説明

抄紙方法

【課題】 本発明は、紙及び板紙の製紙工程において、歩留の向上、生産性の向上を図る抄紙方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 抄紙前の製紙原料において、最後のスクリーンを通過した主製紙原料流の一部をバイパス流とし、前記バイパス流を更に二つに分流した後、一種以上の製紙薬剤と前記二つの分流とを混合手段によって混合し、その後前記主製紙原料流の一箇所に還流させることにより、前記製紙薬剤を添加・混合した後抄紙する抄紙方法において、前記製紙薬剤として、ビニル系水溶性単量体を含む水相および炭化水素系溶媒からなる油相を、乳化剤を用いて乳化した後重合した、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を含有する油中水型高分子エマルジョンが該抄紙方法に適合する製紙薬剤であり、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙及び板紙の製紙工程において、歩留の向上や生産性の向上ができる抄紙方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗工原紙、PPC用紙、上質紙、板紙及び新聞用紙等の抄紙工程において、微細繊維、填料等の歩留率向上を図るために、種々の歩留剤システムが用いられている。汎用されている歩留剤システムとして、アクリルアミド系水溶性ポリマーを抄造せん断工程であるファンポンプやスクリーンの前後に添加する処方がある。
【0003】
最近の製紙原料中の微細繊維分の増加や填料として微粒な炭酸カルシウムの使用比率の増加など抄造状況の変化に対応して、歩留率の維持・向上を図るために、例えば中性新聞印刷用紙の製造においては極限粘度法による重量平均分子量が1500万以上を有するエマルション型のカチオン性ポリアクリルアミド系物質を添加剤として紙料に添加し、使用する方法が提案されている。(特許文献1)
【0004】
一般に、高分子量のポリアクリルアミド系物質を得る方法として、油中水型のエマルジョン状で得る方法が有効であるが、高分子を溶媒に溶解する際、分子量の高いもの、濃度が高いものほど分子自身の緩和により溶媒中への均一に拡散する溶解速度が遅いことが知られている。従って、エマルジョン型のポリアクリルアミド系物質の原液や高濃度の水溶液を添加する方法や、抄紙機のワイヤーパートに近い工程で添加する方法は、溶解不全や、抄紙時のトラブルに繋がる可能性が高い。
【0005】
また、エマルジョン型のポリアクリルアミド系物質は、低HLBの乳化剤により油中水型のエマルジョンとして安定化されており、希釈水に溶解する際は、転相した水中油型のエマルジョンとして安定化させる必要がある。このため、均一に拡散するのに十分な時間をかけて低濃度に希釈する方法や、一度高濃度に溶解した後、さらに希釈水により希釈する方法など、多大な時間、手間や設備必要とする。(特許文献2)
【0006】
一方、紙パルプに対する添加剤の効率的かつ均一な混合、相互迅速混合、添加剤の紙パルプへの定着、投資、装置及び操作コストの削減、化学薬品コストの削減などを目的に、特定の装置により添加剤を抄紙機に供給される紙パルプ懸濁液流に供給する方法が提案されている。(特許文献3)この方法は、歩留率および生産性の向上を図るには有効で、抄造工程の最終せん断工程であるスクリーンの後にポリマーを添加するのが最も有効である。
【0007】
しかしながら、歩留、生産性の向上のため、この方法を用いて、高分子量のエマルジョン型のポリアクリルアミド系物質を添加剤として使用することは、原液での添加が困難であること、高分子量であるため添加時の高分子の分散性に劣ること、分散性の改善のために多大な時間や設備が必要であることなどが原因で実現していない。
【特許文献1】特開2006−16716号公報
【特許文献2】特開2008−208494号公報
【特許文献3】特表2008−506859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、紙及び板紙の製紙工程において、歩留の向上、生産性の向上を図る抄紙方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、抄紙前の製紙原料において、最後のスクリーンを通過した主製紙原料流の一部をバイパス流とし、前記バイパス流を更に二つに分流した後、一種以上の製紙薬剤と前記二つの分流とを混合手段によって混合し、その後前記主製紙原料流の一箇所に還流させることにより、前記製紙薬剤を添加・混合した後抄紙する抄紙方法において、前記製紙薬剤として、ビニル系水溶性単量体を含む水相および炭化水素系溶媒からなる油相を、乳化剤を用いて乳化した後重合した、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を含有する油中水型高分子エマルジョンを用いて、紙及び板紙を抄紙することにより、著しい歩留の向上、生産性の向上を図ることが可能であることを発見し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特徴は、抄紙前の最終せん断工程後、すなわち最後のスクリーン通過後の製紙原料流の一部をバイパス流とし、このバイパス流と薬剤あるいは薬剤希釈液流を混合し、混合物のフローを再び主製紙原料流に還流し、製紙原料と薬剤の混合を効率的に実施することのできる添加方法において、適合性の高い薬剤を発見したことにある。
【0011】
従来、薬品は薬品の一次溶解液を二次希釈水により流量を増し、薬品粘度を下げてから主製紙原料流に添加される。主製紙原料流量に対して、薬品の流量は微量であり、流速も遅いため十分なミキシングの達成が困難であった。更に薬品は配管側壁に沿って流れ、スケールを形成、断紙や汚れの原因となる。
【0012】
しかし、本発明で使用する薬品添加方法は、これらの欠点を改善するため製紙原料が最終せん断工程を通過した後、製紙原料流の一部をバイパス流とし、このバイパス流と二次希釈水を用いない製紙薬剤溶液とを混合する。
【0013】
しかし二次希釈水を使用しないため薬品粘度が高めになる、ワイヤーパートに至るまでの時間的猶予が短く薬剤を均一に分布できないリスクが生じる、あるいは最終せん断工程後に添加されるためせん断による均一化が期待できないなどの問題が生じる。
【0014】
本発明で用いるビニル系水溶性単量体を含む水相および炭化水素系溶媒からなる油相を、乳化剤を用いて乳化した後重合した、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を含有する油中水型高分子エマルジョンは、これらの問題を解決するものであって、従来少量高粘度で製紙原料への分散性の悪かった薬品の分散性を改善することにより、薬品の製紙原料への分散性を改善することにより著しく歩留率を向上し、抄紙トラブルの回避をすることで生産性の改善を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における油中水型高分子エマルジョンは、ビニル系水溶性単量体構造単位を有する水溶性高分子を含有する水相を分散相、炭化水素系溶媒からなる油相を連続相とし、さらに親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を含有するものである。また親水性及び疎水性構造単位を有する高分子に加え、前記通常の界面活性剤を併用してもよい。乳化の順序としては、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子及び通常の界面活性剤を同時に添加し乳化し重合してもよく、あるいは通常の界面活性剤により乳化後、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を添加し重合してもよく、または通常の界面活性剤により乳化後、重合し、その後親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を添加してもよいなど種々の方法がある。
【0016】
前記ビニル系水溶性単量体は、カチオン性単量体、アニオン性単量体および/または非イオン性単量体のいずれも使用することが可能である。
【0017】
カチオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルジアリルアミンなどが挙げられ、該三級アミノ基含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジメチルジアリルアンモニウム塩化物が例示できる。
【0018】
アニオン性単量体としては、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フタル酸あるいはp−カルボキシスチレンなどが例示できる。
【0019】
非イオン性単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどが例示できる。
【0020】
これらのビニル系水溶性単量体は一種又は二種以上との共重合が可能である。
【0021】
単量体水溶液を含む水相には前記単量体の他に、連鎖移動性を有する化合物を含むことが出来る。連鎖移動性を有する化合物の例としては、2−プパノール、2−メルカプトエタノール、メタリルスルホン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウムなどが上げられ、目的とする重合物の組成、重合速度および分子量に応じて適宜添加する。
【0022】
連続相を形成する炭化水素系溶媒からなる油相としては、水と混合した際相分離を生じ界面活性剤により乳化可能であれば特に制限はないが、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物があげられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全重量に対して20重量%〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
これら水相と油相を乳化し、油中水型エマルジョンを形成するに有効な界面活性剤の例としては、ソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンジオレ−ト、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンジステアレ−ト、ソルビタンモノラウレ−ト、ソルビタンジラウレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−ト、ソルビタンジパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンステアリルエ−テル、ポリオキシエチレンラウリルエ−テル、ポリオキシエチレンセチルエ−テル、ポリオキシエチレントリデシルエ−テル、ポリオキシエチレンオレイルエ−テルが例示でき、そのほかに高分子非イオン性界面活性剤類を使用することができる。
【0024】
前記界面活性剤として使用する界面活性剤のHLBとしては、乳化液および油中水型高分子エマルジョンの安定性を考慮すると、1以上9未満の範囲であることが好ましい。
【0025】
前記乳化剤として使用する界面活性剤および親水性及び疎水性構造単位を有する高分子の他に、HLB9以上20未満の界面活性剤を、乳化液および油中水型高分子エマルジョンの安定性に影響を与えない範囲で使用することが好ましい。このものを使用することにより、油中水型高分子エマルジョンの水への一次溶解の速度向上と製紙原料への均一な分散が促進される。
【0026】
本発明においては、前記乳化剤の他に親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を含有することが必須である。この親水性及び疎水性構造単位を有する高分子は、重合反応前あるいは重合反応後いずれに添加することも可能である。油中水型エマルジョンを形成するに有効な親水性構造単位、疎水性構造単位の比率を調整した上で、重合前に添加し、乳化剤として使用する方法が好ましい。
【0027】
本発明における、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子は、親水性構造を含む単量体および疎水性構造単位を有する単量体を含有する単量体混合物を共重合して得ることができる。
【0028】
親水性構造を含む単量体としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリルアミドあるいはこれらのメトキシドやフェノキシドが例示できる。特にオキシエチレン構造を有することが好ましく、さらにメトキシまたはフェノキシポリエチレングリコール(n=3〜23)(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0029】
疎水性構造を含む単量体としては、アルキル基を有し上記親水性構造を含む単量体と共重合可能であることが必須である。アルキル基を形成する炭素数は4〜18の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数4〜18の範囲の高級アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである。
【0030】
親水性及び疎水性構造単位を有する高分子は、上記単量体を含有する混合物を、前記油中水型高分子エマルジョンを形成する炭化水素系溶媒と同種の炭化水素系溶媒で共重合して、得ることができ、この溶媒中で共重合可能な他の単量体を含有することが可能である。
【0031】
本発明における炭化水素系溶媒中で、前記親水性構造を含む単量体及び疎水性構造を含む単量体と共重合可能な単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(α−メチル−)スチレン、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルアミン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、が例示でき、これらの一種又は二種以上を併用することができ、特に(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルアミン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど第三級アミン系ビニル単量体および/またはカルボン酸系ビニル単量体であることが好ましく、特に好ましい単量体は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリル酸単量体である。
【0032】
親水性及び疎水性構造単位を有する高分子は、親水性構造を含む単量体5〜30mol%が好ましく、疎水性構造単位を含む単量体50〜95mol%が好ましく、および前記親水性構造を含む単量体及び疎水性構造を含む単量体と前記炭化水素系溶媒中で共重合可能な単量体0〜45mol%の範囲からなる単量体混合物を共重合したものが好ましい。
【0033】
前記親水性構造を含む単量体及び疎水性構造を含む単量体と前記炭化水素系溶媒中で共重合可能な単量体の組成範囲としては、第三級アミン系ビニル単量体0〜15mol%および/またはカルボン酸系ビニル単量体0〜15mol%の範囲がそれぞれ好ましい。
【0034】
親水性及び疎水性構造単位を有する高分子の重量平均分子量は、1,000〜2,000,000の範囲であれば特に制限はないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。分子量が低すぎるものは乳化剤としての性能が低く、乳化液の分離安定性が悪いため実用的でないし、分子量の高いものは炭化水素系溶媒溶液の粘度が高く取扱いが困難である。分子量の調整は、炭化水素系溶媒中に連鎖移動性を持つ化合物を共存させ重合することで行うことが可能である。連鎖移動性を持つ化合物は、炭化水素系溶媒中に共存可能であれば特に制限はなく、n−ドデシルメルカプタンや2−メルカプトエタノールといったチオール類やチオエステル化合物が例示できる。
【0035】
これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%の範囲である。
【0036】
本発明に置け津油中水型高分子エマルジョンは、これらの混合物を機械的に乳化した後、得られた乳化液にラジカル重合開始剤を添加して、攪拌しながら重合することで得られる。
【0037】
重合時の温度は、ラジカル重合開始剤の種類により異なるが一般的に5〜55℃である。重合は2、2−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、あるいは4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどのアゾ系開始剤、t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾいるなどの過酸化物系開始剤あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミンなどの還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤が好ましい。この開始剤の添加量は、重合開始時、単量体当たり50〜5000ppm、好ましくは100〜500ppm添加する。
【0038】
脱溶媒して得られた重合物は、1規定の塩化ナトリウム水溶液25℃の条件下で10〜35、特に好ましくは15〜30(dL/g)の固有粘度を有することが好ましい。
【0039】
次に混合手段に関し説明する。本発明で使用する添加システムにおける混合手段は、本発明で使用する混合における技術思想が達成できればどのような混合手段を用いても良いが、具体的には以下のような混合装置を使用すると効率的に実施が可能である。例えば以下のフローから構成される場合がある。すなわち主製紙原料流の一部をバイパス流として使用し、例えば装置の一例として、前記バイパス流を更に二つに分流しておき、このうち一つの分流を(1)大流量・高速ジェット流を形成する部分(インジェクションフロー)、(2)薬品を添加するには、薬品流を螺旋回転させながらジェット流に噴射する部分(ケミカルフロー)、(3)もう一方の分流は、薬品流が噴射される部分を広げて、薬品流をジェット流に巻き込ませる部分(ミキシングフロー)から構成されているものなどが使用できる。
【0040】
前記三つのフローは、断面が同心円の配管により構成される。同心円の一番真ん中にミキシングフロー、一番外側にインジェクションフロー、ミキシングフローとインジェクションフローの間にケミカルフローが位置し、それぞれのフローは先端部で合流する形体を有する。ケミカルフローの薬品はインジェクションフローに接触し、速やかにその中に混合され、主製紙原料流に添加される。
【0041】
主製紙原料流の一部をバイパス流として使用し大流量・高速ジェット流を形成する部分(インジェクションフロー)では、主製紙原料流の一部をバイパス流とし、バイパス流を更に二つ以上に分流した一方の製紙原料を例えばブースターポンプなどにより加圧し、バイパス流の5〜20倍の流速に加速される強力な渦巻きジェット流を形成する。この時、流速5〜10L/sに加速することが好ましい。
【0042】
薬品を螺旋回転させながら前記ジェット流に対して噴射する部分(ケミカルフロー)では、ノズル部よりジェット流に対し螺旋回転しながらフィルム状に噴出される。流速は遅くシェアは最小限に抑えられるので、薬品に対する影響は最小限となる。流速は、0.1〜1.0L/sで薬品を噴射することが好ましい。
【0043】
バイパス流を分流したもう一方の分流は、前記ケミカルフローを広げて薬品をジェット流に巻き込ませる役割を果たし(ミキシングフロー)、スプレー状に放出されて、ケミカルフローを押し広げジェット流に巻き込ませる。ミキシングフローの流速は、1〜2L/sが好ましい。上記説明した装置の具体例としては、ウェットエンド・テクノロジー社の「トランプジェット」などがある。
【0044】
本発明における薬品の添加方法の特徴は、最終せん断工程であるスクリーンを通過した主製紙原料流に添加される。スクリーンを通過することによる大きなせん断がポリマーに掛からないため高分子が切断されることなく最大限の効果が発揮される。薬品は主製紙原料流の配管内に、広く、深く分散するので非常に高いミキシング効果を発揮するため、高分子量であっても紙の地合いを崩すことがない。そのため従来の添加法では、地合い崩れを起こすことがある、より高分子量の歩留向上剤の使用をすることもできる。上記例にあげた混合手段では、主原料流に対して高速で添加されるため薬品の流量が0.1L/s以上で粘度が300mPa・s以下であれば希釈用の清水が不要であるため、前記流量と粘度が好ましい。その範囲内に入らなければ清水で希釈するが、従来の添加法に対して清水使用量が大幅に削減できる。
【0045】
一般に、製紙原料がスクリーン通過前の添加では、スクリーンのシェアにより高分子が切断されるので、大きな歩留率の向上を得るためには、歩留向上剤の添加率を増やす必要がある。一方、スクリーン通過後の添加では、混合の問題から地合いが崩れる危険が予想され、添加率を最小限に抑制しなければならず大幅な歩留率の向上、生産性の向上が望めない。従って本発明においては、高分子量のアクリルアミド系共重合体からなる歩留向上剤、すなわち親水性および疎水性構造を有する高分子を含有する油中水型高分子エマルジョンと製紙原料流の混合手段を用いる添加方法により薬品が効果的にミキシングされ、スクリーン通過後に添加されるため顕著な効果を発現する。
【0046】
本発明における抄紙法システムとして一種の薬品添加だけでなく、二種以上の薬品添加にも適用できる。すなわち請求項2に記載されるようにバイパス流を三つに分流した後、一種目の薬品に歩留向上剤のようなカチオン性ポリマーの液フローと、前記三つに分流したうちの二つの分流を、前記混合手段によって混合し、前記主製紙原料流の一箇所に還流させ、二種目として、アニオン性ポリマー、ベントナイトあるいはコロイダルシリカを残りの一つの分流をもう一つの同種の混合手段によって混合し、前記カチオン性ポリマーを添加した箇所よりも下流の主製紙原料流の一箇所に還流させる方法もある。
【0047】
上記処方を応用することにより歩留向上/紙質向上剤と同種の混合手段を使用して填料、紙力剤、サイズ剤、硫酸バンド他の製紙用薬品と同時に添加することができ、別の混合手段によってサイズ剤定着剤、濾水性向上剤、あるいはアニオン性水溶性高分子、ベントナイトあるいはコロイダルシリカなどより抄紙機に近い箇所で添加することができる。従って本発明においては、歩留向上/紙質向上剤として、親水性および疎水性構造を有する高分子を含有する油中水型高分子エマルジョンが、本発明で使用する添加方法と混合手段を用い、スクリーン通過後の製紙原料に添加されることにより効果的にミキシングされ、顕著な効果を発現する。
【0048】
本発明で使用する親水性および疎水性構造を有する高分子を含有する油中水型高分子エマルジョンは、水相と油相の界面に乳化剤と同様に存在していると考えられ、親水性側鎖、疎水性側鎖が非常に嵩高いため、形成しているエマルジョンの安定性は低くなっていると推察される。例えば、油中水型高分子エマルジョンを水へ分散させた場合、親水性および疎水性構造を有する高分子を含有しない油中水型高分子エマルジョンと比較し高速で転相し、急速に高分子水溶液を形成する。
【0049】
水への分散速度が速いことは、水性のパルプスラリー分散液への分散速度も速く、水溶性高分子のパルプとの反応速度も速く、さらには、添加場所としてスクリ−ンの通過後などマシンにより近い場所で添加しても、不均一な分散によるトラブルの危険性が低いといえる。
【0050】
混合手段の設置場所は、スクリーン通過後の主製紙原料流に循環される白水の配管系統に設置することも可能である。すなわち請求項3に記載されるように、製紙原料のバイパス流に替えて、白水の流れを二つ以上に分流した後、混合手段によって前記分流のうち、二つと紙質向上剤の原液あるいは希釈液とを混合し、前記主製紙原料流の一箇所に還流させることもできる。この概念図は、図1に記載されるように主製紙原料流のバイパスに替えて図中1の白水の流れを使用して薬剤を添加する。あるいは請求項2に記載され、図2に概念的に説明されるように、主製紙原料流のバイパスを三つに分流した後、二つの分流と歩留向上剤とを混合手段によって混合し、主製紙原料流に還流し、もう一つの分流とアニオン性水溶性高分子、ベントナイトあるいはコロイダルシリカから選択される一種以上とをもう一台の同種の混合手段により混合し、主製紙原料流に還流させる。対象紙料としては特に限定はなく、あらゆる紙料に対して適用できるが、特に地合い性を損なうことなく歩留の向上が求められる新聞用紙、上質紙、PPC用紙、塗工原紙、微塗工紙や最小限の添加率で最大限の効果が求められる板紙等においてその効果がより発揮される。
【0051】
以下に示す合成例によって本発明のアクリルアミド系共重合体を具体的に説明するが、本発明は以下の合成例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
(親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例1)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mLセパラブルフラスコにメトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9)を60.01g、メタクリル酸ジメチルアミノエチルを9.77g、アクリル酸2−エチルへキシルを80.22g、脂環式飽和炭化水素(初留点242℃、終点82.8℃、アニリン点82.8℃)を149.55gおよび2−メルカプトエタノールを0.45g仕込み、攪拌しながら窒素導入管から窒素を導入し30分間溶存酸素の除去を行った。恒温水槽を用いて内温を20℃とした後、2,2’−アゾビス(4-メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を3.00g添加し重合を開始させた。昇温開始後24時間経過させ重合を完結させた。得られた高分子溶液を高分子乳化剤1とし、組成と重量平均分子量を表1に示す。
【0053】
(親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例2)
セパラブルフラスコに仕込んだ原料を、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9)を62.94g、メタクリル酸ジメチルアミノエチルを10.25g、アクリル酸2−エチルへキシルを72.12g、アクリル酸4.70g、脂環式飽和炭化水素(初留点242℃、終点82.8℃、アニリン点82.8℃)を149.55gおよび2−メルカプトエタノールを0.45gとしたこと以外は、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例1と同様な方法で重合を行った。得られた高分子溶液を高分子乳化剤2とし、組成と重量平均分子量を表1に示す。
【0054】
(親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例3)
セパラブルフラスコに仕込んだ原料を、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9)を63.47g、メタクリル酸ジメチルアミノエチルを10.33g、アクリル酸2−エチルへキシルを72.72g、アクリロニトリル3.49g、脂環式飽和炭化水素(初留点242℃、終点82.8℃、アニリン点82.8℃)を149.55gおよび2−メルカプトエタノールを0.45gとしたこと以外は、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例1と同様な方法で重合を行った。得られた高分子溶液を高分子乳化剤3とし、組成と重量平均分子量を表1に示す。
【0055】
(親水性及び疎水性構造単位を有する高分子比較製造例1)
セパラブルフラスコに仕込んだ原料を、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9)を135.05g、メタクリル酸ジメチルアミノエチルを12.62g、アクリル酸7.20g、2−メルカプトエタノールを0.45gとしたこと以外は、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例1と同様な方法で重合を行った。
【0056】
(親水性及び疎水性構造単位を有する高分子比較製造例2)
セパラブルフラスコに仕込んだ原料を、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9)を142.26g、メタクリル酸ジメチルアミノエチルを7.74g、2−メルカプトエタノールを0.45gとしたこと以外は、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例1と同様な方法で重合を行った。

2−メルカプトエタノールを0.15gとしたこと以外は、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子製造例2と同様な方法で重合を行った。得られた高分子溶液を比較高分子乳化剤2とし、組成と重量平均分子量を表1に示す。
【0057】
(油中水型高分子エマルジョン製造例1)
500mLビーカーに、水相として50重量%アクリルアミド水溶液237.9g、80重量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液101.3g、イソプロピルアルコール0.4g、精製水15.4g、を仕込み、次に油相としてソルビタンモノオレート5.0g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(n=2)5.0g、脂環式飽和炭化水素(初留点242℃、終点82.8℃、アニリン点82.8℃)130.0g、及び製造例1の高分子乳化剤1を5.0g混合した混合物を仕込み、ホモジナイザーを用いて10000rpmの条件で2分間乳化した。
【0058】
この乳化液を、温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却管を備えた500mLの4ツ口セパラブルフラスコ内に仕込み、50℃に調温した後、30分間反応装置内を窒素置換し、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を0.12g添加して50℃に調温しながら18時間反応を行った。反応物にポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB13.3、2重量%水溶液曇点64℃)を10.0g添加混合し、試験に供試する油中水型高分子エマルジョンとした。このものを試料1とし、組成を表2に示す。
【0059】
(油中水型高分子エマルジョン製造例2)
高分子乳化剤1を、製造例2の高分子乳化剤2としたこと以外は油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを試料2とし、組成を表2に示す。
【0060】
(油中水型高分子エマルジョン製造例3)
高分子乳化剤1を、製造例3の高分子乳化剤3としたこと以外は油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを試料3とし、組成を表2に示す。
【0061】
(油中水型高分子エマルジョン製造例4)
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(n=2)をポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB11.7、2重量%水溶液曇点18℃)としたこと以外は、油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを試料4とし、組成を表2に示す。
【0062】
(油中水型高分子エマルジョン製造例5)
乳化前に添加した高分子乳化剤1を使用せず、反応物に添加混合するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB13.3、2重量%水溶液曇点64℃)に加えて高分子乳化剤5.0gを添加混合したこと以外は、油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを試料5とし、組成を表2に示す。
【0063】
(油中水型高分子エマルジョン製造例6)
水相を50重量%アクリルアミド水溶液202.5g、65重量%N,N,N,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド水溶液151.9g、イソプロピルアルコール0.4g、精製水0.2gとしたこと以外は、油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを試料6とし、組成を表2に示す。
【0064】
(油中水型高分子エマルジョン製造例7)
水相を50重量%アクリルアミド水溶液217.3g、80重量%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液66.2g、80重量%メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液28.3g、80重量%アクリル酸水溶液19.7g、イソプロピルアルコール0.4g、精製水23.1gとしたこと以外は、油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを試料7とし、組成を表2に示す。
【0065】
(油中水型高分子エマルジョン比較製造例1
油相に比較高分子1としたこと以外は、脂環式飽和炭化水素(初留点242℃、終点82.8℃、アニリン点82.8℃)135.0gとしたこと以外は、油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを比較試料1とし、組成を表2に示す。
【0066】
(油中水型高分子エマルジョン比較製造例2)
油相に高分子乳化剤1を比較高分子2としたこと以外は、油中水型高分子エマルジョン製造例1と同様な方法で、油中水型高分子エマルジョンを得た。このものを比較試料2とし、組成を表2に示す。
【0067】
(表1)

PEGAC:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9)、MMAE:メタクリル酸ジメチルアミノエチル、EHAC:アクリル酸2−エチルへキシル、AC:アクリル酸、AN:アクリロニトリル
重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで溶離液テトラヒドロフラン、標準物質ポリスチレン、カラムShodex Asahipak GF−310 HQを用いて分析した計算値
【0068】
(表2)

組成:(mol%)
AEM:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、MEM:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、AC:アクリル酸、AM:アクリルアミド
【実施例1】
【0069】
200メッシュワイヤー使用を使用したブリット式ダイナミックジャーテスターによる歩留率の測定試験を行なった。使用製紙原料は、固形分濃度1.0質量%で、軽質炭酸カルシウム等Ash分として4.8%対固形分濃度含んだ新聞用紙抄造原料を用いた。製紙原料の物性値は、pH7.2、Whatman No.41濾紙濾過液のミューテック社製PCD−03型を使用したカチオン要求量は、0.004meq/Lである。
【0070】
(試験1)
前記ブリット式ダイナミックジャーテスターに、前記製紙原料を投入し1500rpmで20秒間攪拌した。スクリーン通過後を想定し、試料1ないし試料7を8mmのスターラーバーを用い800rpmで1分間攪拌した0.2重量%水溶液を対紙料固形分に対し重量で150ppm加えさらに10秒間攪拌した。攪拌したまま10秒間白水を排出後、10秒間白水を採取し、ADVANTEC、No.2濾紙にて濾過後、SSを測定、総歩留率を測定後、濾紙を525℃で2時間灰化し、灰分歩留率を測定した。歩留率測定結果と供試試料を1分間水に溶解した0.2重量%水溶液粘度を表3に示す。
【0071】
(比較試験1)
試料1ないし試料7を、比較試料1および比較試料2に変えた以外は試験1と同様な方法で歩留率の測定試験を行った。歩留率測定結果と供試試料を1分間水に溶解した0.2重量%水溶液粘度を表3に示す。
【0072】
(比較試験2)
試料1ないし試料7に加えて比較試料1および比較試料2を用い、0.2重量%水溶液の溶解条件を800rpmで60分間、試料添加後白水を排出するまでの時間を30秒としたこと以外は、試験1と同様な方法で歩留率の測定試験を行った。歩留率測定結果と供試試料を1分間水に溶解した0.2重量%水溶液粘度を表3に示す。
【0073】
(表3)


0.2質量%水溶液粘度(25℃)、B型粘度計測定);mP・s
【0074】
試験1と比較試験1を比較することで、高分子乳化剤使用の有無と高分子乳化剤の分子量による、スクリーン通過後の薬品添加の効果差を想定できる。試料1ないし7を使用した場合は、比較試料1を用いた場合より明らかに歩留り効果が良好であり、比較試料1の溶解液粘度が極度に低いことから、スクリーン通過後に薬品添加を行うような場合、溶解速度とパルプスラリーへの反応速度が不十分なため十分な効果が発揮できないことがわかる。また、比較試料2を用いた場合は、溶解速度とパルプスラリーへの反応速度の改善度合いが高分子乳化剤の分子量が高いため不十分であることがわかる。
【0075】
試験1と比較試験2を比較した場合、比較試験2は溶解、パルプスラリーとの反応時間を十分確保できていることから、比較試料1および比較試料2を用いた場合でも、比較試験1よりは歩留り効果が改善しているが、スクリーン手前に薬品添加するような強いシェアがかかる場合はどのような条件でも効果が十分発揮できないことを示唆している。すなわち、油中水型高分子エマルジョンをスクリーン通過後のパルプスラリーに添加する場合、試料1ないし7が好適で最大の効果を得られることが明らかである。
【実施例2】
【0076】
新聞用紙抄紙マシンで抄速1100m/分、坪量43g/m2の条件で、スクリーン通過前に比較試料1を200ppm対紙料固形分添加していたが、本発明の試料4の油中水型高分子エマルジョンの重合体水溶液を、本発明において説明した混合手段を具体化した形態を有するウェットエンド・テクノロジー社の「トランプジェット」をスクリーン通過後に位置する場所に設置し、120ppm対紙料固形分添加した。添加法変更前においては油中水型エマルジョンポリマー使用時のワイヤー総歩留率45%、灰分歩留率25%であった。これに対し、本発明で使用する添加法を用いた添加法および添加薬品変更後では、ワイヤー総歩留率48%、灰分歩留率30%に向上した。また、地合いは薬品添加方法と薬品変更後では同程度であり、地合いの低下は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】請求項1に記載される抄紙方法において、本発明で使用する塩水溶液中分散重合物を添加するためのシステム図である。
【図2】請求項2に記載される抄紙方法において、本発明で使用する塩水溶液中分散重合物を添加するためのシステム図である。
【符号の説明】
【0078】
1 主製紙原料流に循環される白水
2 最後のスクリーン
3 製紙薬剤貯槽(歩留向上/紙質向上剤)
4 製紙薬剤流
5 バイパス流
6 バイパス流を更に分けた分流の一つ
7 バイパス流を更に分けた分流の一つ
8 混合手段
9 抄紙機への製紙原料の流れ
10 主製紙原料流
11 製紙薬剤貯槽1(歩留向上/紙質向上剤)
12 製紙薬剤貯槽2(アニオン性水溶性高分子、ベントナイトあるいはコロイダルシリカなど)
13 最後のスクリーン
14 主製紙原料流
15 製紙薬剤流1
16 バイパス流
17 バイパス流を更に分けた分流の一つ
18 バイパス流を更に分けた分流の一つ
19 混合手段1
20 製紙薬剤流2
21 バイパス流を更に分けた分流の一つ
22 混合手段2
23 抄紙機への製紙原料の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙前の製紙原料において、最後のスクリーンを通過した主製紙原料流の一部をバイパス流とし、前記バイパス流を更に二つに分流した後、一種以上の製紙薬剤と前記二つの分流とを混合手段によって混合し、その後前記主製紙原料流の一箇所に還流させることにより、前記製紙薬剤を添加・混合した後抄紙する抄紙方法であって、前記製紙薬剤がビニル系水溶性単量体構造単位を有する水溶性高分子を含む水相を分散相、炭化水素系溶媒からなる油相を連続相とし、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子を含有する油中水型高分子エマルジョンおよび/またはその溶解液であることを特徴とする抄紙方法。
【請求項2】
前記親水性及び疎水性構造単位を有する高分子に加え、HLBが1〜9の範囲の界面活性剤を併用することを特徴とする、請求項1に記載の抄紙方法。
【請求項3】
前記親水性及び疎水性構造単位を有する高分子および前記HLBが1〜9の範囲の界面活性剤に加え、HLB10〜20の界面活性剤を併用することを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の抄紙方法。
【請求項4】
前記親水性及び疎水性構造単位を有する高分子が、下記一般式(1)および(2)の構造単位を有することを特徴とした、請求項1ないし3のいずれかに記載の抄紙方法。
【化1】


(R:水素又はメチル基 R:水素、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基 n:2〜100の整数)
【化2】

一般式(2)
(R:水素又はメチル基 R:炭素数4〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はCOOR、ここではR炭素数4〜18のアルキル基)
【請求項5】
前記、親水性及び疎水性構造単位を有する高分子が、メトキシ又はフェノキシポリエチレングリコール(ポリオキシエチレン単位の重合度が3〜23)(メタ)アクリレート5〜30mol%、炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレート50〜95mol%、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート0〜15mol%、(メタ)アクリル酸0〜15mol%の共重合物であり、前記炭化水素系溶媒と同種の炭化水素系溶媒中で共重合して得られたものであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の抄紙方法。
【請求項6】
前記親水性及び疎水性構造単位を有する高分子の重量平均分子量が、3000〜5万の範囲であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の抄紙方法。
【請求項7】
前記ビニル系水溶性単量体が、下記一般式(3)及び/又は(4)及び/又は(5)で表わされることを特徴とする、請求項1に記載の抄紙方法。
【化3】

一般式(3)
(Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。)
【化4】

一般式(4)
(R10は水素又はメチル基、R11、R12は炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。)
【化5】

一般式(5)
(R13は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、R14は水素またはCOO、YおよびYは水素イオンまたは陽イオンをそれぞれ表す。)


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−111698(P2011−111698A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270922(P2009−270922)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】