説明

抗生殖系列抗体結合剤を用いるB細胞性疾患の治療

抗生殖系列抗体の投与によって、自己免疫疾患患者の体内の病的抗体産生B細胞の数を減少させるための方法が開示される。病的抗体および、病的抗体を産生するB細胞および形質細胞を、自己免疫疾患患者の体から除去するための方法が提供され、該方法は、生殖系列抗体、特にVH4‐34抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液または骨髄またはリンパ系組織中に存在する生殖系列抗体の量、または患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在する生殖系列抗体産生B細胞の量の減少をもたらす。細胞表面生殖系列抗体を発現するB細胞性腫瘍患者を、同様の方法によって治療するための方法もまた提供される。骨髄の病的抗体産生B細胞および、生殖系列抗体を発現する腫瘍性B細胞を生体外でパージするための方法が提供される。自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者における治療上の処置の有効性を監視するための方法もまた提供される。薬剤の調製におけるキットおよび使用もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、概して、B細胞性疾患、例えば悪性腫瘍、または自己免疫疾患などを治療するための方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
生殖系列抗体(すなわち、体細胞超変異なしに、ゲノムDNA配列によってコードされた抗体に対して高いアミノ酸配列相同性を持つ抗体)は、自己免疫疾患、白血病およびリンパ腫と関連がある。例えば、一部の著者は、VHl‐69遺伝子が、変異のない慢性リンパ球性白血病(CLL)症例に関連があることが示されたことを報告している(Brezinschek H.P., et al.(1998)Br. J. Haematol. 102, 516‐521)。同様に、Guarini, A. et al.((2003)Blood 102, 1035‐41)は、良好な臨床的予後を持つ、安定した白血病を示す患者集団中にこの遺伝子が認められなかったことを報告した。さらに、Bando Y, et al.((2004)Immunol Lett. 94, 99‐106)は、アレルギー性疾患患者から、高い相同性を有するVHl‐69由来配列を発見し、これは、比較的限られたVH遺伝子が生命の初期の段階で特異的なIgEに再構成されることを示唆している。
【0003】
自己免疫疾患および悪性腫瘍に関連するその他の生殖系列抗体には、VH4‐34遺伝子コード化抗体が含まれる。Milner, et al.の報告によると、これらの抗体を発現するB細胞は、主要プレ抗原レパートリーの多くを占めている(成熟ナイーブB細胞のおよそ5‐10%)(Milner, E.C.B., et al.(2005)Semin. Immun. 26, 433‐452)。Pugh‐Bernard, et al.は、高度に調節されたVH4‐34抗体の発現が、自己免疫疾患を防ぐための免疫系の恒常性を提供する可能性があることを示唆した。(Pugh‐Bernard, A. E., et al.(2001)J. Clin. Invest. 108, 1061‐1070)。VH4‐34抗体は、体細胞変異なしに自己反応性であり、抗体の軽鎖とは無関係であり、活動性の全身性エリテマトーデス(SLE)患者において増加している。SLEの症状を示す患者では、VH4‐34 IgGの存在と、VH4‐34 IgM抗体の不在は、SLE、腎炎、CNSループスの重症度と最も強く相関した。(Bhat, N. M., et al.(2002)J. Rheumatol. 29, 2114‐21)。WO99/01477で説明されるように、自己免疫疾患患者、特に重篤なSLEのあるSLE患者のVH4‐34抗体の濃度は、健常人に認められるものをはるかに上回ることが発見された。これらの抗体はまた、B細胞性腫瘍、例えば節性辺縁帯B細胞リンパ腫にも関連がある。Marasca, R. et al,(2001)Am. J. Pathol. 159, 253‐262。
【0004】
一部の研究者は、VH4‐34抗体が有益な効果、または調節作用をもたらす可能性があることを示唆した。この有益な効果について提唱された1つの機構は、VH4‐34抗体と、他の非タンパク性抗原、例えば細菌LPS、DNA、または腫瘍ガングリオシドとの交差反応性に焦点を当てた。これらの著者は、強い刺激の条件下では、表面にVH4‐34抗体を持つ細胞は辺縁帯(MZ)細胞に分化し、細菌性抗原に反応することで、自己抗原を除去するか、または自己抗原の提示によって、末梢T細胞寛容を維持することのいずれかによって防御機能を果たす可能性があることを提唱した。Pugh‐Bernard, A.E., et al.,(2001)J. Clin. Invest. 108, 1061‐1070.
【0005】
その他の著者は、自己免疫疾患においてVH4‐34抗体の病原性効果が存在する可能性があることを示唆した。病原性効果は、ナイーブリンパ球を死滅させ、またはクラススイッチB細胞へのそれらの分化を促進し、IFNαの持続的産生に寄与し、B細胞の活性化閾値を変化させることによって、またはガングリオシドと結合し、神経精神病学的SLEに寄与することによって、抗dsDNAおよび抗Smith反応によって仲介されるものとして提唱された。Analik, J. and Sanz, I.(2004)Curr. Op. Rheumatol. 16, 505‐512; Milner, E.C.B., et al.(2005)Semin. Immun. 26, 433‐452。
【0006】
故に、病気の予防、または仲介におけるこれらの抗体の役割は、解明されていない。さらに、これらの抗体、またはそれらを産生する細胞の除去が、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者に対して有益な結果をもたらしうるという、教示や示唆も存在しない。
発明の概要
【0007】
従って、当分野における前述の需要には、B細胞性疾患、例えばB細胞性腫瘍や、自己免疫疾患患者の治療のための、新規の方法および治療用組成を提供することによって対応できる。
【0008】
さらなる実施形態では、当分野における前述の需要には、生殖系列抗体、例えばVH4‐34抗体を発現する、B細胞性腫瘍患者を治療するための、新規の方法および治療用組成物を提供することによって、対応できる。
【0009】
従って、一実施形態では、自己免疫疾患患者の体内で病的抗体を産生するB細胞または形質細胞の量を減少させるための方法が提供され、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を用いて患者を治療するステップを含む。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される。特定の実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化9G4,キメラ化9G4、またはそれらのフラグメントまたは複合体である。さらなる実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。方法は、追加の医薬活性剤、治療上有効な処置、またはその他の補助療法を用いて患者を治療するステップをさらに含んでもよい。追加の医薬活性剤は、化学療法剤、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、寛容源(toleragens),抗B細胞薬、抗T細胞薬、抗凝固剤または静脈注射用免疫グロブリンを含む。
【0010】
別の実施形態では、自己免疫疾患患者における、VH4‐34抗体産生B細胞または形質細胞の量を減少させるための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を投与するステップを含む。好ましくは、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。
【0011】
さらなる実施形態では、細胞表面生殖系列抗体を発現するB細胞性腫瘍患者と治療するための方法が提供され、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を用いて患者を治療するステップを含む。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択され、より好ましくは、生殖系列抗体はVH4‐34抗体である。生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、好ましくは9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。さらなる実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。方法は、化学療法剤、抗B細胞薬、細胞増殖調節物質および/または抑制剤,免疫調節物質またはそれらの組み合わせから選択される追加の医薬活性剤を用いて患者を治療するステップをさらに含んでもよい。好ましくは、化学療法剤は、アスパラギナーゼ、エピポドフィロトキシン、カンプトセシン、抗生物質、白金錯体、アルキル化剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞骨格を破壊する薬剤、またはそれらの混合であり、好適な抗B細胞薬は、CD11a、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD34、CD37、CD38、CD40、CD45、CD52、CD80、CD86、IL‐4R、IL‐6R、IL‐8R、IL‐13、IL‐13R,α‐4/β‐l インテグリン(VLA4)、BLYS受容体,細胞表面イディオタイプIg、CDIM、腫瘍壊死因子(TNF)の抗体または阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、抗B細胞薬は、抗CDIM抗体である。抗CDIM抗体は、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kであってもよい。
【0012】
代替的な実施形態では、骨髄機能廃絶化療法後患者に骨髄を再移植する前に、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者の骨髄をパージするための方法が提供され、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を用いて、患者の骨髄を生体外で治療するステップを含む。方法は、追加の医薬活性剤を用いて骨髄を治療するステップをさらに含んでもよい。好ましくは、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。さらなる実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。
【0013】
別の実施形態では、骨髄機能廃絶化療法後患者に骨髄を再移植する前に、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者の骨髄をパージするための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を用いて、患者の骨髄を生体外で治療するステップを含む。方法は、追加の医薬活性剤を用いて、骨髄を処置するステップをさらに含んでもよい。VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、好ましくは9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。
【0014】
さらに別の実施形態では、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者を治療するための方法が提供され、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を用いて患者を治療するステップを含み、治療上有効な量の抗B細胞薬を用いて患者を治療するステップをさらに含む。好ましくは、抗B細胞薬は、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kから選択される、ある抗CDIM抗体である。さらなる態様では、方法は、抗CDIM抗体を投与するステップの前に、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体が、患者の血漿から除去されるのに十分な時間を与えるステップを含む。別の態様では、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体を投与するステップの前に、抗CDIM抗体が患者の血漿から除去されるのに十分な時間を与えるステップを含む。5血中半減期内に、通常十分な時間が与えられる。
【0015】
さらに他の実施形態では、自己免疫疾患患者の体から病的抗体を除去するための方法が提供され、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤と患者の血液または血漿を接触させるステップを含む。好ましくは、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体を含む。接触させるステップは、好ましくは、患者の体内に存在する生殖細胞系の量の減少、および/または患者体内の、生殖系列抗体を発現する細胞の数の減少をもたらす。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される。
【0016】
別の実施形態では、自己免疫疾患患者の体から病的抗体を除去するための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と患者の血液または血漿を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液または血漿中に存在するVH4‐34抗体の量の減少をもたらす。好ましくは、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体を含む。
【0017】
別の実施形態では、自己免疫疾患患者の体内の、VH4‐34抗体産生B細胞または形質細胞の数を減少させるための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在するVH4‐34抗体産生B細胞の量の減少をもたらす。好ましくは、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体を含む。
【0018】
さらなる実施形態では、寒冷凝集素症患者を治療するための方法が提供され、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を用いて患者を治療するステップを含む。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4‐34、VHl‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される。別の好適な実施形態では、生殖系列抗体は、Vkappa I、Vkappa IIIまたはVkappa IV軽鎖を含む。特定の実施形態では、生殖系列抗体は、VH4‐34抗体である。好適な実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。
【0019】
さらなる実施形態では、細胞表面生殖系列抗体を発現するB細胞性腫瘍患者を治療するための方法が提供され、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤と患者の血液を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在する、B細胞性腫瘍細胞を発現する生殖系列抗体の量の減少をもたらす。方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を患者に投与するステップをさらに含むこともできる。好ましくは、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。さらなる態様では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。方法は、治療上有効な量の抗CDM抗体、例えばmAb216、RT−2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal−4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kを患者に投与するステップをさらに含んでもよい。
【0020】
他の実施形態では、細胞表面のVH4−34抗体を発現するB細胞性腫瘍患者を治療するための方法が提供され、方法はVH4−34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と患者の血液を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在する、B細胞性腫瘍細胞を発現するVH4−34抗体の量の減少をもたらす。方法は、治療上有効な量のVH4−34抗体上の、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体を患者に投与するステップをさらに含んでもよい。好ましくは、VH4−34抗体上の、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。方法は、mAb216、RT−2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal−4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kを含む、治療上有効な量の抗CDIM抗体を患者に投与するステップをさらに含んでもよい。
【0021】
他の実施形態では、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者における治療上の処置の有効性を監視するための方法は、患者から血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプルを採取するステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する生殖系列抗体に結合するのに十分な量の抗生殖系列抗体と該サンプルを接触させるステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、結合した抗生殖系列抗体の量を測定するステップと、治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、生殖系列抗体産生、または細胞表面発現B細胞の数、または生殖系列抗体の量を減少させるような、治療の有効性と、結合した抗生殖系列抗体の量を相関させるステップとを含む。好ましくは、抗生殖系列抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。他の好適な実施形態では、抗生殖系列抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。抗生殖系列抗体は、ELISAまたはラジオイムノアッセイから選択されるアッセイを実施するための、基質と結合してもよく、またはフローサイトメトリーにおいて利用されてもよい。
【0022】
治療上の処置は、血漿交換法、白血球分離法、または抗生殖系列抗体または抗B細胞薬、抗T細胞薬、化学療法剤、寛容源、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、抗凝固剤、または静脈注射用免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせを含む追加の医薬活性剤を用いる処置を含むことができる。
【0023】
さらなる実施形態では、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者において治療上の処置の有効性を監視するための方法が提供され、方法は、患者から血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプルを採取するステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在するVH4‐34抗体に結合するのに十分な量の抗VH4‐34抗体に該サンプルを接触させるステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、結合した抗VH4‐34抗体の量を測定するステップと、結合した抗VH4‐34抗体の量と、治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、VH4‐34抗体産生または細胞表面発現B細胞の数、またはVH4‐34抗体の量を減少させるような治療の有効性と相関させるステップとを含む。好ましくは、抗VH4‐34抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。抗VH4‐34抗体は、ELISAまたはラジオイムノアッセイから選択されるアッセイを実施するための基質と結合する、またはフローサイトメトリーにおいて使用できる。好ましくは、治療上の処置は、血漿交換法、白血球分離法、または抗B細胞薬、抗T細胞薬、化学療法剤、寛容源、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、抗凝固剤、または静脈注射用免疫グロブリンを含む、追加の医薬活性剤を用いる治療である。
【0024】
さらなる態様では、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍のための治療の実施に対する、それを必要とする患者における治療反応の監視に使用するためのキットが提供され、キットは、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する生殖系列抗体と結合するのに効果的な量の抗生殖系列抗体を含む。自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍のための治療の実施に対する、それを必要とする患者における治療反応の監視に使用するためのキットも提供され、キットは、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在するVH4‐34抗体と結合するのに効果的な量の抗VH4‐34抗体を含む。特定の実施形態では、キットは、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在するVH4‐34抗体と結合するのに効果的な量の9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体を含む。
【0025】
さらなる態様では、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍の治療のための薬剤の製造における抗生殖系列抗体の使用が提供される。好ましくは、抗生殖系列抗体は、抗VH4‐34抗体であり、より好ましくは、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。さらなる実施形態では、抗生殖系列抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。
【0026】
さらに別の態様では、血漿交換法および白血球分離法における使用のための、免疫吸着剤が提供され、血漿交換または白血球分離用装置での使用に適した吸着剤と結合する、抗生殖系列抗体またはそのフラグメントを含む。好ましくは、抗生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体、より好ましくは、抗VH4‐34抗体例えば9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体に対して特異的結合を持つ抗体から選択される。さらなる実施形態では、抗生殖系列抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。
【0027】
本発明の、さらなる目的、利点、および新規の特徴は、以下に続く説明の部分で説明され、以下の試験において、ある程度当業者に明らかになるか、または本発明の実施から学ばれてもよい。
【発明の詳細な説明】
【0028】
I.定義と概略
本発明を詳細に説明する前に、そうでないと明示されない限りは、特定の抗体、抗体フラグメント、または同様のものは様々であることから、限定されないことが理解されるものである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではないこともまた理解されるものである。
【0029】
本明細書および請求項で使用されるように、単数形「ある」および「その」は、文脈がそうでないと明示しない限りは、複数の指示対象を含む。故に、例えば、「ある抗体」という言及は、2つ以上の抗体を含み、「ある医薬品」という言及は、2つ以上の医薬品を含む、などであることに留意しなければならない。
【0030】
数値の範囲が与えられる場合は、文脈がそうでないと明示しない限りは下限の単位の小数点第2位まで、その範囲の上限と下限の間の各中間値、およびその記載された範囲内のその他に記載されたまたは中間の数値は、本発明に含まれることが理解される。これらの小さい範囲の上限と下限は、小さい範囲に独立して含められてもよく、本発明の範囲にも含まれ、記載された範囲内の、明確に除外された限度に従う。記載された範囲が限度の1つまたは両方を含む場合は、それらの含められた限度のどちらか、または両方を含まない範囲が本発明に含まれる。
【0031】
用語「抗体」は、広義で使用され、具体的には、それらが所望の生物活性を示す限りは、インタクトな自然抗体(例えば、抗体クラスIgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から作製される多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、合成抗体、例えば四価抗体、改変抗体バリアント(例えば、異なる抗体クラスからの軽鎖および重鎖の混合、抗体の軽鎖および重鎖の数の変化、またはJ鎖の有無)、および抗体フラグメントの範囲を含む。改変抗体バリアントの例示的な種類は六量体IgMである。ヒト抗体は、ヒト以外の種において作製される抗体を含む。用語「抗体」はまた、重鎖のみから形成される、Ig分子、例えばCamelidから得られるもの、Castermanによる米国特許第6,765,087号および第6,015,695号において説明されるものを包括する。用語「抗体」はまた、細胞毒性薬または細胞調節薬と抗体の融合または化学的結合(すなわち、共役)を包括する。
【0032】
治療上の応用および製剤については、抗体は細胞毒性であること、すなわち、抗体は補体仲介性の細胞毒性を示すのが好ましい。しかし、他の機構による細胞毒性を利用する抗体を、治療上の応用に活用してもよい。免疫吸着応用(例えば、血漿交換法または白血球分離法)については、結合フラグメントが、生殖系列抗体または生殖系列抗体発現または産生細胞と結合できる限りは、抗体が細胞毒性である必要はない、またはインタクト抗体が存在する必要はない。
【0033】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部、好ましくは、インタクト抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメントと、ダイアボディと、線状抗体(Zapata, et al.(1995)Protein Eng. 8(10)1057‐1062)と、一本鎖抗体分子と、抗体フラグメントから形成される多特異性抗体とが含まれる。
【0034】
用語「血液」は、全血、血清、血漿、細胞分画などを含む、血液の全ての構成要素を意味する。
【0035】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、ごくわずかに存在する可能性がある、潜在的な自然発生の変異を除いて、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原部位に対する。さらに、通常は異なる決定基(抗原決定基)に対する異なる抗体を含む、従来の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されないという利点を持つ。修飾語「モノクローナル」は、実質的に同種の抗体集団から得られるような抗体の特性を示し、いずれかの特定の方法による抗体の産生が必要なものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256, 495(1975)によって初めて説明された、ハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、または組み換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClackson et al.(1991)Nature, 352, 624‐628およびMarks et al,(1991)J. MoI. Biol. 222, 581‐597において説明されるような技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから分離されてもよい。
【0036】
本明細書で用いるモノクローナル抗体は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それらが所望の生物活性を示す限りは、前記抗体のフラグメントと同様に、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体中の対応配列と同一、または相同性であるか、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属しており、一方で鎖(単数または複数)の残りは、別の種由来の抗体中の対応配列と同一、または相同性であるか、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属している。(U.S.Patent No.4,816,567;Morrison et al.,(1984)Proc Natl. Acad. Sci. USA, 81, 6851‐6855)。
【0037】
ヒト以外(例えば、マウス)の抗体の「ヒト化」形状は、ヒト以外を起源とする免疫グロブリンの抗原結合部位が親ヒト免疫グロブリンの抗原結合部位に含まれる改変抗体である。ヒト化抗体は、自然抗体クラス(IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM)、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)またはヒト以外の免疫グロブリン由来の最小配列を含む抗体のその他の抗原結合副配列を含むことができる。大部分は、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)からの残基が、目的とする特定の抗原に対する、所望の特異性、親和性、および性質を持つ、ヒト以外の種、例えばマウス、ラット、またはラビットなどのCDRからの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリンである。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基もまた、対応するヒト以外の残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、親抗体にも、インポートされCDRまたはフレームワーク配列中のどちらにも認められないさらなる残基を含んでもよい。抗体の性能をさらに精製し最大化するためにこれらの修飾を行ってもよい。通常は、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変領域の、実質的に全てを含み、CDRの全て、または実質的に全ては、ヒト以外免疫グロブリンのそれに対応し、FRの全て、または実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のそれである。ヒト化抗体はまた、最も好ましくは、免疫グロブリンの定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも1つを含む。さらに詳しい説明については、Jones et al.,(1986)Nature 321, 522‐525; Reichmann et al.,(1988)Nature 332, 323‐329、ならびにPresta(1992)Curr: Op. Struct. Biol. 2, 593‐596を参照されたい。ヒト化抗体は、PRIMATIZED(商品名)抗体を含み、抗体の抗原結合領域は、目的とする抗原でマカクザルを免疫するステップによって産生される抗体から得られる。
【0038】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHおよびVL領域を含み、これらの領域は単一のポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、VHおよびVL領域の間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより抗原結合のための所望の構造を、scFvが形成できるようになる。scFvのレビューとしては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer‐Verlag, New York, pp.269‐315(1994)を参照されたい。
【0039】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを意味し、フラグメントは、同じポリペプチド鎖中で軽鎖可変領域(VL)に連結された重鎖可変領域(VH)(VH‐‐VL)を含む。同一の鎖上の2つの領域間の対合には短すぎるリンカーを用いることで、領域は別の鎖の相補領域とペアを形成せざるを得ず、2つの抗原結合部位を作る。ダイアボディは、例えば、EP 404,097、WO93/11161、およびHollinger et al.(1993)Proc. Natl. Acad. Sci USA 90, 6444‐6448においてより詳細に説明される。
【0040】
「分離された」抗体は、その自然環境の構成要素から特定され、分離された、および/または回収されたものである。その自然環境の汚染要素は、抗体の診断的使用または治療上の使用の妨げとなるような物質であり、酵素、ホルモン、およびその他のタンパク性または非タンパク性の溶質が含まれてもよい。好適な実施形態では、抗体は(1)Lowry法による測定で、抗体の95重量%を超え、最も好ましくは、99重量%を超えるまでか、(2)回転シークエネーターの使用により、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルー、または好ましくは銀染色を用いて、還元性または非還元性条件下におけるSDS‐PAGEによって、均質になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの要素が存在しないことから、組み換え細胞の中の原位置に抗体を含む。しかし、通常は、分離された抗体は少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0041】
用語「生殖系列抗体」は、体細胞超変異がない条件で、ゲノムDNA配列によってコード化された抗体に対する高いアミノ酸配列相同性を持つ抗体を意味する。生殖系列抗体は通常、配列相同性の最も近い生殖系列遺伝子によってコード化されたアミノ酸配列と比べて、少なくとも約60%、好ましくは約60%〜約100%の範囲、またはより好ましくは約75%〜99%の間のアミノ酸配列相同性を可変領域において示す。そのような抗体は体細胞超変異を全く受けないか、最小限しか受けておらず、これが非生殖系列抗体の特性である。
【0042】
表現「生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体」または用語「抗生殖系列抗体」は、生殖系DNA配列によってコード化される抗体の可変領域上の抗原決定基に結合する抗体(インタクト抗体、キメラ化または改変または融合抗体、またはそれらのフラグメント、複合体などを含む)を意味する。
【0043】
用語「抗原決定基」は、その抗体のゲノムDNA配列によってコード化される、抗体クラスの可変領域上の固有のマーカーを意味し、そのようなものは、抗体のいわゆる超可変領域、または「相補性決定領域」(「CDRs」)の生殖系配列を含むことができる。しかし、抗原決定基は、体細胞超変異、例えば非生殖系のCDRによって形成される、固有の免疫グロブリンのマーカーではない。従って、抗生殖系列抗体は、「患者特有の」抗体ではない。対照のため、Timmerman, J.M. and Levy, R.(2000)Clin. Lymphoma 1, 129を参照。好ましくは、抗原決定基は抗体のフレームワーク領域に存在する。好ましくは、抗原決定基は抗体のCDRを含まない。
【0044】
「CD20」抗原は、末梢血またはリンパ系組織由来のB細胞の、90%以上の表面に認められる、35kDaの非グリコシル化リンタンパクである。CD20はプレB細胞の初期の成長の間に発現し、形質細胞の分化まで残存する。CD20は、正常B細胞および悪性B細胞の両方に存在する。文献中のCD20のその他の名称には、「Bリンパ球制限抗原」および「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例えばClark et al.(1985)PNAS(USA)82, 1766に記載されている。
【0045】
用語「複合体」は、共有結合または非共有結合をしている、活性を持つ薬剤の結合を意味する。
【0046】
「疾患」は、本明細書で説明される併用療法を用いる治療の恩恵を受けるであろう、いずれかの状態である。これには、問題になっている疾患に哺乳類が罹患しやすくなるような病態を含む、慢性および急性の疾患または病気が含まれる。本明細書で治療される疾患の限定されない例には、悪性腫瘍、悪性血液疾患、白血病およびリンパ性悪性疾患、および自己免疫疾患、例えば炎症性疾患および免疫障害が含まれる。
【0047】
用語「病的抗体」は、自己抗原に対して特異的結合を示す抗体を意味し、すなわち、抗体は自己反応性である。そのような病的抗体は、自己免疫疾患に関与する、または付随する。
【0048】
用語「特異的結合」は、少なくとも10−1、通常は約10−1および約10−1の間の高い結合親和性を持つ性質を意味する。
【0049】
用語「治療上効果的な量」は、成長停止効果、すなわち細胞の死をもたらす効果を持つ、活性を持つ薬剤の量を意味するために使用される。特定の実施形態では、治療上有効な量は、細胞の透過化、増殖シグナルの阻害、細胞代謝の阻害、B細胞の機能の調節、アポトーシス活性の促進、または細胞死の誘発特性を持つ。特定の態様では、治療上有効な量は、例えば、病気の進行の遅延において有効であることが示された、目標とする血清濃度を意味する。有効性は、治療する症状に応じて、従来の方法で測定できる。例えば、リンパ系悪性腫瘍では、病気の進行期間(TTP)を評価することで、または奏効率(RR)を判定することで、有効性を測定することができる。治療上有効な量はまた、生殖系列抗体を産生するB細胞の数を減らすのに、または患者体内の生殖系列抗体の量を低下させるのに十分な量である。
【0050】
用語「治療する」、「治療」、および「療法」などは、1つ以上の症状の緩和、後退、病気または疾患の進行の遅延または停止が含まれるがこれに限定されない、いずれかの臨床的に望ましいまたは有益な効果をもたらす、病気または疾患に対する治療的処置だけでなく、予防的処置、または抑制的処置を含むよう意図されている。故に、例えば、用語「治療」は、病気または疾患の症状の発症前、または発症後に薬剤を投与し、これにより病気または疾患の全ての徴候を予防する、または除去するステップを含む。別の例としては、用語は、病気の症状に抵抗しようとする、病気の臨床的徴候後の薬剤の投与を含む。さらに、病気または疾患の臨床的パラメータ、例えば組織傷害の程度、または転移の量または程度、治療が病気の改善をもたらすか否かなどに投与が影響を与える場合の、発症後および臨床症状の発現後の薬剤の投与は、本発明の文脈内に「治療」または「療法」を含む。
【0051】
用語「9G4」は、VH4‐34抗体を認識することが示されたラットのモノクローナル抗体(Stevenson, et al. Blood 68: 430(1986))を意味する。モノクローナル抗体9G4によって認識されるVH4‐34抗原決定基は、重鎖の可変領域のフレームワーク1領域(「FR1」)中の23‐25アミノ酸付近のユニーク配列に制限され、依存する構造である。VH4‐34遺伝子の変異発生率は低く、標準的な免疫測定法による、9G4を用いたVH4‐34抗体の検出は信頼性の高いものになっている。
【0052】
用語「LC1」は、VH4ファミリー遺伝子セグメント、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1およびV2‐1由来の抗体と結合する抗体を意味する。LC1の抗原決定基もまたFR1上に位置する。Melero, J. et al.(1998)Scand. J. Immunol. 48, 152を参照されたい。
【0053】
VH4‐34抗体(重鎖可変領域)は、53の特定されたヒト機能的抗体生殖系列抗体のうちの1つであり、生殖系列遺伝子(VH4.21)によってコード化されるCook, G.P., et al.,(1994)Nat. Genet. 7, 162‐168。VH4‐34抗体の遺伝子は、全てのハプロタイプ中に存在し、非血縁個体から単離された生殖細胞系DΝAにおいて、配列変異は報告されていないWeng, Ν.P., et al.,(1992)Eur. J. Immunol. 22,1075‐1082; van der Maarel, S., et al.,(1993)J. Immunol.150, 2858‐ 2868。VH4‐34遺伝子によってコード化される抗体は、特異的性質を有することが示されている。赤血球(RBC)の「I」または「i」抗原に対する全てのmAbは、VH4‐遺伝子によってコード化され、通常はIgMクラスであり、それらはRBCを4°Cで凝集させることから、寒冷凝集素(CA)と古くから呼ばれている。Pascual、V., et al,(1991)J. Immunol. 146, 4385‐4391; Pascual、V.,(1992)J. Immunol 149,2337‐2344; Silberstein, L.E., et al,(1991)Blood 78, 2372‐2386。CAによって認識されるリガンドは、RBCsのタンパクおよび/または脂質上に存在する、直鎖または分岐複合糖質である。新生児および臍帯血のRBCは、直鎖のi抗原を持つ。分岐I鎖は、出世後に作られる。Pruzanski, W. et al.,(1984)Clin. Immunol. Rev.3,131‐168; Roelcke, D.(1989)Transfusion Med. Rev. 2,140‐166。
【0054】
ヒトB細胞上で認識される「i」抗原は、酵素、エンドβガラクトシダーゼに対する感受性が高い、直鎖のラクトサミン決定基である。個々に得られたVH4‐34抗B細胞/抗iモノクローナル抗体の配列解析では、これらは生殖系列の構造を示すことが示された。Bhat N.M., et al.,(1997)Clin. Exp. Immunol. 108,151‐159。I/I特異性の寒冷凝集素は、VH4‐34重鎖発現による制限される。抗Pr寒冷凝集素は、α2,3‐、またはα2,6‐結合N‐アセチルノイラミン酸を認識する。抗Pr特異性の寒冷凝集素は、軽鎖Vkappa I、Vkappa IIIまたはVkappa IVの発現を示し、単一の生殖系列遺伝子由来のサブグループであるVkappa IVの使用が好ましい。Lee, A., et al.(2004)Vox Sang. 86, 141‐7。
【0055】
生体内では、VH4‐34遺伝子由来抗体の発現は厳密に調節されている。4‐8%のヒトB細胞がVH4‐34にコード化された抗体を発現するものの、VH4‐34由来抗体の血清濃度は、正常成人ではごくわずかである。Stevenson F.K., et al.,(1989)Br. J. Haematol.72,9‐15; Kraj P, et al.,(1995)J. Immunol.154,6406‐6420。循環VH4‐34由来抗体の増加は、ウイルス感染(EBウイルス(伝染性単核症)、ヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎ウイルス)、マイコプラズマ肺炎、および特定の自己免疫疾患を含む、選択的な病態にのみ認められる。Bhat, N. M. et al.,(2005)Human Antibodies 13, 63‐68も参照されたい。
【0056】
従って、一実施形態では、自己免疫疾患患者の体内で病的抗体を産生するB細胞または形質細胞の量を減少させるための方法(すなわち、患者の体内におけるB細胞および形質細胞の数を減少させる)が提供され、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を用いて患者を治療するステップを含む。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される。特定の実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化9G4,キメラ化9G4、またはそれらのフラグメントまたは複合体である。さらなる実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。方法は、追加の医薬活性剤、治療上有効な処置、またはその他の補助療法を用いて患者を治療するステップをさらに含んでもよい。追加の医薬活性剤は、化学療法剤、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート)、ステロイド、寛容源、抗B細胞剤、または抗凝固剤(ヘパリン、クマディン、抗血小板薬、例えばアセチルサリチル酸、TICLID(商標)(塩酸チクロピジン)、PLAVIX(商標)(硫酸クロピドグレル))または静脈注射用免疫グロブリンであってもよい。治療上有効な処置は、血漿交換法または白血球分離法を含む。
【0057】
別の実施形態では、自己免疫疾患患者の体内におけるVH4‐34抗体産生B細胞または形質細胞の量を減少させるための方法が提供され、VΗ4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を投与するステップを含む。好ましくは、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。
【0058】
さらなる実施形態では、寒冷凝集素症患者を治療するための方法が提供され、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を用いて患者を治療するステップを含む。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4−34、VH1−69、V71−2、V71‐4、VH4‐I8、VH72‐l、またはV2‐1抗体から選択される。別の好適な実施形態では、生殖系列抗体は、Vkappa I、Vkappa III、またはVkappa IV軽鎖、特にVkappaIV軽鎖を含む。特定の実施形態では、生殖系列抗体は、VH4‐34抗体である。好適な実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。
【0059】
さらなる実施形態では、細胞表面生殖系列抗体を発現するB細胞性腫瘍患者を治療するための方法が提供され、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を用いて患者を治療するステップを含む。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択され、より好ましくは、生殖系列抗体はVH4‐34またはVHl‐69抗体である。生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、好ましくは9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。さらなる実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。方法は、化学療法剤、抗B細胞薬、細胞増殖調節物質および/または抑制剤,免疫調節物質またはそれらの組み合わせから選択される追加の医薬活性剤を用いて患者を治療するステップをさらに含んでもよい。好ましくは、化学療法剤は、アスパラギナーゼ、エピポドフィロトキシン、カンプトセシン、抗生物質、白金錯体、アルキル化剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞骨格を破壊する薬剤、またはそれらの混合である。好適な抗B細胞薬には、CD11a、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD34、CD37、CD38、CD40、CD45、CD52、CD80、CD86、IL‐4R、IL‐6R、IL‐8R、IL‐13、IL‐13R、α‐4/β‐lインテグリン(VLA4)、BLYS受容体、細胞表面イディオタイプIg、CDIM、腫瘍壊死因子(TNF)の抗体または阻害剤、またはそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、抗B細胞薬は、抗CDIM抗体である。抗CDIM抗体は、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kであってもよい。
【0060】
代替的な実施形態では、骨髄機能廃絶化療法後、患者に骨髄を再移植する前に、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者の骨髄をパージするための方法が提供され、方法は、治療上効果的な量の、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体で患者の骨髄を生体外で治療するステップを含む。方法は、追加の医薬活性剤を用いて骨髄を治療するステップをさらに含んでもよい。好ましくは、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。さらなる実施形態では、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である。
【0061】
別の実施形態では、骨髄機能廃絶化療法後患者に骨髄を再移植する前に、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者の骨髄をパージするための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を用いて患者の骨髄を生体外で治療するステップを含む。方法は、追加の医薬活性剤を用いて骨髄を治療するステップをさらに含んでもよい。VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体は、好ましくは9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。
【0062】
さらに別の実施形態では、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者を治療するための方法が提供され、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を用いて患者を治療するステップを含み、治療上有効な量の抗B細胞薬を用いて患者を治療するステップをさらに含む。好ましくは、抗B細胞薬は、抗CDIM抗体であり、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kから選択される。さらなる態様では、方法は、抗CDIM抗体を投与するステップの前に、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体が、患者の血漿から除去されるのに十分な時間を与えるステップを含む。別の態様では、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体を投与するステップの前に、抗CDIM抗体が患者の血漿から除去されるのに十分な時間を与えるステップを含む。通常は、5血中半減期中に十分な時間が提供される。
【0063】
さらなる実施形態では、自己免疫疾患患者の体から病的抗体を除去するための方法が提供され、方法は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含む。方法は、接触させた血液または血漿を、患者へ再び投与するステップ、および/または追加の正常血液または骨髄またはリンパ系組織を患者に投与するステップをさらに含んでもよい。該接触させるステップは、通常は、血漿交換法または白血球分離法を用いて行われ、患者の体内に存在する生殖系列抗体の量の減少、および/または患者体内の、生殖系列抗体を発現する細胞(例えば、B細胞またはB細胞性腫瘍の腫瘍細胞)の量の減少をもたらす。好ましくは、生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される。
【0064】
好適な実施形態では、自己免疫疾患患者の体から病的抗体を除去するための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液中に存在するVH4‐34抗体の量の減少をもたらす。好ましくは、免疫吸着剤は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ抗体または抗体フラグメント、特に9G4、ヒト化9G4,キメラ化9G4、またはそれらのフラグメントまたは複合体を含む。抗体フラグメントは、VH4‐34抗体に対する特異的結合を与えるCDRの一部を含む。好ましくは、該接触させるステップは、血漿交換法または白血球分離法を用いて行われる。
【0065】
さらなる実施形態では、自己免疫疾患患者の体内のVH4‐34抗体産生B細胞または形質細胞の量を減少させるための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在するVH4‐34抗体産生B細胞の量の減少をもたらす。
【0066】
他の実施形態では、細胞表面のVH4‐34免疫グロブリンを発現するB細胞性腫瘍患者を治療するための方法が提供され、方法は、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在する、VH4‐34抗体発現B細胞の量の減少をもたらす。B細胞性腫瘍は、急性白血病、慢性白血病、骨髄腫またはリンパ腫を含み、急速進行型リンパ腫、緩徐進行型リンパ腫、またはマントル細胞リンパ腫、特に、急性リンパ球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、前駆B細胞ALL、成人ALL、または慢性リンパ球性白血病(CLL)、などを含む。
【0067】
上述の実施形態のいずれにおいても、循環生殖細胞系またはVH4‐34抗体、または生殖細胞系またはVH4‐34抗体を産生または発現する細胞の量をさらに減少させるために、免疫吸着剤と患者の血液を接触させた後、細胞溶解性抗生殖細胞系または抗VH4‐34抗体を含む、治療用組成物の投与によって、患者をさらに治療してもよい。
【0068】
II.自己免疫疾患
自己免疫疾患は、自己抗原に対する結合特異性を持つ自己反応性抗体によって仲介される。自己免疫疾患患者は、通常、例えば、リン脂質、dsDNAなどに結合する、自己反応性抗体の血清力価が高い。VH4‐34遺伝子を用いる様々な自己抗体が説明されており、自己免疫性溶血性貧血における抗I/i寒冷凝集素(Pascual, et al.(1991)J. Immunol. 146: 4385; Pascual et al.,(1992)Arthr. Rheum. 35: 11; Silberstein, et al.(1991)Blood 78: 2372; Leoni,(199I)J. Biol. Chem. 266: 2836)、抗Rhモノクローナル抗体(Borretzen, et al.(1995)Scan. J. Immunol. 42, 90)、DNA、脂質A、カルジオリピン、およびリウマチ因子に結合する、多反応性抗体(Pascuel, et al.(1992)Arthritis Rheum. 35: 11)が含まれる。
【0069】
本明細書で説明される方法や組成物を用いて治療可能な代表的な自己免疫疾患には、寒冷凝集素症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、自己免疫性リンパ増殖性疾患、多発性硬化症、乾癬、および重症筋無力症が含まれるが、橋本甲状腺炎、ループル腎炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、シデナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性内分泌自己免疫症候群、水疱性類天疱、糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、クローン病、アルツハイマー病、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎、原発性胆汁性肝硬変、甲状腺機能亢進症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ヴェーゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、線維化性肺胞炎、クラスIII自己免疫疾患、例えば免疫性の血小板減少、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などを含むこともある。
【0070】
III.B細胞性腫瘍
B細胞性腫瘍には、B細胞由来のあらゆる悪性腫瘍が含まれ、リンパ性悪性腫瘍、特に、B細胞由来のあらゆる急性白血病が含まれる。リンパ性悪性腫瘍には、急性白血病、例えば急性リンパ球性白血病(ALL)、前駆B細胞ALL、成人ALLだけでなく、慢性白血病、およびリンパ腫が含まれる。リンパ腫には、急速進行型、緩徐進行型、およびマントル細胞型が含まれる。リンパ性悪性腫瘍の特定の例には、急性リンパ球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、前駆B細胞ALL、成人ALL、または慢性リンパ球性白血病(CLL)、などが含まれるが、これに限定されない。
【0071】
IV.追加の活性を持つ薬剤
追加の活性を持つ薬剤には、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍を治療するために利用されるものが含まれる。追加の活性を持つ薬剤は、自己免疫疾患の治療上有用であり、通常は、化学療法剤、免疫調節物質、例えばNSAIDS(例えば、アスピリン、ナプロキセン)と、消炎ステロイド剤(例えば、プレドニゾロン、プレドニゾン、またはデキサメタゾン)と、抗増殖剤/代謝拮抗薬(例えば、アザチオプリン、クロラムブコル、シクロホスファミド、レフルノミド、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサートハイドレート、ラパマイシン、サリドマイド)と、シクロスポリンAと、抗マラリア薬(例えば、ヒドロクロロキン)と、タクロリムス(FK 506)およびアスコマイシンが含まれる。免疫調節物質はまた、サイトカイン、例えばインターロイキン(例えば、IL‐21)を含むことができる。追加の活性を持つ薬剤は、抗B細胞薬、例えば、CD11a、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD34、CD37、CD38、CD40、CD45、CD52、CD80、CD86、IL‐4R、IL‐6R、IL‐8R、IL‐13、IL‐13R、α4/β‐1インテグリン(VLA4)、BLYS受容体、細胞表面イディオタイプIg、腫瘍壊死因子(TNF)の抗体または阻害剤、またはそれらの組み合わせを制限なく用いる治療を含んでもよい。抗B細胞薬は、細胞毒性機構または免疫調節機構によって機能することができる。例えば、CD11aに対する抗体は、例えば、エファリズマブ(RAPTIVA)であってもよい。CD20に対する抗体は、リツキシマブ(RITUXAN)であってもよい。CD22に対する抗体は、例えば、エプラツズマブであってもよい。CD25に対する抗体は、例えば、ダクリツマブ(ZENAPAX)又はバシリキシマブ(SIMULECT)であってもよい。CD52に対する抗体には、例えば、CAMPATHが含まれる。α‐4/β‐1インテグリン(VLA4)に対する抗体には、例えば、ナタリズマブが含まれる。TNFに対する抗体には、例えば、インフリキシマブ(REMICADE)が含まれる。好適な抗B細胞薬は、CD20(例えば、リツキシマブ)、CD22、CD23、CD40、CD40リガンド、CDIM抗原決定基、抗イディオタイプ抗体などに対する抗体を含む。抗‐CDIM結合剤は、好ましくは、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kから選択される抗体を含む。
【0072】
免疫調節物質の追加のクラスには、寛容源(toleragens)、例えばアベチムスナトリウム(LJP‐394)、LJP993、およびLJP1082が含まれる。さらに有用な薬剤には、抗T細胞剤、例えば、T細胞媒介性疾患を抑制する薬剤(共刺激経路阻害剤、例えば抗CTLA‐4、抗CD40リガンド、抗α‐4‐インテグリン、例えば抗VLA‐4(ナタリズマブすなわちタイサブリ)、アバタセプト(CTLA4‐Ig、BMS‐188667)、接着分子阻害剤(抗ICAM1抗CD11b/CD18)が含まれる。
【0073】
追加の活性を持つ薬剤には、静脈注射用免疫グロブリン、特に、血漿交換法後、および補体活性化抑制剤(例えば、抗C5、パキセリズマブまたはエクリズマブ、可溶性CRl)が含まれる。上述の薬剤の混合、またはこれらの治療の組み合わせを用いてもよい。
【0074】
さらに、B細胞性腫瘍の治療に有用な、活性を持つ薬剤には、化学療法剤、放射性同位元素、細胞傷害抗体、免疫複合体、リガンド複合体、免疫抑制剤、細胞増殖調節物質および/または抑制剤、毒素、またはそれらの混合物が含まれる。
【0075】
化学療法剤:
本発明の製剤と方法に用いることができる化学療法剤には、タキサン、コルヒチン、ビンカ・アルカロイド、エピポドフィロトキシン、カンプトセシン、抗生物質、白金錯体、アルキル化剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、またはトポイソメラーゼ阻害剤が含まれる。好適なトポイソメラーゼ阻害剤はエピポドフィロトキシンである。好適なピリミジン類似体には、カペシタビン、5‐フルオロウラシル、5‐フルオロデオキシウリジン、5‐フルオロデオキシウリジン一リン酸、シトシンアラビノシド、5‐アザシチジン、または2’、2’‐ジフルオロデオキシシチジンが含まれる。好適なプリン類似体には、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、ペントスタチン、エリスロハイドロキシノニルアデニン、クラドリビン、ビダラビン、およびリン酸フルダラビンが含まれる。葉酸類似体には、メトトレキセイト、ラルチトレキセド、ロメトレキソール、ペルメフレキセド、エダトレキサート、ペメトレキセドが含まれる。好適なエピポドフィロトキシンは、エトポシドまたはテニポシドである。好適なカンプトセシンは、イリノトカン、トポテカン、またはカンプトテカンである。好ましくは、抗生物質は、ダクチノマイシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ダウノキソム)、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、またはマイトマイシンである。好適な白金錯体は、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチンである。好ましくは、アルキル化剤は、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ダカルバジン、テモゾロマイド、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ブスルファン、アルトレタミン、またはクロラムブシルである。
【0076】
化学療法剤のさらなる例は、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商品名))と、
【0077】
スルホン酸アルキル類、例えばブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンと、
【0078】
アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボコン、ウレドーパメツレドーパ、およびウレドーパと、
【0079】
アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリメチローロメラミンを含むエチレンイミン類およびメチラメラミンと、
【0080】
アセトゲニン類(特にブラタシンおよびブラタシノン)と、
【0081】
カンプトセシン(合成類似体トポテカンを含む)と、
【0082】
ブリオスタチンと、カリスタチンと、CC‐1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビセレシン 合成類似体を含む)と、
【0083】
クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8)と、
【0084】
ドラスタチンと、デュオカルマイシン(合成類似体、KW‐2189およびCBI‐TMIを含む)と、
【0085】
エリュテロビンと、パンクラチスタチンと、サルコジクチンと、スポンジスタチンと、
【0086】
ナイトロジェン・マスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロライド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシル・マスタードと、
【0087】
ニトロスレアス例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンと、
【0088】
抗生物質、例えばエンジイン抗生剤(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンγ1IおよびカリケアマイシンφI1(例えば、Agnew(1994)Chem. Intl. Ed. Engl., 33:183‐186参照)と、ダイネミシンAを含むダイネミシンと、ビスホスフォネート、例えばクロドロネートと、エスペラミシンと、加えてネオカルチノスタチン発色団および関連クロモプロテイン・ネンジーネ・アンチバイオティック・クロモモフォアズ)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、detorubicin、6‐ジアゾ‐5‐オキソ‐L‐ノルロイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(商品名))(モルホリノ‐ドキソルビシン、シアノモルフォリノ‐ドキソルビシン、2‐ピロリノ‐ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンと、
【0089】
代謝拮抗物質、例えばメトトレキサートおよび5‐フルオロウラシル(5‐FU)と、
【0090】
葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートと、
【0091】
葉酸リプレニッシャー例えばフォリン酸と、
【0092】
プリン類似体、例えばフルダラビン、6‐メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンと、
【0093】
ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6‐アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンと、
【0094】
アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンと、
【0095】
抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンと、
【0096】
アセグラトンと、アルドホスファミドグリコシドと、アミノレブリン酸、エニルウラシルと、アムサクリンと、ベストラブシルと、ビサントレンと、エダトラキセートと、デフォファミンと、デメコルチンと、ジアジコンと、エルフォルニチンと、酢酸エリプチニウムと、エポシロンと、エトグルシドと、硝酸ガリウムと、ヒドロキシ尿素と、レンチナンと、ロニダミンと、マイタンシノイド 例えば マイタンシンおよびアンサマイトシンと、ミトグアゾンと、ミトキサントロンと、モピダモールと、ニトラクリンと、ペントスタチンと、フェナメットと、ピラルビシンと、ロソキサントロンと、ポドフィリン酸と、2−エチルヒドラジドと、プロカルバジンと、PSK(商標)と、ラゾキサンと、リゾキシンと、シゾフィランと、スピロゲルマニウムと、テヌアゾン酸と、トリアジコンと、2,2’,2”‐トリクロロエチレンアミンと、トリコテシン(特にT‐2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン)と、ウレタンと、ビンデシンと、ダカルバジンと、マンノムスチンと、ミトブロニトールと、ミトラクトールと、ピポブロマンと、ガシトシンと、シトシン、アラビノシド(「Ara - C」)と、
【0097】
シクロホスファミドと、チオテパと、タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(商標), Bristol‐Myers Squibb Oncology, Princeton,NJ.)およびドキセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone‐Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル; ゲムシタビン(Gemzar(商品名));6−チオグアニンと、メルカプトプリンと、メトトレキサートと、
【0098】
白金類似体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチンと、
【0099】
ビンブラスチン、ビンクリスチンと、ビノレルビン(ナベルビン(商品名))と、
【0100】
エトポシド(VP‐16)と、イホスファミドと、ミトキサントロンと、ノバントロンと、テニポシドと、エダトレキサートと、ダウノマイシンと、アミノプテリンと、ゼローダと、イバンドロネートと、CPT‐11と、
【0101】
トポイソメラーゼ阻害剤 RFS 2000と、ジフルオロメチロールニチン(DMFO)と、
【0102】
レチノイド、例えばレチノイン酸と、カペシタビンと、上記の物質の医薬的に許容される塩、酸、または誘導体を含む。
【0103】
さらなる好適な化学療法剤には、例えば、CHOPや同様のものなど、併用療法において用いられるものが含まれる。特定の実施形態では、そのような併用療法を、抗CDIM結合抗体を用いて、またはさらなる細胞傷害抗体、特に抗CD22、抗CD52、抗CD20抗体との併用で使用してもよい。
【0104】
特に好ましいのは、B細胞をその細胞周期中に停止させる薬剤、例えば微小管の重合または脱重合を妨げる薬剤である。例示的な薬剤には、コルヒチン、ビンカ・アルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、またはビノレルビン、ならびにタキサン、例えばタクソール、パクリタキセル、ドセタキセルが含まれる。さらなる好適な薬剤は抗アクチン剤である。好適な実施形態では、抗アクチン剤は、ジャスプラキノリドまたはサイトカラシン、これは生体外での方法、例えば、骨髄の悪性細胞をパージする方法においてより好ましく使用可能である。参照により本明細書に引用したものとする、米国特許出願公開第2004/0136951号で考察されるように、上記の薬剤の混合物、例えばCHOP、CAMP、DHAP、EPICなどを用いることもできる。
【0105】
複合体
用語「複合体」は、共有結合または非共有結合で結合する、活性を持つ薬剤の結合を意味し、免疫複合体またはその他のリガンドの複合体(例えばB細胞関連表面分子に結合する抗B細胞薬)を含む。免疫複合体は、活性を持つ薬剤に対する抗体の複合体であり、治療組成物、例えば毒素、放射性同位元素の複合体、または治療の有効性の監視上有用な組成物、例えば指標分子、例えばコロイドビーズ、蛍光色素、放射性同位元素などを含む複合体を含む。免疫複合体は、当分野で既知の多くの方法、例えば不安定または不安定でない反応性の架橋結合基を提供するための、抗体の化学的誘導体化によって作製することができる。不安定な反応基は、抗体からの細胞毒性薬または成長調節因子の放出を提供する。不安定でない架橋もまた有用である。Ig分子への所望の薬剤の結合は、伝統的な結合技術(例えば、脱水剤、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCI)、ECDIなどを用いる結合)、スルフヒドリル基、アミノ基、またはカルボキシル基を介する結合が可能なリンカーの使用(Pierce Chemical Co., Rockford, IIIから入手可能)、還元的アミノ化による、当分野で周知の様々な手段によって達成されてもよい。
【0106】
一方法では、ジチオピリジル基を抗体に導入するために、まず架橋試薬、例えばN‐スクシンイミジルピリジルジチオプロピオネート(SPDP)で抗体を修飾することで、抗体複合体、または免疫複合体を作製できる(Carlsson et al.(1978)Biochem. J. 173, 723‐737; 米国特許第5,208,020号)。第2のステップでは、修飾抗体にチオール基を持つ薬剤を加え、修飾抗体中にチオピリジル基を置換し、ジスルフィド結合薬剤抗体複合体がもたらされる。マイタンシノイド‐抗体複合体の作製手順は米国特許第5,208,020号で説明される。
【0107】
毒素は、免疫複合体、リガンド複合体として投与することができ、または抗体と同時投与できる。毒素には、緑膿菌外毒素A、リシン、ジフテリア毒素、モモルジン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク、ブドウ球菌エンテロトキシンA、ゲロニン、マイタンシノイド(例えば、米国特許第6,441,163号に記載のもの)、または同様のものが制限無く含まれる。
【0108】
放射性同位元素
治療上有用な免疫複合体またはリガンド複合体を産生するために用いられる同位元素は、通常は、治療上効果的な路程(path length)を持つ、高エネルギーのα‐、γ‐、またはβ粒子を産生する。そのような放射性核種は、近接する細胞、例えば、複合体が結合する腫瘍細胞を死滅させる。標的投与の利点は、放射活性物質で標識した抗体またはリガンドは、標的細胞に近接しない細胞に対して、通常は影響をほとんど及ぼさないか、あるいは全く及ぼさないことである。治療の有効性を監視するためのアッセイまたはキットにおいて有用な同位元素は、通常は、従来の検査機器を用いて検出可能なエネルギーを産生し、一般的に使用される放射性同位元素、H、14C、および32Pなどを含む。
【0109】
抗体またはリガンド(例えば、抗B細胞剤)は、直接標識してもよい(例えばヨウ素化またはリン酸化反応によって)か、またはキレート剤を使用して複合体化してもよい。いずれの方法でも、抗体またはリガンドは少なくとも1つの放射性核種で標識される。特に好適なキレート剤は、1‐イソチオキアマートベンジル‐3‐メチルジオテレントリアミン五酢酸(「MX‐DTPA」)およびシクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸(「CHX‐DTPA」)誘導体を含む。その他のキレート剤は、P‐DOTAおよびEDTA誘導体を含む。間接標識に特に好適な放射性核種には、111Inおよび90Yが含まれる。
【0110】
放射性同位元素は、抗体またはリガンド上の特定の部位、例えば抗体のFc部上にのみ存在するN結合糖残基に結合させることができる。テクネチウム‐99m標識抗体またはリガンドを、リガンド交換プロセスによって、またはバッチ標識プロセスによって作製してもよい。例えば、パーテクネート(TcO)をすずイオン溶液で還元し、セファデックスカラム上で還元テクネチウムをキレートし、このカラムに抗体を加えることで、抗体を標識することができる。バッチ標識技術は、例えば、パーテクネートと、還元剤、例えばSnCl、緩衝液、例えばナトリウム‐カリウム‐フタル酸エステル溶液、そして抗体をインキュベートするステップを含む。標識に好適な放射性核種は当分野で周知である。標識用の例示的な放射性核種は、チロシン残基を介して共有結合したIである。本発明による、放射活性物質で標識した抗体は、放射性ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウム、ならびに化学的酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム、クロラミンT、または同様のもの、あるいは酵素的酸化剤、例えばラクトペルオキシダーゼ、ブドウ糖酸化酵素、およびグルコースを用いて作製できる。
【0111】
キレート剤およびキレート剤複合体に関する特許は当分野で周知である。例えば、Gansowによる米国特許第4,831,175号は、多置換ジエチレントリアミンペンタ酢酸キレートとそれを含むタンパク複合体、及びそれらの作製法に関する。Gansowによる米国特許第5,099,069号、5,246,692号、5,286,850号、5,434,287号、5,124,471号もまた全て、多置換DTPAキレートに関する。これらの特許は、参照することにより全体を本明細書に引用したものとする。適合金属器レート剤のその他の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DPTA)、1,4,8,11‐テトラアザテトラデカン、1,4,8,11テトラアザテトラデカン‐1,4,8,11‐四酢酸、1‐オキサ‐4,7,12,15‐テトラアザヘプタデカン、4,7,12,15‐四酢酸、または同様のものである。シクロヘキシル‐DTPAまたはCHX‐DTPAは、特に好ましい。まだ発見されていないものを含むその他の適合キレート剤もなお、当業者によって容易に発見可能であり、本発明の範囲内に明確に含まれる。さらなるキレート剤は、特許第6,682,734号、6,399,061号、5,843,439号に記載され、好ましくは三価の金属に対して高い親和性を提供するよう選択され、腫瘍対非腫瘍比率の上昇と、骨吸収の低下に加えて標的部位、すなわち、B細胞リンパ腫の腫瘍部位における放射性核種の生体内での高い保持率を示す。しかし、これらの特性の全てを有するかどうかわからない他の二機能性のキレート剤が当分野で知られており、腫瘍の治療において利益をもたらす可能性がある。
【0112】
修飾抗体もまた、診断上および治療上の目的(例えば、アッセイまたはキットでの使用目的)で放射性標識と複合体化させることができる。腫瘍の診断的「画像化」用の治療用放射性標識複合体も、抗体および細胞毒性薬を患者に投与する前に用いることができる。例えば、C2B8として知られる、ヒトCD20抗原に結合するモノクローナル抗体を、二機能性キレート剤、例えば1‐イソチオシアナートベンジル‐3‐メチル‐DTPAと1‐メチル‐3‐イソチオシアナートベンジル‐DTPAの1:1の混合物を含む、MX‐DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)を用いて111Inで放射性標識することができる。検出可能な毒性なしに、約1〜約10mCiを安全に投与できることから、111Inは、好適な診断用放射性同位元素であり、画像データは、続いて起こる90Y標識抗体分布の指標である。5mCiの、一般的な画像診断用111In標識抗体用量が用いられ、最適な画像は、標識抗体またはリガンドの投与後の各種時間、一般的には投与の3〜6日後において決定される。例えば、Murray, J.(1985)NUC. Med. 26, 3328およびCarraguillo et al.,(1985)J. Nuc. Med. 26, 67を参照されたい。
【0113】
様々な放射性同位元素が使用可能で、当業者は、様々な条件下でどの放射性同位元素が最も適切かを容易に決定できる。例えば、131Iは標的免疫療法に多く利用される。しかし、131Iの臨床的有用性は、その半減期の短さ(8日間)、血液中および腫瘍部位の両方におけるヨード化抗体の脱ハロゲン化の可能性、および腫瘍の大きさによって、要望通り腫瘍内で十分に限局化した用量沈着を提供できない可能性がある、その高エネルギーγ放射によって制限される。さらなるキレート剤の出現によって、金属キレート基をタンパクに結合し、他の放射性核種、例えば111Inおよび90Yを利用する、さらなる機会がもたらされる。90Yは、放射免疫治療の応用における利用に関していくつかの利点を提供する。例えば、90Yの64時間という長い有用な半減期は、腫瘍細胞による抗体蓄積を促すのに十分に長く、131Iとは違い、90Yは、その崩壊過程においてガンマ線照射を伴わない高エネルギーの純粋なベータ放射体であり、直径100〜1,000細胞の範囲を組織に持つ。さらに、最小限の量の透過性放射線によって90Y‐標識抗体の外来投与が可能になる。加えて、標識抗体の取り込みは、細胞の死滅を必要とせず、電離放射線は、標的抗原がない近傍の腫瘍細胞にとって致命的でなければならない。
【0114】
V.免疫吸着法、治療用血漿交換法および白血球分離法
血漿交換法は、自己免疫疾患患者の治療に用いられており、抗体、免疫コンプレックス、炎症性因子、可溶性接着分子の除去による明らかな効果が認められる。血漿交換法と併用する免疫吸着法は、ブドウ球菌タンパクAまたは抗ヒトIg抗体を用いてIgGを除去するために用いられている。例えば、Graninger, M. et al,(2002)Acta Med. Austriaca 29, 26‐29(ヒト免疫グロブリンを血漿から除去するための、ヒツジポリクローナル抗ヒトIg複合体化カラム「Ig‐Therasorb/Pt」(Therasorb, Munchen, Germany)の使用)を参照されたい。白血球分離法を、同様の方法で細胞表面抗体を持つ細胞を除去するために使用できる。
【0115】
血漿交換法および免疫吸着法の手技と装置は、当分野で周知であり、血液細胞成分を遠心分離を用いて血漿から分離するステップを一般的に含む。血漿交換法、血小板分離法(患者に使用するために、提供者の血小板を採取)、赤血球分離法(鎌状赤血球貧血の治療に使用)、または白血球分離法(移植のために提供者の幹細胞を採取、治療上の目的で白血球を除去)を実施するために、機器を較正する。差次的な細胞密度勾配によって、連続法または非連続法で、遠心分離機が成分を分離できるようになる。中空糸または回転シリンダーメンブレンもまた分離を実行するために使用可能である。高分子量成分が保持される間、低分子量成分は通過する、ろ過プロセスを用いて血液成分を分離するために、メンブレンを透析装置または遠心装置とともに用いてもよい。一般的なメンブレンは、セルロースアセテートからなるが、寒冷沈降反応(クリオグロブリンの除去)またはアフィニティー吸着(例えば、ブドウ球菌タンパクAへの吸着によるIgGクラス抗体の除去)によって特定の血漿成分を選択的に保持するよう様々な材料をデザインしてもよい。メンブレンは、単独、または第1のメンブレンが細胞成分から血漿を分離し、第2のメンブレンが特定の血漿成分を選択的に除去するように多数重ねて使用してもよい。
【0116】
用語「免疫吸着剤」は、目的の抗原決定基に免疫特異的に結合する能力を持つ基質を意味するよう広義で用いられ、フィルタ、メンブレン、パーティクル、ビーズなどに加え、モノリシック材料を含む。モノクローナル抗体を用いて誘導体化された免疫吸着剤は、血漿タンパクの特異性の高い除去のための手段を提供する。当分野で周知の結合技術もまた、所望の特異的結合を持つ免疫吸着剤を作製するために用いることができる。免疫吸着剤を、循環抗体を患者の血液または血漿から除去するため、または標的抗体をその細胞表面に持つ細胞を血液または骨髄またはリンパ系組織から除去するために用いてもよい。免疫吸着剤材料、例えばデキストラン硫酸カラムは、抗DNAおよび抗リン脂質抗体の循環濃度、および循環免疫コンプレックスを低下させることが示されている。フェニルアラニンまたはトリプトファンが加えられた、ポリビニルゲルを含むカラムは、疎水性相互作用によって抗DNAおよび抗リン脂質抗体、免疫コンプレックス、リウマトイド因子(RF)を除去すると報告されている。ブドウ球菌タンパクAカラムは、IgGサブクラス1、2、4に結合することが示され、移植の前、または自己免疫疾患患者に加えて、血友病患者に対して用いることができる。抗ヒトIgGカラム(重鎖および軽鎖に対する特異性を持つ)は、実質的に全てのIgGを除去し、IgMおよびIgA抗体を大幅に減少させる。
【0117】
好ましくは、免疫吸着剤は、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体、または抗体の一部を含む。好適な免疫吸着剤は、生殖系列抗体好ましくはVH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体に特異的に結合できる、抗生殖系列抗体または抗生殖系列抗体の一部を含む。特定の実施形態では、免疫吸着剤は、生殖系列抗体に特異的に結合できる抗生殖系列抗体と同様の結合特性を持つリガンドを含む。特定の実施形態では免疫吸着剤は、VH4‐34抗体に対して特異的結合を持つ抗生殖系列抗体、好ましくは9G4またはLC1、またはそれらの一部を含む。別の実施形態では、免疫吸着剤は、VH4‐34抗体に結合できるリガンド、またはフレームワーク領域1のアミノ酸配列および/またはアミノ酸配列AVYを含むVH4‐34抗体の部分を含む。
【0118】
本明細書で説明される方法は、生殖系列抗体または細胞上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含む。血漿交換法は、これらの病的抗体または細胞を除去するために、免疫吸着剤と血液または血漿を接触させるのに便利な方法を提供する。しかし、特異的結合と、抗体の除去を提供する方法ならいずれも用いることができる。
VI.治療上の処置の有効性を監視するための方法
【0119】
1つの態様では、自己免疫疾患、例えばSLEまたはループス腎炎患者に対して提供される治療の有効性を監視するための方法が提供される。方法は、患者から血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプルを採取するステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する生殖系列抗体と結合するのに十分な量の抗生殖系列抗体と、サンプルを接触させるステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の結合した抗生殖系列抗体の量を測定するステップと、生殖系列抗体の減少量、または引き続き存在する量と、結合した抗生殖系列抗体の量を相関させ、治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、生殖系列抗体産生B細胞の数、または生殖系列抗体の量を減少させるような治療の有効性または非有効性を相関させるステップを通常含む。好ましくは、抗生殖系列抗体は、ELISAまたはラジオイムノアッセイを実施するための基質と結合する。抗生殖系列抗体は、細胞表面生殖系列抗体を発現する、存在する細胞の数を測定するために、フローサイトメトリーにおいて用いられてもよい。治療上の処置には、血漿交換法、白血球分離法、または抗生殖系列抗体または抗B細胞剤、化学療法剤、寛容源、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、抗凝固剤、または静脈注射用免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせを含む、追加の医薬活性剤を用いる治療が含まれる。
【0120】
さらなる態様では、自己免疫疾患患者における治療上の処置の有効性を監視するための方法が提供され、方法は、患者から血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプルを採取するステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在するVH4‐34抗体と結合するのに十分な量の抗VH4‐34抗体と、該サンプルを接触させるステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の結合した抗VH4‐34抗体の量を測定するステップと、治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、VH4‐34抗体産生B細胞の数、またはVH4‐34抗体の量を減少させるような治療の有効性と、結合した抗VH4‐34抗体の量を相関させるステップを含む。好適な実施形態では、抗VH4‐34抗体は、ELISAまたはラジオイムノアッセイを実施するための基質と結合する。別の好適な実施形態では、抗VH4‐34抗体はフローサイトメトリーにおいて利用される。適切な治療上の処置には、血漿交換法、白血球分離法、または抗B細胞剤,化学療法剤、寛容源、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、抗凝固剤、または静脈注射用免疫グロブリンを含む、追加の医薬活性剤を用いる治療が含まれる。
【0121】
患者からの血清サンプルを、以下のステップに従って採取し、処理する。(a)抗生殖系列抗体、好ましくはVH4‐34結合抗体(例えばラットのモノクローナル抗体9G4)とサンプルを混合し、サンプル対緩衝液の容量比が最大1:1000になるように血清を水性緩衝液で希釈することでサンプルを調製する、(b)サンプル中の結合した抗生殖系列抗体の割合(例えば、サンプル中の、VH4‐34抗体に結合した9G4の量)を測定するために、結合分析を実施する、(c)該割合が、患者体内の循環生殖系列抗体の濃度の減少の指標となるかどうかを判定するため、ステップ(b)の結果を、対照(例えば、自己免疫疾患ではない患者から得られた血清サンプルのグループの結果)と比較する。一実施形態では、サンプル対緩衝液の容積比は、最大で1:100である。選択された範囲内のトータルIg濃度、好ましくは正常血清の範囲内の濃度にするために、水性緩衝液で希釈することでサンプルを調整してもよい。方法は、関節リウマチのある患者に起因する偽陽性を減らすため、サンプルがリウマトイド因子抗体を実質的にもたないと判定するステップを含んでもよい。
【0122】
治療の有効性の監視はまた、医学診断よび医学診療の分野で周知の患者評価手段を含んでもよい。例えば、治療の有効性の監視は、様々な周知の臨床活性スケールを用いる病気の進行または症状の改善の監視を含んでもよい。SLEの評価には、臨床活性スケールは、全身性ループス活動性尺度(Systemic Lupus Activity Measure「SLAM」)、全身性ループスエリテマトーデス病活動性指数(Systemic Lupus Erythematosis Disease Activity Index「SLEDAI」)、英国諸島評価団体(British Isles Lupus Assessment Group「BILAG」)を含む。関節リウマチの評価には、米国リウマチ学会リウマチ診断基準(American College of Rheumatology Response Criteria)がよく用いられる(ACR20、ACR50、ACR70はそれぞれ20%、50%、70%の改善を示す)。クローン病には、クローン病活動性指数(Crohn’s Disease Activity Index「CDAI」)を用いてもよい。病的抗体および病的抗体産生B細胞を分析する上述の方法の結果を、これらの臨床活性スケールと相関させることで検証が可能である。
【0123】
別の態様では、B細胞性腫瘍、例えばALLまたはCLLにもたらされる治療の有効性を監視するための方法が提供される。方法は、患者から血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプルを採取するステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する生殖系列抗体と結合するのに十分な量の抗生殖系列抗体と、サンプルを接触させるステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の結合した抗生殖系列抗体の量を測定するステップと、生殖系列抗体の減少量、または引き続き存在する量と、結合した抗生殖系列抗体の量を相関させ、治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、生殖系列抗体産生B細胞の数、または生殖系列抗体の量を減少させるような、治療の有効性または非有効性を相関させるステップを通常含む。
【0124】
ELISA
方法の別の実施形態では、ステップ(a)では、サンプルは、標識試薬と不溶性画分に結合する試薬を用いる酵素免疫測定法(「ELISA」)の対象となり、標識試薬は酵素標識抗生殖系列抗体(例えば、VH4‐34結合抗体、9GA)であり、不溶性画分に結合する試薬は生殖系列抗体(例えば、VH4‐34抗体)であり、該ステップ(b)は、不溶性画分に結合した酵素標識抗生殖系列抗体を測定するステップを含む。方法のさらに別の実施形態では、ステップ(a)では、サンプルは、標識試薬と不溶性画分に結合する試薬を用いるELISAの対象となり、標識試薬は酵素標識抗生殖系列抗体(例えば、VH4‐34結合抗体)であり、不溶性画分に結合する試薬は抗生殖系列抗体(例えば、抗VH4‐34抗体)であり、該ステップ(b)は、不溶性画分に結合した酵素標識VH4‐34抗体を測定するステップを含む。方法のさらなる実施形態では、ステップ(a)では、サンプルは、第一試薬と不溶性画分に結合する第2試薬を用いる酵素免疫測定法(「ELISA」)の対象となり、第一試薬は抗生殖系列抗体(例えば9G4)であり、不溶性画分に結合する試薬はVH4‐34抗体であり、該ステップ(b)は、不溶性画分と抗生殖系列抗体と結合する標識抗体を接触させることで、不溶性画分に結合した抗生殖系列抗体を、測定するステップを含む。
【0125】
特定の実施形態では、例えば、van Vollenhoven, R. F., et al.,(1999)「VH4‐34 encoded抗体in SLE: a specific diagnostic marker that correlates with clinical disease characteristics」J. Rheumatol. 26, 1727‐1733で記載されるような、抑制ELISAによって血清中のトータルVH4‐34Igを検出できる。簡潔に言うと、プレートを精製VH4‐34IgMでコーティングする。血清サンプルを、VH4‐34IgMでコーティングした96穴プレートに移す前に、9G4とともに15分間室温でインキュベートする。コーティングしたVH4‐34IgMに結合した9G4の量を、ペルオキシダーゼ標識抗ラットIgG(Caltag, South San Francisco, CA)を用いて検出する。血清サンプル中のVH4‐34コード抗体は、9G4結合においてコーティングされたVH4‐34IgMと競合し、患者の血清中のVH4‐34Igの量に応じて様々な発色が起こる。
【0126】
例えばN. M. Bhat, N.M., et al.,(2002)「V4‐34 Encoded Antibody in SLE: Effect Of Isotype」J. Rheumatol. 29, 2114‐2121で記載されるように、血清中のVH4‐34コード化IgMおよびVH4‐34コード化IgGを検出できる。簡潔に言うと、プレートを精製9G4でコーティングし、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgGまたはIgMを用いて検出する。このアッセイは、各血清材料中の、VH4‐34抗体の各イソタイプの相対量を提供する。
【0127】
別の態様では、関節リウマチに起因する偽陽性交差反応が少ない、患者から採取された血清サンプルからの、病的抗体の減少を監視するための方法が開示され、方法は、ステップ(a):サンプルと9G4モノクローナル抗体の結合フラグメントを混合するステップ(例えば、Fab’、FabまたはFvなど)を含み、サンプル対緩衝液の容量比が最大1:1000になるようにサンプルを血清を水性緩衝液で希釈することでサンプルを調製し、(b)サンプル中の結合した9G4モノクローナル抗体の割合を測定し、該割合が、患者のSLEの治療の有効性を監視するのに十分かどうかを判定するため、ステップ(b)の結果を、標準と比較する。一実施形態では、サンプル対希釈緩衝液の容積比は、最大で1:100である。好適な実施形態では、選択された範囲内のトータルIg濃度、好ましくは正常血清の範囲内の濃度にするために、水性緩衝液で希釈することでサンプルを調整する。
【0128】
フローサイトメトリー
細胞表面の受容体の数を測定するためにフローサイトメトリーを実施するための方法は周知である。適切なフローサイトメーターは、Beckman Coulter Inc.(Fullerton, CA)or BD Biosciences(San Jose, CA)で製造されている。通常は、フローサイトメーターは、細胞上の細胞表面抗原と結合した抗体または他の標識リガンド上に存在する蛍光プローブを励起するレーザーを通過する単一ストリーム中に細胞を送る。細胞は、サイトメーターに取り込まれる前に、目的の分子、例えば細胞表面抗原を認識する蛍光標識プローブ(例えば抗体または色素)とともにインキュベートされる。光のセットは、通過する標識細胞上にレーザーの焦点を合わせる。細胞上の励起された蛍光プローブが光を発すると、別の光のセットが放たれた光を採取し、発光スペクトルを分離するフィルタにそれを送る。光の異なる波長は、異なる検出器で検出され、各細胞から放出された光の量の記録、各細胞に結合した標識の量の関数を提供する。データは一般的に、ヒストグラムの形状で示され、分析された細胞サンプルの何パーセントが、特定の濃度の目的のリガンド(例えば、抗体)を発現するかを判定するよう解釈できる。細胞に関する大きさと形状の情報を提供するため、光散乱に基づいてデータを分析することもできる。分類の追加機能を持つが、分析機能についてのみ使用することも可能な分類機を用いて特定の量の標識の結合を示す細胞、または特定の形状および大きさの細胞を個別に分析できる。
【0129】
キット
さらなる態様では、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍のための治療の実施に対する、それを必要とする患者における治療反応を監視するためのキットが提供され、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する生殖系列抗体と結合するのに効果的な量の抗生殖系列抗体を含む。好適な実施形態では、キットは、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在するVH4‐34抗体と結合するのに効果的な量の抗VH4‐34抗体を含む。キットはまた、実施と、得られた結合結果を解釈するための説明書を含んでもよい。治療は、自己免疫疾患のための治療のいずれであってもよく、血漿交換法、白血球分離法の実施、またはVH4‐34抗体をはじめとする、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体、またはその他の医薬活性剤の投与を含む。
【0130】
好適なキットは、抗生殖系列抗体のフラグメント、特に、9G4モノクローナル抗体および生殖系列抗体、特に、VH4‐34試薬抗体を含む較正試薬を含む。一実施形態では、キットは9G4モノクローナル抗体の標識フラグメントを含む。好適な実施形態では、キットは、不溶性相物質(例えば基質、例えばELISAプレート)に結合するVH4‐34抗体を含む。必要ならば、さらなる試薬がキットに含まれてもよく、例えば、対照抗体、二次抗体、ELISAアッセイに必要なもの、ラジオイムノアッセイ、説明書、または同様のものである。
【0131】
VII.組成物
抗体および追加の活性を持つ薬剤を、当分野で周知のいずれの方法および医薬的に許容できる賦形剤を用いて調製してもよい。一般的には、抗体は生理食塩水中で提供され、任意で賦形剤と安定剤が加えられる。追加の活性を持つ薬剤は、調製方法および賦形剤によって大きく異なり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(Arthur Osol, Editor)にこの情報を見つけることができる。
【0132】
本明細書で説明される抗体および方法はまた、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍の治療のための薬剤の製造における、抗生殖系列抗体の使用のために提供される。好ましくは、抗生殖系列抗体は、VH4‐34抗体に対して特異的結合活性を持つ。さらなる態様では、組成物は、基本的に9G4モノクローナル抗体の結合フラグメントで構成される。9G4モノクローナル抗体の結合フラグメントは、例えば酵素標識などで標識できる。
【0133】
抗体はまた、血漿交換法および白血球分離法における使用のための免疫吸着剤の調製に使用可能であり、免疫吸着剤は、血漿交換または白血球分離用装置での使用に適した基質(例えば、吸着剤)と結合する抗生殖系列抗体またはそのフラグメントを含む。好ましくは、抗生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体に対して特異的結合を持つ抗体から選択され、より好ましくは、抗VH4‐34抗体、例えば9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である。さらなる実施形態では、抗生殖系列抗体は、9G4、G6、17.109、またはLCI、ヒト化9G4、G6、17.109、またはLCI、キメラ化9G4、G6、17.109、またはLC1、またはそれらのフラグメントまたは複合体である。
【0134】
VIII.投与方法
本明細書で説明される方法と組成物は、生体内、生体外、試験管内での応用で使用できるように意図されている。生体内での応用では、本発明の治療組成物を様々な異なる手段で患者に投与できる。投与手段は、目的とする応用によって変わる。当業者が理解するように、治療組成物の投与は様々な手法で実施され、より一般的には体腔または血管への注射、例えば、腹腔内、静脈内、リンパ管内、腫瘍内、筋肉内、間質内、動脈内、皮下、病変内、眼球内、滑液嚢内、関節内で行われる。しかし、特定の目的のためにその他の投与方法、例えば、経皮投与、眼球、直腸を含むがこれに限定されない局所投与や、例えば、パッチ、担体、またはイオン導入を用いる能動的または受動的手段を用いる経皮投与や、経粘膜的、例えば、舌下腺投与、口腔投与、直腸投与、膣内投与、または経尿道投与や、経口投与、例えば、胃内または十二指腸内投与や、吸入、例えば、噴霧器を用いる肺内注入または鼻孔吸入である。
【0135】
例えば、皮膚をつまむまたは引き上げ、下にある組織から引き離すことによって作成したポケット内への皮下投与によって、薬剤容器からの比較的遅い、徐放投与を用いて抗体製剤を投与できる。皮下ボーラスを投与してもよく、ボーラス薬の投与は、およそ15分以下、より好ましくは5分以下、最も好ましくは60秒以下がよい。30分以下、または90分以下を含むがこれに限定されない時間で皮下注入の薬剤容器からの比較的遅い、徐放投与を行ってもよい。任意で、動物またはヒト患者の皮膚の下に移植される、薬剤投与ポンプの皮下移植によって注入を行ってもよく、ポンプは既定の量の薬剤を既定の時間、例えば30分、90分、または治療計画期間の全時間投与する。抗体は、ボーラスとして静脈内注射によって、またはより好ましくはより長い時間(例えば、分から時間)投与してもよい。
【0136】
病気の重症度および生殖系列抗体の力価、または患者の体内に存在する生殖系列抗体産生または発現B細胞の数に応じて、一連の用量範囲で抗体を投与できる。用量は、一般的に約2.5〜約3000mg/mの範囲で、またはより好ましくは、投与される抗体の用量は、約25〜1000mg/mであり、または特に約75、150、300、または600mg/mである。特定の例では、抗体を一週間につき10‐375mg/mで四週間、または一週間につき0.4‐20mg/kgで2〜10週間の量で投与できる。
【0137】
さらなる態様では、抗体を約0.01mg/kgから約100mg/kgの用量で投与でき、より好ましくは投与される抗体の用量は約0.25mg/kgから約20mg/kg、またはより詳しくは約1.25、2.5、5、10、または20mg/kgである。抗CDIM抗体を投与する場合は、通常週一回の頻度で投与され、ある実施形態では、一週間に1度より多く、一日に1度の頻度で投与される。投与された抗VH4‐34抗体は、好ましくは約0.01mg/kg〜約20mg/kg(体重)の用量レベルの範囲で投与される。
【0138】
その好適な特定の実施形態に関連して本発明を説明したが、上記の説明だけでなく後に続く実施例は、例を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するべきである。本発明の実施は、そうでないと示されない限り、当分野の範囲内である、有機化学、高分子化学、免疫組織化学、生化学などの従来の技術を用いる。本発明の範囲内にあるその他の態様、利点、および改変は、本発明に関連がある当業者には明らかであろう。そのような技術は参考文献において詳細に説明される。
【0139】
上記および下記の両方で、本明細書で言及される全ての特許、特許出願、および出版物は、参照することにより本明細書に引用したものとする。
【0140】
下記の実施例では、使用する数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保する努力を払ったが、いくらかの実験誤差や偏差が存在するものである。そうでないと明示しない限り、温度は度(℃)であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0141】
略語:
PMBC 末梢血単核細胞
SLE 全身性エリテマトーデス
MZ 辺縁帯
Ig 免疫グロブリン
ELISA 酵素免疫測定法
RF リウマトイド因子
HCV C型肝炎ウイルス
HIV ヒト免疫不全ウイルス
FR1 フレームワーク1領域
【実施例】
【0142】
実施例1《VH4‐34抗体の除去は、自己免疫症状を軽減する》
SLEのあるヒト由来の高力価のVH4‐34抗二本鎖DNA抗体を含む、血漿または精製IgGをマウスに注射する。自己免疫症状についてマウスを注意深く観察する。9G4‐アフィニティーカラム(例えば、9G4‐セファロース)に通すことによって、VH4‐34抗体の血漿または精製IgGを枯渇させるために、血漿または精製IgGの同一サンプルを処理する。VH4‐34が枯渇した、同一量の抗体を第2のマウスに注射し、マウスを自己免疫疾患症状について注意深く観察する。VH4‐34抗体含有サンプルで処理したマウスの結果を、枯渇手順後の自己免疫疾患の症状の軽減の証拠に関してVH4‐34抗体枯渇サンプルで処理したマウスの結果と比較する。
【0143】
実施例2《抗VH4‐34抗体によるVH4‐34抗体発現細胞の除去》
末梢血単核細胞(PMBC)を、高力価のVH4‐34抗DNA抗体を持つ患者、例えば、SLE患者から分離し、培養する。細胞を、補体の存在下で、9G4(またはVH4‐34抗体に対して特異的結合を持つ他の抗体)、または対照抗体で処理する。VH4‐34抗体で処理された細胞において、対照抗体と比較して力価が低下するかどうかを測定するために、培養PMBCの上清中の抗DNA抗体の力価を数日間にわたって観察する。9G4+CD19+細胞の枯渇と、培養物上清中の抗DNA抗体の減少に相関があるかどうかを判定するために、培養物を、9G4+CD19+細胞の数に関して分析する。
【0144】
実施例3《治療量の抗VH4‐34抗体を用いる寒冷凝集素症患者の治療》
溶血自己抗体が、VH4‐34遺伝子座由来の生殖系列抗体である、寒冷凝集素症患者に、治療用量の抗VH4‐34抗体、好ましくは細胞溶解性ヒト化バージョンの9G4抗体を、静脈内投与または他の非経口経路のいずれかによって投与する。抗体の投与後、患者の自己抗体産生VH4‐34B細胞集団は除去または減少され、また病的自己抗体の産生は除去または減少され、これにより寒冷溶血の減少、および結果として起こる患者の貧血の改善または消散として現れる、患者に対する臨床的利点がもたらされる。反応または長期寛解を達成するために、患者は抗VH4‐34抗体を用いる複数回の治療を必要とするかもしれない。投与される抗VH4‐34抗体は、用量レベルの範囲、例えば、0.01mg/kgから、最大20mg/kg(体重)で投与されてもよい。
【0145】
実施例4《治療量の抗VH4‐34抗体を用いた全身性エリテマトーデス患者の治療》
患者がH4‐34遺伝子座由来の循環病的生殖細胞系自己抗体を持つ、全身性エリテマトーデス患者に、治療用量の抗VH4‐34抗体、好ましくは細胞溶解性ヒト化バージョンの9G4抗体を、静脈内投与または他の非経口経路のいずれかによって投与する。抗体の投与後、患者の自己抗体産生VH4‐34B細胞集団は除去または減少され、また病的自己抗体の産生は除去または減少され、これにより患者の全身性エリテマトーデスの徴候および症状の減少、または完全な消散として現れる、患者に対する臨床的利点がもたらされる。反応または長期寛解を達成するために、患者は抗VH4‐34抗体を用いる複数回の治療を必要とするかもしれない。投与される抗VH4‐34抗体は、用量レベルの範囲、例えば、0.01mg/kgから、最大20mg/kg(体重)で投与されてもよい。
【0146】
実施例5《治療量の抗VH4‐34抗体を用いたVH4‐34生殖系列抗体発現B細胞性腫瘍患者の治療》
患者の腫瘍性B細胞がVH4‐34遺伝子座由来の生殖系列抗体を発現する、B細胞性腫瘍、例えば急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫患者、治療用量の抗VH4‐34抗体、好ましくは細胞溶解性ヒト化バージョンの9G4抗体を、静脈内投与または他の非経口経路のいずれかによって投与する。抗体の投与後、患者の腫瘍性B細胞集団は除去または減少され、これにより悪性腫瘍に付随する病的徴候および症状の軽減、または悪性腫瘍に付随する全ての徴候および症状の完全な、そして長期の寛解として現れる、患者への臨床的利点がもたらされる。反応または長期寛解を達成するために、患者は抗VH4‐34抗体を用いる複数回の治療を必要とするかもしれない。投与される抗VH4‐34抗体は、用量レベルの範囲、例えば、0.01mg/kgから、最大20mg/kg(体重)で投与されてもよい。
【0147】
実施例6《病的抗体を除去するために、VH4‐34抗体に特異的な免疫吸着剤を用いる、寒冷凝集素症患者の治療》
患者が、VH4‐34遺伝子座由来の循環病的生殖細胞系自己抗体を持つ寒冷凝集素症患者を、病的抗体および病的抗体産生B細胞を患者の血液または血漿から除去するために、患者の血液または血漿を、VH4‐34抗体に特異的な免疫吸着剤に通すことによって治療する。血漿交換法または白血球分離法手技の後、治療用量の抗VH4‐34抗体、好ましくは細胞溶解性ヒト化バージョンの9G4抗体を、静脈内投与または他の非経口経路のいずれかによって患者に投与してもよい。血漿交換法または白血球分離法手技による、循環VH4‐34抗体の除去に続いて、細胞溶解性抗VH4‐34抗体を投与すると、治療用細胞溶解性抗VH4‐34抗体の投与過程における、免疫コンプレックスの形成の誘導と、付随する有害な臨床徴候のリスクを減少させる、または取り除くことができる。治療用抗体の投与後、患者の自己抗体産生VH4‐34B細胞集団は除去または減少され、また病的自己抗体の産生は除去または減少され、これにより寒冷溶血の減少、および結果として起こる患者の貧血の改善または消散として現れる、患者に対する臨床的利点がもたらされる。反応または長期寛解を達成するために、患者は、VH4‐34抗体に特異的な免疫吸着剤を用いる血漿交換法または白血球分離法による複数回の治療、ならびに抗VH4‐34抗体を用いる複数回の治療を必要とするかもしれない。投与される抗VH4‐34抗体は、用量レベルの範囲、例えば、0.01mg/kgから、最大20mg/kg(体重)で投与されてもよい。
【0148】
実施例7《病的抗体を除去するために、VH4‐34抗体に特異的な免疫吸着剤を用いる、全身性エリテマトーデス患者の治療》
溶血性自己抗体がVH4‐34遺伝子座由来の生殖系列抗体である、全身性エリテマトーデス患者を、病的抗体および病的抗体産生B細胞を患者の血液または血漿から除去するために、患者の血液または血漿を、VH4‐34抗体に特異的な免疫吸着剤に通すことによって治療する。血漿交換法または白血球分離法手技の後、治療用量の抗VH4‐34抗体、好ましくは細胞溶解性ヒト化バージョンの9G4抗体を、静脈内投与または他の非経口経路のいずれかによって患者に投与してもよい。血漿交換法または白血球分離法手技による、循環VH4‐34抗体の除去に続いて、細胞溶解性抗VH4‐34抗体を投与すると、治療用細胞溶解性抗VH4‐34抗体の投与過程における、免疫コンプレックスの形成の誘導と、付随する有害な臨床徴候のリスクを減少させる、または取り除くことができる。治療用抗体の投与後、患者の自己抗体産生VH4‐34B細胞集団は除去または減少され、また病的自己抗体の産生は除去または減少され、これにより患者の全身性エリテマトーデスの徴候および症状の減少、または完全な消散として現れる、患者に対する臨床的利点がもたらされる。反応または長期寛解を達成するために、患者は、VH4‐34抗体に特異的な免疫吸着剤を用いる血漿交換法または白血球分離法による複数回の治療、ならびに治療用抗VH4‐34抗体を用いる複数回の治療を必要とするかもしれない。投与される抗VH4‐34抗体は、用量レベルの範囲、例えば、0.01mg/kgから、最大20mg/kg(体重)で投与されてもよい。
【0149】
実施例8《骨髄の再移植の前の、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者の骨髄の病的細胞の生体外でのパージ》
生殖細胞系VH4‐34由来自己抗体の産生、または生殖細胞系VH4‐34抗体を発現するB細胞性腫瘍として発現する、自己免疫疾患患者に、自家移植のための骨髄採取を行う。治療量の細胞溶解性抗VH4‐34抗体、好ましくは補体結合性ヒト化バージョンの9G4抗体を用いて、補体存在下で骨髄を生体外で治療し、これにより自己免疫疾患誘発性B細胞、または腫瘍性B細胞集団の骨髄のパージを行う。骨髄機能廃絶化療法後、患者に、自家のパージ後骨髄を投与し、結果として患者の正常骨髄機能が再構成され、病的VH4‐34自己抗体の産生は無くなり、またはB細胞性腫瘍集団は存在しなくなり、患者に臨床的利点がもたらされる。
【0150】
実施例9《自己免疫疾患患者、またはVH4‐34抗体を分泌または発現するB細胞性腫瘍患者における治療上の処置の有効性の監視》
患者から血液または骨髄またはリンパ系組織の連続サンプルを採取し、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在するVH4‐34抗体と結合するのに十分な量の抗VH4‐34抗体と、該サンプルを接触させ、血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、結合した抗VH4‐34抗体の量を測定し、結合した抗VH4‐34抗体の量と、治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中の、VH4‐34抗体産生または細胞表面発現B細胞の数、またはVH4‐34抗体の量を減少させるような治療の有効性を相関させることによって、自己免疫疾患患者、またはVH4‐34抗体を分泌または発現するB細胞性腫瘍患者における治療上の処置の有効性を監視する。該VH4−34抗体の量、又はVH4−34抗体産生B細胞の測定は、ELISA、RIA、フローサイトメトリー、免疫組織化学、またはその他の定量的または定性的分析法によって実施してもよい。個々の患者の病気の経過中、監視手技によって得られた情報は、患者の自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍の再発を判定するため、また患者の自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍に対して新規の治療的介入を繰り返すまたは加える適切な時期を決定するために、用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍のヒト患者を治療するための薬剤の製造のための、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体の使用。
【請求項2】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される、請求項1の使用。
【請求項3】
生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項1の使用。
【請求項4】
追加の医薬活性剤、治療上効果的な処置、またはその他の補助療法をさらに用いる、請求項1の使用。
【請求項5】
前記追加の医薬活性剤は、化学療法剤、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、寛容源、抗B細胞薬、抗T細胞薬、抗凝固剤、または静脈注射用免疫グロブリンである、請求項4の使用。
【請求項6】
自己免疫疾患患者において、VH4‐34抗体産生B細胞または形質細胞の量を減少させるための薬剤の製造のための、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体の使用。
【請求項7】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項6の使用。
【請求項8】
細胞表面生殖系列抗体を発現する、B細胞性腫瘍を患うヒト患者を治療するための薬剤の製造のための、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体の使用。
【請求項9】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される、請求項8の使用。
【請求項10】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34抗体から選択される、請求項9の使用。
【請求項11】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項9の使用。
【請求項12】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項11の使用。
【請求項13】
化学療法剤、抗B細胞薬、細胞増殖調節物質および/または抑制剤、免疫調節物質またはそれらの組み合わせから選択される追加の医薬活性剤をさらに使用する、請求項9の使用。
【請求項14】
前記化学療法剤はアスパラギナーゼ、エピポドフィロトキシン、カンプトセシン、抗生物質、白金錯体、アルキル化剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、トポイソメラーゼ阻害剤、または前記細胞骨格を破壊する薬剤、またはそれらの混合物である、請求項13の使用。
【請求項15】
抗B細胞薬は、CD11a、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD34、CD37、CD38、CD40、CD45、CD52、CD80、CD86、IL‐4R、IL‐6R、IL‐8R、IL‐13、IL‐13R、α‐4/β‐1インテグリン(VLA4)、BLYS受容体、細胞表面イディオタイプIg、CDIM、腫瘍壊死因子(TNF)の抗体または阻害剤、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項13の使用。
【請求項16】
抗B細胞薬は、抗CDIM抗体である、請求項15の使用。
【請求項17】
抗CDIM抗体は、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kから選択される、請求項16の使用。
【請求項18】
寒冷凝集素症患者を治療するための薬剤の製造における、生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ抗体の使用。
【請求項19】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される、請求項18の使用。
【請求項20】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34抗体から選択される、請求項19の使用。
【請求項21】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項18の使用。
【請求項22】
生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体で患者を治療するステップを含む、自己免疫疾患患者の体内において病的抗体を産生するB細胞または形質細胞の量を減少させるための方法。
【請求項23】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される、請求項22の方法。
【請求項24】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項22の方法。
【請求項25】
追加の医薬活性剤、治療上有効な処置、またはその他の補助療法を用いて患者を治療するステップをさらに含む、請求項22の方法。
【請求項26】
自己免疫疾患患者における、VH4‐34抗体産生B細胞または形質細胞の量を減少させる方法であって、VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を投与するステップを含む、方法。
【請求項27】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項26の方法。
【請求項28】
生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を用いて患者を治療するステップを含む、細胞表面生殖系列抗体を発現するB細胞性腫瘍患者を治療するための方法。
【請求項29】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される、請求項28の方法。
【請求項30】
前記生殖系列抗体は、VH4‐34抗体から選択される、請求項28の方法。
【請求項31】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項28の方法。
【請求項32】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項31の方法。
【請求項33】
化学療法剤、抗B細胞薬、細胞増殖調節物質および/または抑制剤、免疫調節物質またはそれらの組み合わせから選択される、追加の医薬活性剤を用いて患者を治療するステップをさらに含む、請求項28の方法。
【請求項34】
抗B細胞薬は、CD11a、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD34、CD37、CD38、CD40、CD45、CD52、CD80、CD86、IL‐4R、IL‐6R、IL‐8R、IL‐13、IL‐13R、α‐4/β‐1インテグリン(VLA4)、BLYS受容体、細胞表面イディオタイプIg、CDIM、腫瘍壊死因子(TNF)の抗体または阻害剤、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項33の方法。
【請求項35】
生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を用いて患者の骨髄を生体外で治療するステップを含む、骨髄機能廃絶化療法後、患者に骨髄を再移植する前に、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者の骨髄をパージするための方法。
【請求項36】
追加の医薬活性剤を用いて骨髄を治療するステップをさらに含む、請求項35の方法。
【請求項37】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項35の方法。
【請求項38】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項37の方法。
【請求項39】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を用いて、患者の骨髄を生体外で治療するステップを含む、骨髄機能廃絶化療法後患者に骨髄を再移植する前に、自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者の骨髄をパージするための方法。
【請求項40】
追加の医薬活性剤を用いて骨髄を治療するステップをさらに含む、請求項39の方法。
【請求項41】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項39の方法。
【請求項42】
生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含む、自己免疫疾患患者の体から病的抗体を除去するための方法。
【請求項43】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ前記免疫吸着剤は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体を含む、請求項42の方法。
【請求項44】
該接触させるステップは、患者の体内に存在する生殖系列抗体の量の減少をもたらす、請求項42の方法。
【請求項45】
該接触させるステップは、患者の体内で生殖系列抗体を発現する細胞の数の減少をもたらす、請求項42の方法。
【請求項46】
該生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される、請求項42の方法。
【請求項47】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液または血漿中に存在するVH4‐34抗体の量の減少をもたらす、自己免疫疾患患者の体内から病的抗体を除去するための方法。
【請求項48】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ前記免疫吸着剤は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体を含む、請求項47の方法。
【請求項49】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液または血漿を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在する、VH4‐34抗体産生B細胞の量の減少をもたらす、自己免疫疾患患者の体内における、VH4‐34抗体産生B細胞または形質細胞の数を減少させるための方法。
【請求項50】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ前記免疫吸着剤は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体を含む、請求項38の方法。
【請求項51】
生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在する生殖系列抗体発現B細胞性腫瘍細胞の量の減少をもたらす、細胞表面生殖系列抗体を発現するB細胞性腫瘍患者を治療するための方法。
【請求項52】
生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を患者に投与するステップをさらに含む、請求項51の方法。
【請求項53】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項51の方法。
【請求項54】
生殖系列抗体上に存在する、ある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項51の方法。
【請求項55】
治療上有効な量の抗CDIM抗体を患者に投与するステップをさらに含む、請求項51の方法。
【請求項56】
前記抗CDIM抗体は、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kから選択される、請求項55の方法。
【請求項57】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的結合を持つ免疫吸着剤と、患者の血液を接触させるステップを含み、該接触させるステップは、患者の血液、リンパ系組織、または骨髄中に存在するVH4‐34抗体発現B細胞性腫瘍細胞の量の減少をもたらす、細胞表面VH4‐34抗体を発現するB細胞性腫瘍患者を治療するための方法。
【請求項58】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上有効な量の抗体を患者に投与するステップをさらに含む、請求項57の方法。
【請求項59】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項58の方法。
【請求項60】
治療上有効な量の抗CDIM抗体を患者に投与するステップをさらに含む、請求項57の方法。
【請求項61】
前記抗CDIM抗体は、mAb216、RT‐2B、FS 12、A6(H4C5)、Cal‐4G、S20A2、FS 3、Gee、HT、Z2D2、またはY2Kから選択される、請求項60の方法。
【請求項62】
自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者における、治療上の処置の有効性を監視するための方法であって、患者から血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプルを採取するステップと、該サンプルを、血液または骨髄またはリンパ系組織の前記サンプル中に存在する、生殖系列抗体と結合するのに十分な量の抗生殖系列抗体と接触させるステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織の前記サンプル中の、結合した抗生殖系列抗体の量を測定するステップと、結合した抗生殖系列抗体の量と、前記治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された血液または骨髄またはリンパ系組織の前記サンプル中の、生殖系列抗体産生または細胞表面発現B細胞の数、または生殖系列抗体の量を減少させるような治療の有効性を相関させるステップとを含む、前記方法。
【請求項63】
前記抗生殖系列抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項62の方法。
【請求項64】
前記抗生殖系列抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項63の方法。
【請求項65】
前記抗生殖系列抗体は、ELISAまたはラジオイムノアッセイから選択されるアッセイを実施するための基質と結合する、請求項62の方法。
【請求項66】
前記抗生殖系列抗体は、フローサイトメトリーにおいて利用される、請求項62の方法。
【請求項67】
前記治療上の処置は、血漿交換法、白血球分離法であるか、または抗B細胞薬、抗T細胞薬、化学療法剤、寛容源、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、抗凝固剤、または静脈注射用免疫グロブリン、またはそれらの組み合わせを含む追加の医薬活性剤か、抗生殖系列抗体を用いる処置である、請求項62の方法。
【請求項68】
自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者における治療上の処置の有効性を監視するための方法であって、患者から血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプルを採取するステップと、該サンプルを、血液または骨髄またはリンパ系組織の前記サンプル中に存在する、VH4‐34抗体と結合するのに十分な量の抗VH4‐34抗体と接触させるステップと、血液または骨髄またはリンパ系組織の前記サンプル中の、結合したVH4‐34抗体の量を測定するステップと、結合した抗VH4‐34抗体の量と、前記治療上の処置の開始前の時期に患者から採取された血液または骨髄またはリンパ系組織の前記サンプル中の、VH4‐34抗体産生または細胞表面発現B細胞の数、またはVH4‐34抗体の量を減少させるような治療の有効性を相関させるステップとを含む、方法。
【請求項69】
前記抗VH4‐34抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項68の方法。
【請求項70】
前記抗VH4‐34抗体は、ELISAまたはラジオイムノアッセイから選択されるアッセイを実施するための基質と結合する、請求項68の方法。
【請求項71】
前記抗VH4‐34抗体は、フローサイトメトリーにおいて利用される、請求項68の方法。
【請求項72】
前記治療上の処置は、血漿交換法、白血球分離法であるか、または抗B細胞薬、抗T細胞薬、化学療法剤、寛容源、補体活性化抑制剤、代謝拮抗物質、ステロイド、抗凝固剤、または静脈注射用免疫グロブリンを含む追加の医薬活性剤か、抗生殖系列抗体を用いる処置である、請求項68の方法。
【請求項73】
自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍のための治療の実施に対する、それを必要とする患者における治療反応の監視に使用するためのキットであって、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する、生殖系列抗体に結合するのに効果的な量の抗生殖系列抗体を含む、キット。
【請求項74】
自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍のための治療の実施に対する、それを必要とする患者における治療反応の監視に使用するためのキットであって、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する、VH4‐34抗体に結合するのに効果的な量の抗VH4‐34抗体を含む、キット。
【請求項75】
自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍のための治療の実施に対する、それを必要とする患者における治療反応の監視に使用するためのキットであって、該自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍患者からの血液または骨髄またはリンパ系組織のサンプル中に存在する、VH4‐34抗体に結合するのに効果的な量のG4、ヒト化またはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメントまたは複合体を含む、キット。
【請求項76】
血漿交換または白血球分離装置での使用に適した吸着剤と結合する、抗生殖系列抗体またはそのフラグメントを含む、血漿交換法および白血球分離法での使用のための免疫吸着剤。
【請求項77】
前記抗生殖系列抗体は、VH4‐34、VH1‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体に対して特異的結合を持つ抗体から選択される、請求項76の免疫吸着剤。
【請求項78】
前記抗生殖系列抗体は、抗VH4‐34抗体である、請求項76の免疫吸着剤。
【請求項79】
前記抗VH4‐34抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体である、請求項76の免疫吸着剤。
【請求項80】
前記抗VH4‐34抗体は、9G4、ヒト化若しくはキメラ化9G4、またはそれらのフラグメント若しくは複合体である、請求項79の免疫吸着剤。
【請求項81】
ヒト患者における自己免疫疾患またはB細胞性腫瘍の治療のための、生殖系列抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ、治療上効果的な用量の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項82】
前記治療上効果的な用量の抗体は、前記患者の体内において、病的抗体を産生するB細胞または形質細胞の量を減少させるのに効果的な、請求項81の医薬組成物。
【請求項83】
前記治療上効果的な用量の抗体は、前記患者の体内において、生殖系列抗体を発現する、または産生するB細胞または形質細胞の量を減少させるのに効果的な、請求項81の医薬組成物。
【請求項84】
前記治療上効果的な用量の抗体は、前記患者の体内における、病的抗体の量を減少させるのに効果的な、請求項81の医薬組成物。
【請求項85】
該生殖系列抗体は、VH4‐34、VHl‐69、V71‐2、V71‐4、VH4‐18、VH72‐1、またはV2‐1抗体から選択される、請求項81の医薬組成物。
【請求項86】
VH4‐34抗体上に存在するある抗原決定基に対して特異的な結合を持つ前記抗体は、9G4、G6、17.109、LC1、ヒト化9G4、ヒト化G6、ヒト化17.109、ヒト化LC1、キメラ化9G4、キメラ化G6、キメラ化17.109、若しくはキメラ化LC1、またはそれらのフラグメント若しくはそれらの複合体を含む、請求項85の医薬組成物。
【請求項87】
前記治療上効果的な用量の抗体は、前記患者の体内に存在する、生殖系列抗体の量を減少させるのに効果的な、請求項81の医薬組成物。
【請求項88】
前記治療上効果的な用量の抗体は、前記患者の体内に存在する、寒冷凝集素の量を減少させるのに効果的な、請求項81の医薬組成物。


【公表番号】特表2009−508964(P2009−508964A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532371(P2008−532371)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/036784
【国際公開番号】WO2007/035857
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(506152461)パリンゲン インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】PALINGEN,INC.
【Fターム(参考)】