説明

所定のスカフォールドを有するポリペプチドライブラリー

共通のスカフォールドに基づくポリペプチド変異体の集団、スカフォールドアミノ酸配列 EXXXAXXEIX XLPNLTXXQX XAFIXKLXDD PSQSSELLSE AKKLNDSQまたはAKYAKEXXXAXX EIXXLPNLTX
XQXXAFIXKL XDDPSQSSEL LSEAKKLNDS Q(ここで、各Xは、独立して集団中で変更されるアミノ酸残基に対応する)を含む集団中の各ポリペプチドを開示する。各メンバーがポリペプチド集団のメンバーをコード化するポリヌクレオチド集団もまた開示される。さらに、このようなポリペプチド集団およびこのようなポリヌクレオチド集団の組合せが開示され、ポリペプチド集団の各メンバーは、遺伝子型−表現型カップリング手段を介するメンバーをコード化するポリヌクレオチドと物理的または空間的に関連する。さらに、ポリペプチド集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択し、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離し、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを同定し、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択し、そして同定し、そして所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを生産するための方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通のスカフォールドに基づく新規なポリペプチド変異体の集団に関する。これらの集団は、とりわけ、新規な結合タンパク質およびポリペプチドを提供するのに使用され得る。
【背景技術】
【0002】
新規な結合タンパク質を構築するための様々な方法が記載されている(非特許文献1)。1つのストラテジーは、ライブラリー生成と所望の特性のスクリーニングまたは選択を組み合わせている。
【0003】
元のAffibody(R)分子、このような分子の集団およびこのような分子のスカフォールドは、とりわけ、特許文献1に記載されており、この教示は参照により本明細書に加入される。
【0004】
いくつかの適用のための、改善された特性(例えば、アルカリ安定性、低い抗原性、構造的安定性、化学合成のし易さおよび親水性)を有するタンパク質、ポリペプチドまたはAffibody(R)分子、このような分子の集団およびスカフォールドが記載されている。
【0005】
アルカリ安定性
タンパク質製剤および生物工学試薬の生産は、所望でない汚染物質を除去しながら、特定の生成物に濃縮(enrich)するために、数回の生成工程を必要とする。タンパク性アフィニティーマトリクス(例えば、モノクローナル抗体およびブドウ球菌(Staphylococcal)プロテインA(SpA))により媒介されるアフィニティー精製は、1工程での効率的精製を可能にする。しかし、費用効率を高めるために、アフィニティーマトリクスを適切に再生可能とすることが所望される。これは、通常、定置洗浄(CIP)として公知の手段に関し、ここで、試薬−しばしばアルカリ溶液−が、汚染物質を溶出するのに使用される。
【0006】
アルカリ安定性はまた、最も一般的なSPECT 核種テクネチウム−99mで標識され、そして実施されるいくつかの他の種類の化学修飾を可能にする分子像トレーサーを必要とする。
【0007】
低い抗原性
タンパク質ベースの製剤(例えば、治療的モノクローナル抗体およびAffibody(R)分子)は、ヒトにおいて所望でない免疫応答を引き起こす可能性を有する。免疫原性の一因となる主な因子は、不純物、タンパク質凝集体、外来エピトープ、例えば、新しいイディオトープ、異なるIgアロタイプまたは非自己配列の存在である。さらに、交差反応免疫グロブリン(Ig)相互作用は、タンパク質製剤に対する特定のT細胞媒介性記憶免疫応答を生成する可能性が最も高い。免疫系との所望でない相互作用の危険性を最小化するために、製剤のタンパク質工学により既存の免疫エピトープを除去することが所望される。
【0008】
Affibody(R)分子は、ブドウ球菌(Staphylococcal)プロテインA(SpA)由来であり、これは、グラム陽性菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcal aureus)の表面上の細胞壁関連レセプターである。もっと正確に言えば、SpAは、5つの高度相同ドメインからなり、この全ては、多くの哺乳動物種(ヒトを含む)の免疫グロブリンに結合する。各SpAドメインは、2つの異なる方法;IgG1、IgG2およびIgG4を含むFcγに直接結合することにより(非特許文献2)、またはVH3ファミリーのメンバーに結合することにより(非特許文献3)ヒトIgと相互作用する。元のAffibody(R)分子の共通のスカフォールドは、G29A突然変異(この突然変異は、タンパク質安定性を増大し、そしてヒドロキシルアミン切断部位を除去するために含まれた)、およびドメイン間のスペーサー領域中に導入されるA1V突然変異を除外してSpAのドメインBと同一である(非特許文献4)。FcγとVH3との相互作用に関連するSpA中のアミノ酸残基は周知であり、そして文献に記載されている(非特許文献5)。異なるAffibody(R)分子の分子ライブラリーは、分子の1つの表面で表面残基(Fcγとの相互作用に関連することが公知である残基を含む)をランダム化し、それにより、Fcγに対する親和性を除去することにより構築された。
【0009】
構造的安定性
ペプチドおよびタンパク質製剤を成功させるための鍵となる因子の1つは、タンパク質の安定性である。高い構造的安定性を示すタンパク質は、生産の間さらにヒト体内の両方で、化学修飾およびタンパク質分解に最も機能的に耐えるようである。さらに安定性は、ペプチドまたはタンパク質製剤の活性化貯蔵期間(active shelf−life)さらにヒト体内でのペプチドまたはタンパク質製剤の活性化期間(active life)に影響を与える。
【0010】
化学合成のし易さ
研究者は、伝統的に、生物学的方法によりタンパク質を得ているが、ペプチドおよび低分子タンパク質の化学合成は、有力な相補的ストラテジーであり、そして一般に、構造生物学、タンパク質工学および生物医学研究に使用される。タンパク質の化学合成は、生物学的汚染物質(例えば、DNA不純物および宿主細胞タンパク質)を含まない均一タンパク質を迅速かつ効率的に生産する方法を提供する。さらに、化学合成は、非天然アミノ酸の取り込み、化学修飾および生化学的および生物物理的プローブの導入を可能にするので、柔軟性が増す。ペプチドおよびタンパク質の化学合成の成功は、問題になっている分子のアミノ酸配列に依存する。特定のアミノ酸残基は、低効率なカップリングを示し、これは保証された成功を伴わない時間のかかるプロセスである、合成の間のいくつかの工程が最適化される必要があることを意味する。さらに、化学合成の間に効率的に導入しにくいアミノ酸は、タンパク質配列が長いほどタンパク質収率により悪い影響を与える。
【0011】
増大した親和性
多くの適用について、ペプチドおよびタンパク質が低い凝集傾向を示す高溶解性であることが所望される。タンパク質製剤に関していえば、このようなタンパク質特性は、特に重要である。タンパク質表面疎水性と低い安定性および凝集傾向の増加との間に強い正相関が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO 95/19374
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nygren PA and Uhlen M(1997)Curr Opin Struct Biol 7:463−469
【非特許文献2】Langone JJ(1982)Adv Immunol 32:157−252
【非特許文献3】Silverman GJ et al(1992)Int Rev Immunol 9:57−78
【非特許文献4】Nilsson B et al(1987),Prot Eng 1:107−113
【非特許文献5】Graille M et al(2000)Proc Natl Acad Sci U S A.97:5399−5404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の説明
新規なスカフォールドに基づくポリペプチド変異体の集団を提供することが本発明の目的である。
【0015】
これらの新規なスカフォールドは、既知の類似のスカフォールド(いわゆる、元のスカフォールド)と比較していくつかの利点を有する。利点はまた、これらの新規なスカフォールドを使用することで得られるポリペプチドにも適用される。これらの利点は、以下により詳細に議論されるが、いくつかの例はここに示される。例えば、アルカリ性環境において、高い安定性を示す新規なポリペプチドスカフォールドを開発するために、広範囲の研究が実施されている。アルカリ安定性の1つの局面は、アスパラギンの脱アミドに対する安定性である。構造的硬直性を増大させることにより、またはこの残基を置換することにより、この反応を回避することはまた、アスパラギンの脱アミドが分離しにくい不均一混合物の強い一因となる、例えば、発酵プロセスにおける生産または貯蔵の後に均一生成物を得ることに寄与する化学安定性を提供する。
【0016】
さらに、新規なスカフォールド配列において、免疫グロブリン(主にVH3媒介性)に対する残存アフィニティーを除去することにより、低い抗原性に関する改善されたプロファイル(ほとんどないIgG結合性)を得た。
【0017】
さらに、新規なスカフォールドは、容易に折り畳まれるαらせん構造、高い融解温度およびタンパク質分解を標的することが公知である部位の除去(abolishment)に関して、高い構造的安定性を示すように操作されている。
【0018】
元のAffibody(R)分子スカフォールドは、化学合成の速度および成功を減少させることを示しているいくつかのアミノ酸を含む。効率的な、すなわちハイスループットおよび高収率のAffibody(R)タンパク質生産方法にするために、多数のアミノ酸が化学合成により適合する特性を有する残基に交換された。
【0019】
親水性および安定性を改善するために、Affibody(R)分子スカフォールドの表面上の疎水性残基はより親水性なアミノ酸に交換されている。
【0020】
本発明の別の目的は、ポリヌクレオチド集団を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、ポリペプチド集団とポリヌクレオチド集団との組み合わせを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、ポリペプチド集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択するための方法を提供することである。
【0023】
別の目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する方法を提供することである。
【0024】
別の目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを同定する方法を提供することである。
【0025】
さらなる目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択し、そして同定する方法を提供することである。
【0026】
関連する目的は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを生産する方法を提供することである。
【0027】
本発明に従う集団および方法は、所定の標的に特異的に結合することにより特徴付けられるポリペプチドの提供を通じて、所定の標的に対する親和性を有する薬剤の提供(生産および評価を含む)を可能にする。
【0028】
ほとんど非特異的結合を示さない所定の標的に結合するポリペプチドを提供することもまた可能である。
【0029】
融合ポリペプチド中の一部として容易に使用され得る所定の標的に結合するポリペプチドを提供することもまた可能である。
【0030】
さらに、既存の抗体試薬で経験される1つまたはそれ以上の公知の問題を解決する所定の標的に結合するポリペプチドを提供することが可能である。
【0031】
さらに、治療的および/または診断的適用に使用され易い所定の標的に結合するポリペプチドを提供することが可能である。
【0032】
化学ペプチド合成により容易に作製される所定の標的に結合するポリペプチドを提供することもまた可能である。
【0033】
さらに、本発明は、同じ標的に結合する公知の薬剤に対して改善された安定性を示す所定の標的に結合するポリペプチドの同定を可能にする。
【0034】
哺乳動物において、インビボで使用される場合に低い抗原性を示し、そして/または哺乳動物に投与される際、改善された生体内分布を示す所定の標的に結合するポリペプチドを提供することもまた可能である。
【0035】
これらおよび他の目的は、添付の特許請求の範囲において主張されるように、本発明の異なる局面により対処される。
【課題を解決するための手段】
【0036】
第一の局面において、本発明は、共通のスカフォールドに基づくポリペプチド変異体の集団を提供し、該集団中の各ポリペプチドは、スカフォールドアミノ酸配列
【化1】

またはいくつかの場合において、より好ましくは
【化2】

を含む。
【0037】
上記の配列において、各Xは、独立して、集団内で変化するアミノ酸残基に対応する。
【0038】
集団は、このようなポリペプチド分子の多数の変異体からなる。これに関連して、多数とは、少なくとも1×104のユニークなポリペプチド分子、または少なくとも1×106または少なくとも1×108または少なくとも1×1010、または少なくとも1×1012、または少なくともの1×1014のユニークなポリペプチド分子を含む集団を意味する。しかし、所望の大きさの集団を提供するのに十分な大きさである群を使用することが必要である。本明細書中に記載される「集団」はまた、「ライブラリー」を示し得る。
【0039】
各Xが、独立して、変更されるアミノ酸残基に対応することが上記されている。これは、各Xが配列中のXで示される任意の他の残基の同一性から独立して、任意のアミノ酸残基であり得ることを意味する。スカフォールドアミノ酸配列において、任意のこれらの20の天然のアミノ酸残基が、任意の所定の変異体において、対応するX位置に存在し得るように、異なる変更されたアミノ酸Xは、20の天然のアミノ酸残基全てから選択され得る。各位置におけるアミノ酸の選択は、ほぼランダム化される。異なる変更されたアミノ酸残基が19、18、17、16または20未満の天然のアミノ酸残基から選択される群に限定することもまた可能である。異なる位置における変動性は、1(ランダム化がないことを意味する)から20までのアミノ酸全ての間で個別に調節され得る。導入されるデオキシリボヌクレオチド塩基の厳選により、アミノ酸のより小さいサブセットのランダム導入を得ることができ、例えば、ポリペプチド鎖中の所定の位置でセリンまたはチロシンのいずれかのランダム導入を得るために、コドンT(A/C)Cを導入し得る。同様に、ポリペプチド鎖中の所定の位置でフェニルアラニン、ロイシン、アラニンおよびバリンのランダム導入を得るために、コドン(T/C/A/G)CCを導入し得る。当業者は、ポリペプチド鎖中の所定の位置でアミノ酸の異なる組み合わせを得るために使用され得る多くの代替のデオキシリボムクレオチド塩基の組み合わせを承知している。ポリペプチド鎖中の所定の位置に現れ得る一連のアミノ酸はまた、オリゴヌクレオチド合成の間に、同時に1つのデオキシリボヌクレオチド塩基の代わりにトリヌクレオチドを導入することにより決定され得る。
【0040】
上記のスカフォールドアミノ酸配列を含むポリペプチドは、新規なAffibody(R)分子である。それ自体、これらは、ブドウ球菌(Staphylococcal)プロテインA(SpA)由来である。これに関連して、「由来する」とは、ポリペプチドそれら自体が何らか必ず直接的にSpAが起源であることを意味しない。代わりに、スカフォールドが1つのSpAドメイン(3ヘリックスバンドルタンパク質の疎水性コア中にアミノ酸が保存されている)に類似する配列および構造を有することを意味する。
【0041】
本発明に従う集団を構成するポリペプチドの異なる修飾、および/またはこれらへの付加が、本発明の範囲から逸脱することなく、意図される特定の使用にポリペプチドを適合させるために実施され得る。このような修飾および付加が以下により詳細に記載され、そして同じポリペプチド鎖に含まれる追加のアミノ酸、または集団を構成するポリペプチドに化学的に抱合されるか、または別の方法で結合される標識および/もしくは治療薬を含み得る。いくつかの実施形態において、C末端上の追加のアミノ酸残基が好ましくあり得る。これらの追加のアミノ酸残基は、ポリペプチドの結合において役割を果たし得るが、例えばポリペプチドの生産、精製、安定化、カップリングまたは検出の1つまたはそれ以上に関連する他の目的にも同様に十分役立ち得る。このような追加のアミノ酸残基は、化学的カップリングの目的で付加される1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を含み得る。この一例は、ポリペプチド鎖の最初および最後の位置、すなわちN−またはC−末端でのシステイン残基の付加である。化学的カップリングに使用されるシステイン残基はまた、タンパク質ドメインの表面上、好ましくは、標的結合に関連しない表面の一部上の別のアミノ酸の置換により導入され得る。このような追加のアミノ酸残基はまた、ポリペプチドの精製または検出のための「タグ」、例えば、ヘキサヒスチジル(His6)タグ、またはタグに対して特異的な抗体との相互作用のための「myc」タグもしくは「FLAG」タグを含み得る。当業者は、他の代替法を承知している。
【0042】
上述の「追加のアミノ酸残基」はまた、任意の所望の機能、例えば、別の結合機能、もしくは酵素機能、もしくは金属イオンキレート化機能、もしくは蛍光機能、またはそれらの組み合わせ(mixture)を有する1つまたはそれ以上のポリペプチドドメインを構成し得る。
【0043】
第二の局面において、本発明は、ポリヌクレオチド集団を提供する。この集団中の各ポリヌクレオチドは、上記のポリペプチド集団のメンバーをコード化する。
【0044】
第三の局面において、本発明は、本発明に従うポリペプチド集団と本発明に従うポリヌクレオチド集団の組み合わせを提供し、ここで、ポリペプチド集団の各メンバーは、遺伝子型−表現型カップリング手段を介するメンバーをコード化するポリヌクレオチドと物理的または空間的に関連する。この物理的または空間的な関連は、使用されるシステムに依存してほぼ厳密である。
【0045】
遺伝子型−表現型カップリング手段としては、ファージディスプレイシステムが挙げられ得る。ファージディスプレイシステムは当業者に周知であり、そして例えば、Smith GP(1985)Science 228:1315−1317およびBarbas CF et al(1991)Proc Natl Acad Sci U S A 88:7978−7982に記載される。
【0046】
さらに、遺伝子型−表現型カップリング手段としては、細胞表面ディスプレイシステムが挙げられ得る。細胞表面ディスプレイシステムは、原核細胞、例えば、グラム陽性細胞、または真核細胞、例えば、酵母細胞を含み得る。細胞表面ディスプレイシステムは当業者に周知である。原核細胞系は、例えば、Francisco JA et al(1993)Proc Natl Acad Sci U S A 90:10444−10448およびLee SY et al(2003)Trends Biotechnol 21:45−52に記載される。真核細胞系は、例えば、Boder ET et al(1997)Nat Biotechnol 15:553−557およびGai SA et al(2007)Curr Opin Struct Biol 17:467−473に記載される。
【0047】
さらに、遺伝子型−表現型カップリング手段としては、無細胞ディスプレイシステムが挙げられ得る。無細胞ディスプレイシステムとしては、リボソームディスプレイシステム、またはインビトロコンパートメント化(in vitro compartmentalization)ディスプレイシステム、またはシスディスプレイのためのシステム、または微粒子ディスプレイシステムが挙げられ得る。リボソームディスプレイシステムは当業者に周知であり、そして例えば、Mattheakis LC et al(1994)Proc Natl Acad Sci U S A 91:9022−9026およびZahnd C et al(2007)Nat Methods 4:269−279に記載される。インビトロコンパートメント化システムは当業者に周知であり、そして例えば、Sepp A et al(2002)FEBS Lett 532:455−458に記載される。シスディスプレイシステムは当業者に周知であり、そして例えば、Odegrip R et al(2004)Proc Natl Acad Sci U S A 101:2806−2810に記載される。微粒子ディスプレイシステムは当業者に周知であり、そして例えば、Nord O et al(2003)J Biotechnol 106:1−13に記載される。
【0048】
さらに、遺伝子型−表現型カップリング手段としては、非−ディスプレイシステム、例えば、タンパク質−フラグメント相補性試験(PCA)が挙げられ得る。PCAシステムは当業者に周知であり、そして例えば、Koch H et al(2006)J Mol Biol 357:427−441に記載される。
【0049】
第四の局面において、本発明は、ポリペプチド集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択する方法を提供し、該方法は、以下:
(a)上記のポリペプチド集団を備える工程;
(b)ポリペプチド集団を、標的と標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間で特異性相互作用を可能にする条件下、所定の標的と接触させる工程;および
(c)該特異性相互作用に基づいて、残りのポリペプチド集団から少なくとも1つの所望のポリペプチドを選択する工程を含む。
【0050】
この方法は、以下で本発明に従う選択方法と称される。
【0051】
工程(a)は、ポリヌクレオチド集団を提供し、そして前記ポリヌクレオチド集団を発現させ、該ポリペプチド集団を得る予備工程を包含し得る。ポリペプチド集団を得る手段は、使用されるディスプレイシステムによって変わり、そしてこのような手段の例としては、上記の遺伝子型−表現型参考文献に見出され得る。本発明に従う選択方法において使用される前記ポリペプチド集団の各メンバーは、遺伝子型−表現型カップリング手段を介するメンバーをコード化するポリヌクレオチドと物理的に関連し得る。遺伝子型−表現型カップリング手段は、上記されるものの1つであり得る。
【0052】
工程(b)は、標的と標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間で特異性相互作用を可能にする条件下、ポリペプチド集団を所定の標的と接触させる工程を含む。適用可能な条件の範囲は、標的のロバスト性、ディスプレイシステムのロバスト性により、および標的との相互作用の所望の特性により決定される。例えば、所定のpHまで酸性化することのような、相互作用を分離する特定の方法が望ましくあり得る。当業者は、適切な条件を決定するためにどのような実験が必要であるか理解している。
【0053】
工程(c)は、少なくとも1つのポリペプチドの選択を包含する。所定の標的と標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間の特異性相互作用に基づいて、残りの集団から所望のポリペプチドを選択する手段は、使用されるディスプレイシステムによって変わり、そして上記の遺伝子型−表現型参考文献に見出され得る。例えば、システム、例えば、ファージディスプレイおよびタンパク質フラグメントコンパートメント化アッセイと対照的に、インビボディスプレイ選択システムは無細胞である。
【0054】
第五の局面において、本発明は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する方法を提供し、該方法は、以下:
−所望のポリペプチドおよびそれをコード化するポリヌクレオチドを、ポリペプチド集団から本発明に従う選択方法を使用して選択する工程;および
−このように分離した、所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する工程を含む。
【0055】
この方法は、以下で本発明に従う単離方法と称される。
【0056】
ポリペプチドからのポリヌクレオチドの分離は、選択のために使用されるディスプレイシステムに依存して別々になされ得る。例えば、無細胞ディスプレイシステム、例えば、シスディスプレイおよびリボソームディスプレイにおいて、ポリヌクレオチドまたは対応するmRNAは、上記の遺伝子型−表現型参考文献に記載される手段を使用してポリペプチドから有効な溶出により回収される。
【0057】
ポリヌクレオチドの単離は、選択のために使用されるディスプレイシステムに依存して別の方法でなされ得る。上記の選択システム(例えばタンパク質フラグメント相補性試験)のほとんどにおいて、ポリヌクレオチドは、適切なオリゴヌクレオチドを使用する特定のPCR増幅により直接単離され得る。例外的に、リボソームディスプレイにおいて見られるように、逆翻訳を使用して、ポリヌクレオチドを対応するmRNAから単離し得る。ポリヌクレオチドを単離するための種々の手段は、上記の遺伝子型−表現型参考文献において見出され得る。
【0058】
第六の局面において、本発明は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを同定する方法を提供し、該方法は、以下:
−所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを、本発明に従う単離方法を使用して単離する工程;および
−該ポリヌクレオチドを配列決定して、該所望のポリペプチドのアミノ酸配列を推論することにより確立する工程を含む。
【0059】
ポリヌクレオチドの配列決定は、当業者に周知の標準的な手順に従ってなされ得る。
【0060】
第七の局面において、本発明は、ポリペプチド集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択し、そして同定する方法を提供し、該方法は、以下:
(a)分離担体またはビーズ上の該ポリペプチド集団の各メンバーを合成する工程;
(b)担体またはビーズを、ポリペプチドと所定の標的との相互作用に基づいて選択または濃縮する工程;および
(c)タンパク質キャラクタリゼーション方法により、該ポリペプチドを同定する工程を含む。
【0061】
工程(c)において、例えば、質量分析法が使用可能である。
この方法は、以下で本発明に従う選択および同定方法と称される。
【0062】
第八の局面において、本発明は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを生産する方法を提供し、該方法は、以下:
−本発明に従う選択方法または本発明に従う選択および同定方法を使用して、所望のポリペプチドを単離し、そして同定する工程;および
−該所望のポリペプチドを生産する工程を含む。
【0063】
この方法は、以下で本発明に従う生産方法と称される。
【0064】
本発明に従う生産方法において、所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの組換え発現を使用して、生産が実行され得る。生産はまた、所望のポリペプチドのデノボ化学合成を使用して実行され得る。
【0065】
第九の局面において、本発明は、所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを生産する方法を提供し、該方法は、以下:
(a1)本発明に従う単離方法を使用して、該所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する工程;または
(a2)本発明に従う選択および同定方法を使用して同定されたポリペプチドを逆翻訳する工程;および
(b)このように単離されたポリヌクレオチドを発現させ、該所望のポリペプチドを生産する工程を含み、ここで工程(b)は工程(a1)または工程(a2)のいずれかの後に実施される。
【0066】
ポリヌクレオチドの発現は、当業者に公知の任意の適切な発現宿主(例えば、これらに限定されないが、細菌性細胞、酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞)においてなされ得る。
【0067】
「所定の標的に対する結合親和性」、「所定の標的に結合する」などのような表現は、親和性定数、すなわち、所定の抗原濃度で結合および解離するポリペプチドの量の決定により直接測定され得るポリペプチドの特性をいう。異なる方法を使用して、分子間相互作用をキャラクタリゼーションすることができ、これらの方法としては、例えば、競合分析、均衡分析および微小熱量分析、ならびに表面プラズモン共鳴相互作用に基づくリアルタイム相互作用分析(例えば、Biacore(R)機器を使用する)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法は当業者に周知であり、そして例えば、Neri D et al(1996)Tibtech 14:465−470およびJansson M et al(1997)J Biol Chem 272:8189−8197に記載される。
【0068】
本発明者らは、所定の標的に結合し、任意の上記の方法により得られるポリペプチドが、同じ標的に結合する既知のポリペプチドと比較して、これらのすでに既知であるポリペプチドが標的に結合する能力を残したまま、1つまたはそれ以上の驚くべき利点を示し得ることを見出している。このような利点の非限定的な例は、次の通りである:
・所定の標的に結合し、そして任意の上記の方法により得られるポリペプチドは、ポリペプチド配列の化学合成において、低収率および低い成功率のような問題となり得るいくつかのアミノ酸残基、例えば、アスパラギン、アルギニン、アスパラギン酸およびメチオニンを含む。
・所定の標的に結合し、そして任意の上記の方法により得られるポリペプチドは、表面疎水性を与えるいくつかのアミノ酸残基を含む。これは低い安定性および凝集に関連するいくつかの問題を暗示する。理論に拘束されることなく、より親水性である特性は、宿主に投与される際、肝胆経路(肝臓による排出)からより所望される腎臓経路(腎臓による排出)へ、ポリペプチドの生体内分布をシフトするように作用すると現在考えられている。
・所定の標的に結合し、そして任意の上記の方法により得られるポリペプチドは、ポリペプチド安定性問題に関連するいくつかのアミノ酸残基、例えば、メチオニン、アスパラギンおよびジペプチドアスパラギン−プロリンを含む。メチオニンは、酸化され易く、アスパラギンは脱アミドされ易く、そしてアスパラギン−プロリン結合は酸開裂し易く、従って、これらは最終生成物の非均一性の一因となる。
・所定の標的に結合し、そして任意の上記の方法により得られるポリペプチドは、類似の配列において、VH3由来の重鎖可変ドメインを含む免疫グロブリンとの相互作用を増大させることが見出されているアミノ酸残基を欠損する(Silverman GJ(1992)前出)。理論に拘束されることなく、所定の標的に結合し、そして任意の上記の方法により得られるポリペプチド中のこのようなアミノ酸残基の置換は、宿主に同じものを投与する際、ポリペプチドの抗原性を低下させると現在考えられている。
【0069】
本発明のスカフォールドの利点のうち、アルカリ安定性、低い抗原性、構造的安定性、化学合成の改善された特性および/または増大した親水性が特に重要である。
【0070】
所定の標的に結合し、そして任意の上記の方法により得られるポリペプチドは、検出試薬、捕捉試薬、分離試薬、インビボまたはインビトロでの診断のための診断用薬として、それ自体での治療薬としてまたは所定の標的に対する他の治療薬および/または診断用薬を標的化するための手段として使用され得る。インビトロで本発明に従うポリペプチドを利用する方法は、異なる形式、例えば、マイクロタイタープレート中、タンパク質アレイ中、バイオセンサー表面上、組織切片上などで実施され得る。
【0071】
本発明に従う集団を構成するポリペプチドに対する上記の修飾はまた、任意の上記の方法により得られるポリペプチドに適用可能である。
【0072】
本発明に従うポリペプチドは、任意の公知の手段により生産され得、この手段としては、化学合成または異なる原核生物または真核生物宿主(植物およびトランスジェニック動物を含む)での発現が挙げられる。
【0073】
本発明は、これから、本発明に従って実施される実施例の記述により詳細に説明される。以下の実施例は、限定として解釈されない。この実施例において、添付の図について申し述べる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】Jasco J−810分光偏光計を使用するCD測定から得られた結果を示す。His6−ZTNF-α:3230の温度可変測定をPBS緩衝液中0.5mg/mlで行なった。吸光度を221nmで20〜80℃、5℃/分の温度傾斜を用いて測定した。1mmの光路長を有するセルを使用した。His6−ZTNF-α:3230の融解温度(Tm)を温度可変測定から決定した。
【図2】実施例4に記載される選択の概観を示す。選択を2つの異なるトラック、高い標的濃度を有するもの(トラック1)および低い標的濃度を有するもの(トラック2)で行なった。標的濃度が各トラックおよびサイクルについて示され、さらに洗浄の回数(丸括弧内)が示される。
【図3】His6−Z04674の96℃での加熱前(実線)および加熱後(点線)の2つのCDスペクトルのオーバーレイプロットである。
【図4】ポリペプチド変異体のバイアコア(Biacore)分析の結果を示す;固定化ダイナザイム(Dynazyme)に対するHis6−Z04777(黒矩形)、His6−Z04687(黒三角)、His6−Z04665(白三角)、His6−Z04674(黒線)、His6−Z04781(灰色線)およびランニングバッファー(白矩形)の連続注入後に得られるセンサーグラム(sensorgram)。反応(RUにおける)を時間(s)に対してプロットした。
【図5A】アミノ酸残基18〜58の合成段階で、配列maESEKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPKを有するポリペプチドの分析的HPLC溶出プロファイルを示す。位置22〜23、41〜42、45〜46および53〜54にシュードプロリンを使用して、ポリスチレン樹脂上で行なった合成。
【図5B】アミノ酸残基18〜58の合成段階で、配列maESEKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPKを有するポリペプチドの分析的HPLC溶出プロファイルを示す。シュードプロリンを使用しないポリスチレン樹脂上での標準的ペプチド合成。
【図6A】アミノ酸残基1〜58(A)および10〜58(B)の合成段階で、配列maESEKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPKを有するポリペプチドの分析的HPLC溶出プロファイルを示す。位置22〜23、41〜42、45〜46および53〜54にシュードプロリンを使用して、ポリスチレン樹脂上で行なった合成。
【図6B】アミノ酸残基1〜58(A)および10〜58(B)の合成段階で、配列maESEKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPKを有するポリペプチドの分析的HPLC溶出プロファイルを示す。シュードプロリンを使用しないポリスチレン樹脂上での標準的ペプチド合成。
【図7A】配列A)AEAKYAKEMW IAWEEIRNLP NLNGWQMTAF IAKLLDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPKC(本発明に従う)およびB)AENKFNKEMW IAWEEIRNLP NLTGWQMTAF IASLLDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK(比較用)を有するポリペプチドの分析的HPLC溶出プロファイルを示す。
【図7B】配列A)AEAKYAKEMW IAWEEIRNLP NLNGWQMTAF IAKLLDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPKC(本発明に従う)およびB)AENKFNKEMW IAWEEIRNLP NLTGWQMTAF IASLLDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK(比較用)を有するポリペプチドの分析的HPLC溶出プロファイルを示す。
【実施例】
【0075】
実施例1−コンビナトリアルポリペプチドライブラリーの構築
基本的にGroenwall C et al(2007)J Biotechnol
128:162−183に記載されるように、黄色ブドウ球菌タンパク質A−誘導性タンパク質Z(Nilsson et al(1987、前出)のヘリックス1および2をコード化し、点突然変異N3A、F5Y、N6A、N23TおよびS33Kを有する特定の縮重コドンを有する123−ヌクレオチドの鋳型オリゴヌクレオチド(5’−GTA GAT GCC AAA TAC GCC AAA GAA NNN NNN NNN GCG NNN NNN GAG ATC NNN NNN TTA CCT AAC TTA ACC NNN NNN CAA NNN NNN GCC TTC ATC NNN AAA TTA NNN GAT GAC CCA AGC CAG AGC−3’)のPCR増幅により、ポリペプチドのコンビナトリアルライブラリーを構築した。それぞれ、Xho I部位およびSac I部位(表1で下線を引く)を有するプライマーAFFI−1364およびAFFI−1365を使用して、PCR増幅を行なった。
【0076】
得られたライブラリーコード化遺伝子フラグメントを、Xho IおよびSac Iで制限した。続いて、ライブラリーコード化遺伝子フラグメントを、点突然変異A42S、N43E、A46SおよびA54Sを有するヘリックス3をコード化するタンパク質Zのアミノ酸残基41〜58を備えたフレーム内で、ファージミドベクターpAffi1(Groenwall C et al(2007)、前出)に基本的に基づいて、ファージディスプレイ用に採用されたXho I− およびSac I−制限ファージミドベクター(pAY2016で示される)中にライゲーションした。2つの相補的オリゴヌクレオチドAFFI−1333およびAFFI−1334(表1)のアニーリングにより、ヘリックス3を構築した。
【0077】
得られたライブラリーベクターを、大腸菌(Escherichia coli)株RR1ΔM15(Ruther U(1982)Nucl Acids Res 10:5765−5772)にエレクトロポレーションし、2.4×1010メンバーのライブラリーを得た。
【0078】
M13K07 ヘルパーファージ(New England Biolabs,Beverly,MA,USA)を含む標準的な手順を使用して、ライブラリーからのファージストックの調製を実施し、培養液(cultivation)1mlあたり約1011 cfuのファージ力価を型どおりに得た。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例2−ヒトHER2結合ポリペプチド変異体のファージディスプレイ選択およびキャラクタリゼーション
要約
実施例1で構築したライブラリーを使用するファージディスプレイ選択における標的として、ビオチン化HER2タンパク質を使用する。HER2に対して高い親和性を有する分子を得る見込みを最大化するために、種々の条件を使用して選択を実行する。選択されたファージの溶出後、ELISAセットアップにおいて、対応する発現タンパク質のHER2に対する親和性について試験する。陽性クローンを同定し、そして配列決定し、そして対応するポリペプチドの予測されるアミノ酸配列およびそれらのHER2結合モチーフを推論し、これにより多数のHER2結合分子の配列を得る。
【0081】
HER2のビオチン化
凍結乾燥したヒトHER2タンパク質(R&D Systems、#1129−ER)を10mg/mlの最終濃度でPBS(2.68mM KCl、1.47mM KH2PO4、137mM NaCl、8.1mM Na2HPO4、pH 7.4)に溶解する。EZ−連結スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce、#21335)を1mg/mlの最終濃度で水に溶解し、そして5および30倍のモル過剰を0.5mlの全体積中HER2(500μg)に添加する。混合物を室温(RT)で30分間インキュベートする。透析カセット(Slide−A−Lyser、10 kDa;Pierce)を使用してPBS対して透析することにより、未結合のビオチンを除去する。
【0082】
ファージディスプレイ選択
次第にストリンジェントになる条件(例えばHER2濃度の減少および洗浄回数の増加)を使用して、全体で、5ラウンドの選択を実行する。主に適切な選択プロトコルを確立する目的で最初の3ラウンドを行なう。次いで、表2に掲記される選択緩衝液、標的濃度および固体支持体の組み合わせを使用して、さらに2サイクルの選択を実行する。
【0083】
【表2】

【0084】
選択手順において使用される全てのチューブおよびビーズ(Dynabeads(R) M−280 Streptavidin、#112.06;Dynal)をTPBSB(5%)(PBS中0.05% Tween20、5%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.02%アジ化Na)またはゼラチン(0.5%)中、RTで少なくとも30分間プレブロック(pre−block)する。
【0085】
表2に従うビオチン化ヒトHER2、ファージ、アジ化Na(0.02%)、Tween 20(0.05%)、およびBSA(3%)またはゼラチン(0.1%)のいずれかを含む選択溶液(1ml)をPBS中で調製する。ファージをビオチン化ヒトHER2標的と共に4℃でサイクル4について3日間およびサイクル5について1日間インキュベートし、次いで、RTで撹拌下1時間インキュベートする。選択サンプルをブロックしたストレプトアビジンビーズにRTで撹拌下15分間で移す。ビーズを選択緩衝液(すなわち、TPBSB(3%)(PBS中0.05% Tween20、3%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.02% アジ化Na)またはGT 0.1(PBS 中0.1% ゼラチン、0.1% Tween 20および0.02% アジ化Na))(1ml)で10回洗浄し、次いでPBSで10回洗浄し、2回目の最後の洗浄は5分間行なう。ファージを、RTの50mM グリシン−HCl、pH 2.2(1000μl)で10分間溶出し次いで1M Tris−HCl(100μl)を補充したPBS(pH 8.0)(900μl)ですぐに中和するか、またはRTのトリプシン(2mg/ml)(1000μl)で30分間溶出し、次いでアプロチニン(0.4mg/ml)(1000μl)を添加する。選択の各サイクルの後、溶出したファージ(3/4の体積)を使用して、対数期の大腸菌RR1ΔM15細胞(Ruether、1982、前出)(50ml)に感染させる。37℃で30分間穏やかに撹拌しながらインキュベートし、そして30分間激しく撹拌した後、細胞を遠心分離し、そしてペレットをより少ない体積に溶解し、そしてTYEプレート(15g/l 寒天、10g/l トリプトン水(Merck)、5g/l 酵母エキス、3g/l NaCl、2%グルコースおよび100μg/ml アンピシリンを補充している)上に塗り、そして最後に37℃で一晩インキュベートする。
【0086】
ファージストック調製
プレートからの細胞をTSB培地(30g/l トリプティックソイブロス)に再懸濁し、そしてOD600=1が5×108細胞/mlに対応すると仮定して、600nmでの光学密度を測定することにより細胞濃度を決定する。細胞を2% グルコースおよび100μg/mlアンピシリンを補充したTSB+YE培地(100ml)に植菌し(溶出ファージと比較して、細胞の約100倍過剰)、37℃で約OD600=0.5〜0.7まで増殖させる。その後、10mlを新しいフラスコに移し、そして10倍モル過剰のM13K07ヘルパーファージ(New England Biolabs、#NO315S)を感染させ、そして静かに撹拌しながら30分間インキュベートする。細胞を10分間 2000gでペレット化し、そして100μM イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)、50μg/ml カナマイシンおよび100μg/ml アンピシリンを補充したTSB+YE培地(100ml)に再懸濁し、そして100 rpmおよび25℃で一晩増殖させる。再懸濁した細胞の一部をグリセリンストックとして−80℃で保存する。
【0087】
一晩培養物を2500gで10分間遠心分離し、そしてシの体積の沈殿緩衝液(20% PEG/2.5M NaCl)を添加することにより上清中のファージを沈殿させ、そして1時間氷上でインキュベートする。10000g、4℃で30分間遠心分離することにより、沈殿したファージをペレット化し、PBS(20ml)に再懸濁し、その後、沈殿手順を繰り返す。最後にファージをPBS(1ml)に再懸濁し、そして0.45μmフィルターに通して濾過する。
【0088】
選択の各ラウンド後に、選択溶液、洗浄溶液および溶出溶液を滴定する。ファージ溶液をマイクロタイタープレート中の滅菌水に希釈し、そして対数期の大腸菌RR1ΔM15細胞(100μl)を各ファージ希釈液に添加する。RTで20分間インキュベートした後、各滴定から5μlをTYEプレートに移し、そして37℃で一晩インキュベートする。得られたコロニーを計数し、そして力価(cfu/ml)を計算する。
【0089】
HER2結合のELISA分析
以下の実施例4に記載されるように(しかし、標的タンパク質としてHER2を使用する)、または以下に記載されるように、最終選択サイクルからのクローンを発現させ、そしてELISA セットアップを使用して、HER2結合活性についてスクリーニングする。100μg/ml アンピシリンおよび1mM IPTGを補充したTSB+YE培地(1ml)中に各コロニーを植菌することにより、ランダムに採取したコロニーを96ディープウェルプレート中で発現させ、そして37℃で18〜24時間増殖させる。インキュベート後、−20℃で保存するために、15% グリセリンを含む96ウェルプレートに各培養物の少量の画分を移すことにより、複製プレートを作製する。
【0090】
残りの細胞を3000gで10分間の遠心分離によりペレット化し、PBS−T 0.05(0.05% Tween 20を補充したPBS)(400μl)に再懸濁し、そして−80℃で凍結する。凍結したサンプルを水浴中で解かし、そして細胞を3700gで少なくとも20分間ペレット化する。発現した分子を含む上清を集め、そしてELISAに使用する。
【0091】
ハーフエリアマイクロタイターウェル(Costar、#3690)を、ELISAコーティング緩衝液(Sigma、#3041)中6μg/mlの濃度のHSA(50μl)で4℃で一晩コーティングする。ウェルをブロッキング緩衝液(PBS中2% 脱脂粉乳)(100μl)を用いてRTで2時間ブロックする。ブロッキング緩衝液を除去した後、調製したタンパク質(50μl)をウェルに添加し、そしてプレートをRTで1.5時間インキュベートする。上清を廃棄し、そしてPBS−T 0.05中0.5〜10μg/mlの濃度のビオチン化HER2をウェルに添加し、そして1.5時間インキュベートする。結合複合体をPBS−T 0.05に1:5000で希釈し、RTで1時間インキュベートした西洋ワサビペルオキシダーゼ複合ストレプトアビジン(HRP、Dako、#P0397)を用いて検出する。ImmunoPure(R) TMB基質(Pierce、#34021)(50μl)をウェルに添加し、そしてプレートを製造業者の推奨に従って処理する。ウェルの吸光度をTecan Ultra 384 ELISAリーダー(Tecan)中450nmで読み取り、そしてMagellan v.5.0ソフトウェア(Tecan)を使用して評価する。各新しい試薬を添加する前に、PBS−T 0.05で洗浄を4回行う。
【0092】
この実験結果に基づいて、配列決定するために、次に記載されるようにクローンを採取する。
【0093】
ELISA陽性クローンの配列決定
適切なオリゴヌクレオチドを使用して、選択したコロニー由来のPCRフラグメントを増幅させる。製造業者の推奨に従って、BigDye(R)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を使用し、そして適切なビオチン化オリゴヌクレオチドを用いて、増幅したフラグメントの配列決定を行なう。Magnatrix 8000 機器(Magnetic Biosolutions)を使用して、Dynabeads(R) REGENTMストレプトアビジンコート化常磁性ビーズに結合させることにより、配列決定反応物を精製し、そして最後にABI PRISM(R) 3100 Genetic Analyser(Applied Biosystems)で分析する。
【0094】
プラスミドpAY1448へのサブクローニング
選択したDNAコード化物(DNA encoding)およびHER2−特異的分子を発現ベクター発現ベクターpAY1448中にサブクローニングし、MGSSHHHHHHLQ−[Z#####]−VD(His6−Z#####)として発現されるHis6−タグ化単量体分子を作出し、ここで、Z#####は、変異体分子の出発集団の同定されたメンバーを表す。製造業者の推奨に従って、Qiagen Mini Kit(Qiagen)を使用して、挿入物を含むプラスミドを100μg/ml アンピシリンを補充したTSB中の大腸菌RR1ΔM15細胞の一晩培養物(2ml)から精製する。
【0095】
適切なPCRプライマー対を使用するAccI−NotI PCR付着末端クローニングにより、選択された分子のDNAを発現ベクターpAY1448中にサブクローニングする。
【0096】
発現ベクターpAY1448をそれぞれ、NEB4およびNEB3緩衝液(New England Biolabs)中AccI およびNotIを使用して、37℃で4時間2工程で消化し、そしてコウシ腸アルカリホスファターゼ(CIAP;Fermentas)を用いて37℃で1時間脱リン酸化する。切断したプラスミドおよびフラグメントを、製造業者の推奨に従って、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)により精製する。
【0097】
PCR産物をハイブリダイズし、そしてT4 DNAリガーゼ(5 単位/μl;Fermentas)を使用して、RTで1時間AccI−NotI消化および脱リン酸化pAY1448にライゲーションする。ライゲーションのアリコートを大腸菌BL21(DE3)細胞にエレクトロポレーションする。50μg/ml カナマイシンを補充したトリプトース血液寒天基礎培地(TBAB)プレート上に細胞をプレーティングし、そして37℃で一晩インキュベートする。陽性クローンを始めにPCRスクリーニングで挿入について検証し、次いで上記のように正しい配列(correct sequence)について分析する。
【0098】
His6−タグ化ポリペプチドの発現および精製
上記のように全てをpAY1448にサブクローニングした選択分子を、N−末端His6−タグへの融合として大腸菌BL21(DE3)中で発現させ、そしてIMACにより精製する。各分子のコロニーを使用して、50μg/ml カナマイシンを補充したTSB培地(5ml)に植菌する。培養物を37℃で一晩増殖させる。翌日、各培養物(50μl)を、1リットルフラスコ中の50μg/ml カナマイシンを補充したTSB+YE培地(100ml)に別々に植菌する。培養物を100rpm、37℃で0.7〜1のOD600まで増殖させ、その後、IPTGを0.5mMの最終濃度で添加し、そして細胞を100rpm、RTで一晩インキュベートする。8000gで5分間の遠心分離により培養物を採取し、そしてペレットをタンパク質調製まで冷凍庫中で保存する。
【0099】
1.5ml Ni−NTA Superflow カラム(Qiagen)を使用して、変性条件下、His6−タグ化タンパク質をIMAC精製する。PD−10カラム(GE Healthcare)を使用して、緩衝液をPBSに交換する。
【0100】
製造業者に推奨されるように、A280およびBCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce)を使用して、タンパク質濃度を決定する。クマシーブルーRで染色したSDS−PAGEによりタンパク質の純度を分析する。
【0101】
ヒトHER2に対する選択分子の親和性のバイオセンサー分析
製造業者の推奨に従って、CM−5チップ(研究グレード(research grade);GE Healthcare)の表面上のカルボキシル化されたデキストラン層上へのアミンカップリングにより固定化されたヒトHER2を用いて、Biacore2000機器(GE Healthcare)でのバイオセンサー分析を行なう。チップ上の表面1を活性化し、そして失活させ、そして注入の間、参照細胞として使用する。上記のように発現させ、そして精製した選択分子を25nMでHBS−EP(GE Healthcare)に希釈し、そして25μl/分の一定流速で10分間注入し、次いでHBS−EP中で30分間解離させる。表面を25mM HClの2回の注入で再生させる。
【0102】
実施例3−元のおよび本発明のスカフォールド変異体のクローニング、生産ならびに融解温度およびインビトロ抗原性の評価
要約
この実施例は、元のおよび本発明のスカフォールド変異体のクローニング、生産および評価を記載する。導入されたスカフォールド突然変異は、ポリペプチド分子のいくつかの特性、例えば抗原性、親水性ならびにアルカリ安定性および構造的安定性を改善すると考えられている。従って、種々の分子を、融解温度およびインビトロ抗原性について評価し、そして結果は、元の分子と比較して、本発明の分子が融解温度を上昇させ、そしてより低下したインビトロ抗原性(より低いIgG結合性)を有することを示した。
【0103】
ポリペプチドのクローニング
元の構築物について、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、HER2、インスリン、Taqポリメラーゼおよび血小板由来増殖因子受容体β(PDGF−Rβ)に特異的なDNA配列コード化分子(表3)を各2つの別個の反応(PCR1およびPCR2)において、PCRにより増幅させた。5’−末端にAccI制限酵素認識部位の一部をコード化するプライマー対AFFI−267/AFFI−1014およびAFFI−1015/AFFI−270(表4)を、それぞれ、PCR1およびPCR2に適用した。プラスミド鋳型を調製するために、プラスミドDNAを含む細菌を50μg/ml カナマイシンを補充したTSB培地中で一晩増殖させた。遠心分離により細胞をペレット化し、そしてQIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を使用してプラスミドを調製した。
【0104】
本発明の構築物について、鋳型として部分的重複オリゴヌクレオチド(AFFI−1320−AFFI−1323、AFFI−1326およびAFFI−1327)を使用するか、または元の構築物および関連する突然変異を含むオリゴヌクレオチドを有するベクター(AFFI−69、AFFI−70、AFFI−1151およびAFFI−1152)(表4)を使用して、修飾された本発明の分子をコード化するヌクレオチド配列のPCR増幅(PCR1およびPCR2)を行なった。5’−末端にAccI制限酵素認識部位の一部をコード化するプライマー対AFFI−1328/AFFI−1331およびAFFI−1329/AFFI−1330が、PCR反応物中に含まれた。
【0105】
標準PCRプロトコルに従って、Pfu Turbo DNAポリメラーゼ(Stratagene、#600854−52)を使用して、PCR反応物を増幅させ、そしてPCR産物を1%アガロースゲル電気泳動により分析した。
【0106】
多様なコドンを有するオリゴヌクレオチドおよびPCRベースの突然変異誘発技術を使用して、PDGF−Rβ結合Z変異体を生成させた。In−Fusion技術(Clontech、#639607)を使用して、得られたPCRフラグメントを切断発現ベクター中にライゲーションした。
【0107】
全ての構築物について、上流および下流のAccI付着末端を含むDNAフラグメントを生成させるために、電磁ストレプトアビジンビーズを使用して、PCR1およびPCR2産物の順方向および逆方向のヌクレオチド鎖を分離した。持続回転の下、RTで30分間インキュベートした後、ビーズを洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl pH 7.5、10mM MgCl2、10mM DTT)で洗浄し、そして95℃で5分間加熱した。非−ビオチン化フラグメントを含む上清を集め、そして95℃で加熱し、次いで、DNA鎖をハイブリダイズさせるために、25℃で30分間段階的に冷却した。
【0108】
その後、結合分子をコード化するDNAフラグメントを、CIP−処理し(コウシ腸アルカリホスファターゼ)、そして精製した発現ベクター(予めAccI制限酵素で消化している)中にRTで、2時間または一晩のいずれかでライゲーションした。得られた構築物は、MGSSHHHHHHLQ−[Z#####]−VD、MGSSLQ−[Z#####]−VDC(ZPDGF-Rβ:2465について)またはM−[Z#####]−C(ZPDGF-Rβ:3358について)であった。
【0109】
ライゲーション物(ligation)をエレクトロコンピテントな大腸菌TOP10細胞に形質転換し、そして実施例2に記載されるようにプレート上で培養した。新しく構築されたプラスミドを含む細菌コロニーを PCRスクリーニングし、そして挿入DNA配列を実施例2に記載されるように検証した。
【0110】
検証したプラスミドを、前述のように調製した。
【0111】
ポリペプチドの発現
関連するプラスミドを用いて形質転換された大腸菌BL21(DE3)培養物を、50μg/ml カナマイシンおよび0.3ml/l 消泡剤(Breox FMT 30)を補充したTSB−YE培地(800ml)中に植菌し、そして約2のOD600まで37℃で増殖させた。次いで、0.5mMの最終濃度で1 M IPTGを添加することにより、タンパク質発現を誘導した。マルチ発酵槽(multifermenter)システムGreta(Belach)を使用して、培養を行なった。誘導の5時間後、15 900×gで20分間の遠心分離により培養物を採取した。上清を廃棄し、そして細胞ペレットを回収し、そして−20℃で保存した。SDS−PAGEおよび染色ゲルの目視検査(ocular inspection)を使用して、タンパク質発現レベルを決定した。
【0112】
発現したポリペプチドの精製
His6タグを含むタンパク質を以下のように精製した:可溶性His6タグ化ポリペプチドを含むペレット化した細菌細胞をHis GraviTrap結合緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、20mM イミダゾールおよび40U/ml Benzonase(R))に懸濁し、そして超音波処理により破砕した。清澄化した後、上清を予めHis GraviTrap 結合緩衝液で平衡化したHis GraviTrapカラム(GE Healthcare)にロードした。10カラム体積(CV)のHis GraviTrap洗浄緩衝液(20mM リン酸ナトリウム、0.5M NaCl、60mM イミダゾール)でカラムを洗浄した後、ポリペプチドを3CV His GraviTrap溶出緩衝液(20mM リン酸ナトリウム、0.5M NaCl、500mM イミダゾール)で溶出した。
【0113】
His6タグを含まないタンパク質を以下のように精製した:可溶性ZPDGF-Rβ:2465−CysまたはZPDGF-Rβ:3358−Cysを含むペレット化した細菌細胞を20mM Tris−HCl(pH 7.1)に懸濁した。細胞を破砕し、そして細胞内内容物を放出させるために、細胞懸濁液を85℃で3分間加熱した。遠心分離により溶解物を清澄化し、続いて濾過し、そして予め20mM Tris−HCl(pH 7.1)で平衡化したXK26カラム(GE Healthcare)中にパックされた25ml Q Sepharose FF(GE Healthcare)にロードした。5CV 20mM Tris−HCl(pH 7.1)でカラムを洗浄した後、結合タンパク質を10 CVの間、20mM Tris−HCl(pH 7.1)中0〜0.5 M NaClの直線グラジエントで溶出した。流速は5ml/分であり、そして280nmシグナルをモニターした。ZPDGF-Rβ:2465−CysまたはZPDGF-Rβ:3358−Cysを含む画分をSDS−PAGE分析により同定した。関連する画分をプールし、そして50mMの最終濃度で1M
Tris−HCl(pH 8.0)を添加することにより、pHを8.0に調整した。20mMまでのDTTを添加し、次いで40℃で3分間インキュベートし、構築物上のC−末端システインを還元した。還元後、5%の最終濃度でアセトニトリル(ACN)を添加し、そして還元ZPDGF-Rβ:2465−CysまたはZPDGF-Rβ:3358−Cysを予めRPC
A緩衝液(0.1% TFA、5% ACN、95% 水)で平衡化した1ml Resource 15RPC カラム(GE Healthcare)にロードした。10CV RPC A緩衝液でカラムを洗浄した後、結合タンパク質を0〜40% RPC B緩衝液(0.1% TFA、80% ACN、20% 水)の直線グラジエントで溶出した。流速は1ml/分であり、そして280nmシグナルをモニターした。純粋なZPDGF-Rβ:2465−CysまたはZPDGF-Rβ:3358−Cysを含む画分をSDS−PAGE分析により同定し、そしてプールした。
【0114】
タンパク質の凍結乾燥を可能にするために、使い捨てPD−10脱塩カラム(GE Healthcare)を使用して、緩衝液を10mM 炭酸水素アンモニウム緩衝液(pH 8.0)、または10mM 酢酸アンモニウム緩衝液(pH 6.0)のいずれかに交換した。関連するタンパク質の等電点に対して凍結乾燥緩衝液を選択した。最後に、Christ Alpha 2−4 LSC機器を使用して、結合ポリペプチドHis6−ZTNF-α:185、His6−ZHER2:342、His6−Zインスリン:810、His6−ZTaq:1154、ZPDGF-Rβ:2465−Cys、His6−ZHER2:2628、His6−ZTaq:3229、His6−ZTNF-α:3230、His6−Zインスリン:3232 およびZPDGF-Rβ:3358−Cysを凍結乾燥させ、使用するまで4℃で保存した(表5)。製造業者(Pierce)の推奨に従って、N−エチルマレイミド(ethylmalemide)(NEM)を使用して、遊離のC−末端システインをブロックした。
【0115】
精製したポリペプチドの分析
NanoDrop(R) ND−1000分光光度計を使用して、280nmでの吸光度を測定することにより、ポリペプチド溶液の濃度の決定を行なった。タンパク質をさらにSDS−PAGEおよびLC−MSで分析した。
【0116】
SDS−PAGE分析について、ポリペプチド(約10μg)をLDSサンプル緩衝液およびDTT(45mM 最終濃度)と混合し、70℃で15分間インキュベートし、そしてNuPAGE(R) 4〜12% Bis−Trisゲル上にロードした。分子量マーカーとしてSeeBlue(R) Plus2 Prestained Standardおよび染色のためにPageBlueTMPtotein Staining Solutionを利用して、Novex Mini−Cell中MES SDSランニング緩衝液を用いてゲルを走らせた(run)。
【0117】
ポリペプチドの同定を検証するために、API−ESIを備えたAgilent 1100 LC/MSDシステムおよびシングル四重極質量分析器(single quadruple mass analyzer)を使用して、LC/MS分析を行なった。緩衝液交換の後、タンパク質サンプルを0.5mg/mlの最終濃度で凍結乾燥緩衝液に希釈し、そして10μlを0.5ml/分の流速で、Zorbax 300SB−C8 Narrow−Boreカラム(2.1×150mm、3.5μm)にロードした。0.5ml/分で30分間、10〜70% 溶液Bの直線グラジエントを使用して、タンパク質を溶出した。30℃で分離を行なった。イオンシグナルならびに280および220nmでの吸光度をモニターした。イオンシグナルの分析により、精製タンパク質の分子量を決定した。
【0118】
融解温度(Tm)の決定
凍結乾燥ポリペプチドを約0.5mg/mlの最終濃度でPBSに溶解し、そして氷上で保存した。1mmの光路長を有するセルにおいて、Jasco J−810分光偏光計でCD分析を行なった。温度可変測定において、5℃/分の温度傾斜を用いて、吸光度を221nm、20〜80℃で測定した。CD対温度プロットにおける転移(transition)の中間点を決定することにより、試験ポリペプチドについての融解温度(Tm)を計算した。
【0119】
本発明に従って修飾されたポリペプチド分子は、元の分子と比較して融解温度を上昇させた(表6)。図1において、His6−ZTNF-α:3230(本発明のTNF−α特異的ポリペプチド)について得られた融解曲線を示す。
【0120】
インビトロ抗原性ELISA(血清中のIgG結合性の分析)
ELISAについての一般条件は以下の通りであった:ハーフエリア、96−ウェルプレート中でELISAアッセイを行なった。100μlを使用するブロッキングを除いて、全てのインキュベートについて使用した体積は1ウェルあたり50μlであった。コーティング緩衝液(15mM Na2CO3および35mM NaHCO3)中、4℃で一晩コーティングを行い、そして全ての他のインキュベートを室温で行なった。霊長類の血清および検出抗体の希釈をPBS+0.5% カゼインで作製した。全ての洗浄を自動ELISA Scan Washer 300を使用して行い、各ウェルを1回の洗浄あたり洗浄緩衝液(PBS−T;1×PBS中0.05% Tween 20)(175μl)で4回洗浄した。
【0121】
ELISAプレートのウェルを2μg/mlの結合ポリペプチドHis6−ZTNF-α:185、His6−ZHER2:342、His6−Zインスリン:810、His6−ZTaq:1154、ZPDGF-Rβ:2465−Cys−NEM、His6−ZHER2:2628、His6−ZTaq:3229、His6−ZTNF-α:3230、His6−Zインスリン:3232およびZPDGF-Rβ:3358−Cys−NEMでコーティングした。ZHER2:342を標準として使用した。コーティング後、ウェルを水道水で2回洗浄し、そしてPBS+0.5% カゼインでブロックした。プレートを空にし、そして2−倍希釈系列のカニクイザル由来の霊長類血清プール(MAccaca fascicularis;Swedish Institute for Infectious Disease Controlから入手)をウェルに添加した。滴定系列(titration series)を1/100希釈で開始し、そして1/102400で終了した。96−ウェルプレート中で希釈を直接行った。霊長類血清プールと共に1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、そして検出のために1/5000希釈でヤギ抗−ヒトIg−HRP抗体を添加した。検出抗体と共に50分間インキュベートした後、プレートを洗浄し、そして基質を添加した。ImmunoPure(R)TMBキット中の等体積の2つの成分を混合し、そして1ウェルあたり50μlを添加した。続いて、プレートを暗所で12分間インキュベートし、そして停止溶液(2M H2SO4)(50μl)を添加することにより反応を停止させた。ELISAリーダーを使用して、450nmで吸光度を読み取った。陰性対照として、霊長類血清プールの代わりに、PBS+0.5%
カゼインを使用した。
【0122】
結果を評価するため、およびポリペプチドに対する霊長類Ig−分子結合性のレベルを示すIVA値を得るために、プログラムGraphPad Prism 5を使用した。バックグラウンドOD値を差引いたサンプル値を、XY−非線形回帰(S字型用量反応(sigmoidal dose response))式に基づくテンプレートに入れた。OD 0.3についての希釈値を式から得、そして標準希釈値を100に設定し、そして全てのサンプルを100に関連付けることにより、IVA値を計算する。100以下の値は、陽性対照として使用されるZHER2:342分子と比較して、試験ポリペプチドが免疫グロブリンに結合する能力の低下を指示する。
【0123】
本発明の分子は、元の分子と比較して、免疫グロブリンに結合する可能性が少ないことを示した(表7)。結果をインビトロ抗原性(IVA)値として示し、そして低下したインビトロ抗原性(IgG結合性)をIVA値の減少として読み取る。
【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
実施例4−Dynazyme結合ポリペプチド変異体のファージディスプレイ選択およびキャラクタリゼーション
Dynazymeのビオチン化
製造業者のプロトコルに従って、10×モル過剰のNo−weightTMスルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce、#21327)を使用して、種サームスブロッキアヌス(Thermus brockianus)(Finnzymes、#F−501L)由来の標的タンパク質Dynazyme II DNAポリメラーゼ(Dynazyme)をビオチン化した。Slide−a−lyzer透析カセット(Pierce、10K、0.5〜3ml)を使用する透析により、緩衝液をビオチン化前にPBSに交換し、そしてビオチン化後にTKMT(10mM Tris−HCl、50mM KCl、1.5mM MgCl2、0.1% Triton X−100、pH 8.8)に交換し、未結合のビオチンを除去した。
【0130】
ファージディスプレイ選択
本発明のポリペプチド集団(実施例1)を使用して、ビオチン化Dynazymeに対する選択を行なった。選択のために2つのアプローチを利用した;高い標的濃度を有するもの(トラック1)および低い標的濃度を有するもの(トラック2)。4回の選択サイクルを行なった。各サイクルの間に新しいファージストックを調製した。選択の要旨および詳細について、図2を参照のこと。
【0131】
ファージライブラリーストックを実施例2に記載されるように2回PEG/NaCl沈殿させ、そして0.1% ゼラチンを補充したTKMT(TKMTg)に溶解した。ファージをストレプトアビジン−コート化ビーズ(SAビーズ、Dynabeads(R) M−280)と共にRTで30分間プレインキュベートした。選択手順に使用したビーズおよび全てのチューブをTKMTg中でプレブロックした(pre−blocked)。
【0132】
各サイクルにおける標的濃度および洗浄回数を図2に示す。選択および洗浄に使用した緩衝液はTKMTgであった。予め選択したファージをビオチン化標的と共に4℃で17時間インキュベートし、次いで第一サイクルの間RTで3時間、そして次のサイクルの間にそれぞれ、3時間または1時間インキュベートした。続いて、ファージ粒子をプレブロックSAビーズ、5mg(第一サイクルトラック1)、3.5mg(第一サイクルトラック2)または0.5mg(全ての他のサイクル)に移し、そして撹拌しながら10分間インキュベートした。その後、ビーズを洗浄し、そしてファージ粒子を実施例2に記載されるように低pH緩衝液で溶出した。選択の各ラウンドの後、溶出したファージを使用して、対数期大腸菌RR1ΔM15細胞に感染させた。37℃で20分間インキュベートした後、細胞を遠心分離により採取した。ペレットを少量のTSB−YEに溶解し、TYEプレートに塗り、そして37℃で一晩インキュベートした。基本的に実施例2に記載されるように、各サイクルの間にファージストックを調製した。各選択サイクルの後にファージ粒子力価および収率を計算した。ファージ粒子収率(ファージ粒子アウト/ファージ粒子イン)は各サイクル(第二のものを除く)で増加し、この増加は標的結合クローンにおける濃縮を指示した。
【0133】
Dynazyme結合ポリペプチドのELISA分析
実施例2に記載されるように、選択の最終ラウンドの後に得られたクローンをランダムに採取し、そして96−ウェルプレート形式におけるペリプラズムタンパク質発現に使用した。ABDに融合した可溶性ポリペプチド変異体を含む上清を、以下の通りにELISAにおいて標的結合性についてアッセイした。推定結合ポリペプチドをAQLE−[Z#####]−VDYV−[ABD]−SQKA(ABD=連鎖球菌属の種(Streptococcus sp.)G148由来のアルブミン結合ドメインGA3、Kraulis et al(1996)FEBS Lett.378(2):190−194)(ここで、Z#####は本発明のポリペプチド集団の個々の変異体を表す)として発現させた。
【0134】
ハーフエリアマイクロタイターウェル(Costar、#3690)を、ELISAコーティング緩衝液中2〜3μg/ml Dynazyme(50μl)でコーティングした。ウェルを0.5% カゼイン(Sigma)を補ったTKMT(TKMT−カゼイン)(100μl)を用いてRTで1時間ブロックした。ブロッキング溶液を除去した後、上清(50μl)をウェルに添加し、そしてプレートをRTで1.5時間インキュベートした。一次、次いで二次抗体を添加することにより、捕捉したポリペプチド変異体を検出した。一次抗体、Z変異体に対するアフィニティー精製したポリクローナルウサギIgを、TKMT−カゼインに1:5000で希釈し、そしてRTで1.5時間インキュベートした。二次抗体、ヤギα−ウサギ−HRP Ig(DakoCytomation、#P0448)をTKMT−カゼインに1:5000で希釈し、そしてRTで1時間インキュベートした。抗体および発色溶液(developing solution)と共にインキュベートする前に、プレートをTKMTで4回洗浄した。
【0135】
プレートを実施例2に記載されるように発色させ(develop)、そしてELISA分光光度計において450nmで読み取った。全てのプレートを関連する陰性および陽性対照、さらにブランクを用いて調製し、ここではペリプラスム上清の代わりTKMTを用いた。全体で、1080のランダムに採取されたクローンをDynazymeに対するそれらの結合性についてELISAでスクリーニングした。陽性クローンおよび低い吸光度値を有するいくつかのクローンが、配列決定のために選択された。
【0136】
ELISA陽性ポリペプチドの配列決定
実施例2に従って、個々のクローンを配列決定に供した。ELISAスクリーニングにおいて陽性とされる11のユニークな結合ポリペプチドが見出された。いくつかのクローンは、数個のコピーを生じた。さらに、より低いELISA値を有するクローン由来の数個の配列が同定された。
【0137】
ポリペプチドのプラスミドpAY1448へのサブクローニング
付着末端PCRのための鋳型として調製されたプラスミドを使用して、単量体として15のユニークなポリペプチドを、N−末端His6−タグを与える発現ベクターpAY1448(実施例2に記載されるような)へのサブクローニングに供した。実施例3に記載されるように、サブクローニングを行なった。
【0138】
ポリペプチドの精製
以下のテキストは、15の単量体のHis6−タグ化ポリペプチド、すなわち、His6−Z04665、His6−Z04672、His6−Z04674、His6−Z04678、His6−Z04687、His6−Z04767、His6−Z04770、His6−Z04775、His6−Z04776、His6−Z04777、His6−Z04778、His6−Z04779、His6−Z04780、His6−Z04781およびHis6−Z04899の精製を記載する。可溶性His6−タグ化分子を含むペレット化細菌細胞を、His GraviTrapTM結合緩衝液(20mM リン酸ナトリウム、0.5M NaCl、20mM イミダゾールおよび25U/ml Benzonase(R))に懸濁し、そして超音波処理により破砕した。上清の温度が90℃付近で安定するまでの5分間、熱水(95℃)を使用して、超音波処理した細胞の上清を加熱した。遠心分離により清澄化した後、上清を予めHis GraviTrap 結合緩衝液で平衡化したHis GraviTrapカラム(GE Healthcare)にロードした。5CV His GraviTrap結合緩衝液および5CV His GraviTrap洗浄緩衝液(20mM リン酸ナトリウム、0.5M NaCl、60mM イミダゾール)でカラムを洗浄した後、ポリペプチドを3 CV His GraviTrap溶出緩衝液(20mM リン酸ナトリウム、0.5 M NaCl、500mM イミダゾール)で溶出した。
【0139】
ポリペプチド変異体をさらに、逆相クロマトグラフィー(RPC)により精製した。His GraviTrapからの溶出画分中に2%の最終濃度でアセトニトリル(ACN)を添加した。サンプルを予めRPC A緩衝液(0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)、2% ACN、98% 水)で平衡化したRESOURCETMRPC 3mlカラム(GE Healthcare)にロードした。5 CV RPC A緩衝液でカラムを洗浄した後、結合タンパク質を20 CV 0〜50% RPC B緩衝液(0.1% TFA、80% ACN、20% 水)の直線グラジエントで溶出した。流速は5ml/分であり、そして280nmシグナルをモニターした。純粋なポリペプチドを含む画分をSDS−PAGE分析により同定し、そしてプールした。
【0140】
使い捨てPD−10 脱塩カラム(GE Healthcare)のサイズ排除クロマトグラフィーにより、精製したポリペプチドの緩衝液を50mM Tris−HCl(pH 8.8)に置き換えた。
【0141】
15のポリペプチド変異体のうちの12が、首尾よく精製された:His6−Z04665、His6−Z04672、His6−Z04674、His6−Z04687、His6−Z04770、His6−Z04775、His6−Z04776、His6−Z04777、His6−Z04778、His6−Z04780、His6−Z04781およびHis6−Z04899。
【0142】
精製したポリペプチドの分析
NanoDropTMND−1000分光光度計を使用して、280nmでの吸光度を測定することにより、ポリペプチド溶液の濃度の決定を行なった。タンパク質をさらにSDS−PAGEおよびLC−MSで分析した。
【0143】
SDS−PAGE分析のため、ポリペプチド溶液をLDSサンプル緩衝液(Invitrogen)と混合し、74℃で10分間インキュベートした。各ポリペプチド変異体(10μg)をNuPAGE(R)4〜12% Bis−Trisゲル(Invitrogen)上にロードした。分子量マーカーとしてNovex(R)Sharp Pre−stained Protein Standard(Invitrogen)および染色のためにPhastGelTM Blue R(GE Healthcare)タンパク質染色溶液を利用して、XCell SureLockTMMini−Cell(Invitrogen)中MES SDSランニング緩衝液(Invitrogen)を用いてゲルを走らせた。
【0144】
ポリペプチド変異体の同定を検証するために、API−ESIを備えたAgilent 1100 LC/MSDシステムおよびシングル四重極質量分析器を使用して、LC/MS分析を行なった。タンパク質サンプルを0.5mg/mlの最終濃度で50mM Tris−HCl(pH 8.8)に希釈し、そして10μlを1ml/分の流速で、Zorbax 300SB−C18カラム(4.6×150、3.5μm)(Agilent)にロードした。溶液Aは水中0.1% TFAを含み、そして溶液BはACN中0.1% TFAを含んだ。1ml/分で、15〜65% 溶液Bの22分間直線グラジエントを使用して、タンパク質を溶出した。30℃で分離を行なった。イオンシグナルならびに280および220nmでの吸光度をモニターした。イオンシグナルの分析により、精製タンパク質の分子量を確認した。
【0145】
SDS−PAGEおよびLC/MS−分析により、ポリペプチド変異体の純度は、95%以上であることを決定した。
【0146】
融解温度(Tm)の決定
精製ポリペプチド変異体を0.5mg/mlの最終濃度で50mM Tris−HCl(pH 8.8)に希釈した。1mmの光路長を有するセルにおいて、Jasco J−810分光偏光計で円偏光二色性(CD)分析を行なった。温度可変測定において、5℃/分の温度傾斜を用いて、吸光度を221nm、20〜90℃で測定した。CD対温度プロットにおける転移の中間点を決定することにより、ポリペプチド融解温度(Tm)を計算した。結果について、表8を参照のこと。
【0147】
【表8】

【0148】
熱安定性の分析
加熱に供された後、元のαヘリカル構造がリフォールディングする能力は、上記のポリペプチド変異体に要求される特性であった。構造の可逆性を詳細に調べるために、1サンプルあたり2つのCDスペクトルを20℃で得た。2つの測定の間に、サンプルを96℃に加熱した。サンプルを96℃で2分間維持し、次いで20℃に冷却した。加熱前および加熱後の類似のCDスペクトルは、サンプルが構造可逆性であることを証明する。12の分析したポリペプチド変異体のうち3つが、熱処理により悪影響を受けたが、9つのポリペプチド変異体は、それらのαヘリックス構造を完全に取り戻すことを示した。加熱前および加熱後の2つのCDスペクトルの典型的なオーバーレイを図3に示す。
【0149】
Biacore結合分析
本発明に従って選択された12のHis6−タグ化単量体Z変異体とDynazymeとの間の相互作用を、Biacore機器(GE Healthcare)で分析した。標的タンパク質をCM5チップ表面のカルボキシル化デキストラン層上のフローセル(GE Healthcare)に固定化した。製造業者のプロトコルに従うアミンカップリング化学を使用し、そしてアセテート(pH 5.5)を使用して、固定化を行なった。被検体注入の間、ブランクとして使用するために、チップ上の1つのフローセル表面を活性化し、そして失活させた。被検体、すなわち、10μMの最終濃度でHBS−EPランニング緩衝液(GE Healthcare)に希釈したポリペプチド変異体を、ランダムな順に二連(duplicate)で10μl/分の流速で5分間注入した。10分間の解離の後、0.05% SDSの1回の注入を用いて表面を再生した。BiaEvaluationソフトウェア(GE Healthcare)で結果を分析した。ブランク表面の曲線をリガンド表面の曲線から引いた。図4に概説されるように、固定化Dynazymeに対する5つのポリペプチド変異体の相互作用が分析により示された。
【0150】
実施例5−本発明に従うポリペプチド集団の化学合成の比較研究
要約
この実施例を構成する実験において、本発明に従うポリペプチド集団の固相ペプチド合成(SPPS)が記載され、そして元のスカフォールドに基づくポリペプチドの合成と比較した。4つの位置、すなわち、[N23T]、[A42S]、[A46S]および[A54S]に導入された突然変異が、シュードプロリン前躯体(簡略化された省略形Fmoc−Xxx−Yyy−OHを有する)を用いる代替合成ストラテジーを使用することを可能にした。上記の3または4つの位置でシュードプロリンを使用して、以下:
SEQ A:maESEKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF
IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPK
(ここで、maはポリペプチドのN−末端にカップリングしたメルカプトアセチル示す);および
SEQ B:AEAKYAKEMW IAWEEIRNLP NLNGWQMTAF IAKLLDDPSQ SSELLSEAKK LNDSQAPKCの配列を有する完全長分子を合成することを可能にし;
その一方で、標準合成はSEQ Aを有するペプチドを生産できなかった。
【0151】
SEQ C:AENKFNKEMW IAWEEIRNLP NLTGWQMTAF IASLLDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPKの標準合成(これは、SEQ Bに類似するが、非常に不純な調製物およびペプチドの低収率をもたらす元のスカフォールドアミノ酸を含む)。
【0152】
新規なセリンまたはスレオニン残基の導入はまた、イソアシルジペプチドの使用を可能にし、このイソアシルジペプチドはペプチド合成中、凝集を抑制することにより合成効率を高めるためのシュードプロリンの代替物である(Sohma et al,Tetrahedron Lett.47:3013,2006)。いくつかのこのような構成要素は、Merck Biosciences AGのNovabiochemから入手可能である。
【0153】
原理
HER2結合分子ZHER2:342(ZHER2:107としてWO 2005/003156に開示され、そして時折Z00342とも称される)のペプチド合成、さらにこの分子のN−末端へのDOTAのカップリングが可能であり、そして文献に記載されている(Orlova A et al(2006)Cancer Research 67:2178−2186)。しかし、合成後、ペプチド収率において膨大なばらつきが観察された。再現性良くペプチドを合成することの困難さは、ペプチドの長さ、さらに一次アミノ酸配列の両方に関連し得る。さらに、依然として保護されているアミノ酸側鎖の反応基を有する長いペプチドは、都合の悪い二次構造、例えばβシートを生成し得、これは固相ペプチド合成を妨げ得る(Quibell M and Johnson T in Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis−A Practical Approach,W.C.Chan,P.D.White Eds,Oxford University Press 2000:115−135)。ペプチド合成中の二次構造形成を妨げる1つに方法は、シュードプロリンの使用である。アミノ酸Yyyがセリン、スレオニンまたはシステインである場合、シュードプロリン(簡略された省略形Fmoc−Xxx−Yyy−OHを有する)を使用し得る。これらのシュードプロリンは、バックボーンに連結した側鎖を有する閉プロリン様構造(closed proline−like structure)を示し、そして酸処理により通常のアミノ酸構造に変換され得る(Haack T and Mutter M(1992)Tetrahedron Lett 33:1589−1592)。位置Yyyにおけるセリンまたはスレオニンと一緒に位置Xxxにおける14のアミノ酸(Arg、Cys、His、Met、Pro、Thrを除く全ての天然アミノ酸)についてのシュードプロリンが市販されている。
【0154】
親分子ZHER2:342は、一次配列中にスレオニンおよびシステインを有さない。セリンは位置33、39 および41においてのみ見出される。シュードプロリン前駆体は、セリン41(Q40−S41)についてのみ利用可能である。2つの他のセリンについて、利用可能な前駆体(R32−S33およびP38−S39)が存在しないので、位置Xxxにおけるアミノ酸は、シュードプロリンの使用を避ける。
【0155】
本発明に従う集団中に含まれるポリペプチドに導入される突然変異は、ペプチド合成を促進することを目標にするが、これに限定されない。特に、位置23、42、46および54、すなわち[N23T]、[A42S]、[A46S]および[A54S]における突然変異は、SPPSにおいて認識される2つの問題を解決する能力を有し得る:これらは、シュードプロリンの使用を可能にし、そしてアスパラギンをスレオニンに置き換えることにより、アミノ酸位置21〜26周辺の臨界(critical)領域を位置23で変更する。
【0156】
合成ストラテジー1
アミノ酸配列SEQ Aを、完全自動化ペプチドシンセサイザー中Fmoc−Lys(Boc)−Wangポリスチレン樹脂上でアセンブルした。この樹脂は、Fmoc−ストラテジーを用いるペプチドの形成に非常にふさわしい。57アミノ酸を樹脂上に(適切な側鎖保護を用いて)カップリングした。最後の工程において、S−トリチル−保護化メルカプト酢酸のカップリングを手動で行なった。
【0157】
工程1:固相ペプチド合成
Fmoc−Lys(Boc)−Wangポリスチレン樹脂を、撹拌棒を備えたSPPS反応器中に移した。次いで、樹脂のFmoc脱保護で合成を開始し、以下に示される一般的記載に従ってFmoc−Pro−OHを用いるカップリング手順を続けた。この工程の後再び、Fmoc 脱保護、次いで配列に従うアミノ酸誘導体のカップリングを行った。最後にイソプロピルエーテル(IPE)で樹脂を洗浄した後、ペプチド樹脂をデシケーター中で減圧下乾燥させた。
【0158】
標準Fmocペプチド合成、および4つの位置にシュードプロリンを使用する合成の両方を行なった。標準ペプチド合成のため、Fmoc−アミノ酸のみを使用した。代替のペプチド合成のため、Fmoc−アミノ酸とは別に、以下のシュードプロリンを使用した:位置22〜23においてFmoc−Leu−Thr−OH、位置41〜42においてFmoc−Ser−Ser−OH、位置45〜46においてFmoc−Leu−Ser−OHおよび位置53〜54においてFmoc−Asp−Ser−OH。
【0159】
Fmoc脱保護手順
N−α−Fmoc保護基の切断を達成するために、樹脂をまた、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中20%ピペリジンで処理した。次いで、樹脂の洗浄をNMPで行なった。
【0160】
カップリング手順
アミノ酸誘導体Pro57〜Glu1の自動化カップリング。最大3当量のFmoc−AA誘導体をNMPに溶解した。カップリングのため、ジメチルホルムアミド(DMF)中2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)およびNMP中sym−コリジン(2,4,6−トリメチルピリジン)を添加した。樹脂上に注ぐ前に、得られた溶液を室温で混合した。溶媒としてNMPを使用した。60℃で少なくとも15分のカップリング時間後、樹脂をNMPで洗浄した。
【0161】
各カップリング手順の後、カップリング試薬としてDMF中2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TATU)を用いて、そして溶媒としてジクロロエタンを用いるカップリングの繰り返しを自動的に行ない、無水酢酸カップリングを続ける。
【0162】
工程2:メルカプト酢酸のカップリング
5モル当量のアミノ酸、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(hexafluorphosphate)(HBTU)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および10当量のN−エチルジイソプロピルアミン(DIEA、Lancaster Synthesis,Morecambe,Englandから入手)を用いて、アシル化を行なった。S−トリチル−メルカプト酢酸をAnaSpec Inc(San Jose,CA,USA)から入手した。
【0163】
工程3:残りの保護基の切断を含む樹脂からの切断
精製水、エタンジチオール(EDT)、およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下、ペプチド樹脂をトリフルオロ酢酸(TFA)で処理した。室温で約2時間の切断時間後、反応混合物を約0℃に冷却し、そしてヨウ化アンモニウムおよび硫化ジメチルを添加し、酸化メチオニンを還元した。約0℃でさらに60分間の切断時間後、形成されたヨウ素をアスコルビン酸で還元した。生成物を濾過して取り出した後、これを低温中、IPE中で沈殿させ、再び濾過して取り出し、IPEで洗浄し、そして減圧下乾燥させた。
【0164】
HPLCによる純度分析
Vydac 218 TP54(5μm、250×4.6mm)カラムおよびそれぞれ溶媒AおよびBとして、H2O中0.1% TFA、1% アセトニトリルおよびアセトニトリル中0.1% TFAを使用して、58アミノ酸長ペプチドおよびいくつかの中間体の純度を逆相HPLCにより決定した。カラムオーブンの温度を35℃に設定した。カラムを30分で15〜45% 溶媒Bのグラジエント、または30分で20〜50% Bのグラジエントのいずれかを用いて溶出した。UV検出は220nmであった。面積正規化により、純度を計算した。
【0165】
結果
シュードプロリンを用いてまたは用いずに合成した配列SEQ Aを有する分子の収率および純度を、分析用逆相クロマトグラフィーにより分析した。合成の経過を追跡するために、合成樹脂のごく一部をいくつかのカップリング工程後に取り、そして所望のペプチドの中間体の存在、純度および収率について分析した。図5は、41アミノ酸長ペプチド中間体(アミノ酸18〜58)のHPLC分析を示す。シュードプロリンを使用して合成を行なった場合、ペプチド合成のこの段階で、正しい配列を有する1つの明確かつ重要なペプチドピーク(RT=15.33分、収率 49%)を同定した(図5A)。しかし、標準Fmoc合成は、大量の小さいペプチドピークおよび同じ大きさの2つの主なピークをもたらしたが、収率は低かった。正しい配列(aa 18〜58)を有するペプチド中間体としてこの2つのピークの一方(RT=20.82分)を同定した(図5B)。シュードプロリンを使用して合成を行なった場合、完全長ペプチド(アミノ酸1〜58)のみを得た。図6Aは、26%の最終ペプチドの収率を有する単一生成物ピークを示す。しかし、標準Fmoc−合成は、最終ペプチド生成物を生産できなかった。標準合成からの49アミノ酸長中間体(アミノ酸10〜58)の分析は、所望の中間体が検出され得ず、そして合成が停止されたことを明らかにした(図6B)。
【0166】
合成ストラテジー2
集積マイクロ波オーブン(integrated microwave oven)を用いる完全自動化ペプチドシンセサイザー上でFmoc−ストラテジーを使用して、2つの分子をアセンブルした。
本発明のスカフォールド配列に基づくSEQ Bの59アミノ酸残基をFmoc−Cys(Trt)−Wang LLポリスチレン樹脂上で(適切な側鎖保護を用いて)アセンブルした。
元のAffibody(R)分子スカフォールドに基づくSEQ Cの58アミノ酸残基を、Fmoc−Lys(Boc)−Wang LLポリスチレン樹脂上で(適切な側鎖保護を用いて)アセンブルした。
Wang樹脂LLは、Fmocストラテジーを用いるペプチドの形成に非常にふさわしい。
【0167】
工程1:固相ペプチド合成
ポリスチレン樹脂をシンセサイザー(Liberty,CEM Corporation,NC USA)により、SPPS反応容器中に自動的に移した。次いで、樹脂のFmoc脱保護で合成を開始し、以下に示される要約に従って、次のFmoc−保護化アミノ酸(Fmoc−AA)を用いるカップリング手順を続けた。この工程の後再び、Fmoc 脱保護、次いで配列に従うアミノ酸誘導体のカップリングを行った。最後にジクロロメタン(DCM)で樹脂を洗浄した後、ペプチド樹脂を減圧下乾燥させた。標準Fmocペプチド合成により、完全なペプチドSEQ Cが作製されたが、一方、シュードプロリンはスカフォールドになされた改善により可能となったSEQ B中の位置で使用した。以下のシュードプロリンを使用した:位置41〜42にFmoc−Ser−Ser−OH、位置45〜46にFmoc−Leu−Ser−OHおよび位置53〜54にFmoc−Asp−Ser−OH。
【0168】
Fmoc脱保護手順
N−α−Fmoc保護基の切断を達成するために、マイクロ波照射を用いて、樹脂をNMP中5%ピペラジンで処理した。次いで、樹脂の洗浄をNMPで行なった。
【0169】
カップリング手順
アミノ酸誘導体Cys59〜Ala1(SEQ Bについて)およびLys58〜Ala1(SEQ Cについて)の自動化カップリング。最大5当量のFmoc−AAをNMPに溶解した。カップリングのため、O−(ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホスフェート(HBTU)およびジメチルホルムアミド(DMF)中N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、NMP中N,N’−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を1:1:1:2(AA/HBTU/HOBt/DIPEA)のモル比で樹脂に添加した。反応容器の底から窒素ガスを泡立てることにより、混合物を撹拌した。マイクロ波照射を使用してエネルギーを加えながら75〜80℃で少なくとも5分のカップリング時間後、樹脂をNMPで洗浄した。
【0170】
各カップリング手順の後、自動化無水酢酸カップリングを行なった。
【0171】
工程2:残りの保護基の切断を含む樹脂からの切断
精製水、エタンジチオール(EDT)、およびトリイソプロピルシラン(TIS)の存在下、ペプチド樹脂をトリフルオロ酢酸(TFA)で処理した。室温で約2時間の切断後、切断混合物を濾過し、そして樹脂をストレートの95% TFA/水でリンスした。濾液を冷却したメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)にゆっくりと添加した。沈殿物を遠心分離し、そしてMTBEを除去した。固体をエーテルに再懸濁し、そして全体で3回の操作を繰り返した。エーテルの最後の除去後、固体を0.1% TFA/水に再懸濁し、残りのエーテルをエバポレートのためにそのままにし、そして凍結乾燥前に溶液を凍結した。
【0172】
HPLC−MSによる純度分析および質量分析
エレクトロスプレーイオン化(ESI)および単一四重極(single quadropol)を備えたAgilent 1100 HPLC/MSDを使用する、高速液体クロマトグラフィーおよびオンライン質量分析(HPLC−MS)によりペプチドの純度を決定した。Zorbax 300SB C18(3.5μm、150×4.6mm)カラムおよびそれぞれ溶媒AおよびBとして、0.1% TFA/水および0.1% TFA/アセトニトリル(ACN)を使用して、HPLCを実行した。カラムオーブンの温度を30℃に設定した。カラムを40分で15〜55%溶媒Bのグラジエントを用いて溶出した。UV検出は220nmであった。面積正規化により、純度を計算した。質量分析および評価に使用したソフトウェアは、ChemStation Rev.B.02.01.(Agilent)であった。
【0173】
結果
分子SEQ BおよびSEQ Cの収率および純度を、分析用逆相クロマトグラフィーにより分析した。完全長ペプチドが両方の合成において得られたが、しかしSEQ Bについてより大きな収率が得られた。図7Aは、SEQ Bについての予測される質量を有する主な生成物ピーク(RT=41.48分)および15%の最終ペプチドの収率を示す。8%の収率のさらなるピーク(RT=41.21分)は、完全長生成物の予測される質量よりも72Da高い質量を有することが見出された。これは、Cys59アミノ酸残基上の副反応が原因であると考えられる。副反応の種類によって、これは合成の間または樹脂からペプチドを切断する間に生じ得る。合成および/または切断プロトコルを最適化することにより、この副反応は最小化され、それによりこの場合において、最高で全収率の23%まで収率が増加し得る。
【0174】
しかし、SEQ Cの標準Fmoc−合成は、多数の小さなペプチドピークをもたらした(図7B)。主なピークの1つ(RT=43.60分)は、予測される質量を有する完全長ペプチドとして同定された。この生成物の収率は4%であった。
【0175】
実施例6−元のおよび本発明のポリペプチド変異体の免疫原性
要約
この実施例において、1つの元のおよび1つの本発明のポリペプチド変異体の免疫原性をインビボで比較した。二量体分子をラットに投与し、そして特異的抗体反応を抗−薬物抗体(ADA)アッセイで決定した。本発明に従って導入されたスカフォールド突然変異を有する分子は、元のZ変異体と比較して、より低い抗体反応および遅延した抗体反応を示す。
【0176】
ポリペプチドのクローニングおよび生産
アルブミン結合ドメインABD035(Jonsson et al(2008)Protein Eng Des Sel 8:515−27)に融合した2つのTaq−ポリメラーゼ特異的結合ポリペプチドをこの研究に使用した:
1.(Z01154)2−ABD035:元のスカフォールド
2.(Z03229)2−ABD035:本発明のスカフォールド
AccI−オーバーハングを有するZ01154およびZ03229のPCR増幅し、そしてハイブリダイズしたフラグメントを、それぞれ、AccI消化pET(Novagen)誘導発現ベクターpAY492およびpAY1450において、二量体としてクローンニングした。得られたベクターをAccI−NotIで消化し、そしてAccIおよびNotIオーバーハングを有するPCR 増幅したABD035フラグメントでライゲーションし、構築物pAY1827(MGSSLQ−[Z01154]−[Z01154]−VD−[ABD035]をコード化する)およびpAY2292(MGSSLQ−[Z03229]−[Z03229]−VD−[ABD035]をコード化する)を生成した。基本的に実施例3に記載されるように、プラスミドをコンピテントな大腸菌BL21(DE3)細胞に形質転換し、そして発酵によりタンパク質を生産した。ペレット化した細胞を[25mM Tris−HCl、200mM NaCl、1mM EDTA、25 U/ml Benzonase(R)(Merck、#1.01654.0001)、pH 8.0]に懸濁し、そして氷上で超音波処理により破砕した。清澄化した上清を、ヒト血清アルブミンを用いて組織内でカップリングしたCNBr−活性化Sepharose(GE Healthcare、#17−0981−03)をパックしたカラムにロードした。カラムを予め1×TST[25mM Tris−HCl、200mM NaCl、1mM EDTA、0.05% Tween 20、pH 8.0]中で平衡化した。サンプル適用後、Abs280シグナルの還元が観察されなくなるまで、1×TST、次いで5mM NH4Ac(pH 5.5)での洗浄を行なった。結合したタンパク質を0.5 M HAc(pH 2.8)で溶出した。溶出したサンプルに2%の最終濃度でアセトニトリルを補充し、そしてResource RPCカラム(GE Healthcare、#17−1182−01)の逆相クロマトグラフィーによりさらに精製した。[2% アセトニトリル、水中0.1% TFA]をランニング緩衝液として使用し、そして25 カラム体積にわたって0〜50%の[80% アセトニトリル、水中0.1% TFA]の直線グラジエントを使用してサンプルを溶出した。HiPrep 26/10脱塩カラム(GH Healthcare、#17−5087−01)を使用して、[5mM リン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH 7.2]への緩衝液の交換を行なった。実施例3に記載されるように、サンプル純度をSDS−PAGEおよびLC/MS分析により確認した。製造業者の使用説明書に従って、AffinityPak Detoxi−Gelエンドトキシン除去ゲル(Thermo、#20344)で微量のエンドトキシンを除去した。APL(Apoteket Produktion & Laboratorier AB,Sweden)により実施されたゲルクロットLAL試験で、エンドトキシンは検出されなかった。ランニング緩衝液として1×PBS、0.5ml/分の流速および1mg/mlの濃度での100μlのサンプル体積を使用して、Superdex 75 10/300 カラム(GE Healthcare、#17−5174−01)で実行されるサイズ排除クロマトグラフィーにより検証されるように、サンプルは可溶性凝集体を含まなかった。
【0177】
投与およびサンプリングスキーム
動物実験倫理委員会(local animal ethics committee)から認証されたAgrisera AB(Vannas,Sweden)で、動物実験を行なった。3群に分けた雌のSprague Dawleyラットを、表9に概説されるように、(Z01154)2−ABD035、(Z03229)2−ABD035または緩衝液コントロールを皮下注射した。日0、4、7、14、21および28に注射した。血液サンプル(250μl)を日1(前血清(pre−serum))ならびに日6、13、20および35に各動物から採取した。全ての動物を35日目に犠牲にした。採取した血液サンプルを4℃で一晩放置して凝固させ、そして得られた血清を分析まで−20℃で保存した。
【0178】
【表9】

【0179】
抗−薬物抗体(ADA)アッセイ
抗−(Z01154)2−ABD035および抗−(Z03229)2−ABD035抗体の存在を分析するために、3種類のELISA分析を行なった。全てのサンプルを、始めに反応抗体の存在についてスクリーニングし、次いで特異性を検証するために確認分析した。その後、Z変異体に対する特異的抗体を有する血清サンプルを滴定し、抗−(Z01154)2−ABD035および抗−(Z03229)2−ABD035抗体の力価を定量した。
【0180】
血清サンプルをスクリーニングするために、2μg/mlの最終濃度でコーティング緩衝液(Sigma、#C3041)に希釈した(Z01154)2−ABD035または(Z03229)2−ABD035でELISAプレート(96−ウェル、ハーフエリアプレート、Costar、#3690)で一晩コーティングした。コーティング溶液(50μl)をウェル毎に添加し、そしてプレートを4℃で一晩インキュベートした。プレートを手動で、脱イオン水で2回洗浄し、その後、100μl/ウェルのPBS−カゼイン(0.5% カゼイン(Sigma、#8654)を含むPBS)で2時間ブロックした。ブロッキング溶液を除去し、そしてブロッキング緩衝液に1:50で希釈した血清サンプル(50μl/ウェル)を添加した。RTで1.5時間インキュベートした後、プレートを自動ELISA洗浄器(Scanwasher 300,Scatron)中PBST(0.05% Tween 20(Acros Organics、#233362500)を含むPBS)で洗浄した。Z変異体に対するラット抗体を検出するために、PBS−カゼインに1:6000で希釈したHRP−複合抗−ラットIgG(Southern Biotech、#3050−05)(50μl/1ウェル)を添加した。インキュベートの1時間後、プレートを上記のように洗浄し、そして50μl/ウェルの基質溶液(Immunopure(R) TMB、Pierce、#34021)を添加した。プレートを暗所中RTでインキュベートし、そして15分後、50μl/ウェルの2 M H2SO4(VWR、#14374−1)を用いて発色(color development)を停止させた。プレートをELISAリーダー(Victor3,Perkin Elmer)で450nmで読み取った。
【0181】
上記のELISA法をまた、確認および滴定ELISAアッセイに使用したが、いくらか変更した。確認分析のため、血清サンプルをPBS−カゼインまたはそれぞれの1μg/mlのポリペプチド変異体を含むPBS−カゼインに1:50で希釈した。45%またはそれ以上のODシグナルが減少した血清サンプルは、Z変異体に対する特異的抗体を含むと考えられた。滴定分析のため、血清サンプルをPBS−カゼインに1:50で希釈し、次いでそれらが力価の値がサンプルについて計算可能となるプレート−特異的カットポイントと交差するまで、2倍または5倍で連続希釈した。
【0182】
アッセイの進行の間、以下の主要パラメータを決定した:
・最小希釈:1:50
・非特異的バックグラウンド(NSB):希釈マトリクスとして使用され、そして分析の間、各プレートに含まれる正常なラット血清プール(Sprague Dawley ラット、Scanbur)のOD450
・アッセイカットポイント:30の個体からの正常なラット血清の平均OD450+平均値の標準偏差の1.645倍。(Z01154)2−ABD035および(Z03229)2−ABD035の両方で0.11の値を得た。
・正規格化因子:NSBの平均OD450で割ったアッセイカットポイント:それぞれ、(Z01154)2−ABD035および(Z03229)2−ABD035について1.87および1.86
サンプル分析の間、次いでプレート特異的カットポイントを以下のように決定した:
プレート特異的NSBの平均OD450×正規化因子。
【0183】
2つのポリペプチド変異体に対する抗体を含むことが確認されたラット血清(過免疫(hyperimmunised)Sprague Dawleyラット、Agrisera)を、分析の間、各プレート上に含まれる陽性対照(PC)サンプルを調製するために使用した:HighPC:陽性対照血清はPBS−カゼイン中に最小限希釈する前に、マトリクスに1:4で希釈した。このPCは、アッセイ/プレートカットポイントのすぐ上のOD値を有する。LowPC:陽性対照血清はPBS−カゼイン中に最小限希釈する前に、マトリクスに1:300で希釈した。このPCは、アッセイ/プレートカットポイントすぐ上にはわずかに足らないOD値を有する。
【0184】
LowPCおよびHighPC値を使用して、力価品質管理(Titer quality control)(LoQC1−5およびHiQC1−5)を調製した。LowPCおよびHighPCをPBS−カゼインに1:50で希釈し、それぞれ、LoQC1およびHiQC1を得た。次いで、これらをPBS−カゼインにさらに希釈し、それぞれ、LoQC2(1:100)、LoQC3(1:200)、LoQC4(1:400)およびLoQC5(1:800)、ならびにHiQC2(1:250)、HiQC3(1:1250)、HiQC4(1:6250)およびHiQC5(1:31250)を得た。
【0185】
GraphPad Prism 5(GraphPad Software Inc)を使用して、力価の値を計算した。簡潔に、OD450値を対数希釈(log dilution )に対してプロットし、そしてサンプルの力価を、プレート特異的カットポイントで対数希釈として定義した。
【0186】
結果
元の((Z01154)2−ABD035)と本発明の((Z03229)2−ABD035)分子との間のインビボ比較は、本発明の分子がより低い免疫原性であったことを示した。反応は、各個体間で大幅に変動し、そして経時的と共に増加した。力価は、本発明の分子を投与した2つの個体と比較して、元の分子を投与した3つの個体で決定することができた。実際の力価はまた、本発明の分子を投与したグループでより低かった(表10)。数匹の動物が抗体反応を発生させると見られる理由は、融合ABD分子が原因であり得、これは融合ポリペプチドの免疫原性を減少させることが以前に示されている(例えば、WO 2005/097202を参照のこと)。
【0187】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通のスカフォールドに基づくポリペプチド変異体の集団であって、該集団中の各ポリペプチドは、スカフォールドアミノ酸配列
【化1】

(ここで、各Xは、独立して、該集団内で変化するアミノ酸残基に対応する)を含む、上記集団。
【請求項2】
共通のスカフォールドに基づくポリペプチド変異体の集団であって、該集団中の各ポリペプチドは、スカフォールドアミノ酸配列
【化2】

(ここで、各Xは、独立して、該集団内で変化するアミノ酸残基に対応する)
を含む、上記集団。
【請求項3】
少なくとも1×104のユニークなポリペプチド分子を含む、請求項1または2に記載の集団。
【請求項4】
少なくとも1×106のユニークなポリペプチド分子を含む、請求項3に記載の集団。
【請求項5】
少なくとも1×108のユニークなポリペプチド分子を含む、請求項4に記載の集団。
【請求項6】
少なくとも1×1010のユニークなポリペプチド分子を含む、請求項5に記載の集団。
【請求項7】
少なくとも1×1012のユニークなポリペプチド分子を含む、請求項6に記載の集団。
【請求項8】
少なくとも1×1014のユニークなポリペプチド分子を含む、請求項7に記載の集団。
【請求項9】
ポリヌクレオチド集団であって、それらの各メンバーが請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド集団のメンバーをコード化することを特徴とする、上記ポリヌクレオチド集団。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド集団と請求項9に記載のポリヌクレオチド集団との組み合わせであって、ここで、該ポリペプチド集団の各メンバーは、遺伝子型−表現型カップリング手段を介してそのメンバーをコード化するポリヌクレオチドと物理的または空間的に関連する、組み合わせ。
【請求項11】
遺伝子型−表現型カップリング手段が、ファージディスプレイシステムを含む、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項12】
遺伝子型−表現型カップリング手段が、細胞表面選択ディスプレイシステムを含む、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項13】
細胞表面ディスプレイシステムが、原核細胞を含む、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項14】
原核細胞が、グラム陽性細胞である、請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項15】
細胞表面ディスプレイシステムが、真核細胞を含む、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項16】
真核細胞が、酵母細胞である、請求項15に記載の組み合わせ。
【請求項17】
遺伝子型−表現型カップリング手段が、無細胞ディスプレイシステムを含む、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項18】
無細胞ディスプレイシステムが、リボソームディスプレイシステムを含む、請求項17に記載の組み合わせ。
【請求項19】
無細胞ディスプレイシステムが、インビトロコンパートメント化ディスプレイシステムを含む、請求項17に記載の組み合わせ。
【請求項20】
無細胞ディスプレイシステムが、シスディスプレイのためのシステムを含む、請求項17に記載の組み合わせ。
【請求項21】
無細胞ディスプレイシステムが、微粒子ディスプレイシステムを含む、請求項17に記載の組み合わせ。
【請求項22】
遺伝子型−表現型カップリング手段が、非−ディスプレイシステムを含む、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項23】
非−ディスプレイシステムが、タンパク質−フラグメント相補性アッセイである、請求項22に記載の組み合わせ。
【請求項24】
ポリペプチド集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択する方法であって、
(a)請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド集団を備える工程;
(b)ポリペプチド集団を、標的と標的に対する親和性を有する少なくとも1つの所望のポリペプチドとの間で特異性相互作用を可能にする条件下、所定の標的と接触させる工程;および
(c)該特異性相互作用に基づいて、残りのポリペプチド集団から少なくとも1つの所望のポリペプチドを選択する工程を含む、上記方法。
【請求項25】
工程(a)が、請求項9に記載のポリヌクレオチド集団を備え、そして該ポリヌクレオチド集団を発現させて、該ポリペプチド集団を得る予備工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ポリペプチド集団の各メンバーが、遺伝子型−表現型カップリング手段を介してそのメンバーをコード化するポリヌクレオチドと物理的または空間的に関連する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
遺伝子型−表現型カップリング手段が、請求項11〜23のいずれか1項に定義される通りである。請求項26に記載の方法。
【請求項28】
所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する方法であって、
−該所望のポリペプチドおよびそれをコード化するポリヌクレオチドを、ポリペプチド集団から請求項26に記載の方法を使用して選択する工程;および
−このように分離した、所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する工程を含む、上記方法。
【請求項29】
所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを同定する方法であって、
−該所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを、請求項28に記載の方法を使用して単離する工程;および
−ポリヌクレオチドを配列決定して、該所望のポリペプチドのアミノ酸配列を推論することにより確立する工程を含む、上記方法。
【請求項30】
ポリペプチド集団から所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを選択し、そして同定する方法であって、
(a)分離担体またはビーズ上の該ポリペプチド集団の各メンバーを合成する工程;
(b)担体またはビーズを、ポリペプチドと所定の標的との相互作用に基づいて選択または濃縮する工程;および
(c)タンパク質キャラクタリゼーション方法により、該ポリペプチドを同定する工程を含む、上記方法。
【請求項31】
工程(c)において使用されるタンパク質キャラクタリゼーション方法が、質量分析法である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを生産する方法であって、
−請求項29に記載の方法を使用して、所望のポリペプチドを単離し、そして同定するか、または請求項30または31に記載の方法を使用して、所望のポリペプチドを選択し、そして同定する工程;および
−該所望のポリペプチドを生産する工程を含む、上記方法。
【請求項33】
生産が、所望のポリペプチドのデノボ化学合成を使用して実行される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
生産が、所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの組換え発現を使用して実行される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
所定の標的に対する親和性を有する所望のポリペプチドを生産する方法であって、
(a1)請求項28に記載の方法を使用して、該所望のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを単離する工程;または
(a2)請求項30または31に記載の選択および同定方法を使用して同定されたポリペプチドを逆翻訳する工程;および
(b)(a1)または(a2)のいずれかに続いて、このように単離されたポリヌクレオチドを発現させ、該所望のポリペプチドを生産する工程を含む、上記方法。
【請求項36】
第一のスカフォールドアミノ酸配列
【化3】

(ここで、各Xは、元のスカフォールドアミノ酸配列に基づく第二のポリペプチド中のランダム化可能なアミノ酸残基に対応し、そしてここで該第二のポリペプチドは、該所定の標的に対する親和性を有する)を含む、
所定の標的に対する親和性を有するポリペプチド。
【請求項37】
第一のスカフォールドアミノ酸配列
【化4】

(ここで、各Xは、元のスカフォールドアミノ酸配列に基づく第二のポリペプチド中のランダム化可能なアミノ酸残基に対応し、そしてここで該第二のポリペプチドは、該所定の標的に対する親和性を有する)を含む、
所定の標的に対する親和性を有するポリペプチド。
【請求項38】
第一のスカフォールドアミノ酸配列が、SpAに由来する、請求項36または37に記載のポリペプチド。
【請求項39】
追加のアミノ酸残基を含む、請求項36〜38のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項40】
ポリペプチドのC末端で追加のアミノ酸残基を含む、請求項39に記載のポリペプチド。
【請求項41】
追加のアミノ酸残基が、ポリペプチドの結合、生産、精製、安定化、カップリングまたは検出の目的のために、付加される、請求項39または40に記載のポリペプチド。
【請求項42】
追加のアミノ酸残基が、1つまたはそれ以上のポリペプチドドメインを構成する、請求項39または40に記載のポリペプチド。
【請求項43】
1つまたはそれ以上のポリペプチドドメインが、結合機能、酵素機能、金属イオンキレート化機能および蛍光機能、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される機能を有する、請求項42に記載のポリペプチド。
【請求項44】
さらに標識を含む、請求項36〜43のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項45】
さらに治療剤を含む、請求項36〜44のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項46】
検出試薬、捕捉試薬または分離試薬としての、請求項36〜44のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項47】
治療に使用するための、請求項36〜45のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項48】
診断剤として使用するための、請求項36〜45のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項49】
標的がTNF−αである、請求項36〜45のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項50】
標的がインスリンである、請求項36〜45のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項51】
標的がtaq−ポリメラーゼである、請求項36〜45のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項52】
請求項36〜45のいずれか1項に記載のポリペプチドを部分として含む融合ポリペプチド。
【請求項53】
スカフォールドに基づいて第一のポリペプチドを生産する方法であって、
所定の標的に対する親和性を有する第二のポリペプチドを備える工程(ここで、該第二のポリペプチドはSpA由来の元のスカフォールドに基づく)および
元のスカフォールドアミノ酸を突然変異させ、スカフォールドアミノ酸配列
【化5】

(ここで、各Xは、独立して、第二のポリペプチドから保存されるアミノ酸残基に対応する)を含む第一のポリペプチドを生成させる工程
を含む、上記方法。
【請求項54】
スカフォールドに基づいて第一のポリペプチドを生産する方法であって、
所定の標的に対す る親和性を有する第二のポリペプチドを備える工程(ここで、該第二のポリペプチドはSpA由来の元のスカフォールドに基づく)および
元のスカフォールドアミノ酸を突然変異させ、スカフォールドアミノ酸配列
【化6】

(ここで、各Xは、独立して、第二のポリペプチドから保存されるアミノ酸残基に対応する)を含む第一のポリペプチドを生成させる工程
を含む、上記方法。
【請求項55】
元のスカフォールドが、
【化7】

(ここで、各Xは、独立して、任意のアミノ酸残基に対応する)から選択されるスカフォールドアミノ酸を含む、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
第一のポリペプチドがアミノ酸配列
ELGWAIGEIG TLPNLTHQQF RAFILKLWDD PSQSSELLSE AKKLNDSQ
を含み、そしてここで所定の標的がTNF−αである、請求項53〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
第一のポリペプチドがアミノ酸配列
EKYMAYGEIR LLPNLTHQQV MAFIDKLVDD PSQSSELLSE AKKLNDSQ
を含み、そしてここで所定の標的がインスリンである、請求項53〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
第一のポリペプチドがアミノ酸配列
EKGEAVVEIF RLPNLTGRQV KAFIAKLYDD PSQSSELLSE AKKLNDSQ
を含み、そしてここで所定の標的がtaq−ポリメラーゼである、請求項53〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
元のスカフォールドがSpAドメインB由来であり、そして配列番号1における位置22のAおよび配列番号2における位置27のAに対応するG29A突然変異を含む、請求項53〜58のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2011−509073(P2011−509073A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538789(P2010−538789)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068168
【国際公開番号】WO2009/080811
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(307015286)アフィボディ・アーベー (9)
【Fターム(参考)】