説明

抗アポトーシスタンパク質阻害剤

チアゾリジン環を含む各種の化合物、および少なくとも1つのBCL-2タンパク質ファミリーメンバーを阻害するためのそのような化合物の使用について記載する。記載する化合物のうちの1つは構造Aを有し、式中、R1およびR2の各々は、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基を含み; Xは、酸素、硫黄、またはイミノ基を含み; Zは、特にナフタレンまたはデヒドロナフタレンなどの部分を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
発明の分野
本発明は一般に、種々の障害、疾患、および病態の処置に使用する化合物、より具体的には、そのような障害を処置するための、チアゾリジン部分を含む化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
細胞中のアポトーシスカスケードは細胞死を導くことが知られている。BCL-2ファミリータンパク質などの抗アポトーシスタンパク質を細胞が過剰産生する場合、制御できない細胞成長が結果的に生じ、各種の重篤な疾患、障害、および病理、特に癌の発生を潜在的に導くことがある。
【0003】
したがって、BCL-2ファミリータンパク質などの抗アポトーシスタンパク質を阻害する必要性が存在する。各種の潜在的BCL-2アンタゴニストが既に同定されている。しかし、これらの化合物には、BCL-2ファミリーの6つのタンパク質すべて、すなわち、以下のタンパク質のすべてを阻害するものはない: BCL-XL、BCL-2、BCL-W、BCL-B、BFL-1、およびMCL-1。例えば、既に同定された合成BCL-2アンタゴニストのいずれも、タンパク質BFL-1の阻害に有効ではなかった。したがって、そのようなアンタゴニストの効率は所望の効率ほど高くはない。さらに、既存のアンタゴニストは、不十分さまたは安全上の問題といった他の欠点により特徴づけられている。
【0004】
既存のBCL-2阻害剤の上記の欠点および欠陥に鑑み、BCL-2ファミリータンパク質などの抗アポトーシスタンパク質の新規アンタゴニストが望まれている。そのような新規アンタゴニストは既存の化合物より安全かつ有効であることが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
概要
本発明の一態様によれば、構造Aを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物が提供される。

【0006】
構造Aを有する化合物において、R1およびR2の各々は、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基であり得るものであり; Xは、酸素、硫黄、またはイミノ基であり得るものであり; Zは、構造I、II、およびIIIのいずれかを有し得る部分である。

【0007】
部分I、II、およびIIIの各々において、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々は、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基であり得る。部分I、II、およびIIIの各々において、記号*は、C(=)-R1構造中の直接隣接する炭素のZ部分の連結点を示す。
【0008】
本発明の別の態様によれば、癌または自己免疫疾患を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の構造11を有する少なくとも1つの化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を投与する段階を含む方法が提供される。

【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】BCL-2ファミリーのタンパク質に対する本発明のある化合物の予想される結合モードを示す。
【図2】図2AはBCL-2ファミリーのタンパク質に対する本発明の別の化合物の予想される結合モードを示す。図2BはBCL-2ファミリーのタンパク質に対する本発明のさらに別の化合物の予想される結合モードを示す。
【図3】BCL-2ファミリーのタンパク質に対する本発明のある化合物の結合を示すNMRデータを提供する。
【図4】BCL-2ファミリーのタンパク質に対する本発明の他の化合物の結合を示すNMRデータを提供する。
【図5】BCL-2ファミリーのタンパク質に対する本発明の他の化合物の結合を示すNMRデータを提供する。
【図6】本発明の化合物のいくつかを作製するいくつかの例示的方法を模式的に示す反応スキームである。
【図7】本発明の化合物のいくつかを作製するいくつかの例示的方法を模式的に示す反応スキームである。
【図8】本発明の化合物のいくつかを作製するいくつかの例示的方法を模式的に示す反応スキームである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
以下の用語、定義、および略語が適用される。
【0011】
「アルキル」および「アルコキシ」という一般的用語は、直鎖基と分岐基との両方を意味し、個々の基に対する言及は、直鎖基または分岐基のいずれかを具体的に含むが、両方は含まない。例えば、「プロピル」に対する言及は直鎖基のみを含み、一方、「イソプロピル」に対する言及は分岐基のみを含む。
【0012】
「アルキル」という用語は一価の直鎖または分岐鎖炭化水素基を意味する。使用可能なアルキル構造の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、3-ペンチル、またはヘキシルなどの、(C1〜C6)アルキルが挙げられる。
【0013】
本明細書において「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。「ハロアルキル」という用語は、ハロ(C1〜C6)アルキル、例えば、ヨードメチル、ブロモメチル、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、2-クロロエチル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、またはペンタフルオロエチルなどの、ハロゲン置換アルキルを意味する。
【0014】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は-O-アルキル部分を意味し、ここでアルキルは上記定義の通りである。使用可能なアルコキシ構造の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、3-ペントキシ、またはヘキシルオキシなどの、(C1〜C6)アルコキシ基が挙げられる。
【0015】
「カルボキシル」または「カルボキシ」という用語は、カルボニル官能基とヒドロキシル官能基を組み合わせ、かつ構造-C(=O)-OHを有する部分を意味する。
【0016】
「脂肪族」という用語は、直鎖または分岐鎖の配置の炭素原子のみを含有し、かつ環または芳香族性を欠く部分を意味する。
【0017】
「脂環式」という用語は芳香族構造以外の任意の環構造を意味する。
【0018】
「芳香族」という用語は、仮定上の局在化構造のそれよりも著しく大きい非局在化による安定性を有する、ケクレ構造などの環状共役分子実体を意味する。
【0019】
「アリール」という用語は、フェニル基、または少なくとも1つの芳香環を有するオルト縮合二環式炭素環構造を意味する。アリールのいくつかの例としては、フェニル、インデニル、またはナフチル、ビフェニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、アズレニル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、およびピレニルが挙げられるがそれに限定されない。
【0020】
「複素環」または「ヘテロ環」という用語は、単一の環または複数の縮合環を有し、環内に1〜8個の炭素原子、および窒素、硫黄、または酸素より選択される1〜4個のヘテロ原子を有する、一価の飽和基または不飽和基を意味する。複素環基は、C1〜10アルキル、C1〜10アルコキシル、アリール、ハロゲン、-OH、-SH、-CN、-NO2、またはトリハロメチルなどであるがそれに限定されない1〜3個の置換基で置換されていてもよい。複素環基のいくつかの例としては、チエニル、フリル、ピラニル、ピロリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ピリジルなどが挙げられるがそれに限定されない。
【0021】
「シアノ」という用語は、官能基-CN、すなわち、炭素原子と窒素原子とが三重結合によって連結している基を意味する。
【0022】
「イミン」またはイミノという用語は、炭素原子と窒素原子とが二重結合によって連結している官能基-CR=N-を意味する。
【0023】
「アミド(amide)」または「アミド(amido)」という用語は、R1およびR2の各々が独立して水素またはアルキルである部分-CON(R1R2)を意味する。
【0024】
「チアゾリジン」という用語は、下記式を有する化合物から誘導される部分を含有する化合物を意味する。

【0025】
「ナフタレン」という用語は、下記式を有する化合物から誘導される部分を含有する化合物を意味する。

【0026】
「ジヒドロナフタレン」という用語は、下記式を有する化合物から例えば誘導される部分水素化ナフタレンから誘導される部分を含有する化合物を意味する。

【0027】
「患者」という用語は、本発明の方法により処置される生物を意味する。そのような生物としてはヒトが挙げられるがそれに限定されない。本発明の文脈では、「対象」という用語は一般に、以下に記載の処置(例えば本発明の化合物、および任意で1つまたは複数のさらなる治療薬の投与)を受けるかまたは受けた個体を意味する。
【0028】
「タンパク質のBCL-2ファミリー」という用語は、少なくとも以下のタンパク質を現在含むタンパク質のファミリーを意味する: BCL-XL、BCL-2、BCL-W、BCL-B、BFL-1、およびMCL-1。
【0029】
本発明の一態様によれば、各種の疾患、障害、および病理の処置のために、構造Aを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、もしくは溶媒和物が提供される。

【0030】
構造Aを有する化合物において、R1およびR2の各々は、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基を含み; Xは、酸素、硫黄、またはイミノ基を含み; ならびにZは、構造I、II、およびIIIを有する群より選択される部分である。

【0031】
部分I、II、およびIIIの各々において、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々は、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基のいずれかであり得る。部分I、II、およびIIIの各々において、記号*はC(=)-R1構造中の直接隣接する炭素のZ部分の連結点を示す。
【0032】
したがって、構造Aを有する化合物においてZが置換ナフタレン基(すなわち部分I)である態様では、そのような置換基Zを有する化合物は構造AIを有し得る。

【0033】
構造AIを有する化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々は独立して、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基であり得る。例えば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々は独立して、水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、臭素、フェニル、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、カルボキシル、または-C(O)NH2のいずれかであり得る。
【0034】
他の態様では、構造Aを有する化合物において、Zは置換ジヒドロナフタレン基(すなわち部分II)であり得るものであり、そのような置換基Zを有する化合物は構造AIIを有し得る。

【0035】
構造AIIを有する化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々は独立して、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基であり得る。例えば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々は独立して、水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、臭素、フェニル、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、カルボキシル、または-C(O)NH2であり得る。
【0036】
他の態様では、構造Aを有する化合物において、Zは部分IIIであり得るものであり、そのような置換基Zを有する化合物は構造AIIIを有し得る。

【0037】
構造AIIIを有する化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7の各々は独立して、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基であり得る。例えば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7の各々は独立して、水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、臭素、フェニル、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、カルボキシル、または-C(O)NH2であり得る。
【0038】
構造Aによって記述される使用可能ないくつかの例示的化合物としては、以下に示す2-[5-(2-メチル-3-フェニルアリリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-2-フェニル酢酸(化合物1)および3-メチル-2-[5-(2-メチル-3-フェニルアリリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]ブタン酸(化合物2)が挙げられる。

【0039】
以上のように、例示的化合物1および2は構造AIIIの範囲内にあり、式中、R1、R2、R3、R4、およびR5の各々は水素であり、R6はメチルであり、Xは硫黄であり、R7はフェニル(化合物1)またはイソプロピル(化合物2)である。
【0040】
構造Aによって記述される使用可能ないくつかのさらなる例示的化合物としては以下の化合物が挙げられる:
2-[5-(1-イソプロピル-2,3-ジメトキシ-7-メチルナフタレン-6-イル-メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸(化合物3);
2-[5-((2,3-ジヒドロキシ-1-イソプロピル-7-メチルナフタレン-6-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸(化合物4);
2-[5-((4-ブロモ-1,2-ジヒドロ-6,7-ジメトキシナフタレン-3-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸(化合物5);
2-[5-((4-ブロモ-1,2-ジヒドロ-6,7-ジヒドロキシナフタレン-3-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸(化合物6);
2-[5-((1,2-ジメトキシナフタレン-3-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸(化合物7);
2-[5-((ナフタレン-2-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]酢酸(化合物8);
3-メチル-2-[4-オキソ-5-(3-フェニルアリリデン)-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]ブタン酸(化合物9); および
2-[4-オキソ-5-(3-フェニルアリリデン)-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]プロパン酸(化合物10)。
【0041】
上記化合物3〜10の構造を以下に示す。




【0042】
本発明の一部の化合物はキラル中心を有し得るものであり、光学活性体およびラセミ体として単離することができる。一部の化合物は多形を示し得る。本発明の化合物は、本明細書に記載の有用な特性を有する任意のラセミ体、光学活性体、多形体、もしくは立体異性体、またはその混合物を含む。所望であれば、通常知られている技術を使用して、例えば、再結晶技術によるラセミ体の分割、光学活性出発原料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離によって、光学活性体を調製することができる。
【0043】
一態様では、BCL-2抗アポトーシスファミリータンパク質の阻害のための方法が提供される。本方法は、BCL-2タンパク質と少なくとも1つの上記化合物とを、BCL-2タンパク質と本発明の化合物との接触に好ましい条件下で接触させる段階を含む。特定の機序に拘束されることは望まないが、上記本発明の化合物は、BCL-2ファミリーの6つのタンパク質を阻害可能であると考えられ、例えば、BCL-XL、BCL-2、BCL-W、BCL-B、BFL-1、およびMCL-1などのタンパク質のすべてを阻害可能である。
【0044】
BCL-2タンパク質に対する本発明の一部の化合物の予想される結合モードを、図1(以下に示す化合物11の結合)、図2A(先に示す化合物1の結合)、および図2B(先に示す化合物2の結合)に図示する。BCL-XLタンパク質中に結合が生じたという結論を支持しかつ結合部位を示すNMRデータを示す図3〜5によって結合をさらに図示する。図3は、以下に示す化合物11のそのようなNMRデータを、阻害剤を有さない組成物との比較で示す。図4および図5は、先に示す化合物6および7のそのようなNMRデータを示す。また、阻害を、本発明の一部の化合物の解離定数(Kd)値を測定することにより評価した。そのような阻害データを表1に示す。
【0045】
(表1)一部の本発明化合物の阻害データ

【0046】
他の態様によれば、疾患または障害を処置するための方法が提供される。本方法は、そのような処置を必要とする対象に有効量の任意の上記化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、もしくは溶媒和物を投与する段階を含み得る。処置可能な疾患または障害の非限定的な例としては、癌および自己免疫疾患がある。
【0047】
別の態様によれば、癌を処置するための方法が提供される。本方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の構造11を有する化合物である2-[5-(2-メチル-3-フェニルアリリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]酢酸、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を投与する段階を含む。

【0048】
以上のように、化合物11は構造AIIIの範囲内にあり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、およびR7の各々は水素であり、R6はメチルであり、Xは硫黄である。本方法は、癌を処置するための化合物11の使用を提供する。一局面では、癌は結腸癌ではない。
【0049】
本発明の一部の化合物をB6BCL-2トランスジェニックマウスにおいてインビボでも試験した。先に示す本発明の化合物3、5、および11は、公知化合物ゴシポールおよびアポゴシポールと同等か、それ以上のインビボ活性を発揮した。別の公知化合物アポゴシポロンは全く有効ではなかった。ゴシポールは例えば米国特許第7,186,708号に記載されている。アポゴシポールは例えばMeyers A.I.; Willemsen J.J., Tetrahedron Letters, vol. 37, No. 6, February, 51996, pp. 791-792に記載されている。インビボ有効性に関する化合物の効力は以下の順序であった: 化合物11 > 化合物5 > 化合物3 = アポゴシポール = ゴシポール。毒性に関して、毒性効果の重症度は以下の順序で低減した: ゴシポール >>> アポゴシポール > 化合物5 = 化合物3 = 化合物11。
【0050】
本発明の別の態様によれば、ヒトなどの哺乳動物における病態または症状の処置用の医薬の製造のために、任意の上記化合物を使用することができる。上記の限定の範囲内で、医薬を癌の処置に向けることができる。構造11を有する化合物は結腸癌の処置に好ましくないことがある。
【0051】
本発明の別の態様によれば、任意の上記化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、もしくは溶媒和物、および薬学的に許容される希釈剤もしくは担体を含む、薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は癌を処置するために使用することができる。薬学的組成物は、以下などの薬剤を含むがそれに限定されない1つまたは複数のさらなる治療用抗癌剤をさらに含んでいてもよい: (1) 微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビンデシンなど)と、微小管安定化剤(例えば、パクリタキセル[タキソール]、およびドセタキセル、タキソテールなど)と、エピポドフィロトキシン(例えばエトポシド[VP-16]およびテニポシド[VM-26]など)ならびにトポイソメラーゼIを標的化する薬剤(例えばカンプトテシンおよびイリノテカン(Isirinotecan)[CPT-11]など)などのトポイソメラーゼ阻害剤を含むクロマチン機能阻害剤とを含む、アルカロイド; (2) ナイトロジェンマスタード(例えばメクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド(Ifosphamide)およびブスルファン[ミレラン]など)と、ニトロソ尿素(例えばカルムスチン、ロムスチン、およびセムスチンなど)と、他のアルキル化剤(例えばダカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパ、およびマイトマイシン(Mitocycin)など)とを含む、共有結合性DNA結合剤[アルキル化剤]; (3) 核酸阻害剤(例えばダクチノマイシン[アクチノマイシンD]など)と、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン[ダウノマイシンおよびセルビジン(Cerubidine)]、ドキソルビシン[アドリアマイシン]、ならびにイダルビシン[イダマイシン]など)と、アントラセンジオン(例えば[ミトキサントロン]などのアントラサイクリン類似体など)と、ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane)など)と、プリカマイシン(ミトラマイシンなど)とを含む、非共有結合性DNA結合剤[抗腫瘍抗生物質]; (4) 葉酸代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート、フォレックス(Folex)、およびメキサート(Mexate)など)と、プリン代謝拮抗薬(例えば6-メルカプトプリン[6-MP、プリネトール]、6-チオグアニン[6-TG]、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2-クロロデオキシアデノシン[CdA]、および2'-デオキシコホルマイシン[ペントスタチン]など)と、ピリミジンアンタゴニスト(例えばフルオロピリミジン[例えば5-フルオロウラシル(アドルシル(Adrucil))、5-フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(フロクスウリジン)]など)と、シトシンアラビノシド(例えばシトサール(Cytosar)[ara-C]およびフルダラビンなど)とを含む、代謝拮抗薬; (5) L-アスパラギナーゼおよびヒドロキシ尿素などを含む、酵素; (6) 抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェンなど)などのグルココルチコイドと、非ステロイド性抗アンドロゲン剤(例えばフルタミドなど)と、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール[アリミデックス]など)とを含む、ホルモン; (7) 白金化合物(例えばシスプラチンおよびカルボプラチンなど); (8) 抗癌剤、毒素、および/または放射性核種などと結合されたモノクローナル抗体; (9) 生物学的応答調節剤(例えばインターフェロン[例えばIFN-αなど]およびインターロイキン[例えばIL-2など]など); (10) 養子免疫治療; (11) 造血成長因子; (12) 腫瘍細胞分化を誘導する薬剤(例えばオールトランスレチノイン酸など); (13) 遺伝子治療薬; (14) アンチセンス治療薬; (15) 腫瘍ワクチン; (16) 腫瘍転移に向けられる薬剤(例えばバチミスタット(Batimistat)など); (17) 血管新生阻害剤、ならびに(18) 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)。
【0052】
使用可能である好適なSSRIの代表的だが非限定的な例としては、セルトラリン(例えばPfizer, Inc.が「Zoloft(登録商標)」の商標で販売するセルトラリン塩酸塩)またはセルトラリン代謝物、フルボキサミン(例えばSolvay Pharmaceuticals, Inc.が「Luvox(登録商標)」の商標で販売するフルボキサミンマレイン酸塩(melate))、パロキセチン(例えばSmithKline Beecham Pharmaceuticals, Inc.が「Paxil(登録商標)」の商標で販売するパロキセチン塩酸塩)、フルオキセチン(例えばEli Lilly and Companyが「Prozac(登録商標)」または「Sarafem(登録商標)」の商標で販売するフルオキセチン塩酸塩)およびシタロプラム(例えばForest Laboratories、Parke-Davis, Inc.が「Celexa(登録商標)」の商標で販売するシタロプラム臭化水素酸塩)、ならびにその代謝物が挙げられる。さらなる例としてはベンラファキシン(例えばWyeth-Ayerst Laboratoriesが「Effexor(登録商標)」の商標で販売するベンラファキシン塩酸塩)、ミルタザピン(例えばOrganon, Inc.が「Remeron(登録商標)」の商標で販売)、ブスピロン(例えばBristol-Myers Squibbが「Buspar(登録商標)」の商標で販売するブスピロン塩酸塩)、トラゾドン(例えばBristol-Myers SquibbおよびApotheconが「Desyrel(登録商標)」の商標で販売するトラゾドン塩酸塩)、ネファゾドン(nefazadone)(例えばBristol-Myers Squibbが「Serzon(登録商標)」の商標で販売するネファゾドン塩酸塩)、クロミプラミン(例えばNovopharm, LTD、Ciba、およびTaro Pharmaceuticalsが「Anafranil(登録商標)」の商標で販売するクロミプラミン塩酸塩)、イミプラミン(例えばGlaxo-Welcome, Inc.が「Tofranil(登録商標)」の商標で販売するイミプラミン塩酸塩)、ノルトリプチリン(例えばLundbeckが「Nortrinel(登録商標)」の商標で販売するノルトリプチリン塩酸塩)、ミアンセリン(mianserine)(例えばOrganon, Inc.が「Tolvon(登録商標)」の商標で販売)、デュロキセチン(例えばEli Lilly and Companyが販売するデュロキセチン塩酸塩)、ダポキセチン(dapoxetine)(例えばALZA Corporationが販売するダポキセチン塩酸塩)、リトキセチン(litoxetine)(例えばフランス・バニューのSynthelabo Recherche (L.E.R.S.)が販売するリトキセチン塩酸塩)、フェモキセチン(femoxetine)、ロフェプラミン(例えばMERCK & Co., Inc.が「Gamonil(登録商標)」の商標で販売)、トモキセチン(例えばEli Lilly and Companyが販売)が挙げられる。本発明は、現在使用されているSSRI、または後に発見もしくは考案されるそれを包含する。先に列挙したものを含むSSRIを1日約2mg〜約2,500mgの量で経口投与することができる。
【0053】
広い意味で、任意の癌または腫瘍(例えば血液腫瘍および固形腫瘍)を本発明の態様に従って処置することができる。本発明の態様に従って処置可能な例示的な癌としては、頭頸部癌、脳癌(例えば多形神経膠芽腫(glioblastoma multifoma))、乳癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肝癌、膀胱癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、肺癌(非小細胞)、卵巣癌および他の婦人科学的癌(例えば子宮および子宮頸部の腫瘍)、膵癌、前立腺癌、腎癌、絨毛癌(肺癌)、皮膚癌(例えば黒色腫、基底細胞癌)、ヘアリーセル白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ球性白血病(乳房および膀胱)、急性骨髄性白血病、髄膜白血病、慢性骨髄性白血病、ならびに赤白血病が挙げられるがそれに限定されない。より一般的には、処置される癌としては白血病およびB細胞癌(例えばリンパ腫、多発性骨髄腫、およびMDS)が挙げられる。
【0054】
本明細書において提供する化合物の生物活性は、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられるAlley, M.C., et. al. Feasibility of Drug Screening with Panels of Human Tumor Cell Lines Using a Microculture Tetrazolium Assay. Cancer Research 48: 589-601, 1988; Grever, M.R., et. al. The National Cancer Institute: Cancer Drug Discovery and Development Program. Seminars in Oncology, Vol. 19, No. 6, pp 622-638, 1992; Boyd, M.R., and Paull, K.D. Some Practical Considerations and Applications of the National Cancer Institute In Vitro Anticancer Drug Discovery Screen. Drug Development Research 34: 91-109, 1995; Shoemaker, R. H. The NCI60 Human Tumour Cell line Anticancer Drug Screen. Nature Reviews, 6: 813-823, 2006に記載のものを例えば含む、当技術分野で公知のインビトロおよびインビボアッセイならびに手順によって評価することができる。
【0055】
本発明の化合物および方法を使用して処置可能な自己免疫疾患の非限定的な例としては、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年発症糖尿病、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、乾癬、魚鱗癬、グレーブス眼症、乾癬、乾癬炎症性腸疾患、および喘息が挙げられる。
【0056】
本発明の化合物が安定な無毒の酸塩または塩基塩を形成するために十分に塩基性または酸性である場合、塩としての化合物の投与が適切であり得る。薬学的に許容される塩の例としては、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸によって形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、ケトグルタル酸塩、およびグリセロリン酸塩が挙げられる。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、および炭酸塩を含む好適な無機塩も形成可能である。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的手順を使用して、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物と、生理学的に許容されるアニオンを与える好適な酸とを反応させることで得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を作製することもできる。
【0057】
本発明化合物を組み込む任意の錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、トラガントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、もしくはゼラチンなどの結合剤; リン酸二カルシウムなどの賦形剤; コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤; およびショ糖、果糖、乳糖、もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、ウインターグリーン油もしくはサクランボ香味料などの香味料を含有してもよい。本発明化合物の単位剤形がカプセル剤として存在する場合、上記種類の材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含有し得る。各種の他の材料がコーティングとして、またはそうでなければ固体単位剤形の物理的形態を変更するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤をゼラチン、ワックス、セラック、または糖などでコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてのショ糖または果糖、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボ味またはオレンジ味などの香味料を含有し得る。任意の単位剤形の調製に使用する任意の材料が薬学的に許容され、使用される量において実質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物を持続放出製剤およびデバイスに組み入れることができる。
【0058】
また、本発明の活性化合物を点滴または注射によって静脈内投与または腹腔内投与することができる。化合物または塩の溶液を、任意で非毒性界面活性剤と混合した水中で調製することができる。分散液もグリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびその混合物中、ならびに油中で調製することができる。普通の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含有し得る。
【0059】
十分な治療量の本発明の化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて先に列挙した各種の他の成分と共に組み入れた後、濾過滅菌を行うことで、滅菌注射用溶液を調製することができる。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した溶液中に存在する有効成分と任意のさらなる所望の成分との粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0060】
局所投与では、本化合物を純粋な形態で、すなわちそれが液体である場合に適用することができる。しかし、固体または液体であり得る皮膚科学的に許容される担体との組み合わせで、組成物または製剤としてそれを皮膚に投与することが一般に望ましい。有用な固体担体としては、タルク、粘土、結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化固体が挙げられる。有用な液体担体としては、任意で無毒性界面活性剤の補助によって、本化合物を有効なレベルで溶解または分散させることができる、水、アルコールもしくはグリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが挙げられる。補助剤およびさらなる抗菌薬を加えて、所与の用途での特性を最適化することができる。得られた液体組成物を、吸収性パッドから適用するか、絆創膏および他の包帯の含浸に使用するか、またはポンプ型もしくはエアロゾル噴霧器を用いて患部に噴霧することができる。当業者に公知のように、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性ミネラル材料などの増粘剤を液体担体と共に使用することで、ユーザーの皮膚に直接適用するための塗り広げることが可能なペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、石鹸剤などを形成することもできる。
【0061】
以下の非限定的な実施例によって本発明の態様をさらに例証することができる。
【0062】
実施例1
タンパク質の発現および精製
N-末端ポリHisタグに融合したBIDの完全ヌクレオチド配列を含有するpET-19b(Novagen)プラスミド構築物から組換え全長BCL-XLを産生した。非標識タンパク質を、LB培地内の大腸菌(E. coli)BL21中37℃で、1mM IPTGを用いる3〜4時間の誘導期間によって発現させた。15N標識タンパク質を同様に産生し、成長は0.5g/L 15NH4Clを補充したM9培地中で生じた。細胞溶解後、可溶性タンパク質をHi-Trapキレート化カラム(Amersham, Pharmacia)上で精製した後、MonoQ(Amersham, Pharmacia)カラムによるイオン交換精製を行った。最終BID試料を、後続の実験に適した緩衝液中に透析した。
【0063】
実施例2
分子モデリング
分子モデリング試験を、ソフトウェアパッケージSybylバージョン6.9(TRIPOS)を備えたいくつかのR12000 SGI Octaneワークステーション上で行った。化合物のドッキング構造をゴールド(Gold)によって最初に得た。化合物の分子モデルをMAXIMN2(Sybyl)でエネルギー最小化した。各分子について、20個の解(solution)を作成し、Goldscoreに従って順位付けした。BCL-xLの表面上の深い疎水性の溝中の連結化合物の目視検査によって解を最終的に順位付けした。表面の表示をMOLCADにより作成した。
【0064】
実施例3
NMR分光測定
すべてのNMR実験で、BCL-xLをpH7.5の50mMリン酸緩衝液中にて交換し、測定を30℃で行った。BCL-xLの2D [15N,1H]-HSQCスペクトルを15N標識タンパク質の0.5mM試料によって測定した。TXIプローブまたはTCIクリオプローブのいずれかをいずれも備える600MHz Bruker Avance分光計によりすべての実験を行った。すべての実験において、残留水シグナルの位相緩和(dephasing)をWATERGATE配列によって得た。Bcl-xLに結合する試験化合物の能力を試験するために、このタンパク質の25μM試料を調製し、1D 1H NMRスペクトルを試験化合物の非存在下および存在下で収集した。スペクトルの脂肪族領域を観察することで、Ile、Leu、Thr、ValまたはAla(0.8〜0.3 ppmの領域)の活性部位メチル基の化学シフトの変化によって、これらの単純な実験において結合を容易に検出することができる。
【0065】
実施例4
合成手順
アルデヒド(1:1.1mmol比)のジメチルホルムアミド(1ml)溶液にローダニン酢酸または3-メチル-2-(4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル)ブタン酸を加え、混合物を均一になるまで攪拌する。次に混合物をマイクロ波装置(CEM)中に配置し、混合物を10分間の加熱(140℃、1,000W)および5分間の冷却(25℃)のサイクルに4回供する。次に水を溶液に加え、そこで析出物が形成される。析出物を濾取し、アセトン/水から再結晶させ、乾燥させて所望の化合物を得る。
【0066】
実施例5
ナフタレン部分およびジヒドロナフタレン部分を含む本発明の化合物の合成手順
図6に示す反応スキームは、一部の上記化合物を作製する1つの例示的方法を模式的に示す。図7に示す反応スキームは、一部の上記化合物を作製する1つの例示的方法を模式的に示す。図8に示す反応スキームは、一部の上記化合物を作製する1つの例示的方法を模式的に示す。
【0067】
実施例6
インビボでのエパルレスタットの経口送達
エパルレスタット(化合物11)を三つ子(Triplet)B6Bcl2マウスに、0.12mmol/kgの一日量で3日間(すなわちQDX3)、経口チューブ栄養(oral gavage)を通じて与えた。負の対照として、ローダニン酢酸(Bcl-xLに結合しない)を0.12mmol/kgの一日量で3日間(すなわちQDX3)、経口チューブ栄養を通じて与えた。エパルレスタットおよび負の対照はいずれもPBSに溶解させた。
【0068】
3日後、動物の脾臓を除去した。
脾臓重量
エパルレスタット 193.9mg
負の対照 240.9mg
【0069】
したがって、エパルレスタットは、経口投与であれ腹腔内投与であれ、脾臓の収縮を誘導した。腹腔内注射は経口投与より大きいパーセントの収縮を誘導したが、結果は、経口または腹腔内のいずれの方法でもエパルレスタットを投与できることを明らかに示している。したがって、本発明の化合物、特にエパルレスタットをヒトにおいて経口投与または静脈内投与することができる。
【0070】
本発明者らは、身体検査を通して体重減少または毒性の徴候がなかったことに留意し、このことは、エパルレスタットが安全な薬物であること、また、腹腔内および経口の投与経路を経由する毒性の明らかな徴候の欠如を考慮すればApoGより質的に安全であることを示している。
【0071】
上記の例を参照して本発明を説明してきたが、本発明の精神および範囲内で変形および変更が包含されるものと理解される。したがって、本発明は下記の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造Aを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物:

式中、
R1およびR2の各々は、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基を含み;
Xは、酸素、硫黄、またはイミノ基を含み; ならびに
Zは、構造I、II、およびIIIを有する群より選択される部分である:

式中、
R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々は、水素、置換もしくは非置換直鎖脂肪族基、ハロゲン、アルコキシル、ハロゲン置換アルキル、ハロゲン置換アルコキシル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ基、アミド基、置換もしくは非置換脂環式基、置換もしくは非置換芳香族基、または置換もしくは非置換複素環基であり; ならびに
記号*は、C(=)-R1構造中の直接隣接する炭素のZ部分の連結点を示す。
【請求項2】
Zが部分Iである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々が、水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、臭素、フェニル、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、カルボキシル、および-C(O)NH2からなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Zが部分IIである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々が、水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、臭素、フェニル、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、カルボキシル、および-C(O)NH2からなる群より選択される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Zが部分IIIである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9の各々が、水素、メチル、n-プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、臭素、フェニル、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、カルボキシル、および-C(O)NH2からなる群より選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
2-[5-(2-メチル-3-フェニルアリリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-2-フェニル酢酸である、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
式1を有する、請求項8記載の化合物:


【請求項10】
3-メチル-2-[5-(2-メチル-3-フェニルアリリデン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]ブタン酸である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
式2を有する、請求項10記載の化合物:


【請求項12】
以下からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:
2-[5-(1-イソプロピル-2,3-ジメトキシ-7-メチルナフタレン-6-イル-メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸;
2-[5-((2,3-ジヒドロキシ-1-イソプロピル-7-メチルナフタレン-6-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸;
2-[5-((4-ブロモ-1,2-ジヒドロ-6,7-ジメトキシナフタレン-3-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸;
2-[5-((4-ブロモ-1,2-ジヒドロ-6,7-ジヒドロキシナフタレン-3-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸;
2-[5-((1,2-ジメトキシナフタレン-3-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]-3-メチルブタン酸;
2-[5-((ナフタレン-2-イル)メチレン)-4-オキソ-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]酢酸;
3-メチル-2-[4-オキソ-5-(3-フェニルアリリデン)-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]ブタン酸; および
2-[4-オキソ-5-(3-フェニルアリリデン)-2-チオキソチアゾリジン-3-イル]プロパン酸。
【請求項13】
群3〜10より選択される式を有する、請求項12記載の化合物:





【請求項14】
疾患または障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の少なくとも1つの請求項1記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を投与することにより疾患または障害を処置する段階を含む方法。
【請求項15】
疾患または障害が癌である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
処置が、少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質の活性の阻害を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
癌を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を投与する段階を含む方法:


【請求項18】
化合物を抗癌剤との組み合わせで投与する段階を含む、請求項14または17記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの上昇したBCL-2ファミリータンパク質発現レベルを有する対象において癌または自己免疫疾患を処置する方法であって、対象に治療有効量の構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を投与する段階を含む方法:


【請求項20】
構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を利用する治療に対象が応答するか否かを決定する段階であって、対象における少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質のレベルを決定すること、および正常対照試料と比較することを含む段階をさらに含み、上昇したレベルが、構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を利用する治療に応答する対象を示す、請求項19記載の方法。
【請求項21】
構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を利用する治療に対象が応答するか否かを決定する方法であって、対象における少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質のレベルを決定する段階、および正常対照試料と比較する段階を含み、上昇したレベルが、構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を利用する治療に応答する対象を示す、方法:


【請求項22】
決定を対象からの試料に基づいて行う、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
試料が生体体液または腫瘍試料である、請求項19記載の方法。
【請求項24】
BCL-2ファミリーポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、BCL-XL、BCL-2、BCL-W、BCL-B、BFL-1、またはMCL-1より選択される、請求項19または21記載の方法。
【請求項25】
対照細胞におけるレベルより大きい少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質メンバーのレベルを有する細胞においてアポトーシスを誘導する方法であって、有効量の構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を細胞に投与することにより、細胞においてBcl-2ファミリータンパク質のレベルを減少させかつアポトーシスを誘導する段階を含む方法:


【請求項26】
細胞が癌細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
細胞が免疫系の細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
対象における、構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物の投与を含む治療レジメンの有効性を決定する方法であって、構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物による処置の前および途中に該対象の細胞中のBCL-2ファミリータンパク質のレベルを比較する段階を含み、BCL-2ファミリータンパク質の低下したレベルが、構造11を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物、もしくは溶媒和物を利用する治療の有効性を示す、方法:


【請求項29】
対象が癌を有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
対象が自己免疫障害を有する、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−500726(P2011−500726A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530163(P2010−530163)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080383
【国際公開番号】WO2009/052440
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510027043)バーンハム インスティテュート フォー メディカル リサーチ (6)
【Fターム(参考)】