説明

投射型表示装置

【課題】投射領域に映す画像を回転可能とする投射型表示装置を提供する。
【解決手段】
光を射出する照明光学系10と、照明光学系10から射出された光を用いて画像光を形
成する液晶ライトバルブ20a〜20cと、自身が画像光の光軸周りに回転することで、
液晶ライトバルブ20a〜20cの各々で形成された画像を、該光軸周りに回転させる画
像回転光学素子50と、画像回転光学素子50で回転された画像を被投射面に投射する投
射光学系60と、を備えることを特徴とする投射型表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、展示会や学会、会議等のプレゼンテーションに、あるいはホームシアター等にプ
ロジェクタ(投射型表示装置)がよく用いられている。プロジェクタは、光源や光源から
射出される光を用いて表示画像を示す画像光を形成する画像形成装置(例えば液晶ライト
バルブ)、画像光を投射する投射レンズ等を備えており、観察者は、スクリーン等に投射
された画像を視認している(例えば、特許文献1参照)。プロジェクタを用いると、ディ
スプレイなどの直視型表示装置よりも大画面表示が容易であるため、より多人数に対して
同じ画像を見せることが可能であり利便性が高い。
【特許文献1】特開2001−154268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常のプロジェクタは、テレビやPCの画面に換えて大画面表示を行うことを目的とし
て使用されており、そのため、テレビやPCの表示画面と同様の横長形状の投射領域に画
像を表示可能となっている。しかしながら、プレゼンテーションの場面では、表示したい
書類や画像は横長の画像とは限らない。特に、文書形式の資料を表示する場合には、資料
の形状は縦長である場合が多い。また、写真などの画像であっても縦長のものを表示する
場面が想定される。
【0004】
現状では、通常知られたプロジェクタを用いて、図7(a)に示すような縦長の文書P
を表示する場合、横長の投射領域に映す画像Gの中央部のみを用いて文書Pの表示を行う
か(図7(b))、或いは、横長の投射領域に映す画像Gの全体を用いて表示したい縦長
の文書Pの一部(例えば上半分)のみを映し、都度、投射領域の画像をスクロールさせ、
分割して全体を表示させるか(図7(c))、のいずれかを選択して使用している。
【0005】
しかし、前者の表示方法を用いると、画面の左右端部が非表示(例えば黒表示)の領域
NAとなり、投射領域全域を有効に使用することができず、結果として表示される文書P
の像が小さくなってしまう。また、後者の表示方法を用いると、投射領域全域を使い切る
ことは可能であるが、一度に文書全体を表示することが出来ない。したがって、いずれの
表示方法を用いても使用感が悪いという課題が生じることとなる。
【0006】
上記課題を解決するためには、プロジェクタが投射する投射領域自体を縦長のものとし
、縦長の文書Pを表示させる必要がある。現在知られているプロジェクタにおいて、この
ような表示を行うためには、プロジェクタ本体自体を90°傾けて用い、横長の投射領域
を縦長にすることが考えられる。しかしながら、このように本体を傾けて投射領域を傾け
ることとすると、傾き変更のための労力が大きく、更に大きな筐体の装置では配置変更に
用いるスペースが広く必要であり、使用感が非常に悪い。
【0007】
更に、通常プロジェクタの光源には、アーク放電により発光し大きな光量が得られるキ
セノンランプ等のランプ光源を用いることが多く、このようなランプ光源では、使用時に
光源が有する対となる電極同士が水平方向に配置されるように設計されている。しかし、
プロジェクタ本体を90°回転させると、ランプ光源の電極の軸方向が垂直方向に立って
しまう場合が生じる。すると、アーク放電して発光する電極に重力が加わって電極間の距
離に変化が生じやすくなり、ランプ寿命が短くなる原因となる。
【0008】
これらのことから、現在のプロジェクタでは、本体を傾けて縦長画面を表示する方法を
採用することができず、投射領域の形状が限定されている。そのため、プロジェクタの配
置姿勢や使用用途を限定することになってしまう。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、投射領域に映す画像を回転可
能とする投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の投射型表示装置は、光を射出する照明光学系と、
前記光を用いて画像光を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置で形成された画像を
、前記画像光の光軸周りに回転させる画像回転光学素子と、前記画像回転光学素子で回転
された画像を被投射面に投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、画像回転光学素子が画像光を回転させるために、例えば従来は横長
の投射領域であったものを回転させて縦長に変更することができる。そのため、装置本体
を傾斜させることなく、必要に応じて投射領域の傾きを変えることができ、良好に画像表
示を行うことができる。
【0011】
ここで、本発明において「投射領域」とは、投射型表示装置が画像を映し出すために光
を投射する領域の全域を指す。また、「画像」とは、画像形成装置で形成され投射領域に
表示される像を指す。すなわち、使用者の所望の表示内容(コンテンツ)を含み、投射さ
れ映し出される像全体を画像と呼ぶ。
【0012】
本発明においては、前記画像回転光学素子は、自身に重なる前記光軸周りに自らが回転
することにより、自身の回転角度に基づいて当該光軸と同方向に設定された回転軸周りに
前記画像を回転させ、前記画像回転光学素子を前記回転軸周りに回転させる回転機構が設
けられていることが望ましい。
この構成によれば、回転機構を用いることで、例えば手動で画像回転光学素子の回転角
度を調整するよりも、正確に画像回転光学素子を所望の回転角度を制御することができる
。回転機構としては、例えばステッピングモータなどのような通常知られた構成を使用す
ることができる。
【0013】
本発明においては、前記画像は、所望の表示内容を示す像を、前記画像の回転方向とは
反対方向に回転させて得られる像であり、前記画像形成装置には、前記表示内容のデータ
を供給するデータ供給手段と、前記表示内容のデータを前記画像の画像データに変換する
データ変換手段と、が接続されることが望ましい。
ここで、「所望の表示内容」とは、すなわち、上述した「使用者の所望の表示内容(コ
ンテンツ)」のことであり、「表示内容を示す像」とは、例えば、作成した文書や写真な
ど、使用者が投射表示させたい内容を示す像のことを指す。この構成によれば、投射領域
の形状に応じて表示内容を示す像を適切な傾きの画像に変換し表示することができる。
【0014】
本発明においては、前記画像回転光学素子の回転角度を制御する光学素子制御手段と、
前記光学素子制御手段に前記画像回転光学素子が回転すべき角度を入力する第1の入力手
段と、を有していることが望ましい。
この構成によれば、画像回転光学素子の回転角度として所望の角度を入力し、入力した
角度に基づいて画像回転光学素子を制御することで、確実な装置の駆動を行うことができ
る。
【0015】
本発明においては、前記表示内容を示す像から前記画像への回転角度に基づいて、前記
データ変換手段が変換すべき角度を入力する第2の入力手段を有していることが望ましい

この構成によれば、入力した角度に基づいてデータ変換を行うことで、確実な装置の駆
動を行うことができる。
【0016】
本発明においては、前記第1の入力手段と前記第2の入力手段とが共通していることが
望ましい。
この構成によれば、入力手段が共通化するために装置構成を簡略化することができ、両
方の装置を連動させて操作可能であるため、利便性が高くなる。
【0017】
本発明においては、前記データ変換手段は、前記光軸と同方向に設定された回転軸周り
を回転する前記画像回転光学素子の回転角度に基づいて、前記表示内容のデータを変換す
ることが望ましい。
【0018】
または、前記回転機構は、前記データ変換手段における前記表示内容を示す像の回転角
度に基づいて、前記光軸と同方向に設定された回転軸周りに前記画像回転光学素子を回転
させることとしても良い。
【0019】
これらの構成によれば、画像回転光学素子の回転角度制御と画像の回転角度制御との両
方を連動させて操作可能であるため、利便性が高くなり良好な使用感が得られる。
【0020】
本発明においては、前記画像形成装置と画像回転光学素子との間の光路上に、前記画像
形成装置で形成された画像を前記画像回転光学素子に伝達するリレー光学系を有すること
が好ましい。
この構成によれば、画像の劣化を抑えた良好な画像を回転させて投射する画像とするこ
とができるため、高画質な画像を表示することが出来る。
【0021】
本発明においては、前記画像形成装置が、透過型液晶ライトバルブ、反射型液晶ライト
バルブ、微小ミラーアレイ素子のいずれかを採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1〜図6を参照しながら、本実施形態に係る投射型表示装置について説明する
。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸
法の比率などは適宜異ならせてある。
【0023】
図1に、本実施形態の投射型表示装置を使用する様子を示す概略構成図である。図に示
すように、本発明の投射型表示装置(プロジェクタ)1は、情報端末2と通信ケーブル3
により接続されており、情報端末2に表示される画像を投射して、投射領域に画像G1,
G2に表示する。
【0024】
図1(a)に示すように、情報端末2で表示する像P1が横長の形状である場合、プロ
ジェクタ1は横長の形状の投射領域に映す画像G1に像P1を表示する。また、図1(b
)に示すように、情報端末2で表示する像P2が縦長の形状である場合、プロジェクタ1
は縦長の形状の投射領域に映す画像G2に像P2の表示を行う。これら、画像G1,G2
の形状は、使用者によって適宜選択および切り替えが可能であり、例えば、プレゼンテー
ションの場面において、表示する画像の形状に対応させて切り替えることで、良好な表示
を行うことができる。
【0025】
図2は、本実施形態のプロジェクタ1の概略構成を示す模式図である。プロジェクタ1
は、本発明を3板式の液晶ライトバルブ型プロジェクタに適用した例である。図2に示す
ように、プロジェクタ1は、照明光学系10と、液晶ライトバルブ(画像形成装置)20
a〜20cと、クロスダイクロイックプリズム30と、リレー光学系40と、像回転プリ
ズム(画像回転光学素子)50と、および投射レンズ(投射光学系)60と、を備えてい
る。
【0026】
本実施形態の照明光学系10は、光源11、光源11の後段に順に配置されたフライア
イレンズアレイ12、偏光変換素子13、ダイクロイックミラー14a、14b等から構
成されている。光源11は、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の白色ランプ11
aと、白色ランプ11aの光を反射させて前方に射出するリフレクタ11bとから構成さ
れている。
【0027】
フライアイレンズアレイ12は、光源11から射出された光の光強度の分布を均一化す
るものである。これにより、被照明領域である液晶ライトバルブ20a〜20cにおいて
照度分布が均一化される。
【0028】
偏光変換素子13は、その詳細な構造を図示しないものの、偏光ビームスプリッタアレ
イ(PBSアレイ)及び1/2波長板アレイを有している。フライアイレンズアレイ12
からPBSアレイに入射した光のうち、所定の偏光方向の偏光がPBSアレイ内の偏光分
離膜(PBS膜)を透過するとともに、それ以外の偏光方向の偏光がPBSアレイ内のP
BS膜で反射する。反射した偏光は、1/2波長板アレイによって偏光方向が前記所定の
偏光方向に変化して射出される。このように偏光変換素子13は、光源光の光量を損なう
ことなく光源光の偏光方向を一方向に揃えるようになっている。
【0029】
ダイクロイックミラー14a、14bは、例えばガラス表面に誘電体多層膜を積層した
ものである。これにより、所定の波長帯域の色光が選択的に反射し、それ以外の波長帯域
の色光が透過するようになっている。例えば、光源11から射出された光源光のうち、赤
色光Laがダイクロイックミラー14aで反射するとともに、緑色光Lb及び青色光Lc
がダイクロイックミラー14aを透過する。また、ダイクロイックミラー14aを透過し
た緑色光Lb及び青色光Lcのうち、青色光Lcがダイクロイックミラー14bを透過し
、緑色光Lbがダイクロイックミラー14bで反射する。
【0030】
ダイクロイックミラー14aで反射した赤色光Laは、反射ミラー15aで反射し平行
化レンズ18aを経て赤色光用の液晶ライトバルブ20aに入射する。ダイクロイックミ
ラー14aを透過した緑色光Lbは、平行化レンズ18bを経て緑色光用の液晶ライトバ
ルブ20bに入射する。ダイクロイックミラー14bを透過した青色光Lcは、リレー光
学系17を経て青色光用の液晶ライトバルブ20cに入射する。リレー光学系17は、ダ
イクロイックミラー14b側から順に配置されたリレーレンズ16a、反射ミラー15b
、リレーレンズ16b、反射ミラー15c、リレーレンズ16c等からなっている。リレ
ーレンズ16cは、平行化レンズとしても機能する。
【0031】
液晶ライトバルブ20a〜20cの各々は、透過型液晶セル22と、その射出側に設け
られた偏光板23とから構成されている。透過型液晶セル22は、例えばアクティブマト
リクス型のものであり一対の電極間に挟持された液晶層を有している。
【0032】
液晶ライトバルブ20a〜20cの各々は、通常のテレビ画面と同様に横長(例えば横
縦比4:3や16:9の画面)の画像に対応した横長の形状を有している。また、液晶ラ
イトバルブ20a〜20cは、画像データを供給するデータ供給手段(図示略)に接続さ
れている。データ供給手段から画像データが供給されると、画像データに基づいて前記電
極間に電圧が印加され、この印加電圧に応じて液晶分子の方位角が制御される。これによ
り、光を変調することが可能になっている。各液晶ライトバルブ20a〜20cで変調さ
れた赤色光La、緑色光Lb、青色光Lcは、クロスダイクロイックプリズム30に入射
するようになっている。
【0033】
クロスダイクロイックプリズム30は、三角柱プリズムが貼り合わされた構造となって
おり、その内面に赤色光Laが反射し緑色光Lbが透過するミラー面と、青色光Lcが反
射し緑色光Lbが透過するミラー面とが互いに直交して形成されている。赤色光La、緑
色光Lb、青色光Lcは、これらのミラー面で選択的に反射あるいは透過して同じ側に射
出される。これにより、3つの色光が重ね合わされて合成光(画像光)Lとなる。
【0034】
クロスダイクロイックプリズム30から射出される合成光Lは、リレーレンズ42、反
射ミラー44、リレーレンズ46で構成されるリレー光学系40を透過し、像回転プリズ
ム50へ入射する。
【0035】
像回転プリズム50は、図3に示すように5回(奇数回数)の内部反射を行うプリズム
である。像回転プリズム50の入射する面50aから内部に入射する光は、図3に示す角
度で内部反射を繰り返し、射出する面50bから射出される。入射光(画像光)L1の光
軸と射出光(回転画像光)L2の光軸とは、同一直線上に配置されている。
【0036】
像回転プリズム50は、入射光L1と射出光L2の光軸は同軸であり、回転軸と一致する
よう設定されている。像回転プリズム50は、回転軸周りに角度θ回転させると入射光L
1の画像が射出光L2では画像が角度2θ回転する機能を有している。
【0037】
図2へ戻って、像回転プリズム50を透過した合成光Lは投射レンズ60に入射し、投
射レンズ60によって拡大投射されるようになっている。前述のリレー光学系40は、合
成光Lが像回転プリズム50と投射レンズ60との間の位置で結像するように設計されて
おり、投射レンズ60は良好な画像表示を行うことができる。
本実施形態のプロジェクタ1は、以上のような構成となっている。
【0038】
図4は、プロジェクタ1および情報端末2を用いた画像表示の一例を示す説明図であり
、図4(a)はブロック図、図4(b)は各構成の機能によって傾きが変化する画像の様
子を示す概略図である。ここでは、図1(b)で示すような、縦長の画像を表示する様子
について説明する。
【0039】
図に示すように、プロジェクタ1は、縦長の投射領域に画像表示を行わせるべく指示を
入力する入力手段110と、入力手段110からの指示を受け、像回転プリズムを所定の
角度回転させるための制御信号を供給するプリズム回転制御手段(光学素子制御手段)1
52と、該制御信号に基づいて、プリズム50を所定の角度回転させるプリズム回転機構
(回転機構)154と、を有している。
【0040】
また、情報端末2は、表示内容を示す画像データD1を供給するデータ供給手段222
と、画像データD1を用い、表示内容を示す像を所定の角度だけ回転させた像の画像デー
タである画像データD2を作成する画像回転手段(データ変換手段)224と、画像回転
手段224に回転処理を行わせるための指示を入力する入力手段210と、を有している

【0041】
プロジェクタ1が、縦長の画像を表示可能とするために、使用者は、入力手段110を
用いて、横長の投射領域を右周りに90°回転させる指示を入力する。入力指示を受けた
プリズム回転制御手段152は、像回転プリズム50を右周りに45°回転させるための
制御信号をプリズム回転機構154に送信する。即ち、投射領域の回転角度を+θとする
と、像回転プリズム50を回転させる角度は+θ/2である。
【0042】
プリズム回転機構154は、例えばステッピングモータなど、像回転プリズム50を所
定の回転軸周りに回転させる機構を有しており、プリズム回転機構154からの制御信号
に従って、像回転プリズム50を右回りに45°回転させる。
【0043】
一方で、使用者は、情報端末2の入力手段210を用いて、表示内容を示す像を、左方
向に90°回転させる指示を入力する。即ち、データ供給手段222から供給される画像
データD1は、入力手段210からの指示を受けた画像回転手段224において変換され
、画像データD1は、表示内容を示す像が左方向に90°回転した横長の画像IM1を示
す画像データD2に変換される。即ち、投射領域の回転角度を+θとすると、画像データ
D1から画像データD2への回転角度は−θである。
【0044】
プロジェクタ1の液晶ライトバルブ20a〜20cの各々は、画像データD2を用いて
画像IM1を示す合成光L1を形成し、合成光L1は像回転プリズム50を透過すること
により、右方向に90°回転された合成光L2となる。このように形成された合成光L2
により、縦長の回転画像IM2が得られる。
【0045】
このようにして得られた回転画像IM2を被投射面に投射することで、投射される画像
と、表示内容とが同方向に回転した画像が得られ、投射領域全域を良好に使用した表示が
可能となる。
【0046】
得られる縦長の回転画像IM2が、元となる表示内容を示す像の鏡像である場合には、
画像回転手段224において回転処理を行う前に画像データの左右を反転する処理を行う
か、または、回転処理ではなく画像データの行列を入れ替える変換処理を行う。或いは、
像回転プリズム50の反射面のうち、1つの面がダハ面であるものを用いることとしても
良い。
【0047】
以上のような構成のプロジェクタ1によれば、像回転プリズム50により投射領域及び
投射領域に映す像を回転させると共に、基礎画像の画像データを予め回転させておくこと
により、縦長形状の投射領域に対して縦長形状の回転画像を表示させることができる。そ
のため、プロジェクタ本体を傾けることなく投射領域を傾けることができ、投射領域の全
域を有効に利用して良好に画像表示を行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、プロジェクタ1は3板式の液晶ライトバルブ型プロジェ
クタであることとしたが、他の方式のプロジェクタであっても構わない。例えば、本発明
は3板式に限らず単板式のプロジェクタにも適用可能である。また、透過型の液晶ライト
バルブの代わりに反射型の液晶ライトバルブを用いることもでき、更にはDMD(微小ミ
ラーアレイ素子)などの他の画像形成装置を用いることも可能である。
【0049】
また、本実施形態においては、プロジェクタ1の外部に接続した情報端末2から画像デ
ータを供給することとしたが、データ供給手段や画像回転手段をプロジェクタ1が備える
構成としても良い。これらの手段をプロジェクタ1が有している場合、例えば表示させた
いデータを記録した記録媒体からデータを読み出す読み出し装置を更に備えると、プロジ
ェクタ1の外部に他の機器を接続することなく、表示を行うことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態においては、投射領域を右周りに回転させるとともに、画像データを
左周りに回転させる構成を示したが、投射領域の回転方向と画像データの回転方向が逆方
向であれば、投射領域を左回りに回転させ、画像データを右回りに回転させる構成として
も構わない。
【0051】
また、本実施形態においては、入力手段110を用いて入力した指示に基づいた制御信
号により、プリズム回転機構154が像回転プリズム50を動かすという構成としたが、
これに限らない。例えば、像回転プリズム50を筒状の筐体内に収容してプロジェクタ1
に設置し、使用者がプリズムを収容した筒状筐体を手動操作により直接回転させることに
より回転角度を変更させることとしても良い。このような構成の場合には、例えば、縦横
切り替えのみに特化した回転角度として0°と45°の2値で筒状筐体の回転が止まるよ
うなストッパを設けておくと、設定角度であれば手動操作であっても正確に回転させるこ
とができる。
【0052】
また、本実施形態においては、像回転プリズム50として図3に示すようなものを用い
たが、これに限らない。
【0053】
図5は、プロジェクタ1に用いられる像回転プリズムの形状の異なる例を示す。図5(
a)に示す像回転プリズム52は、像回転プリズム50と同様に5回の内部反射を行い、
図5(b)に示す像回転プリズム54は、3回の内部反射を行う構成となっている。いず
れも、像回転プリズム52,54の入射する面52a,54aから内部に入射する光は、
図に示す角度で内部反射を繰り返し、射出する面52b,54bから射出される。
【0054】
このような像回転プリズム52,54であっても、入射光L1の光軸と射出光L2の光
軸との同一直線上に設定された回転軸周りを回転させることで、合成光が形成する光学像
を入射光L1の光軸を中心として任意の角度だけ回転させることができる。この他にも、
ダブプリズムのような像回転プリズムを用いることもできる。
【0055】
また、本実施形態においては、プロジェクタ1および情報端末2の両方に対して、各々
が備える入力手段から縦長の画像を表示する操作を行うこととしたが、一方に入力した操
作を他方に反映させる構成とすることもできる。
【0056】
図6は、プロジェクタ1および情報端末2を用いた画像表示処理の変形例を示すブロッ
ク図であり、図4(a)に対応する図である。
【0057】
図6(a)に示すように、情報端末2の入力手段210に入力した指示が、プロジェク
タ1のプリズム回転制御手段152にも入力され、上述の制御を行うことで像回転プリズ
ム50を回転させる事としても良い。
【0058】
また、図6(b)に示すように、プロジェクタ1の入力手段110に入力した指示が、
情報端末2の画像回転手段224にも入力され、上述の制御を行うことで画像データを傾
ける処理を行わせることとしても構わない。
【0059】
このような構成の場合、プロジェクタ1および情報端末2の両方の装置を連動させて操
作可能であるため、利便性が高くなる。これらの構成では、各入力手段から直接プリズム
回転制御手段152や画像回転手段224に指示が入力されることとしても良く、また、
入力手段から入力する信号を別の制御信号に置き換えて、該制御信号を各手段に入力する
こととしても構わない。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、
本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成
部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において
設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態のプロジェクタを使用する様子を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態のプロジェクタの概略構成を示す模式図である。
【図3】本発明のプロジェクタに用いられる像回転プリズムを示す説明図である
【図4】本発明のプロジェクタを用いた画像表示を示す説明図である。
【図5】本発明のプロジェクタに用いられる像回転プリズムの変形例を示す図である。
【図6】プロジェクタおよび情報端末を用いた画像表示の変形例を示す説明図である。
【図7】従来のプロジェクタを用いた表示の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1…プロジェクタ(投射型表示装置)、2…情報端末、10…照明光学系、20a,2
0b,20c…液晶ライトバルブ(画像形成装置)、40…リレー光学系、50,52,
54…像回転プリズム(画像回転光学素子)、60…投射レンズ(投射光学系)、110
,210…入力手段、152…プリズム回転制御手段(光学素子制御手段)、154…プ
リズム回転機構(回転機構)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する照明光学系と、
前記光を用いて画像光を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置で形成された画像を、前記画像光の光軸周りに回転させる画像回転光
学素子と、
前記画像回転光学素子で回転された画像を被投射面に投射する投射光学系と、を備える
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記画像回転光学素子は、自身に重なる前記光軸周りに自らが回転することにより、自
身の回転角度に基づいて当該光軸と同方向に設定された回転軸周りに前記画像を回転させ

前記画像回転光学素子を前記回転軸周りに回転させる回転機構が設けられていることを
特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記画像は、所望の表示内容を示す像を、前記画像の回転方向とは反対方向に回転させ
て得られる像であり、
前記画像形成装置には、前記表示内容を示す像のデータを供給するデータ供給手段と、
前記表示内容を示す像のデータを前記画像形成装置で形成される前記画像のデータに変
換するデータ変換手段と、が接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の投射
型表示装置。
【請求項4】
前記画像回転光学素子の回転角度を制御する光学素子制御手段と、
前記光学素子制御手段に前記画像回転光学素子が回転すべき角度を入力する第1の入力
手段と、を有していることを特徴とする請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記表示内容を示す像から前記画像への回転角度に基づいて、前記データ変換手段が変
換すべき角度を入力する第2の入力手段を有していることを特徴とする請求項3または4
に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記第1の入力手段と前記第2の入力手段とが共通していることを特徴とする請求項5
に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記データ変換手段は、前記光軸と同方向に設定された回転軸周りを回転する前記画像
回転光学素子の回転角度に基づいて、前記表示内容を示す像のデータを変換することを特
徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記回転機構は、前記データ変換手段における前記表示内容を示す像の回転角度に基づ
いて、前記光軸と同方向に設定された回転軸周りに前記画像回転光学素子を回転させるこ
とを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記画像形成装置と画像回転光学素子との間の光路上に、前記画像形成装置で形成され
た画像を前記画像回転光学素子に伝達するリレー光学系を有することを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記画像形成装置が、透過型液晶ライトバルブ、反射型液晶ライトバルブ、微小ミラー
アレイ素子のいずれかで構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項
に記載の投射型表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−122485(P2010−122485A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296379(P2008−296379)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(505433471)武蔵オプティカルシステム株式会社 (4)
【Fターム(参考)】