説明

成形機の型締装置

【課題】ハーフナットとハーフナット係合溝との設定位置が厳密に合致していない場合にも、ロック手段の破壊を防止でき、ハーフナットとハーフナット係合溝との係合を確実に行うことができる型締装置を提供する。
【解決手段】第1及び第2のハーフナット277,278の全長Lを、可動ダイプレート24のロック手段取付面と、支持部材271を構成する前板271cの内面との間隔Dよりも1mm程度小さく形成する。具体的には、ロック手段27を構成する保持板273、ねじ軸274、右ねじ用ナット体275、左ねじ用ナット体276、第1及び第2のハーフナット277,278を、摺動手段272を介して支持部材271に取り付け、第1及び第2のハーフナット277,278を、可動ダイプレート24のロック手段取付面及び支持部材271の前板271cとの間に設けられたクリアランス内で自由に変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機に備えられる型締装置に係り、特に、所謂2プラテン方式の型締装置に備えられるタイバーロック手段の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
2プラテン方式の型締装置は、固定金型を取り付けた固定ダイプレートと、可動金型を取り付けた可動ダイプレートと、これら固定ダイプレートと可動ダイプレートとの間に橋架されたタイバーと、固定ダイプレートに対して可動ダイプレートを型開閉方向に駆動する型開閉手段と、型閉位置において可動ダイプレートとタイバーとを一体に連結するロック手段と、タイバーを介して固定金型と固定金型との間に所要の型締力を付与する型締手段とから主に構成されており、3プラテン方式の型締装置に備えられるヘッドストックに相当する部材を省略できるので、型締装置を備えた成形機の機械重量の軽減と据付面積の減少とを図ることができる。
【0003】
ロック手段は、可動ダイプレートに開閉可能に取り付けられたハーフナットを有しており、タイバーに形成されたハーフナット係合溝にハーフナットとを係合することによって可動ダイプレートとタイバーとを一体に連結すると共に、ハーフナット係合溝とハーフナットとの係合を解除することによってタイバー(固定ダイプレート)に対する可動ダイプレートの相対的な移動を可能にする。
【0004】
従来、ロック手段の駆動源としては、油圧装置を利用したもの(例えば、特許文献1参照。)及びエアシリンダ等の圧力シリンダを用いたもの(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−258450号公報
【特許文献2】特開昭60−212320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ロック手段の駆動源として油圧装置を利用したものは、油圧タンク、油圧ポンプ及び油圧配管等の設備を成形工場内に備えなくてはならないので、設備が大型化及び複雑化し、トータルの設備コストが高価になるという問題がある。また、この種のロック手段は、センサ類を用いてハーフナットの動作位置を検出しなければ、ハーフナットがタイバーのロック位置又はロック解除位置に至ったことを判定できないので、センサ類が必須の構成要素であり、この点からも設備コストが高価になる。さらに、この種のロック手段は、油圧装置からの油漏れにより、成形工場内が汚れやすいという問題もある。
【0007】
一方、ロック手段の駆動源としてエアシリンダ等の圧力シリンダを用いたものは、油圧装置を利用したものに比べて設備を簡略化することができ、かつ油漏れによる成形工場内が汚れの虞もないが、油圧装置を利用したものと同様に、ハーフナットがタイバーのロック位置又はロック解除位置に至ったことを検出するためのセンサ類を必要とするため、この点で型締装置ひいては成形機の低コスト化を図ることが難しいという問題がある。
【0008】
このような問題は、ロック手段の駆動源として電動サーボモータを用い、この電動サーボモータの駆動力をボールねじ機構を介してハーフナットに伝達する、という構成をとることにより解決することができる。しかしながら、かかる構成によると、ハーフナットがボールねじ機構に緩みなく連結されるので、ロック手段の駆動源としてエアシリンダ等の圧力シリンダを用いた場合とは異なり、ハーフナットの動きに遊びを与えることが難しく、ハーフナットの設定位置とタイバーに形成されたハーフナット係合溝の設定位置とが厳密に合致していないと、これら各部材の係合を円滑に行うことができず、ロック手段に過大な力が作用して、ロック手段が破壊されるという不都合を生じることが予想される。
【0009】
本発明は、かかる不都合を回避するためになされたものであり、その目的は、仮にハーフナットとタイバーに形成されたハーフナット係合溝との設定位置が厳密に合致していない場合にも、ロック手段の破壊を防止できると共に、ハーフナットとハーフナット係合溝との係合を確実に行うことができる型締装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、固定金型を取り付けた固定ダイプレートと、可動金型を取り付けた可動ダイプレートと、前記固定ダイプレートと前記可動ダイプレートとの間に橋架されたタイバーと、前記固定ダイプレートに対して前記可動ダイプレートを型開閉方向に駆動する型開閉手段と、型閉位置において前記可動ダイプレートと前記タイバーとを一体に連結するロック手段と、前記タイバーを介して、前記固定金型と前記固定金型との間に所要の型締力を付与する型締手段とを備えた成形機の型締装置において、前記ロック手段は、前記タイバーを介して相対向に配置された2つのハーフナットと、これら2つのハーフナットの駆動源であるロック用電動サーボモータと、該ロック用電動サーボモータの駆動力を前記2つのハーフナットに伝達して、前記2つのハーフナットを前記タイバーに接近する方向又は前記タイバーから離隔する方向に相対的に駆動するボールねじ機構とからなり、前記2つのハーフナットは、前記タイバーの軸線方向に若干量移動できるようにして、前記可動ダイプレートに取り付けるという構成にした。
【0011】
ハーフナットの駆動源として電動サーボモータを用いると、油圧装置を用いる場合とは異なり、油圧源となる各種の機器や配管を省略できるので、成形工場の設備コストを低減することができる。また、油圧装置からの油漏れを起こすということがあり得ないので、成形工場内を清潔に保つことができる。さらに、電動サーボモータに敷設されたエンコーダからの出力信号により、ハーフナットの動作位置を知ることができるので、ハーフナットの動作位置を検出するためのセンサ類が不要で、この点からも設備の簡略化と低コスト化とを図ることができる。加えて、ハーフナットをタイバーの軸線方向に若干量移動できるようにすると、仮にハーフナットの設定位置とタイバーに形成されたハーフナット係合溝の設定位置とが厳密に合致していない場合にも、ロック用電動サーボモータの駆動力を受けたときに、ハーフナットを自動的にハーフナット係合溝と合致する方向に変位させることができるので、ハーフナットとハーフナット係合溝との係合を確実に行うことができると共に、ロック手段に過大な力が作用することを防止できるので、ロック手段の破壊を防止することができる。
【0012】
また、本発明は、前記構成の成形機の型締装置において、前記固定ダイプレートと前記可動ダイプレートとの間に複数本のタイバーを橋架し、これら複数本のタイバーのそれぞれに対応して、前記ロック手段を配置するという構成にした。
【0013】
かかる構成によると、複数のロック手段で各タイバーをロックするので、タイバーのロック力を高めることができると共に、固定金型及び可動金型に型締力を均一に作用することができ、ばり等のない高品質の成形品を成型することができる。
【0014】
また、本発明は、前記構成の成形機の型締装置において、前記ボールねじ機構は、略中央部を境として一方側に右ねじが形成されると共に他方側に左ねじが形成され、前記ロック用電動サーボモータによって回転駆動されるねじ軸と、前記2つのハーフナットの一方と一体に形成され、前記右ねじに螺合される右ねじ用ナット体と、前記2つのハーフナットの他方と一体に形成され、前記左ねじに螺合される左ねじ用ナット体とからなるという構成にした。
【0015】
かかる構成によると、1本のねじ軸に右ねじ及び左ねじを形成し、当該ねじ軸の右ねじ部分及び左ねじ部分にそれぞれ右ねじ用ナット体及び左ねじ用ナット体を螺合するので、別個に形成された右ねじ軸と左ねじ軸とを用いる場合に比べて、型締装置の構成を簡略化でき、その低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、ハーフナットの駆動源として電動サーボモータを用いるので、油圧装置又はエアシリンダ等の圧力シリンダを用いる場合に比べて、設備の簡略化及び低コスト化を図ることができ、成形工場内の環境も良好に保つことができる。また、ハーフナットをタイバーの軸線方向に若干量移動できるようにしたので、仮にハーフナットの設定位置とタイバーに形成されたハーフナット係合溝の設定位置とが厳密に合致していない場合にも、ハーフナットとハーフナット係合溝との係合を確実に行うことができると共に、ロック手段に過大な力が作用することを防止できるので、ロック手段の破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る型締装置を備えた射出成形機の斜視図である。
【図2】ハーフナットの動作並びにハーフナットとハーフナット係合溝との噛み合い状態を示す要部断面図である。
【図3】型閉状態にある型締装置の側方から見た要部断面図である。
【図4】可動ダイプレートのロック手段取付面側から見た正面図である。
【図5】ロック手段の正面図である。
【図6】ロック手段の側面図である。
【図7】型閉状態にある型締装置の平面図である。
【図8】型締状態にある型締装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係る成形機の型締装置を、射出成形機の型締装置を例にとって説明する。実施形態に係る型締装置を備えた射出成形機は、図1に示すように、ベースフレーム1上に設けられた型締装置2と、型締装置2と対向に配置された射出装置3と、これら型締装置2及び射出装置3の駆動を制御するコントローラ4とから主に構成されている。
【0019】
型締装置2は、固定金型21を取り付けた固定ダイプレート22と、可動金型23を取り付けた可動ダイプレート24と、固定ダイプレート22と可動ダイプレート24との間に橋架された合計4本のタイバー25と、固定ダイプレート22に対して可動ダイプレート24を型開閉方向に駆動する型開閉手段26と、可動ダイプレート24に取り付けられ、型閉位置において可動ダイプレート24とタイバー25とを一体に連結するロック手段27と、タイバー25を介して、固定金型21と可動金型23との間に所要の型締力を付与する型締手段28と、型開閉手段26、ロック手段27及び型締手段28の駆動を制御するコントローラ4とを有している。
【0020】
固定金型21と可動金型23の突き当て面には、図示しない所望のキャビティが形成され、固定金型21には、射出装置3から射出される溶融樹脂をキャビティ内に導くための図示しないスプールが連通される。
【0021】
固定ダイプレート22は、ボルト221を用いてベースフレーム1に固定される。一方、可動ダイプレート24は、ガイドレール241を介してベースフレーム1に摺動自在に取り付けられ、固定ダイプレート22に対して接近又は離隔する方向に移動可能とされる。図1から明らかなように、固定ダイプレート22及び可動ダイプレート24は、正面形状が略四角形に形成されており、その四隅部分に開設されたタイバー貫通孔にタイバー25が貫通されている。固定ダイプレート22には、射出装置3に備えられた射出ノズルを挿入して、その先端部を固定金型11に開設されたスプールに当接させるための図示しないノズル挿入孔が開設される。
【0022】
タイバー25は、可動ダイプレート24を固定ダイプレート22に対して接近又は離隔する方向に案内すると共に、型締時には、固定金型21と可動金型23との間に、型締手段28を駆動することにより発生する型締力を付与するものであって、その一端は、型締手段28に固定され、他端は、可動ダイプレート24に開設されたタイバー挿通孔に挿入されている。タイバー25は、型開閉手段26により可動ダイプレート24が型閉位置まで移動されたときには、可動ダイプレート24のタイバー挿通孔に挿入された端部が、可動ダイプレート24のロック手段取付面側に突出し、型開閉手段26により可動ダイプレート24が型開位置まで移動されたときには、可動ダイプレート24のタイバー挿通孔から脱落しない長さに形成されており、型閉位置において可動ダイプレート24から外向きに突出する部分には、図2(a)〜(c)に示すように、ハーフナット係合溝251が一定ピッチで複数列形成されている。
【0023】
型開閉手段26は、固定金型21及び可動金型23の突き当て面が当接される型閉位置と、成形品の取り出しを行う型開位置との間で可動ダイプレート24を往復駆動するもので、図3に示すように、固定ダイプレート22に一端が固定されたねじ軸261と、このねじ軸261に螺合されるナット体が内蔵された型開閉用電動サーボモータ262とをもって構成される。型開閉用電動サーボモータ262は、所謂ビルトインモータ(Built-in Motor)であって、ケーシング263と、ケーシング263の内面に固定された円筒形のモータ固定子264と、モータ固定子264の外周に巻回されたモータコイル265と、モータ固定子264内に配置された円筒形のモータ回転子266と、モータ回転子266と一体に形成されたナット体267と、モータ回転子266の外面に取り付けられたモータ磁石268とをもって構成される。型開閉用電動サーボモータ262を一方向に回転すると、ナット体267がねじ軸261に形成されたねじ山の斜面に沿って一方向に移動し、例えば可動ダイプレート24が型閉方向に移動する。また、型開閉用電動サーボモータ262を他の一方向に回転すると、ナット体267がねじ軸261に形成されたねじ山の斜面に沿って他の一方向に移動し、例えば可動ダイプレート24が型開方向に移動する。
【0024】
ロック手段27は、可動ダイプレート24の固定ダイプレート22と対向しない側の面に取り付けられており、図4に示すように、可動ダイプレート24を貫通する各タイバー25毎に設けられる。このロック手段27は、図5及び図6に示すように、上板271a、下板271b及び前板271cからなり、上板271a及び下板271bの先端が可動ダイプレート24に固定された支持部材271と、支持部材271の上面及び下面に摺動手段272を介して取り付けられ、可動ダイプレート24のロック手段取付面の法線方向に若干量移動可能な2枚の保持板273と、これら2枚の保持板273の両端部に橋架された片側1本、合計2本のねじ軸274と、これら2本のねじ軸274にそれぞれ螺合された右ねじ用ナット体275及び左ねじ用ナット体276と、右ねじ用ナット体275と一体に形成された第1のハーフナット277と、左ねじ用ナット体276と一体に形成された第2のハーフナット278と、図示しない所要の動力伝達機構を介してねじ軸274を回転駆動するロック用電動サーボモータ279とから構成されている。ねじ軸274には、略中央部を境として、一方側に右ねじ用ナット体275を螺合するための右ねじが形成され、他方側に左ねじ用ナット体276を螺合するための左ねじが形成されている。第1及び第2のハーフナット277,278は、図5に示すように、正面形状が略半円形に形成されており、その内面の長さ方向には、図2に示すように、タイバー25の外面に形成されたハーフナット係合溝251内に挿入可能な係合凸部277a,278aが一定ピッチで複数列形成されている。なお、ロック用電動サーボモータ279としても、型開閉用電動サーボモータ262と同様のビルトインモータを用いることができる。
【0025】
本例のロック手段27は、このように構成されているので、ロック用電動サーボモータ279を回転駆動すると、その回転力が図示しない動力伝達機構を介してねじ軸274に伝達され、ねじ軸274の回転運動が右ねじ用ナット体275及び左ねじ用ナット体276に伝達されて、第1及び第2のハーフナット277,278が、互いに接近する方向又は離隔する方向に移動する。これら第1及び第2のハーフナット277,278の移動方向は、ロック用電動サーボモータ279を正転又は逆転することによって切り換えられる。第1及び第2のハーフナット277,278が互いに接近する方向に移動して、係合凸部277a,278aがハーフナット係合溝251内の所定位置まで挿入されたとき、タイバー25はロック状態となり、第1及び第2のハーフナット277,278が互いに離隔する方向に移動して、係合凸部277a,278aがハーフナット係合溝251から完全に離脱したとき、タイバー25はロック解除状態となる。
【0026】
また、第1及び第2のハーフナット277,278の全長Lは、図6に示すように、可動ダイプレート24のロック手段取付面と、支持部材271を構成する前板271cの内面との間隔Dよりも僅かに、例えば、1mm程度小さく形成される。前述のように、ロック手段27を構成する保持板273、ねじ軸274、右ねじ用ナット体275、左ねじ用ナット体276、第1及び第2のハーフナット277,278は、摺動手段272を介して支持部材271に取り付けられているので、第1及び第2のハーフナット277,278と可動ダイプレート24のロック手段取付面及び支持部材271の前板271cとの間にクリアランスを設けることにより、第1及び第2のハーフナット277,278をこのクリアランスの範囲内で自由に変位させることができる。よって、係合凸部277a,278aとハーフナット係合溝251とが完全に合致しない場合にも、この遊びを利用して、タイバー25をロック手段27にて確実にロックできると共に、係合凸部277a,278a及びハーフナット係合溝251に過大な力が作用することを防止でき、タイバー25及びロック部材27の破損を防止することができる。
【0027】
型締手段28は、図1に示すように、固定ダイプレート22及び可動ダイプレート24の上辺側に配置された2本のタイバー25に型締力を付与する第1の型締手段28aと、下辺側に配置された他の2本のタイバー25に型締力を付与する第2の型締手段28bとをもって構成される。かかる構成によると、2つの型締手段28a,28bを並列に用いるので、1つ当たりの型締手段のサイズを小型化でき、成形機の据付面積を小さなものにすることができる。なお、第1の型締手段28aをもって、固定ダイプレート22及び可動ダイプレート24の左右いずれか一方の側辺に配置された2本のタイバー25に型締力を付与し、第2の型締手段28bをもって、固定ダイプレート22及び可動ダイプレート24の他方の側辺に配置された2本のタイバー25に型締力を付与するという構成にすることもできる。
【0028】
これら第1及び第2の型締手段28a,28bは、図7及び図8に示すように、タイバー25の一端が固定されたモータ取付部材281と、このモータ取付部材281に取り付けられた型締用電動サーボモータ282と、一端側がモータ取付部材281に回動可能にピン結合された略L字形のBリンク283と、一端側が固定ダイプレート22に回動可能にピン結合されると共に、他端側がBリンク283の他端側と相対的に回動するようにピン結合されたAリンク284と、ボールネジ機構285を介して型締用電動サーボモータ282の駆動力を受けるクロスヘッド286と、一端がクロスヘッド286に回動可能にピン結合されると共に、他端側がBリンク283の他の連結部と相対的に回動するようにピン結合されたCリンク287とからなる。なお、本例の型締手段においては、トグルリンク機構が、Aリンク284とBリンク283とCリンク287とを有する5点軸支構造のリンク機構となっているが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、他の形式のトグルリンク機構を用いることも勿論可能である。なお、型締用電動サーボモータ282としても、型開閉用電動サーボモータ262と同様のビルトインモータを用いることができる。
【0029】
これらの型締装置28a,28bは、図7に示すように、固定金型21と可動金型23とが型閉され、かつタイバー25に形成されたハーフナット係合溝251にロック手段27に備えられた第1及び第2のハーフナット277,278がロックされている状態から(なお、図7においては、理解を容易にするため、固定金型21と可動金型23との間に、若干の隙間が描かれている。)、型締用電動サーボモータ282を駆動し、ボールネジ機構285を介してクロスヘッド286を固定ダイプレート22側に移動すると、図8に示すように、Aリンク284とBリンク283とが一直線状に延びてモータ取付部材281が射出装置3側に後退し、タイバー25に引張力が作用して、固定金型21と可動金型23とが型締めされる。これにより、固定金型21と可動金型23との間に所要のキャビティが形成されるので、射出装置3によるキャビティ内への成形材料の射出が可能になる。また、この状態から、型締用電動サーボモータ282を駆動し、ボールネジ機構285を介してクロスヘッド286をモータ取付部材281側に移動すると、図7に示すように、Aリンク284とBリンク283とが折り畳まれて、モータ取付部材281が固定ダイプレート22側に前進し、固定金型21と可動金型23とが型開される。
【0030】
射出装置3は、図1に示すように、計量用電動サーボモータ301と、2つの射出用電動サーボモータ302,303とを備え、これら2つの射出用電動サーボモータ302,303の合力を、加熱シリンダ304内に回転可能かつ前後進可能に収納された図示しないスクリュに伝達して、固定金型21と可動金型23との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を射出する。なお、計量用電動サーボモータ301及び射出用電動サーボモータ302,303としても、型開閉用電動サーボモータ262と同様のビルトインモータを用いることができる。射出装置3の構成に関しては、本発明の要旨ではなく、かつ公知に属する事項であるので、これ以上の説明を省略する。
【0031】
コントローラ4は、2つの型開閉用電動サーボモータ262、4つのロック用電動サーボモータ279、2つの型締閉用電動サーボモータ282、それに射出用電動サーボモータ301と射出用電動サーボモータ302,303に内蔵された各エンコーダから出力される位置信号a〜kに基づいて前記各電動サーボモータの制御信号l〜vを生成し、図示しないモータドライバ回路を介して、前記各電動サーボモータの駆動停止を制御する。
【0032】
以下、コントローラ4によって行われる射出成形機の動作制御について説明する。
【0033】
金型取付時(交換時)、可動ダイプレート24は、型開閉用電動サーボモータ262を駆動することによって型開位置に移動され、ロック手段27は、ロック用電動サーボモータ279を駆動することによって第1及び第2のハーフナット277,278がロック解除位置に移動され、型締手段28は、型締用電動サーボモータ282を駆動することによってモータ取付部材281が最も固定ダイプレート22から離隔した位置に移動される。この状態において、固定金型21及び可動金型23は、それぞれ固定ダイプレート22及び可動ダイプレート24に取り付けられる。
【0034】
しかる後に、コントローラ4は、型開閉用電動サーボモータ262を駆動し、固定金型21及び可動金型23の型閉位置まで、可動ダイプレート24を固定ダイプレート22側に移動する。可動ダイプレート24の型閉位置は、コントローラ4に記憶される。
【0035】
可動ダイプレート24が型閉位置まで移動されたとき、タイバー25の先端部は、可動ダイプレート24に開設されたタイバー貫通孔を貫通して、可動ダイプレート24のロック部材取付面側に突出する。可動ダイプレート24からのタイバー25の突出量は、固定金型21及び可動金型23のダイハイトによって異なり、図2(c)に示すように、タイバー25に形成されたハーフナット係合溝251の形成位置と、第1及び第2のハーフナット277,278に形成された係合凸部277a,278aの形成位置とが、タイバー25の軸方向にずれる。そのずれ量は、最大でハーフナット係合溝251の形成ピッチpの1ピッチ分であり、ダイハイト(既知)をハーフナット係合溝の形成ピッチ(既知)で除した商の余りの値となる。この余りの値に相当する移動量だけ、タイバー25を移動させるための型締用電動サーボモータ282の駆動量は、トグルリンク機構を構成するAリンク284及びBリンク283の長さから容易に求めることができる。これらの演算は、コントローラ4によって行われる。コントローラ4は、この演算結果に基づいて型締用電動サーボモータ282を駆動し、トグルリンク機構を介してタイバー25を所定量移動する。これにより、図2(b)に示すように、ハーフナット係合溝251の形成位置と、第1及び第2のハーフナット277,278に形成された係合凸部277a,278aの形成位置とを合致させることができる。
【0036】
次いで、コントローラ4は、ロック用電動サーボモータ279を駆動し、第1及び第2のハーフナット277,278を互いに接近する方向に移動する。ハーフナット係合溝251の形成位置と係合凸部277a,278aの形成位置とが完全に合致している場合、係合凸部277a,278aは、タイバー25との間に作用する摩擦力程度の抵抗力でハーフナット係合溝251内に進入する。そして、ロック用電動サーボモータ279に備えられたエンコーダの出力が予め定められたタイバーロック位置に達したとき、ロック用電動サーボモータ279を停止する。これにより、タイバー25が、可動ダイプレート24にロックされる。
【0037】
仮に、ハーフナット係合溝251の形成位置と係合凸部277a,278aの形成位置とが完全に合致していない場合には、第1及び第2のハーフナット277,278を互いに接近する方向に移動したとき、ハーフナット係合溝251に係合凸部277a,278aが衝合する。しかし、第1及び第2のハーフナット277,278は、可動ダイプレート24及び支持部材271の前板271cとの間に設けられたクリアランスの範囲内で自由に変位できるようになっているので、ハーフナット係合溝251と衝合したとき、その力によって衝合を避ける方向に変位し、ハーフナット係合溝251内への挿入が可能になる。よって、タイバー25のロックを確実に行えると共に、タイバー25及びロック手段27に過大な力が作用することを防止でき、振動・騒音の低減及び耐久性の向上を図ることができる。
【0038】
ロック手段27によりタイバー25が可動ダイプレート24にロックされた後、コントローラ4は、型締用電動サーボモータ282を駆動して、Aリンク284とBリンク283とが一直線状に延びるまでクロスヘッド287を前進させる。これにより、タイバー25に引張力が作用して、固定金型21と可動金型23とが型締めされる。
【0039】
型締後、コントローラ4は、射出用電動サーボモータ302,303を駆動して、金型キャビティ内に所定量の溶融樹脂を射出する。射出後は、前記と逆の工程を経て、原位置に復帰する。
【0040】
前記実施形態に係る成形機の型締装置は、型開閉用電動サーボモータ262及び型締用電動サーボモータ282を用いて、ハーフナット係合溝251と第1及び第2のハーフナット277,278との噛み合わせ位置の調整を行うので、これらの噛み合わせ位置を調整するためにのみ用いる特別な手段を備える必要がなく、型締装置2ひいては成形機の小型化、簡略化及び低コスト化を図ることができる。また、装置各部の駆動源として、全て電動サーボモータを用いたので、成形機を全電動化することができ、この点からも型締装置2ひいては成形機の小型化、簡略化及び低コスト化が可能であると共に、電動サーボモータに代えて油圧アクチュエータを用いる場合のように、油漏れによる成形工場内の汚れを防止できて、成形工場内の作業環境を良好なものにすることができる。
【0041】
なお、前記実施形態においては、射出成形機の型締装置を例にとって説明したが、ダイカストマシンの型締装置にも応用することができる。
【0042】
また、前記実施形態においては、型開閉手段26、ロック手段27、型締手段28及び射出装置3の駆動源として電動サーボモータを用いたが、ロック手段27及び射出装置3の駆動源としては、油圧アクチュエータやエアアクチュエータを用いることもできる。
【0043】
さらに、前記実施形態においては、型開閉用電動サーボモータ262、ロック用電動サーボモータ279、型締閉用電動サーボモータ282、計量・射出用電動サーボモータ301,302,303としてビルトインモータを用いたが、他種のモータを用いることも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンの型締装置に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ベースフレーム
2 型締装置
21 固定金型
22 固定ダイプレート
23 可動金型
24 可動ダイプレート
25 タイバー
251 ハーフナット係合溝
26 型開閉手段
261 ねじ軸
262 型開閉用電動サーボモータ
263 ケーシング
264 モータ固定子
265 モータコイル
266 モータ回転子
267 ナット体
268 モータ磁石
27 ロック手段
271 支持部材
272 摺動手段
273 保持板
274 ねじ軸
275 右ねじ用ナット体
276 左ねじ用ナット体
277 第1のハーフナット
278 第2のハーフナット
279 ロック用電動サーボモータ
28 型締手段
28a 第1の型締手段
28b 第2の型締手段
281 モータ取付部材
282 型締用電動サーボモータ
283 Bリンク
284 Aリンク
285 ボールネジ機構
286 クロスヘッド
287 Cリンク
3 射出装置
301 計量用電動サーボモータ
302,303 射出用電動サーボモータ
4 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型を取り付けた固定ダイプレートと、可動金型を取り付けた可動ダイプレートと、前記固定ダイプレートと前記可動ダイプレートとの間に橋架されたタイバーと、前記固定ダイプレートに対して前記可動ダイプレートを型開閉方向に駆動する型開閉手段と、型閉位置において前記可動ダイプレートと前記タイバーとを一体に連結するロック手段と、前記タイバーを介して、前記固定金型と前記固定金型との間に所要の型締力を付与する型締手段とを備えた成形機の型締装置において、
前記ロック手段は、前記タイバーを介して相対向に配置された2つのハーフナットと、これら2つのハーフナットの駆動源であるロック用電動サーボモータと、該ロック用電動サーボモータの駆動力を前記2つのハーフナットに伝達して、前記2つのハーフナットを前記タイバーに接近する方向又は前記タイバーから離隔する方向に相対的に駆動するボールねじ機構とからなり、
前記2つのハーフナットは、前記タイバーの軸線方向に若干量移動できるようにして、前記可動ダイプレートに取り付けることを特徴とする成形機の型締装置。
【請求項2】
前記固定ダイプレートと前記可動ダイプレートとの間に複数本のタイバーを橋架し、これら複数本のタイバーのそれぞれに対応して、前記ロック手段を配置することを特徴とする請求項1に記載の成形機の型締装置。
【請求項3】
前記ボールねじ機構は、略中央部を境として一方側に右ねじが形成されると共に他方側に左ねじが形成され、前記ロック用電動サーボモータによって回転駆動されるねじ軸と、前記2つのハーフナットの一方と一体に形成され、前記右ねじに螺合される右ねじ用ナット体と、前記2つのハーフナットの他方と一体に形成され、前記左ねじに螺合される左ねじ用ナット体とからなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の成形機の型締装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−20370(P2011−20370A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167777(P2009−167777)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】