成長ホルモンの20kDa胎盤性変種を用いる体形成療法
本発明の実施態様は、ヒト成長ホルモン(hGH)療法を必要とする症状の治療の改善方法を提供し、それによってhGHの有益な作用(例えば発育促進および脂肪分解)は維持され、望ましくない特性は軽減または排除される。特に、hGH治療の乳汁産生副作用が軽減される治療方法を目的とする。前記改善方法は、従来hGHを用いて治療される症状またはhGHで治療されるべき潜在性を有する症状の治療において、成長ホルモン変種、20kDa hGH-Vを使用することを含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願:
本出願は下記出願に対し優先権を主張する:米国仮特許出願60/496,970号(2003年8月20日出願、発明者Peter Gluckman and Stewart Gilmour、発明の名称“Enhanced Growth Hormone Therapy Using a 20kDa Placental Variant of Growth Hormone”(Attorney Docket No: ERNZ 1016 US0 DBB))。前記出願は参照により本明細書に含まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、成長ホルモンが望ましい治療方法となる症状(condition)および疾患(disease)に関する。特に本発明は、変種の成長ホルモンが用いられる症状および疾患の治療に関する。より具体的には、本発明は、20キロダルトンの胎盤性成長ホルモン変種(“20kDa hGH-V”)が用いられる症状および疾患の治療に関する。
【0003】
背景技術
2つの遺伝子によって生成される、いくつかの天然に存在する成長ホルモンのアイソフォームが存在する。1つの遺伝子は下垂体で発現されるヒト成長ホルモン-N(“hGH-N”、“hGH-1”としても知られている)であり、1つは胎盤で発現されるヒト成長ホルモン-変種(“hGH-V”、“hGH-2”としても知られている)である。hGH-Nの主要形態は、191アミノ酸から成る22kDaタンパク質である。hGH-Nの第二の形態は同じ遺伝子のまた別のスプライシングによって生成され、このスプライシングは、22kDaのhGHのアミノ酸32−46に対応する領域の欠損を生じて20kDaタンパク質(20kDa hGH-N)を生成する(米国特許6,399,565号および6,436,674号)。hGH-Nの種々の他のスプライス変種が開示されている(米国特許4,670,393号および5,962,411号)。
hGH-V遺伝子は22kDaのhGH-Vアイソフォームをコードし、前記はホルモン配列の全体を通して種々の位置に存在する13のアミノ酸が22kDa hGH-Nと異なっている(米国特許4,670,393号)。22kDa hGH-Vは胎盤によって分泌され、妊娠中期の母体血清に出現する。この変種の正確な機能はまだ解明されていないが、胎児の成長の制御および発育における役割を果たすと考えられる。
【0004】
発明の要旨
成長ホルモン療法は低身長を含む多様な症状の治療に用いられる。発育に対するGHの作用は“体形成作用”と称される。しかしながら、通常のGH療法は、例えば末梢浮腫および水分貯留、乳汁産生作用、肝障害並びに細胞障害を含む有害な副作用を受けやすい。所望の発育促進作用を維持しながら、これら副作用を除去するか、または少なくとも軽減する方法を確立することは明らかに有益である。本発明の実施態様は、現在GH療法に使用されている22kDa hGH-Nと異なる活性スペクトルを有する変種GHを使用することにより、GH療法の副作用を減少させる方法を含む。この変種は通常療法の有益な作用(例えば発育促進および脂肪分解)を提供するが、望ましくない特性は軽減される。したがって、本発明は、従来はhGH で治療されるかまたはhGHで治療される潜在性を有する症状の治療に20kDa hGH-Vを使用することを目的とする。特に、本発明は、hGH治療の乳汁産生副作用が軽減される治療方法を目的とする。
本発明の実施態様はまた、予防的または治療的目的のために哺乳動物で成長ホルモンレベルを高める方法を含む。前記方法は、医薬的に有効な量のGH変種20kDa hGH-Vまたは実質的に20kDa hGH-Vと同一のポリペプチドを哺乳動物に投与することを含む。
ある実施態様では、この変種はGHの発育促進能力を誘発するが、通常のGH療法の望ましくない作用を誘発する能力は低い。これらの望ましくない作用には糖尿病誘発性および乳汁産生作用、末梢浮腫、肝毒性および細胞障害が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様では、20kDa hGH-Vは外因的に生成され対象に投与される。前記変種のサイズを考慮して、前記は好ましくは適切な宿主細胞で前記変種をコードする遺伝子の発現によって製造される。そのような変種遺伝子はGH遺伝子の位置特異的変異導入によって調製することができる。そのような変種遺伝子を含む発現ベクターを含む適切な宿主細胞を治療されるべき動物に移植することができ、変種遺伝子の発現誘導によって20kDa hGH-V生成物(前記は治療効果を発揮することができる)レベルを高めることができる。
【0005】
発明の詳細な説明
定義:
“形質転換”は、DNAが染色体外エレメントとしてまたは染色体への組み込みによって複製できるようにDNAを生物に導入することを意味する。形質転換の方法は、例えばGraham and van der Eb(Virology 52:456-457 (1973))の方法またはDNAを細胞に導入するための他の適切な方法、例えば核内注射若しくはプロトプラスト融合による方法でありえる。実質的な細胞壁構築物を含む細胞、例えば原核細胞の場合には、トランスフェクションは、Cohenら(Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 69:2110 (1972))が記載したカルシウム処理によって実施することができる。さらに別の方法は当業界で周知であり、以下の文献で見出すことができる:Sambrook and Russell, Molecular Cloning Third Edition, Cold Springs Harbor Laboratory Press, New York (2001)。
“トランスフェクション”は、いずれのコード配列も最終的に発現されるか否かにかかわらず、DNAを宿主細胞に導入することを意味する。細胞は自然にはDNAを取り込まないので、多様な技術方法が遺伝子の移転を促進するために利用される。トランスフェクションの方法は当業者には知られており、例えばCaPO4およびエレクトロポレーションが含まれる。さらに別の方法も当業界では周知で、上掲書(Sambrook and Russell)で見出すことができるであろう。
【0006】
“保存的アミノ酸置換”は、出発のペプチドに関して変種ペプチドの特徴に実質的に影響を与えないアミノ酸の置換または欠失を指す。例えば、置換は以下の4つのグループ内で実施することができる:1)陽性荷電残基、例えばArg、Lys、His;2)陰性荷電残基、例えばAsn、Asp、Glu、Gln;3)大きな脂肪族残基、例えばIle、Leu、Val;4)大きな芳香族残基、例えばPhe、Tyr、Trp。保存的置換の更なる検証のためには、例えば以下を参照されたい:Livingstone and Barton, Comput. App. Biosci. 9(6):745-756 (1993)。
“実質的に同一”ということは、あるペプチドが、1つ若しくは2つのアミノ酸の挿入、置換または欠失が実施された配列、または保存的アミノ酸置換が実施された配列を有し、その結果、生成されたポリペプチドが20kDa hGH-Vと特徴および活性において実質的に相違せず、さらにヌクレオチド配列、配列番号:3と少なくとも95%相同性を有する前記ポリペプチドを指す。“実質的に同一”とはまた、遺伝暗号のリダンダンシーによる“サイレント”な相違によって第一のオリゴヌクレオチドと相違するオリゴヌクレオチド配列を指す(例えばその場合、相違はアミノ酸における変化を全く生じない)。また別には、“実質的に同一”の配列は、第一のオリゴヌクレオチド配列の相補鎖とストリンジェントな条件下(例えば0.1 SSC、60℃で1時間)でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド配列である。他の条件のストリンジェンシーも選択することができ、それらはなお高い厳密性を有するハイブリダイゼーションを維持することができることは理解されよう。
【0007】
“hGH-N”はヒト下垂体成長ホルモンを指す。
“hGH-V”はヒト胎盤性成長ホルモンを指す。
“PRL”はプロラクチンを指す。
“PRLR”はプロラクチンレセプターを指す。
“20kDa hGH-V”は、配列番号:7のアミノ酸配列若しくは配列番号:3のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:7のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:3のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“20kDa hGH-N”は、配列番号:8のアミノ酸配列若しくは配列番号:4のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:8のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:4のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“22kDa hGH-V”は、配列番号:5のアミノ酸配列若しくは配列番号:1のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:5のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:1のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“22kDa hGH-N”は、配列番号:6のアミノ酸配列若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:6のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“体形成作用”は発育促進、体重増加および骨同化作用を含む。
“乳汁産生作用”は、PRLRシグナリングを伴う外因性成長ホルモンの作用を含む。これらの作用には、乳腺発達、浸透圧バランスの変化および細胞増殖が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“代謝作用”には脂肪分解の刺激、IGF-1の分泌刺激および糖尿病誘発性作用が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0008】
成長ホルモン療法
GHの有益な発育促進作用を有するが副作用は減少している方法および医薬に対する未達成の希求が存在する。
したがって、本発明のある特徴では、哺乳動物に医薬的に有効な量の20kDa hGH-Vまたは20kDa hGH-Vと実質的に同一のポリペプチドを投与することを含む、哺乳動物である症状を治療する方法が提供される。
他の特徴では、前記方法は、成人開始成長ホルモン欠乏、小児期開始成長ホルモン欠乏、嚢胞性線維症、骨粗しょう症、骨格形成異常、慢性腎不全、うつ病、記憶低下、異化作用促進状態、食欲不振および高血圧の治療を含む。
他の特徴では、本発明は、20kDa hGH-Vおよび医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を含む。
さらに別の特徴では、本発明は、20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤および結合剤を含む医薬組成物を含む。
さらに別の特徴では、本発明は、20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤およびカプセルを含む医薬組成物を含む。
本発明のさらに別の特徴は、患者に20kDa hGH-Vを投与することを含む、成長ホルモン療法を必要とする患者を治療する方法を含む。
これらの特徴のある場合には、方法は、20kDa hGH-Vを生成することができる発現ベクターを投与することを含む。
さらに別の特徴では、前記発現ベクターは宿主細胞内に存在する。
さらに他の特徴では、前記発現ベクターは患者の細胞内に存在する。
また他の特徴では、本発明は、成長ホルモン療法を必要とする哺乳動物に20kDa hGH-Vを含む組成物を投与することを含む。
さらに他の特徴では、本発明は、20kDa hGH-Vを生成することができる複製可能なベクターをその中に有する細胞を前記哺乳動物に投与することを含む。
【0009】
GHの副作用
22kDaの下垂体GHを用いる通常のGH療法の望ましくない副作用には下記の1つまたは2つ以上が含まれる:浮腫、水分貯留、高血圧、良性頭蓋内高血圧;グルコース不耐症および/または糖尿病;女性化乳房;骨格筋への影響、例えば関節痛、感覚異常および手根管症候群または筋肉痛。
浮腫は、細胞、組織または漿液腔(例えば腹腔)内の過剰量の水様液の蓄積と定義される。細胞外浮腫の症状には、眼の周囲の顔面の腫れ、または足、くるぶしおよび脚の腫れが含まれる。GHにより誘発される塩および水分の保持は、末梢の浮腫および良性の頭蓋内高血圧を引き起こしえる。
良性の頭蓋内高血圧は、空隙占有病巣の非存在下における脳脊髄液圧の増加を特徴とする。それにより頭痛、視力低下、悪心、嘔吐および乳頭浮腫が提示されえる。
特に小児期のGH療法の糖尿病誘発作用については懸念が増している。GH療法はグルコース不耐性を惹起し、インスリン感受性を低下させることが示された。小児期および青年期のいくつかのグループではGH療法と2型真性糖尿病との間で発生率の増加が確認されている(Cutfield 2000)。高血糖症もまたGH治療を受けている成人で観察されている。
関節痛は1つまたは2つ以上の関節における痛みである。感覚異常は、一般的には手、腕、脚または足で生じるが身体のいずれの部分にも起こりえる、異常な灼熱感またはチクチクする感覚を指す用語である。手根管症候群は、手首の腱または靱帯が拡張したときに(しばしば炎症により)生じる。狭まった骨の管腔および手首の靱帯が、指および親指の基部の筋肉に達する神経を締め付ける。症状の範囲は、指(特に親指および人差し指および中指)のヒリヒリ、チクチクするしびれ感から、握ったり若しくは握りこぶしを作るのが困難または物を取り落としたりするものである。
筋肉痛はいずれかの筋肉の運動における痛みまたは不快感である。
成長ホルモン療法による治療を受けた小児で報告された白血病のいくつかの症例に基づく、成長ホルモン療法に関する“癌増殖促進”の可能性についていくらかの懸念が存在する(Stahnke & Zeisel, 1989;Watanabe et al, 1988)。
【0010】
GHを用いて治療される症状
GH療法は多様な範囲の症状の治療に用いられる。現時点で、GHの予防効果または治療効果は、以下を含む(ただしそれらに限定されない)症状に関して確認または指摘されている:成人開始成長ホルモン欠乏(主として下垂体腺腫、外科手術または放射線療法によって惹起される)、小児期開始成長ホルモン欠乏[(a)先天的症状(解剖学的異常または遺伝因子)、(b)後天的症状(CNS腫瘍、頭部照射、浸潤性疾患、外傷、低酸素性障害)または(c)特発性原因によって生じるもの];嚢胞性線維症、骨粗しょう症、慢性腎不全、うつ病、記憶低下、異化作用促進状態、食欲不振および高血圧。
GH療法は、小児の成長ホルモン欠乏、プラーダー‐ヴィリ症候群、成人の成長ホルモン欠乏、ターナー症候群、慢性腎不全およびエイズ関連るい痩での使用が承認されている。成長ホルモンはまたいくつかの他の症状の治療で有用である。これらの症状には、全身的発育遅延、嚢胞性線維症、骨粗しょう症、うつ病、記憶低下、異化作用促進状態および高血圧が含まれる。
【0011】
GH欠乏
成長ホルモン欠乏の診断は成長ホルモン刺激試験を必要とする。用いられる試験には、インスリン低血糖試験またはインスリン耐性試験(ITT)、L-ドーパ刺激試験、アルギニン輸液試験およびアルギニン/GHRH試験が含まれる。成人では3−5ng/mL未満のピーク成長ホルモン分泌レベルがGHDの指標である。小児では、10ng/mLより低い値が不適切と考えられる。成長ホルモン欠乏は、通常皮下注射により毎日投与される組換えヒト成長ホルモンで治療される。
小児のGHDにはいくつかの原因があり、大半は視床下部または下垂体の問題と関係がある。ある種の稀な事例では、身体の成長ホルモン利用における欠陥が生じる。成長ホルモン欠乏をもつ大半の小児で視床下部に欠陥が存在する。他の下垂体ホルモンもまた正常に分泌されていないときは、当該小児は下垂体機能不全と称される。先天性の下垂体機能不全では、下垂体または視床下部の異常な形成が胎児発育時に生じる。後天性下垂体機能不全は、出生持または出生後に生じる下垂体または視床下部への損傷から生じる。前記は重篤な頭部外傷、疾患、放射線療法または腫瘍による脳の損傷によって惹起されえる。
小児の世界的なGHD発生率は10000人の出生に対して少なくとも1人と概算され、個々のいくつかの国では4000人の出生に対し1人の発生率と報告されている。成長ホルモン欠乏小児は、1年に2インチ未満の発育パターンを示す。多くの事例では、前記小児は2または3歳まで正常に発育し、その後発育遅延の徴候を示し始める。成長ホルモン欠乏試験は、低身長の他の可能性が排除されたときに実施されるであろう。0.30mg/kg体重までの1週間の用量を1日の皮下注射に分割したものがGHDの小児に推奨されている。
成人では、成長ホルモンの欠乏は、以下の状況で発生しえる:大きな下垂体腫瘍の存在、下垂体腫瘍または他の脳腫瘍の手術または放射線療法後、視床下部の疾患に対して二次的に、および小児の成長ホルモン欠乏の成人期への継続。成人のGHDの臨床的特徴には以下が含まれる:疲労、筋肉虚弱、運動能力低下、体重増加、体脂肪増加と筋肉量低下、LDLコレステロールおよびトリグリセリドの増加とHDLの減少、心臓発作、心不全および卒中のリスクの増加、骨量の減少、不安およびうつ、特に幸福感の欠如、社会的孤立および活力低下。米国では、概算総数35,000人の成人がGHDを有し、さらに毎年約6000人の新規GHD症例が発生している。平均的な70kgの成人に対して、治療の開始時点の推奨用量は約0.3mgで毎日皮下注射として投与される。前記用量は個々の要請により35歳より若い患者では最大日量1.75mgまで、35歳より上の患者で最大日量、0.875mgまで増加させることができる。より低い用量が副作用の出現を最小限にするために、特により年齢の高いまたは過体重の患者で必要とされるかもしれない。
【0012】
プラーダー‐ヴィリ症候群
プラーダー‐ヴィリ症候群は15番染色体の異常であり、低血圧、性機能不全、多食、認知障害および行動困難を特徴とするが、主要な医療的懸念は病的な肥満である。成長ホルモンは典型的には欠如し、短身、思春期の急成長の欠如および高い体脂肪率(正常な体重をもつ者でさえも)を生じる。GH療法の必要性は、小児および成人の両方で評価されるべきである。小児では、発育速度が低下した場合または身長が3番目のパーセンタイルより下にある場合には、GH治療が考慮されるべきである。成長ホルモンの代替は身長の正常化を助け、リーンボディマス(lean body mass)を増加させ、前記はともに体重の管理に役立つ。1週間の通常の用量は0.24mg/kg体重で、前記を1週間にわたって6または7回分のより小用量に分割する。
【0013】
ターナー症候群
ターナー症候群は2,500人の女児の出生に対しに約1人の割合で発生する。前記症候群は、X染色体の異常または欠損によるもので、しばしば短身を伴い、前記短身はGH治療により緩和される。ターナー症候群の他の特性には、短頸および同時に翼状頸、外反肘、第四および第五中手骨および中足骨の短縮、ハト胸および原発性性機能不全が含まれる。身長の伸びはターナー症候群の患者で種々であり、GHにより治療するか否かおよびそのような治療のタイミングの決定は個々に実施される。患者の身長が5番目のパーセンタイルより低いとき、または標準偏差スコアが平均より低く2標準偏差未満に低下するときは、しばしば治療が開始される。治療は、しばしばGHD治療に用いられる用量よりもわずかに高いGH用量で開始される。一般的な開始用量は0.375mg/kg/週で1日の用量に分割される。
【0014】
慢性腎不全
慢性腎不全(CRI)は米国では約3000人の小児が罹患している。前記疾患は、老廃物を除去し、尿を濃縮し、さらに電解質を保持する腎の能力の徐々に進行する低下により示される。慢性腎不全の小児の約1/3が異常な発育を示し、これは部分的には腎疾患が成長ホルモンの代謝を障害するためである。腎疾患でしばしば用いられるコルチコステロイドホルモンもまた発育を遅延させえる。腎移植は小児に正常な発育を再び開始させることができるが、大半の小児は移植前に失われた発育を埋め合わせることはできない。腎疾患開始年齢は、腎機能の低下よりも発育遅延により強い影響を与える(すなわち、疾患が開始したときに小児が幼ければ幼いほど、発育の遅延は大きい)。GH治療は0.35mg/kg/週の用量で、1週間に6または7回投与できる。
【0015】
HIVるい痩症候群
HIV感染者の共通の問題はHIVるい痩症候群であり、前記は、しばしば虚弱、発熱、栄養失調および下痢を伴う意図しない進行性の体重低下と定義される。前記症候群(悪液質としても知られている)は、生活の質を低下させ、疾患を悪化させ、HIV患者の死亡リスクを増加させる。患者の身体は、にエネルギーのために主として身体に貯蔵された脂肪に頼る代わりに筋肉および器官の組織を消費する。
るい痩はそれ自体はHIV感染の結果として生じるが、また一般的はHIV関連日和見感染および癌に付随する。HIVるい痩症候群は、意図せずしてその体重の10%以上を失ったHIV感染者で診断される。HIV疾患およびエイズが進行した大半の患者は最終的にはある程度のるい痩を経験する。エイズるい痩の有病率を概算すればHIV感染者の4−30%の範囲である。GH治療は1日当たり0.1mg/kgの規模である。
【0016】
発育の全身的遅延
発育の全身的遅延は、正常な出生前発育とそれに続く幼児期および小児期の発育の減速を特徴とし、この時期の身長パーセンタイルの低下に反映される。3歳から小児後期まで発育は正常な速度で進行する。深刻な発育減速期は思春期開始の直前に観察できる。全身的遅延をもつ小児は思春期の開始が遅い。時折、全身的発育遅延に付随しさらにこれによって増大される短身と青年期の発達が組合された場合、十分な心理社会的な青年期ストレスを引き起こし、GHD治療に用いられる同じ態様および用量で投与されるGHによる治療が正当化されえる。
【0017】
嚢胞性線維症
嚢胞性線維症(CF)は、アメリカではもっとも一般的な致死的遺伝疾患である。概算では毎年米国で1000人が嚢胞性線維症をもって出生する。嚢胞性線維症は、粘液分泌の粘度が上昇する外分泌腺の機能不全を生じ、前記は、肺疾患、外分泌性膵臓機能不全および腸管閉塞をもたらす。早期診断および治療がCFの小児の死亡率を顕著に低下させた。しかしながら、栄養不良および発育不良は重大な問題のままである。低い体重増加、体重減少、不適切な栄養は、エネルギー摂取の低下、エネルギー損失の増加およびエネルギーの浪費の結果である。CF患者の28%が身長について10番目パーセンタイル以下であり、34%が体重について10番目パーセンタイル以下である。GH療法は、嚢胞性線維症の患者の身長速度、体重速度、リーンボディマス(LBM)および肺機能を改善することが研究によって示された。
【0018】
骨粗しょう症
骨粗しょう症は、骨量低下および骨組織の構造的劣化を特徴とする疾患で、骨虚弱をもたらし、骨折、特に股関節、脊椎および手首を骨折しやすくなる。骨粗しょう症は、世界で毎年150万件を超える股関節骨折の原因である。大半の骨折は閉経後の女性で生じるが、全骨粗しょう症骨折の約1/3が男性で発生している。GHによる骨粗しょう症の治療は、骨代謝の増加およびGHにより生じる骨構造の改善によって有益となろう。GH/IGF-I系は、閉経後骨粗しょう症患者で調節異常を示す。前記は、骨粗しょう症における全身的IGFおよびIGFBP-3レベルの低下によって示され、内因性GH分泌の低下または、GH/IGF系の正常な老化過程、“ソマトポーズ(somatopause)”を超えるGHレセプター系の調節異常を示唆している。GH治療は、特発性骨粗しょう症の男性の骨ミネラル濃度を改善することができることが研究によって示された。
【0019】
骨格形成異常
短身を伴う骨格形成異常、例えば軟骨無形成症はGHで治療できる。軟骨無形成症は遺伝疾患であり、線維芽細胞増殖因子レセプタータイプIII遺伝子が影響を受け、前記は出生時に明瞭である。前記は20,000人に約1人の割合で出生し、全人種および両性別で発生する。胎児発育時および小児期に、いくつかの場所(例えば鼻および耳)を除いて軟骨は通常骨に発達する。軟骨無形成症の個体では、長骨の成長板の軟骨細胞が骨に変化する速度が遅く、短縮骨および低身長をもたらす。
軟骨無形成症は、短身、短四肢、四肢近位(proximal extremity)(上腕および大腿)を特徴とし、頭は胴体に対して不釣合いに大きく見え、骨格(四肢)異常、中指と薬指の間に持続的間隙をもつ異常な手の外観(三叉手)、顕著な脊柱後わんおよび脊柱前わん(脊柱わん曲)、よたよた歩行、屈曲脚、突出した(異彩をはなつ)額(前頭突出)、低血圧および羊水過多(罹患新生児が出生するときに存在する)を特徴とする。GHは、いくつかの国(例えば日本および南アメリカ)では軟骨無形成症の治療に承認されているが、FDAの承認はまだ得られていない。
【0020】
異化作用促進タンパク質浪費状態
異化作用促進状態はタンパク質浪費を特徴とする。成長ホルモン治療は、過剰なタンパク質低下の防止に用いることができる。そのような異化作用促進状態は、長期飢餓、食欲不振、慢性疾患、長期固定、外傷、熱傷および重度の外科手術の後の患者で存在しえる。GHおよびインスリン様増殖因子I(IGF-I)は、異化作用促進状態でタンパク質代謝の調節に生理学的な役割を果たす。異化作用促進状態ではGH軸はしばしば障害される。
【0021】
脂肪異栄養症
GHは、脂肪異栄養症、特にエイズ関連脂肪異栄養症の治療に有益でありえる。脂肪異栄養症は、単純に脂肪代謝障害を意味する一般的名称である。HIV関連脂肪異栄養症は一般的には、以下の領域(胴体下部(腹部領域)の皮下組織、腹部内臓(内臓肥満)、腋窩パッド(両側性、対称性脂肪蓄積症)および頚部背面領域(いわゆる野牛こぶ))における脂肪蓄積、並びに以下の領域(四肢下部、上部四肢、臀部および顔面(上顎、鼻唇および側頭部領域))の皮下組織の脂肪消失から成る。HIV関連脂肪異栄養症のこの症状は、タンパク質‐エネルギー栄養失調のるい痩症候群とは全く別個であるように見える。HIV感染患者における脂肪異栄養症の普遍的に認められた症例定義が存在しないので、診断は、ある程度臨床医の判断に依存する。皮膚の折りひだの測定またはヒップ対ウェスト比はいずれも極めて正確とも再現性があるとも言えない。第四腰椎レベルのシングルスライスCTスキャンがもっとも再現性のある試験であるが、またもっとも高価な試験でもある。
【0022】
子宮内発育遅延および短在胎齢の小児
GH治療は、子宮内発育遅延(“IUGR”)をもつ小児または在胎齢が短い幼児(前記症状はまたラッセル‐シルバー症候群;“SGA小児”とも称される)で有益でありえる。子宮内発育遅延のある定義は、在胎齢について10番目以下の体重または出生時在胎齢の平均より下の2標準偏差である。発育の遅れを取り戻せないこれらの小児はGH治療により利益を受けえる。
【0023】
骨形成不全
骨形成不全(OI)はI型コラーゲンの遺伝子の変異によって生じる。前記は骨の無機質脱落を伴い、多くの場合骨の発育遅延を伴う。OIはしばしば、ほとんどまたは全く明瞭な原因無しに容易に骨折する骨を特徴とする。米国でのOI罹患者数は不明であるが、もっとも正確な概算は最小限20,000人と提唱され、おそらく50,000人が存在すると推定される。前記はしばしば(常にそうとは限らないが)、臨床的特徴のみによりOIと診断することが可能である。臨床遺伝学者はまた、生化学的(コラーゲン)または分子的(DNA)試験を実施することができ、前記試験はいくつかの状況においてOI診断の確認に役立ちえる。いくつかの症例では、骨形成不全はGHにより効果的に治療することができる。特に患者は骨の無機質沈着が改善し発育の改善を得ることができる。
【0024】
炎症性大腸疾患
GHは、炎症性大腸疾患、クローン病および短縮腸症候群の治療に用いることができる。炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の炎症または潰瘍を引き起こす一群の疾患である。IBDのタイプに応じて、口から肛門までの消化管のいずれかの部分が影響を受けえる。小腸および大腸、直腸並びに肛門がもっとも頻繁に影響を受ける。潰瘍性大腸炎およびクローン病は炎症性腸疾患のもっとも一般的なタイプである。しかしながらIBDの原因は不明であり、遺伝的傾向を有する人々で発症すると考えられている。これらの個体では、免疫系が正常な腸内細菌に対し過剰に反応し炎症を惹起しえる。主要な症状は腹痛、直腸出血および下痢または便秘である。発熱および食欲低下もまた生じえる。短縮腸症候群は、腸の大量の喪失および残留する腸の正味の吸収能力の障害を特徴とする。結腸を失った患者は、しばしばナトリウム/水分バランスに関する問題に直面し、いくつかの栄養素の栄養失調のためにしばしば栄養補助を必要とする。
【0025】
グルココルチコイド誘発発育遅延
GH治療は、グルココルチコイド治療に起因する発育遅延をもつ極めて低身長者において考慮することができる。そのような患者でGH療法を開始する前に、グルココルチコイド治療は、十分な臨床効果を達成するために必要な最小用量に減少させるべきである。
他の症状
GH治療により利益を得ることができる他の症状にはうつ病、記憶低下、肥満、高血圧、不妊などが含まれる。しかしながら、GH療法により利益を受けることができるいずれの症状も本発明の方法および医薬を用いて有利に治療することができることは理解されよう。
【0026】
下垂体GH使用療法
従来の通常のGH療法は22kDa下垂体GHを用いる。下垂体GHの22kDaおよび20kDa型は等価の体形成活性をもつと考えられる、20kDa hGH-Nは、偶発性矮小ラットでの発育促進アッセイにおいて22kDa hGH-Nと等価であり(Ishikawa 2000;Ishikawa 2001)、20kDaの骨同化作用は22kDaのそれと同等の能力を有し(Wang 1999)、完全長のhGH-R-発現細胞の細胞増殖は等しく刺激され(Wada 1998)、さらに20kDa hGH-Nは下垂体切除ラットで完全なアゴニストであることが示された(Uchida 1997)。20kDa hGH-Nはまた、脂肪組織でLPL活性を阻害し、さらに22kDa hGH-Nと同様な態様で脂肪細胞において脂肪分解を刺激することが示された(Takahashi 2002)。20kDa hGH-Nの脂肪分解活性は、成長ホルモン結合タンパク質(“GHBP”)の存在下で22kDa hGH-Nよりも高い可能性がある(Asada 2000)。
しかしながら、22kDa hGH-Nはインスリン耐性を誘発することが知られている。20kDa hGH-Nの糖尿病誘発性は、オイグリケミッククランプ実験(Takahashi 2001)、およびGH欠損矮小ラットを用いる実験(Ishikawa 2001)におけるインスリン耐性誘発で22kDa hGH-Nよりもはるかに弱いことが研究によって示唆されている。
20kDa hGH-Nは、22kDa hGH-Nよりもプロラクチンレセプターに対しはるかに弱いアゴニストであり、したがって22kDa hGH-Nの乳汁産生特性のいくらかを欠く(Takahashi 1999)(なぜならば、GHの乳汁産生作用はプロラクチンレセプターによって仲介されると考えられるからである)。20kDa hGH-Nの投与は、hPRLR-仲介副作用(例えば乳癌)を緩和する可能性があることが提唱された(Tsunekawa 1999)。20kDa hGH-Nはまた、22kDa hGH-Nと異なる抗利尿作用を有する。22kDa hGH-Nの投与は無傷のラットで尿の分泌を抑制し、一方、20kDa hGH-Nは顕著な作用を示さず(Satozawa, 2000)、このことは液体の保持は浮腫を引き起こしえるので重大である。20kDa hGH-Nは、22kDa hGH-NのPRLR結合領域の一部を欠くと考えられる。下記の表1および2は、本発明の方法で有用な成長ホルモン変種のオリゴヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。表1では、下記の配列番号はヌクレオチドである:22kDa hGH-V(配列番号:1)、22kDa hGH-N(配列番号:2)、20kDa hGH-V(配列番号:3)および20kDa hGH-N(配列番号:4)。
【0027】
【表1−1】
【0028】
【表1−2】
【0029】
【表2−1】
【0030】
【表2−2】
【0031】
表2は、22kDa hGH-V(配列番号:5)、22kDa hGH-N(配列番号:6)、20kDa hGH-V(配列番号:7)および20kDa hGH-N(配列番号:8)のアミノ酸配列を示す。
【0032】
胎盤性GH変種使用療法
22kDa hGH-Vは、hGH-Nアイソフォームと比較して同様な体形成活性を有するが乳汁産生活性は低下していることが示された(Igout 1995)。22kDa hGH-Vはソマトゲンレセプターと結合し(Ray 1990)、下垂体切除ラットで発育を刺激する(MacLeod 1991)。22kDa hGH-Vはソマトゲンおよびラクトゲンレセプターの両方と結合するが、ソマトゲンレセプター対ラクトゲンレセプター結合親和性比は22kDa hGH-Vのそれよりも高い。この比はラット肝ラクトゲンレセプターを用いた実験では7−8倍(Ray 1990)、Nb2細胞ラクトゲンレセプターを用いた場合は30倍相違する(MacLeod 1991)。22kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vの脂肪分解活性およびインスリン様活性は、ラットの脂肪組織で同様であることが示された(Goodman 1991)。
GH-V遺伝子の第二のスプライス変種はmRNA内にイントロンDを保持し、26kDa hGH-Vアイソフォーム(hGH-V2)を生じる(Cooke 1988)。最近、hGH-V遺伝子の新規な2つの転写物が記載された(Boguszewski 1998)。hGH-V3は、24kDaタンパク質(219アミノ酸)が予想される、4番目のエクソンの末端近くのまた別のスプライシングによって生成され、この場合カルボキシ末端残基はhGH-Vと完全な配列相違を示す。開示される第二の転写物は、hGH-Nについて認められるものと同様なまた別のスプライス部位を利用し、hGH-Vの20kDaアイソフォーム(GenBank accession number:AF006060)が予想される。
20kDa hGH-Vの転写物は以前には検出されず、hGH-V遺伝子はこのスプライス部位を利用しないと考えられた(Cooke 1998;Estes 1992)。しかしながら、Boguszewskiらは妊娠期間満了の4つの胎盤のうちの2つおよび1つの異常胎盤でこのアイソフォームの転写物を検出した(Boguszewski 1998)。この転写物の発現における相違(前記転写物は全ての胎盤で見出されたわけではなかったので)は、部分的には、以前には検出されなかったことの説明となるかもしれない。転写物は検出されたが、コードされたタンパク質はまだ単離されておらず、その生物学的活性は不明であった。
上記の転写物の存在が知られたことは、前記が合成されえるということまたは前記の生物活性が予想できるということではない。例えば、20kDa hGH-Nは入手が困難であることが証明された。20kDa hGH-Nは下垂体から少量を精製することができるが、22kDa hGH-Nからの完全な分離は、2つのホルモン間の類似性のために困難である。メチオニル20kDa hGH-Nは大腸菌(E. coli)で発現されている。しかしながら、N-末端付加メチオニン残基は生物学的活性に影響を与える可能性があり、前記タンパク質はもまたメチオニル22kDa hGH-Nの事例のように不正確に折りたたまれる可能性があると考えられる(Hsiung 1988)。メチオニル20kDa hGH-Nは22kDa hGH-Nのわずか1/20のレベルで発現され、COS-7細胞で生成された20kDa hGH-Nは、22kDa hGH-Nの速度と比較して1/30の速度で分泌されることが報告され(Rincon-Limas 1993)、したがってUchidaらによる効率的な合成の開発は容易ではなかった(Uchida 1997)。
【0033】
下垂体から単離された20kDa hGH-Nおよび真性ではない組換え生成物に関する初期の研究は、“真性物”についての研究とは全く異なる結果を示した(Uchida 1997)。下垂体から精製された20kDa hGH-Nについての初期の研究は、20kDa hGH-Nの脂肪分解活性は22kDa hGH-Nよりはるかに弱かった(Frigeri 1979;Juarez-Aguilar 1995)。この結果は、真性配列を有する組換え20kDa hGH-Nを用いて得られた結果と一致しなかった(Asada 2000;Takahashi 2002)。メチオニル20kDa hGH-Nはグルコース不耐性を誘発し(Kostyo 1985)、インスリン感受性を障害する(Ader 1987)ことが示されたが、しかしながら20kDa hGH-Nに関するより最近の研究は、20kDa hGH-Nの糖尿病誘発性は22kDa hGH-Nよりはるかに弱いことを示した(Takahashi 2001;Ishikawa 2001)。種々の方法によって生成された20kDa hGH-Nの生物学的特性を記載した文献のそのような矛盾は、前記特性を予想しそれらを明示することは極めて容易ではないことを示している。
本発明の新規な特性には、20kDa hGH-VはPRLRとは結合せず、したがってGH-N代替療法に付随する乳汁産生副作用を全く生じないという驚くべき発見が含まれる。実施例1に記載したリガンド結合実験は、20kDa hGH-Vが純粋なソマトゲンのプロフィルを有することを示している。結合実験で観察された20kDa hGH-Vの体形成効果は、本発明者らによって実施されたin vivo実験で確認された(実施例2)。
20kDa hGH-V変種の投与は、22kDa hGH-Nの脂肪分解作用と同様に体形成作用を維持するが、22kDa hGH-Nを用いる通常療法の乳汁産生作用は取り除かれる。ヒトGHは、活性なhGHレセプター(hGHR)およびヒトPRLレセプターの両レセプターに結合することが知られている。PRLRレセプターを介する22kDa hGH-N作用は、液体の保持(Satozawa 2000;Prod Info Humantrope(商標), 2003;Prod Info Norditropin(商標), 2001;Prod Info Serostim(商標), 2003);女性化乳房(Prod Info Humantrope(商標), 2003;Prod Info Nutropin(商標), 2003;Prod Info Nutropin AQ(商標), 2003;Prod Info Genotropin(商標), 2003)並びに腫瘍細胞増殖および腫瘍成長(Bole-Feysot 1998)を伴っていた。
【0034】
プロラクチンレセプターシグナリングは、腎のナトリウムおよびカリウム排出を減少させ(Richardson et al, Br J Pharmacol 47:623P-624P, 1973)、Na+-K+アデノシントリホスファターゼ(ATPase)を刺激し(Pippard et al, 1986 J Endocrinology 108:95-99)、汗のナトリウムを減少させ(Robertson et al. 1986 Endocrinology 119:2439-2444)、さらに腸の全領域で水および塩の吸収を増加させる(Mainoya et al. 1974 Endocrinology 63:311-317)ことが示された。その結果生じた血漿中のナトリウムレベルの増加は水分保持を付随する。細胞外液の容積の増加は浮腫を生じる可能性がある。さらにまた、血漿中の液体容積の増加は血圧上昇をもたらす可能性がある。水分と塩の恒常性が障害された高齢患者では、より高い死亡率が観察されている(Kokko, Juha P., Water and Sodium Regulation in Health and Disease. In: Nature Encyclopedia of Life Sciences. London: Nature Publishing Group; August 1999)。
プロラクチンレセプターシグナリングは、乳腺の発達と密接な関係を有している。22kDa hGH-Nはとりわけ、男性における性成熟女性の乳房と類似する乳房の発達と密接な関係を有している(Harman SM. 2004 J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 59(7):B652-8)。
さらにまた、プロラクチンの作用は、以下のように種々の形態の癌と密接に関係している:結腸直腸腫瘍の攻撃性の増加(Bhatavdekar et al 1994 J Surg Oncol 55:246-249)、いくつかのヒト乳癌株の増殖(Kiss et al. 1987 J Natl Cancer Inst 78:993-998)、ヒトBPH上皮細胞の増殖(Syms et al. 1985 Prostate 6:145-153)。22kDa GHは前立腺の癌の発育に参画することが示された(Weiss-Messer et al. 2004 Mol Cell Endocrinol. 220(1-2):109-23)。
【0035】
発明者らは、20kDa hGH-V、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは、通常の22kDa hGH-NまたはhGHよりもGH代替療法としてより有用であることを見出した。20kDa hGH-V、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは、(1)所望の体形成作用、(2)プロラクチンレセプターとのより低い結合親和性および(3)望ましくない副作用(例えば乳汁産生作用)をより少なく有するという発明者らの発見によって、これらの変種は、通常療法に代わる望ましい選択肢を医師に提供することができる。我々は予期に反して、20kDa hGH-Vは、20kDa hGH-N または22kDa hGH-Vのいずれよりも望ましくない副作用が少なくさえあることを見出した。ただし20kDa hGH-Vは20kDa hGH-Nまたは22kDa hGH-Vよりも少ない副作用を示すが、これら3つの変種のいずれも22kDa hGH-Nよりも有益である。20kDa hGH-N(実施例1、図7)および22kDa hGH-V(Igout 1995)は22kDa hGH-Nよりも実質的に低い親和性でPRLRと結合したが、20kDa hGH-Vは、図7に示したように、PRLRとは結合するとしても非常に弱く結合した。
22kDa hGH-Nとの比較では、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは各々、肝臓酵素のアルカリ性ホスファターゼ(ALP)のより低い血中レベル増加をもたらした。予期に反して、20kDa hGH-Vは実際血漿アミラーゼレベルを減少させることを本発明者らは見出した。血漿ALPの増加は通常、薬剤の肝毒性または患者の肝疾患の指標である。したがって、22kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび20kDa hGH-Vは、GH-代替療法を必要としている成人患者にとって22kDa hGH-Nよりも安全な選択肢であるように思われる。
さらにまた、22kDa hGH-Nと比較して、20kDa hGH-N、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Vは各々、血漿アミラーゼ濃度に対してより少ない副作用を示し、20kDa hGH-Vがもっとも少ない副作用を有し、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nがアミラーゼに対してそれぞれ順により大きな副作用を有する。しかしながら、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは血漿アミラーゼのいくらかの増加を生じるが、これらの増加は22kDa hGH-Nによって生じる増加よりも低い。
したがって、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vの使用は、通常のGH療法の望ましくない副作用が有害である状況では所望することができる。20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vを含む医薬の製造は多数の症状の治療の改善をもたらし、したがって通常のGH療法に付随する罹患率および死亡率を減少させるために使用することができる。
【0036】
20kDa hGH-Vの合成および製造
本発明のポリペプチドは単離された形態で提供され、さらにいくつかの実施態様では精製することができる。“単離される”という用語は、物質がその本来の環境から取り出されることを意味する。
本発明のポリペプチドは、天然の状態から精製されたタンパク質、化学合成生成物から誘導するか、または組換え技術によって製造することができる。
ある実施態様シリーズでは、ポリペプチドは組換え技術によって製造することができる。宿主細胞を発現ベクターで形質転換し、さらにプロモーターの誘導、形質転換体の選別及び/又は20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nまたは22kDa hGH-Vを生成する遺伝子の増幅に適切なように改変した通常の栄養培地で培養する。培養条件、例えば温度、pHなどは発現のために選択した宿主細胞のために用いられるものであり、当業者には明白であろう。この考察の目的のために、“DNA”、“遺伝子”および“cDNA”という用語は、“RNA”または“mRNA”という用語と、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド配列がポリペプチドの生成に必要な情報を伝達するという意味で等価でありえるということは理解されよう。したがって、RNAについて言及する場合は、塩基ウラシル(U)が用いられ、一方DNAについて言及する場合は塩基チミジン(T)が用いられる。オリゴヌクレオチドがRNAでるかまたはDNAであるかにかかわらず、生成されるポリペプチドはいずれのタイプのオリゴヌクレオチドを用いても製造することができることは理解されよう。
原核細胞および真核細胞宿主とともに使用されるクローニングベクターおよび発現ベクターの例は、例えば以下の文献で見出すことができる:Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Springs Harbor, NY (2001)。
【0037】
ポリヌクレオチド(例えば配列番号:3またはその実質的等価物)は組換え技術によってポリペプチドを製造するために用いることができる。ポリペプチドの発現のために、ポリヌクレオチドを種々の適切なベクターまたはプラスミドのいずれかに含ませることができる。そのようなベクターには以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):染色体、非染色体および合成DNA配列(例えばSV40誘導体)、細菌プラスミド、ファージDNA、ウイルスDNA(例えばワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスなど)。
ある種の実施態様では、20kDa hGH-Vをコードするオリゴヌクレオチドを発現させてmRNAを生成することができる。前記mRNAを翻訳して26アミノ酸の20kDa hGH-Vのシグナル配列を含むポリペプチド(例えばMet-26−Ala-1)を得ることができる。続いて、治療に用いられる“成熟”ペプチドを遊離させるために、内部Ala−Phe結合に選択的なエンドペプチダーゼによる前記に続く切断を用いることができる。そのようなエンドペプチダーゼの一例は中性エンドペプチダーゼ(E.C.3.4.24.11)であり、前記は、もっぱら小さな脂肪族アミノ酸(例えばGly、Ala)と芳香族(Phe)または疎水性(例えばLeu、Ile)アミノ酸との間でペプチドを切断する酵素である。他のエンドペプチダーゼも当業界で公知であり、本明細書でさらに記載する必要はない。
他の実施態様では、開始コドン(ATG)およびそれに続くPheのためのコドン(例えばTTTまたはTTC)を含む発現カセットを用いて、成熟20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vを製造することができる。それ以外の点では開放読み枠の残余の部分は図1に記載のものと同一である。翻訳時に、アミノペプチダーゼを用いて前記ペプチドを切断してN-末端Met残基を除去し、それによって“成熟” 20kDa hGH-Vを製造することができる。
【0038】
さらに別の実施態様では、3'セグメント(前記セグメントは前記ポリペプチドを発現する細胞によって通常は切断されるリーダー配列をコードする)が、Phe1のためのコドンTTTまたはTTCの前に付加されてある発現カセットを構築することができる。したがって、前記リーダー配列は切断され、“成熟”ポリペプチド20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vがそれに続く使用のために製造される。
細菌を使用する場合の有用な発現ベクターは、機能的プロモーターに連結された、所望のタンパク質をコードするインフレームDNAを適切な開始および終了シグナル(例えば開始(ATG)および終止コドン)とともに挿入することによって構築することができる。所望の場合には、エンハンサーエレメントもまたオリゴヌクレオチドの発現を増加させるために、或いは調節するために取り入れることができる。ベクターは1つまたは2つ以上の選別可能な表現型マーカーおよび複製起点を含み、ベクターの維持を担保し、さらに所望の場合には宿主内での増幅を提供することができる。
適切なベクターが当業者には公知で多くが市販されている。適切なベクターには以下のベクターが含まれる(ただしこれらに限定されない):細菌ベクター:pBs、pQE-9(Qiagen)、ファージスクリプト、PsiX174、pBluescript SK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、PNH18a、pNH46a(Stratagene)、pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);真核細胞ベクター:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)など。
適切なDNA配列を多様な方法によってベクターに挿入することができる。一般的にはDNA配列は、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に当業者に公知の方法によって挿入することができる。ある実施態様シリーズでは、制限酵素NcoIおよびHindIIIが用いられる。
【0039】
発現ベクター内のDNA配列は、適切な発現コントロール配列(プロモーター)に機能的に連結してmRNA合成を指令することができる。そのようなプロモーターの例には、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lac、trp若しくはRacA、ファージラムダPLプロモータおよび、原核細胞若しくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御する既知の他のプロモーターが含まれる。
適切なプロモーターの選別は当業者の技術範囲内である。プロモーターの例には、細菌プロモーター(例えばlacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPR、trcなど)および真核細胞プロモーター(CMV極初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルス由来のLTR、マウスメタロチオネイン-Iプロモーターなど)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
しかしながら、上記は単なる例として列記され、他のプロモーターも用いることができる。遺伝子の発現をモニターおよび定量する方法は当業界では公知であり、20kDa hGH-Vの製造のために発現レベルを実証するために用いることができる。
発現ベクターはまた翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写終了因子を含むことができる。ベクターはまた発現を増幅させる適切な配列(エンハンサー)を含むことができる。
哺乳動物の発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーターおよびエンハンサー並びに必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及び/又はアクセプター部位、転写終了配列並びに5'フランキング非転写配列を含むことができる。
さらにまた、発現ベクターは、形質転換宿主細胞の選別のための表現型の特徴(選別マーカー)を提供するための遺伝子を含むことができる。適切な選別マーカーには、真核細胞培養のためにはジヒドロホレートレダクターゼ(dfr)若しくはネオマイシン耐性(neo)、または大腸菌ではテトラサイクリン若しくはアンピシリン耐性のようなものが含まれる。
【0040】
ベクターはまた、翻訳されたタンパク質の細胞周辺腔、細胞膜または細胞外培養液への分泌を誘導することができるリーダー配列を含むことができる。
適切なプロモーターまたは制御配列と同様に適切なDNA配列を含むベクターを用いて、前記タンパク質を発現することができる適切な宿主を形質転換することができる。適切な宿主には、細菌(例えば大腸菌(E. coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、シュードモナス属、ストレプトミセス、スタフィロコッカスの種々の種);菌類細胞(例えば酵母);動物細胞(例えばサル腎線維芽細胞のCOS-7株および適合性ベクターを発現することができる他の細胞株、例えばC127、3T3、CHO、HeLa、BHK細胞株);植物細胞などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切な宿主の選択は当業者の技術範囲内であろう。ある実施態様では宿主細胞は大腸菌である。
構築物の宿主細胞内への導入はリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE、デキストラン仲介トランスフェクションまたはエレクトロポレーションによって実施できる(Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, 1986)。ある実施態様では、構築物はカルシウムを用いて導入される。
宿主細胞は、トリプトファン飢餓、イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)、ナリジクス酸などを含む種々の方法(ただしこれらに限定されない)によって誘導して所望のタンパク質を発現させることができる。ある実施態様シリーズでは、発現はナリジクス酸で誘導することができる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAの真核細胞による転写はエンハンサー配列をベクターに挿入することによって高めることができる。適切なエンハンサーは当業者には公知で、SV40の複製起点後期のエンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマの複製起点後期側のエンハンサー、アデノウイルスエンハンサーなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
当業者は当業界で公知のまた別の方法を用いて、発現系を作製し、さらにこれらの系を用いて治療用組換え体20kDa hGH-Vを製造することができることは理解されるところであろう。
ある種の宿主細胞は治療されるべき対象者に直接移植できることもまた理解されよう。例えば、自家細胞を患者から採集するか、または本発明の発現ベクターを異種細胞にトランスフェクトすることができる。続いて、そのような細胞を患者に移植し、20kDa hGH-Vの産生を誘導することによって、治療量の20kDa hGH-V のin vivo産生を得ることができる。
さらにまた、例えばウイルス(例えばアデノウイルス)またはリポソームを用いる遺伝子治療の方法は、治療されるべき動物の宿主細胞にin vivoで伝達されえる、20kDa hGH-V発現用発現カセットを含むことができる。
【0041】
20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vの単離
細胞を遠心によって採集し、物理的または化学的手段によって破壊し、さらに得られた粗抽出物を精製することができる。タンパク質の発現に用いた微生物細胞は、凍結融解の繰り返し、超音波処理、機械的破壊、細胞溶解剤、界面活性剤などの使用を含む任意の便利な方法によって破壊することができる。
GH変種は組換え細胞培養から多様な方法を用いて精製することができる。前記方法には、硫安若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性反応クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、ゲルろ過などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
細菌培養で生成される組換えタンパク質は、細胞ペレットの最初の抽出、それに続く1回また2回以上の塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィー工程によって単離することができる。タンパク質の再折り畳み工程は必要に応じて成熟タンパク質の立体配置を完成させるために用いることができる。SDS-PAGEおよびHPLCを最終精製に用いることができる。
他の実施態様では、タンパク質は、先ず初めに封入体を可溶化し、続いてイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過精製によって細菌培養から抽出することができる。続いてタンパク質は高pHで尿素を用いて再折りたたみに付される。
タンパク質の配列は、N-末端配列決定、タンパク分解マッピングおよびペプチド配列決定を含む任意の適切な方法(ただしこれらに限定されない)を用いて実証することができる。機能的な特徴は、例えばGHレセプターの活性化、免疫学的方法、培養GH-感受性細胞の刺激などを用いて判定することができる。ある実施態様シリーズでは、タンパク質は、hGH結合タンパク質と1:2複合体を形成するその能力を測定することによって有効性を確認することができる。他の実施態様では、タンパク質の機能はGHレセプターをトランスフェクトされた、例えばウサギ由来の細胞を活性化するその能力によって立証することができる。
【0042】
前記ポリペプチドを製造に組換え工程で用いた宿主にしたがって、本発明のポリペプチドはグリコシル化されたりまたはされなかったり、さらに最初の(-1位の)メチオニンアミノ酸を含むこともできる。ある種の原核性宿主細胞は、ある種の真核性宿主細胞がタンパク質をグリコシル化するようにはタンパク質をグリコシル化しないことが知られている。より高度なグリコシル化を促進するために、極めて高レベルの必須の単糖類またはそれらの前駆体を増殖培地に提供することができる。例えば、シアル酸、フコース、ガラクトースまたはN-アセチル-ガラクトサミンを含むタンパク質の場合、これら栄養素に富む細胞培養液を所望に応じて用い、20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vのグリコシル化形の発現レベルを高めることができる。GH変種をグリコシル化するために必要な他の糖を増殖培地の補充に同様に用いることができることは容易に理解されよう。さらにまた、所望の場合は、宿主細胞のグリコシルトランスフェラーゼ及び/又はヌクレオシド三リン酸グリコシル化酵素(糖付加酵素)の発現を高め、糖残基の20kDa hGH-Vへの付加を増加することができる。グリコシル化の更なる記述は以下の文献で見出すことができる:Alberts et al., Molecular Biology of the Cell, Fourth Edition, Garland Science (2002)。
20kDa hGH-Nの14位のアミノ酸の性質に関してはいくらかあいまいさが存在する。Martialら(Science 205:602 (1979))は、この位置のアミノ酸をコードするmRNA配列はメチオニンをコードするAUGであると報告し、Masudaら(Biophysica Acta 949:125 (1988))は、N-末端から14番目のアミノ酸をコードするcDNA配列はセリンをコードするAGTであると報告した。20kDa hGH-V変種のこの位置のアミノ酸はメチオニンであると考えられているが、本発明では両方の変種を含むと理解される。
さらにまた、1つまたは2つ以上のアミノ酸が置換、挿入または欠失されているアミノ酸配列は20kDa hGH-V変種のカテゴリーに含まれると理解されるべきである。保存的変種、サイレント変種および保存的アミノ酸置換もまた本発明の変種のカテゴリーに含まれると考えられる。
ヌクレオチド配列の保存的変種には、アミノ酸配列における変化を生じないヌクレオチド置換が、保存的アミノ酸置換またはヌクレオチドから翻訳されるポリペプチドの性状に実質的に影響を与えないアミノ酸置換を生じるヌクレオチド置換と同様に含まれる。
【0043】
医薬組成物および投与
GH療法は2つのカテゴリー、生理学的および薬理学的カテゴリーに分割することができる。生理学的療法(代替療法)はより低用量を必要とする。代替療法における出発投与量は、小児のGHの場合1日につき0.02から0.05mg/kgで、成人では1日につき0.00625から0.025mg/kgの範囲である。70kgの男性の場合、通常の出発用量は0.3mg/日で維持用量は0.35から0.56mg/日である。GH代替はいくらかの患者については生涯投与されえる。薬理学的療法は、例えばエイズ関連るい痩の治療では、より高い用量を必要とし、小児では>1mg/日で、成人では1から3mg/日である。この高い用量ではますます深刻な副作用が観察されえる。
本発明はまた本明細書に開示した20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vを含み、この場合前記変種は1つまたは2つ以上の水溶性ポリマーと結合され、アゴニスト特性を維持しながら所望される変種のさらに別の特性が提供される。そのような特性には溶解性の増加、安定性の増加、免疫原性の低下、タンパク質分解耐性の増加、in vivo半減期の増加および腎クリアランスの低下が含まれる。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび多糖類が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切な結合物の生成方法は当業者には公知である。ポリエチレングリコールが特に好ましく、結合方法は例えばWO95/32003に記載されている。
一般的には、本発明の化合物は医薬組成物として以下のルートの1つによって投与することができる:経口的、局所的、全身的(例えば経皮、鼻内または座薬により)、非経口的(例えば筋肉内、皮下または静脈内注射)、移植によって、および輸液によって(例えば浸透圧ポンプ、経皮膏薬などの装置による)。ある種の実施態様では、皮下若しくは筋肉内注射、または注射針を含まない装置による注入を用いることができる。後者の場合、化合物を含む溶液は微細な霧として皮膚から拡散され、皮下にデリバリーすることができる。
【0044】
組成物は、錠剤、ピル、カプセル、半固形物、散剤、徐放性製剤、溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾルまたは任意の他の適切な製剤の形態をもち、さらに医薬的に許容できる賦形剤を含むことができる。いくつかの実施態様では、組成物は、投与前に再構成される粉末形であるか、またはGH変種を含む溶液または懸濁液として存在する。適切な賦形剤は当業者には周知であり、それら賦形剤および組成物の製剤方法は以下のような標準的参考文献で見出すことができる:A.R. Gennaro: Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Lippincott, Williams and Wilkins, Philadelphia, PA (2000)。好ましい賦形剤には、塩化ナトリウム、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、ポリソルベート20、クエン酸ナトリウム、マンニトール、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、グリシンおよびグリセリンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切な液状担体には(特に注射溶液の場合)、滅菌水、食塩水溶液、デキストロース水溶液などが含まれ、等張溶液が非経口投与のために好ましい。
本発明の化合物はまた徐放系によって適切に投与される。適切な徐放性組成物の例には、形状をもつ物品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態にある半透性ポリマーマトリックスが含まれる。徐放性マトリックスには、ポリラクチド(米国特許3,773,919号;EP58,481)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートとのコポリマー、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレンビニルアセテートまたはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が含まれる。徐放性組成物はまたリポソームに封入された化合物を含むことができる。前記化合物を含有するリポソームはそれ自体公知の方法によって製造される:DE3,218,121;EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出願83-118008;米国特許4,485,045号および4,544,545号;並びにEP102,324。
上記の記載は例示のみを目的としており、本発明の範囲を制限しようとするものではないことは理解されよう。むしろ上述の方法および組成物の改変は容易に実施でき、さらにそのような全ての変型は本発明の範囲内に包含されることは当業者には容易に理解されるところであろう。さらに本明細書に引用された全ての参考文献は、参照により本明細書にその全体が含まれる。
実施例
本発明の他の特徴は、本発明の方法および組成物の特性を明示する具体的な実施例に関して説明される。以下の実施例は本発明の利点を例示しようとするもので、本発明の範囲を制限しようとするものではない。
【0045】
実施例1:リガンド結合
材料と方法
hGH、bGHおよびoPRLと比較して、hGH変種の結合作用を解明するための実験を、確立されたヒツジの肝臓膜系を用いて実施した(B.H. Breier et al. Endocrinology 135:919, 1994)。
この系は、放射能標識リガンドとして125I-rbGHまたは125I-oPRLのどちらかを使用することによってそれぞれ純粋な体形成活性および乳汁産生活性のマーカーであることが示されたので選択した。125I-hGHの使用は体形成活性および乳汁産生活性が混合したペプチドについて適切である。
材料
ヒツジの肝臓組織はロムニ‐ドルセット(Romney-Dorset)交配去勢オスの子羊から入手した。前記動物は健康であり、屠殺前まで栄養状態は高いレベルに維持されていた。全ての動物はバルビタールの過剰投与によって屠殺し、肝臓は死亡から5分以内に採集した。肝臓を切断し、食塩水で洗浄し、-20℃で凍結した。実験はオークランド大学(University of Auckland)の動物倫理委員会で承認された。
ミクロソーム膜の調製
ヒツジの肝臓組織を4℃で融解して小片(約1g)に切断し、冷(4℃)シュクロース(0.3M)中で洗浄した。続いて組織を秤量した(45Tiローターの各管について最大3g)。0.3Mの冷シュクロース(30μg/mLのトラシロール並びに各々3μg/mLのペプスタチン、アンチパイン、ロイペプチンおよびベンザミジンを含有する)を最初の肝臓重量の1:3(w/v)の比で前記管に添加した。ホモジナイザー(Janke and Kunkel)および大型ホモジナイザーヘッド(S25N-10G)を用いて、最高速度で2分および低速で0.5分(合計2.5分)の均質化を実施した。ホモジネートの温度を0.5分毎にチェックし、10℃以下に維持した。前記ホモジネートを1500Xgで20分、4℃で遠心し、得られた上清を15,000Xgで20分および100,000Xgで90分(29,400RPM、45Ti)、4℃で連続的に遠心した。100,000Xgのペレットを氷上で、最初の肝重量に対して1:2(wt/vol)の比で4MのMgCl2とともに20分インキュベートした(内因性リガンドの除去のため)。続いて前記調製物を125,000Xg(33,000RPM、45Ti)で遠心し、最初の肝重量に対して1:5(w/v)の比で各管に25mMのトリス緩衝液を添加した。得られたペレットを0.025MのTRIS緩衝液中で再懸濁し、再び100,000Xgで30分、4℃で遠心した。最終ペレットのアリコットを25mMの冷トリス(上記工程で述べた全てのプロテアーゼ阻害剤を含む)中で本来の組織重量1gに対して1mLの比で再懸濁した。ペレットを均質化によって再懸濁させ、さらにガラス/テフロンホモジナイザー中で3ストロークにより均質化した。続いてMMPをアリコットに分割し、-20℃で凍結した。
【0046】
放射能レセプターアッセイ(RRA)
RRAのためのホルモン調製物は、ヒツジの組換えGH、ヒトの組換えGH-N 22kDa、ヒトの組換え20kDa GH-N、ヒトの組換え22kDa GH-V、ヒトの組換え22kDa GH-V、およびoPRLであった。全てのホルモンは秤量してアリコットに分割し、必要な段階希釈を実施した。ウシGHを0.1MのNaHCO3(pH8.3)に溶解した。ペプチドの放射能標識は、以前に記載(Bereier et al. 1988 J Endocrinol 116:169-177)されたようにラクトペルオキシダーゼ法を用いて実施し、比活性は40−50μCi/μgの範囲であった。全てのアッセイはヨウ素化および放射能リガンドの精製(セファデックスG-100カラム)の5日以内に実施し、モノマーリガンドと等価の分画のみをアッセイに用いた。アッセイのインキュベーション中に放射能リガンドの顕著な分解はなかった。ミクロソーム膜調製物および不溶性分画のRRAは、トリプリケートおよび2セットのBo(Bmax)管トリプリケートで実施した。アッセイ緩衝液は以下の成分から成っていた(pHは濃HCLで7.4に調節):0.025MのTRIS、0.01MのCaCl2、0.2%(wt/vol)のBSA、0.2%(wt/vol)のアジ化ナトリウム、トラシロール(30μg/mL緩衝液)、並びにロイペプチン、アンチパイン、ペプスタチンおよびベンザミジン(全て3μg/mL緩衝液)。膜調製物を400μLのインキュベーション容積で以下とともに20時間4℃でインキュベートした:非標識ホルモン、および約25000cpm/100μL緩衝液の[125I]-rbGHまたは[125I]-rhGHまたは[125I]-oPRL。非特異的結合は過剰の適切な非標識リガンド(10−100μg/mL)の添加によって決定した。インキュベーションは2mLの0.025M氷冷トリス-HCL(pH7.4)の添加によって終了させた。結合ホルモンおよび遊離ホルモンを4℃で3900RPMでの遠心によって分離した。上清を廃棄し、ペレットをガンマスペクトロメーターで計測した。
【0047】
結果
競合結合実験による、rbGHおよびrhGHと比較したhGH変種の体形成(125I-rbGHを使用)特性の判定
全てのhGH変種は強い体形成性潜在能力を示した。結合曲線の置換パターンは全ての化合物で類似していた。hGH変種の体形成性潜在能力の大きさはrhGHとrbGHの間であった。hGH変種は極めて類似する体形成性結合を示した(図3および図4)。
競合結合実験による、rbGHおよびrhGHと比較したhGH変種の体形成および乳汁産生(125I-rhGHを使用)混合特性の判定
2つの明らかに異なる置換曲線が存在した。第一に、hGH置換の急勾配曲線は強い乳汁産生活性を示唆した。第二に、bBHの低い置換は弱い乳汁産生活性を示した。hGH変種の大半はhGH(強力な乳汁産生活性)の置換パターンにしたがった。驚くべきことに、20kDa hGH-Vは低いbGH様置換パターンにしたがい、弱い乳汁産生活性を示唆した(図5、6および8)。
競合結合実験による、rbGH、下垂体oPRLおよびrhGHと比較したhGH変種の乳汁産生(125I-oPRLを使用)特性の判定
アッセイ番号0439(図7)は、20kDa hGH-Vはほとんど(もし存在するとしても)125I-oPRLとの結合作用を提示しないことを示した。
結果の解釈
20kDa hGH-VはbGHレセプターとの強い結合親和性を示し、前記変種の強力な体形成作用と一致した。しかしながら、20kDa hGH-Vはプロラクチンレセプターと、もし存在するとしても弱く結合するのみであり、前記変種の弱い乳汁産生活性と一致した(図7)。この結合実験を基に、我々は、生物学的実験が20kDa hGH-Vは発育促進作用および極めて弱い乳汁産生作用を示すであろうということを期待した。これらの予想は、下記の実施例に記載する実験によって立証された。
【0048】
実施例2:hGH変種の薬理学的実験
GHの20kDa胎盤性変種を含む治療の有効性を判定するために、本発明者らは、単離された成長ホルモン欠乏動物モデルにおいていくつかのGH化合物の発育、内分泌マーカーおよび代謝マーカーに対する作用を調べた。
実験手順:方法と分析手順
GH欠乏矮小(dw/dw)ラットはよく性状が調べられた先天性GH欠乏モデルである。これらのラットでは、他の下垂体栄養性ホルモンは正常な分泌プロフィルを維持するが、下垂体GHは選択的に正常レベルの約5%に低下している。後天的GH欠乏(下垂体切除による)を用いる他のモデルでは、GH以外の多数の下垂体ホルモンの欠乏および動物を不要な外科手術ストレスに暴露することによって混乱が生じる。したがって、GH-欠乏矮小ラットの使用によってヒトの症状における成長ホルモン療法の効果が予想される。
本発明者らは、これらの研究のために選択したGH-欠乏(dw/dw)矮小ラットに関する広範囲の基礎的研究データを収集した(Vickers et al., 1999;Breier et al., 1996;Gravance et al., 1997;Butler et al., 1994)。本発明者らは、我々が以前の実験で使用した同じコロニーを用いた。
オスのGH-欠乏矮小(dw/dw)ラットを離乳期(21−22日齢)にオークランド大学の動物リソースユニットで維持されているコロニーから購入した。動物をこの時期(すなわちに、実験時期の3−4週間前)入手して、環境に適応させさらに実験者による取り扱いに慣らす時間を与えた。動物を専用施設に収容し、標準的ラットケージおよび通常の明暗サイクルを用い、飼料および飲水に自由に接近させた。動物を離乳から実験の終了まで毎日モニターした。
7−8週齢で、体重のつり合ったオスのGH-欠乏矮小ラットを選び、6つの処置群の1つに振り分け(n=6)、賦形剤(生理的食塩水(0.9%))またはGHを与えた。処置群は以下のとおりであった:
【0049】
テスト化合物
hGHは生理学的食塩水(0.9%)を用いて再構成した。bGHは炭酸緩衝食塩水(pH9.4)を用いて再構成した。hGH変種は滅菌水(pH11.0)で再構成した。化合物は注射の日に新しく溶解した。注射(容積100μL)は皮下注射によって毎日2回8:00および17:00に実施し、極細ゲージの糖尿病用注射筒(29g)を使用した。動物を7日間処置し、最後の注射は一晩絶食後の8日目の朝に実施した。最後のGH注射後8日目の朝に動物を殺した。
観察
体重:動物の体重を実験中毎日午前8時−9時の間で測定した。臨床的変化、処置に対する反応、病気について個々の動物を毎日観察した。何らかの悪影響を示すストレス反応および関連する症状を示すものは処置群のいずれにおいても存在しなかった。
飼料の消費:飼料の摂取は試験の間毎日測定した。ラット当たりの相対的飼料摂取(消費飼料/グラム体重/日)は、各処置群の各ペアに与えられた飼料の量対食べ残された飼料の量を用いて算出した。
水の消費:水の消費は、実験中毎日同じ時間に水の容器の重さを測定することによって毎日算出した。
体長:体長(鼻‐肛門および鼻‐尾)および骨長(脛骨)は標準的な測定技術を用いて死後に、および末梢の定量的コンピュータ支援断層撮影法(pQCT、Stratec)解析によってもまた判定された。骨密度もまたpQCTにより判定した。
組織の測定:一晩の絶食に続いて8日目に、動物をハロタン麻酔後の断頭によって殺した。体長、死骸の重さ、器官(肝、脾、腎、副腎、心および下垂体)の重さ、および脂肪パッド(腹膜外部)の重さの測定値を記録した。
血漿の測定:血液サンプルを一晩絶食後に採集した。体幹血液はハロタン麻酔下での断頭に続いて採集した。サンプルはヘパリン処理管に採集し、血漿の採集のために遠心した。血液サンプルをインスリン*、グルコース、FFA、レプチン*、IGF-I、グリセロール、トリグリセリド、コレステロール、肝機能マーカー(ALT、AST、APL)およびタンパク質合成マーカーについて分析した。
血漿のFFA、トリグリセリドおよびグリセロールは診断用キット(それぞれBoehringer-Mannheim #1383175およびSigma #337)によって測定した。血漿IGF-Iは以前に記載されたようにRIAによって測定した。血漿グルコース濃度は比色プレートアッセイを用いて測定した。他の全ての血液分析(肝酵素、電解質)はBM/Hitachi737アナライザー(Gribbles Veterinary pathology, Auckland, New Zealand)によって測定した。
データ解析
データは、ポスト-ホック修正を用い一方向因子(one-way factorial)ANOVAによって解析した(因子=処置)。発育速度はまた反復測定により解析した。体脂肪はまた補助変量(covariate)として体重を用いANCOVAによって解析した。
以前のデータは、提唱実験のためのパワー計算の基礎を提供した(α=0.05と仮定)。インスリン感受性については、nが10の場合パワー80%で0.2ng/mLの変化が、95%で0.26ng/mLの変化がSD=0.15ng/mLで検出されるであろう。体長については、nが10の場合パワー80%で6.88mmの変化が、95%で0.797mmの変化がSD=5.2mmで検出されるであろう。
【0050】
結果
体重:体重は食塩水と比較して全ての処置群で顕著に増加した(図9、10Aおよび10B)。統計的有意の程度は以下のように提供される:
bGH対食塩水 p<0.0001
hGH対食塩水 p<0.0001
胎盤性22kDa対食塩水 p<0.0001
下垂体20kDa対食塩水 p<0.0001
胎盤性20kDa対食塩水 p<0.005
bGH、hGHまたは22kDa胎盤性GH変種で処置した動物間では総体重増加において統計的に有意な相違は存在しなかった。20kDa胎盤性変種で処置された動物は、他の全てのGH処置群と比較して体重増加の顕著な低下を示した。20kDa下垂体変種で処置された動物は、bGHおよび胎盤性22kDa変種で処置された動物よりも少ない体重増加を示した(hGH対下垂体20kDa;p=0.07)。
図10Bは、全ての被検GH変種について、体重増加で初期増加があり、続いて食塩水で観察された変化の方向への部分的復帰が存在することを示している。しかしながら、20kDa胎盤性GH変種については、最初の2日間にわたる処置での初期体重増加の後は食塩水処置動物と同様な毎日の体重増加に復帰した。bGHおよび下垂体20kDa処置動物は4日目に体重増加におけるわずかなリバウンドを示したように思われた。hGHおよび胎盤性22kDa処置動物は顕著な初期体重増加と、それに続く定常的な毎日の体重増加を試験の残りの部分について示した。
脛骨の長さ:脛骨の長さは食塩水コントロールと比較して、わずかにしかしながら明瞭に全ての処置群で増加した(図11)。GH処置群間ではいずれの場合も統計的に有意な相違は脛骨長に関しては観察されなかった。総骨面積および皮質骨面積は、20kDa下垂体GH変種で処置した動物では顕著に増加した。骨密度における変化はいずれの処置群でも観察されなかった。骨強度指数は、応力張力指数(stress strain index、SSI)で測定したとき食塩水コントロールと比較してbGH、下垂体20kDa GHおよび胎盤性変種処置動物で増加した。
体長:鼻肛門長は食塩水コントロールと比較して全ての処置群で増加した。前記増加は、20kDa胎盤性変種を除いて全ての群で統計的に有意であった。20kDa胎盤性変種は、統計的有意(p=0.0576)に達する体長増加に向けて強い傾向を示した(図12)。
飼料摂取:総飼料摂取は、コントロールと比較してbGH、hGHおよび胎盤性22kDa変種処置動物で増加した(図13、上段)。飼料摂取はまた、20kDaおよび22kDa胎盤性変種処置群間で顕著に相違した。しかしながら、飼料摂取が体重の変化に対して調節されたときは、相対的飼料摂取における顕著な相違は観察されなかった。ただし食欲増加傾向は22kDa胎盤性変種処置群で明白であった(p=0.1)(図13B、下段)。
水の摂取:水の摂取は、食塩水コントロールと比較していずれの処置群間でも試験中に顕著には相違しなかった。
【0051】
組織重量
組織重量は別に記載がなければ体重の百分率として解析した。
腹膜外部の脂肪沈積:腹膜外部脂肪パッドの重量は食塩水コントロールと比較して全てのGH処置群で顕著に減少した(図14)。bGHは各hGH変種よりも顕著に脂肪分解性であった。胎盤性変種間では反応は顕著には相違しなかった(胎盤性20kDa対胎盤性22kDa、p=0.53)。
肝臓:相対的な肝臓サイズは、食塩水処置動物と比較して22kDa胎盤性変種処置動物で増加した。肝サイズは、食塩水処置動物と比較して20kDa胎盤性変種処置動物で相対的に減少した。
脾臓:相対的脾臓重量は、食塩水処置動物と比較して全てのGH処置群で増加し、22kDa胎盤性GH変種処置動物でもっとも著名であった。
心臓:心臓サイズにおいてはいずれのGH処置群および食塩水コントロール間にも顕著な相違はなかった。20kDa胎盤性GH変種処置動物では心臓サイズの増加傾向があった(食塩水に対してp=0.09)。
腎臓:腎臓のサイズは、食塩水コントロールと比較していずれの処置によっても影響されなかった。
副腎の腺:副腎の腺のサイズは、コントロールと比較して、bGH、下垂体20kDa GH、胎盤性20kDaおよび22kDa変種処置動物で顕著に増加した。副腎サイズではhGH処置による影響はなかった(p=0.1551)。
脳:相対的脳重量は、食塩水処置動物および20kDa胎盤性変種またはhGH処置動物と比較して22kDa胎盤性GH変種処置動物で減少した。
精巣:相対的精巣サイズは、コントロールと比較してbGH、hGH、下垂体20kDa hGHおよび22kDa胎盤性変種処置動物で増加した。胎盤性20kDa変種処置は相対的な精巣サイズに対して影響しなかった(p=0.83)。
【0052】
血漿の測定
IGF-I:血漿IGF-Iは全てのGH化合物によって増加した(図15)。前記増加は、下垂体20kDa、胎盤性GH 20kDaおよび胎盤性22kDa GH変種処置群で統計的に有意であった。1.0mg/kg/日のbGHまたはhGH処置は血漿IGF-I濃度を顕著には上昇させなかった(それぞれp=0.17およびp=0.13)。胎盤性22kDa GHは、hGHまたはbGH処置の血漿IGF-Iレベルを顕著に超えて血漿TGF-Iレベルを上昇させた。
グルコース:絶食血漿グルコース濃度に対してはいずれの処置群でも影響はなかった。
遊離脂肪酸(FFA):絶食血漿遊離脂肪酸濃度に対してはいずれの処置群でも統計的に有意な影響はなかった。ただし22kDa hGHおよび下垂体20kDa HGでFFAにかすかな増加傾向があり、胎盤性20kDa hGHまたは胎盤性20kDa GHに対する反応でわずかな減少傾向があった(図16A;上段グラフ)。
トリグリセリド:胎盤性20kDa GHは、食塩水コントロールまたは下垂体20kDa若しくはbGH処置動物と比較して絶食血漿トリグリセリド濃度を顕著に減少させた(図16B;中央グラフ)。
グリセロール:食塩水コントロールと比較して、血漿グリセロール濃度に対してはいずれの処置群でも影響はなかった(図16C;下段グラフ)。bGH処置群と比較して、hGHおよび下垂体20kDa動物で血漿グリセロールは顕著に上昇した。hGH処置および下垂体20kDa GH処置動物と比較して、胎盤性22kDa処置群で濃度は顕著に低かった。
【0053】
生化学的マーカー
アルカリホスファターゼ(ALP):
血漿ALPは、bGH、hGHまたは22kDa胎盤性GH変種で処置された動物で顕著に増加した(図17)。ALP濃度に対して下垂体20kDaまたは胎盤性20kDa変種の影響はなかった(それぞれp=0.16および0.26)。
ナトリウム:血漿ナトリウム濃度は、食塩水コントロールと比較してhGH処置動物で顕著に増加し、さらにbGH処置動物でナトリウム濃度上昇の強い傾向が観察された(食塩水に対してp=0.06)。胎盤性GH変種および下垂体20kDa GHは血漿ナトリウムに対して影響をもたなかった。
クレアチンキナーゼ(CK):血漿CKは、食塩水コントロールと比較して胎盤性20kDa GH処置動物で顕著に減少し、さらにこの群ではbGHまたは下垂体20kDa GH処置動物と比較して血漿CKは顕著に低かった(食塩水に対してhGHではp=0.08、胎盤性22kDaではp=0.2)。
カリウム:血漿カリウム濃度は、食塩水コントロールと比較して下垂体20kDa GHおよびhGH処置群で顕著に増加した。bGHおよび胎盤性GH変種は血漿カリウム濃度に対して影響を示さなかった。
ビリルビン:血漿ビリルビン濃度は、食塩水コントロールと比較していずれの処置群でも顕著には変化しなかった。
アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST):AST濃度は、食塩水コントロールと比較してbGH処置動物で顕著に減少した。hGH変種のいずれも血漿ASTに対しては顕著な影響を全く示さなかった。
グロブリン:血漿グロブリンは、胎盤性変種および20kDa下垂体GH処置動物で顕著に増加した(図18)。bGHまたはhGH処置は血漿グロブリンに対して顕著な影響を示さなかった。ガンマグロブリンの増加は、多発性ミエローマ、慢性炎症性疾患、過免疫、急性感染またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症を示唆しているかもしれない。
クレアチニン:いずれの処置群間においても血漿クレアチニンに差異はなかった。
尿素:食塩水コントロールに対していずれのGH処置も血漿尿素濃度に顕著な影響を与えなかった。
アミラーゼ:血漿アミラーゼ濃度は、食塩水コントロールと比較してbGHまたはhGH処置動物で顕著に増加した(図19)。胎盤性20kDa変種による処置は、食塩水処置動物と比較して血漿アミラーゼ濃度を顕著に低下させた。
アミラーゼは腺(例えば膵臓外分泌細胞、耳下唾液腺)によって産生されるので、血漿中でのその異常に高レベルの存在は膵臓または唾液腺に対する障害を示唆している可能性がある(前記障害によって間隙液およびそれに続く血漿中への漏出が生じる)。したがって、血漿アミラーゼの増加は急性膵炎、膵臓癌、胆嚢炎、異所性若しくは破裂性卵管妊娠、流行性耳下腺炎、腸閉塞、マクロアミレシア、膵管若しくは胆管閉塞または潰瘍穿孔を示唆しているかもしれない。
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT):血漿ALT濃度は、食塩水コントロールと比較してbGHまたは胎盤性20kDa GH処置動物で顕著に減少した。
リパーゼ:いずれの処置群でも血漿リパーゼ濃度に顕著な相違はなかった。
総タンパク質:食塩水コントロールと比較して血漿総タンパク質濃度に対する顕著な影響はなかった。22kDa胎盤性GH群では、GH処置動物と比較して総タンパク質濃度は顕著に低かった。
総コレステロール:食塩水コントロールと比較して血漿総コレステロール濃度は20kDa胎盤性GH群で増加した。22kDa胎盤性および20kDa胎盤性GH変種間には、コレステロール濃度に小さいが明瞭な相違があった(22kDaは2.9±0.1mmol/L、22kDaは2.5±0.1mmol/L、p=0.05)。
アルブミン:血漿アルブミン濃度は、下垂体20kDa GHまたは胎盤性20kDaおよび22kDa変種処置動物でわずかであるが明瞭に低下した。血漿アルブミン濃度は、bGHまたはhGH処置で顕著には変化しなかった。
アルブミンは肝臓で合成されるので、血清アルブミンの減少は肝疾患の結果かもしれない。前記はまた腎疾患の結果でもありある。腎疾患はアルブミンの尿への放出を許容する。アルブミンの減少はまた、栄養不良または低タンパク食によっても説明できる。正常以下のアルブミンレベルは、腹水(腹腔液)、糸球体腎炎(ろ過性腎疾患)、肝疾患(肝炎、肝硬変、肝細胞壊死)、吸収不良症状(例えばクローン病、スプルー、ウィップル病)、栄養不良、ネフローゼ症候群を示唆しているかもしれない。
ナトリウム/カリウム比(Na/K比):血漿Na/K比は、食塩水コントロールと比較してhGH処置動物で顕著に減少し、さらに下垂体20kDa群で傾向が観察された(食塩水に対してp=0.06)。
塩化物:血漿塩化物濃度は、食塩水コントロールと比較してhGHおよびbGH処置動物で顕著に増加し、さらに20kDa胎盤性GH群で強い傾向が観察された(食塩水に対してp=0.06)。
ヘマトクリット:絶食血液のヘマトクリットは全ての処置動物で顕著に低下した。他の処置群と比較して20kDa胎盤性変種処置動物では、ヘマトクリットの低下は著名ではなかった(図20)。統計的有意は下記に示される。
食塩水対bGH p=0.0003
hGH p=0.0008
下垂体20kDa p=0.0004
胎盤性22kDa p=0.042
【0054】
考察
全ての被検化合物は、食塩水処置動物の体重増加を超える顕著な体重増加を生じた。特に、20kDa hGH-Vは顕著な体形成作用を示し、したがってこれまで一般的にGHまたは他の変種で治療されていた疾患の治療に適した治療薬である。20kDa hGH-V群の体重増加は、48時間後の最初のピークの後この試験の残りの間、食塩水処置動物のそれに対応する体重増加に復帰した(図21)。しかしながら、体形成作用をもつ20kDa hGH-Vが脛骨長および鼻肛門長の増加(前記は他のGH処置群の作用とは統計的に有意であった)を引き起こすことは重要である。
20kDa hGH-Vの作用メカニズムは明確には知られていないが、20kDa hGH-V群における体重増加の減少は、20kDa hGH-Vの体形成特性が弱いというよりもむしろ、他の処置と比較して本化合物の水分保持特性の低下と密接な関係があるのかもしれない。GH治療のその特徴がよく調べられている作用は血漿体積の増加である(Johannsson et al., 2002)。血液のヘマトクリットは全ての処置群で減少したが、20kDa胎盤性GH群の血漿体積の増加は他の処置群の場合よりも穏やかであった。血漿ナトリウムは食塩水コントロールと比較してhGH処置動物では顕著に増加したが、他のいずれの処置によっても影響は示されなかった。
20kDa胎盤性GH変種は他のhGH変種のいずれとも同じように脂肪分解性であった。
興味深いことには、血漿IGF-IはbGHまたはhGH処置動物で増加した。強い増加傾向は明白であったが、統計的有意に達することができなかったのは、比較的低い用量、期間または場合によっては緩衝系の結果であるかもしれない。脾臓重量は、全てのGH処置群でわずかではあるが明瞭に増加し、これはげっ歯類でのGH処置後に通常観察されるものである。心臓の過形成はしばしばGH処置で観察されるが、本実験では心臓サイズの増加は観察されなかった。ただし20kDa胎盤性GH処置動物では相対的心臓サイズの増加傾向が観察された。相対的副腎サイズもまた全ての処置群で増加したが、hGH処置群は例外であった。
したがって、我々はここに開示した実験から以下のように結論した。第一に、20kDa hGH-V、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは、他のGH化合物を用いて通常的に治療される症状の治療に適した効果的な体形成薬剤である。正確なメカニズムははっきりとは判明していないが、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vが肝ミクロソームのGHレセプターと結合したという発見は、その体形成作用のメカニズムが通常のGH化合物のメカニズムと類似することを強く示唆している。
重要なことに、我々は予期せずして、20kDa hGH-Vの体形成作用は、通常のGH療法の後でしばしば観察される典型的な副作用を伴わないことを見出した。我々はまた、他のGH変種、すなわち20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、22kDa hGH-Nによる通常療法よりも望ましくない副作用が少ないことを見出した。特に、少なくとも肝臓および膵臓で障害の徴候が減少した。
通常のGH化合物はプロラクチンレセプターと結合し、そのメカニズムが通常療法の乳汁産生作用の原因である可能性がある。対照的に、20kDa hGH-Vはプロラクチンレセプターともし結合するとしても極めて弱く結合し、乳汁産生作用は生物学的または生化学的アッセイでおそらく見出されないであろうということが示唆される。他の変種、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、22kDa hGH-Nよりも弱い親和性でプロラクチンレセプターと結合し、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは22kDa hGH-Nよりの副作用が少ないことを示唆している。これらの結論は、肝毒性のためのマーカー(例えばアルカリホスファターゼ)は20kDa hGH-Vでは増加せず、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vによって幾分増加するが、通常のGH療法薬22kDa hGH-Nではより多く増加することを示した実際のin vivo実験例によって確認された。さらにまた、我々は、血漿アミラーゼレベルは20kDa hGH-Vによって増加しなかったので膵臓または唾液腺障害の徴候を認めなかった。これは、22kDa hGH-Nを用いる通常のGH療法に付随する血漿アミラーゼレベル増加とは際立ったコントラストを示している。最後に20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、20kDa hGH-Vの場合の副作用の欠如と22kDa hGH-Nの場合の周知の副作用との間で中等度の副作用を示した。
したがって、本発明者らは、ヒト成長ホルモン変種、すなわち20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、通常の成長ホルモン療法が望ましくない副作用を生じるような状況で有用な治療薬と成りえることを見出した。さらにまた、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、成長ホルモン療法が望ましい疾患の治療のための医薬の製造で用いることができる。
【0055】
参考文献
本明細書に引用した文献はいずれも参照により本明細書に含まれ、前記文献には下記リストの文献が含まれる。
Ader M, Agajanian T, Finegood DT, Bergman RN (1987) Endocrinology 120, 725-731.
Asada N, Takahashi Y, Wada M, Naito N, Uchida H, Ikeda M, Honjo M (2000) Mol. Cell. Endocrinol. 162, 121-129.
Boguszewski CL, Svensson P-A, Jansson T, Clark R, Carlsson LMS, Carlsson B (1998) J. Clin. Endocrinol. Metab. 83, 2878-2885.
Bole-Feysot C, Goffin V, Edery M, Binart N and Kelly P. 1998 Endocrine Reviews19(3); 225-268.
Breier BH, Funk B, Ambler GR, Surus A, Waters MJ and Gluckman PD. 1994. Endocrinology 135: 919-928.
Breier BH, Gluckman PD, Bass JJ. 1988 The somatotrophic axis in young steers: influence of nutritional status and oestradiol-17beta on hepatic high- and low-affinity somatotrophic biding sites. J Endocrinol 116:169-177.
Breier BH, Vickers MH, Gravance CG, Casey PJ. (1996) Endocrinology. 137(9):4061-4.
Butler AA, Ambler GR, Breier BH, LeRoith D, Roberts CT Jr, Gluckman PD. (1994) Mol Cell Endocrinol. 101(1-2):321-30.
Cooke NE, Ray J, Watson MA, Estes PA, Kuo BA, Liebhaber SA (1988) J. Clin. Invest. 82, 270-275.
Cutfield WS, Wilton P, Bennmarker H, Albertsson-Wikland K, Chatelain P, Ranke MB, Price DA. (2000) The Lancet 355, 610-13.
Daugaard JR, Laustsen JL, Hansen BS, Richter EA.(1999) J Endocrinol. 160(1):127-35.
Estes PA, Cooke NE, Liebhaber SA (1992) J. Biol. Chem. 267, 14902-14908.
Frigeri LG, Peterson SM, Lewis UJ (1979) Biochem. Biophys. Res. Commun. 91, 778-782.
Goodman HM, Tai LR, Ray J, Cooke NE, Liebhaber SA (1991) Endocrinology 129, 1779-1783.
Gravance CG, Breier BH, Vickers MH, Casey PJ. (1997) Anim Reprod Sci. 49(1):71-6.
Hsiung HM, Mizushima S (1988) Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 6, 43-65.
Igout A, Frankenne F, L'Hermite-Baleriaux M, Martin A, Hennen G (1995) Growth Regul. 5, 60-65.
Ishikawa M, Hiroi N, Kamioka T, Tanaka T, Tachibana T, Ishikawa H, Miyachi Y (2001) Eur. J. Endocrinol. 145, 6, 791-797.
Ishikawa M, Tachibana T, Kamioka T, Horikawa R, Katsumata N, Tanaka T (2000) Growth Horm. IGF Res. 10, 4, 199-206.
Johannsson G, Sverrisdottir YB, Ellegard L, Lundberg PA, Herlitz H. (2002) J Clin Endocrinol Metab. 87(4):1743-9.
Juarez-Aguilar E, Castro-Munozledo F (1995) Biochem. Biophys. Res. Commun. 217, 28-33.
Kostyo JL, Cameron CM, Olsen KC, Jones AJS, Pai RC (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. 82, 4250-4253.
MacLeod JN, Worsley I, Ray J, Friesen HG, Liebhaber SA, Cooke NE (1991) Endocrinology 128, 1298-1302.
Martin BC, Warram JH, Krolewski AS, Bergman RN, Soeldner JS, Kahn CR. (1992) Lancet 340, 925-9.
Ray J, Okamura H, Kelly PA, Liebhaber SA, Cooke NE (1990) J. Biol. Chem. 265, 7939-7944.
Ricon-Limas DE, Resndez-Prez D, Ortiz-Lopez R, Alvidrez-Quihui AE, Castro-Munozledo F, Kuri-Harcuch W, Martonez-Rodroguez HG, Barrera-Saldana HA (1993) Biochim. Biophys. Acta 1172, 49-54.
Satozawa N, Takezawa K, Miwa T, Takahashi S, Hayakawa M, Ooka H (2000) Growth Horm. IGF Res. 10, 187-192.
Takahashi S, Satozawa N (2002) Horm. Res. 58, 157-164.
Tsunekawa B, Wada M, Ikeda M, Uchida H, Naito N, Honjo M (1999) Endocrinology 140, 3909-3918.
Uchida H, Naito N, Asada N, Wada M, Ikeda M, Kobayashi H, Asanagi M, Mori K, Fujita Y, Konda K, Kusuhara N, Kamioka T, Nakashima K, Honjo M (1997) J. Biotechnol. 55, 101-112.
Vickers MH, Casey PJ, Champion ZJ, Gravance CG, Breier BH. (1999) Growth Horm IGF Res. 9(4):236-40.
Wada M, Uchida H, Ikeda m, Tsunekawa B, Naito N, Banba S, Tanaka E, Hashimoto Y, Honjo M (1998) Mol. Endocrinol. 12, 146-156.
Wang D, Sato K, Demura H, Kato Y, Maruo N, Miyachi Y (1999) Endocrine J. 46, 1, 125-132.
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】hGH変種のヌクレオチド配列を示す。ダッシュ記号は20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nにおける欠失部分を示す。
【図2】22kDa hGH-V、22kDa hGH-N、20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nの予想されるアミノ酸配列を示す。ダッシュ記号は欠失アミノ酸を示す。
【図3】非標識リガンドとして22kDa hGH-N、22kDa hGH-V、20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nを用いた標識rbGHとヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0426)。
【図4】非標識リガンドとして22kDa hGH-Nおよび20kDa hGH-Vを用いた標識rbGHとヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0440)。
【図5】非標識リガンドとしてrbGH、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vを用いた標識rhGH(22kDa hGH-N)とヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0434)。
【図6】非標識リガンドとしてrbGHおよび22kDa hGH-Vを用いた標識rhGH(22kDa hGH-N)とヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0435)。
【図7】非標識リガンドとして22kDa hGH-N、20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nを用いた標識ヒツジプロラクチン(“oPRL”)とヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0439)。
【図8】非標識リガンドとして22kDa hGH-N、リコンビナントウシ成長ホルモン(“rbGH”)および20kDa hGH-Vを用いた標識rhGHとヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0441)。
【図9】ウシ成長ホルモン(“bGH”)またはhGH変種による7日間の処理の間の体重(g)の累積変化を示す。
【図10】10Aおよび10Bは、食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後の総体重(g)の変化(図10A)および体重(g)の毎日の変化(図10B)を示す。
【図11】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットにおける頸骨長の変化を示す。
【図12】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットにおける鼻-肛門長の変化を示す。
【図13】13Aおよび13Bは、食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットの総食餌摂取(図13A)および体重に対して調整した食餌摂取(図13B)を示す。
【図14】食塩水、bGHまたはhGH変種による7日間処理後における、体重の百分率で表したラットの腹膜外部脂肪パッドの重さを示す。
【図15】食塩水、bGHまたはhGH変種による7日間処理後におけるラットの血漿IGF-I濃度を示す。
【図16】16A、16Bおよび16Cは、食塩水、bGHまたはhGH変種によるラットの処理の7日後における、絶食時血漿遊離脂肪酸(“FFA”、図16A)、トリグリセリド(図16B)およびグリセロール(図16C)を示す。
【図17】bGHまたはhGH変種で処理したラットの血漿中のアルカリホスファターゼの濃度を示す。
【図18】bGHまたはhGH変種で処理したラットの絶食時血漿グロブリン濃度を示す。
【図19】bGHまたはhGH変種で処理したラットの絶食時血漿アミラーゼ濃度を示す。
【図20】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットの血液ヘマトクリットを示す。
【図21】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットの累積体重増加を示す。データは平均±SEMである(n=6/群)。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願:
本出願は下記出願に対し優先権を主張する:米国仮特許出願60/496,970号(2003年8月20日出願、発明者Peter Gluckman and Stewart Gilmour、発明の名称“Enhanced Growth Hormone Therapy Using a 20kDa Placental Variant of Growth Hormone”(Attorney Docket No: ERNZ 1016 US0 DBB))。前記出願は参照により本明細書に含まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、成長ホルモンが望ましい治療方法となる症状(condition)および疾患(disease)に関する。特に本発明は、変種の成長ホルモンが用いられる症状および疾患の治療に関する。より具体的には、本発明は、20キロダルトンの胎盤性成長ホルモン変種(“20kDa hGH-V”)が用いられる症状および疾患の治療に関する。
【0003】
背景技術
2つの遺伝子によって生成される、いくつかの天然に存在する成長ホルモンのアイソフォームが存在する。1つの遺伝子は下垂体で発現されるヒト成長ホルモン-N(“hGH-N”、“hGH-1”としても知られている)であり、1つは胎盤で発現されるヒト成長ホルモン-変種(“hGH-V”、“hGH-2”としても知られている)である。hGH-Nの主要形態は、191アミノ酸から成る22kDaタンパク質である。hGH-Nの第二の形態は同じ遺伝子のまた別のスプライシングによって生成され、このスプライシングは、22kDaのhGHのアミノ酸32−46に対応する領域の欠損を生じて20kDaタンパク質(20kDa hGH-N)を生成する(米国特許6,399,565号および6,436,674号)。hGH-Nの種々の他のスプライス変種が開示されている(米国特許4,670,393号および5,962,411号)。
hGH-V遺伝子は22kDaのhGH-Vアイソフォームをコードし、前記はホルモン配列の全体を通して種々の位置に存在する13のアミノ酸が22kDa hGH-Nと異なっている(米国特許4,670,393号)。22kDa hGH-Vは胎盤によって分泌され、妊娠中期の母体血清に出現する。この変種の正確な機能はまだ解明されていないが、胎児の成長の制御および発育における役割を果たすと考えられる。
【0004】
発明の要旨
成長ホルモン療法は低身長を含む多様な症状の治療に用いられる。発育に対するGHの作用は“体形成作用”と称される。しかしながら、通常のGH療法は、例えば末梢浮腫および水分貯留、乳汁産生作用、肝障害並びに細胞障害を含む有害な副作用を受けやすい。所望の発育促進作用を維持しながら、これら副作用を除去するか、または少なくとも軽減する方法を確立することは明らかに有益である。本発明の実施態様は、現在GH療法に使用されている22kDa hGH-Nと異なる活性スペクトルを有する変種GHを使用することにより、GH療法の副作用を減少させる方法を含む。この変種は通常療法の有益な作用(例えば発育促進および脂肪分解)を提供するが、望ましくない特性は軽減される。したがって、本発明は、従来はhGH で治療されるかまたはhGHで治療される潜在性を有する症状の治療に20kDa hGH-Vを使用することを目的とする。特に、本発明は、hGH治療の乳汁産生副作用が軽減される治療方法を目的とする。
本発明の実施態様はまた、予防的または治療的目的のために哺乳動物で成長ホルモンレベルを高める方法を含む。前記方法は、医薬的に有効な量のGH変種20kDa hGH-Vまたは実質的に20kDa hGH-Vと同一のポリペプチドを哺乳動物に投与することを含む。
ある実施態様では、この変種はGHの発育促進能力を誘発するが、通常のGH療法の望ましくない作用を誘発する能力は低い。これらの望ましくない作用には糖尿病誘発性および乳汁産生作用、末梢浮腫、肝毒性および細胞障害が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様では、20kDa hGH-Vは外因的に生成され対象に投与される。前記変種のサイズを考慮して、前記は好ましくは適切な宿主細胞で前記変種をコードする遺伝子の発現によって製造される。そのような変種遺伝子はGH遺伝子の位置特異的変異導入によって調製することができる。そのような変種遺伝子を含む発現ベクターを含む適切な宿主細胞を治療されるべき動物に移植することができ、変種遺伝子の発現誘導によって20kDa hGH-V生成物(前記は治療効果を発揮することができる)レベルを高めることができる。
【0005】
発明の詳細な説明
定義:
“形質転換”は、DNAが染色体外エレメントとしてまたは染色体への組み込みによって複製できるようにDNAを生物に導入することを意味する。形質転換の方法は、例えばGraham and van der Eb(Virology 52:456-457 (1973))の方法またはDNAを細胞に導入するための他の適切な方法、例えば核内注射若しくはプロトプラスト融合による方法でありえる。実質的な細胞壁構築物を含む細胞、例えば原核細胞の場合には、トランスフェクションは、Cohenら(Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 69:2110 (1972))が記載したカルシウム処理によって実施することができる。さらに別の方法は当業界で周知であり、以下の文献で見出すことができる:Sambrook and Russell, Molecular Cloning Third Edition, Cold Springs Harbor Laboratory Press, New York (2001)。
“トランスフェクション”は、いずれのコード配列も最終的に発現されるか否かにかかわらず、DNAを宿主細胞に導入することを意味する。細胞は自然にはDNAを取り込まないので、多様な技術方法が遺伝子の移転を促進するために利用される。トランスフェクションの方法は当業者には知られており、例えばCaPO4およびエレクトロポレーションが含まれる。さらに別の方法も当業界では周知で、上掲書(Sambrook and Russell)で見出すことができるであろう。
【0006】
“保存的アミノ酸置換”は、出発のペプチドに関して変種ペプチドの特徴に実質的に影響を与えないアミノ酸の置換または欠失を指す。例えば、置換は以下の4つのグループ内で実施することができる:1)陽性荷電残基、例えばArg、Lys、His;2)陰性荷電残基、例えばAsn、Asp、Glu、Gln;3)大きな脂肪族残基、例えばIle、Leu、Val;4)大きな芳香族残基、例えばPhe、Tyr、Trp。保存的置換の更なる検証のためには、例えば以下を参照されたい:Livingstone and Barton, Comput. App. Biosci. 9(6):745-756 (1993)。
“実質的に同一”ということは、あるペプチドが、1つ若しくは2つのアミノ酸の挿入、置換または欠失が実施された配列、または保存的アミノ酸置換が実施された配列を有し、その結果、生成されたポリペプチドが20kDa hGH-Vと特徴および活性において実質的に相違せず、さらにヌクレオチド配列、配列番号:3と少なくとも95%相同性を有する前記ポリペプチドを指す。“実質的に同一”とはまた、遺伝暗号のリダンダンシーによる“サイレント”な相違によって第一のオリゴヌクレオチドと相違するオリゴヌクレオチド配列を指す(例えばその場合、相違はアミノ酸における変化を全く生じない)。また別には、“実質的に同一”の配列は、第一のオリゴヌクレオチド配列の相補鎖とストリンジェントな条件下(例えば0.1 SSC、60℃で1時間)でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド配列である。他の条件のストリンジェンシーも選択することができ、それらはなお高い厳密性を有するハイブリダイゼーションを維持することができることは理解されよう。
【0007】
“hGH-N”はヒト下垂体成長ホルモンを指す。
“hGH-V”はヒト胎盤性成長ホルモンを指す。
“PRL”はプロラクチンを指す。
“PRLR”はプロラクチンレセプターを指す。
“20kDa hGH-V”は、配列番号:7のアミノ酸配列若しくは配列番号:3のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:7のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:3のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“20kDa hGH-N”は、配列番号:8のアミノ酸配列若しくは配列番号:4のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:8のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:4のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“22kDa hGH-V”は、配列番号:5のアミノ酸配列若しくは配列番号:1のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:5のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:1のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“22kDa hGH-N”は、配列番号:6のアミノ酸配列若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列をもつポリペプチド、または、配列番号:6のアミノ酸配列をもつポリペプチドと実質的に同一若しくは配列番号:2のヌクレオチド配列と実質的に同一であるポリペプチドを指す。
“体形成作用”は発育促進、体重増加および骨同化作用を含む。
“乳汁産生作用”は、PRLRシグナリングを伴う外因性成長ホルモンの作用を含む。これらの作用には、乳腺発達、浸透圧バランスの変化および細胞増殖が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“代謝作用”には脂肪分解の刺激、IGF-1の分泌刺激および糖尿病誘発性作用が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0008】
成長ホルモン療法
GHの有益な発育促進作用を有するが副作用は減少している方法および医薬に対する未達成の希求が存在する。
したがって、本発明のある特徴では、哺乳動物に医薬的に有効な量の20kDa hGH-Vまたは20kDa hGH-Vと実質的に同一のポリペプチドを投与することを含む、哺乳動物である症状を治療する方法が提供される。
他の特徴では、前記方法は、成人開始成長ホルモン欠乏、小児期開始成長ホルモン欠乏、嚢胞性線維症、骨粗しょう症、骨格形成異常、慢性腎不全、うつ病、記憶低下、異化作用促進状態、食欲不振および高血圧の治療を含む。
他の特徴では、本発明は、20kDa hGH-Vおよび医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を含む。
さらに別の特徴では、本発明は、20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤および結合剤を含む医薬組成物を含む。
さらに別の特徴では、本発明は、20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤およびカプセルを含む医薬組成物を含む。
本発明のさらに別の特徴は、患者に20kDa hGH-Vを投与することを含む、成長ホルモン療法を必要とする患者を治療する方法を含む。
これらの特徴のある場合には、方法は、20kDa hGH-Vを生成することができる発現ベクターを投与することを含む。
さらに別の特徴では、前記発現ベクターは宿主細胞内に存在する。
さらに他の特徴では、前記発現ベクターは患者の細胞内に存在する。
また他の特徴では、本発明は、成長ホルモン療法を必要とする哺乳動物に20kDa hGH-Vを含む組成物を投与することを含む。
さらに他の特徴では、本発明は、20kDa hGH-Vを生成することができる複製可能なベクターをその中に有する細胞を前記哺乳動物に投与することを含む。
【0009】
GHの副作用
22kDaの下垂体GHを用いる通常のGH療法の望ましくない副作用には下記の1つまたは2つ以上が含まれる:浮腫、水分貯留、高血圧、良性頭蓋内高血圧;グルコース不耐症および/または糖尿病;女性化乳房;骨格筋への影響、例えば関節痛、感覚異常および手根管症候群または筋肉痛。
浮腫は、細胞、組織または漿液腔(例えば腹腔)内の過剰量の水様液の蓄積と定義される。細胞外浮腫の症状には、眼の周囲の顔面の腫れ、または足、くるぶしおよび脚の腫れが含まれる。GHにより誘発される塩および水分の保持は、末梢の浮腫および良性の頭蓋内高血圧を引き起こしえる。
良性の頭蓋内高血圧は、空隙占有病巣の非存在下における脳脊髄液圧の増加を特徴とする。それにより頭痛、視力低下、悪心、嘔吐および乳頭浮腫が提示されえる。
特に小児期のGH療法の糖尿病誘発作用については懸念が増している。GH療法はグルコース不耐性を惹起し、インスリン感受性を低下させることが示された。小児期および青年期のいくつかのグループではGH療法と2型真性糖尿病との間で発生率の増加が確認されている(Cutfield 2000)。高血糖症もまたGH治療を受けている成人で観察されている。
関節痛は1つまたは2つ以上の関節における痛みである。感覚異常は、一般的には手、腕、脚または足で生じるが身体のいずれの部分にも起こりえる、異常な灼熱感またはチクチクする感覚を指す用語である。手根管症候群は、手首の腱または靱帯が拡張したときに(しばしば炎症により)生じる。狭まった骨の管腔および手首の靱帯が、指および親指の基部の筋肉に達する神経を締め付ける。症状の範囲は、指(特に親指および人差し指および中指)のヒリヒリ、チクチクするしびれ感から、握ったり若しくは握りこぶしを作るのが困難または物を取り落としたりするものである。
筋肉痛はいずれかの筋肉の運動における痛みまたは不快感である。
成長ホルモン療法による治療を受けた小児で報告された白血病のいくつかの症例に基づく、成長ホルモン療法に関する“癌増殖促進”の可能性についていくらかの懸念が存在する(Stahnke & Zeisel, 1989;Watanabe et al, 1988)。
【0010】
GHを用いて治療される症状
GH療法は多様な範囲の症状の治療に用いられる。現時点で、GHの予防効果または治療効果は、以下を含む(ただしそれらに限定されない)症状に関して確認または指摘されている:成人開始成長ホルモン欠乏(主として下垂体腺腫、外科手術または放射線療法によって惹起される)、小児期開始成長ホルモン欠乏[(a)先天的症状(解剖学的異常または遺伝因子)、(b)後天的症状(CNS腫瘍、頭部照射、浸潤性疾患、外傷、低酸素性障害)または(c)特発性原因によって生じるもの];嚢胞性線維症、骨粗しょう症、慢性腎不全、うつ病、記憶低下、異化作用促進状態、食欲不振および高血圧。
GH療法は、小児の成長ホルモン欠乏、プラーダー‐ヴィリ症候群、成人の成長ホルモン欠乏、ターナー症候群、慢性腎不全およびエイズ関連るい痩での使用が承認されている。成長ホルモンはまたいくつかの他の症状の治療で有用である。これらの症状には、全身的発育遅延、嚢胞性線維症、骨粗しょう症、うつ病、記憶低下、異化作用促進状態および高血圧が含まれる。
【0011】
GH欠乏
成長ホルモン欠乏の診断は成長ホルモン刺激試験を必要とする。用いられる試験には、インスリン低血糖試験またはインスリン耐性試験(ITT)、L-ドーパ刺激試験、アルギニン輸液試験およびアルギニン/GHRH試験が含まれる。成人では3−5ng/mL未満のピーク成長ホルモン分泌レベルがGHDの指標である。小児では、10ng/mLより低い値が不適切と考えられる。成長ホルモン欠乏は、通常皮下注射により毎日投与される組換えヒト成長ホルモンで治療される。
小児のGHDにはいくつかの原因があり、大半は視床下部または下垂体の問題と関係がある。ある種の稀な事例では、身体の成長ホルモン利用における欠陥が生じる。成長ホルモン欠乏をもつ大半の小児で視床下部に欠陥が存在する。他の下垂体ホルモンもまた正常に分泌されていないときは、当該小児は下垂体機能不全と称される。先天性の下垂体機能不全では、下垂体または視床下部の異常な形成が胎児発育時に生じる。後天性下垂体機能不全は、出生持または出生後に生じる下垂体または視床下部への損傷から生じる。前記は重篤な頭部外傷、疾患、放射線療法または腫瘍による脳の損傷によって惹起されえる。
小児の世界的なGHD発生率は10000人の出生に対して少なくとも1人と概算され、個々のいくつかの国では4000人の出生に対し1人の発生率と報告されている。成長ホルモン欠乏小児は、1年に2インチ未満の発育パターンを示す。多くの事例では、前記小児は2または3歳まで正常に発育し、その後発育遅延の徴候を示し始める。成長ホルモン欠乏試験は、低身長の他の可能性が排除されたときに実施されるであろう。0.30mg/kg体重までの1週間の用量を1日の皮下注射に分割したものがGHDの小児に推奨されている。
成人では、成長ホルモンの欠乏は、以下の状況で発生しえる:大きな下垂体腫瘍の存在、下垂体腫瘍または他の脳腫瘍の手術または放射線療法後、視床下部の疾患に対して二次的に、および小児の成長ホルモン欠乏の成人期への継続。成人のGHDの臨床的特徴には以下が含まれる:疲労、筋肉虚弱、運動能力低下、体重増加、体脂肪増加と筋肉量低下、LDLコレステロールおよびトリグリセリドの増加とHDLの減少、心臓発作、心不全および卒中のリスクの増加、骨量の減少、不安およびうつ、特に幸福感の欠如、社会的孤立および活力低下。米国では、概算総数35,000人の成人がGHDを有し、さらに毎年約6000人の新規GHD症例が発生している。平均的な70kgの成人に対して、治療の開始時点の推奨用量は約0.3mgで毎日皮下注射として投与される。前記用量は個々の要請により35歳より若い患者では最大日量1.75mgまで、35歳より上の患者で最大日量、0.875mgまで増加させることができる。より低い用量が副作用の出現を最小限にするために、特により年齢の高いまたは過体重の患者で必要とされるかもしれない。
【0012】
プラーダー‐ヴィリ症候群
プラーダー‐ヴィリ症候群は15番染色体の異常であり、低血圧、性機能不全、多食、認知障害および行動困難を特徴とするが、主要な医療的懸念は病的な肥満である。成長ホルモンは典型的には欠如し、短身、思春期の急成長の欠如および高い体脂肪率(正常な体重をもつ者でさえも)を生じる。GH療法の必要性は、小児および成人の両方で評価されるべきである。小児では、発育速度が低下した場合または身長が3番目のパーセンタイルより下にある場合には、GH治療が考慮されるべきである。成長ホルモンの代替は身長の正常化を助け、リーンボディマス(lean body mass)を増加させ、前記はともに体重の管理に役立つ。1週間の通常の用量は0.24mg/kg体重で、前記を1週間にわたって6または7回分のより小用量に分割する。
【0013】
ターナー症候群
ターナー症候群は2,500人の女児の出生に対しに約1人の割合で発生する。前記症候群は、X染色体の異常または欠損によるもので、しばしば短身を伴い、前記短身はGH治療により緩和される。ターナー症候群の他の特性には、短頸および同時に翼状頸、外反肘、第四および第五中手骨および中足骨の短縮、ハト胸および原発性性機能不全が含まれる。身長の伸びはターナー症候群の患者で種々であり、GHにより治療するか否かおよびそのような治療のタイミングの決定は個々に実施される。患者の身長が5番目のパーセンタイルより低いとき、または標準偏差スコアが平均より低く2標準偏差未満に低下するときは、しばしば治療が開始される。治療は、しばしばGHD治療に用いられる用量よりもわずかに高いGH用量で開始される。一般的な開始用量は0.375mg/kg/週で1日の用量に分割される。
【0014】
慢性腎不全
慢性腎不全(CRI)は米国では約3000人の小児が罹患している。前記疾患は、老廃物を除去し、尿を濃縮し、さらに電解質を保持する腎の能力の徐々に進行する低下により示される。慢性腎不全の小児の約1/3が異常な発育を示し、これは部分的には腎疾患が成長ホルモンの代謝を障害するためである。腎疾患でしばしば用いられるコルチコステロイドホルモンもまた発育を遅延させえる。腎移植は小児に正常な発育を再び開始させることができるが、大半の小児は移植前に失われた発育を埋め合わせることはできない。腎疾患開始年齢は、腎機能の低下よりも発育遅延により強い影響を与える(すなわち、疾患が開始したときに小児が幼ければ幼いほど、発育の遅延は大きい)。GH治療は0.35mg/kg/週の用量で、1週間に6または7回投与できる。
【0015】
HIVるい痩症候群
HIV感染者の共通の問題はHIVるい痩症候群であり、前記は、しばしば虚弱、発熱、栄養失調および下痢を伴う意図しない進行性の体重低下と定義される。前記症候群(悪液質としても知られている)は、生活の質を低下させ、疾患を悪化させ、HIV患者の死亡リスクを増加させる。患者の身体は、にエネルギーのために主として身体に貯蔵された脂肪に頼る代わりに筋肉および器官の組織を消費する。
るい痩はそれ自体はHIV感染の結果として生じるが、また一般的はHIV関連日和見感染および癌に付随する。HIVるい痩症候群は、意図せずしてその体重の10%以上を失ったHIV感染者で診断される。HIV疾患およびエイズが進行した大半の患者は最終的にはある程度のるい痩を経験する。エイズるい痩の有病率を概算すればHIV感染者の4−30%の範囲である。GH治療は1日当たり0.1mg/kgの規模である。
【0016】
発育の全身的遅延
発育の全身的遅延は、正常な出生前発育とそれに続く幼児期および小児期の発育の減速を特徴とし、この時期の身長パーセンタイルの低下に反映される。3歳から小児後期まで発育は正常な速度で進行する。深刻な発育減速期は思春期開始の直前に観察できる。全身的遅延をもつ小児は思春期の開始が遅い。時折、全身的発育遅延に付随しさらにこれによって増大される短身と青年期の発達が組合された場合、十分な心理社会的な青年期ストレスを引き起こし、GHD治療に用いられる同じ態様および用量で投与されるGHによる治療が正当化されえる。
【0017】
嚢胞性線維症
嚢胞性線維症(CF)は、アメリカではもっとも一般的な致死的遺伝疾患である。概算では毎年米国で1000人が嚢胞性線維症をもって出生する。嚢胞性線維症は、粘液分泌の粘度が上昇する外分泌腺の機能不全を生じ、前記は、肺疾患、外分泌性膵臓機能不全および腸管閉塞をもたらす。早期診断および治療がCFの小児の死亡率を顕著に低下させた。しかしながら、栄養不良および発育不良は重大な問題のままである。低い体重増加、体重減少、不適切な栄養は、エネルギー摂取の低下、エネルギー損失の増加およびエネルギーの浪費の結果である。CF患者の28%が身長について10番目パーセンタイル以下であり、34%が体重について10番目パーセンタイル以下である。GH療法は、嚢胞性線維症の患者の身長速度、体重速度、リーンボディマス(LBM)および肺機能を改善することが研究によって示された。
【0018】
骨粗しょう症
骨粗しょう症は、骨量低下および骨組織の構造的劣化を特徴とする疾患で、骨虚弱をもたらし、骨折、特に股関節、脊椎および手首を骨折しやすくなる。骨粗しょう症は、世界で毎年150万件を超える股関節骨折の原因である。大半の骨折は閉経後の女性で生じるが、全骨粗しょう症骨折の約1/3が男性で発生している。GHによる骨粗しょう症の治療は、骨代謝の増加およびGHにより生じる骨構造の改善によって有益となろう。GH/IGF-I系は、閉経後骨粗しょう症患者で調節異常を示す。前記は、骨粗しょう症における全身的IGFおよびIGFBP-3レベルの低下によって示され、内因性GH分泌の低下または、GH/IGF系の正常な老化過程、“ソマトポーズ(somatopause)”を超えるGHレセプター系の調節異常を示唆している。GH治療は、特発性骨粗しょう症の男性の骨ミネラル濃度を改善することができることが研究によって示された。
【0019】
骨格形成異常
短身を伴う骨格形成異常、例えば軟骨無形成症はGHで治療できる。軟骨無形成症は遺伝疾患であり、線維芽細胞増殖因子レセプタータイプIII遺伝子が影響を受け、前記は出生時に明瞭である。前記は20,000人に約1人の割合で出生し、全人種および両性別で発生する。胎児発育時および小児期に、いくつかの場所(例えば鼻および耳)を除いて軟骨は通常骨に発達する。軟骨無形成症の個体では、長骨の成長板の軟骨細胞が骨に変化する速度が遅く、短縮骨および低身長をもたらす。
軟骨無形成症は、短身、短四肢、四肢近位(proximal extremity)(上腕および大腿)を特徴とし、頭は胴体に対して不釣合いに大きく見え、骨格(四肢)異常、中指と薬指の間に持続的間隙をもつ異常な手の外観(三叉手)、顕著な脊柱後わんおよび脊柱前わん(脊柱わん曲)、よたよた歩行、屈曲脚、突出した(異彩をはなつ)額(前頭突出)、低血圧および羊水過多(罹患新生児が出生するときに存在する)を特徴とする。GHは、いくつかの国(例えば日本および南アメリカ)では軟骨無形成症の治療に承認されているが、FDAの承認はまだ得られていない。
【0020】
異化作用促進タンパク質浪費状態
異化作用促進状態はタンパク質浪費を特徴とする。成長ホルモン治療は、過剰なタンパク質低下の防止に用いることができる。そのような異化作用促進状態は、長期飢餓、食欲不振、慢性疾患、長期固定、外傷、熱傷および重度の外科手術の後の患者で存在しえる。GHおよびインスリン様増殖因子I(IGF-I)は、異化作用促進状態でタンパク質代謝の調節に生理学的な役割を果たす。異化作用促進状態ではGH軸はしばしば障害される。
【0021】
脂肪異栄養症
GHは、脂肪異栄養症、特にエイズ関連脂肪異栄養症の治療に有益でありえる。脂肪異栄養症は、単純に脂肪代謝障害を意味する一般的名称である。HIV関連脂肪異栄養症は一般的には、以下の領域(胴体下部(腹部領域)の皮下組織、腹部内臓(内臓肥満)、腋窩パッド(両側性、対称性脂肪蓄積症)および頚部背面領域(いわゆる野牛こぶ))における脂肪蓄積、並びに以下の領域(四肢下部、上部四肢、臀部および顔面(上顎、鼻唇および側頭部領域))の皮下組織の脂肪消失から成る。HIV関連脂肪異栄養症のこの症状は、タンパク質‐エネルギー栄養失調のるい痩症候群とは全く別個であるように見える。HIV感染患者における脂肪異栄養症の普遍的に認められた症例定義が存在しないので、診断は、ある程度臨床医の判断に依存する。皮膚の折りひだの測定またはヒップ対ウェスト比はいずれも極めて正確とも再現性があるとも言えない。第四腰椎レベルのシングルスライスCTスキャンがもっとも再現性のある試験であるが、またもっとも高価な試験でもある。
【0022】
子宮内発育遅延および短在胎齢の小児
GH治療は、子宮内発育遅延(“IUGR”)をもつ小児または在胎齢が短い幼児(前記症状はまたラッセル‐シルバー症候群;“SGA小児”とも称される)で有益でありえる。子宮内発育遅延のある定義は、在胎齢について10番目以下の体重または出生時在胎齢の平均より下の2標準偏差である。発育の遅れを取り戻せないこれらの小児はGH治療により利益を受けえる。
【0023】
骨形成不全
骨形成不全(OI)はI型コラーゲンの遺伝子の変異によって生じる。前記は骨の無機質脱落を伴い、多くの場合骨の発育遅延を伴う。OIはしばしば、ほとんどまたは全く明瞭な原因無しに容易に骨折する骨を特徴とする。米国でのOI罹患者数は不明であるが、もっとも正確な概算は最小限20,000人と提唱され、おそらく50,000人が存在すると推定される。前記はしばしば(常にそうとは限らないが)、臨床的特徴のみによりOIと診断することが可能である。臨床遺伝学者はまた、生化学的(コラーゲン)または分子的(DNA)試験を実施することができ、前記試験はいくつかの状況においてOI診断の確認に役立ちえる。いくつかの症例では、骨形成不全はGHにより効果的に治療することができる。特に患者は骨の無機質沈着が改善し発育の改善を得ることができる。
【0024】
炎症性大腸疾患
GHは、炎症性大腸疾患、クローン病および短縮腸症候群の治療に用いることができる。炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の炎症または潰瘍を引き起こす一群の疾患である。IBDのタイプに応じて、口から肛門までの消化管のいずれかの部分が影響を受けえる。小腸および大腸、直腸並びに肛門がもっとも頻繁に影響を受ける。潰瘍性大腸炎およびクローン病は炎症性腸疾患のもっとも一般的なタイプである。しかしながらIBDの原因は不明であり、遺伝的傾向を有する人々で発症すると考えられている。これらの個体では、免疫系が正常な腸内細菌に対し過剰に反応し炎症を惹起しえる。主要な症状は腹痛、直腸出血および下痢または便秘である。発熱および食欲低下もまた生じえる。短縮腸症候群は、腸の大量の喪失および残留する腸の正味の吸収能力の障害を特徴とする。結腸を失った患者は、しばしばナトリウム/水分バランスに関する問題に直面し、いくつかの栄養素の栄養失調のためにしばしば栄養補助を必要とする。
【0025】
グルココルチコイド誘発発育遅延
GH治療は、グルココルチコイド治療に起因する発育遅延をもつ極めて低身長者において考慮することができる。そのような患者でGH療法を開始する前に、グルココルチコイド治療は、十分な臨床効果を達成するために必要な最小用量に減少させるべきである。
他の症状
GH治療により利益を得ることができる他の症状にはうつ病、記憶低下、肥満、高血圧、不妊などが含まれる。しかしながら、GH療法により利益を受けることができるいずれの症状も本発明の方法および医薬を用いて有利に治療することができることは理解されよう。
【0026】
下垂体GH使用療法
従来の通常のGH療法は22kDa下垂体GHを用いる。下垂体GHの22kDaおよび20kDa型は等価の体形成活性をもつと考えられる、20kDa hGH-Nは、偶発性矮小ラットでの発育促進アッセイにおいて22kDa hGH-Nと等価であり(Ishikawa 2000;Ishikawa 2001)、20kDaの骨同化作用は22kDaのそれと同等の能力を有し(Wang 1999)、完全長のhGH-R-発現細胞の細胞増殖は等しく刺激され(Wada 1998)、さらに20kDa hGH-Nは下垂体切除ラットで完全なアゴニストであることが示された(Uchida 1997)。20kDa hGH-Nはまた、脂肪組織でLPL活性を阻害し、さらに22kDa hGH-Nと同様な態様で脂肪細胞において脂肪分解を刺激することが示された(Takahashi 2002)。20kDa hGH-Nの脂肪分解活性は、成長ホルモン結合タンパク質(“GHBP”)の存在下で22kDa hGH-Nよりも高い可能性がある(Asada 2000)。
しかしながら、22kDa hGH-Nはインスリン耐性を誘発することが知られている。20kDa hGH-Nの糖尿病誘発性は、オイグリケミッククランプ実験(Takahashi 2001)、およびGH欠損矮小ラットを用いる実験(Ishikawa 2001)におけるインスリン耐性誘発で22kDa hGH-Nよりもはるかに弱いことが研究によって示唆されている。
20kDa hGH-Nは、22kDa hGH-Nよりもプロラクチンレセプターに対しはるかに弱いアゴニストであり、したがって22kDa hGH-Nの乳汁産生特性のいくらかを欠く(Takahashi 1999)(なぜならば、GHの乳汁産生作用はプロラクチンレセプターによって仲介されると考えられるからである)。20kDa hGH-Nの投与は、hPRLR-仲介副作用(例えば乳癌)を緩和する可能性があることが提唱された(Tsunekawa 1999)。20kDa hGH-Nはまた、22kDa hGH-Nと異なる抗利尿作用を有する。22kDa hGH-Nの投与は無傷のラットで尿の分泌を抑制し、一方、20kDa hGH-Nは顕著な作用を示さず(Satozawa, 2000)、このことは液体の保持は浮腫を引き起こしえるので重大である。20kDa hGH-Nは、22kDa hGH-NのPRLR結合領域の一部を欠くと考えられる。下記の表1および2は、本発明の方法で有用な成長ホルモン変種のオリゴヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。表1では、下記の配列番号はヌクレオチドである:22kDa hGH-V(配列番号:1)、22kDa hGH-N(配列番号:2)、20kDa hGH-V(配列番号:3)および20kDa hGH-N(配列番号:4)。
【0027】
【表1−1】
【0028】
【表1−2】
【0029】
【表2−1】
【0030】
【表2−2】
【0031】
表2は、22kDa hGH-V(配列番号:5)、22kDa hGH-N(配列番号:6)、20kDa hGH-V(配列番号:7)および20kDa hGH-N(配列番号:8)のアミノ酸配列を示す。
【0032】
胎盤性GH変種使用療法
22kDa hGH-Vは、hGH-Nアイソフォームと比較して同様な体形成活性を有するが乳汁産生活性は低下していることが示された(Igout 1995)。22kDa hGH-Vはソマトゲンレセプターと結合し(Ray 1990)、下垂体切除ラットで発育を刺激する(MacLeod 1991)。22kDa hGH-Vはソマトゲンおよびラクトゲンレセプターの両方と結合するが、ソマトゲンレセプター対ラクトゲンレセプター結合親和性比は22kDa hGH-Vのそれよりも高い。この比はラット肝ラクトゲンレセプターを用いた実験では7−8倍(Ray 1990)、Nb2細胞ラクトゲンレセプターを用いた場合は30倍相違する(MacLeod 1991)。22kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vの脂肪分解活性およびインスリン様活性は、ラットの脂肪組織で同様であることが示された(Goodman 1991)。
GH-V遺伝子の第二のスプライス変種はmRNA内にイントロンDを保持し、26kDa hGH-Vアイソフォーム(hGH-V2)を生じる(Cooke 1988)。最近、hGH-V遺伝子の新規な2つの転写物が記載された(Boguszewski 1998)。hGH-V3は、24kDaタンパク質(219アミノ酸)が予想される、4番目のエクソンの末端近くのまた別のスプライシングによって生成され、この場合カルボキシ末端残基はhGH-Vと完全な配列相違を示す。開示される第二の転写物は、hGH-Nについて認められるものと同様なまた別のスプライス部位を利用し、hGH-Vの20kDaアイソフォーム(GenBank accession number:AF006060)が予想される。
20kDa hGH-Vの転写物は以前には検出されず、hGH-V遺伝子はこのスプライス部位を利用しないと考えられた(Cooke 1998;Estes 1992)。しかしながら、Boguszewskiらは妊娠期間満了の4つの胎盤のうちの2つおよび1つの異常胎盤でこのアイソフォームの転写物を検出した(Boguszewski 1998)。この転写物の発現における相違(前記転写物は全ての胎盤で見出されたわけではなかったので)は、部分的には、以前には検出されなかったことの説明となるかもしれない。転写物は検出されたが、コードされたタンパク質はまだ単離されておらず、その生物学的活性は不明であった。
上記の転写物の存在が知られたことは、前記が合成されえるということまたは前記の生物活性が予想できるということではない。例えば、20kDa hGH-Nは入手が困難であることが証明された。20kDa hGH-Nは下垂体から少量を精製することができるが、22kDa hGH-Nからの完全な分離は、2つのホルモン間の類似性のために困難である。メチオニル20kDa hGH-Nは大腸菌(E. coli)で発現されている。しかしながら、N-末端付加メチオニン残基は生物学的活性に影響を与える可能性があり、前記タンパク質はもまたメチオニル22kDa hGH-Nの事例のように不正確に折りたたまれる可能性があると考えられる(Hsiung 1988)。メチオニル20kDa hGH-Nは22kDa hGH-Nのわずか1/20のレベルで発現され、COS-7細胞で生成された20kDa hGH-Nは、22kDa hGH-Nの速度と比較して1/30の速度で分泌されることが報告され(Rincon-Limas 1993)、したがってUchidaらによる効率的な合成の開発は容易ではなかった(Uchida 1997)。
【0033】
下垂体から単離された20kDa hGH-Nおよび真性ではない組換え生成物に関する初期の研究は、“真性物”についての研究とは全く異なる結果を示した(Uchida 1997)。下垂体から精製された20kDa hGH-Nについての初期の研究は、20kDa hGH-Nの脂肪分解活性は22kDa hGH-Nよりはるかに弱かった(Frigeri 1979;Juarez-Aguilar 1995)。この結果は、真性配列を有する組換え20kDa hGH-Nを用いて得られた結果と一致しなかった(Asada 2000;Takahashi 2002)。メチオニル20kDa hGH-Nはグルコース不耐性を誘発し(Kostyo 1985)、インスリン感受性を障害する(Ader 1987)ことが示されたが、しかしながら20kDa hGH-Nに関するより最近の研究は、20kDa hGH-Nの糖尿病誘発性は22kDa hGH-Nよりはるかに弱いことを示した(Takahashi 2001;Ishikawa 2001)。種々の方法によって生成された20kDa hGH-Nの生物学的特性を記載した文献のそのような矛盾は、前記特性を予想しそれらを明示することは極めて容易ではないことを示している。
本発明の新規な特性には、20kDa hGH-VはPRLRとは結合せず、したがってGH-N代替療法に付随する乳汁産生副作用を全く生じないという驚くべき発見が含まれる。実施例1に記載したリガンド結合実験は、20kDa hGH-Vが純粋なソマトゲンのプロフィルを有することを示している。結合実験で観察された20kDa hGH-Vの体形成効果は、本発明者らによって実施されたin vivo実験で確認された(実施例2)。
20kDa hGH-V変種の投与は、22kDa hGH-Nの脂肪分解作用と同様に体形成作用を維持するが、22kDa hGH-Nを用いる通常療法の乳汁産生作用は取り除かれる。ヒトGHは、活性なhGHレセプター(hGHR)およびヒトPRLレセプターの両レセプターに結合することが知られている。PRLRレセプターを介する22kDa hGH-N作用は、液体の保持(Satozawa 2000;Prod Info Humantrope(商標), 2003;Prod Info Norditropin(商標), 2001;Prod Info Serostim(商標), 2003);女性化乳房(Prod Info Humantrope(商標), 2003;Prod Info Nutropin(商標), 2003;Prod Info Nutropin AQ(商標), 2003;Prod Info Genotropin(商標), 2003)並びに腫瘍細胞増殖および腫瘍成長(Bole-Feysot 1998)を伴っていた。
【0034】
プロラクチンレセプターシグナリングは、腎のナトリウムおよびカリウム排出を減少させ(Richardson et al, Br J Pharmacol 47:623P-624P, 1973)、Na+-K+アデノシントリホスファターゼ(ATPase)を刺激し(Pippard et al, 1986 J Endocrinology 108:95-99)、汗のナトリウムを減少させ(Robertson et al. 1986 Endocrinology 119:2439-2444)、さらに腸の全領域で水および塩の吸収を増加させる(Mainoya et al. 1974 Endocrinology 63:311-317)ことが示された。その結果生じた血漿中のナトリウムレベルの増加は水分保持を付随する。細胞外液の容積の増加は浮腫を生じる可能性がある。さらにまた、血漿中の液体容積の増加は血圧上昇をもたらす可能性がある。水分と塩の恒常性が障害された高齢患者では、より高い死亡率が観察されている(Kokko, Juha P., Water and Sodium Regulation in Health and Disease. In: Nature Encyclopedia of Life Sciences. London: Nature Publishing Group; August 1999)。
プロラクチンレセプターシグナリングは、乳腺の発達と密接な関係を有している。22kDa hGH-Nはとりわけ、男性における性成熟女性の乳房と類似する乳房の発達と密接な関係を有している(Harman SM. 2004 J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 59(7):B652-8)。
さらにまた、プロラクチンの作用は、以下のように種々の形態の癌と密接に関係している:結腸直腸腫瘍の攻撃性の増加(Bhatavdekar et al 1994 J Surg Oncol 55:246-249)、いくつかのヒト乳癌株の増殖(Kiss et al. 1987 J Natl Cancer Inst 78:993-998)、ヒトBPH上皮細胞の増殖(Syms et al. 1985 Prostate 6:145-153)。22kDa GHは前立腺の癌の発育に参画することが示された(Weiss-Messer et al. 2004 Mol Cell Endocrinol. 220(1-2):109-23)。
【0035】
発明者らは、20kDa hGH-V、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは、通常の22kDa hGH-NまたはhGHよりもGH代替療法としてより有用であることを見出した。20kDa hGH-V、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは、(1)所望の体形成作用、(2)プロラクチンレセプターとのより低い結合親和性および(3)望ましくない副作用(例えば乳汁産生作用)をより少なく有するという発明者らの発見によって、これらの変種は、通常療法に代わる望ましい選択肢を医師に提供することができる。我々は予期に反して、20kDa hGH-Vは、20kDa hGH-N または22kDa hGH-Vのいずれよりも望ましくない副作用が少なくさえあることを見出した。ただし20kDa hGH-Vは20kDa hGH-Nまたは22kDa hGH-Vよりも少ない副作用を示すが、これら3つの変種のいずれも22kDa hGH-Nよりも有益である。20kDa hGH-N(実施例1、図7)および22kDa hGH-V(Igout 1995)は22kDa hGH-Nよりも実質的に低い親和性でPRLRと結合したが、20kDa hGH-Vは、図7に示したように、PRLRとは結合するとしても非常に弱く結合した。
22kDa hGH-Nとの比較では、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは各々、肝臓酵素のアルカリ性ホスファターゼ(ALP)のより低い血中レベル増加をもたらした。予期に反して、20kDa hGH-Vは実際血漿アミラーゼレベルを減少させることを本発明者らは見出した。血漿ALPの増加は通常、薬剤の肝毒性または患者の肝疾患の指標である。したがって、22kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび20kDa hGH-Vは、GH-代替療法を必要としている成人患者にとって22kDa hGH-Nよりも安全な選択肢であるように思われる。
さらにまた、22kDa hGH-Nと比較して、20kDa hGH-N、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Vは各々、血漿アミラーゼ濃度に対してより少ない副作用を示し、20kDa hGH-Vがもっとも少ない副作用を有し、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nがアミラーゼに対してそれぞれ順により大きな副作用を有する。しかしながら、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは血漿アミラーゼのいくらかの増加を生じるが、これらの増加は22kDa hGH-Nによって生じる増加よりも低い。
したがって、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vの使用は、通常のGH療法の望ましくない副作用が有害である状況では所望することができる。20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vを含む医薬の製造は多数の症状の治療の改善をもたらし、したがって通常のGH療法に付随する罹患率および死亡率を減少させるために使用することができる。
【0036】
20kDa hGH-Vの合成および製造
本発明のポリペプチドは単離された形態で提供され、さらにいくつかの実施態様では精製することができる。“単離される”という用語は、物質がその本来の環境から取り出されることを意味する。
本発明のポリペプチドは、天然の状態から精製されたタンパク質、化学合成生成物から誘導するか、または組換え技術によって製造することができる。
ある実施態様シリーズでは、ポリペプチドは組換え技術によって製造することができる。宿主細胞を発現ベクターで形質転換し、さらにプロモーターの誘導、形質転換体の選別及び/又は20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nまたは22kDa hGH-Vを生成する遺伝子の増幅に適切なように改変した通常の栄養培地で培養する。培養条件、例えば温度、pHなどは発現のために選択した宿主細胞のために用いられるものであり、当業者には明白であろう。この考察の目的のために、“DNA”、“遺伝子”および“cDNA”という用語は、“RNA”または“mRNA”という用語と、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド配列がポリペプチドの生成に必要な情報を伝達するという意味で等価でありえるということは理解されよう。したがって、RNAについて言及する場合は、塩基ウラシル(U)が用いられ、一方DNAについて言及する場合は塩基チミジン(T)が用いられる。オリゴヌクレオチドがRNAでるかまたはDNAであるかにかかわらず、生成されるポリペプチドはいずれのタイプのオリゴヌクレオチドを用いても製造することができることは理解されよう。
原核細胞および真核細胞宿主とともに使用されるクローニングベクターおよび発現ベクターの例は、例えば以下の文献で見出すことができる:Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Springs Harbor, NY (2001)。
【0037】
ポリヌクレオチド(例えば配列番号:3またはその実質的等価物)は組換え技術によってポリペプチドを製造するために用いることができる。ポリペプチドの発現のために、ポリヌクレオチドを種々の適切なベクターまたはプラスミドのいずれかに含ませることができる。そのようなベクターには以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):染色体、非染色体および合成DNA配列(例えばSV40誘導体)、細菌プラスミド、ファージDNA、ウイルスDNA(例えばワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスなど)。
ある種の実施態様では、20kDa hGH-Vをコードするオリゴヌクレオチドを発現させてmRNAを生成することができる。前記mRNAを翻訳して26アミノ酸の20kDa hGH-Vのシグナル配列を含むポリペプチド(例えばMet-26−Ala-1)を得ることができる。続いて、治療に用いられる“成熟”ペプチドを遊離させるために、内部Ala−Phe結合に選択的なエンドペプチダーゼによる前記に続く切断を用いることができる。そのようなエンドペプチダーゼの一例は中性エンドペプチダーゼ(E.C.3.4.24.11)であり、前記は、もっぱら小さな脂肪族アミノ酸(例えばGly、Ala)と芳香族(Phe)または疎水性(例えばLeu、Ile)アミノ酸との間でペプチドを切断する酵素である。他のエンドペプチダーゼも当業界で公知であり、本明細書でさらに記載する必要はない。
他の実施態様では、開始コドン(ATG)およびそれに続くPheのためのコドン(例えばTTTまたはTTC)を含む発現カセットを用いて、成熟20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vを製造することができる。それ以外の点では開放読み枠の残余の部分は図1に記載のものと同一である。翻訳時に、アミノペプチダーゼを用いて前記ペプチドを切断してN-末端Met残基を除去し、それによって“成熟” 20kDa hGH-Vを製造することができる。
【0038】
さらに別の実施態様では、3'セグメント(前記セグメントは前記ポリペプチドを発現する細胞によって通常は切断されるリーダー配列をコードする)が、Phe1のためのコドンTTTまたはTTCの前に付加されてある発現カセットを構築することができる。したがって、前記リーダー配列は切断され、“成熟”ポリペプチド20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vがそれに続く使用のために製造される。
細菌を使用する場合の有用な発現ベクターは、機能的プロモーターに連結された、所望のタンパク質をコードするインフレームDNAを適切な開始および終了シグナル(例えば開始(ATG)および終止コドン)とともに挿入することによって構築することができる。所望の場合には、エンハンサーエレメントもまたオリゴヌクレオチドの発現を増加させるために、或いは調節するために取り入れることができる。ベクターは1つまたは2つ以上の選別可能な表現型マーカーおよび複製起点を含み、ベクターの維持を担保し、さらに所望の場合には宿主内での増幅を提供することができる。
適切なベクターが当業者には公知で多くが市販されている。適切なベクターには以下のベクターが含まれる(ただしこれらに限定されない):細菌ベクター:pBs、pQE-9(Qiagen)、ファージスクリプト、PsiX174、pBluescript SK、pBsKS、pNH8a、pNH16a、PNH18a、pNH46a(Stratagene)、pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia);真核細胞ベクター:pWLneo、pSV2cat、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)など。
適切なDNA配列を多様な方法によってベクターに挿入することができる。一般的にはDNA配列は、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に当業者に公知の方法によって挿入することができる。ある実施態様シリーズでは、制限酵素NcoIおよびHindIIIが用いられる。
【0039】
発現ベクター内のDNA配列は、適切な発現コントロール配列(プロモーター)に機能的に連結してmRNA合成を指令することができる。そのようなプロモーターの例には、LTRまたはSV40プロモーター、大腸菌lac、trp若しくはRacA、ファージラムダPLプロモータおよび、原核細胞若しくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御する既知の他のプロモーターが含まれる。
適切なプロモーターの選別は当業者の技術範囲内である。プロモーターの例には、細菌プロモーター(例えばlacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPR、trcなど)および真核細胞プロモーター(CMV極初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルス由来のLTR、マウスメタロチオネイン-Iプロモーターなど)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
しかしながら、上記は単なる例として列記され、他のプロモーターも用いることができる。遺伝子の発現をモニターおよび定量する方法は当業界では公知であり、20kDa hGH-Vの製造のために発現レベルを実証するために用いることができる。
発現ベクターはまた翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写終了因子を含むことができる。ベクターはまた発現を増幅させる適切な配列(エンハンサー)を含むことができる。
哺乳動物の発現ベクターは、複製起点、適切なプロモーターおよびエンハンサー並びに必要な任意のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及び/又はアクセプター部位、転写終了配列並びに5'フランキング非転写配列を含むことができる。
さらにまた、発現ベクターは、形質転換宿主細胞の選別のための表現型の特徴(選別マーカー)を提供するための遺伝子を含むことができる。適切な選別マーカーには、真核細胞培養のためにはジヒドロホレートレダクターゼ(dfr)若しくはネオマイシン耐性(neo)、または大腸菌ではテトラサイクリン若しくはアンピシリン耐性のようなものが含まれる。
【0040】
ベクターはまた、翻訳されたタンパク質の細胞周辺腔、細胞膜または細胞外培養液への分泌を誘導することができるリーダー配列を含むことができる。
適切なプロモーターまたは制御配列と同様に適切なDNA配列を含むベクターを用いて、前記タンパク質を発現することができる適切な宿主を形質転換することができる。適切な宿主には、細菌(例えば大腸菌(E. coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、シュードモナス属、ストレプトミセス、スタフィロコッカスの種々の種);菌類細胞(例えば酵母);動物細胞(例えばサル腎線維芽細胞のCOS-7株および適合性ベクターを発現することができる他の細胞株、例えばC127、3T3、CHO、HeLa、BHK細胞株);植物細胞などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切な宿主の選択は当業者の技術範囲内であろう。ある実施態様では宿主細胞は大腸菌である。
構築物の宿主細胞内への導入はリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE、デキストラン仲介トランスフェクションまたはエレクトロポレーションによって実施できる(Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, 1986)。ある実施態様では、構築物はカルシウムを用いて導入される。
宿主細胞は、トリプトファン飢餓、イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)、ナリジクス酸などを含む種々の方法(ただしこれらに限定されない)によって誘導して所望のタンパク質を発現させることができる。ある実施態様シリーズでは、発現はナリジクス酸で誘導することができる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAの真核細胞による転写はエンハンサー配列をベクターに挿入することによって高めることができる。適切なエンハンサーは当業者には公知で、SV40の複製起点後期のエンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマの複製起点後期側のエンハンサー、アデノウイルスエンハンサーなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
当業者は当業界で公知のまた別の方法を用いて、発現系を作製し、さらにこれらの系を用いて治療用組換え体20kDa hGH-Vを製造することができることは理解されるところであろう。
ある種の宿主細胞は治療されるべき対象者に直接移植できることもまた理解されよう。例えば、自家細胞を患者から採集するか、または本発明の発現ベクターを異種細胞にトランスフェクトすることができる。続いて、そのような細胞を患者に移植し、20kDa hGH-Vの産生を誘導することによって、治療量の20kDa hGH-V のin vivo産生を得ることができる。
さらにまた、例えばウイルス(例えばアデノウイルス)またはリポソームを用いる遺伝子治療の方法は、治療されるべき動物の宿主細胞にin vivoで伝達されえる、20kDa hGH-V発現用発現カセットを含むことができる。
【0041】
20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vの単離
細胞を遠心によって採集し、物理的または化学的手段によって破壊し、さらに得られた粗抽出物を精製することができる。タンパク質の発現に用いた微生物細胞は、凍結融解の繰り返し、超音波処理、機械的破壊、細胞溶解剤、界面活性剤などの使用を含む任意の便利な方法によって破壊することができる。
GH変種は組換え細胞培養から多様な方法を用いて精製することができる。前記方法には、硫安若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性反応クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、ゲルろ過などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
細菌培養で生成される組換えタンパク質は、細胞ペレットの最初の抽出、それに続く1回また2回以上の塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィー工程によって単離することができる。タンパク質の再折り畳み工程は必要に応じて成熟タンパク質の立体配置を完成させるために用いることができる。SDS-PAGEおよびHPLCを最終精製に用いることができる。
他の実施態様では、タンパク質は、先ず初めに封入体を可溶化し、続いてイオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過精製によって細菌培養から抽出することができる。続いてタンパク質は高pHで尿素を用いて再折りたたみに付される。
タンパク質の配列は、N-末端配列決定、タンパク分解マッピングおよびペプチド配列決定を含む任意の適切な方法(ただしこれらに限定されない)を用いて実証することができる。機能的な特徴は、例えばGHレセプターの活性化、免疫学的方法、培養GH-感受性細胞の刺激などを用いて判定することができる。ある実施態様シリーズでは、タンパク質は、hGH結合タンパク質と1:2複合体を形成するその能力を測定することによって有効性を確認することができる。他の実施態様では、タンパク質の機能はGHレセプターをトランスフェクトされた、例えばウサギ由来の細胞を活性化するその能力によって立証することができる。
【0042】
前記ポリペプチドを製造に組換え工程で用いた宿主にしたがって、本発明のポリペプチドはグリコシル化されたりまたはされなかったり、さらに最初の(-1位の)メチオニンアミノ酸を含むこともできる。ある種の原核性宿主細胞は、ある種の真核性宿主細胞がタンパク質をグリコシル化するようにはタンパク質をグリコシル化しないことが知られている。より高度なグリコシル化を促進するために、極めて高レベルの必須の単糖類またはそれらの前駆体を増殖培地に提供することができる。例えば、シアル酸、フコース、ガラクトースまたはN-アセチル-ガラクトサミンを含むタンパク質の場合、これら栄養素に富む細胞培養液を所望に応じて用い、20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vのグリコシル化形の発現レベルを高めることができる。GH変種をグリコシル化するために必要な他の糖を増殖培地の補充に同様に用いることができることは容易に理解されよう。さらにまた、所望の場合は、宿主細胞のグリコシルトランスフェラーゼ及び/又はヌクレオシド三リン酸グリコシル化酵素(糖付加酵素)の発現を高め、糖残基の20kDa hGH-Vへの付加を増加することができる。グリコシル化の更なる記述は以下の文献で見出すことができる:Alberts et al., Molecular Biology of the Cell, Fourth Edition, Garland Science (2002)。
20kDa hGH-Nの14位のアミノ酸の性質に関してはいくらかあいまいさが存在する。Martialら(Science 205:602 (1979))は、この位置のアミノ酸をコードするmRNA配列はメチオニンをコードするAUGであると報告し、Masudaら(Biophysica Acta 949:125 (1988))は、N-末端から14番目のアミノ酸をコードするcDNA配列はセリンをコードするAGTであると報告した。20kDa hGH-V変種のこの位置のアミノ酸はメチオニンであると考えられているが、本発明では両方の変種を含むと理解される。
さらにまた、1つまたは2つ以上のアミノ酸が置換、挿入または欠失されているアミノ酸配列は20kDa hGH-V変種のカテゴリーに含まれると理解されるべきである。保存的変種、サイレント変種および保存的アミノ酸置換もまた本発明の変種のカテゴリーに含まれると考えられる。
ヌクレオチド配列の保存的変種には、アミノ酸配列における変化を生じないヌクレオチド置換が、保存的アミノ酸置換またはヌクレオチドから翻訳されるポリペプチドの性状に実質的に影響を与えないアミノ酸置換を生じるヌクレオチド置換と同様に含まれる。
【0043】
医薬組成物および投与
GH療法は2つのカテゴリー、生理学的および薬理学的カテゴリーに分割することができる。生理学的療法(代替療法)はより低用量を必要とする。代替療法における出発投与量は、小児のGHの場合1日につき0.02から0.05mg/kgで、成人では1日につき0.00625から0.025mg/kgの範囲である。70kgの男性の場合、通常の出発用量は0.3mg/日で維持用量は0.35から0.56mg/日である。GH代替はいくらかの患者については生涯投与されえる。薬理学的療法は、例えばエイズ関連るい痩の治療では、より高い用量を必要とし、小児では>1mg/日で、成人では1から3mg/日である。この高い用量ではますます深刻な副作用が観察されえる。
本発明はまた本明細書に開示した20kDa hGH-V、20kDa hGH-N及び/又は22kDa hGH-Vを含み、この場合前記変種は1つまたは2つ以上の水溶性ポリマーと結合され、アゴニスト特性を維持しながら所望される変種のさらに別の特性が提供される。そのような特性には溶解性の増加、安定性の増加、免疫原性の低下、タンパク質分解耐性の増加、in vivo半減期の増加および腎クリアランスの低下が含まれる。適切なポリマーには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび多糖類が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切な結合物の生成方法は当業者には公知である。ポリエチレングリコールが特に好ましく、結合方法は例えばWO95/32003に記載されている。
一般的には、本発明の化合物は医薬組成物として以下のルートの1つによって投与することができる:経口的、局所的、全身的(例えば経皮、鼻内または座薬により)、非経口的(例えば筋肉内、皮下または静脈内注射)、移植によって、および輸液によって(例えば浸透圧ポンプ、経皮膏薬などの装置による)。ある種の実施態様では、皮下若しくは筋肉内注射、または注射針を含まない装置による注入を用いることができる。後者の場合、化合物を含む溶液は微細な霧として皮膚から拡散され、皮下にデリバリーすることができる。
【0044】
組成物は、錠剤、ピル、カプセル、半固形物、散剤、徐放性製剤、溶液、懸濁液、エリキシル、エアロゾルまたは任意の他の適切な製剤の形態をもち、さらに医薬的に許容できる賦形剤を含むことができる。いくつかの実施態様では、組成物は、投与前に再構成される粉末形であるか、またはGH変種を含む溶液または懸濁液として存在する。適切な賦形剤は当業者には周知であり、それら賦形剤および組成物の製剤方法は以下のような標準的参考文献で見出すことができる:A.R. Gennaro: Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed., Lippincott, Williams and Wilkins, Philadelphia, PA (2000)。好ましい賦形剤には、塩化ナトリウム、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、ポリソルベート20、クエン酸ナトリウム、マンニトール、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、グリシンおよびグリセリンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切な液状担体には(特に注射溶液の場合)、滅菌水、食塩水溶液、デキストロース水溶液などが含まれ、等張溶液が非経口投与のために好ましい。
本発明の化合物はまた徐放系によって適切に投与される。適切な徐放性組成物の例には、形状をもつ物品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態にある半透性ポリマーマトリックスが含まれる。徐放性マトリックスには、ポリラクチド(米国特許3,773,919号;EP58,481)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートとのコポリマー、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレンビニルアセテートまたはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が含まれる。徐放性組成物はまたリポソームに封入された化合物を含むことができる。前記化合物を含有するリポソームはそれ自体公知の方法によって製造される:DE3,218,121;EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出願83-118008;米国特許4,485,045号および4,544,545号;並びにEP102,324。
上記の記載は例示のみを目的としており、本発明の範囲を制限しようとするものではないことは理解されよう。むしろ上述の方法および組成物の改変は容易に実施でき、さらにそのような全ての変型は本発明の範囲内に包含されることは当業者には容易に理解されるところであろう。さらに本明細書に引用された全ての参考文献は、参照により本明細書にその全体が含まれる。
実施例
本発明の他の特徴は、本発明の方法および組成物の特性を明示する具体的な実施例に関して説明される。以下の実施例は本発明の利点を例示しようとするもので、本発明の範囲を制限しようとするものではない。
【0045】
実施例1:リガンド結合
材料と方法
hGH、bGHおよびoPRLと比較して、hGH変種の結合作用を解明するための実験を、確立されたヒツジの肝臓膜系を用いて実施した(B.H. Breier et al. Endocrinology 135:919, 1994)。
この系は、放射能標識リガンドとして125I-rbGHまたは125I-oPRLのどちらかを使用することによってそれぞれ純粋な体形成活性および乳汁産生活性のマーカーであることが示されたので選択した。125I-hGHの使用は体形成活性および乳汁産生活性が混合したペプチドについて適切である。
材料
ヒツジの肝臓組織はロムニ‐ドルセット(Romney-Dorset)交配去勢オスの子羊から入手した。前記動物は健康であり、屠殺前まで栄養状態は高いレベルに維持されていた。全ての動物はバルビタールの過剰投与によって屠殺し、肝臓は死亡から5分以内に採集した。肝臓を切断し、食塩水で洗浄し、-20℃で凍結した。実験はオークランド大学(University of Auckland)の動物倫理委員会で承認された。
ミクロソーム膜の調製
ヒツジの肝臓組織を4℃で融解して小片(約1g)に切断し、冷(4℃)シュクロース(0.3M)中で洗浄した。続いて組織を秤量した(45Tiローターの各管について最大3g)。0.3Mの冷シュクロース(30μg/mLのトラシロール並びに各々3μg/mLのペプスタチン、アンチパイン、ロイペプチンおよびベンザミジンを含有する)を最初の肝臓重量の1:3(w/v)の比で前記管に添加した。ホモジナイザー(Janke and Kunkel)および大型ホモジナイザーヘッド(S25N-10G)を用いて、最高速度で2分および低速で0.5分(合計2.5分)の均質化を実施した。ホモジネートの温度を0.5分毎にチェックし、10℃以下に維持した。前記ホモジネートを1500Xgで20分、4℃で遠心し、得られた上清を15,000Xgで20分および100,000Xgで90分(29,400RPM、45Ti)、4℃で連続的に遠心した。100,000Xgのペレットを氷上で、最初の肝重量に対して1:2(wt/vol)の比で4MのMgCl2とともに20分インキュベートした(内因性リガンドの除去のため)。続いて前記調製物を125,000Xg(33,000RPM、45Ti)で遠心し、最初の肝重量に対して1:5(w/v)の比で各管に25mMのトリス緩衝液を添加した。得られたペレットを0.025MのTRIS緩衝液中で再懸濁し、再び100,000Xgで30分、4℃で遠心した。最終ペレットのアリコットを25mMの冷トリス(上記工程で述べた全てのプロテアーゼ阻害剤を含む)中で本来の組織重量1gに対して1mLの比で再懸濁した。ペレットを均質化によって再懸濁させ、さらにガラス/テフロンホモジナイザー中で3ストロークにより均質化した。続いてMMPをアリコットに分割し、-20℃で凍結した。
【0046】
放射能レセプターアッセイ(RRA)
RRAのためのホルモン調製物は、ヒツジの組換えGH、ヒトの組換えGH-N 22kDa、ヒトの組換え20kDa GH-N、ヒトの組換え22kDa GH-V、ヒトの組換え22kDa GH-V、およびoPRLであった。全てのホルモンは秤量してアリコットに分割し、必要な段階希釈を実施した。ウシGHを0.1MのNaHCO3(pH8.3)に溶解した。ペプチドの放射能標識は、以前に記載(Bereier et al. 1988 J Endocrinol 116:169-177)されたようにラクトペルオキシダーゼ法を用いて実施し、比活性は40−50μCi/μgの範囲であった。全てのアッセイはヨウ素化および放射能リガンドの精製(セファデックスG-100カラム)の5日以内に実施し、モノマーリガンドと等価の分画のみをアッセイに用いた。アッセイのインキュベーション中に放射能リガンドの顕著な分解はなかった。ミクロソーム膜調製物および不溶性分画のRRAは、トリプリケートおよび2セットのBo(Bmax)管トリプリケートで実施した。アッセイ緩衝液は以下の成分から成っていた(pHは濃HCLで7.4に調節):0.025MのTRIS、0.01MのCaCl2、0.2%(wt/vol)のBSA、0.2%(wt/vol)のアジ化ナトリウム、トラシロール(30μg/mL緩衝液)、並びにロイペプチン、アンチパイン、ペプスタチンおよびベンザミジン(全て3μg/mL緩衝液)。膜調製物を400μLのインキュベーション容積で以下とともに20時間4℃でインキュベートした:非標識ホルモン、および約25000cpm/100μL緩衝液の[125I]-rbGHまたは[125I]-rhGHまたは[125I]-oPRL。非特異的結合は過剰の適切な非標識リガンド(10−100μg/mL)の添加によって決定した。インキュベーションは2mLの0.025M氷冷トリス-HCL(pH7.4)の添加によって終了させた。結合ホルモンおよび遊離ホルモンを4℃で3900RPMでの遠心によって分離した。上清を廃棄し、ペレットをガンマスペクトロメーターで計測した。
【0047】
結果
競合結合実験による、rbGHおよびrhGHと比較したhGH変種の体形成(125I-rbGHを使用)特性の判定
全てのhGH変種は強い体形成性潜在能力を示した。結合曲線の置換パターンは全ての化合物で類似していた。hGH変種の体形成性潜在能力の大きさはrhGHとrbGHの間であった。hGH変種は極めて類似する体形成性結合を示した(図3および図4)。
競合結合実験による、rbGHおよびrhGHと比較したhGH変種の体形成および乳汁産生(125I-rhGHを使用)混合特性の判定
2つの明らかに異なる置換曲線が存在した。第一に、hGH置換の急勾配曲線は強い乳汁産生活性を示唆した。第二に、bBHの低い置換は弱い乳汁産生活性を示した。hGH変種の大半はhGH(強力な乳汁産生活性)の置換パターンにしたがった。驚くべきことに、20kDa hGH-Vは低いbGH様置換パターンにしたがい、弱い乳汁産生活性を示唆した(図5、6および8)。
競合結合実験による、rbGH、下垂体oPRLおよびrhGHと比較したhGH変種の乳汁産生(125I-oPRLを使用)特性の判定
アッセイ番号0439(図7)は、20kDa hGH-Vはほとんど(もし存在するとしても)125I-oPRLとの結合作用を提示しないことを示した。
結果の解釈
20kDa hGH-VはbGHレセプターとの強い結合親和性を示し、前記変種の強力な体形成作用と一致した。しかしながら、20kDa hGH-Vはプロラクチンレセプターと、もし存在するとしても弱く結合するのみであり、前記変種の弱い乳汁産生活性と一致した(図7)。この結合実験を基に、我々は、生物学的実験が20kDa hGH-Vは発育促進作用および極めて弱い乳汁産生作用を示すであろうということを期待した。これらの予想は、下記の実施例に記載する実験によって立証された。
【0048】
実施例2:hGH変種の薬理学的実験
GHの20kDa胎盤性変種を含む治療の有効性を判定するために、本発明者らは、単離された成長ホルモン欠乏動物モデルにおいていくつかのGH化合物の発育、内分泌マーカーおよび代謝マーカーに対する作用を調べた。
実験手順:方法と分析手順
GH欠乏矮小(dw/dw)ラットはよく性状が調べられた先天性GH欠乏モデルである。これらのラットでは、他の下垂体栄養性ホルモンは正常な分泌プロフィルを維持するが、下垂体GHは選択的に正常レベルの約5%に低下している。後天的GH欠乏(下垂体切除による)を用いる他のモデルでは、GH以外の多数の下垂体ホルモンの欠乏および動物を不要な外科手術ストレスに暴露することによって混乱が生じる。したがって、GH-欠乏矮小ラットの使用によってヒトの症状における成長ホルモン療法の効果が予想される。
本発明者らは、これらの研究のために選択したGH-欠乏(dw/dw)矮小ラットに関する広範囲の基礎的研究データを収集した(Vickers et al., 1999;Breier et al., 1996;Gravance et al., 1997;Butler et al., 1994)。本発明者らは、我々が以前の実験で使用した同じコロニーを用いた。
オスのGH-欠乏矮小(dw/dw)ラットを離乳期(21−22日齢)にオークランド大学の動物リソースユニットで維持されているコロニーから購入した。動物をこの時期(すなわちに、実験時期の3−4週間前)入手して、環境に適応させさらに実験者による取り扱いに慣らす時間を与えた。動物を専用施設に収容し、標準的ラットケージおよび通常の明暗サイクルを用い、飼料および飲水に自由に接近させた。動物を離乳から実験の終了まで毎日モニターした。
7−8週齢で、体重のつり合ったオスのGH-欠乏矮小ラットを選び、6つの処置群の1つに振り分け(n=6)、賦形剤(生理的食塩水(0.9%))またはGHを与えた。処置群は以下のとおりであった:
【0049】
テスト化合物
hGHは生理学的食塩水(0.9%)を用いて再構成した。bGHは炭酸緩衝食塩水(pH9.4)を用いて再構成した。hGH変種は滅菌水(pH11.0)で再構成した。化合物は注射の日に新しく溶解した。注射(容積100μL)は皮下注射によって毎日2回8:00および17:00に実施し、極細ゲージの糖尿病用注射筒(29g)を使用した。動物を7日間処置し、最後の注射は一晩絶食後の8日目の朝に実施した。最後のGH注射後8日目の朝に動物を殺した。
観察
体重:動物の体重を実験中毎日午前8時−9時の間で測定した。臨床的変化、処置に対する反応、病気について個々の動物を毎日観察した。何らかの悪影響を示すストレス反応および関連する症状を示すものは処置群のいずれにおいても存在しなかった。
飼料の消費:飼料の摂取は試験の間毎日測定した。ラット当たりの相対的飼料摂取(消費飼料/グラム体重/日)は、各処置群の各ペアに与えられた飼料の量対食べ残された飼料の量を用いて算出した。
水の消費:水の消費は、実験中毎日同じ時間に水の容器の重さを測定することによって毎日算出した。
体長:体長(鼻‐肛門および鼻‐尾)および骨長(脛骨)は標準的な測定技術を用いて死後に、および末梢の定量的コンピュータ支援断層撮影法(pQCT、Stratec)解析によってもまた判定された。骨密度もまたpQCTにより判定した。
組織の測定:一晩の絶食に続いて8日目に、動物をハロタン麻酔後の断頭によって殺した。体長、死骸の重さ、器官(肝、脾、腎、副腎、心および下垂体)の重さ、および脂肪パッド(腹膜外部)の重さの測定値を記録した。
血漿の測定:血液サンプルを一晩絶食後に採集した。体幹血液はハロタン麻酔下での断頭に続いて採集した。サンプルはヘパリン処理管に採集し、血漿の採集のために遠心した。血液サンプルをインスリン*、グルコース、FFA、レプチン*、IGF-I、グリセロール、トリグリセリド、コレステロール、肝機能マーカー(ALT、AST、APL)およびタンパク質合成マーカーについて分析した。
血漿のFFA、トリグリセリドおよびグリセロールは診断用キット(それぞれBoehringer-Mannheim #1383175およびSigma #337)によって測定した。血漿IGF-Iは以前に記載されたようにRIAによって測定した。血漿グルコース濃度は比色プレートアッセイを用いて測定した。他の全ての血液分析(肝酵素、電解質)はBM/Hitachi737アナライザー(Gribbles Veterinary pathology, Auckland, New Zealand)によって測定した。
データ解析
データは、ポスト-ホック修正を用い一方向因子(one-way factorial)ANOVAによって解析した(因子=処置)。発育速度はまた反復測定により解析した。体脂肪はまた補助変量(covariate)として体重を用いANCOVAによって解析した。
以前のデータは、提唱実験のためのパワー計算の基礎を提供した(α=0.05と仮定)。インスリン感受性については、nが10の場合パワー80%で0.2ng/mLの変化が、95%で0.26ng/mLの変化がSD=0.15ng/mLで検出されるであろう。体長については、nが10の場合パワー80%で6.88mmの変化が、95%で0.797mmの変化がSD=5.2mmで検出されるであろう。
【0050】
結果
体重:体重は食塩水と比較して全ての処置群で顕著に増加した(図9、10Aおよび10B)。統計的有意の程度は以下のように提供される:
bGH対食塩水 p<0.0001
hGH対食塩水 p<0.0001
胎盤性22kDa対食塩水 p<0.0001
下垂体20kDa対食塩水 p<0.0001
胎盤性20kDa対食塩水 p<0.005
bGH、hGHまたは22kDa胎盤性GH変種で処置した動物間では総体重増加において統計的に有意な相違は存在しなかった。20kDa胎盤性変種で処置された動物は、他の全てのGH処置群と比較して体重増加の顕著な低下を示した。20kDa下垂体変種で処置された動物は、bGHおよび胎盤性22kDa変種で処置された動物よりも少ない体重増加を示した(hGH対下垂体20kDa;p=0.07)。
図10Bは、全ての被検GH変種について、体重増加で初期増加があり、続いて食塩水で観察された変化の方向への部分的復帰が存在することを示している。しかしながら、20kDa胎盤性GH変種については、最初の2日間にわたる処置での初期体重増加の後は食塩水処置動物と同様な毎日の体重増加に復帰した。bGHおよび下垂体20kDa処置動物は4日目に体重増加におけるわずかなリバウンドを示したように思われた。hGHおよび胎盤性22kDa処置動物は顕著な初期体重増加と、それに続く定常的な毎日の体重増加を試験の残りの部分について示した。
脛骨の長さ:脛骨の長さは食塩水コントロールと比較して、わずかにしかしながら明瞭に全ての処置群で増加した(図11)。GH処置群間ではいずれの場合も統計的に有意な相違は脛骨長に関しては観察されなかった。総骨面積および皮質骨面積は、20kDa下垂体GH変種で処置した動物では顕著に増加した。骨密度における変化はいずれの処置群でも観察されなかった。骨強度指数は、応力張力指数(stress strain index、SSI)で測定したとき食塩水コントロールと比較してbGH、下垂体20kDa GHおよび胎盤性変種処置動物で増加した。
体長:鼻肛門長は食塩水コントロールと比較して全ての処置群で増加した。前記増加は、20kDa胎盤性変種を除いて全ての群で統計的に有意であった。20kDa胎盤性変種は、統計的有意(p=0.0576)に達する体長増加に向けて強い傾向を示した(図12)。
飼料摂取:総飼料摂取は、コントロールと比較してbGH、hGHおよび胎盤性22kDa変種処置動物で増加した(図13、上段)。飼料摂取はまた、20kDaおよび22kDa胎盤性変種処置群間で顕著に相違した。しかしながら、飼料摂取が体重の変化に対して調節されたときは、相対的飼料摂取における顕著な相違は観察されなかった。ただし食欲増加傾向は22kDa胎盤性変種処置群で明白であった(p=0.1)(図13B、下段)。
水の摂取:水の摂取は、食塩水コントロールと比較していずれの処置群間でも試験中に顕著には相違しなかった。
【0051】
組織重量
組織重量は別に記載がなければ体重の百分率として解析した。
腹膜外部の脂肪沈積:腹膜外部脂肪パッドの重量は食塩水コントロールと比較して全てのGH処置群で顕著に減少した(図14)。bGHは各hGH変種よりも顕著に脂肪分解性であった。胎盤性変種間では反応は顕著には相違しなかった(胎盤性20kDa対胎盤性22kDa、p=0.53)。
肝臓:相対的な肝臓サイズは、食塩水処置動物と比較して22kDa胎盤性変種処置動物で増加した。肝サイズは、食塩水処置動物と比較して20kDa胎盤性変種処置動物で相対的に減少した。
脾臓:相対的脾臓重量は、食塩水処置動物と比較して全てのGH処置群で増加し、22kDa胎盤性GH変種処置動物でもっとも著名であった。
心臓:心臓サイズにおいてはいずれのGH処置群および食塩水コントロール間にも顕著な相違はなかった。20kDa胎盤性GH変種処置動物では心臓サイズの増加傾向があった(食塩水に対してp=0.09)。
腎臓:腎臓のサイズは、食塩水コントロールと比較していずれの処置によっても影響されなかった。
副腎の腺:副腎の腺のサイズは、コントロールと比較して、bGH、下垂体20kDa GH、胎盤性20kDaおよび22kDa変種処置動物で顕著に増加した。副腎サイズではhGH処置による影響はなかった(p=0.1551)。
脳:相対的脳重量は、食塩水処置動物および20kDa胎盤性変種またはhGH処置動物と比較して22kDa胎盤性GH変種処置動物で減少した。
精巣:相対的精巣サイズは、コントロールと比較してbGH、hGH、下垂体20kDa hGHおよび22kDa胎盤性変種処置動物で増加した。胎盤性20kDa変種処置は相対的な精巣サイズに対して影響しなかった(p=0.83)。
【0052】
血漿の測定
IGF-I:血漿IGF-Iは全てのGH化合物によって増加した(図15)。前記増加は、下垂体20kDa、胎盤性GH 20kDaおよび胎盤性22kDa GH変種処置群で統計的に有意であった。1.0mg/kg/日のbGHまたはhGH処置は血漿IGF-I濃度を顕著には上昇させなかった(それぞれp=0.17およびp=0.13)。胎盤性22kDa GHは、hGHまたはbGH処置の血漿IGF-Iレベルを顕著に超えて血漿TGF-Iレベルを上昇させた。
グルコース:絶食血漿グルコース濃度に対してはいずれの処置群でも影響はなかった。
遊離脂肪酸(FFA):絶食血漿遊離脂肪酸濃度に対してはいずれの処置群でも統計的に有意な影響はなかった。ただし22kDa hGHおよび下垂体20kDa HGでFFAにかすかな増加傾向があり、胎盤性20kDa hGHまたは胎盤性20kDa GHに対する反応でわずかな減少傾向があった(図16A;上段グラフ)。
トリグリセリド:胎盤性20kDa GHは、食塩水コントロールまたは下垂体20kDa若しくはbGH処置動物と比較して絶食血漿トリグリセリド濃度を顕著に減少させた(図16B;中央グラフ)。
グリセロール:食塩水コントロールと比較して、血漿グリセロール濃度に対してはいずれの処置群でも影響はなかった(図16C;下段グラフ)。bGH処置群と比較して、hGHおよび下垂体20kDa動物で血漿グリセロールは顕著に上昇した。hGH処置および下垂体20kDa GH処置動物と比較して、胎盤性22kDa処置群で濃度は顕著に低かった。
【0053】
生化学的マーカー
アルカリホスファターゼ(ALP):
血漿ALPは、bGH、hGHまたは22kDa胎盤性GH変種で処置された動物で顕著に増加した(図17)。ALP濃度に対して下垂体20kDaまたは胎盤性20kDa変種の影響はなかった(それぞれp=0.16および0.26)。
ナトリウム:血漿ナトリウム濃度は、食塩水コントロールと比較してhGH処置動物で顕著に増加し、さらにbGH処置動物でナトリウム濃度上昇の強い傾向が観察された(食塩水に対してp=0.06)。胎盤性GH変種および下垂体20kDa GHは血漿ナトリウムに対して影響をもたなかった。
クレアチンキナーゼ(CK):血漿CKは、食塩水コントロールと比較して胎盤性20kDa GH処置動物で顕著に減少し、さらにこの群ではbGHまたは下垂体20kDa GH処置動物と比較して血漿CKは顕著に低かった(食塩水に対してhGHではp=0.08、胎盤性22kDaではp=0.2)。
カリウム:血漿カリウム濃度は、食塩水コントロールと比較して下垂体20kDa GHおよびhGH処置群で顕著に増加した。bGHおよび胎盤性GH変種は血漿カリウム濃度に対して影響を示さなかった。
ビリルビン:血漿ビリルビン濃度は、食塩水コントロールと比較していずれの処置群でも顕著には変化しなかった。
アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST):AST濃度は、食塩水コントロールと比較してbGH処置動物で顕著に減少した。hGH変種のいずれも血漿ASTに対しては顕著な影響を全く示さなかった。
グロブリン:血漿グロブリンは、胎盤性変種および20kDa下垂体GH処置動物で顕著に増加した(図18)。bGHまたはhGH処置は血漿グロブリンに対して顕著な影響を示さなかった。ガンマグロブリンの増加は、多発性ミエローマ、慢性炎症性疾患、過免疫、急性感染またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症を示唆しているかもしれない。
クレアチニン:いずれの処置群間においても血漿クレアチニンに差異はなかった。
尿素:食塩水コントロールに対していずれのGH処置も血漿尿素濃度に顕著な影響を与えなかった。
アミラーゼ:血漿アミラーゼ濃度は、食塩水コントロールと比較してbGHまたはhGH処置動物で顕著に増加した(図19)。胎盤性20kDa変種による処置は、食塩水処置動物と比較して血漿アミラーゼ濃度を顕著に低下させた。
アミラーゼは腺(例えば膵臓外分泌細胞、耳下唾液腺)によって産生されるので、血漿中でのその異常に高レベルの存在は膵臓または唾液腺に対する障害を示唆している可能性がある(前記障害によって間隙液およびそれに続く血漿中への漏出が生じる)。したがって、血漿アミラーゼの増加は急性膵炎、膵臓癌、胆嚢炎、異所性若しくは破裂性卵管妊娠、流行性耳下腺炎、腸閉塞、マクロアミレシア、膵管若しくは胆管閉塞または潰瘍穿孔を示唆しているかもしれない。
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT):血漿ALT濃度は、食塩水コントロールと比較してbGHまたは胎盤性20kDa GH処置動物で顕著に減少した。
リパーゼ:いずれの処置群でも血漿リパーゼ濃度に顕著な相違はなかった。
総タンパク質:食塩水コントロールと比較して血漿総タンパク質濃度に対する顕著な影響はなかった。22kDa胎盤性GH群では、GH処置動物と比較して総タンパク質濃度は顕著に低かった。
総コレステロール:食塩水コントロールと比較して血漿総コレステロール濃度は20kDa胎盤性GH群で増加した。22kDa胎盤性および20kDa胎盤性GH変種間には、コレステロール濃度に小さいが明瞭な相違があった(22kDaは2.9±0.1mmol/L、22kDaは2.5±0.1mmol/L、p=0.05)。
アルブミン:血漿アルブミン濃度は、下垂体20kDa GHまたは胎盤性20kDaおよび22kDa変種処置動物でわずかであるが明瞭に低下した。血漿アルブミン濃度は、bGHまたはhGH処置で顕著には変化しなかった。
アルブミンは肝臓で合成されるので、血清アルブミンの減少は肝疾患の結果かもしれない。前記はまた腎疾患の結果でもありある。腎疾患はアルブミンの尿への放出を許容する。アルブミンの減少はまた、栄養不良または低タンパク食によっても説明できる。正常以下のアルブミンレベルは、腹水(腹腔液)、糸球体腎炎(ろ過性腎疾患)、肝疾患(肝炎、肝硬変、肝細胞壊死)、吸収不良症状(例えばクローン病、スプルー、ウィップル病)、栄養不良、ネフローゼ症候群を示唆しているかもしれない。
ナトリウム/カリウム比(Na/K比):血漿Na/K比は、食塩水コントロールと比較してhGH処置動物で顕著に減少し、さらに下垂体20kDa群で傾向が観察された(食塩水に対してp=0.06)。
塩化物:血漿塩化物濃度は、食塩水コントロールと比較してhGHおよびbGH処置動物で顕著に増加し、さらに20kDa胎盤性GH群で強い傾向が観察された(食塩水に対してp=0.06)。
ヘマトクリット:絶食血液のヘマトクリットは全ての処置動物で顕著に低下した。他の処置群と比較して20kDa胎盤性変種処置動物では、ヘマトクリットの低下は著名ではなかった(図20)。統計的有意は下記に示される。
食塩水対bGH p=0.0003
hGH p=0.0008
下垂体20kDa p=0.0004
胎盤性22kDa p=0.042
【0054】
考察
全ての被検化合物は、食塩水処置動物の体重増加を超える顕著な体重増加を生じた。特に、20kDa hGH-Vは顕著な体形成作用を示し、したがってこれまで一般的にGHまたは他の変種で治療されていた疾患の治療に適した治療薬である。20kDa hGH-V群の体重増加は、48時間後の最初のピークの後この試験の残りの間、食塩水処置動物のそれに対応する体重増加に復帰した(図21)。しかしながら、体形成作用をもつ20kDa hGH-Vが脛骨長および鼻肛門長の増加(前記は他のGH処置群の作用とは統計的に有意であった)を引き起こすことは重要である。
20kDa hGH-Vの作用メカニズムは明確には知られていないが、20kDa hGH-V群における体重増加の減少は、20kDa hGH-Vの体形成特性が弱いというよりもむしろ、他の処置と比較して本化合物の水分保持特性の低下と密接な関係があるのかもしれない。GH治療のその特徴がよく調べられている作用は血漿体積の増加である(Johannsson et al., 2002)。血液のヘマトクリットは全ての処置群で減少したが、20kDa胎盤性GH群の血漿体積の増加は他の処置群の場合よりも穏やかであった。血漿ナトリウムは食塩水コントロールと比較してhGH処置動物では顕著に増加したが、他のいずれの処置によっても影響は示されなかった。
20kDa胎盤性GH変種は他のhGH変種のいずれとも同じように脂肪分解性であった。
興味深いことには、血漿IGF-IはbGHまたはhGH処置動物で増加した。強い増加傾向は明白であったが、統計的有意に達することができなかったのは、比較的低い用量、期間または場合によっては緩衝系の結果であるかもしれない。脾臓重量は、全てのGH処置群でわずかではあるが明瞭に増加し、これはげっ歯類でのGH処置後に通常観察されるものである。心臓の過形成はしばしばGH処置で観察されるが、本実験では心臓サイズの増加は観察されなかった。ただし20kDa胎盤性GH処置動物では相対的心臓サイズの増加傾向が観察された。相対的副腎サイズもまた全ての処置群で増加したが、hGH処置群は例外であった。
したがって、我々はここに開示した実験から以下のように結論した。第一に、20kDa hGH-V、22kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nは、他のGH化合物を用いて通常的に治療される症状の治療に適した効果的な体形成薬剤である。正確なメカニズムははっきりとは判明していないが、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vが肝ミクロソームのGHレセプターと結合したという発見は、その体形成作用のメカニズムが通常のGH化合物のメカニズムと類似することを強く示唆している。
重要なことに、我々は予期せずして、20kDa hGH-Vの体形成作用は、通常のGH療法の後でしばしば観察される典型的な副作用を伴わないことを見出した。我々はまた、他のGH変種、すなわち20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、22kDa hGH-Nによる通常療法よりも望ましくない副作用が少ないことを見出した。特に、少なくとも肝臓および膵臓で障害の徴候が減少した。
通常のGH化合物はプロラクチンレセプターと結合し、そのメカニズムが通常療法の乳汁産生作用の原因である可能性がある。対照的に、20kDa hGH-Vはプロラクチンレセプターともし結合するとしても極めて弱く結合し、乳汁産生作用は生物学的または生化学的アッセイでおそらく見出されないであろうということが示唆される。他の変種、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、22kDa hGH-Nよりも弱い親和性でプロラクチンレセプターと結合し、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは22kDa hGH-Nよりの副作用が少ないことを示唆している。これらの結論は、肝毒性のためのマーカー(例えばアルカリホスファターゼ)は20kDa hGH-Vでは増加せず、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vによって幾分増加するが、通常のGH療法薬22kDa hGH-Nではより多く増加することを示した実際のin vivo実験例によって確認された。さらにまた、我々は、血漿アミラーゼレベルは20kDa hGH-Vによって増加しなかったので膵臓または唾液腺障害の徴候を認めなかった。これは、22kDa hGH-Nを用いる通常のGH療法に付随する血漿アミラーゼレベル増加とは際立ったコントラストを示している。最後に20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、20kDa hGH-Vの場合の副作用の欠如と22kDa hGH-Nの場合の周知の副作用との間で中等度の副作用を示した。
したがって、本発明者らは、ヒト成長ホルモン変種、すなわち20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、通常の成長ホルモン療法が望ましくない副作用を生じるような状況で有用な治療薬と成りえることを見出した。さらにまた、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vは、成長ホルモン療法が望ましい疾患の治療のための医薬の製造で用いることができる。
【0055】
参考文献
本明細書に引用した文献はいずれも参照により本明細書に含まれ、前記文献には下記リストの文献が含まれる。
Ader M, Agajanian T, Finegood DT, Bergman RN (1987) Endocrinology 120, 725-731.
Asada N, Takahashi Y, Wada M, Naito N, Uchida H, Ikeda M, Honjo M (2000) Mol. Cell. Endocrinol. 162, 121-129.
Boguszewski CL, Svensson P-A, Jansson T, Clark R, Carlsson LMS, Carlsson B (1998) J. Clin. Endocrinol. Metab. 83, 2878-2885.
Bole-Feysot C, Goffin V, Edery M, Binart N and Kelly P. 1998 Endocrine Reviews19(3); 225-268.
Breier BH, Funk B, Ambler GR, Surus A, Waters MJ and Gluckman PD. 1994. Endocrinology 135: 919-928.
Breier BH, Gluckman PD, Bass JJ. 1988 The somatotrophic axis in young steers: influence of nutritional status and oestradiol-17beta on hepatic high- and low-affinity somatotrophic biding sites. J Endocrinol 116:169-177.
Breier BH, Vickers MH, Gravance CG, Casey PJ. (1996) Endocrinology. 137(9):4061-4.
Butler AA, Ambler GR, Breier BH, LeRoith D, Roberts CT Jr, Gluckman PD. (1994) Mol Cell Endocrinol. 101(1-2):321-30.
Cooke NE, Ray J, Watson MA, Estes PA, Kuo BA, Liebhaber SA (1988) J. Clin. Invest. 82, 270-275.
Cutfield WS, Wilton P, Bennmarker H, Albertsson-Wikland K, Chatelain P, Ranke MB, Price DA. (2000) The Lancet 355, 610-13.
Daugaard JR, Laustsen JL, Hansen BS, Richter EA.(1999) J Endocrinol. 160(1):127-35.
Estes PA, Cooke NE, Liebhaber SA (1992) J. Biol. Chem. 267, 14902-14908.
Frigeri LG, Peterson SM, Lewis UJ (1979) Biochem. Biophys. Res. Commun. 91, 778-782.
Goodman HM, Tai LR, Ray J, Cooke NE, Liebhaber SA (1991) Endocrinology 129, 1779-1783.
Gravance CG, Breier BH, Vickers MH, Casey PJ. (1997) Anim Reprod Sci. 49(1):71-6.
Hsiung HM, Mizushima S (1988) Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 6, 43-65.
Igout A, Frankenne F, L'Hermite-Baleriaux M, Martin A, Hennen G (1995) Growth Regul. 5, 60-65.
Ishikawa M, Hiroi N, Kamioka T, Tanaka T, Tachibana T, Ishikawa H, Miyachi Y (2001) Eur. J. Endocrinol. 145, 6, 791-797.
Ishikawa M, Tachibana T, Kamioka T, Horikawa R, Katsumata N, Tanaka T (2000) Growth Horm. IGF Res. 10, 4, 199-206.
Johannsson G, Sverrisdottir YB, Ellegard L, Lundberg PA, Herlitz H. (2002) J Clin Endocrinol Metab. 87(4):1743-9.
Juarez-Aguilar E, Castro-Munozledo F (1995) Biochem. Biophys. Res. Commun. 217, 28-33.
Kostyo JL, Cameron CM, Olsen KC, Jones AJS, Pai RC (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. 82, 4250-4253.
MacLeod JN, Worsley I, Ray J, Friesen HG, Liebhaber SA, Cooke NE (1991) Endocrinology 128, 1298-1302.
Martin BC, Warram JH, Krolewski AS, Bergman RN, Soeldner JS, Kahn CR. (1992) Lancet 340, 925-9.
Ray J, Okamura H, Kelly PA, Liebhaber SA, Cooke NE (1990) J. Biol. Chem. 265, 7939-7944.
Ricon-Limas DE, Resndez-Prez D, Ortiz-Lopez R, Alvidrez-Quihui AE, Castro-Munozledo F, Kuri-Harcuch W, Martonez-Rodroguez HG, Barrera-Saldana HA (1993) Biochim. Biophys. Acta 1172, 49-54.
Satozawa N, Takezawa K, Miwa T, Takahashi S, Hayakawa M, Ooka H (2000) Growth Horm. IGF Res. 10, 187-192.
Takahashi S, Satozawa N (2002) Horm. Res. 58, 157-164.
Tsunekawa B, Wada M, Ikeda M, Uchida H, Naito N, Honjo M (1999) Endocrinology 140, 3909-3918.
Uchida H, Naito N, Asada N, Wada M, Ikeda M, Kobayashi H, Asanagi M, Mori K, Fujita Y, Konda K, Kusuhara N, Kamioka T, Nakashima K, Honjo M (1997) J. Biotechnol. 55, 101-112.
Vickers MH, Casey PJ, Champion ZJ, Gravance CG, Breier BH. (1999) Growth Horm IGF Res. 9(4):236-40.
Wada M, Uchida H, Ikeda m, Tsunekawa B, Naito N, Banba S, Tanaka E, Hashimoto Y, Honjo M (1998) Mol. Endocrinol. 12, 146-156.
Wang D, Sato K, Demura H, Kato Y, Maruo N, Miyachi Y (1999) Endocrine J. 46, 1, 125-132.
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】hGH変種のヌクレオチド配列を示す。ダッシュ記号は20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nにおける欠失部分を示す。
【図2】22kDa hGH-V、22kDa hGH-N、20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nの予想されるアミノ酸配列を示す。ダッシュ記号は欠失アミノ酸を示す。
【図3】非標識リガンドとして22kDa hGH-N、22kDa hGH-V、20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nを用いた標識rbGHとヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0426)。
【図4】非標識リガンドとして22kDa hGH-Nおよび20kDa hGH-Vを用いた標識rbGHとヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0440)。
【図5】非標識リガンドとしてrbGH、20kDa hGH-V、20kDa hGH-Nおよび22kDa hGH-Vを用いた標識rhGH(22kDa hGH-N)とヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0434)。
【図6】非標識リガンドとしてrbGHおよび22kDa hGH-Vを用いた標識rhGH(22kDa hGH-N)とヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0435)。
【図7】非標識リガンドとして22kDa hGH-N、20kDa hGH-Vおよび20kDa hGH-Nを用いた標識ヒツジプロラクチン(“oPRL”)とヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0439)。
【図8】非標識リガンドとして22kDa hGH-N、リコンビナントウシ成長ホルモン(“rbGH”)および20kDa hGH-Vを用いた標識rhGHとヒツジ肝ミクロソーム膜との競合結合曲線を示す(アッセイ番号0441)。
【図9】ウシ成長ホルモン(“bGH”)またはhGH変種による7日間の処理の間の体重(g)の累積変化を示す。
【図10】10Aおよび10Bは、食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後の総体重(g)の変化(図10A)および体重(g)の毎日の変化(図10B)を示す。
【図11】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットにおける頸骨長の変化を示す。
【図12】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットにおける鼻-肛門長の変化を示す。
【図13】13Aおよび13Bは、食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットの総食餌摂取(図13A)および体重に対して調整した食餌摂取(図13B)を示す。
【図14】食塩水、bGHまたはhGH変種による7日間処理後における、体重の百分率で表したラットの腹膜外部脂肪パッドの重さを示す。
【図15】食塩水、bGHまたはhGH変種による7日間処理後におけるラットの血漿IGF-I濃度を示す。
【図16】16A、16Bおよび16Cは、食塩水、bGHまたはhGH変種によるラットの処理の7日後における、絶食時血漿遊離脂肪酸(“FFA”、図16A)、トリグリセリド(図16B)およびグリセロール(図16C)を示す。
【図17】bGHまたはhGH変種で処理したラットの血漿中のアルカリホスファターゼの濃度を示す。
【図18】bGHまたはhGH変種で処理したラットの絶食時血漿グロブリン濃度を示す。
【図19】bGHまたはhGH変種で処理したラットの絶食時血漿アミラーゼ濃度を示す。
【図20】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットの血液ヘマトクリットを示す。
【図21】食塩水、bGHまたはhGH変種による処理の7日後のラットの累積体重増加を示す。データは平均±SEMである(n=6/群)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物に20kDa hGH-Vまたは20kDa hGH-Vと実質的に同一であるポリペプチドの医薬的に有効な量を投与することを含む、動物で症状を治療する方法。
【請求項2】
前記症状が成人期開始成長ホルモン欠乏症である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記症状が小児期開始成長ホルモン欠乏症である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記症状が嚢胞性線維症である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記症状が骨粗しょう症である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記症状が骨格の形成異常である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記症状が慢性腎不全である、請求項1の方法。
【請求項8】
前記症状がうつ病である、請求項1の方法。
【請求項9】
前記症状が記憶低下である、請求項1の方法。
【請求項10】
前記症状が異化作用促進状態である、請求項1の方法。
【請求項11】
前記症状が食欲不振である、請求項1の方法。
【請求項12】
前記症状が高血圧である、請求項1の方法。
【請求項13】
20kDa hGH-Vおよび医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤および結合剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤およびカプセルを含む医薬組成物。
【請求項16】
患者に20kDa hGH-Vを投与することを含む、成長ホルモン療法を必要とする患者を治療する方法。
【請求項17】
投与の工程が、20kDa hGH-Vを生成することができる発現ベクターを投与することを含む、請求項16の方法。
【請求項18】
前記発現ベクターが宿主細胞内に存在する、請求項17の方法。
【請求項19】
前記発現ベクターが患者の細胞内に存在する、請求項17の方法。
【請求項20】
成長ホルモン療法を必要とする哺乳動物に20kDa hGH-Vを含む組成物を投与することを含む、成長ホルモン療法に付随する乳汁産生作用を軽減する方法。
【請求項21】
前記投与工程が、20kDa hGH-Vを生成することができる複製可能なベクターをその中に有する細胞を前記哺乳動物に投与することを含む、請求項20の方法。
【請求項1】
哺乳動物に20kDa hGH-Vまたは20kDa hGH-Vと実質的に同一であるポリペプチドの医薬的に有効な量を投与することを含む、動物で症状を治療する方法。
【請求項2】
前記症状が成人期開始成長ホルモン欠乏症である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記症状が小児期開始成長ホルモン欠乏症である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記症状が嚢胞性線維症である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記症状が骨粗しょう症である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記症状が骨格の形成異常である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記症状が慢性腎不全である、請求項1の方法。
【請求項8】
前記症状がうつ病である、請求項1の方法。
【請求項9】
前記症状が記憶低下である、請求項1の方法。
【請求項10】
前記症状が異化作用促進状態である、請求項1の方法。
【請求項11】
前記症状が食欲不振である、請求項1の方法。
【請求項12】
前記症状が高血圧である、請求項1の方法。
【請求項13】
20kDa hGH-Vおよび医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤および結合剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
20kDa hGH-V、医薬的に許容できる賦形剤およびカプセルを含む医薬組成物。
【請求項16】
患者に20kDa hGH-Vを投与することを含む、成長ホルモン療法を必要とする患者を治療する方法。
【請求項17】
投与の工程が、20kDa hGH-Vを生成することができる発現ベクターを投与することを含む、請求項16の方法。
【請求項18】
前記発現ベクターが宿主細胞内に存在する、請求項17の方法。
【請求項19】
前記発現ベクターが患者の細胞内に存在する、請求項17の方法。
【請求項20】
成長ホルモン療法を必要とする哺乳動物に20kDa hGH-Vを含む組成物を投与することを含む、成長ホルモン療法に付随する乳汁産生作用を軽減する方法。
【請求項21】
前記投与工程が、20kDa hGH-Vを生成することができる複製可能なベクターをその中に有する細胞を前記哺乳動物に投与することを含む、請求項20の方法。
【図1】
【図1Cont】
【図2】
【図2Cont】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1Cont】
【図2】
【図2Cont】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2007−502841(P2007−502841A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524090(P2006−524090)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/027187
【国際公開番号】WO2005/018659
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505353744)ニューレン ファーマシューティカルズ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/027187
【国際公開番号】WO2005/018659
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505353744)ニューレン ファーマシューティカルズ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]