説明

感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくく、さらに、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させる感熱転写リボンの基材として用いた際に、印字性(フィルムからのインクの転写性)に優れる感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなり、フィルム中のエチレンテレフタレート環状三量体量が0.7質量%以下であることを特徴とする感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムに関し、さらに詳細には、印刷適性、寸法安定性、耐久性に優れた感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱転写記録方式は、基材フィルム表面に設けられたインク層を、サーマルヘッドの加熱状態に応じて受像紙などの表面に転写する記録方式として知られており、印字が鮮明であるとともに、装置の簡便さや低騒音の観点から広く普及しており、なかでも、フィルム上に顔料とワックス類などで作られたインクを、サーマルヘッドの加熱で溶融転写させることにより受像紙に印刷する溶融型感熱転写法はコストの点で優れていることから、ファクシミリーやバーコードなどのモノカラー印刷用を中心に広く普及している。
【0003】
かかる記録方式における感熱転写記録材料に用いるポリエステルフィルムは、厚みが2〜10μmと非常に薄いものが求められるため、従来のポリエステルフィルムではリボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しやすいという問題があった。
【0004】
かかる問題を回避するため、第1段目の延伸を横方向に行い、次いで、第2段目延伸を縦方向に行い、縦方向の屈折率が1.675〜1.695、かつ、横方向の屈折率が1.625〜1.645である二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このフィルムはアンカーコートを施さない感熱転写記録材料に用いた場合、フィルム上に顔料とワックス類などで作られたインクをサーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際、フィルム上にインクが残りやすいという問題があった。
【0006】
また、高速で印字した際の印字かすれや印加エネルギーを上げた際のインクの過転写を低減させるため、カルボキシ末端基量を10〜80当量/106gに制御した二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、このフィルムはアンカーコートを施さない感熱転写記録材料に用いた場合、インク転写性はいまだ満足されるものではなかった。
【特許文献1】特開2003−312154号公報
【特許文献2】特開平8−230340号公報
【0008】
さらに、重合工程や製膜工程で生成する低分子量化合物、いわゆる、エチレンテレフタレート環状三量体を主体とするオリゴマーは、加熱処理時にフィルム表面にブリードする傾向があり、フィルム表面にブリードしたオリゴマーによりインクの転写性を阻害するという問題もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくく、さらに、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させる感熱転写リボンの基材として用いた際に、印字性(フィルムからのインクの転写性)に優れる感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなり、エチレンテレフタレート環状三量体量が0.7質量%以下であることを特徴とする。
【0011】
この場合に於いて、二軸延伸ポリエステルフィルムはエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートを横方向に第1段目延伸を行い、次いで縦方向に第2段目延伸を行い、さらに横方向に第3段目延伸を行うことにより得たものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくく、さらに、感熱転写リボンに用いた場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際の印字性(フィルムからのインクの転写性)に優れているため、感熱転写記録材用の基材として特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなり、フィルム中のエチレンテレフタレート環状三量体量が0.7質量%以下であるポリエステルフィルムである。
【0014】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、エチレンテレフタレート成分を主たる構成成分とすることが感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等を抑制する点から必要である。
【0015】
本発明では、二軸延伸ポリエステルフィルム中のエチレンテレフタレート環状三量体量が0.7質量%以下であることが必要である。エチレンテレフタレート環状三量体量が0.7質量%を超える場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させる際、ポリエステルフィルムとインクとの密着性が強く、その結果、インクの転写性が劣るため好ましくない。
【0016】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルを得る方法として、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られる粗製ポリエステルを、該グリコール成分が少なくとも100ppm以上の割合で、好ましくは3000〜70000ppmの割合で含有される不活性ガス雰囲気下で、180℃以上かつ該粗製ポリエステルの融点以下の温度で、好ましくは200〜250℃で、1〜70時間、好ましくは4〜40時間加熱処理する方法が好ましい。
【0017】
本発明では、粗製ポリエステルを加熱処理する際の不活性ガスとして、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガス等が好ましく、これらのうち、窒素ガスが安価であるため、さらに好ましい。
【0018】
本発明では、粗製ポリエステルを加熱処理する装置として、静置型乾燥装置、回転型乾燥装置、流動床型乾燥装置、攪拌翼を有する乾燥装置等が好ましい。
【0019】
本発明では、粗製ポリエステルを加熱処理する際の不活性ガス中のグリコール成分の含有率が100ppm未満の場合、得られるポリエステルの極限粘度が高くなりやすい。その結果、該ポリエステルを溶融押出する際の負荷が大きく、安定溶融押出を行うには高温で溶融押出することになり、二軸延伸ポリエステルフィルム中のエチレンテレフタレート環状三量体量が増加するため好ましくない。逆に、グリコール成分の含有率が過剰である場合、グリコシス反応が起こり、得られるポリエステルの極限粘度が低下する可能性がある。その結果、ポリエステルフィルムの極限粘度が低くなり、感熱転写リボンへの加工工程での破断が発生しやすくなるため好ましくない。
【0020】
本発明では、加熱処理温度が180℃未満の場合、粗製ポリエステル中のエチレンテレフタレート環状三量体の減少速度が小さいため好ましくない。逆に、250℃超える場合、加熱処理中に粗製ポリエステルが融着しやすいため好ましくない。
【0021】
本発明では、加熱処理時間が1時間未満の場合、粗製ポリエステル中のエチレンテレフタレート環状三量体が十分に減少しないため好ましくない。逆に、70時間を越える場合、粗製ポリエステル中のエチレンテレフタレート環状三量体の減少速度が小さくなるばかりでなく、熱劣化が起こる可能性があるため好ましくない。
【0022】
本発明では、ポリエステルの目的を阻害しない範囲で他の共重合成分を含むことができる。使用できる他の共重合成分のうち、ジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。使用できる上記のジカルボン酸及びそれらのエステル誘導体の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のジカルボン酸及びそれらのエステル誘導体の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなり好ましくない。
【0023】
また、グリコール成分として、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が使用できる。このほか少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでいてもよい。ここで、使用できる他のグリコール成分の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のグリコール成分の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなり好ましくない。
【0024】
本発明では、上記のようにして得たポリエステルを公知の押出機で該ポリエステルの融点+10〜融点+40℃の温度で押出した溶融ポリエステルを冷却固化してシートに成形し、まず、該シートをポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍横方向に第1段目延伸を行い、次いで、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で2.5〜4.5倍縦方向に第2段目延伸を行い、さらにポリエステルのガラス転移温度以上の温度で1.05〜1.50倍横方向に第3段目延伸することが好ましい。
【0025】
本発明では、押出温度がポリエステルの融点+10℃未満の場合、一部のポリエステルが未溶融状態になることがあるため好ましくない。逆に、融点+40℃を超える場合、二軸延伸ポリエステルフィルム中のエチレンテレフタレート環状三量体量が増加しやすくなるため好ましくない。
【0026】
本発明では、1段目延伸倍率が3.0未満の場合、及び/又は第2段目延伸倍率が2.5未満の場合、二軸延伸ポリエステルフィルムの平面性が悪く、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させる際、ポリエステルフィルムの受像紙への密着が悪くなり、その結果、インクの転写性が劣るため好ましくない。逆に、第1段目延伸倍率が4.5倍を超える場合、及び/又は第2段目延伸倍率が4.5倍を超える場合、第2段目延伸でシワが発生したり、第3段目延伸で破断することが多くなるため好ましくない。また、第3段目延伸倍率が1.05倍未満の場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させる際、ポリエステルフィルムの横方向の腰が弱く、シワが入りやすくなり、その結果、インクの転写性が劣るため好ましくない。逆に、第3段目延伸倍率が1.50倍を超える場合、第3段目延伸で破断することが多いため好ましくない。
【0027】
本発明では、第1段目から第3段目の延伸の後、ポリエステルの冷結晶化温度〜融点−20℃の温度で1〜20秒間、公知の巾方向を一定長とした熱固定(例えば、フィルムの両端をクリップで把持して行う熱固定)を実施し、次いで、巾方向に緩和処理を行うが、この緩和処理では少なくとも140〜融点−20℃の温度範囲で緩和処理することが好ましい。
【0028】
本発明では、熱固定温度が冷結晶化温度未満の場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させる際、ポリエステルフィルムが収縮しやすく、シワが入りやすくなり、その結果、インクの転写性が劣るため好ましくない。逆に、融点−20℃を超える場合、熱固定処理工程でフィルムが破断しやすいため好ましくない。
【0029】
本発明では、二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは2〜6μmであることが好ましく、3〜5μmであることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの厚みが2μm未満の場合、ポリエステルフィルム製造時や感熱転写リボンへの加工工程での破断が発生しやすくなるため好ましくない。逆に、ポリエステルフィルムの厚みが6μmを超える場合、熱の伝導が悪くなり、また熱が2次元的に拡散するので、印字性能が悪化するため好ましくない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。まず、実施例及び比較例に用いた評価方法について説明する。
【0031】
(1)環状三量体量の定量
ポリエステル又は二軸延伸ポリエステルフィルム0.1gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール/クロロホルム(容量比で2/3)の混合溶媒3mlに溶解させる。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合する。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させる。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(容量比で2/1)の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過する。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固させる。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状三量体測定用溶液とする。この溶液中に含まれるポリエステルの環状三量体を、高速液体クロマトグラフィー(横河電機社製、LC100型)を用いて定量する。
【0032】
(2)極限粘度(IV)
ポリエステルのチップ又はフィルム0.1gを、フェノール/テトラクロロエタン(容積比で3/2)の混合溶媒25ml中に溶解させ、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定する。
【0033】
(3)ポリエステルの融点
ポリエステル10mgを窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点(℃)とする。
【0034】
(4)インク剥離性
(インク層コート材の調製)
下記の材料からなる混合物を攪拌・加熱して溶融し、さらにカーボンブラック(13質量部)を加えて分散・混合した組成物をインク層コート材とした。
カルナウバワックス 40質量部
エステルワックス 34質量部
酢酸ビニルーエチレン共重合体 10質量部
ステアリン酸ナトリウム 3質量部
【0035】
(テストに用いる標準リボンの作製)
2段のグラビアコーターを用いて、市販のポリエステルフィルム(東洋紡績社製、E5100、12μm)のコロナ処理面にインク層コート材(液温:85℃)を塗布後、フィルムを冷却した後、6インチ紙管に巻き取りリボンロール(インク層厚み:4μm)を得た。このフィルムロールから100mm×200mmのフィルム片(200mmがフィルムの長手方向)を切り出し標準リボンとした。
【0036】
(インク剥離強度テスト方法)
実施例及び比較例で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムから切り出したサンプル(110mm×200mm、200mmがフィルムの長手方向)と上記の標準リボンをヒートシールテスター(テスター産業社製、TP−701−B)を用いて100℃、0.2MPa、1秒の条件で長手方向と直角に20mmピッチで5箇所ヒートシールした後、中央部の50mm×200mmを測定サンプルとした。この測定サンプルを23℃、65%RHの環境下において、引張試験機(東洋ボールドウイン社製、テンシロンHTM−100)を用いて、チャック間距離30mm、引張り速度200mm/分でT型剥離させ、実施例及び比較例で得られたポリエステルフィルムからインクが剥離する強度(n=5の平均値)を求めた。○を実用性ありと判断した。
【0037】
○: 剥離強度が59mN/50mm幅未満。
△: 剥離強度が60mN/50mm幅以上69mN/50mm幅未満。
×: 剥離強度が69mN/50mm幅以上。
【0038】
実施例及び比較例に用いたポリエステル原料、1段目延伸倍率、第2段目延伸倍率、第3段目延伸倍率、エチレンテレフタレート環状三量体量、極限粘度、インク剥離性を表1に示す。なお、実施例及び比較例に用いたポリエステル原料A、B、Cは、下記に示すものを使用した。
【0039】
(1)ポリエステルA
ジメチルテレフタレート1,000質量部、エチレングリコール700質量部、酢酸亜鉛・二水塩0.3質量部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点でリン酸0.13質量部と三酸化アンチモン0.3質量部を加え、さらに、平均粒径が1.3μmの凝集シリカのエチレングリコール分散液を生成ポリエステルに対しSiO2量が1000ppmとなるように添加した。次いで、重合反応缶内を徐々に減圧にして75分間で0.13kPa以下とするとともに、同時に徐々に昇温して280℃とした後、同条件で70分間重縮合反応を行った。得られた粗製ポリエチレンテレフタレート(A)は、極限粘度(IV)が0.62dl/g、融点が253℃、環状三量体量が1.1質量%であった。
【0040】
(2)ポリエステルB
前記の粗製ポリエチレンテレフタレート(A)を減圧下、160℃で乾燥した。次いで、5,000ppmのエチレングリコールを含有する窒素ガスを粗製ポリエチレンテレフタレート(A)1kg当り、毎時70リットルの割合で流通し、215℃で24時間加熱処理した。得られたポリエチレンテレフタレートは、極限粘度(IV)が0.62dl/g、融点が253℃、環状三量体量が0.3質量%であった。
(3)ポリエステルC
前記の粗製ポリエチレンテレフタレート(A)を減圧下、160℃で乾燥した。次いで、30ppmのエチレングリコールを含有する窒素ガスを粗製ポリエチレンテレフタレート(A)1kg当り、毎時300リットルの割合で流通し、230℃で12時間加熱処理した。得られたポリエチレンテレフタレートは、極限粘度(IV)が0.91dl/g、融点が254℃、環状三量体量が0.3質量%であった。
【0041】
[実施例1]
ポリエステル原料としてBを、120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)し、二軸押出機を用いて280℃で溶融させた後、45cm幅のTダイより冷却ロール(周速50m/分)上へキャストして(冷却ロール周面に対向するように設置した直径が30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加し、0.2mAの電流を流して静電密着させて)未延伸シートを得た。該未延伸シートをテンターで予熱温度85℃、延伸温度88℃で横方向に3.8倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に3.6倍延伸し(第2弾目延伸)、150℃で1.05倍再横延伸し(第3段目延伸)、228℃で熱処理した後、210℃で2.6%、150℃で横方向に0.3%緩和熱処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本実施例1で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すように、インク剥離性に優れているため、感熱転写記録材用基材として好適であった。
【0042】
[実施例2]
二軸押出機での溶融温度を285℃とした以外は実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本実施例2で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すように、インク剥離性に優れているため、感熱転写記録材用基材として好適であった。
【0043】
[実施例3]
第1段目延伸倍率を3.1倍、第3段目延伸倍率を1.4倍としたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本実施例3で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すように、インク剥離性に優れているため、感熱転写記録材用基材として好適であった。
【0044】
[比較例1]
ポリエステル原料としてAを用いた以外は実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本比較例1で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すように、インク剥離性に劣っているため、感熱転写記録材用基材としては好ましくなかった。
【0045】
[比較例2]
ポリエステル原料としてCを用い、二軸押出機での溶融温度を300℃とした以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本比較例1で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すように、インク剥離性に劣っているため、感熱転写記録材用基材としては好ましくなかった。
【0046】
【表1】

【0047】
以上、本発明の感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルムは、感熱転写リボンへの加工工程や印字の際に破断や皺等が発生しにくく、さらに感熱転写リボンに用いた場合、サーマルヘッドの加熱により受像紙に溶融転写させた際、印字性に優れている、即ち、フィルムからのインクの転写性に優れているため、感熱転写記録材用基材として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなり、フィルム中のエチレンテレフタレート環状三量体量が0.7質量%以下であることを特徴とする感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルを溶融押出後、冷却ロールで固化したシートを横方向に第1段目延伸を行い、次いで縦方向に第2段目延伸を行い、さらに横方向に第3段目延伸を行うことにより得たものであることを特徴とする請求項1記載の感熱転写記録材用二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2007−62178(P2007−62178A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251797(P2005−251797)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】