説明

成形材料およびこれを用いた成形品の製造方法

【課題】材料資源の有効利用を図れて機械的強度の高い成形品を得ることのできる成形材料およびこれを用いた成形品の製造方法が望まれている。
【解決手段】本発明に係る成形材料は、未硬化の熱硬化性樹脂と、所定粒径の竹粉とを含んでなるものを基本構成とし、成形材料に含まれる竹粉が83メッシュ篩通過分から成る場合や、成形材料中の竹粉が熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下含まれている場合がある。そして、本発明に係る成形品の製造方法は、未硬化の熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の配合割合であり且つ83メッシュ篩通過分である竹粉とを含んで成る成形材料を、加熱加圧により成形して成形品を得るようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹粉を原料として含む成形材料、およびこれを用いた成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食器、漆器など成形品の原料である熱硬化性樹脂成形材料、例えばフェノール樹脂成形材料が提供されてきた。このフェノール樹脂成形材料は、未硬化のフェノール樹脂に、充填材、硬化剤、離型剤、染顔料などを配合してすることによって調製されている。この場合、充填材としては、天然素材としての木粉や、フェノール樹脂積層板の屑粉などが使用されている。
このような天然素材を充填材として使用する技術は下記の特許文献1に記載されている。下記文献記載の技術は、間伐材、建築廃材などから得たチップ材、合板やMDFなどの木質材から生じたサンダーダストなど廃材の有効利用を図るために、木粉と熱硬化性樹脂との混合物を加熱加圧して木粉ボードを成形するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−319748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹木は成木になるまでに20〜30年かかるが、竹は2〜3年で使用できる程度まで成長するので材料確保が容易である。更に、竹の繊維は木の繊維と比べて機械的強度が格段に高いことが知られている。一方で、近年、竹の繁殖で農地の荒廃および水源涵養保安林が荒れ果てて保安林の役目を果たさなくなるという問題が生じている。これにより、森林環境が良好に維持されず地域の存続が脅かされている。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、材料資源の有効利用を図れて機械的強度の高い成形品を得ることのできる成形材料およびこれを用いた成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、加熱加圧による成形に適した所定粒径の竹粉を用いることにより、機械的強度の高い成形品が得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったのである。すなわち、本発明は、未硬化の熱硬化性樹脂と、所定粒径の竹粉とを含んでなることを特徴とする成形材料を提供する。
【0007】
また、成形材料に含まれる竹粉が83メッシュ篩通過分から成るものである。尚、ここで用いる83メッシュ篩はJIS−Z8801−1に適合する金属製網ふるいである。
【0008】
そして、成形材料中の竹粉が、熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の配合割合で含まれているものである。
【0009】
更に、本発明に係る成形品の製造方法は、未硬化の熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂体100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の配合割合であり且つ83メッシュ篩通過分である竹粉とを含んで成る成形材料を、加熱加圧により成形して成形品を得るようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る成形材料によれば、成形材料が未硬化の熱硬化性樹脂と所定粒径の竹粉とを含んでいるので、一定以上の機械的強度を持つ成形品を得ることができる。この成形材料から得られた成形品は、未硬化の熱硬化性樹脂と木粉とを含む成形材料から得られた成形品と比べて機械的強度が高い。加えて、竹材を材料資源として有効に活用できるので、焼却処分による二酸化炭素の発生を抑制して地球温暖化防止策の一助とすることができる。また、竹粉は入手が容易であり竹粉の使用は環境保全に役立つという効果もある。
【0011】
そして、83メッシュ篩通過分から成る竹粉を含む成形材料を用いる場合は、外観が非常に美しい高級感のある成形品を得ることができる。更に、熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の竹粉を含む成形材料を用いる場合は、確実に、外観が非常に美しい成形品を得ることができる。
【0012】
更に、本発明に係る成形品の製造方法によれば、未硬化の熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の配合割合であり且つ83メッシュ篩通過分である竹粉とを含んで成る成形材料を、加熱加圧により成形して成形品を得るようにしているので、機械的強度が高く外観が非常に美しい成形品を確実に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施形態を説明する。
本発明の成形材料に用いる未硬化の熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えばノボラック型または固形レゾール型のフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。本発明の成形材料において、熱硬化性樹脂の配合率は、樹脂の種類によるが、概ね成形材料全体の42〜57wt%である。
【0014】
また、本発明の成形材料に用いる竹粉の種類としては特に限定されないが、例えば孟宗竹、真竹、黒竹、篠竹、根曲竹、圏紋竹などを用いることができる。但し、成長が早く丈夫で日本国内で増殖し続けている孟宗竹を用いると、孟宗竹の繁殖により被害を受けている過疎地住民の救済を図ることができる。かかる竹粉の原料としては、生竹、自然乾燥や強制乾燥を施した竹、あるいは竹パルプ、竹繊維、竹薄片など、竹製品の製造過程で発生した廃材を用いることができる。これらの原料は粉砕、篩い分けが施されることにより、加熱加圧による成形に適した所定粒径の竹粉にされる。
【0015】
前記の竹粉原料を粉砕する手段は、竹の繊維を加熱加圧による成形に適した繊維長に破砕するものであれば特に限定されないが、例えば衝撃式粉砕機、ボールミル、ターボミルなどが使用される。前記の成形に適した繊維長は例えば1.6mm以下である。
【0016】
前記の竹粉原料を篩い分けする手段は特に限定されないが、例えば所定の開目を有する篩を備えた篩機で行なうことができる。具体的には、例えば佐藤式または寿ジャイロシフター式の篩機が挙げられる。この場合、83メッシュ篩または83メッシュよりも小さな開目の篩を用いると、成形時における流動性、すなわち成形性の良い成形材料の原料となるので好ましい。
【0017】
本発明に係る成形材料は、少なくとも、竹粉、および未硬化の熱硬化性樹脂粉末を含んでいる。かかる成形材料における竹粉の配合割合を、熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下にすると、成形前の混練容易性と成形時の流動性が、成形品の外観を美しくする範囲に保持されるので好ましい。熱硬化性樹脂100重量部に対する竹粉の配合割合が100重量部を下回ったり114重量部を超えたりすると、得られた成形品の外観は、例えばくもり、カスレ、光沢の斑、ひびなどを生じやすくなって美観を損なうおそれがある。
【0018】
前記した未硬化の熱硬化性樹脂の成形時に硬化させる硬化剤は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜のものが選択される。例えば、ノボラック型フェノール樹脂用としてはヘキサメチレンテトラミンなどが使用され、ユリア樹脂用としてはシュウ酸ジメチルエステル、フタル酸無水物、有機ハロゲン化物、アミン塩酸塩、サリチル酸尿素アダクト、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが使用され、メラミン樹脂用としてはフタル酸無水物、ピリジン塩酸塩、第二リン酸アンモニウムなどが使用される。硬化剤の配合量は有効な硬化作用と経済性を考慮して、未硬化の熱硬化性樹脂100重量部に対し10〜17重量部とすることが望ましい。熱硬化性樹脂の硬化を速める硬化促進剤を硬化剤と併用しても構わない。かかる硬化促進剤としては、例えば消石灰、イミダゾール、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0019】
本発明の成形材料には、上記のほか、無機質系充填剤、離型剤、着色剤など熱硬化性樹脂に汎用される副資材を適宜に添加することができる。前記の無機質系充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、硫酸バンド、ガラス繊維などが挙げられる。前記の離型剤は成形品を金型キャビティから容易に離脱し得るものであれば特に限定されず、例えばステアリン酸、カルバナロウ、シリコングリースなどが挙げられる。着色剤は成形材料全体に対する添加量が微少量であって成形性に大きな影響を及ぼさないことから、熱硬化性樹脂に汎用されるものであれば特に限定されず、汎用の無機顔料や有機顔料、染料を使用することができる。
【0020】
本発明の成形材料を構成する構成材料は、成形材料の取引時や取扱い時においては塊状または粉体状のいずれでも構わないが、成形時の均一な加熱、流動、放熱、硬化などを考慮して、成形時には粉体を用いることが望ましい。各構成材料の粉体を得る手段は特に限定されないが、例えば衝撃式粉砕機(奈良式粉砕機)、ボールミル、ターボミルなどが使用される。また、これらの構成材料を混合する手段も特に限定されないが、例えばリボンミキサーなどを用いて構成材料が1次混合される。1次混合を終えた成形材料は90〜130℃に保持した混練ロールやコーニーダーで2次混合されたのちに放冷されて塊状となる。成形操作にあたっては、塊状の成形材料がボールミルなどで所望の粒度に破砕されて使用される。
【0021】
上記のように調製された本発明の成形材料を加熱加圧により成形する手段は特に限定されないが、通常に使用される成形設備および成形技術をそのまま利用することができる。かかる加熱加圧による成形手段としては、例えば直圧成形、射出成形、またはトランスファー成形が挙げられる。
上記した成形手段による成形圧力は、直圧成形と射出成形とトランスファー成形とを問わず、14.7〜20.6MPaとするが、好ましくは14.3〜15.1MPa(146〜154kgf/cm2)である。成形圧力が14.7MPa未満であると成形が完全とならず成形品が形崩れするおそれがある。一方で、成形圧力が20.6MPaを上回っても成形品を得るうえで支障はないが、成形圧力が高すぎると設備コストの高騰や取扱いの煩雑さを招くおそれがある。
【0022】
また、上記した成形手段による成形温度は、直圧成形と射出成形とトランスファー成形とを問わず、145〜170℃とするが、好ましくは155〜165℃である。成形温度が145℃未満であると成形が完全でなくなるおそれがある。成形温度が170℃を上回ると、熱硬化性樹脂の熱劣化を生じて成形品の表面にいわゆる膨れを生じ外観美麗性を損なうので好ましくない。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
原料の竹材は例えば鳥取県産の孟宗竹を使用した。まず、金網の円形開口部(開目3mm)に被処理物を通して粉砕する解砕機(朋来鉄工所社製のVO−420型)を用いて、竹材を粉砕し1次竹粉体を得た。次に、金網の円形開口部(開目1mm)に被処理物を通して粉砕するアトマイザ(不二電気工業社製)を用いて、前記の1次竹粉体を粉砕し2次竹粉体を得た。尚、上記した解砕機およびアトマイザの替りに、パウダー機(奈良機械製作所製のME−5型)を用いて、竹材から直接2次竹粉体を得るようにしてもよい。前記のようにして得られた2次竹粉体を佐藤式篩い機(型式100D−1S)の83メッシュ篩を通過した竹粉を数種類得た。メッシュは網目の大きさを表す単位であり1インチ(約25.4mm)間に存在する目数で表されるが、ここで用いた83メッシュ篩はJIS−Z8801−1適用の金属製網ふるいであって網目の開目が180μmである。また、下記するように、メッシュ数の異なるメッシュ篩も同じくJIS適用のものを使用している。
【0024】
これらの竹粉は後述する実施例1〜63に用いられるが、これらの竹粉を、60メッシュ篩と83メッシュ篩と120メッシュ篩で分級したところ、表1に示すように、60メッシュ篩上に残ったものは0wt%、60メッシュ篩を通過して83メッシュ篩上に残ったものが3.3〜10.4wt%、83メッシュ篩を通過して120メッシュ篩上に残ったものが27.5〜34.3wt%、120メッシュ篩を通過したものが55.5〜69.0wt%であった。表1の右欄に各分級ごとの平均重量割合を示す。そして、竹粉の繊維長は長いもので1.3〜1.6mmであった。これらの竹粉に含まれる揮発分は4.0〜7.0wt%であった。一方で、未硬化のノボラック型フェノール樹脂はその塊状物をボールミルで粉砕し、83メッシュ篩を通過した粉体を用いた。
【0025】
【表1】

【0026】
上記のように調整したノボラック型フェノール樹脂の粉体と竹粉とを異なる配合率で配合した成形材料を9種類調製して1セットとした。各セットごとに熱硬化性樹脂に対し異なる配合率(wt%/PH:8.3wt%、10.4wt%、・・・)で硬化剤を配合したものを9セット用意した。すなわち、81個(9×9)の実施例を実施した。因みに、各実施例において充填材は竹粉のみである。
【0027】
「実施例1」
未硬化のノボラック型フェノール樹脂(表中にPH(N)で示す)の粉体(83メッシュ篩通過分)233g、竹粉(83メッシュ篩通過分)181g、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学社製:硬化剤)19.3g、ステアリン酸(ADEKA社製のアデカ脂肪酸SA−200:離型剤)5.1g、カーボン粉(COUBIN化学社製のRAVIN1255POWDER:染顔料)4.2gを、ヘンセルミキサー(三井三池製作所社製、製品型番:FM−200F)に投入しミキサー回転数70rpmで常温下15分間の1次混合を実施して成形材料の混合物を得、更に120℃に保った20インチ混練ロールで成形材料の混合物を混練して2次混合としたのちに放冷することにより、塊状の成形材料を得た。この成形材料をボールミルで粉砕し、更に83メッシュ篩を通過した粉体を後述の試験および成形操作に供した。
【0028】
得られた粉体から成形材料の成形性をディスクフロー試験およびモノホールフロー試験により調べた。
ディスクフロー試験(JIS−K−6915準拠)は、成形材料2gを秤量して37tプレス機の受圧面におき、温度160±2℃、圧力6.37MPa(ゲージ圧65kgf/cm2)で加熱・加圧したときに円板状に延伸した成形材料の複数箇所の直径(mm)を測定して平均直径を求め、この平均直径から流動特性すなわち成形性を評価するものである。このディスクフロー試験の試験結果は、100〜120mmの範囲が成形性の良い範囲とされる。
モノホールフロー試験は、成形材料30gを秤量して26tプレス機の所定の金型内におき、温度120±2℃、圧力7.55MPa(ゲージ圧77kgf/cm2)で加熱・加圧して金型のノズル(ノズル内径2mm)から成形材料をウドン状に押し出し、成形材料の出はじめから押し出し完了までの時間(秒)を測定し、この測定値を成形性の評価に利用するものである。このモノホールフロー試験の試験結果では、30〜140秒の範囲が成形性の良い範囲とされる。
【0029】
前記した成形材料の粉体を直圧成形機(丸七鉄工所社製の70tプレス成形機)の金型内に入れて金型の締め切り直後のガス抜きを1回実施し、目標金型温度160℃で8秒間(溶融時間)保持したのち、目標成形圧力14.71MPa(150kgf/cm2)を80秒間(硬化時間)かけてプレス成形した。これにより、直径126mm、厚さ3mmの円盤茶托形状の成形品が得られた。得られた成形品は、耐油性、耐酸性および耐アルカリ性に富み、光沢のある外観を呈し実用上十分な機械強度を有するものであった。
【0030】
尚、プレス時に生じる揮発分は、成形時の圧力・温度条件下で熱硬化性樹脂や竹粉から発生して蒸散する成分であり、成形性に影響を及ぼす。すなわち、揮発分を発生する構成材料が多く含まれていると、成形完了までに時間がかかりすぎるので注意を要する。反面、揮発分が少なすぎると、成形時に金型内での熱の伝わり方が悪くなって成形できなくなるおそれがある。
そこで、揮発分を恒温機(入江製作所社製の型式HPS−212)を用いて測定した。まず、試料5〜6gを容器に採り、容器ごと恒温機に入れて、180±2℃で10分間保持した。揮発分は次の式(1)により算出した。式中の処理前重量および処理後重量は容器重量も含んでいる。

揮発分(wt%)
=(処理前重量−処理後重量)×100/(処理前重量−容器重量)・・(1)

揮発分は、最終粉砕品(成形材料)の揮発分を4〜7wt%に維持するために、アトマイザによる粉砕前の工程で管理される。
【0031】
実施例2〜81は、フェノール樹脂と竹粉の配合割合、硬化剤の配合割合、竹粉の粒度、成形温度、または成形圧力のうちの一部が異なっていること以外、実施例1と同様に操作して成形材料および成形品を得た。この場合、実施例1〜81は、フェノール樹脂に対する硬化剤の配合率wt%/PHに応じて9例ずつ9セットに分けられる。例えば、前記の配合率として、8.3wt%/PHのものが実施例1〜9および実施例64〜72であり、10.4wt%/PHのものが実施例10〜18であり、11.7wt%/PHのものが実施例19〜27であり、12.5wt%/PHのものが実施例28〜36であり、13.8wt%/PHのものが実施例37〜45であり、14.6wt%/PHのものが実施例46〜54であり、16.7wt%/PHのものが実施例55〜63および実施例73〜81である。
【0032】
そして、実施例1〜63は竹粉として83メッシュ篩通過分を用いたものであり、実施例64〜81はアトマイザの開目1mmの金網により粉砕しただけで篩機を使用しなかった竹粉を用いたものである。実施例64〜81に用いた竹粉を、60メッシュ篩と83メッシュ篩と120メッシュ篩で分級したところ、表2にそれぞれの平均重量割合を示すように、60メッシュ篩上に残ったものが30.4wt%、60メッシュ篩を通過して83メッシュ篩上に残ったものが12.4wt%、83メッシュ篩を通過して120メッシュ篩上に残ったものが13.0wt%、120メッシュ篩を通過したものが44.2wt%であった。また、この竹粉に含まれる揮発分は5.5wt%であった。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例1〜81により得られた成形品について、配合割合、成形性、成形温度、成形圧力、および成形品の外観美麗性を、下記の表3〜11に示す。
尚、成形品の外観美麗性を示す表中の記号として、○は成形品の表面に、くもり、カスレ、ヒケ、ひび、歪み、光沢の斑など美麗に関して異常がないものを示す。×は○の項で示した異常のいずれかがあって商品として適さないものを示す。△は○ほど完璧ではないが、重大な欠陥でなくまずまずのものであることを示す。
【0035】
[比較例]
実施例32の竹粉に替えて木粉を用いたこと以外は、実施例32と同様に操作して成形材料および成形品を得る比較例を実施した。ここで使用した木粉は、スプルース(マツ科トウヒ属)とヘムロック(マツ科ツガ属)の木材チップを既述の解砕機およびアトマイザで粉砕した粉砕物を83メッシュ篩でふるい、この篩を通過したものを用いた。この木粉を、83メッシュ篩と120メッシュ篩で分級したところ、83メッシュ篩上に残ったものが3.5wt%、83メッシュ篩を通過し120メッシュ篩上に残ったものが37.8wt%、120メッシュ篩を通過したものが58.7wt%であった。また、この木粉に含まれる揮発分は5wt%であった。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
【表7】

【0041】
【表8】

【0042】
【表9】

【0043】
【表10】

【0044】
【表11】

【0045】
また、実施例32、実施例68、および比較例によりそれぞれ得られた成形品については、外観美麗性以外に、破壊強度試験、煮沸後外観試験、塗装試験、食品衛生試験、引張強さ、シャルピー衝撃強さ、成形収縮率、および比重の各試験を実施した。
上記の破壊強度試験は、得られた円盤茶托形状の成形品を天地逆向きにしてテーブル上に置き、その成形品に任意の高さから100gの分銅を落下させて成形品表面にクラックや貫通穴が生じたとき、そのときの落下高さを測定したものである。
煮沸後外観試験は、前記成形品を2分割し、そのうちの一方をサンプルとして沸騰水中で30分間煮沸して取り出し、残り一方と見くらべて外観の異常(変色、退色、艶落ちなど)を観察したものである。
塗装試験は、JIS−K5400に規定する碁盤目テープ試験法であり、前記成形品の表面に規定の塗膜を形成し、カッターナイフを用いて、塗膜を貫通する切り傷を1mm間隔で碁盤目状に形成し、この碁盤目の上に粘着テープを貼り、粘着テープを剥がした後の塗膜の付着状態を目視によって観察したものである。JIS評価点数8以上を合格(表中の○印)とした。
上記した食品衛生試験は、プラスチック製食器に係る衛生性、機械的強度、外観等につきJIS−S2029試験法に従って前記成形品を試験したものである。
上記した引張強さ、シャルピー衝撃強さ、成形収縮率、および比重の各試験法は、JIS試験法(JIS−K6911)に従って、またはJIS試験法(JIS−K6911)に準拠して行なった。これらの試験結果を下記の表12に示す。
【0046】
【表12】

【0047】
以上に述べた実施例によれば、一定以上の機械的強度を持つ成形品が得られる成形材料を提供することができた。すなわち、実施例1〜81(表3〜11)で調整された成形材料からは、表12に示した破壊強度試験、引張強さおよびシャルピー衝撃強さの試験結果から明らかなように、木粉を用いて得られた成形品(比較例)と比べると、機械的強度がはるかに高い成形品を得ることができた。そのなかでも、83メッシュ篩通過の竹粉を用いたもの(例えば実施例32)よりも平均粒径の粗い竹粉を用いたもの(例えば実施例68)の方が、機械的強度は高かった。また、表12に示した実施例32、実施例68および比較例の成形品に関して、煮沸後外観試験では、いずれも、程度の大きな変色および艶落ちがなく商品として適合品であった。また、塗装試験では、碁盤目の縁が多少めくれているものもあったが碁盤目片が剥がれ落ちることはなく、いずれも、JIS評価点数で8点または10点であった。また、食品衛生試験では、いずれも、JIS−S2029に適合しており食器として使用可能である。
【0048】
そして、未硬化フェノール樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の配合割合であって且つ83メッシュ篩通過分である竹粉を含む成形材料を使用したものでは、外観が非常に美しい成形品を確実に得ることができた。尚、83メッシュ篩通過の竹粉の繊維長は長いもので1.6mmであった。このような繊維長が1.6mm以下の竹繊維からなる竹粉を含む成形材料(実施例1〜63)で成形したことも、外観美麗性の高い成形品が得られた一因になっていると考える。このことは、83メッシュ篩を通過したものよりも平均粒径の粗い竹粉を用いた成形材料(実施例65〜71、74〜80、表10,11)から得られた成形品の外観美麗性がいずれも△評価であって、○評価のものが皆無であったことからも明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る成形材料から得られた成形品は様々な用途に適用される。数例を挙げると、日用雑貨、台所用具、食器、浴室用具のような一般家庭用品、エアコン吹出口ハウジング、テレビケーシング、ヘヤードライヤのケーシングのような家電部品、ダッシュボードパネル、カーエアコン吹出口ハウジングのような自動車部品などである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化の熱硬化性樹脂と、所定粒径の竹粉とを含んでなることを特徴とする成形材料。
【請求項2】
竹粉が83メッシュ篩通過分から成る請求項1に記載の成形材料。
【請求項3】
熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の竹粉を含んでいる請求項1または請求項2に記載の成形材料。
【請求項4】
未硬化の熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂100重量部に対し100重量部以上114重量部以下の配合割合であり且つ83メッシュ篩通過分である竹粉とを含んで成る成形材料を、加熱加圧により成形して成形品を得ることを特徴とする成形品の製造方法。

【公開番号】特開2009−263519(P2009−263519A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115436(P2008−115436)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(508128107)
【Fターム(参考)】