成分分析方法
【課題】化粧料に含まれる成分を定性分析すると共に、定量分析することが可能な成分分析方法を提供する。
【解決手段】成分分析方法は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析し、混合物を加熱して混合物の重量変化を測定する工程と、加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有する。
【解決手段】成分分析方法は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析し、混合物を加熱して混合物の重量変化を測定する工程と、加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析する成分分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウダリーファンデーション等の化粧料に含まれる成分を分析する際には、溶媒を用いて、化粧料から油分、界面活性剤等の可溶分を抽出することにより有機粉末を分離した後に、別の溶媒を用いて、有機粉末から構成成分をさらに抽出し、不溶分を強熱する方法が用いられている。しかしながら、抽出に時間を要することに加え、定量性及び定性性が不十分であるという問題がある。
【0003】
一方、熱分析装置としては、熱重量測定装置(TG)、示差熱重量同時測定装置(TG−DTA)等が知られている。さらに、質量分析計(MS)や赤外分光光度計(IR)を熱分析装置に付設し、熱分析装置で加熱した試料から発生したガスをMSやIRに導入して分析する装置も知られている(特許文献1、2参照)。また、非特許文献1には、熱分解の分析法として、TG−DTA/GC−MSが開示されている。
【特許文献1】特開平5−60709号公報
【特許文献2】特開平6−265492号公報
【非特許文献1】有井忠,千田哲也,理学電機ジャーナル,25(1),1994,41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、化粧料に含まれる成分を定性分析すると共に、定量分析することが可能な成分分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析する成分分析方法であって、該混合物を加熱して、温度に対する該混合物の重量変化を測定する工程と、該加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成分分析方法において、前記加熱された混合物から発生したガスをガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)及び/又は赤外分光光度計(IR)を用いて分析することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の成分分析方法において、前記混合物は、化粧料であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の成分分析方法において、一種以上の溶媒で抽出することにより前記混合物を得る工程をさらに有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の成分分析方法において、前記一種以上の溶媒で化粧料を抽出することにより前記混合物を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧料に含まれる成分を定性分析すると共に、定量分析することが可能な成分分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0012】
本発明の成分分析方法は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析し、混合物を加熱して、温度に対する混合物の重量変化を測定する工程と、加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有する。このとき、混合物を加熱して、温度に対する混合物の重量変化を測定する手段としては、特に限定されないが、公知の熱重量測定装置(TG)、示差熱重量同時測定装置(TG−DTA)等を用いることができる。また、加熱された混合物から発生したガスを分析する手段としては、特に限定されないが、公知のガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)、赤外分光光度計(IR)等を用いることができ、二種以上併用してもよい。
【0013】
図1に、本発明で用いられる成分分析装置の一例として、TG/GC−MSを示す。成分分析装置10は、混合物を加熱して、温度に対する混合物の重量変化を測定するTG11及びTG11で加熱された混合物から発生したガスを分析するGC−MS12を有する。なお、MSとしては、特に限定されないが、四重極質量分析計(Q−MS)を用いることが好ましい。このとき、TG11で加熱された混合物から発生したガスは、キャリアガスにより、200〜300℃に温度調節されているトランスファーライン13を介して、GC−MS12に送られる。なお、TG11の動作は、コンピュータ14により制御され、GC−MS12の動作は、コンピュータ15により制御される。また、TG11及びGC−MS12としては、公知の装置を用いることができる。さらに、GC−MS12で得られたMSスペクトルを解析する際には、予め測定されたMSスペクトルのデータベースを用いることが好ましい。このような成分分析装置10を用いて成分分析すると、TG11で定量分析すると共に、GC−MS12で定性分析することができる。
【0014】
図2に、本発明で用いられる成分分析装置の他の例として、TG/IRを示す。成分分析装置20は、混合物を加熱して、温度に対する重量変化を測定するTG21及びTG21で加熱された混合物から発生したガスを分析するIR22を有する。なお、IR22としては、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いることが好ましい。このとき、TG21で加熱された混合物から発生したガスは、キャリアガスにより、200〜300℃に温度調節されているトランスファーライン23を介して、IR22に送られる。なお、TG21の動作は、コンピュータ23により制御され、IR22の動作は、コンピュータ24により制御される。また、TG21においては、温度を一定の速度で変化させてもよいが、混合物の重量変化が大きい時には温度変化を小さくし、重量変化が小さい時には温度変化を大きくすることが好ましい。これにより、分離分解能を向上させることができ、さらに、分析時間を短縮することができる。なお、TG21及びIR22としては、公知の装置を用いることができる。また、IR22で得られたIRスペクトルを解析する際には、予め測定されたIRスペクトルのデータベースを用いることが好ましい。このような成分分析装置20を用いて成分分析すると、TG21で定量分析すると共に、IR22で定性分析することができる。なお、混合物に含まれる複数の成分の重量変化をTG21で定量することができない場合は、IR22で定量してもよい。
【0015】
本発明においては、TG/GC−MS及びTG/IRを併用してもよい。
【0016】
本発明の成分分析方法を用いて分析される混合物としては、有機粉末を含有するパウダリーファンデーション等の化粧料が挙げられる。なお、本発明の成分分析方法を用いて化粧料を分析する際には、化粧料を直接分析してもよいし、ヘキサン、メタノール等の溶媒を用いて化粧料を抽出した後に分析してもよい。
【実施例1】
【0017】
TG/GC−MS(図1参照)を用いて、PMMA粉末に対するナイロン粉末の重量比が1である2成分系の混合物を成分分析した。なお、TG11としては、TG−8120(株式会社リガク製)、GC−MS12としては、5973MS(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、トランスファーライン13を270℃に温度調節した。
【0018】
図3に、TG/GC−MSを用いて、昇温速度10℃/分で混合物を加熱して得られたTG曲線を示す。また、図4に、1000℃まで加熱した混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図5(a)及び(b)に、それぞれ図4のピークA(保持時間:34.573分)及びピークB(保持時間:43.069分)におけるMSスペクトルを示す。また、図6(a)及び(b)に、それぞれデータベースから検索されたPMMA及びナイロンのMSスペクトルを示す。図5(a)と図6(a)及び図5(b)と図6(b)のMSスペクトルが類似しているため、図4のピークA及びピークBがそれぞれPMMA及びナイロンのピークであると推定された。
【0019】
次に、上記と同様に、TG/GC−MSを用いて、PMMA粉末及びナイロン粉末を成分分析した。図7(a)及び(b)に、それぞれPMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線を示す。図7より、PMMA粉末及びナイロン粉末は、100%分解することがわかる。
【0020】
また、図8(a)及び(b)に、それぞれ1000℃まで加熱したPMMA粉末及びナイロン粉末から発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図9(a)及び(b)に、それぞれ図8のピークA’(保持時間:33.809分)及びピークB’(保持時間:43.150分)におけるMSスペクトルを示す。このとき、図5(a)と図9(a)及び図5(b)と図9(b)のMSスペクトル、図4のピークAと図8のピークA’、図4のピークBと図8のピークB’が類似しているため、ピークA及びピークBがそれぞれPMMA粉末及びナイロン粉末のピークであると同定された。
【0021】
図10に、混合物、PMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線(図3及び図7参照)とDTG曲線を示す。図10より、PMMA粉末の分解が開始してから混合物のTG曲線の2成分の重量が共に減少する領域の変曲点Pまでの間の混合物及びPMMA粉末の重量変化は、それぞれ−50.28%及び−94.82%であることがわかる。また、変曲点Pからナイロン粉末の分解が終了するまでの間の混合物及びナイロン粉末の重量変化は、それぞれ−42.12%及び−80.91%であることがわかる。このことから、PMMA粉末に対するナイロン粉末の重量比を算出すると、
42.12/80.91/(50.28/94.82)=0.98
となる。
【0022】
したがって、分解温度の一部が重なる2成分系の混合物を十分な精度で定量することができることがわかる。
【実施例2】
【0023】
実施例1と同様に、TG/GC−MSを用いて、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対するポリメチルシルセスキオキサンの重量比が1であるシリコーンパウダーの2成分系の混合物を成分分析した。
【0024】
図11に、TG/GC−MSを用いて、昇温速度10℃/分で混合物を加熱して得られたTG曲線を示す。また、図12に、1000℃まで加熱した混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図13(a)及び(b)に、それぞれ図12のピークA及びピークBにおけるMSスペクトルを示す。
【0025】
次に、上記と同様に、TG/GC−MSを用いて、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンを成分分析した。図14(a)及び(b)に、それぞれ(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す。図14より、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーは、99.57%分解するが、ポリメチルシルセスキオキサンは、8.55%分解することがわかる。
【0026】
また、図15(a)及び(b)に、それぞれ1000℃まで加熱した(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンから発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図16(a)及び(b)に、それぞれ図15のピークA’及びピークB’におけるMSスペクトルを示す。このとき、図13(a)と図16(a)及び図13(b)と図16(b)のMSスペクトル、図12のピークAと図15のピークA’、図12のピークBと図15のピークB’が類似しているため、ピークA及びピークBがそれぞれ(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのピークであると同定された。
【0027】
図17に、混合物、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線(図11及び図14参照)を示す。図17より、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの重量変化は、それぞれ−50.34%及び−99.57%であることがわかる。また、ポリメチルシルセスキオキサンの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及びポリメチルシルセスキオキサンの重量変化は、それぞれ−3.77%及び−8.55%であることがわかる。このことから、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対するポリメチルシルセスキオキサンの重量比を算出すると、
3.77/8.55/(50.34/99.57)=0.87
となる。
【0028】
したがって、分解温度が重ならないシリコーンパウダーの2成分系の混合物を十分な精度で定量することができることがわかる。なお、このようなシリコーンパウダーの2成分系の混合物は、抽出により分離することができない。
【実施例3】
【0029】
ポリメチルシルセスキオキサン1.0重量%、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー4.0重量%、シリコーン処理雲母チタン3.5重量%、脂肪酸金属処理二酸化チタン8.0重量%、シリコーン処理酸化鉄0.3重量%、精製水残余、メトキシケイヒ酸オクチル1.0重量%、ジステアルジモニウムヘクトライト1.0重量%、ジメチコン3.0重量%、デカメチルシクロペンタシロキサン32.0重量%、ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン3.0重量%、グリセリン8.0重量%、ジプロピレングリコール4.0重量%、パルミチン酸0.4重量%、ジステアリルジモニウムクロリド0.2重量%、メチルパラベン0.2重量%、フェノキシエタノール0.3重量%、EDTA0.1重量%及び香料適量からなるファンデーションをヘキサン及びエタノールで抽出したところ、不溶分が18.0重量%であった。
【0030】
次に、実施例2と同様に、TG/GC−MSを用いて、不溶分を成分分析したところ、不溶分に(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンが含まれることがわかった。図18に、TG/GC−MSを用いて、不溶分、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンを昇温速度10℃/分で加熱して得られたTG曲線を示す。図18より、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解が開始してから分解が終了するまでの間の不溶分及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの重量変化は、それぞれ−23.70%及び−99.31%であることがわかる。また、ポリメチルシルセスキオキサンの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及びポリメチルシルセスキオキサンの重量変化は、それぞれ−0.62%及び−8.42%であることがわかる。このことから、ファンデーション中の(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの配合量を算出すると、
18.0×23.7/99.31=4.3[重量%]
となる。さらに、ファンデーション中のポリメチルシルセスキオキサンの配合量を算出すると、
18.0×0.62/8.42=1.3[重量%]
となる。
【0031】
したがって、ファンデーションに含まれる分解温度が重ならないシリコーンパウダーの2成分の配合量を十分な精度で定量することができることがわかる。
【実施例4】
【0032】
TG/IR(図2参照)を用いて、ポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーからなる3成分系の混合物(重量比=3:2:1)を成分分析した。なお、TG21としては、TG−8120(株式会社リガク製)、IR22としては、MagnaIR−550(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、トランスファーライン23を230℃に温度調節した。
【0033】
図19に、TG/IRを用いて、昇温速度20℃/分で混合物を加熱して得られたTG曲線を示す。また、図20(a)及び(b)に、それぞれ22分後及び40分後に発生したガスのIRスペクトルを示す。図20及びデータベースから検索されたIRスペクトルより、混合物にポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーが含まれることがわかった。このため、図19に、同様の条件で、ポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーを加熱して得られたTG曲線を併記した。このとき、実施例2と同様にして、TG/GC−MSを用いて、混合物を定性分析してもよい。
【0034】
図19より、ポリメチルシルセスキオキサンの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及びポリメチルシルセスキオキサンの重量変化は、それぞれ−3.7%及び−6.0%であることがわかる。また、図19より、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの重量変化は、それぞれ−46.0%、−70.0%及び−100.0%であることがわかる。
【0035】
図21に、TG/IRを用いて、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの混合物(重量比=1:1、2:1、3:1)を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトルを示す。図21より、重量比が異なる混合物は、IRスペクトルの3016cm−1及び2970cm−1のピークが異なることがわかる。
【0036】
図22に、図21のIRスペクトルの2970cm−1のピークに対する3016cm−1のピークの高さの比を用いて得られた検量線を示す。
【0037】
次に、TG/IRを用いて、混合物を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトル(図20(a)、図23参照)の2970cm−1のピークに対する3016cm−1のピークの高さの比を求めたところ、0.873であった。このことから、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対する(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマーの重量比は、
(0.873+0.0812)/0.545=1.75
となる。
【0038】
さらに、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対するポリメチルシルセスキオキサンの重量比は、
(3.7/6.0)/{46/(70×1.75+100)=2.98
となる。
【0039】
したがって、分解温度が異なるものと、ほぼ一致するものからなるシリコーンパウダーの3成分系の混合物を十分な精度で定量することができることがわかる。なお、このようなシリコーンパウダーの3成分系の混合物は、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解温度がほぼ一致しているため、TG/GC−MSを用いて、定量することができない。また、このようなシリコーンパウダーの3成分系の混合物は、抽出により分離することができない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の成分分析装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の成分分析装置の他の例を示すブロック図である。
【図3】実施例1の混合物のTG曲線を示す図である。
【図4】実施例1の混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図5】図4のピークA及びピークBにおけるMSスペクトルを示す図である。
【図6】データベースから検索されたPMMA及びナイロンのMSスペクトルを示す図である。
【図7】PMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線を示す図である。
【図8】PMMA粉末及びナイロン粉末から発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図9】図8のピークA’及びピークB’におけるMSスペクトルを示す図である。
【図10】実施例1の混合物、PMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線とDTG曲線を示す図である。
【図11】実施例2の混合物のTG曲線を示す図である。
【図12】実施例2の混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図13】図12のピークA及びピークBにおけるMSスペクトルを示す図である。
【図14】(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す図である。
【図15】(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンから発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図16】図15のピークA’及びピークB’におけるMSスペクトルを示す図である。
【図17】実施例2の混合物、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す図である。
【図18】実施例3の不溶分、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す図である。
【図19】実施例4の混合物、ポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーのTG曲線を示す図である。
【図20】実施例4の混合物を昇温速度20℃/分で加熱して22分後及び40分後に発生したガスのIRスペクトルを示す図である。
【図21】(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの混合物(重量比=1:1、2:1、3:1)を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトルを示す図である。
【図22】図21のIRスペクトルの2970cm−1のピークに対する3016cm−1のピークの高さの比を用いて得られた検量線を示す図である。
【図23】実施例4の混合物を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトルの拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
10、20 成分分析装置
11、21 TG
12 GC−MS
13 トランスファーライン
14、15、23、24 コンピュータ
22 IR
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析する成分分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウダリーファンデーション等の化粧料に含まれる成分を分析する際には、溶媒を用いて、化粧料から油分、界面活性剤等の可溶分を抽出することにより有機粉末を分離した後に、別の溶媒を用いて、有機粉末から構成成分をさらに抽出し、不溶分を強熱する方法が用いられている。しかしながら、抽出に時間を要することに加え、定量性及び定性性が不十分であるという問題がある。
【0003】
一方、熱分析装置としては、熱重量測定装置(TG)、示差熱重量同時測定装置(TG−DTA)等が知られている。さらに、質量分析計(MS)や赤外分光光度計(IR)を熱分析装置に付設し、熱分析装置で加熱した試料から発生したガスをMSやIRに導入して分析する装置も知られている(特許文献1、2参照)。また、非特許文献1には、熱分解の分析法として、TG−DTA/GC−MSが開示されている。
【特許文献1】特開平5−60709号公報
【特許文献2】特開平6−265492号公報
【非特許文献1】有井忠,千田哲也,理学電機ジャーナル,25(1),1994,41
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、化粧料に含まれる成分を定性分析すると共に、定量分析することが可能な成分分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析する成分分析方法であって、該混合物を加熱して、温度に対する該混合物の重量変化を測定する工程と、該加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成分分析方法において、前記加熱された混合物から発生したガスをガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)及び/又は赤外分光光度計(IR)を用いて分析することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の成分分析方法において、前記混合物は、化粧料であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の成分分析方法において、一種以上の溶媒で抽出することにより前記混合物を得る工程をさらに有することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の成分分析方法において、前記一種以上の溶媒で化粧料を抽出することにより前記混合物を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化粧料に含まれる成分を定性分析すると共に、定量分析することが可能な成分分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
【0012】
本発明の成分分析方法は、複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析し、混合物を加熱して、温度に対する混合物の重量変化を測定する工程と、加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有する。このとき、混合物を加熱して、温度に対する混合物の重量変化を測定する手段としては、特に限定されないが、公知の熱重量測定装置(TG)、示差熱重量同時測定装置(TG−DTA)等を用いることができる。また、加熱された混合物から発生したガスを分析する手段としては、特に限定されないが、公知のガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)、赤外分光光度計(IR)等を用いることができ、二種以上併用してもよい。
【0013】
図1に、本発明で用いられる成分分析装置の一例として、TG/GC−MSを示す。成分分析装置10は、混合物を加熱して、温度に対する混合物の重量変化を測定するTG11及びTG11で加熱された混合物から発生したガスを分析するGC−MS12を有する。なお、MSとしては、特に限定されないが、四重極質量分析計(Q−MS)を用いることが好ましい。このとき、TG11で加熱された混合物から発生したガスは、キャリアガスにより、200〜300℃に温度調節されているトランスファーライン13を介して、GC−MS12に送られる。なお、TG11の動作は、コンピュータ14により制御され、GC−MS12の動作は、コンピュータ15により制御される。また、TG11及びGC−MS12としては、公知の装置を用いることができる。さらに、GC−MS12で得られたMSスペクトルを解析する際には、予め測定されたMSスペクトルのデータベースを用いることが好ましい。このような成分分析装置10を用いて成分分析すると、TG11で定量分析すると共に、GC−MS12で定性分析することができる。
【0014】
図2に、本発明で用いられる成分分析装置の他の例として、TG/IRを示す。成分分析装置20は、混合物を加熱して、温度に対する重量変化を測定するTG21及びTG21で加熱された混合物から発生したガスを分析するIR22を有する。なお、IR22としては、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いることが好ましい。このとき、TG21で加熱された混合物から発生したガスは、キャリアガスにより、200〜300℃に温度調節されているトランスファーライン23を介して、IR22に送られる。なお、TG21の動作は、コンピュータ23により制御され、IR22の動作は、コンピュータ24により制御される。また、TG21においては、温度を一定の速度で変化させてもよいが、混合物の重量変化が大きい時には温度変化を小さくし、重量変化が小さい時には温度変化を大きくすることが好ましい。これにより、分離分解能を向上させることができ、さらに、分析時間を短縮することができる。なお、TG21及びIR22としては、公知の装置を用いることができる。また、IR22で得られたIRスペクトルを解析する際には、予め測定されたIRスペクトルのデータベースを用いることが好ましい。このような成分分析装置20を用いて成分分析すると、TG21で定量分析すると共に、IR22で定性分析することができる。なお、混合物に含まれる複数の成分の重量変化をTG21で定量することができない場合は、IR22で定量してもよい。
【0015】
本発明においては、TG/GC−MS及びTG/IRを併用してもよい。
【0016】
本発明の成分分析方法を用いて分析される混合物としては、有機粉末を含有するパウダリーファンデーション等の化粧料が挙げられる。なお、本発明の成分分析方法を用いて化粧料を分析する際には、化粧料を直接分析してもよいし、ヘキサン、メタノール等の溶媒を用いて化粧料を抽出した後に分析してもよい。
【実施例1】
【0017】
TG/GC−MS(図1参照)を用いて、PMMA粉末に対するナイロン粉末の重量比が1である2成分系の混合物を成分分析した。なお、TG11としては、TG−8120(株式会社リガク製)、GC−MS12としては、5973MS(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、トランスファーライン13を270℃に温度調節した。
【0018】
図3に、TG/GC−MSを用いて、昇温速度10℃/分で混合物を加熱して得られたTG曲線を示す。また、図4に、1000℃まで加熱した混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図5(a)及び(b)に、それぞれ図4のピークA(保持時間:34.573分)及びピークB(保持時間:43.069分)におけるMSスペクトルを示す。また、図6(a)及び(b)に、それぞれデータベースから検索されたPMMA及びナイロンのMSスペクトルを示す。図5(a)と図6(a)及び図5(b)と図6(b)のMSスペクトルが類似しているため、図4のピークA及びピークBがそれぞれPMMA及びナイロンのピークであると推定された。
【0019】
次に、上記と同様に、TG/GC−MSを用いて、PMMA粉末及びナイロン粉末を成分分析した。図7(a)及び(b)に、それぞれPMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線を示す。図7より、PMMA粉末及びナイロン粉末は、100%分解することがわかる。
【0020】
また、図8(a)及び(b)に、それぞれ1000℃まで加熱したPMMA粉末及びナイロン粉末から発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図9(a)及び(b)に、それぞれ図8のピークA’(保持時間:33.809分)及びピークB’(保持時間:43.150分)におけるMSスペクトルを示す。このとき、図5(a)と図9(a)及び図5(b)と図9(b)のMSスペクトル、図4のピークAと図8のピークA’、図4のピークBと図8のピークB’が類似しているため、ピークA及びピークBがそれぞれPMMA粉末及びナイロン粉末のピークであると同定された。
【0021】
図10に、混合物、PMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線(図3及び図7参照)とDTG曲線を示す。図10より、PMMA粉末の分解が開始してから混合物のTG曲線の2成分の重量が共に減少する領域の変曲点Pまでの間の混合物及びPMMA粉末の重量変化は、それぞれ−50.28%及び−94.82%であることがわかる。また、変曲点Pからナイロン粉末の分解が終了するまでの間の混合物及びナイロン粉末の重量変化は、それぞれ−42.12%及び−80.91%であることがわかる。このことから、PMMA粉末に対するナイロン粉末の重量比を算出すると、
42.12/80.91/(50.28/94.82)=0.98
となる。
【0022】
したがって、分解温度の一部が重なる2成分系の混合物を十分な精度で定量することができることがわかる。
【実施例2】
【0023】
実施例1と同様に、TG/GC−MSを用いて、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対するポリメチルシルセスキオキサンの重量比が1であるシリコーンパウダーの2成分系の混合物を成分分析した。
【0024】
図11に、TG/GC−MSを用いて、昇温速度10℃/分で混合物を加熱して得られたTG曲線を示す。また、図12に、1000℃まで加熱した混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図13(a)及び(b)に、それぞれ図12のピークA及びピークBにおけるMSスペクトルを示す。
【0025】
次に、上記と同様に、TG/GC−MSを用いて、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンを成分分析した。図14(a)及び(b)に、それぞれ(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す。図14より、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーは、99.57%分解するが、ポリメチルシルセスキオキサンは、8.55%分解することがわかる。
【0026】
また、図15(a)及び(b)に、それぞれ1000℃まで加熱した(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンから発生したガスのガスクロマトグラムを示し、図16(a)及び(b)に、それぞれ図15のピークA’及びピークB’におけるMSスペクトルを示す。このとき、図13(a)と図16(a)及び図13(b)と図16(b)のMSスペクトル、図12のピークAと図15のピークA’、図12のピークBと図15のピークB’が類似しているため、ピークA及びピークBがそれぞれ(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのピークであると同定された。
【0027】
図17に、混合物、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線(図11及び図14参照)を示す。図17より、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの重量変化は、それぞれ−50.34%及び−99.57%であることがわかる。また、ポリメチルシルセスキオキサンの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及びポリメチルシルセスキオキサンの重量変化は、それぞれ−3.77%及び−8.55%であることがわかる。このことから、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対するポリメチルシルセスキオキサンの重量比を算出すると、
3.77/8.55/(50.34/99.57)=0.87
となる。
【0028】
したがって、分解温度が重ならないシリコーンパウダーの2成分系の混合物を十分な精度で定量することができることがわかる。なお、このようなシリコーンパウダーの2成分系の混合物は、抽出により分離することができない。
【実施例3】
【0029】
ポリメチルシルセスキオキサン1.0重量%、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー4.0重量%、シリコーン処理雲母チタン3.5重量%、脂肪酸金属処理二酸化チタン8.0重量%、シリコーン処理酸化鉄0.3重量%、精製水残余、メトキシケイヒ酸オクチル1.0重量%、ジステアルジモニウムヘクトライト1.0重量%、ジメチコン3.0重量%、デカメチルシクロペンタシロキサン32.0重量%、ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン3.0重量%、グリセリン8.0重量%、ジプロピレングリコール4.0重量%、パルミチン酸0.4重量%、ジステアリルジモニウムクロリド0.2重量%、メチルパラベン0.2重量%、フェノキシエタノール0.3重量%、EDTA0.1重量%及び香料適量からなるファンデーションをヘキサン及びエタノールで抽出したところ、不溶分が18.0重量%であった。
【0030】
次に、実施例2と同様に、TG/GC−MSを用いて、不溶分を成分分析したところ、不溶分に(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンが含まれることがわかった。図18に、TG/GC−MSを用いて、不溶分、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンを昇温速度10℃/分で加熱して得られたTG曲線を示す。図18より、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解が開始してから分解が終了するまでの間の不溶分及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの重量変化は、それぞれ−23.70%及び−99.31%であることがわかる。また、ポリメチルシルセスキオキサンの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及びポリメチルシルセスキオキサンの重量変化は、それぞれ−0.62%及び−8.42%であることがわかる。このことから、ファンデーション中の(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの配合量を算出すると、
18.0×23.7/99.31=4.3[重量%]
となる。さらに、ファンデーション中のポリメチルシルセスキオキサンの配合量を算出すると、
18.0×0.62/8.42=1.3[重量%]
となる。
【0031】
したがって、ファンデーションに含まれる分解温度が重ならないシリコーンパウダーの2成分の配合量を十分な精度で定量することができることがわかる。
【実施例4】
【0032】
TG/IR(図2参照)を用いて、ポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーからなる3成分系の混合物(重量比=3:2:1)を成分分析した。なお、TG21としては、TG−8120(株式会社リガク製)、IR22としては、MagnaIR−550(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、トランスファーライン23を230℃に温度調節した。
【0033】
図19に、TG/IRを用いて、昇温速度20℃/分で混合物を加熱して得られたTG曲線を示す。また、図20(a)及び(b)に、それぞれ22分後及び40分後に発生したガスのIRスペクトルを示す。図20及びデータベースから検索されたIRスペクトルより、混合物にポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーが含まれることがわかった。このため、図19に、同様の条件で、ポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーを加熱して得られたTG曲線を併記した。このとき、実施例2と同様にして、TG/GC−MSを用いて、混合物を定性分析してもよい。
【0034】
図19より、ポリメチルシルセスキオキサンの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物及びポリメチルシルセスキオキサンの重量変化は、それぞれ−3.7%及び−6.0%であることがわかる。また、図19より、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解が開始してから分解が終了するまでの間の混合物、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの重量変化は、それぞれ−46.0%、−70.0%及び−100.0%であることがわかる。
【0035】
図21に、TG/IRを用いて、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの混合物(重量比=1:1、2:1、3:1)を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトルを示す。図21より、重量比が異なる混合物は、IRスペクトルの3016cm−1及び2970cm−1のピークが異なることがわかる。
【0036】
図22に、図21のIRスペクトルの2970cm−1のピークに対する3016cm−1のピークの高さの比を用いて得られた検量線を示す。
【0037】
次に、TG/IRを用いて、混合物を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトル(図20(a)、図23参照)の2970cm−1のピークに対する3016cm−1のピークの高さの比を求めたところ、0.873であった。このことから、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対する(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマーの重量比は、
(0.873+0.0812)/0.545=1.75
となる。
【0038】
さらに、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーに対するポリメチルシルセスキオキサンの重量比は、
(3.7/6.0)/{46/(70×1.75+100)=2.98
となる。
【0039】
したがって、分解温度が異なるものと、ほぼ一致するものからなるシリコーンパウダーの3成分系の混合物を十分な精度で定量することができることがわかる。なお、このようなシリコーンパウダーの3成分系の混合物は、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの分解温度がほぼ一致しているため、TG/GC−MSを用いて、定量することができない。また、このようなシリコーンパウダーの3成分系の混合物は、抽出により分離することができない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の成分分析装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の成分分析装置の他の例を示すブロック図である。
【図3】実施例1の混合物のTG曲線を示す図である。
【図4】実施例1の混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図5】図4のピークA及びピークBにおけるMSスペクトルを示す図である。
【図6】データベースから検索されたPMMA及びナイロンのMSスペクトルを示す図である。
【図7】PMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線を示す図である。
【図8】PMMA粉末及びナイロン粉末から発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図9】図8のピークA’及びピークB’におけるMSスペクトルを示す図である。
【図10】実施例1の混合物、PMMA粉末及びナイロン粉末のTG曲線とDTG曲線を示す図である。
【図11】実施例2の混合物のTG曲線を示す図である。
【図12】実施例2の混合物から発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図13】図12のピークA及びピークBにおけるMSスペクトルを示す図である。
【図14】(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す図である。
【図15】(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンから発生したガスのガスクロマトグラムを示す図である。
【図16】図15のピークA’及びピークB’におけるMSスペクトルを示す図である。
【図17】実施例2の混合物、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す図である。
【図18】実施例3の不溶分、(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマー及びポリメチルシルセスキオキサンのTG曲線を示す図である。
【図19】実施例4の混合物、ポリメチルシルセスキオキサン、(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーのTG曲線を示す図である。
【図20】実施例4の混合物を昇温速度20℃/分で加熱して22分後及び40分後に発生したガスのIRスペクトルを示す図である。
【図21】(ジメチコン/ビニルメチコン/メチコン)クロスポリマー及び(ジメチコン/ビニルメチコン)クロスポリマーの混合物(重量比=1:1、2:1、3:1)を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトルを示す図である。
【図22】図21のIRスペクトルの2970cm−1のピークに対する3016cm−1のピークの高さの比を用いて得られた検量線を示す図である。
【図23】実施例4の混合物を昇温速度20℃/分で加熱して22分後に発生したガスのIRスペクトルの拡大図である。
【符号の説明】
【0041】
10、20 成分分析装置
11、21 TG
12 GC−MS
13 トランスファーライン
14、15、23、24 コンピュータ
22 IR
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析する成分分析方法であって、
該混合物を加熱して、温度に対する該混合物の重量変化を測定する工程と、
該加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有することを特徴とする成分分析方法。
【請求項2】
前記加熱された混合物から発生したガスをガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)及び/又は赤外分光光度計(IR)を用いて分析することを特徴とする請求項1に記載の成分分析方法。
【請求項3】
前記混合物は、化粧料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成分分析方法。
【請求項4】
一種以上の溶媒で抽出することにより前記混合物を得る工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の成分分析方法。
【請求項5】
前記一種以上の溶媒で化粧料を抽出することにより前記混合物を得ることを特徴とする請求項4に記載の成分分析方法。
【請求項1】
複数の成分を含有する混合物に含まれる少なくとも一つの成分を分析する成分分析方法であって、
該混合物を加熱して、温度に対する該混合物の重量変化を測定する工程と、
該加熱された混合物から発生したガスを分析する工程を有することを特徴とする成分分析方法。
【請求項2】
前記加熱された混合物から発生したガスをガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)及び/又は赤外分光光度計(IR)を用いて分析することを特徴とする請求項1に記載の成分分析方法。
【請求項3】
前記混合物は、化粧料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成分分析方法。
【請求項4】
一種以上の溶媒で抽出することにより前記混合物を得る工程をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の成分分析方法。
【請求項5】
前記一種以上の溶媒で化粧料を抽出することにより前記混合物を得ることを特徴とする請求項4に記載の成分分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−8664(P2009−8664A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133534(P2008−133534)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
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