説明

手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法

【課題】小さな操作力で効率良く、しかも安全に金型を取り扱うことのできる手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法を提案すること。
【解決手段】金型収納場所から金型装着場所までの間で金型を運搬する場合には電動アシスト機構5によるアシスト力を利用して小さな力で手押し式金型運搬台車1を移動させることができる(ST2)。金型装着場所に対して手押し式金型運搬台車1を位置決めする際には、手押し式金型運搬台車1をエアー浮上状態にして(ST4)、小さな力で手押し式金型運搬台車を前後左右等の各方向に簡単に微小移動させることができるので、位置決め作業を効率良く行うことができる(ST5)。エアー浮上用の圧縮エアーの供給を外部から受けるので(ST3)、コンプレッサーを手押し式金型運搬台車1に搭載しておく必要がなく、その分、台車重量および台車製造コストなどを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機などの成形機、プレス機械等における金型交換作業を手押し式台車を用いて効率よく安全に行う金型取扱方法、および当該方法に用いるのに適した手押し式金型運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラスチックの射出成形などを行う成形機における金型の段替え作業は、天井クレーンを用いて行う方法および金型運搬台車を用いて行う方法が知られている。これらのうち、小規模、中規模の成形工場等においては、設置スペースおよびコストが少なくて済む金型運搬台車を用いる方法が採用される場合が多い。金型運搬台車を用いる方法には、レール軌道に沿って台車を走行させる方法もあるが、通常の床面走行用の車輪を備えた金型搬送用台車を用いる方法の方が、成形機、金型収納ラック、台車走行経路等のレイアウト変更に対して柔軟に対応できる。
【0003】
床面走行用の金型搬送用台車としては手押し式金型運搬台車が知られており、このような台車は特許文献1(実開平5−49131号公報)に記載されている。当該特許文献1に記載の金型運搬台車は、台車の後端部に手押し用のハンドルが取り付けられ、台車には一対の昇降台と、各昇降台に搭載された金型載置台とが備わっている。手押し式金型運搬台車は、作業員によって移動させる必要があるので、大型で重量のある金型を搬送する場合には大きな力が必要である。特に、曲がった経路に沿って重量のある金型を載せた手押し式金型運搬台車を移動させることは重労働であり、成形機に対して位置決めするために重量のある金型を載せた台車を前後左右に微小移動させることも困難な作業である。
【0004】
特許文献2(特開平11−199013号公報)には、手動走行可能なエアー浮上式金型運搬台車が記載されている。このエアー浮上式金型運搬台車では、その台車本体の裏面の四隅に、台車本体に搭載されているエアーコンプレッサーから圧縮エアーが供給されるエアーパッドが配置されており、エアーパッドの下面に設けた多数の孔から噴出されるエアーによって台車本体が浮上するようになっている。エアー浮上式金型運搬台車の場合には、小さな力で移動させることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−49131号公報
【特許文献2】特開平11−199013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の手押し式金型運搬台車の場合には、それを移動させることが困難であり、移動させるために大きな力が必要になる。これに対して、特許文献2に記載されているエアー浮上による手押し式金型運搬台車の場合には、小さな力で簡単に移動させることができるものの、不安定なエアー浮上状態で工場内を移動させると危険であるので、安定したエアー浮上状態を確保するために大型のコンプレッサーを搭載する必要がある。また、エアー浮上状態では小さな力で簡単に移動させることができるので、重量のある金型を載せた台車が前後左右に移動し易く、また大きな慣性力によって同一方向に移動し易いので、移動中に周囲の設置物に衝突するなどの危険性がある。
【0007】
本発明の課題は、これらの点に鑑みて、小さな力で効率良く、しかも安全に金型を取り扱うことのできる手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法を提案することにある。また、当該方法に用いるのに適した手押し式金型運搬台車を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明による手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法は、
手押し式金型運搬台車を金型装着場所まで移動する台車移動工程と、
当該手押し式金型運搬台車を前記金型装着場所に対して位置決めする位置決め工程と、
前記手押し式金型運搬台車に搭載されている金型を前記金型装着場所に装着する金型装着工程あるいは前記金型装着場所に装着されている金型を前記手押し式金型運搬台車に回収する金型回収工程とを有し、
前記台車移動工程では、前記手押し式金型運搬台車に備わっている電動アシスト機構によるアシスト用走行力を利用して当該手押し式金型運搬台車を移動し、
前記位置決め工程では、前記金型装着場所の側に設置されている圧縮エアー供給源から圧縮エアーの供給を受けて前記手押し式金型運搬台車をエアー浮上させ、エアー浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を位置決めしてエアー浮上状態を解除し、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックすることを特徴としている。
【0009】
本発明では、手押し式金型運搬台車に電動アシスト機構を搭載してあるので、作業員が手押し式金型運搬台車を移動する際には電動アシスト機能によるアシスト力を利用して小さな力で移動させることができる。また、台車の車輪が床面に接地した状態で移動するので、エアー浮上状態で移動させる場合のように金型運搬状態が不安定になることがなく、目標とする移動方向以外の方向に簡単に移動してしまうこともないので、安定かつ安全な状態で手押し式金型運搬台車を移動させることができる。
【0010】
また、成形機、プレス機などの金型装着場所まで移動させた後は、手押し式金型運搬台車をエアー浮上させ、エアー浮上状態で金型装着場所に対して位置決めを行っている。エアー浮上させることにより台車本体を前後左右など各方向に小さな力で簡単に微小移動させることができる。よって、位置決め操作を小さな力で簡単かつ効率良く行うことができる。
【0011】
さらに、エアー浮上用の圧縮エアーは金型装着場所の側から供給を受けるので、手押しし式金型運搬台車に大型のエアーコンプレッサーを搭載しておく必要がない。よって、手押し式金型運搬台車の自重を低減でき、製造コストも低減できる。
【0012】
次に、前記の位置決め工程は次の工程を含むものとすることができる。すなわち、前記金型装着場所まで移動した前記手押し式金型運搬台車に配置されているエアー供給口に、前記金型装着場所の側に備わっている圧縮エアー供給ラインを接続して、圧縮エアーの供給を可能にするライン接続工程と、前記手押し式金型運搬台車を、前記エアー供給口を介して供給される圧縮エアーを利用して浮上させるエアー浮上工程と、浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を移動して、当該手押し式金型運搬台車を前記金型装着場所に対して位置決めする工程と、位置決め後に前記手押し式金型運搬台車の浮上状態を解除して、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックする台車ロック工程である。
【0013】
ここで、金型搭載時と金型が搭載されていない時では手押し式金型運搬台車の総重量が大きく異なり、エアー浮上させるために必要なエアー浮上力も大きく変わる。したがって、前記エアー浮上工程では、前記手押し式金型運搬台車に金型が搭載されているか否かに応じて設定したエアー浮上力によって、当該手押し式金型運搬台車を確実にエアー浮上させることが望ましい。
【0014】
また、前記ライン接続工程では、前記手押し式金型運搬台車に配置されている外部電力供給口に、前記金型装着場所の側に備わっている電力供給ラインを接続して外部電力を利用できるようにすることが望ましい。このようにすれば、前記金型装着工程あるいは前記金型回収工程では、前記手押し式金型運搬台車の金型載置台の高さ位置が前記金型装着場所の高さ位置と異なっている場合に、前記手押し式金型運搬台車に備わっている電動式の昇降機構を、前記外部電力供給口を介して供給される外部電力によって駆動して、前記手押し式金型運搬台車の金型載置台を昇降させてその高さ位置を前記金型装着場所の高さ位置に合わせることができる。手押し式金型運搬台車に搭載されるバッテリ電源の容量を小さくできるので、その分、手押し式金型運搬台車の重量および製造コストを低減できる。
【0015】
次に、金型の段替え作業を、金型収納場所と金型装着場所の間で、手押し式金型運搬台車を一往復させるだけで行うことができるようにするためには、2つの金型載置台(交換金型載置台および回収金型載置台)を備えた手押し式金型運搬台車を用いればよい。この場合における本発明による金型取扱方法は、
手押し式金型運搬台車の交換金型載置台に交換用金型を搭載し、その回収金型載置台は空の状態とし、この状態の前記手押し式金型運搬台車を、当該手押し式金型運搬台車に備わっている電動アシスト機構のアシスト用走行力を利用して金型装着場所まで移動する台車移動工程と、
前記金型装着場所に止めた前記手押し式金型運搬台車に取り付けられているエアー供給口に、前記成形機の側に備わっている圧縮エアー供給ラインを接続して、圧縮エアーの供給を可能にするライン接続工程と、
前記手押し式金型運搬台車を、前記エアー供給口を介して前記金型装着場所の側から供給される圧縮エアーを利用して浮上させる第1エアー浮上工程と、
エアー浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を移動して、当該手押し式金型運搬台車の前記回収金型載置台を前記金型装着場所に対して位置決めし、前記手押し式金型運搬台車のエアー浮上状態を解除して、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックする第1位置決め工程と、
ロック状態の前記手押し式金型運搬台車の前記回収金型載置台に、前記金型装着場所から取り外した回収金型を載せる金型回収工程と、
前記手押し式金型運搬台車のロック状態を解除して、当該手押し式金型運搬台車を、前記エアー供給口を介して前記金型装着場所の側から供給される圧縮エアーを利用して再浮上させる第2エアー浮上工程と、
エアー浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を移動して、当該手押し式金型運搬台車の前記交換金型載置台を前記金型装着場所に対して位置決めし、前記手押し式金型運搬台車のエアー浮上状態を解除して、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックする第2位置決め工程と、
ロック状態の前記手押し式金型運搬台車の前記交換金型載置台に載っている前記交換金型を、当該手押し式金型運搬台車から押し出して前記金型装着場所に装着する金型装着工程とを有していることを特徴としている。
【0016】
ここで、前記手押し式金型運搬台車の前記交換金型載置台および前記回収金型載置台は、当該手押し式金型運搬台車の前後あるいは左右に並列配置される。この場合、金型が搭載されているか否かに応じて手押し式金型運搬台車の重心位置が前後左右に大きく移動する。したがって、手押し式金型運搬台車を安定した状態で水平にエアー浮上させるためには、エアー浮上力の作用中心が重心位置に一致するように台車の前後あるいは左右のエアー浮上力を調整することが望ましい。このために、本発明では、前記第1エアー浮上工程では、金型が搭載されている前記交換金型載置台の側のエアー浮上力を第1の値、空の状態の前記回収金型載置台の側のエアー浮上力を前記第1の値よりも小さい第2の値に設定した状態で、前記手押し式金型運搬台車をエアー浮上させるようにしている。また、前記第2エアー浮上工程では、双方の載置台に金型搭載されているので、前記交換金型載置台の側の前記エアー浮上力および前記回収金型載置台の側の前記エアー浮上力を共に前記第1の値に設定した状態で、前記手押し式金型運搬台車をエアー浮上させるようにしている。
【0017】
次に、上記の金型取扱方法に用いるのに適した本発明による手押し式金型運搬台車は、
複数の車輪を備えた台車本体と、
前記台車本体に取り付けた駆動輪を備えた走行力アシスト用の電動アシスト機構と、
前記電動アシスト機構に駆動用電力を供給するために前記台車本体に搭載されているバッテリ電源と、
前記台車本体に搭載されている金型載置台と、
前記台車本体に搭載されているエアー供給口および外部電力供給口と、
前記エアー供給口を介して外部から供給される圧縮エアーを用いて前記台車本体をエアー浮上させるための複数のエアー噴出口を備えたエアー浮上機構と、
前記外部電力供給口を介して供給される外部電力により駆動する電動ジャッキを用いて前記金型載置台を昇降させる昇降機構と、
前記台車本体を、金型装着位置に対して位置決めするために用いる位置決め部と、
前記台車本体を移動しないようにロックする台車ロック機構とを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金型収納場所から金型装着場所までの間で金型を運搬する場合には電動アシスト機構によるアシスト力を利用して小さな力で手押し式金型運搬台車を移動させることができる。また、金型装着場所に対して手押し式金型運搬台車を位置決めする際には、手押し式金型運搬台車をエアー浮上状態にして、小さな力で手押し式金型運搬台車を前後左右等の各方向に簡単に微小移動させることができるので、位置決め作業を効率良く行うことができる。さらに、エアー浮上用の圧縮エアーの供給を外部から受けるのでコンプレッサーを手押し式金型運搬台車に搭載しておく必要がなく、その分、台車重量および台車製造コストなどを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した手押し式金型運搬台車の側面図である。
【図2】図1の手押し式金型運搬台車の正面図である。
【図3】図1の手押し式金型運搬台車の背面図である。
【図4】図1の手押し式金型運搬台車の台車本体に配置されている各部の位置を示す説明図である。
【図5】図1の手押し式金型運搬台車のエアー浮上力調整用の操作面を示す説明図およびエアー供給回路を示す回路図である。
【図6】図1の手押し式金型運搬台車の制御系を示すブロック図である。
【図7】図1の手押し式金型運搬台車を用いた金型段替え作業の一例を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、図1〜図4を参照して、本発明を適用した手押し式金型運搬台車の全体構成を説明する。
【0021】
手押し式金型運搬台車1は、例えば、工場内において金型収納場所から成形機などの金型装着場所に交換用の金型を運搬して、当該金型装着場所に装着されている金型を取り外して回収した後に交換用の金型を装着し、回収した金型を金型収納場所に戻す金型の段替え作業に用いられる。
【0022】
手押し式金型運搬台車1は、全体として前後に長い矩形輪郭をした台車本体2を備えており、台車本体2の底面における前端部の左右および後端部の左右にそれぞれ車輪3が取り付けられている。各車輪3の台車幅方向の外側近傍位置には、それぞれ、ペダル踏込式のストッパ4(台車ロック機構)が台車本体2に取り付けられている。これらのストッパ4を踏み込むことにより、台車本体2を定位置にロックすることができる。
【0023】
台車本体2には走行力アシスト用の電動アシスト機構5が搭載されている。電動アシスト機構5は、台車本体2の後端部に取り付けた操作用ハンドル6と、駆動輪7と、この駆動輪7を回転駆動させる機構ユニット8と、バッテリ電源9とを備えている。駆動輪7は台車本体2の底面前端部における台車幅方向の中央に配置されている。操作用ハンドル6の根元側の部位には、当該操作用ハンドル6に加わる操作力の大きさ、および当該操作力の方向を検出する検出部10が配置されており、当該検出部10の検出結果に基づき機構ユニット8は駆動輪7を操舵すると共に、所定の駆動力で駆動輪7を回転駆動して走行アシスト力を発生する。
【0024】
台車本体2の上側には、昇降機構11を介して2つの金型載置台12、13が搭載されている。昇降機構11は台車本体2の四隅近傍に垂直に取り付けた4本の電動ジャッキ14と、電動ジャッキ14を駆動するための電動モーター15と、昇降台16とを備えている。昇降台16は台車本体2に取り付けた複数本、本例では前端部、前後方向の中央部および後端部の左右に取り付けた6本の垂直ガイド17によって水平姿勢を維持したまま昇降可能であり、電動ジャッキ14によって所定の高さ位置となるように昇降させることができる。電動モーター15の駆動電源は、台車本体2の後端面の側方位置に配置されている操作ボックス18に取り付けた外部電力供給口19を介して供給される外部電力を利用するようになっている。
【0025】
金型載置台12、13は台車本体2の前後に並列配置されており、例えば、図1に示すように、前側の金型載置台12が交換金型W1を載せる交換金型載置台として機能し、後側の金型載置台13が回収金型W2を載せる回収金型載置台として機能する。これらの金型載置台12、13の高さ位置は、昇降機構11によって、例えば、図1〜図3において実線で示す降下位置から想像線で示す上昇位置までの間の高さ位置に調整可能である。
【0026】
各金型載置台12、13は、同一構成であり、台車本体2の前後方向に水平に延びている円柱状のフリーローラーが一定のピッチで台車本体2の幅方向に複数本配列された構成のローラーコンベアから構成されており、ここに載せた金型を台車本体2の幅方向に押し出すことが可能である。各金型載置台12、13における台車本体2の幅方向の両側には、偏平な逆U状のストッパ枠21が取り付けられている。これらのストッパ枠21は、上方から装着用筒部22に差し込むことにより装着され、金型装着時あるいは金型回収時には装着用筒部22から上方に引抜可能となっている。
【0027】
次に、台車本体2には、手押し式金型運搬台車1の全体をエアー浮上させるためのエアー浮上機構30が備わっている。エアー浮上機構30は、台車本体2の底面の四隅部分に形成した一対の前側エアー噴出面31L、31Rおよび一対の後側エアー噴出面32L、32Rを備えており、各エアー噴出面には複数のエアー噴出口(図示せず)が形成されている。台車本体2の前端面にはエアー供給配管34が内蔵された配管ユニット35が取り付けられており、当該配管ユニット35には、外部から圧縮エアーを導入するためのエアー供給口36が取り付けられている。また、配管ユニット35の上面はエアー浮上力調整用の操作面37となっている。エアー供給口36から導入される圧縮エアーはエアー供給配管34を介して所定の圧力状態に調整された後に、各エアー噴出面31L、31R、32L、32Rの各エアー噴出口から下方に垂直に噴出される。これにより、手押し式金型運搬台車1の全体をエアー浮上状態にすることが可能である。
【0028】
台車本体2の両側面における前後方向の中央部には、図2、図3から分かるように、手押しハンドル38を装着可能な左装着筒39Lおよび右装着筒39Rが取り付けられている。左装着筒39L、右装着筒39Rには、上側から手押しハンドル38を差し込み可能であり、上方に引抜可能である。エアー浮上状態において手押し式金型運搬台車1をその幅方向に移動させる場合に、手押しハンドル38が左装着筒39L、右装着筒39Rのいずれか一方に装着して用いられる。
【0029】
次に、図4に示すように、台車本体2における左右の側面には、それぞれ、一対の位置決め用の垂直ガイドピン41が取り付けられている(図1〜図3においては垂直ガイドピン41を省略してある。)。垂直ガイドピン41は、円柱状胴部41aと、この下端に形成した小径の頭部41bとを備えており、頭部41bは先細りとなった位置決め用の円錐状凸面41cを備えている。これに対して、金型装着場所100の側には、一対の垂直ガイドピン41を水平方向から受け入れ可能な位置決め用のガイド溝、例えば3つの位置決め用のガイド溝42(1)、42(2)、42(3)が形成されている。ガイド溝42(1)〜42(3)の溝幅は開口側から奥に向かって狭まっている。したがって、台車本体2を幅方向に押し出して一対の垂直ガイドピン41をガイド溝42に水平方向から押し込むと、これらのガイド溝にガイドされて、台車本体2が位置決めされる。
【0030】
各ガイド溝42(1)〜42(3)の奥側の位置の底面には、位置決め用の円錐状凸面41cを上側から受け入れてガイドする位置決め用の円錐状凹面43aを備えた位置決め穴43が形成されている。後述のように、手押し式金型運搬台車1はエアー浮上状態で位置決め動作が行われ、位置決め後にエアー浮上状態が解除される。エアー浮上状態が解除されると、一対の垂直ガイドピン41の下端の位置決め用の円錐状凸面41cが位置決め用の円錐状凹面43aに沿ってガイドされる。この結果、台車本体2が確実に位置決めされる。
【0031】
次に、図5を参照して、エアー浮上機構30のエアー浮上力調整機構について説明する。配管ユニット35の操作面37には、図5(a)に示すように、エアー浮上のオンオフを切り替えるオンオフレバー51、前側の金型載置台12に金型が搭載されているか否かに応じて切り替えを行う前側エアー浮上力切替レバー52、および、後側の金型載置台13に金型が搭載されているか否かに応じて切り替えを行う後側エアー浮上力切替レバー53が配列されている。また、左右の前側エアー噴出面31L、31R(エアーキャスター1、2)によるエアー浮上力(エアー噴出力)が高圧、低圧であることを表示する表示部54a、54b、55a、55bと、左右の後側エアー噴出面32L、32R(エアーキャスター3、4)によるエアー浮上力が高圧、低圧であることを表示するための表示部56a、56b、57a、57bとが配列されている。
【0032】
図5(b)に示すエアー供給回路を参照して説明すると、オンオフレバー51を「ON」に切り替え、前側エアー浮上力切替レバー52を中立位置から「金型ナシ」、後側エアー浮上力切替レバー53を中立位置から「金型ナシ」にそれぞれ切り替えると、供給される圧縮エアーを低圧に設定する圧力調整弁61、62を介して、低圧の圧縮エアーが前側エアー噴出面31L、31R(エアーキャスター1、2)に供給される。同様にして、低圧用の圧力調整弁63、64を介して、低圧の圧縮エアーが後側エアー噴出面32L、32R(エアーキャスター3、4)に供給される。オンオフレバー51を「ON」に切り替え、前側エアー浮上力切替レバー52を中立位置から「金型アリ」、後側エアー浮上力切替レバー53を中立位置から「金型アリ」にそれぞれ切り替えると、供給される圧縮エアーを高圧に設定する圧力調整弁65、66を介して、高圧の圧縮エアーが前側エアー噴出面31L、31R(エアーキャスター1、2)に供給される。同様にして、高圧用の圧力調整弁67、68を介して、高圧の圧縮エアーが後側エアー噴出面32L、32R(エアーキャスター3、4)に供給される。
【0033】
このように、本例では、金型が搭載されている場合にはエアー浮上力を高い値にし、金型が搭載されていない場合にはエアー浮上力を低い値に切り替えるようにしている。なお、多段階に圧力を調整することも可能であり、4つのエアー噴出面31L、31R、32L、32Rのエアー浮上力を独立に制御できるようにすることも可能である。
【0034】
図6は本例の手押し式金型運搬台車1の制御系を示す概略ブロック図である。この図に示すように、手押し式金型運搬台車1の各部は、操作ボックス18に内蔵されている制御回路71によって制御される。すなわち、電動アシスト機構5においては、操作用ハンドル6に作用する操作力の大きさ、方向を検出部10の出力に基づき検出して、操作用ハンドル6の操作方向に操作力に対応する駆動力が発生するように、駆動輪7を操舵して回転駆動する。昇降機構11の操作スイッチ72を操作すると、ここから発生する操作信号が制御回路71に供給され、制御回路71はドライバ73を介して電動ジャッキ14を駆動して昇降機構11を昇降させる。これにより、各金型載置台12、13の高さ位置を調整できる。なお、先に述べたように、電動アシスト機構5の駆動電力は、搭載されているバッテリ電源9から電源回路74を介して電動アシスト機構5に供給される。昇降機構11の駆動電力は、外部電力供給口19および電源回路74を介して外部から供給される。
【0035】
(金型の段替え動作)
次に、図7のフローチャートを参照して、上記構成の手押し式金型運搬台車1を用いた金型の段替え作業手順の一例を説明する。
【0036】
まず、手押し式金型運搬台車1を金型収納場所に移動して、その前側の金型載置台12に交換金型W1を搭載する(ステップST1:金型搭載工程)。他方の金型載置台13は空のままである。この状態の手押し式金型運搬台車1の操作用ハンドル6を作業員が押して、金型装着場所まで手押し式金型運搬台車1を移動させる(ステップST2:台車移動工程)。操作用ハンドル6を押すと、その操作力、操作方向が検出されて電動アシスト機構5が起動して、移動方向に駆動輪7を回転駆動してアシスト力を発生させる。したがって、手押し式金型運搬台車1を小さな力で金型装着位置まで移動させることができる。また、基本的には床面上を車輪3によって移動するので、エアー浮上状態で台車を走行させる場合とは異なり、移動方向が定まらず不安定な状態になってしまうこともない。
【0037】
手押し式金型運搬台車1の一方の側面を金型装着場所に寄せて止めた後は、手押し式金型運搬台車1に取り付けられているエアー供給口36に、金型装着場所に設置されている圧縮エアー供給ライン、例えば、成形機の側に設置されている圧縮エアー供給ラインを接続して、圧縮エアーの供給を可能な状態にする。これと共に、外部電力供給口19に、外部電力ラインを接続して外部電力を供給可能にする(ステップST3:ライン接続工程)。
【0038】
この後は、手押し式金型運搬台車1の操作面37の各レバー51〜53を操作してエアー浮上機構30を駆動して、手押し式金型運搬台車1をエアー浮上させる(ステップST4:第1エアー浮上工程)。この場合には、前側の金型載置台12に交換金型W1が載っており、後側の金型載置台13には金型が載っていないので、オンオフレバー51を「ON」に切り替えた後に、前側エアー浮上力切替レバー52を中立位置から「金型アリ」、後側エアー浮上力切替レバー53を中立位置から「金型ナシ」にそれぞれ切り替える。この結果、供給される圧縮エアーを高圧に設定する圧力調整弁65、66を介して、高圧の圧縮エアーが前側エアー噴出面31L、31R(エアーキャスター1、2)に供給される。逆に、低圧用の圧力調整弁63、64を介して、低圧の圧縮エアーが後側エアー噴出面32L、32R(エアーキャスター3、4)に供給される。手押し式金型運搬台車1は前側に交換金型W1が載っているので、その重心位置が前側にあり、これに対応して、エアー浮上力の中心も前側に移動するので、全体として、手押し式金型運搬台車1をバランス良くエアー浮上させることができ、また、安定したエアー浮上状態を形成できる。
【0039】
次に、エアー浮上状態の手押し式金型運搬台車1をその幅方向に移動して、当該手押し式金型運搬台車1の後側の金型載置台13を金型装着場所における金型装着位置に対して位置決めする(ステップST5:第1位置決め工程)。この工程では、予め、手押し式金型運搬台車1における金型装着場所に面している側面とは反対側の側面に、手押しハンドル38を取り付けておき、この手押しハンドル38を押して、手押し式金型運搬台車1をその幅方向に押し出して位置決め動作を行う。図4を参照して説明したように、金型装着場所100の側には、位置決め用の一対のガイド溝42(2)、42(3)が形成されている。これらのガイド溝42(2)、42(3)に一対の位置決め用の垂直ガイドピン41を横方向から押し込むことにより位置決めが行われる。位置決め後は、オンオフレバー51を「OFF」の側に切り替えて、手押し式金型運搬台車1の浮上状態を解除する。この結果、一対の位置決め用の垂直ガイドピン41の下端が各ガイド溝42(2)、42(3)の奥側の床面に形成されている位置決め穴43に上側からはまり込み、確実に位置決めされた状態が形成される。
【0040】
この後は、ペダル踏込式のストッパ4を床面に対して押し付けることにより、手押し式金型運搬台車1を位置決めされた位置から移動しないようにロックする(ステップST6:第1台車ロック工程)。そして、ロック状態の手押し式金型運搬台車1の後側の金型載置台13に、金型装着場所から取り外した回収金型W2を載せる作業を行う(ステップST7:金型回収工程)。
【0041】
次に、手押し式金型運搬台車1のロック状態を解除して、当該手押し式金型運搬台車1を再浮上させる(ステップST8:第2エアー浮上工程)。この場合には、前後の金型載置台12、13の双方に交換金型W1、回収金型W2が載っている。したがって、エアー浮上機構30において、オンオフレバー51を「ON」に切り替えた後に、前側エアー浮上力切替レバー52を中立位置から「金型アリ」、後側エアー浮上力切替レバー53を中立位置から「金型アリ」にそれぞれ切り替える。高圧の圧縮エアーが前側エアー噴出面31L、31R(エアーキャスター1、2)および後側エアー噴出面32L、32R(エアーキャスター3、4)に供給される。
【0042】
エアー浮上させた後は、手押し式金型運搬台車1をガイド溝42(2)、42(3)から引き出して後方に移動させ、一対のガイド溝42(1)、42(2)を利用して、当該手押し式金型運搬台車1の前側の金型載置台12を、金型が取り外された後の金型装着場所の金型装着部に対して位置決めする(ステップST9:第2位置決め工程)。位置決め後には手押し式金型運搬台車1の浮上状態を解除して、位置決めされた位置に手押し式金型運搬台車1をロックする(ステップST10:第2台車ロック工程)。このロック状態において、手押し式金型運搬台車1の前側の金型載置台12に載っている交換金型W1を、当該手押し式金型運搬台車1から押し出して金型装着場所に装着する(ステップST11:金型装着工程)。
【0043】
この後は、手押し式金型運搬台車1のロック状態を解除して、当該手押し式金型運搬台車1を再浮上させる(ステップST12:第3エアー浮上工程)。この場合には、前側の金型載置台12は空であり、後側の金型載置台13には回収金型W2が載っている。したがって、エアー浮上機構30において、オンオフレバー51を「ON」に切り替えた後に、前側エアー浮上力切替レバー52を中立位置から「金型ナシ」、後側エアー浮上力切替レバー53を中立位置から「金型アリ」にそれぞれ切り替える。低圧の圧縮エアーが前側エアー噴出面31L、31R(エアーキャスター1、2)に供給され、高圧の圧縮エアーが後側エアー噴出面32L、32R(エアーキャスター3、4)に供給される。
【0044】
エアー浮上状態で手押し式金型運搬台車1を金型装着場所から離した後は、エアー浮上を解除して、操作用ハンドル6を押して手押し式金型運搬台車1を金型収納場所まで戻す(ステップST13:台車戻し工程)。手押し式金型運搬台車1を金型収納場所に戻した後は、その後側の金型載置台13に載っている回収金型W2を金型収納場所の所定位置に回収する(ステップST14:金型収納工程)。以上により、金型の段替え作業が終了する。
【0045】
なお、手押し式金型運搬台車1と金型収納場所との間で金型のやり取りを行う場合においても、エアー浮上させて位置決めを行うようにすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 手押し式金型運搬台車
2 台車本体
3 車輪
4 ストッパ
5 電動アシスト機構
6 操作用ハンドル
7 駆動輪
8 機構ユニット
9 バッテリ電源
10 検出部
11 昇降機構
12、13 金型載置台
14 電動ジャッキ
15 電動モーター
16 昇降台
17 垂直ガイド
18 操作ボックス
19 外部電力供給口
21 ストッパ枠
22 装着用筒部
30 エアー浮上機構
31L、31R 前側エアー噴出面
32L、32R 後側エアー噴出面
34 エアー供給配管
35 配管ユニット
36 エアー供給口
37 操作面
38 手押しハンドル
39L 左装着筒
39R 右装着筒
41 垂直ガイドピン
41a 円柱状胴部
41b 頭部
41c 円錐状凸面
42(1)〜42(3) ガイド溝
43 位置決め穴
43a 円錐状凹面
51 オンオフレバー
52 前側エアー浮上力切替レバー
53 後側エアー浮上力切替レバー
54a、54b、55a、55b、56a、56b、57a、57b 表示部
61〜68 圧力調整弁
71 制御回路
72 操作スイッチ
73 ドライバ
74 電源回路
100 金型装着場所
W1 交換金型
W2 回収金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し式金型運搬台車を金型装着場所まで移動する台車移動工程と、
当該手押し式金型運搬台車を前記金型装着場所に対して位置決めする位置決め工程と、
前記手押し式金型運搬台車に搭載されている金型を前記金型装着場所に装着する金型装着工程あるいは前記金型装着場所に装着されている金型を前記手押し式金型運搬台車に回収する金型回収工程とを有し、
前記台車移動工程では、前記手押し式金型運搬台車に備わっている電動アシスト機構によるアシスト用走行力を利用して当該手押し式金型運搬台車を移動し、
前記位置決め工程では、前記金型装着場所の側に設置されている圧縮エアー供給源から圧縮エアーの供給を受けて前記手押し式金型運搬台車をエアー浮上させ、エアー浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を位置決めしてエアー浮上状態を解除し、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックすることを特徴とする手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記位置決め工程は、
前記金型装着場所まで移動した前記手押し式金型運搬台車に配置されているエアー供給口に、前記金型装着場所の側に備わっている圧縮エアー供給ラインを接続して、圧縮エアーの供給を可能にするライン接続工程と、
前記手押し式金型運搬台車を、前記エアー供給口を介して供給される圧縮エアーを利用して浮上させるエアー浮上工程と、
浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を移動して、当該手押し式金型運搬台車を前記金型装着場所に対して位置決めする工程と、
位置決め後に前記手押し式金型運搬台車の浮上状態を解除して、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックする台車ロック工程とを備えていることを特徴とする手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記エアー浮上工程では、
前記手押し式金型運搬台車に金型が搭載されているか否かに応じて設定したエアー浮上力によって、当該手押し式金型運搬台車をエアー浮上させることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記ライン接続工程では、前記手押し式金型運搬台車に配置されている外部電力供給口に、前記金型装着場所の側に備わっている電力供給ラインを接続し、
前記金型装着工程あるいは前記金型取り外し工程では、前記手押し式金型運搬台車の金型載置台の高さ位置が前記金型装着場所の高さ位置と異なっている場合には、前記手押し式金型運搬台車に備わっている電動式の昇降機構を、前記外部電力供給口を介して供給される外部電力によって駆動して、前記手押し式金型運搬台車の金型載置台を昇降させてその高さ位置を前記金型装着場所の高さ位置に合わせることを特徴とする手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法。
【請求項5】
手押し式金型運搬台車の交換金型載置台に交換用金型を搭載し、その回収金型載置台は空の状態とし、この状態の前記手押し式金型運搬台車を、当該手押し式金型運搬台車に備わっている電動アシスト機構のアシスト用走行力を利用して金型装着場所まで移動する台車移動工程と、
前記金型装着場所に止めた前記手押し式金型運搬台車に取り付けられているエアー供給口に、前記成形機の側に備わっている圧縮エアー供給ラインを接続して、圧縮エアーの供給を可能にするライン接続工程と、
前記手押し式金型運搬台車を、前記エアー供給口を介して前記金型装着位置の側から供給される圧縮エアーを利用して浮上させる第1エアー浮上工程と、
エアー浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を移動して、当該手押し式金型運搬台車の前記回収金型載置台を前記金型装着場所に対して位置決めし、前記手押し式金型運搬台車の浮上状態を解除して、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックする第1位置決め工程と、
ロック状態の前記手押し式金型運搬台車の前記回収金型載置台に、前記金型装着場所から取り外した回収金型を載せる金型回収工程と、
前記手押し式金型運搬台車のロック状態を解除して、当該手押し式金型運搬台車を、前記エアー供給口を介して前記金型装着場所の側から供給される圧縮エアーを利用して再浮上させる第2エアー浮上工程と、
エアー浮上状態の前記手押し式金型運搬台車を移動して、当該手押し式金型運搬台車の前記交換金型載置台を前記金型装着場所に対して位置決めし、前記手押し式金型運搬台車の浮上状態を解除して、位置決めされた位置に前記手押し式金型運搬台車をロックする第2位置決め工程と、
ロック状態の前記手押し式金型運搬台車の前記交換金型載置台に載っている前記交換金型を、当該手押し式金型運搬台車から押し出して前記金型装着場所に装着する金型装着工程とを有していることを特徴とする手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記手押し式金型運搬台車の前記交換金型載置台および前記回収金型載置台は、当該手押し式金型運搬台車の前後あるいは左右に並列配置されており、
前記第1エアー浮上工程では、前記交換金型載置台の側のエアー浮上力を第1の値、前記回収金型載置台の側のエアー浮上力を前記第1の値よりも小さい第2の値に設定した状態で、前記手押し式金型運搬台車をエアー浮上させ、
前記第2エアー浮上工程では、前記交換金型載置台の側の前記エアー浮上力および前記回収金型載置台の側の前記エアー浮上力を共に前記第1の値に設定した状態で、前記手押し式金型運搬台車をエアー浮上させることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記ライン接続工程では、前記手押し式金型運搬台車に配置されている外部電力供給口に、前記金型装着場所の側に備わっている電力供給ラインを接続し、
前記金型回収工程では、前記回収金型載置台の高さ位置が前記金型装着場所の高さ位置と異なっている場合には、前記手押し式金型運搬台車に備わっている電動式の昇降機構を、前記外部電力供給口を介して供給される外部電力によって駆動して、前記回収金型載置台および前記交換金型載置台を昇降させてその高さ位置を前記金型装着場所の高さ位置に合わせ、この状態で前記金型装着場所から金型を取り出すことを特徴とする手押し式金型運搬台車を用いた金型取扱方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項に記載の金型取扱方法に用いる手押し式金型運搬台車であって、
複数の車輪を備えた台車本体と、
前記台車本体に取り付けた駆動輪を備えた走行力アシスト用の電動アシスト機構と、
前記電動アシスト機構に駆動用電力を供給するために前記台車本体に搭載されているバッテリ電源と、
前記台車本体に搭載されている金型載置台と、
前記台車本体に搭載されているエアー供給口および外部電力供給口と、
前記エアー供給口から供給される圧縮エアーを用いて前記台車本体をエアー浮上させるための複数のエアー噴出口を備えたエアー浮上機構と、
前記外部電力供給口から供給される外部電力により駆動する電動ジャッキを用いて前記金型載置台を昇降させる昇降機構と、
前記台車本体を、金型装着場所に対して位置決めするために用いる位置決め部と、
前記台車本体を移動しないようにロックする台車ロック機構とを有していることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項9】
請求項8において、
前記金型載置台は、金型装着場所に装着する交換金型を載置する交換金型載置台と、前記金型装着場所から取り外した金型を載置する回収金型載置台とを備えていることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項10】
請求項8または9において、
前記エアー浮上機構は、前記台車本体の底面における離れた複数の箇所に配置したエアー噴出面と、各エアー噴出面に配置した前記エアー噴出口から噴出する圧縮エアーの噴出力をエアー噴出面毎に設定する操作部材とを有していることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項11】
請求項8ないし10のうちのいずれかの項において、
前記位置決め部は、複数本の位置決め用垂直ピンと、当該位置決め用垂直ピンの下端に先細り状態で形成されている位置決め用円錐状凸部とを備えていることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項12】
請求項8ないし11のうちのいずれかの項において、
前記電動アシスト機構は、前記台車本体に取り付けた操作用ハンドルと、当該操作用ハンドルに加わる操作力の大きさ、および当該操作力の方向を検出する検出部とを備え、前記検出部の検出結果に基づき前記駆動輪による走行アシスト力および当該駆動輪の方向が制御されることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項13】
請求項8ないし12のうちのいずれかの項において、
前記台車本体は矩形輪郭のものであり、
前記電動アシスト機構の前記操作用ハンドルは前記台車本体の後端部に取り付けられており、
前記台車本体は、エアー浮上状態において当該台車本体を操作するための手押しハンドルと、当該手押しハンドルを取り外し可能な状態で差し込むために前記台車本体における左右の側部に設けた左ハンドル装着部および右ハンドル装着部とを備えていることを特徴とする手押し式金型運搬台車。
【請求項14】
請求項13において、
前記金型載置台は、前記台車本体の前後方向に水平に配置した交換金型載置台および回収金型載置台を備えており、
前記エアー浮上機構は、前記台車本体の底面における前側の部分に配置した複数の前側エアー噴出面および後側の部分に配置した複数の後側エアー噴出面と、前記前側エアー噴出面に配置した前記エアー噴出口から噴出する圧縮エアーの噴出力および前記後側エアー噴出面に配置した前記エアー噴出口から噴出する圧縮エアーの噴出力を、それぞれ、少なくとも高低の二段階に切り替える操作部材とを有していることを特徴とする手押し式金型運搬台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14110(P2013−14110A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149936(P2011−149936)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(502379181)株式会社エイト (4)
【Fターム(参考)】