抗原に対し霊長類を免疫寛容化する組成物と方法
in vitroで試験した際にある特性を持つ化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せでの使用による霊長類への免疫寛容の誘導。単独または組合せて使用される化合物は、望ましくはTRX1抗体であり、化合物またはその組合せは、望ましくは特定の用量処方に基づいて使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年6月14日付け英国出願番号0114517.6号の優先権を主張する合衆国出願番号10/171,452号(係属中),2001年9月20日付英国出願番号0122724.8号,2001年10月19日付合衆国暫定出願番号60/345,194号,2002年4月18日付合衆国暫定出願番号60/373,470号,および2002年4月18日付合衆国暫定出願番号60/373,471号の継続出願であり、これらの内容は本発明の引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、抗原に対する免疫応答を阻害し、予防しまたは改善するために適用可能である。このような抗原に対する免疫応答の阻害、予防または改善は、抗原に対する免疫寛容を誘導することを含む。本発明は、更に免疫寛容誘導、およびまたはT細胞活性化および増殖の予防または阻害および、より詳細には霊長類への免疫寛容の誘導を含む。
【0003】
外来抗原または組織、あるいは自己抗原または組織に対する免疫寛容は、さもなくば正常、成熟免疫系が特異的にその抗原/組織に攻撃的に応答できず、従って、それは正常(非疾病)体組織/成分のように扱う状態であり、しかも同時にそれは、外来または疾病抗原/組織に対し攻撃的に応答することができ、それらに対し免疫系は、自己免疫寛容の自然な過程により、またはin vivoでの免疫寛容許容環境を創出することにより、特異的に免疫寛容化されてきていなかった。
【発明の開示】
【0004】
本発明の一つの見地に従って、1個の化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せの使用により、免疫寛容を誘導する一つのプロセスが提供され、ここで化合物または組合わせは、in vitroで試験された場合にある種の特性を有し、望ましい実施例における前記化合物の限定されない例としては、CD4抗体が存在する。
【0005】
「少なくとも2個の化合物の組合せ」という用語は、化合物が相互に混合されて投与されねばならない、ということを意味するものではないことは理解されねばならない。かくして、このような組合せでの、またはそれを使用することによる処置は、化合物の混合物、または化合物の別個の投与を包含するものであり、また同じ日あるいは別の日での投与も含む。かくして「組合せ」という用語は、2個またはそれ以上の化合物が、個別にあるいは相互に混合されるかのいずれかで処置のために使用されることを意味する。「化合物」という用語は、広い感覚で使用されており、遺伝子治療で使用されるような物質(例えば治療タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター)などの物質を包含する。
【0006】
本発明のもう一つの見地に従って、新規なCD4抗体およびその使用法が提供される。
【0007】
本発明の更なる見地に従って、霊長類に免疫寛容を誘導するための1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せが提供される。
【0008】
本発明の更なる見地に従って、薬剤、処置または方法と組合せた新規なCD4抗体が提供される。
【0009】
本発明の更なる見地に従って、1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せの使用により、霊長類での免疫寛容を誘導するプロセスが提供され、ここで化合物または組合せは、霊長類でのこのような免疫寛容を誘導する用量処方の使用によるある特性を持ち、望ましい実施例での前記化合物の限定されない例としてはCD4抗体がある。
【0010】
本発明の更なる見地に従って、1個またはそれ以上の抗原に対する免疫寛容を誘導するのに有用な化合物、または化合物の組合せを同定するためのスクリーニングまたは試験が提供される。
【0011】
本発明の更なる見地に従って、必ずしもそれに限定されないが、移植片拒絶、移植片対宿主病、必ずしもそれに限定されないが、慢性関節リュウマチ、糖尿病、および多発性硬化などを含む自己免疫疾患、炎症性過程と関連する炎症性疾病と疾患、アレルギー、アナフィラキシー、およびアナフィラキシーと関連する疾病、喘息、がん、および必ずしもそれに限定されないが、ウイルス性感染を含む感染症などを含む疾病または病的状態と関連する症状を処置し、治療しまたは改善する新規な方法が提供される。
【0012】
本発明の更なる見地に従って、治療薬、例えばタンパク質、ペプチド、細胞、遺伝子治療薬などの治療薬に免疫寛容を誘導する新規な方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一つの見地に従って、以下に記載の通り1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せの使用により、抗原に対し霊長類を免疫寛容にするプロセスが提供される。化合物、または組合せは、霊長類に免疫寛容を誘導するのに有効な量および有効な用量処方に従って投与される。化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せは、化合物、または前記組合せが不在の混合リンパ球反応(MLR)と比較して一次混合リンパ球反応に存在する場合に、混合リンパ球反応から生じるCD4およびCD25(CD4+CD25+細胞)両方に正である細胞量を減少させる化合物、または組合せである。望ましい実施例において、化合物、または前記組合せは、このようなCD4+CD25細胞を少なくとも40%および望ましくは少なくとも60%、またより望ましくは少なくとも70%減少させる化合物、または前記組合せである。
【0014】
望ましい実施例におい、このような化合物、または前記組合せは、一次MLRで産生されるCD4+CD25+細胞を減少させることで(化合物、または薬剤、処置あるいは方法と組合せた前記化合物にこれまで露出されなかった細胞で実行された)一次混合リンパ球反応を阻害する細胞集団を産生する。望ましい実施例において、少なくと10%の減少があり、望ましく少なくとも20%の減少がある。ここで記載された混合リンパ球反応を行うプロトコルは、実施例5に記載されている。
【0015】
更に、望ましい実施例において、化合物、または前記組合せは、一次混合リンパ球反応で産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させ、細胞集団が二次混合リンパ球反応を阻害するそのような一次混合リンパ球反応で細胞集団を生成する化合物、または前記組合せである。望ましい実施例において、細胞は、化合物、または前記組合せの存在下で実行される一次混合リンパ球反応で生成され、その細胞は、二次混合リンパ球反応に加えられた場合に、付加される細胞が不在である二次混合リンパ球反応の場合と比較して、少なくとも20%、より望ましくは少なくとも35%、またより望ましくは少なくとも50%、このような二次混合リンパ球反応で生成されるCD4+CD25+細胞を減少させる。
【0016】
このような細胞集団による一次または二次MLRのいずれかの阻害は、その細胞集団の不在下で行われるMLRと比較して、MLRで産生されるCD4+CD25+細胞量の減少により立証される。
【0017】
かくして本発明の一つの見地に従って、霊長類は前に記載の特性(一次およびまたは二次MLRでin vitroで産生されるCD4+CD25+細胞の量を減少し、また一次および二次MLR両方でこのような減少を望ましくはもたらす細胞集団を生成するこのような一次MLRで、in vitroでの一次MLRで産生されるCD4+CD25+細胞量の減少)を持つ1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せで処置される。
【0018】
一つの実施例において、化合物、または前記組合せの存在下で一次MLRで生成される細胞は、二次MLRに加えられる時(付加される細胞なしでの二次MLRと比較すると)、1個またはそれ以上のサイトカイン、とりわけ二次MLRで1個またはそれ以上のIL−2,IL−4およびIL−12の生成を減少し、およびまたは排除する細胞である。一般にIL−2,IL−4およびIL−12のこのような少なくとも1個の減少は、少なくとも40%、望ましくは少なくとも60%である。
【0019】
かくして望ましい化合物、または望ましい組合せは、一次MLRで細胞を生成し、対照と比較して二次MLRでCD4+CD25+細胞またはIL−2,IL−4およびIL−12の1個またはそれ以上あるいはすべて(望ましくはすべて)の産生を減少させ、また望ましくはこのような細胞およびサイトカイン両方の産生を減少させるものである。
【0020】
更なる見地に従って、T細胞を刺激し、増殖を起こす条件下でin vitroでT細胞が物質または化合物に露出され、免疫寛容を誘導する能力を試験される化合物、または少なくとも2個の化合物の存在下でこのような露出が行われるスクリーニングまたは試験が提供される。T細胞増殖試験は、混合リンパ球反応であり、またはT細胞受容体(TCR)あるいはTCR複合体の成分、例えばCD3成分を通じて非抗原特異的刺激によりT細胞が増殖を起こす試験である。典型的には、T細胞を刺激し、それに増殖を起こすために使用されるのは、抗CD3モノクローナル抗体である。TCR複合体を経由する刺激に加えて、CD28などの共刺激分子と結合する抗体の付加により、共刺激シグナルが時には提供される。試験される化合物または薬剤、処置または方法と組合される前記化合物の存在下または不在下で増殖を起こす原因となったT細胞は、化合物、または前記組合せの存在が、T細胞サブセットの産生を阻害したかどうかを確認するために、CD4正(CD4+)およびCD25正(CD25+)であるT細胞のサブセットを確認するように試験される。
【0021】
免疫寛容誘導活性のための化合物、または前記組合せを試験するために使用されるin vitro試験は、望ましくは混合リンパ球反応(MLR)である。混合リンパ球反応は、一般に従来の技術で公知であり、そのプロトコルは実施例5で以下に記載されているが、発明の範囲はそれにより限定されるものではない。
【0022】
最初の試験で産生される細胞集団は、次いで更に少なくとも1回試験され、ここでin vitroでのT細胞は、このような細胞集団がCD4+CD25+細胞の産生を阻害するかどうかを確認するために、増殖を起こしている試験である。
【0023】
少なくとも更なる1回の試験は、混合リンパ球反応(一次または二次リンパ球反応)であってもよく、またはT細胞受容体(TCR)あるいはTCR複合体の成分を通じて、もしくはTCRを通じて抗原特異的刺激を擬態する共刺激での非抗原特異的刺激に応答してT細胞が増殖を起こす試験であってもよい。
【0024】
このような試験のプロトコルは、実施例5に記載されているが、本発明の範囲はそれにより限定されるものではない。
【0025】
望ましい実施例において、免疫寛容を誘導するために使用される化合物、または少なくとも2個の異なる化合物の組合せを確認するスクリーニングまたは試験は、MLRなどのようなin vitroでのT細胞増殖試験で、化合物、または前記組合せが、CD4+CD25+細胞を減少させるかどうかを確認する最初の試験、および最初の試験で産生された細胞が、一次およびまたは二次MLR、更にとりわけ二次MLRおよびまたは二次MLRでのサイトカインの産生などの二次T細胞増殖試験でCD4+CD25+細胞の産生を阻害するかどうかを確認する次の試験、の両方を含む。
【0026】
望ましい実施例に従って、免疫寛容を誘導するために選択される化合物、または前記組合せは、最初の試験でCD4+CD25+細胞の産生の減少を起こし、前に記載したように第2の試験でこのようなT細胞サブセットの産生を減少させる細胞集団を産生し、およびまたはサイトカインの産生および、とりわけ第2試験で1個またはそれ以上のIL−2,IL−4およびIL−12を削減する化合物または前記化合物の組合せである。
【0027】
かくして本発明の一つの見地に従って、選択された化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せは、化合物、または前記組合せの不在下での混合リンパ球反応と比較して、一時混合リンパ球反応(MLR)などのT細胞増殖検定で存在する場合に、混合リンパ球反応から生じるCD4およびCD25(CD4+CD25+細胞)両方に正である細胞量を減少させる化合物、または組合せである。望ましい実施例において、化合物、または前記組合せは、そのようなCD4+CD25+細胞を少なくとも40%、また望ましくは少なくとも60%、また更により望ましくは少なくとも70%減少させる化合物、または組合せである。
【0028】
加えて、望ましい実施例において、選択された化合物または組合せは、一次混合リンパ球反応で産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させ、そのような一次混合リンパ球反応で細胞集団を生成し、その細胞集団が二次混合リンパ球反応を阻害する化合物または組合せである。望ましい実施例において、細胞は、化合物、または前記組合せの存在下で行われる一次混合リンパ球反応で生成され、その細胞は、二次混合リンパ球反応に加えられた時に(付加される細胞の不在下での二次混合リンパ球反応と比較して)、少なくとも20%、より望ましくは少なくとも35%、またより望ましくは少なくとも50%、このような二次混合リンパ球反応で生成されるCD4+CD25+細胞を望ましくは減少させる。望ましい実施例において、二次MLRでのこのような細胞は、対照と比較して、IL−2,IL−4およびIL−12の少なくとも1個の産生を少なくとも40%、また望ましくは少なくとも60%減少させる。
【0029】
このような細胞集団による一次MLRまたは二次MLRのいずれかの阻害は、このような細胞集団の存在下で行われるMLRと比較してMLRで産生されるCD4+CD25+細胞の減少により立証され、また二次MLRに関連してCD4+CD25+細胞の減少またはサイトカイン産生の減少および望ましくはその両方により立証される。
【0030】
一つの実施例において、霊長類に免疫寛容を誘導するのに使用される化合物は、抗体(またはその断片)あいは抗体(またはその断片)ともう一つの抗体との組合せ、もしくは抗体以外の化合物である。しかし本発明は、このような抗体の使用に限定させるものではない。
【0031】
かくして霊長類に免疫寛容を誘導する一つの見地と関連する本発明は、前記特性を持ち、霊長類に免疫寛容を誘導できる化合物の使用を考慮し、その化合物は、単独でまたは1個あるいはそれ以上の他の化合物と組合せて使用することができ、この1個あるいはそれ以上の他の化合物は前記の特性を持つこともあり、または持たないこともあり得る。加えて本発明は、少なくとも2個の化合物の組合せの使用を考慮し、ここで1個またはそれ以上の化合物は、前記の特性を持ち、またはここでこのような組合せの化合物のいずれもが個別には前記の特性を持たないが、組合せられた場合にはこのような特性を持つ。かくして少なくとも2個の化合物の組合せは、その1個またはそれ以上の化合物がそのような特性を持つ結果として、あるいは2個またはそれ以上の化合物の組合せがこのような特性を与える結果として、前記の特性を持つことができる。
【0032】
ある場合には、本発明の化合物は、免疫抑制剤である化合物と組合せて使用される。免疫抑制剤である化合物は、一般化された免疫抑制をもたらすのに必要な量以下の用量で使用でき、または一般免疫抑制をもたらす用量で使用される。使用される化合物の組合せおよび化合物の相対的量は、霊長類に免疫寛容を誘導するのに有効である。
【0033】
霊長類に免疫寛容を誘導する前に記載の特性を持つ化合物と組合せて使用される化合物のいくつかの例は、必ずしもそれに限定されないが、リツキサンTM(ジェネンテク);B細胞と特異的に結合する抗体;ID4(リサーチ・ダイアグノスティックス)に限定されないが、それを含むプラズマ細胞に特異的な抗体;セルセプトTM(ロシュ);シクロスポリン;抗CD40L;抗IL12;抗IL18;抗インターフェロンガンマ;プロテオソーム阻害薬;CXCR3拮抗薬;15デオキシスペルグアリン:FK506;CD2,CD8およびCD28などの共刺激分子に向けられる抗モノクローナル抗体、ならびに付着分子に向けられるモノクローナル抗体を含む。
【0034】
組合せで使用される化合物の更なる限定されない例は、in vivoでタンパク質を発現する遺伝子治療物質、ペプチド擬似体、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸アプタマー、ペプチド、小有機分子および抗体を含む。
【0035】
ここで使用されるように、抗原と関連して「免疫寛容化する」または「免疫寛容である」という用語は、全総合免疫抑制を必要とせずに、処置が停止し、抗原での続く攻撃誘発がなされ、およびまたは抗原が霊長類に存在していても、一定期間にわたり抗原に対する逆免疫応答を産生せず、他の抗原に対する免疫応答を提供できることを意味する。
【0036】
免疫寛容化または免疫寛容状態は、前に記載のように、本発明の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せの有効用量を投与することにより、霊長類に導入することができる。前に記載のように、化合物の組合せを用いる場合には、それらは同時にまたは順次に投与される。
【0037】
免疫寛容を導入させる抗原は、自己抗原または外来抗原である。
【0038】
外来抗原は、1個またはそれ以上の下記の型の抗原である。
【0039】
(i)移植片が同種または異種である器官に存在する組織または細胞を含む移植組織または細胞に存在する外来抗原、
(ii)霊長類に免疫応答を産生する治療薬(疾病予防に使用される治療薬も含む)であり、その免疫応答が治療薬として機能する薬剤の性能を減少させる治療薬。このような薬剤には、必ずしもそれに限定されないが、遺伝子治療に使用されるベクターなどの送達担体、モノクローナル抗体などの組換えタンパク質、酵素、凝固因子およびいくつかの小分子薬剤、または遺伝子治療薬などの霊長類に送達される薬剤から産生されるタンパク質、
がそれである。
【0040】
本発明に従って、免疫寛容が誘導される外来抗原は、宿主に感染する疾病の原因となる細菌、真菌、ウイルスなどに存在する外来抗原ではなく、すなわち外来抗原という用語は、霊長類に感染し疾病または疾患を起こす生体の部分としての外来抗原を含まない。
【0041】
一つの見地に従って、霊長類は、そのような免疫寛容を提供するのに有効な量と時間で、少なくとも1個のCD4抗体またはその断片で、またはもう一つの化合物(CD4抗体以外の化合物あるいは異なるCD4抗体)と組合せる少なくとも1個のCD4抗体またはその断片で、霊長類を処置することにより、抗原に対し免疫寛容を産生するように処置され、そのような抗原が霊長類に更に存在する場合に霊長類に抗体が存在し、そのような処置で霊長類が抗原に免疫寛容になるようにする。このようなCD4抗体またはその断片、あるいはもう一つの化合物と組合されるCD4抗体またはその断片は、MLRでin vitroで試験された際に(一次または二次MLRの少なくとも一つでin vitroで試験された際にそこに産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させる一次MLRで産生される細胞集団で、一次MLRで産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させる)前に記載の特性を持つ。
【0042】
CD4抗体は、望ましくはモノクローナル抗体(またはCD4に結合する能力を持つその断片)である。抗体はヒト抗体または非ヒト抗体であることができ、非ヒト抗体はヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体などを含む。
【0043】
CD4抗体またはその断片、あるいはもう一つの化合物と組合される少なくとも1個のCD4抗体またはその断片は、外来抗原または自己抗原および望ましくは外来抗原に免疫寛容を誘導するのに有効な量と時間で霊長類に投与される。
【0044】
望ましい実施例に従って、CD4抗体またはその断片は、このような抗体または断片の適切な水準を霊長類で維持するために、あるいは前記抗体または断片が前に記載のもう一つの化合物と組合せて免疫寛容を誘導するのに十分な期間にわたり前記組合せの有効用量で使用される場合にその期間にわたり投与される。
【0045】
一般に抗体(またはその断片)は、少なくとも約40mg、望ましくは少なくとも約50mgおよびより望ましくは少なくとも約70mgを単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて最初の用量で投与される。
【0046】
望ましい実施例において、当初用量は少なくとも400mg,望ましくは少なくとも約500mg、および特定の実施例で少なくとも約700mgの量であり、単独、または前に記載のもう一つの化合物と組合される。
【0047】
当初の用量は24時間に1回またはそれ以上の用量で、および望ましくは24時間に1回の用量で、単独または前に記載のもう一つの化合物と組合せて投与される。
【0048】
用量がここで使用されるように、24時間に1回以上単独またはここで記載のもう一つの化合物と組合せて投与される場合であっても、用量は24時間にわたり投与される抗体の全量である。
【0049】
大抵の場合、当初用量の後に、CD4抗体(またはその適当な断片)は、数日間1個もしくはそれ以上の追跡用量で投与され、各追跡用量は24時間で1個またはそれ以上の用量で単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて投与される。追跡用量は、抗体の血清水準を当初用量で達成された水準に戻す量で単独またはここに記載されたもう一つの化合物と組合せて提供される。
【0050】
望ましい実施例において、最小追跡用量は、ここに記載の量に少なくとも等しい量であり、もとのまたは当初用量単独あるいはここに記載のもう一つの化合物と組合せて与えられる用量と同じであり、またはそうでない場合もある。かくして追跡用量は、一般に少なくとも40mg、望ましくは少なくとも50mg、およびより望ましくは少なくとも70mgを単独であるいはここに記載のもう一つの化合物と組合せる量である。前に記載の通り、一つの望ましい実施例において、追跡用量は少なくとも400mg、望ましくは少なくとも500mg、また特定の実施例では、少なくとも700mg、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合された量である。ある場合には、追跡用量は、単独またはここで記載されたもう一つの化合物と併用して最小量以下の場合もある。
【0051】
1個以上の追跡用量がある場合には、24時間にわたるこのような各追跡用量は、単独またはここで記載のもう一つの化合物と組合されるもう一つの追跡用量と同じまたは異なる場合もある。
【0052】
追跡用量の回数は変化するが、望ましい実施例において、一般に少なくとも1回の追跡用量、および大抵の場合7回以下の追跡用量があり、すなわち用量の回数は単独でまたはここで記載されたもう一つの化合物との組合せで8回の用量を越えることはない。
【0053】
抗体が投与される全期間は、一般に4週を越えることはなく、より望ましくは単独でまたはここで記載されたもう一つの化合物との組合せで3週を越えない。多くの場合免疫寛容は、当初用量および1回またはそれ以上の追跡用量を、単独またはここで記載されたもう一つの化合物との組合せで2週間を越えない期間に使用することで達成される。
【0054】
本発明に従って、抗原に対する当初の免疫寛容は4週以下の期間で霊長類で達成できるけれども、ある場合には免疫寛容を維持するために、抗体単独でまたはここで記載されたもう一つの化合物と組合せで周期的な追跡処置が必要とされる場合もある。
【0055】
前に記載されたように、少なくとも1個のCD4抗体(またはその適切な断片)は、抗原に対し、また望ましい実施例では外来抗原に対し、単独でまたはここに記載したもう一つの化合物と組合せて、霊長類に免疫寛容を誘導するのに十分な量で送達される。最大量は勿論安全を考慮して限定される。一般に抗体の1日用量は、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて6000mg以下となるであろう。
【0056】
追跡用量の回数とその間隔とりは、部分的には少なくとも1個のCD4抗体の半減期により決定される。本発明はそれにより限定されるものではないが、CD4抗体は処置される霊長類のすべてのCD4を飽和するのに必要な量を超える抗体血清水準を達成する量で当初送達され、追跡用量は単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて抗原に対し霊長類に免疫寛容を誘導する期間にわたりそのような超過を維持するために時々与えられる。
【0057】
望ましい実施例において、CD4抗体は、ヒトIgG1と比較して減少エフェクター(すなわち溶解)機能を持つCD4抗体である。減少エフェクター機能を持つ代表的な例としては、非糖鎖付加Fc部分を持ち、およびまたはFc受容体へ結合が減少し、およびまたは非溶解性である抗体を挙げることができる。
【0058】
一つの実施例では、減少エフェクター機能を持つCD4抗体は、非枯渇CD4抗体である。ここで使用されるように、「非枯渇C4抗体」はCD4細胞を50%以下枯渇する抗体であり、望ましくはCD4細胞を10%以下枯渇する抗体である。
【0059】
霊長類、およびとりわけヒトを処置する場合、CD4抗体は薬理許容担体のみと組合せ、あるいはここに記載のもう一つの化合物と組合せて採用される。CD4抗体を含む組成物は、他の成分、例えば安定剤およびまたは他の活性剤単独であるいはここに記載のもう一つの化合物を組合せて含むこともある。
【0060】
本発明に従って、霊長類の抗原に免疫寛容を誘導するCD4抗体単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合わせるCD4抗体の使用法は、1個またはそれ以上の抗原に免疫寛容を提供し、霊長類は他の抗原に免疫学的に応答することができる。かくしてこの点に関し、霊長類は、1個またはそれ以上の抗原に免疫寛容化され、また免疫系は、他の外来抗原に対し免疫応答を提供することが可能となり、このため霊長類な免疫無防備ではなくなる。
【0061】
免疫寛容が抗原に対して導入される望ましい実施例において、CD4抗体は、抗原が単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて送達される前に、それと同時に、または送達後に霊長類に投与される。望ましい実施例において、霊長類は、抗体が霊長類に存在するようにCD4抗体を単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて一度に投与される。とりわけ望ましい実施例において、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合されるCD4抗体(またはその断片)は、その後、数時間または1日以下で霊長類が免疫寛容になる抗原に霊長類を接触させる前に霊長類に送達される。望ましい実施例において、抗体単独またはここに記載されたもう一つの化合物と併用された抗体は、抗原を受け入れる霊長類に対し、約2日前、望ましくは1日前に投与される。
【0062】
前に記載したように、一つの実施例において、霊長類は、霊長類を処置するのに使用される治療用タンパク質に対し免疫寛容化される。このような治療用タンパク質は(CD4抗体以外の)治療用抗体であり、この治療用抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体または非ヒト抗体;代償療法で使用されるものなどの酵素;ホルモン;凝固因子;遺伝子治療で産生されるタンパク質;単独またはここで記載されたもう一つの化合物と組合せて遺伝子治療で使用されるベクターなどの遺伝子治療送達伝達体(例えばアデノウイルスベクター)などであることができる。
【0063】
本発明は、更に免疫寛容が、化合物またはここに記載された2個またはそれ以上の化合物の組合せで誘導され、そのような化合物または組合せが治療用タンパク質に対し免疫寛容を誘導するような治療用タンパク質を含むキットまたはパッケージを考慮する。
【0064】
外来抗原は、移植された器官,細胞治療に使用された移植細胞、または皮膚などの他の組織移植片に存在する。
【0065】
霊長類をCD4の使用により外来抗原に対し免疫寛容にするために、霊長類、とりわけヒトの処置は、外来抗原の免疫およびまたはT細胞の枯渇およびまたは免疫抑制を促進するための骨髄移植などのようなアジュバンド治療なしである場合には達成することができる。
【0066】
限定されない一つの実施例において、抗体は望ましくはTRX1抗体(ここで以下に記載したもの)、すなわちここで以下に記載されているTRX1と同じエピトープに結合する抗体であり、このような抗体は、単独でまたはここで記載された薬剤、処置または方法と組合せてここで記載された用量処方で望ましくは使用される。
【0067】
本発明の見地に従って、図1で示されるヒト化抗体、および図2で示されるヒト化抗体、更に図3で示されるヒト化抗体、また図4で示されるヒト化抗体より成るグループから選択されるヒト化抗体としてヒトリンパ球と同じエピトープ(またはその部分)と結合する分子(望ましくはヒト化抗体またはその断片)が提供される。
【0068】
抗体は、以下で時々TRX1として引用される。「分子」または「TRX1と同じエピトープに結合する抗体」はTRX1を含む。「TRX1」という用語は、図1で示される抗体、図2で示される抗体、および図3で示される抗体の一つおよび図4で示される抗体の一つを含み、例えば組み換え技術で産生されるそれらと同一のものを含む。
【0069】
望ましい抗体はTRX1であるけれども、ここでの教示から当業者はTRX1に同等の抗体を産生することができる。そのようなTRX1同等抗体の代表的で限定されない例として、以下のものがある。
【0070】
1)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体、
2)TRX1と同じCDRsを持つが、異なるヒト化フレームワークおよびまたは異なるヒト定常領域を持つヒト化抗体、
3)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体であって、ここで、TRX1の1個またはそれ以上のCDRsの1個またはそれ以上のアミノ酸が変化しており(望ましくは必ずしも保存アミノ酸置換である必要はなく)、またここで、フレームワークは、TRX1と同じフレームワークであってもよく、あるいは異なるヒト化フレームワークを持つこともあり、あるいはここでTRX1のフレームワーク領域の1個またはそれ以上のアミノ酸が変化しており、およびまたはここで、定常領域がTRX1と同じまたは異なっていてもよいヒト化抗体、
4)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体であって、ここで抗体が受容体のFc領域に結合しないヒト化抗体、
5)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体であって、ここでそのCDRsがグリコシル化(糖鎖付加)部位を含まないヒト化抗体、
6)TRX1と同じエピトープに結合し、また受容体のFc領域と結合せず、更に、CDRsはグリコシル化(糖鎖付加)部位を含まないヒト化抗体、
7)TRX1と同じエピトープに結合するキメラ抗体、および
8)TRX1と同じエピトープに結合するマウス抗体。
【0071】
TRX1と同等である抗体は、TRX1と同じやり方でまた同じ目的に使用することができる。
【0072】
本発明の分子または抗体は、動物、とりわけヒトを処置する方法に使用され、とりわけ抗原に免疫応答に誘導することを含む、外来抗原または自己抗原である抗原への免疫応答を阻害し、改善し、または減少する用途に使用することができる。分子または抗体は、クラスI提示抗原およびまたはクラスII提示抗原への免疫応答を阻害し、改善し、または減少するのに使用できる。分子または抗体は、このような抗原への免疫応答を阻害し、改善し、または減少するのに使用される。移植片の場合、例えばクラスIおよびクラスII主要組織適合(MHC)抗原および非MHCまたは副組織適合抗原が提示される。移植抗原とは別に、分子または抗体は、球状タンパク質、免疫グロブリンなどの糖タンパク質、花粉タンパク質などの粒子を運搬する物質、インターフェロン、インターロイキン2または腫瘍懐死因子などの治療用途を意図したポリペプチド、または黄体ホルモン、その類似体および拮抗薬などのホルモン置換物、などの免疫応答を阻害し、改善し、または減少するために使用することができる。免疫応答が阻害され、改善され、または減少されることのできる更なる特異的抗原は、受容体遮断を助けるために使用されるタンパク質治療薬の合成ペプチド相似体、および同種抗原は、組織移植または皮膚移植における外来組織の拒絶の原因となる。ここで使用される「抗原」という用語は、動物、望ましく霊長類、より望ましくはヒトにおける免疫応答に免疫寛容を誘導するサブスタンス物質である。免疫応答は、体液性応答を伴い、または伴わないT細胞応答である。
【0073】
本発明の分子または抗体は、T細胞活性化および増殖を阻害し、およびまたは変更し、また出願人は、T細胞活性化を刺激する薬剤を単独で、あるいはここに記載の薬剤、処置または方法と組合せる薬剤の前または後のいずれかに本発明の分子または抗体を加えることで、そのような阻害を実現できることを発見した。
【0074】
本発明の分子または抗体は、CD4抗原(CD4正ヒトT細胞)のエピトープに結合する特性を持つが、しかし抗体がT細胞上でCD4抗原に結合するというように機能するものと考えられているけれども、抗体は他の細胞、例えば単球上のCD4抗原と結合することで機能する、ということは理解されねばならない。結果として、T細胞の活性化または増殖を阻害し、およびまたは変更するこのような分子または抗体の能力は、CD4正細胞との結合を通して実行される場合もあり、そうでない場合もある。
【0075】
本発明のもう一つの見地に従って、以下でTRX1(またはその断片あるいは誘導体)として引用する抗体、またはTRX1と同じエピトープに結合するこのような抗体または誘導体あるいはその断片を擬態するいずれかの分子の患者への投与を通じて、ヒト患者に進行中の免疫応答を予防しおよびまたは阻害する方法が提供される。
【0076】
本出願を通じてここで使用される「阻害する」という用語は、一つまたはそれ以上の抗原に対する免疫応答の予防、または阻害、あるいは発病度の減少、もしくは改善を意味することを意図する。抗原は、外来抗原または自己抗原である。本出願の目的のためにここで使用される「移植」という用語は、必ずしもそれに限定されないが、同種移植または異種移植を含むいずれかまたはすべての移植を意味する。このような移植は、例として必ずしもそれに限定されないが、細胞、骨髄、組織、固形器官、骨などの移植を含む。
【0077】
ここで使用される「免疫応答」という用語は、T細胞活性化および増殖に依存する免疫応答を意味することを意図し、それは細胞性効果とT細胞依存性抗体の両方を含み、例としてまた限定されないものとして、(i)移植片、(ii)移植片対宿主病、(iii)例によりまた必ずしもそれに限定されないが、慢性関節リウマチ、全身性狼瘡、多発性硬化、真性糖尿病などを含む自己免疫疾患で生じる自己抗原などに対し応答して引出されるものである。
【0078】
本発明で採用される化合物は、TRX1ヒト化抗体と同じエピトープ(またはそのエピトープの一部)と結合する化合物である。「TRX1ヒト化抗体と同じエピトープに結合する」という用語は、必ずしもTRX1ヒト化抗体だけでなく、TRX1ヒト化抗体と同じエピトープに結合する他の抗体、その断片または誘導体あるいは分子を記載するものと意図される。
【0079】
このような分子は望ましくは抗体であるが、核酸アプタマーも含む。望ましい実施例において、抗体は抗体のFc領域を通じてFc受容体と結合せず、またCDRsはグリコシル化部位を含まない。
【0080】
定常領域は、グリコシル化部位を含むことができ、または含まないこともある。一つの実施例において、定常領域はグリコシル化部位を含む。グリコシル化部位を含む重鎖配列の一つの例は、図1Dおよび図1Fまた図3Dならびに図3Fで示される。もう一つの実施例において、定常領域はグリコシル化部位を含まない。グリコシル化部位を含まない重鎖配列の1例は、図2Dおよび図2Fまたは図4Dならびに図4Fで示される。
【0081】
このような他の抗体は、例によってまたそれに限定されないが、ラット、マウス、ブタ、ウシ、ヒト、キメラ、ヒト化などの抗体、またはその断片あるいは誘導体である。
【0082】
ここで使用される「断片」という用語は、抗体の部分を意味するが、例に従ってこのような抗体の部分は、必ずしもそれに限定されないが、TRX1で認識される同じエピトープまたはそのいずれかの部分に結合するCDR、Fab、またはそのような他の部分を含む。
【0083】
ここで使用される「抗体」という用語は、ヒト化抗体TRX1により認識される同じエピトープまたはその部分に結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体、同じく抗体断片および誘導体、同じく組換え技術により調製される抗体、例えばキメラまたはヒト化抗体、一本鎖または二重特異性抗体、などを含む。「分子」という用語は、例に従いまた限定されることなく、抗体を擬態し、または抗体断片あるいはその誘導体の同じエピトープまたはその部分と結合するいずれかの源から誘導されるペプチド、オリゴヌクレオチドまたは他のそのような化合物を含む。
【0084】
本発明のもう一つの実施例は、TRX1抗体単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて同じエピトープ(またはその部分)と結合するTRX1抗体、または抗体、あるいはその誘導体または断片もしくは分子と同じエピトープ(またはその部分)より成るグループから選択される少なくとも1個の部材の有効量で移植片移植を受けるまたは既に受けている患者を処置する方法が提供されている。この処置は、望ましくは全あるいは無償TRX1抗体単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて実行される。
【0085】
一つの実施例において、抗体は、ヒト抗体の修飾された定常領域および軽鎖と重鎖フレームワーク領域およびCDR領域を含むヒト化抗体であるTRX1であり、ここで軽鎖および重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒト抗体の軽鎖および重鎖可変領域として一致し、またマウスモノクローナル抗体から誘導されるCDRsは、NSM4.7.2.4と名付けられる。TRX1抗体は図1で示される。図1Aは、TRX1軽鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図1Bは、TRX1軽鎖核酸配列を示す。図1Cは、ハイライトCDRsを持つTRX1軽鎖アミノ酸配列を示す。図1Dは、グリコシル化部位を含むTRX1重鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図1Eは、TRX1重鎖ヌクレオチド配列を示す。図1Fは、TRX1重鎖アミノ酸配列を示し、それはハイライトCDRsを持つグリコシル化部位を含む。
【0086】
もう一つの実施例において、抗体はTRX1であり、これはヒト抗体の修飾定常領域および軽鎖、重鎖フレームワーク更にCDR領域を含み、ここで軽鎖および重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒト抗体の軽鎖および重鎖可変領域のフレームワークに一致し、またマウスモノクローナル抗体から誘導されたCDRは、NSM4.7.2.4と名付けられる。TRX1抗体は、図3で示される。図3Aは、TRX1軽鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図3Bは、TRX1軽鎖核酸配列を示す。図3Cは、ハイライトCDRsを持つTRX1軽鎖アミノ酸配列を示す。図3Dは、グリコシル化部位を含むTRX1重鎖のアミノ酸およびDNA配列を含む。図3Eは、TRX1重鎖ヌクレオチド配列を示す。図3FはTRX1重鎖アミノ酸配列を示し、それはハイライトCDRsを持つグリコシル化部位を含む。
【0087】
TRX1抗体のもう一つの実施例は、図2で示される。図2Aは軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す。図2Bは、軽鎖核酸配列を示す。図2Cは、ハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す。図2Dは、重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す。図2Eは、重鎖ヌクレオチド配列を示す。図2Fは、ハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す。
【0088】
TRX1抗体のもう一つの実施例は、図4で示される。図4Aは、軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列を示す。図4Bは、軽鎖核酸配列を示す。図4Cは、ハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す。図4Dは、重鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図4Eは、重鎖ヌクレオチド配列を示す。図4Fは、ハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す。
【0089】
各図においては、アミノ酸残基1は、各重鎖および軽鎖でリーダー配列後の第1アミノ酸である。それは更に配列内でのFR1の第1残基である。
【0090】
本発明の目的に適したTRX1ヒト化抗体の調製は、ここでの教示から従来の技術に習熟した人にとっては明らかなものである。このような抗体は、当業者に公知の組換え技術により調製することができる。
【0091】
本発明の抗体は、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せてこのような免疫応答を阻害する有効量で抗体(またはその断片)を投与することで動物の免疫応答を阻害するのに使用することができる。
【0092】
例えばある場合には、治療薬を用いる処置は、治療薬に対する免疫応答を含む。このような治療薬の代表的な例として、レオプロおよびOKT3などのモノクローナル抗体、必ずしもそれに限定されないが、ゴシエ病用グルコセレブロシダーゼなどの代償療法のための酵素および因子VIIIなどの凝固因子、およびアデノウイルス誘導ベクターなどの遺伝子治療および遺伝子治療送達伝達体などがあげられる。
【0093】
本発明の一つの見地に従って、前に記載の抗体(またはこのような抗体の断片)は、このような治療薬で処置される患者に投与され、抗体(または断片)は治療薬に対し免疫応答を阻害する有効量で投与される。抗体は治療薬の投与の前に、またはそれと組合わせて、あるいはその投与の後で投与される。投与の方法は、必ずしもそれに限定されないが、特異的な徴候、特異的な治療薬および最適用量スケジュールを含む各種の因子に依存する。治療薬の投与の前に投与される場合には、抗体は治療薬の投与の約1時間乃至約10日前、望ましくは治療薬投与の約1時間乃至約24時間前に投与される。治療薬の投与の後に投与される場合には、抗体は治療薬投与の約1時間乃至約10日後、望ましくは治療薬投与の約1時間乃至約24時間後に投与される。
【0094】
投与される抗体の量、抗体が投与される用量スケジュールおよび回数は、治療薬および治療薬で患者を処置するために使用される処方に依存する。
【0095】
一般に抗体は、提供される用量当り0.1mg乃至3mgの量で使用されるが、霊長類に免疫寛容を誘導するに際しては、抗体は望ましくは前に記載の量で使用される。
【0096】
本発明の抗体は、更に自己抗原およびまたは外来抗原に対し、例えば移植片(例えば移植片拒絶)に対し、免疫応答を阻害するため、およびまたは移植片対宿主の免疫応答を阻害または改善するために使用することができる。
【0097】
本発明の抗体は、更に遺伝子治療産物に対する免疫応答、同じく遺伝子治療の有効性を制限するアデノウイルス誘導ベクターなどの遺伝子治療送達伝達体に対する免疫応答を阻害するために使用することができる。
【0098】
かくして宿主にある抗原への免疫応答は、TRX1抗体を抗原と共に投与することにより、阻害し、改善しまたは減少することができる。患者は器官移植片または骨髄移植片などの組織移植片を与えられ、およびその拒絶を阻害するために、移植片と共にTRX1抗体を与えられる。長期の特異的免疫寛容は、自己免役疾病を処置するために自己抗原または抗原に誘導することができる。
【0099】
免疫寛容を維持するために、持続的または周期的な抗原の存在が必要とされる。例えば、組織移植片は、それ自身に免疫寛容を維持するために抗原を供給する。アレルゲンなどの異質外来抗原の場合には、抗原「催促状」(抗原継続投与)を決まった間隔で与えることができる。
【0100】
本発明に従って、前に記載のタイプの抗体またはその断片あるいは分子は、T細胞の活性化および増殖を阻害し、細胞表面の機能的CD4発現の密度を減少させ、およびまたはシグナル伝達に影響を与えてこれによりCD4+Tリンパ球の機能性およびまたはCD4+Tリンパ球数を減少させるために、in vivo単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて投与することができる。
【0101】
かくして例えば、in vivoでの手順において、このような抗体は、免疫応答を予防およびまたは阻害し、それによりT細胞活性化おえび増殖を阻害するために投与される。
【0102】
本発明の一つの見地に従って、前に記載のタイプの抗体またはその断片あるいは分子は、細胞表面の機能的CD4+発現の密度を減少しおよびまたはシグナル伝達に影響を与え、かくしてCD4+Tリンパ球の機能性およびまたは供与者体細胞のCD4+細胞数を減少するために、ex vivoで単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて投与することができる。例に従い、また制限することなく、ex vivoでの手順において、このような抗体またはその断片あるいは誘導体もしくは分子は、移植にあたり移植片対宿主病の発症を予防するために、移植の前に供与体の骨髄に注入されることとなる。
【0103】
抗体またはその断片は、単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて薬理許容担体で一般に投与される。このような薬理担体の代表的な例として、通常の生理食塩水、緩衝液などを言及することができる。このような薬理担体は、従来の技術で公知であり、適切な担体の選択は、ここに含まれる教示から通常の知識を有する人の範囲内にあるものと見做される。
【0104】
本発明のTRX1抗体または他の抗体は、単独またはここに記載の薬剤、処置または方法と組合せて静脈内、皮下、または筋肉内投与でin vivoで投与される。
【0105】
前に記載したように、本発明のTRX1抗体または他の抗体は、単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて抗原に対する免疫応答を阻害する有効量でin vivoで投与される。本出願の目的のための「有効量」という用語は、望ましい効果を産生できる抗体量を意味する。一般にこのような抗体は、用量当り少なくとも0.1mgの量で投与される。それより少ない量でも使用できることも理解されねばならない。当初の処置後更に、前に記載の量は、続く処置の段階がもし必要であればその段階で減少される。発明の範囲は、このような量で限定されるものではない。しかし霊長類に免疫寛容を誘導するために、抗体は前に記載の量で使用されねばならない。
【0106】
本発明のTRX1抗体または他の抗体は、抗原に免疫寛容を誘導するために、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて採用することができる。ここで使用される「免疫寛容」という用語は、T細胞非応答が、攻撃誘発の場合にあってさえ、抗体処置の停止後においても抗原に対して持続することを意味する。しかしもし必要である場合には、このような免疫寛容を維持するために、抗体のブースターまたは追加抗原投与用量を与えることができる。
【0107】
T細胞の活性化を阻害する本発明の技術は、単独でまたは他の処置、薬剤、方法、例えばT細胞の活性化を阻害する他の処置、薬剤または方法、あるいは移植体拒絶または移植片対宿主病を阻害し、あるいは各種の自己免役疾病を処置する、などの他の処置、薬剤または方法と組合せて採用することができる。霊長類に免疫寛容を誘導する化合物と組合わせて使用されるこのような薬剤、処置または方法のいくつかの例は、必ずしもそれに限定されないが、リツキサンTM(ジェネテック);B細胞に特異的な抗体;限定されないがID4(リサーチ・ダイアグノスティクスを含むプラズマ細胞に特異的な抗体;セルセプトTM(ロシュ);シクロスポリン;ラパマイシン;抗CD40L;抗IL12;抗IL18;抗インターフェロンガンマ;プロテオソーム阻害薬;CXCR3拮抗薬;15デオキシスペルグアリン;FK506;CD2,CD8およびCD28などの共刺激分子に向けられるモノクローナル抗体並びに付着分子に向けられるモノクローナル抗体を含む。
【0108】
本発明の抗体は、更に例えば血液試料などの試料でCD4正細胞の存在を決定するための選択方法で採用される。このような方法においては、試料は分子または抗体と接触され、またCD4正細胞の存在が確認され、およびまたはCD4正細胞は、次いで試料から選択または単離することができる。
【0109】
望ましい実施例において、TRX1と同じエピトープに結合するTRX1抗体または抗体は、霊長類(とりわけヒト)での抗原に対する免疫寛容を誘導するために、単独またはここで記載の薬剤、処置または方法と組合せて採用される。
【実施例】
【0110】
本発明は、これから以下の実施例と関連して記載される。しかし本発明の範囲は、それにより制限されることを意図するものではない。
【0111】
実施例1
cDNAライブラリーが、製造メーカの示唆するプロトコルに従って、スーパースクリプトプラスミドシステム(ジブコ/BRL,カタログ番号82485A)を用いてマウスハイブリドーマNSM4.7.2.4から構築された。重鎖および軽鎖cDNAは、ラットハイブリドーマYTS177からのラット重鎖および軽鎖遺伝子cDNAをプローブとして使用するDNAハイブリダイゼーションにより、ライブラリーからクローンされた。
【0112】
YTS177のラット重鎖および軽鎖遺伝子cDNAsは、BamHI/Sa1I断片として発現ベクターpHA Pr−1から単離され、32Pで標識され、標準分子生物学的手法を用いてNSM4.7.2.4.cDNAライブラリーをスクリーニングするために個別に使用された(サムブルック,他,分子クローニング,実験室マニュアル,第3版,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス,コールド・スプリング・ハーバー,ニューヨーク(2001年);オースベル,他、分子生物学における現行のプロトコル,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ,ニューヨーク(2001年).NSM4.7.2.4.cDNAライブラリーから誘導されたcDNAsの配列分析は、NSM4.7.2.4重鎖がマウスガンマ−1サブクラスであり、NSM4.7.2.4軽鎖がカッパであることを確認した。NSM4.7.2.4重鎖および軽鎖V領域(それぞれVHおよびVL)はヒトVHおよびVL領域に「ベストフィット」すなわちマウスのそれとフレームワーク領域で最高の類似性を持つように変形された。軽鎖として、79%の配列類似性を持つヒト抗体HSIGKAW(EMBLよりのもの)が使用された(LA スパッツ他,1990年,免疫学ジャーナル,144巻:2821−2828ページ).HSIGKAW VLの配列は以下の通りである。
【0113】
【0114】
フレームワーク1の出発点D(アミノ酸残基)
QのGへの変化
重鎖として、74%の配列類似性を持つヒト抗体A32483(ジェンバンクよりのもの)が使用された(ラリック,他,Biochem.Biophys.Res.Comm.,160巻;1250−1256ページ(1989年))。A32483 VHの配列は以下の通りである。
【0115】
【0116】
フレームワーク1の出発点Q(アミノ酸残基)
ヒト化過程として、抗CD4軽鎖クローン77.53.1.2(1キロベースの挿入サイズ)および抗CD4重鎖クローン58.59.1(1.7キロベースの挿入サイズ)が、Sa1I/Not I断片としてpSportベクターから単離されたcDNAライブラリーおよび挿入片から選択され、配列化のための一本鎖DNAおよび突然変異誘発のための鋳型を産生するために、M13mp18ベクターにクローンされた。NSM4.7.2.4のヒト化は、製造業者指示のプロトコルに従って、エイマシャム・インターナショナルのキット(RPN1523)を用いてマウスcDNAの部位指向突然変異誘発で行われた。
【0117】
VL遺伝子フレームワーク領域の突然変異誘発は、29乃至76塩基の長さにわたる5個のオリゴヌクレオチドを用いて行われた。使用されたオリゴヌクレオチドは以下のものであった。
【0118】
【0119】
オリゴヌクレオチドは、リン酸化され、下記の手順に従って変化を導入するために、突然変異誘発が各ステップで2個以下のオリゴヌクレオチドを用いて3ステップで行われた。
【0120】
(1)リン酸化突然変異体オリゴヌクレオチドの一本鎖DNA鋳型へのアニーリング
(2)重合
(3)一本鎖DNAを除去するための濾過
(4)Nci Iでの非突然変異鎖のニッキング
(5)Exo IIIでの非突然変異鎖の消化
(6)ギャップDNAの再重合
(7)コンピテントJM101の形質転換
(8)クローンの配列化
突然変異は、M13プライマー−20および−40、ならびに突然変異誘発プライマー#1999および#2000を用いて、一本鎖DNA配列化により確認された。
【0121】
可変領域の5′末端でのSal I部位は、Hind III/Kpn I他断片としての可変領域のCAMPATH−1Hの軽鎖定常領域へのクローニングを許すことで、リンカーオリゴヌクレオチド#2334および#2335によりHind IIIに変更された。
【0122】
【0123】
VH遺伝子フレームワーク領域の突然変異誘発は、24乃至75塩基長にわたる5個のオリゴヌクレオチドを用いて行われた。使用されるオリゴヌクレオチドは以下の通りである。
【0124】
【0125】
突然変異誘発は、変化を導入するため時に応じて2個以下のオリゴヌクレオチドを用いて、前に記載のように再び軽鎖に対して行われた。突然変異は、M13プライマー−20および−40同じく突然変異誘発プライマー#2002および#2004を用いる一本鎖DNA配列化により確認された。
【0126】
プライマー#2002は、開始クローン58.59.1でのリーディングフレームワークのエラーを訂正するために使用された。
【0127】
【0128】
プライマー#2380は、最初の配列化で外された#2004を加えた余分の突然変異を訂正するために使用された。
【0129】
【0130】
軽鎖と同じように、重鎖5′Sa1 I部位は、Hind III/Spe I(プライマー#2007により導入された部位)断片として重鎖可変領域のCAMPATH−1Hの重鎖定常領域へのクローニングを許すことで、リンカーオリゴヌクレオチド#2334および#2335を用いてHind IIIに変更された。
【0131】
重鎖の構築
DNAの下記の試料が使用された。
【0132】
1.プラスミド1990
pUC18にクローンされたヒトガンマ−1重鎖定常領域遺伝子
(ウエルカム・ファンデーション・リミテッド;マーティン・シムズより入手)
2.プラスミド2387
ヒトフレームワーク領域およびマウスガンマ1定常領域を含むNSM4.7.2.4の再形成重鎖
【0133】
再形成CD4重鎖でのSal I部位は、Hind III部位に変更された。可変領域遺伝子は、Hind III/Spe Iでの消化により切りとられ、完全なヒト化重鎖(プラスミド2486)を与えるためにプラスミド1990の定常領域遺伝子と結合された。重鎖遺伝子はHind III/EcoR Iでこのプラスミドから切断され、発現ベクターpEE6と結合された。
【0134】
軽鎖の構築
DNAの下記の試料が使用された
1.プラスミド2028
SalI/BanH I制限部位でM13mp18にクローンされたCAMPATH−1H軽鎖遺伝子
2.プラスミド2197
ヒトフレームワーク領域およびマウスカッパ定常領域を含むNSM4.7.2.4の再形成軽鎖のKpn I部位は既にこの遺伝子の可変部分と定常部分の間に導入されている。
【0135】
Kpn I制限部位は、プラスミド2197にある部位と対応するCAMPATH 1H軽鎖遺伝子に導入され、EcoR I部位は定常領域の3′末端で導入された。定常領域遺伝子は、Hind III/Kpn Iの消化によりこのプラスミド(2502)から切り取られた。
【0136】
その間にプラスミド2197のSal I部位は、Hind III部位に変更された(このステップは繰り返されねばならなかったが、その理由は、フレームシフト突然変異が故意にではなく初めて導入されたためであった)。新プラスミド(2736)は、Hind III/Kpn Iで消化された。CD4可変領域断片は、完全ヒト化軽鎖(プラスミド2548)を与えるために、プラスミド2502からのカッパ定常領域遺伝子を含むプラスミドにクローンされた。軽鎖遺伝子はHind III/EcoR Iでこのプラスミドから切断され、プラスミド2798を与えるために発現ベクターpEEと結合された。
【0137】
重鎖と軽鎖の結合およびNSO細胞での発現
重鎖遺伝子はSal I/Bgl IIでの消化によりpEE6ベクターから切り取られ、BamH I/Sal Iで消化された軽鎖pEE12にクローンされた。
【0138】
最終ベクター構築物は、700塩基対軽鎖、1400塩基対重鎖、pEE6の2300塩基対断片およびpEE12の7000塩基対断片を含む予期された断片の存在を知るために、Hind III,EcoR I,Sal I,BanH I,Bg I IIおよびSpe Iでの制限消化により調べられた。
【0139】
pEE12ベクターは、Sal Iでの消化により線形化され、標準プロトコル(セルテック、1991)に従って電気穿孔法によりNSO細胞に形質移入されたが、DMEMよりもIMDMをベースとして選択培地は若干修飾された。形質移入物はグルタミンを欠いた培地で、推奨されたように透析FCS,リボヌクレオシド、グルタミン酸、およびアスパラギンを補充して選択された。
【0140】
形質移入混合物は3個の96ウエル平板で培養され、内36個の増殖中のウエルが試験され、5個はヒト重鎖および軽鎖の産生が強く正であった(他の18個は一方または他方が正であるか、または両方について僅かに正であった。)。
【0141】
SDG/B7B.A.7と名付けられたクローンが選択され、凍結保存されたが、この野生型抗体にはこれ以上の特徴付けは行われなかった。
【0142】
エフェクター機能を廃止するよう指示された突然変位体IgGl抗体の構築
各種臨床試験で報告された他のCD4抗体の副作用に関する懸念の理由から、Fc受容体と係合する可能性を避けることが望ましいと考えられた。ヒトIgG4は、最小のFc結合能力または補体活性能を持つものと考えられる。しかし実験によれば、それはいくつかの個体にあるFc受容体と係合し(グリーンウッド,他、Eur.J.Immunol.,23巻,1098−1104ページ,1993年)、またCAMPATH−1Hに対するヒトIgG4変異体についての臨床研究は、in vivoで細胞を死滅させる能力を提示した(アイザック,他,Clin.Exp.Immunol.,106巻、427−433ページ(1996年))ことが示された。Fc受容体への結合の可能性を排除するために、構築物はIgGl重鎖定常領域で突然変異が作られた。
【0143】
TRX1は、図1Dおよび図1E、また図3Dおよび図3Eで示されるように、Leu236からAla、およびGly238からAlaへの突然変異体を持つ。これらの特殊な残基が選ばれたのは、IgGに対するヒトFc受容体の3個の型すべてへの結合を最大限途絶させると予測されたためであった。いずれかの突然変異はFcRI(ウーフ、他、Mol.Immunol.332巻,563−564ページ,1986;ダンカン,他,Nature,332巻、563−564ページ,1988年;ランド,他,J.Immunol.,147巻,2657−2662ページ,1991)またはFcRII(ランド,他,1991;サーメイ、他、Mol,Immunol.,29巻、633−639ページ、1992年)への結合を減少させるのに十分であったが、一方Gly238からAlaへの突然変異は、Fc RIII(サーメイ、他、1992年)への結合に最大の効果を有している。
【0144】
DNAの下記の試料が使用された
1.プラスミド2555およびプラスミド2555Mut
Hind III/Spe I制限部位でpEE6発現ベクターにクローンされたNSM4.7.2.4のヒト化VH領域。プラスミド2555は、次いで図1Dおよび図1E、または図3Dおよび図3Eで示されるアミノ酸残基Asn101がAsp101に変化するように、部位指向突然変異誘発により突然変異された。
【0145】
2.プラスミド2798
Hind III/EcoR IでpEE12発現ベクターにクローンされた約700塩基対を与えるヒトカッパ定常領域に会合されたNSM4.7.2.4のヒト化VH領域。
【0146】
3.プラスミドMF4260
Leu236からAla、およびGly238からAlaへの突然変異並びにフレームワーク領域4に導入されpUC18にクローンされたSpe I制限部位を持ちヒト化CD18VH領域と会合されたヒトIgGl重鎖。
【0147】
SpeI制限部位の目的は、異なる可変領域の分離と組換えを可能にすることであろう。
【0148】
CD18VH領域は、Spe IおよびHind IIIでの消化によりプラスミドMF4260から切り取られ、今や関連重鎖定常領域のみを持つ残存ベクターは、ジェネクリーンを用いて精製された。それは、同じようにプラスミド2555Mutから単離されたNSM4.7.2.4のヒト化VH領域DNAと連結された。産物は「シュア(Sure)」細胞に形質転換するために使用され、またコロニーは予期された1400塩基対完全重鎖挿入断片の存在を調べられた。
【0149】
完全VHおよび定常領域挿入断片は、Hind IIIおよびEcoR Iでの消化によりpUCベクターから切り取られた。1400塩基対断片はキエックスII(キアーゲン)を用いて精製され、次いで前に同じ酵素から切断されたベクターpEE6に連結された。
【0150】
次ぎのステップは、pEE6ベクターからCD4重鎖遺伝子を切除し、それを、ヒト化CD4軽鎖遺伝子を既に含むpEE12(プラスミド2798)にクローンすることであった。pEE6ベクターはSal IおよびBgI IIで消化され、pEE12ベクターは再結合に適切な部位を創り出すためにSal IおよびBamH Iで消化された。
【0151】
最終ベクター構築物は、予期される断片、すなわちpEE6の700塩基対軽鎖、1400塩基対重鎖、2300塩基対断片、およびpEE12の7000塩基対断片の存在を確認するために、Hind III,EcoR I,Sal IおよびSpe Iの制限消化で調べられた。
【0152】
pEE12ベクターは、Sal Iでの消化により線形化された、前記の電気穿孔法でNSO細胞に形質移入された。形質移入混合物は、6個の96ウエル平板で培養され、試験された90増殖ウエルですべてがヒト重鎖および軽鎖の産生に正であった。この段階でpEE12ベクターDNAの試料はSal Iで消化され、エタノールで沈殿し、セラピューティック・アンティボディ・センター(TAC)に移された。
【0153】
最終形質移入のための標的細胞
NSO細胞は、ECACCから直接得られた(クローンCB1782,マクセッション番号85110503)。マスターセルバンク(MCB)は、英国、オクスフォード、チャーチヒルホスピタル、セラピューティック・アンティボディ・センターで調製された。
【0154】
形質移入および最終トランスフェクタントの選択
pEE12ベクターは前に記載の電気穿孔法により、MCBからNSO細胞に形質移入された。2x107細胞全体が80μgの線形プラスミドDNAで形質移入され、最終量は2.0mlであった。形質移入混合物は12個の96ウエル平板に移され、標準プロトコルに従って、選択培地で培養された(セルテック,グルタミンシンセターゼ遺伝子発現システム、バージョン2−骨髄腫細胞からの発現、改訂6版)。6個の平板は10メチオニンスルホキシイミン(MSX)を含む選択培地を受け入れた。
【0155】
抗体の精製
培地上澄みは下記の3ステップでバイオパイロットクロマトグラフィーシステムを用いて精製される。
【0156】
(1)タンパク質A−セファローズ・ファスト・フローカラムでのアフィニティークロマトグラフィー
(2)S−セファロース・ファスト・フローでのイオン交換クロマトグラフィー
(3)スーパーデックス20でのサイズ排除クロマトグラフィー
精製産物は濾過され、単一バイオコンテナーにプールされた。
【0157】
精製工程を通して、システムが無菌を保つように注意が払われる。すべての緩衝液と試薬は0.2ミクロン膜フィルターを通され、精製産物もプールの前に0.2ミクロンフィルターを通される。抗体1バッチが加工された後、全クロマトグラフィーシステムおよびカラムは0.5MのNaOHで殺菌され、無菌PBSで洗浄され、20%エタノールに貯蔵される。それが再使用される前に、エタノールは無菌PBSで洗浄され、完全な試験走行が行われる。緩衝液の試料とカラム溶離液は内毒素水準で調べられる。
【0158】
実施例2
ヌクレオチド配列から出発するTRX1抗体の構築
ヒト定常領域のクローニング
重鎖定常領域
ヒトガンマ1重鎖定常領域(Ig Gl)は、下記のプライマーセットを使用してヒト白血球cDNA(QUICK−Clone TM cDNA,カタログ番号7182−1,クロンテック)から増幅され、pCR−スクリプト(ストラータジーン)にクローンされる。pCR−スクリプトにヒトガンマ1重鎖定常領域を含むプラスミドは、pHCγ−1と命名される。
【0159】
【0160】
非Fc結合突然変異(Leu236Ala,Gly238Ala)は、下記のプライマーおよびクロンテックからのトランスフォーマーTM部位指向突然変異誘発キット(カタログ番号K1600−1)を使用する部位指向突然変異誘発により重鎖定常領域で作られる。pCR−スクリプトにヒトガンマ1重鎖非Fc結合突然変異体定常領域を含むプラスミドは、pHCγ−1Fcmutと命名される。
【0161】
【0162】
軽鎖定常領域
ヒトカッパ軽鎖定常領域は、下記のプライマーセットを使用してヒト白血球cDNA(Quick−CloneTM cDNA,カタログ番号7182−1,クロンテック)から増幅され、pCR−スクリプト(ストラータジーン)にクローンされる。pCR−スクリプトにヒトカッパ軽鎖定常領域を含むプラスミドは、pLCκ−1と命名される。
【0163】
【0164】
TRX1可変領域の合成、構築およびクローニング
重鎖および軽鎖可変領域は、全可変領域を含む一連の部分的にオーバーラップする相補的合成オリゴヌクレオチドから構築される。各可変領域で使用されるオリゴヌクレオチドは、以下で示される。
【0165】
重鎖可変領域合成オリゴヌクレオチド
【0166】
【0167】
【0168】
HPLC精製と有機溶媒の除去の後、オリゴヌクレオチドはTEpH8.0に再懸濁されリン酸化される。それぞれの可変領域セットでの各オリゴヌクレオチドのアリコートは、次いで等モル量に組合される。オリゴヌクレオチド混合物は、68℃で10分加熱され、その後ゆっくりと室温まで冷却される。アニーリングされたオリゴヌクレオチドは、ついで二本鎖可変領域DNAを産生するよう拡張される。この拡張のため、dNTPsが0.25mMの最終濃度に加えられ、次いで5X T4 DNAポリメラーゼの適当量[トリスアセテート,pH7.9,165nM,酢酸ナトリウム330mM,酢酸マグネシウム50mM,BSA500g/ml,DTT2.5mM]およびT4 DNAポリメラーゼ,4ユニットが続けて加える。混合物は37℃で1時間培養され、次いでT4 DNAポリメラーゼの熱不活化が65℃で5分続く。
【0169】
二本鎖DNAはエタノール沈殿させ、同量のTE pH8.0で再懸濁される。適当量の5X T4 DNAリガーゼ緩衝液[トリス塩酸,pH7.6,250mM,塩化マグネシウム50mM,ATP5mM,DTT5mM,25% w/vポリエチレングリコール−8000]が次いで二本鎖DNAに加えられ、またT4 DNAリガーゼ2ユニットが続き、混合物は拡張断片を連結するために1時間37℃で培養された。次いでT4 DNAリガーゼは、65℃で10分加熱不活化される。可変領域DNA断片は、次いでフェノール抽出、エタノール沈殿、TE,pH8.0に再懸濁され、pCR−スクリプト(ストラータジーン)にクローンされる。重鎖可変領域を含む生成プラスミドはpHV−1と命名され、軽鎖可変領域を含むプラスミドはpLV−1と命名された。
【0170】
最終重鎖および軽鎖発現ベクターは、pcDNA3.1で構築される(インバイトロジェン)。重鎖発現ベクターについては、Fc突然変異定常領域は、Spe IおよびEcoR Iでの消化によりプラスミドpHC−1Fcmutから放出され、アガロースゲル電気泳動により単離される。重鎖可変領域は、Hind IIIおよびSpe Iでの消化によりプラスミドpHV−1から放出され、アガロースゲル電子泳動により単離される。同一モル量の2個の断片は、通常の分子生物学手法を用いて、pcDNA3.1(+)(インバイトロジェン)のHind III/EcoR I部位に連結される。生成TRX1重鎖発現ベクターは、pTRX1/HCと命名される。
【0171】
同様に、軽鎖発現ベクターについては、軽鎖定常領域は、Kpn IとHind IIIでの消化によりプラスミドpLC−1から放出され、次いでアガロースゲル精製が行われる。軽鎖可変領域は、EcoRIおよびKpn Iでの消化によりpLV−1から放出され、次いでアガロースゲル精製が続く。等モル量の2個の軽鎖断片は、通常の分子生物学手法を用いて、pcDNA3.1(−)(インバイトロジェン)のEcoR I/Hind III部位に連結され、TRX1軽鎖発現ベクターpTRX1/LCを産出する。
【0172】
TRX1抗体の産生については、TRX1重鎖およびTRX1軽鎖発現プラスミドは通常の分子生物学手法を用いてCHO細胞に同時形質移入される。
【0173】
実施例3
図2A,図2C,図2Dおよび、図2Fで示されるヒト化抗体は、実施例1のものと同じ手順で産生される。ヒト化抗体は、非グリコシル化(非糖鎖付加)抗体である。
【0174】
実施例4
図4A,図4C,図4Dおよび、また図4Fで示されるヒト化抗体は、実施例1のものと同じ手順で産生される。ヒト化抗体は、非グリコシル化(非糖鎖付加)抗体である。
【0175】
実施例5
混合リンパ球反応(MLR)は、外来ヒト組織適合抗原を認識する特発されたヒトリンパ球を生成するために使用される。この反応を創り出すために、ヒト末梢血リンパ球がフィコール密度勾配遠心分離法または類似の方法を用いて異なる2個の個体(供与体Aと供与体B)からヘパリン化全血から単離された。供与体Bからのリンパ球は、血清はないがマイトマイシンC50ug/mlを含むRPMI 1640培地で107/mlに調節される。細胞は37℃で30分培養され、次いで供与体A血漿10%でRPMI 1640で3回遠心分離でマイトマイシンCを持つ培地を洗浄される。マイトマイシンCで処理されなかった供与体Aからの細胞は、供与体A血漿10%でRPMI 1640で4x106/mlに調節される。洗浄後、供与体BからのマイトマイシンC処理リンパ球は、供与体A血漿10%でRPMIで4x106/mlに調節される。供与体Aと供与体Bの細胞の等量が混合され、適切な大きさの組織培養フラスコで試験される化合物、あるいは薬剤、処置または方法と組み合わされた前記化合物(「試験化合物」)に配置される。試験化合物のあるまたはないフラスコは、次いで37℃で空気中炭酸ガス濃度5%で7−10日間培養される。これは一次混合リンパ球反応である。
【0176】
一次MLRにおける細胞が活性化され、3−7日の間に分裂を開始し、活性増殖の期間に続いて細胞がより休止状態に戻るのを観察することができる。この期間は変化させることができるが、細胞は通常7−10日の間に休止に戻る。一度細胞が休止にあると見えれば、試験化合物ありまたはなしの一次MLRフラスコから得た細胞は、遠心分離で回収され、4x106mlで供与体A血漿10%を持つRPMI 1640に再懸濁することができる。新鮮PBLは供与体Bからのヘパリン化全血からフィコール密度勾配により調製されたマイトマイシンCで再び不活性化され、不活性化供与体B細胞は、供与対A血漿10%を持つRPMI 1640で4x106/mlに調節される。二次MLRに対して、等量の一次MLR細胞(試験化合物不在下で行われた一次MLRからの細胞)は、マイトマイシン不活化供与体B細胞と混合される。
【0177】
一次MLR細胞(試験化合物不在下で行われたMLRから得られた細胞)が、緑蛍光染料であるCFSE,これは生体細胞に移入され、そこで酵素により作用を受け、次いで細胞タンパク質と反応するが、このCFSEで標識されると、標識細胞で時間にわたり経験した細胞分裂数は、各細胞と結合する緑標識の減少に反映される。もしCFSE標識MLR細胞が、試験化合物誘導MLR細胞に対して2:1乃至10:1MLRの比率で試験化合物が処理一次MLRから誘導れた細胞に加えられた二次MLRで刺激される場合には、CFSE標識MLR細胞増殖の阻害が、試験化化合物誘導細胞の不在下で二次MLRで刺激されるCFSE標識MLR細胞の増殖と対比した場合に、刺激の3−4日以内で二次MLRで観察されるであろう。
【0178】
一次MLRおよび二次MLRで産生された細胞(ならびに対照MLRで提供された細胞)は、前記記載のCD4+CD25+細胞を分析される。
【0179】
対照と比較してTRX1が前に記載の通り試験された場合、CD4+CD25+細胞は一次MLRで60%以上減少し、二次MLRでは20%以上減少し、また二次MLRでは、対照と比較してIL−2,IL−4,IL−12の産生は基本的に除去され、IL−5,IL−13,IFNガンマおよびTNFアルファの産生は40%以上も削減された。
【0180】
実施例6
非枯渇抗CD4モノクローナル抗体であるTRX1の使用による非ヒト霊長類での抗原特異的免疫寛容の誘導は、下記の研究で実証された。ヒヒ(Papio anubus)が任意に3匹の動物の7グループに分割された。7グループは4個の実験グループ,4,6,7および8より成り、3個の対照グループ1,5および9が指定された。本研究は2フェーズより成り、まず免疫化/免疫寛容フェーズがあり、次いで攻撃誘発フェーズであった。
【0181】
本研究の免疫化/免疫寛容フェーズに関して、グループ4,6,7および8は第0日、第4日および第8日それぞれ1用量で抗原1(生理食塩水で10mg)を3用量使って免疫化された。抗原1は最初の用量が静脈内(iv)、続くすべての用量が皮下(SC)で投与される多価集合体ホースIgG(抗蛇毒素)である。プロトコルのこのフェーズの間、グループ4,6,7および8は、更に非枯渇抗CD4モノクローナル抗体、TRX1の4用量を以下の通り静脈内で受けた。すなわちグループ4は、第1日、第4日、第8日および第12日に20mg/Kgの4用量を受け入れた。グループ6は、第1日、第3日、第8日および第12日にTRX1の1mg/Kgを受けた。グループ7は、第1日、第3日、第8日および第12日に10mg/Kgを受けた。グループ8は、第1日、第3日、第8日および第12日に40mg/Kgを受けた。
【0182】
対照グループ1および5は、プロトコルの免疫化/免疫寛容フェーズの間に下記の通り処置された。グループ1は、抗原1を10mg/Kgで3用量を受け、第0日、第4日および第8日に各1用量であった。グループ5は、20mg/KgのTRX1抗体の4用量を静脈内で受け、第1日、第4日、第8日および第12日各1用量であった。グループ9は40mg/KgのTRX1抗体を静脈内で4用量受け、第1日、第4日、第8日および第12日各1用量であった。
【0183】
血液は、ELISAによるTRX1の血清水準、循環リンパ球サブセット水準に対するTRX1処置の薬力学効果、同じくフローサイトメトリーによるCD4受容体占有率、ならびにELISAによる抗原1のヒヒ抗体応答などを評価するために、抗原1およびまたはTRX1の各注入の前、およびその1週間後に収集された。
【0184】
抗体価(抗体力価)などで測定されるグループ1,4,6,7および8の研究で最初の68日間にわたる抗蛇毒素の免疫応答が図5で示される。
【0185】
本研究の改正誘発フェーズは、TRX1の血清水準が検出不能水準に達してすぐ開始された。攻撃誘発フェーズとしては、すべてのグループのすべての動物は、抗原1(10mg/Kg、皮下)および抗原2(1.7ml/Kg)で(第68日に)攻撃誘発された。抗原2は、1用量で静脈内に与えられるヒツジ赤血球細胞の10%生理食塩水である。抗原1による攻撃誘発は、対照グループ5および9、ならびに試験グループ4および8に対し、第95日および第135日に反復された。血液は、抗原1、TRX1の血清水準、および抗原1ならびに抗原2に対するヒヒ抗体応答を評価するために、各攻撃誘発前に収集された。
【0186】
図6は、最初の攻撃誘発(第68日−第95日)後に、すべてのグループに対して抗体価の測定による抗蛇毒素に対する免疫応答を示す。図7は、攻撃誘発1、攻撃誘発2、および攻撃誘発3の行われた後、グループ1,4,5,8および9に対する抗体価の測定による抗蛇毒素に対する免疫応答を示す。
【0187】
ヒツジ赤血球細胞に対するグループ1,4および5の免疫応答の結果は、図8で示される。
【0188】
すべての特許、刊行物(公開特許出願を含む)、寄託、アクセッション番号、およびデータベースアクセッション番号は、あたかも各特許、刊行物、寄託アクセッション番号、およびデータベースアクセッション番号が、特異的かつ個別的に引用例としてここに組み込まれるものと同じ範囲で、引用例としてここに組み込まれる。
【0189】
実施例7
薬剤、処置または方法と組合されたTRX1の投与による免疫寛容の誘導は、下記の通り例示される。必ずしも限定されないが、セルセプトTM(Cell CeptTM)などの薬剤、処置または方法は、必ずしもそれに限定されないが齧歯目などの哺乳網への免疫寛容を誘発するために、必ずしもそれに限定されないが、TRX1などの本発明の化合物と連係して使用することができる。
【0190】
必ずしもそれに限定されないが、C57BL6などの齧歯目のグループは、それに対し免疫寛容が必要とされるヒト免疫グロブリンG(hIgG)などの抗原の特発用量で処置することができる。hIgGの適切な単一用量(例えば2mg/Kg)は、例えば免疫寛容処方の24日前に静脈内注射により与えられるであろう。
【0191】
第25日に、免疫寛容フェーズは、マウスがTRX1またはTRX1とセルセプトTMの組合せで、またhIgGの追加用量の投入で処置されることで開始する。用量処方は下記の通りである。グループIは、第1日、第3日、第5日、第7日、第9日および第11日に50mg/Kgの用量でTRX1単独で与えられる。グループIIは、前記のTRX1に加えて、第2−第14日にセルセプトTM(50mg/Kg)の注射を受ける。グループIIIは、前記の用量でセルセプトTMのみを受ける。グループI,IIおよびIIIは、前記の用量に加えて、第0日、第4日および第8日にhIgGを10mg/Kgで受ける。グループIVは前記の用量でhIgGのみを受ける。すべての用量は、例えば静脈内注射により与えられるであろう。
【0192】
攻撃誘発フェーズは、各グループが例えば5mg/KgでhIgGの静脈内注射を与えられる第118日に開始する。血清が集められ、処置された動物がhIgGに対する抗体応答を仕掛けることができるかどうかを確認するために、数多くの従来の技術で認められた方法のいずれかで血清は評価される。追加攻撃誘発は、例えば5mg/KgのhIgGおよび5mg/Kgのオボアルブミンの静脈内注射を用いて第152日および第180日に仕掛けられる。もし動物がhIgGに免疫寛容化された場合には、処置されたグループ(グループI,IIおよびIII)でのhIgGに特異的な抗体水準は、対照グループ(グループIV)と比較して減少することであろう。
【0193】
しかし本発明の範囲は、前に記載の特異的な実施例に限定されるものでないことは理解されねばならない。本発明は特に記載されたもの以外にも実施することができ、またそれでも冒頭に掲げた請求範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1A】TRX1抗体の第1実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図1B】TRX1抗体の第1実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図1C】TRX1抗体の第1実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図1D】TRX1抗体の第1実施例のグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図1E】TRX1抗体の第1実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図1F】TRX1抗体の第1実施例のハイライトCDRsを持ちグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸配列を示す図
【図2A】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図2B】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図2C】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図2D】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図2E】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図2F】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す図
【図3A】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列示す図
【図3B】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図3C】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図3D】TRX1抗体のもう一つの実施例のグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図3E】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図3F】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持ちグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸配列を示す図
【図4A】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図4B】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図4C】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図4D】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図4E】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図4F】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す図
【図5】抗蛇毒素のみまたはTRX1抗体を組合せたものを与えられたヒヒグループ研究の最初の68日間(すなわち免疫寛容化フェーズ)での抗蛇毒素に対する免疫応答を示す図
【図6】攻撃誘発の68日前に抗蛇毒素のみ、またはTRX1を組合せて与えられたヒヒグループに対する抗蛇毒素およびヒツジ赤血球攻撃誘発に続く抗蛇毒素に対する免疫応答を示す図
【図7】最初の攻撃誘発の68日の後に抗蛇毒素のみまたはTRX1抗体を組合せて与えられたヒヒグループに対する各3回の抗蛇毒素の攻撃誘発に続く抗蛇毒素に対する免疫応答を示す図
【図8】抗蛇毒素に対するTRX1免疫寛容化後のヒツジ赤血球への免疫応答を描く図
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年6月14日付け英国出願番号0114517.6号の優先権を主張する合衆国出願番号10/171,452号(係属中),2001年9月20日付英国出願番号0122724.8号,2001年10月19日付合衆国暫定出願番号60/345,194号,2002年4月18日付合衆国暫定出願番号60/373,470号,および2002年4月18日付合衆国暫定出願番号60/373,471号の継続出願であり、これらの内容は本発明の引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、抗原に対する免疫応答を阻害し、予防しまたは改善するために適用可能である。このような抗原に対する免疫応答の阻害、予防または改善は、抗原に対する免疫寛容を誘導することを含む。本発明は、更に免疫寛容誘導、およびまたはT細胞活性化および増殖の予防または阻害および、より詳細には霊長類への免疫寛容の誘導を含む。
【0003】
外来抗原または組織、あるいは自己抗原または組織に対する免疫寛容は、さもなくば正常、成熟免疫系が特異的にその抗原/組織に攻撃的に応答できず、従って、それは正常(非疾病)体組織/成分のように扱う状態であり、しかも同時にそれは、外来または疾病抗原/組織に対し攻撃的に応答することができ、それらに対し免疫系は、自己免疫寛容の自然な過程により、またはin vivoでの免疫寛容許容環境を創出することにより、特異的に免疫寛容化されてきていなかった。
【発明の開示】
【0004】
本発明の一つの見地に従って、1個の化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せの使用により、免疫寛容を誘導する一つのプロセスが提供され、ここで化合物または組合わせは、in vitroで試験された場合にある種の特性を有し、望ましい実施例における前記化合物の限定されない例としては、CD4抗体が存在する。
【0005】
「少なくとも2個の化合物の組合せ」という用語は、化合物が相互に混合されて投与されねばならない、ということを意味するものではないことは理解されねばならない。かくして、このような組合せでの、またはそれを使用することによる処置は、化合物の混合物、または化合物の別個の投与を包含するものであり、また同じ日あるいは別の日での投与も含む。かくして「組合せ」という用語は、2個またはそれ以上の化合物が、個別にあるいは相互に混合されるかのいずれかで処置のために使用されることを意味する。「化合物」という用語は、広い感覚で使用されており、遺伝子治療で使用されるような物質(例えば治療タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター)などの物質を包含する。
【0006】
本発明のもう一つの見地に従って、新規なCD4抗体およびその使用法が提供される。
【0007】
本発明の更なる見地に従って、霊長類に免疫寛容を誘導するための1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せが提供される。
【0008】
本発明の更なる見地に従って、薬剤、処置または方法と組合せた新規なCD4抗体が提供される。
【0009】
本発明の更なる見地に従って、1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せの使用により、霊長類での免疫寛容を誘導するプロセスが提供され、ここで化合物または組合せは、霊長類でのこのような免疫寛容を誘導する用量処方の使用によるある特性を持ち、望ましい実施例での前記化合物の限定されない例としてはCD4抗体がある。
【0010】
本発明の更なる見地に従って、1個またはそれ以上の抗原に対する免疫寛容を誘導するのに有用な化合物、または化合物の組合せを同定するためのスクリーニングまたは試験が提供される。
【0011】
本発明の更なる見地に従って、必ずしもそれに限定されないが、移植片拒絶、移植片対宿主病、必ずしもそれに限定されないが、慢性関節リュウマチ、糖尿病、および多発性硬化などを含む自己免疫疾患、炎症性過程と関連する炎症性疾病と疾患、アレルギー、アナフィラキシー、およびアナフィラキシーと関連する疾病、喘息、がん、および必ずしもそれに限定されないが、ウイルス性感染を含む感染症などを含む疾病または病的状態と関連する症状を処置し、治療しまたは改善する新規な方法が提供される。
【0012】
本発明の更なる見地に従って、治療薬、例えばタンパク質、ペプチド、細胞、遺伝子治療薬などの治療薬に免疫寛容を誘導する新規な方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一つの見地に従って、以下に記載の通り1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せの使用により、抗原に対し霊長類を免疫寛容にするプロセスが提供される。化合物、または組合せは、霊長類に免疫寛容を誘導するのに有効な量および有効な用量処方に従って投与される。化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せは、化合物、または前記組合せが不在の混合リンパ球反応(MLR)と比較して一次混合リンパ球反応に存在する場合に、混合リンパ球反応から生じるCD4およびCD25(CD4+CD25+細胞)両方に正である細胞量を減少させる化合物、または組合せである。望ましい実施例において、化合物、または前記組合せは、このようなCD4+CD25細胞を少なくとも40%および望ましくは少なくとも60%、またより望ましくは少なくとも70%減少させる化合物、または前記組合せである。
【0014】
望ましい実施例におい、このような化合物、または前記組合せは、一次MLRで産生されるCD4+CD25+細胞を減少させることで(化合物、または薬剤、処置あるいは方法と組合せた前記化合物にこれまで露出されなかった細胞で実行された)一次混合リンパ球反応を阻害する細胞集団を産生する。望ましい実施例において、少なくと10%の減少があり、望ましく少なくとも20%の減少がある。ここで記載された混合リンパ球反応を行うプロトコルは、実施例5に記載されている。
【0015】
更に、望ましい実施例において、化合物、または前記組合せは、一次混合リンパ球反応で産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させ、細胞集団が二次混合リンパ球反応を阻害するそのような一次混合リンパ球反応で細胞集団を生成する化合物、または前記組合せである。望ましい実施例において、細胞は、化合物、または前記組合せの存在下で実行される一次混合リンパ球反応で生成され、その細胞は、二次混合リンパ球反応に加えられた場合に、付加される細胞が不在である二次混合リンパ球反応の場合と比較して、少なくとも20%、より望ましくは少なくとも35%、またより望ましくは少なくとも50%、このような二次混合リンパ球反応で生成されるCD4+CD25+細胞を減少させる。
【0016】
このような細胞集団による一次または二次MLRのいずれかの阻害は、その細胞集団の不在下で行われるMLRと比較して、MLRで産生されるCD4+CD25+細胞量の減少により立証される。
【0017】
かくして本発明の一つの見地に従って、霊長類は前に記載の特性(一次およびまたは二次MLRでin vitroで産生されるCD4+CD25+細胞の量を減少し、また一次および二次MLR両方でこのような減少を望ましくはもたらす細胞集団を生成するこのような一次MLRで、in vitroでの一次MLRで産生されるCD4+CD25+細胞量の減少)を持つ1個の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せで処置される。
【0018】
一つの実施例において、化合物、または前記組合せの存在下で一次MLRで生成される細胞は、二次MLRに加えられる時(付加される細胞なしでの二次MLRと比較すると)、1個またはそれ以上のサイトカイン、とりわけ二次MLRで1個またはそれ以上のIL−2,IL−4およびIL−12の生成を減少し、およびまたは排除する細胞である。一般にIL−2,IL−4およびIL−12のこのような少なくとも1個の減少は、少なくとも40%、望ましくは少なくとも60%である。
【0019】
かくして望ましい化合物、または望ましい組合せは、一次MLRで細胞を生成し、対照と比較して二次MLRでCD4+CD25+細胞またはIL−2,IL−4およびIL−12の1個またはそれ以上あるいはすべて(望ましくはすべて)の産生を減少させ、また望ましくはこのような細胞およびサイトカイン両方の産生を減少させるものである。
【0020】
更なる見地に従って、T細胞を刺激し、増殖を起こす条件下でin vitroでT細胞が物質または化合物に露出され、免疫寛容を誘導する能力を試験される化合物、または少なくとも2個の化合物の存在下でこのような露出が行われるスクリーニングまたは試験が提供される。T細胞増殖試験は、混合リンパ球反応であり、またはT細胞受容体(TCR)あるいはTCR複合体の成分、例えばCD3成分を通じて非抗原特異的刺激によりT細胞が増殖を起こす試験である。典型的には、T細胞を刺激し、それに増殖を起こすために使用されるのは、抗CD3モノクローナル抗体である。TCR複合体を経由する刺激に加えて、CD28などの共刺激分子と結合する抗体の付加により、共刺激シグナルが時には提供される。試験される化合物または薬剤、処置または方法と組合される前記化合物の存在下または不在下で増殖を起こす原因となったT細胞は、化合物、または前記組合せの存在が、T細胞サブセットの産生を阻害したかどうかを確認するために、CD4正(CD4+)およびCD25正(CD25+)であるT細胞のサブセットを確認するように試験される。
【0021】
免疫寛容誘導活性のための化合物、または前記組合せを試験するために使用されるin vitro試験は、望ましくは混合リンパ球反応(MLR)である。混合リンパ球反応は、一般に従来の技術で公知であり、そのプロトコルは実施例5で以下に記載されているが、発明の範囲はそれにより限定されるものではない。
【0022】
最初の試験で産生される細胞集団は、次いで更に少なくとも1回試験され、ここでin vitroでのT細胞は、このような細胞集団がCD4+CD25+細胞の産生を阻害するかどうかを確認するために、増殖を起こしている試験である。
【0023】
少なくとも更なる1回の試験は、混合リンパ球反応(一次または二次リンパ球反応)であってもよく、またはT細胞受容体(TCR)あるいはTCR複合体の成分を通じて、もしくはTCRを通じて抗原特異的刺激を擬態する共刺激での非抗原特異的刺激に応答してT細胞が増殖を起こす試験であってもよい。
【0024】
このような試験のプロトコルは、実施例5に記載されているが、本発明の範囲はそれにより限定されるものではない。
【0025】
望ましい実施例において、免疫寛容を誘導するために使用される化合物、または少なくとも2個の異なる化合物の組合せを確認するスクリーニングまたは試験は、MLRなどのようなin vitroでのT細胞増殖試験で、化合物、または前記組合せが、CD4+CD25+細胞を減少させるかどうかを確認する最初の試験、および最初の試験で産生された細胞が、一次およびまたは二次MLR、更にとりわけ二次MLRおよびまたは二次MLRでのサイトカインの産生などの二次T細胞増殖試験でCD4+CD25+細胞の産生を阻害するかどうかを確認する次の試験、の両方を含む。
【0026】
望ましい実施例に従って、免疫寛容を誘導するために選択される化合物、または前記組合せは、最初の試験でCD4+CD25+細胞の産生の減少を起こし、前に記載したように第2の試験でこのようなT細胞サブセットの産生を減少させる細胞集団を産生し、およびまたはサイトカインの産生および、とりわけ第2試験で1個またはそれ以上のIL−2,IL−4およびIL−12を削減する化合物または前記化合物の組合せである。
【0027】
かくして本発明の一つの見地に従って、選択された化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せは、化合物、または前記組合せの不在下での混合リンパ球反応と比較して、一時混合リンパ球反応(MLR)などのT細胞増殖検定で存在する場合に、混合リンパ球反応から生じるCD4およびCD25(CD4+CD25+細胞)両方に正である細胞量を減少させる化合物、または組合せである。望ましい実施例において、化合物、または前記組合せは、そのようなCD4+CD25+細胞を少なくとも40%、また望ましくは少なくとも60%、また更により望ましくは少なくとも70%減少させる化合物、または組合せである。
【0028】
加えて、望ましい実施例において、選択された化合物または組合せは、一次混合リンパ球反応で産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させ、そのような一次混合リンパ球反応で細胞集団を生成し、その細胞集団が二次混合リンパ球反応を阻害する化合物または組合せである。望ましい実施例において、細胞は、化合物、または前記組合せの存在下で行われる一次混合リンパ球反応で生成され、その細胞は、二次混合リンパ球反応に加えられた時に(付加される細胞の不在下での二次混合リンパ球反応と比較して)、少なくとも20%、より望ましくは少なくとも35%、またより望ましくは少なくとも50%、このような二次混合リンパ球反応で生成されるCD4+CD25+細胞を望ましくは減少させる。望ましい実施例において、二次MLRでのこのような細胞は、対照と比較して、IL−2,IL−4およびIL−12の少なくとも1個の産生を少なくとも40%、また望ましくは少なくとも60%減少させる。
【0029】
このような細胞集団による一次MLRまたは二次MLRのいずれかの阻害は、このような細胞集団の存在下で行われるMLRと比較してMLRで産生されるCD4+CD25+細胞の減少により立証され、また二次MLRに関連してCD4+CD25+細胞の減少またはサイトカイン産生の減少および望ましくはその両方により立証される。
【0030】
一つの実施例において、霊長類に免疫寛容を誘導するのに使用される化合物は、抗体(またはその断片)あいは抗体(またはその断片)ともう一つの抗体との組合せ、もしくは抗体以外の化合物である。しかし本発明は、このような抗体の使用に限定させるものではない。
【0031】
かくして霊長類に免疫寛容を誘導する一つの見地と関連する本発明は、前記特性を持ち、霊長類に免疫寛容を誘導できる化合物の使用を考慮し、その化合物は、単独でまたは1個あるいはそれ以上の他の化合物と組合せて使用することができ、この1個あるいはそれ以上の他の化合物は前記の特性を持つこともあり、または持たないこともあり得る。加えて本発明は、少なくとも2個の化合物の組合せの使用を考慮し、ここで1個またはそれ以上の化合物は、前記の特性を持ち、またはここでこのような組合せの化合物のいずれもが個別には前記の特性を持たないが、組合せられた場合にはこのような特性を持つ。かくして少なくとも2個の化合物の組合せは、その1個またはそれ以上の化合物がそのような特性を持つ結果として、あるいは2個またはそれ以上の化合物の組合せがこのような特性を与える結果として、前記の特性を持つことができる。
【0032】
ある場合には、本発明の化合物は、免疫抑制剤である化合物と組合せて使用される。免疫抑制剤である化合物は、一般化された免疫抑制をもたらすのに必要な量以下の用量で使用でき、または一般免疫抑制をもたらす用量で使用される。使用される化合物の組合せおよび化合物の相対的量は、霊長類に免疫寛容を誘導するのに有効である。
【0033】
霊長類に免疫寛容を誘導する前に記載の特性を持つ化合物と組合せて使用される化合物のいくつかの例は、必ずしもそれに限定されないが、リツキサンTM(ジェネンテク);B細胞と特異的に結合する抗体;ID4(リサーチ・ダイアグノスティックス)に限定されないが、それを含むプラズマ細胞に特異的な抗体;セルセプトTM(ロシュ);シクロスポリン;抗CD40L;抗IL12;抗IL18;抗インターフェロンガンマ;プロテオソーム阻害薬;CXCR3拮抗薬;15デオキシスペルグアリン:FK506;CD2,CD8およびCD28などの共刺激分子に向けられる抗モノクローナル抗体、ならびに付着分子に向けられるモノクローナル抗体を含む。
【0034】
組合せで使用される化合物の更なる限定されない例は、in vivoでタンパク質を発現する遺伝子治療物質、ペプチド擬似体、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸アプタマー、ペプチド、小有機分子および抗体を含む。
【0035】
ここで使用されるように、抗原と関連して「免疫寛容化する」または「免疫寛容である」という用語は、全総合免疫抑制を必要とせずに、処置が停止し、抗原での続く攻撃誘発がなされ、およびまたは抗原が霊長類に存在していても、一定期間にわたり抗原に対する逆免疫応答を産生せず、他の抗原に対する免疫応答を提供できることを意味する。
【0036】
免疫寛容化または免疫寛容状態は、前に記載のように、本発明の化合物または少なくとも2個の化合物の組合せの有効用量を投与することにより、霊長類に導入することができる。前に記載のように、化合物の組合せを用いる場合には、それらは同時にまたは順次に投与される。
【0037】
免疫寛容を導入させる抗原は、自己抗原または外来抗原である。
【0038】
外来抗原は、1個またはそれ以上の下記の型の抗原である。
【0039】
(i)移植片が同種または異種である器官に存在する組織または細胞を含む移植組織または細胞に存在する外来抗原、
(ii)霊長類に免疫応答を産生する治療薬(疾病予防に使用される治療薬も含む)であり、その免疫応答が治療薬として機能する薬剤の性能を減少させる治療薬。このような薬剤には、必ずしもそれに限定されないが、遺伝子治療に使用されるベクターなどの送達担体、モノクローナル抗体などの組換えタンパク質、酵素、凝固因子およびいくつかの小分子薬剤、または遺伝子治療薬などの霊長類に送達される薬剤から産生されるタンパク質、
がそれである。
【0040】
本発明に従って、免疫寛容が誘導される外来抗原は、宿主に感染する疾病の原因となる細菌、真菌、ウイルスなどに存在する外来抗原ではなく、すなわち外来抗原という用語は、霊長類に感染し疾病または疾患を起こす生体の部分としての外来抗原を含まない。
【0041】
一つの見地に従って、霊長類は、そのような免疫寛容を提供するのに有効な量と時間で、少なくとも1個のCD4抗体またはその断片で、またはもう一つの化合物(CD4抗体以外の化合物あるいは異なるCD4抗体)と組合せる少なくとも1個のCD4抗体またはその断片で、霊長類を処置することにより、抗原に対し免疫寛容を産生するように処置され、そのような抗原が霊長類に更に存在する場合に霊長類に抗体が存在し、そのような処置で霊長類が抗原に免疫寛容になるようにする。このようなCD4抗体またはその断片、あるいはもう一つの化合物と組合されるCD4抗体またはその断片は、MLRでin vitroで試験された際に(一次または二次MLRの少なくとも一つでin vitroで試験された際にそこに産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させる一次MLRで産生される細胞集団で、一次MLRで産生されるCD4+CD25+細胞量を減少させる)前に記載の特性を持つ。
【0042】
CD4抗体は、望ましくはモノクローナル抗体(またはCD4に結合する能力を持つその断片)である。抗体はヒト抗体または非ヒト抗体であることができ、非ヒト抗体はヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体などを含む。
【0043】
CD4抗体またはその断片、あるいはもう一つの化合物と組合される少なくとも1個のCD4抗体またはその断片は、外来抗原または自己抗原および望ましくは外来抗原に免疫寛容を誘導するのに有効な量と時間で霊長類に投与される。
【0044】
望ましい実施例に従って、CD4抗体またはその断片は、このような抗体または断片の適切な水準を霊長類で維持するために、あるいは前記抗体または断片が前に記載のもう一つの化合物と組合せて免疫寛容を誘導するのに十分な期間にわたり前記組合せの有効用量で使用される場合にその期間にわたり投与される。
【0045】
一般に抗体(またはその断片)は、少なくとも約40mg、望ましくは少なくとも約50mgおよびより望ましくは少なくとも約70mgを単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて最初の用量で投与される。
【0046】
望ましい実施例において、当初用量は少なくとも400mg,望ましくは少なくとも約500mg、および特定の実施例で少なくとも約700mgの量であり、単独、または前に記載のもう一つの化合物と組合される。
【0047】
当初の用量は24時間に1回またはそれ以上の用量で、および望ましくは24時間に1回の用量で、単独または前に記載のもう一つの化合物と組合せて投与される。
【0048】
用量がここで使用されるように、24時間に1回以上単独またはここで記載のもう一つの化合物と組合せて投与される場合であっても、用量は24時間にわたり投与される抗体の全量である。
【0049】
大抵の場合、当初用量の後に、CD4抗体(またはその適当な断片)は、数日間1個もしくはそれ以上の追跡用量で投与され、各追跡用量は24時間で1個またはそれ以上の用量で単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて投与される。追跡用量は、抗体の血清水準を当初用量で達成された水準に戻す量で単独またはここに記載されたもう一つの化合物と組合せて提供される。
【0050】
望ましい実施例において、最小追跡用量は、ここに記載の量に少なくとも等しい量であり、もとのまたは当初用量単独あるいはここに記載のもう一つの化合物と組合せて与えられる用量と同じであり、またはそうでない場合もある。かくして追跡用量は、一般に少なくとも40mg、望ましくは少なくとも50mg、およびより望ましくは少なくとも70mgを単独であるいはここに記載のもう一つの化合物と組合せる量である。前に記載の通り、一つの望ましい実施例において、追跡用量は少なくとも400mg、望ましくは少なくとも500mg、また特定の実施例では、少なくとも700mg、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合された量である。ある場合には、追跡用量は、単独またはここで記載されたもう一つの化合物と併用して最小量以下の場合もある。
【0051】
1個以上の追跡用量がある場合には、24時間にわたるこのような各追跡用量は、単独またはここで記載のもう一つの化合物と組合されるもう一つの追跡用量と同じまたは異なる場合もある。
【0052】
追跡用量の回数は変化するが、望ましい実施例において、一般に少なくとも1回の追跡用量、および大抵の場合7回以下の追跡用量があり、すなわち用量の回数は単独でまたはここで記載されたもう一つの化合物との組合せで8回の用量を越えることはない。
【0053】
抗体が投与される全期間は、一般に4週を越えることはなく、より望ましくは単独でまたはここで記載されたもう一つの化合物との組合せで3週を越えない。多くの場合免疫寛容は、当初用量および1回またはそれ以上の追跡用量を、単独またはここで記載されたもう一つの化合物との組合せで2週間を越えない期間に使用することで達成される。
【0054】
本発明に従って、抗原に対する当初の免疫寛容は4週以下の期間で霊長類で達成できるけれども、ある場合には免疫寛容を維持するために、抗体単独でまたはここで記載されたもう一つの化合物と組合せで周期的な追跡処置が必要とされる場合もある。
【0055】
前に記載されたように、少なくとも1個のCD4抗体(またはその適切な断片)は、抗原に対し、また望ましい実施例では外来抗原に対し、単独でまたはここに記載したもう一つの化合物と組合せて、霊長類に免疫寛容を誘導するのに十分な量で送達される。最大量は勿論安全を考慮して限定される。一般に抗体の1日用量は、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて6000mg以下となるであろう。
【0056】
追跡用量の回数とその間隔とりは、部分的には少なくとも1個のCD4抗体の半減期により決定される。本発明はそれにより限定されるものではないが、CD4抗体は処置される霊長類のすべてのCD4を飽和するのに必要な量を超える抗体血清水準を達成する量で当初送達され、追跡用量は単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて抗原に対し霊長類に免疫寛容を誘導する期間にわたりそのような超過を維持するために時々与えられる。
【0057】
望ましい実施例において、CD4抗体は、ヒトIgG1と比較して減少エフェクター(すなわち溶解)機能を持つCD4抗体である。減少エフェクター機能を持つ代表的な例としては、非糖鎖付加Fc部分を持ち、およびまたはFc受容体へ結合が減少し、およびまたは非溶解性である抗体を挙げることができる。
【0058】
一つの実施例では、減少エフェクター機能を持つCD4抗体は、非枯渇CD4抗体である。ここで使用されるように、「非枯渇C4抗体」はCD4細胞を50%以下枯渇する抗体であり、望ましくはCD4細胞を10%以下枯渇する抗体である。
【0059】
霊長類、およびとりわけヒトを処置する場合、CD4抗体は薬理許容担体のみと組合せ、あるいはここに記載のもう一つの化合物と組合せて採用される。CD4抗体を含む組成物は、他の成分、例えば安定剤およびまたは他の活性剤単独であるいはここに記載のもう一つの化合物を組合せて含むこともある。
【0060】
本発明に従って、霊長類の抗原に免疫寛容を誘導するCD4抗体単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合わせるCD4抗体の使用法は、1個またはそれ以上の抗原に免疫寛容を提供し、霊長類は他の抗原に免疫学的に応答することができる。かくしてこの点に関し、霊長類は、1個またはそれ以上の抗原に免疫寛容化され、また免疫系は、他の外来抗原に対し免疫応答を提供することが可能となり、このため霊長類な免疫無防備ではなくなる。
【0061】
免疫寛容が抗原に対して導入される望ましい実施例において、CD4抗体は、抗原が単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて送達される前に、それと同時に、または送達後に霊長類に投与される。望ましい実施例において、霊長類は、抗体が霊長類に存在するようにCD4抗体を単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて一度に投与される。とりわけ望ましい実施例において、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合されるCD4抗体(またはその断片)は、その後、数時間または1日以下で霊長類が免疫寛容になる抗原に霊長類を接触させる前に霊長類に送達される。望ましい実施例において、抗体単独またはここに記載されたもう一つの化合物と併用された抗体は、抗原を受け入れる霊長類に対し、約2日前、望ましくは1日前に投与される。
【0062】
前に記載したように、一つの実施例において、霊長類は、霊長類を処置するのに使用される治療用タンパク質に対し免疫寛容化される。このような治療用タンパク質は(CD4抗体以外の)治療用抗体であり、この治療用抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体または非ヒト抗体;代償療法で使用されるものなどの酵素;ホルモン;凝固因子;遺伝子治療で産生されるタンパク質;単独またはここで記載されたもう一つの化合物と組合せて遺伝子治療で使用されるベクターなどの遺伝子治療送達伝達体(例えばアデノウイルスベクター)などであることができる。
【0063】
本発明は、更に免疫寛容が、化合物またはここに記載された2個またはそれ以上の化合物の組合せで誘導され、そのような化合物または組合せが治療用タンパク質に対し免疫寛容を誘導するような治療用タンパク質を含むキットまたはパッケージを考慮する。
【0064】
外来抗原は、移植された器官,細胞治療に使用された移植細胞、または皮膚などの他の組織移植片に存在する。
【0065】
霊長類をCD4の使用により外来抗原に対し免疫寛容にするために、霊長類、とりわけヒトの処置は、外来抗原の免疫およびまたはT細胞の枯渇およびまたは免疫抑制を促進するための骨髄移植などのようなアジュバンド治療なしである場合には達成することができる。
【0066】
限定されない一つの実施例において、抗体は望ましくはTRX1抗体(ここで以下に記載したもの)、すなわちここで以下に記載されているTRX1と同じエピトープに結合する抗体であり、このような抗体は、単独でまたはここで記載された薬剤、処置または方法と組合せてここで記載された用量処方で望ましくは使用される。
【0067】
本発明の見地に従って、図1で示されるヒト化抗体、および図2で示されるヒト化抗体、更に図3で示されるヒト化抗体、また図4で示されるヒト化抗体より成るグループから選択されるヒト化抗体としてヒトリンパ球と同じエピトープ(またはその部分)と結合する分子(望ましくはヒト化抗体またはその断片)が提供される。
【0068】
抗体は、以下で時々TRX1として引用される。「分子」または「TRX1と同じエピトープに結合する抗体」はTRX1を含む。「TRX1」という用語は、図1で示される抗体、図2で示される抗体、および図3で示される抗体の一つおよび図4で示される抗体の一つを含み、例えば組み換え技術で産生されるそれらと同一のものを含む。
【0069】
望ましい抗体はTRX1であるけれども、ここでの教示から当業者はTRX1に同等の抗体を産生することができる。そのようなTRX1同等抗体の代表的で限定されない例として、以下のものがある。
【0070】
1)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体、
2)TRX1と同じCDRsを持つが、異なるヒト化フレームワークおよびまたは異なるヒト定常領域を持つヒト化抗体、
3)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体であって、ここで、TRX1の1個またはそれ以上のCDRsの1個またはそれ以上のアミノ酸が変化しており(望ましくは必ずしも保存アミノ酸置換である必要はなく)、またここで、フレームワークは、TRX1と同じフレームワークであってもよく、あるいは異なるヒト化フレームワークを持つこともあり、あるいはここでTRX1のフレームワーク領域の1個またはそれ以上のアミノ酸が変化しており、およびまたはここで、定常領域がTRX1と同じまたは異なっていてもよいヒト化抗体、
4)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体であって、ここで抗体が受容体のFc領域に結合しないヒト化抗体、
5)TRX1と同じエピトープに結合するヒト化抗体であって、ここでそのCDRsがグリコシル化(糖鎖付加)部位を含まないヒト化抗体、
6)TRX1と同じエピトープに結合し、また受容体のFc領域と結合せず、更に、CDRsはグリコシル化(糖鎖付加)部位を含まないヒト化抗体、
7)TRX1と同じエピトープに結合するキメラ抗体、および
8)TRX1と同じエピトープに結合するマウス抗体。
【0071】
TRX1と同等である抗体は、TRX1と同じやり方でまた同じ目的に使用することができる。
【0072】
本発明の分子または抗体は、動物、とりわけヒトを処置する方法に使用され、とりわけ抗原に免疫応答に誘導することを含む、外来抗原または自己抗原である抗原への免疫応答を阻害し、改善し、または減少する用途に使用することができる。分子または抗体は、クラスI提示抗原およびまたはクラスII提示抗原への免疫応答を阻害し、改善し、または減少するのに使用できる。分子または抗体は、このような抗原への免疫応答を阻害し、改善し、または減少するのに使用される。移植片の場合、例えばクラスIおよびクラスII主要組織適合(MHC)抗原および非MHCまたは副組織適合抗原が提示される。移植抗原とは別に、分子または抗体は、球状タンパク質、免疫グロブリンなどの糖タンパク質、花粉タンパク質などの粒子を運搬する物質、インターフェロン、インターロイキン2または腫瘍懐死因子などの治療用途を意図したポリペプチド、または黄体ホルモン、その類似体および拮抗薬などのホルモン置換物、などの免疫応答を阻害し、改善し、または減少するために使用することができる。免疫応答が阻害され、改善され、または減少されることのできる更なる特異的抗原は、受容体遮断を助けるために使用されるタンパク質治療薬の合成ペプチド相似体、および同種抗原は、組織移植または皮膚移植における外来組織の拒絶の原因となる。ここで使用される「抗原」という用語は、動物、望ましく霊長類、より望ましくはヒトにおける免疫応答に免疫寛容を誘導するサブスタンス物質である。免疫応答は、体液性応答を伴い、または伴わないT細胞応答である。
【0073】
本発明の分子または抗体は、T細胞活性化および増殖を阻害し、およびまたは変更し、また出願人は、T細胞活性化を刺激する薬剤を単独で、あるいはここに記載の薬剤、処置または方法と組合せる薬剤の前または後のいずれかに本発明の分子または抗体を加えることで、そのような阻害を実現できることを発見した。
【0074】
本発明の分子または抗体は、CD4抗原(CD4正ヒトT細胞)のエピトープに結合する特性を持つが、しかし抗体がT細胞上でCD4抗原に結合するというように機能するものと考えられているけれども、抗体は他の細胞、例えば単球上のCD4抗原と結合することで機能する、ということは理解されねばならない。結果として、T細胞の活性化または増殖を阻害し、およびまたは変更するこのような分子または抗体の能力は、CD4正細胞との結合を通して実行される場合もあり、そうでない場合もある。
【0075】
本発明のもう一つの見地に従って、以下でTRX1(またはその断片あるいは誘導体)として引用する抗体、またはTRX1と同じエピトープに結合するこのような抗体または誘導体あるいはその断片を擬態するいずれかの分子の患者への投与を通じて、ヒト患者に進行中の免疫応答を予防しおよびまたは阻害する方法が提供される。
【0076】
本出願を通じてここで使用される「阻害する」という用語は、一つまたはそれ以上の抗原に対する免疫応答の予防、または阻害、あるいは発病度の減少、もしくは改善を意味することを意図する。抗原は、外来抗原または自己抗原である。本出願の目的のためにここで使用される「移植」という用語は、必ずしもそれに限定されないが、同種移植または異種移植を含むいずれかまたはすべての移植を意味する。このような移植は、例として必ずしもそれに限定されないが、細胞、骨髄、組織、固形器官、骨などの移植を含む。
【0077】
ここで使用される「免疫応答」という用語は、T細胞活性化および増殖に依存する免疫応答を意味することを意図し、それは細胞性効果とT細胞依存性抗体の両方を含み、例としてまた限定されないものとして、(i)移植片、(ii)移植片対宿主病、(iii)例によりまた必ずしもそれに限定されないが、慢性関節リウマチ、全身性狼瘡、多発性硬化、真性糖尿病などを含む自己免疫疾患で生じる自己抗原などに対し応答して引出されるものである。
【0078】
本発明で採用される化合物は、TRX1ヒト化抗体と同じエピトープ(またはそのエピトープの一部)と結合する化合物である。「TRX1ヒト化抗体と同じエピトープに結合する」という用語は、必ずしもTRX1ヒト化抗体だけでなく、TRX1ヒト化抗体と同じエピトープに結合する他の抗体、その断片または誘導体あるいは分子を記載するものと意図される。
【0079】
このような分子は望ましくは抗体であるが、核酸アプタマーも含む。望ましい実施例において、抗体は抗体のFc領域を通じてFc受容体と結合せず、またCDRsはグリコシル化部位を含まない。
【0080】
定常領域は、グリコシル化部位を含むことができ、または含まないこともある。一つの実施例において、定常領域はグリコシル化部位を含む。グリコシル化部位を含む重鎖配列の一つの例は、図1Dおよび図1Fまた図3Dならびに図3Fで示される。もう一つの実施例において、定常領域はグリコシル化部位を含まない。グリコシル化部位を含まない重鎖配列の1例は、図2Dおよび図2Fまたは図4Dならびに図4Fで示される。
【0081】
このような他の抗体は、例によってまたそれに限定されないが、ラット、マウス、ブタ、ウシ、ヒト、キメラ、ヒト化などの抗体、またはその断片あるいは誘導体である。
【0082】
ここで使用される「断片」という用語は、抗体の部分を意味するが、例に従ってこのような抗体の部分は、必ずしもそれに限定されないが、TRX1で認識される同じエピトープまたはそのいずれかの部分に結合するCDR、Fab、またはそのような他の部分を含む。
【0083】
ここで使用される「抗体」という用語は、ヒト化抗体TRX1により認識される同じエピトープまたはその部分に結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体、同じく抗体断片および誘導体、同じく組換え技術により調製される抗体、例えばキメラまたはヒト化抗体、一本鎖または二重特異性抗体、などを含む。「分子」という用語は、例に従いまた限定されることなく、抗体を擬態し、または抗体断片あるいはその誘導体の同じエピトープまたはその部分と結合するいずれかの源から誘導されるペプチド、オリゴヌクレオチドまたは他のそのような化合物を含む。
【0084】
本発明のもう一つの実施例は、TRX1抗体単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて同じエピトープ(またはその部分)と結合するTRX1抗体、または抗体、あるいはその誘導体または断片もしくは分子と同じエピトープ(またはその部分)より成るグループから選択される少なくとも1個の部材の有効量で移植片移植を受けるまたは既に受けている患者を処置する方法が提供されている。この処置は、望ましくは全あるいは無償TRX1抗体単独で、またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて実行される。
【0085】
一つの実施例において、抗体は、ヒト抗体の修飾された定常領域および軽鎖と重鎖フレームワーク領域およびCDR領域を含むヒト化抗体であるTRX1であり、ここで軽鎖および重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒト抗体の軽鎖および重鎖可変領域として一致し、またマウスモノクローナル抗体から誘導されるCDRsは、NSM4.7.2.4と名付けられる。TRX1抗体は図1で示される。図1Aは、TRX1軽鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図1Bは、TRX1軽鎖核酸配列を示す。図1Cは、ハイライトCDRsを持つTRX1軽鎖アミノ酸配列を示す。図1Dは、グリコシル化部位を含むTRX1重鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図1Eは、TRX1重鎖ヌクレオチド配列を示す。図1Fは、TRX1重鎖アミノ酸配列を示し、それはハイライトCDRsを持つグリコシル化部位を含む。
【0086】
もう一つの実施例において、抗体はTRX1であり、これはヒト抗体の修飾定常領域および軽鎖、重鎖フレームワーク更にCDR領域を含み、ここで軽鎖および重鎖可変領域のフレームワーク領域は、ヒト抗体の軽鎖および重鎖可変領域のフレームワークに一致し、またマウスモノクローナル抗体から誘導されたCDRは、NSM4.7.2.4と名付けられる。TRX1抗体は、図3で示される。図3Aは、TRX1軽鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図3Bは、TRX1軽鎖核酸配列を示す。図3Cは、ハイライトCDRsを持つTRX1軽鎖アミノ酸配列を示す。図3Dは、グリコシル化部位を含むTRX1重鎖のアミノ酸およびDNA配列を含む。図3Eは、TRX1重鎖ヌクレオチド配列を示す。図3FはTRX1重鎖アミノ酸配列を示し、それはハイライトCDRsを持つグリコシル化部位を含む。
【0087】
TRX1抗体のもう一つの実施例は、図2で示される。図2Aは軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す。図2Bは、軽鎖核酸配列を示す。図2Cは、ハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す。図2Dは、重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す。図2Eは、重鎖ヌクレオチド配列を示す。図2Fは、ハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す。
【0088】
TRX1抗体のもう一つの実施例は、図4で示される。図4Aは、軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列を示す。図4Bは、軽鎖核酸配列を示す。図4Cは、ハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す。図4Dは、重鎖のアミノ酸およびDNA配列を示す。図4Eは、重鎖ヌクレオチド配列を示す。図4Fは、ハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す。
【0089】
各図においては、アミノ酸残基1は、各重鎖および軽鎖でリーダー配列後の第1アミノ酸である。それは更に配列内でのFR1の第1残基である。
【0090】
本発明の目的に適したTRX1ヒト化抗体の調製は、ここでの教示から従来の技術に習熟した人にとっては明らかなものである。このような抗体は、当業者に公知の組換え技術により調製することができる。
【0091】
本発明の抗体は、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せてこのような免疫応答を阻害する有効量で抗体(またはその断片)を投与することで動物の免疫応答を阻害するのに使用することができる。
【0092】
例えばある場合には、治療薬を用いる処置は、治療薬に対する免疫応答を含む。このような治療薬の代表的な例として、レオプロおよびOKT3などのモノクローナル抗体、必ずしもそれに限定されないが、ゴシエ病用グルコセレブロシダーゼなどの代償療法のための酵素および因子VIIIなどの凝固因子、およびアデノウイルス誘導ベクターなどの遺伝子治療および遺伝子治療送達伝達体などがあげられる。
【0093】
本発明の一つの見地に従って、前に記載の抗体(またはこのような抗体の断片)は、このような治療薬で処置される患者に投与され、抗体(または断片)は治療薬に対し免疫応答を阻害する有効量で投与される。抗体は治療薬の投与の前に、またはそれと組合わせて、あるいはその投与の後で投与される。投与の方法は、必ずしもそれに限定されないが、特異的な徴候、特異的な治療薬および最適用量スケジュールを含む各種の因子に依存する。治療薬の投与の前に投与される場合には、抗体は治療薬の投与の約1時間乃至約10日前、望ましくは治療薬投与の約1時間乃至約24時間前に投与される。治療薬の投与の後に投与される場合には、抗体は治療薬投与の約1時間乃至約10日後、望ましくは治療薬投与の約1時間乃至約24時間後に投与される。
【0094】
投与される抗体の量、抗体が投与される用量スケジュールおよび回数は、治療薬および治療薬で患者を処置するために使用される処方に依存する。
【0095】
一般に抗体は、提供される用量当り0.1mg乃至3mgの量で使用されるが、霊長類に免疫寛容を誘導するに際しては、抗体は望ましくは前に記載の量で使用される。
【0096】
本発明の抗体は、更に自己抗原およびまたは外来抗原に対し、例えば移植片(例えば移植片拒絶)に対し、免疫応答を阻害するため、およびまたは移植片対宿主の免疫応答を阻害または改善するために使用することができる。
【0097】
本発明の抗体は、更に遺伝子治療産物に対する免疫応答、同じく遺伝子治療の有効性を制限するアデノウイルス誘導ベクターなどの遺伝子治療送達伝達体に対する免疫応答を阻害するために使用することができる。
【0098】
かくして宿主にある抗原への免疫応答は、TRX1抗体を抗原と共に投与することにより、阻害し、改善しまたは減少することができる。患者は器官移植片または骨髄移植片などの組織移植片を与えられ、およびその拒絶を阻害するために、移植片と共にTRX1抗体を与えられる。長期の特異的免疫寛容は、自己免役疾病を処置するために自己抗原または抗原に誘導することができる。
【0099】
免疫寛容を維持するために、持続的または周期的な抗原の存在が必要とされる。例えば、組織移植片は、それ自身に免疫寛容を維持するために抗原を供給する。アレルゲンなどの異質外来抗原の場合には、抗原「催促状」(抗原継続投与)を決まった間隔で与えることができる。
【0100】
本発明に従って、前に記載のタイプの抗体またはその断片あるいは分子は、T細胞の活性化および増殖を阻害し、細胞表面の機能的CD4発現の密度を減少させ、およびまたはシグナル伝達に影響を与えてこれによりCD4+Tリンパ球の機能性およびまたはCD4+Tリンパ球数を減少させるために、in vivo単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて投与することができる。
【0101】
かくして例えば、in vivoでの手順において、このような抗体は、免疫応答を予防およびまたは阻害し、それによりT細胞活性化おえび増殖を阻害するために投与される。
【0102】
本発明の一つの見地に従って、前に記載のタイプの抗体またはその断片あるいは分子は、細胞表面の機能的CD4+発現の密度を減少しおよびまたはシグナル伝達に影響を与え、かくしてCD4+Tリンパ球の機能性およびまたは供与者体細胞のCD4+細胞数を減少するために、ex vivoで単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて投与することができる。例に従い、また制限することなく、ex vivoでの手順において、このような抗体またはその断片あるいは誘導体もしくは分子は、移植にあたり移植片対宿主病の発症を予防するために、移植の前に供与体の骨髄に注入されることとなる。
【0103】
抗体またはその断片は、単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて薬理許容担体で一般に投与される。このような薬理担体の代表的な例として、通常の生理食塩水、緩衝液などを言及することができる。このような薬理担体は、従来の技術で公知であり、適切な担体の選択は、ここに含まれる教示から通常の知識を有する人の範囲内にあるものと見做される。
【0104】
本発明のTRX1抗体または他の抗体は、単独またはここに記載の薬剤、処置または方法と組合せて静脈内、皮下、または筋肉内投与でin vivoで投与される。
【0105】
前に記載したように、本発明のTRX1抗体または他の抗体は、単独またはここに記載のもう一つの化合物と組合せて抗原に対する免疫応答を阻害する有効量でin vivoで投与される。本出願の目的のための「有効量」という用語は、望ましい効果を産生できる抗体量を意味する。一般にこのような抗体は、用量当り少なくとも0.1mgの量で投与される。それより少ない量でも使用できることも理解されねばならない。当初の処置後更に、前に記載の量は、続く処置の段階がもし必要であればその段階で減少される。発明の範囲は、このような量で限定されるものではない。しかし霊長類に免疫寛容を誘導するために、抗体は前に記載の量で使用されねばならない。
【0106】
本発明のTRX1抗体または他の抗体は、抗原に免疫寛容を誘導するために、単独でまたはここに記載のもう一つの化合物と組合せて採用することができる。ここで使用される「免疫寛容」という用語は、T細胞非応答が、攻撃誘発の場合にあってさえ、抗体処置の停止後においても抗原に対して持続することを意味する。しかしもし必要である場合には、このような免疫寛容を維持するために、抗体のブースターまたは追加抗原投与用量を与えることができる。
【0107】
T細胞の活性化を阻害する本発明の技術は、単独でまたは他の処置、薬剤、方法、例えばT細胞の活性化を阻害する他の処置、薬剤または方法、あるいは移植体拒絶または移植片対宿主病を阻害し、あるいは各種の自己免役疾病を処置する、などの他の処置、薬剤または方法と組合せて採用することができる。霊長類に免疫寛容を誘導する化合物と組合わせて使用されるこのような薬剤、処置または方法のいくつかの例は、必ずしもそれに限定されないが、リツキサンTM(ジェネテック);B細胞に特異的な抗体;限定されないがID4(リサーチ・ダイアグノスティクスを含むプラズマ細胞に特異的な抗体;セルセプトTM(ロシュ);シクロスポリン;ラパマイシン;抗CD40L;抗IL12;抗IL18;抗インターフェロンガンマ;プロテオソーム阻害薬;CXCR3拮抗薬;15デオキシスペルグアリン;FK506;CD2,CD8およびCD28などの共刺激分子に向けられるモノクローナル抗体並びに付着分子に向けられるモノクローナル抗体を含む。
【0108】
本発明の抗体は、更に例えば血液試料などの試料でCD4正細胞の存在を決定するための選択方法で採用される。このような方法においては、試料は分子または抗体と接触され、またCD4正細胞の存在が確認され、およびまたはCD4正細胞は、次いで試料から選択または単離することができる。
【0109】
望ましい実施例において、TRX1と同じエピトープに結合するTRX1抗体または抗体は、霊長類(とりわけヒト)での抗原に対する免疫寛容を誘導するために、単独またはここで記載の薬剤、処置または方法と組合せて採用される。
【実施例】
【0110】
本発明は、これから以下の実施例と関連して記載される。しかし本発明の範囲は、それにより制限されることを意図するものではない。
【0111】
実施例1
cDNAライブラリーが、製造メーカの示唆するプロトコルに従って、スーパースクリプトプラスミドシステム(ジブコ/BRL,カタログ番号82485A)を用いてマウスハイブリドーマNSM4.7.2.4から構築された。重鎖および軽鎖cDNAは、ラットハイブリドーマYTS177からのラット重鎖および軽鎖遺伝子cDNAをプローブとして使用するDNAハイブリダイゼーションにより、ライブラリーからクローンされた。
【0112】
YTS177のラット重鎖および軽鎖遺伝子cDNAsは、BamHI/Sa1I断片として発現ベクターpHA Pr−1から単離され、32Pで標識され、標準分子生物学的手法を用いてNSM4.7.2.4.cDNAライブラリーをスクリーニングするために個別に使用された(サムブルック,他,分子クローニング,実験室マニュアル,第3版,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス,コールド・スプリング・ハーバー,ニューヨーク(2001年);オースベル,他、分子生物学における現行のプロトコル,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ,ニューヨーク(2001年).NSM4.7.2.4.cDNAライブラリーから誘導されたcDNAsの配列分析は、NSM4.7.2.4重鎖がマウスガンマ−1サブクラスであり、NSM4.7.2.4軽鎖がカッパであることを確認した。NSM4.7.2.4重鎖および軽鎖V領域(それぞれVHおよびVL)はヒトVHおよびVL領域に「ベストフィット」すなわちマウスのそれとフレームワーク領域で最高の類似性を持つように変形された。軽鎖として、79%の配列類似性を持つヒト抗体HSIGKAW(EMBLよりのもの)が使用された(LA スパッツ他,1990年,免疫学ジャーナル,144巻:2821−2828ページ).HSIGKAW VLの配列は以下の通りである。
【0113】
【0114】
フレームワーク1の出発点D(アミノ酸残基)
QのGへの変化
重鎖として、74%の配列類似性を持つヒト抗体A32483(ジェンバンクよりのもの)が使用された(ラリック,他,Biochem.Biophys.Res.Comm.,160巻;1250−1256ページ(1989年))。A32483 VHの配列は以下の通りである。
【0115】
【0116】
フレームワーク1の出発点Q(アミノ酸残基)
ヒト化過程として、抗CD4軽鎖クローン77.53.1.2(1キロベースの挿入サイズ)および抗CD4重鎖クローン58.59.1(1.7キロベースの挿入サイズ)が、Sa1I/Not I断片としてpSportベクターから単離されたcDNAライブラリーおよび挿入片から選択され、配列化のための一本鎖DNAおよび突然変異誘発のための鋳型を産生するために、M13mp18ベクターにクローンされた。NSM4.7.2.4のヒト化は、製造業者指示のプロトコルに従って、エイマシャム・インターナショナルのキット(RPN1523)を用いてマウスcDNAの部位指向突然変異誘発で行われた。
【0117】
VL遺伝子フレームワーク領域の突然変異誘発は、29乃至76塩基の長さにわたる5個のオリゴヌクレオチドを用いて行われた。使用されたオリゴヌクレオチドは以下のものであった。
【0118】
【0119】
オリゴヌクレオチドは、リン酸化され、下記の手順に従って変化を導入するために、突然変異誘発が各ステップで2個以下のオリゴヌクレオチドを用いて3ステップで行われた。
【0120】
(1)リン酸化突然変異体オリゴヌクレオチドの一本鎖DNA鋳型へのアニーリング
(2)重合
(3)一本鎖DNAを除去するための濾過
(4)Nci Iでの非突然変異鎖のニッキング
(5)Exo IIIでの非突然変異鎖の消化
(6)ギャップDNAの再重合
(7)コンピテントJM101の形質転換
(8)クローンの配列化
突然変異は、M13プライマー−20および−40、ならびに突然変異誘発プライマー#1999および#2000を用いて、一本鎖DNA配列化により確認された。
【0121】
可変領域の5′末端でのSal I部位は、Hind III/Kpn I他断片としての可変領域のCAMPATH−1Hの軽鎖定常領域へのクローニングを許すことで、リンカーオリゴヌクレオチド#2334および#2335によりHind IIIに変更された。
【0122】
【0123】
VH遺伝子フレームワーク領域の突然変異誘発は、24乃至75塩基長にわたる5個のオリゴヌクレオチドを用いて行われた。使用されるオリゴヌクレオチドは以下の通りである。
【0124】
【0125】
突然変異誘発は、変化を導入するため時に応じて2個以下のオリゴヌクレオチドを用いて、前に記載のように再び軽鎖に対して行われた。突然変異は、M13プライマー−20および−40同じく突然変異誘発プライマー#2002および#2004を用いる一本鎖DNA配列化により確認された。
【0126】
プライマー#2002は、開始クローン58.59.1でのリーディングフレームワークのエラーを訂正するために使用された。
【0127】
【0128】
プライマー#2380は、最初の配列化で外された#2004を加えた余分の突然変異を訂正するために使用された。
【0129】
【0130】
軽鎖と同じように、重鎖5′Sa1 I部位は、Hind III/Spe I(プライマー#2007により導入された部位)断片として重鎖可変領域のCAMPATH−1Hの重鎖定常領域へのクローニングを許すことで、リンカーオリゴヌクレオチド#2334および#2335を用いてHind IIIに変更された。
【0131】
重鎖の構築
DNAの下記の試料が使用された。
【0132】
1.プラスミド1990
pUC18にクローンされたヒトガンマ−1重鎖定常領域遺伝子
(ウエルカム・ファンデーション・リミテッド;マーティン・シムズより入手)
2.プラスミド2387
ヒトフレームワーク領域およびマウスガンマ1定常領域を含むNSM4.7.2.4の再形成重鎖
【0133】
再形成CD4重鎖でのSal I部位は、Hind III部位に変更された。可変領域遺伝子は、Hind III/Spe Iでの消化により切りとられ、完全なヒト化重鎖(プラスミド2486)を与えるためにプラスミド1990の定常領域遺伝子と結合された。重鎖遺伝子はHind III/EcoR Iでこのプラスミドから切断され、発現ベクターpEE6と結合された。
【0134】
軽鎖の構築
DNAの下記の試料が使用された
1.プラスミド2028
SalI/BanH I制限部位でM13mp18にクローンされたCAMPATH−1H軽鎖遺伝子
2.プラスミド2197
ヒトフレームワーク領域およびマウスカッパ定常領域を含むNSM4.7.2.4の再形成軽鎖のKpn I部位は既にこの遺伝子の可変部分と定常部分の間に導入されている。
【0135】
Kpn I制限部位は、プラスミド2197にある部位と対応するCAMPATH 1H軽鎖遺伝子に導入され、EcoR I部位は定常領域の3′末端で導入された。定常領域遺伝子は、Hind III/Kpn Iの消化によりこのプラスミド(2502)から切り取られた。
【0136】
その間にプラスミド2197のSal I部位は、Hind III部位に変更された(このステップは繰り返されねばならなかったが、その理由は、フレームシフト突然変異が故意にではなく初めて導入されたためであった)。新プラスミド(2736)は、Hind III/Kpn Iで消化された。CD4可変領域断片は、完全ヒト化軽鎖(プラスミド2548)を与えるために、プラスミド2502からのカッパ定常領域遺伝子を含むプラスミドにクローンされた。軽鎖遺伝子はHind III/EcoR Iでこのプラスミドから切断され、プラスミド2798を与えるために発現ベクターpEEと結合された。
【0137】
重鎖と軽鎖の結合およびNSO細胞での発現
重鎖遺伝子はSal I/Bgl IIでの消化によりpEE6ベクターから切り取られ、BamH I/Sal Iで消化された軽鎖pEE12にクローンされた。
【0138】
最終ベクター構築物は、700塩基対軽鎖、1400塩基対重鎖、pEE6の2300塩基対断片およびpEE12の7000塩基対断片を含む予期された断片の存在を知るために、Hind III,EcoR I,Sal I,BanH I,Bg I IIおよびSpe Iでの制限消化により調べられた。
【0139】
pEE12ベクターは、Sal Iでの消化により線形化され、標準プロトコル(セルテック、1991)に従って電気穿孔法によりNSO細胞に形質移入されたが、DMEMよりもIMDMをベースとして選択培地は若干修飾された。形質移入物はグルタミンを欠いた培地で、推奨されたように透析FCS,リボヌクレオシド、グルタミン酸、およびアスパラギンを補充して選択された。
【0140】
形質移入混合物は3個の96ウエル平板で培養され、内36個の増殖中のウエルが試験され、5個はヒト重鎖および軽鎖の産生が強く正であった(他の18個は一方または他方が正であるか、または両方について僅かに正であった。)。
【0141】
SDG/B7B.A.7と名付けられたクローンが選択され、凍結保存されたが、この野生型抗体にはこれ以上の特徴付けは行われなかった。
【0142】
エフェクター機能を廃止するよう指示された突然変位体IgGl抗体の構築
各種臨床試験で報告された他のCD4抗体の副作用に関する懸念の理由から、Fc受容体と係合する可能性を避けることが望ましいと考えられた。ヒトIgG4は、最小のFc結合能力または補体活性能を持つものと考えられる。しかし実験によれば、それはいくつかの個体にあるFc受容体と係合し(グリーンウッド,他、Eur.J.Immunol.,23巻,1098−1104ページ,1993年)、またCAMPATH−1Hに対するヒトIgG4変異体についての臨床研究は、in vivoで細胞を死滅させる能力を提示した(アイザック,他,Clin.Exp.Immunol.,106巻、427−433ページ(1996年))ことが示された。Fc受容体への結合の可能性を排除するために、構築物はIgGl重鎖定常領域で突然変異が作られた。
【0143】
TRX1は、図1Dおよび図1E、また図3Dおよび図3Eで示されるように、Leu236からAla、およびGly238からAlaへの突然変異体を持つ。これらの特殊な残基が選ばれたのは、IgGに対するヒトFc受容体の3個の型すべてへの結合を最大限途絶させると予測されたためであった。いずれかの突然変異はFcRI(ウーフ、他、Mol.Immunol.332巻,563−564ページ,1986;ダンカン,他,Nature,332巻、563−564ページ,1988年;ランド,他,J.Immunol.,147巻,2657−2662ページ,1991)またはFcRII(ランド,他,1991;サーメイ、他、Mol,Immunol.,29巻、633−639ページ、1992年)への結合を減少させるのに十分であったが、一方Gly238からAlaへの突然変異は、Fc RIII(サーメイ、他、1992年)への結合に最大の効果を有している。
【0144】
DNAの下記の試料が使用された
1.プラスミド2555およびプラスミド2555Mut
Hind III/Spe I制限部位でpEE6発現ベクターにクローンされたNSM4.7.2.4のヒト化VH領域。プラスミド2555は、次いで図1Dおよび図1E、または図3Dおよび図3Eで示されるアミノ酸残基Asn101がAsp101に変化するように、部位指向突然変異誘発により突然変異された。
【0145】
2.プラスミド2798
Hind III/EcoR IでpEE12発現ベクターにクローンされた約700塩基対を与えるヒトカッパ定常領域に会合されたNSM4.7.2.4のヒト化VH領域。
【0146】
3.プラスミドMF4260
Leu236からAla、およびGly238からAlaへの突然変異並びにフレームワーク領域4に導入されpUC18にクローンされたSpe I制限部位を持ちヒト化CD18VH領域と会合されたヒトIgGl重鎖。
【0147】
SpeI制限部位の目的は、異なる可変領域の分離と組換えを可能にすることであろう。
【0148】
CD18VH領域は、Spe IおよびHind IIIでの消化によりプラスミドMF4260から切り取られ、今や関連重鎖定常領域のみを持つ残存ベクターは、ジェネクリーンを用いて精製された。それは、同じようにプラスミド2555Mutから単離されたNSM4.7.2.4のヒト化VH領域DNAと連結された。産物は「シュア(Sure)」細胞に形質転換するために使用され、またコロニーは予期された1400塩基対完全重鎖挿入断片の存在を調べられた。
【0149】
完全VHおよび定常領域挿入断片は、Hind IIIおよびEcoR Iでの消化によりpUCベクターから切り取られた。1400塩基対断片はキエックスII(キアーゲン)を用いて精製され、次いで前に同じ酵素から切断されたベクターpEE6に連結された。
【0150】
次ぎのステップは、pEE6ベクターからCD4重鎖遺伝子を切除し、それを、ヒト化CD4軽鎖遺伝子を既に含むpEE12(プラスミド2798)にクローンすることであった。pEE6ベクターはSal IおよびBgI IIで消化され、pEE12ベクターは再結合に適切な部位を創り出すためにSal IおよびBamH Iで消化された。
【0151】
最終ベクター構築物は、予期される断片、すなわちpEE6の700塩基対軽鎖、1400塩基対重鎖、2300塩基対断片、およびpEE12の7000塩基対断片の存在を確認するために、Hind III,EcoR I,Sal IおよびSpe Iの制限消化で調べられた。
【0152】
pEE12ベクターは、Sal Iでの消化により線形化された、前記の電気穿孔法でNSO細胞に形質移入された。形質移入混合物は、6個の96ウエル平板で培養され、試験された90増殖ウエルですべてがヒト重鎖および軽鎖の産生に正であった。この段階でpEE12ベクターDNAの試料はSal Iで消化され、エタノールで沈殿し、セラピューティック・アンティボディ・センター(TAC)に移された。
【0153】
最終形質移入のための標的細胞
NSO細胞は、ECACCから直接得られた(クローンCB1782,マクセッション番号85110503)。マスターセルバンク(MCB)は、英国、オクスフォード、チャーチヒルホスピタル、セラピューティック・アンティボディ・センターで調製された。
【0154】
形質移入および最終トランスフェクタントの選択
pEE12ベクターは前に記載の電気穿孔法により、MCBからNSO細胞に形質移入された。2x107細胞全体が80μgの線形プラスミドDNAで形質移入され、最終量は2.0mlであった。形質移入混合物は12個の96ウエル平板に移され、標準プロトコルに従って、選択培地で培養された(セルテック,グルタミンシンセターゼ遺伝子発現システム、バージョン2−骨髄腫細胞からの発現、改訂6版)。6個の平板は10メチオニンスルホキシイミン(MSX)を含む選択培地を受け入れた。
【0155】
抗体の精製
培地上澄みは下記の3ステップでバイオパイロットクロマトグラフィーシステムを用いて精製される。
【0156】
(1)タンパク質A−セファローズ・ファスト・フローカラムでのアフィニティークロマトグラフィー
(2)S−セファロース・ファスト・フローでのイオン交換クロマトグラフィー
(3)スーパーデックス20でのサイズ排除クロマトグラフィー
精製産物は濾過され、単一バイオコンテナーにプールされた。
【0157】
精製工程を通して、システムが無菌を保つように注意が払われる。すべての緩衝液と試薬は0.2ミクロン膜フィルターを通され、精製産物もプールの前に0.2ミクロンフィルターを通される。抗体1バッチが加工された後、全クロマトグラフィーシステムおよびカラムは0.5MのNaOHで殺菌され、無菌PBSで洗浄され、20%エタノールに貯蔵される。それが再使用される前に、エタノールは無菌PBSで洗浄され、完全な試験走行が行われる。緩衝液の試料とカラム溶離液は内毒素水準で調べられる。
【0158】
実施例2
ヌクレオチド配列から出発するTRX1抗体の構築
ヒト定常領域のクローニング
重鎖定常領域
ヒトガンマ1重鎖定常領域(Ig Gl)は、下記のプライマーセットを使用してヒト白血球cDNA(QUICK−Clone TM cDNA,カタログ番号7182−1,クロンテック)から増幅され、pCR−スクリプト(ストラータジーン)にクローンされる。pCR−スクリプトにヒトガンマ1重鎖定常領域を含むプラスミドは、pHCγ−1と命名される。
【0159】
【0160】
非Fc結合突然変異(Leu236Ala,Gly238Ala)は、下記のプライマーおよびクロンテックからのトランスフォーマーTM部位指向突然変異誘発キット(カタログ番号K1600−1)を使用する部位指向突然変異誘発により重鎖定常領域で作られる。pCR−スクリプトにヒトガンマ1重鎖非Fc結合突然変異体定常領域を含むプラスミドは、pHCγ−1Fcmutと命名される。
【0161】
【0162】
軽鎖定常領域
ヒトカッパ軽鎖定常領域は、下記のプライマーセットを使用してヒト白血球cDNA(Quick−CloneTM cDNA,カタログ番号7182−1,クロンテック)から増幅され、pCR−スクリプト(ストラータジーン)にクローンされる。pCR−スクリプトにヒトカッパ軽鎖定常領域を含むプラスミドは、pLCκ−1と命名される。
【0163】
【0164】
TRX1可変領域の合成、構築およびクローニング
重鎖および軽鎖可変領域は、全可変領域を含む一連の部分的にオーバーラップする相補的合成オリゴヌクレオチドから構築される。各可変領域で使用されるオリゴヌクレオチドは、以下で示される。
【0165】
重鎖可変領域合成オリゴヌクレオチド
【0166】
【0167】
【0168】
HPLC精製と有機溶媒の除去の後、オリゴヌクレオチドはTEpH8.0に再懸濁されリン酸化される。それぞれの可変領域セットでの各オリゴヌクレオチドのアリコートは、次いで等モル量に組合される。オリゴヌクレオチド混合物は、68℃で10分加熱され、その後ゆっくりと室温まで冷却される。アニーリングされたオリゴヌクレオチドは、ついで二本鎖可変領域DNAを産生するよう拡張される。この拡張のため、dNTPsが0.25mMの最終濃度に加えられ、次いで5X T4 DNAポリメラーゼの適当量[トリスアセテート,pH7.9,165nM,酢酸ナトリウム330mM,酢酸マグネシウム50mM,BSA500g/ml,DTT2.5mM]およびT4 DNAポリメラーゼ,4ユニットが続けて加える。混合物は37℃で1時間培養され、次いでT4 DNAポリメラーゼの熱不活化が65℃で5分続く。
【0169】
二本鎖DNAはエタノール沈殿させ、同量のTE pH8.0で再懸濁される。適当量の5X T4 DNAリガーゼ緩衝液[トリス塩酸,pH7.6,250mM,塩化マグネシウム50mM,ATP5mM,DTT5mM,25% w/vポリエチレングリコール−8000]が次いで二本鎖DNAに加えられ、またT4 DNAリガーゼ2ユニットが続き、混合物は拡張断片を連結するために1時間37℃で培養された。次いでT4 DNAリガーゼは、65℃で10分加熱不活化される。可変領域DNA断片は、次いでフェノール抽出、エタノール沈殿、TE,pH8.0に再懸濁され、pCR−スクリプト(ストラータジーン)にクローンされる。重鎖可変領域を含む生成プラスミドはpHV−1と命名され、軽鎖可変領域を含むプラスミドはpLV−1と命名された。
【0170】
最終重鎖および軽鎖発現ベクターは、pcDNA3.1で構築される(インバイトロジェン)。重鎖発現ベクターについては、Fc突然変異定常領域は、Spe IおよびEcoR Iでの消化によりプラスミドpHC−1Fcmutから放出され、アガロースゲル電気泳動により単離される。重鎖可変領域は、Hind IIIおよびSpe Iでの消化によりプラスミドpHV−1から放出され、アガロースゲル電子泳動により単離される。同一モル量の2個の断片は、通常の分子生物学手法を用いて、pcDNA3.1(+)(インバイトロジェン)のHind III/EcoR I部位に連結される。生成TRX1重鎖発現ベクターは、pTRX1/HCと命名される。
【0171】
同様に、軽鎖発現ベクターについては、軽鎖定常領域は、Kpn IとHind IIIでの消化によりプラスミドpLC−1から放出され、次いでアガロースゲル精製が行われる。軽鎖可変領域は、EcoRIおよびKpn Iでの消化によりpLV−1から放出され、次いでアガロースゲル精製が続く。等モル量の2個の軽鎖断片は、通常の分子生物学手法を用いて、pcDNA3.1(−)(インバイトロジェン)のEcoR I/Hind III部位に連結され、TRX1軽鎖発現ベクターpTRX1/LCを産出する。
【0172】
TRX1抗体の産生については、TRX1重鎖およびTRX1軽鎖発現プラスミドは通常の分子生物学手法を用いてCHO細胞に同時形質移入される。
【0173】
実施例3
図2A,図2C,図2Dおよび、図2Fで示されるヒト化抗体は、実施例1のものと同じ手順で産生される。ヒト化抗体は、非グリコシル化(非糖鎖付加)抗体である。
【0174】
実施例4
図4A,図4C,図4Dおよび、また図4Fで示されるヒト化抗体は、実施例1のものと同じ手順で産生される。ヒト化抗体は、非グリコシル化(非糖鎖付加)抗体である。
【0175】
実施例5
混合リンパ球反応(MLR)は、外来ヒト組織適合抗原を認識する特発されたヒトリンパ球を生成するために使用される。この反応を創り出すために、ヒト末梢血リンパ球がフィコール密度勾配遠心分離法または類似の方法を用いて異なる2個の個体(供与体Aと供与体B)からヘパリン化全血から単離された。供与体Bからのリンパ球は、血清はないがマイトマイシンC50ug/mlを含むRPMI 1640培地で107/mlに調節される。細胞は37℃で30分培養され、次いで供与体A血漿10%でRPMI 1640で3回遠心分離でマイトマイシンCを持つ培地を洗浄される。マイトマイシンCで処理されなかった供与体Aからの細胞は、供与体A血漿10%でRPMI 1640で4x106/mlに調節される。洗浄後、供与体BからのマイトマイシンC処理リンパ球は、供与体A血漿10%でRPMIで4x106/mlに調節される。供与体Aと供与体Bの細胞の等量が混合され、適切な大きさの組織培養フラスコで試験される化合物、あるいは薬剤、処置または方法と組み合わされた前記化合物(「試験化合物」)に配置される。試験化合物のあるまたはないフラスコは、次いで37℃で空気中炭酸ガス濃度5%で7−10日間培養される。これは一次混合リンパ球反応である。
【0176】
一次MLRにおける細胞が活性化され、3−7日の間に分裂を開始し、活性増殖の期間に続いて細胞がより休止状態に戻るのを観察することができる。この期間は変化させることができるが、細胞は通常7−10日の間に休止に戻る。一度細胞が休止にあると見えれば、試験化合物ありまたはなしの一次MLRフラスコから得た細胞は、遠心分離で回収され、4x106mlで供与体A血漿10%を持つRPMI 1640に再懸濁することができる。新鮮PBLは供与体Bからのヘパリン化全血からフィコール密度勾配により調製されたマイトマイシンCで再び不活性化され、不活性化供与体B細胞は、供与対A血漿10%を持つRPMI 1640で4x106/mlに調節される。二次MLRに対して、等量の一次MLR細胞(試験化合物不在下で行われた一次MLRからの細胞)は、マイトマイシン不活化供与体B細胞と混合される。
【0177】
一次MLR細胞(試験化合物不在下で行われたMLRから得られた細胞)が、緑蛍光染料であるCFSE,これは生体細胞に移入され、そこで酵素により作用を受け、次いで細胞タンパク質と反応するが、このCFSEで標識されると、標識細胞で時間にわたり経験した細胞分裂数は、各細胞と結合する緑標識の減少に反映される。もしCFSE標識MLR細胞が、試験化合物誘導MLR細胞に対して2:1乃至10:1MLRの比率で試験化合物が処理一次MLRから誘導れた細胞に加えられた二次MLRで刺激される場合には、CFSE標識MLR細胞増殖の阻害が、試験化化合物誘導細胞の不在下で二次MLRで刺激されるCFSE標識MLR細胞の増殖と対比した場合に、刺激の3−4日以内で二次MLRで観察されるであろう。
【0178】
一次MLRおよび二次MLRで産生された細胞(ならびに対照MLRで提供された細胞)は、前記記載のCD4+CD25+細胞を分析される。
【0179】
対照と比較してTRX1が前に記載の通り試験された場合、CD4+CD25+細胞は一次MLRで60%以上減少し、二次MLRでは20%以上減少し、また二次MLRでは、対照と比較してIL−2,IL−4,IL−12の産生は基本的に除去され、IL−5,IL−13,IFNガンマおよびTNFアルファの産生は40%以上も削減された。
【0180】
実施例6
非枯渇抗CD4モノクローナル抗体であるTRX1の使用による非ヒト霊長類での抗原特異的免疫寛容の誘導は、下記の研究で実証された。ヒヒ(Papio anubus)が任意に3匹の動物の7グループに分割された。7グループは4個の実験グループ,4,6,7および8より成り、3個の対照グループ1,5および9が指定された。本研究は2フェーズより成り、まず免疫化/免疫寛容フェーズがあり、次いで攻撃誘発フェーズであった。
【0181】
本研究の免疫化/免疫寛容フェーズに関して、グループ4,6,7および8は第0日、第4日および第8日それぞれ1用量で抗原1(生理食塩水で10mg)を3用量使って免疫化された。抗原1は最初の用量が静脈内(iv)、続くすべての用量が皮下(SC)で投与される多価集合体ホースIgG(抗蛇毒素)である。プロトコルのこのフェーズの間、グループ4,6,7および8は、更に非枯渇抗CD4モノクローナル抗体、TRX1の4用量を以下の通り静脈内で受けた。すなわちグループ4は、第1日、第4日、第8日および第12日に20mg/Kgの4用量を受け入れた。グループ6は、第1日、第3日、第8日および第12日にTRX1の1mg/Kgを受けた。グループ7は、第1日、第3日、第8日および第12日に10mg/Kgを受けた。グループ8は、第1日、第3日、第8日および第12日に40mg/Kgを受けた。
【0182】
対照グループ1および5は、プロトコルの免疫化/免疫寛容フェーズの間に下記の通り処置された。グループ1は、抗原1を10mg/Kgで3用量を受け、第0日、第4日および第8日に各1用量であった。グループ5は、20mg/KgのTRX1抗体の4用量を静脈内で受け、第1日、第4日、第8日および第12日各1用量であった。グループ9は40mg/KgのTRX1抗体を静脈内で4用量受け、第1日、第4日、第8日および第12日各1用量であった。
【0183】
血液は、ELISAによるTRX1の血清水準、循環リンパ球サブセット水準に対するTRX1処置の薬力学効果、同じくフローサイトメトリーによるCD4受容体占有率、ならびにELISAによる抗原1のヒヒ抗体応答などを評価するために、抗原1およびまたはTRX1の各注入の前、およびその1週間後に収集された。
【0184】
抗体価(抗体力価)などで測定されるグループ1,4,6,7および8の研究で最初の68日間にわたる抗蛇毒素の免疫応答が図5で示される。
【0185】
本研究の改正誘発フェーズは、TRX1の血清水準が検出不能水準に達してすぐ開始された。攻撃誘発フェーズとしては、すべてのグループのすべての動物は、抗原1(10mg/Kg、皮下)および抗原2(1.7ml/Kg)で(第68日に)攻撃誘発された。抗原2は、1用量で静脈内に与えられるヒツジ赤血球細胞の10%生理食塩水である。抗原1による攻撃誘発は、対照グループ5および9、ならびに試験グループ4および8に対し、第95日および第135日に反復された。血液は、抗原1、TRX1の血清水準、および抗原1ならびに抗原2に対するヒヒ抗体応答を評価するために、各攻撃誘発前に収集された。
【0186】
図6は、最初の攻撃誘発(第68日−第95日)後に、すべてのグループに対して抗体価の測定による抗蛇毒素に対する免疫応答を示す。図7は、攻撃誘発1、攻撃誘発2、および攻撃誘発3の行われた後、グループ1,4,5,8および9に対する抗体価の測定による抗蛇毒素に対する免疫応答を示す。
【0187】
ヒツジ赤血球細胞に対するグループ1,4および5の免疫応答の結果は、図8で示される。
【0188】
すべての特許、刊行物(公開特許出願を含む)、寄託、アクセッション番号、およびデータベースアクセッション番号は、あたかも各特許、刊行物、寄託アクセッション番号、およびデータベースアクセッション番号が、特異的かつ個別的に引用例としてここに組み込まれるものと同じ範囲で、引用例としてここに組み込まれる。
【0189】
実施例7
薬剤、処置または方法と組合されたTRX1の投与による免疫寛容の誘導は、下記の通り例示される。必ずしも限定されないが、セルセプトTM(Cell CeptTM)などの薬剤、処置または方法は、必ずしもそれに限定されないが齧歯目などの哺乳網への免疫寛容を誘発するために、必ずしもそれに限定されないが、TRX1などの本発明の化合物と連係して使用することができる。
【0190】
必ずしもそれに限定されないが、C57BL6などの齧歯目のグループは、それに対し免疫寛容が必要とされるヒト免疫グロブリンG(hIgG)などの抗原の特発用量で処置することができる。hIgGの適切な単一用量(例えば2mg/Kg)は、例えば免疫寛容処方の24日前に静脈内注射により与えられるであろう。
【0191】
第25日に、免疫寛容フェーズは、マウスがTRX1またはTRX1とセルセプトTMの組合せで、またhIgGの追加用量の投入で処置されることで開始する。用量処方は下記の通りである。グループIは、第1日、第3日、第5日、第7日、第9日および第11日に50mg/Kgの用量でTRX1単独で与えられる。グループIIは、前記のTRX1に加えて、第2−第14日にセルセプトTM(50mg/Kg)の注射を受ける。グループIIIは、前記の用量でセルセプトTMのみを受ける。グループI,IIおよびIIIは、前記の用量に加えて、第0日、第4日および第8日にhIgGを10mg/Kgで受ける。グループIVは前記の用量でhIgGのみを受ける。すべての用量は、例えば静脈内注射により与えられるであろう。
【0192】
攻撃誘発フェーズは、各グループが例えば5mg/KgでhIgGの静脈内注射を与えられる第118日に開始する。血清が集められ、処置された動物がhIgGに対する抗体応答を仕掛けることができるかどうかを確認するために、数多くの従来の技術で認められた方法のいずれかで血清は評価される。追加攻撃誘発は、例えば5mg/KgのhIgGおよび5mg/Kgのオボアルブミンの静脈内注射を用いて第152日および第180日に仕掛けられる。もし動物がhIgGに免疫寛容化された場合には、処置されたグループ(グループI,IIおよびIII)でのhIgGに特異的な抗体水準は、対照グループ(グループIV)と比較して減少することであろう。
【0193】
しかし本発明の範囲は、前に記載の特異的な実施例に限定されるものでないことは理解されねばならない。本発明は特に記載されたもの以外にも実施することができ、またそれでも冒頭に掲げた請求範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1A】TRX1抗体の第1実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図1B】TRX1抗体の第1実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図1C】TRX1抗体の第1実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図1D】TRX1抗体の第1実施例のグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図1E】TRX1抗体の第1実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図1F】TRX1抗体の第1実施例のハイライトCDRsを持ちグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸配列を示す図
【図2A】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図2B】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図2C】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図2D】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図2E】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図2F】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す図
【図3A】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列示す図
【図3B】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図3C】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図3D】TRX1抗体のもう一つの実施例のグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図3E】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図3F】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持ちグリコシル化部位を含む重鎖アミノ酸配列を示す図
【図4A】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図4B】TRX1抗体のもう一つの実施例の軽鎖核酸配列を示す図
【図4C】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ軽鎖アミノ酸配列を示す図
【図4D】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖アミノ酸およびDNA配列を示す図
【図4E】TRX1抗体のもう一つの実施例の重鎖ヌクレオチド配列を示す図
【図4F】TRX1抗体のもう一つの実施例のハイライトCDRsを持つ重鎖アミノ酸配列を示す図
【図5】抗蛇毒素のみまたはTRX1抗体を組合せたものを与えられたヒヒグループ研究の最初の68日間(すなわち免疫寛容化フェーズ)での抗蛇毒素に対する免疫応答を示す図
【図6】攻撃誘発の68日前に抗蛇毒素のみ、またはTRX1を組合せて与えられたヒヒグループに対する抗蛇毒素およびヒツジ赤血球攻撃誘発に続く抗蛇毒素に対する免疫応答を示す図
【図7】最初の攻撃誘発の68日の後に抗蛇毒素のみまたはTRX1抗体を組合せて与えられたヒヒグループに対する各3回の抗蛇毒素の攻撃誘発に続く抗蛇毒素に対する免疫応答を示す図
【図8】抗蛇毒素に対するTRX1免疫寛容化後のヒツジ赤血球への免疫応答を描く図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の抗原に免疫寛容を誘導するために霊長類を処置する一つのプロセスであって、
一つの霊長類に1個の化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せを投与することにより霊長類を処置し、前記化合物または前記組合せは、in vitroでの一次混合リンパ球反応において、前記混合リンパ球反応で産生されたCD4+CD25+細胞量を減少させ、また一次および二次混合リンパ球反応の少なくとも1個でin vitroで産生されたCD4+CD25+細胞量(x)と、二次混合リンパ球反応でのIL−2,IL−4およびIL−12の少なくとも1個の量(y)の少なくとも1個を減少させる細胞集団を生成する化合物または組合せであり、前記化合物または前記組合せは、前記少なくとも1個の抗原に対し免疫寛容を誘導するための有効量および有効時間に投与され、前記少なくとも1個の抗原が前記霊長類に存在する場合に、前記化合物または前記組合せが前記霊長類に存在する、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1記載のプロセスであって、ここで前記化合物または組合せの少なくとも1個の化合物が抗体であることを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項2記載のプロセスであって、ここで前記抗体がCD4抗体であることを特徴とするプロセス。
【請求項4】
少なくとも1個の抗原に免疫寛容を誘導するために霊長類を処置する一つのプロセスであって、
少なくとも1個の抗原に対し免疫寛容を誘導するための有効量および有効時間に、CD4抗体またはCD4結合断片を単独またはもう一つの化合物と組合わせて霊長類に投与することにより霊長類を処置し、前記抗原が前記霊長類に存在する場合に前記CD4抗体または断片が前記霊長類に存在し、また少なくとも40mgの当初用量で投与される場合に、前記処置が少なくとも1個の抗原に免疫寛容を誘導する、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項4記載のプロセスであって、ここで前記CD4抗体が単独でまたはもう一つの化合物と組合せて少なくとも1回の追跡用量で投与され、前記追跡用量は少なくとも40mgであることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項4記載のプロセスであって、ここで前記少なくとも1個の抗原が外来抗原であることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項5記載のプロセスであって、ここでCD4抗体が非糖鎖付加Fc部分を持つことを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項5,6または7のいずれか1項記載のプロセスであって、ここで抗体が図1で示される抗体、図2で知れさめる抗体および図3で示される抗体および図4で示される抗体より成るグループから選択される抗体と同じエピトープと結合するCD4抗体であることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項8記載のプロセスであって、ここで抗体がヒト化抗体またはその断片であることを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項8記載のプロセスであって、ここで抗体がFc受容体と結合しないことを特徴とするプロセス。
【請求項11】
一つの抗体であって、図1で示されるヒト化抗体および図2で示されるヒト化抗体および図3で示されるヒト化抗体および図4で示されるヒト化抗体より成るグループから選択されるヒト化抗体と同じエピトープと結合することを特徴とする抗体。
【請求項12】
一つの組成物であって、
(a)請求項11記載の抗体、および
(b)薬理許容担体
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項13】
患者にある抗原に免疫寛容を誘導する一つのプロセスであって、
請求項11記載の抗体を単独でまたはもう一つの化合物と組合せて前記患者に投与することにより前記患者を処置し、前記抗体または前記組合わせが前記患者に免疫寛容を誘導する有効量で投与される、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項14】
患者にある免疫応答を阻害する一つのプロセスであって、
請求項11記載の抗体を単独またはもう一つの化合物と組合せてその有効量を前記患者に投与することにより前記患者を処置する、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項15】
ヒト患者における移植片拒絶を阻害する一つのプロセスであって、
請求項11記載の抗体を単独でまたはもう一つの化合物と組合せて前記患者に投与することにより前記患者を処置し、ここで前記抗体またはその組合わせが前記移植片の拒絶を阻害する有効量で投与される、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項16】
免疫寛容を誘導するのに使用される1個の化合物、または少なくとも2個の化合物の組合わせをスクリーニングするための一つのプロセスであって、
(a)免疫寛容を誘導する能力を試験される前記化合物、または前記組合わせの存在下で、T細胞を刺激しその増殖をもたらし、また
(b)前記化合物または前記組合わせが前記細胞の減少に正であるいずれもCD4およびCD25であるそのような細胞の産生を減少させたかどうかを決定するために、いずれも正のCD4およびCD25である細胞の存在を決定し、前記化合物または前記組合わせが免疫寛容を誘導できることを示す、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項17】
請求項16記載のプロセスであって、更にステップ(a)で産生された細胞の存在下で2次混合リンパ球反応(MLR)を実施し、CD4+CD25+細胞(x)とIL−2,IL−4およびIL−12の少なくとも1個(y)の少なくとも1個、ならびに(x)または(y)の少なくとも1個の減少を確認し、前記化合物または前記組合わせが免疫寛容を誘導できることを示すことを特徴とするプロセス。
【請求項1】
少なくとも1個の抗原に免疫寛容を誘導するために霊長類を処置する一つのプロセスであって、
一つの霊長類に1個の化合物、または少なくとも2個の化合物の組合せを投与することにより霊長類を処置し、前記化合物または前記組合せは、in vitroでの一次混合リンパ球反応において、前記混合リンパ球反応で産生されたCD4+CD25+細胞量を減少させ、また一次および二次混合リンパ球反応の少なくとも1個でin vitroで産生されたCD4+CD25+細胞量(x)と、二次混合リンパ球反応でのIL−2,IL−4およびIL−12の少なくとも1個の量(y)の少なくとも1個を減少させる細胞集団を生成する化合物または組合せであり、前記化合物または前記組合せは、前記少なくとも1個の抗原に対し免疫寛容を誘導するための有効量および有効時間に投与され、前記少なくとも1個の抗原が前記霊長類に存在する場合に、前記化合物または前記組合せが前記霊長類に存在する、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1記載のプロセスであって、ここで前記化合物または組合せの少なくとも1個の化合物が抗体であることを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項2記載のプロセスであって、ここで前記抗体がCD4抗体であることを特徴とするプロセス。
【請求項4】
少なくとも1個の抗原に免疫寛容を誘導するために霊長類を処置する一つのプロセスであって、
少なくとも1個の抗原に対し免疫寛容を誘導するための有効量および有効時間に、CD4抗体またはCD4結合断片を単独またはもう一つの化合物と組合わせて霊長類に投与することにより霊長類を処置し、前記抗原が前記霊長類に存在する場合に前記CD4抗体または断片が前記霊長類に存在し、また少なくとも40mgの当初用量で投与される場合に、前記処置が少なくとも1個の抗原に免疫寛容を誘導する、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項4記載のプロセスであって、ここで前記CD4抗体が単独でまたはもう一つの化合物と組合せて少なくとも1回の追跡用量で投与され、前記追跡用量は少なくとも40mgであることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項4記載のプロセスであって、ここで前記少なくとも1個の抗原が外来抗原であることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項5記載のプロセスであって、ここでCD4抗体が非糖鎖付加Fc部分を持つことを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項5,6または7のいずれか1項記載のプロセスであって、ここで抗体が図1で示される抗体、図2で知れさめる抗体および図3で示される抗体および図4で示される抗体より成るグループから選択される抗体と同じエピトープと結合するCD4抗体であることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項8記載のプロセスであって、ここで抗体がヒト化抗体またはその断片であることを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項8記載のプロセスであって、ここで抗体がFc受容体と結合しないことを特徴とするプロセス。
【請求項11】
一つの抗体であって、図1で示されるヒト化抗体および図2で示されるヒト化抗体および図3で示されるヒト化抗体および図4で示されるヒト化抗体より成るグループから選択されるヒト化抗体と同じエピトープと結合することを特徴とする抗体。
【請求項12】
一つの組成物であって、
(a)請求項11記載の抗体、および
(b)薬理許容担体
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項13】
患者にある抗原に免疫寛容を誘導する一つのプロセスであって、
請求項11記載の抗体を単独でまたはもう一つの化合物と組合せて前記患者に投与することにより前記患者を処置し、前記抗体または前記組合わせが前記患者に免疫寛容を誘導する有効量で投与される、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項14】
患者にある免疫応答を阻害する一つのプロセスであって、
請求項11記載の抗体を単独またはもう一つの化合物と組合せてその有効量を前記患者に投与することにより前記患者を処置する、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項15】
ヒト患者における移植片拒絶を阻害する一つのプロセスであって、
請求項11記載の抗体を単独でまたはもう一つの化合物と組合せて前記患者に投与することにより前記患者を処置し、ここで前記抗体またはその組合わせが前記移植片の拒絶を阻害する有効量で投与される、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項16】
免疫寛容を誘導するのに使用される1個の化合物、または少なくとも2個の化合物の組合わせをスクリーニングするための一つのプロセスであって、
(a)免疫寛容を誘導する能力を試験される前記化合物、または前記組合わせの存在下で、T細胞を刺激しその増殖をもたらし、また
(b)前記化合物または前記組合わせが前記細胞の減少に正であるいずれもCD4およびCD25であるそのような細胞の産生を減少させたかどうかを決定するために、いずれも正のCD4およびCD25である細胞の存在を決定し、前記化合物または前記組合わせが免疫寛容を誘導できることを示す、
ことを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項17】
請求項16記載のプロセスであって、更にステップ(a)で産生された細胞の存在下で2次混合リンパ球反応(MLR)を実施し、CD4+CD25+細胞(x)とIL−2,IL−4およびIL−12の少なくとも1個(y)の少なくとも1個、ならびに(x)または(y)の少なくとも1個の減少を確認し、前記化合物または前記組合わせが免疫寛容を誘導できることを示すことを特徴とするプロセス。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2006−519228(P2006−519228A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503184(P2006−503184)
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/002643
【国際公開番号】WO2004/067554
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505287162)トラークス,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(502125049)アイシス インノベーション リミテッド (1)
【出願人】(503421575)ケンブリッジ・ユニバーシティ・テクニカル・サービシズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/002643
【国際公開番号】WO2004/067554
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505287162)トラークス,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(502125049)アイシス インノベーション リミテッド (1)
【出願人】(503421575)ケンブリッジ・ユニバーシティ・テクニカル・サービシズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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