説明

抗真菌薬の増強された送達

特定のジアシルグリセロール−ポリエチレングリコール(DAG−PEG)脂質を用いて製剤化したテトラヒドロフラン抗生物質は、水溶解性および生物学的利用能が増大する。PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPは、二重層中にテトラヒドロフランを取り込むリポソームを形成するのに特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤送達に関し、詳細には、マイクロカプセル化およびリポソーム製剤化によるテトラヒドロフラン抗真菌薬の送達に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、「抗真菌薬の増強された送達」と題され2008年1月4日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/006820号の一部継続出願としての優先権を主張する。また、本出願は、「抗真菌薬の増強された送達」と題され2008年5月16日に出願された米国特許仮出願第61/128011号に対する優先権も主張する。
【背景技術】
【0003】
テトラヒドロフラン抗生物質は、抗真菌薬として広範に用いられている。これらは米国特許第5039676号に記載されており、薬剤ケトコナゾールがこれに含まれる。ケトコナゾールより有効で毒性の少ないより新しいテトラヒドロフランが開発されている。これらは米国特許第5661151号に記載されている。これらのより新しいテトラヒドロフランには、ポサコナゾールおよびイトラコナゾールが含まれる。
【0004】
テトラヒドロフランの現在の不利な点は、水溶解性が低いことおよび生物学的利用能が限られていることなどである。したがって、これらの制約に対処する製剤を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
特定のジアシルグリセロール−ポリエチレングリコール(DAG−PEG)脂質と共に製剤化したテトラヒドロフラン抗生物質は、水溶解性および生物学的利用能が増大する。PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDP、およびPEG−12 GDMは、二重層中にテトラヒドロフランを取り込むリポソームを形成するのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】静脈内投与した種々のポサコナゾール製剤の血中濃度の比較を示した図である。
【図2】経口投与したポサコナゾールの、市販のポサコナゾール製品とDAG−PEG製剤との血中濃度の比較を示した図である。
【図3】静脈内投与後のイトラコナゾールのDAG−PEG脂質製剤と5%のジメチルスルホキシドおよび10%のクレモホアを含有するイトラコナゾールの水性液剤との比較を示した図である。
【図4】イトラコナゾールのDAG−PEG脂質製剤と5%のジメチルスルホキシドおよび10%のクレモホアを含有するイトラコナゾールの水性液剤との経口投与の比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「ジアシルグリセロール−ポリエチレングリコール(DAG−PEG)」とは、3炭素鎖骨格を有し、その3個の炭素のうちの2個に結合したアシル基ともう1個の炭素に結合したポリエチレン鎖とを有する脂質のことをいう。アシル鎖およびポリエチレングリコール鎖は、エステル結合およびエーテル結合を含むがこれらに限定されない種々の化学結合によってこの骨格に結合されていてよい。この骨格とこれらの鎖との間にリンカーが備えられていてもよい。これらの鎖は、この骨格のいかなる位置に結合されていてもよい。
【0008】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6610322号には、特定の脂質を水溶液に添加した際のリポソームの自発的な形成が教示されている。この特許に記載されている脂質を表1に示す。
【表1】

【0009】
表中、PEG−23 GDLとは、23個のサブユニットのPEG鎖を有するジラウリン酸グリセロールのことをいう。同様に、GDOはジオレイン酸グリセロールのことをいう。GDMはジミリスチン酸グリセロールのことをいい、GDPはジパルミチン酸グリセロールのことをいい、GDSはジステアリン酸グリセロールのことをいう。
【0010】
表1には、米国特許第6610322号に特に記載されていない2種類の脂質が含まれる。PEG−12 GDLOとは、12個のサブユニットのPEG鎖を有するジリノール酸グリセロールのことをいう。PEG−12 GDPとは、12個のサブユニットのPEG鎖を有するジパルミチン酸グリセロールのことをいう。
【0011】
PEG−12 GDPは、25℃で半固体であり、これは、その分子の大部分が無秩序液晶相にあり、秩序ゲル相にないことを示す。また、PEG−12 GDPは、25℃で水と容易に混合してリポソームを形成する。したがって、本特許の目的では、PEG−12 GDPは約25℃より低い融解温度を有するものと考える。
【0012】
脂質パッキングパラメーターは、脂質または脂質の組合せがリポソームを形成できるかどうかを決定するものである。リポソームには1種または複数の曲線状の脂質二重層があるので、リポソームを形成するためには、個々の脂質分子の空間配置が、脂質がまとまって適切に包み込まれるようなものとなっていなければならない。親水性頭基が親油性尾部の体積に対して大きすぎる場合には、曲率半径が水性の空間を封入するには小さくなりすぎて、ミセルが形成されるであろう。親水性頭基が親油性尾部の体積に対して小さすぎる場合には、曲率半径が大きくなりすぎて、二重層がそれ自体で一周して閉じて球体を形成することができなくなるであろう。
【0013】
リポソームを形成するDAG−PEG脂質は、均一な大きさの粒子を形成するため、薬剤送達に好ましい。本発明に記載のように、親油性薬剤の送達のために用いる場合には、これらの脂質によって、薬剤を中に分配するための均一な最大限の疎水性環境が提供される。リポソームは水性の環境中で安定な懸濁液を形成するために、こうした薬剤の生物学的利用能を増大させ、薬物動態を向上させることができる。
【0014】
好適なパッキングパラメーターを有するDAG−PEG脂質は、その脂質の融解温度より高い水性の環境中で自発的にリポソームを形成する。例えば、PEG−23 GDPは、31.2℃の融点を有するので、室温では自発的にリポソームを形成することはない。しかし、31.2度より高い温度では、PEG−23 GDPは自発的にリポソームを形成することになる。より高い温度で一度リポソームが形成されると、たとえそのリポソーム懸濁液を31.2度未満に冷却しても、リポソームは安定になる。約40℃の融解温度と好適なパッキングパラメーターとを有するので、PEG−12 GDSも同様の作用をする。好適範囲外のパッキングパラメーターを有するDAG−PEG脂質は、温度を問わず、リポソームを自発的に形成することはないであろう。
【0015】
DAG−PEG脂質は、一般的には純粋ではない。例えば、1バッチのPEG−23 GDPには、わずかに異なるアシル鎖およびわずかに異なるPEG鎖を有する他のDAG−PEG種が含まれることになる。しかし、より長いアシル鎖を有する種がより短いアシル鎖を有する種を補うことになるため、そのバッチの性質は、理論的に純粋なバッチと密接に近似するであろう。また、より長いPEG鎖を有する種も、より短いPEG鎖を有する種を補うことになる。
【0016】
DAG−PEG脂質を用いてテトラヒドロフランをリポソーム内に製剤化することにより、純粋な脂質を用いてリポソームを形成するのとは異なる結果を生じ得ることが発見されている。PEG−23 GDP、PEG−12 GDS、もしくはPEG−23 GDSのいずれかをテトラヒドロフランと共に用いる場合、温度が脂質の融解温度より高いとリポソームが形成される。しかし、これらのリポソームを脂質の融解温度未満に冷却すると、そのリポソーム懸濁液は安定ではなくなり、代わりに、ゲル化または沈殿する(表2〜5を参照されたい)。高温でこれらの懸濁液を維持することは実用的ではないため、これらのDAG−PEGは、ある種のテトラヒドロフラン/リポソーム製剤には適していない。
【0017】
テトラヒドロフラン抗生物質は、親油性であり、水溶液に難溶解性である。ポサコナゾールなどのより新しいテトラヒドロフラン抗生物質は、ケトコナゾールのような以前のものより親油性である。これらの薬剤は、脂質二重層中に圧倒的に分配されて、水相中にはごくわずかな薬剤しか残らないことが予想される。上記の段落で説明した作用の生物物理学的な原因はまだ明らかではないが、脂質の融解温度より低い温度では、テトラヒドロフランが二重層を崩壊させるようである。この作用は、予想外であり、これまで観察されていなかった。
【0018】
脂質の組合せを本発明に用いることもできる。米国特許第6610322号に記載のように、脂質の組合せは、予測可能な物理的性質、例えば融解温度およびパッキングパラメーターを有するであろう。
【0019】
本発明のテトラヒドロフランリポソームは、いくつかの方法において有用である。局所適用のために、これらを溶液中に製剤化することができる。より重要なことに、重篤な真菌感染を予防および治療するために、これらを内用することもできる。内用の場合には、これらを、経口で、もしくは静脈内に投与することができる。経口投与用には、カプセル剤および液剤の2種類の製剤が可能である。静脈内使用を意図する場合にも、数種類の製剤が可能である。これらのリポソームを、リポソーム懸濁液として製造し、流通させることもできる。これらを、薬剤、脂質、およびショ糖などの糖を含有する散剤として製造することもできる。また、これらを、乾燥したリポソームとして製造することもできる。この散剤は、必要なときまで保存することができ、その後、水を添加することにより、リポソームを形成もしくは再構成することになる。
【0020】
本発明のリポソーム製剤は、テトラヒドロフラン送達に対して生物学的利用能の増大と、毒性の減少の可能性とを与えるので有利である。実験室での研究により、経口投与および静脈内投与の双方について、非リポソーム製剤を超える生物学的利用能の増大が示されている。さらに、本発明のリポソームは、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)を用いたリポソーム製剤より優れていることが示されている。
【0021】
ここに記載の製剤はリポソーム懸濁液として説明しているが、これらの製剤には他種の微小粒子が含まれていてもよい。実施例(実施例10を除く)に記載の製剤は、電子顕微鏡法を用いて観察した。小さな凝集体(〜10nm)および多様な大きさの多層小胞(100〜500nm)が観察され、脂質封入によって薬剤の可溶化が達成されることが示された。
【0022】
一態様では、本発明は、テトラヒドロフラン薬剤と、約25℃より低い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するDAG−PEG脂質とを含む医薬組成物である。DAG−PEG脂質の組合せを用いることもできる。該薬剤は、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択してもよい。該DAG−PEG脂質は、PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPからなる群から選択してもよい。薬剤対脂質比は、約1対20より大きいことが好ましく、約1対5より大きいことがより好ましい。
【0023】
該組成物は、糖を含有していてもよく、水溶液を後で添加するための乾燥した形態であってもよい。該組成物は、リポソーム懸濁液であってもよい。該組成物は、DAG−PEGの組合せを含有していてもよい。薬剤濃度は、約1〜50mg/mLの間であることが好ましい。該組成物は、固体の補形剤を含有していてもよく、経口投与用のカプセル剤の形態であってもよい。
【0024】
他の一態様では、本発明は医薬製剤を製造する方法であり、この方法には、テトラヒドロフラン薬剤を選択するステップと、約25℃より低い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するジアシルPEG脂質を選択するステップと、水溶液中で該薬剤を該脂質と組み合わせるステップとが含まれる。該薬剤は、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択してもよい。該脂質は、PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPからなる群から選択してもよい。薬剤最終濃度は、約1〜50mg/mLの間であることが好ましい。薬剤対脂質の最終比は、約1対20より大きいことが好ましく、約1対5より大きいことがより好ましい。
【0025】
他の一態様では、本発明は真菌感染を治療または予防する方法であり、この方法には、テトラヒドロフラン薬剤を選択するステップと、約25℃より低い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するジアシルPEG脂質を選択するステップと、水溶液中で該薬剤を該脂質と組み合わせるステップと、その液剤を投与するステップとが含まれる。該薬剤は、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択してもよい。該脂質は、PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPからなる群から選択してもよい。薬剤最終濃度は、約1〜50mg/mLの間であることが好ましい。薬剤対脂質の最終比は、約1対20より大きいことが好ましく、約1対5より大きいことがより好ましい。投与は、経口、局所、または静脈内であってよい。
【0026】
上記の段落17および18で説明しているゲル化作用は、別の発明として利用することができる。局所クリーム剤を調製する場合などに、テトラヒドロフラン/脂質組成物のゲル化が望まれる時もある。こうした場合には、PEG−12 GDS、PEG−23 GDS、およびPEG−23 GDPを、別々に、あるいは組合せで用いて、局所テトラヒドロフランクリーム剤を調製することもできる。この態様では、別の発明は、テトラヒドロフラン薬剤と、約25℃より高い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するDAG−PEG脂質とを含む医薬クリーム剤である。該薬剤は、ケトコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択してもよい。該DAG−PEG脂質は、PEG−12 GDS、PEG−23 GDS、およびPEG−23 GDPからなる群から選択してもよい。
【0027】
液剤を局所的に適用することもできる。液剤の局所適用が望ましい場合には、ゲル化作用を示さない脂質が選択される。
【0028】
他の一態様では、本発明には、本明細書中でエクアコナゾールと称する新しいテトラヒドロフラン薬剤が含まれる。エクアコナゾールは、以下の構造を有する。
【化1】

および/または
【化2】

【0029】
本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく他のさらなる変更および改変がなされ得ることは当業者に理解されるであろうし、こうした変更および改変がすべて本発明の範囲内に入ることは理解されるべきである。
【実施例】
【0030】
実施例1:イトラコナゾール−脂質製剤
イトラコナゾールを水溶液中でDAG−PEG脂質と組み合わせた。多様な形成温度ならびに多様な薬剤対脂質比を試験した。混合後、製剤を室温で放置した。これらの結果を表2に示す。
【表2】

【0031】
表2、3、4、および5において、「−」は溶解しないことを意味し、「−/+」は部分的に溶解することを意味し、「+」は溶解すること、「++」はよく溶解すること、「+++」はきわめてよく溶解することを意味する。「S」は、製剤を25℃に保持したときのゲル化または沈澱を示す。
【0032】
実施例2:ポサコナゾール−脂質製剤
ポサコナゾールを水溶液中でDAG−PEG脂質と組み合わせた。多様な形成温度ならびに多様な薬剤対脂質比を試験した。混合後、製剤を室温で放置した。これらの結果を表3に示す。
【表3】

【0033】
実施例3:エクアコナゾール−脂質製剤
エクアコナゾールを水溶液中でDAG−PEG脂質と組み合わせた。多様な形成温度ならびに多様な薬剤対脂質比を試験した。混合後、製剤を室温で放置した。これらの結果を表4に示す。
【表4】

【0034】
実施例4:ケトコナゾール−脂質製剤
ケトコナゾールを水溶液中でDAG−PEG脂質と組み合わせた。多様な形成温度ならびに多様な薬剤対脂質比を試験した。混合後、製剤を室温で放置した。これらの結果を表5に示す。
【表5】

【0035】
実施例5:抗真菌性経口液剤
混合プロペラを備えた容器にPEG脂質を添加した。一定に混合しながら、該薬剤物質を添加した。薬剤が脂質中に分散したのが見えるまで混合を続けた。予め溶解した補形剤を、適度に混合しながら、この容器にゆっくりと添加した。完全に均質の溶液が得られるまで混合を続けた。試料配合を表6に記載する。
【表6】

【0036】
該薬剤は、イトラコナゾール、ポサコナゾール、またはエクアコナゾールであってもよい。該脂質は、PEG−12 GDOであってもよく、あるいはPEG−12 GDM、PEG 12 GDLO、もしくはPEG−12 GDP、またはこれらの任意の組合せであってもよい。水酸化ナトリウムを用いて、10%重量/重量の精製水溶液を調製する。目的とするpHは、4.0〜7.0の範囲内である。必要に応じて、HClを用いてpHを調整する。
【0037】
実施例6:静脈内注射用の抗真菌性液剤
静脈内液剤は、目的とするpHの範囲が3.5と7.0との間であったことを除き、実施例5のように調製した。試料配合を表7に記載する。
【表7】

【0038】
該薬剤は、イトラコナゾール、ポサコナゾール、またはエクアコナゾールであってもよい。該脂質は、PEG−12 GDO、PEG−12 GDM、PEG−12 GDLO、またはPEG−12 GDP、あるいはこれらの任意の組合せであってもよい。水酸化ナトリウムを用いて、10%重量/重量の精製水溶液を調製する。目的とするpHは、3.5〜7.0の範囲内である。必要に応じて、HClを用いてpHを調整する。
【0039】
実施例7:静脈内投与用の抗真菌性散剤
混合器を備えたビーカー内にPEG脂質を量り入れた。撹拌速度を300±100RPMに設定し、泡立たないようにした。一定の混合速度を保ちながら、薬剤を添加した。次いで、この混合物を、該薬剤物質が脂質中に分散したのが見えるまで850〜900RPMで均質化した。次いで、予め混合した緩衝液を約300RPMで添加し、混合物を約850rpmで再度均質化した。最後に、適切な噴霧乾燥器、例えばNiro噴霧乾燥器を用いて、混合物を噴霧乾燥した。試料配合を表8に記載する。
【表8】

【0040】
該薬剤は、イトラコナゾール、ポサコナゾール、またはエクアコナゾールであってもよい。該脂質は、PEG−12 GDO、PEG−12 GDM、PEG−12 GDLO、またはPEG−12 GDP、あるいはこれらの任意の組合せであってもよい。水酸化ナトリウムを用いて、10%重量/重量の精製水溶液を調製する。目的とするpHは、4.0〜7.0の範囲内である。必要に応じて、リン酸を用いてpHを調整する。混合中に水を添加してもよく、その後、後続の工程でこれを除去することもできる。
【0041】
実施例8:経口投与用の抗真菌性カプセル剤
カプセル剤は、最初に、混合器で撹拌しながら、必要量の脂質をビーカー内に量り入れることによって調製した。撹拌速度を300±100RPMに設定し、泡立たないようにした。一定に混合しながら、該薬剤を添加した。凝集物が見えなくなった後に、この混合物を、該薬剤物質が脂質中に分散したのが見えるまで850〜900RPMで均質化した。精製水を添加し、再度均質化した。適切な噴霧乾燥器、例えばNiro噴霧乾燥器を用いて、混合物を噴霧乾燥した。真空オーブンを65℃±10℃で用いて、水分濃度が1.0%未満になるまで、混合物をさらに乾燥した。混合物を、5〜10分間混合した。補形剤を30番メッシュスクリーンに通して添加し、再度混合した。この混合物を、Vector Freund圧縮機を用いて圧縮し、次いで、30番メッシュスクリーンに通して選別し、再度混合した。Minicapカプセル充填機を用いて、混合物を2番のツーピース硬質ゼラチンカプセルに充填した。Keyカプセル研磨機CP−300を用いて、カプセルを研磨した。試料配合を表9に記載する。
【表9】

【0042】
該薬剤は、イトラコナゾール、ポサコナゾール、またはエクアコナゾールであってもよい。該脂質は、PEG−12 GDO、PEG−12 GDM、PEG−12 GDLO、またはPEG−12 GDP、あるいはこれらの任意の混合物であってもよい。混合中に水を添加してもよく、その後、後続の工程でこれを除去することもできる。
【0043】
実施例9:ポサコナゾール/イトラコナゾール製剤の生物学的利用能
3匹の雄マウス(B6D2F1)の群を試験に用いた。ヘパリン処理したマウス血漿試料について、薬物動態学(PK)を行った。試料は、典型的には、静脈内ボーラス注射または経口摂食の後、ポサコナゾールについては、0時間、0.08時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、24時間、31時間、および48時間後に、イトラコナゾールについては、0時間、0.08時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、および24時間後にそれぞれ採取した。HPLC−MS法を用いて各試料を解析した。各薬剤のレベルを決定するために、最初に、試料の前処置によって薬剤を血漿から単離した。アセトニトリルを用いて、各試料中のタンパク質を除去した。次いで、アイソクラティックHPLC−MS法を用いて、各薬剤をあらゆる潜在的な干渉から分離した。多重反応モニタリング(MRM)モードを用いたMS検出によって、各薬剤レベルを測定した。WinNonlinプログラム(バージョン5.2、Pharsight)コンパートメントモデル解析を用いて、PKデータを解析した。
【0044】
図1は、静脈内投与した種々のポサコナゾール製剤の血中濃度の比較を示すものである。ポサコナゾールのDOPC製剤(1)と、5%のジメチルスルホキシドおよび10%のクレモホアを含有するポサコナゾール液剤(2)は双方とも、ポサコナゾールのDAG−PEG(PEG−12 GDO)脂質製剤(3)より速く除去された。投薬強度は、10mg/kgであった。
【0045】
図2は、経口投与したポサコナゾールの(1)市販のポサコナゾール製品と(2)DAG−PEG(PEG−12 GDO)製剤との血中濃度の比較を示すものである。投薬強度は、50/mg/kgであった。DAG−PEG製剤の生物学的利用能は、市販の製品では28%であったのに対し、45%であった。
【0046】
図3は、静脈内投与後の(a)イトラコナゾールのDAG−PEG(PEG−12 GDO)脂質製剤と(b)5%のジメチルスルホキシドおよび10%のクレモホアを含有するイトラコナゾールの水性液剤との比較を示すものである。投薬強度は、20mg/kgであった。DAG−PEG製剤の曲線下面積(AUC)は、非リポソーム製剤では1020であったのに対し、約4400であった。
【0047】
図4は、(a)イトラコナゾールのDAG−PEG(PEG−12 GDO)脂質製剤と(b)5%のジメチルスルホキシドおよび10%のクレモホアを含有するイトラコナゾールの水性液剤との経口投与の比較を示すものである。投薬強度は、20mg/kgであった。DAG−PEG製剤の生物学的利用能は、非リポソーム製剤では56%であったのに対し、約76%であった。
【0048】
実施例10:抗真菌性局所クリーム剤
プロペラ型の混合翼を備えたステンレス鋼容器に、PEG脂質を添加した。該薬剤物質を一定に混合しながら添加した。薬剤が脂質中に分散したのが見えるまで60〜65℃の温度で混合を続けた。コレステロールおよびグリセリンを混合しながら添加した。エタノールおよびエチオキシジグリコールを混合しながら添加した。最後に、カーボポールETD2020、精製水、およびトリエチルアミンを混合しながら添加した。完全に均質のクリーム剤が得られるまで混合を続けた。この配合を表10に記載する。
【表10】

【0049】
該薬剤は、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、またはエクアコナゾールであってもよい。該脂質は、PEG−12 GDS、PEG−23 GDS、PEG−23 GDP、またはこれらの任意の組合せであってもよい。必要に応じて、リン酸を用いてpHを調整する。目的とするpHの範囲は、3.5と7.0との間であった。
【0050】
実施例11:抗真菌性局所液剤
局所液剤は、活性物質を最初にエタノール中に溶解したことと、目的とするpHの範囲が3.5と7.0との間であったことを除き、実施例5のように調製した。試料配合を表11に記載する。
【表11】

【0051】
該薬剤は、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、またはエクアコナゾールであってもよい。該脂質は、PEG−12 GDO、PEG−12 GDM、もしくはPEG−12 GDLO、またはPEG−12 GDP、あるいはこれらの任意の組合せであってもよい。水酸化ナトリウムを用いて、10%重量/重量の精製水溶液を調製する。必要に応じて、リン酸を用いてpHを調整する。目的とするpHは、3.5〜7.0の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラヒドロフラン薬剤と、約25℃より低い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するDAG−PEG脂質とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記薬剤が、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記DAG−PEG脂質が、PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記DAG−PEG脂質が、PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPからなる群から選択される2種類以上の脂質の混合物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
薬剤対脂質比が約1対20より大きい、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
薬剤対脂質比が約1対5より大きい、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が糖をさらに含有し、乾燥した形態である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物がリポソーム懸濁液である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
薬剤濃度が約1〜50mg/mLの間である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が固体の補形剤をさらに含有し、カプセル剤の形態である、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
医薬製剤を製造する方法であって、テトラヒドロフラン薬剤を選択するステップと、約25℃より低い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するジアシルPEG脂質を選択するステップと、水溶液中で前記薬剤を前記脂質と組み合わせるステップとを含む方法。
【請求項12】
前記薬剤が、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記脂質が、PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
薬剤最終濃度が約1〜50mg/mLの間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
薬剤対脂質の最終比が約1対20より大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
薬剤対脂質の最終比が約1対5より大きい、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
真菌感染を治療または予防する方法であって、テトラヒドロフラン薬剤を選択するステップと、約25℃より低い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するジアシルPEG脂質を選択するステップと、水溶液中で前記薬剤を前記脂質と組み合わせるステップと、前記液剤を投与するステップとを含む方法。
【請求項18】
前記薬剤が、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脂質が、PEG−12 GDO、PEG−12 GDLO、PEG−12 GDM、およびPEG−12 GDPからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
薬剤最終濃度が約1〜50mg/mLの間である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
薬剤対脂質の最終比が約1対20より大きい、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
薬剤対脂質の最終比が約1対5より大きい、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記投与が経口である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記投与が静脈内である、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
テトラヒドロフラン薬剤と、約25℃より高い融解温度を有し、かつリポソームの形成に好適なパッキングパラメーターを有するDAG−PEG脂質とを含む医薬クリーム剤。
【請求項26】
前記薬剤が、ケトコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、およびエクアコナゾールからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記DAG−PEG脂質が、PEG−12 GDS、PEG−23 GDS、およびPEG−23 GDPからなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−508780(P2011−508780A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541549(P2010−541549)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/000003
【国際公開番号】WO2009/088959
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510184601)
【出願人】(510184612)
【Fターム(参考)】