説明

抗レトロウイルス性の剤、組成物、方法および用途

HIV gp41ミメティボディポリペプチドおよびコードするポリヌクレオチドを開示する。細胞膜とのHIVの融合および標的細胞中への進入を低減若しくは阻害するための該ポリペプチドの利用方法もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗レトロウイルス剤、とりわけヒト免疫不全ウイルスgp41ミメティボディ(mimetibody)および治療薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
後天的免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすレンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)への感染は世界の第一位の死亡原因の1つである。最近利用可能な抗レトロウイルス剤は、不可欠のHIV−1の酵素、逆転写酵素若しくはプロテアーゼのいずれかを阻害する。最近の進歩は、これらの分類の抗レトロウイルス薬物を受領する多くの患者の転帰を顕著に改善した。しかしながら、現在の治療の成功は、薬物耐性ウイルスの出現、複雑なレジメンの持続的順守の必要性、および毒性の副作用の可能性により制限される。他の抗レトロウイルス薬物との交差反応性の低い危険を伴う新規分類の安全かつ有効な剤が必要とされ続ける。
【0003】
ウイルスの進入のターゲッティングが、細胞が感染した後のウイルスの生活環の段階の阻害を上回る利点を有するかもしれないと考えられている(非特許文献1において総説されている)。HIV−1のエンベロープ糖タンパク質は、ウイルスの進入に関与しており、そして2種の非共有的に会合したサブユニット、表面糖タンパク質(gp120)および膜貫通糖タンパク質(gp41)よりなる。gp120の部分は標的細胞上のCD4受容体およびケモカイン補助受容体(CXCR4およびCCR5)に結合する(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。gp120−CD4−補助受容体の結合後に、gp41サブユニットは、ウイルスおよび細胞膜の融合を促進するコンホメーション変化を受けて、細胞中へのウイルス核の進入、核への輸送、ならびに最終的にプロウイルスの組込みおよび発現をもたらす(非特許文献5)。
【0004】
gp41の一次アミノ酸配列は、α−らせんの「コイルドコイル」二次構造中で見出される周期的な疎水性領域の存在を反映する「7アミノ酸繰り返し」領域(HR1およびHR2)を包含する(非特許文献6:非特許文献7)。HR1およびHR2は、各ドメインの3メンバー(三量体)を含有するらせん束を形成する(非特許文献5;非特許文献8;非特許文献9)。これらの7アミノ酸繰り返しは、宿主細胞とのHIV−1の膜融合に不可欠なコンホメーション変化においてある役割を有する(非特許文献10;非特許文献11)。
【0005】
gp41のHR2セグメントを模倣する合成ペプチドは融合を阻害しかつ有意の抗レトロウイルス効果を有する(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献10)。2種のペプチド、T−20およびT−1249が臨床試験で検討された(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献1に総説される;非特許文献14にもまた総説される)。
【0006】
HR2配列由来の36アミノ酸のペプチド、T−20(エンフュービルタイド(enfuvirtide)のFUZEON(R)銘柄)が、感染した患者のウイルスレベルを1〜2対数低下させることが臨床試験で示された(非特許文献15)。この化合物は、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)のような複数の抗HIV薬物を使用する既存の治療とともに使用され、そして、患者が彼らの処置レジメンにもはや応答しないサルベージ療法の症例を処置するのにもまた使用される。しかしながら、このペプチドHIV融合阻害剤はタンパク質分解性の消化に感受性であり、そして従って約1.8時間という短い血漿半減期を有する。結果、完全な有効性のために大用量(90mg/注入)を1日2回投与する必要がある(非特許文献14に総説される)。
【0007】
相対的に、HIV−1、HIV−2およびサル免疫不全ウイルス(SIV)のgp−41由来の39アミノ酸のコンセンサスペプチド、T−1249は、9ないし14時間という増大されたしかしなお相対的に短い血漿半減期を有し、そしてまた、有効血中濃度を持続するために1日2回投与することが必要でもある(非特許文献16)。従って、より長い半減期をもつ改良されたHIV融合阻害剤に対する必要性が存在する。
【非特許文献1】KilbyとEron、N.Engk.J.Med.348:2228−2238(2003)
【非特許文献2】Fengら、Science 272:872−877(1996)
【非特許文献3】Dragicら、Nature 381:667−673(1996)
【非特許文献4】Dengら、Nature 381:661−666(1996)
【非特許文献5】Chanら、Cell 89:263−273(1997)
【非特許文献6】Gallaherら、AIDS Res.Hum.Retroviruses 5:431−440(1989)
【非特許文献7】Delwartら、AIDS Res.Hum.Retroviruses 6:703−706(1990)
【非特許文献8】Tanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)94:12303−12308(1997)
【非特許文献9】Weissenhornら、Nature 387:426−430(1997)
【非特許文献10】Dubayら、J.Virol.66:4748−4756(1992)
【非特許文献11】Wildら、Proc.Natl.Acad.Sci(USA)91:12676−12680(1994)
【非特許文献12】Wildら、AIDS Res.Hum.Retroviruses 9:1051−1053(1993)
【非特許文献13】Eronら、J.Infect.Dis.189:1075−1083(2004)
【非特許文献14】Jiangら、Curr.Pharm.Des.8:563−580(2002)
【非特許文献15】Kilbyら、Nat.Med.4:1302−1307(1998)
【非特許文献16】EronとHogan、PRN Notebook 7:16−22(2002)
【発明の開示】
【0008】
[発明の要約]
本発明の一局面は、一般式(II):
(V1−gp−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(II)
[式中、V1は免疫グロブリン可変領域のN末端の一部分であり、gpはHIV gp41由来ペプチド配列であり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリン可変ヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1から10までの整数である]
を有するポリペプチドである。
【0009】
本発明の別の局面は、式(III):
(gp−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(III)
[式中、gpはヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp41由来ペプチド配列であり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリン可変ヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1から10までの整数である]
で表されるポリペプチドである。
【0010】
本発明の別の局面は、式(IV):
(Hg−C2−C3−Lk−gp)(t)
(IV)
[式中、gpはヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp41由来ペプチド配列であり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリン可変ヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1から10までの整数である]
で表されるポリペプチドである。
【0011】
本発明の別の局面は、配列番号1に示される配列を含んでなるポリペプチドである。
【0012】
本発明の別の局面は、配列番号2に示される配列若しくは相補配列を含んでなるポリヌクレオチドである。
【0013】
本発明の別の局面は、配列番号1、5、6、7、8、9、10、11、12若しくは13に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
【0014】
本発明の別の局面は、配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドである。
【0015】
本発明の別の局面は、HIV gp41ミメティボディの製薬学的組成物と標的細胞を接触させることを含んでなる、標的細胞のHIV感染の阻害方法である。
【0016】
本発明の別の局面は、HIV gp41ミメティボディの製薬学的組成物をそれの必要な患者に投与することを含んでなる、最低1種のHIV感染に関係した状態若しくは障害の症状の低減方法若しくはそれらの処置方法である。
[発明の詳細な記述]
本明細で引用される、限定されるものでないが特許および特許出願を挙げることができる全部の刊行物は、完全に示されるかのように引用することにより本明細書に組み込まれる。1文字アミノ酸記号を本明細書で当業者により理解されるとおり使用する。免疫グロブリン定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、野性型IgG1若しくはIgG4のFcドメイン中のN末端アミノ酸である残基1に基づく。
【0017】
本発明は、HIV gp41由来ペプチドの特性および活性を有するポリペプチドを提供し、該ポリペプチドはまた、多様な型のIgA、IgD、IgE、IgG若しくはIgMのような免疫グロブリン分子、およびIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4のようなそれらのいずれかのサブクラス、またはそれらの組合せも模倣し、下で「HIV gp41ミメティボディ」と称される。本発明はまた、HIV gp41ミメティボディをコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター、宿主細胞、組成物、ならびにHIV gp41ミメティボディの作成および使用方法も提供する。
ミメティボディポリペプチドおよび組成物
本発明は、全般として、一般式(I):
(V1−Pep−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(I)
[式中、V1は免疫グロブリン可変領域のN末端の一部分であり、Pepは所望の生物学的特性を有するポリペプチドであり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1ないし10の整数である]
を有するミメティボディポリペプチドに関する。例えば、Pepは、宿主細胞膜とのウイルスの融合を阻害することが可能である、宿主細胞膜の融合およびウイルスの進入に関与するいかなるウイルスタンパク質由来のポリペプチドでもあり得る。
【0018】
より具体的には、本発明は、宿主細胞膜とのウイルスの融合を阻害することが可能であるHIV gp41ミメティボディポリペプチドに関する。該ポリペプチドは、一般式(II):
(V1−gp−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(II)
[式中、V1は免疫グロブリン可変領域のN末端の一部分であり、gpはgp41由来ペプチド配列であり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1ないし10の整数である]
を有する。
【0019】
本明細書で使用されるところの「gp41由来ペプチド」は、いずれかのHIV若しくはSIV単離物からのgp41のHR2ドメイン由来であるコンセンサスペプチドを包含するペプチドを包含する。一例示的gp41由来ペプチドは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有するT−20である。別の例示的gp41由来ペプチドは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するペプチドT−1249である。他のgp41由来ペプチドは、T−20若しくはT−1249の活性を模倣してgp41のHR1およびHR2ドメインを結合するための競合的囮としてはたらき得るペプチドを包含する。これらのペプチドは最低1アミノ酸の置換、欠失若しくは挿入を有するT−20若しくはT−1249ホモログを包含し得る。他の例示的gp41由来ペプチドは、PCT国際公開第WO94/02505号、同第WO94/28920号、同第WO96/19495号、同第WO99/59615号、同第WO01/03723号、同第WO01/51763号および同第WO04/029074号明細書に示され、そして、式(V):
YTXIYXLLEXSQXQQEKNEQELLELDKWASLWXWF
(V)
[式中、XはS、G若しくはNであり;XはL、I若しくはTであり;XはS、N若しくはTであり;XはK、E若しくはDであり;XはT若しくはNであり、そしてXはN、E若しくはDである]
で表されるペプチドもまた包含する。
【0020】
本発明のポリペプチド中で、V1は免疫グロブリン可変領域のN末端の一部分である。例示的なV1のアミノ酸配列はQIQ若しくはQVQを包含する。
【0021】
本発明のポリペプチド中で、リンカー部分(Lk)は、ミメティボディに代替の向きおよび結合特性を有させることにより構造の柔軟性を提供する。例示的リンカーはペプチド結合により連結された非ペプチド化学結合若しくはアミノ酸を包含し、該アミノ酸は20種の天然に存在するアミノ酸から選択される。リンカー部分は、グリシン、アラニンおよびセリンのような立体的に障害されないアミノ酸の大多数を包含し得、そして、GS、GGGS(配列番号14)およびGSGGGS(配列番号15)、GS、GGGSおよびGSGGGSの多量体、若しくはそれらのいかなる組合せも包含し得る。本発明の範囲内の他の例示的リンカーは20残基より長いことができ、そしてグリシン、アラニンおよびセリン以外の残基を包含しうる。
【0022】
本発明のポリペプチド中で、V2はH鎖可変領域のような免疫グロブリン可変領域のC末端ドメインの一部分である。一例示的V2アミノ酸配列はGTLVTVSS(配列番号16)である。
【0023】
本発明のポリペプチド中で、HgはH鎖可変領域のような免疫グロブリン可変領域のヒンジドメインの少なくとも一部分である。例示的Hgアミノ酸配列は、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号17)、EPKSADKTHTCPPCP(配列番号18)、ESKYGPPCPSCP(配列番号19)、ESKYGPPCPPCP(配列番号20)およびCPPCP(配列番号21)を包含する。
【0024】
本発明のポリペプチド中で、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域である。例示的C2アミノ酸配列は:
【0025】
【表1】

【0026】
を包含する。
【0027】
本発明のポリペプチド中で、C3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域である。例示的C3アミノ酸配列は:
【0028】
【表2】

【0029】
を包含する。本発明のポリペプチドのC3領域は、ある種の組換え系中で発現される場合にそのC末端アミノ酸を切断分離させうることが当業者により認識されるであろう。
【0030】
本発明のポリペプチド中で、免疫グロブリン分子のFcRnスカベンジャー受容体結合部位が、C2およびC3領域の接合部で保存されている。FcRn結合は飲作用された(pinocytosed)免疫グロブリンの細胞外空隙への戻りを可能にするため、HIV gp41ミメティボディの半減期は、T−20、T−1249若しくは他のgp41由来ペプチドに関して有意に延長されるであろうことが期待される。
【0031】
一態様において、本発明のポリペプチドはgp41由来ペプチドのN末端のV1配列を欠く。該ポリペプチドは一般式IIIを有する。
【0032】
(gp−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(III)
本発明のポリペプチドの別の態様において、gp41由来ペプチドは、式IVに示されるとおりC3ドメインのC末端に連結される。式IVのポリペプチド中で、gpは、米国特許第6,747,126号および同第6,818,740号明細書に示されるところのD−アミノ酸含有ペプチドでもあり得る。
【0033】
(Hg−C2−C3−Lk−gp)(t)
(IV)
本発明のポリペプチドの別の態様において、単量体(VI−gp−Lk−V2−Hg−C2−C3)および単量体(V1−Lk−V2−Hg−C2−C3)若しくは単量体(Hg−C2−C3−Lk−gp)を含有するヘテロ二量体構造が、ヒンジ領域中のCys−Cysジスルフィド結合のような共有結合により形成され得る。
【0034】
本発明の一態様は、V1がQIQであり、gpが1コピーのT−1249(配列番号4)であり、V2が天然に存在するIgGのJ領域(配列番号16)であり、Hgが完全なIgG1ヒンジ領域(配列番号17)であり、C2およびC3がIgG1アイソタイプのサブクラスのもの(配列番号22および26)であり、そしてtが2である、式(II)のポリペプチドを含んでなるポリペプチドである。本態様の単量体の形態の完全なポリペプチド配列を配列番号1に示す。
【0035】
本発明の別の態様は、V1がQIQであり、gpが1コピーのT−20(配列番号3)であり、V2が天然に存在するIgGのJ領域(配列番号16)であり、Hgが完全なIgG1ヒンジ領域(配列番号17)であり、C2およびC3がIgG1アイソタイプのサブクラスのもの(配列番号22および26)であり、そしてtが2である、式(II)のポリペプチドを含んでなるポリペプチドである。本態様の単量体の形態の完全なポリペプチド配列を配列番号11に示す。
【0036】
本発明の他の態様において、V1、B2、Hg、C2およびC3は、IgG4のようなIgG1以外の免疫グロブリンのアイソタイプのサブクラスのもの由来である。IgG1およびIgG4サブクラスはヒンジ領域のシステインの数が異なる。IgG1サブクラスと同様に、H鎖間のジスルフィド結合に参画するIgG4ヒンジ中に2個のシステインが存在する。しかしながら、L鎖へのジスルフィド結合に通常関与するIgG1ヒンジ中のシステインは、IgG4ヒンジ中に非存在である。従って、IgG4ヒンジはIgG1ヒンジより少なく柔軟性である。
【0037】
加えて、該2種のアイソタイプは、補体依存性の細胞傷害性(CDC)および抗体依存性の細胞の細胞傷害性(ADCC)を媒介するそれらの能力が異なる。CDCは補体の存在下での標的の溶解である。補体活性化経路は、同族の抗原と複合体形成した分子への補体系の第一の成分(C1q)の結合により開始する。IgG1は補体カスケードおよびその後のCDC活性の強力な誘導物質である一方、IgG4は補体誘導活性をほとんど有しない。
【0038】
ADCCは、Fc受容体(FcR)を発現する細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識しかつその後該標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性の反応である。IgG1サブクラスはFc受容体に高親和性で結合しそしてADCCに寄与する一方、IgG4は弱くのみ結合する。エフェクター機能の活性化のIgG4の相対的不能は、ある状況下で望ましいことがある。
【0039】
さらに、FcRnスカベンジャー受容体の結合部位がIgG4およびIgG1アイソタイプに存在し、そして双方が類似の結合特徴を有する。従って、本発明のIgG1およびIgG4ミメティボディの薬物動態は同様であることが期待される。
【0040】
免疫グロブリン領域のヒンジ−C2−C3部分(Hg−C2−C3)は、本発明のバリアントを形成するようにもまた広範囲に改変しうる。例えば、ミメティボディ分子により必要とされない構造の特徴若しくは機能的活性を提供する1個若しくはそれ以上の天然の部位を除去し得る。これらの部位は、例えば、残基を置換若しくは欠失すること、該部位に残基を挿入すること、または該部位を含有する部分を切断することにより除去しうる。例示的Hg−C2−C3バリアントを下述する。
1.ジスルフィド結合形成に関与する部位を、本発明のミメティボディ中で欠失若しくは他のアミノ酸での置換により除去し得る。典型的には、これらのモチーフ中に存在するシステイン残基を除去若しくは置換する。これらの部位の除去は、一緒に非共有的に保持される二量体のC3−C2−ヒンジドメインをなお見込みつつ、ミメティボディを産生する宿主細胞中に存在する他のシステイン含有タンパク質とのジスルフィド結合、若しくは、IgG4に基づく構築物中でのH鎖内ジスルフィド結合を回避しうる。
【0041】
IgG1のような大部分のIgGタイプの抗体は、典型的にHと略記される、2個の同一のH鎖および2個の同一のL鎖から構成されるホモ二量体分子である。従って、これらの分子は一般に抗原結合に関して二価である。すなわち、IgG分子の双方の抗原結合(Fab)アームが同一の結合特異性を有する。
【0042】
IgG4アイソタイプのH鎖は、H鎖間若しくはH鎖内いずれのジスルフィド結合も形成することが可能な、それらのヒンジ領域中のCPSC(配列番号28)モチーフを含有する。すなわち、CPSCモチーフ中の2個のCys残基は、他のH鎖の対応するCys残基とジスルフィド結合しうるか(間)、若しくは、所定のCPSCモチーフ内の2個のCys残基が相互とジスルフィド結合しうる(内)。in vivoの異性化酵素が、IgG4分子のH鎖間結合をH鎖内結合に転換することが可能であり、かつ、逆もまた真であると考えられている(AalberseとSchuurman、Immunology 105:9−19(2002))。従って、ヒンジ領域にH鎖内結合をもつIgG4分子中のH鎖/L鎖(HL)対は相互と共有的に会合していないため、それらはHL単量体に解離することができ、それらはその後、他のIgG4分子由来のHL単量体と再会合して二特異性のヘテロ二量体IgG4分子を形成する。二特異性IgG抗体において、抗体分子の2個のFabはそれらが結合するエピトープが異なる。IgG4のヒンジ領域のSer228をProで置換すること(S228P)は「IgG1様挙動」をもたらす。すなわち、該分子はH鎖間で安定なジスルフィド結合を形成し、そして従って他のIgG4分子でのHL交換に感受性でない。
2.Hg−C2−C3は、本発明のミメティボディを選択された宿主細胞とより適合性にするように改変し得る。例えば、本発明のミメティボディを大腸菌(E.coli)のような細菌細胞中で組換え発現させる場合、ヒンジ中のPro−Ala配列は、大腸菌(E.coli)の酵素プロリンイミノペプチダーゼによる消化を予防するために除去しうる。
3.ヒンジ領域の一部分を、本発明のミメティボディ中で欠失若しくは他のアミノ酸で置換して、選択された宿主細胞中で発現される産物の不均一性を予防し得る。
4.1個若しくはそれ以上のグリコシル化部位を本発明のミメティボディ中で除去し得る。典型的にグリコシル化される残基(例えばAsn)は、ミメティボディにFc依存性の細胞媒介性の細胞溶解活性を賦与しうる。こうした残基を欠失しうるか、若しくはAlaのようなグリコシル化されない残基で置換しうる。
5.C1q結合部位のような補体との相互作用に関与する部位を、本発明のミメティボディ中で除去し得る。
6.本発明のミメティボディ中で、FcRnサルベージ受容体以外のFc受容体への結合に影響を及ぼす部位を除去し得る。例えば、ADCC活性に関与するFc受容体を本発明のミメティボディ中で除去し得る。例えば、IgG1のヒンジ領域中のLeu234/Leu235のL234A/L235A、若しくはIgG4のヒンジ領域中のPhe234/Leu235のP234A/L235Aへの突然変異はFcR結合を最小化し、そして補体依存性の細胞傷害性およびADCCを媒介する免疫グロブリンの能力を低下させる。
【0043】
本発明のポリペプチドはまた、グリコシル化、異性化、アグリコシル化、若しくはポリエチレングリコール部分の付加(ペギル化)およびリピド化のような天然に存在しない共有修飾のような方法により翻訳後に修飾もし得る。こうした修飾はin vivoでもin vitroでも起こりうる。
核酸、ベクターおよび細胞株
本発明の別の局面は、最低1種のHIV gp41ミメティボディポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド若しくは相補核酸である。本発明の範囲内の他のポリヌクレオチドは、所定の発現系での遺伝暗号すなわちコドンの好みの縮重を考えれば本発明のポリペプチドをコードするものである。
【0044】
一態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1および5ないし13のいずれか1つに同一の若しくは実質的に相同なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。例示的一ポリヌクレオチドは配列番号2に示される配列を有する。
【0045】
本発明の他の局面は、最低1種のHIV gp41ミメティボディをコードするポリヌクレオチドを含んでなる組換えベクターを包含する。これらのベクターは適切な細胞株中でHIV gp41ミメティボディを発現するのに有用である。本発明の範囲内のベクターは、CMVプロモーターに駆動されるベクター、例えばpcDNA3.1、pCEP4およびそれらの誘導体のようなウイルスプロモーターに駆動されるベクター、バキュロウイルス発現ベクター、ショウジョウバエ発現ベクター、ならびにヒトIg遺伝子プロモーターのような哺乳動物遺伝子プロモーターにより駆動される発現ベクターを包含する、真核生物発現に必要な要素を提供する。他の例は、T7プロモーターに駆動されるベクター、例えばpET41、乳糖プロモーターに駆動されるベクター、およびアラビノース遺伝子プロモーターに駆動されるベクターのような原核生物発現ベクターを包含する。
【0046】
本発明はまた、HIV gp41ミメティボディを発現する細胞株にも関する。宿主細胞は原核生物、若しくは植物細胞を包含する真核生物細胞であり得る。例示的真核生物細胞は、限定されるものでないがCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、NS0、293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫細胞を挙げることができる哺乳動物細胞、およびアオウキクサ属(Lemna)(ウキクサ)の植物細胞、若しくはそれらのいずれかの誘導体である。HEK293、NS0、SP2/0、CHOおよびウキクサ属(Lemna)細胞がとりわけ有用である。本発明の細胞株は、最低1種のHIV gp41ミメティボディを安定に発現しうる。細胞株は、当該技術分野で公知である安定な若しくは一過性のトランスフェクション手順により生成させうる。
【0047】
本発明はさらに、ミメティボディが検出可能若しくは回収可能な量で発現される条件下で細胞株を培養することを含んでなる、最低1種のHIV gp41ミメティボディの発現方法を提供する。本発明はまた、ミメティボディが検出可能若しくは回収可能な量で発現されるようなin vitro条件下でミメティボディをコードする核酸を翻訳することを含んでなる、最低1種のHIV gp41ミメティボディの生成方法も提供する。本発明は、上の方法により製造されるHIV gp41ミメティボディもまた包含する。
【0048】
HIV gp41ミメティボディは、限定されるものでないがプロテインA精製、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを挙げることができる公知の方法により回収かつ精製し得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もまた精製に使用し得る。
使用方法
HIV gp41ミメティボディは、とりわけ研究試薬および治療薬として有用である。本発明は、HIVおよび宿主細胞膜の融合を阻害若しくは低減させることが可能であるHIV gp41ミメティボディを包含する。本発明のこれらのHIV gp41ミメティボディは、限定されるものでないがAIDSを挙げることができるHIV感染、ニューモシスチス肺炎、CMV網膜炎、カポジ肉腫、進行性多病巣性白質脳障害(PML)、エントアメーバ下痢のような日和見感染症、または他の状態、例えば悪液質若しくは痴呆から生じる障害若しくは症状の処置において有用である。
【0049】
従って、別の局面において、本発明は、宿主へのHIV gp41ミメティボディの投与によるHIVおよび宿主細胞膜の融合の低減若しくは阻害方法に関する。とりわけ、HIV gp41ミメティボディはgp41のアンタゴニストとして機能しうる。「アンタゴニスト」という用語は最も広範な意味で使用され、そしてgp41の1種若しくはそれ以上の生物学的活性を直接若しくは間接的に、部分的に若しくは完全に打ち消す、低下させる若しくは阻害することが可能である分子を包含する。
【0050】
本発明はさらに、治療上有効な量の最低1種のHIVミメティボディの製薬学的組成物をそれの必要な患者に投与することを含んでなる、最低1種のHIV感染に関係した状態若しくは疾患の症状の低減方法若しくはその処置方法を提供する。さらに、本発明のミメティボディは、HIV感染の予防(preventing)方法、および曝露後の予防(prophylaxis)方法、すなわち無症候性のHIV陽性患者におけるHIV感染の続発症の予防方法で有用である。
【0051】
さらに下述されるとおり、本発明の製薬学的組成物は、有効量の最低1種のHIV gp41ミメティボディおよび製薬学的に許容できる担体若しくは希釈剤を含んでなる。所定の治療の有効量は、治癒的であろうと予防的であろうと、一般に、投与手段、標的部位および投与される他の医薬品を包含する多くの多様な因子に依存することができる。従って、処置用量は安全性および有効性を最適化するように滴定される必要があることができる。
【0052】
本発明の方法は、例えばヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジンおよびラミブジン、ネビラピンおよびデラビルジンのような非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ならびにサキナビル、リトナビル、インジナビルおよびネルフィナビルのようなプロテアーゼ阻害剤のようないずれかの他の抗レトロウイルス性化合物、タンパク質若しくは組成物との共投与若しくは併用療法をさらに含み得る。
【0053】
投与様式は、製薬学的有効量の本発明のHIVミメティボディを宿主に送達するためのいかなる適する経路でもあり得る。例えば、HIVミメティボディは、皮下、筋肉内、皮内、静脈内若しくは鼻内投与のような非経口投与、または当該技術分野で既知のいずれかの他の適する手段を介して送達し得る。長時間送達および生物学的有効濃度を提供し得る他の投与経路は、デポー製剤および内的若しくは外的装置のような技術により達成し得る。
【0054】
従って、本発明の別の局面は、最低1種のHIV gp41ミメティボディおよび当該技術分野で既知の製薬学的に許容できる担体若しくは希釈剤を含んでなる製薬学的組成物である。担体若しくは希釈剤は粉末、溶液、懸濁液、乳液若しくはコロイドであり得る。
【0055】
本発明のHIVミメティボディは、治療上若しくは予防上有効な量で製薬学的組成物として処方される。「有効量」という用語は、一般に、有効な治療、すなわちそのための処置が探求された症状若しくは障害の部分的若しくは完全な軽減に必要なミメティボディの量を指す。前述の症状若しくは障害の発症の見込みを低下させることを意図している予防的処置が、有効な治療の定義内に包含される。
【0056】
該組成物は、場合によっては、HIV感染若しくはその続発症を処置するのに有用な最低1種の他の抗レトロウイルス性化合物、タンパク質若しくは組成物を含み得る。こうした付加的な抗レトロウイルス性化合物、タンパク質若しくは組成物は、ウイルス進入過程の個別の段階、例えばCD4細胞結合、補助受容体結合、ウイルス融合に向けられることができるか、またはHIV逆転写酵素若しくはプロテアーゼ酵素のようなHIV感染の他の機構を標的としうる。組合せ処置レジメンはウイルス複製の強力な抑制を生じることがありそうである。
【0057】
本発明は以下の実施例に関してさらに記述される。これらの実施例は単に本発明の局面を具体的に説明するためであり、そして本発明の制限として意図されない。
【実施例1】
【0058】
哺乳動物細胞中でのHIV gp41ミメティボディのクローニング、発現および精製
T−1249をコードするcDNAをオーバーラップPCRにより増幅し、そしてpCEP4由来のヒトIgG1発現ベクターに挿入した。pCEP4はInvitrogen Corporation、カリフォルニア州カールズバッドから得た。該ベクターは、高コピーエピソーム複製を可能にするためにCMVプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)複製起点(oriP)および核抗原(EBNA−1)を含有する。該ベクターはまた、部分的V領域、少なくとも部分的なヒンジ領域、ならびにヒトIgG1 C2およびC3領域のような、他のミメティボディ成分をコードする配列も供給する。
【0059】
T−1249ミメティボディ発現プラスミドをHEK293細胞に一過性にトランスフェクトし、そして、発現されたミメティボディを、標準的手順に従ってプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、細胞培養物上清から精製した。
【実施例2】
【0060】
HIV感染に対するHIV gp41ミメティボディの阻害効果
LTR−Lucアッセイは、標的細胞中に存在する、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結されたHIV LTRのHIV Tatタンパク質媒介性のトランス活性化に基づく。LTR中のTARエレメントへのTatの結合はルシフェラーゼ遺伝子発現の転写活性化をもたらす。ルシフェラーゼ出力はHIV感染の量に比例する。
【0061】
HIV−1IIIB濃縮ウイルス(Advanced Biotechnologies Inc.、メリーランド州コロンビア)を使用してMT4細胞を感染させ、そしてHIVの作業ストックを生成させた。安定なMT4−Luc細胞を生成させるため、HIV LTRの制御下のルシフェラーゼレポーター遺伝子を、当該技術分野で既知の標準的手順に従って親MT4細胞株にトランスフェクトした。T−1249ペプチドWQEWEQKITALLEQAQIQQEKNEYELQKLDKWASLWEWF(配列番号4)を、およそ95%純度まで化学合成した。
【0062】
96ウェル形式でHIV LTR−Lucアッセイを実施するため、2×10のMT4−Luc細胞を各ウェルにプレーティングした。HIV−1ウイルスおよびT−1249ペプチド(配列番号4)若しくはT−1249ミメティボディ(配列番号1)を、200μlの最終容量までウェルごとに添加した。サンプルを4日のアッセイの間三重で試験した(run)。各実験の終了時に、Steady−Glo試薬(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、製造元のプロトコルに従ってルシフェラーゼ活性を検出した。ルシフェラーゼ活性は、BMG FluoStar装置(BMG Labtechnologies GmbH、ドイツ・オッフェンブルク)で発光モードを使用して測定した。
【0063】
50μlの作業ウイルスストックを使用した場合、T−1249ペプチドは、低下されたルシフェラーゼ産生に反映されるとおり(図1A)、HIV感染を効果的に阻害することが示された。該ペプチドのIC50は約3.3nMであると計算された。相対的に、T−1249ミメティボディは該ペプチドの阻害活性を保持した(図1B)とは言え、それは本来のペプチドのものほど強力でなかった。該ミメティボディのIC50は約89nMであると計算された。
【0064】
類似の実験において、T−1249ミメティボディは、エンフュービルタイド耐性株を包含するHIVの他の単離物に対してもまた活性であった。
【実施例3】
【0065】
HIV gp41ミメティボディのin vitro安定性
in vitroでのT−1249ミメティボディの安定性を、HPLCを使用して測定した。T−1249ミメティボディ(配列番号1)を1mg/mlでヒト血清に添加した。C18クロマトグラフィーマトリックスを使用して、T−1249ミメティボディに対応するピークが他の血清タンパク質から分離された。ピークの同一性は、質量分析およびウエスタンブロッティングを使用して、T−1249ミメティボディと確認された。サンプルは、ヒト血清へのT−1249ミメティボディの添加後0、5、25および72時間に採取した。バックグラウンドピークを各サンプルの参照として使用した。この方法を使用して、T−1249ミメティボディの93%以上が37℃で72時間後に無傷のままであったことが見出された。類似の結果が、ヘパリン処理したヒト全血若しくはカニクイザル全血いずれか中でのT−1249ミメティボディの37℃で24時間のインキュベーション後に得られた。
【0066】
本発明は今や完全に記述され、付属として付けられる請求の範囲の技術思想若しくは範囲から離れることなく多くの変更および改変をそれになし得ることが、当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】T−1249ペプチド(図1A)およびT−1249ミメティボディ(図1B)によるMT4−Luc細胞のHIV感染の阻害を示す。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
(V1−gp−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(II)
[式中、V1は免疫グロブリン可変領域のN末端の一部分であり、gpはヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp41由来ペプチド配列であり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリン可変ヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1から10までの整数である]
で表されるポリペプチド。
【請求項2】
式(III):
(gp−Lk−V2−Hg−C2−C3)(t)
(III)
[式中、gpはヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp41由来ペプチド配列であり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリン可変ヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1から10までの整数である]
で表されるポリペプチド。
【請求項3】
式(IV):
(Hg−C2−C3−Lk−gp)(t)
(IV)
[式中、gpはヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp41由来ペプチド配列であり、Lkはポリペプチド若しくは化学結合であり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hgは免疫グロブリン可変ヒンジ領域の少なくとも一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域であり、そしてC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域であり、かつ、tは独立に1から10までの整数である]
で表されるポリペプチド。
【請求項4】
gpが配列番号3若しくは4に示されるアミノ酸配列を有し、かつ、tが2である、請求項1、2若しくは3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号1、5、6、7、8、9、10、11、12若しくは13に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
【請求項6】
Hg、C2およびC3がIgG1若しくはIgG4サブクラスのものである、請求項1、2若しくは3に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ポリペプチドが、HIVウイルスと宿主細胞膜の融合を阻害する、請求項1、2若しくは3に記載のポリペプチド。
【請求項8】
ポリペプチドが翻訳後に修飾される、請求項1、2若しくは3に記載のポリペプチド。
【請求項9】
ポリエチレングリコール部分の付加により修飾される、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
請求項1、2若しくは3の1つに記載ののポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号2に示される配列若しくは相補配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号1、5、6、7、8、9、10、11、12若しくは13に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項11若しくは12に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項14】
請求項1、2若しくは3の1つに記載ののポリペプチドを発現する細胞株。
【請求項15】
請求項13に記載のベクターを含んでなる細胞株。
【請求項16】
細胞株が、HEK293、NS0、SP2/0、CHO若しくはウキクサ属(Lemna)細胞である、請求項15に記載の細胞株。
【請求項17】
請求項15に記載の細胞株を培養する段階、および発現されたポリペプチドを精製する段階を含んでなる、ポリペプチドの製造方法。
【請求項18】
有効量の請求項5に記載の最低1種のポリペプチド、および製薬学的に許容できる担体若しくは希釈剤を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項19】
標的細胞を、ある量の請求項18に記載の製薬学的組成物と接触させることを含んでなる、標的細胞のHIV感染の阻害方法。
【請求項20】
請求項18に記載の製薬学的組成物をそれの必要な患者に投与することを含んでなる、最低1種のHIV感染に関係した状態若しくは障害の症状の低減方法、若しくはそれらの処置方法。
【請求項21】
HIV感染に関係した状態若しくは障害が、AIDS、日和見感染症、若しくはHIV感染による他の状態である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
日和見感染症が、ニューモシスチス肺炎、CMV網膜炎、カポジ肉腫、進行性多病巣性白質脳障害(PML)若しくはエントアメーバ下痢である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
他の状態が悪液質若しくは痴呆である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
いずれかの他の抗ウイルス性化合物、タンパク質若しくは組成物を投与することをさらに含んでなる、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
他の抗ウイルス性化合物、タンパク質若しくは組成物が、ヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤若しくはプロテアーゼ阻害剤の最低1種である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項18に記載の製薬学的組成物を患者に投与することを含んでなる、患者におけるHIV感染の予防方法。
【請求項27】
請求項18に記載の製薬学的組成物を、HIV陽性の無症候性患者に投与することを含んでなる、患者におけるHIV感染の続発症の予防方法。

【公表番号】特表2007−515965(P2007−515965A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547331(P2006−547331)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/043176
【国際公開番号】WO2005/063282
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】