説明

抗アレルゲン性を有する化粧シート及びその製造方法

【課題】高い抗アレルゲン性を有し、かつ抗アレルゲン機能層の密着性が良好である化粧シートを提供すること。
【解決手段】少なくとも基材シート、プライマー層、ブロック層、及び抗アレルゲン機能層を順に有し、該プライマー層が主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物により形成され、該ブロック層が電離放射線硬化樹脂を含むブロック層用樹脂組成物により形成され、該抗アレルゲン機能層が、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物により形成されることを特徴とする化粧シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルゲン性を有する化粧シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の床材、壁材などの内外装用建材には、アレルギー疾患の原因となる、ダニや花粉などのアレルゲンを除去ないし不活性化するような抗アレルゲン性のような機能性を持つことが求められている。このような抗アレルゲン性が付与された建材としては、ジルコニウム塩からなる抗アレルゲン剤を、木材の素材、合板などの木質素材などの表面に塗工した建築材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような建築材料では、抗アレルゲン剤を単に塗工処理したものであることから、剥離しやすく、耐久性が乏しいものであった。そこで、このような問題を解消するため、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子の抗アレルゲン剤を光重合性オリゴマーなどと混合した光硬化性樹脂組成物を木質系基材に塗布し、光硬化させた床材が開発されている(例えば、特許文献2参照)。また、抗アレルゲン剤が担持された無機化合物を含有する硬化性樹脂組成物により形成された塗膜を有する床材が開発されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0003】
特許文献2〜4で用いられる抗アレルゲン剤は、フェノール性水酸基を有するフェノール系高分子樹脂であり、抗アレルゲン性に優れるため注目されている。しかし、抗アレルゲン剤を含む樹脂層を積層させた化粧シートでは、その積層構造や組成によって、抗アレルゲン剤を含む樹脂層の密着性や抗アレルゲン性が左右されることがあり、高い抗アレルゲン性を維持しつつ、抗アレルゲン剤を含む樹脂層とその下層との層間密着性を高める技術を確立することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−212806号公報
【特許文献2】特開2008−239721号公報
【特許文献3】特開2010−173115号公報
【特許文献4】特開2010−174075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い抗アレルゲン性を有し、かつ抗アレルゲン機能層の密着性が良好である化粧シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねたところ、少なくとも基材シート、プライマー層、ブロック層、及び抗アレルゲン機能層が順に積層された化粧シートにおいて、該プライマー層が主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物により形成され、該ブロック層が電離放射線硬化樹脂を含むブロック層用樹脂組成物により形成され、かつ該抗アレルゲン機能層が硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物により形成されることにより、高い抗アレルゲン性を備えると共に、該抗アレルゲン機能層と該プライマー層の層間密着性も実用上要求されるレベルを満たし良好になることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の化粧シート及び化粧板を提供する。
項1. 少なくとも基材シート、プライマー層、ブロック層、及び抗アレルゲン機能層を順に有し、
該プライマー層が主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物により形成され、
該ブロック層が電離放射線硬化性樹脂を含むブロック層用樹脂組成物により形成され、
該抗アレルゲン機能層が、硬化性樹脂、及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物により形成されていることを特徴とする化粧シート。
項2. ブロック層中の電離放射線硬化性樹脂が、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリレートオリゴマーである項1に記載の化粧シート。
項3. (メタ)アクリレートオリゴマーが、官能基として水酸基、アミノ基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を有する項2に記載の化粧シート。
項4. 抗アレルゲン機能層用樹脂組成物中の硬化性樹脂が、官能基数2〜10のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
項5. 抗アレルゲン剤が、ポリフェノール化合物で構成されるものである項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
項6. 該ポリフェノール化合物が、カテキン及びタンニン酸から選ばれる少なくとも一種であり、かつ無機固体酸に担持されている項5に記載の化粧シート。
項7. 抗アレルゲン機能層用樹脂組成物中の抗アレルゲン剤の配合量が、硬化性樹脂100質量部に対して1〜30質量部である項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
項8. 項1〜7のいずれかに記載の化粧シートを被着体に積層してなる化粧板。
項9. 下記の工程を順に有する、基材シート、プライマー層、ブロック層、及び抗アレルゲン機能層を順に積層してなる化粧シートの製造方法。
工程(1)基材シート上に、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を塗布する工程
工程(2)電離放射線硬化性樹脂を含むブロック層用樹脂組成物を塗布する工程
工程(3)硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布し、硬化させる工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い抗アレルゲン性を有し、かつ化粧シートにおける抗アレルゲン機能層の密着性も実用上要求されるレベルを満たし良好である化粧シートを得ることができる。更に、本発明によれば、実用上求められる諸特性(耐候性、耐溶剤性、耐汚染性、及び柔軟性)も化粧シートに備えさせることができる。
【0009】
また、従来の技術では、フェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含むアレルゲン機能層を、イソシアネート系硬化剤が残存しているプライマー層に接面させて積層すると、アレルゲン機能層の抗アレルゲン性能を低下させる傾向を示すことが確認されている。そのため、2液硬化型ウレタン樹脂で形成されているプライマー層(特に、当該樹脂が未硬化若しくは半硬化の状態の場合)に、前記アレルゲン機能層を接面させて積層すると、抗アレルゲン性能が低下するという問題点が生じるが、本発明によれば、このような問題点も解消して、これらのアレルゲン機能層とプライマー層を併用しながらも、優れた抗アレルゲン性を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【図3】本発明の化粧板の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔化粧シート〕
本発明の化粧シートは、少なくとも基材シート、プライマー層、ブロック層、及び抗アレルゲン機能層を順に有し、該プライマー層が主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物により形成され、該ブロック層が電離放射線硬化樹脂を含むブロック層用樹脂組成物により形成され、該抗アレルゲン機能層が、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物により形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
図1及び2は、本発明の化粧シートの態様の一例を示す模式図である。図1に示される化粧シート10は、基材シート1の上に、プライマー層4、ブロック層5、及び抗アレルゲン機能層6を順に有している。また、図2に示される化粧シート10は、基材シート1が複層構成を有する態様であり、一方の基材シートの上に、順に印刷層2、接着剤層3が積層されており、他方の基材シートを介して、プライマー層4、ブロック層5、及び抗アレルゲン機能層6を順に有している。
【0013】
また、本発明の化粧シートには、必要に応じて、基材シート1の裏面(プライマー層4を積層する面に対して反対側の面)に、樹脂層からなるバッカー層7を積層させてもよい。以下、本発明の化粧シートの構成について詳細に説明する。
【0014】
≪基材シート≫
基材シートとしては、熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが好ましく挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂のほか、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが好ましく挙げられる。本発明の製造方法で得られる化粧シートを用いて床材を作製する場合には、これらの基材シートのうち、コスト及びシート柔軟性の点でポリオレフィン系樹脂が好ましく、耐傷つき性といったシートとしての強度が求められる場合には、ポリエステル系樹脂が好ましく、求められる用途に応じて使い分けられる。
【0015】
また、基材シートとしては、二つ以上の樹脂シートを積層して得られる複層構成のシートを用いることもできる。この場合、二つ以上の樹脂シートに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよい。樹脂としてはポリオレフィン系樹脂が好ましく、その樹脂の組合せとしては、ポリエチレン−ポリエチレン、ポリエチレン−ポリプロピレン、あるいはポリプロピレン−ポリプロピレンの組合せが好ましい。
【0016】
複層構成のシートは、例えば二層構成の場合は、一方の基材シートの表面にコロナ放電処理などを施して易接着層を設け、該基材シートにベタ層及び/又は絵柄層からなる印刷層を形成し、ついで必要に応じて接着剤層を設けた後に、他方の基材シートを押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどの方法により接着・圧着させて得られる。これらの基材シートは、着色されたものでも、無着色のものでもよく、意匠性を向上させる観点から、いずれか一方が着色されたものであることが好ましい。
【0017】
基材シートの厚さは20〜300μmが加工性、柔軟性、強度の点で通常適用され、40〜200μm程度がより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。基材シートが複層構成のシートの場合、各層を構成する基材シートの厚さの合計が上記範囲内であることが好ましい。この場合、各層を構成する基材シート単独での厚さは、好ましくは10〜150μmであり、より好ましくは20〜100μmであり、さらに好ましくは20〜50μmであり、これらの基材シートの厚さは同じでも異なっていてもよい。
【0018】
基材シートは、その表面がコロナ放電処理やプラズマ処理などのいわゆる易接着性処理がなされていてもよく、基材シートにアンカー層などの易接着層が設けられていてもよい。また、本発明の化粧シートを木質基板に貼り付けて化粧板とする際の、化粧シートと木質基板との接着性向上のため、基材シートの木質基板との接着面に、厚さ1〜5μm程度のアクリル樹脂などを用いたプライマー層(裏面プライマー層)を設けてもよい。
【0019】
≪印刷層≫
また、本発明の化粧シートは、化粧シートの意匠性を向上させる目的で、所望により印刷層を有することができる。印刷層は、通常基材シートとプライマー層との間に設けられる。また、基材シートが上記した複層構成をとる場合、印刷層は、通常基材シート間に設けられる。
【0020】
印刷層は、絵柄層及び/又はベタ層により構成され、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。絵柄層の模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。また、ベタ層は、全面にわたって被覆する一様均一な着色を施した層であり、意匠性を向上させる効果のほか、基材あるいは化粧シートを貼り合わせる基板を隠蔽する効果も有する。意匠性の向上の観点からは、絵柄層とベタ層とを設けることが好ましい。
印刷方法としては、通常の、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷などの輪転印刷、枚葉印刷のいずれをも適用できる。
【0021】
また、絵柄層の印刷に用いるインキとしては、特に制限はなく、バインダーに、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、酸化チタン、紺青、カーボンブラック、紅柄などの無機顔料やジスアゾ系顔料、イソインドリノン、ポリアゾ系顔料、キナクリドン、フタロシアニンブルーなどの有機顔料、アルミニウム粉、銅粉、金属蒸着合成樹脂フィルムの微細断裁片、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔などのパール状光沢をもつ顔料などを混合したものが用いられる。
【0022】
≪接着剤層≫
接着剤層は、上記したように基材シートが複層構成をとる場合、二つ以上の基材シートをラミネートする際に、必要に応じて設けられる層である。接着剤としては、ウレタン系、アクリル系、アクリル/ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、セルロース系などが好ましく挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で、あるいは
2種以上の混合物として使用することができる。
【0023】
《バッカー層》
バッカー層は、基材シートの裏面(プライマー層を積層する面に対して反対側の面)に設けられる樹脂層である。このようなバッカー層を積層することにより、化粧シートを被着材(特に木質合板)と貼着して化粧材とする場合に、被着材表面に不可避的に存在する凹凸の影響を緩和することができる。特に床用化粧シートとして用いる場合には、バッカー層は化粧シートにクッション性を付与する層にもなる。
【0024】
バッカー層を形成する樹脂としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。
【0025】
バッカー層は、例えば、上記樹脂成分を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によって形成してもよく、また予め成型した樹脂フィルムを用いてもよい。
【0026】
バッカー層を溶融樹脂の押出し成形によって形成する際は、例えば、Tダイを用いた押出し成形が好適に利用できる。また、バッカー層が多層である場合には、例えば、マルチマニホールドタイプやフィードブロックタイプのTダイを用いることにより、多層同時押出しを行えばよい。バッカー層を多層とする場合は、例えば、基材シートの裏面と最も近い層を易接着樹脂層とすることが好ましい。この様な改良は、例えば、易接着樹脂層とする層に公知の熱可塑性エラストマーを配合することによって達成できる。熱可塑性エラストマーの種類は、特に限定されず、バッカー層を構成する樹脂と相溶性が高く、基材シートとの密着性改善に寄与し得るものの中から広く選択できる。
【0027】
また、押し出し成形によって形成したバッカー層が熱融着による接着では基材シート裏面と密着し難い場合には、必要に応じて、密着性を高めるためにバッカー層6と熱可塑性樹脂基材1の間に接着剤層を設けてもよい。
【0028】
バッカー層の厚さは100μm以上であればよいが、150〜600μm程度が好ましく、250〜400μm程度がより好ましい。バッカー層6は、その引張り弾性率が1000MPa以上であれば好ましく、1500MPa以上であれば好ましい。引張り弾性率の上限は特に限定的ではないが、2500MPa程度とすればよい。
【0029】
≪プライマー層≫
プライマー層は、基材シートとブロック層あるいは抗アレルゲン機能層との間の密着性を向上するために設けられるものであり、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物により形成されるものである。ここで、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物は、主剤とイソシアネート系硬化剤を混合することにより硬化する樹脂組成物である限り、主剤及びイソシアネート系硬化剤の一方又は双方を2種以上使用するものであってもよい。
【0030】
従来の技術では、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含む2液硬化型樹脂組成物で形成されているプライマー層(特に、未硬化若しくは半硬化の状態の場合)に、フェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含むアレルゲン機能層を接面させて積層すると、抗アレルゲン性が低下する傾向を示すが、本発明では、このような欠点を克服して優れた抗アレルゲン性を発揮させ得る層構造が採用されている。つまり、本発明の化粧シートでは、プライマー層に未反応のイソシアネート系硬化剤が残留していても、アレルゲン機能層中の抗アレルゲン剤への悪影響を抑制でき、プライマー層を積層させた後に過剰な養生工程を必須としないため、高い生産性を実現することもできる。
プライマー層の厚さは、通常0.5〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μmである。プライマー層の厚さが上記範囲内であると、抗アレルゲン機能層とプライマー層との層間密着性が一層良好になる。
【0031】
<主剤>
プライマー層用2液硬化型樹脂組成物に含まれる主剤としては、イソシアネート系硬化剤の存在により硬化するものであれば特に制限はない。主剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基を有するモノマーとの付加重合によって得られるアクリルポリオールや、公知のジオール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類とアジピン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸などの二塩基酸、これらの酸エステルなどから選ばれる少なくとも一種との重縮合反応によって得られるポリエステルポリオール、あるいは、前記のジオール類とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなどとの付加重合によって得られるポリエーテルポリオールなど、官能基として水酸基を有するポリオールが好ましく挙げられる。これらは単独又は複数種を混合して使用できる。なかでも、アクリルポリオールが、プライマー層と抗アレルゲン機能層との層間密着性の観点から、特に好適である。
【0032】
<イソシアネート系硬化剤>
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)=ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(ないしは脂環式)ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物が好ましく挙げられる。
【0033】
また、上記のポリイソシアネート化合物のアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、弾性変性ポリイソシアネートなどのいわゆる変性ポリイソシアネートも、硬化剤として使用できる。
ここで、アダクト変性体とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物と、前記各種のポリイソシアネート化合物との反応物である。
また、弾性変性ポリイソシアネートとは、前記のポリイソシアネート化合物をモノマーとして用い、これに弾性を有する活性水素含有化合物をウレタン反応させることで、NCO末端のプレポリマーとしたものである。
ポリイソシアネート化合物を弾性変性するために用いられる弾性を有する活性水素含有化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール又はこれらのコポリオールなどが挙げられる。
【0034】
本発明においては、上記イソシアネート系硬化剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明においては、主剤とイソシアネート系硬化剤との使用割合は、通常質量比で100:1〜100:15の範囲で選定され、好ましくは100:2〜100:10の範囲であり、より好ましくは100:2〜100:8の範囲である。主剤とイソシアネート系硬化剤との質量比が上記範囲内であると、安定して高い抗アレルゲン性を有する化粧シートが得られる。また、本発明の化粧シートは、プライマー層においてイソシアネート系硬化剤が主剤に対して過剰になった場合であっても、後述するブロック層を有することにより、高い抗アレルゲン性を発揮することができる。
【0036】
≪ブロック層≫
本発明の化粧シートはブロック層を有する。ブロック層は、化粧シートの柔軟性を維持しつつ、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物中に含まれるイソシアネート系硬化剤に起因する抗アレルゲン剤の失活を抑制する層であり、プライマー層と抗アレルゲン機能層との間に設けられる層である。
ブロック層は、電離放射線硬化性樹脂を含むブロック層用樹脂組成物により形成される。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含むものである。
【0037】
電離放射線硬化性樹脂は、慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、特に制限はない。これらの(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーなどの(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく挙げられ、これらのオリゴマーを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
ここで、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンプレポリマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることもできる。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸で
エステル化することにより得ることができる。
ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
また、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能な、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの官能基含有(メタ)アクリル系化合物、あるいは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボン酸とを共重合してなるオリゴマーである。
【0040】
上記の重合性オリゴマーは、水酸基、アミノ基、あるいはチオール基などの反応性官能基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、特にエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、水酸基を有するポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。このような水酸基、アミノ基、あるいはチオール基などの反応性官能基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを用いると、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物中に含まれるイソシアネート系硬化剤に起因する抗アレルゲン剤の失活の優れた抑制効果が得られ、優れた抗アレルゲン性が得られる。
【0041】
ブロック層用樹脂組成物の電離放射線硬化性樹脂として好ましく用いられるこれらの重合性オリゴマーは、ラジカル重合性不飽和基の数が好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である、すなわち好ましくは2〜10官能、より好ましくは2〜6官能、さらに好ましくは2〜4官能のものである。官能基数が上記範囲内であると、優れた柔軟性を有するのでVカットをはじめとする各種加工に対応できる優れた加工性が得られる。
【0042】
また、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)は、600〜5000程度のものが好ましく、より好ましくは600〜3000であり、さらに好ましくは600〜2200である。重量平均分子量が上記範囲内であると、優れた抗アレルゲン性とともに耐候性、耐汚染性も得られる。また、重量平均分子量が上記範囲内であると、ブロック層用樹脂組成物が適度なチクソ性を有することができ、ブロック層の形成が容易となる。
【0043】
ブロック層用樹脂組成物の電離放射線硬化性樹脂として、上記した重合性オリゴマーなどとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性もしくは多官能性ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらのウレタン(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
≪抗アレルゲン機能層≫
抗アレルゲン機能層は、本発明の化粧シートに抗アレルゲン性を付与するとともに、化粧シートに求められる実用的性能(耐候性、耐溶剤性、耐汚染性など)を付与する層であり、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む機能層用樹脂組成物により形成される層である。
【0045】
<硬化性樹脂>
本発明で用いられる硬化性樹脂は、熱あるいは電離放射線の照射により硬化する樹脂であれば特に制限はない。本発明においては、電離放射線の照射により硬化する樹脂、すなわち電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。
【0046】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノール/ホルマリン樹脂、尿素樹脂、尿
素/ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが好ましく挙げられる。
【0047】
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂は、慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。重合性モノマーとしては、ブロック層用樹脂組成物の電離放射線硬化性樹脂として例示した重合性モノマーが好ましく挙げられる。
また、重合性オリゴマーとしても、ブロック層用樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂として例示した、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーなどの(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく挙げられ、これらのオリゴマーを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの重合性オリゴマーの中でも、より効果的に、耐候性、耐溶剤性、耐汚染性を備えさせるという観点から、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0048】
抗アレルゲン機能層用樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂は、ラジカル重合性不飽和基の数が好ましくは2〜10、より好ましくは4〜10、さらに好ましくは4〜8である、すなわち好ましくは2〜10官能、より好ましくは4〜10官能、さらに好ましくは4〜8官能のものである。ラジカル重合性不飽和基の数が上記範囲内であると、より高い抗アレルゲン性が得られる。また、該電離放射線硬化性樹脂の官能基数は、前述したブロック層用樹脂組成物に好ましく用いられる電離放射線硬化性樹脂の官能基数よりも大きいことが好ましい。そのような官能基数の電離放射線硬化性樹脂を用いることで、Vカットをはじめとする各種加工に対応できる柔軟性が得られる。
【0049】
また、抗アレルゲン機能層用樹脂組成物に用いられる電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)は、600〜5000程度のものが好ましく、より好ましくは600〜3000であり、さらに好ましくは600〜2200である。重量平均分子量が上記範囲内であると、一層優れた抗アレルゲン性が得られる。また、重量平均分子量が上記範囲内であると、抗アレルゲン機能層用樹脂組成物が適度なチクソ性を有することができ、抗アレルゲン機能層の形成が容易となる。
【0050】
抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の電離放射線硬化性樹脂として、上記した重合性オリゴマーなどとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性もしくは上記したような多官能性ウレタン(メタ)アクリレートモノマーを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
<抗アレルゲン剤>
本発明で用いられる抗アレルゲン剤は、フェノール性水酸基を有するもの、すなわちフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子のものであり、該フェノール性水酸基が、アレルゲン性の物質を吸着するとともに不活性化するように機能するものであれば特に制限されない。このような抗アレルゲン剤としては、分子内に複数のフェノール性水酸基、すなわちベンゼン環やナフタレン環などの芳香環に結合した水酸基を有する有機化合物であるポリフェノール化合物で構成されるもの、例えば、ポリ(4−ビニルフェノール)やポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)などのポリフェノール系の高分子が好ましく挙げられる。市販の抗アレルゲン剤としては、「マルカリンカー M(商品名)」(丸善石油化学株式会社)などを使用することができ、この抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0052】
また、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものも好ましく挙げられる。このような態様において用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、エピカテキン、ガロタンニン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのカテキンと称される低分子量ポリフェノールや高分子量のタンニン酸などが、優れた抗アレルゲン性を有するとともに、工業的に容易にかつ安価に入手できる観点から好ましく挙げられる。ポリフェノール化合物は、上記したものを単独で、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、タンニン酸が抗アレルゲン性の観点から好ましい。
【0053】
無機固体酸は、無機物質であって、その表面に水素イオンを放出し、酸性を発現する酸点あるいは活性点を有するものである。例えば、H置換Y型ゼオライト、H置換ZSM−5型ゼオライトなどのゼオライト類、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、リン酸スズ、リン酸セリウム、リン酸チタニウムなどのリン酸塩、アンチモン酸のほか、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、チタニアアルミナ、チタニアジルコニアなどの複合酸化物などが好ましく挙げられる。これらのなかでも、耐熱性に優れ、高い固体酸性を有する観点から、ゼオライト類、複合酸化物が好ましく、特に酸強度が強いリン酸ジルコニウムが好ましく、結晶系が層状構造を有する層状リン酸ジルコニウムが好ましい。
【0054】
無機固体酸の形状は、粉末状、塊状、板状及び繊維状などが挙げられるが、取り扱いの点から粉末状であることが好ましい。粉末状の場合、その平均粒径は0.01〜50μmであることが好ましく、0.02〜20μmであることがより好ましい。平均粒径が上記範囲内であると、取り扱いが容易であり、優れた抗アレルゲン性を得る観点からも好ましい。
【0055】
本発明において、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものを抗アレルゲン剤として用いる場合、ポリフェノール化合物と無機固体酸との重量比率は、10:90〜95:5が好ましく、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは20:80〜40:60である。重量比率が上記範囲内であると、ポリフェノール化合物と無機固体酸との相乗効果により、とりわけ優れた抗アレルゲン性が得られる。このような抗アレルゲン剤は、市販品として入手も可能であり、例えば、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせた「アレリムーブ(商品名)」(東亞合成株式会社製)などが市販品として挙げられる。
【0056】
抗アレルゲン剤の配合量は、硬化性樹脂100質量部に対して、1〜30質量部であり、好ましくは3〜25質量部であり、より好ましくは8〜15質量部である。
【0057】
<添加剤>
また、抗アレルゲン機能層用樹脂組成物には、本発明の化粧シートを適用するものに対して要求される特性を満たすために、さらに、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、耐摩耗剤、及び艶消し剤、あるいは沈降防止剤などの添加剤を含有させることができる。
【0058】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤(UVA)は有害な紫外線を吸収し、抗アレルゲン性壁紙の長期耐候性、安定性を向上させる。本発明で用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系などの有機系紫外線吸収剤が好ましく挙げられ、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。また、硬化性樹脂として電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、ブリードアウトを抑制するために、必要に応じて(メタ)アクリロイル基、ビニル基などのエチレン性二重結合含有官能基を有する電離放射線反応型紫外線吸収剤を用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0059】
(光安定剤)
光安定剤は、紫外線により生じる有害なフリーラジカルを効率良く捕捉することにより安定化するものである。光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤が好ましく、硬化性樹脂として電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などのエチレン性二重結合含有官能基を有する電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレートなどが挙げられる。
光安定剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0060】
(抗菌剤)
本発明で用いる抗アレルゲン機能層用組成物には、抗菌性を付与するために、抗菌剤を配合することができる。抗菌剤としては担体が活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの無機系吸着剤や、ゼオライト、リン酸ジルコニウムなどの無機化合物であり、当該担体に銀イオン又は銀イオンの他に銅イオン、亜鉛イオンを併用した少なくとも銀イオンを担持させたものが好ましく挙げられる。
【0061】
(耐摩耗剤)
本発明で用いる抗アレルゲン機能層用組成物には、抗アレルゲン機能層表面の硬度を高め、耐傷性を向上するために、耐摩耗剤を配合することができる。このような耐摩耗剤としては、無機系充填剤としては、α−アルミナ、シリカなどの球状粒子が好ましく挙げられ、有機物系充填剤としては、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが好ましく挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜100%程度であり、その配合量は、硬化性樹脂100質量部に対して1〜20重量部程度である。
【0062】
(艶消し剤)
本発明で用いる抗アレルゲン機能層用組成物には、抗アレルゲン機能層表面の艶消しのため、いわゆる艶消し剤(マット剤)を配合することができる。艶消し剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウムなどの無機質微粉末や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる有機フィラーなどが好ましく挙げられる。
艶消し剤の配合量としては、硬化性樹脂100質量部に対して、4〜30質量部であり、10〜20質量部であることがより好ましい。
【0063】
(その他各種添加剤)
また、本発明で用いられる抗アレルゲン機能層用組成物には、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
なお、硬化性樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。
【0064】
≪エンボス模様≫
本発明の化粧シートは、床材や壁材などへの適用、あるいは意匠性を考慮すると、化粧シート表面に、エンボス加工によるエンボス模様(図示せず)を施すこともできる。エン
ボス加工は、抗アレルゲン機能層面から、エンボス板で加熱加圧することのほか、種々の方法により形成することができる。エンボス模様の形状としては、制限はないが、本発明の化粧シートが適用される建材の特性に応じて形成される。
【0065】
≪セパレータ≫
本発明の化粧シートは、基材シートの裏面(抗アレルゲン機能層を設ける面の反対側面で、バッカー層6を設ける場合にはその表面)に、粘着剤を介してセパレータを設けることもできる。こうした構成とすることにより、セパレータを剥がして露出した面を被貼着物に貼着することができる。
【0066】
〔化粧シートの製造方法〕
本発明の化粧シートの製造方法は、工程(1)基材シート上に、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を塗布する工程、工程(2)電離放射線硬化樹脂を含むブロック層用樹脂組成物を塗布する工程、及び工程(3)硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布し、硬化させる工程を順に有することを特徴とするものである。
【0067】
≪工程(1)≫
工程(1)は、基材シート上に、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を塗布する工程である。
プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、フローコーター、吹きつけ法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り、コテ塗り、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻取り法、流し法、盛り付け法、パッチング法などの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行うことができる。
プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗膜厚さは、通常0.5〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μmである。塗膜厚さが上記範囲内であると、抗アレルゲン機能層とプライマー層との層間密着性が一層良好になる。
【0068】
プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗膜は、ブロック層との密着性の点で更なる向上を重視する場合には、後述するブロック層用樹脂組成物を塗布する前に、半硬化の状態としておくことが好ましい。ここで、本発明において、半硬化は完全硬化ではない状態、すなわちプライマー層用2液硬化型樹脂組成物中のイソシアネート硬化剤の一部が消費されるものの、全て消費された状態ではないことを意味する。このように、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物中の未反応イソシアネート硬化剤を一定範囲内で存在させることにより、ブロック層との密着性を向上させ、かつ未反応のイソシアネート硬化剤と抗アレルゲン剤が有するフェノール系水酸基との反応による抗アレルゲン性の低下を抑制することができる。
【0069】
プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗膜を半硬化の状態とする方法としては、好ましくは所定の温度条件下で放置する、すなわち養生することが挙げられる。この方法は、安定してピーク強度比を調整することができ、またコスト的にも優位である。
養生する際の温度条件は、半硬化の状態とする調整の容易さ、及び養生時間の長短に影響するが、双方のバランスを考慮すると、通常15〜80℃程度であり、好ましくは20〜40℃である。また、養生時間は、温度条件によるが、通常10時間〜100日間程度であり、好ましくは10時間〜40日、より好ましくは10時間〜30日であり、特に好ましくは10〜24時間である。本発明においては、化粧シートを作製する状況に応じて、養生の条件を適宜選択すればよい。
【0070】
≪工程(2)≫
工程(2)は、電離放射線硬化樹脂を含むブロック層用樹脂組成物を塗布する工程である。ブロック層用樹脂組成物の塗布は、上記したプライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布方法と同様の方法により行うことができる。
ブロック層用樹脂組成物の塗膜厚さは、該ブロック層用樹脂組成物中の電離放射線硬化樹脂が水酸基を有する場合は、通常1〜45μm程度であり、3〜35μmが好ましく、より好ましくは5〜25μmであり、該電離放射線硬化樹脂が水酸基を有しない場合は、通常1〜30μm程度であり、5〜27μmが好ましく、より好ましくは10〜25μmである。塗膜厚さが上記範囲内であると、抗アレルゲン剤の失活を十分に抑制することができ、経済的である。
【0071】
塗布したブロック層用樹脂組成物は、後述する抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の塗布の前に、予備硬化処理を行うことが好ましい。
予備硬化処理は、電離放射線などを照射して行うことが好ましく、電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度、照射線量は5〜30kGy(0.5〜3Mrad)、好ましくは5〜15kGy(0.5〜1.5Mrad)の範囲で選定される。このように、電子線を低照射線量で照射することで、ブロック層用樹脂組成物は完全硬化に至ることがなく、すなわちブロック層用樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂が有する官能基が全て消費しない状態とすることが好ましい。このような状態とすることで、抗アレルゲン機能層の官能基とも重合しやすくなるためブロック層と抗アレルゲン機能層とが化学的に密着することで、プライマー層及び抗アレルゲン機能層との密着性が良好になり、また優れた抗アレルゲン性が得られる。
【0072】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0073】
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯などが用いられる。
【0074】
≪工程(3)≫
工程(3)は、上記工程(2)で塗布したブロック層用樹脂組成物の塗膜面上に、硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布し、硬化させる工程であり、本工程により抗アレルゲン機能層が形成される。該抗アレルゲン機能層は、化粧シートに抗アレルゲン性を付与し、かつ化粧シートに求められる実用的性能(耐候性、耐溶剤性、耐汚染性など)を付与する層である。
【0075】
<抗アレルゲン機能層の形成>
本発明において、抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の塗布は、硬化して形成するアレルゲン機能層の厚さが通常5〜30μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、フローコーター、吹きつけ法、エアレススプレー法、エアスプレー法、刷毛塗り、コテ塗り、浸漬法、引き上げ法、ノズル法、巻取り法、流し法、盛り付け法、パッチング法などの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、耐汚染性、耐傷性の観点から、好ましくは10〜20μmである。なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗布後に、熱風乾燥機などにより塗布膜を予め加熱乾燥してから電離放射線を照射することが好ましい。
【0076】
上記の抗アレルゲン機能層用樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、電離放射線などを照射して硬化することで、抗アレルゲン機能層が形成される。ここで、硬化に電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化型樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源、あるいは紫外線源としては、ブロック層用樹脂組成物の硬化に用いられるものと同様のものが好ましく例示される。
【0077】
[化粧板]
本発明の化粧板は、上記の本発明の化粧シートを被着体に積層してなるものである。被着材は限定的でなく、公知の化粧板と同様のものを用いることができ、例えば、木質材料、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラスなどが挙げられる。図3は、本発明の化粧板の好ましい態様の一例を示す模式図である。本発明の化粧板12は、化粧シート10と木質系基板11とを接着剤を用いて貼り付けて積層したものである。
木質基板としては、木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピーなどの各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)などの木質材などが挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
【0078】
また、化粧シートと被着体とを貼り付けるために用いる接着剤としては、尿素系、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系などの接着剤を用いることができ、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白などの無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤などを添加混合して用いることができる。
接着剤は、スプレー、スプレッダー、バーコーターなどの塗布装置を用いて塗布すればよい。この接着剤は、一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
【0079】
化粧シートの基板上への貼着は、通常、鏡面化粧シートの裏面に接着剤層を形成し、基板を貼着するか、基板の上に接着剤を塗布し、鏡面化粧シートを貼着するなどの方法による。貼着には、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレスなどの貼着装置を用いることができる。
【0080】
このようにして得られた本発明の化粧板は、任意切断して、表面や木口部にルーター、カッターなどの切削加工機を用いて溝加工、面取加工などの任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、床材、壁材などの内装材や外装材として好適に用いられる。
【実施例】
【0081】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されるものではない。
【0082】
(評価方法)
(1)抗アレルゲン性
各実施例及び比較例で作製された化粧シートについて、ダニアレルゲン(「Derf1(商品名)」,和光純薬工業株式会社製)の水溶液を化粧シート上に400μl(ダニアレルゲンの初期濃度:50ng/mg)滴下して自然乾燥しないようにフィルムで覆い、24時間放置した後、該化粧シート上のダニアレルゲンを回収し、ダニアレルゲンの量をELISA法により不活性化率を測定し、下記の基準で抗アレルゲン性を評価した。
○ :ダニアレルゲンの初期濃度からの不活性化率が50%以上のもの
△ :ダニアレルゲンの初期濃度からの不活性化率が30%以上50%未満のもの
× :ダニアレルゲンの初期濃度からの不活性化率が10%以上30%未満のもの
×× :ダニアレルゲンの初期濃度からの不活性化率が10%未満のもの
(2)層間密着性
各実施例及び比較例で作製された化粧シートについて、JIS K5400に準拠して、テープ剥離試験を100回実施して、試験後の化粧シート表面の変化について、以下の基準で評価した。
○ :剥離が全く認められなかった
△ :面積比として1/100以上、5/100未満の剥離が認められた
△× :面積比として5/100以上、25/100未満の剥離が認められた
× :面積比として25/100以上の剥離が認められた
(3)耐候性
各実施例および比較例にて得られた化粧シートについて、岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスターを使用して、20時間のUV照射および4時間の噴水のサイクルを二度行うことによる促進耐候試験を実施(具体的には、10時間のUV照射、4時間の噴水、10時間のUV照射を1サイクルとして、これを2サイクル実施)した後の化粧シート表面の変化について、以下の基準にて評価した。
○ :化粧シート表面の変化がみられないもの
△ :化粧シート表面の黄変みられるが、外観上問題ないもの
× :化粧シート表面が著しく黄変するもの
(4)耐汚染性
JIS−K−6902に準拠し、各実施例および比較例にて製造された化粧シート表面に事務用インキ、ブルーブラックを滴下した後、24時間後に水ふきした際の表面変化について、以下の基準にて評価した。
○ :表面の変化が生じないもの
△ :表面が若干汚染されているものの、外観を損なう程度ではないもの
× :表面が著しく汚染されているもの
(5)柔軟性(Vカット加工適正に関する項目)
各実施例および比較例で作製された化粧シートの基材シート側を、接着剤を用いて厚さ10mmのMDFに接着して積層した後、化粧シート側とは反対側に、MDFと接着剤層との界面まで達する断面V字型の溝を切削し、溝を閉じるようにして合板をL字型(断面)に折り曲げて試験し、目視にて加工部を観察し、以下の基準にて評価した。なお、加工時の温度は常温で行った。
○ :シート加工部にクラックが発生しないもの
△ :シート加工部に微小なクラックが発生するが、外観上問題のないもの
× :シート加工部にクラックが発生し、シートの白化などの外観上の明確な変化が観察されるもの
【0083】
実施例1
基材シートとして、ポリオレフィン系樹脂シート(60μm透明ポリプロピレンに対し、80μmの厚みで着色ポリエチレンを押し出して形成)を用い、該基材シート上に、主剤として「EBRプライマー(商品名)」(DICグラフィックス株式会社製)100質量部にイソシアネート系硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートを5質量部添加したプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を、1.5g/m2の塗布量で塗布した。これを常温(23℃)で1日間放置(養生)した。その後、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布面上に、水酸基を含まない2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:1000)のみからなるブロック層用樹脂組成物を15〜25g/m2の塗布量で塗布し、電子線(加速電圧:165kV,照射量:10kGy(1Mrad))を照射して、該ブロック層用樹脂組成物の予備硬化処理を行った。次いで、予備硬化処理を行ったブロック層用樹脂組成物の塗布面上に、水酸基を含まない6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:1000)100質量部に、ポリフェノール化合物がジルコニウム化合物に担持された抗アレルゲン剤(「アレリムーブ(商品名)」,東亞合成株式会社製)10質量部、及び艶消し剤(不定形シリカ,粒径:5μm)16質量部を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布量15g/m2で塗布し、電子線(加速電圧:165kV,照射量:50kGy(5Mrad))を照射し、抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を硬化させて、抗アレルゲン機能を有する化粧シートを得た。該化粧シートのブロック層の厚さは15μmであり、抗アレルゲン機能層の厚さは15μmであった。また、得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0084】
実施例2及び3
実施例1において、ブロック層の厚さを20μm及び25μmとする以外は実施例1と同様にして、各々実施例2及び3の化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0085】
実施例4
実施例1において、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布後、養生しない以外は実施例1と同様にして、化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0086】
実施例5〜7
実施例1において、ブロック層用樹脂組成物として、2官能エポキシアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:1500,水酸基含有)のみからなるブロック層用樹脂組成物を用い、ブロック層の厚さを第1表に示される厚さとした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0087】
実施例8
実施例1において、ブロック層用樹脂組成物として、2官能エポキシアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:1500,水酸基含有)のみからなるブロック層用樹脂組成物を用いたこと、ブロック層の厚さを第1表に示される厚さとしたこと、及びプライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布後、養生しないこと以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0088】
実施例9及び10
実施例5及び6において、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布後、養生しない以外は実施例5及び6と同様にして、各々実施例9及び10の化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0089】
実施例11
実施例1において、抗アレルゲン機能層の厚さを5μmとした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0090】
実施例12
実施例5において、抗アレルゲン機能層の厚さを5μmとした以外は、実施例5と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0091】
比較例1
実施例1において、プライマー層用2液硬化型樹脂組成物の塗布後に養生せず、かつブロック層を設けなかった以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0092】
比較例2
実施例1において、プライマー層、及びブロック層を設けなかった以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートについて、上記の評価方法に基づき評価して、評価結果を第1表に示した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1から明らかなように、基材シート、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物により形成したプライマー層、電離放射線硬化性樹脂を含むブロック層用樹脂組成物により形成したブロック層、及び硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物により形成した抗アレルゲン機能層を順に積層した化粧シートでは、優れた抗アレルゲン性に加え、層間密着性も良好であった(実施例1−12)。これに対して、ブロック層を設けなかった場合(比較例1)には、抗アレルゲン性が損なわれていた。また、プライマー層及びブロック層を設けなかった場合(比較例2)では、抗アレルゲン性は維持できていたものの、層間密着性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
このようにして得られた化粧シートは、高い抗アレルゲン性を有し、かつ良好な密着性を有している。更に、本発明の化粧シートは、実用上要求される諸特性(耐候性、耐溶剤性、耐汚染性、柔軟性)も備えている。よって、本発明の化粧シートは、基板に貼り付けて化粧板とし、例えば、床材、壁材などの内装材や外装材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0096】
1.基材シート
2.印刷層
3.接着剤層
4.プライマー層
5.ブロック層
6.抗アレルゲン機能層
10.化粧シート
11.木質系基板
12.化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材シート、プライマー層、ブロック層、及び抗アレルゲン機能層を順に有し、
該プライマー層が主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物により形成され、
該ブロック層が電離放射線硬化性樹脂を含むブロック層用樹脂組成物により形成され、
該抗アレルゲン機能層が、硬化性樹脂、及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物により形成されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
ブロック層中の電離放射線硬化性樹脂が、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリレートオリゴマーである請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
(メタ)アクリレートオリゴマーが、官能基として水酸基、アミノ基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を有する請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
抗アレルゲン機能層用樹脂組成物中の硬化性樹脂が、官能基数2〜10のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
抗アレルゲン剤が、ポリフェノール化合物で構成されるものである請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
該ポリフェノール化合物が、カテキン及びタンニン酸から選ばれる少なくとも一種であり、かつ無機固体酸に担持されている請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
抗アレルゲン機能層用樹脂組成物中の抗アレルゲン剤の配合量が、硬化性樹脂100質量部に対して1〜30質量部である請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シートを被着体に積層してなる化粧板。
【請求項9】
下記の工程を順に有する、基材シート、プライマー層、ブロック層、及び抗アレルゲン機能層を順に積層してなる化粧シートの製造方法。
工程(1)基材シート上に、主剤及びイソシアネート系硬化剤を含むプライマー層用2液硬化型樹脂組成物を塗布する工程
工程(2)電離放射線硬化性樹脂を含むブロック層用樹脂組成物を塗布する工程
工程(3)硬化性樹脂及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層用樹脂組成物を塗布し、硬化させる工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214048(P2012−214048A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−78418(P2012−78418)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】