説明

所望の表現型を示す細胞を選択するために制御されたベクター

【解決手段】 本発明は発現ベクターに関し、この発現ベクタは、そのベクターに対してヌルである細胞を選択するために使用可能な1若しくはそれ以上の選択マーカー、及びそのようなヌル細胞に結合した1若しくはそれ以上の目的タンパク質をコードする核酸配列を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2005年5月16日付出願の米国特許仮出願番号第60/681,488号および2005年5月18日付出願の米国特許仮出願番号第60/682,095号に基づく優先権を主張するものであり、当該文献の全内容はこの参照により本願明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は発現ベクターに関し、この発現ベクターは、このようなベクターに対するヌル細胞を選択するために使用可能な1若しくはそれ以上の選択マーカーに結合した、およびこのようなヌル細胞に結合した1若しくはそれ以上の目的タンパク質をコードする核酸配列を含む。所望の表現型を有するヌル細胞は、薬物の発見および開発に有用である。
【背景技術】
【0003】
成長因子、抗体、および治療用タンパク質等(これらに限らない)のタンパク質をコードする遺伝子を発現するレポーターベクターの使用は、例えば、タンパク質産生、薬物の発見および開発、および抗体または組換えタンパク質産生、細胞代謝、および/または増殖表現型に関与する経路を発見するための研究手段として、好ましい表現型を有する細胞を特定するためのスクリーニング方法の代表的なものである。このようなタンパク質をコードする核酸分子をもはや発現しない細胞を選択する能力は、その他の抗体またはタンパク質の発現について増強された表現型を示す細胞を生成する能力を示す。本願明細書では、組換え核酸分子を発現するが、当該ベクターに対するヌル細胞を取得する選択的条件下でのスクリーニング可能な発現ベクターシステム、およびそのように産生された細胞について記載する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、真核細胞または原核細胞での発現に望ましい組換えタンパク質または抗体をコードする核酸配列を有するベクターシステムの使用方法を提供することであり、ここで前記ベクターに対するヌル細胞は、選択的条件下で特定可能なものである。
【0005】
本願明細書に記載された発明は、例えば、タンパク質の高力価を取得することができる細胞、所望の増殖特性を有する細胞、および/または所望の特性(例えば、翻訳後修飾、またはポリペプチドの折りたたみまたは切断等のプロセシング)を有するタンパク質を産生する細胞等、所望の表現型を有する細胞、および所望の特性(例えば、早い細胞増殖、少ない細胞の栄養必須条件、細胞結合の欠如)を有する細胞の特定に使用するために使用される発現ベクターシステムの開発を含む。
【0006】
一部の実施形態において、前記システムは、1若しくはそれ以上の目的ポリペプチドをコードする1若しくはそれ以上の核酸配列、および1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする1若しくはそれ以上の核酸配列を有する。本発明のベクターとして、例えば、分泌または非分泌ポリペプチド、抗体、または抗体フラグメント(通常、「タンパク質」または「ポリペプチド」)をコードすることができる。このベクターは、好ましくは、少なくとも1つの陰性選択マーカーを有する。一部の実施形態において、前記ベクターは陽性選択マーカーを有する。陽性選択マーカーの存在により、前記ベクターを細胞内にうまく導入できたかを確認することができる。選択マーカーをコードする核酸配列は、目的ポリペプチドをコードする核酸配列の上流または下流にあってもよい。
【0007】
本発明のベクターは、好ましくは、構成的、誘導性、宿主特異的、および/または組織特異的プロモーター等の1若しくはそれ以上のプロモータを有する。一部の実施形態において、プロモーターは、1若しくはそれ以上の目的ポリペプチドをコードする核酸配列の上流にある。一部の実施形態において、前記ベクターは、プロモータから下流に1若しくはそれ以上のクローニング部位を有し、このクローニング部位のそれぞれが、1若しくはそれ以上の目的ポリペプチドをコードする1若しくはそれ以上の核酸分子をクローン化するのに適したなポリリンカーを含む。前記プロモーターは、好ましくは、目的ポリペプチドをコードする核酸配列、および/または選択マーカーをコードする核酸配列に作動するように結合している。
【0008】
一部の実施形態において、プロモーターは、1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする核酸配列の上流にある。一部の実施形態において、前記ベクターは、プロモーターから下流に、1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする核酸分子をクローン化するのに適したポリリンカーを含むクローニング部位を有する。
【0009】
このようなシステムに使用可能な選択マーカーには、例えば、これらに限らないが、抗生物質耐性遺伝子、HSV−TK、または細菌性プリンヌクレオシドホスホリラーゼ等、正および陰性選択マーカーなどの当該技術分野で既知のものが挙げられる。
【0010】
当該ベクターは、1若しくはそれ以上の内部リボソーム進入部位(Internal Ribosome Entry Site(s):IRES)を有する。好ましい実施形態において、前記ベクターは、目的のポリペプチドをコードする核酸配列またはそのクローニング部位と、選択マーカーをコードする核酸配列またはそのクローン部位との間にIRESを含む。
【0011】
一部の実施形態において、当該ベクターシステムは、上述のいずれの核酸配列の上流または下流にある1若しくはそれ以上のポリアデニル化部位を有する。
【0012】
本発明の一部の実施形態によると、1若しくはそれ以上のタンパク質または抗体をコードし、下流に1若しくはそれ以上のIRES配列、続いて1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする核酸配列を含む発現ベクターが提供される。一部の実施形態において、前記発現ベクターは、下流で1若しくはそれ以上のIRESに続く1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする核酸配列を有し、順番に下流に1若しくはそれ以上のタンパク質または抗体の核酸配列が続いている。好ましい実施形態においては、前記発現ベクターは、例えば、目的タンパク質または抗体の発現を引き起こすプロモーター/エンハンサーをさらに有する。この発現ベクターは、タンパク質または抗体をコードする核酸配列間、あるいは発現が望ましい核酸配列に先行するIRES配列を有していてもよい。
【0013】
好ましい実施形態において、当該発現ベクターは、目的タンパク質、抗体、または抗体フラグメントをコードする第一核酸配列と、1若しくはそれ以上のIRESにより第一核酸配列から分離している可能性のある、選択マーカーをコードする第二核酸配列とを含む。陽性選択マーカーは、薬剤耐性、蛍光性、または磁性を付与する核酸配列を有することができる。その他の陽性選択マーカーもまた、本願発明の発現ベクターへの使用に適している。
【0014】
一部の実施形態において、当該ベクターシステムは、1若しくはそれ以上のポリアデニル化部位を有するものであっても良い。
【0015】
本願明細書では、例えば、pIRES−pro−TKおよびpIRES−MAB−TKと称される2つのベクタープラスミドの開発および応用について説明する。前記pIRES−pro−TKプラスミドは、分泌または非分泌ポリペプチドをコードし、続いて下流にIRESシグナル、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)遺伝子由来の陰性選択マーカーをコードする核酸分子を含む。前記pIRES−MAB−TKプラスミドは、全長または切断型の軽鎖または重鎖免疫グロブリンをコードし、続いてIRESをコードする核酸分子と、全長または切断型の軽鎖または重鎖免疫グロブリンをコードし続いて第2のIRESをコードする核酸分子と、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)遺伝子由来の陰性選択マーカーをコードする核酸分子とを有する。これらのベクターは、真核細胞を形質移入した場合、機能性全長タンパク質またはそのフラグメントを産生する。
【0016】
真核および原核細胞等の細胞は、本発明のベクターにより形質転換することが可能である。従って、本発明の別の実施形態によると、本発明の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞が提供される。本発明の細胞としては真核または原核細胞が挙げられ、より好ましくは、植物または哺乳類細胞等の真核細胞が挙げられる。本発明の細胞として、真菌、細菌、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、昆虫、植物、齧歯動物、またはヒト起源の細胞が挙げられる。
【0017】
本願明細書に記載のシステムは、1つ若しくはそれ以上のタンパク質をコードする1若しくはそれ以上の核酸配列の融合転写物の発現を可能にするものであり、組み換え型ポリペプチドをコードする核酸配列に対してヌルである細胞集団内において、クローンに選択に使用可能な選択マーカーをコードする核酸配列が続くまたは先行する。ヌル細胞は、好ましくは増強された表現型を有する。増強された表現型を有するヌル細胞は、その他のタンパク質の発現に好適である可能性がある。
【0018】
タンパク質を産生するクローンが特定されると、その細胞株は更に、これらに限らないが、高力価発現、増強された増殖特性、および/または、例えばタンパク質修飾および/または改変された翻訳後修飾に起因する、所望の生化学的特性を有するタンパク質を与える能力等の、1若しくはそれ以上の所望の表現型を有するサブクローンを特定するために、スクリーニングされる。
【0019】
このような表現型は、所定のサブクローンの固有の性質、あるいは突然変異生成による可能性がある。突然変異生成は、薬品、UV波長光、放射線照射、ウイルス、挿入性突然変異原、欠損DNAの修復、またはこれらの方法を併用して利用することで行うことができる。
【0020】
1若しくはそれ以上の所望の特徴を有する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを与える細胞株が特定されると、この細胞株は、目的のポリペプチドを含む核酸分子をもはや含まないクローンを特定するための選択条件下におくことができる。ヌル細胞は、その他のタンパク質、抗体、または抗体フラグメントの産生に使用可能である。前記ヌル細胞は、好ましくは、例えばタンパク質修飾および/または改変された翻訳後修飾に起因した、例えば高力価発現、増強された増殖特性、および/または所望の生化学的特性を有するタンパク質を与える能力等の所望の表現型を有する。
【0021】
本発明の細胞は、発見および製品開発に有用である。
【0022】
本発明は、分泌および非分泌ポリペプチド、抗体、および/または抗体フラグメントを産生できる選択可能な発現ベクター作成のためのシステムに関する。前記発現ベクターは、ヌル細胞株を得るための陰性選択、または形質転換体を特定するための陽性選択を可能にするために機能する。本発明は、このようなシステムの1つに関する開発について述べており、その利点は、以下の実施例および図においてさらに説明する。
【0023】
本発明はまた、目的のポリペプチドをもはや発現しないサブクローン、またはそのような発現を保持しているサブクローンのいずれかを特定するために選択される、細胞、細胞株、細胞のライブラリーを作成する方法を提供する。本発明のこれらおよびその他の目的は、以下に記述されている1若しくはそれ以上の実施形態により提供される。
【0024】
別の実施形態において、目的の組換えポリペプチドをコードする核酸配列に対してヌルである細胞を選択するための方法が提供される。一部の実施形態において、前記ヌル細胞は、本発明のベクターに対してヌルである。ポリペプチドまたは抗体をコードするベクターを標的細胞に導入し、この細胞株を陽性選択により、そのベクターの取り込みについて選択する。貯蔵物(pool)を作成し、目的のポリペプチドを発現し、1若しくはそれ以上の所望の表現型を示すサブクローンについて選択する。所望のサブクローンの選択の際、これらのサブクローンを増殖し、組換えポリペプチドまたは抗体をもはや発現しない(「ヌル」である)さらなるサブセットについて陰性選択を行う。前期ヌル細胞は、好ましくは1若しくはそれ以上の所望の表現型を有する。
【0025】
本発明は、組換えタンパク質、抗体、または抗体フラグメントを発現する細胞株を得る方法を提供するものである。好ましい実施形態において、この方法は、本発明の発現ベクターによって宿主細胞を形質転換する工程と、形質転換した宿主細胞をその細胞株の新規の発現または増殖特性を促進する条件下で培養する工程と、新しい表現型を示すサブクローンについて選択またはスクリーニングする工程とを有する。本方法の好ましい用途において、形質転換された宿主細胞株は、新しい表現型を有する細胞を選択またはスクリーニングする第1工程と、所望の表現型を発現するが、組換えタンパク質または抗体ベクターをもはや発現または有していない細胞株のサブクローンを分離するために、選択マーカー配列の陰性選択を行うための第2工程との2つの選択工程でスクリーニングされる。好ましい実施形態において、前記陰性選択物質は、HSV−TK遺伝子を発現する細胞に対して毒性を引き起こすことが確認されているプロドラッグである、ガンシクロビルである。
【0026】
一部の実施形態において、pIRES−pro−TKまたはpIRES−MAB−TKベクター等の所望のタンパク質または抗体をコードする発現ベクターを有する細胞を突然変異原と共に培養し、前記細胞内の遺伝子変異の頻度を増加させてもよい。この突然変異原は、所望の改変された表現型を示す細胞の特定および選択またはスクリーニングの際に除去してもよく、所望の効果が、もともとの発現ベクターを有する細胞株を維持するか、あるいは除去するかに応じて、正または負のいずれかの選択を行うことができる。さらなる実施形態によると、目的の新しいポリペプチド、抗体、および/または抗体フラグメントをコードする核酸配列がヌル細胞に導入される。
【0027】
従って、これらおよびその他の実施形態は、新規な発現ベクターを提供するものであり、この新規ベクターは、真核および原核細胞内でそのようなベクターをスクリーニングするために使用可能な選択マーカーに結合した抗体または治療用タンパク質をコードした核酸配列を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の目的は、真核または原核細胞での発現に望ましい組換えタンパク質または抗体をコードする核酸配列を有するベクターシステムの使用に関する方法を提供することであり、当該方法において、目的タンパク質に対してヌルである細胞を、選択条件下で特定することができる。本願明細書に記載された発明は、例えば、高力価のタンパク質を与えることのできる細胞、所望の増殖特性を有する細胞、および/または所望の特性(例えば、翻訳後修飾またはプロセシング)を有するタンパク質を産生する細胞など、所望の表現型を有する細胞を特定する際に使用するための発現ベクターシステムを含む。
【0029】
発現ベクター
本願明細書に記載の発現ベクターは、1つもしくはそれ以上ののタンパク質をコードする1若しくはそれ以上の核酸配列の融合転写物の発現を可能にするものであり、目的のポリペプチドをコードする核酸配列または当該ベクターに対してヌルである細胞集団内において、クローンを選択するために使用可能な選択マーカーをコードする核酸配列がその後に続くか或いは先行する。ヌル細胞は、好ましくは、増強された表現型を有する。増強された表現型を有するヌル細胞は、他のタンパク質の発現に好ましいものであっても良い。
【0030】
本発明の全開示にわたって使用される、タンパク質またはポリペプチドの用語は、2若しくはそれ以上のアミノ酸から成る分子を記載するのに使用される。
【0031】
例えば、分泌タンパク質、非分泌タンパク質、全長抗体、または抗体フラグメントなど、目的のポリペプチドをコードする配列を含む組換え発現ベクター、および選択マーカーをコードする核酸配列が提供される。当該システムに使用可能な選択マーカーは、これらに限らないが、例えば抗生物質耐性遺伝子、HSV−TK、ガンシクロビル選択的HSV−TK誘導体(例えば、変性HSV−TK、配列ID番号1)、または6−メチルプリン選択に対して細菌性プリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子(Gadi et al.(2000)Gene Ther.7:1738−1743)等の、正および陰性選択マーカーを含む、当該技術分野で既知のものが挙げられる。さらに、前記ベクターは、形質転換された細胞の陽性選択を可能にする選択マーカー(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラマイシン耐性遺伝子、およびペニシリン耐性遺伝子等の抗体耐性遺伝子)を有していてもよい。
【0032】
選択マーカーまたはそのクローニング部位をコードする核酸配列は、目的のポリペプチドまたはそのためのクローニング部位をコードする核酸配列の上流または下流にあってもよい。
【0033】
一部の実施形態において、当該ベクターは、構成的、誘導性、宿主特異性、および/または組織特異性のプロモーター等の、1若しくはそれ以上のプロモーターを有する。例えば、通常使用されるプロモーターおよびエンハンサーは、ヒトのサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)、アデノウイルス2、サルウイルス40(Simian Virus 40:SV40)、およびポリオーマから誘導される。ウイルスゲノムプロモーター、制御および/またはシグナル配列は、適合可能な宿主細胞に依存する発現を誘発するために利用される。ハウスキーピング遺伝子由来のプロモーター(例えば、β−グロブリン、チミジンキナーゼ、およびEF−1αプロモーター)も、ベクターが発現される細胞のタイプによって、使用することができる。Klehr et al.(1991);Grosveld et al)。一部の実施形態においては、このベクターは、1若しくはそれ以上の目的のポリペプチドをコードする核酸配列の上流にある。一部の実施形態においては、プロモーターは、1若しくはそれ以上の目的のポリペプチドをコードする核酸配列の上流にある。一部の実施形態において、当該ベクターは、プロモーターの下流に1若しくはそれ以上のクローニング部位を有し、それぞれが1若しくはそれ以上の目的のペプチドをコードする1若しくはそれ以上の核酸分子をクローン化するのに適したポリリンカーを有する。
【0034】
一部の実施形態において、プロモーターは、1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする核酸配列の上流にある。一部の実施形態において、当該ベクターは、このプロモーターの下流に、1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする核酸分子をクローン化するのに適したポリリンカーを有するクローニング部位を有する。
【0035】
本発明のベクターは、1若しくはそれ以上の内部リボソーム進入部位(Internal Ribosome Entry Site(s):IRES)を有する場合がある。融合ベクターがIRES配列を有することは、一部のタンパク質の発現を促進するのに有益である可能性がある。前記IRES配列は、選択的圧力下では、遺伝子の発現を安定化するように見える(Kaufman et al.,1991)。しかしながら、前記IRES配列は、下流の配列の高発現レベルを達成するためには必要ではない。内部リボソーム進入部位は、多数のウイルスおよび細胞RNAで発見される制御要素である(McBratney et al.(1993)Current Opinion in Cell Biology 5:961において概説)。IRESは、結合した発現カセットにおける下流の遺伝子産物の翻訳を促進するのに有用である(Kaufman R.J.et al.(1991)Nucl.Acids Res.19:4485)。複数の転写物の発現に使用される内部リボソーム進入部位(IRES)を含む発現ベクターは、これまでにも記載されている。Kim and Wold (1985) Cell 42:129;Kaufman et al.(1991);Mosley et al.(1989);Subramani et al.(1981)Mol.Cell.Biol.1:854。その他のIRES系ベクターとして、例えば、アデノウイルス三者間リーダーとDHFRcDNAとの間でクローン化した、マウスの脳心筋炎ウイルス由来のIRESを含むpCDEベクター(Jang and Wimmer,(1990)Genes and Dev.4:1560)が挙げられる。好ましい実施形態においては、このベクターは、目的のポリペプチドまたはそのクローニング部位をコードする核酸配列と、選択マーカーまたはそのためのクローニング部位をコードする核酸配列との間にIRESを有する。
【0036】
前記発現ベクターは、さらに、タンパク質、または抗体をコードする核酸配列間で、あるいは発現の望ましい核酸配列に先行して、IRES配列を有することができる。
【0037】
一部の実施形態においては、当該ベクターシステムは、前述のいずれの核酸配列の上流または下流にある可能性のある、1若しくはそれ以上のポリアデニル化部位(例えば、SV40)を含む。
【0038】
目的のポリペプチドをコードする核酸配列の翻訳領域(open reading frame:ORF)は、好ましくは、選択マーカーをコードする核酸配を有するインフレームである。このベクター成分は、隣接して結合しているか、または遺伝子産物を発現するための最適スペーシングを与えるように(すなわち、ORF間で「スペーサー」ヌクレオチドの導入により)配列、あるいは別の方法で位置づけされている可能性がある。IRESモチーフ等の制御要素を、発現のために最適な間隔を与えるように配列することもできる。
【0039】
本発明のベクターは、好ましくは、陰性選択マーカーに加えて、陽性選択マーカーを有する。このようなプラスミドによって形質移入された細胞は、陽性選択条件下において選択され、その後組換えタンパク質発現についてスクリーニングすることができる。組換え正細胞は、増殖され、所望の表現型を示すサブクローンについてスクリーニングされる。
【0040】
本発明の組換え発現ベクターは、好適な制御要素に作動するように結合した、少なくとも1つの組換えタンパク質および選択マーカーをコードする、合成、ゲノムの、またはcDNA由来の核酸フラグメントを含む。このような制御要素は、転写プロモーター、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および転写および翻訳の終結を制御する配列を有することができる。発現ベクター、特に哺乳類の発現ベクターもまた、複製の開始点、発現する遺伝子に結合した適切なプロモーターおよびエンハンサー等の、1若しくはそれ以上の非転写要素、その他の5’または3’隣接非転写配列、(必要なリボソーム結合部位等の)5’または3’非翻訳配列、ポリアデニル化部位、スプライスドナー、および受容体部位、または転写終了配列も含む。宿主に複製能力を付与する複製起点も、組み込むことができる。
【0041】
脊椎動物細胞の形質転換に使用される発現ベクター中の転写および翻訳制御配列は、ウイルス源により提供されるものであってもよい。典型的なベクターは、Okayama and Berg(1983)Mol.Cell.Biol.3:280に記載されるように、構成される。
【0042】
本発明の一部の実施形態は、1若しくはそれ以上のタンパク質または抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供し、下流で1若しくはそれ以上の選択マーカーが続き、1若しくはそれ以上のIRES配列が下流で続く。一部の実施形態において、前記発現ベクターは、1若しくはそれ以上の選択マーカーをコードする核酸配列を有しており、下流に1若しくはそれ以上のIRESが続き、これは順番に、下流で1若しくはそれ以上のタンパク質または抗体核酸配列が続く。好ましい実施形態において、前記発現ベクターは、さらに、例えば、目的タンパク質または抗体の発現を引き起こすプロモーター/エンハンサーを有する。
【0043】
好ましい実施形態においては、前記発現ベクターは、目的タンパク質、抗体、または抗体フラグメントをコードする第1の核酸配列、および1若しくはそれ以上のIRESで第1の核酸配列より分離されている、選択マーカーをコードする第2の核酸配列を有する。
【0044】
特に、図1Aおよび1Bに示すように、目的のポリペプチドおよび/または抗体と、HSV−TK陰性選択マーカー(それぞれpIRES−pro−TKおよびpIRES−MAB−TK)とをコードする核酸配列を有するベクターである。前記pIRES−pro−TKプラスミドは分泌または非分泌ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、下流にIRESシグナル、及び単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(herpes simplex virus thymidine kinase:HSV−TK)遺伝子由来の陰性選択マーカーとを有する。前記pIRES−MAB−TKプラスミドは、IRESが後に続く全長または切断型の軽鎖または重鎖免疫グロブリンをコードする核酸分子と、第2のIRESがその後に続く全長または切断型の軽鎖または重鎖免疫グロブリンをコードする核酸分子と、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)遺伝子由来の陰性選択マーカーをコードする核酸分子とを有する。これらのベクターは、真核細胞に形質移入された場合、機能性全長タンパク質、またはそのフラグメントを産生する。本願明細書において開示される典型的なベクターは、因子IX(配列ID番号2および3)などの分泌ポリペプチド、抗体(配列ID番号4、5、6、および7)、およびHSV−TK遺伝子(配列ID番号1)をコードするcDNA配列を用いて設計した。
【0045】
HSV−TK遺伝子の配列、および所望の表現型を有する細胞をスクリーニングするために使用可能な組換え遺伝子の例は、以下のものを含む。
【0046】
【表1−1】

【0047】
【表1−2】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
宿主細胞
真核および原核細胞を含む細胞は、本発明の発現ベクターを用いて形質転換することができる。従って、本発明の別の実施形態は、本発明の発現ベクターを用いて形質転換した宿主細胞を提供する。本発明の細胞は、好ましくは真核細胞であり、より好ましくは、植物、齧歯動物、ヒト起源であり、例えば、NSO、CHO、perC.6、Tk−ts13、BHK、またはHEK293細胞等である。
【0055】
細胞における本発明のベクターの発現は、例えば、所望の増殖特性を示す細胞といった、1若しくはそれ以上の目的の表現型を有する細胞、または所望の表現型を有するタンパク質についてのスクリーニングを可能にする。このような所望の表現型には、とりわけ、高増殖速度、栄養また血清の少ない必要条件、低い凝集性、高密度での増殖、抑制されたアポトーシスを有する細胞、組換えタンパク質の高力価を与える細胞、プロセシングまたは切断により改変されたタンパク質型、改変された翻訳後部分、および/または改変された2次折りたたみアイソフォームを含む。新規の1つの表現型または複数の表現型を示す細胞が誘発されるとこの細胞が増殖し、例えば、選択によって、目的のポリペプチドをコードする組換え核酸配列をもはや発現しないサブクローンが選択される。この結果、この誘発細胞は、その他のタンパク質、抗体、または抗体フラグメントの発現に好適である。
【0056】
「形質転換した宿主細胞」とは、本発明の発現ベクターが導入された細胞を意味する。形質転換した宿主細胞を作成するために、様々な細胞培養システムが利用でき、適切なベクターを発現できるすべての細胞株が使用可能である。好適な宿主哺乳類細胞株の例として、特に、Gluzman(1981)Cell 23:175により記載されているようなサルの腎臓細胞のCOS−7株が挙げられ、その他の好適な細胞株として、特に、HEK293(Nicolaides et al.1998)、T98G,CV−1/EBNA、L細胞(Holst et al.(1988))、C127、3T3,チャイニーズハムスター卵巣(CHO)(Weidle,et al.(1988)),HeLa,TK−ts13(Nicolaides et al.(1998))、NS1、Sp2/0骨髄腫細胞、およびBHK細胞株が挙げられる。
【0057】
他の方法も処置した細胞または組織の十分なフラクションを、ポリヌクレオチドに取り込む範囲で適用できるが、一般に形質転換は、複数または単一細胞の懸濁液を用いて実行され、これによって形質転換した細胞を成長および利用することが可能となる。形質転換の手法はよく知られている。一部の形質転換手順は、当該技術分野で周知である。例えば、Kaufman(1988)Meth.Enzymology 185:537を参照。当業者によって容易に理解されるように、適切な形質転換手順は、宿主細胞の種類、および目的の遺伝子の性質により決定される。このような手順の全ての基本要素として、目的タンパク質をコードする核酸配列を好適な宿主細胞に導入し、その後安定で発現可能な方法で、ベクターDNAを取り込んだ宿主細胞を特定および単離することを含む。ポリヌクレオチドを導入する技術としては、これらに限らないが、電気穿孔法、形質導入、細胞融合、塩化カルシウムの使用、および目的細胞との融合のために、脂質とともにポリヌクレオチドをパッケージングすることが挙げられる。選択可能なマーカー遺伝子が複数の細胞世代に対して一定レベルで発現されるように、形質転換が安定であれば、株化細胞が得られる。
【0058】
特に哺乳類細胞に形質移入するための1つの一般的な方法は、Nicolaides et al.(1998)に記載されているような、リン酸カルシウム沈殿である。別の方法は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)誘導型の細菌プロトプラストの哺乳類細胞との融合である。Schaffner et al.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2163。さらに別の方法は、例えば、Potter et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:7161に記載されているように、宿主細胞の細胞質にDNAを直接導入するのに使用される電気穿孔法である。
【0059】
DNAの形質移入は、培養された細胞に適用する場合、核酸の細胞への取り込みを促進する脂質−核酸複合体(またはリポソーム)を形成する、リポフェクチン、リポフェクタミン(米国メリーランド州Gathersburg,Gibco BRLより入手可能)等のポリリポソーム試薬を使用して実行することも可能である。
【0060】
細胞が形質移入されると、貯蔵(pool)が選択され、発現ベクターを取り込んだ細胞が特定される。有用な優性選択可能なマーカーとしては、これらに限らないがネオマイシン、カナマイシン、テトラマイシン、ハイグロマイシン、またはペニシリン等への耐性を与える抗体耐性遺伝子が挙げられる。
【0061】
形質移入された細胞は、多くの方法によって選択される。当該ベクターが抗体耐性遺伝子も有する細胞については、この細胞は、当該ベクターを含む細胞について陽性選択を行う抗体耐性について選択することができる。別の実施形態において、前記細胞は、選択的な条件下で成長することができ、さらに突然変異原を用いて処理することにより変異速度を増大させることが可能であり、例えば目的の1つ若しくは複数の遺伝子の改変された表現型の特徴の存在に基づいて、或いは細胞株の特性に応じて選択することが可能である。一旦、目的の表現型を実現すると、この細胞は、ヌル細胞が得られるように陰性選択遺伝子に基づいて陰性選択を行うことができる。本開示全体に渡って使用される「ヌル細胞」の用語は、先に導入された組換えタンパク質をもはや発現しない細胞または細胞集団を意味する。発現欠失は、その組換えベクターの完全欠失、または組換えタンパク質がもはや産生されないようなベクターの部分的欠失による可能性がある。
【0062】
タンパク質を産生するクローンが一旦特定されると、その細胞株は、高力価発現、増強された増殖特性、および/または、例えばタンパク質修飾、および/または改変された翻訳五修飾による、所望の生化学的特性を有するタンパク質を生じる能力等の、1若しくはそれ以上の所望の表現型を有するサブクローンを特定するために、さらにスクリーニングされる。
【0063】
これらの表現型は、所定のサブクローン固有の特性または突然変異生成による場合がある。突然変異生成は、薬品、UV波長光、放射線放射、ウイルス、挿入性突然変異原、欠陥DNAの修復、またはこれら方法の組み合わせを使用することにより達成することができる。
【0064】
1若しくはそれ以上の所望の特徴を有する抗体、抗体フラグメント、またはポリペプチドを与える細胞株が一旦特定されると、この細胞株は、目的のポリペプチドを含む核酸分子をもはや含まないクローンを特定するための選択条件下におくことができる。例えば、HSV−TK選択マーカーを有する細胞は、HSV−TK遺伝子を発現する細胞内で毒性ヌクレオシド類似体に変換されるプロドラッグであるガンシクロビル(GCV)で処理される(Carrio et al.(2001)Int.J.Cancer 94:81−88)。目的のポリペプチドおよびHSV−TKは、同じ転写物から産生されるため、GCV処理で残存するクローンは、融合転写物を発現せず、目的のポリペプチドに対してヌルである。このヌル細胞は、他のタンパク質、抗体、または抗体フラグメントを産生するために使用可能である。このヌル細胞は、好ましくは、所望の表現型、例えば、高力価発現、増強された増殖特性、および/または、例えばタンパク質修飾および/または改変された翻訳後修飾により、所望の生化学的特性を有するタンパク質を与える能力を有する。
【0065】
目的のポリペプチドをコードする融合転写物および選択マーカーの使用は、分泌ポリペプチド、非分泌ポリペプチド、および/または他のタンパク質または抗体産生物の産生に使用するための抗体を産生する細胞についてスクリーニングするために、組換え発現ベクターを使用する組換え法に対して有益である。
【0066】
別の実施形態において、組換えペプチドをコードする核酸配列に対してヌルである細胞を特定するための方法が提供される。ポリペプチドまたは抗体をコードするベクターを標的細胞に導入し、細胞株を陽性選択により、当該ベクターの取り込みについて選択する。貯蔵物(pool)を作成し、目的のポリペプチドを発現し、1若しくはそれ以上の所望の表現型を示すサブクローンについて選択する。所望のサブクローンを選択する際に、これらのサブクローンを増殖し、その後、組換えポリペプチドまたは抗体をもはや発現しない(「ヌル」の)さらなるサブセットについて陰性選択を行う。このヌル細胞は、好ましくは所望の表現型を有する。
【0067】
本発明は、組換えタンパク質、抗体、または抗体フラグメントの産生のための表現型を示す細胞株を得るための方法を提供する。この方法は、本発明の発現ベクターを宿主細胞を形質転換する工程と、形質転換した宿主細胞をその細胞株の新規の発現または増殖特性を促進する条件下で培養する工程と、新しい表現型を示すサブクローンについて選択またはスクリーニングする工程とを有する。本方法の好ましい応用においては、形質転換された宿主細胞株は、新しい表現型を有する細胞について選択またはスクリーニングする第1の工程と、所望の表現型を発現するが、組換えタンパク質または抗体ベクターをもはや発現または有していない細胞株のサブクローンを分離するための選択マーカー配列の陰性選択のための第2の工程から成る、2つの選択工程によりスクリーニングされる。最も好ましい実施形態においては、陰性選択薬は、HSV−TK遺伝子を発現する細胞に対して毒性を生じることが示されているプロドラッグである、ガンシクロビルである。
【0068】
一部の実施形態において、例えばpIRES−pro−TKまたはpIRES−MAB−TKベクター等の所望のタンパク質または抗体をコードする発現ベクターを有する細胞は、細胞内での遺伝子変異の頻度を増大させるために、突然変異原で培養することができる。前記突然変異原は、所望の変更された表現型を示す細胞の特定および選択またはスクリーニングの際に除去してもよく、所望の効果が元の発現ベクターを含む細胞株を維持または除去するための効果であるかによって、正または陰性選択のいずれかが行うことができる。さらなる実施形態においては、目的の新しいポリペプチド、抗体、および/または抗体フラグメントをコードする核酸配列をヌル細胞に導入する。
【0069】
以下の参考文献は、関連する背景技術に関するさらなる情報を得るために閲覧され、これら参考文献の全内容はこの参照により本願明細書中に完全に組み込まれる。
【0070】
1)Nicolaides,N.C.et al.(1998)Mol.Cell.Biol.18:1635−1641
2)Nicolaides,N.C.et al.(1997)Proc.Natl.Acd.Sci.USA94:13175−13180
3)Grasso,L.et al.(1998)J.Biol.Chem.273:24016−1404
4)Grosveld,F.et al.(1987)Cell51:975−985
5)Holst,A.et al.(1988)Cell52:355−365
6)Kaufman,R.et al.(1991)Nucl.Acids res.19(16):4485−4490,1991
7)Klehr,D.et al.(1933)Biochemistry30:1264−1270
8)McBratney,S.et al.(1993)Curr.Opin.Cell Biol.5:961−965
9)Wegner,M.et al.(1990)J.Biol.Chem.265(23):13925−13932
10)Weidle,U.et al.(1988)Gene66:193−203
11)Chen,L.et al.(2004)J.Immunol.Methods295:49−56
12)Yoon,SK.et al.(2004)Biotechnol Prog.20:1683−1688
13)Bohm,E.et al.(2004)Biotechnol.Bioeng.88:699−706
14)Grasso,L.et al.(2004)Bioprocessing Intl. 2:58−64
上記の開示内容は、本発明の特定の観点を一般的に記載しているものである。さらなる情報は、以下の具体的な実施例を参照することにより得ることができるが、これらは、本願明細書における説明目的のためのみに提供されるものであり、本発明の範囲を限定する意図はないものである。
【実施例1】
【0071】
組換えタンパク質/陰性選択融合の操作
増殖および/産生に関して望ましい特性を有する宿主細胞についてスクリーニングするための組換えタンパク質/選択マーカー融合物の機能性を実証するために、pIRES−pro−TKおよびpIRES−MAB−TKベクターをそれぞれ作成した。下流で複数のポリリンカークローニング部位および1つのSV40ポリアデニル化シグナルに続く、CMVプロモーターを有するpCMVベクターを、優性の陽性選択可能なマーカーとして、構成的に発現されたネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子とともに主鎖として使用した。このpCMVカセットは、ポリリンカー領域内でクローン化された脳心筋炎ウイルス(ECMV)由来の内部リボソーム進入部位(IRES)を有していた。因子IXcDNAまたはその他のcDNAをコードする組換え遺伝子を、IRES配列の上流にあるEcoRI−XbaI部位へとクローン化した。修飾したHSV−TK遺伝子(配列ID番号1)をIRES配列の下流に挿入した。抗体産生を与えるために、組換え抗体配列pIRES−MAB−TKを、全長軽鎖cDNA(配列ID番号4)、およびIRESにより分離された全長重鎖cDNA(配列ID番号6)を組換え遺伝子クローニング部位に導入することにより、作成した。このベクターは、他の抗体遺伝子の発現も生じた。図1は、pIRES−pro−TK(図1A)およびpIRES−MAB−TK(図1B)を描く図である。
【実施例2】
【0072】
組換え遺伝子/陰性選択融合ベクターからのタンパク質発現細胞の作成
陰性選択マーカーに融合した組換えタンパク質発現ベクターを、増強された表現型を示す細胞を選択する手段として使用できる能力を実証するため、全長抗体を有するpIRES−MAB−TKプラスミドを細胞株に形質移入した。1実施形態においては、哺乳類細胞を製造業者の仕様書に従って、電気穿孔法により形質移入した。形質移入した貯蔵(pool)は、発現ベクターを有するクローンを選択するため、0.4mg/mlのG418(ネオマイシン類似体)中で10〜14日間選択した。次に、細胞を組換えタンパク質(免疫グロブリン、本願明細書においてはIgと称する)発現に関するウエスタンブロットまたはELISAモニタリングにより、遺伝子発現について分析した。ウエスタンブロットについては、pIRES−MAB−TK培養物由来の50,000個の細胞または対照試料を遠心分離し、その後150μlの2xSDS緩衝液中に再懸濁した。その後、培養物をウエスタンブロットにより、抗体発現について分析した。ウエスタンブロットは、以下のようにして実施した。50μlのpIRES−MAB−TKを形質移入した、または空のベクター培養物を2x溶解緩衝液(60mMトリス、pH6.8、2%SDS,10%グリセロール、0.1M 2−メルカプトエタノール、0.001%ブロモフェノールブルー)に直接溶解し、試料を5分間煮沸した。溶解物のタンパク質は、4〜20%のトリスグリセリンゲル(Novex)上で電気泳動により分離した。ゲルを48mMトリス塩基、40mMグリシン、0.0375%SDS,20%メタノール中で、Immobilon−P(Millipore)上に電気ブロットし、トリス緩衝化生理食塩水に0.05%Tweeen−20および5%粉ミルクを加えた溶液中、4℃で一晩ブロッキングした。抗ヒトの免疫グロブリン(Ig)として作成されたモノクローナルマウス抗体、続いて、2次ヤギ抗マウス西洋ワサビ過酸化酵素結合型抗体で精査した。2次抗体をインキュベーションした後、ブロットを化学発光(Pierce)で展開し、Ig発現を測定するためフィルムに曝した。これらのデータは、形質移入した細胞(図2、レーン2)および親細胞(図2、レーン2)由来のヒトIgの分泌についてELISAモニタリングを実施することで確認した。ELISA法は、Grassoら(2004)の方法に従って実施した。簡潔に述べると、細胞を96穴プレートに蒔き、24〜76時間成長させた。一定分量の上澄みを分離し、96穴の試験用プレート中でインキュベートした。上澄みをマウス抗ヒトIg抗体、続いてHRP結合型抗マウス抗体を検出に用いて、ELISAで定量化した。Ig含量を、基質転換の関数として決定し、分光光度法によりとらえた。
【0073】
親細胞またはpIRES−MAB−TKで形質移入した細胞のELISA分析は、pIRES−MAB−TK形質移入細胞の強力な抗体レベルの産生能力をチャイニーズハムスター卵巣細胞において実証した。図2は、ELISAによる親(レーン1)またはpIRES−MAB−TK形質移入(レーン2)CHO細胞の代表的なIg値を示す。このデータは、OD単位で示している。
【実施例3】
【0074】
組換え遺伝子/選択マーカー融合ベクター由来の陰性選択されたサブクローンの作成
実施例2に記載のようなIgを発現する選択されたクローンを増殖し、例えば高力価を発現、または好ましい成長プロファイルを示す所望のサブクローンを特定するために、単一細胞クローンとして成長させる。所望の表現型を示す細胞が特定されると、サブクローンを増殖し、最適化された細胞宿主由来の他のタンパク質または抗体を産生するために使用できる増強された表現型を有するクローンを与えて、その後発現ベクターに対してヌルである細胞について陰性選択を行う。
【0075】
所望の表現型を示すヌル細胞の集団を得るためには、元の組換え遺伝子の発現を除去するか、あるいは完全に抑制することを望むであろう。例えば、pIRES−MAB−TK培養物は、HSV−TK遺伝子産生物を発現する細胞を殺すプロドラッグであるガンシクロビル(Sigma社)の存在下で5日間成長する。5日間の陰性選択後、95%を越える細胞が死滅する成長培地のみで細胞をさらに10日間成長させる。耐性クローンをその後取り出し、10cmのペトリ皿中で増殖させる。細胞を3週間成長させ、その後一部を、例えば、ウエスタンブロット、RT−PCR,および/またはPCRにより、組換えタンパク質発現について再分析する。DNAを、例えばGrassoら(1998)によって記載された方法に従って、pIRESベクターの存在または非存在を特異的に検出できるようなセットのプライマーを用いて、PCRにより、pIRES−pro−TKまたはpIRES−MAB−TKベクターの存在について分析する。
【0076】
図3は、ガンシクロビル耐性細胞において観察される典型的な結果を示している。陰性選択したクローンの分析は、pIRES−pro−TKベクターの損失を示した(図3、レーン2)のに対し、ベクターの存在は無処置の培養物(図3、レーン1において矢印で示すように)で観察された。図3は、pIRES−pro−TKで形質移入された1つまたは複数の親細胞の分析を示しており、ヌル細胞産生能力を示している。図示されているのは、pIRES−pro−TKベクターを有するCHO細胞由来のDNAのガンシクロビルによる陰性選択の前後での典型的な評価を示す。
【0077】
ヌルのサブクローンのさらなる遺伝解析は、陰性選択の際に、得られるクローンは通常その全てのベクター配列を失い、これによって細胞がネオマイシン選択に対して(データー図示せず)再び過敏になっていることを実証している。これらの細胞は、現在組換えタンパク質、抗体、またはこれらの誘導体の産生のための全ての種類の発現ベクターの導入に好適である。本発明の発現ベクターの損失に続いて導入されるこの発現ベクターは、pIRES−pro−TKまたはpIRES−MAB−TKに対して示される構造を有するか、またはこれらのベクターの構成成分の一部のみ有しているか、あるいは全く異なる可能性がある。
【0078】
本書類において引用または記載した各特許、特許出願、および出版物は、この参照により本願明細書に完全に組み込まれる。
【0079】
当業者であれば、本発明の好ましい実施形態に多くの変更または修正を加えることが予測可能であり、このような変更および修正は本発明の要旨から逸脱せずに行うことが可能である。従って、添付の請求項はそのようなすべての同等な変形例を本発明の要旨の範囲内となるように網羅することを意味するものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、典型的な調節発現ベクターの概略図を示した図である。図1Aは、pIRES−pro−TKを示す。図1Bは、pIRES−MAB−TKを示す。略語は以下の意味を有する。「pro」はプロモーター、「neo」は、C終端で融合したネオマイシンリン酸転移酵素遺伝子、「組み換えポリペプチド」はヒト因子IXcDNA、「Ig重鎖」は免疫グロブリン重鎖cDNAのクローニング部位、「Ig軽鎖」は免疫グロブリン軽鎖cDNAのクローニング部位、「RES」は内部リボソーム進入部位、「pA」は、ポリアデニル化部位、「neg mrk」は、修飾された単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子等の陰性選択マーカーを意味する。
【図2】図2は、親細胞(レーン1)と、陰性選択前に強い抗体レベルを発生する能力を示す、pIRES−MAB−TKで形質移入した細胞(レーン2)のELISA分析である。
【図3】図3は、陰性選択後に、ヌルpIRES−pro−TK細胞を産生する能力を示す、pIRES−pro−TKで形質移入した細胞のゲノム分析である。図において、ガンシクロビルによる陰性選択前後における、pIRES−pro−TKベクターを有するCHO細胞由来のゲノムDNAを示している。予備選択細胞由来のDNA(レーン1)は、ベクター特異性PCRフラグメントによって決定されるように、ベクターに対して正であるのに対し、陰性選択後に誘発された細胞は、当該ベクターに対してヌルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸配列と、選択マーカーをコードする少なくとも1つの核酸配列とを有するポリヌクレオチドベクター。
【請求項2】
請求項1記載のベクターにおいて、前記選択マーカーをコードする核酸配列は、前記組換えタンパク質をコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項3】
請求項1記載のベクターにおいて、前記組み換えタンパク質をコードする前記核酸配列は、選択マーカーをコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項4】
請求項1記載のベクターにおいて、このベクターは、さらに、
1若しくはそれ以上の内部リボソーム進入部位を有するものである。
【請求項5】
請求項4記載のベクターにおいて、前記内部リボソーム進入部位は、前記組換えタンパク質をコードする核酸配列と前記選択マーカーをコードする核酸配列との間に位置するものである。
【請求項6】
請求項1記載のベクターにおいて、このベクターは、少なくとも1つの核酸配列に作動するように結合した1若しくはそれ以上のプロモータを有するものである。
【請求項7】
請求項1記載のベクターにおいて、前記選択マーカーは、陰性選択マーカーである。
【請求項8】
請求項7記載のベクターにおいて、前記陰性選択マーカーは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(herpes simplex virus thymidine kinase:HSV−TK)またはその誘導体である。
【請求項9】
請求項8記載のベクターにおいて、前記陰性選択マーカーは、配列ID番号1の核酸配列によりコードされるものである。
【請求項10】
請求項1記載のベクターにおいて、このベクターは、さらに、
陽性選択マーカーをコードする核酸配列をさらに有するものである。
【請求項11】
請求項1記載のベクターにおいて、このベクターは、さらに、
少なくとも1つのポリアデニル化シグナルを有するものである。
【請求項12】
請求項11記載のベクターにおいて、前記ポリアデニル化シグナルは、前記選択マーカーをコードする核酸配列の下流にあるものである。
【請求項13】
請求項11記載のベクターにおいて、前記ポリアデニル化シグナルは、前記選択マーカーをコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項14】
請求項11記載のベクターにおいて、前記ポリアデニル化シグナルは、前記組換えタンパク質をコードする核酸配列の下流にあるものである。
【請求項15】
請求項11記載のベクターにおいて、前記ポリアデニル化シグナルは、前記組換えタンパク質をコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項16】
請求項6記載のベクターにおいて、前記プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、または宿主特異的プロモーターである。
【請求項17】
請求項1記載のベクターを有する細胞。
【請求項18】
請求項17記載の細胞において、この細胞は真核細胞である。
【請求項19】
請求項18記載の細胞において、この細胞は哺乳類細胞である。
【請求項20】
所望の表現型を有する、単離された遺伝的に安定な細胞を産生する方法であって、
a)組換えポリペプチドを発現させる条件下で細胞を培養し、細胞ライブラリーを作成する、前記培養する工程と、
b)新しい表現型を示す細胞ライブラリーからクローンを選択する工程と、
c)前記選択されたクローンを増大させる工程と、
d)前記組換えポリペプチドを発現していないクローンを選択する工程と
を有する、方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、前記細胞は、組換えポリペプチドをコードする1若しくはそれ以上の核酸配列と、選択マーカーをコードする1若しくはそれ以上の核酸配列とを有するものである。
【請求項22】
請求項20記載の方法において、前記細胞は、
免疫グロブリン軽鎖をコードする少なくとも1つの核酸配列に作動するように結合した、プロモーターまたは内部リボソーム進入部位と、
少なくとも1つの内部リボソーム進入部位により免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸配列から分離された、免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列と、
リボソーム内部進入部位またはプロモーターにより上流に配置された、少なくとも1つの選択マーカー配列と
を有するベクターを有するものである。
【請求項23】
請求項20記載の方法において、前記細胞は、
免疫グロブリン重鎖をコードする少なくとも1つの核酸配列に作動するように結合した、プロモーターまたは内部リボソーム進入部位と、
少なくとも1つの内部リボソーム進入部位により免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列から分離された、免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸配列と、
内部リボソーム進入部位またはプロモーターに上流に配置された、少なくとも1つの選択マーカー配列と
を有するベクターを有するものである。
【請求項24】
請求項21記載の方法において、前記選択マーカーは、陰性選択マーカーである。
【請求項25】
請求項21記載の方法において、前記ベクターは、さらに、
陽性選択マーカーを有するものである。
【請求項26】
請求項21記載の方法において、前記ベクターは、少なくとも1つの核酸配列に作動するように結合した1若しくはそれ以上のプロモーターを有するものである。
【請求項27】
請求項21記載の方法において、前記選択マーカーをコードする核酸配列は、組換えポリペプチドをコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項28】
請求項21記載の方法において、前記組換えポリポリペプチドをコードする核酸配列は、前記選択マーカーをコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項29】
請求項21記載の方法において、前記ベクターは、1若しくはそれ以上の内部リボソーム進入部位を有するものである。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記内部リボソーム進入部位は、組換えポリペプチドをコードする核酸配列と、前記選択マーカーをコードする核酸配列との間に位置するものである。
【請求項31】
請求項23記載の方法において、前記陰性選択マーカーは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(herpes simplex virus thymidine kinase:HSV−TK)、またはその誘導体である。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記陰性選択マーカーは、配列ID番号1の核酸配列によってコード化されるものである。
【請求項33】
請求項21記載の方法において、前記ベクターは、少なくとも1つのポリアデニル化シグナルを有するものである。
【請求項34】
請求項33記載の方法において、前記ポリアデニル化シグナルは、前記選択マーカーをコードする核酸配列の下流にあるものである。
【請求項35】
請求項33記載の方法において、前記ポリアデニル化シグナルは、前記選択マーカーをコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項36】
請求項33記載の方法において、前記ポリアデニル化シグナルは、前記組換えポリペプチドをコードする核酸配列の下流にあるものである。
【請求項37】
請求項33記載の方法において、前記ポリアデニル化シグナルは、前記組換えポリペプチドをコードする核酸配列の上流にあるものである。
【請求項38】
請求項26記載の方法において、前記プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、または宿主特異的プロモーターである。
【請求項39】
請求項21記載の方法において、前記ベクターは、pIRES−pro−TKである。
【請求項40】
請求項21記載の方法において、前記ベクターは、pIRES−MAB−TKである。
【請求項41】
請求項20記載の方法において、前記宿主は、哺乳類細胞である。
【請求項42】
請求項20記載の方法において、前記宿主は、植物細胞である。
【請求項43】
請求項20記載の方法において、前記宿主は、両生動物細胞である。
【請求項44】
請求項20記載の方法において、前記宿主は、昆虫細胞である。
【請求項45】
請求項20記載の方法において、前記宿主は、真菌細胞である。
【請求項46】
請求項20記載の方法において、この方法は、さらに、
前記培養工程中に突然変異生成を誘発する工程を有するものである。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、前記突然変異生成を誘発する工程は、前記培養工程
中に突然変異原で前記細胞を処理する工程を有するものである。
【請求項48】
請求項46記載の方法において、突然変異生成を誘発する前記工程は、前記培養工程中に、前記細胞のミスマッチ修復を阻害する工程を有するものである。
【請求項49】
請求項20記載の方法により産生された細胞。
【請求項50】
ベクターであって、
免疫グロブリン軽鎖をコードする少なくとも1つの核酸配列に作動するように結合した、プロモーターまたは内部リボソーム進入部位と、
少なくとも1つの内部リボソーム進入部位により免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸配列から分離された、免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列と、
内部リボソーム進入部位またはプロモーターにより上流に配置された、少なくとも1つの選択マーカー配列と
を有する、ベクター。
【請求項51】
請求項50記載のベクターにおいて、前記選択マーカーは、陰性選択マーカーである。
【請求項52】
請求項51記載のベクターにおいて、前記陰性選択マーカーは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)またはその誘導体である。
【請求項53】
請求項52記載のベクターにおいて、前記選択マーカーをコードする核酸配列は、配列ID番号1のヌクレオチド配列を有するものである。
【請求項54】
請求項50記載のベクターにおいて、前記免疫グロブリン軽鎖は、配列ID番号5のアミノ酸配列を有するものである。
【請求項55】
請求項50記載のベクターにおいて、前記免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸配列は、配列ID番号4の核酸配列を有するものである。
【請求項56】
請求項50記載のベクターにおいて、前記免疫グロブリン重鎖は、配列ID番号7のアミノ酸配列を有するものである。
【請求項57】
請求項50記載のベクターにおいて、前記免疫グロブリン重鎖をコードする核酸配列は、配列ID番号6の核酸配列を有するものである。
【請求項58】
請求項50記載のベクターにおいて、このベクターは、少なくとも1つのポリアデニル化シグナルを有するものである。
【請求項59】
請求項50記載のベクターを有する細胞。
【請求項60】
請求項59記載のベクターにおいて、前記細胞は、真核細胞である。
【請求項61】
細胞であって、第一核酸配列及び第二核酸配列に作動するように結合したプロモーターを有する組換え発現ベクターを含み、前記第一の配列は組換えcDNAまたは選択マーカー配列をコードするものであり、前記第二の配列は組換えcDNAまたは選択マーカー配列のいずれかをコードするものである、細胞。
【請求項62】
請求項61記載の細胞において、前記第一核酸配列は、組換え軽鎖および重鎖cDNAをコードするものである。
【請求項63】
請求項62記載の細胞において、前記第一核酸配列は、選択マーカーをコードするものである。
【請求項64】
請求項61記載の細胞において、前記第一核酸配列は、内部リボソーム進入部位により第二核酸配列から分離されているものである。
【請求項65】
請求項61記載の細胞において、前記組換え発現ベクターは、pIRES−MAB−TK、またはpIRES−pro−TKである。
【請求項66】
請求項61記載の細胞において、この細胞は、真核細胞である。
【請求項67】
請求項61記載の細胞において、この細胞は、哺乳類細胞である。
【請求項68】
請求項61記載の細胞において、この細胞は、原核細胞である。
【請求項69】
細胞におけるpIRES−pro−TKの存在を決定する方法であって、
a.pIRES−pro−TKを細胞を形質移入する工程と、
b.前記ベクターを特異的に検出できる、プライマーまたはDNAプローブを用いて工程(a)の細胞を分析する工程と
を有する方法。
【請求項70】
細胞におけるpIRES−MAB−TKベクターの存在を決定する方法であって、
a.pIRES−MAB−TKを細胞に形質移入する工程と、
b.前記ベクターを特異的に検出できるプライマーまたはDNAプローブを用いて工程(a)の細胞を分析する工程と
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−539785(P2008−539785A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512407(P2008−512407)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/018749
【国際公開番号】WO2006/124784
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(506031948)モルフォテック、インク. (16)
【Fターム(参考)】