説明

抗微生物コーティングポリマーフィルム

第1および第2の表面を有するポリマー基材層を含み、その表面上のコーティングは、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、かつコーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含む抗微生物ポリマーフィルムであって、(i)前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供し、かつ/または(ii)前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度であるような、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供することを特徴とする抗微生物ポリマーフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、抗微生物ポリマーフィルム、特にポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
抗微生物特性を有するポリマーフィルムの調製は、よく知られている。そのようなフィルムは、抗微生物表面の提供、例えば医療およびケータリング環境において有用である。抗微生物特性は、抗微生物剤を用いて付与される。そのようなフィルムの調製は、典型的に、抗微生物剤をポリマーマトリクス中、あるいは1つまたは複数の表面上にコーティングとして配置することを含む。望ましくは、抗微生物剤は、種々の微生物に対して広範囲の活性を有し、高等生物に対して低い毒性特性を有するべきである。金属イオン、特に銀イオンは、抗真菌、抗菌、および抗藻活性(以下、抗微生物活性と称する)を示すことが長い間知られてきた。近年、例えば特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されているように、リン酸ジルコニウムに担持された抗微生物金属イオンの使用が提示された。特許文献4は、食品の包装および医療装置に有用である、特にPVC、ポリオレフィン、ポリエステル、および/またはポリビニルアルコール層を含む、共押し出しフィルムまたは積層フィルムにおけるゼオライト抗菌剤の使用を開示している。特許文献5は、ポリマー基材上に少なくとも厚さ5μmの層としてコーティングされる、(a)5〜40%のラクチドまたは乳酸オリゴマー、(b)0〜20%の有機可塑剤、および(c)60〜95%の乳酸ポリマーまたはコポリマーの抗菌組成物を含む包装フィルムを開示している。特許文献6は、食品包装での使用に適している、無機および/または有機抗菌剤、ならびに親水性物質を含む抗菌フィルムを開示している。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,441,717号明細書
【特許文献2】特開平3−83905号明細書
【特許文献3】米国特許第5,296,238号明細書
【特許文献4】米国特許第5,556,699号明細書
【特許文献5】米国特許第5,639,466号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0846418号明細書
【特許文献7】英国特許出願公開第838708号明細書
【特許文献8】米国特許第5,328,724号明細書
【特許文献9】米国特許第5,151,331号明細書
【特許文献10】米国特許第3,959,526号明細書
【特許文献11】米国特許第6,004,660号明細書
【特許文献12】米国特許第4,375,494号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗微生物剤は比較的高価であり、消費者は抗微生物有効性とコストとを一般に比較考量しなければならない。一定の抗微生物有効性に対してより経済的な抗微生物フィルム、または一定のコストに対してより高い抗微生物有効性を有するフィルムを提供することが望ましい。さらに、現存する抗微生物フィルムは、包装適用例、例えば食品包装適用例に充分である湿気および/または酸素に対するバリア特性を一般に示さず、現存するフィルムは、シール可能(例えば、ヒートシール可能)ではない。さらに、現存する抗微生物フィルムは、抗微生物剤を含まないフィルムと比較して、低いヘイズおよび高い光沢など、良好な光学特性を一般に示さない。本発明の目的は、1つまたは複数の前述の問題に対処する抗微生物フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、第1および第2の表面を有するポリマー基材層を含み、その表面上のポリマーコーティングは、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、かつコーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含む抗微生物ポリマーフィルムであって、(i)前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供し、かつ/または(ii)前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度であるような、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供することを特徴とする抗微生物ポリマーフィルムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明者等は、意外にも、所定量の抗微生物剤に対して、比較的薄いコーティングが、厚いコーティングに比べてより高い抗微生物活性を提供することを見出した。コーティングの厚さがある閾値を超えると、コーティング中の抗微生物剤の量の増大は、抗微生物効果の比例的増大をもたらさない。さらに、コーティングの厚さがある閾値より下方に保たれている場合、その値は抗微生物剤の粒径と相関する可能性があり、比較的小さい粒径を有する低量の抗微生物剤は、抗微生物活性を損なうことなく用いることができる。さらに、用いられる抗微生物剤の量の減少は、コーティングフィルムのヘイズを相応に低減する。
【0007】
本明細書では、「抗微生物」という用語は、殺微生物活性、または微生物集団における微生物増殖阻害を意味する。一実施形態において、微生物は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、および大腸菌(Escherichia coli.)からなるグループから選択される。一実施形態において、「抗微生物」という用語は、対照に比べて、微生物集団の増殖が、1より大きい対数減少、好ましくは2より大きい対数減少、好ましくは3より大きい対数減少、より好ましくは4より大きい対数減少であることを意味する。
【0008】
抗微生物剤は、無機または有機化合物、あるいはそれらの混合物であることができる。
【0009】
本明細書では、「無機抗微生物剤」という用語は、抗微生物特性を有する、銀、亜鉛、銅などの金属または金属イオンを含有する無機化合物に対する一般的な用語である。無機抗微生物剤は、液体または固体であることができ、好ましくは固体である。金属含有種は、シリカなどの金属酸化物、ゼオライト、合成ゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、セラミック、可溶ガラス粉末、アルミナシリコン(alumina silicone)、チタンゼオライト、アパタイト、炭酸カルシウムなどの無機基材に担持されていることができる。
【0010】
本明細書では、「有機抗微生物剤」という用語は、そのすべてが抗微生物特性を有し、一般に窒素、硫黄、リンなどの元素を含有する、天然抽出物、低分子有機化合物、および高分子化合物に対する一般的な用語である。有用な天然抗微生物剤の例は、キチン、キトサン、ワサビ抽出物、マスタード抽出物、ヒノキチオール、茶抽出物などである。有用な低分子有機化合物の例は、イソチオシアン酸アリル、ポリオキシアルキレントリアルキルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ヘキサメチレンビグアミド、第四アンモニウム塩など、有機ケイ素第四アンモニウム塩、フェニルアミド、ジグアミド(diguamide)、テトラアルキルホスホニウム塩である。低分子有機抗微生物剤のなかで、ホスホニウム塩化合物は、高い抗微生物活性を示す。有用なホスホニウム塩化合物の例は、ホスホニウムの無機および有機酸塩、例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルホイソフタル酸塩、スルホテレフタル酸塩、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸塩、およびトリ−n−ブチルデシルホスホニウム、トリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウム、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム、トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム、トリ−n−ブチルドデシルホスホニウム、トリ−n−ブチルデシルホスホニウム、またはトリ−n−ブチルオクタデシルホスホニウムのスルホン酸塩などであり、これらのなかでトリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウム塩、トリ−n−ブチルテトラデシルホスホニウム塩、およびトリ−n−ブチルドデシルホスホニウム塩が好ましい。抗微生物特性を有する高分子化合物には、当分野で知られているように、直鎖または分枝ポリマー鎖に結合したアンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基などのオニウム塩、フェニルアミド基、ジグアミド基を有するもの、例えばホスホニウム塩を含有するビニルポリマーが含まれる。他のホスホニウム塩グループを含有する高分子化合物の例には、主成分としてジカルボン酸成分、グリコール成分、および1から50モル%の量でスルホン酸グループを含有する芳香族ジカルボン酸のホスホニウム塩を含有するポリエステルコポリマーが含まれる。
【0011】
典型的な抗微生物剤には、これに限定されるものではないが、フタルイミド、アセトイミド、フタロニトリル、安息香酸およびヒドロキシ安息香酸を含むその誘導体、イソチアゾリノン、ニトロプロパンジオール、カルバメート、メチル尿素、ベンズイミダゾール、サリチルアニリド、トリクロサンベース抗微生物剤、ベノミー(benomy)、ソルビン酸およびその誘導体、キチンおよびキトサンならびにそれらの誘導体、二酸化塩素発生粉末系、酢酸水銀、有機亜鉛化合物、銀、銅、および亜鉛などの金属、そのような金属のイオンが含まれる。
【0012】
液体抗微生物剤には、ジブロモシアノアセトアミド(例えば、Drew Industrial Division of Ashland Chemicals、Boonton、N.J.、USA製のAmerstat.RTM.300)が含まれる。固体抗微生物剤には、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(例えば、Angus Chemical Co.、Buffalo Grove、Illinois、USA製のCanguard RTM 409)、および3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジン−2−チオン(例えば、Creanova,Inc.、Piscataway、N.J.、USA製のNuosept RTMS、またはTroy Chemical Corp.、West Hanover、N.J.、USA製のTroysan RTM 142)が含まれる。他の固体抗微生物剤には、N−(トリクロロメチル)−チオフタルイミド(例えば、Creanova,Inc.製のFungitrol RTM 11)、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル(例えば、International Sourcing Inc.、Upper Saddle River、N.J.、USA製のButyl Parabens RTM)、ジヨードメチル−p−トリスルホン(例えば、Angus Chemical Co.製のAmical RTM WP)、およびテトラクロロイソフタロニトリル(例えば、Creanova,Inc.製のNuocide RTM 960)が含まれる。
【0013】
金属を含有する抗微生物剤に関しては、銀含有剤が特に好ましい。抗微生物に用いる銀の供給源には、金属銀、銀塩、銀を含む有機化合物が含まれる。銀塩には、炭酸銀、硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、フッ化銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、硝酸銀、酸化銀、およびリン酸銀が含まれる。銀を含有する有機化合物には、例えば、アセチルアセトン酸銀、ネオデカン酸銀、およびエチレンジアミンテトラ酢酸銀を含むことができる。
【0014】
銀含有ゼオライト(例えば、Ag(I)として2.5%の銀を含有するAgION.TM.Tech.L.L.C.、Wakefield、Mass.、USA製のAJ10D)が特に用いられる。ゼオライトは、ポリマーマトリクスに運ばれたとき、高等生物を害することなく微生物を殺すこと及び阻害することに有効な速度および濃度で銀イオンを提供することができるため有用である。
【0015】
好ましい実施形態において、抗微生物化合物は、特許文献1または特許文献3に開示されているものから選択される。好ましくは、抗微生物化合物は、以下の式(I)を有し、
1abc22(PO43・nH2O (I)
式中、
1は、銀、銅、亜鉛、スズ、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウム、およびクロムから選択された少なくとも1種の金属イオンであり、
Aは、アルカリまたはアルカリ土類金属イオンから選択された少なくとも1種のイオンであり、
2は、4価金属イオンであり、
aおよびbは、正数であり、cは、0または(ka+b+mc)=1であるような正数であり、
kは、金属M1の原子価であり、
mは、金属Aの原子価であり、
0≦n≦6である。
【0016】
好ましくは、M1は銀であり、抗微生物化合物は、以下の式(II)を有し、
Agabc2(PO43・nH2O (II)
式中、
Aは、アルカリまたはアルカリ土類金属イオンから選択された少なくとも1種のイオンであり、
Mは、4価金属イオンであり、
a、b、およびcは、(a+b+mc)=1であるような正数であり、
mは、金属Aの原子価であり、
0≦n≦6である。
【0017】
式(I)の抗微生物化合物は、特許文献1または特許文献3に記載の方法に従って調製することができる。抗微生物銀イオンは、リン酸ジルコニウムに担持されている。金属Aは、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択され、好ましくはナトリウムである。金属Mは、好ましくは、ジルコニウム、チタニウム、およびスズ、好ましくはジルコニウムおよびチタニウムから選択され、好ましくはジルコニウムである。
【0018】
パラメータ「a」の値は、好ましくは少なくとも0.001、より好ましくは少なくとも0.01であり、好ましくは0.01から0.5、より好ましくは0.1から0.5、さらに好ましくは0.10から0.30の範囲である。一実施形態において、パラメータ「a」の値は、0.4から0.5の範囲、または0.15から0.25の範囲であり、好ましくは0.4から0.5の範囲である。
【0019】
パラメータ「b」の値は、好ましくは少なくとも0.2、より好ましくは0.2から0.7の範囲、さらに好ましくは0.2から0.60の範囲である。一実施形態において、パラメータ「b」の値は、0.2から0.3の範囲である。
【0020】
一実施形態において、抗微生物化合物は、Ag0.18Na0.570.25Zr2(PO43およびAg0.46Na0.290.25Zr2(PO43から選択される。
【0021】
無機抗菌剤の他の特定の例は、Novaron(Toagosei Co.,Ltd.の製品)、Bactekiller(Kanebo Kasei Co.,Ltd.)、抗菌球状セラミックの微粒子S1、S2、S5(Adomatex Co.,Ltd.)、Horonkiller(Nikko Co.,Ltd.)、Zeomic(Sinagawa Fuel Co.,Ltd.)、Amenitop(Matsushita Electric Industrial Co.,Ltd.)、Ionpure(Ishizuka Glass Co.,Ltd.)などの銀ベース抗菌剤、Z−Nouve(Mitsui Mining & Smelting Co.,Ltd.)などの亜鉛ベース抗菌剤、P−25(Nippon Aerosil Co.,Ltd.)、ST−135(Ishihara Sangyo Co.,Ltd.)などの二酸化チタンの微粒子、ならびにそれらのゾルゲル材料である。有用な複合粒子には、例えばシリカでコーティングされた二酸化チタンの微粒子、GYT(Goyoshiko Co.,Ltd.の製品)が含まれる。
【0022】
ポリマー基材層は、自己支持フィルムまたはシートであり、これはフィルムまたはシートが支持基剤の不在下で独立して存在できることを意味する。この基材は、ポリオレフィン(ポリエチレンおよびポリプロピレンなど)、ポリアミド(ナイロンを含む)、PVC、およびポリエステルを含む、任意の適切なフィルム形成ポリマーから形成することができる。ポリマー基材は、下により詳しく論じるように、配向ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート(PET)などの配向性、あるいは非晶質であることができる。好ましい実施形態において、基材はポリエステルであり、特に合成線状ポリエステルである。
【0023】
基材の好ましい合成線状ポリエステルは、1種または複数のジカルボン酸、またはそれらの低級アルキル(炭素原子6個まで)ジエステル、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−、2,6−、2,7−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、または1,2−ビス−p−カルボキシフェノキシエタン(任意選択的に、ピバリン酸などのモノカルボン酸を含む)を、1種または複数のグリコール、特に脂肪族または脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールと縮合することによって得ることができる。芳香族ジカルボン酸が好ましい。脂肪族グリコールが好ましい。ω−ヒドロキシアルカン酸(典型的にC3〜C12)、例えばヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、または2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸などのヒドロキシカルボン酸モノマー由来の単位を含有するポリエステルまたはコポリエステルを用いることもできる。
【0024】
好ましい実施形態において、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートから選択される。ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
【0025】
基材は、上記フィルム形成材料の1つまたは複数の不連続層を含むことができる。それぞれの層のポリマー材料は、同じでも異なっていてもよい。例えば、基材は、1、2、3、4、または5以上の層を含むことができ、典型的な多層構造は、AB、ABA、ABC、ABAB、ABABA、またはABCBA型であることができる。好ましくは、基材は1層のみを含む。
【0026】
一実施形態において、基材は2層基材であり、ここで1層(すなわち、抗微生物組成物でコーティングされた表面から離れた層)は、ヒートシール可能な層である。ヒートシール可能な層は、当分野でよく知られており、ポリエステル、EVA、または変性ポリエチレンなどのポリマー材料が含まれる。一実施形態において、ヒートシール可能な層は、線状ポリエステル樹脂、特に1種または複数のジカルボン酸と1種または複数の上述のグリコールから誘導されたコポリエステル樹脂を含む。
【0027】
基材の形成は、当分野でよく知られている通常の技法によって行うことができる。好都合には、基材の形成は、下に記載の手順に従って、押し出しによって行われる。概括的に言えば、この方法は、溶融ポリマーの層を押し出すステップ、押し出し物を急冷するステップ、および急冷した押し出し物を少なくとも1つの方向に配向するステップを含む。
【0028】
この基材は、1軸配向であることができるが、好ましくは上述のとおり2軸配向である。配向は、例えばチューブラまたはフラットフィルム法など、配向フィルムを製造するために当分野で知られている任意の方法によって達成することができる。2軸配向は、満足できる機械的特性と物理的特性の組合せを得るために、フィルム平面の相互に直交する2方向に引くことによって行われる。
【0029】
チューブラ法では、熱可塑性ポリマーチューブを押し出し、続いてそれを急冷し、再加熱し、次いで内部ガス圧によって伸張して横軸配向を生じ、縦軸配向を生じる速度で引き出すことによって同時2軸配向を行うことができる。
【0030】
好ましいフラットフィルム法では、基材形成ポリマーを、スロットダイを通して押し出し、冷却キャスティングドラムで急速に急冷して、確実にポリマーを非晶質状態に急冷する。次いで、急冷した押し出し物を、そのポリエステルのガラス転移温度を超える温度で少なくとも1方向に伸ばすことによって配向を達成する。連続配向は、急冷した平坦な押し出し物をまず1方向、通常は縦方向、すなわちフィルム延伸機の前方向に伸ばし、次いで横方向に伸ばすことによって達成することができる。押し出し物の前延伸は、好都合には、1組の回転ロール上、または2組のニップロール間で行われ、次いで横延伸は、ステンタ装置で行われる。別法として、キャストフィルムは、2軸ステンタで前方向および横方向の両方に同時に延伸することもできる。延伸はそのポリマーの性質によって決定される程度まで行われ、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、通常、配向フィルムの寸法が、延伸方向または各延伸方向の元の寸法の2から5倍、より好ましくは2.5から4.5倍になるように延伸される。典型的に、延伸は、70から125℃の範囲の温度で行われる。1方向のみの配向が必要とされる場合、より高い延伸率(例えば、約8倍まで)を用いることができる。機械方向および横方向に等しく延伸する必要はないが、均衡のとれた特性が所望である場合、等しく延伸することが好ましい。
【0031】
延伸フィルムは、そのポリエステルのガラス転移温度を超えるが、その溶融温度より低い温度で、寸法を制限してヒートセットし、ポリエステルの結晶化を引き起こすことによって、寸法安定化することができ、それが好ましい。実際のヒートセット温度および時間は、フィルムの組成に応じて異なるが、フィルムの機械的特性を実質的に低下するように選択されるべきではない。これらの制限内で、特許文献7に記載のとおり、約135℃から250℃のヒートセット温度が一般に望ましい。
【0032】
基材が2つ以上の層を含む場合、基材の調製は、好都合には、それぞれのフィルム形成層を、マルチオリフィスダイの独立したオリフィスを通して同時に共押し出しし、その後、溶融したままの層を合わせるか、あるいは好ましくは、それぞれのポリマーの溶融流を、ダイのマニホルドに通じるチャンネル内で最初に合わせ、その後、混合することなく、層流条件下でダイオリフィスから共に押し出すシングルチャンネル共押し出しによって共押し出し成形を行い、多層ポリマーフィルムを製造することによって達成され、この多層ポリマーフィルムは前述のように配向およびヒートセットすることができる。多層基材の形成は、通常の積層技法によって行うこともでき、例えば予め形成した第1の層と予め形成した第2の層とを積層することによって、あるいは、例えば第1の層を予め形成した第2の層上にキャストすることによって行うこともできる。基材がヒートシール可能な層を含む場合、ヒートシール層も通常のコーティング技法によって適用することができる。
【0033】
一実施形態において、基材は、熱収縮性である。フィルムの収縮性は、当分野の技術者によく知られているように、その製造中に用いられる延伸率とヒートセット条件によって決定される。一般に、ヒートセットされていないフィルムの収縮挙動は、そのフィルムが製造中に延伸された程度に相当する。ヒートセットされていない場合、高度に延伸されたフィルムは、その後、熱に暴露されると、高度の収縮性を示し、小さく延伸されただけのフィルムは、小さい収縮性をのみ示すことになる。ヒートセットは、延伸フィルムに寸法安定性を提供し、その延伸状態でフィルムを「ロックする」効果を有する。したがって、熱の作用下におけるフィルムの収縮挙動は、その製造中に行われた延伸操作後に、フィルムがヒートセットされたかどうか、およびどの程度までヒートセットされたかに依存する。一般に、ヒートセット操作中、温度T1を経験したフィルムは、その後、製造後に熱に暴露されたとき、温度T1未満では実質的に収縮を示さない。したがって、収縮性を付与するために、基材はヒートセットしないか、あるいは延伸を行った後、比較的低温でかつ/または比較的短い時間を用いて部分的にヒートセットする。収縮性基材は、フィルムの1方向または両方向に収縮性を示すことができる。1次元の収縮度は、直交方向の収縮度と同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、30秒間100℃の水浴に入れたとき、収縮は約0から約80%、好ましくは約5から約80%、好ましくは約10から約80%、より好ましくは約10から60%の範囲である。
【0034】
基材層は、適切には、約5から350μm、好ましくは12から約250μm、特に約20から約75μmの厚さである。
【0035】
抗微生物化合物を含有するコーティング組成物は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、およびシロキサンを含む任意の適切なポリマー樹脂を含むことができる。
【0036】
好ましい一実施形態において、抗微生物剤を含むコーティングは、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供するのに充分なものである。一実施形態において、コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日、好ましくは0.01から0.1g/100平方インチ/日、一実施形態において0.1から1.0g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および/または0.01から10cm3/100平方インチ/日/atm、好ましくは0.01から1cm3/100平方インチ/日/atm、一実施形態において0.1から1cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度を提供するのに充分である。適切なコーティング重量は、0.01から14g/m2、好ましくは0.02から1.5g/m2の範囲である。したがって、抗微生物剤は、PVDC、PCTFE、PE、PP、EVOH、またはPVOHなどの通常のバリアコーティングに混合することができる。PVDC層は、気体および水蒸気の両方に対するバリアを提供するのに特に適しており、EVOHおよびPVOH層は、気体に対するバリアを提供するのに特に適しており、PCTFE、PE、およびPP層は、水蒸気に対するバリアを提供するのに特に適している。適切な層は当分野で知られており、例えば特許文献8(EVOH)、特許文献9(PVDC)、特許文献10(PVDC)、特許文献11(PVDCおよびPVOH)に開示されている。適切なPVDCポリマー層は、65から96重量%の塩化ビニリデン、および4から35%の1種または複数の塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、またはメチルアクリレートなどのコモノマーのコポリマーであり、一般にサランと称される。適切なグレードは、約7重量パーセントのメタクリロニトリル、3重量パーセントのメチルメタクリレート、および0.3重量パーセントのイタコン酸コモノマーを含む。
【0037】
さらなる好ましい実施形態において、抗微生物剤を含むコーティングは、本明細書に記載の試験方法に従って、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供するのに充分なシーラントコーティングである。好ましくは、ヒートシール強度は、少なくとも約300g/インチ、好ましくは少なくとも500g/インチ、好ましくは少なくとも750g/インチである。適切なコーティング重量は、0.5から14g/m2、好ましくは1.0から10g/m2の範囲である。適切なヒートシール可能コーティングまたはシーラントコーティングには、エチレン酢酸ビニル(EVA)、非晶質ポリエステル(APET)、ポリエチレン(PE)などのオレフィンポリマー、カプロラクトン、エチレンメタクリル酸(EMAA)などの酸コポリマー、サーリン(Surlyn)などのアイオノマー、およびスチレンイソプレンスチレン(SIS)などのスチレン系コポリマーが含まれる。適切な層は、当分野でよく知られている。特許文献12および特許文献11は、非晶質コポリエステルシーラント層を記載している。
【0038】
適切なコポリエステルは、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を含むことができる。適切な芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、あるいは2,5−、2,6−、または2,7−ナフタレンジカルボン酸が含まれ、適切な脂肪族ジカルボン酸には、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、またはピメリン酸が含まれる。好ましい芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸である。好ましい脂肪族ジカルボン酸は、セバシン酸、アジピン酸、およびアゼライン酸から選択される。特に好ましい脂肪族二酸は、セバシン酸である。コポリエステルに存在する芳香族ジカルボン酸の濃度は、好ましくは、コポリエステルのジカルボン酸成分に対して、40から80モル%、より好ましくは45から65モル%、特に50から60モル%の範囲である。コーティング層のコポリエステルのグリコール成分は、好ましくは、2から8個、より好ましくは2から4個の炭素原子を含有する。適切なグリコールには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールが含まれる。脂肪族グリコール、特にエチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールが好ましい。特に好ましい実施形態において、脂肪族グリコールは、1,4−ブタンジオールである。そのようなコポリエステルは、好ましくは、10℃未満、より好ましくは0℃未満、特に−50℃から0℃、特に−50℃から−10℃の範囲のガラス転移点を有し、90℃から250℃、より好ましくは110℃から175℃、特に110℃から155℃の範囲の融点を有する。そのようなコポリエステルの特に好ましい例は、(i)アゼライン酸およびテレフタル酸と脂肪族グリコール、好ましくはエチレングリコールとのコポリエステル、(ii)アジピン酸およびテレフタル酸と脂肪族グリコール、好ましくはエチレングリコールとのコポリエステル、ならびに(iii)セバシン酸およびテレフタル酸と脂肪族グリコール、好ましくはブチレングリコールとのコポリエステルである。好ましいポリマーには、ガラス転移点(Tg)−40℃および融点(Tm)117℃を有するセバシン酸/テレフタル酸/ブチレングリコールの(好ましくは、45〜55/55〜45/100、より好ましくは50/50/100の相対モル比で成分を有する)コポリエステル、ならびにTg−15℃およびTm115℃を有するアゼライン酸/テレフタル酸/エチレングリコールの(好ましくは、40〜50/60〜50/100、より好ましくは45/55/100の相対モル比で成分を有する)コポリエステルが含まれる。適切なEVAポリマーは、DuPontからElvax(商標)樹脂として得ることができる。典型的に、これらの樹脂は、9%から40%、典型的には15%から30%の範囲の含量で酢酸ビニルを含む。
【0039】
さらなる実施形態において、抗微生物剤を含むコーティングは、バリアおよびヒートシール特性の両方を提供し、この点でPVDCコーティングが適している。
【0040】
別の実施形態において、ヒートシール可能なコーティングを基材の1つの表面に適用し、基材の他の表面にバリア層を適用することができる。この実施形態において、抗微生物剤は、層のいずれか、または両方に混合することができる。
【0041】
抗微生物剤は、通常の手順に従って、コーティング組成物に添加することができる。例えば、抗微生物剤は、適切に攪拌しながら、コーティングビヒクルに直接添加することができ、あるいは適切な液体媒質(水または有機溶媒)に予め分散または混合することができる。ある水性コーティング組成物では、抗微生物剤の分散を助けるために、表面乳化剤を用いることができる。予め分散した/予め混合した抗微生物剤は、一様な分布を確実にするために、適切に攪拌しながらコーティング主組成物に添加する。
【0042】
抗微生物化合物は、コーティング層の約0.1から約50重量%、好ましくは約0.1から約35重量%、好ましくは約0.1から約25重量%、好ましくは約0.1から約15重量%、好ましくは約0.1から約10重量%、好ましくは約0.1から約5.0重量%の量で存在することができる。一実施形態において、特に抗微生物化合物は粒状であり、抗微生物化合物は、コーティング層の0.2から約3.0重量%、より好ましくは0.5から2.0重量%の量で存在する。一実施形態において、抗微生物化合物は、コーティング層の2.0重量%以下で存在する。
【0043】
コーティングは、インラインまたはオフラインで基材に適用することができる。コーティングは、すでに配向された基材に適用することができる。しかしながら、コーティング組成物の適用は、好ましくは、延伸操作前、または延伸操作中に行われる。例えば、コーティングは、2軸延伸操作の2つの段階(縦および横)の間に、フィルム基材に適用することができる。したがって、フィルム基材は、最初に一連の回転ローラ上で縦方向に延伸し、コーティング組成物でコーティングし、次いでステンタオーブンで横に延伸し、その後、好ましくはヒートセットすることができる。コーティング組成物は、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、ビーズコーティング、スロットコーティング、静電スプレーコーティング、押し出しコーティング、または融解コーティングなどの任意の適切な通常のコーティング技法によって、水溶液または有機溶液中、分散液またはエマルション中、適切にはニート形態で、ポリマーフィルム基材に適用することができる。
【0044】
コーティング組成物を基材上に堆積する前に、その露出表面は、所望により、その表面と後に適用されるコーティングとの間の結合を強化するために、当分野でよく知られているように化学的または物理的表面改質処理に供することができる。物理的表面改質処理には、火炎処理、イオン衝撃、電子ビーム処理、紫外線処理、およびコロナ放電処理が含まれる。
【0045】
コーティング層は、約0.01から14.0μmの範囲の厚さを有する。一実施形態において、コーティングの厚さは、約5μm以下、好ましくは約4μm以下、好ましくは約2μm以下、好ましくは約0.02から約1.5μmの範囲である。一実施形態において、コーティング層の厚さは、0.5ミクロン以上である。
【0046】
本発明は、特に粒状抗微生物剤に関し、本発明者等は、コーティング層の厚さが抗微生物化合物の粒径と相関する可能性のあることを見出した。したがって、好ましい実施形態において、コーティング層の厚さ(μm)は、抗微生物粒子の体積分布平均粒径(μm)の70から130%の範囲、好ましくは80から120%の範囲、より好ましくは90から110%の範囲、さらに好ましくは95から105%の範囲である。一実施形態において、コーティング層の厚さは、抗微生物粒子の体積分布平均粒径未満であり、厚さが、抗微生物粒子の体積分布平均粒径の70から99%の範囲、好ましくは80から99%の範囲、より好ましくは90から99%の範囲となるものが好ましい。
【0047】
好ましい実施形態において、抗微生物化合物の粒径は、体積分布平均粒径が、0.4から10μm、好ましくは1.0から6.0μm、より好ましくは1.0から3.0μmの範囲となるものである。
【0048】
ポリマー基材は、好都合には、ポリマーフィルムの製造に通常用いられる任意の添加剤を含有することができる。したがって、染料、顔料、ボイド形成剤(voiding agent)、潤滑剤、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、UV吸収剤、難燃剤、熱安定剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ助剤、蛍光増白剤、光沢向上剤、分解促進剤(prodegradent)、粘度調整剤、および分散安定剤などの試剤を、必要に応じて基材に混合することができる。特に、基材は、粒状充填剤を含むことができる。充填剤は、例えば、粒状無機充填剤、または非相溶性樹脂充填剤、あるいは2種以上のそのような充填剤の混合物であることができる。粒状無機充填剤には、アルミナ、シリカ(特に沈降シリカ、または珪藻土シリカ、およびシリカゲル)、およびチタニアなどの金属または半金属の酸化物、焼成陶土、ならびにカルシウムおよびバリウムの炭酸塩および硫酸塩などのアルカリ金属塩が含まれる。
【0049】
無機充填剤は、それを用いる場合、微粉化されているべきであり、その体積分布中位径(体積%と粒径を関係づける累積分布曲線上で読み取られる、すべての粒子の体積の50%に相当する等価球径、多くの場合「D(v,0.5)」値と称される)は、好ましくは0.01から5μm、より好ましくは0.05から1.5μm、特に0.15から1.2μmの範囲である。無機充填剤粒子の粒度分布も重要なパラメータである。好ましくは、無機充填剤粒子数の99.9%は、30μmを超えるべきではなく、好ましくは20μmを超えるべきではなく、より好ましくは15μmを超えるべきではない。好ましくは、無機充填剤粒子の体積の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%が、体積分布中位径±0.8μm、特に±0.5μmの範囲内である。充填剤粒子の粒径は、電子顕微鏡、クールター計数器、沈降分析、および静的または動的光散乱によって測定することができる。レーザ光回折に基づく技法が好ましい。中位径は、選択した粒径より小さい粒子の体積の百分率を表す累積分布曲線をプロットし、中央値を測定することによって求めることができる。
【0050】
コーティング層に用いる場合、Aerosil(商標)OX50、あるいはSeahostar(商標)KEP30またはKEP50などの充填剤粒子は、コーティング層のポリマーの重量に対して、約0から約5重量%、より好ましくは0.1から2.5重量%の量で存在することができる。
【0051】
層の組成物の成分は、通常の方法で混合することができる。例えば、層のポリマーが誘導されるモノマー反応物と混合するか、あるいは、成分をタンブルブレンドまたはドライブレンドによって、または押し出し機で混合することによってポリマーと混合し、続いて冷却し、通常は顆粒またはチップに粉砕することによる。マスターバッチ技法を用いることもできる。
【0052】
フィルムは、好ましくは、標準ASTM D1003に従って測定された、<15%、好ましくは<12%、好ましくは<9%、好ましくは<6%、より好ましくは<3.5%、特に<2%の散乱可視光(ヘイズ)%を有する。この実施形態において、基材層は、充填剤を添加していないか、または充填剤は、典型的に少量のみ存在し、一般に、基材ポリマーの0.5重量%を超えず、好ましくは0.2重量%未満である。
【0053】
フィルムの60°光沢値(本明細書に記載のとおり測定)は、好ましくは少なくとも70、より好ましくは少なくとも80、さらに好ましくは少なくとも85である。
【0054】
本発明の第1の好ましい実施形態において、第1および第2の表面を有するポリマー基材層を含み、その表面上のポリマーコーティングは、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、かつコーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含む抗微生物ポリマーフィルムであって、前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供することを特徴とする抗微生物ポリマーフィルムが提供される。
【0055】
本発明の第2の好ましい実施形態において、第1および第2の表面を有するポリマー基材層を含み、その表面上のポリマーコーティングは、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、かつコーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含む抗微生物ポリマーフィルムであって、前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度であるような、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供することを特徴とする抗微生物ポリマーフィルムが提供される。
【0056】
本発明の第3の好ましい実施形態において、第1および第2の表面を有するポリマー基材層を含み、その表面上のポリマーコーティングは、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、かつコーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含む抗微生物ポリマーフィルムであって、(i)前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供し、(ii)前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度であるような、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供することを特徴とする抗微生物ポリマーフィルムが提供される。
【0057】
本発明の第4の好ましい実施形態において、第1および第2の表面を有するポリマー基材層を含み、その表面上のポリマーコーティングは、コーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含む抗微生物ポリマーフィルムであって、前記コーティングは、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、前記抗微生物化合物は、以下の式(I)を有し、
Agabc2(PO43・nH2O (I)
式中、
Aは、アルカリまたはアルカリ土類金属イオンから選択された少なくとも1種のイオンであり、
Mは、4価金属イオンであり、
a、b、およびcは、(a+b+mc)=1であるような正数であり、
mは、金属Aの原子価であり、
0≦n≦6であり、
好ましくは、(i)前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供し、かつ/または(ii)前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度であるような、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供する抗微生物ポリマーフィルムが提供される。
【0058】
さらなる態様において、本発明は、抗微生物ポリマーフィルムを調製する方法であって、
(i)ポリマー基材層を提供するステップ、および
(ii)その表面上に、コーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含むポリマーコーティング組成物をコーティングするステップであって、前記コーティング層は、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、(i)前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供し、かつ/または(ii)前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度であるような、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供することを特徴とするステップを含む方法を提供する。
【0059】
本発明を用いて得ることのできるフィルムは、医療およびケータリング環境および装置、ならびに食品包装などの種々の適用例において抗微生物表面を提供するために用いることができる。他の適用例には、化粧室、廃物処理、動物用飼い葉桶、学校、スイミングプールエリア、自動車備品、公共利用備品、公共施設用座席、公共輸送機関備品、おもちゃ、および他の工業、農業、商業、または消費者製品が含まれる。
【0060】
以下の試験方法を用いて、ポリマーフィルムのいくつかの特性を判定することができる。
(i)ヘイズ(散乱透過可視光%)は、ASTM D1003に従って、Gardner Hazegard System XL−211を用いて測定する。
(ii)フィルム表面の60°光沢値は、DIN67530に従って、Dr Lange反射率計REFO3(Dr Bruno Lange、GmbH、Dusseldorf、Germanyから入手可能)を用いて測定する。反射は、3つの角度(20°、60°、および85°)で測定し、測定は、フィルムの機械方向および横軸方向の両方で行った。
(iii)水蒸気透過速度は、ASTM D3985に従って測定する。
(iv)酸素透過速度は、ASTM F1249に従って測定する。
(v)細菌に対する抗微生物有効性は、Na/Kリン酸緩衝液中、0.4mlの105細胞/mlに対して、22時間暴露により、「プレート接触法」を用いて評価した。フィルム試料は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および大腸菌(Escherichia coli)に対して試験した。
(vi)真菌に対する抗微生物有効性は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)ATTC 6275を用い、ISO−846に基づく方法を用いて評価した。各試料に、1ml当たり105真菌胞子の溶液0.1mlを接種し、29℃で35日まで培養した。真菌増殖が小滴に限局した試料に関して、試料を目視観察することによって、真菌増殖を評価した。有効性を3つの区分に評定する。
【0061】
【表1】

【0062】
所与の試料の評価は、各区分の小滴の数である。
(vii)ヒートシール強度は、Sentinel(登録商標)装置において、30psi、滞留時間0.35秒、250°Fで、フィルム試料をそれ自体にヒートシールする(コーティング層がコーティング層に接触)ことによって測定する。
(viii)収縮は、フィルム試料(約1インチの細片)を、100℃で30秒間水浴に入れ、熱処理前後の長さの違いを用いて、収縮を算出する。
【0063】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示する。実施例は、例示の目的にすぎず、上述の本発明を制限するものでないことが理解される。本発明の範囲から逸脱することなく、詳細の変更を行うことができる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例において、コーティング組成物を、2軸配向、ヒートセットポリエチレンテレフタレートフィルム(Mylar(登録商標)LBFフィルム、DuPont Teijin Films)にコーティングした。
【0065】
(実施例1から4)
PVDC(Saran F278;Dow Chemicals)バリアコーティングに、抗微生物剤Alphasan(商標)RC2000(Milliken)を混合することによって、コーティング組成物を製造した。このコーティング組成物は、本明細書に記載する通常の技法に従って製造し、以下の成分を有した。
【0066】
Saran F278:97.5%(実施例1)、97.0%(実施例2)、96.0%(実施例3)、98%(実施例4)
Alphasan RC2000:0.5%(実施例1)、1.0(実施例2)、2.0%(実施例3)、0.0%(実施例4)
充填剤、1.2%(Microtalc;Ashland Chemical Co. USA)
酸捕捉剤、0.4%(Drapex6.8;Crompton Corp. USA)
ワックス0.4%(Carnauba Wax;Frank B Ross Company USA)
THFおよびトルエンを溶媒として用い、調合液を固形分20.0%とする。抗微生物粒子は、体積分布平均粒径1.624μmを有し、95%の粒子が4.697μm未満の径を有するような粒度分布を有した。実施例4は、比較例である。コーティング組成物は、ロールコータによって塗布し、120℃のオーブンで乾燥する。
【0067】
(実施例5から8)
APET(MOR−ESTER 49002;Rohm & Haas)シーラントコーティングに、前述の抗微生物剤Alphasan(商標)RC2000(Milliken)を混合することによって、コーティング組成物を製造した。実施例8は、比較例である。このコーティング組成物は、本明細書に記載する通常の技法に従って製造し、以下の成分を有した。
【0068】
Mor−Ester 49002:95.5%(実施例5〜7)、97.5%(実施例8)
Alphasan RC2000:2.0%(実施例5〜7)、0.0%(実施例8)
シリカ、1.5%(Syloid(登録商標)244;W.R.Grace & Co.USA)
ブロッキング防止剤、1.0%(Kemamide E;Witco Chemical USA)
THFを溶媒として用い、調合液を固形分16.0%とする。コーティングは、ロールコータによって塗布し、100℃のオーブンで乾燥する。
【0069】
製造したフィルムの物理的特性を、表1に示す。コーティングフィルムを、本明細書に記載の抗微生物試験を用いて分析した。抗菌性試験の結果を、図1に示す。グラフのエラーバーは、2つの個別の実験のデータの標準偏差を表す。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例1から3は、コーティングの厚さが小さく保たれているとき、コーティングフィルム表面の利用可能な銀の量は、コーティング中の抗微生物剤の量に比例することを示している。実施例3、5、6、および7の比較は、コーティング中の抗微生物剤の量が同じである場合、表面上の利用可能な銀の量は、コーティングの厚さが増すにつれ減少することを示している。
【0072】
図1は、実施例1から3および5から7のすべてが抗微生物有効性を示すことを示している。
【0073】
実施例2から8は、上に記載した抗真菌分析でも試験したが、その結果を表2に示す。14日の培養後、実施例2、3、および5の真菌増殖は完全に阻害され、実施例6および7では部分的に阻害された。実施例4では、阻害は観察されなかった。わずかな阻害が、実施例8でも見られた。
【0074】
【表3】

【0075】
(実施例9)
収縮性ポリエステルフィルムベースを、以下の方法で調製した。PETコポリマー(二酸成分の6.2重量%のアゼライン酸、およびグリコール成分の9.5重量%のジエチレングリコール)をダイから押し出し、冷却回転ドラムにキャストした。続いて、それを2つのニップロールの間で、縦方向に3回延伸した。次いで、延伸フィルムをステンタの予熱帯に通し、そこでフィルム温度は約70℃に上昇した。次いで、フィルムを横方向に3回延伸し、75℃の温度で、ヒートセットオーブンに入れた。ステンタから出した後、フィルムを芯に巻き、続いて、抗微生物溶液でコーティングするために、所望の幅に切った。上記で製造した両方向に約30%の収縮性を有するPET基材を、ロールコータによって、実施例5から8の溶液でコーティングし、80℃のオーブンで乾燥した。コーティングフィルムにおいて収縮性は維持された。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】抗菌性試験の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の表面を有するポリマー基材層を含み、その表面上のポリマーコーティングは、約0.01から約14.0μmの厚さを有し、かつコーティング層の約0.1から約50重量%の量の抗微生物化合物を含む抗微生物ポリマーフィルムであって、(i)前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供し、かつ/または(ii)前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度であるような、水蒸気および/または酸素に対するバリアを提供することを特徴とする抗微生物ポリマーフィルム。
【請求項2】
抗微生物化合物は、粒状形態であることを特徴とする請求項1に記載の抗微生物フィルム。
【請求項3】
抗微生物化合物は、約0.1から約5%の量で存在することを特徴とする請求項1または2に記載の抗微生物フィルム。
【請求項4】
抗微生物化合物は、銀、銅、亜鉛、スズ、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウム、およびクロムから選択された金属または金属イオンを含有する無機化合物であることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の抗微生物フィルム。
【請求項5】
抗微生物化合物は、式M1abc22(PO43・nH2Oを有し、式中、
1は、銀、銅、亜鉛、スズ、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウム、およびクロムから選択された少なくとも1種の金属イオンであり、
Aは、アルカリまたはアルカリ土類金属イオンから選択された少なくとも1種のイオンであり、
2は、4価金属イオンであり、
aおよびbは、正数であり、cは、0または(ka+b+mc)=1であるような正数であり、
kは、金属M1の原子価であり、
mは、金属Aの原子価であり、
0≦n≦6であることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の抗微生物フィルム。
【請求項6】
抗微生物化合物は、式AgabcZr2(PO43・nH2Oを有し、式中、
Aは、アルカリまたはアルカリ土類金属イオンであり、
a、b、およびcは、(a+b+mc)=1であるような正数であり、
mは、金属Aの原子価であり、
0≦n≦6であることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の抗微生物フィルム。
【請求項7】
aは、0.1から0.5の範囲であることを特徴とする請求項5または6に記載の抗微生物フィルム。
【請求項8】
bは、少なくとも0.2であることを特徴とする請求項5、6、または7に記載の抗微生物フィルム。
【請求項9】
金属Aはナトリウムであり、mは1であることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
抗微生物化合物は、銀、銅、または亜鉛を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のフィルム。
【請求項11】
抗微生物化合物は、銀を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のフィルム。
【請求項12】
前記コーティングは、0.01から10g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度、および/または0.01から10cm3/100平方インチ/日/atmの範囲の酸素透過速度を提供することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の抗微生物フィルム。
【請求項13】
前記コーティングは、それ自体にヒートシールされたとき、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を提供することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の抗微生物フィルム。
【請求項14】
フィルムのヘイズは、15%未満であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の抗微生物フィルム。
【請求項15】
抗微生物粒子の体積分布平均粒径は、1.0から3.0μmの範囲であることを特徴とする請求項2から14のいずれかに記載の抗微生物フィルム。
【請求項16】
コーティング層の厚さは、抗微生物粒子の体積分布平均粒径の70から130%の範囲であることを特徴とする請求項2から15のいずれかに記載の抗微生物フィルム。
【請求項17】
コーティング層の厚さは、抗微生物粒子の体積分布平均粒径未満であり、好ましくは、厚さは、抗微生物粒子の体積分布平均粒径の70から99%の範囲であることを特徴とする請求項2から15のいずれかに記載の抗微生物フィルム。
【請求項18】
前記ポリマー基材は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、およびPVCから選択されることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載のフィルム。
【請求項19】
前記ポリマー基材は、ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載のフィルム。
【請求項20】
前記ポリマー基材は、ポリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載のフィルム。
【請求項21】
前記ポリマー基材は、30秒間100℃の水浴に入れたとき、1つまたは両方の次元に約10%から約60%の収縮度を有することを特徴とする請求項1から20のいずれかに記載のフィルム。
【請求項22】
光沢は、少なくとも70であることを特徴とする請求項1から21のいずれかに記載のフィルム。
【請求項23】
コーティング層のポリマーは、PVDC、PCTFE、PE、PP、EVOH、PVOH、EVA、ポリエステル、およびカプロラクトンから選択されることを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載のフィルム。

【図1】
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【公表番号】特表2006−518775(P2006−518775A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500175(P2006−500175)
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000016
【国際公開番号】WO2004/063254
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】