説明

手術台装置

互いにヒンジで動くように取り付けられた第1セクションと第2セクションを利用する手術台である。また、第1セクションと第2セクションは、ヒンジ部と離れた位置で支持部材と接続されている。エレベータは、支持部材において上下にセクションの1つを動かす。結果として生じる第1セクションと第2セクションによって形成される支持構造体の態様は、平面または上方あるいは下方に「V字型」に向けられた構成をとることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2007年10月22日に出願された米国仮特許出願第60/960,933号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、新規であり、且つ、有用な手術台に関する。
【背景技術】
【0003】
手術の実施には、手術台の上で患者を支えること、並びに患者の体を傾けたり、昇降させる動作によって患者の体の位置を調整することが必要とされる。また、特定の場合には、通常腰部まわりの患者の体の関節動作も必要である可能性がある。従来、そのような動作は、手術を行う者によって患者の下と周囲に置かれるクッションとパッドのような支持部材を用いて行われていた。
【0004】
また、特殊モータ駆動手術台が、その上に横たわっている患者を正しい位置に置くための支持面の複数の状態を作るために考案されている。例えば、米国特許第6,634,043号は、医療台について記載しており、その医療台は、頭部と一対の足の支えとを具えており、それらは全て、患者を適切に支えるよう操作するために、上下の位置の間で拡張および縮小可能なものである。
【0005】
米国特許第7,152,261号は、モジュール式の支持システムについて記載しており、そのシステムは、手術のために使用することができ、その手術において、一対の支持部材が互いに隣接した状態で、独立して操作されて、患者に複数の支持状態を提供するものとなっている。
【0006】
手術台は、手術のために安全で効率的な方法で患者を配置するために一対のセクションの関節動作を可能にするものであり、医療分野において進歩が顕著である。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、新規であり、且つ、有用な手術台が本明細書に提供されている。
【0008】
本出願の手術台は、近位端部と遠位端部とを有する第1セクションを具えている。また、手術台は、第2セクションも含んでおり、第2セクションは、近位端部と遠位端部とを有している。第1セクションと第2セクションの遠位端部は、互いにヒンジで動くように取り付けられており、外科手術を行うために患者を支持する支持構造体を形成している。
【0009】
第1支持部材は、第1セクションの近位端部を保持する。また、第1支持部材は、エレベータを具え、エレベータは、第1セクションの近位端部が第1支持部材に対して移動することを可能にする。第2支持部材は、第2セクションの近位端部を保持するとともに、第1支持部材で見られるエレベータの動作によって、第2セクションに対して第1セクションがヒンジで動くことを可能とするピボットを具える。
【0010】
また、長さ補正機構は、第1セクションと連関して存在し、第1支持部材に対する第1セクションの近位部との間の距離の調整を行う。そのような長さ補正機構は、第1セクションと第1支持部材との中間に設けられるジャーナルシャフトの形態を採ることができる。更に、もう1つのヒンジが、必要に応じて関節動作を行うためにジャーナルと第1支持部材との間に位置していてもよい。
【0011】
また、上半身の支持部材は、第1セクションと第2セクションによって形成される支持構造体上に形成することができる。そのような上半身の支持部材は、スライド可能なプラットフォームを具えることができ、そのプラットフォームは、支持構造体がその第1セクションと第2セクションとの間でヒンジで動かされて角度を作るとき、患者にゆるやかな動きを可能にする。そのような上半身の支持部材は、ベルトまたはチェーンおよびスプロケット機構によって動かされる平らな部材の形態を採ることができる。
【0012】
更に、本発明の手術台は、第1支持部材と第2支持部材とに共通の軸に沿って支持構造体を傾けることができる回転駆動部を具える。さらに、回転駆動部は、患者をそのように配置するのに使い易く、安全な方法で、外科医が医療を行うことを可能にする。
【0013】
第1支持部材と第2支持部材と同様に、支持構造体は、バーによって連結することができ、そのバーは、安定性と手術台の長さの調整力をもたらす。また、車輪は第1支持部材と第2支持部材とに設けることができ、収納庫から手術室へ手術台を容易に移動させたり、再び戻すことを可能とする。
【0014】
新規であり、且つ、有用な手術台が、上文に説明されていることが明らかである。
【0015】
従って、本発明の目的は、外科手術のために患者を様々な状態に配置することができる手術台を提供することである。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、外科手術をする患者を配置することができる手術台を提供することであり、その手術台は、手術台に対する患者の摩擦を伴う引きずりを除去する。
【0017】
本発明の別の目的は、外科医が背中の手術をすることを可能とするために角度をつけた状態で患者を配置することができる手術台を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、電動機構によって様々な外科手術の体位に患者を配置することができる手術台を提供することであり、それによって、患者の快適性と安全性は最大となる。
【0019】
本発明の更なる目的は、外科手術中、X線装置を使用することを可能とする手術台を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、患者が手術体位に動かされる間、患者の痛い場所を取り除く手術台を提供することである。
【0021】
本発明の更なる目的は、外科手術のために患者を配置する間、単純で、小型で、使いやすい手術台を提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は、手術中に背骨が屈曲および伸張する間、患者の胴体の円滑な移動を生じさせる手術台を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、そのような患者が外科手術のために配置されるとき、患者の背骨の伸延と圧迫を防ぐ機構を具える手術台を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、背骨の自然生体力学を補助する手術台を提供することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、手術部位における外科的アクセスと視覚化を改善する手術台を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、腰部の骨切り術中、閉鎖術を容易にする手術台を提供することである。
【0027】
本発明の更に別の目的は、腹臥位、仰臥位および横向きで手術を行うために2つの部分のヒンジ構造を用いる手術台を提供することである。
【0028】
本発明の更なる目的は、腎臓大静脈圧迫を減らして、硬膜外静脈出血を最小にする手術台を提供することである。
【0029】
本発明は、特に、特定の特徴と特性に関して、その他の目的と利点とを有しており、それらは、明細書の説明が進むにつれて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の手術台の側面図である。
【図2】図2は、背中の手術のために患者を配置させるためにヒンジ機構によって上方へ角度がつけられた本発明の手術台の側面図である。
【図3】図3は、図1と図2から配置を反転させた本発明の台のヒンジ部分の部分側面図である。
【図4】図4は、本発明のヒンジ調整機構の破断斜視図である。
【図5】図5は、本発明の台のヒンジセクションとともに使用される患者の胴または胸を支持するためのスライド可能なプラットフォームの平面、正面、右側斜視図である。
【図6】図6は、本発明の胴を乗せるプラットフォームをスライドさせるために用いられる機構の部分斜視図である。
【図7】図7は、顔パッド、胸パッド、腰パッドおよび肘掛けを示している図1の手術台とスライド可能なプラットフォームの部分平面図である。
【図8】図8は、本発明の手術台の一部の概略側面図であって、この図においては、両方のセクションが同じ平面上に存在する。
【図9】図9は、手術台の一部の側面図であり、そのヒンジ機構による手術台の上方向の関節動作と、そのような関節動作中の顔及び胴支持部材の動作とを示している。
【0031】
本発明のより良い理解のために、本発明の好ましい実施例の以下の詳細な説明が参照されるが、それは上述の図面とともに解釈されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の様々な態様は、その好ましい実施例の以下の詳細な説明から展開されるものであり、それらは前述の図面が参照されるべきである。
【0033】
本発明の実施例が全体として、参照符号10によって図面に示されている。台10はその2つの構成要素として、第1セクション12と第2セクション14とを具えている。第1セクション12は、近位部16と遠位部18とを具えている。同様に、第2セクション14には、近位部20と遠位部22とが設けられている。ヒンジ24は、図1に示すように、第1セクション12の遠位部18を第2セクション14の遠位部22に回転可能に接続する。第1セクション12、第2セクション14およびヒンジ24は、手術の間、患者を支持することを目的とする支持構造体26を形成する。
【0034】
また、図1を参照すると、第1支持部材28は、第1セクション12の近位部16を保持し、一方、第2支持部材30は、第2セクション14の近位部20を保持することが分かる。更に、調節可能なロッド部材32は、第1支持部材28と第2支持部材30との間の相互接続を安定させる。複数の車輪34は、手術台10が表面36上を進むことを可能とする。そのような可動性が、手術台12の格納と使用のために必要である。当然のことながら、手術台が医療手術に使用される間、車輪34は、所定の位置に固定することができる。
【0035】
図2を参照すると、第1セクション12は、方向矢印38に示すように、第2セクション14に対して回転していることが分かる。図1は、遠位端部18と22の上下動作を仮想線で表している。この作動中、ヒンジ24は、軸40の周りを回転するとともに、第2セクション14の近位部は、ピボット42の周りを回転する。また、エレベータ44は、第1セクション12の近位部16を降下させる。ジャーナルシャフトの形態の調整器46は、第1セクション12の近位部16と支持部材28との間の距離を決定する。更に、ピボット48は、エレベータ44に対して、調整器46の一部の回転を可能とする。エレベータ44は、カリフォルニア州ユニオン市所在のMizuho Orthopedic Systems Inc によって流通されるジャクソン手術台で見られるものと類似する既知のものであってもよい。
【0036】
図7に関して、手術台10は、数多くの患者支持アイテムを具えていることが明らかである。例えば、肘掛け50と52は、そこから支持するために第2セクション14の方に延びている。 顔支持部材54と胸支持部材56は、プラットフォーム58の上に設置されており、プラットフォーム58は、支持構造体26の第2セクション14に沿ってスライドするが、その詳細は、後述することとする。腰支持部材60は、第1セクション12の上に設置される。支持構造体26上のその他のパッドは、明確にするために示されていない。
【0037】
図3を参照すると、台10のヒンジ構造部24は、図1と2に示されるセクション12と14の一部とともに示されているのが明らかである。ヒンジ24は、第1セクション12のタブ64と第2セクション14のタブ66に回転可能に取り付けられる制御ロッド62とともに使用されている。第1セクション12と第2セクション14が下方にヒンジで動いて、上向きのV字型を形成すると、制御ロッドの接続点68は、円弧70に沿って地点68Aに移動する。同時に、タブ64における制御ロッドの端部の接続点72は、地点72Aに移動する。同様に、セクション12と14が、ヒンジで上方に動いて、逆V字型を形成すると、接続点68は、円弧70に沿って68Bで特定される位置に移動するが、セクション12に対する位置点72は、72Bと示される地点に移動する。最も重要なことは、点68と72、68Aと72A、および68Bと72Bとの間の距離は、同じ距離を維持しており、図3において距離「A」と特定されている。
【0038】
ここで図4を参照すると、駆動機構74は、セクション12と14の動作のために、引き離された構成で示されていることが分かる。本質的には、主ネジ76は、方向矢印80に従って、リンクロッド78によって回転される。モータ82は、リンクロッドと主ネジ76を時計回り方向または反時計回り方向に動かすような原動力を提供する。図4に表されるように、主ネジ76は、支持構造体26を逆V字型状態に上方へ動かすために回転されている。
【0039】
ここで図5と6を参照すると、胸または胴をスライドさせるプラットフォーム58が表されていることが明らかである。プラットフォーム58は、中央部84および上方へ延在するアーム86と88を含んでいる。図7に示すように、プラットフォーム58が支持構造体26上に設置されるとき、中央開口部90は、患者の顔の下方に位置する。プレート92は、プラットフォーム58を支持構造体26に取り付けるのを補助する。固定治具94は、支持構造体26の上にプラットフォーム58を固定する。
【0040】
図6は、スライド機構96を表しており、それは、前述の14と12のセクションのヒンジによる動きに比例してプラットフォーム58を移動させる。制御ロッド62が接続されるプレート98は、リンク102と協働してタイミングベルト100を捕捉する。従って、方向矢印104への制御ロッド接続点72の動きによって、ベルト100は、方向矢印106に従って動かされる。また、言うまでもなく、駆動プレート108は、方向矢印106に従って移動するとともに、駆動ピン89によってアーム88でスライドプラットフォーム58に接合されている。言い換えると、一方向への制御ロッド62の接続点72の動きは、反対方向へのスライドプラットフォーム58の動きを引き起こす。
【0041】
図7乃至9を参照すると、手術において、プラットフォーム58は、支持構造体26の上に設置されて、セクション12と14とが、ヒンジ24と軸40のまわりを動くとき、プラットフォーム58は、支持構造体26の上でスライドすることが可能となる。さらに、通常は柔らかい発泡材で作られる顔支持部材54は、開口部90と胸支持部材56の上のスライドプラットフォーム58上に設置される。また、腰支持部材60は、図7で示すように設置されている。更に、その他のパッドは、支持構造体26の上に設置することができるが、台10の機械式機構を明らかにするために表されていない。図8を参照すると、患者110が、台10の上に腹臥位で横たわっているのが分かる。頭部112は、顔支持部材54の上に位置しているが、患者の体114の残りの部分は支持構造体26の第1セクション12の方へ延びている。図8に示すように、通常、患者は水平状態に置かれている。図9に示すように、セクション12に対するセクション14のヒンジの動きまたは動作は、逆V字型の形成過程で支持構造体26の上方への動きを引き起こし、それにより、患者110を、背中の手術などを行うのに適した姿勢とすることができる。なお、スライドプラットフォーム58と顔支持部材54は、方向矢印116に従って、ヒンジ軸40の方へ移動して、台10に対する患者110の摩擦を伴う引きずりを防ぐ。また、患者110は、仰臥位などで台10の上に水平に位置させることができることに留意されたい。当然のことながら、軸40まわりの台10のヒンジ動作は、患者110に行われる外科手術に従って、患者110のそのような変化および体位と伴わせて実現されるものである。すなわち、支持構造体26の第1セクションの遠位端部18と第2セクションの遠位端部22は、図2の方向矢印118に示すように、必要に応じて、基準位置から上下に動かすことができる。
【0042】
前述の記載においては、本発明の実施例が、本発明を完全に開示する目的のためにかなり詳細に説明されているが、当該技術分野における当業者にとって、本発明の精神および原理から逸脱することなく、そのような詳細において数多くの変更をなし得ることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術台装置において、
a.近位端部と遠位端部とを具える第1セクションと、
b.近位端部と遠位端部とを具える第2セクションと、
c.支持構造体を形成する前記第1セクションと前記第2セクションの遠位部を回転可能に接続するヒンジと、
d.前記第1セクションの前記近位端部を保持する第1支持部材と、
e.前記第2セクションの前記近位端部を保持する第2支持部材と、
f.前記第2セクションの近位部が前記第2支持部材によって保持されている間に、前記第1支持部材に対して前記第1セクションの前記近位部を移動させるエレベータとを具えることを特徴とする手術台装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、更に、前記支持構造体の前記第1セクションと前記第1支持部材との間の距離を決定する調整器を具えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記調整器が更に、前記支持構造体の前記第1セクションと前記第1支持部材との間に1つのピボットを具えることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、更に、前記支持構造体の前記第2セクションと前記第2支持部材との間に別のピボットを具えることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、更に、前記第1セクションと第2セクションとの間のヒンジを回転させるために主ネジ機構を具えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、更に、前記支持構造体の前記第1セクションと前記第1支持部材との間の前記距離を決定する調整器を具えることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、前記調整器が更に、前記支持構造体の前記第1セクションと前記第1支持部材との間に1つのピボットを具えることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、更に、前記支持構造体の前記第2セクションと前記第2支持部材との間に別のピボットを具えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、更に、前記支持構造体に対してスライド可能に配置される胸プラットフォームを具えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、更に、前記支持構造体の前記第1セクションと前記第1支持部材との間の前記距離を決定する調整器を具えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記調整器が更に、前記支持構造体の前記第1セクションと前記第1支持部材との間に1つのピボットを具えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項3に記載の装置において、更に、前記支持構造体の前記第2セクションと前記第2支持部材との間に別のピボットを具えることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項9に記載の装置において、更に、前記第1セクションと第2セクションの前記遠位部の前記ヒンジ回転とともに前記胸プラットフォームのスライドを生じさせるために前記胸プラットフォームと連結される制御ロッドを具えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−517963(P2011−517963A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531027(P2010−531027)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/012014
【国際公開番号】WO2009/054969
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510112693)ミズホ オーソピーディック システムズ,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】MIZUHO ORTHOPEDIC SYSTEMS,INC.
【Fターム(参考)】