説明

抄紙機および製紙方法

紙のファイバウェブ(12)をスルーエアー乾燥(TAD)またはプレスなしで製造するための抄紙機(1)であって、少なくとも一つのフォーミングワイヤ(7、8)を含むワイヤセクション(5)と、空気透過性であるとともに水透過性である抄紙用具(16)と、ファイバウェブを脱水するための脱水ユニット(20)と、を有したウェットエンド(2)と;ファイバウェブのための乾燥面(24)を有した乾燥セクション(3)と;ファイバウェブを乾燥セクションに転載するためのトランスファーロール(23)と;を備える。ファイバウェブは、ワイヤセクションからトランスファーニップまでの間にわたって、並びに、トランスファーニップを通過する間、抄紙用具によって支持される。抄紙用具は、ファイバウェブに構造を与えるための立体的構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙のファイバウェブをスルーエアー乾燥(TAD)またはプレスなしで製造するための抄紙機であって、
ファイバウェブを形成するための少なくとも一つのフォーミングワイヤを含むワイヤセクションと、空気透過性であるとともに水透過性である抄紙用具と、前記ファイバウェブを脱水するための少なくとも一つの脱水ユニットと、を有したウェットエンドと、
前記ファイバウェブを乾燥させるための乾燥面を有した乾燥セクションと、
前記ファイバウェブを前記ウェットエンドから前記乾燥セクションに転載するため、トランスファーニップにおいて前記乾燥面と相互作用するように配置されたトランスファーロールと、を備え、
前記ファイバウェブは、前記ワイヤセクションから前記トランスファーニップまでの間にわたって、並びに、前記トランスファーニップを通過する間、前記抄紙用具によって支持される、抄紙機に関する。
【0002】
さらに、本発明は、スルーエアー乾燥(TAD)またはプレスなしで、紙を抄紙機で製造するための方法であって、
ワイヤセクションでファイバウェブを形成する工程と、
前記ファイバウェブを、空気透過性であるとともに水透過性である抄紙用具によって、前記ワイヤセクションから乾燥セクションまで支持し、この間に、少なくとも一つの脱水ユニットによって前記ファイバウェブを脱水する工程と、
前記ファイバウェブを前記抄紙用具から前記乾燥セクションの乾燥面へ転載する工程と、
前記乾燥面から前記ファイバウェブを取り出す工程と、を備えた方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、前記方法によって製造されたペーパー(紙)に関する。
【背景技術】
【0004】
従来のティッシュマシンは、プレスセクションを有する。プレスセクションにおいて、一以上のフェルトによって支持された紙ウェブは、紙ウェブの乾燥度を高めるため、一以上の脱水プレスに通されるようになる。しかしながら、脱水プレスには、軟質紙に関し、最終的な紙ウェブの嵩を減少させるという負の効果がある。紙ウェブの最終的な嵩は、この種の抄紙機において、通常は、7cm3 /g乃至10cm3 /gを越えない。
【0005】
米国特許第6,287,426号には、プレスを備えた抄紙機が開示されている。この抄紙機は、プレスセクション、および紙ウェブをプレスセクションに通す際に失われた嵩の少なくとも幾分かを再形成するための構造化手段(structuring means)を有する。構造化手段は、一方では、紙ウェブをプレスセクションから抄紙機の乾燥セクションまで搬送する、所定の構造を有する透過性ワイヤの形態の抄紙用具で形成され、他方では、紙ウェブを吸いつけてワイヤとぴったりと接触させるため、ワイヤの内側、即ち紙ウェブとは反対の側と摺動接触した状態で配置されるサクション装置で形成され、このようにして、紙ウェブの嵩を増大する。
【0006】
米国特許第6,287,426号による構造化手段は、紙ウェブの嵩の再形成を行う上でうまくいかなかった。これは、ウェブのファイバ基礎構造(framework)がプレス時に既に固定されており、ウェブの乾燥度が高いためにファイバが互いに対して移動できないためである。このような手段で、または任意の他の方法で、脱水プレスニップが紙ウェブのファイバ基礎構造に及ぼした、嵩破壊効果を「修復」することは困難である。したがって、嵩高の軟質クレープ紙を製造する場合には、このようなプレスニップを回避しなければならない。
【0007】
さらに、プレスを行うことに対する変形例として、当該技術分野において、紙ウェブを脱水するため、TADとして一般に周知のスルーエアー乾燥プロセス(a through air drying process)を使用することが既知である。TADユニットは、大きなフードで覆われた有孔回転シリンダを備えている。空気透過性であり且つ水透過性である抄紙用具によって支持された紙ウェブをシリンダ上に置き、乾燥した高温の空気を、紙ウェブおよび抄紙用具を通して、シリンダの開口部内に圧送する。次いで、空気を、脱水および乾燥の後にフードに再循環する。TADユニットは大きく且つ複雑であり、TAD抄紙機の建設には大きな投資を必要とする。さらに、紙ウェブを脱水するためのTADプロセスは、空気の乾燥および再循環に大量のエネルギを必要とするため、費用がかかる。
【0008】
欧州特許第0440697号には、嵩高の軟質クレープ紙を製造するため、一つの作動形態において、技術のいらないスルーエアー乾燥およびプレスを提供する抄紙機が開示されている。この抄紙機は、第1作動形態と第2作動形態との間で切り換え可能である。第1作動形態では、フェルトが従来の方法で配置されている。フェルトは、紙ウェブを抄紙機のワイヤセクションのフォーミングワイヤから取り上げ、紙ウェブを最初にプレスロール上に、次いで盲穴が設けられたロール上に持ち込む。盲穴が設けられたロールは、抄紙機の乾燥セクションでヤンキーシリンダと相互作用する。第2作動形態においては、第1作動形態で製造されたファイバウェブに関して嵩および柔らかさの値が比較的高い紙ウェブを製造する。第2作動形態においては、盲穴が設けられたロールが省かれており、さらに、フェルトがワイヤ型のベルトと置き換えられており、一方ではフォーミングワイヤが延長してあり、他方では、紙ウェブをフォーミングワイヤとベルトとの間に包囲するため、フォーミングワイヤがヤンキーシリンダまでの全ての道のりを走行するように延長してある。したがって、ベルト、フォーミングワイヤ、および紙ウェブは、乾燥セクションまでの道のりの間にわたって、サンドウィッチ構造を形成し、乾燥セクションまでの距離中に紙ウェブがベルトとフォーミングワイヤとの間に包囲された状態で脱水される。
【0009】
第2作動形態においては、欧州特許第0440697号による抄紙機は、嵩および柔らかさの値が比較的高い軟質クレープ紙を製造する。しかしながら、この抄紙機にも欠点がある。紙ウェブがサンドウィッチ構造を形成するため、紙ウェブを乾燥セクションの前に所望の通りに脱水することが困難であるということが判明した。このことは、製造速度を制限し、乾燥セクションでの乾燥の必要性を高める。さらに、サンドウィッチ構造は、最終的な紙ウェブの嵩に悪影響を及ぼす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、スルーエアー乾燥ユニットおよびプレスが省かれた紙を製造するための抄紙機であって、一方では、従来既知の抄紙機と比較して簡単であり、他方では、高い製造速度で動作することができる新たな抄紙機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による抄紙機は、ファイバウェブに所定の構造を与えるための立体的構造を持つ抄紙用具を含む、ことを特徴とする。
【0012】
本発明による方法は、抄紙用具の立体的構造によって、ファイバウェブに所定の構造を与える工程を含む、ことを特徴とする。
【0013】
以下において、本発明を添付図面を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、軟質のクレープ紙を製造するための抄紙機1を概略的に示す。抄紙機1は、ウェットエンド(湿部、wet end)2および乾燥セクション3を含むが、プレスセクションを含んでいない。したがって、本発明による抄紙機には脱水プレスが設けられておらず、すなわち、脱水ニップが設けられていない。ウェットエンド2は、ヘッドボックス4と、ワイヤセクション5とを備えている。ワイヤセクション5は、フォーミングロール6と、二つのフォーミングワイヤ7および8とを備えている。これらのフォーミングワイヤ7および8の各々は、複数のガイドロール9および10の周囲を、夫々閉ループをなして走行する。フォーミングワイヤ7および8は、フォーミングロール6上を周知の方法で走行し、ヘッドボックス4からの紙料噴流をその間に受け取る。フォーミングロールの下流には、フォーミングゾーン11が設けられている。ここで、紙料は、脱水により、連続したファイバウェブ12を形成し、またこの位置において、紙料は、前記フォーミングワイヤのうちの内側のフォーミングワイヤ8によって搬送される。脱水を行うため、ワイヤセクション5は、一方では、ファイバウェブ12を加熱するために内側ワイヤ8のループの外側に配置されたスチームボックス13を有し、他方では、内側ワイヤ8の穴を通してファイバウェブ12から水を除去するため、内側ワイヤ8のループの内側に配置されたサクションボックス14を有する。したがって、原理的には、上文中に説明したワイヤセクション5は、従来のツインワイヤセクションである。ここで、サクションボックス14の下流におけるファイバウェブ12の乾燥度は20%乃至25%となる。
【0015】
ワイヤセクション5の下流において、ウェットエンド2は、ワイヤセクション5から乾燥セクション3までの経路にわたって延びる構造化セクション15を有する。この構造化セクション15は、複数のガイドロール17の周囲を閉ループをなして走行する抄紙用具(the clothing)16を含む。ファイバウェブ12をワイヤセクション5から構造化セクション15に転載するため、抄紙用具16の内側にトランスファーボックス18が配置されている。さらに詳細には、トランスファーボックス18は、抄紙用具16を内側ワイヤ8に近付け、ファイバウェブ12を内側ワイヤ8から負圧によって取り上げるため、前記ガイドロール17のうちの二つのガイドロール間に配置されている。好ましくは、トランスファーセクションまたは転移点には所定の負のドロー(draw)がある。すなわち抄紙用具16の速度は、好ましくは、内側ワイヤ8の速度よりも低くしてあり、トランスファーセクションまたは転移点でウェットクレーピング効果(紙に皺を付ける効果)が得られる。負のドローでの速度差は、最大30%であるが、好ましくは、製造しようとする製品に応じて0%乃至20%内にある。
【0016】
抄紙用具16は、空気および水に対して透過性であり、空気に関する透過性は、100CFM乃至700CFMであり、好ましくは400CFM乃至600CFMである。本明細書中では、CFMは、127Paの圧力で、1平方フィートの抄紙用具を一分間に通過する空気の立方フィート単位の体積に関する。これは、0.5インチの水頭に対応する。さらに、抄紙用具16は、立体的であり且つ有孔であり、すなわち、厚さ方向に複数の通孔を備えた開放した構造を有し、これにより、抄紙用具16は、高い嵩を形成するためにファイバウェブ12を受け取ることができる。換言すると、抄紙用具16の立体的な構造は、ファイバウェブ12のファイバ基礎構造を受け取り、嵩高の立体的ファイバウェブ12を形成する。好ましくは、抄紙用具16はワイヤ状であり、すなわち、好ましくはポリエステル製の糸を織製して形成される。例えば、抄紙用具16は、GSTおよびMSTの表示で既知の種類の抄紙用具のうちの一つであってもよい。試験によれば、1インチあたりの糸の数が44本×30本の粗さ(a coarseness)は、「タオル」等級の紙(the paper grade “towel”)、すなわち台所用のロール状の紙に適しているのに対し、1インチあたりの糸の数が51本×48本の粗さは、「浴室」等級の紙(the paper grade “bath room”)、すなわちトイレットペーパーに適しているということが示された。さらに、原理的には、いわゆるTAD−ワイヤまたはTAD−ファブリックを使用できるが、TAD−ワイヤまたはTAD−ファブリックに課される空気透過性および熱抵抗についての要求は、本発明による抄紙機で必ずしも必要とされず、このため、使用可能なワイヤ品質または抄紙用具品質がかなり高く、これによって、空気透過性の値が100CFMと比較的低くなる。これは、TAD−ワイヤまたはTAD−ファブリックでの空気透過性の値よりもかなり低い。成形(molding)によって得られる抄紙用具を織製ファブリックに対する変形例として使用できる。
【0017】
トランスファーボックス18の内部の負圧により、ファイバウェブ12のファイバあるいはファイバ基礎構造が抄紙用具16の立体構造に押し込まれる際に、ファイバウェブ12の嵩、あるいは、ファイバウェブ12の基礎構造の大部分は、トランスファーボックス18によって、既に形成される。ワイヤセクション5から構造化セクション15への転移時の負のドローがこの効果を増大する。トランスファーボックス18内部の負圧は、高真空領域内にあってもよく、すなわち約60kPa乃至70kPaであってもよい。このことは、所定の脱水がトランスファーセクションすなわち転移点でさらに行われるということを意味する。変形例として、負圧は低くてもよく、例えば20kPa乃至30kPaであってもよい。これは、嵩でなく表面の柔らかさを得ようとする場合に好ましい。
【0018】
トランスファーボックス18の後、ファイバウェブ12は抄紙用具16の下側に開放状態で搬送される。本明細書中では、抄紙用具16がファイバウェブ12を開放状態で搬送するということは、ファイバウェブ12が抄紙用具16によって搬送されるとき、ファイバウェブ12が、自由な、すなわち覆われていない側(自由で覆われていない側部)19を有するということを意味する。ファイバウェブ12を開放状態で搬送することにより、ファイバウェブ12が構造化セクション15を通過するとき、ファイバウェブ12の嵩を保存した状態で、効率的に確実に脱水できる。脱水を行うため、構造化セクション15は、少なくとも一つの脱水ユニット20を含む。この脱水ユニット20は、ファイバウェブ12の自由な側(自由側部)19に向かって面する、少なくとも一つの脱水部材即ち脱水装置を備えている。図1による実施の形態において、脱水ユニット20は、抄紙用具16のループの外側に配置され、ファイバウェブ12の自由な側19に対面するスチームボックス21を有する。したがって、スチームボックス21は、前記少なくとも一つの脱水部材即ち脱水装置を構成する。脱水ユニット20は、抄紙用具16のループの内側に、スチームボックス21と向き合っておよび/またはスチームボックス21の下流に配置された、サクションボックス22をさらに含む。スチームボックス21は、ファイバウェブ12の自由な側19に向かって直接面することにより、ファイバウェブ12の温度およびファイバウェブ12に含まれる水の量を効率的に上昇させることができる。これにより、続いて行われるサクションボックス22の脱水性能を向上する。これは、水の粘度を低下させることによる。変形例として、脱水ユニット20の脱水部材即ち脱水装置は、別の嵩保存脱水技術に基づいていてもよい。例えば、赤外線の照射や高温空気によってファイバウェブ12を加熱する技術に基づいていてもよい。したがって、抄紙用具16は、ファイバウェブ12をワイヤセクション5と乾燥セクション3との間で所定距離に亘って開放状態で搬送するように構成されている。この所定距離内で、ファイバウェブ12の自由な側19は、前記少なくとも一つの脱水部材即ち脱水装置にアクセスすることができる。この所定距離は、ワイヤセクション5と乾燥セクション3との間の全距離であってもよいし、この距離の一部だけであってもよい。
【0019】
構造化セクション15において、すなわち、ワイヤセクション5から乾燥セクション3までの全道のりにわたって、ファイバウェブ12は、抄紙用具16によって支持されて搬送される。ファイバウェブ12を構造化セクション15の抄紙用具16から乾燥セクション3の高温乾燥表面24へ転載するため、平滑で中実のトランスファーロール23が、抄紙用具16のループの内部に配置されている。さらに詳細には、トランスファーロール23は、ファイバウェブ12用のトランスファーニップ25を形成するため、乾燥表面24と相互作用するように配置されている。乾燥表面24へのファイバウェブ12の転載を容易にするため、抄紙用具16の外側面には平らな部分が設けられている。これらの平らな部分は、抄紙用具16がトランスファーニップ25を通過するときに、乾燥表面24と相互作用するための接触表面を形成するように構成されている。これによって、平らな部分は、乾燥表面24に対する抄紙用具16の接触面の、好ましくは15%乃至40%を占め、好ましくは22%乃至28%を占め、例えば25%を占める。これらの平らな部分は、例えば、抄紙用具16の表面を研削することによって、または圧延することによって得ることができる。抄紙用具16の立体的構造と平らな部分との組み合わせにより、ファイバウェブ12の嵩を保存しながら、すなわち、抄紙用具16の立体的構造で形成されたファイバウェブ12のファイバ基礎構造の立体的構造を保存しながら、ファイバウェブ12が効率的に転載される。ファイバウェブ12は、平らな部分が乾燥表面24と相互作用する特定のスポットが機械的にぎっしり詰められていてもよいが、トランスファーニップ25での線型の負荷は平均して低く、ファイバウェブ12の表面の50%よりも小さい領域に作用するこの局所的効果は、ファイバウェブ12の嵩のトータルとしての値に影響を及ぼさない。さらに、トランスファーニップ25では、脱水は行われない。ここで、抄紙機1には脱水プレスニップが全く存在せず、そのため、製造された軟質紙の嵩値を高くするということを強調しておかなければならない。
【0020】
好ましくは、乾燥セクション3は、フード27を持つヤンキーシリンダ26を含む。これによって、ヤンキーシリンダ26のシェル表面は、ファイバウェブ12用の前記乾燥表面24を構成する。好ましくは、ファイバウェブ12と乾燥表面24との間を所望のとおりに確実に接着するため、ヤンキーシリンダ26のトランスファーニップ25の手前のところに配置されたノズル28によって乾燥表面24に塗布された化学接着剤が用いられる。ファイバウェブ12は、高温の乾燥表面24上で、約97%乃至98%の乾燥度まで乾燥させられ、そのとき、ファイバウェブ12は、例えばクレーピングドクター29によって、乾燥表面24から取り外される。化学接着剤の目的は、さらに、乾燥表面24を磨耗から保護することである。
【0021】
図2は、軟質紙を製造するための抄紙機30の他の実施の形態の概略図である。この抄紙機30は、ウェットエンド31および乾燥セクション32を含むが、上述した実施の形態と同様に、プレスセクションを含んでいない。ウェットエンド31は、ヘッドボックス33およびワイヤセクション34を備えている。ワイヤセクション34は、フォーミングロール35と、複数のガイドロール37の周囲をループをなして走行するフォーミングワイヤ36と、を含む。フォーミングワイヤは、フォーミングロール35上を走行する。さらに、ウェットエンド31は、図1による抄紙機1におけるのと同じ種類の抄紙用具39を備えた構造化セクション38を含む。抄紙用具39は、複数のガイドロール40の周囲を閉ループをなして走行するが、この場合には、さらに、ワイヤセクション34内に延びており、ここで、図1における内側フォーミングワイヤ8の代わりにフォーミングロール35の周囲を走行する。したがって、ヘッドボックス33は、フォーミングワイヤ36と抄紙用具39との間に紙料噴流を送出するように配置され、紙料は、フォーミングゾーン42で脱水され、抄紙用具39上に直接的に連続したファイバウェブ41を形成する。紙料の脱水を行うため、ワイヤセクション34は、フォーミングワイヤ36のループの内部に配置された脱水ボックス43を備えている。フォーミングワイヤ36および抄紙用具39が互いから離れるときにファイバウェブ41が確実に抄紙用具39に追従するようにするため、トランスファーボックス44が、フォーミングゾーン42の下流で抄紙用具39のループの内側に配置されている。したがって、トランスファーボックス44の下流で、ファイバウェブ41は抄紙用具39の下側を開放状態で搬送され、ファイバウェブ41は自由で覆われていない側(自由で覆われていない側部)45を有する。ファイバウェブ41の乾燥度をさらに高めるため、ウェットエンド31は、トランスファーボックス44の下流に第1脱水ユニット46を備えている。この第1脱水ユニット46は、スチームボックス47の形態をとった第1脱水部材すなわち脱水装置と、いわゆる「成形ボックス」48、即ち部分的に脱水を行うため、および部分的にファイバウェブの構造化を行うために構成されたサクションボックスの形態をとった第2脱水部材すなわち脱水装置と、を含んでいる。これによって、スチームボックス47は、ファイバウェブ41の自由な側45に対面するように、抄紙用具39のループの外部に配置され、サクションボックス48は、抄紙用具39のループの内部に配置されている。第1脱水ユニット46の下流において、抄紙機30全体は、上述した抄紙機と同様に設計されている。ファイバウェブ41は、図1の脱水ユニット20と対応する第2脱水ユニット49を通過する。この第2脱水ユニット49は、スチームボックス50と、サクションボックス51とを含む。これによって、スチームボックス50は、ファイバウェブ41の自由な側45に向かって直接的に面するため、抄紙用具39のループの外部に配置されている。脱水ユニット49の後、ファイバウェブ41は、平滑で中実のトランスファーロール52およびトランスファーニップ53を介して、フードを備えたヤンキーシリンダ55のシェル表面の形態をとった乾燥表面54に転載される。最終的に、ファイバウェブ41は、例えばクレーピングドクター56によって、シェル表面54から取り外される。
【0022】
図3は、本発明による抄紙機用のトランスファーロールの他の実施の形態の概略図である。トランスファーロール57はサクションロールであり、乾燥表面60に転載される前であってもファイバウェブ59の乾燥度を高めるため、結局はトランスファーニップ58に存在する圧力上昇を利用する。トランスファーロール57は、低真空ゾーン(low vacuum zone)61と、この低真空ゾーン61の上流に位置し、トランスファーニップ58とちょうど向かい合って配置された高真空ゾーン(high vacuum zone)62と、を含む。スチームボックス63は、ファイバウェブ59の温度を、このファイバウェブ59が低真空ゾーン61上を走行しきる前に約80°乃至90°まで上昇させるため、トランスファーロール57と直接的に向き合って配置されている。この温度上昇は、ファイバウェブ59の内部の水の粘度が低下することにより、続く真空ゾーンでの脱水が上昇すること、および、ファイバウェブ59による乾燥表面60の冷却が低下することの二つの利点をもたらす。これにより、ヤンキーシリンダの乾燥能力が向上する。低真空ゾーン61では、圧力は比較的低く、20kPa乃至30kPaである。低真空ゾーンの目的は、抄紙用具からのスチーム流路を形成することである。高真空ゾーン62では、負圧がより高く、約60kPa乃至70kPaである。抄紙用具を介してファイバウェブ59からスチームおよび水を除去するときの実際の脱水は、このゾーンで行われる。さらに、いわゆるスチームの「フラッシング(flashing)」を行うため、トランスファーニップ58における圧力を利用する。これにより、ファイバウェブ50の乾燥度がさらに向上する。
【0023】
主に、本発明による抄紙機は、「タオル」等級の紙および「浴室」等級の紙を製造しようとするものである。「タオル」等級では、好ましくは、針葉樹材パルプを70容量%(体積%、per cent by volume)乃至100容量%使用し、広葉樹材パルプを0容量%乃至30容量%使用し、このうち、パルプの0容量%乃至30容量%がケミサーモメカニカルパルプ(CTMP、chemi-thermomechanical pulp)からなっている。「浴室」等級では、好ましくは、針葉樹材パルプを20容量%乃至60容量%使用し、および広葉樹材パルプを40容量%乃至80容量%使用する。ファイバの平均長は、針葉樹材パルプおよび広葉樹材パルプの両方において、0.5mm乃至3.0mmである。両紙等級において、パルプの0%乃至100%がリサイクルファイバからなっていてもよい。加工前に、製造した「タオル」等級の紙は、嵩が15cm3 /g乃至20cm3 /gであり、秤量が約20g/m2 であるのに対し、「浴室」等級の紙は、嵩が12cm3 /g乃至18cm3 /gまたは14cm3 /g乃至18cm3 /gであり、秤量が約15g/m2 乃至24g/m2 である。
【0024】
12フットのヤンキーシリンダ(a 12 foot Yankee cylinder)を備えた本発明による抄紙機は、「タオル」等級の紙について、480m/分の速度で動作することができ、23フットのヤンキーシリンダ(a 23 foot Yankee cylinder)は、「浴室」等級の紙について、1200m/分の速度で動作することができる。
【0025】
上文中において、本発明を、幾つかの特定の実施の形態から説明した。しかしながら、本発明の範囲内で修正および変形が可能であるということが、理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明による抄紙機の第1の実施の形態を示す。
【図2】図2は、本発明による抄紙機の第2の実施の形態を示す。
【図3】図3は、本発明による抄紙機用のトランスファーロールの変形例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙のファイバウェブ(12、41)をスルーエアー乾燥(TAD)またはプレスなしで製造するための抄紙機(1、30)であって、
ファイバウェブ(12、41)を形成するための少なくとも一つのフォーミングワイヤ(7、8、36)を含むワイヤセクション(5、34)と、空気透過性であるとともに水透過性である抄紙用具(16、39)と、前記ファイバウェブ(12、41)を脱水するための少なくとも一つの脱水ユニット(20、46、49)と、を有したウェットエンド(2、31)と、
前記ファイバウェブ(12、41)を乾燥させるための乾燥面(24、54)を有した乾燥セクション(3、32)と、
前記ファイバウェブ(12、41)を前記ウェットエンド(2、31)から前記乾燥セクション(3、32)に転載するため、トランスファーニップ(25、53)において前記乾燥面(24、54)と相互作用するように配置されたトランスファーロール(23、52)と、を備え、
前記ファイバウェブ(12、41)は、前記ワイヤセクション(5、34)から前記トランスファーニップ(25、53)までの間にわたって、並びに、前記トランスファーニップ(25、53)を通過する間、前記抄紙用具(16、39)によって支持され
前記抄紙用具(16、39)は、前記ファイバウェブ(12、41)に構造を与えるための立体的構造を有する
ことを特徴とする抄紙機(1、30)。
【請求項2】
前記抄紙用具(16、39)は、前記ファイバウェブ(12、41)が自由な側(19、45)を持つように、前記ファイバウェブ(12、41)を開放状態で搬送するように構成され、
前記少なくとも一つの脱水ユニット(20、46、49)は少なくとも一つの脱水部材(21、47、50)を有し、前記少なくとも一つの脱水部材(21、47、50)は前記ファイバウェブ(12、41)の前記自由な側(19、45)に対面するように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項3】
前記乾燥面(24、54)は、化学接着剤でコーティングされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項4】
前記少なくとも一つの脱水部材または脱水装置は、スチームボックス(21、47、50)を含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項5】
前記抄紙用具(16)は、前記少なくとも一つのフォーミングワイヤ(8)から前記ファイバウェブ(12)を取り上げるように配置され、
前記抄紙用具(16)の速度は、前記フォーミングワイヤ(8)の速度よりも0%乃至30%、好ましくは0%乃至20%低速となっている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項6】
前記抄紙用具(16、39)は有孔である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項7】
前記抄紙用具(16、39)は、約100CFM乃至700CFMの空気透過性を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項8】
前記抄紙用具(16、39)は、約400CFM乃至600CFMの空気透過性を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項9】
前記抄紙用具(16、39)は、その一方の側に、平らな部分を有し、
平らな部分は、前記トランスファーニップ(25、53)において前記乾燥面(24、54)と相互作用するように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項10】
前記平らな部分の面積は、前記乾燥面(24、54)に対する前記抄紙用具(16、39)の接触面の15%乃至40%を占めることを特徴とする請求項9に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項11】
前記平らな部分の面積は、前記乾燥面(24、54)に対する前記抄紙用具(16、39)の接触面の22%乃至28%、好ましくは25%を占める
ことを特徴とする請求項10に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項12】
前記トランスファーロール(23、52)は、平滑であるとともに均質である
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項13】
前記トランスファーロール(57)は、サクションロールであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項14】
前記ウェットエンド(2、31)には、脱水プレスが設けられていない
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項15】
前記乾燥セクション(3、32)は、前記ファイバウェブ(12、41)にクレープ仕上げを施すためのクレーピングドクター(29、56)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項16】
前記抄紙用具(16、39)の前記立体的構造は、前記抄紙用具(16、39)の前記ファイバウェブ(12、41)に対面する側に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の抄紙機(1、30)。
【請求項17】
スルーエアー乾燥(TAD)またはプレスなしで、紙を抄紙機で製造するための方法であって、
ワイヤセクション(5、34)でファイバウェブ(12、41)を形成する工程と、
前記ファイバウェブ(12、41)を、空気透過性であるとともに水透過性である抄紙用具(16、39)によって、前記ワイヤセクション(5、34)から乾燥セクション(3、32)まで支持し、この間に、少なくとも一つの脱水ユニット(20、46、49)によって前記ファイバウェブ(12、41)を脱水する工程と、
前記ファイバウェブ(12、41)を前記抄紙用具(16、39)から前記乾燥セクション(3、32)の乾燥面(24、54)へ転載する工程と、
前記乾燥面(24、54)から前記ファイバウェブ(12、41)を取り出す工程と、を備え、
前記抄紙用具(16、39)の立体的構造により前記ファイバウェブ(12、41)に構造を与える工程によって、特徴付けられる方法。
【請求項18】
前記ファイバウェブ(12、41)が自由な側(19、45)を持つように前記ファイバウェブ(12、41)を前記抄紙用具(16、39)によって開放状態で搬送する工程と、
前記ファイバウェブ(12、41)の前記自由な側(19、45)に対面するように配置された脱水装置(21、47、50)により、前記ファイバウェブ(12、41)を脱水する工程と、によって特徴付けられる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥面(24、54)を化学接着剤でコーティングする工程によって、特徴付けられる請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記抄紙用具(16)の速度を、前記フォーミングワイヤ(8)の速度よりも0%乃至30%、好ましくは0%乃至20%低速として、前記ファイバウェブ(12)を前記ワイヤセクション(5)のフォーミングワイヤ(8)から前記抄紙用具(16)へ転載する工程によって、特徴付けられる請求項17乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
クレーピングドクター(29、56)を用いて、前記ファイバウェブ(12、41)にクレープ仕上げを施すとともに前記ファイバウェブ(12、41)を前記乾燥面(24、54)から取り出す工程によって、特徴付けられる請求項17乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ファイバウェブ(12、41)の前記抄紙用具(16、39)に対面する側に、前記ファイバウェブ(12、41)の立体的構造を形成することによって、特徴付けられる請求項17乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項17乃至21のうちのいずれか一項に記載の方法によって製造された紙であって、
加工前に、15cm3 /g乃至20cm3 /gの嵩、あるいは、12cm3 /g乃至18cm3 /gの嵩を有する
ことを特徴とする紙。
【請求項24】
15g/m2 乃至24g/m2 の秤量を有する
ことを特徴とする請求項23に記載の紙。
【請求項25】
70容量%乃至100容量%を針葉樹材パルプから形成され、0容量%乃至30容量%を広葉樹材パルプから形成されている
ことを特徴とする請求項23または24に記載の紙。
【請求項26】
パルプの0容量%乃至30容量%が、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)からなる
ことを特徴とする請求項25に記載の紙。
【請求項27】
20容量%乃至60容量%を針葉樹材パルプから形成され、40容量%乃至80容量%を広葉樹材パルプから形成されている
ことを特徴とする請求項23または24に記載の紙。
【請求項28】
ファイバの平均長は、0.5mm乃至3.0mmである
ことを特徴とする請求項23乃至27のいずれか一項に記載の紙。
【請求項29】
クレープ仕上げを施されている
ことを特徴とする請求項23乃至28のいずれか一項に記載の紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−500464(P2008−500464A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514975(P2007−514975)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000713
【国際公開番号】WO2005/116332
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(501337362)メッツォ ペーパー カルルスタッド アクチボラグ (8)
【Fターム(参考)】