説明

把持装置

【課題】置き台などの固定されていないワークをクランプし、位置精度を要求されるチャックなどの固定装置に搬送を行うような場合に、長尺円柱状ワークの傾きを矯正して搬送できる把持装置を提供する。
【解決手段】内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディ1と、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダ2と、ボディおよびスライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材5を同心円状に配置し、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリング7を配置し、ボディの上方に配置した操作プレート4と、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダを連結し、ボディと操作プレートを離反する方向に圧縮されて挿入されたスプリング6により把持するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺円柱状のワークを把持するのに適した把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺円柱状のワークを搬送する方法として数々の把持装置が使用されており、本出願人も特願2005−164892号で、下方が開放された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、スライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワークをボディ内部の中空部で把持することを特徴とする把持装置を提案している。
【0003】
上記把持装置により、ワーク寸法の違う複数の長尺円柱状ワークを同じ把持装置で把持することができるなど、数々の特徴があり、特に多少傾きのある固定されたワークをクランプする場合には、ワークに合わせて爪部材のテーパ面の当たり位置が上下方向または回転方向に倣ってバランスをとり、クランプすることができるので、ワークの傾きを許容してクランプすることができるため、ワークのキズや破損の発生を防止することができる。
【0004】
ただし、置き台などの固定されていないワークをクランプし、位置精度を要求されるチャックなどの固定装置に搬送を行うような場合、ワークのクランプ時の傾きがそのまま搬送時に保持されているため、クリアランスの少ない相手側の固定装置に搬送する時にワークと相手側固定装置が干渉する場合がある。
【特許文献1】特願2005−164892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、置き台などの固定されていないワークをクランプし、位置精度を要求されるチャックなどの固定装置に搬送を行うような場合に、長尺円柱状ワークの傾きを矯正して搬送できる把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記した課題を解決する手段として、内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、ボディおよびスライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、スライダの移動により独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワークをボディ内部の中空部で把持するものである。
【0007】
また、内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、ボディおよびスライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置した操作プレートと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダを、ボディ上面を貫通するシャフトで連結し、ボディと操作プレートを離反する方向に圧縮されて挿入されたスプリングにより把持するものである。
【0008】
さらに、内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、ボディおよびスライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置したシリンダと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダをピストンに連結し、空気圧力により把持するものである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成にすることにより、ボディとスライダに形成したテーパ面と、爪部材に形成したテーパ面を契合することにより、両端で爪部材の位置決めを行っているので保持している長さが長く、ワークの傾きが無い。
【0010】
また、外力が加わってもテーパ面で受けているため、保持力が大きく、ズレが無い。
【0011】
さらに、独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワークをボディ内部の中空部で把持するので、全長が長くなることがなく、薄肉円筒状部品に形成されているため外形も小さく、小型に構成できる。
【0012】
また、複数の爪部材がスライダのテーパ面に勘合して放射状に配置されているので、材料の弾性変形による把持を行うコレットに較べて移動量が大きく、ワーク寸法の違う複数の長尺円柱状ワークを同じ把持装置で把持することができる。
【0013】
請求項2の方法では、把持はスプリングの弾性力で行うため、搬送途中でエアー切れなどによるワークの落下を防止することができるとともに、ワーク解放の時だけ駆動源を用いるだけで良いので、複数の把持装置を1つのシリンダやカムなどの駆動源で操作することも可能である。
【0014】
また、請求項2の方法のように駆動源を外部に持って同時に駆動させる構成や、請求項3の方法のようにシリンダなどの駆動源をそれぞれの把持装置に持ち、別々の制御で作動させるような様々な装置構成にも対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように本実施例の把持装置は、内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディ1に、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダ2をテーパ面が対向するように挿入し、ボディ1およびスライダ2に形成されたテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材5を同心円状に配置する。
複数の爪部材5には、近接する爪部材同士が離反する方向に負荷のかかるスプリングB7を配置し、ボディの図面上方に配置した操作プレート4と、ボディ1の内周面と摺動して上下にスライドするスライダ2を、ボディ上面を貫通するシャフト3で連結し手いる。
【0017】
ボディ1と操作プレート4の間には、ボディ1と操作プレート4が離反する方向に圧縮されたスプリングA6が挿入されている。
【0018】
次に動作について説明する。
【0019】
ボディ1と操作プレート4の間にスプリングA6が配置されているため、操作プレート4にシャフト3で連結されたスライダ2は上方に移動しようとする力が働いている。
【0020】
そのため、スライダ2の内周面に形成された第1テーパ面8およびボディ1の内周面に形成された第3テーパ面10とそれぞれ勘合する3個の爪部材5の第2テーパ面9および第4テーパ面11によって、3個の爪部材5はスプリングB7を圧縮しながら中心方向に移動している。
【0021】
次に、図4に示すように、図面には明示していないプッシャーなどの外部負荷が操作プレート4にかかった場合、操作プレート4にシャフト3で連結されたスライダ2は下方に移動するため、スライダ2の内周面に形成された第1テーパ面8およびボディ1の内周面に形成された第3テーパ面10とそれぞれ勘合する3個の爪部材5の第2テーパ面9および第4テーパ面11によって、3個の爪部材5はスプリングB7の力で開放方向に移動する。
【0022】
この状態でワーク12を把持装置の中空部に挿入し、プッシャーを上昇させると、スプリングA6の力により操作プレート4が上昇し、スライダ2のテーパ面8に勘合する爪部材5はワーク9の方向に移動し、把持を行う。
【0023】
このとき、図5に示すようにワーク12を把持しているが、図1に示す閉状態になる前に把持を行うことで、常にスプリングA6の力がワーク12にかかっているので、確実にクランプすることができる。
【実施例2】
【0024】
他の実施例として図6に示すように、内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディ1と、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダ2と、ボディ1およびスライダ2のテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材5を同心円状に配置する。
【0025】
複数の爪部材5が離反する方向に負荷のかかるスプリングA6を配置し、ボディ1の上方に配置したシリンダ13と、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダ2をピストン14に連結し、シリンダ13とピストン14で圧力室を形成し、空気圧力によりピストン14を上下に作動させることにより、スライダ2を上下させる構成である。
【0026】
動作については、操作プレート4とシャフト3とスプリングA6の代わりにシリンダ15とピストン16に変わっただけであるため、省略する。
【0027】
なお、シリンダは復動式の他に単動式でもよい。
【0028】
テーパ面の形状については、円錐状のほか、円錐状など、要旨を満足する形状なら有効である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上記把持装置は、長尺円柱状ワークを把持するのに適した把持装置であるが、搬送用のほか、治具などの固定装置として使用することも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施例の閉状態を示す断面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】本実施例の閉状態を示す上面図
【図4】本実施例の開放状態を示す断面図
【図5】本実施例の把持状態を示す断面図
【図6】第2実施例の把持状態を示す断面図
【図7】従来例のワーク把持状態を示す断面図
【図8】従来例のワークの傾きを示す断面図
【符号の説明】
【0031】
1 ボディ
2 スライダ
3 シャフト
4 操作プレート
5 爪部材
6 スプリングA
7 スプリングB
8 第1テーパ面
9 第2テーパ面
10 第3テーパ面
11 第4テーパ面
12 ワーク
13 シリンダ
14 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、ボディおよびスライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、スライダの移動により独立した複数の爪部材が長尺円柱状ワークをボディ内部の中空部で把持することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、ボディおよびスライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置した操作プレートと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダを、ボディ上面を貫通するシャフトで連結し、ボディと操作プレートを離反する方向に圧縮されて挿入されたスプリングにより把持することを特徴とする把持装置。
【請求項3】
内周面にテーパ面を形成された円筒状のボディと、内周面にテーパ面が形成された円筒状のスライダと、ボディおよびスライダのテーパ面に契合する逆テーパ面を有する複数の爪部材を同心円状に配置するとともに、複数の爪部材が離反する方向に負荷のかかるスプリングを配置し、ボディの上方に配置したシリンダと、ボディの内周面と摺動して上下にスライドするスライダをピストンに連結し、空気圧力により把持することを特徴とする把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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