説明

懸架装置およびカバー部材

【課題】バンプラバーが圧縮されることに起因して生じる空気流がオイルシールのシール部を通り抜けることを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】オイルシール129にて密封されたシリンダ100と、ピストンロッド20の外周に配置されたバンプラバー41との間においてシリンダ100の外周をカバーするバンプストッパキャップ200であって、円筒状の側部210と、側部210の中心線方向の一方の端部に設けられこの一方の端部における開口部を覆う覆い部220と、を有し、側部210と覆い部220とは一体的に連続するように成形されているとともに側部210の肉厚は覆い部220の肉厚よりも薄く成形され、側部210には、側部210および覆い部220とシリンダ100により囲まれた空間と、シリンダ100の外部であって側部210および覆い部220により囲まれていない空間とを連通する溝211が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置およびカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のダンパ(懸架装置)は、ダンパチューブから突出しているピストンロッドまわりにバンプラバーを圧入し、ダンパチューブのピストンロッドが貫通している軸封部まわりにバンプストッパキャップを固定し、ダンパの最圧縮時にバンプラバーが衝合する当接板をキャップに備える。
また、例えば、特許文献2に記載の油圧緩衝器は、シリンダに挿入されるピストンロッドのためのロッドガイドと、オイルシールとを、ダンパチューブの上端加締部とシリンダの上端部の間に挟圧固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−223412号公報
【特許文献2】特開2010−151272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
懸架装置の圧縮時に、バンプラバーが圧縮されることに起因して生じる空気流がシリンダの密封部材(オイルシール)のシール部を通り抜けてシリンダ内部へ入り込むと、シリンダ内の圧力が変化するなどの悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明は、バンプラバーが圧縮されることに起因して生じる空気流が密封部材のシール部を通り抜けることを抑制することが可能であるとともに密封部材を保護することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、液体が入れられたシリンダと、前記シリンダ内に収納されたピストンと、前記ピストンを支持するとともに一部が前記シリンダから突出するピストンロッドと、前記シリンダにおける前記ピストンロッドが突出する部位から液体が漏れないように当該シリンダ内を密封する密封部材と、前記シリンダから突出したピストンロッドの外周に配置されたバンプラバーと、前記シリンダと前記バンプラバーとの間において当該シリンダの外周をカバーするカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、円筒状の側部と、当該側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、を有し、前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されているとともに当該側部の肉厚は当該覆い部の肉厚よりも薄く成形され、前記側部には、当該側部および前記覆い部と前記シリンダにより囲まれた空間と、当該シリンダの外部であって当該側部および当該覆い部により囲まれていない空間とを連通する連通路が形成されていることを特徴とする懸架装置である。
【0006】
ここで、前記カバー部材の前記側部は、当該側部の内周面から外周側へ突出するとともに当該側部の中心線方向の他方の端部から前記一方の端部側へ当該中心線方向に伸びる突出部を有し、当該突出部にて前記連通路が形成されるとよい。
また、前記カバー部材の前記側部は、当該側部の内周面から中心側へ突出するとともに前記シリンダの前記中心線方向の位置を定める凸部を有し、当該凸部に対して中心線方向に交差する方向に当該カバー部材の内外を連通するように形成された貫通孔にて前記連通路が形成されているとよい。
前記カバー部材の前記側部の前記凸部は、周方向に全周に渡って形成されており、前記貫通孔は、周方向に複数形成されているとよい。
あるいは、前記カバー部材の前記側部の前記凸部は、周方向に複数形成されており、前記貫通孔は当該凸部それぞれに形成されているとよい。
そして、前記カバー部材は、回転成形加工にて成形されるとよい。
【0007】
他の観点から捉えると、本発明は、液体が入れられるとともに密封部材にて密封されたシリンダと、当該シリンダから突出したピストンロッドの外周に配置されたバンプラバーとの間において当該シリンダの外周をカバーするカバー部材であって、円筒状の側部と、前記側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、を有し、前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されているとともに当該側部の肉厚は当該覆い部の肉厚よりも薄く成形され、前記側部には、当該側部および前記覆い部と前記シリンダにより囲まれた空間と、当該シリンダの外部であって当該側部および当該覆い部により囲まれていない空間とを連通する連通路が形成されていることを特徴とするカバー部材である。
【0008】
ここで、前記側部は、当該側部の内周面から外周側へ突出するとともに当該側部の中心線方向の他方の端部から前記一方の端部側へ当該中心線方向に伸びる突出部を有し、当該突出部にて前記連通路が形成されるとよい。
また、前記側部は、当該側部の内周面から中心側へ突出するとともに前記シリンダの前記中心線方向の位置を定める凸部を有し、当該凸部に対して中心線方向に交差する方向に内外を連通するように形成された貫通孔にて前記連通路が形成されているとよい。
前記側部の前記凸部は、周方向に全周に渡って形成されており、前記貫通孔は、周方向に複数形成されているとよい。
あるいは、前記側部の前記凸部は、周方向に複数形成されており、前記貫通孔は当該凸部それぞれに形成されているとよい。
そして、カバー部材は、回転成形加工にて成形される回転成形加工にて成形されるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バンプラバーが圧縮されることに起因して生じる空気流が密封部材のシール部を通り抜けることを抑制することができるとともに密封部材を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る懸架装置の概略構成を示す図である。
【図2】油圧緩衝装置の概略構成を示す図である。
【図3】油圧緩衝装置の圧縮行程時のオイルの流れを示す図である。
【図4】油圧緩衝装置の伸張行程時のオイルの流れを示す図である。
【図5】(a)は、シリンダから飛び出しているピストンロッドの長さが最短となる縮み状態を示す図であり、(b)は、シリンダから飛び出しているピストンロッドの長さが最長となる伸び状態を示す図である。
【図6】第1の実施例に係るバンプストッパキャップの概略構成を示す図である。
【図7】他の形態に係るバンプストッパキャップの概略構成を示す図である。
【図8】第2の実施例に係るバンプストッパキャップの概略構成を示す図である。
【図9】第3の実施例に係るバンプストッパキャップの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る懸架装置1の概略構成を示す図である。
懸架装置1は、図1に示すように、後述する油圧緩衝装置10と、この油圧緩衝装置10のシリンダ100やピストンロッド20の外側に配置されたスプリング30と、を備えている。ピストンロッド20は、円柱状の部材であり、円柱の中心線方向の一方の端部側に後述するピストン141(図2参照)が取り付けられ、中心線方向の他方の端部側にナット21が取り付けられている。以下、ピストンロッド20の円柱の中心線方向を、単に「中心線方向」と称す場合がある。
【0012】
懸架装置1は、シリンダ100の外周に取り付けられてスプリング30の下端部を支持する下スプリングシート31と、ピストンロッド20の中心線方向の他方の端部側における外周に取り付けられてスプリング30の上端部を支持する上スプリングシート32とを備えている。スプリング30の下端部と下スプリングシート31との間には下シートラバー35が介在し、スプリング30の上端部と上スプリングシート32との間には上シートラバー36が介在している。
【0013】
懸架装置1は、シリンダ100の下部に設けられた車輪側取付部40を備えている。一方、上スプリングシート32には、この懸架装置1を車体に取り付けるためのボルト33が取り付けられている。
また、懸架装置1は、シリンダ100から飛び出しているピストンロッド20の外周に圧入されたバンプラバー41と、このバンプラバー41の外周部に配置されたバンプラバーカップ42と、を備えている。
【0014】
また、懸架装置1は、上端部がバンプラバーカップ42の外周に装着されるとともに下端部が下スプリングシート31に装着され、この間のシリンダ100およびピストンロッド20の外周を覆う蛇腹状のダストカバー50を備えている。ダストカバー50の下端部は、下スプリングシート31に、例えば、締め付けリング(不図示)およびビスにて締結されている。
【0015】
また、懸架装置1は、ピストンロッド20の上端部側において上下方向に配置され、振動を吸収する複数(本実施形態においては2個)のマウントラバー61と、複数のマウントラバー61の内側に配置された円筒状のマウントカラー62と、複数のマウントラバー61を上下から挟む上座金63,下座金64と、を備えている。複数のマウントラバー61の内の上側のマウントラバー61は、上スプリングシート32にその上端から凹むように形成された凹みに挿入されている。下側のマウントラバー61は、上スプリングシート32の下方に配置されたマウントラバーカップ65により、その上端および外周が覆われている。
【0016】
次に、油圧緩衝装置10について詳述する。
図2は、油圧緩衝装置10の概略構成を示す図である。
油圧緩衝装置10は、図2に示すように、薄肉円筒状の外シリンダ111と、外シリンダ111内に収容される薄肉円筒状の内シリンダ112と、外シリンダ111における中心線方向の一方の端部を塞ぐ底蓋113と、を有するシリンダ100を備えている。
【0017】
また、油圧緩衝装置10は、中心線方向に移動可能に内シリンダ112内に挿入されたピストン141と、中心線方向に延びるとともに中心線方向の一方の端部(図2では下端部)でピストン141を支持するピストンロッド20と、外シリンダ111の内側に配置されてピストンロッド20をガイドするロッドガイド125と、を備えている。ピストン141は、内シリンダ112の内周に接触し、内シリンダ112内の液体(本実施の形態においてはオイル)が封入された空間を、ピストン141よりも中心線方向の一方の端部側の第1油室Y1と、ピストン141よりも中心線方向の他方の端部側の第2油室Y2とに区分する。
【0018】
また、油圧緩衝装置10は、ピストンロッド20を摺動させるとともに、外シリンダ111における中心線方向の他方の端部に装着されたバンプストッパキャップ200を備えている。バンプストッパキャップ200については、後で詳述する。
また、油圧緩衝装置10は、バンプストッパキャップ200の内側であって、ロッドガイド125に対してピストン141とは反対側に設けられ、シリンダ100内の液体の漏れやシリンダ100内への異物の混入を防ぐ密封部材の一例としてのオイルシール129を備えている。
また、油圧緩衝装置10は、内シリンダ112における中心線方向の一方の端部に配置された第1バルブ装置130と、ピストンロッド20における中心線方向の一方の端部に配置された第2バルブ装置140と、を備えている。
以下に、各構成部品について詳細に説明する。
【0019】
シリンダ100においては、外シリンダ111における中心線方向の長さの方が内シリンダ112の長さよりも長く、内シリンダ112は、外シリンダ111と同心に配置される。つまり、内シリンダ112における中心線方向の一方の端部は、第1バルブ装置130を構成する部品の一つである後述するバルブボディ131と底蓋113とを介して、外シリンダ111における中心線方向の一方の端部に支持される。他方、内シリンダ112における中心線方向の他方の端部は、ロッドガイド125にて支持される。これらにより、内シリンダ112の外周と外シリンダ111の内周との間隙が中心線方向に一定となるように、内シリンダ112は、外シリンダ111と同心に配置される。そして、内シリンダ112の外周と外シリンダ111の内周とで、リザーバ室Rを形成している。本実施の形態に係る油圧緩衝装置10においては、このリザーバ室Rの内部を、オイルが封入された油室と、エア、不活性ガス等が封入されたガス室で区画している。第1バルブ装置130は、図2に示すように、後述するバルブボディ131により第1油室Y1とリザーバ室Rとを区分する。
【0020】
また、外シリンダ111の中心線方向の一方の端部に底蓋113を取り付け、外シリンダ111の中心線方向の他方の端部を内径方向にロールかしめして閉塞することにより、オイルシール129、ロッドガイド125、第1バルブ装置130などを介して、内シリンダ112の中心線方向の位置が定まる。
なお、図2においては、外シリンダ111に設けられた、下スプリングシート31や車輪側取付部40を固定するための凸部を省略して示している。
【0021】
ピストン141は、中心線方向に形成された複数の油路を有する円柱状の部材であり、第2バルブ装置140の一部を構成する。ピストン141も含め、この第2バルブ装置140については後で詳述する。
ピストンロッド20は、中実の部材であり、円柱状のロッド部20aと、中心線方向の一方の端部にピストン141などを取り付けるための一方側取付部20bと、中心線方向の他方の端部にこのピストンロッド20を車体へ取り付けるための他方側取付部20cと、を有している。一方側取付部20bおよび他方側取付部20cの先端の外面には螺旋状の溝が切られて雄ねじが形成されており、ボルトとして機能する。
【0022】
次に、第1バルブ装置130および第2バルブ装置140について説明する。
第1バルブ装置130は、中心線方向に形成された複数の油路を有するバルブボディ131と、バルブボディ131に形成された複数の油路の内の一部の油路における中心線方向の一方の端部を塞ぐ第1バルブ132と、バルブボディ131に形成された複数の油路の内の一部の油路における中心線方向の他方の端部を塞ぐ第2バルブ133とを備えている。また、第1バルブ装置130は、別体で構成されるバルブボディ131、第1バルブ132および第2バルブ133などをユニット化するためのボルト134とナット135とを備えている。また、第1バルブ装置130は、ボルト134の頭部と第1バルブ132との間に配置されるワッシャ136と、ナット135と第2バルブ133との間に配置されるワッシャ137を備えている。
【0023】
バルブボディ131は、円盤状の円盤状部311と、この円盤状部311の半径方向の最外部から中心線方向に延びた円筒状の円筒状部312と、を有し、シリンダ100内の閉ざされた空間を区分する。
円盤状部311には、ボルト134の軸部134aを通すために中心線方向に形成されたボルト孔311aと、ボルト孔311aよりも半径方向の外側の部位に中心線方向に形成された第1油路311bと、第1油路311bよりも半径方向の外側の部位に中心線方向に形成された第2油路311cとが形成されている。第1油路311bおよび第2油路311cは、円周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては4つ)形成されており、第1油室Y1とリザーバ室Rとを連通する連通路として機能する。ただ、半径方向の中心から見た場合に、第1油路311bと第2油路311cとは同じ方向には形成されておらず、第1油路311bと第2油路311cとは円周方向に相対的にずれた位置に形成されている。これら第1油路311bおよび第2油路311cの開口端は、それぞれ円盤状部311における中心線方向の端面よりも低い位置に形成されている。言い換えれば、円盤状部311における中心線方向の一方の端部は、第1油路311bおよび第2油路311cが形成されている領域がそれぞれリング状に凹んでいる。また、円盤状部311における中心線方向の他方の端部は、第1油路311bおよび第2油路311cが形成されている領域がそれぞれリング状に凹んでいる。
【0024】
また、円盤状部311は、中心線方向の他方の端部の最外径部位に、半径方向の中心側の端面よりも凹んだ段部を有している。この段部が、内シリンダ112における中心線方向の一方の端部と接触することで、内シリンダ112の中心線方向の位置を定めている。
円筒状部312は、中心線方向の一方の端部側に端面から凹んだ凹部312aを、円周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては4つ)有している。この凹部312aにより、円筒状部312の内部とリザーバ室Rとを連通している。
【0025】
第1バルブ132は、ボルト134の軸部を通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。そして、第1バルブ132の外径は、第1油路311bを塞ぐ大きさであり、かつ第2油路311cを開放する大きさに設定されている。
第2バルブ133は、ボルト134の軸部を通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。そして、第2バルブ133の外径は、第2油路311cを塞ぐ大きさに設定されている。また、第2バルブには、半径方向の中心から見た場合の第1油路311bに対応する位置に、円周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては9つ)の油孔が形成されている。
【0026】
ワッシャ136は、ボルト134の軸部を通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。このワッシャ136がボルト134の頭部と第1バルブ132との間に配置されることにより、このワッシャ136の厚さ分、ボルト134の頭部と第1バルブ132との間に隙間を生じさせる。
ワッシャ137は、ボルト134の軸部を通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。このワッシャ136がナット135の頭部と第2バルブ133との間に配置されることにより、このワッシャ137の厚さ分、ナット135と第2バルブ133との間に隙間を生じさせる。
【0027】
第2バルブ装置140は、上述したピストン141と、ピストン141に形成された複数の油路の内の一部の油路における中心線方向の一方の端部を塞ぐ第1バルブ142と、ピストン141に形成された複数の油路の内の一部の油路における中心線方向の他方の端部を塞ぐ第2バルブ143と、ピストンロッド20と第2バルブ143との間に配置されるワッシャ144と、を備えている。また、第2バルブ装置140は、ピストンロッド20の一方側取付部20bとともに、別体で構成されるピストン141、第1バルブ142、第2バルブ143およびワッシャ144をユニット化するためのナット145を備えている。ナット145と第1バルブ142との間には、ワッシャ146が配置される。
【0028】
ピストン141には、ピストンロッド20の一方側取付部20bを通すために中心線方向に形成されたボルト孔141aと、ボルト孔141aよりも半径方向の外側の部位に中心線方向に形成された第1油路141bと、第1油路141bよりも半径方向の外側の部位に中心線方向に形成された第2油路141cとが形成されている。第1油路141bおよび第2油路141cは、円周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては4つ)形成されており、第1油室Y1と第2油室Y2とを連通する連通路として機能する。ただ、半径方向の中心から見た場合に、第1油路141bと第2油路141cとは同じ方向には形成されておらず、第1油路141bと第2油路141cとは円周方向に相対的にずれた位置に形成されている。これら第1油路141bおよび第2油路141cの開口端は、それぞれ中心線方向の端面よりも低い位置に形成されている。言い換えれば、ピストン141における中心線方向の一方の端部は、第1油路141bおよび第2油路141cが形成されている領域がそれぞれリング状に凹んでいる。また、ピストン141における中心線方向の他方の端部は、第1油路141bおよび第2油路141cが形成されている領域がそれぞれリング状に凹んでいる。
【0029】
第1バルブ142は、ピストンロッド20の一方側取付部20bを通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。そして、第1バルブ142の外径は、第1油路141bを塞ぐ大きさであり、かつ第2油路141cを開放する大きさに設定されている。
第2バルブ143は、ピストンロッド20の一方側取付部20bを通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。そして、第2バルブ143の外径は、第2油路141cを塞ぐ大きさに設定されている。また、第2バルブ143には、半径方向の中心から見た場合の第1油路141bに対応する位置に、円周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては9つ)の油孔が形成されている。
【0030】
ワッシャ144は、ピストンロッド20の一方側取付部20bを通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。このワッシャ144がピストンロッド20の一方側取付部20bと第2バルブ143との間に配置されることにより、このワッシャ144の厚さ分、ピストンロッド20と第2バルブ143との間に隙間を生じさせる。
ワッシャ146は、ピストンロッド20の一方側取付部20bを通すボルト孔が形成された円盤状の部材である。このワッシャ144がピストンロッド20のナット145と第1バルブ142との間に配置されることにより、このワッシャ146の厚さ分、ナット145と第1バルブ142との間に隙間を生じさせる。
【0031】
次に、上述のように構成された油圧緩衝装置10の作用について説明する。
先ずは、油圧緩衝装置10の圧縮行程時の作用について説明する。
図3は、油圧緩衝装置10の圧縮行程時のオイルの流れを示す図である。
ピストンロッド20が、白抜き矢印のようにシリンダ100に対して中心線方向の一方の端部側(図3においては下方)へ移動すると、ピストン141の移動で第1油室Y1内のオイルは押され、第2バルブ装置140下面の圧力は上昇し、第2バルブ装置140の第2油路141c(図3参照)に高圧が作用する。その結果、この第2油路141cを塞ぐ第2バルブ143が開き、オイルは図3の矢印Aに示すように第2油路141cを通って第2バルブ装置140の上方の第2油室Y2に流入する。この第1油室Y1から第2油室Y2へのオイルの流れは、第2バルブ143および第2油路141cで絞られ、油圧緩衝装置10の圧縮行程時における減衰力を得る。
【0032】
また、ピストンロッド20の中心線方向の一方の端部側への移動により高まった第1油室Y1の圧力は、第1バルブ装置130の第1油路311bに作用し、これを閉塞する第1バルブ132を開く。そして、第1油室Y1内のオイルは、図3の矢印Bに示すように、バルブボディ131の第1油路311b、凹部312aを通って内シリンダ112と外シリンダ111との間に形成されるリザーバ室Rに流入する。この第1油室Y1からリザーバ室Rへのオイルの流れは、第1バルブ132および第1油路311bで絞られ、油圧緩衝装置10の圧縮行程時における減衰力を得る。
【0033】
次に、油圧緩衝装置10の伸張行程時の挙動について説明する。
図4は、油圧緩衝装置10の伸張行程時のオイルの流れを示す図である。
ピストンロッド20が、白抜き矢印のようにシリンダ100に対して中心線方向の他方の端部側(図4においては上方)へ移動すると、その体積分のオイルが第1油室Y1に不足することにより負圧となる。これにより、第2油室Y2内のオイルが第2バルブ装置140の第1油路141bを通り、この第1油路141bを閉塞する第1バルブ142を開き、図4の矢印Cのように、第1油室Y1に流入する。この第2油室Y2から第1油室Y1へのオイルの流れは、第2バルブ装置140の第1バルブ142および第1油路141bで絞られ、油圧緩衝装置10の伸張行程時における減衰力を得る。このように、第2バルブ装置140の第1バルブ142、第1油路141bで伸張側減衰力は発生し、伸張側減衰力は、第1バルブ142の剛性、第1油路141bの径などにより定まる。
【0034】
また、ピストンロッド20が図4の白抜き矢印の方向に移動すると、リザーバ室R内のオイルが第1バルブ装置130のバルブボディ131の凹部312a、第2油路311cを通り、この第2油路311cを閉塞する第2バルブ133を開き、図4の矢印Dのように、第1油室Y1内に流入する。このリザーバ室Rから第1油室Y1へのオイルの流れは、第1バルブ装置130の第2バルブ133および第2油路311cで絞られ、油圧緩衝装置10の伸張行程時における減衰力を得る。
【0035】
図5(a)は、シリンダ100から飛び出しているピストンロッド20の長さが最短となる縮み状態を示す図であり、図5(b)は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の長さが最長となる伸び状態を示す図である。
以上のように構成された懸架装置1は、図5(a)に示す縮み状態および図5(b)に示す伸び状態に変化し、スプリング30にて路面からの衝撃を吸収したり油圧緩衝装置10にてスプリング30の伸縮振動を制振したりすることで、路面の凹凸を車体に伝えない緩衝装置としての機能と、車体を路面に対して押さえつける機能とを果たす。これにより、車両の乗り心地や操縦安定性が向上する。
【0036】
次に、バンプストッパキャップ200について詳述する。
<第1の実施例>
図6は、第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200の概略構成を示す図である。図6(a)は、斜視図であり、図6(b)は、図6(a)のVIB−VIB部の断面図である。図6(c)は、バンプストッパキャップ200を下方から見た図である。なお、図6(b)では、シリンダ100の外シリンダ111およびピストンロッド20の一部を記載している。
バンプストッパキャップ200は、基本形状が円筒状の側部210と、側部210の中心線方向におけるバンプラバー41側の端部に設けられて、この端部の開口部を覆う覆い部220と、を備えている。側部210の中心線方向における覆い部220(バンプラバー41)側とは反対側の端部は開口しており、その開口部からシリンダ100が挿入される。
【0037】
側部210は、基本形状が円筒状であり、その内周面は、シリンダ100の外シリンダ111の外周面が圧入される大きさに設定されている。つまり、側部210の内周面の内径と、シリンダ100の外シリンダ111の外周面の外径とは、しまりばめで嵌合される大きさに設定されている。そして、側部210には、側部210の内周面から外周側へ突出した溝211が、周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては4つ)形成されている。溝211は、中心線方向に、中心線方向における開口した方の端部から覆い部220側の端部の方へ、覆い部220の手前まで伸びている。
【0038】
覆い部220の肉厚は、懸架装置1の最圧縮時におけるバンプラバー41との衝突力に耐え得るように、側部210の肉厚よりも厚く形成されている。言い換えれば、側部210の肉厚は、覆い部220の肉厚よりも薄く形成されている。覆い部220は、中心線方向における両端部は平面であり、その中央部には、ピストンロッド20を通すために中心線方向に貫通された貫通孔221が形成されている。
そして、覆い部220は、側部210と、曲面230を介して接続されている。
【0039】
上述した形状のバンプストッパキャップ200は、側部210の開口部側からシリンダ100が圧入され、外シリンダ111におけるバンプラバー41側の端部の外周を覆う。バンプストッパキャップ200にシリンダ100が圧入される際、側部210の溝211における覆い部220側の端部が、シリンダ100の外シリンダ111のバンプラバー41側の端部よりも上に配置されるように圧入される。これにより、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間と、バンプストッパキャップ200の外部空間とが、側部210の溝211を介して連通する。
【0040】
上述のような形状であり、シリンダ100に対して上述のように取り付けられた第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、器状であるためシリンダ100の外シリンダ111におけるバンプラバー41側の端部の外周をカバーすることができるとともに、側部210の肉厚よりも覆い部220の肉厚の方が厚いため、懸架装置1の最圧縮時における衝突力に耐え得ることができる。また、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間とバンプストッパキャップ200の外部空間とが側部210の溝211を介して連通しているので、懸架装置1の圧縮時に、バンプラバー41が圧縮されることに起因して生じる空気流が、バンプストッパキャップ200の貫通孔221、溝211を通り、バンプストッパキャップ200の外部へ排出される。その結果、本実施の形態に係るバンプストッパキャップ200を用いると、懸架装置1の圧縮時にバンプラバー41が圧縮されることに起因して生じる空気流が、オイルシール129のシール部を通り抜けてシリンダ100の内部へ入り込むことを抑制することが可能となる。また、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間が大きいので、オイルシール129にダストが入り難くすることができるなど、オイルシール129を保護することが可能となる。
【0041】
ここで、バンプストッパキャップ200の比較例として、内側にシリンダ100を納める薄肉の器状の部品と、この器状の部品とバンプラバー41との間に配置されて懸架装置1の圧縮時における衝突力を受けるための円盤状の部品と、から構成される物を考える。この比較例では、2つの部品から構成されるので、1つの部品から構成される形態よりも部品点数が増加し、組み立て工数が増加してしまう。また、円盤状の部品に、器状の部品に対する組み付け方向が定められている場合には、円盤状の部品が誤って間違った方向に組み付けられてしまうおそれがある。
【0042】
第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、この比較例の構成における器状の部品と円盤状の部品とが有する機能を1つの部品で実現する部材である。それゆえ、本実施の形態に係る懸架装置1においては、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができるとともに、誤組されることがない。
【0043】
また、第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、上述したように、覆い部220の肉厚を側部210の肉厚よりも大きくし、側部210と覆い部220とが曲面230を介して接続されている。それゆえ、バンプストッパキャップ200を、板金をプレス加工することにより製造することが可能である。例えば、1枚の鋼板を深絞り加工することでバンプストッパキャップ200を製造することが可能である。また、側部210の肉厚が覆い部220の肉厚よりも薄いので、塑性変形させて、側部210に溝211を容易に形成させることが可能となる。
このように、バンプストッパキャップ200を、プレス加工(深絞り加工)にて製造することにより、比較例の構成と比べて、生産性を損なうことなく、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。
【0044】
また、バンプストッパキャップ200をプレス加工することにより、側部210と覆い部220とは曲面230を介して一体的に連続するように成形される。それゆえ、プレス加工(深絞り加工)されたバンプストッパキャップ200は、例えば、比較例の構成の、器状の部品に円盤状の部品を溶接することで1つの部品に仕上げた物よりも残留応力を小さくすることができ、懸架装置1の最圧縮時における衝突力に対する耐力は高い。
【0045】
なお、比較例の構成における器状の部品および円盤状の部品を、1つの部品にしつつ、懸架装置1の最圧縮時における衝突力に耐え得る形状にするために、肉厚が均一な器状の部材(例えば上記器状の部品)であってその肉厚を本実施の形態に係るバンプストッパキャップ200の覆い部220の肉厚と同一とした部材を用いることも考えられる。しかしながら、かかる部材では、側部(本実施の形態に係るバンプストッパキャップ200の側部210に相当する部位)の肉厚も厚くなるため、第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200に比べて、重量増となってしまう。また、塑性変形させて、側部210に溝211形成し難い。それゆえ、本実施の形態に係るバンプストッパキャップ200は、重量増を伴うことなく、部品点数を削減することができる。
【0046】
第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200を、切削加工で製造することも可能である。また、肉厚が均一な器状の部材(例えば比較例の構成の器状の部品)を回転させながら圧力を加えて塑性変形させる回転成形加工を用いても製造することが可能である。切削加工や回転成形加工で製造されたバンプストッパキャップ200を用いても、重量増を伴うことなく、比較例の構成と比べて部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。また、誤組を抑制することが可能となる。なお、1枚の鋼板をプレス加工(深絞り加工)することで肉厚が均一な器状の部材を成形し、その後、回転成形加工を用いて覆い部220の肉厚を側部210の肉厚よりも厚くする場合には、側部210の溝211を形成する工程と、覆い部220の肉厚を側部210の肉厚よりも厚くする工程との順序はどちらが先でもよい。
【0047】
図7は、他の形態に係るバンプストッパキャップ200の概略構成を示す図である。図7(a)は、斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIB−VIIB部の断面図である。図7(c)は、バンプストッパキャップ200を下方から見た図である。
図7に示すように、バンプストッパキャップ200の覆い部220における半径方向の最外形部223は、側部210の外周面213よりも半径方向の外側に突出していてもよい。かかる形状であっても、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。
【0048】
<第2の実施例>
図8は、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200の概略構成を示す図である。図8(a)は、斜視図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIB−VIIIB部の断面図である。図8(c)は、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200をシリンダ100に装着した状態の断面図である。なお、図8(b)では、シリンダ100の外シリンダ111およびピストンロッド20の一部を記載している。
第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200と、側部210の形状が異なり、他の形状は同一である。以下では、異なる点についてのみ説明する。
【0049】
第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200の側部210には、側部210の内周面から中心側へ突出した凸部215が、周方向の全周に形成されている。凸部215は、中心線方向における開口した方の端部と覆い部220側の端部との間の位置に形成されている。そして、凸部215には、凸部215における内側に最も突出した位置から中心線方向に交差する方向に形成されて、バンプストッパキャップ200の内側と外側とを連通する連通孔215aが周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては4つ)形成されている。
【0050】
かかる形状の第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、側部210の開口部側からシリンダ100が圧入され、外シリンダ111におけるバンプラバー41側の端部の外周を覆う。バンプストッパキャップ200にシリンダ100が圧入される際、側部210の凸部215にシリンダ100の外シリンダ111のバンプラバー41側の端部が突き当たるまで圧入される。つまり、凸部215における開口部側の部位が、外シリンダ111のバンプラバー41側の端部を受ける部位として機能するとともに、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間と、バンプストッパキャップ200の外部空間とが、連通孔215aを介して連通する。
【0051】
上述のような形状であり、シリンダ100に対して上述のように取り付けられた第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、器状であるためシリンダ100の外シリンダ111におけるバンプラバー41側の端部の外周をカバーすることができるとともに、側部210の肉厚よりも覆い部220の肉厚の方が厚いため、懸架装置1の最圧縮時における衝突力に耐え得ることができる。また、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間とバンプストッパキャップ200の外部空間とが側部210の連通孔215aを介して連通しているので、懸架装置1の圧縮時に、バンプラバー41が圧縮されることに起因して生じる空気流が、バンプストッパキャップ200の貫通孔221、連通孔215aを通り、バンプストッパキャップ200の外部へ排出される。その結果、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200を用いると、懸架装置1の圧縮時にバンプラバー41が圧縮されることに起因して生じる空気流が、オイルシール129のシール部を通り抜けてシリンダ100の内部へ入り込むことを抑制することが可能となる。また、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間が大きいので、オイルシール129にダストが入り難くすることができるなど、オイルシール129を保護することが可能となる。
【0052】
第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、上述した比較例の構成における器状の部品と円盤状の部品とが有する機能を1つの部品で実現する部材である。それゆえ、実施の形態に係る懸架装置1においては、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができるとともに、誤組されることがない。
【0053】
また、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、側部210と覆い部220とが曲面230を介して接続されている。それゆえ、以下の手法で第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200を製造することが可能である。すなわち、先ず、板金をプレス加工(例えば、1枚の鋼板を深絞り加工)することにより器状に成形し、この器状の物を回転させながら外側から圧力を加えて塑性変形させる回転成形加工を用いて側部210の凸部215を形成し、その後に切削加工にて連通孔215aを形成する。
【0054】
上記製造工程において、覆い部220の肉厚を側部210の肉厚よりも大きくするのは、器状の物を成形する際のプレス加工(例えば、深絞り加工)時に行えばよい。これにより、凸部215を形成する際には、側部210の肉厚が覆い部220の肉厚よりも薄いので、塑性変形させて凸部215を形成することを容易に行うことが可能となる。あるいは、プレス加工(例えば、深絞り加工)で器状の物を成形した後に、回転成形加工を用いて、覆い部220の肉厚を側部210の肉厚よりも大きし、その後回転成形加工を用いて凸部215を形成してもよい。かかる場合にも、塑性変形させて凸部215を形成することを容易に行うことが可能となる。
【0055】
上記製造方法にてバンプストッパキャップ200を製造することにより、側部210と覆い部220とは曲面230を介して一体的に連続するように成形される。それゆえ、例えば、上記比較例の構成の、器状の部品に円盤状の部品を溶接することで1つの部品に仕上げた物よりも残留応力を小さくすることができ、懸架装置1の最圧縮時における衝突力に対する耐力は高い。
【0056】
なお、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200が、肉厚が均一な器状の部材(例えば上記器状の部品)であってその肉厚を覆い部220の肉厚と同一とした部材に比べて、軽量となるとともに、塑性変形させて側部210に凸部215を形成し易いのは第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200と同様である。
また、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200を、全て切削加工で製造することも可能である。切削加工で製造されたバンプストッパキャップ200を用いても、重量増を伴うことなく、比較例の構成と比べて部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。また、誤組を抑制することが可能となる。
【0057】
<第3の実施例>
図9は、第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200の概略構成を示す図である。図9(a)は、斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のIXB−IXB部の断面図である。図9(c)は、第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200をシリンダ100に装着した状態の断面図である。なお、図9(b)では、シリンダ100の外シリンダ111およびピストンロッド20の一部を記載している。
第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200と、側部210の形状が異なり、他の形状は同一である。以下では、異なる点についてのみ説明する。
【0058】
第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200の側部210には、側部210の内周面から中心側へ突出した突起217が、周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては4つ)形成されている。突起217は、中心線方向における開口した方の端部と覆い部220側の端部との間の位置に形成されている。そして、突起217には、突起217における内側に最も突出した位置から中心線方向に交差する方向に形成されて、バンプストッパキャップ200の内側と外側とを連通する連通孔217aがそれぞれ形成されている。
【0059】
かかる形状の第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、側部210の開口部側からシリンダ100が圧入され、外シリンダ111におけるバンプラバー41側の端部の外周を覆う。バンプストッパキャップ200にシリンダ100が圧入される際、側部210の突起217にシリンダ100の外シリンダ111のバンプラバー41側の端部が突き当たるまで圧入される。つまり、突起217における開口部側の部位が、外シリンダ111のバンプラバー41側の端部を受ける部位として機能するとともに、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間と、バンプストッパキャップ200の外部空間とが、連通孔217aを介して連通する。
【0060】
上述のような形状であり、シリンダ100に対して上述のように取り付けられた第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、器状であるためシリンダ100の外シリンダ111におけるバンプラバー41側の端部の外周をカバーすることができるとともに、側部210の肉厚よりも覆い部220の肉厚の方が厚いため、懸架装置1の最圧縮時における衝突力に耐え得ることができる。また、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間とバンプストッパキャップ200の外部空間とが側部210の連通孔217aを介して連通しているので、懸架装置1の圧縮時に、バンプラバー41が圧縮されることに起因して生じる空気流が、バンプストッパキャップ200の貫通孔221、連通孔215aを通り、バンプストッパキャップ200の外部へ排出される。その結果、第2の実施例に係るバンプストッパキャップ200を用いると、懸架装置1の圧縮時にバンプラバー41が圧縮されることに起因して生じる空気流が、オイルシール129のシール部を通り抜けてシリンダ100の内部へ入り込むことを抑制することが可能となる。また、バンプストッパキャップ200の内側における外シリンダ111が圧入されていない空間が大きいので、オイルシール129にダストが入り難くすることができるなど、オイルシール129を保護することが可能となる。
【0061】
第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、上述した比較例の構成における器状の部品と円盤状の部品とが有する機能を1つの部品で実現する部材である。それゆえ、実施の形態に係る懸架装置1においては、部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができるとともに、誤組されることがない。
【0062】
また、第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200は、側部210と覆い部220とが曲面230を介して接続されている。それゆえ、以下の手法で第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200を製造することが可能である。すなわち、先ず、板金を深絞り加工(例えば、1枚の鋼板を深絞り加工)することにより器状に成形し、この器状の物に対して外側から圧力を加えて塑性変形させるプレス加工を用いて側部210の突起217を形成し、その後に切削加工にて連通孔217aを形成する。
【0063】
上記製造工程において、覆い部220の肉厚を側部210の肉厚よりも大きくするのは、器状の物を成形する際の深絞り加工時に行えばよい。これにより、突起217を形成する際には、側部210の肉厚が覆い部220の肉厚よりも薄いので、塑性変形させて突起217を形成することを容易に行うことが可能となる。あるいは、深絞り加工で器状の物を成形した後に、回転成形加工を用いて、覆い部220の肉厚を側部210の肉厚よりも大きし、その後にプレス加工を用いて突起217を形成してもよい。かかる場合にも、塑性変形させて突起217を形成することを容易に行うことが可能となる。
【0064】
上記製造方法にてバンプストッパキャップ200を製造することにより、側部210と覆い部220とは曲面230を介して一体的に連続するように成形される。それゆえ、例えば、上記比較例の構成の、器状の部品に円盤状の部品を溶接することで1つの部品に仕上げた物よりも残留応力を小さくすることができ、懸架装置1の最圧縮時における衝突力に対する耐力は高い。
【0065】
なお、第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200が、肉厚が均一な器状の部材(例えば上記器状の部品)であってその肉厚を覆い部220の肉厚と同一とした部材に比べて、軽量となるとともに、塑性変形させて側部210に突起217を形成し易いのは第1の実施例に係るバンプストッパキャップ200と同様である。
また、第3の実施例に係るバンプストッパキャップ200を、全て切削加工で製造することも可能である。切削加工で製造されたバンプストッパキャップ200を用いても、重量増を伴うことなく、比較例の構成と比べて部品点数を削減することができ、組み立て工数を削減することができる。また、誤組を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1…懸架装置、10…油圧緩衝装置、20…ピストンロッド、30…スプリング、41…バンプラバー、42…バンプラバーカップ、100…シリンダ、129…オイルシール、200…バンプストッパキャップ、210…側部、211…溝、215…凸部、217…突起、220…覆い部、230…曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が入れられたシリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記ピストンを支持するとともに一部が前記シリンダから突出するピストンロッドと、
前記シリンダにおける前記ピストンロッドが突出する部位から液体が漏れないように当該シリンダ内を密封する密封部材と、
前記シリンダから突出したピストンロッドの外周に配置されたバンプラバーと、
前記シリンダと前記バンプラバーとの間において当該シリンダの外周をカバーするカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
円筒状の側部と、当該側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、を有し、
前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されているとともに当該側部の肉厚は当該覆い部の肉厚よりも薄く成形され、
前記側部には、当該側部および前記覆い部と前記シリンダにより囲まれた空間と、当該シリンダの外部であって当該側部および当該覆い部により囲まれていない空間とを連通する連通路が形成されている
ことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
前記カバー部材の前記側部は、当該側部の内周面から外周側へ突出するとともに当該側部の中心線方向の他方の端部から前記一方の端部側へ当該中心線方向に伸びる突出部を有し、当該突出部にて前記連通路が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記カバー部材の前記側部は、当該側部の内周面から中心側へ突出するとともに前記シリンダの前記中心線方向の位置を定める凸部を有し、当該凸部に対して中心線方向に交差する方向に当該カバー部材の内外を連通するように形成された貫通孔にて前記連通路が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記カバー部材の前記側部の前記凸部は、周方向に全周に渡って形成されており、前記貫通孔は、周方向に複数形成されていることを特徴とする請求項3に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記カバー部材の前記側部の前記凸部は、周方向に複数形成されており、前記貫通孔は当該凸部それぞれに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の懸架装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、回転成形加工にて成形されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の懸架装置。
【請求項7】
液体が入れられるとともに密封部材にて密封されたシリンダと、当該シリンダから突出したピストンロッドの外周に配置されたバンプラバーとの間において当該シリンダの外周をカバーするカバー部材であって、
円筒状の側部と、
前記側部の中心線方向の一方の端部に設けられ当該一方の端部における開口部を覆う覆い部と、
を有し、
前記側部と前記覆い部とは一体的に連続するように成形されているとともに当該側部の肉厚は当該覆い部の肉厚よりも薄く成形され、
前記側部には、当該側部および前記覆い部と前記シリンダにより囲まれた空間と、当該シリンダの外部であって当該側部および当該覆い部により囲まれていない空間とを連通する連通路が形成されている
ことを特徴とするカバー部材。
【請求項8】
前記側部は、当該側部の内周面から外周側へ突出するとともに当該側部の中心線方向の他方の端部から前記一方の端部側へ当該中心線方向に伸びる突出部を有し、当該突出部にて前記連通路が形成される
ことを特徴とする請求項7に記載のカバー部材。
【請求項9】
前記側部は、当該側部の内周面から中心側へ突出するとともに前記シリンダの前記中心線方向の位置を定める凸部を有し、当該凸部に対して中心線方向に交差する方向に内外を連通するように形成された貫通孔にて前記連通路が形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載のカバー部材。
【請求項10】
前記側部の前記凸部は、周方向に全周に渡って形成されており、前記貫通孔は、周方向に複数形成されていることを特徴とする請求項9に記載のカバー部材。
【請求項11】
前記側部の前記凸部は、周方向に複数形成されており、前記貫通孔は当該凸部それぞれに形成されていることを特徴とする請求項9に記載のカバー部材。
【請求項12】
回転成形加工にて成形されることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載のカバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72520(P2013−72520A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213237(P2011−213237)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】