説明

抗アレルギー性組成物並びにこれを含有する飲食物及び飲食物用添加剤

【課題】バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分と、α−シクロデキストリンとを含有する抗アレルギー性組成物並びにこれを含有する飲食物及び飲食物用添加剤を提供する。
【解決手段】本発明の抗アレルギー性組成物は、(1)バラ科バラ属植物の抽出物、(2)バラ科バラ属植物、並びに(3)バラ科バラ属植物の抽出物及び/又は該バラ科バラ属植物を発酵培養して得られた発酵物、のうちの少なくとも1種と、α−シクロデキストリンと、を含有する。本発明の飲食物は本発明の抗アレルギー性組成物を含有する。本発明の飲食物用添加剤は本発明の抗アレルギー性組成物を含有する。本発明の抗アレルギー性組成物等によれば、アレルギー疾患を抑制し、改善できる。また、医薬品特有の副作用などを生じず長期にわたって継続的に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルギー性組成物並びにこれを含有する飲食物及び飲食物用添加剤に関する。更に詳しくは、本発明は、バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分と、α−シクロデキストリンとを含有する抗アレルギー性組成物並びにこれを含有する飲食物及び飲食物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体は免疫機能を備えるが、過剰な免疫反応を起こす一例がアレルギーである。アレルギーはプロセスによりI〜IV型に分類され、このうちI型は免疫グロブリン(IgE)が関与する。即ち、抗原(カビ、花粉等)が体内に侵入すると、これに対する抗体(IgE抗体)が作られ、この抗体のFc部分が肥満細胞や好塩基球表面のIgEレセプターに結合する(ヒトIgE−IgEレセプター結合)。その後、再び同一の抗原が侵入すると、抗原が細胞表面のIgE抗体のFab部分にある抗原結合基と結合することを起点とする刺激を生じ、肥満細胞等から起炎物質が放出され、アレルギーが誘発される。このI型のアレルギー疾患には花粉症、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎及び気管支喘息等がある。
【0003】
従来より、アレルギーを抑制する各種医薬品が報告されているが、医薬品特有の副作用が問題となることが多い。このため、近年、医薬品に頼らず、穏やかに継続的に使用できる抗アレルギー性の飲食物等が注目されている。このような抗アレルギー性の飲食物等としてはバラ科バラ属植物及びその発酵物による抗アレルギー性については、下記特許文献1〜3で知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−72358号公報
【特許文献2】特開平11−269075号公報
【特許文献3】特開2002−37740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、アレルギー疾患は増加傾向にあり、その予防方法及び改善方法が注目されている。そして、更に優れた抗アレルギー性に示し、穏やかに継続的に使用できる飲食物等が求められている。
本発明は、上記課題を解決するものであり、穏やかに継続的に使用できる抗アレルギー性組成物並びにこれを含有する飲食物及び飲食物用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
〔1〕(1)バラ科バラ属植物の抽出物、(2)バラ科バラ属植物、並びに(3)バラ科バラ属植物の抽出物及び/又はバラ科バラ属植物を発酵培養して得られた発酵物、のうちの少なくとも1種と、α−シクロデキストリンと、を含有することを特徴とする抗アレルギー性組成物。
〔2〕上記バラ科バラ属植物はバラである上記〔1〕に記載の抗アレルギー性組成物。
〔3〕上記バラ科バラ属植物の抽出物は、水及び炭素数1〜5の1価アルコールのうちの少なくとも1種を抽出溶媒とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の抗アレルギー性組成物。
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕のうちのいずれかに記載の抗アレルギー性組成物を含有することを特徴とする飲食物。
〔5〕上記〔1〕乃至〔3〕のうちのいずれかに記載の抗アレルギー性組成物を含有することを特徴とする飲食物用添加剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗アレルギー性組成物によれば、アレルギー疾患を抑制し、改善できる。また、医薬品特有の副作用などを生じず長期にわたって継続的に使用できる。
バラ科バラ属植物がバラである場合は、特に優れた抗アレルギー性を奏する。
バラ科バラ属植物の抽出物が水及び炭素数1〜5の1価アルコールのうちの少なくとも1種を抽出溶媒とする場合は、特に優れた抗アレルギー性を奏する。
本発明の飲食物によれば、アレルギー疾患を抑制し、改善できる。また、医薬品特有の副作用を生じず長期にわたって継続的に使用できる。
本発明の飲食物用添加剤によれば、アレルギー疾患を抑制し、改善できる。また、医薬品特有の副作用を生じず長期にわたって継続的に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]抗アレルギー性組成物
本発明の抗アレルギー性組成物は、(1)バラ科バラ属植物の抽出物、(2)バラ科バラ属植物、並びに(3)バラ科バラ属植物の抽出物及び/又はバラ科バラ属植物を発酵培養して得られた発酵物、のうちの少なくとも1種と、α−シクロデキストリンと、を含有することを特徴とする。
【0009】
上記「(1)バラ科バラ属植物」としては、バラ科バラ属に属するバラ(Rosa spp.)が好ましい。このバラとしては、ロサ・ケンテフォリア(Rosa centfolia)、ロサ・ダマスケナ(Rosa damascena)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、ロサ・モスカタ(Rosa moschata)、ロサ・フォエティダ(Rosa foetida)、ロサ・ギガンテア(Rosa gigantea)、ノイバラ(Rosa multiflora)、テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)、イザヨイバラ(Rosa roxburghii)等の野生種、又はこれらを交配して得られた園芸種等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、バラ科バラ属植物としては、植物体の全体を用いてもよく、植物体の一部のみを用いてもよい。植物体の一部としては、例えば、花、花びら、葉、茎、根、果実及び種子等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、バラ科バラ属植物は、収穫したままの植物体の一部及び/又は全部を用いてもよく、乾燥させて用いてもよい。
【0010】
上記「(2)バラ科バラ属植物の抽出物」(以下、単に「バラ抽出物」ともいう)は、上記バラ科バラ属植物から抽出された抽出物である。このバラ抽出物としては、水系溶媒による水系抽出物及び油系溶媒による油系抽出物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのうちでは水系抽出物が好ましい。また、上記水系溶媒とは、水のみからなる溶媒、及び水と水に溶解し得る成分とからなる溶媒を表す。水に溶解し得る成分としては有機溶媒及び無機化合物が挙げられる。
【0011】
有機溶媒としては、炭素数1〜5の1価アルコール(エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等)、炭素数2〜5の多価アルコール{グリセリン、イソプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(1,3−ブチレングリコール等)など}、エステル(酢酸メチル等)、及びケトン(アセトン等)などが挙げられる。これらのなかでは炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜4)の1価アルコール及び/又は炭素数2〜5(好ましくは炭素数1〜4)の多価アルコールが好ましく、更には、炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜4)の1価アルコールが好ましく、特に炭素数1〜2の1価アルコール(メタノール及びエタノール)が好ましい。これらの有機溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記のうち水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、水と有機溶媒との合計を100質量%とした場合に、有機溶媒は80質量%以下(更に50質量%以下、特に40質量%以下、通常5質量%以上)とすることが好ましい。この範囲では、抽出効率を特に高くすることができる。
また、上記混合溶媒に用いる有機溶媒として、炭素数1〜5の1価アルコール(以下、単に「アルコール」ともいう)を用いる場合、水とアルコールとの合計を100質量%とした場合に、アルコールは10〜50質量%(更には15〜40質量%、特に20〜40質量%)とすることが好ましい。
【0013】
上記無機化合物としては、リン酸2水素ナトリウム、酸水素2ナトリウム等の抽出溶媒を緩衝化するための無機化合物(緩衝化用無機化合物)、塩酸、硫酸及び水酸化ナトリウム等の抽出溶媒のpHを調整するための無機化合物(pH調整用無機化合物)等が挙げられる。このうち、例えば、緩衝化用無機化合物は0.005〜0.015モル濃度となるように抽出溶媒に含有させることができる。また、pH調整用無機化合物は0.03〜0.08モル濃度となるように抽出溶媒に含有させることができる。これらの無機化合物を含有する場合には、抽出効率の向上、抽出時間の短縮等の抽出促進作用を得ることができる。
【0014】
抽出を行う際の抽出方法及び抽出条件は特に限定されない。即ち、例えば、抽出方法としては、浸漬抽出、攪拌抽出、還流抽出、蒸留抽出、振とう抽出、及び超音波抽出等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、抽出操作は1回で行ってもよく、複数回(抽出操作を行った後に得られる抽出残渣を再度抽出することを複数回数繰り返す)行ってもよい。また、例えば、植物体の異なる部位毎に各種抽出溶媒を用いて抽出を行った後に、これらを混合してバラ抽出物を得ることもできる。
【0015】
抽出溶媒の使用量は特に限定されず、バラ科バラ属植物と抽出溶媒との合計を100質量%とした場合に、抽出溶媒は90〜99質量%(更に91〜98質量%、特に92〜97質量%)とすることができる。この範囲であれば優れた抗アレルギー性を得ることができる。
【0016】
また、抽出温度は特に限定されず、常温抽出であってもよく、加熱抽出であってもよい。常温抽出では、例えば、バラ科バラ属植物を10〜35℃(更には15〜30℃)の温度の抽出溶媒に浸漬して抽出することができる。また、加熱抽出では、溶媒の種類等にもよる(有機溶媒を含む混合溶媒を用いる場合は有機溶媒の沸点以下で用いることが好ましい)が、例えば、被抽出物を40〜100℃(更には50〜99℃)の温度の抽出溶媒に浸漬して抽出することができる。また、抽出期間中は恒温で行ってもよく、温度を変化させてもよい。抽出溶媒が水系溶媒である場合には、特に水である場合には、加熱抽出が好ましく、抽出溶媒の温度は40〜100℃(更に60〜99℃、特に65〜97℃、より特に70〜95℃)とすることが好ましい。抽出温度が上記範囲であれば、短時間で抽出を効率よく行うことができる。
【0017】
更に、抽出溶媒のpHは特に限定されず、例えば、3〜10(更には4〜9、特に5〜8)とすることができる。また、抽出圧力は特に限定されず、常圧でもよく、加圧でもよく、減圧でもよい。更に、抽出時間は特に限定されない。抽出時間は抽出温度等の他の抽出条件により適宜の時間とすればよいが、例えば、0.5〜5日間(更には0.5〜6時間、より更には1〜5時間、特に1.5〜4時間)とすることができる。抽出時間が上記範囲内であれば、十分な抗アレルギー性を有するバラ抽出物が得られる。
【0018】
上記バラ抽出物を用いる場合、抽出後の抽出物残渣と抽出液(バラ抽出物を含む抽出溶媒)とは、通常、分離する。この際の分離方法は特に限定されないが、フィルタプレス、及び濾過(加圧、常圧)等により分離することができる。抽出残渣から分離された抽出液は、そのまま本発明の抗アレルギー性組成物として用いることができる。また、抽出残渣から分離された抽出液は、更にその後、含まれる抽出溶媒を除去して用いることができる。抽出液からの抽出溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、エバポレーション及び凍結乾燥法等により行うことができる。抽出液から分取された固形分(バラ抽出物固形分)はそのまま用いてもよく、更に精製を行ってもよい。即ち、この固形分を水及び/又は有機溶媒等に溶解させた後、濾過を行って夾雑物等を除去し、その後、溶媒を除去して精製することができる。更に、必要に応じて、滅菌処理等を施すことができる。
【0019】
上記「(3)バラ科バラ属植物の抽出物及び/又はバラ科バラ属植物を発酵培養して得られた発酵物」(以下、単に「発酵物」ともいう)は、バラ科バラ属植物の抽出物及びバラ科バラ属植物のうちの少なくとも1種を含有する培地に微生物を接種して発酵培養して得られた発酵物である。
【0020】
上記「発酵培養」に用いられる微生物としは、細菌及び酵母が挙げられる。このうち細菌としては枯草菌及び乳酸菌が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち枯草菌(Bacillus subtilis)としては納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)が挙げられる。一方、乳酸菌としては、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、及びロイコノストック属等の各乳酸菌が挙げられる。また、ビフィズス菌属(ビフィドバクテリウム属)も含まれる。
【0021】
上記ラクトバチルス属に属する菌種としては、例えば、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus brevis、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus cellobiosus、Lactobacillus delbruckii、Lactobacillus fermenti、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus jugurti、Lactobacillus kefiri、Lactobacillus lactis、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus vaccinostercus、Sporolactobacillus inulinus等が挙げられる。
【0022】
上記ストレプトコッカス属に属する菌種としては、例えば、Streptococcus cremoris、Streptococcus diacetilactis、Streptococcus faecalis、Streptococcus faecium、Streptococcus lactis、Streptococcus lactis sub−sp. diacetylactis、Streptococcusthermophilus、Streptococcus uberis等が挙げられる。
【0023】
上記ラクトコッカス属に属する菌種としては、例えば、Lactococcus lactis subsp.cremoris、Lactococcus lactis subsp.lactis、Lactococcus lactis subsp.hordniae等が挙げられる。
【0024】
上記ペディオコッカス属に属する菌種としては、例えば、Pediococcus acidilactis、Pediococcus cerevisiae、Pediococcus halophilus、Pediococcus pentosaceus等が挙げられる。
【0025】
上記ロイコノストック属に属する菌種としては、例えば、Leuconostoc citrovorum、Leuconostoc cremoris、Leuconostoc dextranicum、Leuconostoc mesenteroides等が挙げられる。この中で、特にLeuconostoc mesenteroidesが好ましく用いられる。
【0026】
上記ビフィズス菌属に属する菌種としては、例えば、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactentis、Bifidobacterium liberorum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium parvulorum、Bifidobacterium pseudolongum、Bifidobacterium thermophilum等が挙げられる。
【0027】
上記各種乳酸菌のなかでは、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、及びロイコノストック属に属する乳酸菌が好ましい。また、特にLactobacillus brevis、Lactobacillus casei subsp.casei、Lactococcus lactis subsp.hordniae、及びLeuconostoc mesenteroides subsp.mesenteroidesが好ましい。これらの乳酸菌は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
更に、上記酵母としてはSaccharomyces属に属する酵母が好ましい。このSaccharomyces属に属する酵母としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces bayanus、Saccharomyces diastaticus及びSaccharomyces rouxii種等が挙げられる。このうちではZygosaccharomyces rouxiiが好ましい。これらの酵母は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0029】
これらの微生物は、市販されている一般的なものを用いるのが通常であるが、自然的、又はニトロソグアニジン等の化学物質、X線、紫外線等により人為的変異手段により得られ、菌学的性質が変異した変異株を用いることもできる。
【0030】
上記発酵培養における培養条件は特に限定されないが、通常、通気攪拌を行うことにより行われる。また、培養を行うための培地は、通常、液体培地であるが、固形培地でもよい。また、培地のpHは、通常、4〜7(好ましくは5〜7、更に好ましくは6〜7)である。更に、培養温度は、通常、40〜45℃である。また、培養の際、糖等の各種の栄養素やpH調製のための酸、アルカリ等を適宜加えることができる。更に、発酵は混合発酵でもよく、連続発酵でもよい。
【0031】
上記発酵物は、培地全体と共に用いてもよく、培地の一部と共に用いてもよく、培地を除いて用いてもよい(即ち、例えば、発酵物の抽出物等)。発酵物の形態は特に限定されず、培養して得られた発酵培養液を濾過したままの液体でもよく、この液体を脱色等の後処理をした処理液でもよく、これらの液体を濃縮した濃縮液でもよい。更に、これらの液体から溶媒(分散媒)を除去した固形物(粉末等)でもよい。尚、このバラ発酵物を得る際の発酵培養に際しては、培地には上記バラ及びバラ抽出物以外の他の成分が含有されてもよい。
【0032】
これらの(1)バラ抽出物、(2)バラ科バラ属植物、及び(3)発酵物、のうちの少なくとも1種(即ち、バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分)の含有量は特に限定されないが、これら(1)〜(3)の合計量で1人1日あたり1〜20mg/kg(より好ましくは5〜18mg/kg、更に好ましくは8〜15mg/kg)の摂取量となるように含有されることが好ましい。即ち、例えば、体重60kgの人においては60〜1200mg/日(より好ましくは300〜1080mg/日、更に好ましくは480〜900mg/日)が好ましい。この摂取量は1回で摂取してもよく、2回以上に分けて摂取してもよい。上記範囲であれば十分な抗アレルギー性を得ることができる。
【0033】
上記「α−シクロデキストリン」は、6つのD−グルコースがα1→4結合してなる環状構造を有する化合物、及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、メチル体(メチル化シクロデキストリン等)、プロピル体(ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン等)、及びアセチル体(モノアセチル化シクロデキストリン、トリアセチル化シクロデキストリン等)などが挙げられる。これらのα−シクロデキストリンは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
α−シクロデキストリンの含有量は特に限定されないが、1人1日あたり10〜170mg/kg(より好ましくは25〜150mg/kg、更に好ましくは50〜120mg/kg)の摂取量となるように含有されることが好ましい。即ち、例えば、体重60kgの人においては600〜10200mg/日(より好ましくは1500〜9000mg/日、更に好ましくは3000〜7200mg/日)が好ましい。この摂取量は1回で摂取してもよく、2回以上に分けて摂取してもよい。上記範囲であれば十分な抗アレルギー性を得ることができる。
【0035】
前記(1)〜(3)のバラ科バラ属植物及びこれに由来する成分のうちの少なくとも1種とα−シクロデキストリンとが含有されることにより、優れた抗アレルギー性を得ることができる。即ち、バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分は、従来より多用されている、例えば、シソエキス等による抗アレルギープロセスとは異なるプロセスを有するために、これらの従来より多用されている各種抗アレルギー成分と併用することができる。また、α−シクロデキストリンは単独で抗アレルギー性を発揮することができる。
【0036】
更に、α−シクロデキストリンは包接作用を有するが、バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分を包接することなく、バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分による抗アレルギー性を阻害することがなく、バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分とα−シクロデキストリンとを併用することにより抗アレルギー性において相加効果及び相乗効果を得ることが可能と考えられる。また、バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分には苦み成分等の味覚において不快な成分(抗アレルギー性において不要な成分)が含有される場合があるが、α−シクロデキストリンが含有されることにより、これらの成分は選択的に包接して不快な味覚を緩和又は解消することができるものと考えられる。
【0037】
本発明の抗アレルギー性組成物には、上記(1)〜(3)の各成分及びα−シクロデキストリン以外にも他の抗アレルギー成分を含有することができる。他の抗アレルギー性成分としては、シソエキス、霊芝エキス、甜茶エキス、乳酸菌、ビタミンE、GABA、ミント等が挙げられる。これらは1種のみを含有してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の抗アレルギー性組成物は、後述する抗アレルギー性を有する飲食物及び飲食物用添加剤として利用できる他、医薬品及び医薬部外品等として利用することができる。医薬品及び医薬部外品として利用する場合には、上記抗アレルギー性成分以外にも他の成分を含有できる。他の成分としては、例えば、成形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、滑沢剤、担体、溶剤、増量剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、増粘剤、被覆剤、吸収促進剤、凝固剤、保存剤(安定剤、防湿剤、着色防止剤、酸化防止剤等)、矯味剤、矯臭剤、着色剤、消泡剤、無痛化剤、帯電防止剤及びpH調節剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記のうち例えば、成形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、第二リン酸カルシウム、コーンスターチ及びアルギン酸等が挙げられる。結合剤としては、単シロップ、ブドウ糖液、澱粉液、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、水及びエタノール等が挙げられる。崩壊剤としては、澱粉、アルギン酸、寒天、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース及び澱粉グリコール酸ナトリウム等が挙げられる。崩壊抑制剤としては、ステアリルアルコール、ステアリン酸、カカオバター及び水素添加油等が挙げられる。滑沢剤としては、硬化植物油誘導体、胡麻油、サラシミツロウ、カルナバロウ、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリエチレングリコール等が挙げられる。担体としては、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びコロイド状ケイ酸等が挙げられる。吸収促進剤としては、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、尿素及び酵素等が挙げられる。
【0040】
この抗アレルギー性組成物を含有する医薬品及び医薬部外品の形態は特に限定されない。即ち、例えば、固形状、粉末状、顆粒状、クリーム状、液状等とすることができる。また、上記各々の形態において、錠剤(糖衣錠、ゼラチン被包錠、胃溶性被覆錠、腸溶性被覆錠、トローチ剤、水溶性フィルムコーティング錠等)、カプセル剤(硬質ゼラチンカプセル剤及び軟質カプセル剤等)、散剤、顆粒剤、液剤、軟膏剤及び貼付剤などとすることができる。更に、これらの各々は経口剤、注射剤、シロップ剤、坐剤及び外用剤として用いることができる。
【0041】
本発明の抗アレルギー性組成物は各種アレルギー性疾患の予防、抑制、改善、治療、又は治癒等の目的で利用できる。上記アレルギー性疾患の種類は特に限定されないが、例えば、花粉症、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、及び気管支喘息等が挙げられる。これらは1種のみに対して用いてもよく、2種以上に対して用いてもよい。また、これらの各種アレルギー性疾患に関する抗原についても特に限定されないが、各種花粉(スギ花粉、イネ花粉等)、動物上皮(ネコ毛)、及びダニ(ヤケヒョウダニ)等が挙げられる。これらは1種のみに対して用いてもよく、2種以上に対して用いてもよい。
【0042】
[2]飲食物
本発明の飲食物は、本発明の抗アレルギー性組成物を含有することを特徴とする。
本発明の飲食物は、上記抗アレルギー性を発揮できる機能性を有する機能性飲食物である。即ち、健康食品、健康飲料、保健食品、保健飲料等も含まれ、通常の飲食物と同様の味覚及び食感等を充足できる機能を有していてもよく(例えば、菓子類、清涼飲料水等)、有さなくてもよい(例えば、カプセル剤食品、錠剤食品等)。
【0043】
本発明の飲食物としては、固形菓子類(キャンディー、飴玉、チューイングガム及びビスケット)等の固形食品、ドリンク剤及び清涼飲料水等の飲料、クリーム状食品及びジャム状食品の半流動食品、ゲル状食品、顆粒状食品及び粉末状食品(直接摂取又は水に溶解もしくは分散させて飲用等)。カプセル状食品(ソフトカプセル、ハードカプセル等)、錠剤状食品(トローチ剤等)、抽出用食品(湯に浸して抽出成分を飲用するパック状食品及び健康茶等)などが挙げられる。
【0044】
前記抗アレルギー組成物を飲食物に配合する方法は特に限定されず、例えば、油脂、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリン等のアルコール、並びにこれらの混合物等に前記抗アレルギー性組成物を混合、分散又は溶解させて、その後、飲食物に配合して本発明の飲食物を得ることができる。また、バインダとして作用するアラビアガム及びデキストリン(α−シクロデキストリンを除く)等と前記抗アレルギー組成物とを混合した後に乾燥等させて顆粒状、粉末状等の形態の本発明の飲食物を得ることができる。
本発明の飲食品の具体例としては、各々抗アレルギー性組成物を含有する、酒、炭酸飲料、果実飲料、コーヒー、紅茶、茶、乳酸菌飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、飴、ガム、菓子(ビスケット)、パン及び麺類等が挙げられる。
【0045】
本発明の飲食物に含有される前記抗アレルギー性組成物の割合は特に限定されないが、前述のように抗アレルギー性組成物に含有されるバラ科バラ属植物及びこれに由来する成分は合計量で1人1日あたり1〜20mg/kg(より好ましくは5〜18mg/kg、更に好ましくは8〜15mg/kg)の摂取量となるように含有されることが好ましい。即ち、例えば、体重60kgの人においては60〜1200mg/日(より好ましくは300〜1080mg/日、更に好ましくは480〜900mg/日)が好ましい。更に、α−シクロデキストリンは1人1日あたり10〜170mg/kg(より好ましくは25〜150mg/kg、更に好ましくは50〜120mg/kg)の摂取量となるように含有されることが好ましい。即ち、例えば、体重60kgの人においては600〜10200mg/日(より好ましくは1500〜9000mg/日、更に好ましくは3000〜7200mg/日)が好ましい。これらの摂取量は1回の飲食物の摂取に摂取できるものであってもよく、2回以上の飲食物の摂取により摂取できるものであってもよい。上記範囲であれば十分な抗アレルギー性を得ることができる。
【0046】
本発明の飲食物の処方として具体的には、例えば、下記の処方が挙げられる。下記の本発明の抗アレルギー性組成物の精製乾燥粉末(即ち、バラ抽出物粉末)は後述する実施例におけるバラ抽出物を用いた値である。尚、下記(5)抽出用食品におけるデキストリンはα−シクロデキストリンではない。
(1)飲料
バラ抽出物粉末 0.9質量%
α−シクロデキストリン 5質量%
シソエキス 0.25質量%
ビオチン 0.00001質量%
紅茶エキス 0.05質量%
甘味料 0.03質量%
精製水 残部
合計 100質量%
【0047】
(2)顆粒状食品(そのまま食用又は水溶させて飲用)
バラ抽出物粉末 5.56質量%
α−シクロデキストリン 2.78質量%
紅茶エキス 0.056質量%
甘味料 0.03質量%
乳糖 残部
合計 100質量%
【0048】
(3)ソフトカプセル状食品
バラ抽出物粉末 60質量%
α−シクロデキストリン 6質量%
ビオチン 0.03質量%
EPA 3.3質量%
ビタミンE 1質量%
植物油 14.67質量%
包材 15質量%
合計 100質量%
【0049】
(4)トローチ状食品
バラ抽出物粉末 11質量%
α−シクロデキストリン 55質量%
乳糖 33.95質量%
甘味料 0.05質量%
合計 100質量%
【0050】
(5)抽出用食品
バラ抽出物粉末 5質量%
α−シクロデキストリン 50質量%
甜茶エキス 0.1質量%
紅茶エキス 6質量%
オリゴ糖 5質量%
甘味料 0.05質量%
デキストリン 33.85質量%
合計 100質量%
【0051】
[3]飲食物用添加剤
本発明の飲食物用添加剤は、本発明の抗アレルギー性組成物を含有することを特徴とする。
本発明の飲食物用添加剤は、上記抗アレルギー性を発揮できる機能性を有する飲食物用添加剤である。本発明の飲食物用添加剤としては、液状添加剤、クリーム状及びジャム状の半流動性添加剤、ゲル状添加剤、顆粒状添加剤及び粉末状添加剤(直接摂取又は水に溶解もしくは分散させて飲用等)、錠剤状添加剤などが挙げられる。
【0052】
前記抗アレルギー組成物を飲食物用添加剤に配合する方法は特に限定されず、例えば、油脂、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリン等のアルコール、並びにこれらの混合物等に前記抗アレルギー性組成物を混合、分散又は溶解させて本発明の飲食物添加剤を得ることができる。また、バインダとして作用するアラビアガム及びデキストリン(α−シクロデキストリンを除く)等と前記抗アレルギー組成物とを混合した後に凍結乾燥させて顆粒状、粉末状等の形態の本発明の飲食物用添加剤を得ることができる。
【0053】
本発明の飲食物用添加剤に含有される前記抗アレルギー性組成物の割合は特に限定されないが、前述のように抗アレルギー性組成物に含有されるバラ科バラ属植物及びこれに由来する成分は合計量で1人1日あたり1〜20mg/kg(より好ましくは5〜18mg/kg、更に好ましくは8〜15mg/kg)の摂取量となるように含有されることが好ましい。即ち、例えば、体重60kgの人においては60〜1200mg/日(より好ましくは300〜1080mg/日、更に好ましくは480〜900mg/日)が好ましい。更に、α−シクロデキストリンは1人1日あたり10〜170mg/kg(より好ましくは25〜150mg/kg、更に好ましくは50〜120mg/kg)の摂取量となるように含有されることが好ましい。即ち、例えば、体重60kgの人においては600〜10200mg/日(より好ましくは1500〜9000mg/日、更に好ましくは3000〜7200mg/日)が好ましい。これらの摂取量は1回の添加で摂取できるものであってもよく、2回以上の添加で摂取できるものであってもよい。上記範囲であれば十分な抗アレルギー性を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]バラ科バラ属植物及びこれに由来する成分の調整
(1)バラ抽出物
バラ科バラ属植物としてロサ・ケンテフォリア(Rosa centfolia)の花びらの乾燥物(粉砕品)20gを70℃の熱水500mlで30分間抽出後、濾過(濾過助剤としてパーライト使用)した。次いで、減圧濃縮した後、濃縮物の固形分換算質量と同量のタピオカデンプン分解物を混合した。その後、得られた混合物を噴霧乾燥してバラ抽出物(粉末)を得た。尚、上記濃縮物の固形分換算質量は、濃縮物の糖度{Brix値(%)}を測定し、この糖度を可溶性固形分濃度(%)として換算した。
【0055】
(2)バラ抽出物を発酵培養した発酵物1
バラ科バラ属植物としてロサ・ケンテフォリア(Rosa centfolia)の花びらの乾燥物(粉砕品)20gを70℃の熱水500mlで30分間抽出後、冷却し、pH5.5に調整し、タンナーゼ(キッコーマン株式会社製、商品名:「タンナーゼ「キッコーマン」−KTFH」)12mgを添加して40℃にて90分間攪拌した。その後90℃にて10分間加熱し酵素を失活させ、冷却後濾過(濾過助剤としてパーライト使用)し、この濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥してバラ抽出物を発酵培養した発酵物1を得た。
【0056】
(3)バラ抽出物を発酵培養した発酵物2
バラ科バラ属植物としてロサ・ケンテフォリア(Rosa centfolia)の花びらの乾燥物(粉砕品)20gを90℃の熱水500mlで10分間抽出後、冷却し、pH6.0〜7.0に調整し、納豆菌(高橋祐蔵研究所製、商品名:「納豆素」)5mlを添加して40℃にて18時間攪拌した。その後90℃にて10分間加熱し酵素を失活させ、冷却後濾過(濾過助剤としてパーライト使用)し、この濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥し、凍結乾燥してバラ抽出物を発酵培養した発酵物2を得た。
【0057】
[2]抗アレルギー性組成物の調整
上記〔1〕(1)で得られたバラ抽出物1gと、α−シクロデキストリン(ワッカーケミカルコーポレーション製、品名「CAVAMAX W6」)10gと、を混合して実施例1の抗アレルギー性組成物を得た。
上記〔1〕(2)で得られたバラ抽出発酵物1gと、α−シクロデキストリン(ワッカーケミカルコーポレーション製、品名「CAVAMAX W6」)10gと、を混合して実施例2の抗アレルギー性組成物を得た。
上記〔1〕(3)で得られたバラ抽出発酵物1gと、α−シクロデキストリン(ワッカーケミカルコーポレーション製、品名「CAVAMAX W6」)10gと、を混合して実施例3の抗アレルギー性組成物を得た。
これらの実施例1〜3の抗アレルギー性組成物によれば、各種アレルギー性疾患の予防、抑制、改善、治療、又は治癒を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)バラ科バラ属植物の抽出物、(2)バラ科バラ属植物、並びに(3)バラ科バラ属植物の抽出物及び/又はバラ科バラ属植物を発酵培養して得られた発酵物、のうちの少なくとも1種と、α−シクロデキストリンと、を含有することを特徴とする抗アレルギー性組成物。
【請求項2】
上記バラ科バラ属植物はバラである請求項1に記載の抗アレルギー性組成物。
【請求項3】
上記バラ科バラ属植物の抽出物は、水及び炭素数1〜5の1価アルコールのうちの少なくとも1種を抽出溶媒とする請求項1又は2に記載の抗アレルギー性組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の抗アレルギー性組成物を含有することを特徴とする飲食物。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の抗アレルギー性組成物を含有することを特徴とする飲食物用添加剤。

【公開番号】特開2007−176797(P2007−176797A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373439(P2005−373439)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(591155884)株式会社東洋発酵 (21)
【Fターム(参考)】