説明

手すりのコーナー部の継手部材及び手すりのコーナー部の施工方法

【課題】出隅や入隅の手前に傾斜して設置された第一の手すり部材と、出隅や入隅の向こう側に傾斜して設置された第二の手すり部材との間に傾斜したコーナー部を形成する継手部材及びその施工方法を提供する。
【解決手段】先ず、継手部材1の第一の接続片5を固定し、継手本体3を変形可能な温度まで加熱した後、継手本体3を第一の接続片5の軸心10のまわりに捩り変形させ、継手本体3の第二の平面部24の中心24aを高さHだけ上昇させる。これにより、継手本体3の捩り変形前に位置E1にあった第二の平面部24は位置E2まで変位する。次に、第二の接続片7の軸心11のまわりに継手本体3を捩り変形させ、継手本体3の他方の端部6を位置E2から位置E3に回転させる。継手本体3の他方の端部6が第二の接続片7の軸心11を中心として回転する角度Θは、手すり部材101の傾斜角度Θに一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロープや階段等の昇降路の壁面に出隅や入隅が形成されている場合に、出隅や入隅の手前側の壁面に傾斜して設置された第一の手すり部材と、その出隅や入隅の向こう側の壁面に傾斜して設置された第二の手すり部材を連結し、第一の手すり部材と第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する継手部材に関するものである。本発明は、また、出隅や入隅の手前側の壁面に傾斜して設置された第一の手すり部材と、その出隅や入隅の向こう側の壁面に傾斜して設置された第二の手すり部材を連結し、第一の手すり部材と第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、手すりのコーナー部の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物や構築物の廊下や階段の壁面に設置される手すりは、手すりを利用する人の安全性を高めると共にその使い勝手を向上させ、また、手すりの意匠価値を増加させるため、手すりを所定の区間にわたって途切れることなく連続させて設置する、所謂、連続手すりが増加している。
【0003】
連続手すりを施工するに際して、手すりが設置される壁面に出隅や入隅がある場合には、出隅や入隅の手前側の壁面に設置される手すりと、その出隅や入隅の向こう側の壁面に設置される手すりを、湾曲したコーナー部材を介して、連結し、これにより、出隅や入隅の手前側の壁面からその出隅や入隅の向こう側の壁面に沿って連続する連続手すりを施工する。
【0004】
特開2005―2758号公報は、出隅や入隅のある壁面、曲がりのある階段などに装架される手すりを開示する。この手すりは、軟質又は半硬質の熱可塑性合成樹脂製の樹脂芯材を所望の円弧に湾曲処理して手すりの湾曲部分に配置し、この樹脂芯材の端部の空洞部と、手すりの直線部分を構成する金属芯材の端部の空洞部とにジョイントバーを嵌入し、固定することにより、樹脂芯材と金属芯材を連結し、更に、連結された樹脂芯材と金属芯材を長尺の被覆材で被覆して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005―2758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建築物や構築物の壁面に設置される手すりのうち、スロープや階段等の昇降路の壁面に設置される手すりは、通常、その昇降路の傾斜角度と同じ角度で傾斜するように施工される。したがって、昇降路の壁面に出隅や入隅がある場合には、出隅や入隅の手前側の壁面に設置される手すりのコーナー側端部と、その出隅や入隅の向こう側の壁面に設置される手すりのコーナー側端部は、「向き」と「高さ」が相違する。更に、出隅や入隅の手前側の壁面に設置される手すりの傾斜角度と、その出隅や入隅の向こう側の壁面に設置される手すりの傾斜角度が相違する場合は、これらの手すりのコーナー側端部は、「傾斜角度」も相違する。
【0007】
特開2005―2758号公報の0001段落には、「本発明は、手すり、詳しくは出隅や入隅のある壁面、曲がりのある階段などに装架するのに好適な手すりに関するものである。」と記載され、更に、同公報の0005段落には、「本発明は、直線部分には、従来同様に金属製の笠木芯材(以下金属芯材という)を用い、手すりの湾曲部分には、軟質または半硬質の熱可塑性合成樹脂製の笠木芯材(以下樹脂芯材という)を用いて所望の円弧に湾曲処理し、両芯材をそれぞれの端部において連結固定することにより上記課題を解決したものである。」と記載されているから、この手すりによっても、所望の円弧に湾曲処理された樹脂芯材を介して、階段の曲がりの前後の壁面に傾斜して取り付けられた手すりのコーナー側端部を、互いに連結することができると解される。
【0008】
ここで、湾曲処理される樹脂芯材の材料の形態は、同公報の0007段落に「そしてこの樹脂芯材の長さは25cm前後で、湾曲処理によって所定の円弧状となした湾曲部分の両側に5〜7cm程度の直線部分が残る長さであればよい。」と記載されていることから、樹脂芯材の材料は、湾曲処理された樹脂芯材の両端に直線部分を「残す」ことができるように、直線的に延びる棒状の樹脂材料であると解される。
【0009】
また、樹脂芯材の湾曲処理の内容は、同公報の0015段落に「手すりのコーナー部分の芯材を樹脂芯材10で構成するものであるから、手すりの取り付け作業現場において、出隅や入隅を問わず壁面5のコーナーに適合した曲率に容易に湾曲処理することができ、また湾曲処理に過不足があっても容易に修正することができる。」と記載されていることから、樹脂芯材の材料を、試行錯誤により、壁面のコーナーに適合した曲率に湾曲させることを意味すると解される。したがって、同公報は、湾曲した樹脂芯材を形成するための特定の加工内容を開示していない。
【0010】
更に、特開2005―2758号公報に開示された樹脂芯材は、その湾曲部分の両側に、ジョイントバーが挿入される5〜7cm程度の直線部分を設ける必要がある。これにより、樹脂芯材が手すりのコーナー部を超えて手すりの直線部分にまで延在することになるから、手すりのコーナー部の強度が低下し、補強材等で補強しなければならない場合がある。また、手すりの金属芯材と樹脂芯材を連結固定するためのジョイントバーの使用は、手すりの施工作業を煩雑にする。
【0011】
本発明の目的は、手すりに傾斜したコーナー部を形成するための継手部材を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、スロープや階段等の昇降路の壁面に出隅や入隅が形成されている場合に、出隅や入隅の手前側の壁面に傾斜して設置された第一の手すり部材と、その出隅や入隅の向こう側の壁面に傾斜して設置された第二の手すり部材を連結し、第一の手すり部材と第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する継手部材を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、継手部材に主として二種類の捩り変形を加えることにより、施工現場に適合した手すりのコーナー部を形成することができる、継手部材を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、施工現場における継手部材の主たる加工内容を二種類の捩り変形に限定することにより、手すりのコーナー部の施工を容易にすることができる、継手部材を提供することにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、手すりのコーナー部の強度を向上させることができる、継手部材を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、工場における量産が可能であると同時に、施工現場における加工を容易にすることができる、継手部材を提供することにある。
【0017】
本発明の更に他の目的は、単一部材からなり、手すりのコーナー部品としての規格化が可能であると共に、製造及び施工が容易な継手部材を提供することにある。
【0018】
本発明は、また、施工現場において、手すりに傾斜したコーナー部を形成するための施工方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、出隅や入隅の手前側の壁面に傾斜して設置された第一の手すり部材と、その出隅や入隅の向こう側の壁面に傾斜して設置された第二の手すり部材を連結し、第一の手すり部材と第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、手すりのコーナー部の施工方法を提供することにある。
【0020】
本発明の更に他の目的は、施工現場における主たる加工内容を二種類の捩り変形に限定することにより、手すりのコーナー部の施工を容易にすることができる、手すりのコーナー部の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の手すりのコーナー部の継手部材は、第一の手すり部材と第二の手すり部材の継手連結口に連結され、前記第一の手すり部材と前記第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、継手部材であって、前記継手部材は、一つの平面内に所定長さにわたって延在する円弧状軸線に沿って湾曲形成された、継手本体と、前記第一の手すり部材の前記継手連結口に嵌合するように、前記継手本体の一方の端部から突出する、第一の接続片と、前記第二の手すり部材の前記継手連結口に嵌合するように、前記継手本体の他方の端部から突出する、第二の接続片とを有する、手すりのコーナー部の継手部材において、前記第一の接続片を前記第一の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させたとき、前記第二の接続片が前記第二の手すり部材の前記継手連結口に嵌合するように、前記継手本体を、前記円弧状軸線の一方の端部における接線のまわりと、前記円弧状軸線の他方の端部における接線のまわりに、捩り変形させたことを特徴とする。
【0022】
本発明の継手部材は、その変形加工前には、一つの平面内に所定長さにわたって延在する円弧状軸線に沿って湾曲形成されているから、継手本体の円弧状軸線の一方の端部における接線と他方の端部における接線とが一つの平面内で角度をもって交差する。したがって、これらの二本の接線のまわりに、それぞれ、継手本体を捩り変形させることによって、継手本体の形態を第一の手すり部材と第二の手すり部材を連結する形態に変形させることができる。変形加工前の継手部材の円弧状軸線の一方の端部における接線と他方の端部における接線とが一つの平面内でなす角度は、円弧状軸線が四分円である場合には90度である。これらの二本の接線は、完全に重なり合わない限り、90度よりも大きな角度で交わるように構成しても良いし、90度よりも小さな角度で交わるように構成しても良い。
【0023】
本発明の継手部材は、また、第一の接続片を第一の手すり部材の継手連結口に嵌合させたとき、第二の接続片が第二の手すり部材の継手連結口に嵌合するように、捩り変形されているから、第一の手すり部材と第二の手すり部材を湾曲した継手本体によって直接連結することができる。すなわち、継手本体の湾曲部分の両端に第一の手すり部材と第二の手すり部材に連続する直線部分が存在しない。これによって、本発明の継手部材の長さを短縮することができるから、手すりのコーナー部の強度を向上させることが可能になり、補強部材を装着する必要がない。
【0024】
本発明の継手部品は、単一部品として提供することができるから、工場における量産が可能であると同時に、手すりのコーナー部品としての規格化が可能である。
【0025】
また、本発明の手すりのコーナー部の施工方法は、第一の手すり部材と第二の手すり部材を連結する継手部材によって、前記第一の手すり部材と前記第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、手すりのコーナー部の施工方法であって、前記第一の手すり部材と前記第二の手すり部材のコーナー側端部に継手連結口を形成し、前記継手部材は、熱可塑性合成樹脂によって形成され、かつ、一つの平面内に所定長さにわたって延在する円弧状軸線に沿って湾曲形成された、継手本体と、前記継手本体の一方の端部から突出する第一の接続片と、前記継手本体の他方の端部から突出する第二の接続片とを有する、前記施工方法において、前記継手本体の前記第一の接続片を前記第一の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させ、前記継手本体を変形可能な温度まで加熱した後、前記継手本体を前記円弧状軸線の一方の端部における接線のまわりに所定角度だけ捩り変形させる工程と、前記継手本体の前記第二の接続片を前記第二の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させ、前記継手本体を変形可能な温度まで加熱した後、前記継手本体を前記円弧状軸線の他方の端部における接線のまわりに所定角度だけ捩り変形させる工程とを含むことを特徴とする。
【0026】
このような特徴を有する本発明の手すりのコーナー部の施工方法によれば、前述の二本の接線のまわりに継手本体を捩り変形させることにより、継手本体を手すりの傾斜したコーナー部に適応する形態に変形させることができるから、施工現場における継手部材の主たる加工内容を二種類の捩り変形に限定することができる。これにより、手すりのコーナー部の施工を容易にすることができる。
【0027】
更に、本発明の手すりのコーナー部の施工に際しては、継手本体を変形可能な温度まで加熱した後、継手本体の円弧状軸線の一方の端部における接線と円弧状軸線の他方の端部における接線とが交わる角度を変更することもできるから、前述の二種類の捩り変形に加えて、継手本体の湾曲角度を変更する伸縮変形を施すこともできる。これにより、施工現場において、壁面に不陸がある場合などに、継手部材の形状を壁面に合うように調整することができる。
【0028】
本発明の更に他の特徴と作用効果は、図面を参照してなされる以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、捩り変形される前の状態における、本発明の継手部材の一実施例の平面図である。
【図2】図2は、図1の継手部材の底面図である。
【図3】図3は、図1の継手部材のB−B線に沿う断面図である。
【図4】図4は、図1の継手部材の端面をA方向から見た図である。
【図5】図5は、図1の本発明の継手部材の捩り変形の内容を示す継手部材の側面図である。
【図6】図6は、捩り変形を施された本発明の継手部材の側面図である。
【図7】図7は、図6の継手部材を別の角度から見た側面図である。
【図8】図8は、図6の継手部材を更に別の角度から見た側面図である。
【図9】図9は、捩り変形を施された本発明の継手部材を手すり部材(笠木受)に嵌合する状態を説明するための斜視図である。
【図10】図10は、捩り変形を施された本発明の継手部材を他方の手すり部材(笠木受)に嵌合する状態を説明するための斜視図である。
【図11】図11は、手すりの笠木受と継手部材の接続片との嵌合、固定状態を示す断面図である。
【図12】図12は、笠木の底部を示す斜視図である。
【図13】図13は、捩り変形を施された本発明の継手部材を二つ使用して、手すりのコーナー部を構成した実施例の斜視図である。
【図14】図14は、図13の手すりのコーナー部を別の角度から見た斜視図である。
【図15】図15は、図13の手すりのコーナー部を更に別の角度から見た斜視図である。
【図16】図16は、図13の手すりの外面に笠木を装着した状態の斜視図である。
【図17】図17は、図16の手すりのコーナー部を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
スロープや階段等の昇降路の壁面に出隅や入隅が形成されている場合に、出隅や入隅の手前側の壁面に傾斜して設置された第一の手すり部材と、その出隅や入隅の向こう側の壁面に傾斜して設置された第二の手すり部材を連結し、第一の手すり部材と第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する継手部材及びその施工方法を実現する。
【実施例1】
【0031】
図1乃至4に示すように、捩り変形を施される前の継手部材1は、一つの平面C内に所定長さにわたって延在する円弧状軸線2に沿って湾曲形成された、継手本体3と、継手本体3の一方の端部4から突出する第一の接続片5と、継手本体3の他方の端部6から突出する第二の接続片7とを有する。図1に示すように、継手本体3の円弧状軸線2は、円弧中心Oを有する四分円で構成され、円弧状軸線2の一方の端部8における円弧状軸線2の接線10と、円弧状軸線2の他方の端部9における円弧状軸線2の接線11との成す角度Dは、ほぼ90度である。
【0032】
図1に示すように、継手本体3の上面には円弧状軸線2に沿って三つの有底穴12、13、14が形成され、隣接する有底穴12、13の間と有底穴13、14の間には、それぞれ、補強リブ15、16が画成される。有底穴12、13、14を形成することにより、継手部材1を構成する材料を節減すると共に継手部材1を軽量化することが可能になり、継手本体3の熱容量を減少させると共のその表面積を増大させ、捩り変形を施すときの継手本体3の加熱時間を短縮できる。更に、補強リブ15、16を画成することによって継手本体3の強度を向上させることができる。
【0033】
図3は、図1のB−B線に沿う継手本体3の断面図を示す。また、図4は、継手本体3の端部6と接続片7を図1のA方向から見た図である。図4に示すように、継手本体3の上面には円弧状軸線2に沿って平坦面17が形成され、有底穴12、13、14は平坦面17に開口し、補強リブ15、16は平坦面17に沿って延在する。
【0034】
図2に示すように、継手本体3の下面には円弧状軸線2に沿って湾曲した溝部18が形成されている。溝部18は、継手本体3の一方の端部4と他方の端部6の間に延在し、これらの端部4及び6に開口する。溝部18の両側部には円弧状軸線2に沿って湾曲した突条19、20が形成される。突条19、20は、後述する笠木を係止するために使用される。
【0035】
図1乃至4に示すように、平坦面17と突条19、20の間の継手本体3の両側面は、それぞれ、凸状の湾曲面21、22によって形成され、手すりの利用者が後述する笠木の上から継手本体3を握ったときに、継手本体3が手すりの利用者の手に馴染むように配慮されている。
【0036】
第一の接続片5は、円弧状軸線2の一方の端部8における接線10を軸線として、継手本体3の一方の端部4から直線状に突出する。また、第二の接続片7は、円弧状軸線2の他方の端部9における接線11を軸線として、継手本体3の他方の端部6から直線状に突出する。継手本体3の一方の端部4には、第一の接続片5を囲繞する第一の平面部23が形成されている。また、継手部材3の他方の端部6には、第二の接続片7を囲繞する第二の平面部24が形成されている。第一の平面部23は接線10に直交し、第二の平面部24は接線11に直交する。
【0037】
前述のように、第一の接続片5の軸線は接線10によって構成されるが、第一の接続片5の軸線を横切る方向の断面形状は、ほぼ十字形状を成す。図4に、第一の接続片5の十字形状の端面を示す。第二の接続片7の場合も同様に、その軸線を横切る方向の断面形状は、ほぼ十字形状を成す。図6及び7に、第二の接続片7の外形が示されている。第一の接続片5と第二の接続片7は同一寸法の同一の断面形状を有し、同一寸法の同一の外形を有する。第一の接続片5と第二の接続片7の相違は、継手本体3からの突出方向のみである。
【0038】
継手部材1を構成する継手本体3と第一及び第二の接続片5、7は、熱可塑性合成樹脂材料によって一体形成される。熱可塑性合成樹脂としてポリプロピレンを使用することができる。
【0039】
図5は、捩り変形前の継手部材1に捩り変形を施して、本発明の継手部材100を形成するための工程の説明図であり、図6乃至8は、継手部材1に所定の捩り変形を施すことによって形成された本発明の継手部材100を示す。
【0040】
先ず、図5を参照して、捩り変形前の継手部材1から本発明の継手部材100を形成する工程を説明する。
【0041】
第一の工程は、継手部材1の第一の接続片5を固定し、継手本体3を変形可能な温度まで加熱した後、継手本体3を第一の接続片5の軸心10のまわりに捩り変形させ、継手本体3の第二の平面部24の中心24aを高さHだけ上昇させる。これにより、継手本体3の捩り変形前に位置E1にあった第二の平面部24は位置E2まで変位する。ここで、第一の接続片5の軸心10は、継手本体3の円弧状軸心2の一方の端部8における接線である。また、高さHは、継手本体3の円弧状軸心2の一方の端部8と他方の端部9の間の鉛直方向距離であって、この距離は、図9及び10に示すように、継手部材100によって連結される一方の手すり部材101の継手連結口102と他方の手すり部材103の継手連結口104の間の鉛直方向距離に相当する。ここで、鉛直方向とは、図5において、第一の連結片5の軸心10を含み、かつ、図5が記載された紙面に垂直な方向に延在する平面に対して、90度を成す方向である。したがって、継手本体3を第一の接続片5の軸線10のまわりに捩り変形させる第一の工程によって、継手部材100は、手すり部材101のコーナー側端部105と手すり部材103のコーナー側端部106の間の高さの差を吸収するための変形が成されたことになる。
【0042】
次に、第二の工程では、第二の接続片7の軸心11のまわりに継手本体3を捩り変形させ、継手本体3の他方の端部6を位置E2から位置E3に回転させる。継手本体3の他方の端部6が第二の接続片7の軸心11を中心として回転する角度Θは、手すり部材101の傾斜角度Θに一致する。これにより、手すり部材100の第一の接続片5を手すり部材101の継手連結口102に連結したとき、継手部材100の他方の端部6と手すり部材103のコーナー側端部106とが整合し、手すり部材103の継手連結口104に継手部材100の第二の接続片7を嵌入することが可能になると共に、継手部材100の下面の一対の突条19、20を手すり部材103の下面に形成された突条107、108に連続させることができる。
【0043】
なお、継手部材100の一対の突条19、20は、図10に示すように、手すり部材101の下面に形成された突条109、110にも連続する。
【0044】
これらの突条19、20、107、108、109、110には、図11及び12に示す笠木111の端縁112が係合し、笠木111の脱落を防止する。
【0045】
前述の第一の工程と第二の工程の実施順序は、逆にすることができる。また、第一の工程と第二の工程を同時に行うこともできる。
【0046】
前述の第一の工程において、継手部材1の第一の接続片5を第一の手すり部材101の継手連結口102に嵌合し、継手本体3を変形可能な温度まで加熱した後、継手本体3を円弧状軸線2の一方の端部8における接線10のまわりに所定角度だけ捩り変形させ、前記第二の工程において、継手部材1の第二の接続片7を第二の手すり部材103の継手連結口104に嵌合させ、継手本体3を変形可能な温度まで加熱した後、継手本体3を円弧状軸線2の他方の端部9における接線11のまわりに所定角度だけ捩り変形させることもできる。
【0047】
更に、前述の第一及び第二の工程において、継手部材1の第一の接続片5を第一の手すり部材101の継手連結口102に嵌合させると同時に、継手部材1の第二の接続片7を第二の手すり部材103の継手連結口104に嵌合させた後、継手本体3を変形可能な温度まで加熱し、次いで、継手本体3を円弧状軸線2の一方の端部8における接線10のまわりに所定角度だけ捩り変形させ、更に、継手本体3を円弧状軸線2の他方の端部9における接線11のまわりに所定角度だけ捩り変形させることもできる。
【0048】
更に、前述の第一及び第二の工程に加えて、継手本体3を変形可能な温度まで加熱した後、継手本体3の円弧状軸線2の一方の端部8における接線10と継手本体3の円弧状軸線2の他方の端部9における接線11とが平面Cにおいて交わる角度を変更する工程を実施することもできる。
【0049】
前述の第一及び第二の工程を経て、図6乃至8のように捩り変形された継手部材100は、図9及び10に示すように、第一の接続片5を手すり部材101の継手連結口102に嵌入し、第二の接続片7を手すり部材103の継手連結口104に嵌入し、手すり部材101と手すり部材103を連結すると同時に、これらの手すり部材101及び103の間に傾斜したコーナー部を形成する。継手連結口102、104に嵌入された第一及び第二の接続片5、7は、図11に示すように、手すり部材105、106の側面から止めねじ113によって手すり部材105、106に固定される。次いで、手すり部材105、106の外面及び継手部材100の外面には、笠木111が装着される。笠木111は可撓性部材で構成される。図12に示すように、笠木111の下面には開溝114が形成され、笠木111は、開溝114を矢印の方向に開いて、手すり部材105、106と継手部材100に被せられる。これにより、開溝114の両側に形成された端縁112が手すり部材105、106の突条107、108、109、110と継手部材100の突条19、20に係合し、笠木111は脱落しないように係止される。
【実施例2】
【0050】
図13乃至17は、本発明の継手部材100を二個使用して、手すりのコーナー部200を形成した実施例を示す。図13乃至15に示すように、笠木受を構成する一方の手すり部材101と他方の手すり部材103は、それぞれ、ブラケット201、202、203によって、傾斜面に沿う壁面204、205に傾斜して設置され、これらの手すり部材101と103の間に、中間手すり部材206の両端に連結された一対の継手部材100が介装されている。一方の継手部材100は手すり部材101と中間手すり部材206の間を連結し、他方の継手部材100は手すり部材103と中間手すり部材206の間を連結する。中間手すり部材206はほぼ水平に取り付けられている。一つの継手部材100、100は、手すり部材101と中間手すり部材206の間と、手すり部材103と中間手すり部材206の間に、それぞれ、傾斜したコーナー部を形成し、手すり部材101と103を滑らかに連結する大きなコーナー部200を構成することができる。手すりのコーナー部200のように大きく取り回されたコーナー部を形成することができるのは、継手部材100が十分な強度を有するからである。そして、図16及び17に示すように、コーナー部200を含めて、手すり部材101、103、中間手すり部材206、及び、一対の継手部材100の外面には、連続した笠木111が装着される。
【0051】
以上、実施例1及び2の説明を通して本発明の継手部材及びその施工方法の特徴を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1 継手部材
2 円弧状軸線
3 継手本体
4 一方の端部
5 第一の接続片
6 他方の端部
7 第二の接続片
8 円弧状軸線の一方の端部
9 円弧状軸線の他方の端部
10 円弧状軸線の一方の端部における円弧状軸線の接線
11 円弧状軸線の他方の端部における円弧状軸線の接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の手すり部材と第二の手すり部材の継手連結口に連結され、前記第一の手すり部材と前記第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、継手部材であって、前記継手部材は、一つの平面内に所定長さにわたって延在する円弧状軸線に沿って湾曲形成された、継手本体と、前記第一の手すり部材の前記継手連結口に嵌合するように、前記継手本体の一方の端部から突出する、第一の接続片と、前記第二の手すり部材の前記継手連結口に嵌合するように、前記継手本体の他方の端部から突出する、第二の接続片とを有する、手すりのコーナー部の継手部材において、前記第一の接続片を前記第一の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させたとき、前記第二の接続片が前記第二の手すり部材の前記継手連結口に嵌合するように、前記継手本体を、前記円弧状軸線の一方の端部における接線のまわりと、前記円弧状軸線の他方の端部における接線のまわりに、捩り変形させたことを特徴とする、手すりのコーナー部の継手部材。
【請求項2】
請求項1に記載された継手部材において、前記第一の接続片は、前記円弧状軸線の前記一方の端部における接線を軸線として、前記継手本体の前記一方の端部から直線状に突出し、前記第二の接続片は、前記円弧状軸線の前記他方の端部における接線を軸線として、前記継手本体の前記他方の端部から直線状に突出することを特徴とする、前記継手部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された継手部材において、前記継手本体の前記一方の端部に前記第一の接続片の基端部を囲繞する第一の平面部を形成し、前記継手本体の他方の端部に前記第二の接続片の基端部を囲繞する第二の平面部を形成し、前記第一の平面部は前記円弧状軸線の前記一方の端部における接線に直交し、前記第二の平面部は前記円弧状軸線の前記他方の端部における接線に直交することを特徴とする、前記継手部材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された継手部材において、前記第一の接続片と前記第二の接続片の前記軸線を横切る方向の断面形状を全体として十字形状に形成し、前記第一の手すり部材と前記第二の手すり部材の前記継手連結口の形状を、前記第一の接続片と前記第二の接続片が嵌合するように、全体として十字形状に形成したことを特徴とする、前記継手部材。
【請求項5】
請求項1に記載された継手部材において、前記継手本体を捩り変形させる前の状態において、前記継手本体の前記円弧状軸線の前記一方の端部における接線と、前記継手本体の前記円弧状軸線の前記他方の端部における接線とは、前記一つの平面内において、90度の角度で交わることを特徴とする、前記継手部材。
【請求項6】
請求項1に記載された継手部材において、前記継手本体を捩り変形させる前の状態において、前記継手本体の前記円弧状軸線の前記一方の端部における接線と、前記継手本体の前記円弧状軸線の前記他方の端部における接線とは、前記一つの平面内において、90度よりも大きな角度で交わることを特徴とする、前記継手部材。
【請求項7】
請求項1に記載された継手部材において、前記継手本体を捩り変形させる前の状態において、前記継手本体の前記円弧状軸線の前記一方の端部における接線と、前記継手本体の前記円弧状軸線の前記他方の端部における接線とは、前記一つの平面内において、90度よりも小さな角度で交わることを特徴とする、前記継手部材。
【請求項8】
請求項1又は2に記載された継手部材において、前記継手本体と前記第一の接続片と前記第二の接続片を熱可塑性合成樹脂によって一体成形したことを特徴とする、前記継手部材。
【請求項9】
請求項8に記載された継手部材において、前記熱可塑性樹脂はポリプロピレンであることを特徴とする、前記継手部材。
【請求項10】
請求項1又は2に記載された継手部材において、前記継手本体に、前記継手本体の上面に開口する複数の穴を、前記円弧状軸線に沿って併設し、隣接する前記穴の間に補強用リブを画成したことを特徴とする、前記継手部材。
【請求項11】
請求項1又は2に記載された継手部材において、前記継手本体の下面に、前記円弧状軸線に沿って湾曲した溝部を形成し、前記溝部は、前記継手本体の前記第一の端部と前記第二の端部の間に延在することを特徴とする、前記継手部材。
【請求項12】
第一の手すり部材と第二の手すり部材を連結する継手部材によって、前記第一の手すり部材と前記第二の手すり部材の間に傾斜したコーナー部を形成する、手すりのコーナー部の施工方法であって、前記第一の手すり部材と前記第二の手すり部材のコーナー側端部に継手連結口を形成し、前記継手部材は、熱可塑性合成樹脂によって形成され、かつ、一つの平面内に所定長さにわたって延在する円弧状軸線に沿って湾曲形成された、継手本体と、前記継手本体の一方の端部から突出する第一の接続片と、前記継手本体の他方の端部から突出する第二の接続片とを有する、前記施工方法において、
前記継手部材の前記第一の接続片を前記第一の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させ、前記継手本体を変形可能な温度まで加熱した後、前記継手本体を前記円弧状軸線の一方の端部における接線のまわりに所定角度だけ捩り変形させる工程と、
前記継手部材の前記第二の接続片を前記第二の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させ、前記継手本体を変形可能な温度まで加熱した後、前記継手本体を前記円弧状軸線の他方の端部における接線のまわりに所定角度だけ捩り変形させる工程と、
を含むことを特徴とする、手すりのコーナー部の施工方法。
【請求項13】
請求項12に記載された施工方法において、前記継手部材の前記第一の接続片を前記第一の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させ、かつ、前記継手部材の前記第二の接続片を前記第二の手すり部材の前記継手連結口に嵌合させた後、前記継手本体を変形可能な温度まで加熱し、次いで、前記継手本体を前記円弧状軸線の一方の端部における接線のまわりに所定角度だけ捩り変形させ、更に、前記継手本体を前記円弧状軸線の他方の端部における接線のまわりに所定角度だけ捩り変形させることを特徴とする、前記施工方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載された施工方法において、前記継手本体を変形可能な温度まで加熱し、前記継手本体の前記円弧状軸線の一方の端部における接線と前記円弧状軸線の他方の端部における接線とが交わる角度を変更する工程を含むことを特徴とする、前記施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−180621(P2010−180621A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25238(P2009−25238)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】