説明

成形品の製造方法及び製造装置並びにそれらに用いられる金型

【課題】大掛かりな搬送設備が不要な成形品の製造方法及び製造装置並びにそれらに用いる金型を得る。
【解決手段】第1金型2及び第2金型3、第2金型3に着脱可能に固定される金型部品1とによりキャビティ5が形成されるようにし、第1金型2と第2金型3を所定温度以上にしておき、第2金型3に加熱工程で所定温度以上にした金型部品1を固定して成形材料をキャビティ5に注入する成形工程、第1金型2と第2金型3とを離隔し、第2金型3から成形品51を金型部品1に抱かせた状態で取り出す取り出し工程、取り出された成形品51を冷却する冷却工程、冷却された成形品51を金型部品1から離型する離型工程、離型された金型部品1を所定温度以上にする加熱工程を備え、金型部品1を各工程に巡回させて各工程における処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形品の製造方法及び製造装置並びにそれらに用いる金型に関するもので、特に、金型の加熱、金型による成形品の成形、冷却、成形品の離型といった工程を経て成形品を得る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の金型を用いた成形技術では、内部にキャビティを形成する金型を複数用いて、加熱ステーション、充填・緩和ステーション、徐冷ステーション及び成形品取出しステーションの工程順に次々と金型を搬送し、各工程における処理を同時に行うことで成形サイクルを短縮し生産性の向上を図っている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0003】
また、射出成形金型により成形された成形品を一度取り出し、冷却金型またはエージング金型に挿入して、冷却工程またはエージング工程を射出成形金型とは別の金型を用いて行うことが開示されている(例えば、特許文献3または特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2793129号公報(第8頁−第10頁、図1)
【特許文献2】特許第3197981号公報(第3頁−第4頁、図1)
【特許文献3】特開2003−11153号公報(第6頁−第8頁、図1−図3)
【特許文献4】特許第3963127号公報(第6頁−第8頁、図1−図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に行われている射出成形方法では、1式の金型(キャビティユニット)を製作するだけでよいが、特許文献1または特許文献2で示されたような複数の金型を次々と各工程に搬送し巡回させる成形方法では、金型を複数個準備する必要があるため、金型の製作コストが増大する。
【0006】
また、重量のある金型を搬送するためには大掛かりな搬送設備が必要となり、搬送設備に掛かるコストがかさむだけでなく、搬送設備が搬送できる金型重量には限界があるので、金型の大きさに制約が出てくる。
【0007】
また、金型を温度調整するための水や油などの媒体を流すホースや、抵抗加熱ヒータなどの電源コードを金型に接続して金型を搬送するのは難しいので、特許文献1または特許文献2では、加熱ステーションには金型を外部から加熱するための抵抗加熱ヒータや温度調整用の媒体回路を設け、徐冷(冷却)ステーションには金型を外部から冷却するための空気や水などの冷媒を流す冷却回路を設けているが、このように金型を外部から温度調整すると、熱の伝達が遅く、金型全体を均一に加熱、冷却するためには長時間を要するために、成形品の製造効率が悪く、また、エネルギーロスが生じるという問題がある。
【0008】
また、特許文献3または特許文献4で示されたような従来の金型を用いた成形技術では、成形品を冷却金型またはエージング金型に挿入するために、射出成形金型から一度取り出すことになるが、成形品は射出成形金型による拘束が外されるため、あらゆる面が自由に変形することになる。再び冷却金型またはエージング金型に挿入して矯正するとは言え、既に自由に変形しているので、その変形部分の形状および精度は完全に保証することができない。また、成形品を挿入するときに、金型との寸法によっては圧入するような形になり、成形品を傷付けるなどの不良が発生するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、大掛かりな搬送設備を不要とする成形品の製造方法及び製造装置並びにそれらに用いる金型を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、成形品に傷をつけることなく、金型から取り出し、冷却できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る成形品の製造方法は、突き合わせ面を有する第1金型及び第2金型と、上記第1金型又は第2金型の上記突き合わせ面側の所定の位置に、その固定部分が着脱可能に固定される金型部品とを備え、
上記第1金型と上記第2金型とを突き合わせることにより上記第1金型と上記第2金型とによりキャビティの壁の一部が形成され、上記金型部品により上記キャビティの壁の残部が形成されるようにし、
上記第1金型と上記第2金型とを所定温度以上に加熱しておき、上記第1金型と上記第2金型のいずれか一方に加熱工程で上記所定温度以上に加熱された上記金型部品を固定して成形材料を上記キャビティに注入し成形品を成形する成形工程と、
上記第1金型と上記第2金型とを離隔し、上記成形品を、上記金型部品に抱かせた状態で上記第1金型又は第2金型から取り出す取り出し工程と、
上記取り出し工程から搬送された上記成形品及び上記金型部品を冷却する冷却工程と、
上記冷却された上記成形品を上記金型部品から離型する離型工程と、
上記離型工程から搬送された上記金型部品を上記所定温度以上の温度に加熱する上記加熱工程とを備え、
上記金型部品を上記各工程に巡回させて上記各工程における処理を行うものである。
【0012】
本発明に係る成形品の製造装置は、突き合わせ面を有する第1金型及び第2金型と、上記第1金型又は第2金型の上記突き合わせ面側の所定の位置に、その固定部分が着脱可能に固定される金型部品とを備え、
上記第1金型と上記第2金型とを突き合わせることにより上記第1金型と上記第2金型とによりキャビティの壁の一部が形成され、上記金型部品により上記キャビティの壁の残部が形成されるようにし、
上記第1金型及び第2金型を所定の温度以上に加熱する第1加熱部、上記第1加熱部により加熱された上記第1金型又は第2金型に第2加熱部で上記所定の温度以上に加熱された上記金型部品を固定し上記第1金型と上記第2金型とを組み立てる組立部、成形材料を上記キャビティに充填し成形品を成形する充填部、上記成形品を上記金型部品に抱きついた状態で上記第1金型又は第2金型の外へ取り出す取り出し部及び取り出した上記金型部品と上記成形品とを搬送する第1搬送設備を備えた成形装置部と、
上記第1搬送設備によって搬送された上記金型部品を固定する固定台、上記金型部品に冷却媒体を循環させることにより上記金型部品及び上記成形品を冷却する冷却媒体回路、上記冷却された上記金型部品から上記成形品を離型する離型部及び冷却された上記金型部品と上記成形品とを搬送する第2搬送設備を備えた冷却離型装置部と、
上記第2搬送設備によって搬送された上記金型部品を固定する加熱台、上記加熱台に固定した上記金型部品を加熱する上記第2加熱部及び加熱した上記金型部品を上記成形装置部へ搬送する第3搬送設備を備えた加熱装置部とを備えたものである。
【0013】
本発明に係る金型は、上記本発明に係る成形品の製造方法又は上記本発明に係る成形品の製造装置に用いられるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る成形品の製造方法によれば、突き合わせ面を有する第1金型及び第2金型と、上記第1金型又は第2金型の上記突き合わせ面側の所定の位置に、その固定部分が着脱可能に固定される金型部品とを備え、
上記第1金型と上記第2金型とを突き合わせることにより上記第1金型と上記第2金型とによりキャビティの壁の一部が形成され、上記金型部品により上記キャビティの壁の残部が形成されるようにし、
上記第1金型と上記第2金型とを所定温度以上に加熱しておき、上記第1金型と上記第2金型のいずれか一方に加熱工程で上記所定温度以上に加熱された上記金型部品を固定して成形材料を上記キャビティに注入し成形品を成形する成形工程と、
上記第1金型と上記第2金型とを離隔し、上記成形品を、上記金型部品に抱かせた状態で上記第1金型又は第2金型から取り出す取り出し工程と、
上記取り出し工程から搬送された上記成形品及び上記金型部品を冷却する冷却工程と、
上記冷却された上記成形品を上記金型部品から離型する離型工程と、
上記離型工程から搬送された上記金型部品を上記所定温度以上の温度に加熱する上記加熱工程とを備え、
上記金型部品を上記各工程に巡回させて上記各工程における処理を行うので、比較的軽量な金型部品と金型部品に抱きついた成形品又は金型部品のみを巡回させればよく、大掛かりな搬送設備は不要となる。
【0015】
また、金型部品を着脱可能に固定しているので、成形品を金型部品に抱き付かせた状態で取り出し、第1金型及び第2金型による拘束から外れた状態で冷却することができ、成形品はその形状は保持しながらも自由に変形することができるので、冷却に伴う収縮ひずみを緩和することができる。
【0016】
また、金型部品を着脱可能に固定しているので、成形品を金型部品に抱き付かせた状態で第1金型又は第2金型から取り出して金型部品を冷却することにより成形品に触れることなく冷却することができ、成形品を傷つけることはない。
【0017】
本発明に係る成形品の製造装置によれば、突き合わせ面を有する第1金型及び第2金型と、上記第1金型又は第2金型の上記突き合わせ面側の所定の位置に、その固定部分が着脱可能に固定される金型部品とを備え、
上記第1金型と上記第2金型とを突き合わせることにより上記第1金型と上記第2金型とによりキャビティの壁の一部が形成され、上記金型部品により上記キャビティの壁の残部が形成されるようにし、
上記第1金型及び第2金型を所定の温度以上に加熱する第1加熱部、上記第1加熱部により加熱された上記第1金型又は第2金型に第2加熱部で上記所定の温度以上に加熱された上記金型部品を固定し上記第1金型と上記第2金型とを組み立てる組立部、成形材料を上記キャビティに充填し成形品を成形する充填部、上記成形品を上記金型部品に抱きついた状態で上記第1金型又は第2金型の外へ取り出す取り出し部及び取り出した上記金型部品と上記成形品とを搬送する第1搬送設備を備えた成形装置部と、
上記第1搬送設備によって搬送された上記金型部品を固定する固定台、上記金型部品に冷却媒体を循環させることにより上記金型部品及び上記成形品を冷却する冷却媒体回路、上記冷却された上記金型部品から上記成形品を離型する離型部及び冷却された上記金型部品と上記成形品とを搬送する第2搬送設備を備えた冷却離型装置部と、
上記第2搬送設備によって搬送された上記金型部品を固定する加熱台、上記加熱台に固定した上記金型部品を加熱する上記第2加熱部及び加熱した上記金型部品を上記成形装置部へ搬送する第3搬送設備を備えた加熱装置部とを備えたものであるので、比較的軽量な金型部品と金型部品に抱きついた成形品又は金型部品のみを巡回させればよく、大掛かりな搬送設備は不要となる。
【0018】
また、金型部品を着脱可能に固定しているので、成形品を金型部品に抱き付かせた状態で取り出し、第1金型及び第2金型による拘束から外れた状態で冷却することができ、成形品はその形状は保持しながらも自由に変形することができるので、冷却に伴う収縮ひずみを緩和することができる。
【0019】
また、金型部品を着脱可能に固定しているので、成形品を金型部品に抱きつかせた状態で第1金型又は第2金型から取り出して金型部品を冷却することにより成形品に触れることなく冷却することができ、成形品を傷つけることはない。
【0020】
また、金型部品を成形品と一体にして金型の外へ取り出し冷却することで、成形品の周りに温められた空気がよどむことがなく、また、第1金型2及び第2金型3からの輻射熱によって成形品の冷却が阻害されることもないので均一に、かつ、速く冷却でき、また、冷却装置部では金型部品と成形品とを冷却すればよく、加熱装置部では金型部品だけを単独で加熱すればよいので、冷却及び加熱の時間を短縮しエネルギーロスを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型を示す断面図である。
【図2】実施の形態1の成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型で成形される成形品を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る成形品の製造装置の取り出し装置部を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る成形品の製造装置の冷却離型装置部を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る成形品の製造装置の冷却及離型装置部を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る成形品の製造装置の加熱装置部を示す断面図である。
【図7】本発明に係る成形品の製造方法及び製造装置の実施の形態1を示す断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態2の成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型を示す断面図である。
【図9】実施の形態2の成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型において金型部品を第1金型及び第2金型から取り出す取り出し工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型を示す断面図である。図2は、実施の形態1の成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型で成形される成形品を示す斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る成形品の製造装置の取り出し装置部を示す断面図である。
【0023】
本実施の形態1では、コの字形状の成形品の場合を例として示している。図2に示したように、成形品51はベース板52とベース板52の両端に立設された壁53からなるコの字型形状のものである。
【0024】
成形品51はポリフェニレンサルファイド樹脂(以降PPS樹脂と記す)と呼ばれる結晶性樹脂によって成形される。この樹脂の融点は290℃、ガラス転移点は92℃である。通常の成形条件では、PPS樹脂を290〜320℃程度に溶融させ金型のキャビティ内へ充填するが、本実施の形態1でも通常と同じ成形条件を採用する。また、金型部品1を含む金型4の温度は120〜150℃程度に加熱される。この金型温度はPPS樹脂が最も安定的かつ速やかに結晶化する温度であることが分かっている。すなわち、金型内に充填されたPPS樹脂は急激に冷却されないので、適正な冷却速度の下で結晶化を十分に促進することができる。なお、ここで示した成形品51の形状は本発明に適用できる一例を示すものであり、これに限定されるものではなく、箱形形状、L字型形状、円筒形状、半球体形状など、種々の形状にすることができる。また、成形材料もPPS樹脂に限定されるものではなく、各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の他、樹脂をバインダーとする各種セラミック材料、金属粉末材料なども適用することができる。
【0025】
図1及び図3に示したように、金型4は、突き合わせ面2a,3aを有する第1金型2及び第2金型3と、固定部分1aを有する金型部品1とからなり、第2金型3の突き合わせ面の所定の位置に金型部品1の固定部分1aを着脱可能に設け、第1金型2と第2金型3の突き合わせ面を突き合わせることによって、第1金型2と第2金型3とによってコの字形状のキャビティ5の壁の一部が形成され、金型部品1によってキャビティ5の壁の残部が形成される。また、第1金型2には成形材料の注入口6が設けられ、注入口6は、第1金型2及び第1金型2と第2金型3との突き合わせ面に設けられた成形材料流路7からキャビティ5へ連通する。
【0026】
本実施の形態1に用いられる金型4によれば、金型部品1を着脱可能としているので、成形品51を金型部品1に抱き付かせた状態で、第1金型2及び第2金型3から取り出すことができる。
【0027】
第2金型3には、金型部品1の固定部1aを固定する位置に、傾斜面又はテーパ面9が形成された穴9aが設けられ、金型部品1の固定部分1aには穴9aの傾斜面又はテーパ面9と同一の傾斜面又はテーパ面8が形成され、金型部品1の傾斜面又はテーパ面8と穴9aの傾斜面又はテーパ面9が互いに接触することにより金型部品1は第2金型3に対して位置決めされる。
【0028】
金型部品1の温度は急冷や加熱によって大きく変動し、それに伴って熱収縮、熱膨張が繰り返される。万一、金型部品1の温度が所定の温度から外れた状態で第2金型3に挿入されても、金型部品1の形状は相似の関係を維持しながら収縮、膨張するので、傾斜面又はテーパ面8の角度は変化することはない。従って、金型部品1の挿入方向に対して位置が前後しキャビティ5の体積に多少の増減は生じるが、傾斜面又はテーパ面8,9には隙間はできないので、成形材料のバリが発生しない効果がある。
【0029】
金型部品1の固定部分1aは磁石11によって第2の金型2に固定される。図1及び図3に示したように、金型部品1には、固定部分1a側に開口する空洞12が形成され、空洞12にプレート14に固定されたピン10が挿入され、ピン10の先端には磁石11が設けられ、この磁石11の磁力によって金型部品1が脱落または微動しないようにすることができる。また、第1金型2と第2金型3を離隔するときに、成形品51が抱き付いた金型部品1を確実に第2金型3へ留めるように磁石11の磁力を調節している。なお、磁石11をピン10の先端に設ける例を示したが、これに限られるものではなく、金型部品1側に磁石11を設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0030】
第2金型3には、図3に示したように、第1金型2を第2金型3から離隔した後、金型部品1と成形品51とを一体に第2金型3の外へと突き出す機構により取り出す取り出し部が設けられている。取り出し部は、プレート14に固定された突き出しピン13と、プレート14に固定されたロッド15とロッド15を駆動する図示していない駆動部からなる。ロッド15を駆動することによってピン10及び全ての突き出しピン13が同時に動き、金型部品1と成形品51が一体となって第2金型3の外へと突き出される。なお、第1金型2及び第2金型3には、図3には示していないが、所定の金型温度以上の温度に保つための媒体循環回路等の加熱部が設けられ、温度調節機で一定温度に制御された水や油、水蒸気などの媒体が循環している。ここで、成形品51を金型部品1と一体で突き出すことで、成形品51の壁53が倒れたり、変形したり、傷ついたりするのを抑制し、高い精度で平行度を確保した状態で取り出すことができる。
【0031】
図4及び図5は、本発明の実施の形態1に係る成形品の製造装置の冷却離型装置部を示す断面図である。固定台21には、金型部品1の固定部分1aを受けるための傾斜面又はテーパ面22を有する穴22aが形成されている。また、金型部品1を固定するためのクランパ34及びクランパ34を駆動するためのエアシリンダ35が取り付けられ、クランパ34はOリング36でシールされている。第2金型3から突き出された金型部品1は、取り出し機や取り出しロボット等の搬送設備によって固定台21に搬送され、傾斜面又はテーパ面8と傾斜面又はテーパ面22とによって位置決めされる。同時に、傾斜面又はテーパ面8、22によってある程度のシール性が確保されるので、以下に説明する冷却媒体を循環させる際に、冷却媒体の漏出を防ぐことができる。また、金型部品1は急冷によって熱収縮するが、金型部品1の形状は相似の関係を維持しながら収縮するので、傾斜面又はテーパ面8の角度は変化することはなく、傾斜面又はテーパ面8,22は接触状態を確実に保つことができる。
【0032】
金型部品1内に形成された空洞12を仕切板24を配置した冷却媒体回路25に接続することで、固定台21の入口26から出口27に至る1つの冷却媒体経路23が形成される。なお、仕切板24は、図4及び図5に示したような平板である必要はなく、ねじった仕切板24とすることで螺旋状の冷却媒体経路23を形成することもできる。そして、固定台21の入口26と出口27にはホース28が接続されており、ホース28は冷却媒体32が入ったタンク31に繋がれている。タンク31の中には冷却媒体32として20℃に保たれた水を蓄えている。そして、出口27側のホース28には吸引ポンプ29が設けられ、図4の矢印のように冷却媒体32が循環する冷却媒体回路25が形成されている。吸引ポンプ29によって冷却媒体32を吸引することで、固定台21の穴22aと金型部品1の固定部分1aとの間に隙間ができるのを防ぎ、冷却媒体32が漏出するのを防ぐことができ、固定台21と金型部品1との間のシール構造を簡略化することができる。また、この冷却媒体回路25とは別に、入口26側のホース28には電磁切換弁30が設けられ、電磁切換弁30を操作することで冷却媒体回路25内に空気が流れるようになっている。冷却媒体32の循環を停止した後、図5の矢印で示したように、空気によって金型部品1内に残存する冷却媒体32を全て排出することができる。金型部品1がその空洞12に冷却媒体32が残存した状態で加熱工程へ送られると、加熱源のエネルギーの一部が、残存する冷却媒体32が気化する熱として奪われるためエネルギーのロスが生じる。また、本実施の形態1のように冷却媒体32として水を使用する場合は、水の中に溶けているカルシウムやマグネシウムなどがスケールとして析出し、冷却媒体回路25を塞ぐ恐れがある。このような問題を回避するために、冷却媒体回路25から空気によって冷却媒体32を排出しておくことは有効である。ただし、図5では、空気を吸引ポンプ29で吸引する構造を示しているが、シール構造から空気が漏れても問題はないので、空気を圧送しても良い。
【0033】
なお、図4及び図5においては、冷却媒体32として水を用いて冷却する例を示したが、これに限定されるものではなく、油や空気、水分を含んだミストなどを流すことでも同じ効果が得られる。
【0034】
図6は、本発明の実施の形態1に係る成形品の製造装置の加熱装置部を示す断面図である。加熱装置部の加熱台41は、金型部品1の固定部分1aに形成した傾斜面又はテーパ面8と同一の傾斜面又はテーパ面42が形成された穴42aが設けられ、金型部品1は、傾斜面又はテーパ面8と傾斜面又はテーパ面42によって位置決めされる。なお、金型部品1は加熱によって熱膨張するが、金型部品1の固定部分1aの形状は相似の関係を維持しながら収縮するので、傾斜面又はテーパ面8及び傾斜面又はテーパ面42の角度は変化することはなく、金型部品1の固定部分1a及び穴42aの傾斜面又はテーパ面8,42は接触状態を確実に保つことができる。
【0035】
ヒータ43は加熱台41の外部に設置されたコントローラ45によって、金型部品1を所定の温度以上に加熱するための温度に加熱されている。そして、金型部品1内に形成された空洞12にヒータ43が挿入され、金型部品1に接触するように配置された温度センサ44を用いて、金型部品1が所定の温度以上になるまで加熱される。成形材料にPPS樹脂を用いた場合、先に述べたように120〜150℃程度に加熱する。温度センサ44は接触式のものでなくても、例えば、赤外線放射温度計のように非接触式のものでもよく、金型部品1のキャビティ5の壁となる部分を直接測定すればよりよい。また、図6では、金型部品1の加熱部としてヒータ43を示したが、金型部品1の加熱部は、加熱台41に埋め込んだ誘導加熱装置でもよく、金型部品1に渦電流を発生させて加熱してもよい。また、加熱部は、赤外線ヒータでもよく、その輻射熱を利用して加熱してもよい。
【0036】
図7は、本発明の実施の形態1に係る成形品の製造方法及び製造装置を示す断面図である。図7(a)は、成形工程であり成形装置部を備えている。成形装置部は、第1金型2及び第2金型3と、第1金型2及び第2金型3を常に所定の温度以上に加熱する媒体循環回路等の第1加熱部60と、第1加熱部60により所定の温度以上に加熱された第1金型2と第2金型3とを離隔し、第2金型3に、予め所定の温度以上に加熱された金型部品1を固定した後、第1金型2と第2金型3とを突き合わせて金型4を組み立てる組立部61と、溶融した成形材料を注入口6から流し、成形材料流路7を通してキャビティ5に充填する充填部62と、成形品51を、金型部品1に抱きついた状態で第2金型3の外へ取り出す取り出し部と、取り出した金型部品1と成形品51とを搬送する第1搬送設備63とを備えている。成形材料を充填した後、しばらくの間は、成形材料が収縮するので注入する成形材料に一定の圧力を加え続けて成形材料を補填する。
【0037】
図7(b)は、取り出し工程であり、第2金型3には、図1及び図3に示したように、金型部品1と成形品51とを突き出す機構による取り出し部が設けられている。成形品51の温度低下とともに成形品51は収縮して金型部品1に抱き付く力がますます増大していく。また、成形品51が表層から次第に硬化し、第1金型2と第2金型3とを離隔できるようになった段階で、第1金型2と第2金型3とを組立部61で離隔し、金型部品1と成形品51を一体に取り出し部で第2金型3の外へ取り出すことができる。このとき、成形材料流路7の流路固化部分7aを掴むことで、完全に硬化していない成形品51に傷をつけたり変形させることなく、第1搬送設備63で次工程へ搬送することができる。このとき、搬送するものは成形品51と金型部品1だけなので、大きさや重量から考えて第1搬送設備63には、大掛かりなものは不要であり、一般的に使われる取り出し機または取り出しロボットを流用することができる。
【0038】
図7(c)は、冷却工程であり、冷却離型装置部を備えている。冷却離型装置部は、第1搬送設備63によって搬送された金型部品1が固定される固定台21、金型部品1を冷却するための冷却媒体が循環する冷却媒体回路25、冷却された金型部品1から成形品51を離型する離型部及び冷却され離型された金型部品1と成形品51とを搬送する第2搬送設備64を備えている。図4及び図5に示したように、離型部は離型ピン37と離型ピン37を固定したプレート38とプレート38を上下に駆動するロッド39とからなる。図7(b)の取り出し工程で取り出された金型部品1と成形品51は、図7(c)の固定台21上に第1搬送設備63で搬送され、固定台21に固定される。このとき、金型部品1の空洞12は、仕切板24を配置した冷却媒体回路25に接続されることによって冷却媒体経路23が形成され、成形品51は、金型部品1の空洞12の壁面側から冷却されるようになる。そして、直ちに冷却用の冷却媒体32を循環させて、空洞12の壁面に沿って冷却媒体32を流し、金型部品1を直接、所定の温度以下に冷却するか所定の時間冷却する。
【0039】
この冷却工程においては、金型部品1に抱き付いている部位以外は第1金型2及び第2金型3による拘束が外れているので、成形品51の形状は保持されつつ、成形品51は冷却に伴う収縮ひずみを緩和するように自由に変形することができる。また、金型部品1に抱き付いている部位に発生する収縮ひずみも、自由に変形できる部位へ逃がして緩和することができる。これにより、成形品51が収縮ひずみによって離型後に変形する量を低減することができる。
【0040】
また、成形品51を急冷することで、離型後において常温に至る過程で発生する熱収縮を抑制することができる。できる限り常温になるまで冷やすのがよいが、成形材料が結晶性樹脂あるいは非晶性樹脂でガラス転移点が常温以上の場合には、ガラス転移点以下になるまで急冷すればよく、さらに冷やしてもその効果はほとんどない。つまり、一般的に樹脂はガラス転移点以下で分子の流動性を失い剛性が一気に向上するので、ガラス転移点以下まで冷却すれば樹脂の収縮による変形は抑制される。言い換えれば、ガラス転移点から常温に至るまでの熱収縮は、すでに成形品51の剛性は高い状態にあり金型部品1によって変形が拘束されるので、熱応力として成形品51内部に貯蔵され、離型後に熱応力が解放されることで結果的に変形が生じる。従って、ガラス転移点まで急冷すれば十分である。ただし、成形材料が結晶性樹脂あるいは非晶性樹脂でガラス転移点が常温以下の場合は、常温以下のガラス転移点まで急冷しても再び常温に戻る過程で変形を招くので、常温まで急冷すれば十分である。
【0041】
なお、冷却工程においては、固定台21に取り付けた温度センサ33によって温度管理してもよいし、予め金型部品1の急冷による温度変化が分かっていれば時間で管理してもよく、所定の温度まで急冷された時点、または所定の時間が経過した時点で離型工程へと移行する。以上の工程で、金型部品1に抱き付くコの字形状の内周面以外の外周面の精度は多少犠牲になるが、抱き付いているコの字形状の内周面は収縮ひずみと離型後の熱収縮が抑制され、成形材料が結晶性樹脂であれば結晶化を十分に促進して結晶ひずみが抑えられ、高い精度で効率よく成形することができる。
【0042】
図7(d)は、離型工程であり、図4及び図5に示した冷却離型装置部を冷却及び離型工程とともに共用している。この離型工程では、エアシリンダ35を駆動してクランパ34で金型部品1をクランプし、ロッド39を駆動してプレート38に固定された離型ピン37で成形品51を押し上げることにより、成形品51を金型部品1より離型する。なお、ロッド39は、例えば、サーボモータや油圧シリンダ、エアシリンダ等で駆動される。また、クランパ34を使わずに、固定台21に磁石などを備えて磁力で金型部品1を固定台21に固定する方法や空気溝を設けて吸引して固定する方法も可能である。なお、この離型動作と同時か、または離型動作が終わった直後に、冷却用の冷却媒体の流れを停止し、矢印で示したように吸引ポンプ29で空気を吸引するか、図示していない別装置で空気を圧送することで冷却媒体回路25に残存する水を排出する。
【0043】
なお、本実施の形態1の冷却離型装置部では、冷却機能と離型機能の両方の機能を有する固定台21を備えるようにしたが、冷却機能と離型機能を独立させて、冷却工程に冷却装置部、離型工程に離型装置部を設け、冷却装置部で冷却された金型部品1と成形品51とを搬送設備で離型装置部上に搬送するようにしてもよい。この場合の離型装置部の構造は、図4及び図5の固定台21から冷却媒体回路25を取り除いた構造とする。
【0044】
離型された成形品51は、取り出し機や取り出しロボット等を利用した第2搬送設備64で所定のパレット等へ搬送され、続いて、金型部品1は、クランパ34の固定が解除された後、図7(e)の加熱工程の加熱装置部へ第2搬送設備64で搬送される。加熱装置部の加熱台41上に搬送された金型部品1の空洞12にコントローラ45で温度コントロールした第2加熱部であるヒータ43を挿入し、金型部品1を所定の温度以上とし、所定の温度以上に加熱された金型部品1は第3の搬送設備65で図7(a)の成形工程の成形装置部に搬送され、組立部61によって第2金型3内に固定される。
【0045】
本実施の形態1に係る製造方法及び製造装置では、金型4全体ではなく、比較的軽量な金型部品と金型部品に抱きついた成形品又は金型部品のみを巡回させればよく、大掛かりな搬送設備は不要となる。
【0046】
また、一対の第1金型2及び第2金型3に対して、金型部品1を複数個備え、成形工程及び取り出し工程の処理をした後、引き続き、新たな金型部品1を用いて成形工程及び取り出し工程の処理ができるようにすることによって、成形品51の製造効率が向上する。
【0047】
また、金型部品1を着脱可能に固定しているので、成形品51を金型部品1に抱き付かせた状態で取り出し、第1金型2及び第2金型3による拘束から外れた状態で冷却することができ、成形品51はその形状は保持しながらも自由に変形することができるので、冷却に伴う収縮ひずみを緩和することができる。
【0048】
また、金型部品1を着脱可能に固定しているので、成形品を金型部品に抱き付かせた状態で第1金型2又は第2金型3から取り出して金型部品1を冷却することにより成形品51に触れることなく冷却することができ、成形品51を傷つけることはない。
【0049】
また、金型部品1を成形品51と一体にして第2金型3の外へ取り出し急冷することで、成形品51の周りに温められた空気がよどむことがなく、また、第1金型2及び第2金型3からの輻射熱によって成形品51の冷却が阻害されることもないので均一に、かつ、速く冷却することができ、また、冷却工程では金型部品1と成形品51とを冷却し、加熱工程では金型部品1だけを単独で加熱すればよいので、加熱及び冷却の時間を短縮しエネルギーロスを少なくすることができる。
【0050】
また、成形材料に結晶性樹脂を用いる場合、第1金型2と第2金型3とを結晶性樹脂の結晶化が十分に促進される温度に加熱することにより、結晶歪みが生じる原因となる非晶部分を少なくして結晶歪みを抑制することができる。
【0051】
実施の形態2.
図8は、本発明に係る実施の形態2の成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型を示す断面図である。図9は、実施の形態2の成形品の製造方法及び製造装置に用いられる金型において金型部品を第1金型及び第2金型から取り出す取り出し工程を示す断面図である。上記実施の形態1では金型部品1は第2金型3に着脱可能に固定されていたが、図8に示したように、本実施の形態2では金型部品1が第1金型2に着脱可能に固定されている点が異なる。
【0052】
成形材料が充填されてから所定の時間が経過し、第1金型2と第2金型とを離隔することができるようになった段階で、図9に示したように、第1金型2と第2金型3とを離隔する。このとき、第1金型2に固定されていた金型部品1は、成形品51と一体になった状態で第2金型3のキャビティ5に残るようにする。これにより、金型部品1のうち第1金型2に挿入されていた固定部分1aが、第2金型3の離隔面から突出した状態で現れる。金型部品1の傾斜面又はテーパ面8が形成された固定部分1aの先端につまみ16が設けられている。
【0053】
本実施の形態2における取り出し部は、固定部分1a先端のつまみ16を把持して引き抜き引く機構によるものである。取り出し機または取り出しロボットなどがつまみ16を掴むことで、直接、成形品51に触れることなく金型部品1と一体になった成形品51を第2金型3から引き抜いて取り出すことができる。
【0054】
取り出し工程においては、まだ成形品51の温度は高く、成形品51の内部まで完全に硬化していない状態であるので、取り出し機または取り出しロボットなどによって成形品51を掴むと、成形品51を変形させたり傷付けたりすることが懸念されるが、本実施の形態2によれば、成形品51を掴むことなく取り出すことができる。
【0055】
なお、金型部品1のつまみ16部分には磁石17が内蔵されて第1金型2と着脱可能に固定されているが、磁石17の第1金型2に対する固着力よりも成形品51が金型部品1に抱き付くことで生じる離型抵抗力及び成形品51がキャビティ内にとどまる力の方が上回るように磁石17の磁力を調整しておけばよい。なお、図8及び図9には示していないが、上記実施の形態1の図1及び図3で示した取り出し部を追加して設け、成形品51または流路固化部分7aの部分を突き出すことで、より取り出しを確実にしてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態1において、第1金型2と第2金型3とを離隔した際に、金型部品1が成形品51と一体になった状態で第1金型2のキャビティ5に残るようにして、金型部品1の固定部分1aが、第1金型2から突出するようにして、固定部分1aを掴むことで、直接、成形品51に触れることなく金型部品1と一体になった成形品51を第1金型2から引き抜いて取り出してもよい。
【0057】
なお、本実施の形態2において、金型部品1が第1金型2に着脱可能に固定されている点及び取り出し工程が上記実施の形態1と異なっている点以外の各工程の処理及び装置部の構成は上記実施の形態1と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る成形品の製造方法及び製造装置並びに金型は、電子機器等に用いられる樹脂製筐体の成型等に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 金型部品、1a 固定部分、2 第1金型、2a,3a 突き合わせ面、
3 第2金型、4 金型、5 キャビティ、6 注入口、7 成形材料流路、
8,9,22,42 傾斜面又はテーパ面、9a,22a,42a 穴、
11,17 磁石、12 空洞、21 固定台、25 冷却媒体回路、
29 吸引ポンプ、32 冷却媒体、41 加熱台、43 ヒータ、51 成形品、
60 第1加熱部、61 組立部、62充填部、63 第1搬送設備、
64 第2搬送設備、65 第3搬送設備。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き合わせ面を有する第1金型及び第2金型と、上記第1金型又は第2金型の上記突き合わせ面側の所定の位置に、その固定部分が着脱可能に固定される金型部品とを備え、
上記第1金型と上記第2金型とを突き合わせることにより上記第1金型と上記第2金型とによりキャビティの壁の一部が形成され、上記金型部品により上記キャビティの壁の残部が形成されるようにし、
上記第1金型と上記第2金型とを所定温度以上に加熱しておき、上記第1金型と上記第2金型のいずれか一方に加熱工程で上記所定温度以上に加熱された上記金型部品を固定して成形材料を上記キャビティに注入し成形品を成形する成形工程と、
上記第1金型と上記第2金型とを離隔し、上記成形品を、上記金型部品に抱かせた状態で上記第1金型又は第2金型から取り出す取り出し工程と、
上記取り出し工程から搬送された上記成形品及び上記金型部品を冷却する冷却工程と、
上記冷却された上記成形品を上記金型部品から離型する離型工程と、
上記離型工程から搬送された上記金型部品を上記所定温度以上の温度に加熱する上記加熱工程とを備え、
上記金型部品を上記各工程に巡回させて上記各工程における処理を行うことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
一対の上記第1金型及び上記第2金型に対して、上記金型部品を複数個備え、上記成形工程及び上記取り出し工程の処理をした後、引き続き、新たな上記金型部品を用いて上記成形工程及び上記取り出し工程の処理ができるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
上記金型部品の上記固定部分側に開口する空洞を上記金型部品に形成し、上記冷却工程において、冷却媒体を上記空洞内に流すことによって上記金型部品を介して上記成形品を冷却することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
上記冷却媒体を吸引ポンプによって循環させる冷却媒体回路を設け、上記冷却媒体回路に上記空洞を接続し、上記冷却媒体を上記空洞に循環させることによって上記成形品及び上記金型部品を冷却し、上記冷却工程終了後に、上記冷却媒体回路に残存する上記冷却媒体を、上記吸引ポンプによって吸引する、又は、上記冷却媒体回路に空気を圧送することにより上記冷却媒体回路から排出することを特徴とする請求項3に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
上記金型部品の上記固定部分側に開口する空洞を上記金型部品に形成し、上記加熱工程において、ヒータを上記空洞内に挿入することによって、上記金型部品を加熱することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
上記成形材料のガラス転移点が常温以上の場合は、上記冷却工程において、上記金型部品の温度がガラス転移点以下になるまで冷却し、上記成形材料のガラス転移点が常温以下の場合は、上記冷却工程において、上記金型部品の温度が常温になるまで冷却するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
上記取り出し工程において、上記第1金型と上記第2金型を離隔する際に、上記成形品を上記金型部品に抱き付かせた状態で上記固定部分が固定された状態とし、上記金型部品を突き出して上記成形品を上記金型部品に抱き付かせた状態で取り出すことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
上記取り出し工程において、上記第1金型と上記第2金型を離隔する際に、上記成形品を上記金型部品に抱き付かせた状態で上記キャビティ側に残し上記固定部分が上記キャビティの外へ突出した状態とし、上記固定部分の先端を把持して上記成形品を上記金型部品に抱き付かせた状態で取り出すことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
突き合わせ面を有する第1金型及び第2金型と、上記第1金型又は第2金型の上記突き合わせ面側の所定の位置に、その固定部分が着脱可能に固定される金型部品とを備え、
上記第1金型と上記第2金型とを突き合わせることにより上記第1金型と上記第2金型とによりキャビティの壁の一部が形成され、上記金型部品により上記キャビティの壁の残部が形成されるようにし、
上記第1金型及び第2金型を所定の温度以上に加熱する第1加熱部、上記第1加熱部により加熱された上記第1金型又は第2金型に第2加熱部で上記所定の温度以上に加熱された上記金型部品を固定し上記第1金型と上記第2金型とを組み立てる組立部、成形材料を上記キャビティに充填し成形品を成形する充填部、上記成形品を上記金型部品に抱きついた状態で上記第1金型又は第2金型の外へ取り出す取り出し部及び取り出した上記金型部品と上記成形品とを搬送する第1搬送設備を備えた成形装置部と、
上記第1搬送設備によって搬送された上記金型部品を固定する固定台、上記金型部品に冷却媒体を循環させることにより上記金型部品及び上記成形品を冷却する冷却媒体回路、上記冷却された上記金型部品から上記成形品を離型する離型部及び冷却された上記金型部品と上記成形品とを搬送する第2搬送設備を備えた冷却離型装置部と、
上記第2搬送設備によって搬送された上記金型部品を固定する加熱台、上記加熱台に固定した上記金型部品を加熱する上記第2加熱部及び加熱した上記金型部品を上記成形装置部へ搬送する第3搬送設備を備えた加熱装置部とを備えたことを特徴とする成形品の製造装置。
【請求項10】
一対の上記第1金型及び上記第2金型に対して、上記金型部品を複数個備え、上記成形装置部の処理をした後、引き続き、新たな上記金型部品を用いて上記成形装置部の処理ができるようにしたことを特徴とする請求項9に記載の成形品の製造装置。
【請求項11】
上記固定台、加熱台並びに上記第1金型又は第2金型の上記金型部品を固定する位置に、傾斜面又はテーパ面を有する穴が形成され、上記金型部品の固定部分に上記傾斜面又はテーパ面と同一の傾斜面又はテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の成形品の製造装置。
【請求項12】
上記金型部品を、上記固定台、上記第1金型又は第2金型及び加熱台に固定する磁石を備えたことを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の成形品の製造装置。
【請求項13】
上記取り出し部は、上記金型部品と上記成形品とを上記第1金型又は第2金型形の外へ突き出す機構であることを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の成形品の製造装置。
【請求項14】
上記取り出し部は、上記金型部品の上記固定部分を把持して上記第1金型又は第2金型形の外へ引き抜く機構であることを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の成形品の製造装置。
【請求項15】
上記請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の成形品の製造方法又は上記請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載の成形品の製造装置に用いられる上記第1金型、上記第2金型及び上記金型部品を備えたことを特徴とする金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218230(P2012−218230A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84185(P2011−84185)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】