説明

成形品吸着ユニット及び成形品吸着方法

【課題】負圧発生機構を小型化してワークを確実に吸着する。吸着部の近傍で負圧を発生させることができ、吸着及び吸着解除の応答性が高める。
【解決手段】成形品吸着部材(3)を、先端側に形成された吸引孔(25a)と連通すると共に大気と連通する中空部(25b)を有した吸着部(25)と、該吸着部(25)において中空部(25b)と連通し、かつ大気側へ向かうように傾斜して形成される圧縮空気流入部(25c)とから構成する。各成形品吸着部材(3)ごとに、吸着部(25)の中空部(25b)に対して圧縮空気流入部(25c)を介して圧縮空気を流入して吸引孔(25a)内を負圧形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば成形品取出し機に設けられ、金型内から複数個の樹脂成形品を同時に取り出す際に、各樹脂成形品を吸着して保持する成形品吸着ユニット及び成形品吸着方法、詳しくは金型内から複数個の微小な樹脂成形品を吸着保持して取り出すのに適した成形品吸着ユニット及び成形品吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形された樹脂成形品を吸着して金型内から取り出す成形品吸着ユニットとしては、取り付け板に対して樹脂成形品における製品の個数に応じた複数の吸着パッドを各樹脂成形品に相対して取り付けると共に各吸着パッドの近傍に、吸着した樹脂成形品に向かって光を照射する発光素子及び吸着した樹脂成形品からの反射光を受光して吸着確認信号を出力する受光素子からなる光学的検知器をそれぞれ取り付けて製作している。
【0003】
そして成形品吸着ユニットは、型開した金型間に進入した際に、各吸着パッドによる負圧吸引力によりそれぞれの樹脂成形品を吸着して保持すると共に吸着された樹脂成形品に向かって照射された光の反射光を受光して樹脂成形品の吸着を検知し、すべての光学的検知器により樹脂成形品の吸着が検知されると、移動制御されて樹脂成形品を金型内から所定の開放位置へ移動して取出し動作を実行している。
【0004】
しかし、上記成形品吸着ユニットにあっては、例えば特許文献1に示すように、該成形品吸着ユニット外に設けられた負圧発生装置からそれぞれの吸着パッドに分岐配管し、各吸着パッド内を所定の負圧に形成している。このため、各吸着パッド内を所定の負圧に形成するには、大型の負圧発生装置が必要になり、装置自体が大型化すると共に高コスト化する問題を有している。また、負圧発生装置から各吸着パッドに至るまでの距離があるため、負圧発生装置に設けられたバルブにより負圧をON−OFFした際の応答性が悪くなり、成形品の吸着保持及び吸着解除するのに時間がかかる問題を有している。
【0005】
上記した成形品取出し機にあっては、成形品吸着ユニットを高速移動制御して成形品取出し時間を短縮しているが、成形品吸着ユニットによる成形品の吸着及び吸着解除に時間がかかることにより成形品取出し時間を短縮するのに障害になる問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−319960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、大容量の負圧発生装置を必要とすることにより装置自体が大型化すると共に高コスト化する点にある。負圧発生装置と吸着パッドの間に距離があるため、負圧を継断した際に吸着パッドによる吸着及び吸着解除の応答性が悪くなる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数個の成形品吸着部材が設けられ、各成形品吸着部材により樹脂成形品を吸着保持して所定の動作を実行する成形品吸着ユニットにおいて、各成形品吸着部材は、先端側に形成された吸引孔と連通すると共に大気と連通する中空部を有した吸着部と、該吸着部において中空部と連通し、かつ大気側へ向かうように傾斜して形成される圧縮空気流入部とから構成し、成形品吸着部材ごとに、吸着部の中空部に対して圧縮空気流入部を介して圧縮空気を流入して吸引孔内を負圧形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、負圧発生機構を小型化してワークを確実に吸着することができる。吸着部の近傍で負圧を発生させることができ、吸着及び吸着解除の応答性が高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】成形品取出し機における成形品吸着ユニットの取り付け状態を示す概略斜視図である。
【図2】成形品吸着ユニットの拡大分解斜視図である。
【図3】成形品吸着部材の内部構造を示す断面説明図である。
【図4】成形品吸着部材の樹脂成形品吸着作用を示す説明図である。
【図5】成形品吸着部材の変更例を示す一斜視図である。
【図6】成形品吸着部材の中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、成形品吸着部材ごとに、吸着部の中空部に対して圧縮空気流入部を介して圧縮空気を流入して吸引孔内を負圧形成することを最良の形態とする。
【実施例1】
【0012】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1乃至図3において、樹脂成形品の製品(図示せず)に応じた個数の成形品吸着部材3が設けられた成形品吸着ユニット5は、例えば樹脂成形機の固定盤7に固定され、成形された樹脂成形品を金型内から樹脂成形機の操作側または反操作側へ取り出す成形品取出し機9の上下アーム11下部に取り付けられる。
【0013】
図示する成形品取出し機9は、固定盤7に固定され、樹脂成形機における中心軸線の直交方向へ延出する本体フレーム13上を上記直交方向へ移動するように支持される第1走行体15、該第1走行体15に上記軸線方向へ延出して固定される前後フレーム17に上記軸線方向へ移動するように支持される第2走行体19及び該第2走行体19に昇降するように設けられる上下アーム11から構成される。
【0014】
なお、成形品吸着ユニット5が取り付けられる成形品取出し機9としては、図示する構造のものに限定されず、例えば樹脂成形機の操作側または反操作側に配置され、樹脂成形機の中心軸線と直交方向で、金型間と操作側または反操作側の開放位置の間で伸縮するアームの先端部に成形品吸着ユニット5を取り付けて樹脂成形品を横取出しする構造、または金型間と操作側または反操作側の開放位置の間で旋回移動する旋回アームの先端部に成形品吸着ユニット5を取付けた構造であってもよい。
【0015】
また、上記樹脂成形機は、例えば枝状に分岐した各ランナに先端部に微小な製品を有した樹脂成形品を成形する構造からなる。樹脂成形品としては、図示するように2列4行で製品を有している例を示すが、この例に限定されるものではないことは、勿論である。上記成形品取出し機9は、成形品吸着ユニット5を上記軸線方向、軸線直交方向及び上下方向へ移動して金型内の樹脂成形品を樹脂成形機の操作側または反操作側へ取出す。
【0016】
上記成形品吸着ユニット5の取付け板21には、上下方向に軸線を有して適宜長さからなる2本の共通排気管23の上端部が、互いに所定の間隔をおいて固定されている。各共通排気管23の相互間角は、後述する樹脂成形品における各製品の水平方向間隔に一致して設定される。該共通排気管23の外周面には、多数の孔23aが軸線方向に対して所定の間隔をおいて直線状になるように形成されている。共通排気管23における孔23aの相互間隔は、樹脂成形品における製品の上下方向間隔に一致して設定される。
【0017】
上記共通排気管23には、樹脂成形品おける製品の上下方向数に応じた個数の成形品吸着部材3が、樹脂成形品における各製品に対して先端面が相対するように取り付けられている。各成形品吸着部材3は、吸着部25と取付け部27から構成され、吸着部25の先端は、製品に対応する大きさで、多数の吸引孔25aが形成された吸着面が設けられている。
【0018】
また、取付け部27は、共通排気管23に一致する内径で、一部に割溝27aを有した取付け孔27bが形成されている。該割溝27aに応じた取付け部27には、固定ねじ29が噛合わされ、取付け孔27b内に共通排気管23が嵌め込まれた状態で固定ねじ29を締め付けて割溝27a幅を狭小化して取付け孔27bを縮径することにより成形品吸着部材3を共通排気管23へ固定させる。
【0019】
そして上記吸着部25の先端側内部には、上記吸引孔25aに連通し、取付け孔27bの一部内周面に形成される圧縮空排出部27cに至る中空部25bが形成されている。該中空部25bは、共通排気管23の孔23aに一致する内径からなる。
【0020】
また、吸着部25には、圧縮空気流入部25cが、上記中空部25bへ連通し、かつ軸線が取付け部27側へ所定の角度で傾斜するように形成されている。そして圧縮空気流入部25cには、成形品吸着ユニット5外に設けられた圧縮空気発生手段(図示せず)に対して開閉バルブ(図示せず)を介して接続された供給ホース31が接続されている。
【0021】
上記各共通排気管23の非固定側端部には、消音器33がそれぞれ取り付けられている。該消音器33は、共通排気管23より大径の膨張空間部を有し、共通排気管23から排出される圧縮空気を膨張空間部内にて膨張させた後に外面に形成された排気孔33aから大気へ放出させることにより排気音を消音する。
【0022】
なお、吸着部25の吸着面には、超極細繊維不織布の表面に導電性ポリマーを反応形成した静電気除去テープ(図示せず)を貼着し、吸着される製品に帯電した静電気を静電気除去テープにより除電可能にしてもよい。該静電気除去テープは、不織布からなるため、無数の空隙を有している。また、上記吸着面には、多数の孔を有したシリコンゴムシート等の弾性シート(図示せず)を貼着し、製品を吸着する際に該弾性シートにより製品の傷付きを防止してもよい。
【0023】
次に上記のように構成された成形品吸着部材による樹脂成形品の吸着作用及び吸着方法を説明する。
成形品取出し機7の制御装置(図示せず)は、第1走行体15、第2走行体19及び上下アーム11を移動制御して成形品吸着ユニット5を、型開した樹脂成形機の金型間に進入させて樹脂成形品を保持した金型に相対させる。このとき、各成形品吸着部材3にあっては、吸着部25の中空部25b内に対し、圧縮空気流入部25cから圧縮空気を取付け部27側に向かって供給することにより吸引孔25a内を負圧に形成させている。
【0024】
また、中空部25b内に供給された圧縮空気は、取付け部27の圧縮空排出部27c及び共通排気管23の孔23aを介して共通排気管23内へ導入された後、消音器33の膨張空間部内にて膨張されて排気孔33aから大気中へ放出されることにより消音される。
【0025】
上記状態にて制御装置は、第2走行体19を金型側へ移動制御して成形品吸着ユニット5における各成形品吸着部材3の先端面を金型内に保持された樹脂成形品の製品に近接して吸着させる。(図4参照)
【0026】
そして各成形品吸着部材3の先端面に樹脂成形品の製品が吸着されると、制御装置は、第2走行体19を復動制御して成形品吸着ユニット5を金型から離間する方向へ移動して金型から抜き出させた後、上下アーム11を上昇移動して金型間の上方へ移動させ、次に第1走行体15を移動制御して成形品吸着ユニット5を樹脂成形機の操作側または反操作側の開放位置へ移動させる。
【0027】
そして制御装置は、上記開放位置にて各成形品吸着部材3における吸着部25の中空部25b内に対する圧縮空気の供給を中断して負圧形成を停止させることにより製品の吸着を解除して樹脂成形品を開放させる。
【0028】
本実施例は、成形品吸着ユニット5に取り付けられる成形品吸着部材3ごとに、吸着部25の中空部25b内に対して圧縮空気を吸引孔25aとは反対の方向へ供給して負圧形成し、樹脂成形品の製品を吸着することができ、成形品吸着ユニット5外に設けられた負圧発生手段からの負圧を各成形品吸着部材3へ分岐する従来の装置及び方法に比べて装置自体を小型化及び低コスト化することができると共に負圧を継断する際の応答性を高めて短時間に切換えることができ、成形品取出し時間を短縮することができる。
【0029】
上記実施例においては、各成形品吸着部材3に樹脂成形品の製品が吸着されたことを検出する製品検出器を取り付けた構成としてもよい。製品検出器としては、各成形品吸着部材3における吸着部25の吸着面上に向かって光を照射する発光部材及び反射光を受光して電気信号を出力する受光部材とから構成する。
【0030】
そして各成形品吸着部材3に樹脂成形品の各製品が吸着された際に、製品非吸着状態と製品吸着状態の電気信号電圧差により製品を吸着したか否かを判別するように構成してもよい。
【0031】
上記説明は、成形品吸着部材3の吸着部25を方体形状として構成したが、少なくとも先端面が製品の大きさにほぼ一致し、内部に中空部が形成された円柱形状、多角柱形状等の軸部材で構成してもよいことは、勿論である。
【0032】
また、上記説明は、共通排気管23に対して複数個の成形品吸着部材3を取り付け、各成形品吸着部材3から排気される圧縮空気を共通排気管23を介して同時に排気する構成及び方法としたが、成形品吸着ユニット5を構成する成形品吸着部材3の個数が少ない場合には、図5及び図6に示すように成形品吸着部材3における吸着部25の後端側に消音器33を一体に設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
3 成形品吸着部材
5 成形品吸着ユニット
7 固定盤
9 成形品取出し機
11 上下アーム
13 本体フレーム
15 第1走行体
17 前後フレーム
19 第2走行体
21 取付け板
23 共通排気管
23a 孔
25 吸着部
25a 吸引孔
25b 中空部
25c 圧縮空気流入部
27 取付け部
27a 割溝
27b 取付け孔
27c 圧縮空排出部
29 固定ねじ
31 供給ホース
33 消音器
33a 排気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の成形品吸着部材が設けられ、各成形品吸着部材により樹脂成形品を吸着保持して所定の動作を実行する成形品吸着ユニットにおいて、
各成形品吸着部材は、
先端側に形成された吸引孔と連通すると共に大気と連通する中空部を有した吸着部と、
該吸着部において中空部と連通し、かつ大気側へ向かうように傾斜して形成される圧縮空気流入部と、
からなり、
各成形品吸着部材ごとに、吸着部の中空部に対して圧縮空気流入部を介して圧縮空気を流入して吸引孔内を負圧形成することを特徴とする成形品吸着ユニット。
【請求項2】
請求項1において、圧縮空気流入部は、吸着部の軸線周りに対して等間隔で複数個、設けた成形品吸着ユニット。
【請求項3】
請求項1において、吸着部には、上記中空部と連通する排出部を有した取付け部を一体に設け、外周面に多数の孔が軸線方向へ所定の間隔をおいて形成された共通排気管に対して各成形品吸着部材を、取付け部の排出部が孔と一致するように固定し、各吸着部から排気される圧縮空気を共通排気管を介して共通排気する成形品吸着ユニット。
【請求項4】
請求項3において、共通排気管の排気側端部には、消音器を設けた成形品吸着ユニット。
【請求項5】
請求項1において、吸着部における非吸着側端部には、膨張空間部が形成された消音器を設けた成形品吸着ユニット。
【請求項6】
請求項1において、吸着部の吸着面には、多数の孔を有した静電気除去シートを設けた成形品吸着ユニット。
【請求項7】
請求項1において、吸着部の吸着面には、多数の孔を有した弾性シートを設けた成形品吸着ユニット。
【請求項8】
複数個の成形品吸着部材が設けられ、各成形品吸着部材により樹脂成形品を吸着保持して所定の動作を実行する成形品吸着ユニットにおいて、
各成形品吸着部材に形成され、吸引孔及び大気と連通する中空部内に対して圧縮空気を吸引孔とは反対の方向へ流入して吸引孔内を負圧に形成して樹脂成形品を吸着可能にする成形品吸着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255555(P2011−255555A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130658(P2010−130658)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000132231)株式会社スター精機 (47)
【Fターム(参考)】