説明

扁平ガラス繊維で補強された高温ポリアミド成形化合物

【課題】高融点ポリアミドをベースにした、撓み温度が高く、機械的性質、および加工特性に優れた新規な補強ポリアミド成形化合物を提供する。
【解決手段】高融点のポリアミドおよび扁平ガラス繊維を含む補強されたポリアミド成形化合物に関し、前記ポリアミドは、少なくとも270℃のDSC融点を有する部分的に芳香族のポリアミドであり、扁平ガラス繊維は、特に、矩形の断面、すなわち、非円形断面積を有し、その主断面軸と副断面軸との寸法比は、2乃至6、特に3乃至6、最も望ましくは3.5乃至5.0である。また、ポリアミド成形化合物の製造方法、および、それによって製造された成形品、すなわち、射出成形パーツにも関する。成形パーツは、優れた曲げ剛性および曲げ強さを有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2007年8月24日に出願された、欧州特許出願EP 07 016 687.1の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は高融点を有する部分的に芳香族のポリアミド、および、扁平ガラス繊維を含む補強されたポリアミド成形化合物に関する。特に、矩形断面、すなわち、非円形の断面積を有し、主断面軸と副断面軸との寸法比率が、2乃至6、特に3乃至6、特に最も好ましくは3.5乃至5.0であるガラス繊維に関する。本発明は、また、ポリアミド成形化合物の製造方法、および、該方法により製造された成形品、特に、射出成形部品に関する。本発明の射出成形部品は、優れた曲げ剛性および曲げ強さを有する。
【背景技術】
【0003】
本発明の高融点のポリアミドは、少なくとも270℃(DSC、ISO 11357)の融点を有するポリアミドであることがわかっている。本発明のポリアミドは、少なくとも50重量%のガラス繊維で補強されたとき、少なくとも260℃のHDT A(1.8MPa)を有する。
【0004】
補強されたポリアミドは、剛性が高い上に衝撃に強く、高い撓み温度も高いので、専門的な建設材料の分野における利用価値が高まっている。用途範囲は、例えば、自動車および輸送手段における内外のパーツ、電気通信機器および装置、電子ゲーム機、家庭機器、機械工学機器、暖房設備の筐体材料、および、据付け工事のための締め付け部品などを含む。自動車などのパーツとしては、例えば、高度に充填されて補強された成形化合物によってのみ金属のような特性が得られることが重要である。薄壁を有するパーツの場合、特に、成形化合物の流動長の長さが要求されるが、このことは、従来の、長いものも短いものも含めたガラス繊維では、全く達成し得ないか、または、満足のいくものは得られない。
【0005】
補強されたポリアミドは、ポリマーマトリックスと補強材料との間の結合が非常に良好であるという際立った長所ももっている。これは、実際に、高度な補強が高張力Eモジュラスを有する製品を導く。しかしながら、特に、熱安定性に優れかつ高い撓み温度が要求される場合は、最高水準の技術の製品の、変形およびプロセス加工性はもちろん、衝撃強さ、曲げ強さおよび剛性においてもすべての必要条件には適合しない。
【0006】
本出願では、以下のように用いられるポリアミドは、アミド結合(NH−CO)により保持される基本構造ブロックを有し、例えば、ジカルボン酸、ジカルボン酸ハロゲン化物、ジニトリル、ジアミン、アミノカルボキシル酸、および/または、ラクタムなどのモノマーの重縮合または重合により合成されうるポリマーのことを指す。これらは、コポリアミド、または、ホモポリアミド、あるいは、その混合物でありうる。ポリアミドの数平均分子量は、ηrelが2.3、特に1.9、とりわけ1.8より小さい溶液粘度対応する、5、000より大きく、好ましくは、8,000より大きいが30,000より小さく、特に、20,000g/mol未満であるものとする(0.5重量%、20℃のm−クレゾール中で測定)。
【0007】
EP 0 196 194 B1は、非円形断面を有するガラスの複数の個別のフィラメントからなるストランドについてその生成も併せて記載している。このガラス繊維の断面は、卵形、楕円形、くびれを有した楕円形(まゆ型繊維と称される)、または、多角形であってよい。
【0008】
EP 0 246 620 B1は、ガラス繊維が矩形、楕円形、または、まゆ型の断面を有するような、ガラス繊維強化熱可塑性材料からなる物体について記載している。まゆ型の断面は、EP 0 246 620 B1では、細長い、または、卵形、または、湾曲形状を有するガラス繊維のことを指すとされており、それぞれの形状は、くびれを有する。これらのガラス繊維のアスペクト比は2である。
【0009】
EP 0 376 616 B1は、熱可塑性材料、および、非円形断面を有する1乃至65%の繊維強化材からなる熱可塑性ポリマー組成について記載している。ここでは、断面積、および、互いに直交する補強繊維の断面軸の比率がより詳細に特徴づけられている。補強繊維の断面は、湾曲または半円の輪郭を有する。組成は、寸法安定性に優れ、変形し難いという特徴を有する。
【0010】
JP 10219026 A2によれば、熱可塑性という条件で製造される成形品を変形し難くすべく、熱可塑性マトリックスは、円形断面を有するガラス繊維と扁平断面を有するガラス繊維との混合物で補強される。この明細書中の一実施例では、ポリマーマトリックスとしてポリアミド66(ナイロン66)が言及されている。
【0011】
JP 2006045390 A2は、扁平断面を有するガラス繊維を60重量%まで含む熱可塑性マトリックスからなる長いガラス繊維で補強された顆粒について記載している。顆粒長および繊維長は、同一である。JP 2006045390 A2による補強組成から生成された成形品の有利な特性は、表面品質に優れ、衝撃に強いことである。
【0012】
JP 8259808 A2は、50乃至80重量%のポリアミド樹脂、好ましくは、2.5乃至4.0の相対粘度、および、20乃至50重量%の扁平繊維に加えて任意で多くとも30重量%の充填剤を有するポリアミド6からなるポリアミド成形化合物について記載している。
【0013】
EP 1 788 026 B1は、ポリアミド66とコポリアミド6T/6Iの配合からなる補強ポリアミド成形化合物について記載している。ガラス繊維および炭素繊維の混合物が補強材料として用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、高融点ポリアミドをベースとした、すなわち、融点が少なくとも270℃である新規な補強ポリアミド成形化合物を提供することである。本発明の補強ポリアミド成形化合物は、円形断面を有するガラス繊維を含む成形化合物に比べ、撓み温度が高く、機械的性質、および、加工特性に関して特に優れている。
この成形化合物から製造された成形品は、曲げ剛性および曲げ強さにおいても優れているはずである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、部分的に芳香族のポリアミドと補強媒体とを含む、ノッチ付き衝撃強さに優れた補強ポリアミド成形化合物によって達成される。この補強ポリアミド成形化合物における改良は以下の通りである。ポリアミドは、成分を含有するポリアミドマトリックスを含み、当該成分は、
(A)少なくとも270℃のDSC融点(ISO 11357)を有し、好ましくは、m−クレゾール(0.5重量%、20℃)中で測定したηrelが2.3未満の溶液粘度を有する、20乃至60重量パーセントの少なくとも1つの高融点ポリアミドであって、(A1)ジカルボン酸、(A2)ジアミン、および、任意で(A3)アミノカルボキシル酸および/またはラクタムを含み、
(A1)ジカルボン酸は、
ジカルボン酸の総量に対し、50乃至100モル%のテレフタル酸と、
8乃至20の炭素原子を有する、酸の総量に対し0乃至50モル%の他の芳香族ジカルボン酸と、
6乃至36の炭素原子を有する0乃至50モル%の脂肪族ジカルボン酸と、
8乃至20の炭素原子を有する0乃至50モル%の脂環式ジカルボン酸とを含み、
(A2)ジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、MACM、PACM、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン、および、MXDAからなる群から選択される、ジアミンの総量に対し50乃至100モル%の少なくとも1つのジアミンと、
6乃至18の炭素原子を有する0乃至50モル%の他の脂肪族ジアミンと、
6乃至20の炭素原子を有する0乃至50モル%の脂環式ジアミンと、
0乃至50モル%のアル脂肪族ジアミン MXDA、PXDAとを含み、
任意の(A3)アミノカルボキシル酸および/またはラクタムは、
6乃至12の炭素原子を有する0乃至100モル%のラクタムと
6乃至12の炭素原子を有する0乃至100モル%のアミノカルボキシル酸とを含み、
組成(A1)および(A2)は、ほぼ等モル量で使用され、(A3)の濃度は、(A1)乃至(A3)の合計の35重量%を超えず、
補強媒体は、
(B)40乃至80重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(C)0乃至20重量%の添加剤および補助剤とを含み、
(B)は、
(B1)細長い形状を有する、20乃至80重量%、任意で40乃至80重量%の扁平ガラス繊維であって、非円形断面積を有し、主断面軸と副断面軸との寸法比が2対6、任意で3対6、または、任意で3.5対5.0であるガラス繊維と、
(B2)0乃至30重量%の粒子状または層状充填剤と、
(B3)0乃至30重量%の炭素繊維、および/または、玄武岩繊維、および/または、アラミド繊維(p−またはm−アラミド繊維)と、
(B4)円形断面を有する0乃至30重量%のガラス繊維と、を含み、
(A)乃至(C)の成分を合計すると100重量%となる。
【0016】
上記目的は、上記特定のポリアミド成形化合物を、280℃乃至350℃のバレル温度に設定された従来の配合装置で製造する方法により達成される。上記方法において、ポリマー成分は、まず融解され、続いて、チョップト扁平ガラス繊維および/または他の充填剤が添加される。
【0017】
上記目的は、成形化合物を成形することにより、成形品、または、成形品のパーツを生成することを含む、成形、任意で射出成形する方法における改良であって、上記成形化合物は、(ISO 179/2−1 eAに従い、23℃でのシャルピー衝撃試験によって測定された)20kJ/m2を超えるノッチ付き衝撃強さを有する。
【0018】
上記目的は、射出成形、押出成形、突起成形、ブロー成形、または、上記成形化合物から形成される、任意で射出成形されたパーツである成形体によって達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、扁平ガラス繊維、特に矩形断面、すなわち非円形断面(断面軸の比率が2以上、特に3以上を有する扁平ガラス繊維は、円形断面を有するガラス繊維(例えば、通常円形断面を有する従来のチョップトガラス繊維)と比べ、機械的性質、加工および表面品質において明らかな利点を有する。これは、ガラス繊維分が50%以上であるときに特に確かである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
以下に矩形ガラス繊維について述べる場合、ガラス繊維の断面は、矩形、または、ほぼ矩形、または、丸みを帯びた矩形であるものとする。矩形の長辺は、互いにほぼ平行に整列配置され、短辺は、端部が屈曲しているかまたは全体に湾曲しており、それによって、短辺は、楕円または円形のような形状となる。まゆ型繊維と比べ、矩形のガラス繊維の断面は、くびれがない。
【0022】
したがって、本発明によれば、PA6T/6I(70:30)成形化合物中のガラス繊維が60重量%であるかまたは同じ処方の扁平ガラス繊維を使用するときのノッチ付き衝撃強さは、円形のガラス繊維を使用するときのほぼ2倍である。これら衝撃強さの高い値は、低分子量(ηrel=1.57)を有するPA6T/6I (70:30)化合物を用いても得られる。低分子量を有するPA6T/6I(70:30)は、融解粘度が低いので、射出成形による加工においてメリットがある。
【0023】
通常、高分子量のポリアミドより低分子量のポリアミドのほうが衝撃強さの値は低い。しかしながら、充填の度合いが高いと、高分子量のポリアミドの粘性が高くなるので熱可塑性樹脂加工が難しくなる。これは、成形充填の難しさ、ポック・マーク、および、表面品質が劣るといったことに現れる。
【0024】
本発明によれば、特に、扁平ガラス繊維の量が多い(50重量%以上)場合、本発明の成形化合物により良好な加工性、変形し難い、表面品質の高さ、および、著しく高い衝撃強さといった特徴を有する製品が成できるとわかっており、特に、円形断面を有するガラス繊維を含む材料と比べ、粘度の低い部分的に芳香族のポリアミド、特に好ましくは、低粘度のPA6T/6IまたはPA6T/66を用いる。
【0025】
円形断面を有するガラス繊維と比べ、断面の主軸と副軸とが異なる値を有するガラス繊維(扁平ガラス繊維)は、高い補強度で著しく高い充填密度が得られるので、その結果、特に、繊維方向おけるモジュラス値および強さが向上する。剛性および強さに関して期待される改良は、これから十分に明らかにするが、短くなる傾向にある扁平なガラス繊維間のすきまにポリマーマトリックスが適切に浸入したときのみ、ポリマーマトリックスは、変形するとき生じる力の十分な伝導を可能にする。ただし、本発明に従い用いられる粘度の低いポリアミドは、形状的に有利な扁平ガラス繊維の潜在能力を十分に利用する。
【0026】
破壊圧力および寸法安定性は、上記方法により向上するので、例えば、圧力計、バルブ、または、水量計のハウジングなど、使用中に圧縮荷重下にある直線建造部分は、繊維の配列方向における剛性および強さが増すことによる恩恵を受ける。本発明の成形化合物から製造される建造物は、組成にもよるが、円形断面を有するガラス繊維を含む成形化合物の水準より10%乃至40%高い曲げ強さを有するので、交互の圧縮荷重下での結果として生じる建造物の変形はほとんどない。これは、部分的に芳香族のポリアミド、特に、テレフタルアミド単位(6T単位)を主に含む部分的に芳香族のポリアミドを主成分とした成形化合物は、円形断面を有する従来のガラス繊維で補強されたときの縦剛性より小さい曲げ剛性を有するので、特に興味深い。曲げ強さが縦の強さに比べてかなり小さいと、成形パーツの設計にまで大きな影響を及ぼす。このような欠点は、扁平ガラス繊維を粘度の低いポリアミドと組み合わせて使用することにより補うことができる。それは、縦の強さおよび曲げ強さの値がそれぞれ増すのと同様に縦剛性および曲げ剛性もそれぞれ増すだけでなく、曲げ剛性と縦剛性との比率、および、曲げ強さと縦の強さとの比率も増すからである。曲げ剛性および曲げ強さは、加工方向に対し直角に決定され、したがって、成形パーツにおけるガラス繊維の方向に対しても直角に決定される。
【0027】
本発明に従い用いられるポリアミド成形化合物のマトリックスは、少なくとも270℃の融点と、少なくとも260℃のHDT A(少なくとも50重量%の補強度で)とを有する少なくとも1つの高融点ポリアミド(成分(A))を主成分とする。
【0028】
高融点ポリアミド(成分(A))は、m−クレゾール(0.5重量%、20℃)中で測定したηrelが2.3より小さい、好ましくは1.9より小さい、特に、1.8より小さい溶液粘度を有する。
【0029】
特に考慮されうる高融点ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸、および、脂肪族ジアミンを主成分としたポリアミドである。芳香族ジカルボン酸の一部は、脂肪族および/または脂環式ジカルボン酸類と置き換えることができ、脂肪族ジアミンのいくらかは、脂環式および/またはアル脂肪族ジアミンと置き換えられうる。ジカルボン酸、および、ジアミンは、ラクタムおよび/またはアミノカルボキシル酸と部分的に置き換えられうる。
【0030】
したがって、高融点ポリアミドは、以下の成分から形成される。
(A1)ジカルボン酸:
酸の総量に対し、50乃至100モル%のテレフタル酸、
8乃至20の炭素原子を有する、0乃至50モル%の他の芳香族ジカルボン酸、および/または、
6乃至36の炭素原子を有する0乃至50モル%の脂肪族ジカルボン酸、および/または、
8乃至20の炭素原子を有する50モル%の脂環式ジカルボン酸。
(A2)ジアミン:1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、MACM、PACM、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン、および、MXDAからなる群から選択される、ジアミンの総量に対し50乃至100モル%の少なくとも1つのジアミン、0乃至50モル%の他の脂肪族ジアミン、および/または、6乃至20の炭素原子を有する0乃至50モル%の他の脂環式ジアミン、および/または、0乃至50モル%のアル脂肪族ジアミン MXDA、PXDA。高融点ポリアミドにおいては、ジカルボン酸のモルパーセンテージは100%に達し、ジアミンのモルパーセントも100%に達する。
任意の(A3)アミノカルボキシル酸および/またはラクタム:
6乃至12の炭素原子を有する0乃至100モル%のラクタム、および/または、
6乃至12の炭素原子を有する0乃至100モル%のアミノカルボキシル酸。
【0031】
成分(A1)および(A2)は、ほぼ等モル量で使用され、(A3)の濃度は、(A1)乃至(A3)の合計の多くとも35重量%、好ましくは多くとも25重量%、特に多くとも20重量%に達する。
【0032】
ほぼ等モル量で用いられる成分A1およびA2に加え、分子量を調整すべく、または、ポリアミドの合成におけるモノマーの損失を補償すべく、ジカルボン酸(A1)またはジアミン(A2)を用いることにより、全体における成分A1またはA2の濃度は支配的になりうる。
【0033】
テレフタル酸(TPA)のいくらかは(ジカルボン酸の総量に対し)、多くても50モル%、好ましくは、多くても48モル%、特に多くても46モル%の、6乃至36の炭素原子を有する他の芳香族、脂肪族、または、脂環式ジカルボン酸類と置き換えられうる。適切な芳香族ジカルボン酸は、ナフタレンジカルボン酸(NDA)、および、イソフタル酸(IPA)を含む。適切な脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラッシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸および、二量体酸を含む。適切な脂環式ジカルボン酸類は、cis−および/またはtrans−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、および/または、cis−および/またはtrans−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸(CHDA)を含む。
【0034】
50乃至100モル%量の成分(A2)として用いられるジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、MACM、PACM、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン、および、MXDAからなる群から選ばれる。中でも、ジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、および、1,12−ドデカンジアミンが好ましく、特に、1,6−ヘキサンジアミンが好ましい。
【0035】
義務的に用いられる上記ジアミンは、4乃至36の原子量を有する他のジアミンと、(ジアミンの総量に対し)置き換え量が50モル%以下、好ましくは、40モル%以下、特に30モル%以下で置き換えうる。直鎖または分岐鎖脂肪族ジアミンの例は、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−へキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン(OMDA)、1,9−ノナンジアミン(NMDA)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(MODA)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、2,4,4,−トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、1,10−ドデカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、お1,16−よび、1,18−オクタデカンジアミンを含む。使用されうる脂環式ジアミンの例は、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン、ノルボナンジメチルアミン、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2−(4,4'−ジアミノジシクロヘキシル)プロパン(PACP)、および、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジシクロヘキシル−メタン(MACM)を含む。アル脂肪族ジアミンは、m−キシリレンジアミン(MXDA)でもよい。
【0036】
本願明細書中に記載されるジカルボン酸およびジアミンに加え、ラクタムおよび/またはアミノカルボキシル酸もポリアミド形成成分(成分(A3))として用いられうる。適切な成分は、例えば、カプロラクタム(CL)、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノノナン酸、ω−アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)、および、アミノドデカン酸(ADA)を含む。成分A1およびA2と共に用いられるアミノカルボキシル酸および/またはラクタムの濃度は、成分A1およびA2の総量に対し、多くとも35重量%、好ましくは、多くとも25重量%、特に好ましくは、多くとも20重量%である。特に好ましいラクタムは、4、6、7、8、11、または、12の炭素原子を有するα、ω−アミノ酸を含む。これらは、ラクタム ピロリジン−2−オン(4炭素原子)、ε−カプロラクタム(6炭素原子)、エナンスラクタム(7炭素原子)、カプリルラクタム(8炭素原子)、ラウリルラクタム(12炭素原子)、および/または、α,ω−アミノ酸、1,4−アミノブタン酸、1,6−アミノヘキサン酸、1,7−アミノヘプタン酸、1,8−アミノオクタン酸、1,11−アミノウンデカン酸、および、1,12−アミノドデカン酸を含む。
【0037】
ジアミンは、ジカルボン酸より揮発性が強い物質なので、いくらかのジアミンは、合成過程で失われる。ジアミンは、水分の蒸発、前凝縮物の放出、および、融解または固相における後凝縮を通じて失われる。したがって、失われたジアミンを補償すべく、ジアミンの総量に対し1乃至8重量%を超えるジアミンがモノマーバッチに好ましくは追加される。ジアミンの超過量により、分子量および末端基の分布も調整される。本願明細書中で使用される例に従う方法により、10乃至150mmol/kgのカルボキシル末端基超過量が発生する。これに伴うジアミン超過量は3%未満である。ジアミン超過量が3%を超えると、アミノ末端超過量は、10乃至150mmol/kgに達する。
【0038】
分子量、相対粘度、および/または、流動性、または、MVRを調整すべく、モノカルボン酸またはモノアミンの状態の調整剤がバッチ、および/または、前凝縮物(後凝縮の前)に追加されうる。調整剤として適切な脂肪族、脂環式、または、芳香族モノカルボン酸またはモノアミンは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2‐エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3−(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2−フェニルエチルアミンなどを含む。調整剤は、個別に、または、組み合わせて使用されうる。アミノ基、または、酸無水物、イソシアネート、酸ハロゲン化物などの酸性基、または、エステルと反応できるものであれば、他の単官能化合物も調整剤として用いられうる。通常使用される調整剤の量は、ポリマー1kgあたり10乃至200ミリモルである。
【0039】
部分的に芳香族のコポリアミド(A)は、既知の方法で合成されうる。適切な方法は、さまざまな場所に記載されており、特許文献に記載された可能な方法のいくつかが以下に示され、その開示内容は、本発明の成分(A)のコポリアミドを合成するプロセスに関する本出願の開示内容に明確に含まれる:DE 195 13 940、EP 0 976 774、EP 0 129 195、EP 0 129 196、EP 0 299 444、US 4、831、106、US 4、607、073、DE 14 95 393およびUS 3、454、536。
【0040】
最も一般的な方法は、成分(A)の合成に最も適する方法でもあり、まず、低粘度、低分子量での前凝縮、次に、(例えば押し出し機内での)固相または融解における後凝縮の二段階合成である。1.前凝縮、2.固相重合、3.融解重合の三段階プロセスもDE 696 30 260に記載されている。
【0041】
融点が300℃を下回る製品については、一段階バッチプロセスが例えばUS 3、843、611およびUS 3、839、296に記載されており、モノマー混合物またはその塩類が250乃至320℃で1乃至16時間加熱され、圧力は、ガス状の材料の蒸発により、任意で不活性ガスの助けを借りて、最大値から多くて1mmHgの最低圧力まで低下する。
【0042】
本発明によれば、以下の部分的に芳香族のコポリアミドは、高融点のポリアミド(A)として特に好ましい。−単一のジアミン成分として、少なくとも50モル%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから合成される部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも52モル%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンにより合成される部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも54モル%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンにより合成される部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも62モル%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンにより合成される部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸および2−メチル1,5−ペンタンジアミンにより合成される部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸、および、ヘキサメチレンジアミンおよび2−メチル−1,5−ペンタンジアミンの混合物により合成される部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルオクタンジアミン、および、デカンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも2つのジアミンの混合物とにより合成されることにより、総ジアミン含有量に対し少なくとも50モル%のヘキサメチルジアミンが使用される、部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンおよびドデカンジアミンの混合物とにより合成されることにより、総ジアミン含有量に対し少なくとも50モル%のヘキサメチルジアミンが使用される、部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンの混合物とにより合成されることにより、総ジアミン含有量に対し少なくとも50モル%のヘキサメチレンジアミンが使用される、部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンおよびm−キシリレンジアミンの混合物とにより合成されることにより、総ジアミン含有量に対し少なくとも50モル%のヘキサメチルジアミンが使用される、部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンおよびビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタンの混合物とにより合成されることにより、総ジアミン含有量に対し少なくとも50モル%のヘキサメチルジアミンが使用される、部分的に結晶質のポリアミド。
−少なくとも50モル%のテレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンおよびビス−(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)−メタンの混合物とにより合成されることにより、総ジアミン含有量に対し少なくとも50モル%のヘキサメチルジアミンが使用される、部分的に結晶質のポリアミド。
−50乃至80モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、20乃至50モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/6I。
−55乃至75モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、25乃至45モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/6I。
−62乃至73モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、25乃至38モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/6I。
−70モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、30モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/6I。
−50乃至80モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、20乃至50モル%のヘキサメチレンアジバミド(66)単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/66。
−50乃至65モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、35乃至50モル%のヘキサメチレンアジバミド(66)単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/66。
−52乃至62モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、38乃至48モル%のヘキサメチレンアジバミド(66)単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/66。
−55モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、45モル%のヘキサメチレンアジバミド(66)単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/66。
−50乃至70モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、5乃至45モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および、5乃至45モル%のヘキサメチレンアジバミド(66)単位を有する部分的に結晶質の三元ポリアミド6T/6I/66。
−少なくとも50モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、0乃至40モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および、式NH−(CH2)n−1−CO(nは6、11、または、12)で示される10モル%乃至50モル%の脂肪族単位を有する部分的に結晶質のPA 6T/6I/X。
−少なくとも50モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、10乃至30モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および、式NH−(CH2)n−1−CO(nは6、11、または、12)で示される10モル%乃至40モル%の脂肪族単位を有する部分的に結晶質のPA 6T/6I/X。
−52モル%乃至73モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、0乃至36モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および、式NH−(CH2)n−1−CO(nは6、11、または、12)で示される12モル%乃至48モル%の脂肪族単位を有する部分的に結晶質の三元PA 6T/6I/X。
−52モル%乃至73モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、10乃至36モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および、式NH−(CH2)n−1−CO(nは6、11、または、12)で示される12乃至38モル%の脂肪族単位を有する部分的に結晶質のPA 6T/6I/X。
−多くとも40モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有するアモルファスポリアミド6T/6Iと、少なくとも60モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位と、少なくとも52モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する部分的に結晶質のポリアミド6T/6Iまたは6T/66の超過量との混合物。
−多くて44の炭素原子と、脂肪族または脂環式ジアミン、特に、ヘキサメチレンジアミンにより二量体化された脂肪酸により合成されうる多くても26モル%の脂肪族単位を含む、部分的に芳香族、および、部分的に結晶質のポリアミド。
【0043】
特に、本発明のポリアミドの特定の代表例は、以下の通りである。
【0044】
PA 6T/6I、PA 6T/66、PA 6T/610、PA 6T/612、PA 6T/12、PA 6T/11、PA 6T/6、PA 6T/10T、PA 6T/10I、PA 6T/106、PA 6T/1010、PA 6T/66/106、PA 6T/MACM10、PA 6T/MACM12、PA 6T/MACM18、PA 6T/MACMI、PA MACMT/6I、PA 6T/PACM6、PA 6T/PACM10、PA 6T/PACM12、PA 6T/PACM18、PA 6T/PACMI、PACMT/6I、PA MPT/MPI、PA MPT/MP6、PA 6T/MPI、PA 6T/9T、PA 6T/12T、PA 6T/6I/66、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12、PA 6T/66/6、PA 6T/66/12、PA 6T/6I/MACMI、PA 6T/66/PACM6。
【0045】
一実施形態では、本発明に用いられる扁平ガラス繊維(成分(B1))は、扁平で非円形の断面積を有する短いガラス繊維である。よって、互いに直交する断面軸の比率は、2以上、特に3以上であり、短い方の断面軸の長さは、3μm以上である。特に、できる限り矩形に近い断面を有するガラス繊維が望ましく、その場合、断面軸の比率は、3より大きく、特に3.5以上であることが望ましい。ガラス繊維は、長さ2mm乃至50mmのチョップトガラス状である。本発明の成形化合物におけるガラス繊維濃度は、20重量%乃至80重量%、好ましくは、40重量%乃至80重量%、特に好ましくは、48重量%乃至75重量%であり、最も好ましくは、48重量%乃至65重量%であり、本発明の特別な実施形態では、常に少なくとも60重量%ガラス繊維が存在している。
【0046】
第2の実施形態では、本発明に従い使用される扁平ガラス繊維は、扁平で非円形断面積を有する長いガラス繊維である。よって、互いに直交する断面軸の比率は、2以上、特に3以上であり、短い方の断面軸の長さは、3μm以上である。特に、できる限り矩形に近い断面を有する長いガラス繊維が望ましく、その場合、断面軸の比率は、3より大きく、特に3.5以上であることが望ましい。本発明に従いロービング(成分B1)として用いられるガラス繊維は、直径(3μm乃至20μmの小さい断面軸、好ましくは3μm乃至10μm)を有する。断面軸の比率が3.5対5.0であるいわゆる扁平ガラス繊維が特に好ましい。特に、本発明によれば、Eガラス繊維が用いられる。好適なEガラス繊維より引張強さが30%高いという理由から、Eガラス繊維に加えてSガラス繊維も特に用いられる。しかしながら、A,C,D,M,Rガラス繊維のような他のすべてのタイプのガラス繊維、または、それらの任意の混合物、あるいは、Eおよび/またはSガラス繊維との混合物も用いられうる。
【0047】
本発明の別の実施形態では、細長い形状でほぼ矩形の断面を有する扁平ガラス繊維のみが用いられ、アスペクト比、すなわち、主/断面軸と副/断面軸との寸法比が2対6、特に3対6、特に最も好ましくは3.5対5.0である。いわゆるまゆ型ガラス繊維(cocoon fiber)、すなわち、細長い、または、卵形の、または、少なくとも1つの収縮部分を有する湾曲形状を有するガラス繊維は、本実施形態中では使用されない。
【0048】
他の別な実施形態では、本発明に従い使用される扁平ガラス繊維は、炭素繊維(グラファイト繊維)と共に使用される。ガラス繊維のいくらかを炭素繊維と置き換えることにより、結果として生じるハイブリッド繊維強化化合物の剛性が混じりけのないガラス繊維よりも向上する。ガラス繊維と炭素繊維との混合物は、ガラス繊維と炭素繊維との重量比が70/30対97/3であり、特に、80/20対95/5である。
【0049】
本発明のポリアミド成形化合物は、長い繊維強化杆状体顆粒を生成する既知の方法により生成されることができ、特に、長繊維ストランド(ロービング)に融解したポリマーを完全に含浸させ、冷却し、チョップする突起成形法によって生成されうる。
【0050】
この方法により得られる長い繊維強化杆状体顆粒は、好ましくは、3mm乃至25mm、特に4mm乃至12mmの粒長を有し、従来の加工法(例えば射出成形、加圧成形)によりさらに成形パーツへと加工される。それによって、成形パーツの性質は、特に穏やかな加工法で向上する。この文脈において、穏やかとは、繊維がひどく破損し、それに伴い繊維が短くなることは概ね避けられることを特に意味する。これは、本願明細書中の射出成形では、大径部を有し、圧縮率は特に2を下回るほど低く、十分な大きさのノズルチャネル、および、スプルーチャネルを有するウォーム歯車を用いることが好ましいことを意味する。さらに、杆状体顆粒が高バレル温度(接触加熱)によって急速に融解し、剪断応力が過剰になることによって繊維が短くなりすぎないようにするのを確実にするための段階が踏まれるべきである。これらの対策を考慮に入れて、短い繊維強化成形化合物から生成される成形パーツと比較すると平均して長い繊維長を有する成形パーツが得られる。このようにして、特性の付加的な向上が得られ、特に、弾性係数、引張強さ、および、ノッチ付き衝撃強さにおける向上が見られる。
【0051】
突起成形法に用いられる長炭素繊維は、5μm乃至10μm、好ましくは、6μm乃至8μmの直径を有する。
【0052】
繊維含浸を加速すべく、繊維は、適切なIR予備加熱、接触予備加熱、輻射能予備加熱、または、高温ガス予備加熱によって400℃まで予め加熱されうる。デバイスの含浸チャンバ内の表面が膨張することにより、融解したポリマーが繊維に完全に含浸される。含浸ユニットから出たストランドは、制御されたローラシステムによって成形されることにより、円形、楕円形、または、矩形の断面を有する顆粒が得られる。
【0053】
マトリックスの結合および繊維の取り扱いを向上させるべく、繊維は、当業者にはよく知られた、最高水準技術のガラス繊維および炭素繊維などの化学的に異なる層によりコーティングされる。
【0054】
本発明によれば、意外にも、長い繊維強化、および、高分子量のポリアミドによってのみ得られるノッチ付き衝撃強さの高い値がチョップトガラスを用いる場合でも得られる。本発明によれば、ノッチ付き衝撃強さの高い値は、特に補強値が高い場合に得られる。20kJ/m2より大きいノッチ付き衝撃強さの値は、50重量%乃至60重量%のガラス繊維分により得られる。23kJ/m2より大きいノッチ付き衝撃強さの値は、60重量%を超えるガラス繊維分により得られる。
【0055】
また、本発明によれば、特に、成形化合物から生成される薄い壁部に囲まれたパーツ(射出成形)によって流動長が向上し、補強度65重量%以上での流動長は、120mmを超える。しかしながら、内部および/または外部の潤滑剤を追加使用することにより、流動長は、例11に示すように簡単に向上させることができる。
【0056】
任意で、他の充填剤および補強材(成分B2乃至B4)を0乃至30重量%成形化合物に加えてもよい。好ましい追加の補強材としての例は、炭素繊維(グラファイト繊維)、ホウ素繊維、アラミド繊維(p−またはm−アラミド繊維(例えばKevlar(登録商標)またはNomex(登録商標)、DuPont)または、その混合物)を含む。また、円形断面を有する玄武岩繊維およびガラス繊維、またはその混合物にも言及でき、その場合、これらの補強繊維は、短い繊維として用いられてもよいし、あるいは、異なる繊維が混ざり合った長い繊維であってもよい。
【0057】
本発明に従う独創的な熱可塑性成形化合物は、好ましくは、成分(B2)として、特定の充填剤、または、2つ以上の異なる充填剤の混合物を補強材と組み合わせたものを含みうる。例えば、タルク、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、アモルファスケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、石灰、長石、硫酸バリウム、固体または中空ガラスビーズ、あるいは、特に扁平すりガラス繊維、永久磁気および/または磁化可能な金属化合物、および/または、合金ベースの鉱物粒状充填剤が用いられうる。充填剤は、表面処理されていてよい。
【0058】
本発明の成形化合物は、他の添加剤(C)(例えば、ハロゲン化銅などの無機安定剤、有機安定剤、潤滑剤、染料、核化剤、金属顔料、金属薄片、金属皮膜粒子、ハロゲン系難燃剤、ハロゲンフリー難燃剤、強化材、例えば、ポリフェニレンオキシドまたはポリフェニレンサルファイドなどの他のポリマー、静電防止剤、導電性添加剤、離型補助剤、蛍光増白剤、天然フィロシリケート、合成フィロシリケート、または、上記添加剤の混合物を含みうる。
【0059】
特定の添加剤は成形化合物の流動性にマイナスの影響を及ぼし、したがってそれらの処理は成形パーツにも及ぶので、補強度に関する成形化合物の組成はまたたく間に限界に達してしまう。しかしながら、扁平ガラス繊維、特に、ほぼ矩形の断面を有するガラス繊維を用いれば、例えば、難燃性の成形化合物の流動性は、高い補強度でも十分調整されうる。例えば、ホスフィン酸塩および/またはジホスフィン酸塩、特に、ホスフィン酸アルミニウムおよびカルシウム、および、任意でメラミンポリリン酸塩(UL−94 V0の火炎分類、検体の厚さ0.8mm)を用いる難燃剤仕上げのPA 6T/6I成形化合物は、50重量%乃至60重量%の補強度であってもうまく加工されることができ、良好な表面を有する。難燃剤の濃度は、補強されたポリアミド成形化合物に対し、10重量%乃至18重量%、特に11重量%乃至15重量%の範囲が好ましい。特に、難燃剤は8.0乃至17.8重量%のホスホン酸アルミニウム、亜鉛、および/または、カルシウム、および/または、ジホスホン酸と、0.2乃至10.0重量%のメラミンポリリン酸塩との混合物からなる。
【0060】
例えば、本発明の成形化合物における静電防止剤として、カーボンブラックおよび/またはカーボンナノチューブが用いられうる。
【0061】
しかしながら、現在ある炭素繊維にカーボンブラックを追加して使用すると、成形化合物の黒色をさらに黒くすることになりうる。
【0062】
本発明の成形化合物に用いられるフィロシリケートは、例えば、カオリン、セルペンチン、タルク、マイカ、バーミキュライト、イライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、複水酸化物、または、それらの混合物を含みうる。フィロシリケートは、表面処理されるかまたは処理されなくてもよい。
【0063】
本発明の成形化合物に用いられる安定剤および/または老化防止剤は、例えば、抗酸化剤、光保護剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、または、紫外線遮断剤を含みうる。
【0064】
すでに説明されているように、扁平ガラス繊維(B1)は、また、本発明に従うチョップトガラス(短いガラス繊維)、または、ロービング(長繊維または長いガラス繊維)として用いられる。これらのガラス繊維は、3μm乃至20μmの小さい断面軸の直径と、6μm乃至40μmの大きい断面軸の直径とを有し、互いに直交する断面軸の比率は、2対6、特に3対6、特に好ましくは3.5対5.0の範囲である。本発明によれば、特に、E−および/またはS−ガラス繊維が用いられる。しかしながら、他のタイプのガラス繊維すべて、例えば、A−、C−、D−、M−、および、R−ガラス繊維、または、それらの任意の混合物、あるいは、E−および/またはS−ガラス繊維との混合物も用いられうる。ポリアミドには、例えば、アミノシランのサイジングなど、従来のサイジングが習慣的に用いられているが、高温で安定するサイジングが好ましい。
【0065】
本発明のポリアミド成形化合物は、例えば単軸または双軸スクリュー押し出し機または捏和機のような従来の配合機で生成されうる。一般に、まずポリマー成分が融解され、補強材(例えばガラス繊維および/または炭素繊維)が、例えばサイドフィーダにより押し出し機内の同じ位置または異なる位置に導入される。配合は、好ましくは280℃乃至360℃に設定されたバレル温度で実行される。本発明の成形化合物は穏やかに加工されるので、繊維長分布が大きいファイバ長に明らかにシフトしている補強された成形パーツが得られる。したがって、本発明の成形パーツは、円形断面を有するガラス繊維ベースの成形パーツに比べ、20乃至200%も高い平均ファイバ長を有する。
【0066】
本発明の成形化合物から生成される成形品は、内外パーツの生成用に用いられ、好ましくは、電子、家具、スポーツ、機械構造、衛生配管、医薬、エネルギー、および、駆動技術の分野、自動車または他の輸送手段における耐力または機械機能と共に用いられるか、または、電気通信、電子ゲーム機、家電、機械工学、暖房装置および機器のためのハウジング材料、または、据付け工事のための締め付け部品、または、すべてのタイプの容器または換気パーツと共に用いられうる。
【0067】
本発明の成形化合物から生成される成形品に可能な用途としては、良好な衝撃強さと共に非常に優れた剛性が期待される金属圧縮鋳造に代わる分野が特にあげられる。
【0068】
[用途]
【0069】
電子デバイス分野−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、携帯電動工具用の充填要素および/または調整要素。
−均質設計での、すなわち、1つの材料から出来ているかまたは複合パーツ(すなわち複数の材料の組み合わせでできている空気ドリルのためのタイロッドおよび/またはピストン、
−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしてのアングルグラインダ、ボール盤、平削り盤、または、研削盤用ケース、またはギアケース。それによって、一定の機能領域(例えば伝動表面、摺動面、可視装飾量維持、処理領域)は、(例えば、対象となる層割れおよび/または変形、意図される破壊点、力、および/または、トルク限界のための)他の互換性または非互換性材料から形成されうる。
−ツール容器、例えば、チャックおよび/または固定手段。
−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、ミシンの筐体およびスライドテーブル。
−電気通信(例えば携帯電話)、オフィス電子機器(ラップトップのケースおよびプロジェクタの筐体)および電子ゲーム機のハウジングまたはハウジングパーツ。
【0070】
衛生配管分野−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしてのうがい/歯磨きの洗面台、キャンプのトイレ、シャワー室、衛生センターのためのハウジングおよび/または機能要素(例えばポンプ、ギヤ、バルブ用)。
−さまざまなコネクタ、または、接続モジュール。
−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしてのポンプハウジング、バルブハウジング、または、水量計ハウジング。
【0071】
家庭機器分野
【0072】
内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、以下のための機械、電気、または、電気機械閉鎖システム、施錠システム、または、センサ。−冷蔵庫、フリーザ、冷凍庫。
−オーブン、ガスレンジ、蒸し器。
−食器洗い機。
【0073】
自動車分野
【0074】
内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしての、以下のためのハウジングおよび/またはマウント。
−オペレーティング要素/スイッチ(例えば、外部ミラー調整、シート位置調整、照明、移動方向インジケータ用)。
−内部センサ(例えば、座席使用状況通知用)。
−外部センサ(例えば、駐車援助、超音波および/またはレーダによる距離計用)。
−エンジン室内のセンサ(例えば、振動センサおよび/またはノックセンサ)。
−内外照明。
−内外領域のモータおよび/またはドライブ要素(例えば、座席安楽機能、外側の後部ミラー調整、メインヘッドライト調整および/または再調整、インジケータ点灯用)。
−車両駆動用調整および/または制御システム(例えば、媒体誘導、および/または、燃料、空気、冷却剤、潤滑剤の調整)。
【0075】
内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、以下のための機械的機能要素、および/または、センサハウジング
−例えば、自動回転ドア、スライディングドア、エンジン室バルブ、および/または、フード、トランクの蓋、車の窓などを有する閉鎖システム、施錠システム、牽引システム。−流体管路のコネクタ、自動車の電気および電子システムの分野におけるコネクタ。
【0076】
機械工学分野−標準寸法、または、用途特定設計または複合パーツとしてのISO規格パーツおよび/または機械要素(例えば、ネジ、ナット、ボルト、楔、軸、歯車)。
−標準寸法、または、用途特定設計または均質な実施形態におけるISO規格パーツおよび/または機械要素(例えば、ネジ、ナット、ボルト、楔、軸)。それによって、一定の機能領域(例えば伝動表面、摺動面、可視装飾量維持、処理領域)は、(例えば、対象となる層割れおよび/または変形、意図される破壊点、力、および/または、トルク限界のための)他の互換性または非互換性材料から形成されうる。
−金属加工および/または木工用の直立穿孔機、卓上穿孔機、フライス盤、または、それらの組み合わせ。
−例えば、ねじ込みブッシングなどの挿入パーツ。
−自己切削型ネジ。
【0077】
エネルギーおよび駆動技術分野−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしての、太陽電池用フレーム、ハウジング、支持パーツ(基板)、および/または、固定要素。
−調整および/または再調整要素(例えば、ベアリング、ヒンジ、ジョイント、けん引棒、バンパー用)。
−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしての、ポンプハウジングおよび/またはバルブハウジング。
【0078】
医療機器分野
−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)の有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしての、重要な機能を支持するためのデバイスおよび/または機器用フレーム、ハウジング、キャリアパーツ。
−均質設計での、または、複合パーツとしての、はさみ、鉗子、ピンセット、ナイフの柄などの使い捨て器具。
−均質設計での、または、複合パーツとしての、短期または緊急の骨折用構造。
−内蔵電気機能(成形相互接続部品、MID)および/またはセンサの有無に関わらず、均質設計での、または、複合パーツとしての、負荷監視用歩行器。
【0079】
以下の例および数は、本発明を例示するために提示されるのであって、本発明を限定しない。
【0080】
[実施例]
【0081】
実施例において以下にリストアップした材料が用いられた。
【0082】
PA タイプA:ほぼ11、000g/molg/mol (ηrel = 1.57)のMnを有するポリアミド6T/6I(70:30)、EMS−CHEMIE AG、スイス。
【0083】
PA タイプA−VK:ほぼ1,000 g/mol (ηrel = 1.12)のMnを有するポリアミド6T/6I(70:30)、EMS−CHEMIE AG,スイス。
【0084】
PAタイプB:ηrel=1.67のポリアミド6T/66(60:40)、EMS−CHEMIE AG,スイス。
【0085】
ガラス繊維タイプA:長さ3mm、幅28μm、厚さ7μm、断面軸のアスペクト比=4、アミノシランサイジングのNITTOBO CSG3PA−820、日東紡、日本(本発明における扁平ガラス繊維)。
【0086】
ガラス繊維タイプB:長さ3mm、幅20μm、厚さ10μm、断面軸のアスペクト比=2、アミノシランサイジングのNITTOBO CSG3PA−870、日東紡、日本(本発明におけるまゆ型扁平ガラス繊維)。
【0087】
ガラス繊維タイプC:長さ4.5mm、直径10μmのCS 7928、BAYER AG、ドイツ(円形断面を有する最高技術水準のガラス繊維)。
【0088】
Melapur(登録商標)200/70:メラミンポリリン酸塩(Ciba Spez.社)、難燃剤、CAS No.: 218768−84−4。
【0089】
Exolit(登録商標)GP1230:有機リン塩(Clariant Produkte社)、難燃剤。
【0090】
表1乃至3における組成の成形化合物は、Werner & Pfleiderer社モデルZSK 30の双軸スクリュー押し出し機で生成された。顆粒PA6T/6I、 PA6T/66、および、添加剤が吸入ゾーンに投与された。ガラス繊維は、ノズルの上流にあるサイドフィーダの3つのハウジングユニットを介し融解されたポリマーに添加された。
【0091】
ハウジング温度は、350℃まで上昇するよう調整された。10kgのスループットは、150rpm乃至200rpmで達成された。水中造粒および/または水中ホットキャストオフ(hot cast−off)により造粒される。その場合、融解されたポリマーが穿孔ノズルを介して押し進められ、ノズルを出た直後に動翼により切削されることにより、水流中で粒状化される。造粒および110℃24時間の乾燥後、顆粒の特性が測定され、検体が生成される。
【0092】
検体は、Arburgの射出成形システムにおいて製造された。その際、バレル温度は300℃乃至350℃に設定され、円周送り速度は、15m/分に設定された。選択された金型温度は、100乃至140℃に設定された。
【0093】
以下の基準に従い、以下の検査対象を用いて測定が実行された。
【0094】
弾性係数: 牽引速度1mm/分のISO527 ISO張力ロッド規格:ISO/CD3167、タイプA1、170×20/10×4mm、温度23℃。
【0095】
引張強さおよび張力伸長: 牽引速度5mm/分のISO527 ISO張力ロッド、規格:ISO/CD3167、タイプA1、170×20/10×4mm、温度23℃。
【0096】
シャルピー衝撃強さ: ISO179/*eU ISOテストロッド規格:ISO/CD3167、タイプB1、80×10×4mm、温度23℃*1=装備なし、2=装備あり。
【0097】
シャルピーノッチ付き衝撃強さ: ISO179/*eA ISOテストロッド規格:ISO/CD3167、タイプB1、80×10×4mm、温度23℃*1=装備なし、2=装備あり。
【0098】
ガラス転移温度(Tg)、融解エンタルピー(ΔH) ISO規格11357−1/−2 顆粒
【0099】
示差走査熱量測定(DSC)は、20℃/minの加熱速度で実行された。
【0100】
相対粘度: 0.5重量%のm−クレゾール中、温度20℃で測定。DIN EN ISO 307。
【0101】
MVR:(メルトボリュームレート) 温度330℃または340℃、負荷21.6kgにおいてISO1133に準じて測定。
【0102】
流動長: 流動長は、Arburg射出成形機(タイプ:ARBURG−ALLROUNDER 320−210−750)を用いて決定された。面積1.5mm×10mmの渦巻きが330乃至340℃の融解温度、および、120乃至130℃の金型温度で調製された。
【0103】
収縮: 収縮は、寸法60×60×2mmのプレート(収縮プレート)で、ISO294−4に従う射出成形により決定された。収縮プレートは、Ferromatik Milacron K85D−S/2F射出成形機において、320乃至340℃のバレル温度、保持圧力600Bar、および、金型温度160℃で生成された。
【0104】
破壊圧力: 一端で密封された円筒状射出成形本体(内径27.2mm、壁圧4mm)は、水が充填され、水力継手によって破壊圧力検査装置に取り付けられ、圧力増加率10bar/sで破壊圧力試験(失敗するまで短期内部圧力荷重)にかけられる。最大到達圧力を表に示す。
【0105】
表には示していないが、検査対象は、乾燥した状態で用いられた。そのためには、検査対象は、射出成形後、室温で少なくとも48時間乾燥した環境に保管された。
【0106】
表1:例1乃至5および比較例1(VB1)
【表1】

1)Biax検査対象に実施された引張試験
n.b.=未決定
【0107】
PA6T/6Iに基づく本発明の成形化合物(B2)は、円形ガラス繊維(VB1)を用いた成形化合物よりも、曲げ剛性は39%高く、曲げ強さは、50%高い。PA6T/66に基づく本発明の成形化合物(VB2)は、円形ガラス繊維(B7)を用いた成形化合物よりも、曲げ剛性は34%高く、曲げ強さは、51%高い。実験5乃至10によれば、PA6T/6I(B2)およびPA6T/66(B7)に基づく本発明の成形化合物は、まゆ型ガラス繊維により生成された成形化合物の曲げ剛性および曲げ強さを25%乃至35%上回る。アスペクト比4.0を有する60重量%の扁平ガラス繊維で補強された成形化合物の撓み温度(HDT C)(例2)は、従来の成形化合物(VB1)より30℃高い。したがって、円形ガラス繊維で補強された成形化合物のパフォーマンスは、本発明の成形化合物のレベルには達しない。
【0108】
表2:例6乃至10および比較例2(VB2)
【表2】

1)Biax検査対象に実施された引張試験
n.b.=未決定
【0109】
特別な検体(BIAX、2006年12月、EMS−CHEMIE AG社、Noss'Ovra Personal Journal no.12、vol.29にて公開)が引張試験に用いられた。これらの検体は、方向と関連した剛性および強さの測定を可能にする。
【0110】
(配向された)扁平ガラス繊維と本発明の低粘度ポリアミド成形化合物とを組み合わせることにより、60重量%補強した成形化合物よりも、曲げ剛性で30%を上回る、曲げ強さで50%を上回る向上が見られた。
【0111】
検体を焼却した後、ガラス繊維の長さ分布、および、平均繊維長が決定された。本発明の成形体は、繊維が明らかにより長いガラス繊維を含んでいた。
【0112】
射出成形による検体の生成において、本発明の成形化合物の他の利点も注目された。すなわち、従来の円形ガラス繊維により補強された成形化合物に比べ、充填圧力が明らかに低下している。低粘度ポリアミドと扁平ガラス繊維との組み合わせは、ほぼ20乃至30%の低充填圧力での射出成形パーツの生成を実現する。
【0113】
表3:例11および比較例3(VB3)
【表3】

1)Biax検査対象に実施された引張試験
【0114】
例11の比較、および、比較例VB3に示されるように、(配向された)扁平ガラス繊維で補強された難燃性成形化合物は、円形ガラス繊維で補強された、あるいは同じ組成を有する成形化合物より非常に良好に加工されうる。本発明の例11の場合、結果として生じた流動長は、ほぼ46%大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に芳香族のポリアミドと補強媒体とを含む、ノッチ付き衝撃強さに優れた補強ポリアミド成形化合物における改良であって、
前記ポリアミドは、成分を含有するポリアミドマトリックスを含み、前記成分は、
(A)少なくとも270℃のDSC融点(ISO 11357)を有し、好ましくは、m−クレゾール(0.5重量%、20℃)中で測定したηrelが2.3未満の溶液粘度を有する、20乃至60重量パーセントの少なくとも1つの高融点ポリアミドであって、(A1)ジカルボン酸、(A2)ジアミン、および、任意で(A3)アミノカルボキシル酸および/またはラクタムを含み、
前記(A1)ジカルボン酸は、
ジカルボン酸の総量に対し、50乃至100モル%のテレフタル酸と、
8乃至20の炭素原子を有する、酸の総量に対し0乃至50モル%の他の芳香族ジカルボン酸と、
6乃至36の炭素原子を有する0乃至50モル%の脂肪族ジカルボン酸と、
8乃至20の炭素原子を有する0乃至50モル%の脂環式ジカルボン酸とを含み、
前記(A2)ジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、MACM、PACM、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン、および、MXDAからなる群から選択される、ジアミンの総量に対し50乃至100モル%の少なくとも1つのジアミンと、
6乃至18の炭素原子を有する0乃至50モル%の他の脂肪族ジアミンと、
6乃至20の炭素原子を有する0乃至50モル%の脂環式ジアミンと、
0乃至50モル%のアル脂肪族ジアミン MXDA、PXDAとを含み、
前記任意の(A3)アミノカルボキシル酸および/またはラクタムは、
6乃至12の炭素原子を有する0乃至100モル%のラクタムと
6乃至12の炭素原子を有する0乃至100モル%のアミノカルボキシル酸とを含み、
前記組成(A1)および(A2)は、ほぼ等モル量で使用され、前記(A3)の濃度は、(A1)乃至(A3)の合計の35重量%を超えず、
前記補強媒体は、
(B)40乃至80重量%の少なくとも1つの充填剤と、
(C)0乃至20重量%の添加剤および補助剤とを含み、
前記(B)は、
(B1)細長い形状を有する、20乃至80重量%、任意で40乃至80重量%の扁平ガラス繊維であって、非円形断面積を有し、主断面軸と副断面軸との寸法比が2乃至6、任意で3乃至6、または、任意で3.5乃至5.0であるガラス繊維と、
(B2)0乃至30重量%の粒子状または層状充填剤と、
(B3)0乃至30重量%の炭素繊維、および/または、玄武岩繊維、および/または、アラミド繊維(p−またはm−アラミド繊維)と、
(B4)円形断面を有する0乃至30重量%のガラス繊維と、を含み、
前記(A)乃至(C)の成分を合計すると100重量%となる、ポリアミド成形化合物。
【請求項2】
少なくとも1つの収縮部分を有する細長い、または、卵形、または、湾曲形状のガラス繊維は存在しない、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項3】
前記扁平ガラス繊維としては、矩形またはほぼ矩形の断面を有するガラス繊維が用いられる、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項4】
少なくとも260度の高い撓み温度HDTA(1.8MPa)を有する、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項5】
前記扁平ガラス繊維は、長さ2乃至50mmの短いガラス(チョップトガラス)状である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項6】
前記扁平ガラス繊維は、長いガラス(ロービング)状である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項7】
前記成形化合物中の前記扁平ガラス繊維の濃度は、前記成形化合物の総重量の48乃至75重量%である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項8】
前記扁平ガラス繊維は、前記主断面軸の直径が6乃至40μmであり、副断面軸の直径が3乃至20μmであり、互いに直交する前記断面軸の比率は、3乃至6、任意で3.5乃至5.0の範囲である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項9】
前記扁平ガラス繊維は、E−ガラス繊維、A−ガラス繊維、C−ガラス繊維、D−ガラス繊維、M−ガラス繊維、S−ガラス繊維、または、R−ガラス繊維、あるいは、それらの混合物、任意でE−ガラス繊維およびS−ガラス繊維のみからなる群から選ばれ、それによって、繊維は、アミノまたはエポキシシランコーティングを任意で備える、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項10】
前記高融点の部分的に芳香族のポリアミド(A)は、m−クレゾール(0.5重量%、20℃)中で測定したηrelが2.3未満、任意で1.9より未満、好ましくは、1.8未満の溶液粘度を有する、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項11】
前記ガラス繊維は、炭素繊維と混合され、ガラス繊維/炭素繊維の混合重量比は、70/30乃至97/3である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの高融点の部分的に芳香族のポリアミドは、PA
6T/6I、 PA 6T/66、 PA 6T/610、 PA 6T/612、 PA 6T/12、 PA 6T/11、 PA 6T/6、 PA 6T/10T、 PA 6T/10I、 PA 6T/106、 PA 6T/1010、 PA 6T/66/106、 PA 6T/MACM10、 PA 6T/MACM12、 PA 6T/MACM18、 PA 6T/MACMI、 PA MACMT/6I、 PA 6T/PACM6、 PA 6T/PACM10、 PA 6T/PACM12、 PA 6T/PACM18、 PA 6T/PACMI、 PACMT/6I、 PA MPT/MPI、 PA MPT/MP6、 PA 6T/MPI、 PA 6T/9T、 PA 6T/12T、 PA 6T/6I/66、 PA 6T/6I/6、 PA 6T/6I/12、 PA 6T/66/6、 PA 6T/66/12、 PA 6T/6I/MACMI、 PA 6T/66/PACM6、および、その混合物、配合物、または、その合金から選択される、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項13】
前記部分的に芳香族のポリアミドは、少なくとも50モル%のテレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから合成された部分的に結晶質のポリアミドである、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項14】
前記部分的に芳香族のポリアミドは、50乃至80モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、20乃至50モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を含有する、部分的に結晶質のポリアミド6T/6Iである、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項15】
前記部分的に芳香族のポリアミドは、50乃至80モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、および、20モル%乃至50モル%のヘキサメチレンアジバミド(66)単位を含有する、部分的に結晶質のポリアミド6T/66である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項16】
前記部分的に芳香族のポリアミドは、50モル%乃至70モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、5モル%乃至45モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位、および、5モル%乃至45モル%のヘキサメチレンアジバミド(66)単位を含有する、部分的に結晶質の三元ポリアミド6T/6I/66である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項17】
前記部分的に芳香族のポリアミドは、少なくとも50モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド、0乃至40モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド、および、式NH−(CH2)n−1−CO(nは6、11、または、12)で示される10モル%乃至50モル%の脂肪族単位を含む部分的に結晶質のPA 6T/6I/Xである、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項18】
前記部分的に芳香族のポリアミドは、少なくとも52モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を含む、部分的に結晶質のポリアミド6T/6Iまたはポリアミド6T/66である、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項19】
前記部分的に芳香族のポリアミドは、多くとも44の炭素原子を有する二量体化脂肪酸とヘキサメチレンジアミンとの縮合により合成されうる多くとも26モル%の脂肪族単位を含む、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項20】
前記成形化合物は、60重量%以上のガラス繊維分において、(ISO 179/2−1 eAに従い、23℃でのシャルピー衝撃試験によって測定された)少なくとも23kJ/m2のノッチ付き衝撃強さ、または、50乃至60重量%のガラス繊維分において、(ISO 179/2−1 eAに従い、23℃でのシャルピー衝撃試験によって測定された)20kJ/m2を超えるノッチ付き衝撃強さを有する、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項21】
40重量%乃至65重量%の成分(B)による補強度で120mmを超える流動長を有する、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項22】
前記成形化合物中のさらなる従来の添加剤および補助剤(C)として、無機安定剤、有機安定剤、潤滑剤、染料、金属顔料、金属薄片、金属皮膜粒子、ハロゲン系難燃剤、ハロゲンフリー難燃剤、強化剤、ポリフェニレンオキシドまたはポリフェニレンサルファイドでありうる付加重合体、静電防止剤、カーボンブラックおよび/またはカーボンナノチューブでありうる導電性添加剤、離型補助剤、蛍光増白剤、天然フィロシリケート、合成フィロシリケート、または、前記添加剤の混合物からなる群から選ばれた少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項23】
難燃剤、5重量%乃至20重量%、任意で8重量%乃至17.8重量%のホスフィン酸塩化合物、および、1,3,5−トリアジン化合物の0.2重量%乃至10重量%のポリリン酸塩を含む、請求項22に記載のポリアミド成形化合物。
【請求項24】
バレル温度280℃乃至350℃に設定された従来の配合装置において、前記ポリマー成分は、まず融解され、続いて前記チョップト扁平ガラス繊維および/または他の充填剤が添加される、請求項1に記載のポリアミド成形化合物を製造する方法。
【請求項25】
成形化合物を成形することにより、成形品、または、成形品のパーツを生成することを含む、成形、任意で射出成形する方法における改良であって、前記成形化合物は、請求項1に従う組成物であり、(ISO 179/2−1 eAに従い、23℃でのシャルピー衝撃試験によって測定された)20kJ/m2を超えるノッチ付き衝撃強さを有する、方法。
【請求項26】
前記成形は、射出成形、押出成形、突起成形、または、ブロー成形により実行される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1の成形化合物から形成される、任意で射出成形されたパーツである成形体。
【請求項28】
携帯電話のケーシング、または、携帯電話の筐体部の形状を有する請求項27に記載の成形体。

【公開番号】特開2009−79212(P2009−79212A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−211180(P2008−211180)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(505065515)エムス−パテント アーゲー (3)
【Fターム(参考)】