説明

成形されたスマートカードおよび製造方法

本発明は、射出成形によって作製された成形カード本体と、集積回路チップとを含むチップカード、およびそのようなカードを製造する方法に関する。本発明は、カード本体が、ポリ乳酸を含むことを特徴とする。本発明は、特に、SIMカードに適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートカードの分野に関する。本発明は、第1に、射出成形によって作製された成形カード本体と、第2に、集積回路チップとを含むスマートカードに関する。本発明は、さらに、そのようなスマートカードを製造するための方法に関する。特に、本発明にかかわるカードは、加入者識別モジュールカードまたはSIMカードである。SIMカードは、携帯電話に組み入れられるように設計されている。SIMカードは、携帯電話型電気通信網においてサービスの供給者に対して加入者を識別する。
【背景技術】
【0002】
スマートカードは、カード本体と、集積回路を備えたチップとを含む規格化されたポータブル電子物体である。
【0003】
カード本体は、薄い矩形平行6面体の形状を実質的にとる。
【0004】
カードがSIMカードである場合には、カード本体は、ミニカードと呼ばれるより小さなインナーカードを分離するためにプレカットされている。そのミニカードは、タブによってカード本体に取り付けられている。ミニカードがカード本体の残りから分離され、次いで、ミニカード形態を受け入れる携帯電話に組み入れられることができるように、タブは取り除かれることができる。ミニカードのない従来の形態でのカードのように、ミニカードの寸法特性が規格化されている。
【0005】
集積回路チップは、電子モジュールまたはマイクロモジュールに一般的に組み入れられる。このモジュールは、カード本体の表面と同一平面で接触する。接触の位置はそれ自体規格化されている。
【0006】
スマートカードは、積層によって、または射出成形によって一般的に製造されている。
【0007】
積層によってカードを製造するために、カード本体を構成する接合シートを得るように、熱いときに、押し出されたプラスチックシートが組み立てられる。1つの例において、接合シートは6枚のシートを含み、それらのうちの2つは、オーバーレイと呼ばれる外側被覆シートである。モジュールは、例えば、空洞が特にミリング加工によって前記カード本体内に作製された後に、後の段階でカード本体に組み入れられてもよい。カード本体がミニカードを画定するためにプレカットされる場合には、そのプレカットは、形削りによって、またはレーザービーム、高圧ジェット、または打ち抜き型機械的手段などのプレカット手段で達成される。
【0008】
実際には、積層を使用するスマートカード製造方法の調節は比較的簡単である。しかしながら、積層を使用するスマートカード製造の実施は、モジュールを置くための空洞を作製するために上記のものを含むいくつかの段階を必要とするので複雑になる。
【0009】
他方、射出成形を使用するスマートカード製造方法の調節は巧妙である。それは、型の内部空洞の高さ、実質的には、カードのサイズにおいて他の寸法に対して特に小さいからである。注入されたプラスチックは、製造されるカードがミニカードを含む場合には、特にミニカードの固定タブを形成するギャップ内で、または型の空洞の非常に小さな厚み内で、カード本体の規格化された最小厚みを表わす0.76mm未満で、モジュールの後の配置用の空洞を形成するように設計された型の芯から垂直に、型の空洞の全体に均一に広げられなければならない。材料が型の空洞内で均一に広がらない場合には、そのとき、成形によって作製されたカードは不完全である。さらに、カードに外観欠陥を持たせることなく、高温、特に、150℃より上、および圧力下、例えば、1000バールを超える圧力で材料が注入される必要がある。多くの公知の材料が、これらの条件において注入可能ではなく、作製されたカード本体の外観は満足ではない。例えば、いくつかの材料、またはいくつかの注入状態のいくつかの材料で、作製されたカードは、収縮マークまたはリブなどの外観欠陥を有する。他の場合には、浸透が、型の異なる部分間で見られることができる。それは、少数の会社だけが、射出成形によってカードを作製するのに十分な専門知識を現在有するからである。最後に、特にSIMカードの場合には、射出成形によって作製されたカード本体は、高温、実際には85℃に耐えなければならない。それらは、さらに湿度に対して適切な抵抗性を提供しなければならない。実際には、電話の内部の湿度が93%である場合でさえ、SIMカードは破損されてはならない。
【0010】
上記の制約を考慮して、先行技術のSIMカードは、今日、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)から実質的になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1862507号明細書
【特許文献2】国際公開第03/021526号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1857969号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ABSには主な欠点がある。本発明のこの説明の用語において、この製品は、「グリーン」と呼ぶことができず、ある程度まで生物分解性である製品を意味する。その結果、ABSからなるカードは、使用後に破損されず、または少なくとも実質的に破損されない。分離可能なミニカードを含むSIMカードで、一旦ミニカードがカード本体の残りから分離された場合には、その残りは処分され、品質が下がらない。
【0013】
生物分解性プラスチックで作製されたいわゆる「グリーン」カードは、特に、欧州特許出願公開第1862507号明細書において、積層によって確かに作製された。しかしながら、これらのカードは積層されたカードであり、以前に説明されたように、積層されたカードを製造するために使用される材料が、射出成形されたカードを製造するために使用されることができず、射出成形によって作製された公知のグリーンカード、特に、携帯電話サービスの供給者によって要求される仕様にしたがって携帯電話で用いる、熱および湿度に対する十分な抵抗性を提供するグリーンSIMカードは現在ない。
【0014】
上記を考慮して、本発明は、射出成形されたグリーンカード、特に、高温、特に、85℃、および高い湿度、特に93%に耐えるSIMカードを作製する1つの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明で示されたその問題に対する解決策は、第1に、(a)射出成形によって作製された成形熱可塑性カード本体と、(b)集積回路チップとを含むスマートカードであって、前記カード本体は、ポリ乳酸を含むことを特徴とするスマートカードに関する。
【0016】
第2に、本発明は、スマートカードを製造する方法であって、スマートカードは、(a)カード本体と、(b)集積回路チップとを含み、カード本体用の空洞を備えた型が供給され、ポリ乳酸を含む材料が供給され、材料が型に注入され、このように注入されたカード本体が型から取り除かれるステップを含むことを特徴とする、方法に関する。
【0017】
有利には、カード本体は、前記カード本体の全体重量の40重量%を超えるポリ乳酸を含む;カード本体は、さらに共重合体を含む;カード本体は、60重量%以下の共重合体を含む;共重合体は、コポリエステルである;カード本体は、さらに染料を含む;染料は、二酸化チタンを含む;カード本体を作製するために注入された材料の流動性は、8〜20g/10minのMFIの範囲である;カードは、加入者識別モジュールであり、カード本体は、分離可能なミニカードを分離するプレカットを有し、注入温度は、150℃より高く、射出圧は1000バールより高い。
【0018】
本発明は、実施形態の非限定的な例の以下の説明でより理解される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によるスマートカードは、カード本体、および集積回路を備えたチップを含む。
【0020】
カード本体は、薄い矩形平行6面体の形状を実質的にとる。カード本体の寸法は、品質基準ISO7810、ISO7816およびETSI、特にETSI TS 102 221によって確立されたGSM(登録商標)品質基準によって定義される。それらの寸法は、長さ85.60mm、幅53.98mm、厚さ0.76mmである。カードがSIMカードである場合には、そのとき、カード本体は、前述の寸法を備え、より小さなインナーカードまたはミニカードを分離するためにプレカットされる。そのミニカードは、タブによってカード本体に取り付けられている。カード本体の残りからミニカードが分離されることができ、次いで、ミニカード形態を受け入れる携帯電話に組み入れられることができるように、タブは取り除かれることができる。ミニカードを備えていない従来の形態のカードのように、ミニカードの寸法の特性は、前述の品質基準で定義される。
【0021】
本発明によるカード本体は成形され、射出成形によって作製される。このように、それは、積層によって作成された積層カード本体とは異なる。射出成形によって作製されたカード本体は、単一ピースを形成し、一方、積層によって作製されたカード本体は、積み重ねられたシートで形成された接合シートから構成され、完成されたカード本体において互いに区別されることが可能である。さらに、射出成形によって作製されたカード本体は、一般に、特に、カード本体の端の上に射出点の跡がある。
【0022】
本発明では、射出成形によって作製されたカード本体は、ポリ乳酸またはPLAを含む。PLAは、公知の生物分解性熱可塑性物質であり、例えば、サトウキビやコーンスターチに由来するものであってもよい。PLAは生物分解性である。実施形態の1つの例では、PLAは、前記混合物の全体重量の90重量%のPLAを含む混合物であり、混合物は、93℃のビカー点および−28℃のガラス転移温度の品名Compostable 1001でCeraplast(TM)によって販売されている。
【0023】
優先的には、カード本体は熱可塑性であり、前記カード本体の全体重量の40重量%より多いPLAを含む。より優先的には、カード本体は、50〜80重量%のPLAを含む。
【0024】
優先的には、カード本体は、さらに、前記カード本体の全体重量の60重量%以下の共重合体を含み、共重合体は、優先的にはコポリエステルである。より優先的には、カード本体は、15〜50重量%のそのタイプの共重合体を含む。例えば、共重合体は、44℃のビカー点および55℃のガラス転移温度の品名PBI03でNatureplast(TM)で販売される脂肪族コポリエステルである。
【0025】
有利には、カード本体は、さらに染料、例えば、射出成形されたカード本体に白色を付与するように設計された無機充填材を含む。無機充填材は、例えば、二酸化チタンTiO2であってもよく、染料の60重量%を占める。
【0026】
カード本体を作製するための注入された材料の流動性は、8〜20g/10minのMFI(メルトフローインデックス、規格化された値NFT51−016、620、ISO1133)の範囲である。20g/10minのMFIを超えると、PLAを含む混合物の浸透が観察されることができる。8g/10minのMFI未満では注入は困難であり、または不可能であり、いくつかの注入されたカードは不完全または外観に欠陥がある。MFIで付与された流動性は、材料の温度または射出圧に実質的に依存しないことが留意されてもよい。
【0027】
本発明によるカードを作製するために、混合物が最初に準備される。混合物は、PLA、有利には、共重合体、実際には、コポリエステルおよび染料を前述の量で含む。
【0028】
混合物は、加熱されて150℃を越える温度、例えば、ほぼ200℃にもたらされる。
【0029】
PLAを含む混合物の流動性は、具体的に、8〜20g/10minのMFIの範囲に決定される。このように、PLAを含むこの材料は、型内で、あるいは型の壁に対する注入時の小波またはカードの外観欠陥の原因となる可能性がある他の異常なしで、型の空洞を画定する芯の下に均一に広がる。
【0030】
次いで、前述の流動性を備えた混合物は、一般的に、型内で1000バールを超える圧力下で注入される。そのような型は、特に、国際公開第03/021526号または欧州特許出願公開第1857969号明細書に開示されており、その内容は、参照引用によってこの記載に組み込まれる。
【0031】
型内に注入された材料は冷却され、カード本体は、引き出され、実際には型から取り出される。
【0032】
その後、集積回路チップを備えたモジュールが、カード本体の空洞に置かれる。それは、例えば、空洞に接着剤でつけられてもよい。
【0033】
ABSと異なり、本発明で使用される混合物は、低い収縮を示す。
【0034】
作製されたカード、特に、カード本体は、PLAを含み、グリーンまたは生物分解性である。それらは、再生可能資源に部分的に由来する材料からなり、前述のPLA/コポリエステル比率に基づいて少なくとも36%である。それらは、容易に再利用され堆肥化されることができ、毒性ガスの排出なしで焼却処分されてもよい。このように、本発明によるカード本体は、その寿命の最後に、製品が土や大気を汚染しないことを可能にする。特に、一旦ミニカードがその支持体から分離された場合には、カードの残りは、回復、再利用されることができる。
【0035】
実施例1:生物分解性SIMカード
以下を含む混合物が準備された:
コーンスターチから作成される90重量%のPLAを含む品名INJ1001EZCでCeraplast(TM)によって販売される材料74%、
品名PIB03でNatureplast(TM)によって販売される100%生物分解性コポリエステル24%、
TiO2で作製された白色染料Polyone(TM)2%(重量)。
【0036】
混合物は、210℃の温度にもたらされ、次いで、分離可能なミニカードを備えた成形カード本体を作製するために設計された型の空洞内に1220バールの圧力で注入される。
【0037】
混合物の流動性は、およそ12g/10minのMFIであった。
【0038】
その後、集積回路チップを備えたモジュールは、カード本体の空洞内に置かれた。
【0039】
作製されたカードは、本発明のこの説明の意味ではグリーンカードであり、生物分解性であった。
【0040】
温度および耐熱性試験が実行された。それらは、得られたカードが、所定の時間、93%の湿度で85℃の温度に高い耐性があることを示した。さらに、前記カードは、GSM用途に適切な特性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)射出成形によって作製された成形熱可塑性カード本体と、
(b)集積回路チップと
を含むスマートカードであって、
前記カード本体は、ポリ乳酸を含むことを特徴とする、スマートカード。
【請求項2】
前記カード本体が、前記カード本体の全体重量の40重量%を超えるポリ乳酸を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスマートカード。
【請求項3】
カード本体が、さらに共重合体を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項4】
カード本体が、60重量%以下の共重合体を含むことを特徴とする、請求項3に記載のスマートカード。
【請求項5】
共重合体が、コポリエステルであることを特徴とする、請求項3または4のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項6】
カード本体が、さらに染料を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項7】
染料が、二酸化チタンを含むことを特徴とする、請求項6に記載のスマートカード。
【請求項8】
カード本体を作製するために注入された材料の流動性が、8〜20g/10minのMFIの範囲であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項9】
スマートカードが、加入者識別モジュールであり、カード本体は、分離可能なミニカードを分離するためにプレカットされていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項10】
スマートカードが、生物分解性であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項11】
スマートカードを製造する方法であって、
(a)カード本体と、
(b)集積回路チップと
を含み、
カード本体用の空洞を画定する型が供給され、
ポリ乳酸を含む材料が供給され、
材料が型に注入され、
このように注入されたカード本体が型から取り除かれるステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
注入された材料が、前記材料の全体重量の少なくとも40重量%のポリ乳酸、および前記材料の60重量%以下のコポリマーを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カード本体を作製するために注入された材料の流動性が、8〜20g/10minのMFIの範囲であることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
スマートカードが、加入者識別モジュールであり、カード本体は、分離可能なミニカードを分離するためにプレカットされることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
注入温度が、150℃より高く、射出圧は1000バールより高いことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−516343(P2013−516343A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551563(P2012−551563)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050241
【国際公開番号】WO2011/083171
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(504326572)ジエマルト・エス・アー (31)
【Fターム(参考)】