説明

手押し式作業台車

【課題】路面が滑りやすい環境においても、その作業位置において安定的に停止し得る手押し式作業台車を提供すること。
【解決手段】手押し式作業台車1は、使用される環境内の金属面に対して吸着可能な永久磁石8と、この永久磁石8による金属面への吸着を解除するための可動ロッド9とを備える。この可動ロッド9は、永久磁石8を金属面から分離するよう動作される。さらに、手押しのための取手7と、この取手7の近傍において、可動ロッド9を操作可能な吸着解除機構10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し式の作業台車に関し、特に、食品製造工場等の路面が濡れた場所において使用するのに適した手押し式作業台車に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造工場等においては、その製造ラインにおいて各作業者が、食材や工具を載せた手押し式の作業台車を利用して作業を行うことが一般的である。従来からこの種の作業台車は、容易にして移動できる一方で、作業位置において安定的に停止できることが望まれており、そのため、その走行車輪に対して負荷を与えるブレーキシューを用いたブレーキ機構やロック機構を備えたものが広く知られている。特許文献1には、台車のハンドル部分に設置したレバーによって、走行車輪のブレーキ機構を動作させている技術が開示されている。また、足踏み式の操作機構によるブレーキ機構なども知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−35500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、食品製造工場等においては、水や油によってその作業路面が濡れていることがしばしばあり、これが、走行する車輪の周囲に付着して、前記ブレーキ機構やロック機構による車輪の制動力を著しく低下させるといった問題がある。また、これらの機構により車輪の回転が安定的に止められている場合においても、濡れた路面に対し車輪が滑ってしまうという問題がある。特に、台車に対する載荷重量が大きくなったり、路面が傾斜しているような場所においては、これらの問題は顕著である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、このような路面が滑りやすい環境においても、その作業位置において安定的に停止し得る手押し式作業台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の手押し式作業台車は、使用される環境内の金属面に対して吸着可能な磁性式吸着手段と、前記磁性式吸着手段による前記金属面への吸着を解除するための吸着解除手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の手押し式作業台車は、請求項1に記載の手押し式作業台車において、前記吸着解除手段が、前記磁性式吸着手段を前記金属面から分離するよう動作される可動ロッド、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の手押し式作業台車は、請求項2に記載の手押し式作業台車において、手押しのための取手部と、前記取手部の近傍において、前記可動ロッドを操作可能な操作機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の手押し式作業台車は、請求項3に記載の手押し式作業台車において、手押し式作業台車の車輪に対するブレーキ手段を更に備え、前記操作機構が、前記可動ロッドと前記ブレーキ手段とを連動して操作可能なものである、ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の手押し式作業台車は、請求項1から4のいずれか一項に記載の手押し式作業台車において、積荷の重さに応じて前記磁性式吸着手段の吸着力を変化させる吸着力調整手段、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の手押し式作業台車は、請求項5に記載の手押し式作業台車において、前記磁性式吸着手段が、複数の吸着面を備え、前記吸着力調整手段が、前記複数の吸着面のうち、少なくとも1つの吸着面の、前記金属面に対する距離を変化させるものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、磁性式吸着手段によって手押し式の作業台車を停止できるようにしているので、路面が濡れているような環境においても、作業台車を安定的に停止させることができるようになる。
【0013】
また、この発明によれば、可動ロッドによって前記磁性式吸着手段を金属面から分離するように構成したため、固定状態からの作業台車の移動を容易に、かつ、確実に行うことができるようになる。また、その構成を極めて単純なものとすることができ、機構を安価に構成できる。
【0014】
また、この発明によれば、取手部の近傍にいて可動ロッドを操作可能にすることによって、固定状態からの解除、及び作業台車の移動を、ほぼ同時に円滑に行うことができるようになる。
【0015】
また、この発明によれば、車輪に対するブレーキ手段を備えて、この動作を前記可動ロッドと連動させるようにしているので、作業台車の停止状態がより安定的になり、その一方で、これらの解除も容易に行い得る。
【0016】
また、この発明によれば、積荷の重さに応じて前記磁性式吸着手段の吸着力を変化させるように構成しているので、台車が傾斜面にあるような場合において、積荷が重いときには磁性式吸着手段の吸着力を高めるように構成することができる。その結果、その重さによって台車が傾斜面を下ろうとする力に抗して、これをしっかりと固定できるようになる。
【0017】
また、この発明によれば、前記磁性式吸着手段が、複数の吸着面を備え、このうち、少なくとも1つの吸着面の、前記金属面に対する距離を変化させる構成としているので、最低限の吸着力を維持しながら、容易にして磁性式吸着手段の全体の吸着力を変化させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る手押し式の作業台車の各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る手押し式の作業台車は、食品製造工場において使用するのに適したものであり、食材や工具を載置するための複数のトレーを備えている。手押し式の作業台車は、走行用の車輪、及び、手押しのための取手を備えている。以下の説明では、手押し式の作業台車の具体的構成について説明するが、本発明の適用範囲が、ここで説明されるトレーの個数や形状、車輪の配置や個数、取手の配置などによって、限定されることはない。
【0020】
この手押し式の作業台車の特徴の一つは、使用される環境内の金属面に対して吸着可能な磁性式吸着手段を備えた点にある。好適な実施の形態においてこの磁性式吸着手段は、永久磁石であり、作業台車の一側面に配置されている。この作業台車が使用される環境内において、金属製の壁面に対し、この磁性式吸着手段を吸着させることによって、作業台車の安定的な固定が実現される。使用環境において、その床面が金属製である場合、本磁性式吸着手段をこの床面に対向して配置することができる。
【0021】
また、この手押し式の作業台車の他の特徴は、前記磁性式吸着手段による金属面への吸着を解除するための吸着解除手段を備えた点にある。好適な実施の形態において、この吸着解除手段は、可動ロッドを含んで構成される。可動ロッドは、その動作時に、それが磁性式吸着手段の吸着面より前に延出して、作業台車を金属面から突き放す。可動ロッドの具体的な構造を以下に示すが、本発明の範囲は、その形状、配置、個数、機構に限定されるものではない。
【0022】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
〔実施の形態1〕
次に、本発明に係る各実施の形態の具体的内容について説明する。まず、実施の形態1について説明する。ここでは、手押し式の作業台車の構造と、その使用方法について順次説明する。
【0023】
(手押し式作業台車の全体構成)
図1は、本実施の形態1に係る手押し式の作業台車の斜視図である。図において、本実施の形態に係る手押し式作業台車1は、スチール製の3段のトレー2と、その四隅でこれらトレーを支える4本の支柱3と、で概略的に骨組構成されており、各支柱3の下端に取り付けられた車輪4によって、自由に走行できるようになっている。各トレー2は、その四周に起立壁2aを備えており、これによって、その上部に置いた食材や番重、工具などがトレー外に滑り落ちないように配慮されている。
【0024】
最上段のトレー2の一側面には、一対のフック爪からなる把持金具5が設けられており、ここに、任意の作業用具を掛けることができるようになっている。また、最上段のトレー2の下面には、2段式の収納ボックス6が備えられている。この収納ボックス6には、各種の工具や食材を収納できるが、一例として、上段に使用前の殺菌済みタオルを、下段に使用済みのタオルを収納する。好適な実施の形態においては、この収納ボックス6は、最上段のトレー2に対して脱着できるように構成される。
【0025】
手押し式作業台車1は、図1における後方側の側面に、取手7を有する。取手7は、作業台車1を手押しして走行させる際の作業者の把持部になるものであるが、本実施の形態における作業台車においては、同時に、後に説明する吸着解除手段の動作レバーとしての機能を有している。
【0026】
また、手押し式作業台車1は、図1における前方側の側面に、本発明に係る磁性式吸着手段としての永久磁石8、及び、吸着解除手段の一部を構成する可動ロッド9を備えている。
【0027】
(手押し式作業台車の構成−永久磁石8)
図1に示すように、永久磁石8は、作業台車1の前方側の側面の、最上段のトレー2下部に沿って配置されている。この永久磁石8は、その側面において、他の部材、すなわち、トレー2、支柱3、車輪4、及び、収納ボックス6よりも、僅かながら外側に突出するようにして、作業台車1の基部1aに埋め込まれている。そのため、作業台車1を、工場内の金属製の壁面に対して付き合わせた際には、この永久磁石8が壁面に接触し、その磁力によって吸着する。好適な実施の形態においては、永久磁石8を基部1a内に納め、この永久磁石8に接触された金属板を作業台車1の側面に露出させる構造を採用できる。永久磁石8のサイズは作業台車1の重量や載置する物品の重量などに応じて決定するのが好ましいが、図に示すように、一般的な磁力の永久磁石を用いる場合、作業台車1の幅の2分の1程度の長さが適当である。永久磁石8による吸着力は、その取り外しの容易さも考慮して定めるのがよい。
【0028】
(手押し式作業台車の構成−可動ロッド9)
前記永久磁石8の両側には、一対の可動ロッド9が設置されている。可動ロッド9は、後述する基部1a内に設置された吸着解除機構によって、その先端部分が出没動作される。すなわち、可動ロッド9は、非動作状態において、その先端面が、作業台車1の側面から僅かに内側に没入している位置にあり、動作状態において、その側面から前方に突出した位置に移動される。作業台車1を、工場内の金属製の壁面に当接させた状態で、可動ロッド9を動作させると、その先端が、永久磁石8の吸着面より前に延出して、壁面を押しつけ、これによって、作業台車は壁面から突き放される。
【0029】
(手押し式作業台車の構成−吸着解除機構)
次に、前記可動ロッド9を動作させる吸着解除機構について説明する。図2は、吸着解除機構10の概略的な機構を示した断面図である。図に示すように、可動ロッド9は、作業台車1の基部1aの円筒状ガイド部1b内において、スライド自在に保持されている。この可動ロッド9は、リンク桿11a、L型リンク11b、及び、リンク桿11cを介して、取手7にリンクされている。取手7は、軸7aを中心に回動自在に支持されており、また、L型リンク11bは、軸11dを中心に回動自在に支持されている。L型リンク11bは、スプリング12によって、常時、図中反時計方向に付勢されている。定常状態において、可動ロッド9の先端は、図2に実線で示すように、作業台車1の側面1cよりも後退した位置にある。この状態から、作業者が、取手7の把持部7bを引き上げる方向に回動させると、リンク桿11cは引き下げられ、L型リンク11bは、スプリング12の付勢力に抗して、時計方向に回動される。これによって、リンク桿11aが、図中左方向に移動して、その先端に取り付けられた可動ロッド9を押す。この結果、可動ロッド9の先端は、図中破線で示されたように、作業台車1の側面1cから外側に突き出る。前記永久磁石8が工場内の壁面に吸着している状態で、前記動作を行うことによって、可動ロッド9の先端はこの壁面を押して、その結果、作業台車1は該壁面から離れて、前記永久磁石8との接合が分離される。図1に示すように、この可動ロッド9は、永久磁石8の両側に設けられており、これらが同時に作用するので、安定的、かつ、確実に、作業台車1を壁面から分離できるようになる。
【0030】
(手押し式作業台車の使用方法)
次に、本実施の形態に係る手押し式作業台車1の一般的な使用方法について、簡単に説明する。作業者は、作業に必要とされる食材や工具を、倉庫その他の保管庫から、この手押し式作業台車1のトレー2上に載せる。取手7を把持して、作業台車1を走行させ、目的の作業位置へ移動させる。作業位置において、その近傍にある金属製の壁面に対して、作業台車1を真っ直ぐに走行させ、その前部を該壁面に突き当てる。これによって、作業台車1の前部に配した永久磁石8は、金属製の壁面に吸着し、作業台車1をここに固定する。この状態において、作業位置の床面が水や油で濡れていて、滑りやすくなっていたとしても、作業台車1は永久磁石8によって壁面にしっかりと固定されているため、動いてしまうことはない。なお、工場内の壁面が金属面で無かったり、固定したい目的の場所が金属製で無いような場合には、予め金属製パネルを貼付けておく必要がある。
【0031】
一方、必要作業が完了し作業台車1を移動したい場合、作業者は、取手7を手前に引く。この動作によって、その引っ張り力における上方向の分力が、取手7を反時計方向に回動させる。これによって吸着解除機構10が動作されて、可動ロッド9が前方より突き出されて壁面を押し、その結果、作業台車1は、壁から分離されて移動可能となる。
【0032】
〔実施の形態2〕
次に、本発明に係る実施の形態2の具体的内容について説明する。この実施の形態2は、先の実施の形態において、可動ロッド9と連動して動作されるブレーキ解除機構を備えた形態である。図3は、実施の形態2に係る吸着解除機構10及びブレーキ解除機構20の概略的な機構を示した断面図である。なお、実施の形態2の構成は特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0033】
本実施の形態2においては、作業台車1は、その車輪4の近傍にブレーキシュー21を備える。ブレーキシュー21は、軸21aにおいて回動自在に支持されており、スプリング22によって、図中反時計方向に付勢されている。その結果、ブレーキシュー21には、定常状態において、車輪4の周面に当接されて、その回転のブレーキとなっている。このブレーキシュー21は、リンク桿23を介して、前記L型リンク11bに連結されている。
【0034】
この構成において、作業者が取手7を引き上げると、L型リンク11bが時計方向に回動する。L型リンク11bの回動によって、先の実施の形態において説明したように、可動ロッド9が側面1cより突出して、壁を押し、これと同時に、リンク桿23は下方に押し下げられて、ブレーキシュー21を、スプリング22の付勢力に抗して回動させる。この結果、前記可動ロッド9が壁面を押すのと同時に、車輪4のブレーキが解除され、作業台車1は、フリーになる。なお、図では示していないが、本実施の形態においては、前記解除状態を保持するロック機構が備えられることが好ましく、これによって、取手7から手を離した状態でも、前記解除状態が維持できるようになる。
【0035】
実施の形態2においては、作業台車1の停車時に、永久磁石8とブレーキシュー21による二重の固定機構が働いて、一層安定的に作業台車1を固定でき、一方で、これら解除機構は連動されているので、その解除も容易である。
【0036】
〔実施の形態3〕
次に、本発明に係る実施の形態3の具体的内容について説明する。この実施の形態3は、最上段のトレー2への載荷重量に応じて磁性式吸着手段の吸着力を可変とした手押し式作業台車の例である。図4は、実施の形態3に係る手押し式台車の一部を拡大して示す斜視図であり、図5は、その吸着力調整機構を示した概略的な断面図である。なお、実施の形態3においても、その構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0037】
本実施の形態3においては、図3に示されるように、作業台車1に備えられる磁性式吸着手段としての永久磁石は、並列的に配置された2つの永久磁石、すなわち、第1磁石30と、第2磁石31とによって構成されている。ここで、第1磁石30は、実施の形態1における永久磁石8と同様に、その吸着面が作業台車1の側面から露出されるように、基部1a内に固定されている。一方で、第2磁石31は、同様に、その吸着面が作業台車1の側面から露出されるように、基部1a内に配置されるが、後述するように、図5で示す吸着力調整手段によって、その吸着面が作業台車1の側面に対して進退調整できるように構成されている。
【0038】
次に、図5に沿って、この吸着力調整手段について説明する。図に示すように、第2磁石31は、基部1a内でスライド自在に保持されており、リンク桿32a、L型リンク32b、リンク桿32cで構成されるリンク機構を介して、最上段のトレー2にリンクされている。実施の形態3において、最上部のトレー2は、その底部に配設したスプリング33によって支持されており、従って、トレー2は、ここに載荷される物品の重さに応じてその垂直高さ位置が可変される。トレー2のこの動きに連動して、リンク機構が動作され、その先端に取り付けられた第2磁石31の引き込み量dが変わる。
【0039】
トレー2に物品を載せない状態、すなわち、トレー2がスプリング33の力によってその最上位置にあるとき、第2磁石31は、そのストロークの最後部にあり、引き込み量dが最大となる。一方で、トレー2に最大載荷重量の物品を載せた状態、すなわち、トレー2がその最下位置にあるとき、第2磁石31は、そのストロークの最前部にあり、引き込み量dはゼロとなる。金属製壁面に対する磁性式吸着手段の吸着位置は、第1磁石30の吸着面位置、すなわち、作業台車1の側面より僅かに突出した位置で決まるので、前記ストローク内における第2磁石31の位置に比例して、その吸着力の強さ、延いては、この磁性式吸着手段における全体の吸着力の強さが決まる。
【0040】
このようにして実施の形態3に係る手押し式作業台車1においては、トレー2に載せる物品の載荷重量に応じて、磁性式吸着手段による壁面への吸着力を変えるようにしている。その結果、載荷重量が比較的重い場合には、その吸着力が強まって、安定的に作業台車1を固定できるようになり、その一方で、載荷重量が比較的軽い場合には、その吸着力が弱まって、比較的少ない力で作業台車1を壁面から分離して移動させることができる。
【0041】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0042】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、本発明は、手押し式作業台車に広く適用できるものであり、前述したような食品製造工場で使用する形態のものに限定されることはない。
【0043】
(手押し式作業台車の具体的構成について)
先の実施形態においては、その磁性式吸着手段を永久磁石により構成した例を示したが、これを電磁石等を用いた電磁式の吸着手段で構成することもできる。また、吸着解除手段を、可動ロッド及びこれを動作させるリンク機構で構成した例を示したが、他の方法、例えば、吸着面の前方に出退する遮蔽板を利用したり、前記電磁石を用いた場合には、その電力のオン・オフを用いたりしてこれを実現できる。前記実施形態の各所で用いたリンク機構もまた、各種の既存の方法により実現できることは明らかである。また、実施の形態3における吸着力調整手段は、2つに分割された永久磁石を用いてこれを構成したが、1つの磁石を出退するように構成してもよいし、また、更に複数に分割して構成してそのうちの一部を出退するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明に係る手押し式作業台は、特に、食品製造工場等の路面が濡れた場所において使用するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1に係る手押し式の作業台車の斜視図である。
【図2】吸着解除機構の概略的な機構を示した断面図である。
【図3】実施の形態2に係る吸着解除機構及びブレーキ解除機構の概略的な機構を示した断面図である。
【図4】実施の形態3に係る手押し式台車の一部を拡大して示す斜視図である。
【図5】実施の形態3に係る手押し式台車の吸着力調整機構を示した概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 手押し式作業台車
1a 基部
1b 円筒状ガイド部
2 トレー
2a 起立壁
3 支柱
4 車輪
5 把持金具
6 収納ボックス
7 取手
7b 把持部
8 永久磁石
9 可動ロッド
10 吸着解除機構
11a、11c リンク桿
11b L型リンク
12 スプリング
20 ブレーキ解除機構
21 ブレーキシュー
22 スプリング
23 リンク桿
30 第1磁石
31 第2磁石
32a、32c リンク桿
32b L型リンク
33 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用される環境内の金属面に対して吸着可能な磁性式吸着手段と、
前記磁性式吸着手段による前記金属面への吸着を解除するための吸着解除手段と、
を備えることを特徴とする手押し式作業台車。
【請求項2】
前記吸着解除手段が、
前記磁性式吸着手段を前記金属面から分離するよう動作される可動ロッド、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の手押し式作業台車。
【請求項3】
手押しのための取手部と、
前記取手部の近傍において、前記可動ロッドを操作可能な操作機構と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の手押し式作業台車。
【請求項4】
手押し式作業台車の車輪に対するブレーキ手段を更に備え、
前記操作機構が、前記可動ロッドと前記ブレーキ手段とを連動して操作可能なものである、
ことを特徴とする請求項3に記載の手押し式作業台車。
【請求項5】
積荷の重さに応じて前記磁性式吸着手段の吸着力を変化させる吸着力調整手段、
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の手押し式作業台車。
【請求項6】
前記磁性式吸着手段が、複数の吸着面を備え、
前記吸着力調整手段が、前記複数の吸着面のうち、少なくとも1つの吸着面の、前記金属面に対する距離を変化させるものである、
ことを特徴とする請求項5に記載の手押し式作業台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−49801(P2008−49801A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227326(P2006−227326)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(592001218)株式会社武蔵野 (20)
【Fターム(参考)】