説明

手摺用支柱支持構造およびその施工方法

【課題】低コスト化が可能であり、かつ、施工性に優れる手摺用支柱支持構造を提供すること。
【解決手段】コンクリート基礎CBに立設される手摺に設けられた手摺用支柱14を、コンクリート基礎CBに結合するための手摺用支柱支持構造であって、コンクリート基礎CBに埋設されたアンカボルト20と、アンカボルト20を貫通させた状態でナット21を締結してコンクリート基礎CBに固定されて立ち上げられた柱支持部材32を有する柱脚部材30と、柱脚部材30に固定された管状の支柱本体40と、支柱本体40下部と柱脚部材30とで形成された手摺用支柱下部内に充填され、コンクリート基礎CBと一体に固化されたグラウト材70と、を備えていることを特徴とする手摺用支柱支持構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーなどに手摺を設置するのにあたり、手摺を支持する手摺用支柱をコンクリート基礎に立設するのに用いる手摺用支柱支持構造およびその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手摺用支柱支持構造として、コンクリート基礎に多孔鋼板ボックスを埋設し、手摺用支柱の切欠溝を鋼板ボックスのアンカに挿通させ、手摺用支柱および多孔鋼板ボックス内にグラウト材を注入固定したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−38388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようにコンクリート基礎に手摺用支柱を埋め込むような構造の従来技術にあっては、コンクリート基礎に多孔鋼板ボックスなどの汎用性の低い専用の鋼材を埋め込む必要があるため、高価であるとともに、施工に手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決することを目的とするものであり、低コスト化が可能であり、かつ、施工性に優れる手摺用支柱支持構造およびその施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願請求項1に記載の発明は、手摺を支持する手摺用支柱をコンクリート基礎に立設するための手摺用支柱支持構造であって、前記コンクリート基礎に上端部を突出して埋設されたアンカボルトと、このアンカボルトを貫通させた状態でナットを締結して前記コンクリート基礎に固定され、前記コンクリート基礎から立ち上げられた柱支持部を有する柱脚部材と、前記柱脚部材の前記柱支持部に下端部を沿わせた嵌合状態で前記柱支持部に固定された管状の支柱本体と、前記支柱本体下部と前記柱脚部材とで形成された手摺用支柱下部内に充填され、前記コンクリート基礎と一体に固化されたグラウト材と、を備えていることを特徴とする手摺用支柱支持構造とした。
【0007】
また、本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の手摺用支柱支持構造において、前記柱脚部材の下端部に、前記コンクリート基礎に沿って配置された底板が設けられ、この底板に、前記アンカボルトが貫通され、前記ナットの非締結状態で前記柱脚部材が前記アンカボルトに対し水平方向へ相対移動するのを可能とする長穴が形成されていることを特徴とする手摺用支柱支持構造とした。
また、本願請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の手摺用支柱支持構造において、前記支柱本体下部と前記柱脚部材下部との一方もしくは両方に、前記支柱本体下部の内部を外部と連通する連通部が形成され、前記グラウト材が、前記連通部を介して前記支柱本体下部の外部に流出した状態で前記コンクリート基礎と一体に固化されていることを特徴とする手摺用支柱支持構造とした。
また、本願請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の手摺用支柱支持構造において、前記支柱本体下部に、前記グラウト材充填用の充填口が設けられていることを特徴とする手摺用支柱支持構造とした。
また、本願請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4に記載の手摺用支柱支持構造において、前記コンクリート基礎に、前記支柱本体下部および前記柱脚部材下部の外周を囲って堰き止め部材が設けられ、この堰き止め部材が、前記連通部から流出した前記グラウト材を堰き止めていることを特徴とする手摺用支柱支持構造とした。
また、本願請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の手摺用支柱支持構造において、前記連通部から流出した前記グラウト材および前記堰き止め部材を覆って、前記支柱本体下部および前記柱脚部材下部の外周に柱脚カバーが設けられていることを特徴とする手摺用支柱支持構造とした。
【0008】
また、本願請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の手摺用支柱支持構造の施工方法であって、前記コンクリート基礎の打設時に、前記アンカボルトを、その上端部を前記コンクリート基礎から突出させた状態で埋設する工程と、前記アンカボルトを貫通させて前記柱脚部材を前記コンクリート基礎上に設置し、さらに、前記アンカボルトに前記ナットを締結して前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定する工程と、前記柱脚部材から立ち上げられた柱支持部に、管状の前記支柱本体を嵌合させて固定する工程と、前記支柱本体下部と前記柱脚部材とで形成された手摺用支柱下部内に前記グラウト材を充填し、このグラウト材を、前記コンクリート基礎と一体に固化させる工程と、を実行することを特徴とする手摺用支柱支持構造の施工方法とした。
また、本願請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の手摺用支柱支持構造を対象とした請求項7に記載の施工方法であって、前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定する工程時に、前記アンカボルトに対して前記柱脚部材を前記長穴に沿って移動させて、前記柱脚部材の設置位置をあらかじめ設定された位置に調整した後、前記ナットを締結して前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定し、前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定した後、前記堰き止め部材を、前記柱脚部材に対して水平方向に離間させて前記コンクリート基礎上に設置し、前記グラウト材を充填する工程において、前記グラウト材を前記充填口から前記支柱本体の内部に充填し、この充填したグラウト材が、前記連通部から流れ出し、前記堰き止め部材に堰き止められた状態を確認した後、前記柱脚カバーを設置して、前記連通部から流れ出した前記グラウト材およびこれを堰き止めた前記堰き止め部材を覆い隠す工程を実行することを特徴とする手摺用支柱支持構造の施工方法とした。
【発明の効果】
【0009】
本願請求項1に記載の発明では、コンクリート基礎にアンカボルトを埋設し、このアンカボルトに、柱脚部材を固定し、この柱脚部材の柱支持部に管状の支柱本体を嵌合状態として固定し、さらに、手摺用支柱下部内にグラウト材を充填し、このグラウト材をコンクリート基礎と一体に固化させるようにした。
このように、コンクリート基礎に埋設するのは、アンカボルトであるため、ボックス状の専用に製造したアンカ部材を用いるのと比較して、施工容易であるとともに、安価に製造することができる。
しかも、支柱本体および柱脚部材の下部である手摺用支柱下部内にグラウト材を充填し、このグラウト材をコンクリート基礎と一体に固化させたため、手摺用支柱のぐらつき、たわみを抑制でき、高い支持強度を得ることができる。加えて、グラウト材の充填により、ボルト・ナットの締結が緩むのを防止できるとともに、柱脚部材が水に接触するのを防止して、柱脚部材が金属製である場合に、錆の発生を防止でき、長期間にわたり高い支持強度を維持できる。
【0010】
さらに、本願請求項2に記載の発明は、柱脚部材の設置時に、アンカボルトに対し、長穴に沿って水平方向へ相対移動させることができる。
したがって、アンカボルトの埋設位置の精度が低くても、柱脚部材および支柱本体の位置を調節し、手摺用支柱の設置位置の位置精度を向上することができる。
本願請求項3に記載の発明は、支柱本体下部の内部を外部と連通する連通部を設けたため、支柱本体内部に充填したグラウト材が、支柱本体下部から流出した状態で、コンクリート基礎と一体に固化する。
このため、グラウト材を支柱本体内部のみに設けたものと比較して、グラウト材とコンクリート基礎との接触面積を大きく確保でき、より高い支持強度を得ることができる。
本願請求項4に記載の発明は、支柱本体下部に充填口を設けたため、支柱本体の設置後のグラウト材の充填が容易である。
本願請求項5に記載の発明は、手摺用支柱下部に充填するグラウト材が連通部から手摺本体外部に流れ出すようにしているが、この流れ出したグラウト材は、堰き止め部材に堰き止められて、それ以上広がるのが抑制される。したがって、外観品質を確保することができる。
さらに、本願請求項6に記載の発明は、連通部から流出したグラウト材および堰き止め部材が柱脚カバーにより覆われるため、外観品質をより高くできる。
【0011】
本願請求項7に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明と同様に、アンカボルトを用いたことによる、施工容易で安価に製造することができる効果、手摺用支柱の高い支持強度を得ることができる効果、および長期間にわたり高い支持強度を維持できる効果を得ることができる。
さらに、本願請求項8に記載の発明は、アンカボルトに対して柱脚部材を長穴に沿って移動させて、柱脚部材の設置位置をあらかじめ設定された位置に調整可能であるため、アンカボルトの埋設位置の精度が低くても、柱脚部材および支柱本体の位置を調節し、手摺用支柱を高い位置精度で設置することができる。
さらに、グラウト材を充填する工程において、グラウト材を充填口から支柱本体の内部に充填し、この充填したグラウト材が、連通部から流れ出して堰き止め部材に堰き止められた状態を確認した後、柱脚カバーを設置するようにした。
このように、グラウト材が支柱本体から外部に流れ出るのを確認するため、確実に、グラウト材とコンクリート基礎とを一体に結合させて、高い支持強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aを示す断面図であって、図3(a)S1−S1線の位置で切断した状態を示している。
【図2】図2は、実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aを示す分解斜視図である。
【図3】図3は、実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aを適用した手摺HRの外観図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】図4は、実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aを示す断面図であって、図3(a)のS4−S4線の位置で切断した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aおよびその施工方法を説明する。
【0015】
(手摺)
まず、実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aを適用した手摺HRについて図3により説明する。
【0016】
図3に示すように、手摺HRは、建物HUのバルコニーBLに設けられている。このバルコニーBLは、建物HUの一側の図示を省略した開口部の屋外側に設けられたもので、平面視で略長方形に形成されたコンクリート基礎CBと、その外周部に沿って設置された手摺HRとを備えている。
【0017】
手摺HRは、図3(a)に示すように、平面視で、コンクリート基礎CBの長方形の3辺に沿って略U字状に設けられており、所定の間隔でコンクリート基礎CBに立設されたアルミニウムなどの金属製の5本の手摺用支柱11〜15と、これら手摺用支柱11〜15の上端部に連結されたアルミニウムなどの金属製の手摺笠木16と、手摺用支柱11〜15の間に設けられて手摺用支柱11〜15に支持されたアルミニウムなどの金属製の格子部材17とを備えた周知のものである。
【0018】
(手摺用支柱支持構造)
手摺用支柱11〜15は、平面視で長方形のコンクリート基礎CBの各コーナ部の近傍と、この長方形の長辺の略中央部とに立設されている。なお、この長辺の中央部に立設された手摺用支柱13は、他の箇所に立設された手摺用支柱11,12,14,15とは太さが異なっているが、その支持構造は、他の箇所に立設されたものと同様である。
【0019】
本実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aは、各手摺用支柱11〜15をコンクリート基礎CBに設置するのに用いられており、その構造は共通しているため、これらを代表して図3(a)において、コンクリート基礎CBの手前右側のコーナ部に設置されている手摺用支柱14について説明する。
【0020】
図4は図3(a)のS4−S4線における断面を示しており、手摺用支柱14は、コンクリート基礎CBから立設されたアンカボルト20と、このアンカボルト20に固定された柱脚部材30と、この柱脚部材30に下部を支持された支柱本体40とを備えている。なお、コンクリート基礎CBの表面には、モルタルによる仕上層100が設けられている。
【0021】
アンカボルト20は、既存の汎用品のボルトが用いられており、コンクリート基礎CBの打設時に埋め込まれたものである。なお、この作業において、手摺HRの延在方向であるコンクリート基礎CBの長方形の長辺に沿って手摺用支柱12〜14を支持するための各アンカボルト20を埋設する場合、この長辺方向に沿って基準となる糸(図示省略)などの目印に沿って各アンカボルト20を埋設する、手摺HRに沿う方向に直交する方向の各アンカボルト20の埋設位置精度は高くすることができるが、長辺に沿う方向の位置精度は、基準となる位置の目安が付けにくく、若干位置精度が低下する可能性がある。
【0022】
柱脚部材30は、図2の分解斜視図に示すように、ベース部材31と柱支持部材(柱支持部)32との、鋼製C型チャンネル材製の2部品を溶接などにより一体に結合して形成されている。
【0023】
ベース部材31は、コンクリート基礎CBに沿って配置される底板31aの両端部から一対の立上片31b,31bを立ち上げた上向きのC型形状に形成されており、底板31aには、手摺HRの延在方向(手摺用支柱12〜14では、コンクリート基礎CBの長方形の長辺に沿う方向、手摺用支柱11,15では、同短辺に沿う方向)に延びる長穴31cが形成されている。図1の断面図に示すように、この長穴31cにアンカボルト20を挿通させ、アンカボルト20にナット21を締結することで、柱脚部材30がコンクリート基礎CBに固定される。
【0024】
柱支持部材32は、立上片31b,31bの外側に重なる2枚の長方形の立片32a,32bとこれを連結する同様の長方形の立片32cとにより、横向きのC型状に形成されている。これら立片32a,32b,32cで形成されるC型形状部分は、支柱本体40の内周に挿入してきつくあるいは緩く嵌合する寸法に形成されており、この部分で支柱本体40を支持するもので、その支持強度が十分に得られるように、30cm程度の高さに形成されている。また、柱支持部材32には、立上片31b,31bおよび立片32a,32bを貫通して、支柱本体40をネジ止めするためのネジ穴33,33が形成されている。
【0025】
さらに、柱支持部材32の各立片32a〜32cの下端は、底板31aよりも上方に配置され、この位置で、両立片32a,32bが、立上片31b,31bに溶接されている。ま
したがって、柱脚部材30は、立上片31b,31bおよび立片32a〜32cにより3面を囲まれて四角管状の一側の全面を開放した形状に形成され、かつ、開放側の側面に対向する立片32cの下方には、底板31aとの間に、内外を連通する連通口(連通部)34が形成されている。
【0026】
支柱本体40は、アルミニウムなどの金属製で、略正方形の管状に形成されており、柱支持部材32の外周に緩い嵌合状態で装着され、ネジ41により柱脚部材30に結合される。なお、支柱本体40の下部において、対向する一対の側面には、ネジ41を挿通するためのネジ穴43,43が開口され、これらネジ穴43,43が設けられた側面に直交する一側面には、四角形の充填口42が開口されている。また、支柱本体40がネジ41により固定される位置は、図1の断面図に示すように、立片32a〜32cの下端よりも僅かに高い位置であって、連通口34の上端の位置の近傍の高さとなっている。
したがって、柱脚部材30に支柱本体40をネジ41により固定した状態では、支柱本体40の内部空間は、その下端部において、前述した柱脚部材30の一側に形成された連通口34と、この連通口34に対向する側面に形成されて、支柱本体40の下端と柱脚部材30の底板31aとの間に連通口34と同程度の面積で形成された連通部(図示省略)とにより、外部と連通されている。
【0027】
柱脚カバー50は、図2の分解斜視図に示すように、四角形管状の側壁部51と、この側壁部51で囲まれる空間を覆う蓋部52と、蓋部52に開口された開口部53を備えている。開口部53は、支柱本体40を挿通可能な寸法に形成されている。
そして、柱脚カバー50は、図1の断面図に示すように、開口部53に柱脚部材30および支柱本体40を挿通させて、手摺用支柱14の下部を覆って設けられている。
【0028】
また、柱脚部材30の外側であり、柱脚カバー50の側壁部51の内側には、バックアップ材(堰き止め部材)60が設けられている。このバックアップ材60は、ウレタン発泡材により帯状に形成され、その一側に接着材(図示省略)が塗布されており、図2の分解斜視図に示すように、アンカボルト20の周囲に略四角形を成すように配置されて、コンクリート基礎CBに貼り付けられている。なお、バックアップ材60の前述した接着材は、コンクリート基礎CBへの接着前は、離型紙で覆われている。
【0029】
支柱本体40の下部には、グラウト材70が充填されている。また、グラウト材70は、前述した連通口34およびこれに対向する連通部を通り、支柱本体40の外部に流出し、バックアップ材60によりその水平方向への流出が堰き止められ、また、その上方が柱脚カバー50で覆われた状態で固化している。なお、このグラウト材70は、本実施の形態1ではモルタルやセメントペーストが用いられている。
【0030】
(施工方法)
次に、実施の形態1の手摺用支柱支持構造Aの施工方法を順を追って説明する。
(アンカボルト埋設工程)
まず、コンクリート基礎CBを打設する際に、アンカボルト20をあらかじめ設定された位置に埋設する。
【0031】
(柱脚部材設置工程)
次に、アンカボルト20に柱脚部材30を固定する。
この場合、ベース部材31の長穴31cにアンカボルト20を差し込み、長穴31cをコンクリート基礎CBの長辺に沿う方向に向けたうえで、この長辺に沿う方向の位置決めを行った後、ナット21をアンカボルト20に締結して、柱脚部材30をコンクリート基礎CBに固定する。前述したように、アンカボルト20の設置位置は、コンクリート基礎CBに対し、その短辺に沿う方向の位置精度よりも、長辺に沿う方向の位置精度が低くなっている。そこで、柱脚部材30のベース部材31に長穴31cを設け、長辺に沿う方向への設置位置の調整を可能とすることで、柱脚部材30の設置位置精度を高めることができる。
また、柱脚部材30の柱支持部材32は、断面四角形の管の一側が開放された形状に形成されているため、ナット21の締結作業が容易である。
【0032】
(バックアップ材の設置工程)
次に、柱脚部材30の周囲にバックアップ材60を貼り付ける。このバックアップ材60の接着面は離型紙で覆われており、この離型紙を剥がして、コンクリート基礎CBに接着する。
このとき、バックアップ材60は、前述したように、柱脚部材30に対して水平方向に間隔を空けた位置であって、柱脚カバー50で覆われる位置に配置する。
【0033】
(支柱本体設置工程)
次に、支柱本体40を設置する。
この場合、支柱本体40を、柱脚部材30に対し上方から被せて嵌合させ、コンクリート基礎CBから若干浮かせたあらかじめ設定された位置に配置し、ネジ41,41を締結して、柱脚部材30に固定する。この固定状態で、支柱本体40および柱脚部材30の内部空間は、その下端部に形成された連通口34およびその対向位置に形成された同様の連通部(図示省略)により、外部に連通された状態となっている。
【0034】
(グラウト材充填工程)
次に、支柱本体40の充填口42から、その下部内部にグラウト材70を充填する。
このグラウト材70が注入される支柱本体40の内部空間は、その下端部において連通口34およびこれに対向する連通部により外部に連通されており、その一部が支柱本体40の外部に流れ出す。このとき作業者は、グラウト材70が支柱本体40の外部に流れ出し、バックアップ材60に堰き止められる位置まで流れ出たことを確認する。なお、グラウト材70を、あらかじめ設定された調合で設定された粘度に調整することにより、グラウト材70を、充填口42の下端位置まで充填したときに、所望量のグラウト材70がバックアップ材60の位置まで達するようにできる。
【0035】
(柱脚カバー設置工程)
上述のようにグラウト材70がバックアップ材60の位置まで達したことを確認すると、グラウト材70の充填を終え、柱脚カバー50を設置する。
この場合、柱脚カバー50の開口部53に、支柱本体40の上端を差し込み、この柱脚カバー50を、支柱本体40に沿って下降させ、コンクリート基礎CBに当接させる。このとき、柱脚カバー50は、硬化前のグラウト材70に密着される。
【0036】
以上の工程を実施して各手摺用支柱11〜15を設置し終えたら、各手摺用支柱間に格子部材17を設置するとともに、各手摺用支柱11〜15の上端を手摺笠木16で連結して、手摺HRの設置を終了する。
【0037】
以上説明した本発明の実施の形態の手摺用支柱支持構造Aにあっては、以下に列挙する効果を奏する。
a)手摺用支柱11〜15は、コンクリート基礎CBに埋設したアンカボルト20に固定するようにした。このように、コンクリート基礎CBに、ボックス状のアンカ部材など専用に製造したアンカ部材を埋設せずに、汎用のボルトを用いることができるため、埋設作業が容易であるとともに、材料費を安価に抑えることができる。
【0038】
b)上記a)のようにコンクリート基礎CBに埋設するのはアンカボルト20のみであるが、手摺用支柱14の下端部は、グラウト材70によりコンクリート基礎CBと一体に形成されるため、単にアンカボルト20に対して固定したものと比較して、より強固に支持される。また、アンカボルト20に締結しただけの構造では、経時的に、ぐらつき、撓みなどが生じるおそれがあるが、グラウト材70を充填したことによりこれを抑えることができるとともに、ナット21が緩むのも防止でき、これにより強固な支持を長期間にわたり維持できる。
しかも、グラウト材70は、支柱本体40、柱脚部材30との両方に接して固化しているため、柱脚部材30のみに接しているものと比較して、いっそう強固に支持される。
加えて、グラウト材70により、支柱本体40の下部および柱脚部材30に水が接触するのを抑えることができ、これにより、錆による性能低下も抑制できる。
【0039】
c)アンカボルト20に締結させる柱脚部材30に、長穴31cを形成し、アンカボルト20に対して、設置位置を調整可能とした。したがって、コンクリート基礎CBに埋設部分を有しながらも、手摺用支柱11〜15の設置位置精度を高くすることが可能である。また、柱脚部材30は、ベース部材31の底板31aをコンクリート基礎CBに当接させるようにしたため、強固に連結可能である。
【0040】
d)グラウト材70を、支柱本体40および柱脚部材30の外部まで流れ出させてコンクリート基礎CBと一体に固化するようにしたが、この支柱本体40および柱脚部材30の外部まで流れ出たグラウト材70は、柱脚カバー50で覆い隠すようにしたため、高い外観品質を確保できる。
加えて、柱脚部材30の外周にバックアップ材60を設けたため、グラウト材70が流れ出す範囲を柱脚カバー50に覆われる範囲に抑えることができる。したがって、グラウト材70が柱脚カバー50の外部まで流れ出すのを抑制でき、いっそう高い外観品質を確保できる。
【0041】
e)柱脚部材30は、グラウト材70が充填される位置よりも上方まで延在されているため、より高い支持強度が得られる。
【0042】
f)連通部は、C型のベース部材31に対して柱支持部材32を、少し浮かして結合させることで形成したため、連通部を設けるために、穴や溝を形成する工程が不要であり、その分、製造が容易となり、製造コストを低減できる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【0044】
例えば、実施の形態では、建物HUの一側に設けたバルコニーBLに手摺HRを設けた例を示したが、本発明を適用する手摺用柱の設置は、手摺をコンクリート基礎CBに設ける箇所であれば、バルコニー以外にも適用することができる。
【0045】
また、実施の形態では、手摺用支柱は、四角の管状のものを示したが、その形状は、これに限定されず、円管状や三角、五角、六角などの多角形形状に形成してもよい。
【0046】
また、実施の形態では、支柱本体の内外を連通させる連通部を、C型のベース部材31、柱支持部材32および支柱本体40との組合せにより形成した例を示したが、これに限定されず、管状の部材に穴や溝を形成して連通部を形成してもよい。
【0047】
また、実施の形態では、グラウト材70を、支柱本体40の外部に流れ出させた例を示したが、グラウト材を、支柱本体の内部の範囲で、コンクリート基礎に結合させてもよい。
【0048】
また、実施の形態では、支柱本体40は、柱脚部材30の外周に装着した例を示したが、これに限定されず、柱脚部材30の内周に装着することも可能である。
【0049】
また、実施の形態では、支柱本体40に充填口42を設けた例を示したが、これに限定されず、支柱本体40の上端からグラウト材を充填するようにしてもよい。また、グラウト材は、支柱本体40の外部に流れ出た部分を整形することも可能であり、この場合、柱脚カバー50を省略することができる。
【0050】
また、実施の形態では、柱支持部としての柱支持部材32は、水平方向の断面がC型状のものを示したが、形状はこれに限定されず、四角管状のものや、あるいは、上向きC型のベース部材31の立上片31b,31bをそのまま立ち上げたものなどを用いるようにしてもよい。
【0051】
また、実施の形態1では、柱脚部材30、支柱本体40、柱脚カバー50として、金属製のものを用いたが、素材としてはこれに限定されることは無く、樹脂などの他の素材のものを用いることもできる。
【符号の説明】
【0052】
11〜15 手摺用支柱
20 アンカボルト
21 ナット
30 柱脚部材
31c 長穴
32 柱支持部材(柱支持部)
34 連通口(連通部)
40 支柱本体
42 充填口
50 柱脚カバー
60 バックアップ材(堰き止め部材)
70 グラウト材
A 実施の形態1の手摺用支柱支持構造
CB コンクリート基礎
HR 手摺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺を支持する手摺用支柱をコンクリート基礎に立設するための手摺用支柱支持構造であって、
前記コンクリート基礎に上端部を突出して埋設されたアンカボルトと、
このアンカボルトを貫通させた状態でナットを締結して前記コンクリート基礎に固定され、前記コンクリート基礎から立ち上げられた柱支持部を有する柱脚部材と、
前記柱脚部材の前記柱支持部に下端部を沿わせた嵌合状態で前記柱支持部に固定された管状の支柱本体と、
前記支柱本体下部と前記柱脚部材とで形成された手摺用支柱下部内に充填され、前記コンクリート基礎と一体に固化されたグラウト材と、
を備えていることを特徴とする手摺用支柱支持構造。
【請求項2】
前記柱脚部材の下端部に、前記コンクリート基礎に沿って配置された底板が設けられ、この底板に、前記アンカボルトが貫通され、前記ナットの非締結状態で前記柱脚部材が前記アンカボルトに対し水平方向へ相対移動するのを可能とする長穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の手摺用支柱支持構造。
【請求項3】
前記支柱本体下部と前記柱脚部材下部との一方もしくは両方に、前記支柱本体下部の内部を外部と連通する連通部が形成され、
前記グラウト材が、前記連通部を介して前記支柱本体下部の外部に流出した状態で前記コンクリート基礎と一体に固化されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の手摺用支柱支持構造。
【請求項4】
前記支柱本体下部に、前記グラウト材充填用の充填口が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の手摺用支柱支持構造。
【請求項5】
前記コンクリート基礎に、前記支柱本体下部および前記柱脚部材下部の外周を囲って堰き止め部材が設けられ、この堰き止め部材が、前記連通部から流出した前記グラウト材を堰き止めていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の手摺用支柱支持構造。
【請求項6】
前記連通部から流出した前記グラウト材および前記堰き止め部材を覆って、前記支柱本体下部および前記柱脚部材下部の外周に柱脚カバーが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の手摺用支柱支持構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の手摺用支柱支持構造の施工方法であって、
前記コンクリート基礎の打設時に、前記アンカボルトを、その上端部を前記コンクリート基礎から突出させた状態で埋設する工程と、
前記アンカボルトを貫通させて前記柱脚部材を前記コンクリート基礎上に設置し、さらに、前記アンカボルトに前記ナットを締結して前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定する工程と、
前記柱脚部材から立ち上げられた柱支持部に、管状の前記支柱本体を嵌合させて固定する工程と、
前記支柱本体下部と前記柱脚部材とで形成された手摺用支柱下部内に前記グラウト材を充填し、このグラウト材を、前記コンクリート基礎と一体に固化させる工程と、
を実行することを特徴とする手摺用支柱支持構造の施工方法。
【請求項8】
請求項6に記載の手摺用支柱支持構造を対象とした請求項7に記載の施工方法であって、
前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定する工程時に、前記アンカボルトに対して前記柱脚部材を前記長穴に沿って移動させて、前記柱脚部材の設置位置をあらかじめ設定された位置に調整した後、前記ナットを締結して前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定し、
前記柱脚部材を前記コンクリート基礎に固定した後、前記堰き止め部材を、前記柱脚部材に対して水平方向に離間させて前記コンクリート基礎上に設置し、
前記グラウト材を充填する工程において、前記グラウト材を前記充填口から前記支柱本体の内部に充填し、この充填したグラウト材が、前記連通部から流れ出し、前記堰き止め部材に堰き止められた状態を確認した後、前記柱脚カバーを設置して、前記連通部から流れ出した前記グラウト材およびこれを堰き止めた前記堰き止め部材を覆い隠す工程を実行することを特徴とする手摺用支柱支持構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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