説明

投射レンズ装置及びプロジェクタ装置

【課題】投射像を暗くすることなくコントラストを向上できる投射レンズ装置を提供する。
【解決手段】光軸方向に絞り板31a,31bを設けることで、絞り板31aにより遮光しなかった迷光を、絞り板31bにより遮光するので、投射像に迷光が混入することを防止し、投射像のコントラストを向上できる。絞り板31a,31bをそれぞれ略等しい形状として光軸方向に重なるように配置することで、絞り板31aを通過する投射光は、絞り板31bが遮光しないので、投射光を必要以上に遮光して投射像が暗くなることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を投射する投射レンズ装置及びこれを備えたプロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の投射レンズ装置としては、スクリーンの周囲の明るさなどに応じて投射像のコントラストを可変できるようにするために、投射光学系を通過する投射光の光路内に絞り量を可変可能な絞り装置を設けた構成が知られている。この構成では、投射光学系の光路内に絞り装置を介在させたことにより、表示素子から出射した投射光以外の光、すなわち例えば投射光がレンズ鏡筒の内周面などでの内面反射などによる迷光である非反射光が絞り装置により遮光される結果、投射像のコントラストが向上すると考えられる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−157348号公報(第6−7頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような投射レンズ装置では、絞り量とコントラストの高さとが必ずしも相対関係になく、例えばコントラストを向上しようとして絞り装置で絞り量を大きくすると、コントラストが向上する効果以上に投射像が暗くなり、絞り量を小さくすると、コントラストの向上が図れないという問題点を有している。
【0004】
この原因としては、絞り装置の絞り板を光路内に大きく進入させて絞り量を大きくして非反射光の遮光量を大きくすると、投射光の遮光量も大きくなり、コントラストの向上以上に投射像が暗くなってしまい、また、絞り装置の絞り板の光路内への進入量を小さくすると、非反射光の遮光が充分でなく、コントラストを向上できないためと考えられる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、投射像を暗くすることなくコントラストを向上できる投射レンズ装置及びこれを備えたプロジェクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の投射レンズ装置は、光を投射するプロジェクタ装置の投射レンズ装置であって、投射光学系と、光軸方向に沿って複数の絞り体を備え、前記投射光学系を通過する光の量を調整する絞り装置と、この絞り装置により規制される光量を変化させる絞り駆動手段とを具備し、前記絞り装置は、光軸方向前側に位置する一の絞り体を通過する投射光を、この絞り体よりも光軸方向後側に位置する他の絞り体が遮光しないように配設されているものである。
【0007】
そして、光軸方向に複数の絞り体を設けることで、光軸方向前側に配置される一の絞り体により遮光されなかった迷光は、光軸方向後側に配置される他の絞り体により遮光されるので、コントラストが向上するとともに、光軸方向前側に位置する一の絞り体を通過する投射光は、光軸方向後側に位置する他の絞り体に遮光されないので、投射像が暗くなることが防止される。
【0008】
請求項2記載の投射レンズ装置は、請求項1記載の投射レンズ装置において、絞り体は、光軸側に向けて突出した円弧状に形成されているものである。
【0009】
そして、絞り体を光軸側に向けて突出した円弧状に形成することで、迷光を効果的に遮光し、コントラストが向上する。
【0010】
請求項3記載のプロジェクタ装置は、光源と、この光源からの光を変調する光変調手段と、この光変調手段で変調された光をスクリーンに投射する請求項1または2記載の投射レンズ装置とを具備したものである。
【0011】
そして、請求項1または2記載の投射レンズ装置を用いることで、光軸方向前側に配置される一の絞り体により遮光されなかった迷光は、光軸方向後側に配置される他の絞り体により遮光されるので、コントラストが向上するとともに、光軸方向前側に位置する一の絞り体を通過する投射光は、光軸方向後側に位置する他の絞り体に遮光されないので、投射像が暗くなることが防止される。
【0012】
請求項4記載のプロジェクタ装置は、請求項3記載のプロジェクタ装置において、光変調手段は、光源からの光を、オン時には投射レンズ装置へと反射し、オフ時には前記オン時と異なる方向に反射する反射型素子であり、絞り装置は、光軸に対して前記オフ時に光が反射される側に配設されているものである。
【0013】
そして、光軸に対して光変調手段のオフ時に光が反射される側に絞り体を配設することで、絞り体にて迷光をより確実に遮光し、コントラストが向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、投射像を暗くすることなくコントラストを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態の投射レンズ装置の構成を図1ないし図8を参照して説明する。
【0016】
図8において、1はプロジェクタ装置で、このプロジェクタ装置1は、光源としてのランプ2と、このランプ2から照射された光を着色するカラーホイール3を備えたカラーホイールユニット4、このカラーホイールユニット4により着色された光の照度を均一化して導く照明光学系5、この照明光学系5で導かれた光を変調させる光変調手段としての表示素子すなわち表示デバイスであるDMD(Digital Micromirror Device(商品名))6、及び、このDMD6で変調された光線を図示しないスクリーンへと投射する投射光学系としてのレンズ鏡筒7などを備えている。そして、このプロジェクタ装置1は、照明光学系5及びDMD6などが本体部としてのフレーム体8に取り付けられ、かつ、ランプ2、カラーホイールユニット4及びレンズ鏡筒7などとともに図示しない外装筐体内に収容されている。
【0017】
なお、以下、ランプ2からスクリーンに向かう光線の光軸Oに沿って、スクリーン側を前側、ランプ2側を後側とし、光軸Oの後側から前側に向かって左右方向をそれぞれ左右方向として説明する。
【0018】
ランプ2は、ハロゲンランプなどの白熱電球、あるいはメタルハライドランプなどの放電ランプである。
【0019】
カラーホイール3は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の各色フィルタをそれぞれ等分割の扇形状に設けた円盤状に形成され、光軸Oに対して略直交する方向に沿って配置されている。そして、カラーホイールユニット4は、カラーホイール3の赤(R)、緑(G)、青(B)の各色フィルタがランプ2の光線に順次当たるようにカラーホイール3を周方向に一定の速度で回転させ、ランプ2から照射された光線を時分割で各色に着色するものである。
【0020】
照明光学系5は、カラーホイールユニット4で着色した光線の照度を均一化する光管11、この光管11で照度を均一化された光線を集光するレンズユニット12、このレンズユニット12で集光された光線を反射させる反射ミラーM1、この反射ミラーM1で反射された光線をDMD6へと反射させるコーンケーブミラーM2などを有している。
【0021】
光管11は、光軸Oと同軸状に配置されている。この光管11は、カラーホイールユニット4で着色した光線の照度を均一化しつつレンズユニット12へと照射させるものである。
【0022】
レンズユニット12は、光軸Oに沿って配置されたレンズL1,L2,L3を備えている。
【0023】
反射ミラーM1は、レンズユニット12の軸方向に対して傾斜状、かつコーンケーブミラーM2に向けて光を反射するように配設されている。
【0024】
コーンケーブミラーM2は、正面視で略四角形状に形成され、円錐面状の反射面を有し、DMD6に対向するようにレンズ鏡筒7の下部に配設されている。そして、このコーンケーブミラーM2は、レンズ鏡筒7の後部が嵌合する正面視四角形状の切欠部13が角部に切り欠き形成されている。
【0025】
そして、DMD6は、レンズL1,L2,L3などにより集光された光線を、処理された映像信号に応じて変調させて反射する反射型素子であり、映像信号を処理する映像信号処理回路などの電子回路に実装されている。具体的に、このDMD6は、図示しない微小なミラーをマトリクス状に多数有し、これらミラーがオンオフすなわちスイッチングされ、オン時にはレンズ鏡筒7へと光を反射させる(オン光(投射光))とともに、オフ時にはオン時の反射方向と異なる方向である光軸Oの右上方向へと光を反射させる(オフ光(非投射光))。
【0026】
レンズ鏡筒7は、内部に複数のレンズを保持した略円筒状のフォーカス環15と略円筒状のズーム環16とをそれぞれ備え、レンズ鏡筒保持板17を介してフレーム体8に取り付けられている。
【0027】
フォーカス環15は、後部がズーム環16内に挿入されて、光軸Oの周りに回動可能に設けられている。さらに、このフォーカス環15の内部には、図5に示すように、光軸方向後側から前側に亘って、凸レンズL4、両凹レンズL5、凹メニスカスレンズL6、凸レンズL7及び凹メニスカスレンズL8が順次保持されている。そして、このフォーカス環15は、回動させることにより、最前部に位置するレンズがズーム環16に対して光軸Oに沿って前後に移動することで、フォーカス動作がなされる。
【0028】
ズーム環16は、フォーカス環15とは独立に光軸Oの周りに回動可能に設けられ、円筒状の移動鏡筒18の前部を内部に保持している。また、このズーム環16の内部には、光軸方向後側から前側に亘って、両凹レンズL9、凹メニスカスレンズL10、両凸レンズL11及び凸レンズL12が順次保持されている。
【0029】
また、移動鏡筒18は、ズーム環16の回動に連動して光軸方向に沿って前後方向に移動可能に設けられ、この前後方向への移動により、投射像の倍率を変化させてズーム動作するものであり、光軸方向後側から前側に亘って、凹メニスカスレンズL13、凸レンズL14、両凹レンズL15、両凸レンズL16及び両凸レンズL17が順次保持されている。
【0030】
レンズ鏡筒保持板17は、図2に示すように、正面視で略四角形状に形成され、移動鏡筒18が挿通されてフレーム体8内へと突出する円形状の孔部28が中心部に穿設されている。また、このレンズ鏡筒保持板17には、四隅にねじ孔29がそれぞれ穿設され、これらねじ孔29にそれぞれ図示しないねじを挿入して締め付けることで、レンズ鏡筒保持板17がフレーム体8に固定される。
【0031】
また、移動鏡筒18には、図1及び図2などに示すように、レンズ鏡筒7を通過する光の量を調整する絞り装置31と、この絞り装置31を駆動させてこの絞り装置31により規制される光量を変化させる絞り駆動手段32とがそれぞれ設けられている。そして、これら絞り装置31、絞り駆動手段32及びレンズ鏡筒7などにより、投射レンズ装置33が構成されている。
【0032】
絞り装置31は、移動鏡筒18と一体的に移動可能に設けられ、光軸Oに対して右上側に配置されている。すなわち、この絞り装置31は、光軸Oに対して、DMD6からのオフ光の反射方向に配置されている。また、この絞り装置31は、移動鏡筒18の光軸方向前側に位置する絞り体としての絞り板31aと、移動鏡筒18の光軸方向後側に位置する絞り体としての絞り板31bとを備えている。
【0033】
絞り板31a,31bには、移動鏡筒18の中心側すなわち光軸側に向けて円弧状に突出する絞り部35a,35bと、これら絞り部35a,35bの右下部から下方に延設された被支持部36a,36bとを有し、互いに略等しい形状に形成されている。また、絞り板31aは、移動鏡筒18の両凸レンズL17の前部かつズーム環16の両凹レンズL9の後部に配置され、絞り板31bは、移動鏡筒18の凹メニスカスレンズL13の後部に配置されている。さらに、これら絞り板31a,31bは、光軸方向に沿って見た状態で、互いに重なり合うように配置され、各被支持部36aの右部が接続板37により互いに連結されて一体となっている。
【0034】
そして、絞り板31a,31bは、レンズ鏡筒保持板17の孔部28の内側に位置する移動鏡筒18の大径部18aの後方に水平に突設された絞り板支持部38から突設された回動軸38aに被支持部36a,36bの下端部が回動可能に軸支されているとともに、絞り手段付勢体としてのばね39により絞り板31aが光軸方向に沿って前側へと付勢されている。
【0035】
絞り駆動手段32は、モータ41と、このモータ41により駆動される第1伝達手段42及びこの第1伝達手段42に接続され光軸方向に沿って移動鏡筒18と一体的に移動可能に設けられた第2伝達手段43を備えた伝達手段44と、第2伝達手段43に接続する方向へと第1伝達手段42を付勢するとともに、この第1伝達手段42を第2伝達手段43に対して接続する方向及び離れる方向にそれぞれ変位可能に支持する支持手段45とを有している。
【0036】
モータ41は、第1伝達手段42に設けられた保持部46を回動可能に軸支するとともにフレーム体8に固定された取付枠47に固定され、DMD6からの反射光に対するコーンケーブミラーM2の背後であるコーンケーブミラーM2の前側に配置されている。すなわち、モータ41は、光軸Oに対して左下側に配設されている。言い換えると、モータ41は、光軸Oを挟んで絞り装置31と反対側に配設され、オフ光が反射される位置からずれて位置している。
【0037】
ここで、取付枠47は、フレーム体8に固定され左右方向に沿って水平かつ長手状の基板部51と、この基板部51の前後から上方に屈曲され保持部46を前後から挟持する軸支板52,52と、基板部51の左側の一端部から上方に屈曲されモータ41が取り付けられる取付板53とを備えている。さらに、取付板53には、図示しない挿通孔が穿設され、この挿通孔にはモータ41の回転軸55が挿通されている。すなわち、モータ41は、光軸Oに対して平面視で略直交する方向に沿って回転軸55を有している。そして、この回転軸55の先端部には、駆動伝達手段としてのウォームギアWGが一体に設けられている。
【0038】
このウォームギアWGは、軸支板52,52の間に位置し、モータ41の回転軸55と一体的に回転される。
【0039】
第1伝達手段42は、左右方向に長手状の保持部46と、この保持部46にそれぞれ回転自在に保持された閉側伝達部としての回転歯車である閉側伝達ギアG1、回転歯車としての伝達ギアG2、開側伝達部としての回転歯車である開側伝達ギアG3、及び、回転歯車としての伝達ギアG4とをそれぞれ備え、フレーム体8に取り付けられている。
【0040】
保持部46は、図3に示すように、この保持部46の長手方向の中間部となるコ字型枠部61と、このコ字型枠部61から左右方向にそれぞれ延設された板部としての保持腕部62,63とを備え、正面視で略V字状に形成されている。
【0041】
コ字型枠部61は、軸支板52,52にそれぞれ回動可能に支持される回動板65,65と、これら回動板65,65の上部を互いに連結する連結板66とを備え、下側が開口されたコ字状に形成されている。そして、回動板65,65には、光軸方向に沿ってそれぞれ回動孔67,67が穿設されている。
【0042】
保持腕部62,63は、コ字型枠部61の前側の回動板65から左右方向かつ上方に向けて傾斜状にそれぞれ突設されている。そして、保持腕部62の後部には、開側伝達ギアG3と伝達ギアG4とがそれぞれ回動可能に軸支される軸部68,68が光軸方向に沿って後方に略水平に突設され、保持腕部63の後部には、閉側伝達ギアG1と伝達ギアG2とがそれぞれ回動可能に軸支される軸部69,69が光軸方向に沿って略水平に突設されている。そして、閉側伝達ギアG1は、軸部69により保持腕部63の先端部である保持部46の一端部すなわち右端部に位置し、開側伝達ギアG3は、軸部68により保持腕部62の先端部である保持部46の他端部すなわち左端部に位置している。
【0043】
各軸部68,68及び各軸部69,69は、それぞれ互いに離間されている。また、軸部68,68は、これら軸部68,68に軸支された各伝達ギアG3,G4が互いに歯合可能な距離に離間されている。同様に、軸部69,69は、これら軸部69,69に軸支された各伝達ギアG1,G2が互いに歯合可能な距離に離間されている。
【0044】
このため、閉側伝達ギアG1は、図1及び図2に示すように、光軸方向に沿って回転軸を有し、閉側伝達部付勢体としての付勢ばね71により、保持腕部63側、すなわち光軸方向に沿って前側へと付勢されている。同様に、開側伝達ギアG3は、光軸方向に沿って回転軸を有し、開側伝達部付勢体としての付勢ばね72により、保持腕部62側、すなわち光軸方向に沿って前側へと付勢されている。したがって、各伝達ギアG1,G3は、各付勢ばね71,72により回転に対して摩擦力すなわちフリクションが与えられている。
【0045】
さらに、第2伝達手段43は、円環状に形成され、内周部が円滑な円周面となっており、外周部の下側の略半分に伝達手段44の各伝達ギアG1,G3にそれぞれ選択的に歯合可能なギア部75が前後方向に亘って形成されている。
【0046】
そして、第2伝達手段43は、図2及び図4などに示すように、移動鏡筒18の後部が内部に挿通され、この移動鏡筒18の外周面に設けられた第2伝達手段保持部76に保持されている。ここで、第2伝達手段43の内径寸法と、第2伝達手段保持部76の外径寸法とは、第2伝達手段43が第2伝達手段保持部76の周囲に円滑に回転可能となるように設定されている。
【0047】
また、第2伝達手段43は、移動鏡筒18の第2伝達手段保持部76の前側に径大となるように段状に形成された保持段部77により前側が位置決めされ、移動鏡筒18に取り付けられるピン78,79により後側が位置決めされて、移動鏡筒18に対して前後方向にがたつきなく、かつ光軸Oに対して傾斜しないように位置決めされている。この結果、この第2伝達手段43は、光軸方向に沿って回転軸を有し、移動鏡筒18の移動に伴って光軸方向に沿って前後に移動可能に設けられている。
【0048】
さらに、第2伝達手段43の上部の後側には、図1及び図2などに示すように、突起81,82がそれぞれ後方に延びて形成されている。これら突起81,82の間には、ピン78が位置しており、これら突起81,82とピン78とにより、第2伝達手段43の光軸周りの回転方向の回転量が規制されている。すなわち、ピン78は、第2伝達手段43のストッパとしての機能も有している。
【0049】
そして、第2伝達手段43の上側の外周面には、突起81の近傍すなわち右上部に、カム部85が径方向に沿って突設されている。このカム部85には、絞り板31aを案内すなわちガイドするカムピン86が前方に向けて突設され、このカムピン86は、絞り板31aに絞り部35aから被支持部36aに亘って穿設された円弧状のカム溝87に挿入されている。
【0050】
この結果、第2伝達手段43の回動により、カム部85とともにカムピン86が第2伝達手段43の周方向に回動することで、このカムピン86とカム溝87との作用により、カムピン86にガイドされた絞り板31aとこの絞り板31aに一体に連結された絞り板31bとの絞り部35a,35bが、光軸Oに対して接近したり遠ざかったりして絞り装置31が開閉され、移動鏡筒18を通過する光の絞り量が調整される。
【0051】
第2伝達手段43のギア部75は、光軸Oに沿った方向の厚み寸法が、移動鏡筒18の移動距離よりも大きな寸法に設定されている。すなわち、ギア部75は、移動鏡筒18の移動距離よりも長いギア溝を有している。このため、各伝達ギアG1,G3と第2伝達手段43とは、移動鏡筒18の移動範囲全体に亘って互いに歯合可能となっている。
【0052】
支持手段45は、両接続ギアG5と、この両接続ギアG5を保持部46とともに取付枠47に対して回転自在に軸支する支持軸88とを有している。
【0053】
両接続ギアG5は、保持部46のコ字型枠部61の回動板65,65の回動孔67及び取付枠47の軸支板52,52に穿設された図示しない回動孔に挿通された支持軸88により回転自在に軸支され、伝達ギアG2,G4およびウォームギアWGにそれぞれ歯合されている。すなわち、両接続ギアG5は、光軸方向に沿って回動軸を有している。
【0054】
そして、両接続ギアG5は、モータ41の回動によりウォームギアWGを介して回動されるとともに、この回動に伴い伝達ギアG2,G4を回動させることで、各伝達ギアG1,G3をも回動させるものである。言い換えると、両接続ギアG5は、各伝達ギアG1,G3に接続されるとともに、モータ41の駆動力により回動される。したがって、両接続ギアG5と各伝達ギアG1,G3とは、太陽歯車と遊星歯車との関係となっている。
【0055】
すなわち、両接続ギアG5と保持部46とは、支持軸88に対してそれぞれ互いに自由回動するように設けられている。
【0056】
フレーム体8は、例えば金属などの部材で形成され、図8に示すように、カラーホイールユニット4、照明光学系5、DMD6、及びレンズ鏡筒7がそれぞれ取り付けられ、外装筐体内に保持されている。
【0057】
次に、上記一実施の形態の動作を説明する。
【0058】
ランプ2から照射された光線は、カラーホイール3により時分割で赤(R)、緑(G)、青(B)にそれぞれ着色された色光となり、光管11にて照度を均一化された後、レンズユニット12により集光されて反射ミラーM1にてコーンケーブミラーM2へと反射され、このコーンケーブミラーM2で反射された光がDMD6へと入射する。さらに、DMD6に入射した色光は、映像信号処理回路などにて処理した映像信号に応じて反射され、オン光のみがレンズ鏡筒7へと反射され、フォーカス調整及びズーム調整されてスクリーンに投射される。このとき、各色光が視聴者の視覚により残像にて合成されることで、カラーの画像として視覚される。
【0059】
スクリーンに投射された画像のコントラストを調整する際には、外部操作などによりモータ41を回転させると、このモータ41の回転と一体にウォームギアWGが回転し、このウォームギアWGに歯合された両接続ギアG5が回動する。
【0060】
このとき、両接続ギアG5が、図7(a)に示すように、例えば反時計回り方向に回動すると、各付勢ばね71,72から各伝達ギアG1,G3に与えられている保持部46の回転方向に対するフリクションにより、両接続ギアG5の回動が保持部46の支持軸88の周方向への回転力として作用して保持部46も反時計回り方向に回動し、両接続ギアG5の周囲に遊星回転する閉側伝達ギアG1が第2伝達手段43のギア部75に接続される。
【0061】
そして、閉側伝達ギアG1の回動により、第2伝達手段43が時計回り方向に回動すると、図6の想像線に示すように、この第2伝達手段43とともにカムピン86が第2伝達手段43の回動軸を中心として時計回り方向へと回動し、このカムピン86とカム溝87との作用により絞り板31a,31bが絞り板支持部38を中心として下方へと回動して絞り装置31が閉じられ、絞り部35a,35bが移動鏡筒18の中心軸である光軸O側へと突出することにより、移動鏡筒18を通過する光の量が絞られる。
【0062】
一方、両接続ギアG5が、図7(b)に示すように、例えば時計回り方向に回動すると、上記時計回り方向に回動した場合と同様の作用により保持部46も時計回り方向に回動し、両接続ギアG5の周囲に遊星回転する開側伝達ギアG3が第2伝達手段43のギア部75に接続される。
【0063】
そして、開側伝達ギアG3の回動により、第2伝達手段43が反時計回り方向に回動すると、図6の実線に示すように、この第2伝達手段43とともにカムピン86が第2伝達手段43の回動軸である光軸Oを中心として反時計回り方向へと回動し、このカムピン86とカム溝87との作用により絞り板31a,31bが絞り板支持部38を中心として上方へと回動して絞り装置31が開かれ、絞り部35a,35bが移動鏡筒18の径方向に後退することにより、移動鏡筒18を通過する光の量が増加する。
【0064】
また、第2伝達手段43は、最大で突起81,82のいずれか一方にピン78が当接するまで回動する。ここで、突起81,82のいずれか一方がピン78に当接した状態、すなわち回動規制範囲の端部まで第2伝達手段43が回動した状態で、なおモータ41が回転を続ける場合には、第2伝達手段43のギア部75に接続された閉側伝達ギアG1、あるいは開側伝達ギアG3の回転しようとする力が、保持部46を支持軸88の周りに回転させる力として作用し、保持部46は、第2伝達手段43のギア部75に接続された閉側伝達ギアG1、あるいは開側伝達ギアG3が第2伝達手段43のギア部75から離れる方向に跳ね返されて回動する。このため、モータ41の駆動力の第2伝達手段43への伝達が遮断される。
【0065】
さらに、モータ41が回転し続ける間は、保持部46に、開側伝達ギアG1、あるいは閉側伝達ギアG3を第2伝達手段43に接続する方向に回動する力が作用するため、第2伝達手段43のギア部75から一旦離れた閉側伝達ギアG1、あるいは開側伝達ギアG3は、再度第2伝達手段43のギア部75に接続される。
【0066】
すなわち、これら作用の繰り返しにより、第2伝達手段43のギア部75と、各伝達ギアG1,G3とが接離を繰り返し、回動規制範囲の端部まで第2伝達手段43が移動した状態でモータ41が回転を続けても、第2伝達手段43のギア部75と、各伝達ギアG1,G3との間に無理な力が加わることが防止される。
【0067】
さらに、DMD6からのオフ光は、光軸Oの右上方向へと反射され、絞り装置31の絞り板31a,31bの絞り部35a,35bにより遮光されてレンズ鏡筒7への入射が防止される。
【0068】
上述したように、上記一実施の形態によれば、光軸方向に絞り板31a,31bを設けることで、絞り板31aにより遮光されなかった迷光は、絞り板31bにより遮光されるので、投射像に迷光が混入することを防止し、投射像のコントラストを向上できるとともに、絞り板31a,31bをそれぞれ略等しい形状として光軸方向に重なるように配置することで、絞り板31aを通過する投射光は、絞り板31bに遮光されないので、投射光が必要以上に遮光されて投射像が暗くなることを防止できる。
【0069】
また、絞り板31a,31bに、光軸側に向けて突出した円弧状の絞り部35a,35bを設けることで、これら絞り部35a,35bによりDMD6のオフ光による迷光を効果的に遮光し、コントラストを向上できる。
【0070】
さらに、光軸Oに対してDMD6のオフ光が反射される側に絞り板31a,31bをそれぞれ配設することで、オフ光が反射される側に多く通過する迷光を絞り板31a,31bにて確実に遮光でき、コントラストをより向上できる。
【0071】
このようにして、DMD6などの反射型表示素子を用いたプロジェクタ装置の画質を向上できる。
【0072】
また、上記一実施の形態では、第1伝達手段42を第2伝達手段43に接続する方向に付勢するとともに、第2伝達手段43に対して接続する方向及び離れる方向に変位可能に第1伝達手段42を支持手段45にて支持する構成とした。
【0073】
この結果、レンズ鏡筒7とフレーム体8との取り付け位置、具体的には第2伝達手段43と各伝達ギアG1,G3との高さ方向の取り付け位置、及び、モータ41と本フレーム体8との取り付け位置などが正規位置に対してずれた場合などでも、第1伝達手段42が回動することによりこのずれを吸収して第2伝達手段43と各伝達ギアG1,G3とが確実に接続され、モータ41の駆動力が絞り装置31へと確実に伝達されるので、絞り装置31を精度良く駆動できる。
【0074】
さらに、保持部46の長手方向の中間部を回動可能に軸支し、絞り装置31が閉じる方向に駆動する際に保持部46の回動によって閉側伝達ギアG1が第2伝達手段43に接続され、絞り装置31が開く方向に駆動する際に保持部46の回動によって開側伝達ギアG3が第2伝達手段43に接続されるので、第1伝達手段42を第2伝達手段43に対して比較的簡単な構成で変位させることができる。
【0075】
そして、閉側伝達ギアG1、開側伝達ギアG3、及び、第2伝達手段43を、それぞれ回転歯車で構成することで、モータ41の駆動力を絞り装置31に確実に伝達できる。
【0076】
また、モータ41の駆動力により回転する両接続ギアG5を各伝達ギアG1,G3にそれぞれ接続することで、モータ41の回転方向に対応して保持部46が回動して、閉側伝達ギアG1と開側伝達ギアG3とが選択的に第2伝達手段43に接続されるので、モータ41の回転力を保持部46の回動に利用し、保持部46を回動させる付勢手段などを別途設ける必要がなくなるので、構成を簡略化できる。
【0077】
さらに、第2伝達手段43と各伝達ギアG1、G3とを、光軸方向に沿ってそれぞれ回転軸を有するように設け、かつ、第2伝達手段43のギア部75のギア溝を移動鏡筒18の移動距離よりも長くすることで、移動鏡筒18の移動に伴って第2伝達手段43が光軸方向に沿って移動しても、第2伝達手段43と各伝達ギアG1,G3とを確実に歯合できる。
【0078】
そして、第2伝達手段43の回動が規制された状態で、この第2伝達手段43のギア部75に接続された閉側伝達ギアG1、あるいは開側伝達ギアG3が回動しようとしても、これら閉側伝達ギアG1、あるいは開側伝達ギアG3の回転しようとする力が、保持部46に対して、第2伝達手段43のギア部75に接続された閉側伝達ギアG1、あるいは開側伝達ギアG3が第2伝達手段43のギア部75から離れる方向に回動する力として作用して逃げることとなり、モータ41の駆動力の第2伝達手段43への伝達が遮断され、閉側伝達ギアG1、あるいは開側伝達ギアG3と第2伝達手段43との間に無理な力が加わることを防止できる。
【0079】
また、プロジェクタ装置1が投射レンズ装置33を備えることで、投射像を暗くすることなくコントラストを向上でき、使い勝手及び信頼性を向上できるとともに、モータ41の駆動力が絞り装置31へと確実に伝達され、絞り装置31を精度良く駆動できるため、投射像のコントラストを精度良く変化させることができ、プロジェクタ装置1の画質を向上できる。
【0080】
さらに、光軸Oに対してオフ時にDMD6により光が反射される側と反対側にモータ41を設けることで、オフ時にDMD6により反射された光によりモータ41が加熱されることを防止できる。
【0081】
しかも、モータ41は、コーンケーブミラーM2の背後に配設されているため、DMD6からのオン光もモータ41に照射されることがなく、オン光によりモータ41が加熱されることをも防止できる。
【0082】
また、モータ41、第1伝達手段42及び保持部46を、取付枠47を介してフレーム体8に取り付けることで、これらモータ41、第1伝達手段42及び保持部46をユニット化して組み付けできるので、製造性を向上できる。
【0083】
さらに、モータ41をフレーム体8側に取り付けることで、モータをレンズ鏡筒側に取り付ける場合と比較して、モータ41の荷重によりレンズ鏡筒7の光軸Oがずれたり、ズーム環16によるズーム機能の作動性が低下したりすることをも防止できる。
【0084】
そして、保持部46を回動板65,65の2箇所で軸支することにより、保持部46を安定して支持できる。
【0085】
また、ウォームギアWGを用いることで、第1伝達手段42の重量などでウォームギアWGが逆回転することがなく第1伝達手段42の回動状態が保持されるので、絞り装置31が不意に作動してコントラストが変化したりすることを防止できる。
【0086】
なお、上記一実施の形態において、絞り装置31の絞り板は、2枚に限定されず、3枚以上設けることも可能である。
【0087】
また、各絞り板31a,31bをそれぞれ独立に駆動できるようにし、光路への進入量を絞り板毎に調整可能とする構成も可能である。
【0088】
さらに、各伝達手段42,43は、それぞれ回転歯車に代えてローラなどとする構成も可能である。
【0089】
そして、第2伝達手段43のギア部75のギア溝の長さを移動鏡筒18の移動距離より長く設定することに代えて、第1伝達手段42の各伝達ギアG1,G3のギア溝の長さを移動鏡筒18の移動距離よりも長く設定するようにしてもよく、あるいは、第2伝達手段43のギア部75と第1伝達手段42の各伝達ギアG1,G3の両方のギア溝の長さを移動鏡筒18の移動距離よりも長く設定してもよい。
【0090】
また、プロジェクタ装置1は、上記構成に限定されるものではなく、例えば透過型のプロジェクタ装置、あるいは光変調をしないプロジェクタ装置などとすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施の形態の投射レンズ装置の一部を示す斜視図である。
【図2】同上投射レンズ装置を示す斜視図である。
【図3】同上投射レンズ装置を示す分解斜視図である。
【図4】同上投射レンズ装置の保持部を示す斜視図である。
【図5】(a)は同上投射レンズ装置の広角状態を示す縦断面図、(b)は同上投射レンズ装置の望遠状態を示す縦断面図である。
【図6】同上投射レンズ装置の絞り手段を示す正面図である。
【図7】(a)は同上投射レンズ装置の絞り手段の閉状態を示す斜視図、(b)は同上絞り手段の開状態を示す斜視図である。
【図8】同上投射レンズ装置を備えたプロジェクタ装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 プロジェクタ装置
2 光源としてのランプ
6 光変調手段としてのDMD
7 投射光学系としてのレンズ鏡筒
31 絞り装置
31a,31b 絞り体としての絞り板
32 絞り駆動手段
33 投射レンズ装置
O 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を投射するプロジェクタ装置の投射レンズ装置であって、
投射光学系と、
光軸方向に沿って複数の絞り体を備え、前記投射光学系を通過する光の量を調整する絞り装置と、
この絞り装置により規制される光量を変化させる絞り駆動手段とを具備し、
前記絞り装置は、
光軸方向前側に位置する一の絞り体を通過する投射光を、この絞り体よりも光軸方向後側に位置する他の絞り体が遮光しないように配設されている
ことを特徴とする投射レンズ装置。
【請求項2】
絞り体は、光軸側に向けて突出した円弧状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の投射レンズ装置。
【請求項3】
光源と、
この光源からの光を変調する光変調手段と、
この光変調手段で変調された光をスクリーンに投射する請求項1または2記載の投射レンズ装置と
を具備したことを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項4】
光変調手段は、光源からの光を、オン時には投射レンズ装置へと反射し、オフ時には前記オン時と異なる方向に反射する反射型素子であり、
絞り装置は、光軸に対して前記オフ時に光が反射される側に配設されている
ことを特徴とする請求項3記載のプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−11313(P2006−11313A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192073(P2004−192073)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(397077298)チノンテック株式会社 (64)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】