説明

抗糖尿病作用を有する蛋白加水分解物

本発明は、高血糖状態にある被験者の血糖値を降下させる作用を有し、このため当該被験者の血糖値降下のために用いられる組成物(血糖上昇抑制剤)を提供する。また本発明は、上記作用に基づいて、高血糖に起因する疾患、具体的には糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために用いられる組成物(高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物、抗糖尿病剤)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病に罹患またはその前状態(境界型糖尿病)にある被験者に対して、インスリン分泌を亢進させるか、またはインスリン受容体を増加させてその感受性を高めることによって、高血糖状態を予防または改善する作用(血糖上昇抑制作用)を発揮する組成物(血糖上昇抑制剤、インスリン分泌亢進剤)に関する。また本発明は、上記作用に基づいて、高血糖に起因する疾患、具体的には糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために用いられる組成物に関する。なお、本発明において、これらの組成物を総括して抗糖尿病組成物ともいう。
【0002】
さらに本発明は、当該組成物のインスリン分泌亢進作用及び血糖上昇抑制作用を利用して、高血糖状態にある被験者の血糖値を降下させる方法、並びに高血糖に起因する疾患(具体的には糖尿病や糖尿病合併症)を予防または治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
体内の血糖値は、インスリンの血糖降下作用とアドレナリン、グルカゴン又は糖質コルチコイド等が有する血糖上昇作用とのバランスによって調節されている。具体的には、インスリンは肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生を抑制してグルコース生成量を減少させて肝臓から血中への放出量を減少させるとともに、骨格筋や白色脂肪組織へのグルコースの取り込みを増加させて、血糖値を低下させる。一方、アドレナリンやグルカゴン等は逆に肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生を促し肝臓からのグルコースの放出を促進して血糖値を上昇させる。
【0004】
糖尿病は、上記インスリンの作用が急性的にまたは慢性的に低下することによって、高血糖状態が持続し、糖、脂質及びアミノ酸などの代謝異常を生じる代謝性疾患である。
【0005】
糖尿病にはインスリン依存型とインスリン非依存型がある。インスリン依存型糖尿病は、インスリン分泌能が低下・消失しているため、食餌療法や経口血糖降下剤では治療効果がなく、インスリンによってのみ治療可能である。一方、糖尿病患者の9割以上を占めるインスリン非依存型の糖尿病は、インスリン作用が正常者よりも低下してはいるものの治療には必ずしもインスリンを必要とせず、食餌療法や運動療法を基本として、それで充分でない場合に血糖降下剤による薬物療法が併用される。
【0006】
前述するように、糖尿病は高血糖状態が持続することによって代謝異常を招く疾患であるため、同時に眼、腎臓、神経系、心血管系及び皮膚などに種々の合併症を伴うやっかいな疾患である。こうした合併症は、一般に血糖値を正常に近い値に制御することによって減少すると考えられている(最新医学大辞典、p.1211、1988年、医歯薬出版、日本)。
【0007】
高血糖状態を是正する医薬製剤としては、インスリン製剤、スルホニルウレア製剤、ビグアナイド剤、インスリン抵抗性を改善する製剤、及びα−グルコシダーゼ阻害剤などが知られている。ここでインスリン製剤はインスリン依存性糖尿病に対する治療薬であり、確実に血糖値を低下することができるが、低血糖になるおそれもある。スルホニルウレア製剤は、膵臓β細胞を刺激して内因性インスリンの分泌を促進することによって血糖値を低下させる薬物であるが、血糖値とは無関係にインスリンが分泌する結果、副作用として低血糖を招く場合がある。一方、ビグアナイド剤は、肝臓での糖新生の抑制、骨格筋等での糖の利用増大、または糖の腸管吸収を抑制することによって血糖を低下させる薬物であり、健常人や糖尿病患者のいずれにも低血糖症を招かないという利点はあるものの、比較的重篤な乳酸性アシドーシスを起こしやすいという問題がある。インスリン抵抗性を改善する薬剤(例えばチアゾリジン誘導体等)は、インスリン作用を増強し、インスリン受容体キナーゼを活性化することによって血糖値を低下させる薬物であるが、副作用として消化器症状や浮腫などが起こり、赤血球数、ヘマトクリット及びヘモグロビンの低下とLDHの上昇が起こることが指摘されている(新しい糖尿病治療薬、90〜99頁、(1994)、医薬ジャーナル社、日本)。また、α−グルコシダーゼ阻害剤は、消化管における糖質の消化や吸収を遅延させ食後の血糖上昇を抑制する作用があるが、膨満感、腹鳴、及び下痢などの副作用が問題となっている(ジョスリン糖尿病, 第13版 521-522頁)。
【0008】
このように、現状では糖尿病やその合併症に対して有効な治療または予防方法がいまだ充分に確立されていないといえる。
【非特許文献1】最新医学大辞典、p.1211、1988年、医歯薬出版、日本
【非特許文献2】新しい糖尿病治療薬、90〜99頁、(1994)、医薬ジャーナル社
【非特許文献3】ジョスリン糖尿病, 第13版 521-522頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インスリン分泌亢進作用または血糖上昇抑制作用を備えた医薬組成物、食品組成物または飼料組成物を提供することを課題とする。また本発明はこれらの組成物を、糖尿病またはその合併症の治療または予防用の組成物として提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは日夜鋭意検討をしていたところ、グロビン蛋白分解物を、人為的に高血糖状態にしたマウスに投与したところ、有意に血糖値が低下し高血糖状態が改善することを見いだした。さらに本発明者らは、その有効成分が、グロビン蛋白分解物に含まれるペプチド(VVYP)であること、並びに上記血糖上昇抑制作用が、インスリン分泌亢進作用に起因していることを確認した。
【0011】
さらに本発明者らは、当該グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)のインスリン分泌亢進作用及び血糖上昇抑制作用は、血糖値が正常な被験者には認められず、糖尿病患者または糖尿病の前状態にある境界型糖尿病患者に対する特異的な作用であることを確認した。
【0012】
本発明者らはこれらの知見から、グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)が、高血糖状態を抑制および改善して(高血糖状態の血糖値を降下させて)、糖尿病やその合併症など、高血糖に起因する疾病の予防または治療のための有効であることを確信した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は下記の態様を包含するもである。
1.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする抗糖尿病剤。
2.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする血糖上昇抑制剤。
3.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とするインスリン分泌亢進剤。
4.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする、血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、好ましくその機能を目的として使用される特定保健用食品。
5.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする、血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、好ましくその機能を目的として使用される飼料。
6.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
7.高血糖に起因する疾患が、糖尿病、または糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害といった糖尿病の合併症である、6に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
8.高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病またはその合併症である、6に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
9.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効量、高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある被験者に投与することを含む、当該被験者の血糖値上昇を抑制する方法。
10.高血糖に起因する疾患が、糖尿病、または糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害といった糖尿病の合併症である、9に記載する被験者の血糖値上昇を抑制する方法。
11.高血糖に起因する疾患がII型糖尿病またはその合併症である、9に記載する被験者の血糖値上昇を抑制する方法。
12.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効量、高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある被験者に投与することを含む、当該被験者の高血糖に起因する疾患を予防または治療する方法。
13.高血糖に起因する疾患が、糖尿病、または糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害といった糖尿病の合併症である、12に記載する被験者の高血糖に起因する疾患を予防または治療する方法。
14.高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病またはその合併症である、12に記載する被験者の高血糖に起因する疾患を予防または治療する方法。
15.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの抗糖尿病剤の製造のための使用。
16.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの血糖値上昇抑制剤の製造のための使用。
17.グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドのインスリン分泌亢進剤の製造のための使用。
18.血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的として使用される特定保健用食品の製造のための、グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの使用。
19.血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的として使用される飼料の製造のための、グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの使用。
20.血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的として使用される高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物の製造のための、グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の医薬組成物、食品組成物、及び飼料組成物は、いずれもグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を有効成分として含有することを特徴とする。
【0015】
(1) 医薬組成物
本発明が提供する医薬組成物には、血糖上昇抑制剤、インスリン分泌亢進剤、及び高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物が含まれる。血糖上昇抑制剤は、糖尿病患者または糖尿病の前状態にある所謂境界型糖尿病患者の高血糖状態を予防または改善する(血糖上昇を抑制する)有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有することを特徴とする。またインスリン分泌亢進剤は、、糖尿病患者または境界型糖尿病患者のインスリン分泌を亢進する有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有することを特徴とする。さらに、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物は、上記血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を発揮する有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有するものである。
【0016】
本発明の医薬組成物の有効成分であるグロビン蛋白分解物は、ヘモグロビンやミオグロビン等のグロビン蛋白の加水分解物である。このグロビン蛋白の提供源である動物の種類は特に限定されず、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヒト、ウマ等の血液を広く用いることができる。
【0017】
また、畜肉、魚肉などのミオグロビンを多く含む肉類をその蛋白源として用いることもできる。
【0018】
グロビン蛋白の加水分解に関する操作等は、国際公開番号 WO89/06970 公報記載の方法に従って行うことができる。加水分解は、通常酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ又はアルカリ性プロテアーゼの1種若しくは2種以上の加水分解酵素を用いて行なわれる。
【0019】
具体的には、グロビン蛋白を加水分解するには、まずグロビン蛋白含有物を水に5〜30重量%(固形分として)となるように分散させ、酸若しくはアルカリによってプロテアーゼの至適pHに調整し、プロテアーゼを一度に若しくは逐次的に添加して、20〜70℃の温度で3〜48時間、当該酵素を反応させる方法を例示することができる。
【0020】
斯くして得られた蛋白分解物は、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を有する本発明のグロビン蛋白分解物として用いることができる。また、それは、そのまま、若しくは乾燥して、又は当該蛋白分解物にカルボキシメチルセルロース若しくはデキストリン等の増量剤を適量加えて、乾燥・固化して用いることもできる。
【0021】
また本発明の医薬組成物の有効成分であるペプチド(VVYP)は、上記グロビン蛋白分解物に1重量%程度の割合で含まれているため、上記グロビン蛋白分解物から単離精製して取得することもできるが、グロビン蛋白以外の、例えば、魚肉蛋白、魚粉、グロビン等の動物性蛋白質;コーン蛋白質(ゼイン)、大豆蛋白質等の植物性蛋白質の加水分解物を原料として単離精製することもできる。
【0022】
この単離精製方法は、蛋白質またはペプチドに関する公知の精製方法を採用することができる。例えば、塩析法、透析法、イオン交換樹脂法、限外濾過法、逆相クロマトグラフィー法等を用いて、また必要に応じて適宜組み合わせることによって、ペプチド(VVYP)を包含するフラクションを取得し、更に当該フラクションからペプチド(VVYP)を単離取得することができる。上記精製方法のうち逆相クロマトグラフィーは、酸性下における逆相クロマトグラフィーと中性下における逆相クロマトグラフィーとを組み合わせて行うのが好ましい。
【0023】
フラクション中の蛋白量は、公知の蛋白定量法、例えばニンヒドリン法等によって測定することが可能である。また、選別したフラクション中に含まれるペプチドのアミノ酸配列は、公知の方法(アミノ酸分析法)により同定することができ、それによって本発明が対象とするVal-Val-Tyr-Proのアミノ酸配列からなるペプチドの存在を確認することができる。なお、ペプチド(VVYP)は上記の方法により単離精製されたものであってもよいが、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を有する限り、それを含むフラクション自体も本発明の医薬組成物の有効成分として用いることができる。
【0024】
また当該ペプチド(VVYP)は、公知のペプチド合成法を用いて化学合成により調製することもできる。例えば、ペプチド合成法としては、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法、DCC-アディティブ(HOMB,HOBt,HOSu)法( 「ザ ペプチド(The Peptide) 」第1巻(1966年),Schreder&Luhke 著,Academic Press,New York,USA;あるいは「ペプチド合成」泉谷ら著,丸善株式会社(1975年) 等) 等のペプチド合成法を例示することができる。これらのペプチド合成法は、固相合成法又は液相合成法のいずれによっても行うことができる。
【0025】
上記ペプチド合成法では、側鎖官能基を有するアミノ酸、例えばチロシンやスレオニンは、当該側鎖官能基を保護しておくのが好ましい。保護基としては、公知の保護基、例えばベンジルオキシカルボニル基(Cbz-)、t-ブトキシカルボニル基(Boc-)、ベンジル基(Bz-) 等を用いることができる。この保護基は、本発明のペプチドの合成工程において、公知の方法により脱保護を行うことができる。
【0026】
本発明の医薬組成物は、グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)だけからなるものであってもよい。他の成分と組み合わせて医薬組成物を調製する場合、グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)の量は、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を発揮する有効量であれば、特に制限されない。本発明の医薬組成物は、通常、上記有効成分に加えて薬学的に許容された担体または添加剤とともに調製される。
【0027】
ここで担体としては、医薬組成物(製剤)の投与形態に応じて通常使用される賦形剤、希釈剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、滑沢剤、溶解補助剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤などが例示できる。また添加剤としては、製剤の投与形態に応じて通常使用される安定化剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、着色剤、香料、風味剤、甘味剤などが例示できる。
【0028】
またかかる医薬組成物の投与単位形態(医薬製剤形態)は、投与経路に応じて各種適宜選択することができ、これらは大きく経口剤、経肺投与剤、経鼻剤、舌下剤、非経口剤(注射剤、点滴剤)などに分類される。当該医薬組成物は常法に従って、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、及びカプセル剤などの固体投与形態;溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、及びエリキシルなどの液剤投与形態に、調合、成形乃至調製することができる。また、使用時に適当な担体を添加することによって液状となし得る乾燥品として調製されてもよい。これらはいずれも常法に従い調製できる。
【0029】
本発明の医薬組成物に配合されるグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)の割合は、特に制限されない。通常、グロビン蛋白分解物を約0.1〜80重量%、好ましくは約5〜60重量%、より好ましくは約20〜50重量%、またはペプチド(VVYP)を約0.001〜80重量%、好ましくは約0.01〜10重量%程度を含有する製剤形態に調製することができる。
【0030】
このようにして得られる医薬組成物の投与量は、医薬組成物の目的(血糖上昇抑制、インスリン分泌亢進、高血糖状態に起因する疾患の予防または治療)、当該組成物の投与方法、投与形態、投与する患者の年齢や体重または症状(糖尿病の重篤度)等に応じて適宜選択される。一般には、グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)の投与量が1日成人一人当り、約100〜2000mg程度または約1〜20mg程度となる範囲で投与するのが好ましい。
【0031】
なお、当該投与は必ずしも1日1回である必要はなく1日3〜4回に分割して投与することも可能である。上記各種形態の医薬製剤は、その形態に応じた適切な投与経路、例えば注射剤形態においては、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内投与等により、固剤形態の医薬製剤は、経口投与等により投与され得る。
【0032】
本発明の医薬組成物は、後記実験例で示すようにグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)に起因してインスリン分泌亢進作用を有し、インスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態を改善し、血糖降下作用を発揮する。このため、本発明の医薬組成物は、インスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態に起因する各種の疾患の予防または治療用組成物として有効である。
【0033】
かかる疾患としては、糖尿病及び糖尿病の合併症を挙げることができる。ここで対象とする糖尿病は、好適にはインスリン非依存性のII型糖尿病である。また糖尿病合併症とは糖尿病(好ましくはインスリン非依存性のII型糖尿病)を直接または間接的な要因として併発する全身性もしくは局所性の疾患であり、具体的には、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害等を例示することができる。
【0034】
(2)食品組成物
本発明が提供する食品組成物には、血糖上昇抑制機能を有する特定保健用食品(条件付き特定保健用食品を含む)、インスリン分泌亢進機能を有する特定保健用食品(条件付き特定保健用食品を含む)、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を有することによって高血糖に起因する疾患の予防または治療のために用いられる特定保健用食品(条件付き特定保健用食品を含む)が含まれる。
【0035】
上記血糖上昇抑制機能を有する特定保健用食品は、糖尿病患者または境界型糖尿病患者の高血糖状態を予防または改善する(血糖上昇を抑制する)有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有することを特徴とするものであって、食品の包装パッケージまたは広告にその作用効果(血糖上昇抑制作用)に関する記載を付することが可能な食品である。またインスリン分泌亢進機能を有する特定保健用食品は、、糖尿病患者または境界型糖尿病患者のインスリン分泌を亢進する有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有することを特徴とするものであって、食品の包装パッケージまたは広告にその作用効果(インスリン分泌亢進)に関する記載を付することが可能な食品である。さらに、高血糖に起因する疾患の予防または治療のために用いられる特定保健用食品は、上記血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を発揮する有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有するものであって、食品の包装パッケージまたは広告にその作用効果(抗糖尿病作用)に関する記載を付することが可能な食品である。
【0036】
本発明の食品組成物は、上記のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)だけからなるものであってもよい。本発明の食品組成物が他の成分と組み合わせて調製される場合、グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)の量は、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を発揮する量であれば特に制限されない。本発明の食品組成物は、通常、上記有効成分に加えて食品として使用が可能な担体または添加剤とともに調製される。当該食品組成物には、上記グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を、必要に応じて食品上許容される担体や添加剤とともに、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、または溶液(ドリンク)等の形態に調製してなるサプリメントの類、並びに上記グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を配合した一般の飲食物が含まれる。
【0037】
かかる飲食物として、例えば乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料などの飲料類;カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類(以上、菓子類);コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくは飲料及び菓子類である。
【0038】
上記食品組成物中に含有されるべき有効成分(グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP))の量、または食品組成物の摂取量は、特に限定されず、食品組成物の種類、目的とする改善効果の度合い、並びにその他の諸条件などに応じて広範囲より適宜選択される。摂取量は、食品組成物の種類によっても異なるが、体重60kgのヒトに対して1回摂取あたりのグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)の量に換算して、それぞれ約100〜2000mg/60kgまたは約1〜20mg/60kgの範囲から適宜選択することができる。
【0039】
本発明の食品組成物は、グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)に起因してインスリン分泌亢進作用を有し、インスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態を改善し、血糖降下作用を発揮する。このため、本発明の食品組成物は、インスリン作用の低下または欠乏によって生じる高血糖状態に起因する各種の疾患の予防または治療用組成物として有効に使用することができる。
【0040】
(3)飼料組成物
本発明が提供する飼料組成物には、血糖上昇抑制機能を有する飼料、インスリン分泌亢進機能を有する飼料、血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を有することによって高血糖に起因する疾患の予防または治療のために用いられる飼料が含まれる。当該飼料は、特に犬や猫等のペット動物の餌料として好適に用いることができる。上記血糖上昇抑制機能を有する飼料は、糖尿病またはその前状態になる動物の高血糖状態を予防または改善する(血糖上昇を抑制する)有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有することを特徴とする。またインスリン分泌亢進機能を有する飼料は、糖尿病またはその前状態になる動物のインスリン分泌を亢進する有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有することを特徴とする。さらに、高血糖に起因する疾患の予防または治療のために用いられる飼料は、上記血糖上昇抑制作用またはインスリン分泌亢進作用を発揮する有効量のグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を含有するものである。
【0041】
当該飼料組成物には、上記グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を、必要に応じて飼料に配合可能な担体や添加剤とともに、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、または溶液等の形態に調製してなるもののほか、上記グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を配合した一般の飼料が含まれる。
【0042】
飼料組成物中に含有されるべき有効成分(グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP))の量、または摂取量は、特に限定されず、飼料組成物の種類、飼料を摂取する動物の種類や、目的とする改善効果やその度合い、並びにその他の諸条件などに応じて広範囲より適宜選択される。摂取量は、飼料組成物の種類によっても異なるが、体重10kgの動物に対して1回摂取あたりのグロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)の量に換算して、それぞれ約50〜1000mg/10kgまたは約0.5〜10mg/10kgの範囲から適宜選択することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を調製例及び実験例によって更に詳細に説明する。但し、これらの実験例は本発明を何ら限定するものではない。なお、下記の実験例において、特に言及しない限り、%は重量%を意味するものとする。
【0044】
調製例1 グロビン蛋白分解物の製造
以下にウシ赤血球を用いたグロビン蛋白分解物の製法の詳細を示す。
【0045】
新鮮なウシ赤血球100kg に水250リットルを加えて充分溶血させ、リン酸を加えてpHを2.8に調整した後、アスペルギルス・ニガーの酸性プロテアーゼ2.6×107単位を添加し、50℃で3時間反応させた。
【0046】
反応後、反応液を80℃で30分間加熱して反応を停止させた後、水酸化カルシウムの水懸濁液を加えてpHを6.5に調整し、硅藻土10kgを加え、フィルタープレスを用いて濾過し、得られた濾液を噴霧乾燥して、グロビン蛋白分解物の粉末23kgを得た。得られたグロビン蛋白分解物の分子量分布を、下記条件下で、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて調べた。
【0047】
<ゲル濾過クロマトグラフィー>
装置 :高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-6A型)
カラム :PolyHYDROXYETHYL A, 5μm, 9.4×200mm, PolyC Inc製
溶出溶媒:50mMギ酸
流速 :0.5ml/分
検出 :紫外吸収 221nm。
【0048】
上記ゲル濾過クロマトグラフィー法によるグロビン蛋白分解物のゲル濾過クロマトグラムを図1に示す。
【0049】
調製例2 血中TG濃度上昇抑制ペプチドの分画および精製
本発明のペプチドは、以下の (1)イオン交換、 (2)限外濾過、(3)酸性下における逆相カラムクロマトグラフィーによる分離、及び (4)中性下における逆相クロマトグラフィーによる分離という手順を経ることにより得られた。
【0050】
(1) イオン交換
調製例1で得られたグロビン蛋白分解物13.7gの10%水溶液を、弱酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIRC50、H+ 型、 オルガノ (株) )に加え、1時間撹拌して吸着させた後、未吸着画分を得た。
【0051】
(2) 限外濾過
上記イオン交換処理により得られた未吸着画分について、撹拌型限外濾過装置 (アドバンテック (株) 製、UHP 90K) 及び限外濾過膜 (アドバンテック (株) 製、UIIH-1、分画分子量1000) を用いて限外濾過を行い、限外濾過膜上に残った液(残液)を採取した。得られた画分は、酸加水分解した後ニンヒドリン法を行うことにより定量した。酸加水分解は、蛋白量3〜5mgに対して、最終濃度6Nの塩酸1mlを試験管に入れ、常圧下にて封管し、110℃で22時間加熱することにより行った。また、ニンヒドリン法は次のようにして行った。すなわち、加水分解後の検体を水酸化ナトリウムによりpH5.0に調整し、0.2Mクエン酸緩衝液 (pH5.0)を含有したニンヒドリン試薬を用いて 100℃で15分間反応させ、570nmにおける吸光度を測定した。別に、標準溶液としてL-ロイシン水溶液 (75, 150, 225, 300nmol/ml) についてニンヒドリン反応を行い、得られた吸光度から検量線を求め、検体のL-ロイシン相当アミノ基量を算出した。定量した結果を表1に示す。また、原料として用いたグロビン蛋白分解物に対する収率を併せて表1に示す。
【0052】
(3) 逆相 (酸性) クロマトグラフィー
上記限外濾過で得られた残液について、以下の条件で逆相 (酸性) クロマトグラフィーを行った。
【0053】
<逆相 (酸性) クロマトグラフィー>
装置 :高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-10A 型)
カラム :SuperPac Pep-S, 15μm, 22.5×250mm, ファルマシア (株) 製
溶出溶媒:0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル水溶液
グラジエント:アセトニトリル濃度2%から35%まで直線的濃度勾配
アセトニトリル濃度変化1%/分
流速 :5ml/分
温度 :40℃
検出 :紫外吸収 220nm
分取時間:53.8〜54.5分(画分A)。
【0054】
上記逆相 (酸性) クロマトグラフィーによるクロマトグラムを図2に示す。
【0055】
得られた画分は、酸加水分解した後アミノ酸分析を行うことにより定量した。酸加水分解は、蛋白量3〜5mgに対して、塩酸(最終濃度6N)1mlを試験管に入れ、減圧下にて封管し、110℃で22時間加熱することにより行った。また、アミノ酸分析は以下の条件で次のようにして行った。
【0056】
<アミノ酸分析>
装置 :高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-6A型)
カラム :Shim-pack ISC-07/S1504 Na、7μm, 4.0×150mm, (株) 島津製作所製
溶出溶媒:(株)島津製作所製アミノ酸移動相キット (Na型)
流速 :0.3 ml/分
温度 :55℃
反応液1:(株)島津製作所製分析キットOPA 試薬
検出 :蛍光吸収 (Ex 348nm, Em 450nm)。
【0057】
酸加水分解した溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮乾固し、さらに減圧下で12時間以上乾燥させ、完全に塩酸を除去した。次に、各アミノ酸含量が100 nmol/ml程度となるように0.2 Mクエン酸緩衝液 (pH2.2) に溶解し、0.45μmフィルター濾液を10μl 注入した。一方、標準溶液としては、アミノ酸混合標準液18成分 H型 (和光純薬工業 (株) ) を0.2Mクエン酸緩衝液 (pH2.2) により25倍希釈後、10μl 注入した (各アミノ酸1nmol/10μl ) 。アミノ酸のピーク面積算出をクロマトパックC-R4A( (株) 島津製作所製) により解析し、標準溶液とのピーク面積比によりアミノ酸量を算出した。結果を表1に示す。また、グロビン蛋白分解物に対する収率を併せて表1に示す。
【0058】
(4) 逆相 (中性) クロマトグラフィー
上記逆相 (酸性) クロマトグラフィーで溶出し、分取した画分について、さらに以下の条件で逆相 (中性) クロマトグラフィーを行った。
【0059】
<逆相 (中性) クロマトグラフィー>
装置 :高速液体クロマトグラフ ( (株) 島津製作所、LC-10A型)
カラム :SuperPac Pep-S, 15μm, 22.5×250mm(ファルマシア (株) 製)
溶出溶媒:20mM酢酸アンモニウム緩衝液 (pH6.5)含有アセトニトリル水溶液
グラジエント:アセトニトリル濃度0%〜25%まで直線的濃度勾配
アセトニトリル濃度変化 0.5%/分
流速 :5ml/分
温度 :40℃
検出 :紫外吸収 220nm
分取時間:41.7分〜43.2分(画分B)、45.8分〜51.0分 (画分C)。
【0060】
上記逆相 (中性) クロマトグラフィーによるクロマトグラムを図3に示す。
得られた画分は、上記(3) と同様にして定量するとともに、さらに同定を行った。アミノ酸組成は、得られたアミノ酸含量の合計に対する各アミノ酸量の比率により算出した。その結果、画分BはVTL(Val-Thr-Leu)、画分CはVVYP(Val-Val-Tyr-Pro)であることが分かった。これらをヘモグロビンのアミノ酸配列と照合したところ、いずれの配列も存在することが確認された。定量した結果は、グロビン蛋白分解物に対する収率と併せて表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
実験例1 血糖値上昇抑制効果(マウス)
調製例1で得られたグロビン蛋白分解物と調製例2(4)で得られた画分Cのペプチド(VVYP)を用いて、糖負荷試験を行い、その血糖値上昇抑制作用を調べた。
【0063】
具体的には、一夜絶食したICR系雄性マウス(8週齢)70匹を10匹ずつ7群に分けて、各群にグロビン蛋白分解物5mg(試験群1)、10mg(試験群2)、50mg(試験群3)、ペプチド(VVYP)1μg(試験群4)、2μg(試験群5)、10μg(試験群6)、及び水0.2ml(対照群)を、経口ゾンデを用いて胃内投与した。なお、グロビン蛋白分解物とペプチド(VVYP)はいずれも水0.2mlに溶解して使用した。投与後、直ちにブドウ糖糖液(ブドウ糖 0.25g/ml水溶液)0.2mlを、同様に経口ゾンデを用いて胃内投与した。糖液投与後、30分、60分、90分、及び120分めにそれぞれ尾静脈から採血し、ムタロターゼ・GOD法を用いた試薬キット〔グルコースCIIテストワコー:和光純薬工業、大阪〕を用いて血糖値を測定した。
【0064】
各試験群及び対照群について、糖液投与から120分までの血中の糖レベル(AUC:曲線下面積、mg/dL・120min)を表2に示す。表2において「血糖値降下率」は、対照群の血糖値を100%とした場合の試験群の血糖値の割合を意味する(以下において同じ)。
【0065】
【表2】

【0066】
表からわかるように、グロビン蛋白分解物及びペプチド(VVYP)は、その投与量に応じてマウスの血糖値の上昇を有意に抑制した。また、ペプチド(VVYP)の血糖降下活性は、グロビン蛋白分解物の血糖降下活性の1000倍以上であった。グロビン蛋白分解物は、ペプチド(VVYP)を約1%の割合で含んでいることから、グロビン蛋白分解物の血糖降下作用の本体(有効成分)の一つは、ペプチド(VVYP)であると考えられる。
【0067】
実験例2 血糖値上昇抑制効果(日本人)
調製例1で得られたグロビン蛋白分解物を用いて、ヒト(日本人)〔糖尿病症例:空腹時血糖値が200mg/dl以上の2型糖尿病患者、各群12名、健常者:空腹時血糖値が100mg/dl以下の健常者、各群10名、平均体重68kg〕を被験者として糖負荷試験を行い、グロビン蛋白分解物の血糖値上昇抑制作用を調べた。
【0068】
具体的には、前夜以降絶食し、空腹状態の各被験者(糖尿病症例、健常者)に対して、それぞれグロビン蛋白分解物を1000mg、1500mg、3000mg(以上、試験群)、または乳カゼイン3000mg(対照群)を投与した。投与後、直ちにブドウ糖溶液(75g/200ml)を投与し、糖液投与後、60分、90分、及び120分めに採血し、ムタロターゼ・GOD法を用いた試薬キット〔グルコースCIIテストワコー:和光純薬工業、大阪〕を用いて血糖値を測定した。
【0069】
各被験者(糖尿病症例、健常者)の各試験群及び対照群について、糖液投与から120分までの血中の糖レベル(AUC:曲線下面積、mg/dL・120min)を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表からわかるように、グロビン蛋白分解物を3000mg投与することにより、II型糖尿病患者及び健常者の血糖値の上昇が統計学的に有意に抑制された。しかしながら、臨床応用を考えると、グロビン蛋白分解物は健常者よりもむしろ糖尿病患者に有意に有用な効果がある。
【0072】
このことから、グロビン蛋白分解物によれば、II型糖尿病(インスリン非依存型)症例における血糖上昇を有意に抑制できると考えられる。また、上記実験例1の結果を考慮すると、その活性本体(有効成分)は、ペプチド(VVYP)であると考えられ、これによるとグロビン蛋白分解物の5000倍程度の活性で、II型糖尿病(インスリン非依存型)患者の血糖上昇を抑制できると予想できる。
【0073】
実験例3 血中インスリンレベルの上昇効果(日本人)
12名の被験者(日本人、平均体重67kg)に対して、調製例1で得られたグロビン蛋白分解物1000mg、3000mg、プラセボ(乳カゼイン1000mg)を、それぞれ7日間の休止期間をおいて摂取させて(シングルブラインド交叉試験法)、各摂取後に採血を行い、血中のインスリン量、及びトリヨードサイロニン量を測定した。具体的には、被験者を、前夜から12時間以上絶食させておき、当日被験物を摂取させた後、摂取直前(0)から摂取後6時間まで1時間おきに採血して、血中のインスリン量、及びトリヨードサイロニン量を測定した。血中のインスリン量は「グラザイムInsulin-EIA TEST」(和光純薬工業、大阪)を用いて測定した。また血中のトリヨードサイロニン量(CLIA法)の測定はシオノギバイオメディカル(大阪)に委託した。
【0074】
各被験物(グロビン蛋白分解物1000mg、3000mg、プラセボ)について、摂取直後から3時間までの血中のインスリン量(mU/L・3h)及び血中のトリヨードサイロニン量(ng/L・3h)を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
表からわかるように、グロビン蛋白分解物3000mgの摂取により、血中トリヨードサイロニン量は殆ど変化が認められなかったが、血中インスリン量(インスリン分泌量)は有意に増加した。このことから、グロビン蛋白分解物は、ヒト(日本人)に対して、甲状腺の機能に影響することなく、特異的にインスリン分泌量を高める作用があることがわかる。また、この結果から、実験例2で示したグロビン蛋白分解物のヒト(日本人)に対する血糖上昇抑制効果は、グロビン蛋白分解物のインスリン分泌亢進作用に起因するものと考えられ、さらに実験例1の結果から、その有効成分(本体)はペプチド(VVYP)であると予想される。
【0077】
実験例4 血中インスリンレベルの上昇効果(西洋人)
西洋人17名(肥満症例7名、健常者10名:平均体重82kg)に対して、調製例1で得られたグロビン蛋白分解物500mg、1000mg、2000mg、プラセボ(乳カゼイン1000mg)を、それぞれ7日間の休止期間をおいて摂取させて(シングルブラインド交叉試験法)、各摂取後に採血を行い、血中のインスリン量、及び血糖値を測定した。具体的には、被験者に、クリームスープ(炭水化物41g、脂肪67gを含む)と被験物を同時に摂取させ、摂取直前(0)から摂取後4時間まで1時間おきに採血して、血中のインスリン量、及び血糖値を測定した。
【0078】
血中のインスリン量は「グラザイムInsulin-EIA TEST」(和光純薬工業、大阪)を用いて、また血糖値はムタロターゼ・GOD法を用いた試薬キット〔グルコースCIIテストワコー:和光純薬工業、大阪〕を用いて測定した。
【0079】
肥満症例及び健常者に対して各被験物(グロビン蛋白分解物500mg、1000mg、2000mg、プラセボ)を摂取させた場合について、摂取から4時間までの血中のインスリン量(AUC:曲線下面積)(? mU/L・4h)、及び血糖値(? mg/dL・4h)を表5に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
表からわかるように、肥満症例ではグロビン蛋白分解物の摂取により、血中インスリン量(インスリン分泌量)は明らかに増加し、またそれに伴って血糖値の上昇が抑制された。またこの効果はグロビン蛋白分解物の摂取量が1000mgのときに顕著に認められた。一方、健常者では、血中インスリン量(インスリン分泌量)の増加(亢進)は認められず、むしろ低下する傾向が認められた。
【0082】
日本人を対象とした実験例3では、グロビン蛋白分解物1000mg摂取よりも3000mg摂取のほうが、血中インスリン量(インスリン分泌量)の増大効果が高かったのに対し、西洋人を対象として本実験例では、グロビン蛋白分解物2000mg摂取よりも1000mg摂取のほうが、血中インスリン量の増大効果(インスリン分泌亢進効果)が高かった。このことから、グロビン蛋白分解物は、日本人の糖尿病患者に対しても有効な治療または予防組成物となり得るが、西洋人の糖尿病患者に対してより有効な治療または予防組成物となると予想される。
【0083】
実験例5 血糖値降下効果(西洋人)
BMI30以上の肥満症例30名(年齢18〜65歳)について、肥満治療プログラム(食事療法、運動療法)を12週間実施後、うちランダムに選択した17名について、自宅にて調製例1で得られたグロビン蛋白分解物1.5g含有低カロリー食品を1日1回摂取させた(試験群)。また残りの13名については、自宅にてグロビン蛋白分解物を含まない低カロリー食品を1日1回摂取させた(対照群)。かかる自宅療養を37週間続けた後に、試験群と対照群の各被験者について、空腹時の血糖値と体重を測定し、自宅療養開始直前の空腹時の血糖値と体重と比較した。なお、血糖値は、ムタロターゼ・GOD法を用いた試薬キット〔グルコースCIIテストワコー:和光純薬工業、大阪〕を用いて測定した。試験群と対照群の各被験者について、自宅療養の開始直前における空腹時の血糖値と体重に対する増減の平均を表6に示す。
【0084】
【表6】

【0085】
表からわかるように、グロビン蛋白分解物投与群及びグロビン蛋白分解物非投与群(対照群)はいずれも、肥満治療プログラムの開始直前よりも体重の減少が認められたが、グロビン蛋白分解物投与群については更に血糖値も有意に降下した。実験例4の結果を考え合わせると、本実験例で得られたグロビン蛋白分解物の血糖降下作用は、インスリン分泌亢進に依るものと推測される。
【0086】
実験例6 安全性試験
雌雄のICR系マウスに、実施例2で調製したVal-Val-Tyr-Pro(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドを10g/kg体重以上(投与可能最大量)経口投与したが、死亡例はなかった。このことから、当該ペプチドの安全性が確認された。
【0087】
実施例1 ペプチド(VVYP)を含む食品の調製
(1) 粉ミルクの調製
100gの小児用粉ミルクに、調製例2で調製したVal-Val-Tyr-Pro(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドを10mg添加して、インスリン亢進機能または血糖値上昇抑制機能を有する粉ミルクを調製した。
【0088】
(2) チョコレートの調製
100gのチョコレートに、調製例2で調製したVal-Val-Tyr-Pro(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドを50mg添加して、インスリン亢進機能または血糖値上昇抑制機能を有するチョコレートを調製した。
【0089】
(3) 緑茶飲料の調製
緑茶8kgを80℃の熱水300Lに入れ、同温度で4分間抽出を行った。得られた抽出液を冷却後、遠心分離し、清澄な上清を採取してこれを緑茶抽出物とした。この抽出液にビタミンCを0.4kg配合し、さらに調製例2で調製したVal-Val-Tyr-Pro(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドを50g添加して、熱水で最終容量が1000Lになるように調整した。これを85℃以上に加熱し、金属缶に充填して、レトルト殺菌(125℃、5分)して緑茶飲料とした。
【0090】
(4) チューインガムの調製
下記の処方配合に従ってチューインガムを調製した。
【0091】
<チューインガム処方>
ガムベース 25.0重量部
砂糖 63.8重量部
コーンシロップ 10.0重量部
グリセリン 1.0重量部
ペプチド(VVYP) 0.2重量部
合 計 100.0重量部
まず、ガムベース、砂糖、コーンシロップ、及びグリセリンを混合し、調製例2で調製したVal-Val-Tyr-Pro(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドを添加し、ミキサーで50℃に保温下、均一に混錬した。冷却後、ローラーにより圧展成形し、1枚あたり有効成分としてペプチド(VVYP)を5mgの割合で含む板状のチューインガムを調製した。
【0092】
実施例2 グロビン蛋白分解物を含む食品の調製
(1)サプリメント
下記の成分を、常法により練合及び造粒し、乾燥後打錠して、1錠(200mg)中有効成分としてグロビン蛋白分解物を25重量%(50mg)の割合で含む錠剤を得た。当該錠剤は、グロビン蛋白分解物の薬理作用(抗糖尿病作用、血糖値上昇抑制作用、インスリン分泌亢進用を有するサプリメントとして提供することができる。
【0093】
<処方> 1錠あたり
グロビン蛋白分解物(調製例1) 50mg
ソルビトール 140mg
ショ糖脂肪酸エステル 10mg
合 計 200mg
実施例3 本発明のペプチドを含む飼料の調製
ビタミン、ミネラル等が配合されたプレミックスに、調製例2で調製したVal-Val-Tyr-Pro(配列番号1)のアミノ酸配列からなるペプチドを0.1%の割合で配合して、これを市販のドッグ用飼料に10%の割合で添加し、インスリン亢進機能または血糖値上昇抑制機能を有するドッッグフードを調製した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、グロビン蛋白分解物またはペプチド(VVYP)を有効成分として含むことによって血糖上昇効果作用またはインスリン分泌亢進作用を有する、医薬組成物、食品組成物、飼料組成物を提供することができる。これらの組成物は、血糖上昇効果作用またはインスリン分泌亢進作用に基づいて、糖尿病またはその前状態にある被験者について、高血糖状態にある血糖値を降下させる作用を有する。このため、本発明の組成物は、高血糖に起因する疾患、具体的には糖尿病や糖尿病合併症の予防または治療のために有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】グロビン蛋白分解物のゲル濾過クロマトグラムを示す(調製例1)。
【図2】調製例2(3)において行った逆相(酸性)クロマトグラフィーの結果(クロマトグラム)を示す。
【図3】調製例2(4)において行った逆相(中性)クロマトグラフィーの結果(クロマトグラム)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする抗糖尿病剤。
【請求項2】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする血糖上昇抑制剤。
【請求項3】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とするインスリン分泌亢進剤。
【請求項4】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする、血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的に使用される特定保健用食品。
【請求項5】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする、血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的に使用される飼料。
【請求項6】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効成分とする、高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
【請求項7】
高血糖に起因する疾患が、糖尿病、または、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害といった糖尿病の合併症である請求項6に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
【請求項8】
高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病またはその合併症である請求項6に記載する高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物。
【請求項9】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効量、高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある被験者に投与することを含む、当該被験者の血糖値上昇を抑制する方法。
【請求項10】
高血糖に起因する疾患が、糖尿病、または、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害といった糖尿病の合併症である請求項9に記載する被験者の血糖値上昇を抑制する方法。
【請求項11】
高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病またはその合併症である請求項9に記載する被験者の血糖値上昇を抑制する方法。
【請求項12】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドを有効量、高血糖に起因する疾患に罹患若しくはその前状態にある被験者に投与することを含む、当該被験者の高血糖に起因する疾患を予防または治療する方法。
【請求項13】
高血糖に起因する疾患が、糖尿病、または、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害といった糖尿病の合併症である請求項12に記載する被験者の高血糖に起因する疾患を予防または治療する方法。
【請求項14】
高血糖に起因する疾患が、II型糖尿病またはその合併症である請求項12に記載する被験者の高血糖に起因する疾患を予防または治療する方法。
【請求項15】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの抗糖尿病剤の製造のための使用。
【請求項16】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの血糖値上昇抑制剤の製造のための使用。
【請求項17】
グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドのインスリン分泌亢進剤の製造のための使用。
【請求項18】
血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的として使用される特定保健用食品の製造のための、グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの使用。
【請求項19】
血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的として使用される飼料の製造のための、グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの使用。
【請求項20】
血糖上昇抑制機能またはインスリン分泌亢進機能を有し、その機能を目的として使用される高血糖に起因する疾患の予防または治療用組成物の製造のための、グロビン蛋白分解物またはVal-Val-Tyr-Proからなるペプチドの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−519758(P2008−519758A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522327(P2007−522327)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/JP2005/021318
【国際公開番号】WO2006/052031
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(503075046)エムジーファーマ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】