説明

抗ウイルス化合物

式(I)の新規化合物およびそれらの化合物を含有する凝集体を開示する。これらの凝集体はウイルスに起因する眼部感染を治療および予防するのに有用であり、ここで該ウイルスは、ウイルスに感染した細胞の細胞表面上に存在する末端シアル酸残基に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の抗ウイルス化合物、それら化合物を含有する抗ウイルス凝集体、それら凝集体を含有する医薬組成物、およびそれら化合物の使用による、細胞表面上に存在する末端シアル酸残基に結合するウイルスに起因する流行性角結膜炎および他の眼疾患の治療または予防法に関する。
【背景技術】
【0002】
流行性角結膜炎(EKC)はHAdV-D種に属するアデノウイルスHAdV-8、HAdV-19、およびHAdV-37、そしてE種に属するHAdV-4によって引き起こされる重大な伝染性眼部感染(結膜および角膜)である。
【0003】
更に、D種のHAdV-53もEKCを引き起こすことが報告されている(PLoS One, 2009, 4(6), 1-14, doi:10.1371/journal.pone.0005635.g001)。また、HAdV-22,37/H8と称されるアデノウイルスがEKC患者から単離されている。
【0004】
近年、HAdV-54と称されるウイルスもEKCを引き起こすことが報告された(British Journal of Ophthalmology (2010) Hisatoshi Kanekoら, “Epidemiological and virological features of conjunctivitis due to new human adenovirus type 54 in Japan” published online June 8, 2010, doi: 10.1136/bjo.2009.178772)。
【0005】
EKCの症状は結膜の炎症(結膜炎)、角膜の炎症(角膜炎)、疼痛、浮腫、視力低下、流涙、光過敏、眼部異物感、および偽膜形成である。疾患の急性期(約2-3週間)には、ウイルスが存在し、複製する。通常、まず片眼が感染し、これが2-3日以内に他眼に伝染する。一般に、最初に感染した眼の方がより重篤である。患者の約30%で、視力の低下を引き起こす角膜混濁が数週間、数ヶ月、場合によっては数年間持続する。
【0006】
疾患は多くの場合、流行性であるため、流行性角結膜炎(EKC)と呼ばれる。
【0007】
この疾患の症状と伝染性の強さから、患者は通勤または通学ができないか、または医者からしないよう勧められる。患者の周囲にいる人(例えば家族)の約45%は感染する。再発率(5年以内)は最初の感染後が25%、2回目の感染後は50%である。
【0008】
EKCは物理的接触を介して個体間で伝染する(例えば目から手へ、手からドアノブへ、ドアノブから別の人の手へ、そして未感染の目へ)。EKCを起こすウイルスは、例えばドアノブやタオル上で、数ヶ月間生存できる。集団発生を防ぐためには、適正な感染予防措置に従わなければならない。
【0009】
感染の急性期における局所ステロイド治療が広く使用されてきた。しかしながら、最近の知見により、ステロイドは角膜に長期間残留し、頻繁に使用することによって長期間持続するドライアイ症状を引き起こしうることが結論づけられている。疾患の急性期および慢性期のいずれでも、ステロイドの使用を避けることが推奨されている。
【0010】
この感染性の高い疾患は世界中で見られるが、アジアの人口密度が高い国々でより多く発生する。アデノウイルス結膜炎は特に日本において問題となっており、毎年約100万症例のEKCが報告されている。
【0011】
EKCは世界中で散発的および流行的に発生し、東アジア(日本、韓国、および台湾など)で流行している。これらの地域では重大な健康問題として認識されている。また、この地域的な伝染病に対する経済的および社会的費用は大きい。職場、公共施設(例えば学校および託児所)は伝染病が発生すると閉鎖しなくてはならない。毎年多くの就労時間が、この疾患の結果として失われている。
【0012】
EKCは通常、2-3週間で治癒するが、医療費およびその伝染性の高さに起因する生産性の損失に関する社会的費用は非常に大きい。また、この疾患は長期にわたって視力に影響を与え、再発する。
【0013】
EKCの原因となるアデノウイルスは、ウイルス粒子から伸長する線維タンパク質を介して、細胞受容体と相互作用する。各粒子は12のホモ3量体線維タンパク質を有し、そのため、線維の受容体結合ドメイン(ノブ)は3つの独立した結合部位を有する。
【0014】
HAdV-37の細胞受容体はα2,3,グリコシド結合を介して隣接するサッカライド鎖に結合した少なくとも1つの末端シアル酸を保有する複合糖質であることが明らかになっている。従って、アデノウイルスHAdV-8、HAdV-19、HAdV-37、そしておそらくは重症型EKCを引き起こす他のアデノウイルス(例えばHAdV-53、HAdV-54、およびHAdV-22,37/H8)の能力は、細胞表面上のシアル酸に結合する能力と強く関係している。このため、シアル酸に基づく抗ウイルス剤は、ウイルスの吸着を阻害する可能性を有する。従って、それらの薬剤を使用してEKC患者の治療をすることが可能でありうる。更に、これを使用してEKCの予防することもできうる。
【0015】
WO 01/037846は、アデノウイルス感染、そして特に眼部アデノウイルス感染(例えば角結膜炎)がウイルスおよびシアル酸受容体間の相互作用に干渉する物質(例えばシアル酸)を治療的有効量で投与することによって治療または緩和されることを開示している。
【0016】
残念ながら、炭水化物とタンパク質間の相互作用は弱いため、薬剤として炭水化物を使用することには限界がある。この限界を克服しようとする試みが、複合糖質をいくつかのヒト血清アルブミン結合型シアル酸誘導体(SA-HSA)と併用することによってなされてきた(Johansson, S. M. C.ら Antiviral Research 73 (2007) 92-100)。
【0017】
しかしながら、それらの多価複合糖質はいくつかの理由によって医薬品に適していない。
【0018】
SA-HSAの正確な構造および組成は、分子毎に異なる。従って、SA-HSAは構造的に定義するのが困難な構造のうちの1つのタイプである。更に、SA-HSA誘導体の組成は、たとえ同じ方法で生成しても、バッチ毎に異なる。安全性および規制の観点から、これは重大な欠点である。
【0019】
更に、ヒト血漿由来のタンパク質(すなわちHSA)を使用することは大きな欠点である。HSAの供与源の点から、HSAに基づく薬剤を大量に生成するのは困難である。更に、感染性因子(例えばウイルスまたはプリオン)の混入は、ヒト血漿由来のHSAでは避けられない。
【0020】
従って、HSAに基づく製品は医薬品として不適当であり、多価の代替物が非常に必要とされている。
【0021】
現在のところ、感染の経過を短縮する、苦痛を伴う症状を改善する、ウイルスの複製を停止させる、または角膜混濁の発症を予防するための臨床適用可能な特定の抗ウイルス療法は存在しない。
【0022】
このようにEKCは、有効な治療法がなく、医学的必要が全く満たされていない疾患である。従って、EKCの治療並びにその蔓延予防に使用できる薬剤は非常に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】WO 01/037846
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】PLoS One, 2009, 4(6), 1-14, doi:10.1371/journal.pone.0005635.g001
【非特許文献2】British Journal of Ophthalmology (2010) Hisatoshi Kaneko et al., published online June 8, 2010, doi: 10.1136/bjo.2009.178772
【非特許文献3】Johansson, S. M. C. et al., Antiviral Research 73 (2007) 92-100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、上記の問題点の少なくとも1つ(例えば1つまたはそれ以上)を軽減、改善、回避、または除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明のある観点では、以下の式(I)の化合物:
【化1】

式中、R1はメチルまたはエチル基であり;R2はR3、R4、またはR8であり;XはO、S、またはNHであり;そして「A」は、R2がR3である場合はC3-7のアルカンジイルであり、R2がR4またはR8である場合はC2-7のアルカンジイルであり;「X」およびR2は該アルカンジイル中の異なる炭素原子に結合しており、該異なる炭素原子は該アルカンジイル中の最も離れて位置する炭素原子であり;R3はN(C0-3アルキル)C(O)R5、OC(O)R5、C(O)N(C0-3アルキル)R5、およびC(O)OR5から成る群から選択され、R5は14から30個の炭素原子を含む炭素直鎖であり;該炭素鎖は飽和型であるか、または1つもしくはそれ以上の2重結合および/もしくは3重結合を含有し;更に、該炭素鎖は未置換であるか、または1つもしくはそれ以上のC1-C5アルキル基で置換されており;R4は式(II)の置換基であり:
【化2】

式中、「D」は「A」に結合していてN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル)、およびC(O)Oから成る群から選択され;整数「m」は0から3であり;整数「n」は1から15であり;整数「p」は0から3であり;「E」はN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル)、およびC(O)Oから成る群から選択され;そしてR7は上記R5およびR6から成る群から選択され、R6は式(III)の置換基であり:
【化3】

式中、R5はそれぞれ独立して上記の定義の通りであり、C2-5アルキルは「E」に結合しており;R8はN(C0-3アルキル)C(O)R9、OC(O)R9、C(O)N(C0-3アルキル)R9、およびC(O)OR9から成る群から選択され、R9は式(IV)の置換基であり:
【化4】

式中、R5はそれぞれ独立して上記の定義の通りである;
を、その非帯電性プロトン化型の酸、医薬的に許容される付加塩、溶媒和物、またはその塩の溶媒和物として提供する。
【0027】
本発明の別の観点では、複数の式(I)の化合物および、該化合物とは別の水中で2重層を形成できる複数の両親媒性分子を含有する凝集体を提供する。
【0028】
本発明の別の観点では、上記の凝集体および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0029】
本発明の別の観点では、式(I)の化合物、上記の凝集体、または上記の医薬組成物を使用して治療を行うことができる。
【0030】
本発明の別の観点では、式(I)の化合物、上記の凝集体、または上記の医薬組成物を使用して、ウイルスに起因する眼部感染(例えば流行性角結膜炎)の治療および/または予防を行うことができ、該ウイルスは該ウイルスに感染した細胞の細胞表面上に存在する末端シアル酸残基に結合するものである。それらのウイルスの例にはHAdV-8、HAdV-19、HAdV-37、HAdV-53、HAdV-54、およびHAdV-22,37/H8がある。
【0031】
更に、本発明の種々の態様の利点について、別記の特許請求の範囲、および以下の発明の詳細な説明において記載する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる凝集体がHAdV37を凝集させる能力を示す。
【図2】種々の濃度における本発明にかかる凝集体がHAdV37のHCE細胞への感染を阻害する能力を示す。
【図3】種々の濃度における本発明にかかる凝集体がHAdV37のHCE細胞への感染を阻害する能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「付加塩」という用語は、医薬的に許容される酸(例えば有機酸または無機酸)または医薬的に許容される塩基を付加することによって生成される塩を意味する。有機酸は、それらに限定されるわけではないが酢酸、プロパン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、またはマレイン酸であってもよい。無機酸は、それらに限定されるわけではないが塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、またはリン酸であってもよい。塩基は、それらに限定されるわけではないがアンモニアおよびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物であってもよい。「付加塩」という用語は水和物および溶媒付加物、例えば水和物およびアルコラートも包含する。
【0034】
本明細書で単独、接尾辞、または接頭辞として使用する「アルキル」とは、特定数の炭素原子を含有する分枝鎖型および直鎖型の飽和脂肪族炭化水素基を包含する。例えば「C1-6アルキル」は1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキルを示す。
【0035】
本明細書で単独、接尾辞、または接頭辞として使用する「アルカンジイル」とは、特定数の炭素原子を含有する分枝鎖型および直鎖型の飽和脂肪族炭化水素基を包含する。
【0036】
例えば「C1-6アルカンジイル」は1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルカンジイルを示す。
【0037】
本明細書における使用では、アルカンジイル基に結合する基は、特に記載しない限り、アルカンジイル基の任意の炭素原子に結合することができる。
【0038】
アルキルの例には、それらに限定されるわけではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、およびヘキシルがある。
【0039】
アルカンジイルの例には、それらに限定されるわけではないが、メチレン、エチレン(エタンジイル)、プロピレン(プロパンジイル)、およびブチレン(ブタンジイル)がある。
【0040】
化合物
本発明のある態様は、式(I)の化合物:
【化5】

式中、R1はメチルまたはエチル基であり;R2はR3、R4、またはR8であり;XはO、S、またはNHであり;そして「A」は、R2がR3である場合はC3-7のアルカンジイルであり、R2がR4またはR8である場合はC2-7のアルカンジイルであり;「X」およびR2は該アルカンジイル中の異なる炭素原子に結合しており、該異なる炭素原子は該アルカンジイル中の最も離れて位置する炭素原子であり;R3はN(C0-3アルキル)C(O)R5、OC(O)R5、C(O)N(C0-3アルキル)R5、およびC(O)OR5から成る群から選択され、R5は14から30個の炭素原子を含む炭素直鎖であり;該炭素鎖は飽和型であるか、または1つもしくはそれ以上の2重結合および/もしくは3重結合を含有し;更に、該炭素鎖は未置換であるか、または1つもしくはそれ以上のC1-C5アルキル基で置換されており;R4は式(II)の置換基であり:
【化6】

式中、「D」は「A」に結合していてN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル)、およびC(O)Oから成る群から選択され;整数「m」は0から3であり;整数「n」は1から15であり;整数「p」は0から3であり;「E」はN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル)、およびC(O)Oから成る群から選択され;そしてR7は上記R5およびR6から成る群から選択され、R6は式(III)の置換基であり:
【化7】

式中、R5はそれぞれ独立して上記の定義の通りであり、C2-5アルキルは「E」に結合しており;R8はN(C0-3アルキル)C(O)R9、OC(O)R9、C(O)N(C0-3アルキル)R9、およびC(O)OR9から成る群から選択され、R9は式(IV)の置換基であり:
【化8】

式中、R5はそれぞれ独立して上記の定義の通りである;
を、その非帯電性プロトン化型の酸、医薬的に許容される付加塩、溶媒和物、またはその塩の溶媒和物として提供する。更に、該化合物は純粋な立体異性体であるか、または該化合物を含有するラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、スカレミック混合物、もしくはアノメリック混合物であってもよい。好ましくは、該化合物は純粋な立体異性体またはアノメリック混合物である。
【0041】
上記のように、式(I)のR1はメチルまたはエチル基である。好ましくはR1はメチル基である。更に、式(I)の「X」は、上記のように、O、S、またはNHから選択してもよい。好ましくは「X」はOである。式(I)の「A」は、上記のように、R2がR3の場合はC3-7アルカンジイルであり、R2がR4またはR8の場合はC2-7アルカンジイルである。好ましくは、該C3-7アルカンジイルおよび該C2-7アルカンジイルは分枝鎖ではなく、直鎖アルカンジイル(例えばペンタン-1,5-ジイル)である。
【0042】
本発明のある態様は式(I)の化合物に関し、式中、「A」は分枝鎖ではなく、直鎖のC3-5アルカンジイル(例えばペンタン-1,5-ジイル)であり、R1はメチルであり、XはOであり、R5は未置換の炭素直鎖である。
【0043】
本発明のある態様は式(I)の化合物に関し、式中、R1はメチルであり、「X」はOであり、R5は未置換の炭素直鎖であり、R2はR4またはR8であり、「A」は分枝鎖ではなく、直鎖のC2-5アルカンジイル(例えばエタン-1,2-ジイルまたはペンタン-1,5-ジイル)である。
【0044】
上記のように、式(I)のR2はR3、R4、またはR8である。好ましくは、R2はR4またはR8であり、最も好ましくはR2はR4である。しかしながら、R2はR3であってもよい。
【0045】
上記のように、式(I)のR5は14から30個の炭素原子を含む炭素直鎖である。炭素鎖は必要により1つまたはそれ以上の2重結合および/または3重結合を含有してもよい。更に、該炭素鎖は必要により1つまたはそれ以上の(例えば1から3個の)C1-C5アルキル基(例えばメチル基)で置換されてもよい。好ましくは、R5は20から30個の炭素原子(例えば24から26個の炭素原子)を含有する。R5は置換されていてもよいが、好ましくはR5は未置換である。
【0046】
ある態様では、R5は少なくとも1つの2重結合または3重結合を含有する。好ましくはR5は少なくとも1つの3重結合を含有し、より好ましくは2つの共役した3重結合を含有する。従ってR5は、例えば9,11-テトラコサジイニル基であってもよい。
【0047】
ある態様では、R5は20から30個の炭素原子および2つの共役3重結合を含有する炭素直鎖であり、例えばR5は9,11-テトラコサジイニル基である。
【0048】
上記のように、R4は式(II)の置換基である。整数「p」は0から3であることができるが、好ましくは「p」は0である。整数「m」は0から3であることができるが、好ましくは2または3である。整数「n」は1から15でああることができるが、好ましくは「n」は3またはそれ以上、例えば4、5、またはそれ以上である。更に、整数「n」は15までの数でああることができるが、好ましくは「n」は12またはそれ未満である。
【0049】
ある態様では、R2はR4であり、整数「n」は4から15である。それらのポリエチレングリコール・リンカーの存在によって、式(I)の化合物を含有する凝集体の抗ウイルス活性が向上すると考えられる(詳細は後述)。
【0050】
「n」が4またはそれ以上である化合物では、R5は20個またはそれ以上の炭素原子を含有するのが好ましい。
【0051】
上記のように、式(II)の「D」はN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル) 、およびC(O)Oから成る群から選択される。好ましくは、「D」はN(C0-1アルキル)C(O)およびC(O)N(C0-1アルキル)から成る群から選択される。最も好ましくは、「D」はNHC(O)である。
【0052】
上記のように、「E」はN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル)、およびC(O)Oから成る群から選択される。好ましくは、「E」はN(C0-1アルキル)C(O)およびOC(O)から成る群から選択される。「E」がN(C0-1アルキル)C(O)およびOC(O)から成る群から選択される場合、R5はカルボン酸残基の一部である。最も好ましくは、「E」はNHC(O)である。
【0053】
R7はR5およびR6から選択されることができるが、好ましくはR7はR5である。
【0054】
R2がR4でありR7がR6である場合、R6のC2-5アルカンジイルは、好ましくはエタン-1,2-ジイル(エチレン)であり、「E」は好ましくはC(O)NHである。
【0055】
ある態様では、R2はR4であり、「D」はNHC(O)またはOC(O)であり、整数「m」は2であり、整数「p」は0であり、「E」はNHC(O)またはOC(O)であり、R7はR5である。それらの態様では、好ましくはR1はメチルであり、XはOである。更に、好ましくは「A」は直鎖C2-C5アルカンジイル、例えばエタン-1,2-ジイルまたはペンタン-1,2-ジイルである。更に、それらの態様では、好ましくは整数「n」は3またはそれ以上である。
【0056】
ある態様では、R2はR4であり、「D」はC(O)NHまたはC(O)Oであり、整数「m」は2であり、整数「p」は0であり、「E」はNHC(O)またはOC(O)であり、R7はR5である。それらの態様では、好ましくはR1はメチルであり、XはOである。更に、好ましくは、Aは直鎖C2-C5アルカンジイル、例えばエタン-1,2-ジイルまたはペンタン-1,2-ジイルである。更に、それらの態様では、好ましくは整数「n」は3またはそれ以上である。
【0057】
上記のように、好ましくはR2はR4またはR8であるが、本発明のある態様は、式(I)の化合物に関係し、式中、R2はR3であり、R3はNHC(O)R5またはOC(O)R5である。それらの態様では、好ましくはR3はNHC(O)R5である。
【0058】
ある態様では、式(I)の化合物は以下からなる群から選択される:6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-トリテトラコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-ノナテトラコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-テトラヘキサコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-29,31-テトラテトラコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-35,37-ペンタコンタジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、および6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-56,58-ヘンヘプタコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニルピラノシロン酸。式(I)の化合物は以下から成る群から選択してもよい:6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-29,31-テトラテトラコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニルピラノシロン酸、6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-35,37-ペンタコンタジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニルピラノシロン酸、および6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-56,58-ヘンヘプタコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニルピラノシロン酸。
【0059】
上記のように、本発明のいくつかの態様は、式(I)の化合物の非帯電性プロトン化型の酸、医薬的に許容される付加塩(例えば脱プロトン型の酸)、溶媒和物、またはその塩の溶媒和物に関する。更に、式(I)の化合物は純粋な立体異性体であるか、またはアノメリック混合物であってもよい。
【0060】
アノメリック混合物である場合、好ましくはα-アノマー優占的である。従って、好ましくは化合物の75%以上、例えば90%、95%、99%、または99.9%以上がα-アノマーである。
【0061】
凝集体
EKCの原因となるアデノウイルスが細胞に接着するために使用する細胞膜の細胞受容体部分は末端シアル酸残基を有するので、本明細書に記載される複数の化合物を、該化合物とは別の水中で2重層を形成する能力を有する複数の両親媒性分子を含有する両親媒性凝集体に組み込んだ。それらの凝集体は、一価型の化合物に比較して、HAdV-37のヒト角膜細胞への結合をより効率的に阻害することが明らかになった。
【0062】
水中で2重層を形成できる両親媒性分子を含有する凝集体は、親油性内部を有する2重層として存在することができる。
【0063】
いかなる理論にも拘束されないが、それらの凝集体は、1つの凝集体中のアデノウイルスへの結合に利用可能なシアル酸基の数に関して、多価凝集体であることを特徴とすると考えられる。従って、それらの凝集体を用いて、対応するシアル酸残基またはシアル酸自体に比較して、より有効にEKCを治療および/または予防しうる。
【0064】
従って、それらの凝集体はSA-HSAの使用に伴う欠点のいくつかを解決しうる。特に、凝集体の成分は十分確立された分子であり、凝集体は感染性物質を含有しない。
【0065】
従って、本発明のある態様は、本明細書に開示する複数の化合物および該化合物とは別の複数の分子を含有する凝集体に関する。それらの分子は水中で2重層を形成できる両親媒性分子であることができる。凝集体は該分子によって形成される2重層を含有してもよい。凝集体は水中で2重層を形成できる両親媒性分子を含有するので、細胞膜と類似する。従って、親油性部分を多く有する化合物(例えば本明細書に開示する化合物)を凝集体内に挿入することができる。
【0066】
水溶液中でそのような凝集体内に挿入されると、本明細書に開示する化合物のシアル酸残基は周囲の水性媒質に提示される。式(I)のR5を含む化合物の親油性部分は凝集体内に包埋される。
【0067】
該凝集体は水中で2重層を形成できる両親媒性分子を少なくとも40mol%含有することができる。好ましくは、50mol%以上、例えば65、75、もしくは85mol%、またはそれ以上の該分子を含有する。
【0068】
同様に、該両親媒性分子の含有量は重量ベースで決定してもよい。従って、本明細書に開示する凝集体は、水中で2重層を形成できる両親媒性分子を40重量%またはそれ以上含有することができる。好ましくは、50重量%以上、例えば65、75、もしくは85重量%、またはそれ以上の該両親媒性分子を含有する。
【0069】
本明細書に開示する凝集体は、50mol%またはそれ未満の本明細書に開示する化合物を含有することができる。該化合物の含有量は25、15、10、もしくは5mol%、またはそれ未満であってもよい。
【0070】
該化合物の含有量が高すぎると凝集体が安定化しうる。更に、含有量が高すぎると、周辺の水性媒質にシアル酸残基を提示する個々の化合物が互いに近接しうる。これに対して、含有量が低すぎるとウイルスへの結合が不十分となり得る。従って、ある態様によれば、該化合物の含有量は0.1から25mol%、例えば5から15mol%であることができる。別の態様では、含有量は約10mol%である。
【0071】
同様に、ある態様によれば、該化合物の含有量は0.1から25重量%、例えば1から15重量%または5から15重量%である。別の態様によれば、含有量は約10重量%である。
【0072】
一般に、水中で2重層を形成できる両親媒性分子は、少なくとも1つ、例えば1つまたは2つの親油性炭素鎖を含有する。該鎖は飽和していてもよい。更に、該鎖は不飽和であって、1つまたはいくつかの2重結合および/または3重結合を含有してもよい。それらの炭素鎖は分枝鎖であってもよいが、好ましくは該炭素鎖は直鎖である。炭素鎖は一般に該両親媒性分子の親油性部分の大部分を構成する。これは12個以上の炭素原子を含有してもよい。ある態様によれば、炭素鎖は16個またはそれ以上の炭素原子、例えば20個またはそれ以上の炭素原子を含有する。
【0073】
水中で2重層を形成できる任意の分子を使用することができるが、少なくとも1つの3重結合(例えば2つの共役3重結合)を含む炭素直鎖を含有する分子を使用するのが有益である。
【0074】
ある態様では、水中で2重層を形成できる該分子は9,11-テトラコサジイニル基を含む分子から選択することができる。それらの分子は、例えば10,12-ペンタコサジイン酸である。
【0075】
凝集体の構成要素が(例えば10,12-ペンタコサジイン酸のように)共役3重結合を含有する場合、凝集体の構成要素はUV照射によって重合化することができる。従って、本発明のある態様はそれらの凝集体に関し、該凝集体はUV照射によって重合化されたものである。
【0076】
本明細書に開示する凝集体であり、共役3重結合を含有する式(I)の化合物(例えば式(I)のR5が9,11-テトラコサジイニルである)は、UV照射によって形成される高分子網目の一部を構成することができる。
【0077】
それらの凝集体における重合度は、ある態様によれば、少なくとも50%またはそれ以上、例えば60、70、もしくは80%、またはそれ以上であってもよい。この点に関して、重合度とは、重合化した高分子網目の一部となった3重結合のパーセンテージを意味するものとする。
【0078】
別の態様では、(例えばUV照射によって)重合化しうる凝集体を(例えばUVへの暴露を回避して)慎重に処理し、重合化を防止する。ある態様によれば、重合化しうる凝集体中の構成要素の10%またはそれ未満(例えば5、1、もしくは0.1%、またはそれ未満)が重合化している。
【0079】
ある態様では、式(I)のR5は、凝集体の一部を成す両親媒性分子中に存在する部分から選択される。例えばR5が9,11-テトラコサジイニルである場合、該分子は10,12-ペンタコサジイン酸であってもよい。更に、該分子がグリセロールのジエステルであるリン脂質である場合、R5は該エステル中の脂肪酸残基の1つにある炭素鎖から選択されてもよい。
【0080】
一般に、水中で2重層を形成できる両親媒性分子は親水性部分を有する。それらの親水性部分の例として、カルボキシ基、ホスフェート基、ホスフェートのエステル、例えばコリン、セリン、およびグリセリン・エステル、硫酸基、アミン、サッカライド、例えばモノサッカライドおよびジサッカライド、およびヒドロキシ基がある。
【0081】
上記のように、凝集体は水中で2重層を形成できる両親媒性分子を含有する。それらの分子は、12個より多い炭素原子を含有するカルボン酸であるホスホグリセリド(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジルエタノールアミン)およびスフィンゴミエリンから選択してもよい。
【0082】
ある態様では、水中で2重層を形成できる両親媒性分子は、遷移温度が40℃以上、例えば50または60℃以上である両親媒性分子から選択してもよい。当業者に知られるように、この点に関して遷移温度とは、水中で両親媒性分子によって形成された秩序相(別名、ゲル相)から、無秩序な2重層の液晶相への遷移が起こる温度を意味する。
【0083】
水中で2重層を形成する両親媒性分子の凝集体はリポソーム(すなわち、リポソームが形成されるところの水溶液の一部を包含する、1つまたはそれ以上の球状2重層である)として存在することができる。それらの凝集体はシート状の2重層を形成することができる。更に、両親媒性分子は水中ミセルを形成することができる。しかしながら、ミセルは2重層を包含しない。
【0084】
ある態様では、本明細書に開示する凝集体は1つまたはそれ以上(例えば1から5)の2重層を含有するシートである。
【0085】
リポソームとは異なり、1つの2重層を有するシートにおいて、2重層の両面が周囲の水性媒質に面する。従って、シート中の化合物の全てのシアル酸残基がウイルスと結合可能である。
【0086】
更に、1つまたはいくつかの2重層を含むシート状の凝集体は、HAdV-37のヒト角膜細胞への結合阻害をより効果的にすると考えられる。
【0087】
それらのシートのサイズは調製法によって異なる。
【0088】
ある態様では、シートの平均幅は最大、数マイクロメーター(例えば最大10から100μm)であることができる。
【0089】
シートとして存在しうる凝集体のサイズは、超音波処理によって低減することができる。それらの音波処理を行った後、凝集体を薬剤に調製してもよい。ある態様では、小型化したシートの平均幅は1μmまたはそれ未満であってもよい。
【0090】
小型化した凝集体はコロイド安定性の観点から好ましい。これは、凝集体が小さいほど、大型のものに比較して凝塊および沈殿の度合いが低い傾向があるためである。小型化は、特に凝集体の超音波処理、射出、または高圧ホモジナイズ処理(例えばEmulsifix C50高圧ホモジナイザー(F160)を使用して)によって行ってもよい。好ましくは、これらの処理を、2重層を構成する両親媒性分子の遷移温度より高い温度で行う。
【0091】
凝集体を形成する両親媒性分子の遷移温度は、2重層の流動性だけでなく、凝集体の実際の形態にも影響する。遷移温度が室温より高い両親媒性分子はシートを形成する傾向にあり、遷移温度が室温より低い両親媒性分子はリポソームを形成する傾向がより強い。
【0092】
従って、本明細書に開示する凝集体の一部を成す両親媒性分子は、ある態様によれば、遷移温度が室温より高い(例えば40、50、もしくは60℃、またはそれ以上である)両親媒性分子から選択してもよい。
【0093】
両親媒性分子の遷移温度は炭素鎖の長さだけでなく2重結合および/または3重結合の存在によっても影響を受ける。2重結合は遷移温度を低下させることが知られており、これは、2重結合によって本来規則正しい構造が分断され、ファンデルワールス相互作用に負の影響が与えられるためである。3重結合の影響、特に共役3重結合の影響については知見が少ない。
【0094】
いかなる理論にも拘束されないが、10,12-ペンタコサジイン酸を(少なくとも部分的に)含有する凝集体によって得られる良好な活性は、それらの凝集体がリポソームではなくシートの形態で存在するためであると考えられる。共役3重結合はそれらの形態を取る傾向がより強いと考えられる。
【0095】
ある態様では、本明細書に開示する凝集体は更なる成分を含んでもよい。例えば、凝集体の流動性および安定性に影響を与える成分を使用してもよい。それらの成分の一例としてコレステロールがある。一般に、それらの更なる成分は両親媒性分子と等量またはそれ未満の量で含有される。ある態様では、それらの更なる成分(例えばコレステロール)の含有量は1:1から1:10(更なる成分(例えばコレステロール):両親媒性分子)であってもよい。
【0096】
凝集体の調製
本明細書に開示する凝集体は、当業者に知られる方法によって得ることができる。それらの方法には、本明細書に開示する化合物および本明細書に開示する両親媒性分子を含有する水溶液または懸濁液の超音波処理および/または射出がある。
【0097】
更に、それらの方法の例として、水溶液中での乾燥フィルムの溶解がある。
【0098】
ある態様では、本明細書に開示する凝集体は以下によって得ることができる:
- 本明細書に開示する化合物および本明細書に開示する両親媒性分子を有機溶媒(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、炭化水素、例えばヘキサンおよびヘプタン、またはそれらの混合物)に溶解する;
- 該溶液を表面に施与する;
- 有機溶媒をエバポレートする;そして
- 得られたフィルムを水溶液中に分散させる;必要により、その後、該溶液を超音波処理してもよい。それらの超音波処理段階は、好ましくは室温より高い温度で(例えば40℃以上で)行う。
【0099】
製剤
本発明の別の態様は、凝集体を含有するEKCの治療および/または予防のための医薬組成物、例えば薬剤に関し、該凝集体は、上記のように式(I)の化合物を含有する。それらの医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤、例えばキャリア、希釈剤、および/または安定化剤を更に含有してもよい。
【0100】
「医薬的に許容される」とは、ある賦形剤がその用量および濃度で、投与を行う患者に望ましくない作用を起こさないことを意味する。それらの医薬的に許容される賦形剤は当該分野で知られている。
【0101】
ある態様では、本明細書に開示するそれらの医薬組成物は眼への投与に好適な医薬組成物である。
【0102】
眼への投与に好適な医薬組成物の一般的な例としては、限定されるわけではないが、点眼薬、軟膏、スプレー、ドレッシング剤、およびジェルがある。
【0103】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は0.001から10mg/ml、例えば0.01から5mg/ml、または0.01から1mg/mlの凝集体を含有し、該凝集体は、上記のように式(I)の物質を含有する。
【0104】
更に、本明細書に開示する医薬組成物は0.001から10mM、例えば0.01から1mMの式(I)の物質を含有してもよい。
【0105】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は水性組成物であってもよい。それらの水性組成物の水分含有量は90重量%以上、例えば90から99.9、95から99、または95から98重量%であってもよい。
【0106】
更に、水性組成物は等張液を与えるための物質を含有してもよい。従って、水性組成物は塩化ナトリウム、グリセロール、ポリエチレングリコール、サッカライド、例えばモノサッカライド(例えばグルコースおよびマンニトール)およびジサッカライド(例えばショ糖)からなる群から選択される物質を含有してもよい。
【0107】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は電解質、例えば塩化ナトリウムを含有する水性組成物である。好ましくは、該含有量は等浸透圧濃度に近く、例えば約0.9重量%である。
【0108】
ある態様によれば、本明細書に開示する医薬組成物はグリセロールを含有する水性組成物である。グリセロールの含有量は2から3重量%、例えば2.3から2.3または2.5から2.7重量%であってもよい。好ましくは、該含有量は等浸透圧濃度に近く、例えば約2.6重量%である。
【0109】
ある態様では、本明細書に開示する水性医薬組成物のpHは約6.5から8である。好ましくは、該pHは生理学的pHに近く、例えば約7.2から7.8である。
【0110】
式(I)の化合物はカルボン酸基を含むため、該医薬組成物は、pHを所望のレベルに調整するために、医薬的に許容される酸および/または塩基を含有してもよい。同様に、医薬組成物は緩衝物質、例えばHCO3-/CO32-またはH2PO4-/HPO42-を含有してもよい。
【0111】
別の態様では、本明細書に開示する凝集体の添加後に医薬組成物のpH調整を行わない。従って、それらの態様は、pHが約5から7である、本明細書に開示する水性医薬組成物に関する。酸性pH、すなわちpH7未満である組成物は微生物がより増殖しにくいという利点を有する。
【0112】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は保存剤を含有してもよい。それらの保存剤の例として塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ブチルヒドロキシアニソール、パラベン(例えばブチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、およびそれらの混合物)、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、またはソルビン酸がある。保存剤を含有する医薬組成物は、より保存に好適である。
【0113】
更に、本明細書に開示する医薬組成物を(例えば加熱滅菌またはろ過滅菌によって)滅菌してもよい。
【0114】
ある態様によれば、本明細書に開示する医薬組成物は他の医薬的に許容される賦形剤、例えば保存剤、抗酸化剤、更なる等張剤、着色剤などを含有してもよい。
【0115】
水性懸濁液に関する態様では、本明細書に開示する医薬組成物は懸濁化剤および安定化剤、例えば非イオン性界面活性剤、疎水性ポリマーなどを含有してもよい。
【0116】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は増粘剤を含有してもよい。増粘剤を使用して増粘溶液、ジェル、シロップ、クリーム、または軟膏を調製してもよい。増粘溶液またはジェルを生成するために、ヒドロゲル生成物質を使用してもよい。それらのヒドロゲル生成物質は合成ポリマー、半合成ポリマー、および天然ゴムからなる群から選択してもよい。
【0117】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は増粘水溶液であってもよい。それらの溶液の一般的な粘性は、1から100mPas、より一般的には5から50、または10から25mPasの範囲である。
【0118】
合成ポリマーの例としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポロキサマー・ブロック共重合体がある。
【0119】
半合成ポリマーの例として、セルロース・エーテル、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびエチルヒドロキシエチルセルロースがある。
【0120】
天然ゴムの例としてアカシア、アルギン酸、カラギーナン、キトサン、ペクチン、デンプン、キサンタン・ガムがある。
【0121】
物質(例えばヒアルロン酸およびその誘導体、カルボマーおよびポリカルボフィル型の架橋ポリアクリル酸、そして容易にジェルを形成するポリマーで粘膜に強く接着することが知られているもの)を使用することによって、増粘溶液またはジェルに粘膜接着性を施与してもよい。
【0122】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物はポロキサマー型のブロック共重合体を含有してもよい。ポロキサマー型のブロック共重合体(例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール・ブロックを含有するポリマー)を使用することは有益であり、これは水中に分散するある種のポロキサマーが熱可逆性であるためである。熱可逆性ポロキサマーの例にはポロキサマー188およびポロキサマー407がある。
【0123】
水中に分散した熱可逆性ポロキサマーは粘性が低いが、温度の上昇に伴って著しく粘性が増加し、体温でジェルを形成する。従って、相対的に温かい角膜へ投与された医薬製剤は、より長時間接触を保ちうる。従って、本発明のある態様は、熱可逆性である、本明細書に開示する医薬組成物に関する。
【0124】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は更に別の抗ウイルス化合物を含有してもよい。それらの化合物の例としてN-クロロタウリンおよびポビドンヨード(PVP-I)がある。
【0125】
N-クロロタウリン(Cl-HN-CH2-CH2-SO3H)は内因性抗菌剤である。これは軽度に活性な塩素化合物であり、酸化的破壊の際に顆粒球および単球によって生成される。その非特異的反応機構(すなわちアミノ基、チオおよび芳香族化合物の酸化)により、防腐剤と同様、広範なスペクトラムの殺菌活性を有する。N-クロロタウリンのナトリウム塩溶液(Cl-HN-CH2-CH2-SO3Na)はインビトロにおいて細菌および真菌を死滅させることが明らかになっている。更に、殺ウイルス作用も証明されている。ポビドンヨードはポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)と元素状ヨードの安定な化学的複合体である。
【0126】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は更に別の抗ウイルス化合物を含有してもよく、ここで該抗ウイルス化合物はヘルペスに起因する感染の局所治療に有用な化合物である。それらの化合物の例として、グアノシン類似体であるアシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、およびファムシクロビル、そしてホスカルネット(ホスホノギ酸ナトリウム・6水和物)がある。
【0127】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物は局所麻酔剤を含有してもよい。EKCは強い痛みを伴いうる疾患なので、局所麻酔剤を含有させて痛みを軽減することは有益である。更に、それらの疼痛緩和は患者に治療継続を促すのに有益でありうるが、投与そのものが痛みを伴う。更に、速やかに作用する局所麻酔剤の使用により、患者が実際に目を開き、組成物を更に角膜に直接投与することが可能となる。有用な局所麻酔剤の例としてリドカイン、プリロカイン、およびロピバカインがある。
【0128】
治療
別の態様では、本明細書に開示する化合物、凝集体、または医薬組成物は治療に使用することができる。
【0129】
眼部感染の治療
上記のように、本明細書に開示する凝集体は、HAdV-37のヒト角膜細胞への結合を阻害することが明らかになっている。
【0130】
従って、本発明のある態様は、本明細書に開示する化合物、凝集体、または医薬組成物の、ウイルスに起因する眼部感染の治療および/または予防への使用に関し、ここでウイルスは、該ウイルスが感染する細胞の表面上に存在する末端シアル酸残基に結合する。
【0131】
同様に、本発明のある態様は、本明細書に開示する化合物、凝集体、または医薬組成物の、ウイルスに起因する眼部感染の治療および/または予防に使用する薬剤の製造への使用に関し、ここでウイルスは、該ウイルスが感染する細胞の表面上に存在する末端シアル酸残基に結合する。
【0132】
ある態様では、それらのウイルスはHAdV-8、HAdV-19、HAdV-37、HAdV-53、HAdV-54、およびHAdV-22,37/H8から成る群から選択してもよい。また、それらのウイルスはHAdV-8、HAdV-19、およびHAdV-37から選択してもよい(例えばHAdV-37であってもよい)。
【0133】
ある態様では、治療および/または予防すべき眼部感染は流行性角結膜炎(EKC)であってもよい。
【0134】
ある態様では、治療および/または予防すべき眼部感染は急性出血性結膜炎であってもよい。急性出血性結膜炎はコクサッキーウイルス-A24変異体(CVA24v)およびエンテロウイルス70型(EV70)のようなウイルスによって引き起こされる。
【0135】
別の態様は、ウイルスに起因する眼部感染の予防および/または治療の方法に関し、ここでウイルスは、該ウイルスが感染する細胞の表面上に存在する末端シアル酸残基に結合し(このような感染には例えばEKCがある)、方法は予防および/または治療を必要とする哺乳動物(例えばヒト)に、治療的有効量の本明細書に開示する化合物もしくは凝集体、または治療的有効量の本明細書に開示する化合物を含有する医薬組成物を投与することを含む。好ましくは、それらの方法において、該化合物、凝集体、または医薬組成物を眼に投与する。
【0136】
本明細書の態様による医薬組成物は、医薬的有効量で患者に投与することができる。「医薬的有効量」とは、投与の目的である症状に関して所望の効果を得るのに十分な投与量を意味する。正確な投与量は化合物の活性、投与方法、障害および/または疾患の性質および重篤度、そして全身状態(例えば患者の年齢および体重)によって異なる。
【0137】
ある態様では、本明細書に開示する医薬組成物を1日に1回または数回投与してもよい。一般的に、それらの医薬組成物は1日3回投与する。
【0138】
本明細書で使用する「予防する/予防」とは、本明細書に開示する態様に従う化合物または医薬組成物を使用して予防を達成した後、症状および/または疾患が二度と起こらないことを意味すると解釈すべきものではない。更にこの用語は、そのような使用によって該症状を予防したのち、少なくともある程度までは症状が起こらないことを意味するものでもない。むしろ、「予防する/予防」は、予防すべき症状が(それらの使用にも関わらず発症した場合に)、それらを使用しない場合よりも軽度になることを意味することを意図する。
【0139】
ある態様では、治療には前治療、すなわち予防的治療も包含される。
【0140】
一般的注意
既に本発明について特定の例証的態様を引用しながら記載したが、本明細書に記載する特定の形態に限定することを意図するものではない。上記の態様のいかなる組み合わせも本発明の範囲内にあると認識すべきである。本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、上に明記したもの以外の態様も添付する特許請求の範囲の範囲内で等しく可能である。
【0141】
特許請求の範囲において、「含む/含むこと」という用語は、他の種または段階の存在を除外するものではない。更に、個々の特長は異なる請求項に含まれうるが、場合によってはこれらを便宜に合一してもよく、異なる請求項への包含は、特長の組み合わせが適切ではない、そして/または有益ではないことを意味するものではない。更に、単数形は複数形を除外するものではない。「1つの」、「第1の」、「第2の」等の用語は複数形を除外するものではない。
【実施例】
【0142】
化合物
化合物A-K(スキーム1参照)を、ブロック合成法を用いて合成した。シアル酸1(Johansson, S. M. C.;Nilsson, E. C.;Elofsson, M.;Ahlskog, N.;Kihlberg, J.;Arnberg, N. Antiviral Res. 2007, 73, 92-100)をFmoc-保護したアミノペンタノールとカップリングさせ、DMF中でピペリジンを用いて脱保護した。粗生成物を、EDC・HClを用いて、Fmoc-保護したポリエチレングリコール・リンカー(PEG2、4、または11)とカップリングさせて化合物2-4を得るか、またはPDA(10,12-ペンタコサジイン酸)もしくはヘキサデカン酸と反応させてそれぞれ化合物14および15を得た。化合物2-4をピペリジンを用いてDMF中で脱保護した。次いで、粗化合物をEDC・HClを用いて以下とカップリングさせた:ステアリン酸(化合物5-7が生成)、テトラコサン酸(化合物8-10が生成)、または10,12-ペンタコサジイン酸(化合物11-13が生成)。その後、化合物5-15を脱保護するために、NaOMe(0.05Mメタノール溶液)で1時間、次いで5当量のNaOHを添加して更に18時間処理した。最終化合物(A-K)をSiO2カラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH:H2O系を使用)で精製した。ブロック合成により、リンカー(例えばリンカーの長さ、リンカーのタイプ、結合のタイプ)と酸の単純な変更によって新規の化合物を容易に合成できる。
【0143】
スキーム1 化合物A−Kの合成
【化9】

【0144】
化合物AからKの実験の詳細を以下に開示する。
一般に;
i.特に記載しない限り、操作は室温で、すなわち17から25℃の範囲で行った;
ii.エバポレーションはロータリーエバポレーターを用い、真空下で行った;
iii.カラムクロマトグラフィー(フラッシュ法による)は標準的なガラスカラムを用い、シリカゲル(35-70nm、60A)で行った;
iv.収量(適用される場合)は最大限である必要はない;
v.一般に、最終産物の構造は核磁気共鳴(NMR)および/または質量スペクトル(MS)法で確認した;質量スペクトルのデータはMicromass Q-Tof(ESI)を用いて得た;NMRの化学シフト値は、デルタ・スケールで測定した(プロトン磁気共鳴スペクトルはBruker DRX 400分光計を用い、400MHzの磁場強度で操作して測定した);以下の略語を使用した:s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;m、マルチプレット。
vi.中間体は完全に精製される必要はなく、その構造および純度を薄相クロマトグラフィーおよび/またはNMR分析によって評価した;
vii.以下の略語を使用した:
aq 水性
C セルシウス
d ダブレット
DCM ジクロロメタン
CDCl3 重水素化クロロホルム
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC*HCl N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
ESI エレクトロスプレーイオン化
EtOAc 酢酸エチル
h 時間
HRMS 高分解能質量スペクトル
H2O 水
m マルチプレット
MeOD 重水素化メタノール
MeOH メタノール
MgSO4 硫酸マグネシウム
mg ミリグラム
MHz メガヘルツ
mL ミリリットル
mmol ミリモル
NaOH 水酸化ナトリウム
NaOMe ナトリウム・メトキシド
NMR 核磁気共鳴
s シングレット
t トリプレット
μL マイクロリットル
【0145】
化合物2 6,19-ジアザ-22-(9H-フルオレン-9-イル)-10,13,16,21-テトラオキサ-7,20-ジオキソ-ドコサニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
1(150.9mg、0.189mmol)を乾燥DMF(5mL)に溶解した後、ピペリジン(706μL、7.14mmol)を溶液に添加した。反応混液を2時間撹拌した後、溶媒および残存するピペリジンを減圧化でエバポレートし、粗中間体を得た。この粗中間体(36.3mg、0.063mmol)およびFmoc-NH-(PEG)2-COOHをDCM(1mL)に溶解し、溶液を0℃に冷却した。EDC・HCl(18.2mg、0.095mmol)を溶液に添加した。反応混液を18時間撹拌した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 25:1)に施与し、標記化合物(45.0mg、71%)を得た。
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 1.28-1.57 (m), 1.87 (s, 3H), 1.90-1.96 (m), 2.01 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.13 (s, 3H), 2.13 (s, 3H), 2.42 (t, 2H), 2.53-2.58 (m, 1H), 3.17-3.27 (m, 3H), 3.38-3.40 (m), 3.55-3.62 (m), 3.68-3.78 (m), 4.02-4.10 (m, 3H) 4.21 (t, 1H), 4.29-4.33 (m, 1H), 4.40 (d, 2H), 4.79-4.86 (m, 1H), 5.19-5.22 (m, 1H), 5.29-5.32 (m, 1H), 5.37-5.44 (m, 2H), 6.37 (t, 1H), 7.28-7.32 (m, 2H), 7.39 (t, 2H), 7.60 (d, 2H), 7.76 (d, 2H).
HRMS C49H67N3O19 (M+Na)+の理論値=1024.4266、測定値=1024.4921
【0146】
化合物3 6,25-ジアザ-28-(9H-フルオレン-9-イル)-10,13,16,19,22,28-ヘキサオキサ-7,26-ジオキソ-オクタエイコサニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物2と同様に、Fmoc-NH-(PEG)2-COOHの代わりにFmoc-NH-(PEG)4-COOHを使用して合成した。
収量 83.4mg(61%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 1.27-1.57 (m), 1.86-2.04 (m), 2.13 (s, 6H), 2.43 (t, 2H), 2.53-2.58 (m, 1H), 3.17-3.24 (m, 3H), 3.36-3.40 (m), 3.55-3.62 (m), 3.68-3.77 (m), 4.02-4.11 (m, 3H), 4.21 (t, 1H), 4.29-4.32 (m, 1H), 4.39 (d, 2H), 4.79-4.85 (m, 1H), 5.23-5.25 (m, 1H), 5.29-5.32 (m, 1H), 5.36-5.40 (m, 1H), 5.48 (t, 1H), 6.47 (t, 1H), 7.28-7.32 (m, 2H), 7.37-7.41 (m, 2H), 7.60 (d, 2H), 7.75 (d, 2H).
HRMS C53H75N3O21 (M+Na)+の理論値=1112.4791、実測値=1112.5548
【0147】
化合物4 6,46-ジアザ-49-(9H-フルオレン-9-イル)-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,48-トリデカオキサ-7,47-ジオキソ-ノナテトラコンタニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物2と同様に、Fmoc-NH-(PEG)2-COOHの代わりにFmoc-NH-(PEG)11-COOHを使用して合成した。
収量 45.8mg(60%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 1.23-1.57 (m), 1.86 (s, 3H), 1.88-1.98 (m), 2.01 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.12 (s, 6H), 2.43 (t, 2H), 2.53-2.57 (m, 1H), 3.16-3.27 (m, 3H), 3.37-3.43 (m, 2H), 3.54-3.62 (m), 3.69-3.75 (m), 3.75-3.77 (m), 4.01-4.10 (m), 4.20 (t, 1H), 4.28-4.32 (m, 1H), 4.34-4.39 (m, 2H), 4.78-4.85 (m, 1H), 5.24-5.31 (m, 2H), 5.35-5.39 (m, 1H), 5.43 (t, 1H), 6.50 (t, 1H), 7.27-7.31 (m, 2H), 7.36-7.40 (m, 2H), 7.58-7.63 (m, 2H), 7.74 (d, 2H).
HRMS C67H103N3O28 (M+Na)+の理論値=1420.6626、実測値=1420.7222
【0148】
化合物5 6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-ヘプタトリコンタニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
2(43.3mg、0.043mmol)をDMF(2mL)に溶解した後、ピペリジン(162(L、1.63mmol)を添加した。反応混液を2.5時間撹拌した。溶媒をエバポレートし、粗中間体を得た。この粗中間体を2つの等量のバッチに分割した。1つのバッチの粗中間体をDCM(1mL)に溶解した後、ステアリン酸(9.1mg、0.032mmol)を溶液に添加し、反応液を0℃に冷却した。EDC・HCl(6.1mg、0.032mmol)を溶液に添加した。反応混液を16時間撹拌した。反応混液を水で洗浄し(2x5mL)、MgSO4で乾燥、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 25:1(20:1)に施与し、標記化合物(6.3mg、28%)を得た。
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H), 1.23-1.31 (m), 1.32-1.63 (m), 1.87 (s, 3H), 1.92-1.96 (m), 2.02 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.14-2.18 (m), 2.45 (t, 2H), 2.54-2.58 (m, 1H), 3.20-3.24 (m, 3H), 3.43-3.46 (m, 2H), 3.53-3.56 (m, 2H), 3.59-3.64 (m), 3.71-3.77 (m), 3.79 (s, 3H), 4.02-4.11 (m), 4.30-4.34 (m, 1H), 4.79-4.86 (m, 1H), 5.20-5.22 (m, 1H), 5.29-5.32 (m, 1H), 5.36-5.41 (m, 1H), 6.13 (t, 1H), 6.42 (t, 1H).
HRMS C52H91N3O18(M+Na)+の理論値=1068.6195、実測値=1068.6290
【0149】
化合物6 6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-トリテトラコンタニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、2の代わりに3を使用して合成した。
収量 14.2mg(52%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.88 (t), 1.25-1-42 (m), 1.46-1.67 (m), 1.79-1.83 (m), 1.88 (s, 3H), 1.91-1.97 (m), 2.03, (s, 3H), 2.04 (s, 3H), 2.10-2.19 (m), 2.44-2.47 (t, 2H), 2.54-2.60 (m), 3.18-3.33 (m), 3.42-3.46 (m, 2H), 3.54-3.56 (m, 2H), 3.61-3.65 (m), 3.71-3.77 (m), 3.79 (s, 3H), 4.02-4.11 (m, 3H), 4.30-4.33 (m, 1H), 4.80-4.87 (m, 1H), 5.15.5.17 (m, 1H), 5.30-5.33 (m, 1H), 5.37-5.41 (m, 1H), 6.18 (t, 1H), 6.51 (t, 1H).
HRMS C56H99N3O20(M+Na)+の理論値=1156.6720、実測値=1156.7217
【0150】
化合物7 6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-ヘプタコンタニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、2の代わりに4を使用して合成した。
収量 6.0mg(42%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H), 1.25-1.42 (m), 1.46-1.63 (m), 1.88 (s, 3H), 1.90-2.00 (m), 2.03 (s, 3H), 2.04 (s, 3H), 2.10-2.18 (m), 2.45 (t, 2H), 2.54-2.59 (m), 3.18-3.33 (m), 3.40-3.46 (m, 2H), 3.54-3.56 (m, 2H), 3.61-3.65 (m), 3.71-3.79 (m), 4.02-4.11 (m), 4.29-4.36 (m, 1H), 4.80-4.87 (m, 1H), 5.14-5.17 (m, 1H), 5.30-5.32 (m, 1H), 5.37-5.41 (m, 1H), 6.18 (t, 1H), 6.50 (t, 1H),
HRMS C70H127N3O27(M+Na)+の理論値=1464.8555、実測値=1464.8711
【0151】
化合物8 6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-トリテトラコンタニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、ステアリン酸の代わりにテトラコサン酸を使用して合成した。
収量 15.9mg(65%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.85-0.89 (m), 1.15-1.41 (m), 1.46-1.63 (m), 1.88-1.89 (m), 1.90-1.97 (m), 2.02 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.10-2.18 (m), 2.38-2.46 (m), 2.54-2.58 (m), 3.19-3.32 (m), 3.42-3.48 (m, 2H), 3.53-3.56 (m, 2H), 3.60-3.63 (m), 3.71-3.79 (m), 4.03-4.11 (m, 3H), 4.30-4.34 (m, 1H), 4.80-4.86 (m, 1H), 5.19-5.21 (m, 1H), 5.30-5.32 (m, 1H), 5.37-5.41 (m, 1H), 6.14 (t, 1H), 6.42 (t, 1H).
HRMS C58H103N3O18(M+Na)+の理論値=1152.7134、実測値=1152.7108
【0152】
化合物9 6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-ノナテトラコンタニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、2およびステアリン酸の代わりに3およびテトラコサン酸を使用して合成した。
収量 18.3mg(63%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H), 1.24-1.40 (m), 1.46-1.62 (m), 1.87 (s, 3H), 1.90-1.96 (m), 2.02 (s, 3H), 2.03 (s, 3H), 2.10-2.18 (m), 2.43-2.46 (t, 2H), 2.54-2.59 (m), 3.17-3.30 (m), 3.41-3.45 (m, 2H), 3.53-3.56 (m, 2H), 3.60-3.64 (m), 3.70-3.76 (m), 3.78 (s, 3H), 4.02-4.11 (m), 4.29-4.33 (m, 1H), 4.79-4.86 (m, 1H), 5.22-5.24 (m, 1H), 5.29-5.32 (m, 1H), 5.36-5.40 (m, 1H), 6.15 (t, 1H), 6.51 (t, 1H),
HRMS C62H111N3O20(M+H)+の理論値=1218.7839、実測値=1218.7875
【0153】
化合物10 6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-テトラヘキサコンタニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、2およびステアリン酸の代わりに4およびテトラコサン酸を使用して合成した。
収量 6.2mg(41%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.86-0.89 (m), 1.25-1.44 (m), 1.46-1.63 (m), 1.88 (s, 3H), 1.90-1.99 (m), 2.02 (s, 3H), 2.04 (s, 3H), 2.10-2.18 (m), 2.41-2.47 (m), 2.54-2.58 (m, 2H), 3.18-3.33 (m), 3.42-3.48 (m), 3.54-3.56 (m), 3.61-3.65 (m), 3.71-3.79 (m), 4.02-4.11 (m), 4.29-4.35 (m, 1H), 4.80-4.87 (m, 1H), 5.16-5.18 (m, 1H), 5.30-5.32 (m, 1H), 5.37-5.41 (m, 1H), 6.20 (t, 1H), 6.51 (t, 1H).
HRMS C76H139N3O27(M+Na)+の理論値=1548.9494、実測値=1548.9514
【0154】
化合物11 6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-29,31-テトラテトラコンタ-ジイニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、ステアリン酸の代わりに10,12-ペンタコサジイン酸を使用して合成した。
収量 36.3mg(73%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.86 (t, 3H), 1.23-1.41 (m), 1.42-1.61 (m), 1.86 (s, 3H), 1.89-1.97 (m), 2.01 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.08-2.18 (m), 2.20-2.23 (m), 2.43 (t, 2H), 2.53-2.59 (m, 1H), 3.18-3.31 (m), 3.4-3.44 (m, 2H), 3.52-3.55 (m, 2H), 3.59-3.62 (m), 3.69-3.75 (m), 3.77 (s, 3H), 4.01-4.10 (m), 4.28-4.32 (m, 1H), 4.78-4.85 (m, 1H), 5.28-5.39 (m, 3H), 6.11 (t, 1H), 6.43 (t, 1H).
HRMS C59H97N3O18(M+Na)+の理論値=1158.6665、実測値=1158.6655
【0155】
化合物12 6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-35,37-ペンタコンタジイニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、2およびステアリン酸の代わりに3および10,12-ペンタコサジイン酸を使用して合成した。
収量 21.9mg(62%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.86 (t, 3H), 1.24-1.39 (m), 1.45-1.62 (m), 1.86 (s, 3H), 1.92-1.95 (m), 2.01 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.10-2.17 (m), 2.20-2.24 (m), 2.45 (t, 2H), 2.53-2.59 (m), 3.17-3.31 (m), 3.41-3.45 (m, 2H), 3.53-3.55 (m, 2H), 3.61-3.64 (m), 3.70-3.76 (m), 3.78 (s, 3H), 4.01-4.10 (m), 4.28-4.35 (m, 1H), 4.78-4.85 (m, 1H), 5.26-5.31 (m, 2H), 5.35-5.40 (m, 1H), 6.19 (t, 1H), 6.52 (t, 1H).
HRMS C63H105N3O20(M+Na)+の理論値=1246.7189、実測値=1246.7118
【0156】
化合物13 6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-56,58-ヘンヘプタコンタ-ジイニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物5と同様に、2およびステアリン酸の代わりに4および10,12-ペンタコサジイン酸を使用して合成した。
収量 25.2mg(50%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H), 1.24-1.41 (m), 1.46-1.62 (m), 1.87 (s, 3H), 1.90-2.02 (m), 2.03 (s, 3H), 2.05 (s, 3H), 2.13-2.18 (m), 2.21-2.24 (m), 2.46 (t, 2H), 2.54-2.58 (m, 1H), 3.17-3.26 (m), 3.42-3.49 (m), 3.54-3.56 (m), 3.62-3.65 (m), 3.70-3.75 (m), 3.79 (s, 3H), 4.02-4.11 (m), 4.29-4.32 (m, 1H), 4.79-4.86 (m, 1H), 5.17-5.20 (m, 1H), 5.29-5.32 (m, 1H), 5.36-5.40 (m, 1H), 6.17 (s, 1H), 6.58 (s, 1H).
HRMS C77H133N3O27(M+Na)+の理論値=1554.9024、実測値=1554.9325
【0157】
化合物14 6-アザ-7-オキソ-16,18-ヘントリアコンタ-ジイニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
1(121.9 mg、0.153mmol)をDMF(5mL)に溶解した後、ピペリジンを添加した。反応混液を窒素雰囲気下で2時間撹拌した。溶媒をエバポレートし、粗中間体を得た。この粗中間体を2つの等量のバッチに分割した。1つのバッチの粗中間体をDCM(1mL)に溶解した後、10,12-ペンタコサジイン酸(37.1 mg、0.099mmol)を溶液に添加し、反応液を0℃に冷却した。EDC・HCl(14.6mg、0.076mmol)を溶液に添加した。反応混液を20時間撹拌した。反応混液をDCMで希釈し、水で洗浄し(3x5mL)、MgSO4で乾燥、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 25:1)に施与し、標記化合物(47.8mg、67%)を得た。NMRにより、10,12-ペンタコサジイン酸の混入が確認された。
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.86 (t), 1.23-1.35 (m), 1.45-1.58 (m), 1.86 (s, 3H), 1.90-1.93 (m), 2.01 (s, 3H), 2.02 (s, 3H), 2.11-2.15 (m), 2.22 (t), 2.30 (t, 1H), 2.52-2.58 (m, 1H), 3.18-3.28 (m), 3.70-3.73 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 4.00-4.08 (m), 4.31-4.34 (m, 1H), 4.78-4.85 (m, 1H), 5.28-5.30 (m, 1H), 5.33-5.38 (m, 2H), 5.85 (t, 1H).
HRMS C50H81N2O14(M+H)+の理論値=933.5688、実測値=933.5718
【0158】
化合物15 6-アザ-7-オキソ-ドコサニルメチル(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-O-アセチル-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシル)オネート
以下の化合物を化合物14と同様に、10,12-ペンタコサジイン酸の代わりに1およびヘキサデカン酸を使用して合成した。
収量 37mg(48%)
1H NMR (400 MHZ, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H), 1.20-1.30 (m), 1.32-1.65 (m), 1.86 (s, 3H), 1.94 (t, 1H), 2.00-2.05 (m), 2.10-2.16 (m), 2.55 (dd, 1H), 3.15-3.30 (m), 3.72 (dt, 1H), 3.79 (s, 3H), 4.00-4.10 (m), 4.33 (dd, 1H), 4.79-4.87 (m), 5.15-5.20 (m)5.30 (dd, 1H), 5.39 (ddd, 1H), 5.79 (bt, 1H).
【0159】
化合物A 6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-ヘプタトリコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
5(6.0mg、0.006mmol)をNaOMe(600(L、0.05M MeOH溶液)に溶解した。反応液を2時間撹拌した後、NaOH(30(L、1M水溶液)を反応混液に添加した。反応混液を24時間撹拌した後、Duolite C436を用いてpHを中性とした。反応混液をろ過し、MeOHで洗浄し、減圧下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/H2O 80:15:5)に施与し、定量的収率の標記化合物を得た。
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t, 3H), 1.29 (m), 1.36-1.42 (m), 1.48-1.60 (m), 1.89 (m) 2.01 (s, 3H), 2.20 (t, 2H), 2.43-2.46 (m, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.17 (t, 2H), 3.35-3.37 (m), 3.45-3.89 (m).
HRMS C43H81N3O14(M+Na)+の理論値=886.5616、実測値=886.5621
【0160】
化合物B 6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-トリテトラコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに6を使用して合成した。
収量 3.1mg(27%)
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t, 3H), 1.29-1.42 (m), 1.48-1.62 (m), 2.00 (s, 3H), 2.19 (t, 2H), 2.45 (t, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.18 (t, 2H), 3.35-3.38 (m), 3.45-3.89 (m).
HRMS C47H89N3O16(M+Na)+の理論値=951.6243、実測値
【0161】
化合物C 6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-ヘプタコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに7を使用して合成した。
収量 定量的
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t, 3H), 1.29-1.42 (m), 1.48-1.60 (m), 2.01 (s, 3H), 2.19 (t, 2H), 2.45 (t, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.18 (t, 2H), 3.33-3.37 (m), 3.45-3.89 (m).
HRMS C61H117N3O23(M+Na)+の理論値=1282.7976、実測値=1282.8201
【0162】
化合物D 6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-トリテトラコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに8を使用して合成した。
収量 定量的
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t), 1.29-1.42 (m), 1.48-1.60 (m), 2.01 (s, 3H), 2.19 (t, 2H), 2.45 (t, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.17 (t, 2H), 3.35-3.37 (m), 3.45-3.89 (m).
HRMS C49H93N3O14(M+Na)+の理論値=970.6555、実測値=970.6328
【0163】
化合物E 6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-ノナテトラコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに9を使用して合成した。
収量 14.8mg(95%)
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t), 1.29-1.60 (m), 2.01 (s, 3H), 2.19 (t, 2H), 2.45 (t, 2H), 2.81-2.84 (m, 1H), 3.12-3.19 (m), 3.35-3.37 (m), 3.47-3.87 (m).
HRMS C53H101N3O16(M+Na)+の理論値=1058.7080、実測値=1058.6575
【0164】
化合物F 6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-テトラヘキサコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに10を使用して合成した。
収量 定量的
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t), 1.29-1.40 (m), 1.49-1.59 (m), 2.00-2.01 (s, 3H), 2.13-2.21 (m), 2.45 (t, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.12-3.19 (m), 3.35-3.37 (m), 3.45-3.88 (m).
HRMS C67H129N3O23(M+Na)+の理論値=1366.8915、実測値=1388.9717
【0165】
化合物G 6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-29,31-テトラテトラコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに11を使用して合成した。
収量 22.4mg(73%)
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (m), 1.30-1.40 (m), 1.47-1.63 (m), 2.01 (s, 3H), 2.18-2.26 (m), 2.45 (t, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.17 (t, 2H), 3.36 (t, 2H), 4.45-3.88 (m).
HRMS C50H87N3O14(M+Na)+の理論値=976.6086、実測値=976.5989
【0166】
化合物H 6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-35,37-ペンタコンタジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに12を使用して合成した。
収量 16.6mg(84%)
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t, 3H), 1.27-1.40 (m), 1.47-1.63 (m), 2.01 (s, 3H), 2.12-2.26 (m), 2.45-2.48 (m, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.10-3.23 (m, 2H), 3.35-3.38 (m, 2H), 3.45-3.88 (m).
HRMS C54H95N3O16(M+Na)+の実測値=1064.6610、理論値=1064.6732
【0167】
化合物I 6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-56,58-ヘンヘプタコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに13を使用して合成した。
収量 17.2mg(98%)
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t, 3H), 1.30-1.40 (m), 1.49-1.63 (m), 2.01 (s, 3H), 2.18-2.26 (m), 2.46 (t, 2H), 2.81-2.85 (m, 1H), 3.18 (t, 2H), 3.35-3.38 (m, 2H), 3.45-3.88 (m)
HRMS C68H123N3O23(M+Na)+の理論値=1372.8445、実測値=1372.8213
【0168】
化合物J 6-アザ-7-オキソ-16,18-ヘントリアコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに14を使用して合成した。
収量 24.2mg(63%)
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t, 3H), 1.30-1.41 (m), 1.47-1.62 (m), 2.03 (s, 3H), 2.18 (t), 2.24(t), 2.80-2.84 (m, 1H), 3.14-3.18 (m, 2H), 3.45-3.90 (m).
HRMS C41H70N2O10(M+H)+の理論値=751.5103、実測値=751.4911
【0169】
化合物K 6-アザ-7-オキソ-16,18-ドコサニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸
以下の化合物を化合物Aと同様に、5の代わりに15を使用して合成した。
収量 29mg(定量的%)
1H NMR (400 MHZ, MeOD) δ 0.90 (t, 3H), 1.25-1.41 (m), 1.46-1.63 (m), 1.85-1.95 (m), 2.02 (s, 3H), 2.17 (t, 2H), 2.83 (dd, 1H), 3.15 (t, 2H), 3.45-3.90 (m).
【0170】
水溶液中での凝集体の形成およびその後の製剤
製剤はプローブ型ソニケーター(アウトプット50%、マイクロチップ)またはNorthern Lipids社(カナダ、バンクーバー)製の射出装置(ポリカーボネート・メンブラン・フィルター、孔径100nmまたは200nm)のいずれかを使用して行った;
DCM ジクロロメタン
DPPC ジパルミトイルホスファチジルコリン
MCT 中鎖脂肪酸トリグリセリド
s-PC 大豆ホスファチジルコリン
Tm 融解温度
【0171】
製剤13(シアル酸残基を含有しないコントロール)
10,12-ペンタコサジイン酸(3.7mg、10μmol)をDCMに混合し、ガラス容器に入れた。溶媒をエバポレートし、蒸留水(10mL)を添加した。混合液を、透明な溶液となるまで(約15分間)プローブ型ソニケーターで処理した。温かい溶液をナイロン・フィルター(0.8μm)でろ過し、分散していない脂質および痕跡量のプローブからのチタン粒子を除去した。
【0172】
製剤14H
製剤13と同様の方法で、化合物H(0.1mg、0.1μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸(3.7mg、9.9μmol)を用いて製剤を行った。
【0173】
製剤15H
製剤13と同様の方法で、化合物H(0.5mg、0.5μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸(3.6mg、9.5μmol)を用いて製剤を行った。
【0174】
製剤16H
製剤13と同様の方法で、化合物H(1.0mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸(3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。
【0175】
製剤20J
製剤13と同様の方法で、化合物J(0.75mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸(3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。
【0176】
製剤24H
製剤13と同様の方法で、化合物H(1.0mg、1.0μmol)、DPPC(3.3mg、4.5μmol)、およびコレステロール(1.7mg、4.5μmol)を用いて製剤を行った。
【0177】
製剤41H
化合物H(2.1mg、2.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸(3.0mg、8.0μmol)をCHCl3に混合し、ガラス容器に入れた。混合液をボルテックス処理し、溶媒を窒素下でエバポレートし、ガラス上に脂質の薄膜を得た。Milli-Q水(10mL)を添加し、混合液を65℃で撹拌しながら一晩、水和した。その後、リポソーム分散液を、射出装置により、Tm(65℃)より高い温度でポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径200nm)に連続的に(10サイクル)通過させた。
【0178】
製剤42D
製剤41Hと同様の方法で、化合物D(1.0mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸 (3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。射出はポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0179】
製剤44F
製剤41Hと同様の方法で、化合物F(1.3mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸 (3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。射出はポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0180】
製剤47E
製剤41Hと同様の方法で、化合物E(1.0mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸 (3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。射出はポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0181】
製剤48B
製剤41Hと同様の方法で、化合物B(1.0mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸 (3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。射出はポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0182】
製剤49G
製剤41Hと同様の方法で、化合物G(1.0mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸 (3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。射出はポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0183】
製剤50I
製剤41Hと同様の方法で、化合物I(1.4mg、1.0μmol)および10,12-ペンタコサジイン酸 (3.4mg、9.0μmol)を用いて製剤を行った。射出はポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0184】
製剤56H
製剤41Hと同様の方法で、化合物H(1.0mg、1.0μmol)、s-PC/MCT(1.0mg/3.4mg)を用いて製剤を行った。射出は、プローブ型ソニケーターで2分間処理した後、ポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0185】
製剤59H
製剤41Hと同様の方法で、化合物H(1.0mg、1.0μmol)、s-PC(7.2mg、約9μmol)を用いて製剤を行った。射出はポリカーボネート・メンブラン・フィルター(孔径100nm)を用いて行った。
【0186】
製剤例1
化合物HおよびPDAを、それぞれ10.1mg/mLおよび3.41mg/mLの濃度でクロロホルムに溶解した。得られた溶液を冷蔵庫に保存した。10mLの丸底フラスコに100μLの化合物Aおよび1mLのPDA溶液を添加した。混合液を、ロータリーエバポレーター(Heidolph Laborota 4001、ドイツ)によって35℃で蒸発乾固した。得られた乾燥フィルムに10mLの膜ろ過水(Milli-Q)を添加した。フラスコを超音波槽(Bandelin Sonora Digitech、ドイツ)に配し、50℃で10分間、そして約70℃で5分間、超音波処理を行った。薄桃色の不透明な均質分散液を得た。
【0187】
製剤例2
製剤例1で得た分散液を水浴中、約80℃に加熱し、孔径100nmのポリカーボネート・メンブラン(Avestin LiposoFast、カナダ)を通して11回射出した。得られた微細分散液を石英キュベットに移し、室温で5分間、UVを照射した(ICT Beam Boost Photoreactor、ドイツ)。濃青色の分散液を得た。
【0188】
製剤例3
乾燥脂質フィルムを製剤例1に記載したように調製した。2.6%(w/w)のグリセロールおよび0.50%(w/w)のHypromellose(Sigma-Aldrich社、H-3785)を含有する水溶液10mLをフィルムに添加した。超音波槽中、約45℃で15分間水和させた後、点眼に好適な、わずかに粘性のある製剤を得た。
【0189】
生物学的試験
種々のアッセイで評価した本明細書に開示する化合物、凝集体、および製剤の生体活性を以下に開示する。
【0190】
細胞
HCE(ヒト角膜上皮)細胞およびA549細胞を過去の文献に基づいて成長させた(Araki-Sasaki, K., Ohasi, K.Y., Sasabe, T., Hayashi, K., Watanabe, H., Tano, Y., Handa, H., 1995. “An SV-40-immortalized human corneal epithelial cell line and its characterization.” Invest. Ophtahlmol. 36, 614-621 and Arnberg, N., Edlund, K., Kidd, A.H., Wadell, G., 2000a. Adenovirus type 37 uses sialic acid as a cellular receptor. J. Virol. 74, 42-48.)。
【0191】
ウイルス
HAdV37(1477株)ビリオンを以下のように生成した:0.3mLのHAdV37接種物質(感染したA549細胞から調製)をA549細胞に添加し(175cm2フラスコ)、37℃で2時間インキュベートした。内部移行していないウイルスを洗浄除去し、1%ウシ胎仔血清(FCS;Sigma-Aldrich社)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Sigma-Aldrich社)中、37℃で細胞を更にインキュベートした。約72時間後、細胞ペレットを回収し、Tris-HCl(pH7.4)に再懸濁し、凍結-解凍を3回繰り返した。再度遠心分離した後、上清をCsClの不連続密度勾配に施与し(密度:1.27g/mL、1.32g/mL、および1.37g/mL(20mM Tris-HCl(pH8.0)中);Sigma-Aldrich社)、25,000rpm(SW41ローター、Beckman Optima L-80 XP超遠心;Beckman Coulter社)で、4℃、2.5時間遠心分離した。ビリオンのバンドを回収し、NAPカラム(Amersham Biosciences AB社、スウェーデン ウプサラ)により、滅菌したPBSバッファー(10%グリセロール含有)(Sigma-Aldrich社)を用いて脱塩した。その後、分画したビリオンを更に使用するまで-80℃で保存した。35S-標識したAd37ビリオンを上記のように生成した。ただし以下の変更を加えた:感染の20時間後、メチオニン-システイン未含有DMEM(Sigma-Aldrich社)中で2時間、細胞を飢餓状態とした。その後、アイソトープ(1.4 mCi/フラスコ;NEG-772 Easytag express protein labeling mix;Perkin-Elmer社)を添加した。L-システイン(最終濃度2mM;Sigma-Aldrich)を感染23時間後および48時間後に添加し、l-メチオニン(最終濃度1mM;Sigma-Aldrich)を感染37.5時間後および48時間後に添加した。特異的放射能標識をしたビリオンは、4x10-6cpm/ビリオンであった。HAdV-37の同定を行うために、ウイルスDNAを制限酵素で消化し、確立されているHadV-37原型株のパターンと比較した(Wadell, G., Sundell, G., de Jong, J.C., 1981. Characterization of candidate adenovirus 37 by SDS-polyacrylamide gel electrophoresis of virion polypeptides and DNA restriction site mapping. J. Med. Virol. 7, 119-125.)。
【0192】
抗体
ウサギポリクローナル抗HAdV-37血清を、過去の文献に基づいて調製した(Wadell, G., Allard, A., Hierholzer, J.C., 1999. Adenoviruses. In: Murray, P.R., Baron, E.J., Pfaller, M.A., Tenover, F.C., Yolken, R.H. (Eds.), Manual of Clinical Microbiology, 7th ed. ASM Press, Washington, pp. 970-982.)。
【0193】
結合アッセイ
接着性HCE細胞を0.05% EDTA含有PBS(PBS-EDTA;Merck、ドイツ ダルムシュタット)を用いて剥離し、増殖培養液中、37℃で1時間、回復させた。洗浄後、V底96ウェル・マイクロプレートで2x105 HCE細胞のペレットを回収し、再懸濁し、種々の濃度の試験化合物を添加した104 35S-標識HAdV-37ビリオン/細胞と共に、50μLの結合バッファー(BB;DMEMに1%ウシ血清アルブミン(Roche AB社、スウェーデン ストックホルム)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco社、米国カリフォルニア州カールスバッド)、およびHEPES(EuroClone社、イタリア ミラノ)含有)中(pH7.4)、4℃で、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。
【0194】
細胞への添加に先立ち、HAdV-37ビリオンを種々の濃度の被験凝集体と共に、96ウェルプレート中、4℃で1時間、穏やかに撹拌しながら前処理した。
【0195】
更に1時間後、未結合のビリオンを洗浄除去し、細胞に結合した放射能をWallac 1409シンチレーションカウンター(Perkin-Elmer社)で測定した。
【0196】
種々の濃度の被験凝集体で処理した細胞での細胞結合放射能を比較することにより、IC50を測定した。以下の表1に、本明細書に開示するいくつかの製剤の試験結果を示す。
【0197】
【表1】

【0198】
表1で明らかなように、本明細書に開示する種々の化合物および凝集体は、HAdV-37ビリオンのHCE細胞への結合を阻害する能力を有する。これに関連して、シアル酸のIC50は約2-5mMであることに留意すべきである。更に、製剤に関しては、IC50は製剤中のシアル酸残基の濃度を示すことに留意すべきである。
【0199】
凝集アッセイ
35S-標識したHAdV-37ビリオン(5×108/ウェル)を製剤16H(0.05mMのシアル酸残基を含有)と共に、または製剤16H未含有で、BB中、+4℃でインキュベートした。1時間後、Beckman Coulter Microfuge 22R遠心分離器(Beckman Coulter社、米国カリフォルニア州フラートン)を用いて、サンプルを種々のスピード(1000rpm、4000rpm、7000rpm、10,000rpm、13,000rpm)で遠心分離した。上清(上部90μL)およびペレット(下部10μL)中の放射能を、液体シンチレーションカウンターを用いて上記のように測定した。
【0200】
図1から明らかなように、製剤16HはHAdV-37の凝集を起こす。Sは上清、Pはペレットを示す。このように、化合物Hはそのシアル酸残基に関して、多価である。
【0201】
感染性アッセイ
未標識のHAdV-37ビリオン(300μLのBB中、4×108/ウェル)を24ウェルプレート中、種々の濃度の製剤16Hと共に4℃でインキュベートした。1時間後、24ウェルプレート中のガラススライド上に単層で増殖させたHCE細胞(2×105細胞/ウェル)に混合液を添加し、氷上でインキュベートした。1時間後、ウェルを4℃の1% SHEM(supplemented hormone epithelial medium(Araki-Sasaki, K., Ohasi, K.Y., Sasabe, T., Hayashi, K., Watanabe, H., Tano, Y., Handa, H., “An SV-40-immortalized human corneal epithelial cell line and its characterization” Invest. Ophtahlmol. 1995, 36, 614-621))で3回洗浄して未結合のビリオンを除去し、37℃で44時間インキュベートして感染を起こさせた。ガラススライドをリン酸バッファー(PBS、pH7.4)で洗浄し、メタノール(99%)で固定して、ウサギ・ポリクローナル抗HAdV37血清(PBSで1:200に希釈)と共に室温でインキュベートした。1時間後、スライドをPBSで3回洗浄し、ブタ抗ウサギFITC標識抗体(DakoCytomation社、デンマーク グロストルプ)(PBSで1:200に希釈)と共に室温でインキュベートした。蛍光マウンティング・メディウム(DakoCytomation)を用いてスライドをマウントし、免疫蛍光顕微鏡(Axioskop2、Carl Zeiss社、ドイツ;倍率 10×)で検査した。
【0202】
図2および3から明らかなように、製剤16HはHAdV-37によるHCE細胞の感染を著しく阻害する(IC50は、凝集体中の存在するシアル酸残基に関して約0.7μMである)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R1はメチルまたはエチル基であり;
R2はR3、R4、またはR8であり;
「X」はO、S、またはNHであり;そして
「A」は、R2がR3である場合はC3-7のアルカンジイルであり、R2がR4またはR8である場合はC2-7のアルカンジイルであり、ここで、「X」およびR2は該アルカンジイル中の異なる炭素原子に結合しており、該異なる炭素原子は該アルカンジイル中の最も離れて位置する炭素原子であり;
R3は、N(C0-3アルキル)C(O)R5、OC(O)R5、C(O)N(C0-3アルキル)R5、およびC(O)OR5から成る群から選択され、ここで、R5は14から30個の炭素原子を含有する炭素直鎖であり;該炭素鎖は飽和型であるか、または1つもしくはそれ以上の2重結合および/もしくは3重結合を含有し;更に、該炭素鎖は未置換であるか、または1つもしくはそれ以上のC1-C5アルキル基で置換されており;
R4は式(II):
【化2】

[式中、
「D」は「A」に結合しており;
「D」はN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル)、およびC(O)Oから成る群から選択され;
整数「m」は0から3であり;
整数「n」は1から15であり;
整数「p」は0から3であり;
「E」はN(C0-3アルキル)C(O)、OC(O)、C(O)N(C0-3アルキル)、およびC(O)Oから成る群から選択され;
R7は上記R5およびR6から成る群から選択され、R6は式(III):
【化3】

式中、R5はそれぞれ独立して上記の定義の通りであり、C2-5アルカンジイルは「E」に結合している
の置換基である]
の置換基であり;そして
R8はN(C0-3アルキル)C(O)R9、OC(O)R9、C(O)N(C0-3アルキル)R9、およびC(O)OR9から成る群から選択され、ここで、R9は式(IV):
【化4】

式中、R5はそれぞれ独立して上記の定義の通りである、
の置換基である]
の化合物であって、その非帯電性プロトン化型の酸、医薬的に許容される付加塩、溶媒和物、またはその塩の溶媒和物としての上記化合物。
【請求項2】
「A」が分枝鎖ではない直鎖のC2-5アルカンジイルであり;R1がメチルであり;XがOであり;R2がR4またはR8であり;そしてR5が未置換の炭素直鎖である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2がR4であり;そしてR7がR5である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R5が20から30個の炭素原子を含有する未置換の炭素直鎖である、請求項1から3のいずれかに記載される化合物。
【請求項5】
R5が少なくとも1つの2重結合または3重結合を含有する、請求項1から4のいずれかに記載される化合物。
【請求項6】
R5が2つの共役3重結合を含有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R2がR4であり;R7がR5であり;そして整数「n」が4から15である、請求項1から6のいずれかに記載される化合物。
【請求項8】
R2がR4であり;DがNHC(O)またはOC(O)であり;整数「m」が2であり;整数「p」が0であり;そしてEがNHC(O)またはOC(O)である、請求項1から7のいずれかに記載される化合物。
【請求項9】
R2がR4であり;DがC(O)NHまたはC(O)Oであり;整数「m」が2であり;整数「p」が0であり;そしてEがNHC(O)またはOC(O)である、請求項1から7のいずれかに記載される化合物。
【請求項10】
R2がR3であり;そしてR3がNHC(O)R5である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
R2がR8であるか、またはR2がR4であってR7がR6である、請求項1、2、4から6、8、または9のいずれかに記載される化合物。
【請求項12】
該化合物が、6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-トリテトラコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-ノナテトラコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-テトラヘキサコンタニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-29,31-テトラテトラコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-35,37-ペンタコンタジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、および6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-56,58-ヘンヘプタコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,19-ジアザ-10,13,16-トリオキサ-7,20-ジオキソ-29,31-テトラテトラコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、6,25-ジアザ-10,13,16,19,22-ペンタオキサ-7,26-ジオキソ-35,37-ペンタコンタジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸、および6,46-ジアザ-10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40,43,46-ドデカオキサ-7,47-ジオキソ-56,58-ヘンヘプタコンタ-ジイニル5-アセトアミド-3,5-ジデオキシ-D-グリセロ-α-D-ガラクト-2-ノニロピラノシロン酸からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
該化合物が純粋な立体異性体であるか、または該化合物を含有するアノメリック混合物であり、アノメリック混合物がα-アノマー優占的である、請求項1から12のいずれかに記載される化合物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載される複数の化合物および該化合物とは別の水中で2重層を形成できる複数の両親媒性分子を含有する凝集体。
【請求項15】
該凝集体が該分子によって形成される2重層を含有し、該2重層が該化合物を含有する、請求項14記載の凝集体。
【請求項16】
凝集体が0.1から25mol%、例えば5から15mol%の該化合物を含有する、請求項14または15記載の凝集体。
【請求項17】
凝集体が少なくとも40mol%の該両親媒性分子を含有する、請求項14から16のいずれかに記載される凝集体。
【請求項18】
該両親媒性分子が少なくとも12、例えば少なくとも16または20個の炭素原子を含有する炭素直鎖を含有する、請求項14から17のいずれかに記載される凝集体。
【請求項19】
該両親媒性分子が請求項1から6のいずれかに定義されるR5の残基を含有する、請求項14から18のいずれかに記載される凝集体。
【請求項20】
該両親媒性分子が少なくとも1つの3重結合を含有する、請求項14から19のいずれかに記載される凝集体。
【請求項21】
該両親媒性分子がカルボキシ基を含有する、請求項14から20のいずれかに記載される凝集体。
【請求項22】
該両親媒性分子が10,12-ペンタコサジイン酸である、請求項14から21のいずれかに記載される凝集体。
【請求項23】
該凝集体がシートである、請求項14から22のいずれかに記載される凝集体。
【請求項24】
請求項14から23のいずれかに記載される凝集体および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項25】
該組成物が水性組成物である、請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
該組成物が請求項1から13のいずれかに記載される物質を0.001から10mM、例えば0.01から1mM含有する、請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
該組成物が少なくとも90重量%の水分を含有する、請求項25または26記載の医薬組成物。
【請求項28】
該組成物が等張液を与えるための物質を含有する、請求項25から27のいずれかに記載される医薬組成物。
【請求項29】
該物質がグリセロールである、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
組成物が2から3重量%のグリセロールを含有する、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
増粘剤を含有する、請求項24から30のいずれかに記載される医薬組成物。
【請求項32】
該組成物が眼に投与するためのものである、請求項24から31のいずれかに記載される医薬組成物。
【請求項33】
該組成物が更に別の抗ウイルス化合物を含有する、請求項24から32のいずれかに記載される組成物。
【請求項34】
該組成物が局所麻酔剤を含有する、請求項24から33のいずれかに記載される組成物。
【請求項35】
治療に使用するための、請求項1から13のいずれかに記載される化合物、請求項14から23のいずれかに記載される凝集体、または請求項24から34のいずれかに記載される医薬組成物。
【請求項36】
ウイルスに起因する眼部感染の治療および/または予防に使用するための請求項1から13のいずれかに記載される化合物、請求項14から23のいずれかに記載される凝集体、または請求項24から34のいずれかに記載される医薬組成物であり、該ウイルスが該ウイルスに感染した細胞の細胞表面上に存在する末端シアル酸残基に結合するものである、上記化合物、凝集体、または医薬組成物。
【請求項37】
該感染がHAdV-8、HAdV-19、HAdV-37、HAdV-53、HAdV-54、およびHAdV-22,37/H8から成る群から選択される、請求項36記載の化合物、凝集体、または医薬組成物。
【請求項38】
該感染が流行性角結膜炎である、請求項36または37に記載される化合物、凝集体、または医薬組成物。
【請求項39】
ウイルスに起因する眼部感染の予防および/または治療のための方法であって、該ウイルスが該ウイルスに感染した細胞の細胞表面上に存在する末端シアル酸残基に結合するものであり、該感染が例えば流行性角結膜炎であり、該方法がそれらの予防および/または治療を必要とする哺乳動物(例えばヒト)に治療的有効量の請求項1から13のいずれかに記載される化合物、治療的有効量の請求項1から13のいずれかに記載される化合物を含有する請求項14から23のいずれかに記載される凝集体、または治療的有効量の請求項1から13のいずれかに記載される化合物を含有する請求項24から34のいずれかに記載される医薬組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項40】
該化合物、凝集体、または医薬組成物を眼に投与する、請求項39記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−532842(P2012−532842A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518951(P2012−518951)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059579
【国際公開番号】WO2011/003876
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508196542)アデノヴィル ファーマ アクティエボラーク (1)
【Fターム(参考)】