説明

抗細菌性細胞外多糖溶媒和系

治療部位に付着または接着した細菌性バイオフィルムに溶媒和系を適用することによって、慢性滲出性中耳炎(COME)、再発性急性中耳炎(RAOM)、真珠腫、慢性鼻副鼻腔炎、および他の細菌性の耳、鼻またはのどの状態を治療可能である。溶媒和系はバイオフィルムを破壊し、そしてその除去を補助する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001]本発明は、慢性滲出性中耳炎(COME)、再発性急性中耳炎(RAOM)、真珠腫、および慢性鼻副鼻腔炎を含む、細菌性の耳、鼻またはのどの状態の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002]COMEおよびRAOMは、中耳の炎症性疾患である。バイオフィルム形成が、COMEの病因における要因でありうる。Post, J.C., “Direct evidence of bacterial biofilms in otitis media”, Laryngoscope 111(12):2083−94(2001), Ehrlichら, “Mucosal Biofilm Formation on Middle−Ear Mucosa in the Chinchilla Model of Otitis Media”, JAMA 287(13):1710−15(2002)、およびFergie, Nら, “Is otitis media with effusion a biofilm infection?”, Clin Otolaryngol Allied Sci. 29(1):38−46(2004)を参照されたい。バイオフィルムは、細菌が表面と相互作用して、該表面をコーティングし、そしてさらなる細菌増殖のための生物群落(living colony)を提供する、ポリマー性フィルム(ときに、エキソポリサッカライドまたは細胞外多糖ポリマーと称される)を形成する際に、形成される。バイオフィルム中にとどまる細菌は、プランクトン性(懸濁)状態にある細菌よりも、除去するかまたは殺すのがはるかにより困難であり、そして多くの抗生物質および殺生物剤に極度に抵抗性である。いくつかの異なる細菌によって産生される細胞外多糖(EPS)マトリックスおよび毒素の両方が、宿主による炎症を引き起こすことが示されてきている。COMEおよびRAOMと関連する慢性炎症は、細菌性バイオフィルムに対する宿主応答であるようである。
【0003】
[0003]COMEおよびRAOMは、通常、経口抗生物質を用いて最初に治療され、そして次いで、必要であれば、中耳腔換気用チューブ(tympanostomy tube)の設置によってより侵襲性に治療される。ときに、中耳中の重度の感染または高い粘液含有量が伴う症例では、中耳を潅注してもよい(例えば生理食塩水溶液で)。中耳腔換気用チューブは大部分の患者で働くが、最初の中耳腔換気用チューブ設置を受けた患者の約20%は、持続性のCOMEまたは持続性のRAOMを治療するため、さらなる手術(咽頭扁桃切除術、第二の中耳腔換気用チューブセット、ならびに通常、咽頭扁桃切除術および中耳腔換気用チューブ設置の両方)を必要とする。
【0004】
[0004]真珠腫は、関心対象の別の耳疾患状態である。一般的には、そもそも真皮細胞で構成される嚢胞であると考えられるが、細菌性バイオフィルムはまた、この疾患にも関連づけられてきている。Choleら, “Evidence for Biofilm Formation in Cholesteatomas”, Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 128, pp.1129−33(Oct. 2002)を参照されたい。真珠腫において、細菌性バイオフィルムが形成され、炎症を扇動し、そしてその中心部の細菌および真皮細胞で主に構成される、良性腫瘍の生成を引き起こすようである。腫瘍は、耳小骨連鎖(聴覚骨)および乳様突起の両方に浸食し、聴覚に有害な影響を及ぼしうる。真珠腫除去には、外科的露出および切除が最も一般的な治療である。これらの処置の最大25%が、真珠腫の再発のため、失敗し、そしてしたがって、さらなる手術または他の治療を必要とする。
【0005】
[0005]慢性鼻副鼻腔炎(CRS)は、副鼻腔の炎症であり、そして少なくとも約12週間続く、前部または後部鼻汁、鼻閉塞または顔面圧迫感、疼痛または膨満感に関連する。CRSは、米国人口の10%以上に影響を及ぼすと概算される。CRSの大部分の患者は、まず、内科的療法で治療されるが、毎年、何十万もの患者が、難治性CRSのため、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)を経験する。CRS患者では、しばしば、生活の質が減少し、そして年間の健康管理に数十億ドルが必要となり、そして労働時間コストが失われうる。CRSは、限定されるわけではないが、細菌毒素、細菌によって分泌され、そして細菌性バイオフィルム内に含有される細胞外多糖マトリックス、真菌、細菌および真菌の両方に対して発展するアレルギー性反応(IgE)、ならびに自己免疫障害を含む、いくつかの機構に対する、Th1およびTh2炎症反応である。CRSおよびそれに付随する炎症に関連する細菌には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、およびカタル球菌(Moraxella catarrhalis)が含まれる。これらの種の1以上を含有し、そしておそらく真菌もまた含有するバイオフィルムは、CRSの病因における要因でありうる。例えば、Ramadanら, “Chronic rhinosinusitis and biofilms”, Otolaryngol Head Neck Surg. 132:414−417(2005)およびFergusonら, “Demonstration of Biofilm in Human Bacterial Chronic Rhinosinusitis”, Am J Rhinol, 5:19, pp.452−57(2005)を参照されたい。細胞外多糖(EPS)マトリックス、細菌コロニーによって産生される毒素、および細菌性バイオフィルムがかくまう可能性がある真菌が、各々、宿主からの炎症反応を扇動可能でありうる。
【0006】
[0006]COME、RAOM、真珠腫およびCRSの病因または慢性化は、細菌性バイオフィルムの存在、ならびに術後のその不応性に関連するようである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
[0007]生理食塩水溶液および抗生物質を、耳、鼻またはのどの細菌性バイオフィルムに適用してもよいが、難しい症例では慢性状態からの適切な緩和が提供されない可能性もある。歯科送水管中に、そして医療機器または他の体外表面上に見られるバイオフィルム中の細菌を除去するかまたは殺すために、多様な技術および製品が使用されてきているが、ヒト組織を治療するにはあまり向かない可能性もある。耳、鼻またはのど内のバイオフィルムに存在する細菌を除去するかまたは殺し、そして可能であるならば、細菌の再コロニー形成およびバイオフィルム再形成を阻止するために十分にバイオフィルム自体を除去するかまたは破壊することが望ましいであろう。また、ヒト組織と接触するための生体適合性必要条件を満たしつつ、そして投与される物質の投薬量を少なくし、そして適用期間を短くしつつ、前記のことを行うことが望ましいであろう。現在、金属イオン隔離剤および界面活性剤を含む溶媒和系が、繊細なまたは感受性が高い組織上に直接適用するのに十分に穏やかでありつつ、耳、鼻またはのどにおける細菌性バイオフィルムを破壊するのに驚くほど効果的であることが発見されている。
【0008】
[0008]本発明は、1つの側面において、細菌性の耳、鼻またはのどの状態の治療用の薬剤を製造するための、金属イオン隔離剤、および中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着したバイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊することが可能な0.2重量%より多い界面活性剤の使用を提供する。
【0009】
[0009]本発明は、別の側面において、細菌性の耳、鼻またはのどの状態の治療用の薬剤を製造するための、(a)金属イオン隔離剤、(b)中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着したバイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊することが可能な双性イオン性界面活性剤、および(c)5より大きいpHを提供するのに十分な緩衝剤の使用を提供する。
【0010】
[0010]本発明は、別の側面において、細菌性の耳、鼻またはのどの状態を治療するための方法であって:
a)中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着した細菌性バイオフィルムに、金属イオン隔離剤および0.2重量%より多い界面活性剤を含む、溶媒和系を適用し、そして
b)バイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊する
工程を含む、前記方法を提供する。
【0011】
[0011]本発明は、さらに別の側面において、細菌性の耳、鼻またはのどの状態を治療するための方法であって:
a)中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着した細菌性バイオフィルムに、金属イオン隔離剤、双性イオン性界面活性剤、および溶媒和系が5より大きいpHを有するのに十分な緩衝剤を含む、溶媒和系を適用し、そして
b)バイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊する
工程を含む、前記方法を提供する。
【0012】
[0012]本発明は、さらに別の側面において、組織上の細菌性バイオフィルムを破壊するための溶媒和系であって、組成物が、金属イオン隔離剤、0.2重量%より多い界面活性剤、および抗菌剤を含む、前記溶媒和系を提供する。
【0013】
[0013]本発明は、さらに別の側面において、組織上の細菌性バイオフィルムを破壊するための溶媒和系であって、組成物が、金属イオン隔離剤、双性イオン性界面活性剤、および溶媒和系が5より大きいpHを有するのに十分な緩衝剤を含む、前記溶媒和系を提供する。
【0014】
[0014]中耳または内耳の治療または術後処置に、そして鼻科、口腔または咽頭科治療または術後処置に、開示する使用、方法および系を用いてもよい。また、慢性滲出性中耳炎、再発性急性中耳炎、真珠腫、慢性鼻副鼻腔炎、および他の細菌性の耳、副鼻腔、口腔またはのどの状態を含む、疾病または慢性状態に、開示する方法および系を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】[0015]図1は、開示する方法を介した治療を受けている、中耳の模式的横断面図を示す。
【図2】[0016]図2は、エウスタキー管峡部近傍の細菌性バイオフィルムへの、開示する溶媒和系の適用を示す、図1の部分の拡大図である。
【0016】
[0017]図面の多様な図中の類似の参照シンボルは、類似の要素を示す。図面中の要素の縮尺は正確ではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい態様の詳細な説明
[0018]以下の詳細な説明は、特定の態様を記載し、そして限定する意味では解釈されないものとする。すべての重量、量および比は、本明細書において、特に別に記載しない限り、重量による。以下に示す用語は、以下の意味を有する:
[0019]用語「抗菌剤」は、実施例おいて以下に記載する細菌プレート計数法を用いた、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌またはカタル球菌細菌の1またはそれより多くの集団における90%を超える数の減少(すなわち、少なくとも1対数の桁の減少)を引き起こす能力を有する物質を指す。
【0018】
[0020]用語「付着した」および「接着した」は、細菌性バイオフィルムおよび表面に言及して用いた際、バイオフィルムが表面上に確立され、そして少なくとも部分的に表面をコーティングするかまたは覆い、そして表面からの除去に対して、何らかの抵抗性を有することを意味する。この関係の性質は複雑で、そしてほとんど理解されていないため、こうした使用によって、付着または接着のいかなる特定の機構も意図されない。
【0019】
[0021]用語「細菌性バイオフィルム」は、細菌によって産生される細胞外ポリマー性物質(EPS)マトリックス内に含有されるコミュニティー中の生物を伴う、表面に付着した細菌のコミュニティーを意味する。
【0020】
[0022]用語「生体適合性」は、物質に言及して用いた際、物質が体にいかなる有意に有害なまたは厄介な効果も提示しないことを意味する。
[0023]用語「生物分解性」は、物質に言及して用いた際、物質がin vivoで分解されるかまたは浸食されて、より小さい化学種を形成することを意味する。こうした分解プロセスは、酵素的、化学的または物理的であってもよい。
【0021】
[0024]用語「生物吸収性」は、物質に言及して用いた際、物質が、体によって吸収可能であることを意味する。
[0025]用語「取り外す」、「除去する」および「破壊する」は、表面に付着または接着した細菌性バイオフィルムに言及して用いた際、表面上に最初に存在したバイオフィルムの少なくとも有意な量が、もはや表面に付着または接着していないことを意味する。取り外すか、除去するかまたは破壊する、いかなる特定の機構も、こうした使用によって意図されない。
【0022】
[0026]用語「隔離剤」は、別の物質、特に金属イオンと化合して、該物質が溶液から出てくるのを阻止するかまたは防止するであろう化学薬品を意味する。用語「金属イオン隔離剤」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄等の1以上の金属イオンと化合して、該金属イオンが溶液から出てくるのを阻止するかまたは防止するであろう隔離剤を意味する。原子数が増加する順に、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびフランシウムであり、そしてアルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびラジウムである。
【0023】
[0027]用語「溶媒和する」は、溶質が溶解するかまたは懸濁されている、溶媒または他のキャリアーを含有する溶液または分散物を形成することを意味する。
[0028]図1を参照すると、外耳道14および耳チューブ16(例えば鼓膜切開術を介して配置してもよい)を通じて、鼓膜18中に、そしてそこから中耳20内に、カニューレ12を挿入することによって、耳10内などの治療部位に溶媒和系を適用するための1つの方法を実行してもよい。また、鼓膜切開術を伴わない他の方法で、例えば耳、エウスタキー管または鼻を通じて向けられる針または他の誘導デバイスを通じ、そして見ないで操作することで、あるいは柔軟な先端探知デバイスを用いた、微小内視鏡、バーチャル画像誘導内視鏡、または画像誘導手術などの誘導技術を用いることによって、カニューレ12を挿入してもよい。図1に示すように、カニューレ12の遠位端22を、エウスタキー管26の峡部24上に配置する。中耳20の他の部分(この考察の目的のため、少なくとも鼓膜、中耳の裏打ち、耳小骨連鎖などの内部構造、および乳様突起などの境界構造が含まれると考えられるであろう)を治療するか、内耳の部分(この考察の目的のため、少なくとも三半規管28および蝸牛30が含まれると考えられるであろう)を治療するか、あるいは副鼻腔、口腔またはのどの他の部位を治療するために、カニューレ12を配置し、そして必要であれば、形状または大きさを修飾してもよい。例えば、内耳中の治療が望ましい場合、さらなるアクセス開口部を(例えば正円窓または卵円窓近傍の膜中に)作製してもよい。
【0024】
[0029]図2は、図1の部分の拡大図を示す。側壁36中に位置するオリフィス34を通じて溶媒和系を分配し、そしてエウスタキー管26の上部部分40上に配置されたバイオフィルム38などの細菌性バイオフィルム上に、ドリップするか、スプレーするかまたは別の方式で投与してもよい。
【0025】
[0030]他の耳、鼻またはのどの処置で、開示する方法を実行してもよい。例えば、患者の鼻腔または副鼻腔において、該方法を実行してもよい。また、溶媒和系を、扁桃腺、咽頭扁桃腺または隣接組織に適用することによって、該方法を実行してもよい。扁桃腺および咽頭扁桃腺が損なわれていない(intact)場合にこれを行ってもよく、あるいは扁桃腺、咽頭扁桃腺または扁桃腺および咽頭扁桃腺の両方を除去した後、術後に、例えば溶媒和系をのどに、例えば扁桃窩に適用することによって、実行してもよい。こうした処置に関するさらなる詳細は、その全開示が本明細書に援用される、同日付に出願された、同時係属出願第(代理人整理番号第151−P−28168WO01号)号に含有される。
【0026】
[0031]溶媒和系を用いて、耳、鼻またはのどの組織上の細菌性バイオフィルムを破壊して、そしてその結果、その取り外し、除去または破壊を補助してもよい。溶媒和系は、好ましくは、中耳または内耳の繊細な組織および構造と生体適合し、そして望ましくは、こうした組織または構造を潜在的に傷つけるかまたは長期の聴覚を過度に損なう可能性がある成分を含有しない。溶媒和系は、望ましくは、例えば、動力スプレーまたは他のスプレー適用を用いるか、洗浄するか(lavage)、噴霧するか、拭うか(mopping)、ウィックで適用するか(wicking)、または滴下して、細菌性バイオフィルムへの容易な送達を可能にするために、十分に低い粘性を有する。溶媒和系は、望ましくはまた、続いて流すか(flushing)、すすぐか(rinsing)、排出するか(draining)または吸収することによって、治療部位から容易に除去可能である。理論によって束縛することは望まないが、金属イオン隔離剤は、エキソポリサッカライドまたは細胞外多糖マトリックス中でポリマー鎖を結びつける際に、架橋するか(crosslink)、橋を渡すか(bridge)、または別の方式で補助しうる金属イオンと、複合体を形成するか、該イオンに結合するかまたは別の方式で該イオンを係留してもよい。次いで、溶媒和剤が未結合ポリマー鎖または断片を取り巻いて、マトリックスを分解し、未結合ポリマー鎖または断片を溶媒和し、そしてこれらを溶液または懸濁物中に運ぶことが可能であり、ここでさらなる量の溶媒和系または別個のリンス剤を用いて、治療した中耳または内耳組織または構造から、未結合ポリマー鎖または断片を流すかまたは別の方式で容易に除去することも可能である。
【0027】
[0032]望ましくは、金属イオン隔離剤は、酸性がエキソポリサッカライドまたは細胞外多糖マトリックス中の1以上の金属イオンを隔離するのに十分であるが、治療した組織を傷つけるほどは酸性でない穏やかな酸である。特定の関心対象の金属イオン(ターゲットとされる細菌性バイオフィルム中で関与する可能性のため)には、ナトリウム、カルシウムおよび鉄が含まれる。望ましくは、金属イオン隔離剤は、水溶性で非毒性であり、そして耳で用いる場合、長期聴覚損失を悪化させる傾向にない。代表的な酸には、限定されるわけではないが、カルボン酸、二塩基酸、または三塩基酸、例えば、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、オキサミド酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イミノ二酢酸、グルタル酸、2−ケトグルタル酸、グルタミン酸、アジピン酸、クエン酸、グルクロン酸、粘液酸、ニトリロ三酢酸、サリチル酸、ケトピメリン酸、安息香酸、マンデル酸、クロロマンデル酸、フェニル酢酸、フタル酸、およびホウ酸;鉱酸、例えば塩酸、オルトリン酸およびホスホン酸;ならびにその混合物が含まれる。クエン酸が好ましい酸である。金属イオン隔離剤は、例えば、少なくとも約0.01M、少なくとも約0.05Mまたは少なくとも約0.1M、例えば約0.01〜約0.5M、約0.05〜約0.4Mまたは約1.0〜約0.3Mの濃度で存在してもよい。金属イオン隔離剤の量の増加は、より迅速なバイオフィルム分解を促進しうる。
【0028】
[0033]溶媒和系にはまた、界面活性剤も含まれる。界面活性剤は、望ましくは、水溶性であり、そして非毒性である。典型的な界面活性剤には、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および双性イオン性界面活性剤が含まれる。典型的な陰イオン性界面活性剤には、限定されるわけではないが、C−C24アルキルベンゼンスルホネート;C−C24オレフィンスルホネート;C−C24パラフィンスルホネート;クメンスルホネート;キシレンスルホネート;C−C24アルキルナフタレンスルホネート;C−C24アルキルまたはジアルキルジフェニルエーテルスルホネートまたはジスルホネート、C−C24モノまたはジアルキルスルホスクシネート;スルホン化または硫酸化脂肪酸;C−C24アルコールサルフェート(例えばC−C12アルコールサルフェート);1〜約20の酸化エチレン基を有する、C−C24アルコールエーテルサルフェート;1〜約40の酸化エチレン、プロピレンまたはブチレン単位を有する、C−C24アルキル、アリールまたはアルカリルリン酸エステルまたはそのアルコキシル化類似体;およびその混合物が含まれる。例えば、陰イオン性界面活性剤は、ケノデオキシコール酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ドデシル硫酸リチウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウムとしても知られる)またはグリコデオキシコール酸ナトリウムであってもよい。
【0029】
[0034]典型的な陽イオン性界面活性剤には、限定されるわけではないが、式:
【0030】
【化1】

【0031】
式中、R、R’、R”、およびR’”は、各々、1またはそれより多くのP、O、SまたはNヘテロ原子を場合によって含有してもよい、C−C24アルキル、アリールまたはアラルキル基であり、そしてXはF、Cl、Br、Iまたは硫酸アルキルである
を有する四級アミン化合物が含まれる。例えば、陽イオン性界面活性剤は、塩化ヘキサデシルピリジニウム一水和物または臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムであってもよい。
【0032】
[0035]典型的な非イオン性界面活性剤には、限定されるわけではないが、1〜約20の酸化エチレン基(例えば約9〜約20の酸化エチレン基)を有するC−C24アルコールエトキシレート(例えばC−C14アルコールエトキシレート);1〜約100の酸化エチレン基(例えば約12〜約20の酸化エチレン基)を有するC−C24アルキルフェノールエトキシレート(例えばC−C10アルキルフェノールエトキシレート);1〜約20のグリコシド基(例えば約9〜約20のグリコシド基)を有するC−C24アルキルポリグリコシド(例えばC−C20アルキルポリグリコシド);C−C24脂肪酸エステルエトキシレート、プロポキシレートまたはグリセリド;C4−C24モノまたはジアルカノールアミド;およびその混合物が含まれる。例えば、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、N−デカノイル−N−メチルグルカミン、ジギトニン、n−ドデシルB−D−マルトシド、オクチルB−D−グルコピラノシド、オクチルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレン(8)イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートまたはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートであってもよい。
【0033】
[0036]典型的な双性イオン性界面活性剤には、限定されるわけではないが、式:
【0034】
【化2】

【0035】
式中、R、R’、R”、およびR’”は、各々、1またはそれより多くのP、O、SまたはNヘテロ原子を場合によって含有してもよい、C−C24アルキル、アリールまたはアラルキル基である
を有するアミノアルキルスルホネート化合物;式:
【0036】
【化3】

【0037】
式中、R、R’およびR”は、各々、1またはそれより多くのP、O、SまたはNヘテロ原子を場合によって含有してもよい、C−C24アルキル、アリールまたはアラルキル基である
を有する酸化アミン化合物;および式:
【0038】
【化4】

【0039】
式中、R、R’およびR”は、各々、1またはそれより多くのP、O、SまたはNヘテロ原子を場合によって含有してもよい、C−C24アルキル、アリールまたはアラルキル基であり、そしてnは約1〜約10である
を有するベタイン化合物が含まれる。例えば、双性イオン性界面活性剤は、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1―プロパンスルホネート(ときにCHAPSと称される)、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート内塩(ときにカプリリル・スルホベタインと称される)、またはN−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートであってもよい。
【0040】
[0037]好ましい界面活性剤には、硫酸アルキル、スルホン酸アルキル、スルホン酸アリールおよび双性イオン性界面活性剤が含まれる。望ましい界面活性剤を純粋な化合物として得てもよいし、またはいくつかの場合、液体カスティリアソープなどの製品を用いることによって得てもよい。界面活性剤は、例えば、少なくとも約0.002M、少なくとも約0.005Mまたは少なくとも約0.01M、例えば約0.002〜約1M、約0.005〜約0.7Mまたは約0.01〜約0.5Mの濃度で存在してもよい。重量に基づいて表すと、界面活性剤は、好ましくは、溶媒和系の0.2重量%より多く、そして例えば、溶媒和系の約0.3%〜約30%、約0.5%〜約25%または約1%〜約20%であってもよい。界面活性剤量の増加は、より迅速なバイオフィルム分解を促進しうる。
【0041】
[0038]溶媒和系には、場合によって、水および他の溶媒(例えばアルコール)、緩衝剤、抗菌剤および多様な佐剤(adjuvant)を含む、多様な他の成分が含まれてもよい。好ましくは、溶媒和系は、水および1以上の緩衝剤を含有する。緩衝剤は、好ましくは、溶媒和系を、ヒト組織に接触するのに適したpHに、そして望ましくは、5よい大きいpHに、維持する。例えば、溶媒和系は、中性に近いpH、例えば5より大きく、そして8.5未満のpHを有するように緩衝されてもよい。緩衝剤は、例えば、溶媒和系の最大約25%であってもよい。典型的な緩衝剤には、限定されるわけではないが、塩化カリウム、グリシン、フタル酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、バルビトン・ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムが含まれる。金属イオン隔離剤が穏やかな酸である場合、緩衝剤は、望ましくは、その酸の塩である。
【0042】
[0039]1以上の抗菌剤を含有する溶媒和系もまた好ましい。EPSマトリックスは、バイオフィルムが根底にある表面に貼り付くのを可能にし、そしてまた、包埋された生物を保護する;したがって、バイオフィルム中の細菌は、プランクトン性細菌よりも、抗生物質の効果に対して、およそ100〜1000倍、より抵抗性である。バイオフィルムが未結合ポリマーまたは断片に分解され、そして溶媒和系によって溶媒和されるかまたは別の方式で破壊された後、抗菌剤は、残りの細菌をはるかにより効果的に攻撃しうる。典型的な抗菌剤には、活性酸素化合物、例えば過酸化水素、単離または平衡由来または単離過酸、例えばクロロ過安息香酸、過酢酸、過ヘプタン酸、過オクタン酸、過デカン酸、過ギ酸、過クエン酸、過グリコール酸、過乳酸、過安息香酸、および二塩基酸またはジエステル由来のモノエステル過酸、例えばアジピン酸、コハク酸、グルタル酸、またはマロン酸;アミノグリコシド;アンフェニコール;アンピシリン;アンサマイシン;ベータ−ラクタム、例えばカルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、モノバクタム、オキサセフェム、ペニシリンおよびその誘導体のいずれか;カルボン酸エステル、例えばp−ヒドロキシアルキルベンゾエートおよび桂皮酸アルキル;キトサン塩;立方相脂質;ガリウム含有抗菌剤、例えばガリウム・アセチルアセトネート、臭化ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、ヨウ化ガリウム、ガリウム・マルトレート、硝酸ガリウム、窒化ガリウム、ガリウム・パーコレート、亜リン酸ガリウムおよび硫酸ガリウム;ヨード化合物および他の活性ハロゲン化合物、例えば、ヨウ素、インターハロゲン化物(interhalides)、ポリハロゲン化物、次亜塩素酸金属、次亜塩素酸、次亜臭素酸金属、次亜臭素酸、クロロ−およびブロモ−ヒダントイン、二酸化塩素および亜塩素酸ナトリウム;リンコサミド(lincosamides);マクロライド;ニトロフラン;過酸化ベンゾイルおよび過酸化アルキルベンゾイルを含む有機過酸化物;オゾン;o−フェニルフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、tert−アミルフェノールおよびC−Cアルキルヒドロキシベンゾエートを含む、フェノール性誘導体;四級アンモニウム化合物、例えば塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムおよび塩化ジアルキルジメチルアンモニウム;キノリン;一重項酸素生成剤;スルホンアミド;スルホン;スルホン酸、例えばドデシルベンゼンスルホン酸;テトラサイクリン抗生物質、例えばテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメコサイクリン(demecocycline)、ドキシサイクリン、ライムサイクリン(lymecycline)、メクロサイクリン、メタサイクリン、メトサイクリン、ミノサイクリン等;バンコマイシン;これらの誘導体および混合物が含まれる。これらの列挙する剤の多くは、個々の有用性が一般の当業者によって認識されるであろう有用な特定の物質を含有するクラスに相当する。例えば、典型的なペニシリンには、限定されるわけではないが、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリンアンピシリン、アパルシリン、アスポキシシリン、アキシドシリン(axidocillin)、アズロシリン、アカンピシリン(acampicillin)、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、カルベニシリン、カリンダシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン、フェンベニシリン(fenbenicillin)、フロキサシリン、ヘタシリン、レナンピシリン、メタンピシリン、メチシリンナトリウム、メズロシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ペナメシリン、ヨウ化水素酸ペネタメート、ペニシリンGベネタミン、ペニシリンGベンザチン、ペニシリンGベンズヒドリルアミン、ペニシリンGカルシウム、ペニシリンGヒドラバミン、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、ペニシリンN、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン、ペニメピサイクリン、フェネチシリンカリウム、ピペラシリン、ピバンピシリンプロピシリン、キナシリン、スルベニシリン、スルタミシリン、タランピシリン、テモシリン、チカルシリン、ならびにその、または他の物質との混合物(例えばクラブラン酸と組み合わせたペニシリン、例えばGlaxoSmithKlineからAUGMENTINTMとして入手可能なアモキシシリンおよびクラブラン酸の組み合わせ)が含まれる。
【0043】
[0040]好ましくは、抗菌剤は、以下の実施例中に記載する細菌プレート計数法を用いて、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌またはカタル球菌細菌の1またはそれより多くの集団における99%を超える数の減少(すなわち、少なくとも2対数の桁の減少)、99.9%を超える数の減少(すなわち、少なくとも3対数の桁の減少)、99.99%を超える数の減少(すなわち、少なくとも4対数の桁の減少)、または99.999%を超える数の減少(すなわち、少なくとも5対数の桁の減少)を提供する。
【0044】
[0041]溶媒和系は、さらなる療法剤を含有してもよい。典型的な療法剤には、耳鼻科、鼻科または咽頭科使用に適したいかなる物質も含まれ、鎮痛剤、抗コリン剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、血液製剤、ステロイド性または非ステロイド性抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、生物静力学組成物、化学療法剤/抗新生物剤、サイトカイン、充血除去剤、免疫抑制剤、粘液溶解剤、核酸、ペプチド、タンパク質、ステロイド、血管収縮剤、ビタミン、その混合物、ならびに当業者に明らかであろう他の療法物質が含まれる。溶媒和系に含まれてもよい他の佐剤には、色素、ピグメント、または他の着色剤(例えば、FD&Cレッド第3番、FD&Cレッド第20番、FD&Cイエロー第6番、FD&Cブルー第2番、D&Cグリーン第5番、D&Cオレンジ第4番、D&Cレッド第8番、カラメル、二酸化チタン、果物または野菜着色剤、例えばビート粉末またはベータ−カロテン、ターメリック、パプリカおよび当業者によく知られているであろう他の物質);指示薬;フレーバー剤または甘味料、限定されるわけではないが、アニス油、チェリー、桂皮油、柑橘油(例えばレモン、ライムまたはオレンジ油)、ココア、ユーカリ、ハーブ性芳香剤(例えば丁字油、セージ油またはカッシア油)、ラクトース、マルトース、メントール、ペパーミント油、サッカリン、シクラミン酸ナトリウム、スペアミント油、ソルビトール、スクロース、バニリン、ウィンターグリーン油、キシリトールおよびその混合物;酸化防止剤;消泡剤;ならびに増粘剤およびチクソトロープ(thixotropes)を含む鼻科修飾剤が含まれる。
【0045】
[0042]溶媒和系は、望ましくは、少なくとも、バイオフィルムの望ましい部分を覆うのに十分な量および厚さで適用される。例えば、開口部を通じて、溶媒和系の送達に適したカテーテル、カニューレ、シリンジ、導入装置または他の導管を押し込むことが可能であるように、治療部位近傍に適切な開口部を決めるかまたは作製する(例えば中耳中のいくつかの治療には、鼓膜切開術)ことが好適でありうる。内耳中の治療が望ましい場合、さらなるアクセス開口部を、上記のように、同様に作製してもよい。バイオフィルムおよびその生物が破壊され、溶媒和され、そしてそれに続いて除去されるように、ターゲットとされる組織に、そして該組織中または該組織上に含有される、ターゲットとされるバイオフィルムに、溶媒和系を適用してもよい。治療は、化学的希釈または機械的破壊を伴ってもよい。例えば、適切な配慮を伴って、溶媒和系を加圧スプレーとして適用して、治療部位で細菌性バイオフィルム、細菌および他の異物性の構築物を取り除くことも可能である。鼓膜切開術を介するか、あるいはエウスタキー管、鼻または口を通じて実行される、吸引、洗浄または他の除去技術を用いた、最終的な除去を容易にするため、これには、金属イオン隔離剤によるカルシウムイオンの隔離を通じた、バイオフィルムEPSマトリックスの分解、および生じた分解断片の水溶液内への溶媒和(例えばマンヌロン酸およびグルロン酸)が伴ってもよい。十分な溶媒和系を治療領域内に注射して、存在しうるいかなる膿または他の物質も置換して、過剰な物質の色がもやは変わらなくなるまで、治療領域から過剰な物質がオーバーフローするのを可能にすることが望ましい可能性もある。溶媒和系が排出されるかまたは別の方式で排除されるかまたは吸収されるまで、溶媒和系はその場所に残ってもよいし、あるいは溶媒和系を適切な時間(例えば数分、数時間またはそれ以上)放置して、そして次いで、生理食塩水または別の適切な液体を用いてすすいで取り去ってもよい。直接適用は、より迅速なバイオフィルム分解を促進しうるため、溶媒和系は、好ましくは、治療部位に直接適用される。例えば、中耳または内耳中で実行される処置のため、溶媒和溶液は、好ましくは、単に外耳道に適用されてそして鼓膜を渡って輸送されるのを可能にされるよりは、中耳または内耳領域内に、直接適用される。また、溶媒和系の適用、および取り除かれたかまたは破壊されたバイオフィルムの除去を望ましいように反復して、障害を起こす生物の完全な除去を確実にしてもよい。
【0046】
[0043]溶媒和系は、望ましくは、細菌性バイオフィルムを破壊し、そしてその復帰を阻止する、多工程治療措置の一部として用いられてもよい。例えば、洗浄/破壊、殺傷、保護/コーティング、通気および治癒として広く分類されうる一連の工程を実行してもよい。上記のように溶媒和系を投与することによって、洗浄/破壊工程を実行してもよい。適切な抗菌剤を治療部位に適用することによって、殺傷工程を実行してもよい。これは例えば、溶媒和系に抗菌剤を含めることによって、またはこうした剤を術中にまたは術後に(例えば局所、経口または全身性に)別個に適用することによって、達成可能である。こうして治療された組織の少なくとも一部を保護封止剤層でコーティングすることによって、保護/コーティング工程を実行してもよい。封止剤は、細菌および新規バイオフィルム形成性コロニーでの組織表面の再コロニー形成を阻止するかまたは防止し;炎症を減少させ;創傷治癒を改善するかまたは体の天然の先天性免疫応答の回復を可能にするなどの、多様な利点を提供しうる。上述の洗浄/破壊工程後に残っている、いかなる細菌性バイオフィルム、バイオフィルム断片または細菌もさらに攻撃するため、封止剤には、1以上の抗菌剤が含まれてもよい。好ましい封止剤に関するさらなる詳細は、上述の同時係属出願第(代理人整理番号第151−P−28168WO01号)号に見いだされうる。適切な単数または複数の開口部(例えば鼓膜中のスリット、あるいは閉塞したまたは部分的に閉塞した鼻孔、副鼻腔または副鼻腔小孔(sinus ostia)中の開口部)を保持するかまたは形成し、そして治療部位の通気を可能にするのに十分な期間、単数または複数の該開口部を開放したままにしておくことによって、通気工程を実行してもよい。この期間は、開口部(単数または複数)の性質によって、そして耳の治療に関しては、中耳腔換気用チューブが導入されているかどうかによって、影響を受けうる。例えば、スリットが鼓膜中に形成されており、そして開口部にチューブが設置されていない場合、スリットを数日間開放したままにしておき、そして治癒させて、それによって耳空間を自然に閉じてもよい。洗浄され、保護され、そして封止された組織表面が、例えば免疫応答、食作用、粘膜リモデリング、再繊毛形成(reciliation)あるいは正常聴覚または平衡感覚の完全または部分的回復の調節などの、1以上の治癒機構を通じて、正常状態への復帰を経験するのを可能にすることによって、治癒工程を実行してもよい。
【0047】
[0044]以下の限定されない実施例において、本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0048】
実施例1
[0045]黄色ブドウ球菌および緑膿菌細菌の細菌単離体を、副鼻腔障害を患う患者の副鼻腔から回収した。嚢胞性線維症または根底にある免疫抑制疾患(HIV感染、インスリン依存性糖尿病、または腎疾患)を患う患者、および前月に抗生物質または経口プレドニゾンを摂取していた患者を除いた。すべての患者は、難治性副鼻腔炎、すなわち、鼻ポリープ症を伴うまたは伴わない難治性慢性鼻副鼻腔炎(CRS)のため、技術的に成功した機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)を経験したにもかかわらず、内科的療法に抵抗性の持続性症状を患っていた。CRSの発生は、Benningerら, “Adult chronic rhinosinusitis: Definitions, diagnosis, epidemiology, and pathophysiology”, Otolaryngol Head Neck Surg 129(3 suppl):S1−S32(2003)に示される、2003 American Academy of Otolaryngology−Head and Neck Surgery(AAO−HNS)指針にしたがって診断された。選択した患者は、試料収集前、12ヶ月より長く、内科的療法に対して難治性であり、そしてFESSの失敗は、閉塞性癒着、前頭洞閉塞、または鉤状突起の残存などの技術的要因とは関連していないと判断された。直接内視鏡誘導およびNadelら, “Endoscopically guided cultures in chronic sinusitis”, Am J Rhinol 12:233−241(1998)に記載される方法を用いて、黄色ブドウ球菌および緑膿菌各々の10の標本が得られるまで、試料を連続して収集した。簡潔には、局所麻酔剤を投与し、鼻翼を牽引し(retracted)、そして内視鏡を用いて、中鼻道および副鼻腔を視覚化した。薄く柔軟なアルギン酸カルシウムスワブ(STARSWAB IITM Collection and Transport System, Starplex Scientific, オンタリオ州エトビコーク)を挿入し、そして大部分の化膿を有する部位に向けた。化膿がまったく観察されない場合は、上顎洞表面を15秒間スワブした。鼻外壁または鼻前庭との接触を回避するように注意を払った。試料をプレーティングし、そして標準法を用いてインキュベーションした。VITEK 2TM系(Biomerieux, ノースカロライナ州ダーハム)を用いて、細菌を同定した。Stepanovicら, “A modified microtiter−plate test for quantification of staphylococcal biofilm formation”, J Microbiol Methods 40:175−179(2000)に記載される方法にしたがって、バイオフィルムの存在を確認するクリスタルバイオレット染色を実行した。インキュベーションおよび培養のため、あらかじめ凍結しておいた株を、0.5%ヒツジ血液を含むトリプチケースソイ寒天(TSA)上に接種した。24時間後、株あたり1〜4のコロニーをTSA上で培養した。培養を37℃で24時間インキュベーションして、これらをトリプチケースソイブロス(TSB)−TSA培地に馴化させ、そして混入がないことを確実にした。次いで、TSA固形培地上で増殖したコロニーを、Gotz, “Staphylococcus and biofilms”, Mol Microbiol 43:1367−1378(2002)に記載される方法にしたがって、0.5%グルコースを含む5mlのTSB培地中で増幅させて、そして37℃で少なくとも24時間インキュベーションした。
【0049】
[0046]ドリップフロー反応装置(DFR)を用いて、流体力学的力を伴いそして伴わずに、これらの細菌性バイオフィルムを除去するため、ヒドロキシアパタイト(HA)でコーティングした顕微鏡スライド上の黄色ブドウ球菌および緑膿菌バイオフィルムに送達された多様な試験溶液の有効性を決定した。DFR中のスライドを水平から10°傾け、それによって低速剪断環境をモデリングする。DFRを、好気性条件下、37℃のインキュベーター中に収納した。細菌接種のおよそ20分前、無菌培地(黄色ブドウ球菌では10%TSB;緑膿菌では1%TSB)をDFR中のスライド上に滴下して、そしてスライド上で収集を可能にして、馴化層を形成した。次いで、スライドに、1mlの黄色ブドウ球菌または緑膿菌いずれかの培養物1mlを接種した。スライドが4時間水平であるようにDFRを傾けて、支持体への細菌の付着を可能にした。続いて、スライドが再び10°の角度となり、無菌培地がスライド上に1時間あたり10mlの速度で滴下されるように、DFRをセットした。3日後、バイオフィルム除去実験を実行した。2つの方法を用いて、各細菌種によって形成されたバイオフィルムを処理した。最初の適用法は、DFR中の静的処理を伴い、溶媒和剤(CAZSと称される)をバイオフィルム上に滴下した。CAZS溶媒和剤は、脱イオン水、25g/l(0.13Mに対応する)クエン酸、5.35g/l(0.02Mに対応する)カプリリル・スルホベタイン双性イオン性界面活性剤(CH(CH(CHCHCHCHSO、CAS 15163−36−7)、および系をpH5.4に緩衝するのに十分なクエン酸ナトリウム(約240g/l)を含有した。第二の適用法は、加圧ジェット洗浄を用いて、バイオフィルムに流体力学的剪断力を適用する、DFR外での生理食塩水の送達またはCAZSの送達を伴った。すべての処理のため、予備的実行を行って、スライド間の変動が許容されうる限界内であることを確実にした。さらに、両細菌種の多数のプレートを作製して、同時実行内および実行間の変動を決定した。各DFR実行に関して、対照スライドを作製した。細菌各種の各処理に関して、3回の実行を評価した。
【0050】
[0047]静的処理のため、DFRへの流動を止め、DFRを水平位置に置き、そしてカバーを除去した。CAZSの25ml部分を1つのスライドに適用した。対照スライドはCAZSでは処理されなかった。10分後、スライドを生理食塩水(25ml)ですすいだ。次いで、DFRを流入管からはずし、そして各スライドをラミナフローフード下から取り出して、そして無菌50ml試験管中に入れた。もう一度生理食塩水ですすいだ(2ml)後、スライド表面を繰り返してこすり落とし、そしてこすり落とした物および生理食塩水を試験管中に収集した。試験管を10秒間ボルテックスし、2分間超音波処理し、そして再び10秒間ボルテックスして、細菌を懸濁物内に分散させた。次いで、懸濁物を連続希釈して、そしてTSAを含有する3枚のプレートに100μlのアリコットを適用して、そして37℃で24時間インキュベーションした。コロニー形成単位(CFU)を手動で計数し、そして平方センチメートルあたりのCFU数を計算した。生じたプレート数を対数(10)変換して、そして各3枚のスライドの2回のDFR実行由来のプレート計数から得た平均(±SD)として表した。
【0051】
[0048]流体力学処理のため、スライドをDFRから取り外し、そしてグローブボックスに入れた。スライドをホルダー中に入れ、そして加圧ジェット洗浄を提供するデバイスを用いて、生理食塩水またはCAZSのいずれか約150mlを、およそ20秒間スプレーした。すべての領域が2回、各軸1回ずつスプレーされるように、横から横、そして上から下の両方の掃引する動きでスプレーを行った。次いで、スライドを無菌50ml試験管に入れ、上述のようにすすぎ、こすり落とし、分散させ、インキュベーションし、そして評価した。
【0052】
[0049]各処理後の黄色ブドウ球菌および緑膿菌細菌量(すなわち、各プレート上のCFU数)の対照値からの平均(±SD)パーセント減少を計算し、そして2試料t検定(MINITABTMバージョン14, Minitab, ペンシルバニア州ステートカレッジ)を用いて結果を評価した。0.05未満のP値は、対照値からの有意な相違を示すと見なされた。結果を以下の表1に示し、2回評価した3枚のプレートから得た、センチメートルあたりのコロニー形成単位の平均(±SD)数(対数)として表す。
【0053】
表1
処理タイプにしたがった、細菌プレート対数計数
【0054】
【表1】

【0055】
[0050]表1中の結果は、有意な細菌性バイオフィルムの除去が得られたことを示す。処理前、黄色ブドウ球菌および緑膿菌両方のDFR培養中で、十分なバイオフィルムが形成され、これらの対照のCFU数は、7.8〜9.5対数/cmの範囲であった。CAZSの静的投与は、黄色ブドウ球菌CFU数では2.5対数の減少(5.11x10から1.65x10; P=0.001)を、そして緑膿菌CFU数では2.9対数の減少(1.69x10から1.91x10; P=0.002)を生じた。流体力学的生理食塩水送達のみを用いた機械的破壊は、黄色ブドウ球菌CFU数を2.3対数単位(5.11x10から2.38x10; P=0.001)、そして緑膿菌CFU数を2.4対数単位(1.69x10から7.31x10; P=0.001)減少させた。しかし、流体力学的CAZSを用いた機械的破壊は、黄色ブドウ球菌CFU数を3.9対数単位(5.11x10から6.37x10; P=0.001)、そして緑膿菌CFU数を5.2対数単位(1.69x10から1.04x10; P=0.001)減少させた。
【0056】
[0051]プレート計数に供されなかった(各処理および細菌種あたり)3枚のスライドに対して共焦点走査型レーザー顕微鏡(CSLM)を実行して、対照および処理試料中のバイオフィルム構築の画像化を可能にした。2つの核酸染色剤(蛍光を発する緑によって生存細胞を検出するSYTO9、および蛍光を発する赤によって死んだ細胞を検出するヨウ化プロピジウム)を含有する、BACLIGHTTM生存/死亡キット(Molecular Probes, Invitrogen, カリフォルニア州カールスバッド)を用いて、CSLM用にスライドを染色した。染色後、2光子MAI TAITM付属装置を伴うLEICATM SP2音響光学ビームスプリッターを用い、630X拡大率でCSLMを用い、そして緑および赤のスペクトル両方での蛍光励起および検出を用いて、スライドを調べた。各スライド領域を10の等しい大きさの部分に分けた。顕微鏡視野を各部分からランダムに選択して、そしてバイオフィルムの最上部から支持体まで、1μm間隔で画像を得て、それによって各位置に関する画像スタックを生成した。CSLM分析によって、厚いバイオフィルムが、対照スライド上を一面に覆っていることが明らかになった。生理食塩水を用いた流体力学的処理およびCAZSを用いた静的処理は、バイオフィルム被覆量を顕著に減少させ、そして残ったバイオフィルムの組織化を減少させた。CAZSでの流体力学的処理は、バイオフィルム被覆およびバイオフィルムコミュニティーにおける秩序の量の両方で、より大きな減少を生じた。結果は、一般的に、各処理で達成されたバイオフィルム量の相対的減少に関してのプレート計数評価に対応した。
【0057】
[0052]調べた3つの処理のうち、CAZSおよび加圧ジェット洗浄を用いた動力潅注が、細菌性バイオフィルムの破壊に最も有効であった。生理食塩水を用いた動力潅注は認識しうるバイオフィルム減少効果を有した。しかし、潅注溶液中の界面活性剤およびクエン酸の存在は、黄色ブドウ球菌および緑膿菌バイオフィルム両方でのCFU数の減少を有意に増進した。大きく、統計的に有意な減少が生じ、黄色ブドウ球菌および緑膿菌バイオフィルムに関して、細菌プレート計数の平均減少は、それぞれ、3.9および5.2対数(10,000〜100,000倍の減少)であった。in vitroでのこの度合いの減少は、中耳または内耳、鼻腔または副鼻腔、あるいは口腔組織または咽頭組織での適切なin vivo処置が、そこに見られる細菌性バイオフィルムを有効に破壊するはずであることを示す。いかなる残りの低レベルの持続性細菌感染も、宿主防御あるいは抗菌剤の局所または経口投与によって、そして上述のような封止剤の適用によって、対処可能である。
【0058】
実施例2
[0053]修飾した系が25%の硝酸ガリウムを含有するように、水のある程度を硝酸ガリウムで置換することによって、実施例1で使用したCAZS溶媒和系を修飾した。脱イオン水中、25%の硝酸ガリウムを含有する対照溶液もまた調製した。実施例1の静的処理技術を用いて評価すると、硝酸ガリウム対照溶液の投与は、黄色ブドウ球菌CFU数の3.4対数の減少(4回の実行の平均)、および緑膿菌CFU数の4.1対数の減少(3回の実行の平均)を生じた。CAZSおよび硝酸ガリウムを含有する溶液の静的投与は、黄色ブドウ球菌CFU数の5.2対数の減少(2回の実行の平均)、および緑膿菌CFU数の5.5対数の減少(2回の実行の平均)を生じた。
【0059】
[0054]好ましい態様を説明する目的で、本明細書において、特定の態様を例示し、そして記載してきたが、一般の当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、示し、そして記載した特定の態様の代わりに、同じ目的を達成すると予測される非常に多様な別のまたは同等の実行を用いてもよいことが認識されるであろう。本出願は、本明細書に論じる好ましい態様のいかなる適応または変形も含むと意図される。したがって、本発明が請求項およびその同等物によってのみ限定されることが明白に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌性の耳、鼻またはのどの状態の治療用の薬剤を製造するための、金属イオン隔離剤、および中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着したバイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊することが可能な0.2重量%より多い界面活性剤の使用。
【請求項2】
細菌性の耳、鼻またはのどの状態の治療用の薬剤を製造するための、(a)金属イオン隔離剤、(b)中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着したバイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊することが可能な双性イオン性界面活性剤、および(c)5より大きいpHを提供するのに十分な緩衝剤の使用。
【請求項3】
細菌性の耳、鼻またはのどの状態を治療するための方法であって:
a)中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着した細菌性バイオフィルムに、金属イオン隔離剤および0.2重量%より多い界面活性剤を含む、溶媒和系を適用し、そして
b)バイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊する
工程を含む、前記方法。
【請求項4】
細菌性の耳、鼻またはのどの状態を治療するための方法であって:
a)中耳または内耳の少なくとも部分に、鼻腔または副鼻腔内の表面に、あるいは口腔組織または咽頭組織に付着または接着した細菌性バイオフィルムに、金属イオン隔離剤、双性イオン性界面活性剤、および溶媒和系が5より大きいpHを有するのに十分な緩衝剤を含む、溶媒和系を適用し、そして
b)バイオフィルムの少なくとも一部を取り外すか、除去するかまたは別の方式で破壊する
工程を含む、前記方法。
【請求項5】
溶媒和系を中耳の少なくとも部分に適用する、請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項6】
溶媒和系を鼻腔または副鼻腔に適用する、請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項7】
スプレーするか、洗浄するか(lavage)、噴霧するか、拭うか(mopping)、ウィックで適用するか(wicking)、または滴下することによって、溶媒和系を適用する工程を含み、そして流すか(flushing)、すすぐか(rinsing)、排出するか(draining)または吸収するこによって、溶媒和系を除去することをさらに含む、請求項3〜6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
酸性が細菌性バイオフィルム中の1またはそれより多くの金属イオンを隔離するのに十分であるが、中耳または内耳を傷つけるほどは酸性でない穏やかな酸を、金属イオン隔離剤が含む、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項9】
金属イオン隔離剤が、ナトリウム、カルシウムまたは鉄用の隔離剤を含む、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項10】
金属イオン隔離剤が、カルボン酸、二塩基酸、三塩基酸またはその混合物を含む、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項11】
金属イオン隔離剤が、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、オキサミド酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イミノ二酢酸、グルタル酸、2−ケトグルタル酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルクロン酸、粘液酸、ニトリロ三酢酸、サリチル酸、ケトピメリン酸、安息香酸、マンデル酸、クロロマンデル酸、フェニル酢酸、フタル酸、ホウ酸またはその混合物を含む、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項12】
金属イオン隔離剤がクエン酸を含む、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項13】
金属イオン隔離剤が、約0.01〜約0.5Mの濃度で存在する、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項14】
請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項15】
溶媒和系が8.5未満のpHを有する、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項16】
溶媒和系が抗菌剤をさらに含む、請求項1または請求項2記載の使用、あるいは請求項3または請求項4記載の方法。
【請求項17】
組織上の細菌性バイオフィルムを破壊するための溶媒和系であって、組成物が、金属イオン隔離剤、0.2重量%より多い界面活性剤、および抗菌剤を含む、前記溶媒和系。
【請求項18】
組織上の細菌性バイオフィルムを破壊するための溶媒和系であって、組成物が、金属イオン隔離剤、双性イオン性界面活性剤、および溶媒和系が5より大きいpHを有するのに十分な緩衝剤を含む、前記溶媒和系。
【請求項19】
酸性度が細菌性バイオフィルム中の1以上の金属イオンを隔離するのに十分であるが、溶媒和系を適用する中耳または内耳部分を傷つけるほどは酸性でない穏やかな酸を、金属イオン隔離剤が含む、請求項17または請求項18記載の溶媒和系。
【請求項20】
金属イオン隔離剤が、ナトリウム、カルシウムまたは鉄用の隔離剤を含む、請求項19記載の溶媒和系。
【請求項21】
金属イオン隔離剤が、カルボン酸、二塩基酸、三塩基酸またはその混合物を含む、請求項19記載の溶媒和系。
【請求項22】
金属イオン隔離剤が、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、オキサミド酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イミノ二酢酸、グルタル酸、2−ケトグルタル酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルクロン酸、粘液酸、ニトリロ三酢酸、サリチル酸、ケトピメリン酸、安息香酸、マンデル酸、クロロマンデル酸、フェニル酢酸、フタル酸、ホウ酸またはその混合物を含む、請求項21記載の溶媒和系。
【請求項23】
金属イオン隔離剤がクエン酸を含む、請求項21記載の溶媒和系。
【請求項24】
界面活性剤が、硫酸アルキル、スルホン酸アルキルまたはスルホン酸アリールあるいはその混合物を含む、請求項17または請求項18記載の溶媒和系。
【請求項25】
キトサン塩、立方相脂質、ガリウム含有化合物、カルボン酸エステル、スルホン酸、活性ハロゲン化合物、活性酸素化合物、有機過酸化物、オゾン、一重項酸素生成剤、フェノール性誘導体または四級アンモニウム化合物を含む、抗菌剤を含む、請求項17または請求項18記載の溶媒和系。
【請求項26】
抗菌剤が、ガリウム・アセトアセトネート、臭化ガリウム、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、ヨウ化ガリウム、ガリウム・マルトレート、硝酸ガリウム、窒化ガリウム、ガリウム・パーコレート、亜リン酸ガリウム、硫酸ガリウムまたはその混合物を含む、請求項25記載の溶媒和系。
【請求項27】
金属イオン隔離剤が、約0.01〜約0.5Mの濃度で存在する、請求項17または請求項18記載の溶媒和系。
【請求項28】
界面活性剤が、溶媒和系の約0.5%〜約25%である、請求項17または請求項18記載の溶媒和系。
【請求項29】
緩衝剤を含み、そして5より大きく、そして8.5未満のpHを有する、請求項17または請求項18記載の溶媒和系。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−536666(P2009−536666A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510146(P2009−510146)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/068477
【国際公開番号】WO2007/134055
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(504101304)メドトロニック・ゾーメド・インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】