説明

手動式油圧装置

【課題】最低限の時間で仕事を行い得、且つ構造が簡単化され得る手動式油圧装置を提供すること
【解決手段】手動式油圧装置1は、往復揺動可能なレバー2と、前記往復揺動のうちの一方の向きC1にレバー2が揺動された際に作動油が吸込まれ他方の向きC2にレバー2が揺動された際に作動油が吐出されるようにレバー2に連結された手動式油圧ポンプ3と、ピストンロッド82の先端部に工具Tが設けられるように構成され手動式油圧ポンプ3からの作動油によって作動せしめられる油圧シリンダ機構4とを有し、該手動式油圧装置1の最初の動作において、レバー2が前記一方の向きC1に揺動される際に工具Tを作動位置に設定すべく、該レバー2が油圧シリンダ機構4と係合するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動式油圧装置に係り、より詳しくは、手動式油圧ポンプと油圧シリンダ機構とを備えた手動式油圧装置に係る。
【背景技術】
【0002】
手動式油圧ポンプで油圧シリンダ機構を作動させる手動式油圧装置としては、多くのものが知られている。この場合、典型的には、油圧シリンダ機構から突出したピストンロッドの先端に工具が取付けられ、手動式油圧ポンプにより油圧シリンダ機構が作動されて該油圧シリンダ機構の先端側の工具が被工作物に対して仕事をする。
【0003】
この種の手動式油圧装置においては、手動式油圧装置の動作が効率的に且つ効果的に行われ得るように、手動式油圧装置は、典型的には、手動式油圧ポンプとして、低圧ポンプと高圧ポンプとの二種類の油圧ポンプを含む(特許文献1)。
【0004】
すなわち、手動式油圧装置では、手動式油圧ポンプを人手によって作動させるものであるから、労力を最低限に抑えることが望まれ、一回の操作で多量の作動油を油圧シリンダ機構に送り得る低圧ポンプと、一回の操作で油圧シリンダ機構に送り得る作動油の量は少ないけれども高圧の作動油を油圧シリンダ機構に送り得る高圧ポンプとの両方を備える。従って、油圧シリンダ機構に大きな負荷がかかっていない状態、すなわち、(1)工具が被工作物から離れていて工具が被工作物に仕事をしていない状態、及び(2)工具が被工作物に軽く触れる等工具と被工作物との係合が開始されたものの被工作物が工具に対して及ぼす抵抗ないし負荷が未だ小さい状態等の実質的な仕事の開始前の状態のような実際上無負荷状態においては、低圧ポンプを作動させて工具を被工作物に対して出来るだけ高速に進めることにより、時間の経過を最低限に抑える(効率的に作業をする)。即ち、従来は、無負荷ストロークとなる早送りを、二段(低圧及び高圧)吐出型ポンプの低圧ポンプで行う。一方、(3)被工作物が工具に対して大きな抵抗を及ぼす状態すなわち油圧シリンダ機構に大きな負荷がかかる状態になると、高圧ポンプを作動させて徐々にしか進行しないものの大きな力で効果的に仕事を行う。
【0005】
このように、手動式油圧ポンプを用いる手動式油圧装置においては、手動式油圧ポンプとしてある程度高圧のポンプが不可欠である限り、低圧ポンプを欠いて該高圧ポンプのみであると、高圧ポンプが一回の作動で送り得る作動油の量が少ないことから、該高圧ポンプによる仕事が開始される位置まで工具を進めるために高圧ポンプを多数回動作させるべくレバーを多数回揺動させて初めて仕事が始まることになり、時間及び労力の浪費を無視し難くなる。
【0006】
なお、この種の従来の手動式油圧装置において、手動式油圧ポンプを構成する低圧ポンプは、低圧とはいえ、油圧ポンプとして機能することから、レバーの一回の動作で送り得る作動油の量には限度がある。従って、工具による仕事が開始される所定の位置(作動位置)まで該工具を低圧ポンプによって送るために、通常、少なくとも数回はレバーを揺動操作する必要がある。その結果、手動式油圧装置の全動作時間に対してこの低圧ポンプの操作に要する時間(の割合)が無視し難い程度に長い(高い)ものになることがある。
【特許文献1】特開2007−319733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、最低限の時間で仕事を行い得、且つ構造が簡単化され得る手動式油圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の手動式油圧装置は、前記目的を達成すべく、往復揺動可能なレバーと、前記往復揺動のうちの一方の向きに前記レバーが揺動された際に作動油が吸込まれ他方の向きに前記レバーが揺動された際に作動油が吐出されるようにレバーに連結された手動式油圧ポンプと、ピストンロッドの先端部に工具が設けられるように構成され手動式油圧ポンプからの作動油によって作動せしめられる油圧シリンダ機構とを有する手動式油圧装置であって、該手動式油圧装置の最初の動作において、前記レバーが前記一方の向きに揺動される際に前記工具を作動位置に設定すべく、該レバーが前記油圧シリンダ機構と係合するように構成されている。
【0009】
本発明の手動式油圧装置では、「手動式油圧装置の最初の動作において、往復揺動可能なレバーが往復揺動のうちの一方の向き(手動式油圧ポンプに作動油を吸込ませる向き)に揺動される際に油圧シリンダ機構のピストンロッドの先端部に設けられる工具を作動位置に設定すべく、該レバーが前記油圧シリンダ機構と係合するように構成されている」ので、手動式油圧装置の最初の動作において、手動式油圧ポンプに作動油を吸込ませる向きにレバーを揺動させるだけで、作動油の吐出が可能なように手動式油圧ポンプが設定されるだけでなく、油圧シリンダ機構のピストンロッドの先端部に設けられる工具が早送りされて作動位置に設定される。この早送りは、レバーの実際上一回の揺動動作によって完了され得るから、従来の低圧ピストンによる送り(通常、レバーを最低数回は往復揺動させる必要がある)と比較して、はるかに短時間で、完了され得る。従って、本発明の手動式油圧装置では、レバーの他方の向きへの揺動を開始すると、直ちに、手動式油圧ポンプが作動されて作動油の吐出が開始され得るだけでなく、実際上同時に、工具による被工作物への仕事が開始され得る。すなわち、本発明の手動式油圧装置では、実際上、低圧ポンプが行っていた動作をレバーの最初の一方向への揺動によって行わせることにより、工具が最低限の時間で作業開始位置に設定され得、また、低圧ポンプが不要になるので、油圧ポンプの構造が簡単化、小型化され得る。以上のような本発明の手動式油圧装置は、手動式油圧ポンプと油圧シリンダ機構とがレバーを介して一体化されたユニットの形態を採る。
【0010】
なお、レバーと油圧シリンダ機構との係合は、典型的には、直接的な当接であるけれども、場合によっては、レバーと油圧シリンダ機構との間に、変位伝達機構があってもよい。その場合、変位伝達機構は、例えば、一方向クラッチの如き動作をするラック・ピニオン機構であってもよい。
【0011】
ここで、レバーの揺動方向は、典型的には上下方向(実際上縁直面内)であるけれども、場合によっては左右方向(実際上水平面内)であっても、斜め上下方向であってもよい。また、レバーについて、「揺動」とは、典型的には、一つの回動軸のまわりでの回動であるけれども、場合によっては、回動中心の位置や向きが多少なりともずれていく種類の揺動であってもよい。
【0012】
また、手動式油圧ポンプは、手動式油圧装置による仕事が行われ得るに必要な圧油を吐出し得るものであれば、その油圧はどの程度であってもよい。但し、実際には、手動でありながらある程度の圧力の作動油を吐出し得るように、典型的には、従来、高圧ポンプと呼ばれていた範疇のポンプを指す。また、この高圧ポンプは、典型的には、一段階の圧力の作動油を吐出するポンプからなるけれども、所望ならば、複数段の圧力を与え得るポンプ機能部分からなっていてもよい。
【0013】
工具について、ピストンロッドの先端部に「設けられる」とは、典型的には、取付けられることを指し、取付けは、典型的には、多少なりとも、取外しないし交換可能であるけれども、所望ならば、取外し不能に固着される場合を含む。また、「設けられる」とは、ピストンロッドの先端部自体が工具として形成されるような場合も含み得る。
【0014】
本発明の手動式油圧装置では、典型的には、手動式油圧ポンプの筐体と油圧シリンダ機構の筐体とが一体的に固定され、レバーが手動式油圧ポンプ及び油圧シリンダ機構の両方に対して、特定の状態で作動可能に係合される。
【0015】
本発明の手動式油圧装置では、典型的には、油圧シリンダ機構がピストンの両側の油室を貫通して両端のシリンダ端壁から突出した一対のピストンロッドを備え(即ち、油圧シリンダ機構が、所謂、両ロッドシリンダからなる)、該一対のピストンロッドのうち先端側のピストンロッドの先端側に前記工具が設けられ、手動式油圧装置の前記最初の動作において前記レバーが前記一方の向きに揺動される際に、前記一対のピストンロッドのうち基端側のピストンロッドの基端側部分に、前記レバーが係合されるように構成される。
【0016】
この場合、油圧シリンダ機構が両側にピストンロッドを備えるので、工具が設けられていない側のピストンロッドをレバーと係合して該レバーによって押圧されるために用い得る。
【0017】
なお、油圧シリンダ機構の一対のピストンロッドは、典型的には、同じ程度の断面積を有する。但し、所望ならば、基端側が先端側より太くても細くてもよい。なお、一対のピストンロッドが同程度の断面積を有する場合、作動油の大きな溜め部を別途形成する必要がないので、構造の簡単化が更に図られ得る。
【0018】
本発明の手動式油圧装置では、典型的には、手動式油圧ポンプの吸込側逆止弁と油圧シリンダ機構の先端側油室との間に連通されバッファとして働く容積可変室を有する。
【0019】
この場合、手動式油圧ポンプのポンプ動作(吸込段階及び吐出段階)におけるポンプ室(ピストンが往復動されるシリンダ穴に連通し吸込弁から吐出弁に至る間の領域)の容積変動を吸収するために、典型的には、該作動油収容領域がバッファとして働く容積可変領域につながれる。ここで、容積可変領域は、典型的には、手動式油圧ポンプの吸込側逆止弁と油圧シリンダ機構の先端側油室との間に連通した有底穴の開口側を有底ゴム管で塞ぐことにより形成する。材料は、ゴムの代わりに他の可撓性ないし弾性材料でもよい。なお、ポンプ動作以外の理由(例えば、温度変動、断面積等の不均一性等)によっても、作動油収容領域の変動があり得、これらの変動もバッファとして働く容積可変領域によって吸収され得る。バッファ領域が、有底穴と有底ゴム管とにより形成される場合、作動油収容領域が外界に対して完全に密閉された領域内に収容され得、長期間安定に保持され易い。
【0020】
なお、この手動式油圧装置では、典型的には、油圧シリンダ機構は該機構のピストンを戻り方向に偏倚させるバネを備える。その場合、仕事が完了して、油圧を解除すると、該バネの力によって、油圧シリンダ機構のピストンが当初の位置に戻ると共に二つの油室間の油の出入りも行われる。ここで、油圧の解除は、典型的には、油圧シリンダ機構の基端側に位置する入力側油室に連通した通路(穴部)と該油圧シリンダ機構の先端側に位置する出力側(負荷側)油室にに連通した通路(穴部)との間に位置する戻り弁を開いて該二つの通路(穴部)を連通させることからなる。
【0021】
本発明の手動式油圧装置では、典型的には、前記レバーが該レバー回動ピンのまわりで回動可能に前記油圧ポンプの筐体に取付けられており、手動式油圧装置の前記最初の動作において前記レバーが前記回動ピンの周りで前記一方の向きに回動された際、前記レバーうち前記回動ピンよりも先端側の腕部分の先端部が前記基端側ピストンロッドの前記基端部分を押圧可能であり、前記レバーのうちで前記回動ピンよりも手前側の腕部分のうち前記回動ピンの近傍に位置する部分が、前記油圧ポンプのピストンを吸込み方向に変位可能である。
【0022】
この場合、レバーに加える回動力が、効果的に、油圧シリンダ機構の最初の動作をさせ、且つ油圧ポンプの最初の吸込動作を行わせ得る。
【0023】
本発明の手動式油圧装置では、前記基端側ピストンロッドの前記基端側部分が回動自在なローラを備え、該ローラに対してレバーの先端側の腕部分の前記先端部が係合する。
【0024】
この場合、レバーの回動に伴って多少なるとも生じる横方向のズレがローラの回動自在によって吸収されるので、前記基端部のあるピストンロッドに横向きの過度な力がかかるのを避け得る。
【0025】
本発明の手動式油圧装置のピストンロッドの先端部に設けられる工具は、被加工物(ワーク)の配設のために工具の先端部と被加工物との間に間隙が残るような種類の工具であって、実際の加工作業が行われる前に、実際上無負荷状態で工具を被加工物に近接ないし当接させる必要がある限り、どのような作業を行う工具であってもよい。
【0026】
なお、手動式油圧ポンプと油圧シリンダ機構との結合がレバーに限られないことを考慮すると、本発明の手動式油圧装置は、前記目的を達成すべく、手動式油圧ポンプと、ピストンの一端に備わるピストンロッドの先端に工具が設けられるように構成され、前記手動式油圧ポンプにより該ピストンの前記一端側の油室から作動油を吸込みピストンの他端側の油室に該作動油を吐出することで作動せしめられる油圧シリンダ機構とを有する手動式油圧装置であって、前記ピストンを前記作動油以外の手段で作動させて前記工具を作動位置に設定するように構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0028】
本発明の好ましい一実施例の手動式油圧装置1は、図1の(a)及び(b)、図2、図3の(a)及び(b)、並びに図4の(a)及び(b)に示したように、レバー2と、手動式油圧ポンプ3と、油圧シリンダ機構4とを有する。すなわち、この手動式油圧装置1は、手動式油圧ポンプ3と油圧シリンダ機構4とがレバー2を介して一体化されたユニットの形態を採る。図1の(b)に示した例では、レバー2は大きく下方に曲がっているけれども、操作者が該レバー2の端部を把持して加える押下げ力が最小限で済むようにするためには、他に障害物等の制約がない限り、該レバー2は、基端部から先端部まで実際上真直ぐ延びていればよい。
【0029】
以下では、説明の便宜上、図1の(a)及び(b)、図2、図3の(a)及び(b)、並びに図4の(a)及び(b)に示したように、ポンプ筐体10に固定された三次元直交座標系X,Y,Zを採る。
【0030】
油圧シリンダ機構4は、後で詳述するように、手動式油圧装置被加工物ないしワークが配設されるワーク保持部を備えた基台5(図2では想像線で示す)に取り付けられる。
【0031】
油圧シリンダ機構4は、図1の(a)及び(b)並びに図2に示したように、シリンダブロックないしシリンダ機構本体70を有する。
【0032】
該シリンダブロック70は、Z方向に延びたシリンダ穴71と、該シリンダ穴71の両端の壁部すなわち両端壁70a,70bに形成された貫通孔72a,72bとを備える。シリンダ穴71は、大径穴部71aと小径穴部71bとからなり、小径穴部71bには、戻し用コイルばね73が配設されている。大径穴部71aの周壁70cのうち大径穴部71aの両端に位置する部分70d,70eには、作動油出入孔74,75が形成されている。作動油出入孔75は、図2及び図3の(a)からわかるように、X−Y平面に平行な面内でY方向に延びている。一方、作動油出入孔74は、この例では、Y方向に延びた穴部74aと、一端で該穴部74aに連通しZ方向に延びた穴部74bと、一端で該穴部74bの延在端に連通しY方向に延びた他端がシリンダブロック70の外表面で開口した穴部74cとからなる。
【0033】
油圧シリンダ機構4は、更に、シリンダブロック70に嵌合されたピストン構造体80を備える。
【0034】
ピストン構造体80は、大径のピストン本体81と、該ピストン本体81の先端側においてピストン本体81と同軸に延びた先端側ピストンロッド82と、該ピストン本体81の基端側においてピストン本体81と同軸に延びた基端側ピストンロッド83とを有する。
【0035】
大径のピストン本体81は、シリンダ穴71の大径穴部71aに対してZ方向に摺動自在に且つ油密に嵌合され、ピストンロッド82,83は、夫々、シリンダブロック70の対応する貫通孔72a,72bに対してZ方向に摺動自在に且つ油密に嵌合されている。
【0036】
先端側ピストンロッド82の先端部82aには工具T(図2〜図4では図示せず)の取付部82bが形成されている。基端側ピストンロッド83の基端部83aには、押圧力受部84が形成されている。押圧力受部84は、基端側ピストンロッド83の基端部83aに固定された受部基台部84aと、該受部基台部84aからY方向に延びた一対の腕部84b,84b間に支持されX方向に延びたピン85と、該ピン85に遊嵌され該ピン85のまわりで回転自在な管状体ないしローラ86とを有する。
【0037】
基端側ピストンロッド83のうち該基端部83aよりもシリンダブロック70に近接した側には、ねじ部83bが形成され、該ねじ部83bには雌ねじの切られたほぼ円柱状のストローク調整ねじ87が嵌合されている。このストローク調整ねじ87のシリンダブロック70に対面する側の端面87aがシリンダブロック70の対向端面70fに当接する位置において、シリンダブロック70に対してピストン構造体80がZ方向に可動な限界が規定される。
【0038】
このストローク調整ねじ87を中心軸線Aのまわりで回すと、該ストローク調整ねじ87が基端側ピストンロッド83に対してZ方向に変位され、シリンダブロック70に対してピストン構造体80がZ方向に可動な範囲が調整ないし変更され得る。
【0039】
手動式油圧ポンプ3は、ポンプ筐体10を備える。ポンプ筐体10には、手動式油圧ポンプ3の本体30が形成されている。すなわち、ポンプ筐体10は、ポンプピストン31が摺動自在に嵌合されるシリンダ穴11、吸込弁32の弁体をなすボール41が当接される弁座42を規定する大径穴12及び小径穴13、並びに吐出弁33の弁体をなすボール44が当接される弁座45を規定する大径穴14及び小径穴15を有すると共に、吸込用開口34及び吐出用開口35を有する。吸込弁32のボール41は大径穴12内に配置されリテーナで支持された弁ばね43によって弁座42に押付けられ、吐出弁33のボール44は大径穴14内に配置されリテーナで支持された弁ばね46によって弁座45に押付けられる。
【0040】
吸込弁32は、図3の(a)からわかるように、大径穴12において、X方向連通穴16を介してシリンダ穴11に連通されると共に、Z方向延在小連通穴17につながっている。一方、吐出弁33は、図3の(b)からわかるように、小径穴15において、Z方向延在小連通穴17につながっている。
【0041】
ポンプ筐体10の吸込用開口34は、図3の(a)に示したように、シリンダブロック70の作動油出入孔74の穴部74cの開口に対面・連通し、ポンプ筐体10の吐出用開口35は、図3の(a)及び(b)からわかるように、シリンダブロック70の作動油出入孔75の開口に対面・連通している。
【0042】
ポンプ筐体10の吸込用開口34は、図3の(a)からわかるように、Y方向に延びる吸込穴部18、及び該吸込穴部18の延在端に連通しX方向に延びる第一横方向穴部19を介して吸込弁32の小径穴13に連通している。一方、ポンプ筐体10の吐出用開口35は、図3の(b)からわかるように、Y方向に延びる吐出穴部21、及び該吐出穴部21の延在端から90度曲がってX方向に延びた吐出連通穴部22を介して吐出弁33の大径穴14に連通している。
【0043】
なお、図3の(b)からわかるように、第一横方向穴部19に連通したZ方向穴部23と交わるY方向穴部24と、吐出穴部21に連通したX方向穴部25との間には、ボール弁46の形態の戻し弁36が配置され、筐体10の雌ねじ部48に螺合した雄ねじ部(バルブねじ)47をハンドル36aを回して該バルブねじ47をX方向に進退させることにより、戻し弁36による穴部24,25の連通及びその遮断が行われる。
【0044】
図3の(a)において、49はリリーフ弁であり、該リリーフ弁49は、連通穴26を介してシリンダ穴に連通され、ポンプ本体20のポンプ室30a内の油圧が所定のレベルを越えると該ポンプ室30a内の油圧を開放する。
【0045】
ポンプ筐体10は、更に、図3の(a)並びに図4の(a)及び(b)からわかるように、第一横方向穴部19に連通したZ方向小連通穴27、該穴27に連通したY方向内部穴28、及び該穴28に一端側で連通した別のZ方向小連通穴29の他端に連通した大径の有底穴部51を備え、該有底穴部51には、ゴムの如き弾性材料ないし可撓性材料よりなる膜体52が配設されている。この膜体52は、蓋体53により該穴部51の開口54をシールするように取り付けられている。なお、この蓋体53は、貫通孔55を有する。
【0046】
従って、作動油の油圧が変動するような場合には、膜体52が変形することにより、膜体52と有底穴部51との間の領域Vの容積が変動して、該油圧変動を直ちに吸収し得る。
【0047】
手動式油圧ポンプ3の本体30のポンプピストン31は、基部側の大径柱状部31aと、該大径柱状部31aの先端側において同軸に延びた小径柱状部31bとからなる。小径柱状部31bには、シールリング31cが装着されている。一方、ポンプ筐体10のシリンダ穴11も、Z方向に延びた大径穴部11aと該大径穴部11aの先端からZ方向に延びた小径穴部11bとからなり、該小径穴部11bにおいて、前述のX方向連通穴16に連通している。ここで、基部側の大径柱状部31aは、ポンプピストン31をZ方向に案内する役割をし、ピストンとして機能するのは、先端側の小径柱状部31bである。従って、この小径柱状部の形態のピストン31bは、実際上、従来の高圧ピストンとして働く(すなわち、大径部が低圧ピストンとして働き先端側小径部が高圧ピストンとして働く従来のピストン構造体の高圧ピストンに相当する部分が、このピストン部31bに相当し、ピストン31に相当する)。すなわち、ポンプピストン31は、従来の高圧ピストンに相当する。
【0048】
ここで、手動式油圧ポンプ3のポンプ本体30のポンプ室30aは、シリンダ穴17bと、吸込弁32の大径穴12と、吐出弁33の小径穴15と、シリンダ穴17b及び吸込弁32の大径穴12を連通するX方向穴16と、該X方向穴16を介して吐出弁33の小径穴15をシリンダ穴17bに連通するZ方向穴17とからなる。
【0049】
レバー2は、一端部91の近傍に回動軸取付部92を有すると共に、該回動軸取付部92の近傍で前記端部91とは反対側にポンプピストン係合部93を有する。レバー2は、更に、前記一端部91に、該端部91から更に突出するシリンダピストン係合突起部94を備える。
【0050】
すなわち、レバー2は、その先端部近傍の回動軸取付部92において、中心軸線CのまわりでC1,C2方向に回動可能にポンプ筐体10に対して取付けられている。より詳しくは、レバー2は、回動軸取付部92においてX方向に延在するピン95に回動可能に取付けられている。ここで、ピン95は、ポンプ筐体10からZ方向に突設された軸96の先端部に取付けられている。従って、ピン95がレバー2のC1,C2方向回動の支点となる。
【0051】
レバー2のポンプピストン係合部93は、ポンプピストン31の基端側突出部31dにY方向に支持されたピン31eにX方向延在ピン93aで係合するように該ピン93aを支持している。従って、レバー2が、中心軸線CのまわりでC1,C2方向に回動された際に、ピン93a,31eの係合を介して、ポンプピストン31をD1方向に引上げたり、D2方向に押込んだりする。
【0052】
レバー2の先端部のシリンダピストン係合突起部94は、レバー2がC1方向に回動されることにより該シリンダピストン係合突起部94がE1方向に揺動される際に、基端側ピストンロッド83の押圧力受部84のピン85に遊嵌されたローラ86をF1方向に押し下げる。レバー2がC1方向に最大限回動されることにより、ピストンロッド83が一端F1方向に押し下げられると、その後は、レバー2のC1,C2方向回動によっては、レバー2の係合突起部94は、ローラ86には当接しない。
【0053】
次に、以上の如く構成された手動式油圧装置1を圧入工具Tと組合わせて形成した手動式油圧作動圧入装置1aの動作を、主として、図5の(a)及び(b)並びに図6の(a)及び(b)に基づいて、詳細に説明する。
【0054】
手動式油圧作動圧入装置1aにおいて、シリンダ機構4のシリンダブロック70が固定された基台ないし支持枠体5の下部には、台座5aが設けられている。油圧シリンダ機構4のピストン構造体80の先端側ピストンロッド82の先端部82aには、工具としての圧入具Tが形成されている。この例では、作業は、第一の被加工物W1の穴Whに第二の被加工物W2を圧入することからなる。ここで、第一の被加工物W1の穴Whは、比較的大径の上部部分Wh1と比較的小径の下部部分Wh2とからなり、第二の被加工物W2は、上部の大径穴部分Wh1には自重又は手により挿入され得るけれども、下部の小径穴部分Wh2には大きな外力なしには挿入できない程度の相対径を有するものとする。
【0055】
図5の(a)は、作業開始段階Q0を示す。この作業開始段階P0では、手動式油圧作動圧入装置1aが初期状態S0にある。この状態S0において、第一被加工物W1が台座5aの所定の被加工位置にセットされ、第二被加工物W2のセッティングが開始される。
【0056】
より詳しくは、作業開始段階Q0に入るに際しては、手動式油圧作動圧入装置1aを構成する手動式油圧装置1が、次のような状態に設定される。
(1)手動式油圧ポンプ3のレバー2は、休止位置ないし初期位置として、C2方向に最大限回動された位置(図1の(b)及び図2において実線で示し、図5の(a)で示した位置)R0を採る。
(2)このとき、手動式油圧ポンプ3のピストン31はD2方向に最大限押下げられてピストン31の大径部31aの下端部31fがシリンダ穴11の大径穴部11aと小径穴部11bとの段差部11cないし大径穴部11aの端面11cに当接する吐出完了(吸込開始前)位置J0を採る。
(3)なお、レバー2がC2方向に最大限回動した初期位置R0を採る場合、レバー2の先端部にあるシリンダピストン係合突起部94は、E2方向に最大限揺動した初期位置K0を採る。
(4)手動式油圧ポンプ3の戻しハンドル36aを回すことにより戻し弁36が開かれる。
これにより、油圧シリンダ機構4の油室76,77に夫々作動油出入孔74,75を介してつながった吸込用開口34と吐出用開口35とが連通されるので、油室76内のコイルばね73のF2方向伸長力に応じたピストン本体81のF2方向変位に伴い、作動油が、油室77から、作動油出入孔75、開口35、穴部21,25、弁36、穴部24,23,19,18、開口34、作動油出入穴74を通って油室76に戻る。このピストン本体81のF2方向変位は、ピストン本体81がシリンダブロック70のシリンダ穴71の端壁70bに当接するところで停止し、作動油の流れも停止する。
この状態において、戻しハンドル36aを回して、戻し弁36を閉じる。
(5)従って、作業開始段階Q0においては、油圧シリンダ機構4は、図2において実線で示し且つ図5の(a)において示したように、ピストン本体81がシリンダ穴71の上側の端壁70bに当接する初期位置PC0を採る。油圧シリンダ機構4の初期位置PC0では、ピストンロッド82,83がF2方向に最も偏倚した位置を採り、基端側ピストンロッド83の基端部83aにある押圧力受部84も最も上方F2に上がった位置L0を採る。
(6)油圧シリンダ機構4が初期位置PC0にある場合には押圧力受部84が最も上方F2に上がった位置L0を採るけれども、レバー2が初期位置R0にあるときには、シリンダピストン係合突起部94がE2方向に最大限揺動して上方に上がった初期位置K0を採るので、レバー2のシリンダピストン係合突起部94と油圧シリンダ機構4の押圧力受部84との間には、間隙Gが残る。
【0057】
図5の(a)からわかるように、この状態では、油圧シリンダ機構4のピストン構造体80がF2方向に偏倚した上端位置PC0を採るので、ピストン構造体80の先端側ピストンロッド82の先端部に形成された圧入工具Tの下端Taと第一被加工物W1の上端W1aとの間には、高さH0の間隙Gtが形成される。この間隙Gtの高さH0は、第二被加工物W2の高さH2と同程度であるけれども該高さH2よりも少し大きい。従って、第二被加工物W2は、圧入工具Tの下端Taと第一被加工物W1の上端W1aとの間の間隙Gtを介して、第一被加工物W1の穴Whに整列され(図5の(a)の実線)、次に、該穴Whのうち大径穴部Wh1に第二被加工物W2の下部部分が挿入される(図5の(a)の想像線及び、図5の(b)の実線)。
【0058】
この状態(位置)PC0において、油圧シリンダ機構4のピストン構造体80の先端側ピストンロッド82の先端部に形成された圧入工具Tの下端Taと第一被加工物W1の穴Whの上部部分Wh1に部分的に挿設された第二被加工物W2の上端W2aとの間には、大きさ(高さ)H1の間隙Ga(図5の(b)参照)が残る。
【0059】
被加工物W1,W2の挿設が完了すると、次に、レバー2がC1方向に回動される。該レバー2のC1方向回動によりレバー2が僅かに(角度αだけ)傾いた回動位置R1に達すると、図5の(b)に示したように、レバー2の先端にあるシリンダピストン係合突起部94が、E1方向に揺動されて初期位置K0から早送り開始位置K1に達して、上端位置L0にある油圧シリンダ機構4のピストン構造体80の押圧力受部84に当接し、手動による早送りが開始可能な状態S1になり、早送り開始段階Q1に入る。
【0060】
ここで、レバー2のC1方向に伴いポンプピストン31が初期位置J0から位置J1までD1方向に引上げられるので、小径シリンダ穴部11bの空洞の拡大に応じて、穴部13,19,27,28,29に連通した容積可変領域Vの作動油が吸込弁32を介して小径シリンダ穴部11bに吸込まれる。
【0061】
図5の(b)に示した当接位置R1から、レバー2を更にC1方向に回動させると、該レバー2のC1方向回動に伴うシリンダピストン係合突起部94のE1方向揺動に応じて、シリンダピストン係合突起部94が油圧シリンダ機構4のピストン構造体80の押圧力受部84をF1方向に押し下げるので、ピストン構造体80がF1方向に変位され、該ピストン構造体80の先端側にある圧入工具Tの下端部Taが第二被加工物W2の上端W2aに近接し、当接した早送り完了(圧入開始準備完了)状態S2に達する(図6の(a))。すなわち、レバー2の位置R1からR2へのC1方向回動に応じて、該レバー2の先端側のシリンダピストン係合突起部94が早送り開始位置K1から早送り完了位置(圧入開始位置)K2へとE1方向に揺動され、シリンダ機構4のピストン構造体80の上端の押圧力受部84が初期位置L0から早送り完了(圧入開始準備完了)位置L1へとF1方向に押下げられ、ピストン構造体80も初期位置PC0から早送り完了(圧入開始準備完了)位置PC1にF1方向に押下げられた早送り完了(圧入開始準備完了)段階Q2に達する。
【0062】
圧入工具Tが第二被加工物W2に当接すると、それ以上のレバー2のC1方向回動は、実際上、禁止される(なお、第二被加工物W2の第一被加功物W1の穴内への挿入が比較的軽い力で行われる余地が残っているような場合には、レバー2が更にC1方向に多少回動され、その後、該回動が実際上禁止されるようなこともあり得る)。
【0063】
図5の(a)に示した初期状態S0から図6の(a)に示した早送り完了(圧入開始準備完了)状態S2へのレバー2のC1方向回動さに応じて、ポンプピストン31のD1方向引上げが継続され、ポンプ本体30の吸込弁32からの作動油の吸込が更に進行する。レバー2のC1方向回動が停止(禁止)されると、吸込弁32のボール41が弁座42に当接して吸込弁32が閉じられる。
【0064】
以上のように、図5の(a)の初期状態S0から図5の(b)の早送り開始状態S1を経て図6の(a)の早送り完了(圧入開始準備完了)状態S2に至る間に、レバー2は、人手により初期位置R0から早送り開始位置R1を経て油圧シリンダ機構4によって禁止される早送り完了回動位置R2まで、C1方向に回動される。なお、この早送り完了回動位置R2は、図5(b)に示した間隙Gaの大きさH1に依存する。すなわち、レバー2の早送り完了回動位置R2は、被加工物の種類や状態に依存するものである。但し、レバー2において、初期位置R0及び早送り開始位置R1とは異なる位置に早送り完了回動位置R2があることには、変りがない。初期位置R0から早送り完了回動位置R2に至るまでのレバー2のC1方向回動により、一方では、手動式油圧ポンプ3のポンプ本体30に作動油が吸込まれ、他方では、圧入工具Tと被加工物W2との間にあった間隙Gaがなくなるまで、圧入工具Tが被加工物W2に近接せしめられて当接される。
【0065】
すなわち、上記のようなレバー2の操作は、ポンプピストン31を初期位置J0から途中位置J1(図5の(b)の早送り開始状態S1に対応する位置)を経て早送り完了位置J2までD1方向に引上げることにより、一方では、高圧の油圧ポンプ3による作動油の一応の吐出準備を完了させている。
【0066】
また、上記のようなレバー2の操作において、シリンダ機構4のピストン構造体80がレバー2のシリンダピストン係合突起94によってF1方向の押圧力を受けると、油室76の作動油が、穴部74、開口34、穴部19,13を介して吸込弁32を開いて穴部12に入り、更に、穴部17,15を介して吐出弁33を開き、更に、穴部14,22,21、開口35及び穴部75を介して油室77に入ることにより、ピストン構造体80がF1方向に移動せしめられる。ここで、吸込弁32及び吐出弁33のばね43,46は弱く設定されているので、比較的小さな力がピストンロッド83にかかるだけで、ピストン構造体80がF1方向に変位せしめられ得る。その結果、上記のようなレバー2の操作において、圧入工具Tの先端Taが被加工物W2の体後端部W2aに当接することにより、圧入工具Tが直ちに圧入仕事を開始する準備を完了させている(無駄なストロークないし間隙をなくしている)。
【0067】
次に、図6の(b)に示した加圧(ポンプアップ)段階Q3に入る。
【0068】
図6の(a)に示した早送り完了(圧入開始準備完了)状態S2の位置R2から初期位置R0へとレバー2をC2方向に回動させると、ポンプピストン31がD2方向に変位されて、作動油が、吐出弁33を介して油圧シリンダ機構4の油室77に供給される。ここで、初期位置R0は、一回の吐出完了位置でもある。
【0069】
その結果、油圧シリンダ機構4の油圧の力によって、油室77に供給された作動油の量に相当する距離だけピストン構造体80及びこれと一体的な圧入工具TがF1方向に変位されて、圧入仕事が行われる。
【0070】
一方、油圧シリンダ機構4のピストン構造体80のピストン本体81のF1方向変位に伴う油室77の拡大に応じた油室76の減少に従って、作動油が油室76から穴部74を通って開口34に至り、穴部18,19,27,28,29を通って容積可変領域Vに逃げる。
【0071】
従って、油室77に入る作動油の量ないし油室76から出る作動油の量に対応する距離だけピストン本体81及びこれと一体的な工具Tが、ポンプ3による油圧力の作用下で、F1方向に移動せしめられる。なお、手動式ポンプ3から吐出可能な作動油の油圧は、操作者がレバー2を把持して力を加える部位M(図1の(a))と回動中心Cとの間の腕の長さとポンプピストン31と回動中心Cとの間の水平方向の腕の長さとの比分だけ高い状態でシリンダ機構4の油室77に供給され得る。この例では、油室77,76の断面積は実際上同じで、油圧分がそのままF1方向の圧入力として働く。
【0072】
次に、レバー2をC1方向に回動させると、ポンプ本体30の吸込弁32を介して容積可変領域Vの作動油がポンプ室30aに吸込まれる。なお、図6の(b)等からもわかるように、この状態では、油圧シリンダ機構4のピストン構造体80は図6の(a)に示した位置よりもF1方向に変位されているので、これ以後のレバー2のC1方向変位では、レバー2のシリンダピストン係合突起部94がピストン構造体80の押圧力受部84に当る可能性は低くなる(但し、当初の間隙Gaの大きさH1が比較的小さかった場合には、油圧ポンプ3による一回目の送りではシリンダ機構4のピストン構造体80がF1方向に少ししか下がっていないこともあり得、そのような場合には、その後、一回又は複数回は、レバー2のC1方向回動に際してシリンダピストン係合突起部94がピストン構造体80の押圧力受部84に当ることもあり得る;但し、徐々にその程度は少なくなる)。すなわち、これ以後のレバー2のC1方向変位は、手動式油圧ポンプ3による容積可変領域Vからの作動油の吸込みを行わせ、レバー2のC2方向変位は、手動式油圧ポンプ3による容積可変領域Vから油室77への作動油の供給及び油室76から容積可変領域Vへの作動油の送出を行わせる。即ち、レバー2の一回のC1,C2方向往復回動により、油室76の作動油が容積可変領域Vを介して油室77に送られる。従って、手動式油圧ポンプ3からの作動油により油圧シリンダ機構4を駆動して該機構4に取付けられた圧入工具Tによる圧入処理を行わせる。この間、容積可変領域Vがバッファの役割を果たす。
【0073】
以上の手動式油圧ポンプ3のポンプ動作において、典型的には、レバー2は、当初の期間を除いて、図6の(b)において想像線で示したC1方向最大回動位置R3と初期位置R0との間で、C1,C2方向に往復回動される。上記のように、位置R3は、位置R2と同じか該位置R2よりもC1方向に回動した位置である。なお、レバー2が、最大回動位置R3にある際、ポンプピストン31がD1方向の最大引上げ位置J3に達する。この最大引上げ位置J3は、この例では、ピン93aが端部31dに遊嵌されている程度に依存する。
【0074】
その結果、シリンダ機構4のピストン構造体80及びこれと一体的な圧入工具Tが位置PC1から図6の(b)に示した圧入完了位置PC2に達し、圧入仕事が完了する。なお、このとき、ピストン構造体80と一体的な押圧力受部84は、位置L1よりも下の位置L2に達している。
【0075】
以上においては、工具Tが圧入工具からなる例について説明したけれども、被加工物のセッティングに際して間隙Gaが生じるのを避け難い種類の仕事においては、ポンプ3の吸込動作においてレバー2によってシリンダ機構4のピストン構造体80を(油圧を利用することなく機械的に)直接的に早送りさせる点で、この手動式油圧装置1は、低圧ポンプを不要とするだけでなく、低圧ポンプがある場合よりも短時間で仕事を行い得ることは、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の好ましい一実施例の手動式油圧装置を示したもので、(a)は(b)のIA方向平面説明図、(b)は(a)のIB−IB線断面説明図。
【図2】図1の(b)に示した手動式油圧装置を拡大して示した断面説明図。
【図3】図1の手動式油圧装置の横断面を示したもので、(a)は図2のIIIA−IIIA線に沿って主として吸込フロア(吸込弁のあるZ方向位置)を示す断面説明図、(b)は図2のIIIB−IIIB線に沿って主として吐出フロア(吐出弁のあるZ方向位置)を示す断面説明図。
【図4】図2の手動式油圧装置の横断面を示したもので、(a)は図2のIVA−IVA線に沿って主としてバッファ通路(穴部)のあるフロア(バッファ通路のあるZ方向位置)を示す断面説明図、(b)は図2のIVB−IVB線に沿って主としてバッファ部のあるフロア(バッファ部のあるZ方向位置)を示す断面説明図。
【図5】図2の手動式油圧装置に工具として圧入工具を取付けてなる手動式油圧作動圧入装置の動作を示したもので、(a)は作業開始前の状態を示した断面説明図、(b)は早送り開始状態を示した断面説明図。
【図6】図2の手動式油圧装置に工具として圧入工具を取付けてなる手動式油圧作動圧入装置の動作を示したもので、(a)は早送りが完了し圧入開始前の状態を示した断面説明図、(b)は加圧状態(ポンプアップ状態)を示した断面説明図。
【符号の説明】
【0077】
1 手動式油圧装置
1a 手動式油圧作動圧入装置
2 レバー
3 手動式油圧ポンプ
4 油圧シリンダ機構
5 基台(支持枠)
5a 台座
10 ポンプ筐体
11 シリンダ穴
11a 大径穴部
11b 小径穴部
12 大径穴
13 小径穴
14 大径穴
15 小径穴
16 X方向連通穴
17 Z方向延在連通穴
18 吸込穴部
19 第一横方向穴部
21 吐出穴部
22 吐出連通穴部
23 Z方向穴部
24 Y方向穴部
25 X方向穴部
26 連通穴
27 Z方向小連通穴
28 Y方向内部穴
29 Z方向小連通穴
30 ポンプ本体
30a ポンプ室
31 ポンプピストン
31a 大径柱状部
31b 小径柱状部
31c シールリング
31d 基端側突出部
31e ピン
31f 下端部
32 吸込弁
33 吐出弁
34 吸込用開口
35 吐出用開口
36 戻し弁
36a ハンドル
41 ボール
42 弁座
43 弁ばね
44 ボール
45 弁座
46 弁ばね
47 雄ねじ部(バルブねじ)
48 雌ねじ部
49 リリーフ弁
51 有底穴部
52 膜体
53 蓋体
54 開口
55 貫通孔
70 シリンダブロック(シリンダ機構本体)
70a,70b 端壁
70c 周壁
70d,70e 両端部分
70f 対向端面
71 シリンダ穴
71a 大径穴部
71b 小径穴部
72a,72b 貫通孔
73 戻し用コイルばね
74,75 作動油出入孔
74a Y方向穴部
74b Z方向穴部
74c Y方向穴部
76,77 油室
80 ピストン構造体
81 ピストン本体
82 先端側ピストンロッド
82a 先端部
82b 工具取付部
83 基端側ピストンロッド
83a 基端部
83b ねじ部
84 押圧力受部
84a 受部基台部
85 ピン
86 ローラ
87 ストローク調整ねじ
87a 端面
91 一端部
92 回動軸取付部
93 ポンプピストン係合部
93a X方向延在ピン
94 シリンダピストン係合突起部
95 ピン
96 軸
A 中心軸線
C 中心軸線
C1,C2 回動方向
D1,D2 方向
E1,E2 方向
F1,F2 方向
J0,J1,J2,J3 ポンプピストンの位置
K0,K1,K2 シリンダピストン係合突起の位置
L0,L1,L2 押圧力受部の位置
PC0,PC1,PC2 シリンダ機構のピストン構造体の位置
Q0,Q1,Q2,Q3 作業段階
R0,R1,R2,R3 レバーの位置
S0,S1,S2 装置の状態
T 圧入工具
Ta 下端面
V 容積可変領域(バッファ)
W1,W2 被加工工具
W2a 上端面
Wh 穴
X,Y,Z 方向(三次元直交座標系の座標軸の方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復揺動可能なレバーと、
前記往復揺動のうちの一方の向きに前記レバーが揺動された際に作動油が吸込まれ他方の向きに前記レバーが揺動された際に作動油が吐出されるようにレバーに連結された手動式油圧ポンプと、
ピストンロッドの先端部に工具が設けられるように構成され手動式油圧ポンプからの作動油によって作動せしめられる油圧シリンダ機構と
を有する手動式油圧装置であって、
該手動式油圧装置の最初の動作において、前記レバーが前記一方の向きに揺動される際に前記工具を作動位置に設定すべく、該レバーが前記油圧シリンダ機構と係合するように構成された手動式油圧装置。
【請求項2】
油圧シリンダ機構がピストンの両側の油室を貫通して両端のシリンダ端壁から突出した一対のピストンロッドを備え、
該一対のピストンロッドのうち先端側のピストンロッドの先端側に前記工具が設けられ、
手動式油圧装置の最初の動作において前記レバーが前記一方の向きに揺動される際に、前記一対のピストンロッドのうち基端側のピストンロッドの基端側部分に、前記レバーが係合されるように構成された請求項1に記載の手動式油圧装置。
【請求項3】
手動式油圧ポンプの吸込側逆止弁と油圧シリンダ機構の先端側油室との間に連通されバッファとして働く容積可変室を有する請求項2に記載の手動式油圧装置。
【請求項4】
前記レバーが該レバー回動ピンのまわりで回動可能に前記油圧ポンプの筐体に取付けられており、
手動式油圧装置の前記最初の動作において前記レバーが前記回動ピンの周りで前記一方の向きに回動された際、前記レバーうち前記回動ピンよりも先端側の腕部分の先端部が前記基端側ピストンロッドの前記基端部分を押圧可能であり、
前記レバーのうちで前記回動ピンよりも手前側の腕部分のうち前記回動ピンの近傍に位置する部分が、前記油圧ポンプのピストンを吸込み方向に変位可能である請求項3に記載の手動式油圧装置。
【請求項5】
前記基端側ピストンロッドの前記基端側部分が回動自在なローラを備え、該ローラに対してレバーの先端側の腕部分の前記先端部が係合する請求項4に記載の手動式油圧装置。
【請求項6】
手動式油圧ポンプと、
ピストンの一端に備わるピストンロッドの先端に工具が設けられるように構成され、前記手動式油圧ポンプにより該ピストンの前記一端側の油室から作動油を吸込みピストンの他端側の油室に該作動油を吐出することで作動せしめられる油圧シリンダ機構と、
を有する手動式油圧装置であって、
前記ピストンを前記作動油以外の手段で作動させて前記工具を作動位置に設定するように構成された手動式油圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−216108(P2009−216108A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57266(P2008−57266)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(303015505)三央工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】