説明

感熱記録媒体の製造方法およびそれにより製造された感熱記録媒体

【課題】カールの発生が小さく取り扱いが良好であり、地肌かぶりも少なく、さらにシート状とした際に媒体同士の密着がなく、透過画像診断等に好適に用いることができる感熱記録媒体の容易な製造方法とそれにより得られる感熱記録媒体を提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムの一面上に、ロイコ染料、融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、水または有機溶剤からなる塗工液を用いて塗膜を形成し、塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となる条件で乾燥する。必要に応じ、感熱記録層上に、少なくともバインダー樹脂、水または有機溶剤からなる塗工液を用いて塗布により保護層を設ける。また、支持体の他面上に、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、水または有機溶剤からなる塗工液を用いて塗布によりバック層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈色性を有する電子供与性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した感熱記録媒体に関し、特にX線、MRIあるいはCT等により取得された画像を、シャウカステン(Schaukasten:医療用写真観察装置)によって透過画像診断したり参照したりするために記録する医療用画像形成シートとして好適に用いられるカールの少ない感熱記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無色もしくは淡色のロイコ染料(発色性染料)と、この発色性染料を接触時に発色させる顕色剤との間の、熱・圧力などによる発色反応を利用した記録材料は種々提案されている。
その一つである感熱記録材料は、現像、定着等の煩雑な処理を施す必要がなく、比較的簡単な装置で短時間に記録できること、騒音の発生が少ないこと、さらにコストが安いこと等の利点を有することから、電子計算機、ファクシミリ、券売機、ラベルプリンター、レコーダー等、各種装置の記録材料として有用である。
【0003】
上記感熱記録材料は、一般には支持体として紙が用いられ、前述の発色性染料および顕色剤が紙の上に塗布されて製造されている。
一方、近年、銀塩X線フィルムの湿式プロセスに起因する廃液処理問題への対策、および画像のデジタル化の流れから、この要請に対応できしかも簡易にアウトプットできる透明なドライフィルムを用いたシステムが医療分野を中心に求められている。
このような要求の中でそのプロセスの簡便さから感熱プロセスに対しても透明な感熱記録フィルムが求められている。この透明な感熱記録フィルムは、例えば、X線、MRIあるいはCT等の画像をシャウカステンによって透過画像診断する場合の医療用画像形成シート、すなわち医療用記録媒体として使用される。
【0004】
しかし、透明感熱記録材料は構成層として、表面側に感熱記録層および表面保護層を備えており、それぞれの層中に、透明性、濃度階調(Y特性)、結着性やバリア性の機能を付加させるため、一般の感熱記録材料に比較して多量の樹脂を含有している。
このため、上記各構成層を溶液塗布法により形成する際、塗布乾燥後における各層中の樹脂の収縮により、塗膜の内部応力の上昇に伴う歪みが発生して感熱記録層を形成した表面側の方向にカールが発生する。従って、シャウカステンに装着する操作等において、取扱性が悪いという欠点があった。
【0005】
また、感熱記録材料の用途も多様化し、例えば、感熱記録材料をシート状で重ね合せ、プリントするなどの形で用いられることが多くなってきおり、その場合には記録材料の表面と裏面が接した状態からプリンターへ確実に1枚づつ給紙されなければならない。しかし、透明感熱記録材料はフィルムがベースであるため、摩擦により静電気が発生しやすく、さらに一般の感熱記録材料に比較して多量の樹脂を含むために、記録材料が密着しやすいという問題がある。そのため、プリンターへ1枚づつ給紙できず、複数枚がプリンターに給紙され重送が発生してしまうという欠点があった。
【0006】
上記透明な感熱記録フィルムにおけるカール問題を解消するため、種々の検討がなされ、その対策手法がいくつか提案されている。
例えば、本出願人はすでに、透明支持体の一方の面に感熱記録層と、その感熱記録層上に保護層を設けた感熱記録材料の記録面を内側に巻いてロール状感熱記録材料とする場合に、ロール形成前に記録面とは反対側面に、例えばアクリル樹脂を主体とするバック層を設けてバックカール処理を施すことにより、ロール状の製品の巻きぐせカールを改善する手法を提案している(例えば、特許文献1参照。)。
上記手法によれば、ロール状製品の巻きぐせカールは改善されるが、プリンター等において給紙されるシート状、例えば、医療用画像形成シートサイズの感熱記録材料とした場合のカール防止に対して適合しているとは言えず、シート状感熱記録材料のカール防止条件として十分ではない。なお、特許文献1では、感熱記録層、保護層、バック層等の形成条件(温度や時間など)に関しては記載されていない。
【0007】
また、同様に本出願人は、透明支持体上に感熱記録層、保護層を設けた感熱記録材料の裏面に、有機溶剤に溶解したTg55℃以上である非水溶性ポリエステル樹脂からなるバック層を設け、あるいは好ましくはバック層上にさらに帯電防止層を設けることによって、カールが少なく、またごみ・ほこりの付着による画像欠陥を改善する手法を提案している(例えば、特許文献2参照。)。
上記手法によれば、記録層における樹脂のTgが比較的低い場合にはカールの低減を図ることができる。しかし、上記感熱記録材料は、裏面の樹脂のTgを規定しているだけなので、記録層の樹脂のTgが高い場合は、カールは改善せず、例えば、医療用画像形成シートなどの透明な感熱記録フィルムのカール防止対策としては十分ではない。なお、特許文献2では、感熱記録層、保護層、バック層等の形成条件(温度や時間など)に関しては記載されていない。
【0008】
また、同様に本出願人は、透明支持体の一方の面に、感熱記録層、保護層を設けた感熱記録材料の裏面に、有機溶剤に溶解し感熱記録層のバインダー樹脂のTgよりもTgが高い樹脂、好ましくはアクリル樹脂からなる第一バック層を設け、さらに第一バック層上に帯電防止層である第二バック層を設けることによって、カールが少なく、ごみ・ほこりの付着による画像欠陥を改善する手法を提案している(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、上記手法における感熱記録材料では裏面(第一バック層)と表面(感熱記録層)に用いる樹脂のTgの違いを規定しているだけなので、例えば、感熱記録層に熱収縮率の大きな樹脂を使用した場合、第一バック層のTgをバインダー樹脂のTgよりも高くするだけではカールを改善する効果は極めて小さなものになる。このため、医療用画像形成シートなどの透明な感熱記録フィルムのカール防止対策として十分とは言えない。
【0009】
また、別の例として、透明樹脂フィルムの片面に、感熱記録層および水性樹脂を主成分とする保護層を有して記録面とするシート状の透明感熱記録媒体を、型付け手段によりカール付け加工を施すことにより、印画後に逆方向にカールすることを低減する手法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
すなわち、透明感熱記録媒体を記録時搬送方向が鉛直方向になるように端部中央部を支点として吊り下げた場合に、鉛直方向に対して直角に横断する方向から見たシート断面が、記録面を上側にして凸の方向である凸形状に型付け手段によりカール付け加工しておくものである。
しかしこの方法でのカール付けは、感熱記録層等を塗布乾燥してシートのカール形状が決まった後で施す矯正処置であるため、例えば、フラット状に包装された製品を常温で長期間もしくは40℃程度の環境下で数時間〜数日間保管すると矯正効果は小さくなり、印画後のカール改善効果は不十分となる問題が発生することが分っている。
【0010】
また、透明フィルムの一方の面に感熱記録層と水性樹脂を主成分とする保護層を有し、透明フィルムの他方の面に、疎水性樹脂と、疎水性樹脂100質量部に対してキサンタンガム、ラムザンガムあるいはウェランガムなどの保水性の高い調湿剤2〜30質量部を含有する裏面層を有する感熱記録材料構成とすることで、室温における相対湿度が20〜80%の環境下でもカールを少なくする手法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
しかし、この手法は、保護層が水性樹脂主体である場合に限定された構成であり、保護層が疎水性樹脂主体の場合にはカールを改善する対策にはならない。なお、特許文献5では、感熱記録層、保護層、裏面層等の形成条件(温度や時間など)に関しては記載されていない。
【0011】
一方、従来技術として、カール改善を目的するものではないが、感熱記録媒体を製造する際に、塗布乾燥時の温度を規定しているものがある。
例えば、本出願人はすでに、感熱記録液を塗工後、乾燥ドライヤーに供給する空気を絶対湿度で0.012(kgH2O/kg乾き空気)以下で、温度を65±10℃の範囲として乾燥することにより、透明感熱記録媒体の微小空隙をなくし、透明性が高く、且つ地肌かぶりの少ない感熱記録媒体を製造する方法を提案している(例えば、特許文献6参照。)。
あるいは他の例として、感熱記録材料用塗布液を塗布した後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面温度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することにより、サーマルヘッドの走行性が優れ、潤滑剤の白化やヘッド汚れのない感熱記録材料を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
また別の例として、支持体上に、特定(4−ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド)の電子受容材料を含む塗布液をカーテン塗布して感熱記録層を形成し、且つ恒率乾燥過程における最高表面温度を55℃以下として乾燥させることにより、高画質画像が得られ、サーマルヘッドの汚れの少ない感熱記録材料を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。
上述のように特許文献6〜特許文献8はそのいずれに於いても、本件発明の製造方法における温度範囲とはかけ離れているばかりでなく、カール改善に関しては全く効果のないものである。
【0012】
【特許文献1】特開平8−318675号公報
【特許文献2】特開平10−175373号公報
【特許文献3】特開2004−284090号公報
【特許文献4】特開2004−122749号公報
【特許文献5】特開2005−081797号公報
【特許文献6】特開2002−240434号公報
【特許文献7】特開2004−130580号公報
【特許文献8】特許第3474557号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、カールの発生が小さく取り扱いが良好であり、地肌かぶりも少なく、さらにシート状とした際に媒体同士の密着がなく印刷時における重送が防止された、透過画像診断等に好適に用いることができる感熱記録媒体の容易な製造方法とそれにより得られる感熱記録媒体を提供することを目的とする。
特に、製造方法においては塗工液を用いた溶液塗布方式を適用し、且つ感熱記録媒体を構成する感熱記録層、バック層等に使用する材料、とりわけバインダー樹脂の選定にできるだけ制約を与えずに目的とする感熱記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムを支持体とし、その一面上に溶液塗布により設けられる感熱記録層、保護層、あるいは支持体の他面上に溶液塗布法により設けられるバック層の各乾燥工程の処理条件、すなわち、乾燥工程で計測される塗膜の表面温度と時間を厳密に制御することで上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0015】
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、
且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
前記保護層の形成には、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて塗布により塗膜を形成する工程と、該形成された塗膜を乾燥して保護層とする工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が乾燥の全過程で100℃を超えないように加熱制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法である。
【0017】
また、本発明は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設け、他面上にバック層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層とバック層の形成順位はいずれが先でもよく、
該感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
該バック層の形成には、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなるバック層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥してバック層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、しかも乾燥の全過程で100℃を超えないように制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設け、他面上にバック層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記支持体の一面上に感熱記録層と保護層を形成する順位と他面上にバック層を形成する順位はいずれが先でもよく、
該感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
該保護層の形成には、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて塗布により塗膜を形成する工程と、該形成された塗膜を乾燥して保護層とする工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が乾燥の全過程で100℃を超えないように加熱制御し、且つ
該バック層の形成には、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなるバック層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥してバック層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、しかも乾燥の全過程で100℃を超えないように制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法である。
【0019】
さらに、本発明は、上記いずれかに記載の感熱記録媒体の製造方法において、前記顕色剤が、下記一般式(1)で表されるサリチル酸誘導体であることを特徴とする。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R1は炭素数4〜10の直鎖のアルキル基またはアルキルアミノ基を表す。)
【0022】
また、本発明は、上記いずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする感熱記録媒体に係るものである。
【0023】
さらに、本発明は、上記感熱記録媒体の製造方法において、前記媒体が、透過画像診断に用いられる医療用記録媒体であることを特徴とする。
【0024】
そして、本発明は、上記感熱記録媒体の製造方法において、前記記録媒体における支持体の厚さが、100〜250μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造方法、すなわち、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設けた感熱記録媒体の感熱記録層乾燥工程において、塗膜の表面温度を加熱制御(1〜30秒の間105℃〜150℃に制御)すると、冷却過程で感熱記録層の収縮とほぼ同時に支持体も収縮し、カール発生を防止することができる。これにより、例えば、X線等の医療用画像形成シートとして用いた場合にもシャウカステンへ装着しやすく操作や取扱いが容易である。
また、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設けた構成とし、感熱記録層乾燥工程における塗膜の表面温度を上記同様に加熱制御すると共に、保護層乾燥工程における塗膜の表面温度を乾燥の全工程で100℃を超えないように加熱制御することにより、地肌かぶりを防止しつつ、記録媒体の保存性やヘッドマッチング等の機能を向上した記録媒体とすることができる。当然カール発生は防止されている。
また、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設け、他面上にバック層を設けた構成とし、感熱記録層乾燥工程における塗膜の表面温度を上記同様に加熱制御すると共に、バック層の乾燥工程における塗膜の表面温度を加熱制御(1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、全工程で100℃を超えないように制御)することにより、さらにカールを少なくしつつ、記録媒体同士の密着性を防止したり印刷時の搬送性を向上した記録媒体とすることができる。
さらに、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設け、他面上にバック層を設けた構成とし、各層の乾燥工程を上記と同様に加熱制御することにより、カールが少なく取り扱いが良好で、地肌かぶりの少ない感熱記録媒体が提供される。
なお、本発明における製造法によれば、感熱記録層やバック層等に使用するバインダー樹脂の選定に制約を与えない。
本発明の製造方法により製造された感熱記録媒体は、発色性や画像の長期保存性が優れ、高精細かつ高階調な画像を印画するのに適し、シャウカステンへの装着性も良好であり、X線、MRIあるいはCT等の透過画像診断に用いられる医療用画像形成シートとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明における感熱記録媒体について図面を参照しながら詳細を説明する。
図1(a)、(b)、(c)、(d)は本発明における感熱記録媒体の構成例を示す概略断面図である。
すなわち、ポリエステルフィルム製支持体1の一方の面(一面)上に感熱記録層2を設けた構成(a)を基本構成とし、さらに感熱記録層2上に保護層3を設けた構成(b)とすることもできるし、(a)の構成における支持体1の他方の面(他面)上にバック層4を設けた構成(c)とすることもでき、(b)の構成における支持体1の他方の面(他面)上にバック層4を設けた構成(d)とすることもできる。
【0027】
上記構成からなる感熱記録媒体の各構成層を、塗工液を用いて溶液塗布方式により製造する場合、製造後にカール度合いが決まり、そのカールが大きいと取り扱い性に難があることは前述の通りである。特に、このカールは感熱記録層を形成する塗工液中のバインダー樹脂(以降、「樹脂」と称することがある。)が乾燥後に収縮し、それによって塗膜の内部応力が上昇して歪みを発生し、表面側(感熱記録層や保護層の形成された側)にカールを引き起こす。本発明者らは、カール発生プロセスにおいて、感熱記録層のみ収縮し、一方、ポリエステルフィルム製支持体(以降、「支持体」、「フィルム支持体」と称することがある。)は収縮しないため、これによって収縮する側にカールが起こることに着目し、感熱記録層の乾燥と同時に支持体であるポリエステルフィルムも収縮させる以下の製造方法を見出し本発明に至った。
【0028】
すなわち、本発明の感熱記録媒体の製造方法は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、
且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御することを特徴とする。
上記製造方法により、カール発生が防止された取扱いが容易な感熱記録媒体が得られる。
【0029】
また、本発明の感熱記録媒体の製造方法は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
前記保護層の形成には、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて塗布により塗膜を形成する工程と、該形成された塗膜を乾燥して保護層とする工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が乾燥の全過程で100℃を超えないように加熱制御することを特徴とする。
上記製造方法により、地肌かぶりを防止しつつ、表面の変質や記録層の露出(印刷焼け)等がなく保存性やヘッドマッチング等の機能を向上した記録媒体が得られる。
【0030】
また、本発明の感熱記録媒体の製造方法は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設け、他面上にバック層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層とバック層の形成順位はいずれが先でもよく、
該感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
該バック層の形成には、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなるバック層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥してバック層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、しかも乾燥の全過程で100℃を超えないように制御することを特徴とする。
上記製造方法により、カールをさらに少なくしつつ、記録媒体同士の密着性を防止し、印刷時において重送等のない搬送性の良好な記録媒体を得ることができる。
【0031】
また、本発明の感熱記録媒体の製造方法は、ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設け、他面上にバック層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記支持体の一面上に感熱記録層と保護層を形成する順位と他面上にバック層を形成する順位はいずれが先でもよく、
該感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
該保護層の形成には、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて塗布により塗膜を形成する工程と、該形成された塗膜を乾燥して保護層とする工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が乾燥の全過程で100℃を超えないように加熱制御し、且つ
該バック層の形成には、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなるバック層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥してバック層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、しかも乾燥の全過程で100℃を超えないように制御することを特徴とする。
上記製造方法により、カールが少なく取り扱いが良好で、地肌かぶりの少ない感熱記録媒体が得られる。
【0032】
上記のように、塗布工程で形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程で計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105℃〜150℃となるように加熱制御すると、その後の冷却(自然冷却でも強制冷却でも可)過程で感熱記録層の収縮とほぼ同時に支持体も収縮することを見出した。
なお、「乾燥工程において計測される塗膜の表面温度」とは、「支持体上に塗布形成された塗布層(塗膜)の乾燥が終了しない時点、いわゆる感熱記録層の収縮が終る前において計測される表面温度」に相当する。
【0033】
支持体を収縮させる量は、感熱記録層に使用する樹脂の収縮率や感熱記録層中の樹脂の使用比率に応じて調整する必要があり、この調整は上記温度範囲105〜150℃および時間範囲1〜30秒の加熱制御条件の中で可能である。
ここで、支持体上に塗布された塗布層、すなわち塗膜の表面温度が105℃未満では、支持体の収縮が極めて微量でカール改善効果が見られない。また、150℃を超えると塗布時の支持体の搬送張力で搬送方向に逆に支持体が伸び、張りシワの問題が発生する。
また、塗膜の表面温度を105℃〜150℃に維持する時間が1秒未満では支持体内部まで熱が十分に伝わらず、支持体が十分収縮しない。また、30秒より長くなると感熱記録層中のロイコ染料と顕色剤の発色反応が始まり、感熱記録媒体に所謂地肌かぶり問題が発生する。
【0034】
また、本発明では、塗布工程で形成された塗膜を乾燥してバック層とする乾燥工程で計測される塗膜の表面温度が1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、しかも乾燥の全過程で100℃を超えないように制御する。この乾燥工程は、上記感熱記録層の乾燥時における支持体の挙動とは全く逆で、バック層の乾燥と同時に支持体が収縮しないようにしている。
なお、「乾燥工程において計測される塗膜の表面温度」とは、「支持体上に塗布された塗膜の乾燥が終了しない時点、いわゆるバック層の収縮が終わる前において計測される表面温度」に相当する。
【0035】
支持体に対して一面である表面側に設ける感熱記録層と他面である裏面側に設けるバック層を同じ乾燥条件(加熱温度、時間)で形成して作成した感熱記録媒体は、一般的に感熱記録層の方がバック層より付着量が多いことが一因となり感熱記録層面側にカールする。この時、支持体が収縮しない条件でバック層を加熱乾燥することによりバック層のみが収縮し、バック面側にカールしようとする応力が働き、元々感熱記録層面側にカールしようとする応力と釣り合い、結果としてカールの少ない感熱記録媒体を得ることがより容易となる。
【0036】
また、保護層の形成には、乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が乾燥の全過程で100℃を超えないように加熱制御する。これによって、地肌かぶりを防止することができる。
なお、「乾燥工程において計測される塗膜の表面温度」とは、「支持体上に塗布された塗膜の乾燥が終了しない時点、いわゆる保護層の収縮が終わる前において計測される表面温度」に相当する。
【0037】
上記本発明の製造方法により感熱記録媒体を製造すれば、各層の塗工液に使用する材料、特にバインダー樹脂の選定に制約を与えず、カールが少なく、地肌かぶりの少ない感熱記録媒体が得られる。本発明の感熱記録媒体は透過画像診断等に用いられる医療用画像形成シートとして好適に用いられる。
【0038】
次に、本発明における各構成材料等について説明する。
本発明で使用する支持体は、無延伸または2軸延伸されたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムである。
支持体の厚みは、75〜300μmが好ましい。75μmより薄いとフィルムにコシがなく取り扱いにくいばかりでなく塗布層の収縮によるカールが顕著になる。300μmを超えると本発明の効果が出にくくなる。より好ましくは100〜250μmでありこの範囲で本発明の効果が最も発現する。さらに医療用途としては150〜200μmが取り扱い上好ましい。
【0039】
本発明における感熱記録層は、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150℃〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて溶液塗布法により形成される。
【0040】
感熱記録層に用いられるロイコ染料を加熱により発色させる顕色剤としては、その融点が150〜250℃であるものが使用される。
融点が150℃未満では、感熱記録層乾燥時の加熱により発色が始まって地肌かぶりの原因となり、問題が生じる。さらに、医療用画像出力メディアの場合には、画像の長期保存を要求されるが、融点が150℃未満では画像褪色や色調変化が大きくなる問題がある。一方、融点が250℃を超えるものでは、発色感度に難がある。
【0041】
本発明で用いられる融点が150℃〜250℃である一般的な顕色剤の例としては、以下に示すものが挙げられるが、無論これらに限られるものではない。以下顕色剤に併記するmp.はDSC測定における吸熱ピーク温度を示す。
例えば、N−(4−ヒドロキシフェニル)−6−(N’−オクタデシルウレイド)ヘキサン酸アミド:[mp.177〜179℃]、N−(3−ヒドロキシフェニル)−12−(N’−テトラデシルウレイド)ドデカン酸アミド:[mp.180℃]、2,2’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:[mp.155℃]、p’−フェニルフェノール :[mp.166〜169℃]、エチレンジオキシジフェノール:[mp.163℃]、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール):[mp.161〜164℃]、n−ブチル−2−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)−4−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール):[mp.190〜195℃]、2,2’−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン:[mp.180℃]、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン:[mp.247〜248℃]などが例示される。
【0042】
本発明で使用する顕色剤は、下記一般式(1)で表されるサリチル酸誘導体であることがより好ましい。勿論その融点は150〜250℃の範囲で選択する。
【0043】
【化2】

【0044】
(式中、R1は炭素数4〜10の直鎖のアルキル基またはアルキルアミノ基を表す。)
【0045】
上記一般式(1)で表されるサリチル酸誘導体の具体例としては、4−(n−ペンタノイルアミノ)サリチル酸、4−(n−ヘキサノイルアミノ)サリチル酸、4−(n−オクタノイルアミノ)サリチル酸、4−(ヘキサデカノイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−ブチルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−ヘキシルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−n−オクチルカルバモイルアミノ)サリチル酸、4−(N’−ヘキサデシルカルバモイルアミノ)サリチル酸等が挙げられる。
【0046】
特に、顕色剤として下記一般式(2)で示されるサリチル酸誘導体を用いると、地肌かぶりの発生が少なく、保存性が優れた透過型感熱記録媒体が得られる。
【0047】
【化3】

【0048】
(式中、R2は炭素数6〜12の直鎖アルキル基を表す。)
【0049】
前記顕色剤として例示した化合物は、単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。また、さらなる効果の向上を狙って、種々公知の顕色剤を混合することもできる。
顕色剤として、上記一般式(1)で表されるサリチル酸誘導体が好ましい理由としては、R1の炭素数が4以上のものを用いると地肌かぶりが少なくなり、R1の炭素数が12以下のものを用いると、特にハーフトーン色調の湿度保存性が優れたものとなり、さらに下記(a)〜(c)の分子構造に基づく3つの要因によって医療画像出力メディアに求められる品質を高いレベルで実現するためである。
(a)顕色能基として高い性能を有するサリチル酸骨格、
(b)発色性や保存性に寄与する接合基部、
(c)地肌濃度や濃度低下の抑制に効果のあるアルキル基部分
【0050】
例えば、(a)について、サリチル酸骨格を有する代りに、一般的な顕色剤に見られるフェノール基を有する分子構造のものを用いると発色濃度が低く、また保存性に難がある。
また、(b)については、例えば−NHと−C=Oの結合を逆にした電子吸引性の基を用いると保存性が著しく低下する。あるいは、他の接合基では、好ましい保存性が得られず、これは顕色剤分子の会合性が悪いことが原因であると思われる。
また、(c)については、炭素数が4よりも小さい場合は水や有機溶剤への溶解性が向上するために地肌カブリが甚だしく、逆に炭素数が12より大きいと保存性が低下する。
従って、上記(a)、(b)、(c)の組み合わせが重要であり、一般式(1)で表されるサリチル酸誘導体は、顕色剤として医療画像出力メディアに求められる品質を達成するのに極めて優れている。
【0051】
本発明の感熱記録層に用いられるロイコ染料は電子供与性を示す化合物で、それ自体無色あるいは淡色の染料前駆体であり、単独または2種以上混合して用いられる。
本発明におけるロイコ染料は、特に限定されず従来公知のもの、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好ましく用いられる。
特に好ましくはフルオラン系およびフタリド系のロイコ染料であり、このような化合物の例としては、例えば以下に示すようなものが挙げられるが、勿論これらに限られるものではない。
【0052】
すなわち、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、10−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。
特に、医療用の透過画像診断に用いられる医療用記録媒体、いわゆる透過型感熱記録材料の場合、ロイコ染料を3種類以上併用することが、特に単一色調を得るために好ましい。
【0053】
本発明においては、感熱記録層中の顕色剤の重量は、ロイコ染料の総重量1.0に対して0.5〜2.5の範囲が好ましく、特に1.0〜2.0の範囲が好ましい。
顕色剤の重量が0.5〜2.5の範囲内であると、ロイコ染料の顕色剤ではハーフトーンの画像保存性が特に向上する。またこの時、発色効率が上がるため、薄膜で最高の発色濃度を出すことができる。
【0054】
階調メディアにおいて薄膜化することの利点は、塗工時の膜厚制御や乾燥工程における残留水分、残留溶剤の低減にあり、さらには塗布量低減からコスト低減にもつながる。
また、有機溶剤を用いて塗工する場合には分散成分は顕色剤のみになるため、顕色剤含有量が少ない方が塗布層の光透過性に対しても有利となり、透過型感熱記録材料ではコントラスト向上や画像認識性の改善の効果がある。
【0055】
前記一般式(1)で表される顕色剤を使用したときには、水素結合を介して形成されている顕色剤のネットワークにロイコ染料が入り込むことによって発色画像に堅牢性が付与されるが、顕色剤が上記の範囲よりも過剰に存在するときにはこのネットワークの結合が強いために、その中にロイコ染料が入り込みにくくなる。逆に染料の方が過剰である場合、適正なネットワークを構築することができないために発色が弱くなると考えられる。
【0056】
本発明の感熱記録層に使用するバインダー樹脂としては公知の種々の有機溶剤可溶樹脂を使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸およびそのエステル、ポリメタクリル酸およびそのエステル類、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリアミド、等を使用できる。これら樹脂は単独もしくは二種以上混合して使用することができる。
【0057】
本発明における感熱記録層に用いられるバインダー樹脂の使用量としては特に限定するものではないが、階調性や透明性を確保するため、感熱記録層塗工液の全固形量に対して15重量%以上であることが好ましく、支持体との接着性や発色性等を考慮した場合には
30〜60重量%の範囲で調節するのがより好ましい。
【0058】
本発明において感熱記録層を形成するには、ロイコ染料および顕色剤等をバインダー樹脂と共に水または有機溶剤に均一に分散もしくは溶解して感熱記録層塗工液を調製し、これをポリエステルフィルム製支持体の一面上に塗布して行う。
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素類;クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEK)、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;その他テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の汎用溶剤が、単独あるいは混合有機溶剤として使用される。
【0059】
上記有機溶剤のうち、トルエン、MEK、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましく、特にトルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルから選ばれる溶剤を、感熱記録層塗工液の溶剤成分中50重量%以上含有する混合溶剤とすることにより、地肌かぶりのない優れた感熱材料が得られる。
【0060】
本発明の感熱記録媒体における感熱記録層は、水または有機溶剤を使用して調製した感熱記録層塗工液を支持体上に塗布(塗布工程)した後、乾燥(乾燥工程)して作製するが、塗布工程において適用する塗布方式は特に限定されず、例えば、ダイファウンテン方式、ワイヤーバー方式、グラビア方式、エアーナイフ方式等が用いられる。これらのうち、形成される塗膜の均一性を得ることができるものとして、支持体に接触することなく塗布することが可能なダイファウンテン方式が好ましい。
【0061】
感熱記録層塗工液において、分散物の粒径が、感熱記録媒体全体の透明性あるいは保護層の表面粗さ、ひいては印字時のドット再現性に大きく影響する。分散物の体積平均粒径が1.0μm以下、特に屈折率への影響から0.5μm以下にすると、透明性が著しく向上する。
また、記録層の膜厚は、記録層の組成や感熱記録材料の用途にもよるが、1〜50μm程度、好ましくは3〜20μm程度である。また、感熱記録層塗工液には、必要に応じて、塗工性の向上あるいは記録特性の向上を目的に界面活性剤等種々の添加剤を加えることもできる。
【0062】
本発明においては、感熱記録層上に、耐薬品性、耐水性、耐摩擦性、耐光性、およびサーマルヘッドに対するヘッドマッチング性の向上のために保護層が設けられる。
保護層は、感熱記録層上に、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて、塗布(塗布工程)により塗膜を形成した後、乾燥(乾燥工程)して形成される。
感熱記録材料の保護層は、透明性の観点から考えると樹脂単独の層を設けるのが理想的であるが、樹脂のみの保護層では平滑性が高すぎて、固着、いわゆるスティッキングによる印字欠陥が発生するため、十分な性能が得にくい。特に支持体としてプラスチックフィルムを用いた場合は、紙を支持体とした場合と比較して平滑になりやすいことから、ヘッドマッチングが低下し、スティッキングが起きやすくなる傾向が顕著である。
また、一般的な熱可塑性樹脂の場合、ガラス転移点がサーマルヘッドによる加熱温度よりも低いため、樹脂単独の保護層では表面の変質や記録層の露出、すなわち印画焼けなどが起きてしまう。
【0063】
このような印字不良や欠陥は、透過画像診断に用いられる医療画像を出力する医療用記録媒体とって致命的な問題である。
このスティッキングや表面の変質、あるいは記録層の露出(印画焼け)などに対する性能を向上する手段としてはフィラーを含有させることが好ましい。
【0064】
しかし、透明感熱記録媒体の場合、保護層に従来の反射記録材料に使用されるようなフィラーを含有させると透明性が低下する場合が多い。フィラーを添加して透明性を維持するためには、小粒径フィラーにより表面を細かく粗らす方法、大粒径フィラーを少量添加して表面を部分的に粗らす方法等がある。
本発明においては必要に応じて上記の2つの方法を組み合せて保護層を形成させることも可能である。保護層表面の摩擦係数としては、例えば、滑性を上げる方向のヘッドマッチングの場合には、0.07〜0.14の範囲が好ましい。
【0065】
上記含有させるフィラーの例としては、ホスフェートファイバー、チタン酸カリウム、針状水酸化マグネシウム、ウィスカー、タルク、マイカ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、板状炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、板状水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、焼成クレー、カオリン、ハイドロタルサイト等の無機フィラーや、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素−ホルマリン共重合体粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂粒子、グアナミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子、メラミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子等の有機フィラーが挙げられる。
【0066】
本発明においてはヘッドマッチング品質の観点から、有機フィラーとしてはメラミン−ホルムアルデヒド共重合体粒子が好ましく、無機フィラーとしてはカオリン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、また種々の特性を付与するために複数のフィラーを同時に用いてもよい。
【0067】
さらに、ヘッドマッチング性の付与と同時に考慮すべき、ゴミの引きずりによる異常画像発生防止や、ヘッド融着性に対する性能向上のために、保護層にワックス類からなる滑剤を添加することが好ましい。
ここで用いることができるワックス類としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチロールステアリルアミド、パラフィンワックス、ポリエチレン、カルナウバワックス、酸化パラフィン、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0068】
本発明において保護層に用いられるバインダー樹脂としては、水溶性樹脂の他、水性エマルジョン、疎水性樹脂および紫外線、電子線硬化樹脂等を必要に応じて併用することも可能である。
透明性の観点から感熱記録層と保護層の各バインダー樹脂の屈折率は、支持体の屈折率との比で0.8〜1.2の範囲に入る材料を用いることが好ましい。
保護層に用いられるバインダー樹脂の具体例としては、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等がある。
【0069】
また、上記樹脂と共に架橋剤を用いてもよい。上記樹脂と共に用いる架橋剤としてはイソシアネート化合物、エポキシ化合物等、従来から公知の化合物を使用することができる。
架橋剤の添加によって保護層塗膜の耐熱性が向上し、これに伴ってヘッドマッチング性も向上し、併せて画像保存性の向上をもたらす。このような架橋剤としては、イソシアネート化合物、あるいはエポキシ化合物が好ましい。
イソシアネート化合物の具体例としては、トルイレンジイソシアネート、その2量体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネートおよびこれらの誘導体等、分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物が挙げられる。また、エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0070】
保護層の形成には、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて溶液塗布により塗膜が形成されるが、その塗布方式は、特に制限はなく従来公知の方法で塗工することができる。
好ましい保護層厚は、0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmである。保護層厚が薄すぎると、記録媒体の保存性やヘッドマッチング等の保護層としての機能が不十分であり、厚すぎると記録媒体の熱感度が低下するし、コスト的にも不利である。
【0071】
次に、シート上の感熱記録媒体同士の密着を防止したり、イメージャーによる印画時の搬送性をよくするために、支持体上の裏面に樹脂微粒子でなるマット剤を含有するバック層を設けることが好ましい。
すなわち、バック層は、ポリエステルフィルム製支持体の他面上に、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなるバック層塗工液を用いて塗布(塗布工程)した後、形成された塗膜を乾燥(乾燥工程)して形成される。
【0072】
マット剤が無機微粒子であると擦れによりキズが発生しやすくなるが、樹脂微粒子にすることによって、擦れによるキズの発生もなく密着性の問題も改善される。
樹脂微粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、シリコーン樹脂、架橋ポリメタクリル酸メチルアクリレート樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
樹脂微粒子の平均粒径は、20μm以下が好ましく、5〜20μmがより好ましい。さらに好ましくは10〜15μmである。20μmより大きいと表面の突起が目立ち外観品質がよくない。一方、5μmより小さいと密着の改善の効果が少ない。
樹脂微粒子の添加量は、バック層のバインダー樹脂に対して0.5〜10重量%である。10重量%より多くなると透明性が損なわれてしまい、一方、0.5重量%より少ないと密着の改善の効果が少ない。樹脂微粒子の添加量は、好ましくは1〜5重量%程度である。
【0073】
医療用途における透過画像診断において、眩惑防止や、診断性向上を図るため、本発明の感熱記録媒体に青み付けをして、シャウカステンから発光される光のうち、発光強度の強い波長590〜630nmの光を遮ることができる。
青み付けの方法としては、ベースである支持体自身に青み付けをするか、あるいは感熱記録媒体の構成層の一部に青み付けする、等の方法がある。
青み付けの濃度レベルとしては、透過濃度で0.15〜0.25の範囲とし、色調としてはCIE−LAB表色系のa*=−4〜−12、b*=−5〜−15(測定条件;d−0、10度視野、光源D65にて10nmごとに吸光度測定して算出)に囲まれる範囲とする色が好ましい。
【0074】
医療用途における透過画像診断の観点から考えると、本発明の感熱記録媒体のヘーズ値(曇価)は50%以下が好ましく、望ましくは30%以下である。50%を超えるとシャウカステン装着時の画像の鮮明さに欠ける。
【0075】
本発明の感熱記録媒体の製造直後は通常長尺状物であるが、商品としての形態は、所定の大きさに裁断し所定の枚数を袋に入れたものとなる。商品の性質上、通常は遮光性の包装材料に包んで保管および流通することがより好ましく、使用時に開封して袋から取り出した感熱記録媒体を画像形成装置に搭載することになる。
【0076】
本発明の感熱記録媒体を用いて画像を形成する方法は、文字および/または形状情報に基づいて画像様に加熱手段によって該感熱記録材料を加熱して行われる。加熱手段として用いられるものは、使用目的によって熱ペン、サーマルヘッド、レーザー加熱等、特に限定されないが、本発明の感熱記録媒体が、特に医療画像等の高精細かつ高階調な画像を印画するのに適しており、また装置のコスト、出力スピード、コンパクト化の観点からもサーマルヘッドを用いることが最も好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これら実施例によって、本発明はなんら制限されるものではない。なお、以下における部および%はいずれも重量基準である。
【0078】
(実施例1)
下記処方(1)の組成物をボールミルで体積平均粒径0.5μm以下になるまで粉砕、分散し、固形分20%の顕色剤分散液[A液]を調製した。粒径は、堀場製作所社製レーザー回折式粒径測定装置LA−920により測定した。
【0079】
[A液]の処方(1)
MEK: 28部
トルエン: 24部
N−(4−ヒドロキシフェニル)−6−(N’−オクタデシル
ウレイド)ヘキサン酸アミド 〔mp.177〜178℃〕: 15部
15%ウレタン変性ポリエステルMEK溶解液〔東洋紡社製
UR−8300、Tg=23℃〕: 33部
【0080】
次に、下記処方(2)の組成物を十分に攪拌し、固形分18%の記録層塗工液[B液]を調製した。
【0081】
[B液]の処方(2)
顕色剤分散液[A液]: 40部
下記構造式(A)のロイコ染料〔ETAC〕: 3部
下記構造式(B)のロイコ染料〔Red 500〕: 0.2部
下記構造式(C)のロイコ染料〔Orange 100〕:0.8部
15%ウレタン変成ポリエステルMEK溶解液〔東洋紡社製
UR−8300、Tg=23℃〕: 40部
MEK: 1部
TOL: 15部
【0082】
【化4】

【0083】
【化5】

【0084】
【化6】

【0085】
次に、下記処方(3)の組成物をボールミルで体積平均粒径0.3μmまで粉砕、分散し、固形分18%のフィラー分散液[C液]を調製した。
【0086】
[C液]の処方(3)
シリカ: 15部
10%ポリビニルアセタールMEK溶解液
〔積水化学社製KS−1〕: 30部
MEK: 55部
【0087】
次いで、下記処方(4)の組成物を十分に攪拌し、固形分18%の保護層塗工液[D液]を調製した。
【0088】
[D液]の処方(4)
フィラー分散液[C液]: 66部
10%ポリビニルアセタールMEK溶解液
〔積水化学社製KS−1〕: 30部
75%ヘキサメチレンイソシアナート酢酸エチル溶解液
〔日本ポリウレタン コロネートHL〕: 4部
【0089】
上記で調製した記録層塗工液[B液]を、厚さ75μmの透明ポリエステルフィルム(ヘーズ値3%)製支持体上にワイヤーバーを用い、塗布して塗膜を形成し、これを120℃の温度に保持したドライヤー中を40秒間通して乾燥し、厚さ15μmの感熱記録層を形成した。乾燥の際、支持体上に形成した塗膜の表面温度は、ドライヤーに入れて25秒後に105℃に達し、40秒後ドライヤーを出る時点で118℃であり、50秒後に105℃、55秒後に100℃であった。
次に、形成された感熱記録層上に、保護層塗工液[D液]を、ワイヤーバーを用い、塗布して塗膜を形成し、これを80℃の温度に保持したドライヤー中を1分間通して乾燥し、厚さ3μmの保護層を形成した。その後、上記支持体上に塗膜を積層形成した塗工物を70℃の環境に60分間保持し、再乾燥した。
【0090】
(実施例2)
下記処方(5)の組成物を十分に攪拌し、固形分16%のバック層塗工液[E液]を調製した。
【0091】
[E液]の処方(5)
20%ポリエステルMEK溶解液
〔東洋紡社製GK880〕: 74.5部
シリコーンフィラー〔東芝シリコーン社製
トスパール2000B、平均粒径6μm〕: 0.1部
MEK: 25.4部
【0092】
実施例1と同様に透明ポリエステルフィルム製支持体の一面上に、記録層塗工液[B液]、保護層塗工液[D液]を用いて塗布し、それぞれ乾燥工程を経て記録層、保護層を順次形成した後、支持体の他面(裏面)にバック層塗工液[E液]を用いてワイヤーバーにより塗布して塗膜を形成し、これを80℃の温度に保持したドライヤー中を2分間通して乾燥し、厚さ4μmのバック層を形成した。
その後、支持体の一面上に記録層と保護層を積層形成し、支持体の他面上にバック層を形成した塗工物を実施例1と同様に再乾燥させた。
【0093】
(実施例3)
実施例1の[A液]の処方(1)において用いた、N−(4−ヒドロキシフェニル)−6−(N’−オクタデシルウレイド)ヘキサン酸アミドを、4−(N’−n−ヘキシルウレイド)サリチル酸(mp.197〜200℃)に変更した以外は実施例1と全く同様にして感熱記録媒体を作成した。
【0094】
(実施例4)
実施例1において用いた支持体の厚さを75μmから175μmに変更した以外は実施例1と全く同様にして感熱記録媒体を作成した。
【0095】
(比較例1)
実施例1で調製した記録層塗工液[B液]を、厚さ75μmの透明ポリエステルフィルム(ヘーズ値3%)製支持体上にワイヤーバーを用い、塗布して塗膜を形成し、これを100℃の温度に保持したドライヤー中を40秒間通して乾燥し、厚さ15μmの感熱記録層を形成した。乾燥の際、支持体上に形成した塗膜の表面温度は乾燥の全工程に於いて最高で99℃であった。このように記録層の形成時におけるドライヤーの温度を変更した以外は実施例1と全く同様にして感熱記録媒体を作成した。
【0096】
(比較例2)
実施例1の[A液]の処方(1)において用いたN−(4−ヒドロキシフェニル)−6−(N’−オクタデシルウレイド)ヘキサン酸アミドを、オクタデシルホスホン酸(mp.98〜100℃)に変更した以外は実施例1と全く同様にして感熱記録媒体を作成した。
【0097】
(比較例3)
実施例2においてバック層塗工液[E液]を塗布して形成した塗膜の乾燥時、110℃の温度に保持したドライヤー中を1分間通して乾燥する条件とした以外は実施例2と全く同様にして感熱記録媒体を作成した。
【0098】
実施例1〜4、比較例1〜3で得られた感熱媒体を用いて、以下に示す試験方法と条件でカールおよび地肌濃度を評価した。結果を下記表1に示す。
【0099】
<カール>
22℃、50%Rhの環境下で作成した感熱記録媒体をA4サイズにカットして、その1枚を平らなテーブル上に置く。感熱記録層面側を上にして置いた時の4隅の浮き量とその反対面側を上にして置いた時の4隅の浮き量をJIS1級スケールでそれぞれ測定し、浮き量の値が大きい方を採用し、その置き方における4隅の測定値を平均してカール値(mm)とした。この際、感熱記録層面側を上にして置いた時の4隅の浮き量を+(プラス)表記し、その反対面側を上にして置いた時の4隅の浮き量を−(マイナス)表記した。
評価基準は、下記により、絶対値で6以下がよく、3以下が特に好ましい。
◎:カール値の絶対値3mm以下
○:カール値の絶対値6mm以下
×:カール値の絶対値6mmを超える
【0100】
<地肌濃度>
地肌かぶりを評価するために、代用値として地肌の透過濃度を測定した。透過濃度はX−Rite社製301を使用して測定した。地肌の透過濃度は値が低いほど地肌かぶりがないことを示す。
評価基準は、下記により、0.20以下がよく、0.15以下が特に好ましい。
◎:透過濃度0.15以下
○:透過濃度0.20以下
×:透過濃度0.20を超える
【0101】
【表1】

【0102】
上記表1の評価結果から、感熱記録媒体の各構成層(記録層、保護層、バック層)の乾燥過程における形成条件を厳密に制御することにより、カールが少なく、地肌かぶりの少ない感熱記録媒体が提供されることが分る。
上記製造方法によれば、感熱記録層やバック層に使用する材料、特にバインダー樹脂の選定に特別制約を与えることなく感熱記録媒体が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明における感熱記録媒体の構成例(a)、(b)、(c)、(d)を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1 ポリエステルフィルム製支持体(支持体)
2 感熱記録層
3 保護層
4 バック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、
且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法。
【請求項2】
ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
前記保護層の形成には、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて塗布により塗膜を形成する工程と、該形成された塗膜を乾燥して保護層とする工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が乾燥の全過程で100℃を超えないように加熱制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法。
【請求項3】
ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層を設け、他面上にバック層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記感熱記録層とバック層の形成順位はいずれが先でもよく、
該感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
該バック層の形成には、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなるバック層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥してバック層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、しかも乾燥の全過程で100℃を超えないように制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法。
【請求項4】
ポリエステルフィルム製支持体の一面上に感熱記録層と保護層をこの順に設け、他面上にバック層を設けた感熱記録媒体の製造方法であって、
前記支持体の一面上に感熱記録層と保護層を形成する順位と他面上にバック層を形成する順位はいずれが先でもよく、
該感熱記録層の形成には、少なくとも、ロイコ染料、該ロイコ染料を加熱により発色可能で融点が150〜250℃の顕色剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる感熱記録層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥して感熱記録層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜30秒の間105〜150℃となるように加熱制御すると共に、
該保護層の形成には、少なくともバインダー樹脂、および水または有機溶剤からなる保護層塗工液を用いて塗布により塗膜を形成する工程と、該形成された塗膜を乾燥して保護層とする工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が乾燥の全過程で100℃を超えないように加熱制御し、且つ
該バック層の形成には、少なくとも樹脂微粒子でなるマット剤、バインダー樹脂、および水または有機溶剤からなるバック層塗工液を用いて塗膜を形成する塗布工程と、該形成された塗膜を乾燥してバック層とする乾燥工程とを含み、且つ該乾燥工程において計測される塗膜の表面温度が1〜500秒の間40〜100℃となるように加熱し、しかも乾燥の全過程で100℃を超えないように制御することを特徴とする感熱記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記顕色剤が、下記一般式(1)で表されるサリチル酸誘導体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感熱記録媒体の製造方法。
【化1】


(式中、R1は炭素数4〜10の直鎖のアルキル基またはアルキルアミノ基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする感熱記録媒体。
【請求項7】
前記媒体が、透過画像診断に用いられる医療用記録媒体であることを特徴とする請求項6に記載の感熱記録媒体。
【請求項8】
前記記録媒体における支持体の厚さが、100〜250μmであることを特徴とする請求項7に記載の感熱記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−76172(P2007−76172A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267135(P2005−267135)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】