説明

成形樹脂塊の圧縮分割機

【課題】成形樹脂塊の圧縮と分割を同時処理することで、熱溶融した成形樹脂塊を迅速かつ容易に扁平にすると共に、複数に分割して小さくすることができ、その後の取り扱いを容易に行えるようにして、処理後の成形樹脂塊を小型の粉砕機でも処理できる。
【解決手段】成形樹脂塊mを載せたプレートpを入れる筺体4の開口部に開閉扉5を設けた装置本体1と、装置本体1内で、往復動機構3により昇降し、プレートp上の成形樹脂塊mを押し潰すプレス板2と、プレス板2の下面に取り付けられた、成形樹脂塊mを分割する分割刃16と、圧縮の際にプレス板2に張り付いた成形樹脂塊mを押し落とす落とし具17と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製品の成形時に生じる合成樹脂材、又は廃棄された合成樹脂製品について再利用する際に、合成樹脂を熱処理により塊にした成形樹脂塊を圧縮し、分割する成形樹脂塊の圧縮分割機に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製品を製造する際に生じる合成樹脂材、あるいは廃棄されたペットボトル、使い捨てのプラスチック容器、プラスチック製品等の廃プラスチック類は再利用される。これらの合成樹脂を再利用する際に、図13の写真に示すような合成樹脂を熱処理により塊にし、この成形樹脂塊は、その後粉砕機で粉砕して再利用しやすくする。
【0003】
そこで、合成樹脂を再利用するための処理技術が多数提案されている。例えば、特許文献1の特開2005−74899号公報「廃プラスチック処理装置」には、上面に供給された溶融状態の廃プラスチックを冷却する冷却テーブルと、前記冷却テーブルと対向して配置され、前記冷却テーブルとの間に搬送された前記廃プラスチックを前記冷却テーブルと協働して成形する成形ロールと、前記成形ロールよりも前記搬送方向下流側に配置され、前記成形後の廃プラスチックを切断するカッタと、前記カッタの近傍に配置され、前記成形後の廃プラスチック及び前記カッタの刃面に送風して冷却する冷却送風機と、を備えた廃プラスチック処理装置が提案されている。
【0004】
また、特開平9−300353号公報「廃プラスチック再生装置」には、廃プラスチック材を破砕する破砕手段と、破砕した廃プラスチック材を洗浄する洗浄手段と、洗浄した廃プラスチック材を圧縮する圧縮手段と、圧縮した状態で廃プラスチック材を加熱溶融する加熱手段と、を備えてなる廃プラスチック再生装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−74899号公報
【特許文献2】特開平9−300353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成樹脂を熱処理により溶融して塊にした成形樹脂塊は、粉砕機で粉砕する必要がある。これは合成樹脂の原材料の貯蔵と運搬などを容易に取り扱えるようにするためである。そこで、一旦成形樹脂塊にしたものを粉砕機で粉砕するが、ある程度の厚みを有する成形樹脂塊にしたものは、大型の粉砕機では処理できるが、小型の粉砕機では粉砕できないとい問題を有していた。
【0007】
特許文献1の廃プラスチック処理装置は、廃プラスチックを容易に処理することができるが、冷却テーブル、成形ロール、カッタ、このカッタの刃面を冷却する冷却送風機とから成り装置全体が大掛かりなものである。小規模な処理施設で生じる少量の合成樹脂材の処理に適さないものである。
また、特許文献2の廃プラスチック再生装置は、合成樹脂を熱処理してある程度の厚みを有する成形樹脂塊については容易に破砕できないという問題を有していた。
【0008】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、成形樹脂塊の圧縮と分割を同時処理することで、熱溶融した成形樹脂塊を迅速かつ容易に扁平にすると共に、複数に分割して小さくすることができ、その後の取り扱いを容易に行えるようにして、例えば処理後の成形樹脂塊を小型の粉砕機でも処理できる成形樹脂塊の圧縮分割機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、合成樹脂材を熱処理により塊にした成形樹脂塊(m)を圧縮し、分割する成形樹脂塊の圧縮分割機であって、成形樹脂塊(m)を載せたプレート(p)を入れる筺体(4)の開口部に開閉扉(5)を設けた装置本体(1)と、前記装置本体(1)内で、往復動機構(3)により昇降し、前記プレート(p)上の成形樹脂塊(m)を押し潰すプレス板(2)と、前記プレス板(2)の下面に取り付けられた、成形樹脂塊(m)を分割する分割刃(16)と、前記プレス板(2)に開けた貫通孔(18)に、上下端に抜け止め(19,20)を有する軸(21)を上下動するように取り付け、該プレス板(2)が前記筺体(4)の点板(6)に近づいた際に、上側抜け止め(19)が該点板(6)に当たり、下側抜け止め(20)が該プレス板(2)から下方へ突出して、圧縮の際に該プレス板(2)に張り付いた成形樹脂塊(m)を押し落とす落とし具(17)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
例えば、前記分割刃(16)は、前記プレス板(2)の下面に十字形状に設け、かつそれぞれの分割刃(16)の間に落とし具(17)を配置したものである。
前記落とし具(17)を構成する軸(21)に常時上方へ付勢する弾性部材(31)を介装することが好ましい。
前記複数の落とし具(17)を構成する軸(21)をそれぞれ異なる長さにすることができる。
前記往復動機構(3)は、シリンダー・ピストン(12)と、エアコンプレッサーの圧縮空気の吐出向きを切り替える切替ハンドル(13)とから成るものである。
前記往復動機構(3)に、前記筺体(4)の開閉扉(5)が閉じているときのみに前記プレス板(2)を上下動させる安全装置を具備したものである。
【0011】
前記筺体(4)の周囲は金網(41)で被覆することができる。
前記装置本体(1)の下部に、交代用のプレート(p)を置くプレート台(10)を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、熱処理により可塑性がある状態の成形樹脂塊(m)を装置本体(1)内のプレート(p)上に載せ、この成形樹脂塊(m)に上方からプレス板(2)を往復動機構(3)により下降させ、このプレス板(2)で成形樹脂塊(m)を扁平に押し潰す同時に、分割刃(16)で複数の成形樹脂塊(m)に分割する。このときプレス板(2)に扁平かつ分割された成形樹脂塊(m)が張り付くことがあり、上昇するプレス板(2)と共に上昇するおそれがある。このプレス板(2)が筺体(4)の点板(6)に近づいた際に、落とし具(17)の上側抜け止め(19)がこの点板(6)に当たり、落とし具(17)の下側抜け止め(20)がプレス板(2)下面から突出して処理後の成形樹脂塊(m)を押し落とす。成形樹脂塊(m)はプレート(p)上に落下し、その後装置本体(1)から取り出し冷却することで、成形樹脂塊(m)を薄く小さくできる。そこで、小型の粉砕機でも粉砕処理が可能となる。
粉砕処理したチップ状、フレーク状にした合成樹脂は、その運搬、貯蔵などが容易に取り扱えるようになる。大がかりな設備のない処理施設でも、貴重な合成樹脂原料をチップ状、フレーク状に粉砕することにより、付加価値のある材料にすることができる。
【0013】
十字形状の分割刃(16)を設けたプレス板(2)では、この分割刃(16)により成形樹脂塊(m)を4個の扁平の成形樹脂塊(m)にすることができる。
常時上方へ付勢するように弾性部材(31)を介装した落とし具(17)は、作業に際してプレス板(2)の下面に下側抜け止め(20)が飛び出していないので、成形樹脂塊(m)をより扁平に押し潰すことができる。また、作業工程に際して成形樹脂塊(m)を出し入れするときに、これらの落とし具(17)が邪魔にならない。
【0014】
シリンダー・ピストン(12)と切替ハンドル(13)とから成る往復動機構(3)は、エアコンプレッサーの圧縮空気を利用することができ、コンプレッサーを設置している工場での操業に適している。
安全装置を具備したものでは、往復動機構(3)が筺体(4)の開閉扉(5)が閉じているときのみにプレス板(2)は昇降しないので、成形樹脂塊(m)を載せたプレート(p)を装置本体(1)内に入れる際、又は装置本体(1)内のプレート(p)に成形樹脂塊(m)を載せる際にはプレス板(2)が不用意に下降せず、作業中の事故を防止できる。また、圧縮後の成形樹脂塊(m)を取り出す際にもプレス板(2)が不用意に昇降しないので安全に取り出し作業ができる。
【0015】
筺体(4)の周囲を金網(41)で形成することにより、内部への通風が可能になり作業の安全性を低下させることなく、圧縮後の成形樹脂塊(m)を容易に冷却することができ、迅速に処理できる。また、軽量化にもなり、コストの軽減にもなる。
前記装置本体(1)の下部にプレート台(10)を設けたものは、交代用のプレート(p)を近くから取り出せるのでプレート(p)を容易に交換でき、円滑に連続処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の成形樹脂塊の圧縮分割機を示す側面図である。
【図2】実施例1の成形樹脂塊の圧縮分割機を示す正面図であり、(a)は開閉扉を閉めている状態、(b)は開閉扉を開けている状態である。
【図3】実施例1のプレス板を示す拡大底面図である。
【図4】実施例1のプレス板に取り付けた分割刃を示す部分拡大正面図である。
【図5】実施例1のプレス板の変形例を示す拡大底面図である。
【図6】実施例1のプレス板に備えた落とし具を示す拡大正断面図である。
【図7】落とし具の動作状態を示す説明図であり、(a)はプレス板に合成樹脂塊が張り付いた状態、(b)はプレス板を上昇させている状態、(c)は落とし具で合成樹脂塊を押し落とす状態である。
【図8】実施例2の弾性部材を介装した落とし具を示す正面図である。
【図9】圧縮、分割する工程を示す概略説明図である。(a)はプレス板で合成樹脂塊を押し潰す状態、(b)は圧縮直後の合成樹脂塊の状態、(c)は押し潰した合成樹脂塊をばらばらにした状態、(d)は粉砕機で粉砕処理する状態である。
【図10】扁平かつ分割された合成樹脂塊の写真を示す。
【図11】装置本体の変形例を示す側面図である。
【図12】実施例3のプレス板に備えた落とし具を示す正面図である。
【図13】合成樹脂を熱処理により塊にした成形樹脂塊の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の成形樹脂塊の圧縮分割機は、合成樹脂材を熱処理により塊にした成形樹脂塊を圧縮し、分割して小さくし、その後粉砕機での粉砕処理を容易にする装置である。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の成形樹脂塊の圧縮分割機を示す側面図である。図2は実施例1の成形樹脂塊の圧縮分割機を示す正面図であり、(a)は開閉扉を閉めている状態、(b)は開閉扉を開けている状態である
実施例1の成形樹脂塊の圧縮分割機は、成形樹脂塊mを載せるプレートpを出し入れする装置本体1と、この装置本体1の内部において上下動するプレス板2と、このプレス板2を上下動させる往復動機構3を装置本体1の上部に備えた装置である。装置本体1は、略直方体形状を有する筺体4であり、3側面に壁面を、1側面に開閉扉5を設け、更に天板6と底板7とから成る。なお、略直方体形状の筺体4は一例であり、略円筒状、略六角筒状など種々の形態にすることが可能である。
【0019】
開閉扉5は、筺体4の開口部を閉塞し、稼働中のプレス板2に人が触れないようにして安全性を高めるものである。この開閉扉5には、図2(a)に示すように、筺体4の内部を視認できるように窓8を設ける。
【0020】
図示例の装置本体1には、開閉扉5と対峙する壁面側に、本発明の圧縮分割機を運搬する際に使用する手押しアーム9を備えている。本発明の圧縮分割機は、小型軽量のため容易に移動することができるので、その運搬の際にこの手押しアーム9を利用する。この手押しアーム9は、装置本体1に固定式又は着脱自在に取り付けたものである。
【0021】
装置本体1の底板7の下部に、プレートpを置くプレート台10を設けている。このプレート台10には、次に使用するプレートpを置く場所である。連続作業するために複数枚のプレートpを置けるようになっている。また、圧縮分割作業の終了後は使用していないプレートpの保管場所になる。
【0022】
装置本体1の底板7の下方、即ちプレート台10の下部に複数のキャスター11を取り付ける。これらのキャスター11により本発明の圧縮分割機は容易に移動運搬することができる。これらのキャスター11には不用意な回動を阻止するストッパー機能を備えている。
【0023】
装置本体1の上部には、プレス板2を上下動させる往復動機構3を備えている。この往復動機構3は、シリンダー・ピストン(ロッド)12と、エアコンプレッサー(図示していない)の圧縮空気の吐出向きを切り替える切替ハンドル13とから成る。ピストンのロッド12は、筺体4内に下方へ突出し、このロッド12の下端にはプレス板2が取り付けられ、プレス板2は筺体4内で上下動する。
【0024】
往復動機構3は、例えば工場に備えられているコンプレッサーのチューブを切替ハンドル13に接続して使用する。この切替ハンドル13を切替操作することでシリンダー・ピストン12への圧縮空気の吐出方向を切り替え、ピストン12の動作方向を切り替えてプレス板2を上下動させる。なお、コンプレッサーの設備がないときは、例えばモータの駆動によりプレス板2を上下動させることも可能である(図示していない)。プレス板2を上下動させる駆動方式はコンプレッサー、モータなどに限定されない。
【0025】
図3はプレス板を示す拡大底面図である。図4はプレス板に取り付けた分割刃を示す部分拡大正面図である。
プレス板2は、装置本体1の筺体4内で、往復動機構3により上下動し、プレートp上の成形樹脂塊mを押し潰す四角形状の板材である。図3に示すように、プレス板2の周囲にガイド部材14を3辺に備えている。このガイド部材14は筺体4内に上下方向に数本設けたレール15にそれぞれ係合させ、プレス板2を円滑に上下動させる機能を有する(図2(b)参照)。なお、開閉扉5側には構造上レール15を設けることができない。これらのガイド部材14とレール15は、圧縮しているプレス板2が傾斜した状態にならないようにするものである。成形樹脂塊mが変形した不定形の形状を有するため、プレス板2とピストン・ロッド12との接続部に無理な荷重が掛かかることがあるからである。
【0026】
プレス板2には、その下面に4本の分割刃16を十字形状に設けている。この分割刃16により成形樹脂塊mを扁平に押し潰すと同時に複数に分割することができる。分割刃16は、図4に示すように横断面形状がL字形状を有し、下方へ向いた凸条が刃としての機能を奏する。この分割刃16はプレス板2にねじ止めにより交換自在に取り付ける。図示例では、4本の分割刃16を十字形状に配置した例を示しているが、この4本の分割刃16は十字形状の配置に限定されない。例えば、6本の分割刃16を放射状に配置して成形樹脂塊mを6片に分割することも可能であり、分割刃16の本数は自由に選択することができる。
【0027】
図5はプレス板の変形例を示す拡大底面図である。
プレス板2)は、図5に示すように八角形状の板材にすることもできる。このプレス板2の形状は上述した四角形状の板材に限定されず、潰されて面積が広くなる成形樹脂塊mが食み出さない程度の大きさであればよい。そこで、プレス板2の形状は四角形、八角形以外に円形、六角形など種々の形状にすることが可能である。
【0028】
図6はプレス板に備えた落とし具を示す拡大正断面図である。図7は落とし具の動作状態を示す説明図であり、(a)はプレス板に合成樹脂塊が張り付いた状態、(b)はプレス板を上昇させている状態、(c)は落とし具で合成樹脂塊を押し落とす状態である。
プレス板2には落とし具17が設けられている。この落とし具17は、プレス板2に開けた貫通孔18に、上下端に抜け止め19,20を有する軸21を上下動するように取り付けた部材である。上側抜け止め19は文字通りナット等を用い、貫通孔18から抜けないようにして落とし具17の落下を防止する部材である。しかし、下側抜け止め20は、成形樹脂塊mに直接接触し、更に押圧されるため、この成形樹脂塊m内に刺さらないように、円形状を有し、かつ薄くしてある。なお、円形状に限定されず、楕円形、六角形状にすることも可能である。
【0029】
次に、落とし具17の動作状態を説明する。図7(a)に示すように、成形樹脂塊mを押し潰した成形樹脂塊mがプレス板2と下側抜け止め20に張り付く。この状態でプレス板2を上昇させると、成形樹脂塊mが張り付いたまま上昇する。なお、プレートpも同時に上昇することもある。
そのままプレス板2を上昇させると、図7(b)に示すように、落とし具17の上側抜け止め19がプレス板2が筺体4の点板6に近づいた際に、上側抜け止め19が点板6に当たる。
【0030】
更に、プレス板2を上昇させると、図7(c)に示すように、上側抜け止め19が点板6に当たり、それ以上は上昇できない。その状態ではプレス板2のみが上昇し、相対的に下側抜け止め20がプレス板2から下方へ突出する状態になる。そこで、圧縮の際に外プレス板2に張り付いた成形樹脂塊mを押し落とす。このときは分割された成形樹脂塊mそれぞれを押し落とす。
【実施例2】
【0031】
図8は実施例2の弾性部材を介装した落とし具を示す正面図である。
実施例2の落とし具17は、これを常時上方へ付勢するように上側抜け止め19とプレス板2との間の軸21にコイルばねのような弾性部材31を介装した。実施例2の落とし具17では、軸21にボルトを使用し、上側抜け止め19にナットを用いてその締め付け位置を変えて弾性部材31の強度を調節するようになっている。
【0032】
プレス板2の主目的は、成形樹脂塊mを扁平に押し潰すことである。プレス板2が成形樹脂塊mと接する面は平坦な方が分割刃16の切断効果も高い。そこで、成形樹脂塊mを押し潰すまでは、落とし具17の下側抜け止め20は突出しないほうが好ましい。そこで、軸21を常時上方へ付勢するようにして下側抜け止め20がプレス板2から下方へ突出しないようにした。
なお、この実施例2の落とし具17でも、成形樹脂塊mを圧縮した後は、上述したようにプレス板2を上昇させ、上側抜け止め19を点板6に当て、弾性部材31の弾性力に抗して下側抜け止め20をプレス板2から下方へ突出させ、分割された成形樹脂塊mを押し落とすことはできる。
また、実施例2の落とし具17では、プレス板2を上げているときに、落とし具17の下側抜け止め20が突出しないので、処理前は勿論のこと処理後の成形樹脂塊mの出し入れの際にこれらの落とし具17が邪魔にならない。
【0033】
図9は圧縮、分割する工程を示す概略説明図である。(a)はプレス板で合成樹脂塊を押し潰す状態、(b)は圧縮直後の合成樹脂塊の状態、(c)は押し潰した合成樹脂塊をばらばらにした状態、(d)は粉砕機で粉砕処理する状態である。図10は扁平かつ分割された合成樹脂塊の写真を示す。
図9(a)に示すように、熱処理により可塑性がある状態の成形樹脂塊mをプレートp上に載せ、この成形樹脂塊mに上方からプレス板2を往復動機構3により下降させ、このプレス板2で成形樹脂塊mを扁平に押し潰す同時に、分割刃16で複数の成形樹脂塊mにする。このときプレス板2に扁平かつ分割された成形樹脂塊mが張り付き、上昇するプレス板2と共に上昇するおそれがある。このプレス板2が筺体4の点板6に近づいた際に、落とし具17の上側抜け止め19が点板6に当たり、落とし具17の下側抜け止め20がプレス板2下面から突出して処理後の成形樹脂塊mを押し落とす。
【0034】
次に、図9(b)、(c)に示すように、成形樹脂塊mはプレートp上に落下し、その後装置本体1から取り出し冷却することで、小型の粉砕機でも粉砕処理が可能となる。実際の成形樹脂塊mは図10の写真に示すような形状になる。
最後に、図9(d)に示すように、小型の粉砕機で粉砕処理し、チップ状、フレーク状にする。運搬、貯蔵、再利用などが容易に取り扱えるようになる。
【0035】
往復動機構3には、筺体4の開閉扉5が閉じているときのみにプレス板2を上下動させる「安全装置」を具備することができる(図示していない)。例えば、開閉扉5が閉じているときのみ、コンプレッサーの開閉弁が「開」になり、開閉扉5が開いているときは、コンプレッサーの開閉弁が「閉」となり、往復動機構3を可動させないような構成がある。この安全装置により、往復動機構3が筺体4の開閉扉5が閉じているときのみプレス板2は昇降するので、成形樹脂塊mを載せたプレートpを装置本体1内に入れる際に、又は装置本体1内のプレートpに成形樹脂塊mを載せる際に、即ちに開閉扉5が開いているときはプレス板2が不用意に下降せず作業中の事故を防止できる。また、圧縮後の成形樹脂塊mを取り出す際にもプレス板2が昇降しないので安全に取り出し作業ができる。
【0036】
また、往復動機構3が電気による駆動モータの場合は、開閉扉5が閉じているときのみ、この駆動モータに通電してプレス板2を上下動させるような構成がある(図示していない)。その他、この安全装置は、開閉扉5が閉じているときのみにプレス板2を上下動させる構成であれば種々の構成を採用することができる。
【0037】
図11は装置本体の変形例を示す側面図である。
この変形例は、圧縮分割機の装置本体1の筺体4の周囲を金網41で被覆したものである。筺体4は、金属板のようなもので常に形成する必要はない。筺体4の周囲を金網41で形成することにより、内部への通風が可能になり、圧縮後の成形樹脂塊mを容易に冷却することができ、迅速に処理できる。また、作業の安全性を低下させることなく、軽量化にもなり、コストの軽減にもなる。
【実施例3】
【0038】
図12は実施例3のプレス板に備えた落とし具を示す正面図である。なお図示例では、説明の都合上奥側の落とし具の記載を省略している。
実施例3の落とし具17は、複数本の軸21の長さを同一の長さではなく、異なる長さにした。分割刃16で成形樹脂塊mに切り込みを入れても、完全に分離しない場合がある。このときは落とし具17でプレス板2から剥離しても、そのまま分離しないまま落下することがあり、そのまま冷却すると、手作業で割りづらいときがある。そこで、押し潰し、かつ分割刃16で切り込みを入れた直後は、まだ成形樹脂塊mは柔らかいので、段階的に落とし具17で押し出していけば、この切り込みを分離することができる。
【0039】
図示例では、例えば4本の落とし具17の軸21の長さの差dを2種類にし、図示するように、隣接する落とし具17の軸21の長さを異ならしめた。隣接する落とし具17の軸21の長さが異なればよく、図示例以外に全ての軸21の長さを異ならしめたものでもよい。なお、落とし具17の軸21の長さを同じにして、この軸21(上側抜け止め19)に向けた突起の突出長を変えたものを点板6に数か所設ける構成でもよい。
【0040】
なお、本発明は、成形樹脂塊mの圧縮と分割を同時処理することで、熱溶融した成形樹脂塊mを迅速かつ容易に扁平にすると共に、複数に分割して小さくすることができ、その後の取り扱いを容易に行えるようにして、処理後の成形樹脂塊mを小型の粉砕機でも処理できる構成であれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の成形樹脂塊の圧縮分割機は、プラスチック製品の製造中に出る樹脂材を再処理する際に、又はプラスチック容器、プラスチック製品を再資源化する際に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 装置本体
2 プレス板
3 往復動機構
4 筺体
5 開閉扉
6 点板
10 プレート台
12 シリンダー・ピストン(ロッド)
13 切替ハンドル
16 分割刃
17 落とし具
18 貫通孔
19 上側抜け止め
20 下側抜け止め
21 軸
31 弾性部材
41 金網
m 成形樹脂塊
p プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材を熱処理により塊にした成形樹脂塊(m)を圧縮し、分割する成形樹脂塊の圧縮分割機であって、
成形樹脂塊(m)を載せたプレート(p)を入れる筺体(4)の開口部に開閉扉(5)を設けた装置本体(1)と、
前記装置本体(1)内で、往復動機構(3)により昇降し、前記プレート(p)上の成形樹脂塊(m)を押し潰すプレス板(2)と、
前記プレス板(2)の下面に取り付けられた、成形樹脂塊(m)を分割する分割刃(16)と、
前記プレス板(2)に開けた貫通孔(18)に、上下端に抜け止め(19,20)を有する軸(21)を上下動するように取り付け、該プレス板(2)が前記筺体(4)の点板(6)に近づいた際に、上側抜け止め(19)が該点板(6)に当たり、下側抜け止め(20)が該プレス板(2)から下方へ突出して、圧縮の際に該プレス板(2)に張り付いた成形樹脂塊(m)を押し落とす落とし具(17)と、を備えた、ことを特徴とする成形樹脂塊の圧縮分割機。
【請求項2】
前記分割刃(16)は、前記プレス板(2)の下面に十字形状に設け、かつそれぞれの分割刃(16)の間に落とし具(17)を配置した、ことを特徴とする請求項1の成形樹脂塊の圧縮分割機。
【請求項3】
前記落とし具(17)を構成する軸(21)に常時上方へ付勢する弾性部材(31)を介装した、ことを特徴とする請求項1の成形樹脂塊の圧縮分割機。
【請求項4】
前記複数の落とし具(17)を構成する軸(21)をそれぞれ異なる長さにした、ことを特徴とする請求項1の成形樹脂塊の圧縮分割機。
【請求項5】
前記往復動機構(3)は、シリンダー・ピストン(12)と、エアコンプレッサーの圧縮空気の吐出向きを切り替える切替ハンドル(13)とから成る、ことを特徴とする請求項1の成形樹脂塊の圧縮分割機。
【請求項6】
前記往復動機構(3)に、前記筺体(4)の開閉扉(5)が閉じているときのみに前記プレス板(2)を上下動させる安全装置を具備した、ことを特徴とする請求項1又は5の成形樹脂塊の圧縮分割機。
【請求項7】
前記筺体(4)の周囲は金網(41)で被覆した、ことを特徴とする請求項1の成形樹脂塊の圧縮分割機。
【請求項8】
前記装置本体(1)の下部に、交代用のプレート(p)を置くプレート台(10)を設けた、ことを特徴とする請求項1の成形樹脂塊の圧縮分割機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−86345(P2013−86345A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228550(P2011−228550)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(394008271)日本シーム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】