説明

手持ち式ベルトサンダ

【課題】回転砥石等の回転刃物も使用できる新たな手持ち式ベルトサンダを提供する。
【解決手段】駆動源であるモータ12と、モータ12のモータ軸12aに固定される駆動側傘歯車13と、駆動側傘歯車13により回転駆動され駆動プーリ21を備える従動回転部と、従動回転部の前側に突出して設置されるアーム部30と、アーム部30の前側先端部に駆動プーリ21と離間して回動自在に設置される従動プーリ22と、駆動プーリ21と従動プーリ22との間に張架される無端のサンダベルト41とを備える手持ち式ベルトサンダにおいて、駆動プーリ21は回転刃物を取付け可能とする回転刃物接続部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木工製品や金属製品の仕上げ加工などに用いる手持ち式ベルトサンダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木工製品や金属製品の仕上げ加工などに用いる手持ち式ベルトサンダは、把持部と駆動伝動部を有する本体と、駆動伝動部の前側に配置されるアーム部と、駆動伝動部に設けられた駆動プーリと、アーム部前側先端部に設けられた従動プーリとの間に張架される無端のサンダベルトとを備えている。
【0003】
より具体的には、駆動伝動部は、モータ軸に固定された駆動側傘歯車と、この駆動側傘歯車に駆動される従動回転部を備え、この従動回転部は、モータ軸に直交する従動軸と、この従動軸に固定され駆動側傘歯車と噛み合う従動側傘歯車と、従動軸に固定された駆動プーリとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−35863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の手持ち式ベルトサンダは、製品外面のバリ取りや面取り等の作業においては有用であるが、例えば、チップソーの研磨においては、その構造上、隣接するチップ間の隙間にサンダベルトを進入させることが困難で使用できなかった。さらにベルトサンダの特性上、精度の高い加工が困難なためチップソーの研磨作業には適していなかった。そのため、チップソーの研磨においては、回転砥石が使用できるジクスグラインダが一般的に使用されていた。このような状況から、チップソーを使用して製品を切断する作業現場等においては、手持ち式ベルトサンダとジクスグラインダの両方を準備する必要があり不経済であった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、その目的は回転砥石等の回転刃物も使用できる新たな手持ち式ベルトサンダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る手持ち式ベルトサンダは、駆動源であるモータと、前記モータのモータ軸に固定される駆動側歯車と、前記駆動側歯車により回転駆動され駆動プーリを備える従動回転部と、前記従動回転部の前側に突出して設置されるアーム部と、前記アーム部の前側先端部に前記駆動プーリと離間して回動自在に設置される従動プーリと、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に張架される無端のサンダベルトと、を備え、前記従動回転部は前記駆動プーリを備えた状態で回転刃物を取付け可能とする回転刃物接続部を備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る手持ち式ベルトサンダにおいて、前記回転刃物接続部は前記駆動プーリに設けられていることとすることができる。
【0009】
また、本発明に係る手持ち式ベルトサンダにおいて、前記従動回転部は前記モータ軸に直交し前記駆動プーリが固定される従動軸と、前記従動軸に固定され前記駆動側歯車と噛み合う従動側歯車と、を備え、前記回転刃物接続部は前記従動軸に設けられていることとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転砥石等の回転刃物も使用できる新たな手持ち式ベルトサンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部正面図である。
【図2】図1の長手方向断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部背面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部断面図であり、回転砥石を装着した状態を示している。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部の長手方向断面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部断面図であり、回転砥石を装着した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図1〜図6を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
まず、本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダについて図1乃至図4を用いて説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部正面図である。図2は図1の長手方向断面図である。図3は本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部背面図である。図4は本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部断面図であり、回転砥石を装着した状態を示している。図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る手持ち式ベルトサンダは、主として駆動部を内包する本体部10と、本体部10より左方(前方)に延設されるアーム部30と、後述する駆動プーリ21と、アーム部30の左方先端部に回動自在に設けられる従動プーリ22と、駆動プーリ21と従動プーリ22との間に張架される無端のサンダベルト41とを備えている。
【0014】
次に本体部10について説明する。図2に示すように、本体部10は上下二つ割構成のハウジング11を備えており、ハウジング11の内部には駆動源であるモータ12と、モータ12の駆動を駆動プーリ21に伝動する駆動伝動部20が配置されている。駆動伝動部20はモータ軸12aに固定される駆動側歯車である駆動側傘歯車13と、駆動側傘歯車13により回転駆動される従動回転部を備えている。この従動回転部は、モータ軸12aに直交して配置される従動軸23と、従動軸23の下端部に形成された雄ねじ23aに螺入されるナット26により固定される駆動プーリ21と、従動軸23に固定され駆動側傘歯車13と噛み合う従動側歯車である従動側傘歯車27とを備えている。駆動プーリ21の内周面には回転刃物接続部としての雌ねじ21aが形成されており、回転砥石等の回転刃物が取り付け可能となっている。従動軸23はその上端部に配置されるベアリング24と、駆動プーリ21と従動側傘歯車27との間に配置されるベアリング25により回動自在に支持されている。また、ベアリング24が配置される位置においてハウジング11の外周面は従動軸23と共通の中心線を有する円筒面11aとして形成されている。
【0015】
次に、アーム部30について説明する。図2に示すように、アーム部30は、本体部10と連結される連結部材31と、左方先端部に従動プーリ22を回動自在に支持するホルダ32と、連結部材31に支持されサンダベルト41の交換時に使用する係止爪33とを備えている。連結部材31は、抱持部31bを備えており、抱持部31bがハウジング11の円筒面11aを抱持することでハウジング11にアーム部30が固定されるようになっている。抱持部31bは、図3に示すように、円筒面11aへの抱持による固定及び固定解除を行うためのカム機構を備えている。カム機構は一般的に採用されている機構のため詳細な説明は省略するが、カムレバー37を回動させ抱持部31bの内径を変化させることでハウジング11への固定及び固定解除を行うことができる。このカム機構により、本体部10に対するアーム部30の角度調整、及び本体部10へのアーム部30の着脱を工具レスで容易に行うことができる。
【0016】
連結部材31には有底の装着穴31aが形成されており、この装着穴31aにはスプリング35が挿入された状態でホルダ32の軸部34が摺動自在に挿嵌されている。このスプリング35の弾性力によりホルダ32を左方へ付勢させることで、駆動プーリ21と従動プーリ22との間に懸架されたサンダベルト41に張力を付与している。
【0017】
また、ホルダ32には係止爪33に係止される凸部32aが形成されており、スプリング35の弾性力に抗してホルダ32を連結部材31の方向に押圧し、係止爪33で凸部32aを係止することで、サンダベルト41に付与されている張力が除去された状態を維持し、サンダベルト41の交換を容易に行うことができる。
【0018】
次に、図4を参酌して、上述の手持ち式ベルトサンダに回転刃物として回転砥石を取付ける場合について説明する。
【0019】
まず、操作者は駆動プーリ21と従動プーリ22との間に懸架されたサンダベルト41を取り外す。この場合、スプリング35の弾性力に抗してホルダ32を連結部材31の方向に押圧し、係止爪33を凸部32aに係止させ、サンダベルト41に付与されている張力を除去した状態にすることでサンダベルト41の取り外しを容易に行うことができる。次に、カムレバー37を操作し抱持部31bによるハウジング11の円筒面11aへの固定を解除し、アーム部30を本体部10から取り外す。
【0020】
次に、回転砥石51の取付けについて説明する。回転砥石51には雄ねじ部51aが形成されており、この雄ねじ部51aを駆動プーリ21に形成された雌ねじ21aに螺入することで回転砥石51を駆動プーリ21に簡単に取付けることができる。なお、回転砥石51にはスパナ掛け部51bが形成されており、ここにスパナを掛けて回転砥石51を回転させることで確実に固定することができる。また、駆動プーリ21には穴21bが複数形成されており、この穴21bに棒状部材を挿入させることで回転砥石51取付け時の連れ回りを防止することが可能となっている。
【0021】
回転砥石51を取付けた状態で、操作者は不図示のスイッチを操作してモータ12を運転させることで、回転砥石51を使用して被加工物の加工を行うことができる。
【0022】
なお、上述の回転砥石51を取付ける場合においては、サンダベルト41及びアーム部30を取り外した状態で回転砥石51を取り付けて加工を行う手順を示したが、サンダベルト41及びアーム部30が回転砥石51による加工作業を阻害しないのであれば、サンダベルト41及びアーム部30が取付けられた状態で回転砥石51を取り付けて加工を行うことも可能である。この場合回転砥石51の取付け時に駆動プーリ21の連れ回り防止のために設けた穴21bは使用できないが、駆動伝動部20に周知の連れ回り防止機構(ロック機構)を設けることで回転砥石51を取り付けることが可能となる。
【0023】
次に、本発明の第二の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダについて図5及び図6を用いて説明する。図5は本発明の第二の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部の長手方向断面図であり、図6は本発明の第二の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの要部断面図であり、回転砥石を装着した状態を示している。なお、本発明の第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダと同じ構成については同じ符号を付し説明を省略する。
【0024】
本発明の第二の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダは、第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダにおける従動軸32に相当する従動軸61に回転刃物接続部を設けた構成であり、その詳細について以下に説明する。
【0025】
図5に示すように、モータ軸12aに固定される駆動側歯車である駆動側傘歯車13により回転駆動される従動回転部は、モータ軸12aに直交して配置される従動軸61と、従動軸61の下端部に形成された雄ねじ61aに螺入されるナット26により固定される駆動プーリ71と、従動軸61に固定され駆動側傘歯車13と噛み合う従動側歯車である従動側傘歯車27とを備えている。従動軸61はその上端側に配置されるベアリング24と、駆動プーリ71と従動側傘歯車27との間に配置されるベアリング25により回動自在に支持されている。従動軸61の上端部にはベアリング24より上方に突設して回転刃物接続部としての雄ねじ61bが形成されており、回転砥石等の回転刃物が取り付け可能となっている。また、ベアリング24が配置される位置においてハウジング11の外周面は従動軸61と共通の中心線を有する円筒面11aとして形成されており、さらに、円筒面11aの上方には雄ねじ61bを所定の隙間を持って包囲し、上方に開口した開口凸形状部11bが形成されている。なお、開口凸形状部11bの開口には、着脱自在のホールプラグ62が装着されている。
【0026】
次に、図6を参酌して、上述の手持ち式ベルトサンダに回転刃物として回転砥石を取付ける場合について説明する。
【0027】
まず、第一の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダの場合と同様の手順で、サンダベルト41及びアーム部30を取り外す。さらに、開口凸形状部11bの開口に装着されたホールプラグ62を取り外し、雄ねじ61bへのアクセスを可能な状態にしておく。
【0028】
次に、回転砥石55の取付けについて説明する。回転砥石55には雌ねじ部55aが形成されており、この雌ねじ部55aを従動軸61に形成された雄ねじ61bに螺入することで回転砥石55を従動軸61に簡単に取付けることができる。なお、回転砥石55には六角穴55bが形成されており、ここに六角棒レンチを挿入して回転砥石55を回転させることで確実に固定することができる。また、駆動プーリ71には穴71bが複数形成されており、この穴71bに棒状部材を挿入させることで回転砥石55取付け時の連れ回りを防止することが可能となっている。
【0029】
回転砥石55を取付けた状態で、操作者は不図示のスイッチを操作してモータ12を運転させることで、回転砥石55を使用して被加工物の加工を行うことができる。
【0030】
なお、上述の回転砥石55を取付ける場合においては、サンダベルト41及びアーム部30を取り外した状態で回転砥石55を取り付けて加工を行う手順を示したが、サンダベルト41及びアーム部30が回転砥石55による加工作業を阻害しないのであれば、サンダベルト41及びアーム部30が取付けられた状態で回転砥石55を取り付けて加工を行うことも可能である。この場合回転砥石55の取付け時に駆動プーリ71の連れ回り防止のために設けた穴71bが使用できないが、駆動伝動部20に周知の連れ回り防止機構(ロック機構)を設けることで回転砥石55を取り付けることが可能である。
【0031】
以上のように本発明の実施形態に係る手持ち式ベルトサンダは、簡単な操作で回転刃物が使用できるため、ジクスグラインダ等の回転刃物用の電動工具を準備する必要がなく経済的である。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の技術的範囲に限定さない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態においては、回転刃物接続部として従動軸61の上端部に雄ねじ61bを形成したが、従動軸61の上端部に雌ねじとして形成することも可能である。
【0034】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
10 本体部、11 ハウジング、12 モータ、12a モータ軸、13 駆動側傘歯車13、20 駆動伝動部、21 駆動プーリ、21a 雌ねじ、21b 穴、22 従動プーリ、23 従動軸、23a 雄ねじ、24 ベアリング、25 ベアリング、26 ナット、27 従動側傘歯車、30 アーム部、31 連結部材、31a 装着穴、31b 抱持部、32 ホルダ、33 係止爪、34 軸部、35 スプリング、37 カムレバー、41 サンダベルト、51 回転砥石、51a 雄ねじ部、51b スパナ掛け部、55 回転砥石、55a 雌ねじ部、55b 六角穴、61 従動軸、61a 雄ねじ、61b 雄ねじ、71 駆動プーリ、71b 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるモータと、
前記モータのモータ軸に固定される駆動側歯車と、
前記駆動側歯車により回転駆動され駆動プーリを備える従動回転部と、
前記従動回転部の前側に突出して設置されるアーム部と、
前記アーム部の前側先端部に前記駆動プーリと離間して回動自在に設置される従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとの間に張架される無端のサンダベルトと、を備える手持ち式ベルトサンダにおいて、
前記従動回転部は前記駆動プーリを備えた状態で回転刃物を取付け可能とする回転刃物接続部を備えることを特徴とする手持ち式ベルトサンダ。
【請求項2】
前記回転刃物接続部は前記駆動プーリに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の手持ち式ベルトサンダ。
【請求項3】
前記従動回転部は前記モータ軸に直交し前記駆動プーリが固定される従動軸と、
前記従動軸に固定され前記駆動側歯車と噛み合う従動側歯車と、を備え、
前記回転刃物接続部は前記従動軸に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の手持ち式ベルトサンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183628(P2012−183628A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50302(P2011−50302)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】