説明

感温制御システム

【課題】 電気ストーブのように通電により発熱する発熱体を用いるもので、制御部を有しない暖房機器であっても、使用者のいる場所が適温になるように制御できるようにするとともに、暖房温度を上げ過ぎることによるエネルギーロスを抑制する。
【解決手段】 携帯型の温度情報端末機1と、暖房機器M用の温度制御装置2とを含む感温制御システムであって、温度情報端末機1は、温度センサ3と、この温度センサ3により得られた温度情報を無線送信する端末送信部5とを備え、温度制御装置2は、暖房機器Mの電源供給経路L上に設けられ、温度情報端末機1からの送信を受信する本体受信部8と、この本体受信部8により受信された温度情報に基づいて暖房機器Mへの電流供給を制御する制御部9とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として通電により発熱する発熱体を用いた暖房機器の遠隔制御を可能にする感温制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内を暖める暖房機器としては、電気ストーブから、温風ヒータ、エアコン(空調機)まで種々のものがある。
【0003】
このうち、電気ストーブのように通電により発熱する発熱体を用いた暖房機器は、発熱状態を制御する制御部を備えていないのが普通で、一旦、電源を投入すると、常時フルパワーで暖房を行う。そのため、場合によっては、暖房が進み、室内の温度が必要以上に上昇することがあり、快適さが失われるばかりか、省エネルギーの面で好ましくない。
【0004】
上記の場合、従来の電気ストーブ等の暖房機器では、使用者がその機器の設置場所に行って、電源スイッチを切るか、あるいは、電流を絞るための調節スイッチがある場合はそのスイッチを切り替える等の操作をしなければならず、面倒である。
【0005】
一方、エアコンには、設定温度に応じて運転状態を制御する制御部が内蔵されていて、その設定温度は、使用者の手元のリモートコントローラ(リモコン)を介して変更可能であり、暖房運転では、室内を使用者が希望する温度に暖房して、快適さを維持するとともに、温度を上げ過ぎることによるエネルギーロスを抑制することができる。
【0006】
しかしながら、このようなエアコンにおいて、たとえ暖房温度が設定温度になっていても、使用者のいる場所が、適温に暖房されているとは限らない。これは、使用者のいる場所の温度情報がエアコンの制御部には取り込まれていないためである。
【0007】
これに対して、近年、使用者のいる場所の温度情報をエアコンの制御部に取り込めるようにしたシステムが考えられている(特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1で提案されているシステムは、衣類に付される無線ICタグを利用するもので、その無線ICタグには温度検出手段が設けられている。該無線ICタグ添付の衣類を着た使用者が、室内に入ると、エアコンの制御部は、無線ICタグと通信することで、使用者がいる場所の温度情報を取り込む。これにより、エアコンの制御部は、所定の衣類を着た使用者がいる場所が適温になるように運転を制御することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−241124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のように無線ICタグを通じて、使用者のいる場所の温度情報が取り込めるのは、暖房機器であるエアコン側に、元々高度の運転制御ができる制御部があるためである。電気ストーブのような暖房機器には、高度の制御ができる制御部がないのが普通であるから、これには、上記のような無線ICタグを利用する制御技術は、容易に採用しがたい。
【0011】
本発明は、電気ストーブのように、通電により発熱する発熱体を用いたもので、制御部を有しない暖房機器であっても、使用者がいる場所の温度情報を取り込めるようにして、使用者がいる場所が適温になるように制御できるようにするとともに、暖房温度を上げ過ぎることによるエネルギーロスを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を達成するために、携帯型の温度情報端末機と、暖房機器用の温度制御装置とを含む感温制御システムであって、上記温度情報端末機は、温度センサと、この温度センサにより得られた温度情報を無線送信する端末送信部とを備え、上記温度制御装置は、暖房機器の電源供給経路上に設けられるもので、上記温度情報端末機からの送信を受信する本体受信部と、この本体受信部により受信された温度情報に基づいて暖房機器への電流供給を制御する制御部とを備える感温制御システムを構成した。
【0013】
上記構成の感温制御システムでは、使用者がその近くに温度情報端末機を設置しておくと、その設置場所の雰囲気温度が温度センサにより検出され、この検出温度の情報は、端末送信部から温度制御装置に送られる。温度制御装置の制御部は、検出温度の情報に基づいて、暖房機器への供給電流を制御する。
【0014】
例えば、温度情報端末機がある場所(通常は使用者がいる場所でもある)の温度が予め設定されている温度より高い場合は、制御部は、暖房機器への供給電流を遮断もしくは低電流に絞る。これで、暖房機器の発熱量が減少方向に制御されて、温度情報端末機のある場所が適温に暖房される。
【0015】
本発明の実施形態として、上記温度制御装置は、受信部と、電流制限手段とを備えたプログラマブルコントローラ(PLC)で構成されていることが望ましい。
【0016】
上記実施形態では、現在広く使用されているプログラマブルコントローラを採用するので、温度制御装置、ひいては感温制御システムの全体を安価に構築することができ、また、プログラマブルコントローラでは、複雑な条件設定が可能で、精度のよい制御ができる。
【0017】
さらに、本発明の他の実施形態として、上記温度情報端末機は、温度設定操作部と、この温度設定操作部で設定された設定温度および上記温度センサにより検出された検出温度の値を表示する表示部とを備え、上記端末送信部は、上記設定温度および検出温度の値を送信するものであり、上記温度制御装置の制御部は、受信された上記設定温度および検出温度の値に基づいて暖房機器への電流供給を制御することが望ましい。
【0018】
この実施形態では、制御の基準となる温度を設定することで、使用者の着衣等の状況に合わせた制御を行わせることができ、また、表示部により設定温度および検出温度の値を視認できるので、操作に間違いが生じにくい。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態として、上記温度制御装置は、暖房機器に供給される電流を検出する電流検出部と、この電流検出部で得られた電流情報を無線送信する本体送信部とを備え、上記温度情報端末機は、上記温度制御装置の本体送信部からの送信を受信する端末受信部を備え、上記表示部は、上記端末受信部により受信された電流情報を表示するものであることが望ましい。
【0020】
この実施形態では、使用者の手元にある温度情報端末機の表示部を見るだけで、暖房機器への電流供給状況、すなわち、暖房機器の動作状態を確認することができ、暖房機器の消し忘れ等の安全を損なう事態を未然に防止するのに役立つ。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電気ストーブのように通電により発熱する発熱体を用いるもので、制御部を有しない暖房機器であっても、使用者がいる場所の温度情報を取り込むことで、使用者のいる場所が適温になるよう制御することができ、また、暖房温度を上げ過ぎることによるエネルギーロスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る感温制御システムの使用状態を示す外観図。
【図2】第1の実施形態の感温制御システムの構成を示す図で、(A)は温度情報端末機の構成図、(B)は温度制御装置の構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る感温制御システムの温度制御装置の構成図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る感温制御システムの温度情報端末機の構成図。
【図5】本発明の第4の感温制御システムの構成を示す図で、(A)は温度情報端末機の構成図、(B)は温度制御装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。本発明の第1の実施形態では、図1に示すように、本発明の感温制御システムは、携帯型の温度情報端末機1と、暖房機器M用の温度制御装置2とからなる。
【0024】
温度情報端末機1は、使用者が暖房機器Mを使用する場合に、通常、使用者の近傍に配置される。温度制御装置2は、暖房機器Mの電源供給路上に設けられるもので、具体的には、暖房機器Mの電源コードMcが温度制御装置2に設けられているコンセント2aに接続され、温度制御装置2から導出された電源コード2bが、商用電源のコンセントScに接続される。暖房機器Mは、ここでは、通電により発熱する発熱体を用いるものであればよく、周囲温度等に応じて発熱量を制御するような制御部を有しないものである。
【0025】
上記温度情報端末機1の内部構成を説明すると、温度情報端末機1は、図2の(A)に示すように、熱電対のような温度センサ3と、この温度センサ3の検出信号を処理する信号処理部4と、この信号処理部4で処理された温度センサ3の検出信号を温度情報として無線送信する端末送信部5と、送信すべき温度情報を表示する表示部6と、バッテリー7とを備えている。
【0026】
上記の温度情報端末機1では、温度センサ3により周囲温度が検出され、その検出温度が温度情報して端末送信部5から送信されるが、その送信は、電源投入後、一定時間毎に行うようにしてもよいし、この温度情報端末機1に設けられた電源スイッチもしくは他のスイッチ(図示せず)を使用者が操作する度に、送信するようにしてもよい。端末送信部5による無線送信には、電波による送信のほか、赤外線や超音波による、通信線を介さない送信が含まれる。
【0027】
一方、温度制御装置2は、図2の(B)に示すように、温度情報端末機1の端末送信部5からの送信を受信する本体受信部8と、この本体受信部8により受信された温度情報に基づいて暖房機器Mへの電流供給を制御する制御部9と、暖房機器Mに供給される電源電流を検出する電流検出部10とを備えている。図2の(B)において、符号Lは、商用電源を暖房機器Mに供給する電源ラインを示している。
【0028】
上記の制御部9は、スイッチや抵抗器等の電流制限手段を含むもので、本体受信部8により受信された温度情報である検出温度が、予め設定されている温度より高い場合、暖房機器Mの発熱量が減少するように、上記電流制限手段により、暖房機器Mへの電源電流を遮断もしくは低電流に絞る。検出温度が設定温度より低く、かつ、電流検出部10で検出される電源電流が既に遮断されているか、低電流である場合は、電源電流を増加方向に制御する。
【0029】
なお、温度制御装置2では、暖房機器Mへの電源ラインLから動作電源を得るようにしてもよいし、別にバッテリーを設けて、このバッテリーから動作電源を得るようにしてもよい。
【0030】
上記構成の感温制御システムでは、使用者がその近くに温度情報端末機1を設置して、その温度情報端末機1の電源を投入すると、設置場所の雰囲気温度が温度センサ3により検出され、この検出温度の情報は、端末送信部5から温度制御装置2に送られて、温度制御装置2に取り込まれる。そして、温度制御装置2の制御部9により、検出温度の情報に基づいて暖房機器Mへの供給電流が制御される。
【0031】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る感温制御システムの温度制御装置を示している。この実施形態の温度制御装置2Aは、プログラマブルコントローラ(PLC)11と、暖房機器Mへの電源ラインL上に設けられる、スイッチや抵抗器等からなる電流制限手段12と、温度情報端末機1の端末送信部5からの送信を受信する本体受信部8とから構成されている。
【0032】
プログラマブルコントローラ11は、CPU13と、システムメモリ14、プログラムメモリ15、ワークメモリ16等のメモリと、入出力インタフェース17と、通信インタフェース18とを互いにバス接続して構成されたものである。そして、入出力インタフェース17に電流制限手段12が接続され、通信インタフェース18に本体受信部8が接続されている。
【0033】
この実施形態では、現在広く使用されているプログラマブルコントローラ11を採用するので、温度制御装置2Aを安価に製作することができる。
【0034】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る感温制御システムの温度情報端末機を示している。この実施形態の温度情報端末機1Bは、第1の実施形態の温度情報端末機1と同様に、温度センサ3と、信号処理部4と、端末送信部5と、表示部6と、バッテリー7とを備えるほか、温度設定操作部19を備えている。そして、この実施形態では、端末送信部5は、温度センサ3により検出された検出温度のほか、上記温度設定操作部19で設定された設定温度を無線送信するようになっている。また、表示部6は、上記設定温度および検出温度とを表示するようになっている。
【0035】
なお、この第3の実施形態での温度情報端末機1Bに対応する温度制御装置は、構成上では、第1の実施形態の温度制御装置1と変わりがなく、特に図示しない。その動作を、第1の実施形態の温度制御装置1に準じて説明すると、第3の実施形態の温度制御装置では、本体受信部8は、端末送信部5から送信される設定温度と検出温度の温度情報を受信して制御部9に送るものであり、制御部9は、受信された設定温度と検出温度との温度情報に基づいて暖房機器Mへの電流供給を制御する。
【0036】
この第3の実施形態では、温度制御の基準となる温度を設定することで、使用者の着衣等の状況等に合わせた温度制御を行うことができるので、より快適な暖房が可能となり、また、設定温度および検出温度を表示部5により視認できるので、操作に間違いが生じにくい。
【0037】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る感温制御システムを示すもので、同図の(A)は温度情報端末機を、(B)は温度制御装置を、それぞれ示している。
【0038】
この第4の実施形態の温度制御装置2Cは、第1の実施形態の温度制御装置2と同様に、端末送信部5からの送信を受信する本体受信部8と、この本体受信部8により受信された温度情報に基づいて暖房機器Mへの電流供給を制御する制御部9と、暖房機器Mに供給される電源電流を検出する電流検出部10とを備えるほか、電流検出部10で得られた検出電流値を電流情報として無線送信する本体送信部20とを備えている。
【0039】
一方、温度情報端末機1Cは、第3の実施形態の温度情報端末機1Bと同様に、温度センサ3と、信号処理部4と、端末送信部5と、温度設定操作部19と、表示部6と、バッテリー7とを備えるほか、温度制御装置2Cの上記本体送信部20からの送信を受信する端末受信部21を備えている。そして、表示部6は、温度設定操作部19で設定された設定温度および温度センサ3により検出された検出温度のほか、上記端末受信部21により受信された電流情報を表示するようになっている。
【0040】
この実施形態では、使用者の手元にある温度情報端末機1Cの表示部6を見ることで、暖房機器Mへの電流供給状況、すなわち、暖房機器Mの動作状態を確認することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 温度情報端末機
2 温度制御装置
3 温度センサ
5 端末送信部
8 本体受信部
9 制御部
M 暖房機器
L 電源ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型の温度情報端末機と、暖房機器用の温度制御装置とを含む感温制御システムであって、
上記温度情報端末機は、温度センサと、この温度センサにより得られた温度情報を無線送信する端末送信部とを備え、
上記温度制御装置は、暖房機器の電源供給経路上に設けられるもので、上記温度情報端末機からの送信を受信する本体受信部と、この本体受信部により受信された温度情報に基づいて暖房機器への電流供給を制御する制御部とを備える、
ことを特徴とする感温制御システム。
【請求項2】
上記温度制御装置は、受信部と、電流制限手段とを備えたプログラマブルコントローラ(PLC)で構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の感温制御システム。
【請求項3】
上記温度情報端末機は、温度設定操作部と、この温度設定操作部で設定された設定温度および上記温度センサにより検出された検出温度の値を表示する表示部とを備え、上記端末送信部は、上記設定温度および検出温度の値を送信するものであり、
上記温度制御装置の制御部は、受信された上記設定温度および検出温度の値に基づいて暖房機器への電流供給を制御する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の感温制御システム。
【請求項4】
上記温度制御装置は、暖房機器に供給される電流を検出する電流検出部と、この電流検出部で得られた電流情報を無線送信する本体送信部とを備え、
上記温度情報端末機は、上記温度制御装置の本体送信部からの送信を受信する端末受信部を備え、上記表示部は、上記端末受信部により受信された電流情報を表示する、
ことを特徴とする請求項3に記載の感温制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−216746(P2010−216746A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65502(P2009−65502)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】