説明

成形品及びその製造方法

【課題】他の物との接触頻度等による色の差を生じにくい成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によると、ポリマー材料からなるマトリックス43と該マトリックス中に分散された複数のカプセル44とを含み、該カプセル44の膨張に起因して凹凸が表面に形成された成形品10を製造する方法が提供される。その製造方法では、膨張して表面42に露出したカプセル44の外殻露出部3と膨張後に破裂して表面42から外方に突出したカプセル44の外殻突出部4とを有する素成形体40を用意する。次いで、素成形体40の表面42から外殻突出部4を消滅させる仕上げ処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料を用いてなる成形品に関し、詳しくは、表面に微細な凹凸を有することにより布目調の外観を呈する成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム等のポリマー材料をマトリックス(母材となる主要な材料)とし熱膨張性カプセルを含む成形材料を成形してなる成形品であって、上記カプセルの膨張や膨張後の破裂を利用して該成形品の表面に多数の凹凸を形成することにより布目調の外観を発現させた成形品が知られている。例えば特許文献1には、マイクロカプセルの膨張及び破裂によって粗面化された表面を有する装飾部を備えた長尺装飾部材が記載されている。この種の技術に関する従来技術文献として特許文献2が挙げられる。かかる成形品は、例えば、自動車等の車両の開閉ドア開口縁に沿って取り付けられて車両の内部に雨水等が浸入することを防止するウェザーストリップ等のトリム材として使用され得る。
【0003】
【特許文献1】特表2007−528816号公報
【特許文献2】特開2002−146087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようにカプセルを用いて布目調の表面(意匠面ということもある。)を形成した成形品を使用に供すると、用途や使用状況等によっては、上記表面のうち人体等の他の物と接触する頻度が相対的に高い部分(他の部分よりも頻繁に摩擦等の外力を受ける部分)と上記頻度が相対的に低い部分との間で色合い(色調)が次第に異なってくる(例えば、色の濃淡を生じる)ことがある。このように場所による色の差が生じることは、成形品の外観品質を低下させ得るため好ましくない。特に、装飾性が要求される成形品(装飾体)においては、かかる事象の発生を防止又は緩和することが望ましい。
【0005】
そこで本発明は、布目調の表面を有する成形品であって、上記場所による色の差が生じにくい成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記場所による色の差は、他の物と接触する頻度が相対的に高い部分では成形品の表面に残存するカプセルの外殻が該接触により成形品から剥れ落ちやすく、場所による上記剥がれ落ちの程度の相違が上記色の差を生じる要因となっていることを見出した。そして、成形品の表面に残存するカプセル外殻のうち少なくとも該表面から外方に突出する部分をなくす(消滅させる)ことにより、上記外殻の剥れ落ちが効果的に防止されて色の差の発生が抑えられることを見出して本発明を完成した。
【0007】
本発明によって以下に列挙する成形品製造方法が提供される。
即ち、請求項1の発明は、ポリマー材料からなるマトリックスと該マトリックス中に分散された複数のカプセルとを含み、前記カプセルの膨張に起因して凹凸が表面に形成された成形品を製造する方法である。その方法は、膨張して表面に露出した前記カプセルの外殻露出部と膨張後に破裂して前記表面から外方に突出した前記カプセルの外殻突出部とを有する素成形体を用意し、次いで前記素成形体の表面から前記外殻突出部を消滅させる仕上げ処理を行うことを含む。
【0008】
請求項1の発明によれば、上記仕上げ処理が行われることにより、素成形体の表面から外方に突出していた外殻(即ち外殻突出部)がもはや残存しなくなった(消滅した)状態の成形品を製造することができる。かかる成形品は、他の物との接触によって剥がれ落ちやすい外殻突出部を予めなくす処理が施されているので、たとえ使用環境において他の物との接触頻度が高い部分と低い部分とに共通して使用されても、それらの部分の間に色の差異を生じる事象が防止又は緩和される。従って良好な外観品質を維持することができる。
【0009】
また、一般にカプセルの外殻と該カプセルを分散させるマトリックス部分とは構成材料が異なることから、カプセル外殻とマトリックスとを完全に同じ色にすることは困難である。このため、成形品の意匠面において上記カプセル外殻の色が細かな斑点模様として視認されることがある。かかる斑点模様(即ち色の不均一)の存在は、例えば成形品の表面色として高レベルの単一色(濃い黒等)が求められる用途において問題となり得る。特に、上記外殻突出部では、カプセル外殻自体の色がマトリックスの色とは別個に認識されやすい(換言すれば、上記斑点模様として視認されやすい)。本発明の製造方法によると、上記仕上げ処理によって上記外殻突出部を消滅させることにより、その結果として上記斑点模様を消滅させることができる。従って、該成形品の表面において高レベルの単一色(複数の色が混在していないことをいう。)を実現可能であり、外観品質に優れた成形品を製造することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記外殻露出部を前記外殻突出部と併せて消滅させるように行うものである。請求項2の発明によれば、請求項1の発明の奏する効果に加えて、更に外殻の剥がれ落ちをよりよく防止できるという効果が得られる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の成形品製造方法において、前記素成形体をその表面側から加熱する表面加熱手段を用いて、前記外殻突出部を熱変形(溶融、収縮等による変形を包含する。)させることにより前記素成形体の表面から前記外殻突出部を消滅させるように前記仕上げ処理を行うものである。請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を効果的に行うことができるという効果が得られる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3の成形品製造方法において、前記表面加熱手段は、前記素成形体の表面に赤外線を照射すること、前記素成形体の表面に火炎を近づけること、及び前記素成形体の表面に高温のガスを吹き付けること、のうち少なくとも一つを行うように構成されているものである。請求項4の発明によれば、請求項3の発明の奏する効果に加えて、上記素成形体の表面を被接触の加熱手段により加熱するので上記外殻突出部以外の部分の形状が上記仕上げ処理の影響を受けにくいという効果が更に得られる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3又は4の成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記素成形体の表面全体のうち前記外殻突出部を熱変形させ且つ前記外殻突出部以外の前記凹凸を残存させるように行うものである。請求項5の発明によれば、請求項3又は4の発明の奏する効果に加えて、更に意匠性に優れた(例えば、良好な布目調の外観を呈する)成形品を製造できるという効果が得られる。
【0014】
請求項6の発明は、請求項3から5のいずれかの成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記素成形体と前記表面加熱手段のうち少なくともいずれか一方を他方に対して移動させて行うものである。請求項6の発明によれば、請求項3から5のいずれかの発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を効率よく行うことができるという効果が得られる。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1又は2の成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記素成形体をその表面側から加熱して前記外殻突出部を焼滅させる表面加熱手段を用いて、前記外殻突出部を焼滅させることにより前記素成形体の表面から消滅させるように行うものである。請求項7の発明によれば、請求項1又は2の発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を効果的に行うことができるという効果が得られる。
【0016】
請求項8の発明は、請求項7の成形品製造方法において、前記焼滅手段は、前記素成形体の表面を火炎に曝すように構成されているものである。請求項8の発明によれば、請求項7の発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を一層効果的に行うことができるという効果が得られる。
【0017】
請求項9の発明は、請求項8の成形品製造方法において、前記焼滅手段は、前記素成形体の表面に前記火炎を吹き付けるように構成されているものである。請求項9の発明によれば、請求項8の発明の奏する効果に加えて、更に火炎の吹付けの勢い(風圧)を利用して上記仕上げ処理を効率よく行うことができるという効果が得られる。
【0018】
請求項10の発明は、請求項7から9のいずれかの成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記外殻突出部を焼滅させ且つ前記外殻突出部以外の前記凹凸を残存させるように行うものである。請求項10の発明によると、請求項7から9のいずれかの発明の奏する効果に加えて、更に意匠性に優れた(例えば、良好な布目調の外観を呈する)成形品を製造できるという効果が得られる。
【0019】
請求項11の発明は、請求項7から10のいずれかの成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記素成形体と前記焼滅手段のうち少なくともいずれか一方を他方に対して移動させて行うものである。請求項11の発明によれば、請求項7から10のいずれかの発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を効率よく行うことができるという効果が得られる。
【0020】
請求項12の発明は、請求項1又は2の成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記外殻突出部に溶剤を接触させる接触手段を用いて、前記外殻を溶解又は軟化させる溶剤を前記外殻突出部に接触させて前記外殻突出部を溶解又は変形させることにより前記素成形体の表面から消滅させるように行うものである。請求項12の発明によれば、請求項1又は2の発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を効果的に行うことができるという効果が得られる。
【0021】
請求項13の発明は、請求項12の成形品製造方法において、前記接触手段は、前記素成形体の表面に前記溶剤を噴霧すること、前記素成形体を前記溶剤に浸漬すること、及び前記素成形体の表面に前記溶剤を塗布すること、のうち少なくとも一つを行うように構成されているものである。請求項13の発明によれば、請求項12の発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を効果的に行うことができるという効果が得られる。
【0022】
請求項14の発明は、請求項12又は13の成形品製造方法において、前記溶剤を、該溶剤と被膜形成成分とを含む塗料組成物として前記外殻突出部に接触させるものである。請求項14の発明によれば、請求項12又は13の発明の奏する効果に加えて、上記塗料組成物により表面に被膜が形成されるので、外殻の剥がれ落ちがよりよく防止された成形品を製造できるという効果が更に得られる。
【0023】
請求項15の発明は、請求項14の成形品製造方法において、前記塗料組成物が、透明又は前記素成形体表面の色と同系色の着色剤を含む前記被膜形成成分を前記溶剤に溶解又は分散させた液状組成物であるものである。請求項15の発明によれば、請求項14の発明の奏する効果に加えて、更に製造される成形品の表面においてより高レベルの単一色を実現できるという効果が得られる。
【0024】
請求項16の発明は、請求項12から15のいずれかの成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記素成形体の表面全体のうち前記外殻突出部を優先的に溶解又は変形させ且つ前記外殻突出部以外の前記凹凸を残存させるように行うものである。請求項16の発明によると、請求項12から15のいずれかの発明の奏する効果に加えて、更に意匠性に優れた(例えば、良好な布目調の外観を呈する)成形品を製造できるという効果が得られる。
【0025】
請求項17の発明は、請求項12から16のいずれかの成形品製造方法において、前記仕上げ処理を、前記素成形体と前記接触手段のうち少なくともいずれか一方を他方に対して移動させて行うものである。請求項17の発明によると、請求項12から16のいずれかの発明の奏する効果に加えて、更に上記仕上げ処理を効率よく行うことができるという効果が得られる。
【0026】
請求項18の発明は、請求項1から17のいずれかの成形品製造方法において、前記仕上げ処理により前記素成形体の表面から前記外殻突出部を消滅させた後、該仕上げ処理後の表面に、該表面の耐候性、耐摩耗性、耐スクラッチ性、滑り性のうち少なくとも一つの性質を向上させるコーティング膜を形成するコーティング処理を施すものである。請求項18の発明によると、請求項1から17のいずれかの発明の奏する効果に加えて、更に外殻の剥がれ落ちがよりよく防止された成形品を製造できるという効果が得られる。
【0027】
また、本発明によって以下の成形品が提供される。
即ち、請求項19の発明は、ポリマー材料からなるマトリックスと該マトリックス中に分散された複数のカプセルとを含み、前記カプセルの膨張に起因して凹凸が表面に形成された成形品であって、前記表面は、前記カプセルの外殻が前記成形体の表面から外方に突出してなる外殻突出部が消滅された状態にあることを特徴とする。請求項19の発明によれば、たとえ使用環境において他の物との接触頻度が高い部分と低い部分とに共通して使用されても、それらの部分の間に色の差異を生じる事象が防止又は緩和され、従って良好な外観品質を維持することのできる成形品が提供されるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、成形材料の調製方法、押出機の操作方法等のような、押出成形その他の成形方法に関する一般的な事項)は、いずれも従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0029】
ここに開示される技術により提供される成形品は、典型的には、上記マトリックスを構成するポリマー材料と膨張可能なカプセルとを含む成形材料(以下「装飾部成形材料」ともいう。)を用いて形成された成形部であって上記カプセルの膨張に起因して凹凸が形成された表面(意匠面)を有し、且つ該表面において外殻突出部が消滅された状態にある成形部(以下「装飾部」ともいう。)を少なくとも一つ備える。かかる装飾部のみから実質的に構成された成形品であってもよく、他の構成部分(例えば、上記装飾部成形材料とは組成の異なる成形材料を用いて形成された成形部)を有する成形品であってもよい。
なお、上記膨張可能なカプセルの少なくとも一部は、成形品中では既に膨張した状態、膨張後に破裂した状態、或いは膨張後に該カプセルを構成する外殻の一部が変形又は収縮した状態にある。本明細書中において「カプセル」とは、特記しない場合、膨張していないカプセル、膨張したカプセル、膨張後に破裂したカプセル、膨張後に外殻の一部が変形又は収縮したカプセル等を包含する概念である。
【0030】
上記「膨張可能なカプセル」としては、加熱により膨張する性質を備えたカプセル(以下「熱膨張性カプセル」という。)を好ましく採用することができる。この熱膨張性カプセルは、典型的には、加熱により占有体積を増す内包物質(通常は、気体又は固体や液体であって加熱により気化(ガス化)するもの)を熱可塑性樹脂製の外殻内に封じ込めた粒子として構成されている。かかる熱膨張性カプセルの外殻を構成する材料は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル系共重合体、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系(共)重合体、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂であり得る。該カプセルに内包される物質(膨張剤)は、特に限定しないが、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタン等の低沸点炭化水素等とすることができる。また、空気、二酸化炭素の他、窒素、アルゴン等の不活性ガス(一部又は全部が液化した状態であり得る。)を内包物質とすることもできる。このような熱膨張性カプセル(以下、単に「カプセル」と表記することもある。)が加熱されると、該カプセルの外殻を構成する熱可塑性樹脂が軟化し且つ該外殻の内部に収容された上記内包物質が体積膨張する(即ち、上記内包物質が膨張剤として機能する)ことによって、該カプセルが内圧により膨張する。更に、外殻の一部又は全体が膨張の限度を超えて引き伸ばされることによりカプセルが破裂することもある。このようなカプセルの膨張や膨張後の破裂によって装飾部の表面に微細な凹凸が形成される。
【0031】
膨張前におけるカプセルの形状は特に限定されず、例えば紡錘形状、略球形状、不定形状、円筒状等の各種形態を取り得る。カプセルの分散性及び膨張後の装飾的効果の点から略球形状であることが好ましい。膨張前における外径(最大外径寸法)がμmオーダーであるカプセル(即ちマイクロカプセル)が好ましく、該外径が凡そ5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは凡そ10μm以上50μm以下である。上記ポリマー材料に分散されるカプセルの外径は、互いにほぼ同じであってもよく、二種以上の異なる外径を有してもよい。より実際の布に似た外観を実現し得るという観点から、二種以上の外径を有する(典型的には多様な外径を有する、即ち外径の値にバラツキのある)熱膨張性カプセルを混合して使用することが好ましい。この場合において、使用するカプセルの外径の平均値(平均外径)が上記範囲にあることが好ましい。平均外径の異なる二種以上のカプセルを任意の割合で併用してもよい。
【0032】
ここに開示される成形体の表面部分は、典型的には種々の程度に膨張したカプセルを含み、更に実質的に膨張してないカプセルを含み得る。従って、該表面部分に含まれる熱膨張性カプセルの外径は、例えば、使用した熱膨張性カプセル(即ち、膨張前の熱膨張性カプセル)の外径以上であって且つ凡そ500μm以下(典型的には凡そ300μm以下、例えば凡そ200μm以下)の範囲にある種々の外径であり得る。膨張前の外径に対して凡そ2倍以上(より好ましくは凡そ4倍以上)の外径に膨張し得る性能を備えた熱膨張性カプセルの使用が好ましい。このように膨張性のよいカプセルは、より多様なサイズの凹凸を有する意匠面を形成するのに適している。かかる意匠面によると優れた意匠的効果が実現され得る。
【0033】
好ましく使用可能な熱膨張性カプセルの市販品(マスターバッチ化された状態で市販されているものを含む。)としては、日本フィライト株式会社又はAkzo Nobel社等から入手可能な商品名「エクスパンセル(EXPANCEL)マイクロスフィア」、松本油脂製薬株式会社から入手可能な商品名「マツモトマイクロスフェアー」、大日精化工業株式会社から入手可能な商品名「ダイフォーム」、積水化学工業株式会社から入手可能な商品名「アドバンセル(ADVANCELL)」等が挙げられる。
【0034】
このようなカプセルを分散させるマトリックスを構成するポリマー材料は、各種のゴム、樹脂(典型的には熱可塑性樹脂)その他のポリマーから選択される一種又は二種以上のポリマー成分を含有するものであり得る。ゴムとしては、天然ゴム(NR);アクリルゴム(ACM)、エチレン−アクリルゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、シリコーンゴム等の各種合成ゴム;等が例示される。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(ABS)等のスチレン系樹脂;塩化ビニル樹脂;等が例示される。上記ポリマー成分は熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよく、例えばスチレン系、オレフィン系、エステル系、ポリアミド系、塩化ビニル系、ウレタン系等の各種TPEを使用することができる。ここに開示される技術は、例えば、上記マトリックスがゴム系のポリマー材料(即ち、ポリマー成分が主としてゴムであるポリマー材料)からなる成形品に対して好ましく適用され得る。
【0035】
装飾部成形材料には、必要に応じて種々の副成分を含有させることができる。そのような副成分の一例として、粉状及び/又は繊維状の固形充填材が挙げられる。かかる固形充填材の例としては、セラミック粉(タルク等の種々の無機化合物粉を包含する。以下同じ。)、カーボン粉(例えばカーボンブラック)、木粉、セラミックファイバー、カーボンファイバーが挙げられる。充填材を使用する場合における使用量(含有量)は、用いる充填材の種類及び装飾体の用途に応じて異なり得る。典型的には、成形材料全体の概ね1〜60質量%となる割合で充填材を混練することが好ましい。或いは、充填材を実質的に含有しない組成の成形材料であってもよい。該成形材料には、任意成分としての上記固形充填材の他に、必要に応じて種々の補助成分(添加剤)を含有させることができる。かかる補助成分としては、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤(顔料、染料)、難燃剤、分散剤、抗菌剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0036】
ここに開示される成形品は、このような装飾部成形材料から形成され上記カプセルの外殻露出部及び外殻突出部を表面に有する成形部(成形品の装飾部に対応する成形部。以下「素装飾部」ともいう。)を備えた素成形体に対し、該表面から少なくとも上記外殻突出部を消滅させる仕上げ処理を行って得られたものであり得る。以下、本発明に係る成形品及び該成形品の製造方法の好ましい一形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0037】
図1は、本実施形態において使用する成形品製造装置(ライン)1の主要部を示す概略説明図である。ここでは、上記製造装置1を用いて図6に示す断面形状を有する成形品(車両用ウェザーストリップ)10を製造する場合を例として説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜のため、製造(成形)途中のウェザーストリップにも完成品と同様に符号10を付して説明することがある。
【0038】
図6に示されるように、完成品としてのウェザーストリップ10は、自動車の車体のドア開口の図示しない周縁部のフランジに沿って装着されドア開口とドアとの間をシールするドアオープニングトリムであって、横断面がU字状の取付部11と中空状のシール部12とが一体に形成され、更に取付部11の表面に装飾部13が層状に形成された長尺体である。好ましくは、これらの成形部(即ち、取付部11、シール部12及び装飾部13)が共押出成形により一体に形成されている。取付部11には、金属薄板から成る補強用の打抜き芯金14が埋設されている。また、取付部11の対向内面には、それぞれ被取付体(図示せず)のフランジを挟持する複数(ここでは4つ)の挟持リップ15が突設されている。好ましい一例では、取付部11は、カーボンブラックを20〜40質量%混合して混練した加硫済EPDMにより形成されている。シール部12は、取付部11の前記加硫済EPDMよりも軟質であって弾性変形性に優れたゴム材料(例えば、カーボンブラックを20〜40質量%混練した材料を発泡させてなるスポンジ状EPDM)により形成されている。
【0039】
装飾部13は、ポリマー成分としての未加硫ゴムに加硫剤及び熱膨張性カプセルを配合してなる装飾部成形材料を未加硫状態で押し出した後に加熱による加硫処理を行い、更に後述する仕上げ処理を施して形成されている。好ましい一例では、該装飾部成形材料を構成するポリマー成分が未加硫EPDMであり、装飾部13は加硫済EPDM(マトリックス)中に熱膨張性カプセルが分散した構成を有する。ここで、上記仕上げ処理を行う前のウェザーストリップ10(即ち素成形体)における装飾部13の表面には、図3に示すよにカプセルの膨張に起因する多数の凹凸が形成されており、且つ、膨張したカプセルの外殻が上記表面に露出した部分である外殻露出部と、膨張後に破裂したカプセルの外殻が上記表面から外方に突出した外殻突出部とが存在する。一方、仕上げ処理後の装飾部13(即ち、完成したウェザーストリップ10における装飾部13)の表面は、例えば図5Aに示すように、上記カプセルの膨張に起因する凹凸形状を残しつつ、上記仕上げ処理によって上記外殻突出部が消滅された状態となっている。
【0040】
装飾部成形材料に配合するカプセルとしては、該成形材料の組成に応じて、該成形材料の混練温度よりも高い軟化温度を有する材料からなる外殻を備えた熱膨張性カプセルを採用することが好ましい。本実施形態に係るウェザーストリップ10の装飾部13は、未加硫の粘土状ゴム材料(ここではEPDM)を通常は50〜90℃の温度で押し出して成形する。従って、カプセルの外殻構成材料は、装飾部成形材料の混練温度よりも高い軟化温度を備える材料であることが好ましい。また、本実施形態では、製造途中のウェザーストリップ10を加熱して未加硫ゴムを加硫させる際の熱を利用してカプセルを膨張又は破裂させ、加硫を完了する前にカプセル外殻の少なくとも軟化と膨張を終了させる。このため、本実施形態に使用する熱膨張性カプセルとしては、外殻構成材料の軟化温度が装飾部成形材料の押出成形温度(該成形材料を後述する押出成形型51から押し出す際の成形温度)よりも高く、且つ該成形材料の加硫温度よりも低いものを選択する。即ち、上記加硫温度よりも低温で破裂し得るカプセルの使用が好ましい。具体的には、120℃程度で外殻が軟化及び膨張し始め、破裂温度が150℃以上200℃以下である熱膨張性カプセルを好ましく使用することができる。特に限定するものではないが、装飾部成形材料に対するカプセルの配合比率は例えば質量比で凡そ0.1〜10質量%程度とすることができる。
【0041】
次に、かかる構成を有するウェザーストリップ10の製造に好ましく用いられる製造装置1の構成及び作動を説明する。図1に示すように、押出成形型50は前端(下流側)にエンドプレート51を有し、エンドプレート51には製造途中のウェザーストリップ10の横断面形状(図4参照)に対応した形状のオリフィス(押出口)が形成されている。押出成形型50には、該押出成形型50の異なる部分から該押出成形型50内の互いに分離された成形材料流路に各々異なる成形材料を供給可能な押出機52A,52B,52Cが連結されている。
【0042】
ウェザーストリップ10の製造時には、これらの押出機52A,52B,52Cから、取付部11の成形に用いられる取付部成形材料(本実施形態では、カーボンブラック20〜40質量%と加硫剤とを混練したEPDM材料)、シール部12の成形に用いられる取付部成形材料(同、カーボンブラックを20〜40質量%と加硫剤と発泡剤とを混練したEPDM材料)及び装飾部13の成形に用いられる装飾部成形材料(同、熱膨張性カプセルと着色剤(ここではカーボンブラック)5〜15質量%と加硫剤と必要に応じて用いられる他の添加物とを混練したEPDM材料。上記熱膨張性カプセルの軟化温度は約120℃、破裂温度は約170℃)の各々を対応する成形材料流路に供給する。それらの成形材料はエンドプレート51の上流側で合流し、図4に示すウェザーストリップ10に対応する横断面形状の未加硫成形体38として該オリフィスから一体的に押し出される(共押出成形)。なお、取付部11に埋設される芯金14は、芯金供給用アンコイラ53から引き出された後に、芯金用ロール成形機54によって製造途中のウェザーストリップ10の形状に対応した略逆V字状の横断面形状(図4参照)にロール成形されて押出成形型50に供給され、取付部成形材料と一緒にオリフィスから押出されることで取付部11内の所定位置に一体に埋設される。
【0043】
ここで、装飾部成形材料に配合されている熱膨張性カプセルは、前述のように該成形材料の押出成形温度(一般的には50〜90℃)よりも軟化温度及び破裂温度が高いものが好ましく使用される。従って、装飾部成形材料が押出成形型50から押し出される前後の時点では該カプセルが破裂するようなことはない。取付部11及びシール部12と一体的に押出成形型50のオリフィスから押し出された装飾部13は、典型的には未膨張のカプセルが未加硫ゴムに分散した状態で(カプセルに内包されたガスの膨張により全体が若干膨張することはあり得る。)、図1に示す加熱式加硫槽58に送り込まれる。
【0044】
加熱式加硫槽58に送り込まれた未加硫成形体38は、該加硫槽58内において、高周波、マイクロ波或いは熱風等の加熱手段により加熱(一般的には、180〜230℃の温度に加熱)される。かかる加熱は、未加硫成形体38のうち装飾部13の表面側が最初に加熱されるような態様で好ましく実施することができる。或いは、未加硫成形体38の全体が略均等に加熱されるような態様で実施してもよい。上記加熱により、各成形部(取付部11、シール部12及び装飾部13)を構成する未加硫ゴムがそれぞれ加熱されて加硫されるとともに、隣接する成形部同士が加硫接合により強固に接合一体化する。更に、本実施形態では、カプセルの破裂温度に対して加硫槽58における加熱温度を同等又はそれよりも高い温度に設定しているので、加硫時の熱により装飾部13を構成するEPDMが加硫するのと同期して装飾部13に含まれるカプセルの少なくとも一部が膨張し、膨張したカプセルの少なくとも一部は膨張の限度を超えて破裂する。
【0045】
上記カプセルの膨張及び破裂に起因して、装飾部13の表面に多数の微細な凹凸が形成される。カプセルの膨張・破裂後における装飾部13の表面形状を図3に模式的に示す。ここで、図中の符号42は装飾部13の表面を、符号43はポリマー材料(ここでは加硫済EPDM)からなるマトリックスを、符号44は該マトリックス(連続相)中に分散したカプセルを指す。図示する例では、装飾部13の表面に、膨張したカプセル44の外殻の一部が表面42に露出した後、その膨張した形状を保ったまま冷却した部分(図中の符号A);膨張したカプセル44の外殻の一部が表面42に露出した後に内部のガスが抜けて収縮した又は潰れた(萎んだ)状態で冷却した部分(図中に符号Bで示す凹部。このように完全に潰れた状態の他、途中まで潰れた状態となることもあり得る。);膨張後に破裂したカプセル44の外殻の一部が表面42から外方に突出したまま冷却した部分(図中の符号C。なお、破裂したカプセル44の内側には凹部が形成されている。)、表面42の近傍にあるカプセル44が膨張して該カプセルを囲むポリマー材料を外側に押し出し(盛り上げ)、その状態のまま冷却することで形成された部分(図中に符号Dで示す凸部)等が存在している。符号Aで示す部分でカプセル44の外殻が膨らんだまま表面に露出している部分(図中の符号3)は、ここに開示される技術における「外殻露出部」の典型例である。なお、カプセル44の外殻が表面から突出せずに露出している部分(図示せず)も、ここでいう「外殻露出部」の概念に包含される。一方、符号Cで示す部分でカプセル44の外殻が表面から外方に突出した部分(図中の符号4)は、ここに開示される技術における「外殻突出部」の典型例である。即ち、本実施形態では、未加硫成形体38を加硫槽58で加熱して加硫及びカプセル44の膨張と破裂の少なくともいずれかを行うことにより、装飾部13の表面42に外殻露出部3及び外殻突出部4を有する素成形体40が形成される。
【0046】
なお、図3及び後述する図5A,図5B,図5Cでは、膨張したカプセル44の断面形状を模式的に略真円形として図示しているが、実際にはカプセル44の断面形状は真円形に限定されず、楕円形等の種々の形状が混在した状態であり得る。また、これらの図ではカプセル44のサイズを概ね大、中、小の3段階で図示しているが、実際にはカプセルのサイズはこの3段階に限定されず、典型的には種々のサイズのカプセルが混在している。また、これらの図では理解を容易にするためにカプセル44の外殻の厚さを意図的に拡大して示しているが、実際には膨張したカプセルや膨張後に破裂したカプセルの外殻の厚さは典型的には数十分の1μm〜数十μm程度である。即ち、これらの図におけるカプセルの直径と外殻の厚さとの寸法比は、必ずしも実際の寸法比を反映したものではない。
【0047】
図3に示す外殻突出部4では、一般にマトリックス43に比べて脆い材料からなる外殻が単独で(即ち背面に支えのない状態で)表面42から外方に突出している。このため、完成品したウェザーストリップ10に外殻突出部4が残存していると、人体等の他の物との接触により外殻突出部4を構成する外殻が折れ曲がったり剥がれ落ちたりしやすく、このことがウェザーストリップ10の場所(他の物との接触頻度の違い)による色の差を生じる要因となる。また、外殻突出部4を構成する外殻は上述のように単独で突出していることから、この外殻自体の色がマトリックス43の色と異なる場合は別個に認識されやすい。例えば、外殻突出部4が斑点模様として視認されることがある。ここに開示される技術では、かかる外殻突出部4を有する素成形体40に対し、その表面42から外殻突出部4を消滅させる仕上げ処理を行う。本実施形態においては、加硫槽58を通過した素成形体40を仕上げ処理装置60に導入し、ここで上記仕上げ処理を行う。
【0048】
仕上げ処理装置60は、図2に示すように、チャンバ61(好ましくは、排気口69及び図示しない吸気口を備える。)の内部に、素成形体40の表面(ここでは装飾部13の表面)42にある外殻露出部3及び外殻突出部4のうち少なくとも外殻突出部4を該表面42から消滅させるための消滅処理機64を備える。チャンバ61内には、素成形体40が下流側へ移動する際に支持するように構成された支持ローラ62が所定数(ここでは2つを示している。)設けられている。仕上げ処理装置60は、チャンバ61の上流側(加硫槽58側)開口から素成形体40を導入し、その表面42を消滅処理機64により処理した後、チャンバ61の下流側開口から送り出すように構成されている。
【0049】
消滅処理機64としては、素成形体40の表面42にある外殻突出部4を無くす(消滅させる)処理を行い得る種々のものを採用することができる。
かかる消滅処理機64の好ましい一例として、素成形体40の表面42に火炎を吹き付けるように設置されたバーナ(焼滅手段)を用いることができる。図4に示すように、バーナ64から素成形体40の表面42に火炎64aを吹き付けて外殻突出部4を外殻構成材料の発火点以上の温度(燃焼温度)に加熱することにより、外殻突出部4を燃やして消滅(即ち焼滅)させることができる(焼滅処理)。図3に示すように、外殻突出部4では外殻が表面42から単独で突出している(外殻が表裏ともに空間に面している)ので、火炎から受けた熱を周囲に逃がすことができない。従って外殻突出部4の加熱に要する熱量が少ない(熱容量が小さい)。このため、火炎64aに曝された外殻突出部4は短時間(典型的には数分の1秒〜数秒)のうちに燃焼して焼滅する。また、火炎64aの吹付けによる風圧によって外殻突出部4の焼滅をより効率よく進行させることができる。
【0050】
一方、マトリックス43は外殻突出部4に比べて体積が大きく加熱されにくい(熱容量が大きい)ため、外殻突出部4に比べて燃焼温度に加熱されるまでに要する時間が長い。かかる加熱されやすさ(燃焼するまでの時間)の違いを利用して、マトリックス43を燃焼させることなく外殻突出部4を焼滅させる(焼き払う)ことができる。かかる焼滅処理は、外殻突出部4以外の部分では表面42に形成された凹凸をなるべく残しつつ(少なくとも上記凹凸の大部分を維持しつつ、好ましくは上記凹凸が実質的に損なわれないようにして)、外殻突出部4を焼滅させるように行うことが好ましい。このような焼滅処理が可能となるように、バーナ64の出力、バーナ64から表面42までの距離、表面42を火炎64aに曝す時間(処理時間)等の焼滅処理条件を適宜調節することができる。
【0051】
また、カプセル44の外殻が表面42に露出(典型的には膨らんだ形状のまま露出)している外殻露出部3も、該露出部3を構成する外殻の背面が空間(カプセル44の内部空間)となっているため、マトリックス43に比べて短時間で加熱されやすい。従って、マトリックス43を燃やすことなく、外殻突出部4と併せて外殻露出部3を焼滅させることもできる。かかる焼滅処理は、外殻突出部4及び外殻露出部3以外の部分では表面42に形成された凹凸をなるべく残しつつ、外殻突出部4及び外殻露出部3を焼滅させるように行うことが好ましい。
【0052】
図5Aは、図3に示す素成形体40に対し、表面42の凹凸を残しつつ外殻突出部4及び外殻露出部3を焼滅させる仕上げ処理(焼滅処理)を行った後(焼滅処理機64の下を通過させた後、即ち火炎64aに曝した後)の表面構造を模式的に示す断面図である。この図5Aでは、図3において外殻突出部4及び外殻露出部3を構成していた部分の外殻が焼滅により除去されている。即ち、図5Aに示す状態ではもはや表面42に外殻突出部4及び外殻露出部3は実質的に存在していない(表面42から消滅されている)。従って、完成品のウェザーストリップ10において、外殻突出部4や外殻露出部3を構成する外殻が剥がれ落ちることに起因して場所による色の差が生じる事象を防止することができる。また、上記焼滅処理によって外殻の色が単独で認識されやすい部分(外殻露出部3及び外殻突出部4)を焼滅させているので、上述のような斑点模様を無くして高レベルの単一色(ここでは黒色)を呈するウェザーストリップ10を製造することができる。
【0053】
消滅処理機64の好ましい他の一例として、素成形体40を表面42側から加熱する表面加熱手段、例えば赤外線照射機を用いることができる。この赤外線照射機64により素成形体40の表面42に赤外線64bを照射すると、上述のように加熱されやすい外殻突出部4は短時間のうちに外殻構成材料の軟化点又は融点以上の温度まで加熱される。かかる温度に加熱された外殻突出部4は、熱変形(溶融、変形、収縮等)により、典型的には破裂したカプセル44の内部或いは該カプセル44周囲の表面42上に流れ落ちて(又は変形して)元の場所から無くなる。一方、素成形体40のマトリックス部分は外殻突出部4や外殻露出部3に比べて昇温が遅い。従って、マトリックス43を熱変形させることなく外殻突出部4を集中的に加熱して、表面42の凹凸を残しつつ外殻突出部4を該表面から消滅させることができる。また、焼滅による仕上げ処理を行う場合と同様に、外殻突出部4と併せて外殻露出部3を表面42から消滅させるように赤外線照射処理を行ってもよい。
【0054】
図5Bは、図3に示す素成形体40に対し、表面42の凹凸を残しつつ外殻突出部4及び外殻露出部3を消滅させる赤外線照射処理(表面加熱処理の一形態)を行った後の表面構造を模式的に示す断面図である。この図5Bでは、図3において外殻突出部4を構成していた部分の外殻が熱変形により表面42から無くなっている(図5Bに示す熱変形部5)。また、図3において外殻露出部3を構成していた部分の外殻も熱変形により表面42から無くなっている(図5Bに示す熱変形部6)。かかる表面加熱処理によっても、上述した焼滅処理を行う場合と同様の処理効果を得ることができる。
【0055】
上記表面加熱処理を行う方法としては、上述のように表面42に赤外線64bを照射する方法のほか、例えば表面42に火炎を近づける方法、表面42に高温のガスを吹き付ける方法等を採用することができる。これらの表面加熱処理方法によっても、上述した赤外線照射により仕上げ処理を行う場合と同様の処理効果を得ることができる。表面42に火炎を近づける方法による表面加熱処理は、消滅処理機64として例えばバーナを用いて実施することができる。この場合、バーナ64による仕上げ処理は、例えば、外殻突出部4(又は、外殻突出部4及び外殻露出部3)が熱変形により消滅するが燃焼(焼滅)はしない程度に加熱されるような火炎吹付け条件で行うことができる。或いは、外殻突出部4(又は、外殻突出部4及び外殻露出部3)のうち一部は熱変形により消滅し残部は焼滅により消滅するように火炎を吹き付けてもよい。また、表面42に高温ガスを吹き付ける方法による表面加熱処理は、消滅処理機64として例えば高温のエアを噴き出し可能な熱風噴射器を用いて、該高温ガスにより外殻突出部4(又は、外殻突出部4及び外殻露出部3)を外殻の軟化点又は融点以上の温度に加熱する態様で実施することができる。この方法によると、高温ガスの吹付けの勢い(風圧)も利用して仕上げ処理を効率よく行うことができる。
【0056】
消滅処理機64の好ましい他の一例として、カプセルの外殻を溶解又は軟化させる溶剤を素成形体40に供給して該溶剤を少なくとも外殻突出部4に接触させるように構成された溶剤供給機が挙げられる。該溶剤供給機は、一種又は二種以上の溶剤のみを含む(即ち不揮発分を含まない)単純溶剤組成物を供給するものであってもよく、例えば一種又は二種以上の溶剤と被膜形成成分(典型的にはポリマー)とを含むコーティング剤(塗料組成物)を供給するものであってもよい。上記溶剤供給機としては、このような溶剤組成物(上記溶剤を含む組成物をいい、単純溶剤組成物及び不揮発分を含む組成物(コーティング剤等)の双方を包含する。)を供給可能な種々のものを用いることができる。例えば、図4に示す消滅処理機64として、素成形体40の表面42に向けて溶剤組成物を噴霧(スプレー)可能に構成された噴霧塗布機(スプレーコータ)を好ましく採用することができる。素成形物40に向けて供給(噴霧)された溶剤組成物に含まれる溶剤64cは、好ましくは素成形物40自体に内在する熱(典型的には加硫時の熱の名残り)により加熱されて蒸発する。また、上記溶剤の蒸発を促進するために、チャンバ61の内部又はその下流側に乾燥手段(例えばヒータ)を備えた構成の消滅処理装置60としてもよい。蒸発した溶剤は、チャンバ61に設けられた排気口69から外部に排出することができる。
【0057】
上述のように、外殻突出部4では外殻が単独で(支えのない状態で)表面42から外方に突出している。また、膨張したカプセル44又は膨張後に破裂したカプセル44の外殻は、典型的には厚さが数十分の1μm〜数十μm程度の薄膜状である。このような薄膜状の外殻は、上記溶媒に接触すると短時間のうちに溶解する(流れ落ちる)か、或いは膨潤により保形性(自己の形状を保持する力)を失って変形し、元の場所から無くなる。従って、外殻突出部4に溶剤を接触させることにより、外殻突出部4を溶解又は変形させて表面42から消滅させることができる。また、外殻突出部4に加えて外殻露出部3にも溶剤を接触させる(例えば、表面42の全体に溶剤を接触させる)ことにより、外殻突出部4と併せて外殻露出部3を表面42から消滅させることも可能である。
【0058】
かかる溶剤接触処理(仕上げ処理)に使用する溶剤としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;クロロホルム、ジクロロエチレン、ジクロロアセチレン、モノクロロベンゼン等の塩素系溶剤;等から選択されるいずれかの溶剤又は二種以上の混合溶剤が挙げられる。外殻構成材料の種類に応じて、該材料が溶解又は膨潤(軟化)しやすい溶剤を選択することが好ましい。例えば、外殻構成材料がポリメタクリル酸メチル(PMMA)又はポリ塩化ビニリデンである場合には、上述した炭化水素系、エステル系、ケトン系、塩素系等の溶剤を好ましく使用することができる。これらの溶剤はポリエチレンを膨潤させ得ることから、外殻構成材料がポリエチレンである場合にも好ましく使用することができる。これら外殻を構成する樹脂材料と該樹脂材料を溶解又は膨潤する溶剤との好適な組み合わせは、従来技術に基づいて、或いは簡単な予備実験を行うことにより、容易に把握することができる。
【0059】
上記溶剤接触処理に使用する溶剤としては、マトリックス43を構成するポリマー材料(特にポリマー成分)の種類をも考慮して、外殻構成材料が溶解又は膨潤(軟化)しやすく且つマトリックスを構成するポリマー材料は溶解しにくい溶剤を好ましく選択することができる。もっとも、上述のように薄膜状の外殻突出部4はマトリックス43に比べて短時間で溶解又は変形可能であることから、マトリックス43を構成するポリマー材料を溶解又は膨潤させ得る溶剤を用いる場合であっても、素成形体40と溶剤との接触時間を調節する(例えば、供給された溶剤を短時間のうちに、具体的には外殻突出部4を溶解又は変形させるには十分であるがマトリックス43が溶解又は変形するには至らない程度の短時間で揮発させる)ことにより、表面42の凹凸を残しつつ外殻突出部4を溶解又は変形させることができる。また、外殻突出部4は表面42よりも外方に突出していることから、表面42の温度と溶剤の噴霧量とを適切に調整することにより、噴霧された溶剤が外殻突出部4には到達するが表面42には到達しない(その前に溶剤が揮発する)か或いは到達してもマトリックス43の溶解や膨潤を引き起こす前に乾燥するような態様で溶剤を供給することができる。なお、焼滅による仕上げ処理を行う場合と同様に、外殻突出部4と併せて外殻露出部3を表面42から消滅させるように上記溶剤接触処理を行ってもよい。
【0060】
図5Cは、図3に示す素成形体40に溶剤を噴霧することにより表面42の凹凸を残しつつ外殻突出部4及び外殻露出部3を消滅させる仕上げ処理(溶剤接触処理)を行った後の表面構造を模式的に示す断面図である。この図5Cでは、図3において外殻突出部4を構成していた部分の外殻が、溶剤との接触に溶解するか又は溶剤との接触により変形して表面42から無くなっている(図5Cに示す変形部7)。また、図3において外殻露出部3を構成していた部分の外殻も溶解又は変形により表面42から無くなっている(図5Cに示す熱変形部8)。かかる溶剤接触処理によっても、上述した焼滅処理を行う場合と同様の処理効果を得ることができる。
【0061】
なお、接触させる溶剤をコーティング剤(塗料組成物)の形態で供給する場合には、図5Cに点線で示すように、該コーティング剤に含まれる溶剤により外殻突出部4及び外殻露出部3を消滅させるとともに、コーティング剤に含まれる不揮発分によって表面42の少なくとも一部を被覆するコーティング膜9を形成することができる。かかるコーティング膜9を設けることにより、外殻の剥がれ落ちをよりよく防止することができる。また、上記不揮発分として被膜形成成分に加えて着色剤(顔料、染料等)を含む組成のコーティング剤を用いてもよい。例えば、表面42(マトリックス43)と同系色(ここでは黒色)の着色剤を配合したコーティング剤を用いることにより、製造されるウェザーストリップ10の表面においてより効果的に単一色を現出させ得る。また、表面42とは異なる色の着色剤を配合し、該着色剤の色と表面42の色との混合色を現出させることにより意匠的効果が発揮されるようにしてもよい。一方、かかる着色剤を含まない組成のコーティング剤を用いる場合には、典型的には無色透明なコーティング膜9が形成されることにより、表面42の色がコーティング膜9を透過して目視されることとなる。
【0062】
溶剤接触処理に使用するコーティング剤は、乾燥後において装飾部13の表面42の性能及び/又は品質を向上させる(即ち、表面42を改質する)機能を備えたコーティング膜9を形成するものであってもよい。例えば、装飾部13の耐候性、耐摩耗性、耐傷付き性(耐スクラッチ性等)及び滑り性のうち少なくとも一つの性質を向上させるコーティング膜9を形成するコーティング剤を好ましく用いることができる。該コーティング膜9は、無色透明であってもよく、着色透明又は着色不透明であってもよい。
なお、溶剤接触処理用のコーティング剤により形成されるコーティング膜9の厚さは典型的には数μm〜数十μm程度であるが、理解を容易にするため、図5Cではコーティング膜9の厚みを意図的に拡大して示している。
【0063】
このような溶剤接触処理を行う方法としては、上述のように表面42に溶剤を噴霧する方法のほか、例えば上記溶剤(不揮発分を含む又は含まない溶剤組成物であり得る。)に素成形体40を浸漬する方法、該溶剤を素成形体40の表面に塗布(例えば刷毛塗り)する方法等を採用することができる。これらの溶剤接触処理方法によっても、上記溶剤を噴霧することにより仕上げ処理を行う場合と同様の処理効果を得ることができる。
【0064】
仕上げ処理装置60において上記仕上げ処理(例えば、焼滅処理、表面加熱処理、溶剤接触処理等)が施されたウェザーストリップ10は、次いで図1に示す表面塗装機72に導入されて装飾部13の表面にコーティング剤が塗装(例えばスプレー塗装)され、続いて乾燥機74を通過することで上記コーティング剤が焼き付けられ又は乾燥されてコーティング膜が形成される。上記コーティング剤としては、装飾部13の耐候性、耐摩耗性、耐スクラッチ性及び滑り性のうち少なくとも一つの性質を向上させるコーティング膜を形成するものが好ましく、例えばシリコーン樹脂系を主成分とするコーティング剤(シリコーン樹脂系コーティング剤)、ウレタン樹脂を主成分とするコーティング剤(ウレタン樹脂系コーティング剤)等を好ましく採用することができる。該コーティング剤は、無色透明なコーティング膜を形成するものであってもよく、着色剤の配合等により表面42と同系の又は異なる色のコーティング膜を形成するものであってもよい。
なお、上記コーティング剤が外殻突出部4を溶解又は変形させる溶剤を含むコーティング剤(例えば、シリコーン樹脂系又はウレタン樹脂系の被膜形成成分と、該成分を溶解する炭化水素系、ケトン系等の溶剤とを含むコーティング剤)である場合には、該コーティング剤を上述した溶剤接触処理に利用し(即ち、仕上げ処理装置60において上記コーティング剤の塗装及び乾燥を行い)、表面塗装機72及び乾燥機74を省略した構成の成形品製造装置1とすることも可能である。
【0065】
その後、ウェザーストリップ10を冷却機76により冷却する。冷却後のウェザーストリップ10を芯材曲げ機78に供給し、ここで図4に示す略逆V字状(拡開逆V字状)の断面形状を有する芯金14を図6に示すような略逆U字形状に折り曲げることにより、最終製品(完成品)としてのウェザーストリップ10に対応する断面形状に成形される。なお、図1中の符号79は、長尺状をした製造(成形)途中のウェザーストリップ10を引き取るための引取り機を示す。また、引き取られた成形品10は、図示しない切断機により所定長さに切断され、端末加工等を経て完成品(車両用ウェザーストリップ)となる。
【0066】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述した実施形態は例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0067】
例えば、上記実施形態では、成形材料を所定形状に成形(上記実施形態では押出成形)する成形工程と、成形工程で成形された成形体(未加硫成形体)38に含まれるカプセル44を加硫時の熱により膨張及び破裂させて表面42に凹凸を形成することで外殻露出部3及び外殻突出部4を有する素成形体40を形成するカプセル膨張・破裂工程と、素成形体40に仕上げ処理を施して表面42から外殻突出部4(又は、外殻突出部4及び外殻露出部3)を消滅させる仕上げ処理工程とを同期させて(即ち、押出成形に続く一連の工程として)行ったが、これらの工程を行うタイミングは特に限定されない。例えば、成形工程に引き続いてカプセル膨張・破裂工程を行って得られた素成形体40をいったん冷却して所定長に切断し、このように予め作製された所定長の素成形体40に対して任意のタイミングで仕上げ処理工程を行う態様で成形品10を製造してもよい。この場合、表面42の処理時間は、例えば引取機79の引き取り速度を変えることにより消滅処理機64と表面42との相対速度を調節することで、任意の時間に設定することができる。また、カプセル膨張・破裂工程も、上述のように成形工程に引き続いて(同期して)行ってもよく、成形体をいったん冷却した後に改めて加熱することによりカプセル44を膨張・破裂させて素成形体40としてもよい。
【0068】
ここに開示される技術は、上述のような押出成形による成形品の製造に限定されず、射出成形その他の成形方法による成形品の製造にも適用可能である。例えば、ポリマー材料とカプセルとを含む成形材料を射出成形により所定形状に成形した後、射出成形型から成形体を取り出し(或いは、少なくとも装飾部の表面に対向する部分の射出成形型を外し)、該成形体を好ましくは装飾部の表面側から加熱することによりカプセルを膨張・破裂させることにより、表面42に外殻露出部3及び外殻突出部4を有する素成形体40を形成することができる。この素成形体40に上記と同様の仕上げ処理を施すことにより、外殻露出部3及び外殻突出部4が消滅された成形品10を製造することができる。
【0069】
また、上記実施形態では固定式の仕上げ処理機64の下に素成形体40を通過させる(走行させる)ことにより素成形体40の表面を仕上げ処理機64に対して相対移動させつつ仕上げ処理を行ったが、例えば所定長に切断された素成形体40の位置を固定として仕上げ処理機64を移動させてもよく、或いは素成形体40及び仕上げ処理機64の双方を移動させてもよい。
また、上記実施形態では図1に示すように加硫槽58から下流側に離して仕上げ処理装置60を設けているが、例えば加硫槽58の下流端に続いて仕上げ処理装置60を配置してもよく、或いは加硫槽58の内部に仕上げ処理機64を組み込んだ構成としてもよい。また、加硫槽の一部を仕上げ処理機として用いることも可能である。即ち、加硫槽の例えば下流部(典型的には出口付近)を加硫槽の他の部分よりも高温にすることにより、該下流部において仕上げ処理を行うことが可能である。一例として、いくつかの槽が連なった構成の加硫槽を用い、それらのうち最も下流に位置する槽の温度を高くすることにより、上記仕上げ処理を容易に行うことができる。
【0070】
また、上記実施形態では本発明を適用した車両用ウェザーストリップの一種である自動車用ドアオープニングトリム及びその製造につき説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されず、カプセルの膨張・破裂により形成される意匠面(好ましくは布目調の外観)が好まれる種々の成形品に適用することができる。かかる成形品としては、例えば、ドアオープニングトリム以外の種々の車両用トリム(サンルーフトリム、天井材の周囲に取り付けられるトリム等)、シートレールカバー等の車両内装用装飾部材(車両用内装部品)が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】一実施形態に係る成形品の製造に用いられる押出成形装置(ライン)を示す概略説明図である。
【図2】一実施形態に係る成形品の製造に用いられる仕上げ処理装置を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面において、素成形体の一形態に係る表面付近の構造を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5A】図2のV−V線断面において、外殻突出部を焼滅させる仕上げ処理を行った成形品の一形態に係る表面付近の構造を模式的に示す拡大断面図である。
【図5B】図2のV−V線断面において、外殻突出部を熱変形させて消滅させる仕上げ処理を行った成形品の一形態に係る表面付近の構造を模式的に示す拡大断面図である。
【図5C】図2のV−V線断面において、外殻突出部を溶解又は変形させて消滅させる仕上げ処理を行った成形品の一形態に係る表面付近の構造を模式的に示す拡大断面図である。
【図6】一実施例に係る成形品の最終的な形状を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 成形品製造装置
3 外殻露出部
4 外殻突出部
5,6 熱変形部
7,8 変形部
9 コーティング膜
10 ウェザーストリップ(成形品)
13 装飾部
40 素成形体
42 表面
43 マトリックス(連続相)
44 カプセル
50 押出成形型
58 加熱式加硫槽
60 仕上げ処理装置
64 消滅処理機(バーナ、赤外線照射機、溶剤噴霧器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料からなるマトリックスと該マトリックス中に分散された複数のカプセルとを含み、前記カプセルの膨張に起因して凹凸が表面に形成された成形品を製造する方法であって、
膨張して表面に露出した前記カプセルの外殻露出部と膨張後に破裂して前記表面から外方に突出した前記カプセルの外殻突出部とを有する素成形体を用意し、次いで前記素成形体の表面から前記外殻突出部を消滅させる仕上げ処理を行うことを包含する、成形品の製造方法。
【請求項2】
前記仕上げ処理は、前記外殻露出部を前記外殻突出部と併せて消滅させるように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記仕上げ処理は、前記素成形体をその表面側から加熱する表面加熱手段を用いて、前記外殻突出部を熱変形させることにより前記素成形体の表面から前記外殻突出部を消滅させるように行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面加熱手段は、前記素成形体の表面に赤外線を照射すること、前記素成形体の表面に火炎を近づけること、及び前記素成形体の表面に高温のガスを吹き付けること、のうち少なくとも一つを行うように構成されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記仕上げ処理は、前記素成形体の表面全体のうち前記外殻突出部を熱変形させ且つ前記外殻突出部以外の前記凹凸を残存させるように行われる、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記仕上げ処理は、前記素成形体と前記表面加熱手段のうち少なくともいずれか一方を他方に対して移動させて行われる、請求項3から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記仕上げ処理は、前記素成形体をその表面側から加熱して前記外殻突出部を焼滅させる表面加熱手段を用いて、前記外殻突出部を焼滅させることにより前記素成形体の表面から消滅させるように行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記表面加熱手段は、前記素成形体の表面を火炎に曝すように構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記表面加熱手段は、前記素成形体の表面に前記火炎を吹き付けるように構成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記仕上げ処理は、前記外殻突出部を焼滅させ且つ前記外殻突出部以外の前記凹凸を残存させるように行われる、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記仕上げ処理は、前記素成形体と前記表面加熱手段のうち少なくともいずれか一方を他方に対して移動させて行われる、請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記仕上げ処理は、前記外殻突出部に溶剤を接触させる接触手段を用いて、前記外殻を溶解又は軟化させる溶剤を前記外殻突出部に接触させて前記外殻突出部を溶解又は変形させることにより前記素成形体の表面から消滅させるように行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記接触手段は、前記素成形体の表面に前記溶剤を噴霧すること、前記素成形体を前記溶剤に浸漬すること、及び前記素成形体の表面に前記溶剤を塗布すること、のうち少なくとも一つを行うように構成されている。請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶剤を、該溶剤と被膜形成成分とを含む塗料組成物として前記外殻突出部に接触させる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記塗料組成物は、透明又は前記素成形体表面の色と同系色の着色剤を含む前記被膜形成成分を前記溶剤に溶解又は分散させた液状組成物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記仕上げ処理は、前記素成形体の表面全体のうち前記外殻突出部を溶解又は変形させ且つ前記外殻突出部以外の前記凹凸を残存させるように行われる、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記仕上げ処理は、前記素成形体と前記接触手段のうち少なくともいずれか一方を他方に対して移動させて行われる、請求項12から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記仕上げ処理により前記素成形体の表面から前記外殻突出部を消滅させた後、該仕上げ処理後の表面に、該表面の耐候性、耐摩耗性、耐スクラッチ性、滑り性のうち少なくとも一つの性質を向上させるコーティング膜を形成するコーティング処理を施す、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ポリマー材料からなるマトリックスと該マトリックス中に分散された複数のカプセルとを含み、前記カプセルの膨張に起因して凹凸が表面に形成された成形品であって、
前記表面は、前記カプセルの外殻が前記成形体の表面から外方に突出してなる外殻突出部が消滅された状態にあることを特徴とする、成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161587(P2009−161587A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339662(P2007−339662)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】