説明

把持装置と方法

【課題】互いの隙間を狭くして複数の対象物を配列した場合であっても、より容易に、対象物を挟んで把持できるようにする。
【解決手段】対象物1を挟んで把持する1対の把持爪3a、3bと、1対の把持爪を動作可能に支持して空間内を移動する支持移動体7とを備える。1対の把持爪は、支持移動体に対して往復動方向に駆動されることで、互いに近接して対象物を挟み、または、互いに離間して該対象物を解放するようになっている。往復動方向は、1対の把持爪3a、3bが対象物1を挟む方向に対して斜めの方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を挟んで把持する把持装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
把持装置は、例えば、台などに置かれた対象物を別の位置まで搬送する産業用ロボットである。把持装置は、対象物を搬送するために対象物を把持する把持爪を有する。
【0003】
図1は、把持装置の動作を説明する図である。この例では、対象物1は、円柱形状を有している。図1は、この円柱の軸方向から見た図である。複数の対象物1が、水平方向に配列されたものを、上下に複数段(図1では2段)だけ積み重ねている(以下、段積みという)。
【0004】
図1のように、段積みされている対象物を把持するために、次のように把持爪31a、31bを動作させることが考えられる。
まず、図1(A)のように、これから把持する目標対象物1の上方側に、1対の把持爪31a、31bを位置させる。
次に、図1(B)のように、1対の把持爪31a、31bを、下降させて、目標対象物1の両側にある隙間に入れる。
その後、図1(C)のように、1対の把持爪31a、31bを、互いに近接する方向に移動させることで、1対の把持爪31a、31bで目標対象物1を挟んで把持する。
【0005】
以下の特許文献1には、円筒状の目標対象物を2本の把持爪で持ち上げる装置が開示されている。また、以下の特許文献2には、円筒状の目標対象物を吸着パットで持ち上げる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2718356号
【特許文献2】特開平11−139558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、対象物の配列によっては、上述した隙間の幅や深さを十分に確保できなくなる。この場合、狭い隙間に把持爪を入れることが難しくなる。例えば、隙間が狭いため、把持爪と周囲の対象物が干渉してしまう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、互いの隙間を狭くして複数の対象物を配列した場合であっても、より容易に、対象物を挟んで把持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によると、対象物を把持する把持装置であって、
対象物を挟んで把持する1対の把持爪と、
1対の把持爪を動作可能に支持して空間内を移動する支持移動体と、を備え、
前記1対の把持爪は、支持移動体に対して往復動方向に駆動されることで、互いに近接して対象物を挟み、または、互いに離間して該対象物を解放するようになっており、
前記往復動方向は、1対の把持爪が対象物を挟む方向に対して斜めの方向である、ことを特徴とする把持装置が提供される。
【0010】
前記把持爪が、複数対設けられ、
各対の把持爪を第1および第2の把持爪として、各対において、第1の把持爪には、第1の被駆動部が結合され、第2の把持爪には、第2の被駆動部が結合され、
各対の第1および第2の把持爪は、それぞれ、第1および第2の被駆動部を介して支持移動体に支持されており、
第1および第2の被駆動部が、支持移動体に対して前記往復動方向に駆動されることで、各対の第1および第2の把持爪が、支持移動体に対して前記往復動方向に駆動され、互いに近接して対象物を挟み、または、互いに離間して該対象物を解放できるようになっていてもよい。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明によると、上述の把持装置を用いた対象物の把持方法であって、
複数の対象物を、隙間をもって配列し、
これら対象物のうち1つまたは複数の目標対象物に対して、支持移動体を位置決めし、
この状態で、1対または各対の把持爪を、前記往復動方向に駆動することで、該1対または各対の把持爪を、前記隙間の奥側へ移動させ、目標対象物を挟む、ことを特徴とする把持方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によると、1対の把持爪は、往復動方向に駆動されることで、互いに近接して対象物を挟み、この往復動方向は、1対の把持爪が対象物を挟む方向に対して斜めの方向である。この構成で、互いの隙間を狭くして複数の対象物を配列した場合であっても、1対の把持爪を、前記斜めの方向から、目標対象物の両側の隙間に入れることができる(例えば、図4を参照)。従って、隙間が狭くても、より容易に目標対象物を把持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】把持爪による把持動作を説明する図である。
【図2】(A)は、本発明の第1実施形態による把持装置の構成を示し、(B)は、(A)の部分拡大図である。
【図3】第1実施形態による把持方法を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態による把持方法を説明する図である。
【図5】(A)は、第2実施形態による構成図であり、(B)は、(A)のB−B矢視図である。
【図6】第2実施形態による把持方法を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態による把持方法を説明する図である。
【図8】対象物を配列する台の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0015】
[第1実施形態]
図2(A)は、本発明の第1実施形態による把持装置10の構成図である。把持装置10は、対象物1を把持する装置であって、1対の把持爪3a、3b、および支持移動体7を備える。図2(B)は、図2(A)における支持移動体7付近を示す部分拡大図である。
【0016】
1対の把持爪3a、3bは、対象物1を挟んで支持する。この例では、各把持爪3a、3bは、図2(B)に示すように、対象物1を挟む方向(以下、挟持方向という)と交差(この例では、直交)する方向に延びているアクセス部9と、該アクセス部9の先端から挟持方向の側にアクセス部9から曲って延びている屈曲部11と、を有する。対象物1を把持する時に、この屈曲部11が、対象物1をより奥側(この例では、下方側)からも支持することができる。従って、対象物1をより安定して把持できる。この例では、屈曲部11により、把持した対象物1が下方に落下することを防止できる。
【0017】
支持移動体7は、1対の把持爪3a、3bを動作可能に支持して空間内を移動する。すなわち、支持移動体7は、目標対象物1を1対の把持爪3a、3bが挟んで把持できる位置へ移動させられる。この位置で、1対の把持爪3a、3bが当該対象物1を把持すると、この状態で、支持移動体7は、別の位置へ当該対象物1を搬送するように移動させられる。
【0018】
第1実施形態によると、前記1対の把持爪3a、3bは、往復動方向に駆動されることで、互いに近接して対象物1を挟み、または、互いに離間して該対象物1を解放するようになっている。前記往復動方向は、1対の把持爪3a、3bが対象物1を挟む方向に対して斜めの方向である。
【0019】
支持移動体7には、ガイドレール13が設けられる。このガイドレール13を介して、第1および第2の被駆動部15a、15bが支持移動体7に取り付けられる。第1の被駆動部15aには、一方の把持爪3aが結合され、第2の被駆動部15bには、他方の把持爪3bが結合されている。この構成で、ガイドレール13は、把持爪3a、3bの被駆動部15a、15bを支持しながら、往復動方向における被駆動部15a、15b(すなわち、把持爪3a、3b)の移動を案内する。
【0020】
被駆動部15a、15bは、図示しないアクチュエータにより駆動されることで、往復動方向に移動する。アクチュエータは、支持移動体7に設けられてよい。アクチュエータは、例えば、伸縮動作により把持爪3a、3bを往復動方向に駆動する空圧または油圧によるシリンダ装置であってよい。代わりに、アクチュエータは、サーボモータと、該サーボモータのトルクを往復動方向の駆動力に変換する変換機構(例えばラックとピニオン)とにより構成されてもよい。
【0021】
支持移動体7は、3次元空間内を移動させられる。支持移動体7の移動は、例えば、図2(A)に示す多関節ロボットとしての把持装置10により実行されてよい。この場合、把持装置10は、図2(A)の例では、第1〜第4のアーム17a〜17d、および第1〜第3の関節19a〜19cを備える。第1のアーム17aには、支持移動体7が結合されている。また、第1のアーム17aは、第1の関節19aを介して第2のアーム17bに連結されているとともに、第1の関節19aの回転軸C1(図2(A)の紙面と垂直な軸)周りに第2のアーム17bに対して回転可能である。第2のアーム17bは、第2の関節19bを介して第3のアーム17cに連結されているとともに、第2の関節19bの回転軸C2(図2(A)の紙面と垂直な軸)周りに第3のアーム17cに対して回転可能である。第3のアーム17cは、第3の関節19cを介して第4のアーム17dに連結されているとともに、第3の関節19cの回転軸C3(図2(A)の紙面と垂直な軸)周りに第4のアーム17dに対して回転可能である。第4のアーム17dは、自身の中心軸である回転軸C4の周りに回転可能に設置台18に支持されている。なお、第1〜第4のアーム17a〜17dは、図示しないアクチュエータにより、各回転軸C1〜C4周りに回転駆動される。
【0022】
第1実施形態による把持装置10を用いた対象物の把持方法を説明する。図3は、把持方法を示すフローチャートである、図4は、把持方法の説明図である。
【0023】
ステップS1において、図4(A)のように、複数の対象物1を、隙間をもって配列する。図4(A)の例では、配列した複数の対象物1を2段に積み重ねている。
ステップS2において、これら対象物1のうち1つの目標対象物1に対して、支持移動体7を位置決めする。この例では、当該位置決めを次の2段階で行う。最初の段階では、図4(A)のように、支持移動体7の移動により、これから把持する目標対象物1の上方側に、1対の把持爪3a、3bを位置させる。次の段階では、図4(B)のように、支持移動体7の下降により、1対の把持爪3a、3bを、下降させて、目標対象物1の両側にある隙間に入れる。このように、目標対象物1に対して、支持移動体7を位置決めする。
ステップS3において、ステップS2で支持移動体7を位置決めした状態で、図4(C)のように、1対の把持爪3a、3bを、前記往復動方向に駆動することで、1対の把持爪3a、3bを、前記隙間の奥側へ移動させ、目標対象物1を挟む。すなわち、図4(C)のように、1対の把持爪3a、3bは、ガイドレール13に沿って互いに近接する往復動方向(斜め下方)に移動させられることで、目標対象物1を挟んで把持する。
【0024】
図4で示す動作のように、把持爪3a、3bは、挟持方向に対して斜めの方向に往復動移動させられるので、斜め上方から目標対象物1に接近できる。そのため、図1の場合よりも、隙間のより深い位置まで把持爪3a、3bを入れることができる。これにより、目標対象物1を、より安定して把持することができる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態において、以下で説明する以外の点は、第1実施形態と同じである。
【0026】
図5(A)は、第2実施形態による支持移動体7の付近を示す。図5(B)は、図5(A)のB−B矢視図である。なお、図5(B)において、段積みされた対象物1のうち、最上段の4つの対象物1のみを一点鎖線で描いている。
【0027】
第2実施形態によると、上述の把持爪が、複数対設けられる。すなわち、把持装置10は、複数対の把持爪3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a、6bを備える。
各対の把持爪を第1および第2の把持爪として、各対において、第1の把持爪3a、4a、5a、6aは、第1の被駆動部15aに結合され、第2の把持爪3b、4b、5b、6bは、第2の被駆動部15bに結合されている。第1および第2の被駆動部15a、15bが前記往復動方向に駆動されることで、各対の第1および第2の把持爪は、互いに近接して対象物1を挟み、または、互いに離間して該対象物1を解放できるようになっている。
【0028】
各被駆動部15a、15bは、ガイドレール13に移動可能に直接支持される被支持部分21と、被支持部分21の下部に結合されている板状部分23とを有する。この板状部分23の下面に、複数の把持爪3a、4a、5a、6aまたは3b、4b、5b、6bが結合されている。
図5(B)に示すように、把持爪の複数対(例えば、把持爪3a、3bからなる対と、把持爪4a、4bからなる対)は、挟持方向と交差(この例では、直交)する水平方向にずれている。これにより、複数対の把持爪は、後述するように、互いに干渉することなく、それぞれ、複数の対象物1を同時に把持することができる。
【0029】
図5の例では、複数対の把持爪3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a、6bを1組として、2組が、挟持方向と直交する方向に離れて設けられている。これにより、円柱状の対象物1の長手方向両側を把持できるので、各対象物1を安定して把持できる。
【0030】
第2実施形態による把持装置10を用いた対象物の把持方法を説明する。図6は、把持方法を示すフローチャートである。図7は、把持方法の説明図である。
【0031】
ステップS11において、図7(A)のように、複数の対象物1を、隙間をもって配列する。図7(A)の例では、配列した複数の対象物1を2段に積み重ねている。
ステップS12において、これら対象物1のうち複数の目標対象物1に対して、支持移動体7を位置決めする。この例では、当該位置決めを次の2段階で行う。最初の段階では、図7(A)のように、支持移動体7の移動により、これから把持する複数の目標対象体1の上方側に、複数対の把持爪3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a、6bを位置させる。次の段階では、図7(B)のように、支持移動体7の下降により、複数対の把持爪を、下降させて、それぞれ、目標対象物1の両側にある隙間に入れる。このように、複数の目標対象物1に対して、支持移動体7を位置決めする。
ステップS13において、ステップS12で位置決めした状態で、図7(C)のように、複数対の把持爪を、前記往復動方向に駆動することで、各対の把持爪を、前記隙間の奥側へ移動させ、目標対象物1を挟む。すなわち、図7(C)のように、複数対の把持爪は、ガイドレール13に沿って互いに近接する往復動方向(斜め下方)に移動させられることで、複数の目標対象物1を同時に挟んで把持する。
【0032】
図7で示す動作のように、複数対の把持爪で、複数の対象物1を同時に把持して所望の場所へ搬送できるので、搬送効率が高まる。
【0033】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記の変更例1〜3を単独でまたは組み合わせて採用してもよい。下記の変更例1〜3において述べない点は、上述と同じであってよい。
【0034】
(変更例1)
第1実施形態または第2実施形態において、図8(A)のように、複数の対象物1が置かれる台25に、複数の溝25aを一定の間隔で形成していてもよい。各溝25aは、対象物1の形状に整合(一致)する形状を有する。これら溝25aに、図8(B)のように、それぞれ、最下段の複数の対象物1を入れて配列する。これにより、各段において、水平方向に隣接する対象物1の隙間を、精度よく一定にすることができる。
【0035】
(変更例2)
上述の各実施形態では、対象物1は、円柱形状のものであったが、本発明によると、対象物1は、他の形状(例えば、角柱形状)を有するものであってもよい。なお、対象物1は、円柱や角柱などの柱状でなくてもよい。
【0036】
(変更例3)
上述の各実施形態では、目標対象物1が水平方向に配列されているので、目標対象物1から見て上側に支持移動体7を位置決めした状態で、1対のまたは各対の把持爪を互いに近接させ、これにより、1対のまたは各対の把持爪で目標対象物1を挟んで把持した。代わりに、目標対象物1が水平方向以外の方向に配列されている場合において、目標対象物1から見て他の側(例えば、対象物1の配列方向が鉛直方向である場合には、水平方向一方側)に位置決めした状態で、1対のまたは各対の把持爪を互いに近接させ、これにより、1対のまたは各対の把持爪で目標対象物1を挟んで把持してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 対象物、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a、6b 把持爪、7 支持移動体、9 アクセス部、10 把持装置、11 屈曲部、13 ガイドレール、15a、15b 被駆動部、17a、〜17d アーム、18 設置台、19a〜19c 関節、21 被支持部分、23 板状部分、25 台、25a 溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する把持装置であって、
対象物を挟んで把持する1対の把持爪と、
1対の把持爪を動作可能に支持して空間内を移動する支持移動体と、を備え、
前記1対の把持爪は、支持移動体に対して往復動方向に駆動されることで、互いに近接して対象物を挟み、または、互いに離間して該対象物を解放するようになっており、
前記往復動方向は、1対の把持爪が対象物を挟む方向に対して斜めの方向である、ことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記把持爪が、複数対設けられ、
各対の把持爪を第1および第2の把持爪として、各対において、第1の把持爪には、第1の被駆動部が結合され、第2の把持爪には、第2の被駆動部が結合され、
各対の第1および第2の把持爪は、それぞれ、第1および第2の被駆動部を介して支持移動体に支持されており、
第1および第2の被駆動部が、支持移動体に対して前記往復動方向に駆動されることで、各対の第1および第2の把持爪が、支持移動体に対して前記往復動方向に駆動され、互いに近接して対象物を挟み、または、互いに離間して該対象物を解放できるようになっている、ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の把持装置を用いた対象物の把持方法であって、
複数の対象物を、隙間をもって配列し、
これら対象物のうち1つまたは複数の目標対象物に対して、支持移動体を位置決めし、
この状態で、1対または各対の把持爪を、前記往復動方向に駆動することで、該1対または各対の把持爪を、前記隙間の奥側へ移動させ、目標対象物を挟む、ことを特徴とする把持方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate