説明

抗ウイルス性を有する活性炭

【課題】特に対動物性のウイルスに対して、粒径を制御することにより、最大限の効果を発揮する活性炭を提供する。
【解決手段】本発明に係る抗ウイルス性を有する活性炭は、天然素材が炭化され、かつ粒状に形成されて抗ウイルス性を有することを特徴とする。本発明によれば、抗ウイルス性を有するので、特に家畜飼料添加物として用いて好適な活性炭を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗ウイルス性を必要とする分野、特に家畜飼料添加物として用いて好適な抗ウイルス性を有する活性炭に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002−20297では、活性炭とキトサンの混合物が、インフルエンザ等のウイルスに有効であるとしている。しかしその作用機序は明らかにされていない。
特開2004−43414では、松の実の搾油残滓を用いたものを炭化し粉末化した炭化物がヒアシンスのような植物に対する抗ウィルス性を有することを報告している。
また、特開2006−70047では、フェノール樹脂を炭素源とする球状活性炭がウイルス性肝炎等に有効であるとしている。
【特許文献1】特開2002−20297
【特許文献2】特開2004−43414
【特許文献3】特開2006−70047
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
炭化物が抗ウイルス性を有するかどうかはあまり知られておらず、上記特許文献等に散見される程度である。
本発明は、天然素材を炭化した抗ウイルス性を有する活性炭を提供する。特に対動物性のウイルスに対して、粒径を制御することにより、最大限の効果を発揮する活性炭を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る抗ウイルス性を有する活性炭は、天然素材が炭化され、かつ粒状に形成されて抗ウイルス性を有することを特徴とする。
また、平均粒径が40μm以下であることを特徴とする。
また、天然素材がヤシガラであることを特徴とする。
また、天然素材が絹素材であることを特徴とし、この場合、活性炭の平均粒径が24μm以下であると好適である。
また、天然素材が綿であることを特徴とし、この場合活性炭の平均粒径が6μm以下であると好適である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、抗ウイルス性を有するので、特に家畜飼料添加物として用いて好適な活性炭を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
本発明に係る抗ウイルス性を有する活性炭は、天然素材が炭化され、かつ粒状に形成されて抗ウイルス性を有することを特徴とする。
平均粒径が40μm以下の場合に特に抗ウイルス性を発揮する。
天然素材としては、ヤシガラ、絹素材、綿等を用いることができる。
絹素材を炭化したものにあっては、粒径が24μm以下のものが抗ウイルス性の点で好適であった。
また綿を炭化したものにあっては、粒径が6μm以下のものが抗ウイルス性の点で好適であった。
【実施例】
【0007】
1)実施例1:ヤシガラ活性炭の製造方法
株式会社ツルミコール社製のヤシガラ活性炭をボールミル粉砕した。ボールミル粉砕の条件は以下の通りである。
ボールミル粉砕機 : 磁性ボールミル φ180mmの容器
メディア(ボール) : 磁気メディア 28mmを21〜23個、33mmを15〜16個
粉砕時間 : 表1を参照
なお、表1でのmmレベルの粒径は、すべての粒径(長径)を合計し、その粒子個数で割り算することで算出した。また表1でのμmレベルの粒径はD50(粒子径分布における体積基準の累積分布において作られる粒径−体積%累積曲線で50体積%として算出される粒子径。メディアン径)にあたる平均粒径であり、その他の実施例の場合も同様である。
【0008】
ちなみに測定装置は以下のものを使用した。
測定装置 : μmレベルはSysmex社製FPIA-3000
mmレベルはシンワ社製DIGITAL CALIPER
測定方法 : μmレベルはフロー方式の粒子分析にて測定
mmレベルはノギス測定
【0009】
2)実施例2:絹素材を炭化させたカーボンシルク(登録商標)の製造方法
ペニー状態の絹素材を炭化させた。窒素雰囲気下で700℃になるまで昇温し、その温度を6時間キープした。その後室温になるまで降温させた。
その後チョッパーミルで粉砕した。チョッパーミルの粉砕の条件は以下の通りである。
チョッパーミル粉砕機 : 槙野産業社製マキノ式粉砕機
回転数 : 5600rpm
スクリーン(メッシュ) : 300μm
その後賦活工程を行った。水蒸気雰囲気下で850℃になるまで昇温し、その温度を7時30分間キープした。その後室温になるまで降温させた。
その後ボールミル粉砕を行った。ボールミル粉砕の条件は1)と同様である。
【0010】
3)実施例3:綿活性炭の製造方法
綿素材を炭化させた。窒素雰囲気下で700℃になるまで昇温し、その温度を6時間キープした。その後室温になるまで降温させた。
その後賦活工程をおこなった。水蒸気雰囲気下で850℃になるまで昇温し、その温度を7時30分間キープした。その後室温になるまで降温させた
その後ボールミル粉砕を行った。ボールミル粉砕の条件は1)と同様である。
【0011】
表1 各活性炭と粒径と粉砕時間

【0012】
4)抗ウイルス性の評価
抗ウイルス性の評価を行った。方法としては、各粒径の試料を所定量添加し、豚水胞病ウイルス液(1.0 ml)と混合撹拌後、20℃15分間静置、その後撹拌して、再度20℃15分間静置した後、遠心して上清中の残存ウイルス力価を測定した。結果を表2に示す。なお、各活性炭の添加量は、添加量を変えて同様の試験を事前に試験をした結果、抗ウイルス性が発揮されると思われる最小量の値としている。すなわち、この添加量未満では、多くの場合どんなに粒径を制御しても十分な抗ウイルス性能を発揮しない。また、添加量を多くすれば抗ウイルス性が高くなることは当然である。したがって、本試験は最も抗ウイルス性を発揮する粒径を試験したことになる。
【0013】
表2.各活性炭と粒径と抗ウイルス性能

表2において、無処理とは、粒径制御なしのものである。
また、各試料において最下欄(粒径の下の欄)は残存ウイルス力価である。
【0014】
表2のとおり、残存ウイルス力価は粒径に依存しており、本試験の状態においてヤシガラ活性炭では0.025gの添加量で粒径40μm以下で効果が発揮され、特に12μm以下が良い。カーボンシルクでは0.2gの添加量で24μm以下で効果が発揮された。綿活性炭は0.1gの添加量で粒径6μm以下で効果が発揮されることがわかった。
【0015】
本実施例で得られた各種活性炭が抗ウイルス性を有する理由は次のように推測される。
すなわち、活性炭は炭素二次元格子が不規則に積層した乱層構造をなし、結晶子を形成している。この積層した結晶子が不規則につながったものが活性炭であり、結晶子の空隙が細孔である。炭素二次元格子において、平面の部分は炭素―炭素間結合で比較的安定であるが、格子のエッジ部分の炭素は活性であり、種々の官能基と結合している。この官能基がウイルスに作用し、抗ウイルス性を発揮するものと推測される。
そして、上記のように、活性炭が40μm以下の細かい粒子に粉砕されることによって、表面積が増大するとともに活性なエッジ部分が広い面積で露出し、これにより高い抗ウイルス性を発揮するものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材が炭化され、かつ粒状に形成されて抗ウイルス性を有することを特徴とする抗ウイルス性を有する活性炭。
【請求項2】
平均粒径が40μm以下であることを特徴とする請求項1記載の抗ウイルス性を有する活性炭。
【請求項3】
天然素材がヤシガラであることを特徴とする請求項1または2記載の抗ウイルス性を有する活性炭。
【請求項4】
天然素材が絹素材であることを特徴とする請求項1記載の抗ウイルス性を有する活性炭。
【請求項5】
平均粒径が24μm以下であることを特徴とする請求項4記載の抗ウイルス性を有する活性炭。
【請求項6】
天然素材が綿であることを特徴とする請求項1記載の抗ウイルス性を有する活性炭。
【請求項7】
平均粒径が6μm以下であることを特徴とする請求項6記載の抗ウイルス性を有する活性炭。

【公開番号】特開2008−273914(P2008−273914A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122663(P2007−122663)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】