を誘導化するために多数の試薬が使用され得る。例えば、米国特許第4,681,870号明細書は遊離のアミノまたはカルボキシル基をシリカマトリックスに導入する方法を記載している。或いは、遊離アミノ基またはカルボキシル基の層はアミノ−及びカルボキシメチルシラン誘導体、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、2−(カルボメトキシ)カチルトリクロロシラン、(10−カルボメトキシデシル)ジメチルクロロシラン及び2−(カルボメトキシ)エチルメチルジクロロシラン(例えば、Hullsカタログ参照)を用いて導入され得る。
【0245】
シリカ表面をアルキル−及びアルコキシアルキルハロゲン化シラン誘導体を用いて誘導化してヒドロキシ基の層を導入することもできる。トリアルコキシシランのアルコキシ基はその対応シラノール種に加水分解されるが、この加水分解は水溶液を型どおりに調製中にまたはシランとシリカ基板上の吸収水分との反応中に生じ得る。シラノールは通常相互にまたはアルコキシシランと縮合してシロキサンを形成する。シラノール含有物質はシリカ表面上のヒドロキシル基と反応する非常に反応性の中間体である(例えば、Mohsenら,J.Oral Rehabil. 22:213−220(1995)参照)。更に、シリカマトリックスはアルカリ条件下でハロゲン化シアンで処理しても活性化され得る。抗リガンドは、活性化表面に添加すると表面に共有結合される。
【0246】
適当な誘導化試薬の選択及び使用は当業者の技能の範囲内である。例えば、適当なシラン誘導体は、予想されるカテゴリーに含まれるシランを実験的に評価することにより選択され得る。シラン基板を製造する際、基板の全表面を適当なシラン誘導体で誘導化するか、または表面をばらばらのアレーを形成するための複数の位置のみを誘導化することができる。生物学的分子を含有する試薬及び溶液はシリカ表面に手動でまたはタンパーまたはこの目的のために当業者に公知の他の道具を用いて添加され得る。
【0247】
b.生物学的分子の結合
生物学的分子のシリカ基板の表面への結合は、当業界で公知であり本明細書に記載されている手順または方法により実施され得る。生物学的分子の結合は、リンカー分子(例えば、以下のセクションD1参照)の存在下または非存在下でも実施され得る。当業者に公知のリンカーが本発明で使用され得る。
【0248】
遊離アミノもしくはカルボキシル基または他の適当な基の層を含む誘導化シリカ基板はその後、カルボジイミドの存在下でヘテロ二官能性リンカーまたは生物学的分子、例えばタンパク質、タンパク質核酸または他の抗リガンド上の遊離カルボキシルもしくはアミノ基に共有結合され得る。カップリング剤としてカルボジイミド(例えば、N−エチル−N’−(γ−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を使用することは当業者に公知である(例えば、Bodanskyら,“The Practice of Peptide Synthesis”,Springer−Verlag,ベルリン(1984)参照)。
【0249】
生物学的分子を結合させるための別の方法はビオチンの層、アビジンの層及び増量剤の層を順次適用してシリカ表面を修飾することを含む(例えば、米国特許第4,282,287号明細書参照)。他の方法は、ポリペプチド鎖に感光性非天然アミノ基を導入し、生成物を低エネルギー紫外光に露光することにより固体基板にポリペプチド鎖を結合させる光活性化を含む(例えば、米国特許第4,542,102号明細書参照)。オリゴヌクレンチドは光化学的に活性な試薬、例えばプソラレンと前記光試薬を基板に結合させるカップリング剤を用いて結合させた(例えば、米国特許第4,762,881号明細書及び同第4,562,157号明細書参照)。同様の方法がペプチド核酸に適用され得る。光試薬の光活性化により核酸分子またはペプチド核酸分子は基板に結合して、表面結合プローブが生ずる。ある実施態様では、核酸を光活性化し固定するのに十分に適当な発光波長を有する適当なバイオルミネセンス発生系を選択することにより光活性化を現場で起こすことができる。
【0250】
更に、米国特許第5,451,683号明細書は光活性化可能なビオチン誘導体を結合させることにより生化学的リガンドをマトリックスの表面に結合させる方法を記載している。ビオチン誘導体を光分解活性化するとアビジンまたはストレプトアビジンに対して強い結合親和性を有するビオチンアナログが得られる。ビオチニル化リガンドを、予めアビジンまたはストレプトアビジンで処理した活性化領域上に固定化される。
【0251】
抗リガンドのマトリックス材料への結合は電子的にも実施され得る。特定結合物のマトリックス上の特定ミクロ位置への輸送及び結合を電子的に制御するための自己アドレス可能で自己組立可能な超小型電子システム及びデバイス(例えば、国際特許出願第WO95/12808号明細書;WO96/01836号明細書及びWO96/07917号明細書;米国特許第5,632,957号明細書;同第5,605,662号明細書参照)。各ミクロ位置が電子的に制御され得、それにより電流または電圧が制御される。1つの性質を設定するとき他の性質をモニターすることができる。例えば、電圧を設定するとき電流をモニターすることができる。或いは、電流を設定するとき電圧をモニターすることができる。電圧及び/または電流は直流モードで適用することも、また経時的に変化させることもできる。
【0252】
上記した方法により与えられる空間アドレス可能性により、予備設定された反応性を有するパターン化表面を形成し得る。例えば、半導体業界で公知のリソグラフィ方法を用いることにより、光を表面上の比較的小さく正確に公知の位置に向けることができる。従って、抗リガンドを結合させるために表面上のばらばらの所定位置を活性化することができる。生じた表面は各種用途を有する。例えば、表面に結合した異なる抗リガンドでリガンドの親和性を同時に試験することができる直接結合アッセイを実施することができる。
【0253】
例えば、生物学的分子をアルコキシシランを用いて非自己アドレス可能なチップのシリカ表面に結合させるために、通常表面を予備加水分解する。ほこり、有機粒子及び他の粒状物で汚染されるのを避けるために操作はすべて層流フード/クリーン環境中で実施しなければならない。通常、適当なアルコキシシランをエタノール−水(3:1)溶液中に室温で12時間溶解させる。チップの特定表面をシラン−アルコール溶液の新鮮アリコートを用いて繰り返し冠水させることによりチップを処理する。この処理後、チップを大量の無水エタノールで洗浄し、次いでTHF、ジオキサンまたはヘキサン(超高純度)、最後にペンタンで洗浄し、乾燥窒素流下で蒸発させる。
【0254】
チップ表面の誘導化の効率は、チップ表面に対して適当な蛍光アミン(誘導化カルボキシル)または蛍光カルボン酸(誘導化アミノ)を結合し、結合分子の蛍光を適当な波長を有するレーザーを用いて励起させることにより測定され得る。この目的のための適当な化合物はフルオレセイン、ローダミンまたはTexas Redのアミノ、カルボキシルまたは他の反応性誘導体であり得、これらは当業者に公知であり、市販もされている(例えば、Molecular Probes,Inc.参照)。
【0255】
フルオレセイン、ローダミンまたはTexas Redのイソチオシアネートは、例えばシリカ表面上の遊離アミノ基と非可逆的な共有結合方法で反応する。アセトンまたはジオキサン中に有効濃度(約10mM)のフルオレセインイソチオシアネート(混合異性体)を含む溶液をチップのアミン誘導化シリカ上に十分時間、例えば約30分間室温でおく。未反応物質をすべて除去するために、チップをアセトン、ヘキサン及びペンタンまたは他の適当な溶媒の熱(すなわち、60℃)溶液で洗浄する。同じチップの化学的に誘導化されなかった領域を対照としてフルオレセインイソチオシアネートと同様に処理する。ガラスとの直接共有結合反応が少量可能であり、よって対照はバックグラウンドレベルを示すために実施されるべきである。結合したフルオレセインの蛍光は適当なソース、例えばアルゴンイオンレーザー(例えば、488nm)を用いて、好ましくは45゜ジオメトリーで励起させることができる。アルゴンレーザーは更に、約520nmで発した蛍光信号を検出するために10nm帯域フィルターを備えた光電子増倍管を含むことができる。検出された蛍光の量は誘導化の程度及び効率の関数である。
【0256】
本明細書に記載の別の実施態様では、抗リガンドが反射性金属層の上の活性化された保護外面、例えば誘導化シラン層に直接固定化され得るように反射性表面(例えば、MYLAR)を上記したように誘導化し得る。この実施態様では、バイオルミネセンス発生系により発生した光は抗リガンドにより散乱または吸収されない。なぜならば、フォトダイオードが結合抗リガンドにより点滅されないからである。
【0257】
D.ルシフェラーゼ複合体の形成
1.リンカー
ルシフェラーゼは、当業界で公知の方法を用いてリンカー配列の存在下もしくは非存在下で抗リガンド、例えば抗体、オリゴヌクレオチドまたはペプチド核酸に対して複合体化され得る。当業界で公知のリンカーを本発明で使用することができる。ルシフェラーゼを抗体に結合させる方法は米国特許第4,657,853号明細書、同第5,486,455号明細書及び国際特許出願公開第WO96/07100号明細書に記載されている。
【0258】
他のリンカーも化学的に結合したタンパク質に含有させるために適している。前記リンカーにはジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合、及びアミンやチオール基のような遊離反応性基間の共有結合が含まれるが、これらに限定されない。これらの結合は1方もしくは両方のポリペプチド上に反応性チオール基を生成するためにヘテロ二官能性試薬を用い、次いで1つのポリペプチド上のチオール基を他のポリペプチド上に反応性マレイミド基またはチオール基が結合され得る反応性チオール基またはアミン基と反応させることにより生成される。他のリンカーには酸開裂性リンカー(例えば、ビスマレイミドエトキシプロパン)、UVまたは可視光に露光されると開裂するクロスリンカーが含まれる。幾つかの実施態様では、各リンカーの所望特性を利用するために数種のリンカーを含めることができる。
【0259】
化学リンカー及びペプチドリンカーは、リンカーを抗リガンド及びチップの表面に共有結合させることにより挿入され得る。下記するようなヘテロ二官能性物質を前記共有結合を行うために使用され得る。ペプチドリンカーはリンカー及び抗リガンド(例えば、抗体)をコードするDNAを発現させることにより融合タンパク質として結合され得る。
【0260】
アミノ基とチオール基間に共有結合を形成し、チオール基をタンパク質を導入するために使用される多数のヘテロ二官能性架橋剤が当業者に公知である(例えば、上記架橋剤の製造及び使用を記載しており、架橋剤の市販ソースを記載しているPIERCE CATALOG,ImmunoTechnology Catalog & Handbook,1992−1993参照;また、例えばCumberら,Bioconjugate Chem. 3:397−401(1992);Thorpeら,Cancer Res. 47:5924−5931(1987);Gordonら,Proc.Natl.Acad.Sci. 84:308−312(1987);Waldenら,J.Mol.Cell Immunol. 2:191−197(1986);Carlssonら,Biochem.J. 173:723−737(1978);Mahanら,Anal.Biochem. 162:163−170(1987);Wawryznaczakら,Br.J.Cancer 66:361−366(1992);Fattomら,Infection & Immun. 60:584−589(1992)参照)。これらの架橋剤は抗リガンドとルシフェラーゼ分子間に共有結合を形成するために使用され得る。前記架橋剤には、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP;ジスルフィドリンカー)、スルホスクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SPDP)、スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチルベンジルチオスルフェート(SMBT、ヒンダードジスルフェートリンカー)、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノート(LC−SPDP)、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)、スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB;ヒンダードジスルフィド結合リンカー)、スルホスクシンイミジル2−(7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセトアミド)エチル−1,3’−ジチオプロピオネート(SAED)、スルホ−スクシンイミジル7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセテート(SAMCA)、スルホスクシンイミジル6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT)、1,4’−ジ[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB)、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルチオ)トルエン(SMPT;ヒンダードジスルフェートリンカー)、スルホスクシンイミジル6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ−MBS)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB;チオエーテルリンカー)、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ−SIAB)、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、スルホスクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ−SMPB)、アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0261】
酸開裂性リンカー、光開裂性リンカー及び感熱性リンカーも、特に標的剤を開裂して反応により容易に接近し得る必要がある場合に使用することもできる。酸開裂性リンカーには、ビスマレイミドエトキシプロパン及びアジピン酸ジヒドラジドリンカー(例えば、Fattomら,Infection & Immun. 60:584−589(1992)参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0262】
2.ルシフェラーゼ融合タンパク質
抗体−ルシフェラーゼ複合体の他に、抗リガンド、例えば抗体またはそのF(AB)抗原結合断片に対する組換えルシフェラーゼタンパク質の融合物も本発明で使用される。例えば、モノクローナル抗体をコードするDNAをルシフェラーゼをコードするDNAに連結したり、ルシフェラーゼを抗体に連結することができる(例えば、抗体/ルシフェラーゼ複合体及びその使用を記載している米国特許第4,478,817号明細書参照)。
【0263】
3.核酸及びペプチド核酸複合体
本明細書に記載のルシフェラーゼ分子を核酸またはペプチド核酸に複合化させることができる。カップリングはリンカーの存在下もしくは非存在下で実施され得る。タンパク質中のアミノ及びカルボキシル末端及び他の部位に対して5’末端、3’末端等で核酸を複合化する方法は当業者に公知である(参考のために、例えばGoodchild,Perspectives in Bioconjugate Chemistry,Mears編,American Chemical Society,Washington D.C.,pp.77−99(1993)参照)。例えば、タンパク質は紫外線照射により(Sperlingら,Nucleic Acids Res. 5:2755−2773(1978);Fiserら,FEBS Lett. 52:281−283(1975))、二官能性化学物質を用いて(Baumertら,Eur.J.Biochem. 89:353−359(1978);Osteら,Mol.Gen.Genet. 168:81−86(1979))、光化学架橋剤を用いて(Vaninら,FEBS Lett. 124:89−92(1981);Rinkerら,J.Mol.Biol. 137:301−314(1980);Millonら,Eur.J.Biochem. 110:485−454(1980))核酸に結合された。
【0264】
更に、ルシフェラーゼのカルボキシル末端をペプチド核酸の遊離アミノ基の1つに標準のカルボジイミドペプチド化学を用いて複合化することができる(例えば、Nielsenら,Science 254:1497−1500(1990);Pefferら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 90:10648−10652(1993)参照)。
【0265】
複合化のための追加部位を、1つ以上の位置を化学的に修飾するかまたは核酸分子の5’もしくは3’末端に共有結合した小さな抗原決定基を導入することにより核酸分子に導入することもできる。多数の小さな抗原決定基(例えば、His Tags、flg抗原、S−Tags、ジオキシゲニン等)は当業者に公知であり、市販もされている(例えば、インディアナ州インディアナポリスに所在のBoehringer Mannheim;ウィスコンシン州マジソンに所在のNovagen,Inc.)。修飾核酸及びペプチド核酸アナログも標準ホスホルアミダイト化学及び市販されている修飾ヌクレオシドトリホスフェートアナログ(例えば、5’−チオール化ヌクレオシドトリホスフェート及びオリゴヌクレオチド)を用いて直接化学合成により製造され得る。5’及び3’−チオール化オリゴヌクレオチドは市販もされている(例えば、カリフォルニア州アラメダに所在のOperon Technologies)。
【0266】
E.マトリックス上にシリカを堆積するための放散虫類及び珪藻類
本発明はマトリックス材料上にシリカを堆積するためにバイオミネラル化を使用する方法も提供する。この方法は、マトリックスの界面領域に沿って二酸化ケイ素を重合してマトリックス−シリケートメソ構造を形成するために珪藻類及び放散虫類及び細胞壁タンパク質を使用する。この方法は各種の最終用途を有するシリケートチップを製造するために半導体業界で使用され得る。
【0267】
珪藻類及び放散虫類のような生物は、1μm未満〜数mmのスケールでパターン化された階層構造を示す被殻/珪殻または外骨格とも呼ばれる精巧なバイオミネラルシリカを主成分とする細胞壁を合成する(例えば、一般的にAnderson,Radiolaria,Springer−Verlag,N.Y.(1983);Sullivan,Ciba Found.Symp. 121:59−89(1986)参照)。珪藻類細胞壁における構造中の2つの主要成分は放射状対称を有する細胞壁(中心珪藻類;例えばCylindrotheca crypta)及び左右対称を有する細胞壁(翼状珪藻類;例えばNavicula peliculosa及びC.fusiformis)である。
【0268】
珪藻類細胞壁は上殻及び下殻の2つの部分を含む。各殻は、無定形の水和シリカと他の有機成分からなる弁、複数のシリカストリップ及び環帯からなる(例えば、Volcani,Silicon and Siliceous Structures in Biological Systems,Simpson及びVolcacni編,pp.157−200,Springer−Verlag(1981);Krogerら,EMBO 13:4676−4683(1996)参照)。前記細胞壁の主要有機タンパク質成分はフラストリン(frustulins)として公知のタンパク質である(例えば、Krogerら,Eur.J.Biochem. 239:254−264(1996)参照)。海洋珪藻類では、母プロトプラストの細胞分裂及び細胞質分裂後新しい弁が生成される。生じた娘プロトプラストは特殊化細胞内細胞小器官のシリカ堆積小胞に新しい弁を生ずる。シリカは、Siモノマーの核生成及びエピタキシャル成長がテンプレート上で起こるかより複雑なシリカの重合が小胞内で起こるシリカ核に輸送される(例えば、Pickett−Heapsら,Bio.Cell. 35:199−203(1979);Sullivan,Ciba Found.Symp. 121:59−89(1986);Pickett−Heapsら,Prog.Phycol.Res. 7:1−186(1990)参照)。
【0269】
放散虫類では、シリケート骨格の堆積は、細胞泡層(cytokalymma)と呼ばれる骨格を包囲し、成形し、堆積させる細胞質鞘と関連している。骨格の厚さは生物の生理学的状態に影響され得る。細胞泡層は、珪藻類のシリカ堆積におけるシリカ殻と同様に機能し得る。
【0270】
珪藻類及び放散虫類外骨格に模擬した人工無機アセンブリが記載されている(例えば、Oliverら,Nature 378:47−50(1995);米国特許第5,057,296号明細書、同第5,108,725号明細書、同第5,364,797号明細書参照)。幾つかの構造のメソフェース、例えばラメラ、六角形及び立方体メソ構造が選択された出発材料及び使用条件に依存して形成される。しかしながら、これらの結晶質メソ構造はあるマトリックス材料では使用に適さないより高温でしか形成され得ない。
【0271】
バイオミネラル化方法及び界面活性剤−シリケートメソ構造の形成及び構造を説明するためのモデルが提案されている(例えば、サリバン(Monnierら,Science 261:1299−1303参照)。例えば、シリケート壁の厚さの調節が二重層ポテンシャルに関連していると仮定される。シリケート種のみが表面界面で蓄積して壁が厚くなったりまたは無定形バルクSiOが生じ、シリケート種が形成される高いpH、例えばpH12以上ではシリケート種上の高い負電荷により強い静電気反発が生ずるので起こらない(例えば、Ilier,The Chemistry of Silica,p.182,Wiley,New York(1979)参照)。
【0272】
M41Sを含有するメソ細孔結晶性材料の人工アセンブリはバイオセンサーを含めたセンサーサービス中に組み込まれた(例えば、米国特許第5,364,797号明細書参照)。バイオセンサーでは各対の一方の生物学的アナライトが結晶性材料中のシラノールに対して共有結合により非常に大きい孔を有する結晶性基板に固定されている(例えば、Harlowら,Antibodies,A Laboratory Manual,Gold Spring Harbor Laboratory(1988))。アナライト、例えば抗体が結合され、固定されたアナライトと試験サンプルとの相互作用を監視する。
【0273】
珪藻類のシリカを主成分とする細胞壁は構造上上記した人工アセンブリと類似している。従って、これらのシリカ堆積物は、バイオセンサーや他の分子生物学的装置において有用なM41S人工アセンブリに対して光ファイバセンサーと同じ形態及び光学的特性を有する(例えば、米国特許第5,364,797号明細書参照)。
【0274】
本発明で提供される、チップのマトリックス材料の表面上にシリカを堆積するために珪藻類のシリカ殻及び/またはシリカ堆積小胞の細胞壁タンパク質及び酵素を用いるバイオミネラル化の使用方法では、珪藻類から単離されたシリカ殻を用いてSiテンプレートの均一コーティングで結合したマトリックス材料上にシリカが堆積され得る。堆積したシリカは別の適当なリンカー、例えば糖または他のジオール含有化合物を用いてマトリックスに結合され得る。或いは、シリカ殻の成分はタンパク質化学の当業者に公知の方法を用いて更に精製され得る。
【0275】
F.使用方法
1.イムノアッセイ
本明細書に記載のチップは診断アッセイに使用され得る。例えば、チップは感染性微生物、例えば細菌、ウィルス、原生動物及び他の低級真核生物に対する抗体を用いて感染性物質を検出するためのイムノアッセイに使用される(例えば、図20参照)。複数の抗リガンド、例えば抗体をチップの各位置もしくはミクロ位置に結合するか、特定微生物に対する抗体のパネルを形成するマルチウェルチップの反射性中間層の適当な層に結合させる。抗体結合チップを患者から得た体液、例えば尿、唾液または血液のサンプルに直接入れる。
【0276】
十分な時間放置して抗体−抗原複合体を形成し、チップを取り出し、十分濯ぐ。ルシフェラーゼまたはルシフェラーゼ融合タンパ質に複合化した公知の発光体のパネルに対する第2抗体を複数含む溶液を添加して、標的種上に存在する同一抗原または別の抗原に対して指向させ得る。或いは、ルシフェラーゼをコードするDNAを含有するように遺伝子操作したファージまたはウィルスを使用してもよい。広い特異性を有するウィルスまたはファージが好ましい。
【0277】
チップまたは各ウェルを洗浄し、バイオルミネセンス発生系の残りの成分、例えばルシフェリン及び必要なアクチベータを添加する。抗原が検出されている場合、結合ルシフェラーゼから光が発せられ、その光が付属チップの半導体層内に配置されているフォトダイオードにより検出される。マルチウェルチップシステムでは、バイオルミネセント反応の出力信号が、反応から直接生じた光と中間層(例えば、図10及び11)の反射した光を検出することにより高められる。出力信号をデータ分析のためにコンピュータ処理装置に送る前に出力信号を任意に増幅及び/または多重化してもよい。
【0278】
アッセイは既知量のルシフェリンをウェルに添加し、ルシフェリンの利用率を測定することにより定量的に使用され得る(すなわち、経時的な光発生の低下は対照と比較したサンプル中に存在する量に比例する)。
【0279】
2.核酸ハイブリダイゼーションアッセイ
本明細書に記載のチップは核酸ハイブリダイゼーションにも使用することができる。例えば、所望の核酸もしくはペプチド核酸プローブまたは結合ペプチドを有する核酸はチップの誘導化シリカ表面に直接またはリンカー基を介して共有結合される。核酸はチップの全表面に結合されるか、またはアレーフォーマットのチップ上の1つ以上のミクロ位置に添加され得る。
【0280】
生物学的サンプル中に存在する感染性物質は化学的、酵素的または物理的手段により溶解され、核酸、好ましくはDNAは当業者に公知の標準的な方法を用いてサンプルから単離される(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1989)参照)。或いは、核酸種を精製することなくサンプルを分析することができる。
【0281】
核酸をハイブリダイゼーション緩衝液に再懸濁し、サンプルをチップの表面に添加し、所望のハイブリダイゼーション温度でインキュベートする。ハイブリダイゼーションのために十分な時間放置後、チップを十分に洗浄後、本明細書に記載の適当な緊縮条件、すなわち高い、中間または低い緊縮条件で洗浄する。チップに固定化した相補性核酸は、バイオルミネセンス発生系の成分、好ましくはルシフェラーゼに複合化した抗リガンドを添加することにより検出される。現在好ましい抗リガンドは二重鎖核酸または関連する小さな抗原決定基を優先的に認識する抗体またはそのF(AB)断片である。二重鎖DNAを認識する抗体は多数の自己免疫疾患に関連している(例えば、Tsuzakaら,Clin.Exp.Immunol.106:504−508(1996);Kandaら,Arthritis Rhem. 40:1703−1711(1997)参照)。
【0282】
チップまたは各ウェルを洗浄して未結合抗体−ルシフェラーゼ複合体を除去し、バイオルミネセンス発生系の残りの成分、例えばルシフェリン及び必要なアクチベータを添加する。相補性核酸またはペプチド核酸が検出された場合、結合ルシフェラーゼから光が発せられ、その光は付属チップの半導体層内に配置されているフォトダイオードにより検出される。
【0283】
アッセイは既知量のルシフェリンをウェルに添加し、ルシフェリンの利用率を測定することにより定量的に使用され得る(すなわち、経時的な光発生の低下は対照と比較したサンプル中に存在する量に比例する)。
【0284】
3.抗体感受性の検出
チップは、公知抗生物質に対する臨床単離物の感受性の試験にまたは抗菌物質をスクリーニングするためのデバイスとして使用される。例えば、標的ウェルからの発光を検出したら、適当な増殖培地(例えば、L−ブロスまたは他の未同定培地)を添加し、次いで適当な環境条件、例えば20〜42℃の温度及び嫌気性もしくは好気性雰囲気でインキュベートすることにより単離物を短時間でウェルにおいて直接増殖させ得る。
【0285】
次いで、増殖細菌に、補因子として入手可能なATPを必要とする、ホタルルシフェラーゼをコードするように遺伝子操作した腸内細菌のラムダまたはP22のようなバクテリオファージを感染させる(例えば、セクションB.4参照)。前記細菌においてATPの存在下で細胞内ルシフェラーゼを発現させると、光が生ずる。
【0286】
抗生物質治療の有効性は、細菌を有効濃度の抗生物質とインキュベートし、その後の光を発生させることにより前記システムにおいて直接監視することができる。抗生物質により細胞が死滅すると、細胞内ATPプールが枯渇し、それによりバイオルミネセント反応が抑制される。光が減少することで、特定抗生物質または化合物が有効であることが示唆される。他の実施態様では、細菌を試験化合物とインキュベートし、試験化合物の抗菌活性を評価する。
【0287】
4.合成シナプス
本発明で提供される各種チップは合成ニューロンシナプスを生成するためにも使用され得る(例えば、図17〜19参照)。適当な酵素、特にアセチルコリンエストラーゼを例えば組換え発現によりルシフェラーゼに融合させる。ルシフェラーゼは不活性もしくは活性配座のいずれでもよい。いずれかのタンパク質における適当な突然変異は、ルシフェラーゼが本明細書に記載のような適当な配座変化を確実に受けることができるように選択され得る。生じた融合物を本発明のチップのようなチップに結合する。局所ニューライト生長を促進し維持するためにミクロポートを介してチップの位置の近くにニューロン増殖因子、例えばEGFまたはNGFを配置することにより、ニューロンまたはニューロン束をチップに結合した融合タンパク質の近くに保持する(図17参照)。
【0288】
シリコン−シナプス電極を、MRI位置決定により脊髄の適当な定位脳位置に挿入することにより罹患患者に永久的に埋め込むことができる(図19参照)。電極を埋め込むために、脊髄に適当なレーザー、例えばCOレーザーを用いて小さな穴をあけ、電極を既知の神経線維または束の近くに配置する。シリコン−シナプスは、表面から既知のニューロン経路に沿って脊髄内の深部まで配置され得る。必須ではないが、適当なニューロンを正確にトレーシングすることが好ましい。なぜならば、ヒトの脳は適切な信号を伝達するニューロンに沿って信号を送るためにプログラムを作り直すからである。
【0289】
ニューロンインパルスの伝達はシナプスに放出される各種神経伝達物質、例えばアセチルコリンを含む。リガンドが酵素に結合すると、例えばアセチルコリンがエステラーゼに結合すると、予め不活性である場合には結合ルシフェラーゼは結合により活性化され、予め活性の場合には結合により不活性になる(図18参照)。バイオルミネセンス発生系の残りの成分の存在下で、光が発生し(消光し)、その変化がチップと付属したフォトダイオードにより検出される。この検出により、ベルトに取り付けられた小形コンピュータのような情報を処理するコンピュータに繋がる1つ以上のワイヤーを介して送られる1つ以上の電気信号が発生する。処理された情報は適当な手段、例えばファイバにより所望のデバイスまたはエフェクタ、好ましくは筋肉に取り付けられた1つ以上の電極に伝送される。信号を受け取ると、例えば筋肉単収縮のような動作が起こり、身体が運動し始める。デバイスは脊髄の病巣域をバイパスする方法で挿入される(例えば、図19参照)。
【0290】
或いは、アセチルコリンエストラーゼのアセチルコリン結合領域を蛍光色素またはフィコビリンタンパク質に融合し、レーザーと一緒に使用され得る。この実施態様では、既知の波長を有する単色光が蛍光体を励起するためのレーザーにより発生し、発生した蛍光はパラボラミラーによりチップのフォトダイオード表面に向けられ(例えば、図17及び18参照)、発生した光はバイオルミネセンスに関して記載したように検出、使用される。
【0291】
改変は当業者に自明であるので、本発明は添付の請求の範囲の範囲によってのみ限定されると意図される。
【0292】
配列表に記載した代表的なルシフェラーゼ及びレダクターゼの配列の要約
1.配列番号1 Renilla reinformisルシフェラーゼ(米国特許第5,418,155号明細書)
2.配列番号2 Cypridina hilgendorfiiルシフェラーゼ(欧州特許第0 387 355号明細書)
3.配列番号3 修飾Luciola cruciataルシフェラーゼ(ホタル;米国特許第4,968,613号明細書)
4.配列番号4 Vargula(Cypridina)ルシフェラーゼ[Thompsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 86:6567−6571(1989)及び特開平3−30678号公報(Osaka)]
5.配列番号5 アポエクオリンをコードする遺伝子(米国特許第5,093,240号明細書,pAQ440)
6.配列番号6 組換えAequorin AEQ1[Prasherら,“Sequence Comparisons of cDNAs Encodidng for Aequorin Isotypes”,Biochemistry 26:1326−1332(1987)]
7.配列番号7 組換えAequorin AEQ2[Prasherら(1987)]
8.配列番号8 組換えAequorin AEQ3[Prasherら(1987)]
9.配列番号9 Aequorin発光タンパク質[Charbonneauら,“Amino Acid Sequence of the Calcium−Dependent Photoprotein Aequorin”,Biochemistry 24:6762−6771(1985)]
10.配列番号10 向上したバイオルミネセンス活性を有するAequorin突然変異体(米国特許第5,360,728号明細書;Asp124がSerに変化)
11.配列番号11 向上したバイオルミネセンス活性を有するAequorin突然変異体(米国特許第5,360,728号明細書;Glu135がSerに変化)
12.配列番号12 向上したバイオルミネセンス活性を有するAequorin突然変異体(米国特許第5,360,728号明細書;Gly129がAlaに変化)
13.配列番号13 組換えアポエクオリン[ジョージア州ボガートに所在のSealite,SciencesからAQUALITE(登録商標)として販売されている;再構築されたときエクオリンを形成する]
14.配列番号14 Vibrio fisheriフラビンレダクターゼ(米国特許第5,484,723号明細書)
【0293】
【表3】



























【図面の簡単な説明】
【0294】
【図1】図1は、バイオルミネセンスを用いて生物学的サンプル中のアナライトを検出、同定するための、ミクロ位置のアレー及び相当するミクロ位置で放出されたバイオルミネセンスを検出するために各ミクロ位置に光学的に結合している光検出器を含む超小型電子デバイスの概略ブロック図である。
【図2】図2は、半導体基板上に備えた光検出器アレーを示す図1の超小型電子デバイス用ダイの平面図である。
【図3】図3は、セラミック製ジュアルインラインパッケージ(DIP)に収容した図2のダイを含む図1の超小型デバイスの斜視図である。
【図3A】図3Aは、DIP中に形成された試験ウェルを詳細に示す拡大図である。
【図4】図4は、アレー中の各ミクロ位置で発生したバイオルミネセンスを検出するための画素単位格子回路を示す概略図である。
【図5】図5は、デバイスの操作中の時間を関数として図4の画素単位格子回路の3ノードにおける電圧を示すグラフである。
【図6】図6は、アダプタ回路ボードに載置され、直列出力データ流を読みとり、出力データをミクロ位置のアレーに相関させ、入力デバイスを用いてセットした所定時間にわたり各ミクロ位置に相関させたデータを集積し、アナライトマップを参照して生物学的流体中に存在するアナライトを同定し、結果を出力デバイス上に表示するためのプログラムを組み入れたコンピュータに直列的に連係させた図1の超小型電子デバイスのシステムブロック図である。
【図7】図7は、使用者が直接パッケージを取り扱い必要のない回路ボード上に収容した図1の超小型電子デバイスを示す。
【図8】図8は、3層マルチウェルCCDチップ(フォトダイオード/CCD含有チップ)の概略断面図である。
【図9A】図9は、マルチウェルCCDチップの下層及び中間反射性層の拡大概略図及び各ウェルの概略図である。
【図9B】図9は、マルチウェルCCDチップの下層及び中間反射性層の拡大概略図及び各ウェルの概略図である。
【図9C】図9は、マルチウェルCCDチップの下層及び中間反射性層の拡大概略図及び各ウェルの概略図である。
【図10A】図10は、図8のマルチウェルCCDチップの中間反射性層に結合した特定抗体の拡大概略図である。
【図10B】図10は、図8のマルチウェルCCDチップの中間反射性層に結合した特定抗体の拡大概略図である。
【図11】図11は、CCD、反射性ミラー層、カソード及びアノードの相対位置を示す各ウェルの断面図である。中間反射性層に結合した抗体はフォトダイオードの上に逆にかかっている。結合抗原は抗体−ルシフェラーゼ融合タンパク質であり、バイオルミネセント反応から生じた光はフォトダイオードで検出され、同定するための処理装置に中継される。
【図12】図12は、ミクロリソグラフィ法(国際特許出願第WO96/01836号明細書)により製造された3つの自己アドレス可能なミクロ位置の断面図である。光電極の位置を示す矢印も記載されている。
【図13】図13は、ミクロリソグラフィ法により製造されたミクロ位置の断面図である。抗体または他のレセプターが結合層に結合されている。
【図14】図14は、実際に製造され、オリゴヌクレオチドでアドレス指定され、試験された自己アドレス可能な64ミクロ位置チップの概略図である。
【図15】図15は、微細機械加工された96ミクロ位置デバイスの拡大概略図である。
【図16】図16は、微細機械加工されたデバイスの断面図である。
【図17】図17は、人工シリコン−シナプスの概略図である。
【図18】図18は、シリコン−シナプスに使用されるアセチルコリンエストラーゼ−ルシフェラーゼ融合タンパク質及びアセチルコリンエステラーゼ−蛍光色素複合体の詳細概略図である。
【図19】図19は、永久的脊髄病巣をバイパスするためにヒト脊髄にシリコン−シナプス及び電極を配置する方法を示す。
【図20】図20は、本明細書に記載のチップの感染性微生物を検出するための診断アッセイにおける操作についての概略を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超小型電子デバイスであって、
基板と、
前記基板上に規定された複数のミクロ位置であって、各ミクロ位置がマクロ分子を結合するためのものである前記ミクロ位置と、
各ミクロ位置においてまたは各ミクロ位置に隣接して一体化され、且つ各ミクロ位置に光学的に結合している個別の光検出器であって、各光検出器は他のミクロ位置に光学的に結合している光検出器とは独立していて、各光検出器はミクロ位置で発光化学反応が起こったときにその位置で生じた光の光子に応じて検知信号を発生するように構成されている前記光検出器と、および
各光検出器に結合しており、各光検出器より発生した検知信号を読みとり且つ発光化学反応により各ミクロ位置で生じた光を示す出力データ信号を発生させ、それにより前記デバイスが発光化学反応により放出された光の光子を検出するように構成されている電子回路とを含み、各ミクロ位置は表面の一部により規定されている、超小型電子デバイス。
【請求項2】
ミクロ位置がタンパク質、核酸または有機分子を結合するために誘導化されている、請求の範囲第1項に記載のデバイス。
【請求項3】
各ミクロ位置に結合したマクロ分子を更に含む請求の範囲第1項または第2項に記載のデバイス。
【請求項4】
基板上に規定されたミクロ位置の各々が、そのミクロ位置で反応が起こったときに光の光子を放出する化学反応物質を含む請求の範囲第1項に記載のデバイス。
【請求項5】
化学反応物質がバイオルミネセンス発生系の成分である請求の範囲第4項に記載のデバイス。
【請求項6】
基板がマクロ分子を結合させるために適合されている表面を有する半導体基板であり、各ミクロ位置はそのミクロ位置の別個の化学反応物質が結合するように適合されている表面の一部で規定されている請求の範囲第1項に記載のデバイス。
【請求項7】
表面がマクロ分子を結合させるために誘導化された不活性材料で被覆されている、請求の範囲第6項に記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスの表面の全部もしくは一部またはデバイスの表面の上に反射性材料の層をさらに含み、それにより発生した光を反射させて光検出器で検出される光信号を強めるために請求の範囲第1項に記載のデバイス。
【請求項9】
上記材料が配向ポリエチレンテレフタレートである請求の範囲第8項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記基板上に規定されたミクロ位置が分析用流体サンプルを受容するためのものであって、各ミクロ位置がマクロ分子が結合する結合層を含む請求の範囲第1項ないし第9項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記結合層を介して一以上のミクロ位置に結合しており、デバイスが受容した液体サンプル中に存在するアナライトに選択的に結合するマクロ分子と、
各光検出器は、相当するミクロ位置で結合したアナライトが発光反応の1つ以上の成分に結合した他のマクロ分子と反応したときに、光の光子に応じて検知信号を発生する各光検出器とを、さらに含む請求の範囲第10項に記載のデバイス。
【請求項12】
各マクロ分子が抗体であり、アナライトが抗原である請求の範囲第11項に記載のデバイス。
【請求項13】
分析される流体サンプルを受容するための基板上に規定されたミクロ位置のアレーがデバイスの表面においてウェルを形成している請求の範囲第10項に記載のデバイス。
【請求項14】
1つまたは複数のウェルが、光が光検出器に反射されるように、該ウェルの側面に沿って配置されるかまたはウェルを横切って懸架されている反射性材料を含む請求の範囲第13項に記載のデバイス。
【請求項15】
サンプル受容手段の全部もしくは一部の上に反射性材料の層を更に含む請求の範囲第10項または第11項に記載のデバイス。
【請求項16】
反射性材料が配向ポリエチレンテレフタレートである請求の範囲第15項に記載のデバイス。
【請求項17】
発光反応がルミネセンスである請求の範囲第11項に記載のデバイス。
【請求項18】
ルミネセンスがバイオルミネセンスである請求の範囲第17項に記載のデバイス。
【請求項19】
マクロ分子を含む各ミクロ位置にバイオルミネセンス発生系の少なくとも1つの成分を更に含む請求の範囲第10項または第11項に記載のデバイス。
【請求項20】
各ミクロ位置に光学的に結合した光検出器が相当ミクロ位置で生じるバイオルミネセンスに応じて検知信号を発生するように構成されている請求の範囲第1項、第10項または第11項に記載のデバイス。
【請求項21】
バイオルミネセンス発生系がルシフェラーゼおよび/またはルシフェリンを含む請求の範囲第5項および第18項ないし第20項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
ルシフェラーゼが光タンパク質であることを特徴とする請求の範囲第21項に記載のデバイス。
【請求項23】
バイオルミネセンス発生系がAequorea、Vargula、Renilla、Obelin、Porichthys、Odontosyllis、Aristostomias、Pachystomias、Gonadostomias、Gaussia、Halisturia、チスイイカ、Glyphus、Mycotophids(魚類)、Vinciguerria、Howella、Florenciella、Chaudiodus、Melanocostus、Paracanthus、Atolla、Pelagia、Pitilocarpus、Acanthophyra、Siphonophore、Periphylla、Cavarnularia、Ptilosarcus、Stylatula、Acanthoptilum、Parazoanthus、ウミエラ(Stylata)、Chiroteuthis、Eucleoteuthis、Onychoteuthis、Watasenia、コウイカ、Sepiolina、小エビ、深海魚、ホタルおよび細菌系からなる群から選択される請求の範囲第21項に記載のデバイス。
【請求項24】
デバイスが複数の異なるマクロ分子を含み、各マクロ分子は異なるアナライトに対して特異的であり、各異なるマクロ分子は異なるミクロ位置に存在する請求の範囲第10項または第11項に記載のデバイス。
【請求項25】
ミクロ位置がアレーの形態であり、ミクロ位置のアレーがそれぞれ第1及び第2サイズからなる第1及び第2の画素素子アレーを含み、第1及び第2サイズが異なる請求の範囲第10項に記載のデバイス。
【請求項26】
ミクロ位置がアレーの形態であり、ミクロ位置のアレーがそれぞれ第1及び第2サイズからなる第1及び第2の画素素子アレーを含み、第1及び第2サイズが異なり、および第1画素素子アレーの結合層に結合したレセプター抗体が第1の特定アナライトの結合に対して特異的であり、第2画素素子アレーの結合層に結合したレセプター抗体が第1の特定アナライトとは異なる第2の特定アナライトの結合に対して特異的である請求の範囲第10項に記載のデバイス。
【請求項27】
各ミクロ位置が半導体基板の表面上に配置されており、各ミクロ位置の表面が該ミクロ位置に対する結合層を規定している請求の範囲第10項または第11項に記載のデバイス。
【請求項28】
半導体基板の表面が、レセプター抗体の各ミクロ位置における結合層への結合を高めるために誘導化されている請求の範囲第27項に記載のデバイス。
【請求項29】
各光検出器が各ミクロ位置の表面に配置されたフォトダイオードを含み、反応は特定アナライトがサンプル中に存在するときフォトダイオードにより光電流に変換される光の光子を生成し、光電流がフォトダイオードが発生する検知信号である請求の範囲第28項に記載のデバイス。
【請求項30】
電子回路が各フォトダイオードに結合した画素単位格子回路及びデルタ−シグマA/D変換回路を含み、各画素単位格子回路は各フォトダイオードからの検知信号を積算するように構成されており、A/D変換回路は積算された検知信号を量化するように構成されている請求の範囲第9項または第29項に記載のデバイス。
【請求項31】
各画素単位格子はアドレス可能であり、電子回路は各画素単位格子を順次アドレス指定するためのアドレス制御回路を更に含み、A/D変換回路はアドレス制御回路によりアドレス指定される画素単位格子回路の積算された検知信号を量化する請求の範囲第30項に記載のデバイス。
【請求項32】
各フォトダイオードが化学反応により生じた光の光子を光子の数に依存するマグニチュードを含む光電流に変換し、各画素単位格子回路が光電流のマグニチュードに依存する割合で変化する電荷を含む容量回路を含み、容量回路により検知信号が積算される請求の範囲第31項に記載のデバイス。
【請求項33】
各フォトダイオードが化学反応により生じた光の光子を各ミクロ位置に適用されたサンプル中のアナライトの濃度に依存するマグニチュードを含む光電流に変換する請求の範囲第32項に記載のデバイス。
【請求項34】
各画素単位格子回路が該画素単位回路がアドレス指定されたとき容量回路の電荷に依存する出力電流を発生し、電子回路はアドレス指定された画素単位格子回路の出力電流を基準電流と比較して、出力電流が基準電流に対して遷移するとき容量回路を初期電荷にリセットするために使用されるフィードバック信号を発生させるための比較器回路をも含む請求の範囲第32項または第33項に記載のデバイス。
【請求項35】
電子回路が出力制御回路を更に含み、前記出力制御回路は各アドレス指定された画素単位格子回路からのフィードバック信号を受け取り、このフィードバック信号に基づく直列出力データ流として出力データ信号を発生し、各ミクロ位置と相関するフィードバック信号遷移の割合がそのミクロ位置で放出されたバイオルミネセンスを示す請求の範囲第34項に記載のデバイス。
【請求項36】
ミクロ位置がアレーとして備えられている請求の範囲第1項〜第24項および第27項〜第34項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
生物学的サンプル中のアナライトを検出し、同定する方法であって、
請求の範囲第1項〜第36項のいずれか一項に記載の超小型電子デバイスを準備するステップ、
生物学的サンプル中に存在するアナライトへの結合に対して特異的なマクロ分子もしくは複数の異なるマクロ分子をデバイス上の各ミクロ位置の表面に結合させるステップ、
サンプルを超小型電子デバイスの表面と接触させてサンプル中に存在するアナライトを各ミクロ位置で表面に結合したマクロ分子と結合させるステップ、
超小型電子デバイスの表面を、各ミクロ位置でマクロ分子に既に結合しているアナライトに結合させるためのバイオルミネセンス発生系の成分を含む他のマクロ分子もしくは複数の他のマクロ分子に暴露するステップ、
デバイスの表面をバイオルミネセンス発生系の他の成分と接触させることによりバイオルミネセンス発生反応を開始するステップ、
各ミクロ位置に光学的に結合した光検出器を用いてバイオルミネセント反応により発生する光の光子を検出するステップであって、
各光検出器はそれぞれのミクロ位置でバイオルミネセンス発生を表す検知信号を発生するステップを含む前記方法。
【請求項38】
各光検出器が発生する検知信号を読みとり、各ミクロ位置でルシフェラーゼ−ルシフェリン反応により生じたバイオルミネセンスを示す出力データ信号を発生させることを更に含む請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項39】
接触ステップと暴露ステップの間に、サンプル中に存在するアナライトが各ミクロ位置で表面に結合したマクロ分子に結合するのに十分な時間待機した後、超小型電子デバイスの表面からサンプルを洗浄することを更に含む請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項40】
マクロ分子が抗体である請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項41】
結合ステップが複数の異なるミクロ位置に複数の異なるレセプター抗体を結合させることを含み、異なる抗体の各々が生物学的サンプル中に存在する異なる特定アナライトの結合に対して特異的である請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項42】
結合ステップが超小型電子デバイスを生物学的サンプルの流体に浸漬させることを含む請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項43】
ルシフェラーゼ−ルシフェリンバイオルミネセンスを用いて生物学的サンプル中のアナライトを検出し同定するためのシステムであって、請求の範囲第1項〜第36項のいずれか一項に記載の超小型電子デバイス及び処理機器を含み、前記処理機器は、各ミクロ位置で生じるバイオルミネセンスを示す出力データ信号を受け取るための超小型電子デバイスに結合した入力インターフェース回路と、各ミクロ位置と結合している位置を含むデータ獲得アレーを蓄積するための記憶回路と、出力デバイス信号に応答して目に見える徴候を発生させるための出力デバイスと、および入力インターフェース回路、記憶回路及び出力デバイスに結合している処理回路とを含み、前記処理回路は、入力インターフェース回路が受け取った出力データ信号を読みとり、出力データ信号を相当するミクロ位置に相関させ、各ミクロ位置に相関させた出力データ信号をデータ獲得アレーに出力データ信号を蓄積させることにより所望の時間積算させ、及び出力デバイスに適用したときに出力デバイスによりサンプル中のアナライトの存在に関連する目に見える徴候を発生させる出力デバイス信号を発生させるように構成されている前記システム。
【請求項44】
超小型電子デバイスが、
分析される生物学的サンプルを受容するための、各ミクロ位置が結合層を含む複数のミクロ位置のアレーと、
各ミクロ位置の結合層に結合した、アレーが受容したサンプル中に存在するアナライトへの結合に対して特異的な別個の抗体と、
各ミクロ位置に光学的に結合した、各々が相当するミクロ位置で生じたバイオルミネセンスに応じた検知信号を発生させるように構成されている光検出器と、
各光検出器に結合しており、該光検出器が発生した検知信号を読みとり、各ミクロ位置でルシフェラーゼ−ルシフェリン反応により生じたバイオルミネセンスを示す出力データ信号を発生させるように構成されている電子回路と
を含む請求の範囲第43項に記載のシステム。
【請求項45】
各ミクロ位置が半導体基板の表面上に配置されており、各光検出器は各ミクロ位置で表面上に配置されているフォトダイオードを含み、バイオルミネセント発生反応がアナライトが存在するときフォトダイオードにより光電流に変換される光の光子を発生させ、および光電流はフォトダイオードにより発生される検知信号である請求の範囲第44項に記載のシステム。
【請求項46】
超小型電子デバイスの電子回路が出力データ信号を含む直列データ流を発生する出力制御回路を含み、処理機器の入力インターフェース回路は超小型電子デバイスから直列データ流を受け取るように構成された直列インターフェース回路を含む請求の範囲第44項に記載のシステム。
【請求項47】
直列データ流が各ミクロ位置でルシフェラーゼ−ルシフェリン反応により生じるバイオルミネセンスを表すデータを含む請求の範囲第46項に記載のシステム。
【請求項48】
出力デバイスが電子ディスプレイを含み、目に見える徴候がディスプレイにより発せられる光を含む請求の範囲第44項に記載のシステム。
【請求項49】
記憶回路が各ミクロ位置でアナライトを同定するアナライトマップをも蓄積しており、処理回路はサンプル中に存在するアナライトを同定するためにデータ獲得アレー中の積算された出力データ信号をアナライトマップと相関させ、出力デバイス信号が目に見える徴候がサンプル中に存在する特定アナライトを同定するように発生される請求の範囲第44項に記載のシステム。
【請求項50】
処理機器が、出力データ信号に対する所望の積算時間を決定すべく処理回路が使用する所望積算時間信号を発生させるために処理回路に結合した入力デバイスを更に含むことを特徴とする請求の範囲第44項に記載のシステム。
【請求項51】
バイオルミネセンス発生系が、サンゴ虫類、有櫛動物、腔腸動物、軟体動物、魚、貝虫、昆虫、細菌、甲殻類、環形動物及び地虫類から単離されるバイオルミネセンス発生系からなる群から選択される請求の範囲第44項に記載のシステム。
【請求項52】
感染性微生物を検出するための請求の範囲第43項〜第50項のいずれか一項に記載のシステム用キットであって、
(a)請求の範囲第1項〜第36項のいずれか一項に記載の超小型電子デバイス、
(b)抗リガンド、
(c)バイオルミネセンス発生系の成分及び感染性微生物の表面上のエピトープと特異的に結合する抗リガンドからなる複合体を含む第1組成物、および
(d)バイオルミネセンス発生系の他の成分を含む第2組成物、
を含む前記キット。
【請求項53】
バイオルミネセンス発生系の成分がルシフェラーゼおよび/またはルシフェリンである請求の範囲第52項に記載のキット。
【請求項54】
バイオルミネセンス発生系が、サンゴ虫類、有櫛動物、腔腸動物、軟体動物、魚、貝虫、昆虫、細菌、甲殻類、環形動物及び地虫から単離されるバイオルミネセンス発生系からなる群から選択される請求の範囲第52項に記載のキット。
【請求項55】
バイオルミネセンス発生系の成分が、Aequorea、Vargula、Renilla、Obelin、Porichthys、Odontosyllis、Aristostomias、Pachystomias、Gonadostomias、Gaussia、Halisturia、チスイイカ、Glyphus、Mycotophids(魚類)、Vinciguerria、Howella、Florenciella、Chaudiodus、Melanocostus、Paracanthus、Atolla、Pelagia、Pitilocarpus、Acanthophyra、Siphonophore、Periphylla、Cavarnularia、Ptilosarcus、Stylatula、Acanthoptilum、Parazoanthus、ウミエラ(Stylata)、Chiroteuthis、Eucleoteuthis、Onychoteuthis、Watasenia、コウイカ、Sepiolina、小エビ、深海魚、ホタル、および細菌系からなる群から選択される請求の範囲第53項に記載のキット。
【請求項56】
緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及びフィコビリンタンパク質からなる群から好ましくは選択される蛍光タンパク質を含む組成物をさらに含む請求の範囲第52項〜第55項のいずれか一項に記載のキット。
【請求項57】
検出または同定されるアナライトが感染性物質である請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項58】
バイオルミネセンス発生系が緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及びフィコビリンタンパク質からなる群から好ましくは選択される蛍光タンパク質をさらに含む請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項59】
感染性微生物を検出するための請求の範囲第43項〜第50項のいずれか一項に記載のシステム用キットであって、
(a)請求の範囲第1項〜第36項のいずれか一項に記載の超小型電子デバイス、
(b)超小型電子デバイスの表面上に固定した、異なる感染性微生物に特異的に結合する1つの抗リガンドまたは複数の抗リガンド、および
(c)複合体または複数の複合体を含む第1組成物
を含み、各複合体が感染性微生物の表面上のエピトープに特異的に結合する第2の抗リガンドに結合したバイオルミネセンス発生系の成分を含む前記キット。
【請求項60】
(d)バイオルミネセンス発生系の残りの成分を含む第2組成物をさらに含む請求の範囲第59項に記載のキット。
【請求項61】
第1のミクロ位置で結合層に結合した抗体が第1の特定アナライトの結合に対して特異的であり、第2のミクロ位置で結合層に結合した抗体が第1の特定アナライトとは異なる第2の特定アナライトの結合に対して特異的である請求の範囲第44項に記載のシステム。
【請求項62】
バイオルミネセンス発生系の成分がルシフェラーゼまたはルシフェリンである請求の範囲第37項に記載の方法。
【請求項63】
バイオルミネセンス発生系が緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及びフィコビリンタンパク質からなる群から好ましくは選択される蛍光タンパク質をさらに含む請求の範囲第5項に記載のデバイス。
【請求項64】
基板と、
前記基板上に規定された複数のミクロ位置であって、各ミクロ位置がマクロ分子を結合するためのものである前記ミクロ位置と、
各ミクロ位置に光学的に結合している個別の光検出器であって、各光検出器は他のミクロ位置に光学的に結合している光検出器とは独立していて、各光検出器はミクロ位置で発光化学反応が起こったときにその位置で生じた光の光子に応じて検知信号を発生するように構成されている光検出器と、
各光検出器に結合しており、各光検出器より発生した検知信号を読みとり且つ発光化学反応により各ミクロ位置で生じた光を示す出力データ信号を発生させるように構成されている電子回路と、および
デバイスの表面の全部もしくは一部またはデバイスの表面の上に、発生した光を反射させて光検出器で検出される光信号を強めるために反射性材料の層を含む超小型電子デバイス。
【請求項65】
一体化された各光検出器が、それぞれのミクロ位置において表面の一部に配置されているフォトダイオードを含み、該フォトダイオードは該ミクロ位置で化学反応により生じた光の光子を検知信号を規定する光電流に変換する、請求の範囲第1ないし36項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項66】
バイオルミネセンス発生系の成分が、細菌類、きのこ類、双鞭毛藻類、腔腸動物類、有櫛動物類、環形動物類、甲殻類、カイムシ類、カイアシ類、昆虫類、甲虫類、双翅目昆虫類、棘皮動物類、脊索動物類、尾索動物類および魚類のバイオルミネセンス発生系からなる群より選択される、請求の範囲第1ないし22項および第24ないし36項のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項67】
バイオルミネセンス発生系の成分が、蛇尾類、ナマコ類、軟骨魚類類、硬骨魚類、Pony魚類(ponyfish)、ヒカリキンメダイ類(flashlight fish)、アンコウ類、バトラコイデス類、Midwater魚類、海洋多毛類、発光キノコバエ類、クラゲ類、ヒドロポリプ類、ウミシイタケ類、地虫類、軟体動物類、カサガイ類、深海魚類、二枚貝類、ホタル類、コメツキムシ類、ミバエ類およびイカ類のバイオルミネセンス発生系からなる群より選択される、請求の範囲第66項に記載のデバイス。
【請求項68】
バイオルミネセンス発生系の成分が、Aequorea、Vargula、Renilla、Obelin、Porichthys、Odontosyllis、Aristostomias、Pachystomias、Gonadostomias、Gaussia、Halisturia、チスイイカ、Glyphus、Mycotophids(魚類)、Vinciguerria、Howella、Florenciella、Chaudiodus、Melanocostus、Paracanthus、Atolla、Pelagia、Pitilocarpus、Acanthophyra、Siphonophore、Periphylla、Cavarnularia、Ptilosarcus、Stylatula、Acanthoptilum、Parazoanthus、ウミエラ、Chiroteuthis、Eucleoteuthis、Onychoteuthis、Watasenia、コウイカおよびSepiolinaからなる群から選択される請求の範囲第67項に記載のデバイス。
【請求項69】
ルシフェラーゼが、細菌類、きのこ類、双鞭毛藻類、腔腸動物類、有櫛動物類、環形動物類、甲殻類、カイムシ類、カイアシ類、昆虫類、甲虫類、双翅目昆虫類、棘皮動物類、脊索動物類、尾索動物類および魚類のルシフェラーゼからなる群より選択される、請求の範囲第52ないし54項および第56項のいずれか一項に記載のキット。
【請求項70】
ルシフェラーゼが、蛇尾類、ナマコ類、軟骨魚類、硬骨魚類、Pony魚類(ponyfish)、ヒカリキンメダイ類(flashlight fish)、アンコウ類、バトラコイデス類、Midwater魚類、海洋多毛類、発光キノコバエ類、クラゲ類、ヒドロポリプ類、ウミシイタケ類、地虫類、軟体動物類、カサガイ類、深海魚類、二枚貝類、ホタル類、コメツキムシ類、ミバエ類およびイカ類のルシフェラーゼからなる群より選択される、請求の範囲第69項に記載のキット。
【請求項71】
ルシフェラーゼが、Aequorea、Vargula、Renilla、Obelin、Porichthys、Odontosyllis、Aristostomias、Pachystomias、Gonadostomias、Gaussia、Halisturia、チスイイカ、Glyphus、Mycotophids(魚類)、Vinciguerria、Howella、Florenciella、Chaudiodus、Melanocostus、Paracanthus、Atolla、Pelagia、Pitilocarpus、Acanthophyra、Siphonophore、Periphylla、Cavarnularia、Ptilosarcus、Stylatula、Acanthoptilum、Parazoanthus、ウミエラ、Chiroteuthis、Eucleoteuthis、Onychoteuthis、Watasenia、コウイカおよびSepiolinaのルシフェラーゼからなる群から選択される請求の範囲第70項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−145545(P2006−145545A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349173(P2005−349173)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【分割の表示】特願平10−527031の分割
【原出願日】平成9年12月12日(1997.12.12)
【出願人】(505410575)プロルーム・リミテツド (1)
【Fターム(参考)】