説明

抗アレルギー体質強化剤

【課題】 医療や食品などに応用可能な安全な素材でかつ簡便容易な投与方法で用いられる、Th1とTh2バランス調節機能に起因する根本的な新規抗アレルギー体質強化剤及び抗アレルギー体質強化飲食品を提供することである。
【解決手段】 ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンを有効成分とする抗アレルギー体質強化剤であり、さらに、抗アレルギー体質強化がTh1/Th2バランス調節機能に起因する抗アレルギー体質強化である前記抗アレルギー体質強化剤である。そして、それらの抗アレルギー体質強化剤を含有する医薬品である。さらに本発明は、ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンの有効量を含有する抗アレルギー体質強化飲食品であり、さらに、抗アレルギー体質強化がTh1/Th2バランス調節機能に起因する抗アレルギー体質強化である前記抗アレルギー体質強化飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンを有効成分として含有する抗アレルギー体質強化剤、それらを含有する医薬品及び抗アレルギー体質強化飲食品に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のアレルギー症状の増加は、1999年度厚生省抗アレルギー薬開発ガイドライン作製研究会による体系的な報告にも示される様に、大きな社会的問題となっている。すなわち、現在日本では、国民の20-30%が何らかのアレルギー症状を有していると考えられ、身近な花粉症やアトピー性皮膚炎の増加は誰もが目にするところである。一般に言うアレルギーとは、免疫学上4つに分類されるアレルギー反応においてI型に分類される即時性のものである。すなわち、花粉・ダニ・卵・牛乳などに含まれるアレルゲンと呼ばれる物質に、個体が何らかの要因により免疫応答を誘導しアレルギー原因抗体であるIgEが産生されるに至る。各アレルゲンに結合するIgEは体中に運搬された後、肥満細胞や好塩基球上に発現しているFc受容体を介して結合し、いつでもアレルギー症状を呈することが出来る状況に至る。そして、再び体内に取り込まれたアレルゲンがFc受容体を介して結合しているIgEに結合することによりIgEを架橋すると、肥満細胞あるいは好塩基球に蓄えられていたヒスタミンの遊離とロイコトリエンの産生を促すことにより即時性のアレルギー症状が惹起される。更に、アレルギーとは上記の様な即時性のものに限らない。すなわち、アトピー性皮膚炎・喘息・潰瘍性大腸炎などに代表される諸疾患は、同様のIgE・ヒスタミン・ロイコトリエンを介する反応に引き続き、IL-5(インターロイキン-5)による好酸球のアレルギー局所への浸潤が起こるなど様々な遅発性の症状が惹起される。
【0003】従来からアレルギーの緩和・抑制・治療を目的として、様々な薬剤や食品素材が用いられてきた。すなわち、ヒスタミンがヒスタミン受容体に結合することを阻害する抗ヒスタミン剤、ヒスタミンやロイコトリエンが肥満細胞や抗塩基球から放出されることを防ぐこと目的とした膜安定化剤、IgEがFc受容体に結合することを阻害する抗Fc受容体抗体、そして重篤な症状が発症した後に免疫応答を抑制する免疫抑制剤などがあげられる。しかしながら、これらの薬剤はアレルギーをいつでも発症できる状況にある個体、すなわちアレルギー体質の人が如何に最終的なアレルギーを発症しないようにするか、あるいはアレルギー症状を緩和させるかを意図したものであり、アレルギー体質そのものを改善するものではない。よって、アレルギー体質そのものを抗アレルギー体質へと強化することが可能な全く新しい予防・治療方法や物質の発見が待ち望まれている。
【0004】近年、このような状況を解決する手段として、アレルギー体質を形成するII型免疫応答の調節が考えられてきた。免疫応答は、ヘルパーT細胞I型(Th1)による細胞性免疫(I型)とアレルギーに関連するヘルパーT細胞II型(Th2)による液性免疫(II型)に大別される。Th1とTh2の分類はMossmannらによりマウスで報告(Annu. Rev. Immunol. 7: 145-173 (1989))がなされてからヒトにおける有効性が確認され、現在では様々な疾患・病態がTh1とTh2のバランスの崩壊により説明されるに至った。すなわち、アレルギーは、全般にTh2の行き過ぎであり、Th1の減弱化によると理解される。Th1とTh2は共にその前駆細胞であるTh0よりサイトカイン等による刺激を受け分化してくる。マクロファージや樹状細胞などから主に産生されてくるIL-12とNK細胞とTh1 自体が産生するIFN−γ(インターフェロンガンマ)はTh1細胞の分化を促進しTh2を抑制する。一方、NKT細胞、肥満細胞そしてTh2細胞自体が産生するIL-4は逆にTh2の分化を促進しTh1を抑制する。このように、Th1とTh2は共存しない仕組みができていることから、一度Th2が増強されアレルギー体質にバランスが傾くと、状況は更にアレルギー体質へと移行していくと考えられる。
【0005】この様なTh1とTh2のバランスを調節しTh1を増強する試み、即ち、アレルギー体質を抗アレルギー体質に強化する試みとして、Th1の増強因子であるIL-12の利用が注目を集めた(Am. J. Respir. Crit. Care. Med. 153: 535 (1996))。動物実験レベルでの解析では確かに強力な効果を発揮するが、その強い副作用から臨床応用がたいへん難しい状況にある。また、近年、結核菌や大腸菌などの病原性バクテリアに多く認められる非メチル化CpG-DNAにTh1増強効果が認められ(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93: 2879 (1996))、アレルギー疾患への応用が期待されたが、物質の安全性の問題や投与方法の危険性など多くの課題を含んでおり、実用化されるに至っていない。一方、高齢化をたどる現代社会において、社会問題化しているアレルギー疾患による医療費の増大は深刻な医療保険等の社会構造上の問題を引き起こしており、これらの予防、治療を医療のみに頼るのではなく普段の食生活から改善することも、強く期待されている。
【0006】一方、食品添加物として広く食経験のあるカラギーナン(カッパ・イオタ・ラムダなど)については、免疫増強に関わるアジュバント活性と免疫抑制活性が報告されている。このアジュバント活性は、カラギーナンを静脈内投与、皮下投与あるいは腹腔内投与した場合に認められる。一方、免疫抑制活性はカラギーナンを経口投与した場合にも認められ、マクロファージの機能を調節することによりT細胞依存性の応答が抑制されることが報告されている ( [1] J. Reticuloendothel. Soc. 28: 203-211 (1980). [2] J. Reticuloendothel. Soc. 28: 213-221(1980). [3] Eur. J. Immunol. 16: 375-380 (1986) [4] Immunology 33: 423-432 (1977) [5] Food Chem. Toxicol. 22: 615-621 (1984)) 。しかし、何れの場合も投与方法を含めてその安全性、効果などの問題点が指摘されており、実際のアレルギー症の予防、治療についての検討はなされていない。さらに、これらの効果は、免疫抑制により得られる予防治療法であり、アレルギー体質を改善するものではない。
【0007】又、Frossardらはラムダカラギーナンをアレルゲンと同時に予めマウスへ経口投与した時にのみ、アレルゲン特異的な経口免疫寛容が誘導され、アレルゲンの免疫により惹起されるアレルギー様のモデル応答が予防可能であることを示している (Pediatric Research 49:417-422 (2001))。しかしこの報告は、ラムダカラギーナンの免疫応答に重要な役割を果たすToll-like receptor 4 (TLR4)に変異があるC3H/HeJマウスを用いた特異な状況におけるものであり一般化は出来ない。更に、Frossardらの結果は、その効果の達成のためには予めアレルゲンの特定を行い、アレルゲンのカラギーナンとの同時摂取を必要とする上、あくまで健常人、特に乳幼児がアレルギー体質に今後なる場合の予防のみに応用が限られたものである。このように、カラギーナンについては、これらの効果が報告されているものの、投与方法、効果等に問題があり、アレルギー疾患の予防、治療剤として実用化されていない。更に、その効果も本発明のアレルギー体質そのものを抗アレルギー体質へと強化する予防、治療効果とは異なる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、医療や食品などに応用可能な安全な素材でかつ簡便かつ容易な投与方法で用いられる、根本的な新規抗アレルギー体質強化剤及び抗アレルギー体質強化飲食品を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題解決のために鋭意研究を重ね、抗アレルギー体質への強化となる指標をTh1とTh2バランス調節機能、すなわちIFN−γとIL-4の産生調節活性とし、種々の物質について新規な抗アレルギー体質強化機能の探索を行った。 その結果、ガラクトースからなる硫酸化多糖、カッパ及びラムダカラギーナンに強い調節活性すなわち抗アレルギー体質強化機能があることを見出し、これらの知見をもとに本発明を完成するに至った。更に、研究の過程において、特にラムダカラギーナンが抗アレルギー体質変換活性を発現するためには増粘・安定化剤として食品加工に用いられている濃度とは異なる摂取濃度が必要であることを見出した。即ち、本発明は、 ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンを有効成分とする抗アレルギー体質強化剤であり、さらに、抗アレルギー体質強化がTh1/Th2バランス調節機能に起因する抗アレルギー体質強化である前記抗アレルギー体質強化剤である。そして、それらの抗アレルギー体質強化剤を含有する医薬品である。さらに本発明は、ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンの有効量を含有する抗アレルギー体質強化飲食品であり、さらに、抗アレルギー体質強化がTh1/Th2バランス調節機能に起因する抗アレルギー体質強化である前記抗アレルギー体質強化飲食品である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。本発明のラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナン(以下本発明カラギーナンという)とは、ツノマタ(Chodrus)などの褐藻に含まれる硫酸化ガラクトースからなる酸性多糖であるカラギーナンの一種である。カラギーナンにはその他、イオタカラギーナン、ミュウカラギーナン、ヌウカラギーナン、シーターカラギーナンなどが知られる。ラムダカラギーナンは、2位の硫酸化したガラクトースと2・6位の硫酸化したガラクトースが交互に結合した骨格を有しており、一方、カッパカラギーナンは、4位の硫酸化したガラクトース残基とアンヒドロガラクトース残基が交互に結合した骨格を有している。いずれの本発明カラギーナンも高分子量の多糖の会合物である。本発明に用いられるカラギーナンとしては、そのうち平均分子量100kD以上のものが特に好ましい。また、本発明に用いるラムダカラギーナン、カッパカラギーナンは、本発明の抗アレルギー体質を強化するTh1とTh2のバランス調節活性を保持している限りにおいて、上記構造に異なる部位の硫酸化・メチル化・ピルビン酸化、および、アンヒドロガラクトース、グルコース、キシロースなどの他種の構成糖の混在があってもよい。本発明では、ラムダカラギーナン、カッパカラギーナンそれぞれ単独でも、それらを組み合わせても用いることもできるが、特に、ラムダカラギーナンが好ましい。さらに本発明に好適に用いられる限りイオタ・ミュウ・ヌウ・シータなど他種のカラギーナンが混在していてもよい。又、本発明カラギーナンを含むカラギーナンは、我が国では食品添加物として食品の増粘・安定化剤として、高濃度で各種食品に添加され、広く安全に利用されている。米国でもFDAにより食品添加物として平均分子量100kD以上のカラギーナンが安全であると認可されている(Federal Register 37: 15434 (1972))。本発明においても、平均分子量100kD以上の本発明カラギーナンが特に好ましい。
【0011】本発明においてアレルギー体質とはアレルギー疾患・病態における体質をいい、アレルギー疾患・病態とは、例えば、ヒトをはじめとするウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの哺乳動物の、アレルゲンとして花粉、ダニ、ハウスダスト等に対するI型アレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、潰瘍性大腸炎などをいう。
【0012】本発明の抗アレルギー体質強化とは、従来の予防治療方法、すなわちアレルギーをいつでも発症できる状況にある個体、すなわちアレルギー体質の人が如何に最終的なアレルギーを発症しないようにするか、あるいはアレルギー症状を緩和させるかを意図したものとは異なり、アレルギー体質そのものを根本的に抗アレルギー体質へと強化することが可能な全く新しい予防・治療方法をいう。アレルギー体質は、先にも述べたように、II型免疫応答により形成される。免疫応答は、ヘルパーT細胞I型(Th1)による細胞性免疫(I型)とアレルギーに関連するヘルパーT細胞II型(Th2)による液性免疫(II型)に大別され、様々なアレルギー性疾患・病態における体質がTh1とTh2のバランスの崩壊により説明される。すなわち、アレルギー体質は、全般にTh2の行き過ぎであり、Th1の減弱化による。マクロファージや樹状細胞などから主に産生されてくるIL-12とNK細胞とTh1自体が産生するIFN−γは、Th1細胞の分化を促進しTh2を抑制する。一方、NKT細胞、肥満細胞そしてTh2細胞自体が産生するIL-4は逆にTh2の分化を促進しTh1を抑制する。このように、Th1とTh2は共存しない仕組みができていることから、一度Th2が増強されアレルギー体質にバランスが傾くと、状況は更にアレルギー体質へと移行していく。換言するとTh1とTh2のバランスの取れた状態を保つことが抗アレルギー体質を形成する。すなわち本発明の体質強化とは、Th2が増強されたアレルギー体質をTh1とTh2のバランスを調節することにより抗アレルギー体質に変換することをいう。従って、本発明の抗アレルギー体質強化とは、Th1/Th2バランス調節機能に起因する抗アレルギー体質強化であり、Th1とTh2のバランスの調節、Th2応答減弱、Th1応答増強、IFN-γ産生増強、IL-4産生抑制、IgE産生抑制などの機能を単独もしくは併せて有する。
【0013】本発明の有効成分とは、抗アレルギー体質強化機能を有する成分であり、上記、Th1とTh2のバランスの調節、Th2応答減弱、Th1応答増強、IFN-γ産生増強、IL-4産生抑制、IgE産生抑制などの機能を単独もしくは併せて有する成分をいう。本発明では、有効成分として本発明カラギーナンなどを挙げることができる。特に有効な成分としてラムダカラギーナンが挙げられる。本発明カラギーナンの有効量は、抗アレルギー体質を強化することにより種々のアレルギー疾患の予防、治療の機能を有する限り特に限定されないが、例えば、液状で経口投与した場合のラムダカラギーナンの有効量は、0.0001%から0.2%が好ましく、特に0.0005%から0.05%が好ましい。0.05%以上の濃度では増粘効果による効果の減少の問題が生じるとともに、Th1とTh2バランスの調節活性も減弱するからである。同様に、カッパカラギーナンの有効量は、0.01%から0.5%が好ましく、特に0.05%から0.5%が好ましい。
【0014】本発明カラギーナンは、抗アレルギー体質強化機能を有する限り、その構造の一部が改変あるいは修飾されていている誘導体であってもよい。本発明カラギーナンの誘導体としては、例えば、薬理上許容される塩、エステルあるいはプロドラック等が挙げられる。薬理上許容される塩としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)である。これらの水酸化物または炭酸塩、アルカリ金属アルコキサイド(ナトリウムメトキサイド、カリウムt-プトキサイド等)との塩が挙げられる。また、塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸)や有機酸(マレイン酸、クエン酸、フマル酸等)を付加した酸付加塩、更にはアミンの付加塩、アミノ酸の付加塩等が挙げられる。なお、上記の塩の水和物もここでいう塩に含まれる。エステルは、アルコールまたはカルボン酸とのエステル化反応で生じるエステルであれば特に限定されない。アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられ、またはカルボン酸としてはギ酸、酢酸、乳酸等が挙げられる。
【0015】プロドラックとは、生体に投与された後にラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンに変化して、抗アレルギー体質強化機能を発現する化合物を意味する。安定性や吸収性の改善、副作用の低減等を目的としてプロドラック化された本発明カラギーナンも本発明でいう誘導体に含まれる。さらに、本発明カラギーナンは、精製された本発明カラギーナンのみを含むものに限定されず、抗アレルギー体質強化機能を有する限り、本発明カラギーナンを含有する粗精製物であってもよく、その使用形態により適宜選択することができる。本発明の有効成分である本発明カラギーナンは、食品添加物として世界各国で安全に食品に利用されており、容易に入手でき、比較的安価で安全性の優れた物質であるため、医薬品、飲食品等に広く利用することができる。
【0016】本発明の抗アレルギー体質強化剤は、本発明カラギーナンを有効成分とするものであり、抗アレルギー体質を強化することにより種々のアレルギー疾患の予防剤または治療剤として有用である。アレルギー疾患としては、例えば、ヒトをはじめとするウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの哺乳動物の、アレルゲンとして花粉、ダニ、ハウスダスト等に対するI型アレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、潰瘍性大腸炎などが挙げられる。本発明の抗アレルギー体質強化剤としては、食品添加物として市販されているカラギーナンを用いることができるし、また、各種紅藻類の抽出物を用いることも出来る。本発明の抗アレルギー体質強化剤は、上記アレルギー疾患の予防、治療を目的として投与するとき、食品添加物(増粘・安定化剤)として通常用いられている、安全の確認された濃度より、十分に低い濃度で経口投与されるため、安全でかつ簡便に使用できる。これらの本発明の抗アレルギー体質強化剤は、単独で使用してもよく、また、他の抗アレルギー剤と併用してもよい。
【0017】本発明の抗アレルギー体質強化剤は、そのまま、若しくはこれを公知の医薬用担体と共に製剤化することにより、例えば、アレルギー疾患の医薬品として使用できる。本発明の抗アレルギー体質強化剤は、特に経口投与に適しており、経口投与に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合することが好ましい。本発明の抗アレルギー剤などの医薬品は、例えば、錠剤、顆粒剤、粉剤、シロップ剤等の経口剤や塗布剤として通常用いられる方法で製剤化できる。医薬用担体としては、特に制限はなく、経口投与に適したものが好ましい。例えば、固形担体(デンプン、乳糖、カルボキシメチルセルロース等)、液体担体(蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール、プロピレングリコール等)、油性担体(各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン等)が挙げられる。上記医薬品は、人および人以外の動物(ペット、家畜)用としても使用できる。有効成分の投与量は、患者の性別、年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択・決定される。有効成分としてラムダカラギーナンを投与する場合は、例えば、成人一人あたり一日に0.5〜500 mg 程度摂取できるよう服用すればよいが、好ましくは、液体状の製剤として、0.0005〜0.05 %の溶液にて一日あたり50〜250 ml程度服用する。カッパカラギーナンを投与する場合は、例えば、成人一人あたり一日に15 mg〜1.5 g程度摂取できるよう服用すればよいが、粘度を極力低下させた液体状の製剤として0.01%〜0.5%の溶液にて一日あたり50〜250 ml程度服用するのが好ましい。上記抗アレルギー体質強化剤は長期に継続して服用することが好ましいが、一ヶ月間以上連続して服用するのが特に好ましい。
【0018】次に、本発明の抗アレルギー体質強化飲食品(以下、本発明飲食品という)について述べる。本発明飲食品とは、本発明カラギーナンを有効成分として含有する飲食品であり、アレルギー体質を抗アレルギー体質に強化することにより種々のアレルギー疾患の予防、治療の効果を有する飲食品や健康食品として有用である。アレルギー疾患としては、例えば、ヒトをはじめとするウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの哺乳動物の、アレルゲンとして花粉、ダニ、ハウスダスト等に対するI型アレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、潰瘍性大腸炎などが挙げられる。本発明飲食品は、一般の飲食品に本発明カラギーナンを添加することにより容易に製造することができ、特定保健用食品、機能性食品、特別用途食品、健康志向食品、健康食品などに利用できる。本発明カラギーナンを有効成分として含有せしめるべき飲食品は特に限定されないが、例えば、肉製品、加工野菜、惣菜類、乳製品、菓子、パン、調味料、清涼飲料、果実飲料、酒類等が挙げられる。又、本発明の飲食品の食品形態としては、液状飲食品が好ましく、例えば、本発明の液状乳製品、液体調味料、清涼飲料、果実飲料、酒類などが挙げられる。本発明飲食品に含まれる本発明カラギーナンの有効量は、抗アレルギー体質を強化することにより種々のアレルギー疾患の予防、治療の機能を有する限り特に限定されないが、例えば、ラムダカラギーナンの場合、0.0001%〜0.2%が好ましく、特に0.0005%〜0.05%含有する液状飲食品が好ましい。0.05%以上の濃度では増粘効果による効果の減少の問題が生じるとともに、Th1とTh2バランスの調節活性も減弱するからである。また、飲食品によっては、その形態や飲食方法が異なるため、最終的にそれらの飲食品が実際に飲食に供されるときのラムダカラギーナンの最終濃度を上記の本発明の濃度になるように、本発明飲食品のラムダカラギーナンの含有量を調節することが好ましい。同様に本発明カッパカラギーナンの有効量は0.01%〜0.5%が好ましく、特に0.1%〜0.5%含有する液状飲食品が好ましい。
【0019】さらに、本発明カラギーナンを有効成分として、そのまま、若しくはこれを一般に健康食品に用いられる食品素材や種々の物質と混合することにより、抗アレルギー体質強化健康食品とすることができる。食品素材や種々の物質としては、例えば、糖類、食用たんぱく質、アルコール、ビタミン、増粘多糖類、アミノ酸、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等を挙げることができる。健康食品として食する場合、如何なる形態でも良いが、例えば、錠剤、顆粒剤、粉剤、シロップ剤等の経口剤として通常用いられる方法で製剤化できるが、食品としての嗜好に適したものが好ましい。これらの健康食品は、人および人以外の動物(ペット、家畜)用としても使用できる。健康食品として食される場合の有効成分の飲食量は、性別、年齢、体重、症状、飲食の形態等により、適宜選択・決定される。有効成分としてラムダカラギーナンを投与する場合は、例えば、成人一人あたり一日に0.5〜500 mg 程度摂取できるよう食すればよいが、好ましくは、液体状の健康食品として、0.0005〜0.05%の溶液にて一日あたり50〜250 ml程度服用する。カッパカラギーナンを食する場合は、例えば、成人一人あたり一日に15 mg〜1.5 g程度摂取できるよう服用すればよいが、粘度を極力低下させた液体状の製剤として0.05%〜0.5%の溶液にて一日あたり50〜250 ml程度服用するのが好ましい。このように上記本発明飲食品を通常の食形態の中で継続して毎日摂取することにより、飲食者の体質が抗アレルギー体質に強化され、アレルギー症の予防、治療に大きな効果が期待される。
【0020】
【実施例】以下に、試験例及び実施例により、本発明を更に具体的に説明する。本発明の技術的範囲は、これらの例により何ら限定されるものではない。
試験例1( 本発明カラギーナンによるTh1とTh2のバランス調節)
下記方法でIFN−γとIL-4を測定することによりTh1とTh2のバランス調節活性を評価し、その結果を図1、図2および図3に示した。
(1) ラムダカラギーナンは、シグマ社より購入したType III CarrageenanをPolymixin BカラムにてLPSの混在を除去した後試験に用いた。
(2) [In Vitro Concanavaline A (Con A) 刺激法] Th0細胞源としてNaive BALB/cマウスから脾臓細胞を常法により調製し、RPMI-1640 (10% FBS, 50mM HEPES,0.1mM 2-mercaptoethanol, 100unit/ml penicillin, 100μg/ml streptomycin)培地にて最終濃度2 x 106 cells/mlになるよう2 μg/mlのCon Aと共培養した。この時様々な濃度のラムダカラギーナンを加え48時間後に培養上清中のIFN−γおよびIL-4をPharmingen社製OptEIA kitによるELISA法にて測定した。ラムダカラギーナンの結果を図1左側に、カッパカラギーナンの結果を図2左側の列に各々示した。
(3) [In Vitro スーパー抗原 (SEB) 刺激法] Th0細胞源としてNaive BALB/cマウスから脾臓細胞を常法により調製し、RPMI-1640 (10% FBS, 50mM HEPES, 0.1mM 2-mercaptoethanol, 100unit/ml penicillin, 100μg/ml streptomycin) 培地にて最終濃度5 x 106 cells/mlになるよう10 μg/mlのSEBと共培養した。この時様々な濃度のラムダカラギーナンを加え48時間後に培養上清中のIFN−γおよびIL-4をPharmingen社製OptEIAkitによるELISA法にて測定した。ラムダカラギーナンの結果を図1右側に、カッパカラギーナンの結果を図2右側の列に各々示した。以上の実験から、ラムダカラギーナンおよびカッパカラギーナンは、Naive Th0細胞が刺激を受けて分化・増殖する際に、IFN−γ産生の増強とIL-4産生の抑制をすることによりTh1とTh2のバランスをTh1方向へ調節することが示された。
(4) [In Vitro抗原 (鶏卵アルブミンOVA)特異的 刺激法1] 50 μg OVAを2 mgの水酸化アルミニウムに吸着させた抗原アジュバント混合液にて1週間おきに2度腹腔内免疫をBALB/cマウスに行った。最終免疫から2週間後にTh2細胞源として脾臓細胞を常法により調製し、RPMI-1640 (10% FBS, 50mM HEPES, 0.1mM 2-mercaptoethanol, 100unit/ml penicillin, 100μg/ml streptomycin) 培地にて最終濃度5 x 106 cells/mlになるよう100 μg/mlのOVAと共培養した。この時様々な濃度のラムダカラギーナンを加え72時間後に培養上清中のIFN−γをPharmingen社製OptEIA kitによるELISA法にて測定した。結果を図3左側の列に示した。以上の実験から、ラムダカラギーナンは、予めTh2に分化したT細胞が刺激を受け増殖する際に、IFN−γ産生の増強を促すことにより、Th1方向へ免疫応答を再調節することが出来ることが示された。
(5) [In Vitro抗原 (鶏卵アルブミンOVA)特異的 刺激法2] 100 μg OVAのフロイント完全アジュバント(CFA)との混合液を用いてBALB/cマウスの足しょ皮下免疫を行った。免疫から2週間後にTh1細胞源として脾臓細胞とリンパ節細胞を常法により調製し、RPMI-1640 (10% FBS, 50mM HEPES, 0.1mM 2-mercaptoethanol,100unit/ml penicillin, 100μg/ml streptomycin) 培地にて最終濃度5 x 106cells/mlになるよう100 μg/mlのOVAと共培養した。この時様々な濃度のラムダカラギーナンを加え72時間後に培養上清中のIFN−γをPharmingen社製OptEIAkitによるELISA法にて測定した。結果を図3中央および右側の列に示した。以上の実験から、ラムダカラギーナンは、予めTh1細胞に分化したT細胞が刺激を受けて増殖する際に、IFN−γ産生を更に増強し、よりTh1方向へ免疫応答を調節することが示された。
【0021】試験例2(本発明カラギーナンによるTh1増強性IL-12産生)
Th1の強力な増強活性を有するIL-12を測定することによりTh1とTh2のバランス調節活性を評価し、その結果を図4R>4に示した。BALB/cマウスに4mlの1%FBS含有等張化リン酸バッファー(PBS)を腹腔内投与し常在性マクロファージを回収した。RPMI-1640 (10% FBS, 50mM HEPES, 0.1mM 2-mercaptoethanol, 100unit/ml penicillin, 100μg/ml streptomycin) 培地にて懸濁後一晩CO2インキュベーター中で培養し接着性のマクロファージのみを精製後、最終濃度5 x 105 cells/mlになるよう培養した。この時様々な濃度のラムダカラギーナンを加え24時間後に培養上清中のIL-12をPharmingen社製OptEIA kitによるELISA法にて測定した。以上の実験から、ラムダカラギーナンはTh1細胞によるI型免疫応答の強力な誘導剤であるIL-12産生をマクロファージに誘導することが出来ることが示された。
【0022】試験例3(本発明ラムダカラギーナンのTh1とTh2バランス調節によるIgE産生抑制)
In vivoにおいてラムダカラギーナンがTh1とTh2バランスを調節しTh2応答の減弱に至る活性を抗原 (OVA) 特異的IgE産生減少を測定することにより評価し、その結果を図5に示した。50 μg OVAを2 mgの水酸化アルミニウムに吸着させた抗原アジュバント混合液で1週間おきに2度腹腔内免疫をBALB/cマウスに行った。1回目の免疫当日より生理食塩水に溶解したラムダカラギーナンを500 μlずつ7日目を除く28日目まで計24回連続投与した。最終免疫から2週間後に血清を調製し、OVA特異的IgEおよびIgG2a抗体価をELISA法にて測定した。また、上記と同様に免疫を行い、ラムダカラギーナンを500 μlずつ免疫後14日後より28日目まで計12回連続投与し、最終免疫から3週間後の血清OVA特異的IgE抗体価をELISA法にて測定した結果を図6に示した。ELISAは以下の通り行った。 Nunc社製ELISAプレートMaxisorpを50 μg/mlの濃度で0.1M NaHCO (pH8.2)に溶解したOVAを用いてコーティングした。0.2%Tween-20含有PBS (PBS-tween) に溶解した1% BSAでプレートをブロッキングしたのち、1%BSA/PBSで希釈した血清を100μlずつ加え1時間・室温で処理した。100 μlのビオチン化抗マウスIgE抗体(Pharmingen社製1 : 500)あるいはIgG2a抗体(Pharmingen社製1 : 500)で結合したのち、100 μlのPeroxidase-streptoavidine(Vector 社製、1:3000希釈)で更に結合した。上記の試薬は何れも1% BSA含有PBSで希釈した。最終的に、TMB基質液(Moss社製)100 μlで発色後、100 μlの0.05N HClで反応を停止し、ELISAプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。以上の実験から、ラムダカラギーナンは、マウス個体レベルにおいてTh2により産生が誘導されるアレルギー要因・IgE抗体の産生を抑制し、Th1により産生が誘導される抗アレルギーIgG2a抗体には影響を与えないことが示され、Th1による抗アレルギー体質の強化が誘導出来ることが示された。特にアレルギー性抗体であるIgEの産生誘導が完了している14日後からラムダカラギーナンを経口投与しても抑制効果が認められることから、アレルギー性抗体をすでに持っているアレルギー患者にも有効であることが示唆された。
【0023】試験例4(本発明カッパカラギーナンのTh1とTh2バランス調節によるIgE産生抑制)
In vivoにおいてカッパカラギーナンがTh1とTh2バランスを調節しTh2応答の減弱に至る活性を総IgE抗体価を測定することにより評価し、その結果を図7に示した。BALB/cマウスを用い、生理食塩水に溶解したカッパカラギーナンを500 μlずつ週3回、4週間に渡り計12回投与した。30日目に血清を調製し、総IgE抗体価をELISA法にて測定した。ELISAは以下の通り行った。 Nunc社製ELISAプレートMaxisorpを1 μg/mlの濃度で0.1M NaHCO3 (pH8.2)に溶解したPharmingen社製抗マウスIgE抗体でコーティングした。0.2%Tween-20含有PBS (PBS-tween) に溶解した1% BSAでプレートをブロッキングしたのち、1%BSA/PBSで希釈した血清を100μlずつ加え1時間・室温で処理した。100 μlのPeroxidase標識抗マウスIgE抗体(SBA社製1 : 7,500)で結合後、TMB基質液(Moss社製)100 μlで発色させた。100 μlの0.05N HClで反応を停止し、ELISAプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。以上の実験から、カッパカラギーナンは、マウス個体レベルにおいてTh2により誘導されるアレルギー要因・IgE抗体の産生を抑制することが示され、Th2によるアレルギー体質の軽減が誘導されることが示された。
【0024】試験例5(本発明ラムダカラギーナンのTh1とTh2バランス調節による血中ヒスタミン遊離抑制)
In vivoにおけるラムダカラギーナンの抗原 (OVA) 特異的IgE産生減少効果がアレルギー症状の軽減につながるかを、血中ヒスタミン遊離への効果を測定することにより評価し、その結果を図8に示した。50 μg OVAを2 mgの水酸化アルミニウムに吸着させた抗原アジュバント混合液で1週間おきに2度腹腔内免疫をBALB/cマウスに行った。1回目の免疫当日より生理食塩水に溶解したラムダカラギーナンを500 μlずつ7日目を除く28日目まで計24回連続投与した。35日目に生理食塩水に溶解した抗原(OVA)100μgを腹空内投与し、10分後の血中に存在するヒスタミン量を常法に従いHPLCにより定量した(Loser C, Wunderlich U, Folsch UR. J Chromatography 1988; 430: 249-262)。非免疫群のマウスに比べ免疫群のマウスでは抗原を腹空内に再投与することにより、ヒスタミン量は50 ng/mlから500 ng/mlへと大きく増加したが、ラムダカラギーナンの経口投与群においては顕著なヒスタミン遊離抑制が認められた。以上の実験より、ラムダカラギーナンは抗原特異的IgE抗体価を抑制することによりアレルギー発症の引き金をひくヒスタミンの遊離を減少させ、アレルギー体質の軽減作用を示すことが示された。
【0025】試験例6(ラムダカラギーナンの経口免疫寛容に及ぼす影響)
本発明のラムダカラギーナンが、通常の腸管免疫応答である経口免疫寛容に及ぼす影響を評価し、その結果を図9R>9に示した。0.5ml生理食塩水に溶解した5mgOVAをBALB/cマウスに予め5日間経口摂取させることにより経口免疫寛容を誘導した。この時ラムダカラギーナンを共存させることによりラムダカラギーナンの経口免疫寛容に及ぼす影響を評価した。最初の経口摂取から1週間および2週間後に2 mgの水酸化アルミニウムに吸着させた抗原(OVA)アジュバント混合液にて2度腹腔内免疫を行った。最終免疫から2週間後に血清を調製し、OVA特異的IgG抗体価をELISA法で測定した。ELISAは実施例3と同様に行ったが、ビオチン化抗マウスIgE抗体の代わりビオチン化抗IgG抗体(Cappel社製1 : 1,000)を用いた。更に、上記のマウスより脾臓細胞を調製しRPMI-1640 (10% FBS, 50mM HEPES, 0.1mM 2-mercaptoethanol, 100unit/ml penicillin, 100μg/ml streptomycin) 培地にて最終濃度5 x 106 cells/mlになるよう100 μg/mlのOVAと共培養した。72時間後に培養上清中のIFN−γをPharmingen社製OptEIA kitによるELISA法にて測定した。以上の実験より、ラムダカラギーナンの経口投与は腸管免疫において重要な機能である経口免疫寛容の誘導には全く影響を与えず、上記に記述したTh1とTh2のバランス調節による抗アレルギー体質増強が出来ることが示された。
【0026】実施例1(本発明の抗アレルギー体質強化剤を含有する医薬品(抗アレルギー剤)の製造)
ラムダカラギーナンを、以下の方法で調製し、医薬品用シロップとした。ラムダカラギーナン粉末(Sigma社製)よりエンドトキシンを除去後、滅菌精製水に溶解し、この溶解液にチェリーシロップを穏やかに攪拌しながら添加して1000mLとする、下記組成のシロップ剤を製造した。
<シロップ剤の組成>ラムダカラギーナン 0.05 gチェリーシロップ 833 mL滅菌精製水 残余このシロップ剤は、有効成分であるラムダカラギーナンを 0.005%含有しており、1回当たり100 mLを服用し、1日当たり 3 回服用することが好ましい。本剤は、長期間継続して服用することが好ましく、特に花粉飛散などアレルギー症状が予想されるより十分早い時期に服用を開始することが好ましい。
【0027】実施例2(本発明の抗アレルギー体質強化飲食品(液体調味料)の製造)
本発明の抗アレルギー剤を含有する食品として、以下の組成(1Lあたりの添加量)の濃縮2倍つゆを製造した。濃い口醤油(420 ml)、味醂(70 ml)、砂糖(95 g)、グルタミン酸ソーダ(5g)、コハク酸ソーダ (0.1 g)、5'-ヌクレオタイド (0.2 g)、かつお節 (20 g)、そうだ節 (40 g)、さば節 (20 g)、ラムダカラギーナン( 三栄源エフ・エフ・アイ 社製)(0.1 g)。これらの調味料は、煮物、鍋物、スープなど各種調理において利用することにより、一般の日常の家庭料理において抗アレルギー体質強化効果を発揮することができる。
【0028】実施例3(本発明の抗アレルギー体質強化飲食品(清涼飲料水)の製造)
本発明の抗アレルギー体質強化飲食品として、以下の組成(重量部)の清涼飲料水を製造した。
<清涼飲料水の組成> ラムダカラギーナン( 三栄源エフ・エフ・アイ 社製 ) 0.002 % ショ糖 3.0 果糖ブトウ糖液糖 7.0 クエン酸 0.1 水 89.9 当該抗アレルギー体質強化清涼飲料水は、このまま飲料水として好適あり、常用することにより、抗アレルギー体質増強効果を発揮することができる。このようにして製造された飲食品は、抗アレルギー体質強化作用を有する、特定保健用食品、機能性食品、特別用途食品、健康志向食品、健康食品などとしても利用できる。
【0029】実施例4(本発明の抗アレルギー体質強化飲食品(水)の製造)
本発明の抗アレルギー体質強化飲食品として、以下の組成(重量部)の水を製造した。ラムダカラギーナン( 三栄源エフ・エフ・アイ 社製 )(0.002%)を、セラミック濾過した水に撹拌溶解し、滅菌、無菌充填、密閉して水を製造した。当該抗アレルギー体質増強・水は、このまま飲水として好適あり、また煮物、鍋物、スープなど各種調理において利用することにより、一般の家庭料理において、常に抗アレルギー体質増強効果を発揮することができる。
【0030】
【発明の効果】本発明により、ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンを有効成分とする抗アレルギー体質強化剤及び該抗アレルギー体質強化剤を含有することを特徴とする、医薬品が提供された。さらに、ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンの有効量を含有する抗アレルギー体質強化飲食品が提供された。本発明の抗アレルギー体質強化剤、それらを含有する医薬品等及び抗アレルギー体質強化飲食品は、Th1とTh2バランス調節機能に起因する根本的な抗アレルギー体質強化作用を有しており、種々のアレルギー疾患の予防、治療に有効である。本発明のラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンは、食経験のある安全な物質であり、さらに、経口投与により、また、その摂取時においてアレルゲンを必要としないため、日常的に、簡便かつ容易に用いることができる。
【0031】
【図面の簡単な説明】
【図1】ラムダカラギーナンによる抗アレルギー因子(IFN−γ)とアレルギー因子(IL-4)の産生調節。
【図2】カッパカラギーナンによる抗アレルギー因子(IFN−γ)とアレルギー因子(IL-4)の産生調節。
【図3】ラムダカラギーナンによる抗原(OVA)特異的IFN−γ産生のIn Vitro における増強。
【図4】ラムダカラギーナンによる常在性腹腔内マクロファージからの IL-12の産生増強。
【図5】ラムダカラギーナンによるアレルギー性抗体[IgE]の産生抑制-1。
【図6】ラムダカラギーナンによるアレルギー性抗体[IgE]の産生抑制-2。
【図7】カッパカラギーナンによるアレルギー性抗体[IgE]の産生抑制。
【図8】ラムダカラギーナンによる血清ヒスタミンの遊離抑制。
【図9】ラムダカラギーナンの経口摂取マウスでの正常経口免疫寛容の誘導。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンを有効成分とする抗アレルギー体質強化剤。
【請求項2】 抗アレルギー体質強化が、Th1/Th2バランス調節機能に起因する抗アレルギー体質強化である、請求項1に記載の抗アレルギー体質強化剤。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の抗アレルギー体質強化剤を含有することを特徴とする医薬品。
【請求項4】ラムダカラギーナン及び/又はカッパカラギーナンの有効量を含有する抗アレルギー体質強化飲食品。
【請求項5】 抗アレルギー体質強化が、Th1/Th2バランス調節機能に起因する抗アレルギー体質強化である、請求項4に記載の抗アレルギー体質強化飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2003−81841(P2003−81841A)
【公開日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−170185(P2002−170185)
【出願日】平成14年6月11日(2002.6.11)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【出願人】(000173935)財団法人野田産業科学研究所 (9)
【Fターム(参考)】