説明

扉用差圧調整機構

【課題】扉の内外の差圧の大きさに影響されず、小さい力で差圧を調整することができる扉用差圧調整機構を提供することを課題とする。
【解決手段】扉の内外で発生する差圧を調整するための扉用差圧調整機構1であって、扉本体3の一部に形成された開口部10と、この開口部10に隣接して扉本体3に形成された引込部20と、開口部10を塞ぐとともに引込部20にスライド可能なスライド板30と、を備えたことを特徴とし、さらに、スライド板30または扉本体3に、スライド板30を開口部10の位置に係止するロック機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉の内外で発生する差圧を調整するための扉用差圧調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンションや住宅の高気密化によって、室内で換気扇等を使用した場合に、室内外で差圧が発生することが多くなっている。このように扉の内外で差圧が発生している場合、外開き扉または内開き扉では、風圧力が作用している方向に扉を開閉するため、扉が開きにくい等の開閉障害が発生することがある。このような場合、引戸(スライド式ドア)であれば、開閉障害が発生する可能性は低い。しかし、引戸は、引込スペースを設けなければならないので、設置スペースの関係で設置できない場合も多い。
【0003】
そこで、外開き扉または内開き扉の開き扉において、扉本体に開口部を設けるとともに、この開口部を開閉するための窓本体を、その上部を回動自在に軸支して取り付け、その窓本体を上方へ回動させることで、開口部を開放して圧力を逃がすように構成したものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−131642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の構成では、窓本体にかかる風圧力に対抗して窓本体を回動させなければならないので、差圧が大きく、扉にかかる風圧力が大きい場合には、窓本体の回動に大きい力を要するといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、扉の内外の差圧の大きさに影響されず、小さい力で差圧を調整することができる扉用差圧調整機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、扉の内外で発生する差圧を調整するための扉用差圧調整機構であって、扉本体の一部に形成された開口部と、この開口部に隣接して前記扉本体に形成された引込部と、前記開口部を塞ぐとともに前記引込部にスライド可能なスライド板と、を備えたことを特徴とする扉用差圧調整機構である。
【0008】
このような構成の扉用差圧調整機構によれば、スライド板を引込部にスライドさせることで開口部が開くので、扉の内外の差圧が大きい場合でも、風圧力の影響を受けない。したがって、小さい力で開口部を開くことができ、容易に差圧を調整することができる
【0009】
また、本発明は、前記スライド板または前記扉本体に、前記スライド板を前記開口部の位置に係止するロック機構を設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成の扉用差圧調整機構によれば、スライド板を確実に固定でき、開口部が勝手に開くのを防止でき、防犯性等の、扉としての機能を確保できる。
【0011】
さらに、本発明は、前記ロック機構は、前記スライド板にそのスライド方向と交差する方向に沿って前記扉本体側に出没可能に設けられたロックピンと、前記扉本体に形成され前記ロックピンが挿入される係止孔と、を備えて構成されることを特徴とする。
【0012】
このような構成の扉用差圧調整機構によれば、ロックピンを係止孔に出没させるといった簡単な構造および動作でスライド板を確実に固定できる。
【0013】
また、本発明は、前記係止孔が、前記扉本体の開口部側側面から外周側面まで貫通して形成されるとともに、前記ロックピンが、前記扉本体の前記係止孔を貫通して、前記扉本体の周囲の枠体に形成された枠体係止孔に挿入されるように構成されたことを特徴とする。
【0014】
このような構成の扉用差圧調整機構によれば、ロックピンで、スライド板を扉本体に係止できるだけでなく、扉本体を枠体に係止することができる。
【0015】
さらに、本発明は、前記スライド板が、前記扉本体の手先側から吊元側に向かってスライド可能に構成されており、前記引込部が、前記扉本体の吊元側が高くなるように傾斜して形成されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成の扉用差圧調整機構によれば、スライド板を引込部にスライドさせた後、手を離すと自動的に開口部位置に戻るので、スライド板を元の位置に戻す手間が省けるとともに、開口部が開いた状態のまま放置されるのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、扉の内外の差圧の大きさに影響されず、小さい力で差圧を調整することができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態に係る扉用差圧調整機構を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る扉用差圧調整機構の開口部が開いた状態を示した斜視図である。
【図3】第一実施形態に係る扉用差圧調整機構を示した分解斜視図である。
【図4】第二実施形態に係る扉用差圧調整機構を示した斜視図である。
【図5】第二実施形態に係る扉用差圧調整機構の開口部が開いた状態を示した斜視図である。
【図6】第三実施形態に係る扉用差圧調整機構を示した要部拡大正面図である。
【図7】第三実施形態に係る扉用差圧調整機構の開口部が開いた状態を示した要部拡大正面図である。
【図8】第四実施形態に係る扉用差圧調整機構を示した要部拡大斜視図である。
【図9】第四実施形態に係る扉用差圧調整機構の開口部が開いた状態を示した要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
本発明に係る扉用差圧調整機構を実施するための第一実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1および図2に示すように、かかる扉用差圧調整機構1は、扉の内外で発生する差圧を調整するためのものであって、例えば、開き扉2に形成されている。開き扉2は、扉本体3と、扉本体3を囲う枠体4と、扉本体3を枠体4に回動自在に取り付けるヒンジ5とを備えて構成されている。枠体4は、扉本体3の側面および上面を囲う三方枠4aと、扉本体3の下面を囲う下枠4bとで構成されている。
【0021】
図1乃至図3に示すように、扉用差圧調整機構1は、扉本体3の一部に形成された開口部10と、この開口部10に隣接して扉本体3に形成された引込部20と、開口部10を塞ぐとともに、引込部20にスライド可能なスライド板30と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
開口部10は、扉本体3の手先側端部から吊元側へ向かって切り欠かれて形成されており、特に図3に対角線を表示したように、正面視で縦長の長方形を呈している。開口部10は、扉本体3の上端及び下端から所定距離をあけて形成されており、その吊元側、上側および下側が、扉本体3で囲われている。
【0023】
引込部20は、開口部10の吊元側に隣接して、扉本体3の厚さ方向内側に、戸袋状に形成されている。引込部20は、開口部10の上側および下側にも延在して形成されており、正面視でコ字状を呈している。引込部20は、スライド板30の周縁部31の吊元側、上側および下側を収容する。引込部20は、スライド板30が開口部10の全体を塞ぐ位置にあるときに、スライド板30よりも吊元側に空間が形成されており、この空間(これが引込みスペースとなる)にスライド板30がスライドするようになっている。引込部20の引き込み深さは、扉の内外で発生する差圧やスライド板30の面積に応じて適宜設定されている。差圧が大きい場合やスライド板30の面積が小さい場合は、引き込み量が大きくなり、差圧が小さい場合やスライド板30の面積が大きい場合は、引き込み量が小さくなる。引込部20の上辺と下辺には、スライド板30をガイドするレール(図示せず)がそれぞれ設けられている。引込部20は、上辺と下辺が、吊元側が高くなるように傾斜して形成されており、レールも同様に傾斜して設けられている。引込部20の傾斜は、手を放したフリー状態のスライド板30が、開口部10の全体を塞ぐ位置(閉位置)に自動的に移動可能な角度となっている。
【0024】
スライド板30は、扉本体3よりも薄く形成されており、その周縁部31の吊元側、上側および下側が引込部20内に収容されている。スライド板30の周縁部31の表面には、棒状のシール材(図示せず)が設けられている。このシール材の先端部は、引込部20の内表面に当接しており、扉本体3の内側と外側との気密性を確保している。スライド板30は、扉本体3と同材料で同色に形成されている。なお、スライド板30は、扉本体3と色または材質を代えてアクセントとしてデザインするようにしてもよい。スライド板30には、ドアノブ32と取っ手33が設けられている。取っ手33は、スライド板30をスライドさせる時に把持する。スライド板30の下端面および上端面には、戸車34が回転可能に設けられており、スライド板30が引込部20内を円滑にスライドできるようになっている。スライド板30および扉本体3の内部には補強リブ(図示せず)が形成されており、上下方向に長いスライド板30および扉本体3が撓むのを防止している。
【0025】
スライド板30には、スライド板30を開口部10の位置に係止するロック機構40が設けられている。ロック機構40は、スライド板30が開口部10の全体を完全に塞いだ状態を維持するものであり、具体的には、スライド板30に設けられ扉本体3側に出没可能なロックピン41と、扉本体3に形成されロックピン41が挿入される係止孔46とを備えて構成されている。
【0026】
ロックピン41は、スライド板30の内部でスライド方向と交差する方向に沿って延在して設けられている。ここで、スライド方向とは、扉本体3の手元側から吊元側へと略水平(引込部20の傾斜角度だけ傾斜している)に延びる方向であって、スライド方向と交差する方向とは、扉本体3の表面に沿って上下に延びる方向である。すなわち、ロックピン41は、上下方向に延在しており、サムターン43の上下にそれぞれ設けられている。上側のロックピン41は、その先端部が、スライド板30の上側の扉本体3を越えて、三方枠4aの上辺部の内部まで突出する長さに形成されている。下側のロックピン41は、スライド板30の下側の扉本体3を越えて、下枠4bの内部まで突出する長さに形成されている。各ロックピン41は、サムターン43にリンク機構44を介して接続されている。リンク機構44は、サムターン43に連結された第一リンク部材44aと、第一リンク部材44aの先端とロックピン41の内側端との間に掛け渡された第二リンク部材44bとを備えて構成されている。
【0027】
第一リンク部材44aは、その中心部がサムターン43の回転軸に直接接続されており、サムターン43の回転に連動して回転する。第二リンク部材44bは、サムターン43の上下にそれぞれ設けられている。各第二リンク部材44b,44bの一端(サムターン43側端)は、第一ピン45a,45aを介して第一リンク部材44aの両端にそれぞれピン結合されている。各第二リンク部材44b,44bの他端(ロックピン41側端)は、第二ピン45b,45bを介して上下のロックピン41,41の一端(内側端)にそれぞれピン結合されている。第二ピン45b,45bは上下方向に沿って移動するようにガイドされている。
【0028】
このような構成によれば、スライド板30をロックした状態(図1参照)からサムターン43を回転させると、図2に示すように、第一リンク部材44aが回転し、第二リンク部材44bのサムターン43側端が第一ピン45aに引っ張られて、第一リンク部材44aの外周軌道上を回動する。このとき、第二リンク部材44bのロックピン41側端は、上下方向に移動するようにガイドされているので、サムターン43側に直線的に引き寄せられる。これによって、ロックピン41が、スライド板30内に引き込まれる。
【0029】
係止孔46は、扉本体3の開口部10側側面に開口して、スライド板30の端面に対向するように形成されている。ここで、開口部10側側面とは、扉本体3の表面と直交して、扉本体3の厚さ方向に延在する面であって、開口部10の周囲を囲う面である。係止孔46は、スライド板30が開口部10の全体を塞ぐ場所に位置するときに、ロックピン41が出没する位置に形成されている。本実施形態では、係止孔46は、扉本体3の開口部10側側面から外周側面まで貫通して形成されている。
【0030】
扉本体3の上に位置する三方枠4aの上辺部には、枠体係止孔47が形成されている。また、扉本体3の下に位置する下枠4bにも、枠体係止孔47が形成されている。これら枠体係止孔47,47は、扉本体3が閉じた状態での係止孔46の延長線上に形成されている。
【0031】
サムターン43の回転停止位置は、以下の三段階に設定されている。(1)図1に示すように、ロックピン41の先端部が枠体係止孔47の内部に挿入されて、スライド板30が扉本体3にロックされるとともに扉本体3が枠体4にロックされる扉ロック状態。(2)図2に示すように、ロックピン41の先端部がスライド板30の内部に没入されて、スライド板30が引込部20内にスライド可能なロック解除状態。(3)図示しないが、扉ロック状態とロック解除状態の中間で、ロックピン41の先端部が扉本体3の係止孔46内部に没入されて、枠体係止孔47には挿入されておらず、スライド板30が扉本体3にロックされただけのスライド板ロック状態。通常は、スライド板ロック状態にしておくことで、扉本体3は自由に開閉できる開き扉2とすることができる。
【0032】
次に、前記構成の扉用差圧調整機構1の操作方法を説明しつつ、本発明の作用を説明する。
【0033】
かかる扉用差圧調整機構1が設けられた開き扉2は、図1の状態で閉まっている。この状態で、開口部10は、スライド板30によって閉塞されており、また、スライド板30の周縁部31に設けられたシール材によって、スライド板30と引込部20との間の隙間がシールされているので、開き扉2の内外の気密性が確保されている。
【0034】
開き扉2の内外で差圧が生じて扉本体3の開閉が重い場合は、サムターン43を図2の状態まで回転させる。これによって、ロックピン41が、リンク機構44を介して引っ張られスライド板30内に没する。そして、サムターン43または取っ手33を押して、スライド板30を引込部20内にスライドさせる。これによって、開口部10内の手先側で、スライド板30がスライドして移動した部分には、扉の内外を連通させる連通開口部11が形成されて、差圧が調整される。このとき、スライド板30は、扉本体3の表面に沿って移動するので、室内の体積が変化しない。また、スライド板30は、風圧力が作用している方向に移動するものでもない。したがって、開き扉2の内外で差圧があってもその影響を受けることなく、スライド板30を容易にスライドさせることができ、開き扉2の内外の差圧が調整されるので、その後、容易に開き扉2を開くことができる。ここで、開口部10およびスライド板30は、ともにスライド方向と交差する方向(上下方向)に長いため、少ないスライド量で連通開口部11の開放面積(スライド板30が吊元側にスライドした状態の扉開口面積)を大きく得ることができ、円滑に扉内外の差圧調整を行える。さらに、補強リブによって、上下方向に長いスライド板30および扉本体3が撓むのを防止しているので、引込部20の内面とスライド板30が競り合うのを防止でき、スライド板30がスライドし難くなることはない。
【0035】
また、本実施形態では、スライド板30に、ロック機構40が設けられているので、スライド板30を扉本体3に固定でき、開口部10が勝手に開くのを防止できる。したがって、防犯性や気密性等の、開き扉2としての機能を確保できる。
【0036】
さらに、ロック機構40は、扉本体3側に出没するロックピン41と、扉本体3に形成された係止孔46と、を備えて構成されているので、ロックピン41を係止孔46に出没させるといった簡単な構造および動作でスライド板30を確実に固定できる。また、ロックピン41は、サムターン43を手動で回転することで、リンク機構44を介して出没動作が行われるので、電力を用いず、停電時でも使用することが可能である。
【0037】
さらに、ロックピン41の出没で、スライド板30を扉本体3に係止できるだけでなく、扉本体3を枠体4に係止することができるので、開き扉2の鍵を省略できる。
【0038】
また、引込部20が、扉本体3の吊元側が高くなるように傾斜して形成されているので、扉本体3を開いた後に手を離すと、スライド板30が、自動的に開口部10を塞ぐ位置に戻る。したがって、スライド板30を元の位置に戻す手間が省けるとともに、開口部10が開いた状態のまま放置されるのを防止できる。
【0039】
なお、本実施形態では、ロックピン41は、サムターン43の上下両方に設けられているが、どちらか一方のみであってもよい。
【0040】
(第二実施形態)
本発明に係る扉用差圧調整機構を実施するための第二実施形態について、図4および図5を参照しながら詳細に説明する。
【0041】
図4および図5に示すように、かかる扉用差圧調整機構101は、開口部110が、扉本体103の手先側から切り欠かれてドアノブ32の下方に形成されている。本実施形態でも、引込部120は、開口部110の吊元側に隣接して、戸袋状に形成されている。引込部120は、吊元側が高くなるように傾斜して形成されている。
【0042】
スライド板130は、吊元側が薄く形成され、引込部120内にスライド可能となっている。また、スライド板130の手先側は、扉本体103と同じ厚さで、表面同士が面一になるように構成されて、第一実施形態とはデザインを変えている。スライド板130は、第一実施形態と比較して、スライド方向と交差する方向の長さが短いため、第一実施形態よりもスライド量(引込部20の引き込み深さ)を大きくして、連通開口部111(図5参照)の面積を確保している。
【0043】
本実施形態では、スライド板130を開口部110の位置にロックするロック機構140が、扉本体103に設けられた一般的な構造の鍵141と、スライド板130に形成された係止孔146にて構成されている。通常の鍵143は、ドアノブ32の上方に設けられたように、三方枠4aの側面に向かってデッドボルト143aが出没するように設けられている。これに対して、ロック機構140を構成する鍵141は、デッドボルト141aが上下方向に出没するように配置されている。デッドボルト141aは、開口部110の上端縁から下方に向かって出没する。係止孔146は、スライド板130の上端面に、上方に向かって開口して形成されている。係止孔146は、スライド板130が開口部110を塞ぐ場所に位置するときに、デッドボルト141aが出没する位置に形成されている。
【0044】
なお、その他の構成については、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
次に、前記構成の扉用差圧調整機構101の操作方法を説明しつつ、本発明の作用を説明する。
【0046】
かかる扉用差圧調整機構101が設けられた開き扉102は、図4に示すように、鍵141のデッドボルト141aが、スライド板130の上端面の係止孔146に挿入された状態で閉まっている。
【0047】
開き扉102の内外で差圧が生じて扉本体103の開閉が重い場合は、鍵141を図5の状態まで回転させる。これによって、デッドボルト141aが、扉本体3内に没して、係止孔146から引き抜かれる。そして、取っ手33を押して、スライド板130を引込部120内にスライドさせる。このとき、スライド板130は、第一実施形態と同様に、扉本体103の表面に沿って移動するので、差圧の影響を受けることなく容易にスライドさせることができ、開き扉2の内外の差圧が調整される。その後、容易に開き扉102を開くことができる。
【0048】
また、本実施形態では、ロック機構140が一般の鍵141にて構成されているので、構造が単純化され、製造および施工手間を低減することができる。
【0049】
さらに、引込部120が、扉本体103の吊元側が高くなるように傾斜して形成されているので、開き扉102を開いた後に手を離すと、スライド板130が、自動的に開口部110を塞ぐ位置に戻る。また、スライド板130は面積が小さいので、その重量が小さく、軽い力でスライドさせることができるとともに、撓み難いので補強リブを低減することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、開口部110が、ドアノブ32の下方に形成されているが、ドアノブ32の上方に形成するようにしてもよい。但し、背の低い子供が利用することを考慮すると、下方に形成されている方が好ましい。
【0051】
(第三実施形態)
本発明に係る扉用差圧調整機構を実施するための第三実施形態について、図6および図7を参照しながら詳細に説明する。
【0052】
図6および図7に示すように、かかる扉用差圧調整機構201は、開口部210が扉本体203の、例えば、中央部に形成されている。なお、扉用差圧調整機構201の位置は、後記するロック機構240の側部に形成されていれば、扉本体203の中央部に限定されるものではない。開口部210は、正面視で、例えば、略正方形を呈している。なお、開口部210の形状は、正方形に限定されるものではない。連通開口部211(図7参照)の面積を少しのスライド量で大きく確保するためには、スライド方向と交差する方向に長い方が有利であるが、連通開口部211の必要面積が確保できれば、開口部210の形状は問わない。本実施形態では、開口部210の上側に隣接して、引込部220が戸袋状に形成されている。引込部220は、開口部210の左右両側および下側にも延在して形成されており、スライド板230の周縁部231を収容する。引込部220は、上方に深く形成されており、その奥の部分にスライド板230がスライドするようになっている。
【0053】
スライド板230は、薄く形成され引込部220内に向かって上方にスライド可能となっている。スライド板230の下端部には、取っ手33が設けられている。
【0054】
本実施形態では、スライド板230を開口部210の位置にロックするロック機構240が、扉本体203に設けられスライド板230側に出没可能なロックピン241と、スライド板230に形成されロックピン241が挿入される係止孔246とを備えて構成されている。
【0055】
ロックピン241は、扉本体203の内部でスライド方向(上下方向)と交差する方向(本実施形態では扉本体203の表面に沿った水平方向)に沿って延在して設けられている。ロックピン241は、サムターン43の吊元側に設けられている。ロックピン241は、その先端部が、開口部210の側方の引込部220の側面を越えて、スライド板230の内部まで突出する長さに形成されている。一方、ロックピン241の逆側位置となる、サムターン43の手先側には、扉本体203を三方枠4aに固定するためのロックピン243(デッドボルト)が設けられている。ロックピン243は、水平方向に延在しており、三方枠4aの内部まで突出する長さに形成されている。各ロックピン241,243は、サムターン43にリンク機構244を介して接続されている。リンク機構244は、第一実施形態のリンク機構44と同様の構成のものを90度回転させて形成したものであるので、同じ符号を付して、構成および動作の説明を省略する。
【0056】
係止孔246は、スライド板230の手先側側面に開口して、開口部210の側方の引込部220の側面に対向するように形成されている。係止孔246は、スライド板230が開口部210を塞ぐ場所に位置するときに、ロックピン241が出没する位置に形成されている。また、三方枠4aには、ロックピン243が挿入される枠体係止孔247が形成されている。
【0057】
なお、その他の構成については、第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0058】
次に、前記構成の扉用差圧調整機構201の操作方法を説明しつつ、本発明の作用を説明する。
【0059】
かかる扉用差圧調整機構201が設けられた開き扉202は、図6に示すように、各ロックピン241,243が、係止孔246,枠体係止孔247にそれぞれ挿入された状態で閉まっている。本実施形態では、この状態で、開き扉202が施錠された状態となっている。開錠された状態で、開き扉202を閉じておく場合は、サムターン43を回転させて、図7の状態とするが、開き扉202の開錠と、スライド板230のロック解除が同時に行われる。このとき、スライド板230は、自重によって、開口部210を塞ぐ位置にあるので、開口部210が勝手に開くことはない。
【0060】
そして、開き扉202の内外で差圧が生じて扉本体203の開閉が重い場合に、開き扉202を開ける場合は、スライド板230のロックが解除された状態で、取っ手33を持って上方に押して、スライド板230を引込部220内にスライドさせる。このとき、スライド板230は、第一実施形態と同様に、扉本体203の表面に沿って移動するので、差圧の影響を受けることなく容易にスライドさせることができ、開き扉202の内外の差圧が調整される。その後、容易に開き扉202を開くことができる。
【0061】
また、本実施形態では、スライド板230は、上方にスライドされているので、手を離すと、自動的に開口部210を塞ぐ位置に戻る。さらに、一つのサムターン43を回転させるだけで、開き扉202の施錠・開錠と、スライド板230のロック、ロック解除を同時に行うことができる。
【0062】
(第四実施形態)
本発明に係る扉用差圧調整機構を実施するための第四実施形態について、図8および図9を参照しながら詳細に説明する。
【0063】
図8および図9に示すように、かかる扉用差圧調整機構201’は、第三実施形態と同様の構成のスライド板230を上方にスライドした状態で固定できるように構成したものである。その他の構成は、第三実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0064】
スライド板230の下端部に、ワイヤ234の一端が固定される取っ手233が設けられている。取っ手233は、開口部210の幅方向に延在して形成されている。ワイヤ234は、取っ手233の両端部にそれぞれ固定されており、上方に延出している。一方、開口部210の上端近傍には、各ワイヤ234,234を下方に折り返す、折返用棒材235が設けられている。折返用棒材235は、開口部210の幅方向両端の扉本体203の表面間に架け渡されて固定されている。折返用棒材235で下方に折り返されたワイヤ234,234の先端には、開口部210の高さ方向中間部に設けられた係止部237に係止される係止バー236が固定されている。係止部237は、開口部210の幅方向両端の扉本体203の表面に一対設けられており、先端が下方に向かって屈曲している。係止バー236は、開口部210の幅より長く形成されており、その両端部が係止部237,237にそれぞれ係止される。なお、係止バー236を、係止部237に係止する際には、係止バー236を係止部237の下端部よりも下方に一旦引き下げることになるので、引込部220が、係止バー236の引き下げ長さ分、上方に深く形成されている。
【0065】
このような構成を備えた扉用差圧調整機構201’によれば、第三実施形態と同様の作用効果を得られる他に、係止バー236を下方に引き下げることで、体重等を利用してスライド板230を引き上げることができるので、スライド板230を単に上方に持ち上げる場合より軽い力で引き上げることができる。
【0066】
さらに、スライド板230を上方にスライドさせた状態で、係止バー236を係止部237,237に係止することで、開口部210を開いた状態(連通開口部211(図9参照)が形成されたままの状態)を保持することができる。これによれば、扉の開閉時にスライド板230を押さえていなくても、連通開口部211が形成されたままの状態を保持できる。さらに、扉の開閉時以外で人がいない状態の場合にも、開き扉202に連通開口部211を形成することができるので、換気等の用途に利用することが可能となる。なお、スライド板230を開けた状態で保持する機構は、前記機構に限定されるものではなく、例えば、スライド板230を上方にスライドしたときにロックピン241が位置する部分に、係止孔(図示せず)を別個に形成して、この係止孔にロックピン241を挿入して係止するようにしてもよい。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、スライド板を直線的にスライドする構成となっているが、これに限定されるものではない。たとえば、スライド板を回転して円弧状にスライドさせることで、開口部を開閉するようにしてもよい。そして、スライド板の回転をドアノブの回転に連動するようにすれば、スライド板をスライドさせる手間を低減することができる。この場合、例えば、ドアノブの回転軸とスライド板の回転軸間にギヤ機構を介設する等して、ドアノブの回転量に対して、スライド板の回転量を大きくするようにするのが好ましい。
【符号の説明】
【0068】
1 扉用差圧調整機構
3 扉本体
10 開口部
20 引込部
30 スライド板
40 ロック機構
41 ロックピン
46 係止孔
101 扉用差圧調整機構
103 扉本体
110 開口部
120 引込部
130 スライド板
140 ロック機構
141a デッドボルト(ロックピン)
146 係止孔
201 扉用差圧調整機構
203 扉本体
210 開口部
220 引込部
230 スライド板
240 ロック機構
241 ロックピン
246 係止孔
201’ 扉用差圧調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の内外で発生する差圧を調整するための扉用差圧調整機構であって、
扉本体の一部に形成された開口部と、
この開口部に隣接して前記扉本体に形成された引込部と、
前記開口部を塞ぐとともに前記引込部にスライド可能なスライド板と、を備えた
ことを特徴とする扉用差圧調整機構。
【請求項2】
前記スライド板または前記扉本体に、前記スライド板を前記開口部の位置に係止するロック機構を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の扉用差圧調整機構。
【請求項3】
前記ロック機構は、
前記スライド板にそのスライド方向と交差する方向に沿って前記扉本体側に出没可能に設けられたロックピンと、
前記扉本体に形成され前記ロックピンが挿入される係止孔と、を備えて構成される
ことを特徴とする請求項2に記載の扉用差圧調整機構。
【請求項4】
前記係止孔が、前記扉本体の開口部側側面から外周側面まで貫通して形成されるとともに、
前記ロックピンが、前記扉本体の前記係止孔を貫通して、前記扉本体の周囲の枠体に形成された枠体係止孔に挿入されるように構成された
ことを特徴とする請求項3に記載の扉用差圧調整機構。
【請求項5】
前記スライド板が、前記扉本体の手先側から吊元側に向かってスライド可能に構成されており、
前記引込部が、前記扉本体の吊元側が高くなるように傾斜して形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の扉用差圧調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−174502(P2010−174502A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17820(P2009−17820)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】