説明

抗腫瘍剤

【課題】抗腫瘍剤の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で示される化合物を含有する抗腫瘍剤。


[式(1)中のRは水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは炭素数1〜12のアルキレン基であり、Rは−COOR(Rは炭素数1〜18の置換または分岐を有してもよいアルキル基である)、カルボキシル基または−CHOHであり、Zは−CO−CH=CH−、−CHOH−1,2−エポキシ−、−CHOH−CHCHOH−、−CO−CHCHOH−等のケタール誘導体である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖抑制作用を有する化合物に関するものであって、当該化合物は腫瘍細胞における増殖抑制作用の故に、抗腫瘍剤として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍の治療に際し、数々の化学療法剤の開発がなされ、新規でより良い治療方法での新たな化合物を創出するための努力がされている。これら新規な化合物は、新生物細胞群における非常に強い多様性のため、広範な活性スペクトルおよび良好な治療指数を有さなければならないとされている。悪性新生物などの固形腫瘍のほとんどは塊で増加するので、悪性細胞および内皮細胞を含む間質細胞の増殖で腫瘍が成長するためには、血管新生という脈環構造を形成しなければならないことは周知で、既にアンギオスタチンおよびエンドスタチンによる腫瘍誘発性の血管新生の抑制は、抗腫瘍活性を生じると報告されている(特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
また、臨床上重要な抗腫瘍剤であるビンカアルカロイド類やタキサン類などは、器官や組織のおける微小管に作用して、細胞分裂を一時的に停止させ、染色体の不均等分配による染色体不安定性の増大を抑制していると考えられる。ここで、微小管は細胞形態の維持や細胞内物質輸送および神経線維の軸索輸送にも関わっているため、微小管に作用する薬剤は癌細胞だけでなく正常細胞に対しても副作用を及ぼし、特徴的な副作用として、神経線維の軸索輸送の阻害による末梢神経障害が臨床上問題となっている(特許文献2)。
【0004】
一方、ショウガオールやジンゲロールは生姜抽出物の主要成分であるが、例えば、血行促進作用(特許文献3)、体臭抑制効果(特許文献4)、抗酸化効果(非特許文献2)、保湿効果(非特許文献3)、プロスタグランジン産生阻害作用(非特許文献4〜6)を有することが知られている。
本発明者らは、すでに、ショウガオールと類似構造を有する化合物について、チロシナーゼ活性阻害作用、抗酸化作用及び5−リポキシゲナーゼ阻害作用を見出し(特許文献5〜7)、さらには、ショウガオール及びジンゲロールの水溶性の乏しさを改善した、それらの類縁化合物についても、チロシナーゼ活性阻害作用及び抗酸化作用を見出している(特許文献6)。
また、下記一般式(2)で示される化合物は、フリーラジカルを消去するなどの抗酸化作用が知られている化合物である。さらに当該化合物はシクロオキシナーゼ阻害作用も有し、特にシクロオキシゲナーゼ−2に対して強い阻害作用を示すことが報告されている(特許文献8)。
【0005】
【化1】

【0006】
上記に挙げたショウガオール及びジンゲロールの類縁化合物、および上記一般式(2)で示される化合物に関して、抗腫瘍剤としての使用、特に腫瘍細胞増殖抑制効果については、これまで評価されていなかったのである。
【0007】
【特許文献1】特表2004−530709号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−356126号公報(従来の技術)
【特許文献3】特開平6−183959号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】米国特許6264928号明細書
【特許文献5】特開2003−327574号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特願2003−086818(特許請求の範囲)
【特許文献7】国際公開第WO2004/085373号(請求の範囲)
【特許文献8】特開2004−315498号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】O'Reillyら、Cell, 88, 277-285 (1997)
【非特許文献2】Kikuzaki,H.et al.,J.Food Sci.,58,6,1407-1410(1993)
【非特許文献3】鈴木正人 監修、「新しい化粧品機能素材300 上巻」、311−312頁、シーエムシー出版(2002)
【非特許文献4】Kiuchi, F., Shibuya, M., Sankawa, U., Chem. Pharm. Bull., 30, 754(1982)
【非特許文献5】三川潮、医学のあゆみ、126、867−874(1983)
【非特許文献6】末川守他7名、日薬理誌、88、263−269(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述のような状況をふまえ、医薬品分野で有用な抗腫瘍剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで示される化合物が細胞増殖抑制効果を有していることを見出し、本発明を完成したのである。
【0010】
[A]一般式(1)で示される化合物
【0011】
【化2】

【0012】
式(1)中のR1は水素原子、低級アルキル基またはフェノール性水酸基の保護基であり、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Bは炭素数1〜12のアルキレン基であり、R2は−COOR3(ここでR3は炭素数1〜18の置換または分枝を有しても良いアルキル基であり)、カルボキシル基または−CH2OHであり、Zは−CO−CH=CH−、−CHOH−CH=CH−、−CHOH−1,2−エポキシ−、−CO−CH2CH2−、−CHOH−CH2CH2−、−CO−CH2CHOH−、−CHOH−CH2CHOH−、−CO−CH2CHOR4−、−CHOH−CH2CHOR4−、−CO−CH=CH−のケタール誘導体、または−CO−CH2CH2−のケタール誘導体であり、R4は低級アルキル基である。
【0013】
式(1)における低級アルキル基とは炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。また、式(1)における−CHOH−1,2−エポキシ−とは、下記式(a)で表されるものである。
【0014】
【化3】

【0015】
式(1)におけるケタール誘導体とは、非環状ケタールまたは環状ケタールであり、好ましくは環状ケタールである。この環状ケタールとしては、カルボニル基に対してエチレングリコール、1,3−プロパンジオールまたは2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールから得られるものが挙げられる。
【0016】
○一般式(1)で示される化合物について
一般式(1)においてR1は水素原子、低級アルキル基である。R1のフェノール性水酸基の保護基としては、保護基の導入および除去が容易であることが好ましく、シリル型保護基、アシル型保護基、ベンジル型保護基、エーテル型保護基等が例示される。具体的には、t−ブチルジメチルシリル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基が好適である。
一般式(1)において、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基またはブチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
一般式(1)において、Bは炭素数1〜12のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜9のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。
【0017】
一般式(1)において、R2は−COOR3(ここでR3は炭素数1〜18の置換または分枝を有しても良いアルキル基であり)、カルボキシル基または−CH2OHである。R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、ベンジル基が好適である。さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。
一般式(1)において、Zは−CO−CH=CH−、−CHOH−CH=CH−、−CHOH−1,2−エポキシ−、−CO−CH2CH2−、−CHOH−CH2CH2−、−CO−CH2CHOH−、−CHOH−CH2CHOH−、−CO−CH2CHOR−、−CHOH−CH2CHOR4−、−CO−CH=CH−のケタール誘導体、または−CO−CH2CH2−のケタール誘導体であり、R4は低級アルキル基である。
【0018】
一般式(1)で示される化合物は、例えば国際公開WO2004/085373号に記載の方法に準じて製造することができる。
【0019】
一般式(1)で示される化合物のなかには、一つ、もしくは二つの不斉炭素を有する化合物がある。これらは通常ラセミ混合物として得られるが、必要に応じて不斉合成にて一方の光学活性体のみを合成する方法や、もしくは光学活性カラムを用いる高速液体クロマトグラフィー等の方法により、一方の光学活性体のみを分離して使用することも可能である。
【0020】
[B]一般式(2)で示される化合物
【0021】
【化4】

【0022】
式(2)中のR6は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基を示し、R7は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基を示す。
【0023】
一般式(2)で示される化合物のR6は炭素数1〜18のアルキル基であり、当該アルキル基は分岐を有するもの又は有しないもののいずれであってもよい。かかるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、及びステアリル基等が挙げられる。より好ましいアルキル基は、直鎖アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられる。
【0024】
一般式(2)において、R7は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。このR7の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。またこのR7のフェノール性水酸基の保護基としては、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、ベンジル基及び4−メトキシベンジル基等のエーテル系の保護基、トリメチルシリル基及びt−ブチルジメチルシリル基等のシリル系の保護基、並びにアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基及びトリオイル基等のエステル系の保護基等が挙げられ、好ましくはエステル系の保護基である。一般式(2)のR7としてはメチル基又はエチル基が好ましく、更に好ましくはメチル基である。
【0025】
一般式(2)におけるフェノールは、フェノール性水酸基の保護基が結合していても良い。このフェノール性水酸基の保護基としては、上記記載のものが例示できる。
【0026】
○一般式(2)で示される化合物の合成について
一般式(2)で示される化合物は、例えば特開2004−315498号に記載の方法に準じて製造することができる。
【0027】
[C]一般式(3)又は一般式(4)で示される化合物
【0028】
【化5】

【0029】
式(3)中のR8は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基を示し、R9は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を、R10は炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキル基を示し、Aは炭素数1〜4のアルキレン基を示す。
【0030】
【化6】

【0031】
式(4)中のR8は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基を示し、R9は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を、R10は炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキル基を示し、Aは炭素数1〜4のアルキレン基を示す。
【0032】
○式(3)又は(4)で示されるジンゲロール類似化合物について
式(3)又は(4)において、R8は炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、およびステアリル基等が例示できる。当該アルキル基としては、直鎖アルキル基が好ましく、さらに天然界に存在するジンゲロールの構造を考慮すると、R8の炭素数は偶数であることが好適である。具体的には、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、およびデシル基が好適なものとして例示できる。
式(3)又は(4)において、R9は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
式(3)又は(4)において、R10は炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキル基あり、好ましくはメチル基またはエチル基である。
式(3)又は(4)において、Aは炭素数1〜4のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基またはブチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
【0033】
一般式(3)で示される化合物、及び一般式(4)で示される化合物は、例えば特開2003−342224号公報、国際公開第WO03/099752号、及び特開2003−279606公報などに記載の方法に準じて製造することができる。
【0034】
一般式(1)〜(4)のいずれかで示される化合物は、後記の実施例からも明らかなように腫瘍細胞に対する増殖抑制効果を有することから、医薬品として配合し、抗腫瘍剤として使用することができる。
【0035】
医薬品として用いる場合は、本発明の化合物を単独か或いは製薬上受け入れられる腑形剤又は担体や他の添加剤と共に各種の製剤形態に調合され使用される。その割合および性質は選ばれる化合物の溶解度及び化学的性質、選ばれた投与経路、及び標準の製剤学的慣用法によって決定される。腑形剤又は担体は固体、半固体、又は液体物質であることができ、これらは活性成分のビヒクル又は担体としての役目をすることができる。適当な腑形剤又は担体は製剤学の分野で一般的なものである。製剤組成物は経口又は非経口の使用のために適合化することができ、錠剤、カプセル、坐薬、溶液、懸濁液などの形態で患者に投与することができる。
【0036】
製剤組成物は経口的、例えば不活性希釈剤または食べることのできる担体と共に投与できる。これらはゼラチンカプセル中に包むか又は錠剤に圧縮することができる。経口投与を行うためには、本発明の化合物は腑形剤と共に混入させることができ、錠剤、トローチ、カプセル、エルキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューインガムなどの形態で使用できる。錠剤、トローチ、カプセルなどは一つ又はそれ以上の助剤を含有することができる。助剤とは、結合剤、(例えば微結晶セルロース、トラガカントゴム、ゼラチン)、腑形剤(例えば、澱粉、乳糖)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、プライモゲル、コーンスターチ)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステロテックス)、滑剤(例えば、コロイド状二酸化シリコン)、甘味剤(例えば、ショ糖、サッカリン)、及び香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー)などである。投与単位形がカプセルであるときには上記の種類の物質に加えて液体担体(例えば、ポリエチレングリコール、脂肪族油)を含有させることができる。他の投与単位系は投与単位の物理的形態を変更する他の物質(例えば、コーティング)を含有させることができる。このように錠剤又は坐薬は、糖、シェラック又は他の腸溶皮剤で被覆することができる。シロップは活性成分のほか、甘味剤としてショ糖及びある種の防腐剤、染料及び着色及び香味剤を含有させることができる。
【0037】
非経口投与を行うためには、本発明の化合物は溶液又は懸濁液中に混入できる。溶液又は懸濁液は一つまたはそれ以上の助剤を含有することができる。助剤とは滅菌希釈剤(例えば、注射用水、塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール、他の合成溶媒)、抗細菌剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラペン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩)、及び毒性を調製するための薬剤(例えば、塩化ナトリウム、デキストロース)などである。非経口製剤はアンプル、使い捨て注射、またはガラス又はプラスチック製の複数投与のバイアル中に封入することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
○細胞増殖抑制効果
下記に示す化合物1〜化合物13について、各種腫瘍細胞に対する増殖抑制効果を測定した。
【0040】
〔細 胞〕
浮遊細胞であるヒト前骨髄性白血病細胞HL-60、接着細胞であるヒト結腸腺癌細胞HCT-15およびヒトグリア芽細胞腫T98Gは大日本製薬から購入した。それぞれの細胞は指示された最適条件で培養維持された。細胞は10 %牛胎児血清 (FBS) を含むRPMI-1640培地 (SIGMA) で37℃, 5 % CO2インキュベーター内で培養後、細胞数を調整し実験に用いた。
【0041】
〔細胞増殖測定法〕
細胞の増殖は、比色法のひとつであるMTT(4,5-dimethylthiazol-2-yl-2,5- diphenyl tetra zolium bromide)法により測定した。
すなわち、96 wellプレートに培地200 μL,5×105 cell/ml mediumの細胞懸濁液を90?μL、各種濃度に調製したサンプル10 μLをそれぞれ加え、37℃,5% CO2インキュベーター内で24時間静置培養した。その後MTT試薬を入れ、4時間後に酸性イソプロパノールを添加し、ホルマザンの結晶を溶かしてマイクロプレートリーダーを用いて570nmの試験波長で吸光度を測定した。細胞生存率はコントロール群の値を100 % とし、コントロールに対する割合で求めた。なお、各サンプルは再現性を2回ずつ求めた。なお、ポジティブコントロールとして抗腫瘍剤であるエトポシドならびにアドリアマイシンを用いた。
細胞増殖抑制活性は、50%増殖阻止濃度(IC50)単位[μM]で示した。
【0042】
〔使用した機器〕
・MICROPLATE READER(Bio RAD社: Model 550)
・High Performance UV Transilluminator
MTT法文献 Mosmann, T. J. Immunol. Methods, 1983, 65, 55-63.
【0043】
【表1】

【0044】
化合物1〜化合物13に示される化合物は、浮遊細胞であるヒト前骨髄性白血病細胞HL-60、接着細胞であるヒト結腸腺癌細胞HCT-15およびヒトグリア芽細胞腫T98Gに対して、濃度依存的に細胞増殖抑制活性を示していた。
参考として、ポジティブコントロールとしたエトポシドのHL-60細胞に対するIC50は0.8μM、アドリアマイシンのT98G細胞に対するIC50は17.6μMであった。
【0045】
<試験化合物>
下記に細胞増殖測定に使用した試験化合物である化合物1〜化合物13を、その物理化学的性質と共に示す。

【0046】
[化合物1]
【化7】

【0047】
○化合物1の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.25(3H,t),1.30-1.38(4H,m),1.40-1.50(2H,m),1.58-1.68(2H,m), 2.16-2.24 (2H,m),2.29(2H,t),2.79-2.90(4H,m),3.87(3H,s),4.12(2H,q),5.52(1H,s),6.08(1H,d),6.65-6.73(2H,m),6.75-6.85(2H,m)。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3440、2940、1730、1670、1630、1520、1370、1270、1200、1030、980。元素分析の結果は、炭素69.59%、水素8.34%である。
【0048】
[化合物2]
【化8】

【0049】
○化合物2の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.30-1.58(10H,m),2.17(2H,dd),2.81-2.86(4H,m),3.63(2H,t), 3.86(3H,s), 5.73(1H,s),6.08(1H,dt),6.67-6.71(2H,m),6.78-6.83(2H,m)。元素分析の結果は、炭素71.22%、水素8.81%である。
【0050】
[化合物3]
【化9】

【0051】
○化合物3の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.20-1.51(14H,m),2.29(2H,t),2.62(2H,t),2.75(2H,t),3.59(2H,t), 3.81(3H, s),5.47(1H,s),6.64-6.67(2H,m),6.80(1H,d)。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3415、2920、1705、1611、1520、1463、1455、1365、1278、1236、1151、1122、1064、1028。元素分析の結果は、炭素70.77%、水素9.38%である。

【0052】
[化合物4]
【化10】

【0053】
○化合物4の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.83(12H,m),2.02(2H,m),2.56-2.69(2H,m),3.61(2H,t),3.84(3H,s), 4.04(1H,dd),5.45-5.49(1H,m),5.58-5.66(1H,m),6.65-6.67(2H,m),6.79(1H,d)。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3349、2930、1666、1602、1516、1464、1453、1431、1368、1273、1236、1154、1036。元素分析の結果は、炭素70.77%、水素9.38%である。
【0054】
[化合物5]および[化合物6]
【化11】

【0055】
○化合物5及び化合物6の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.26-1.72(18H,m),2.54-2.61(1H,m),2.66-2.70(1H,m),3.54-3.73(3H,m),3.85 (3H,s),6.66-6.68(2H,m),6.80(1H,d)。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3426、2930、1607、1515、1481、1468、1437、1365、1268、1239、1155、1124、1039。元素分析の結果は、炭素70.33%、水素9.94%である。
なお、当該化合物は各々光学活性体を高速液体クロマグラフィーにより分離し、旋光度測定から、化合物5は(―)体であり、化合物6は(+)体である。
【0056】
[化合物7]
【化12】

【0057】
○化合物7の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.23-1.50(6H,m),1.57-1.69(2H,m),2.19(2H,q),2.34(2H,t), 2.79-2.90(4H,m), 3.87(3H,s),6.08(1H,d),6.64-6.85(4H,m)。また、赤外線吸収スペクトル(KBrヘ゜レット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3530,2930,2850,1700,1660,1640,1520,1280, 1230,1030。元素分析の結果は、炭素68.48%、水素8.11%である。
【0058】
[化合物8]
【化13】

【0059】
○化合物8の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.88-0.91(3H,m)、1.25-1.39(8H,m)、2.66(2H,t)、3.95(3H,s)、5.59(1H,s)、6.02(1H,d)、6.39(1H,d)、6.80(1H,d)、7.13-7.16(2H,m)。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3532、2931、1505、1254、1212。元素分析の結果は、炭素74.42%、水素8.08%である。

【0060】
[化合物9]
【化14】

【0061】
○化合物9の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.29(3H,m), 2.70(2H,dd), 3.94(3H,s), 5.62(1H,s), 6.03(1H,d), 6.40(1H,d), 6.91(1H,d), 7.13-7.16(2H,m)。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3510, 2974, 2362, 1506, 1254, 1209。元素分析の結果は、炭素71.54%、水素6.47%である。
【0062】
[化合物10]
【化15】

【0063】
○化合物10の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.88-0.91(3H,m)、1.25-1.39(8H,m)、2.66(2H,t)、5.24-5.25(2H,m)、6.01(1H,d)、6.38(1H,d)、6.85(1H,d)、7.09-7.16(2H,m)。元素分析の結果は、炭素73.75%、水素7.70%である。
【0064】
[化合物11]
【化16】

【0065】
○化合物11の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.28(3H,m)、2.66(2H,t)、5.26-5.28(2H,m)、6.01(1H,d)、6.38(1H,d)、6.85(1H,d)、7.09-7.16(2H,m)。元素分析の結果は、炭素70.60%、水素6.00%である。
【0066】
[化合物12]
【化17】

【0067】
○化合物12の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.89(3H,t)、1.20-1.83(8H,m)、2.34-2.89(6H,m)、3.28(3H,s)、3.57-3.70 (1H,m)、3.86(3H,s)、5.49(1H,s)、6.63-6.73(2H,m)、6.81(1H,d)。また、本品の赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3400,2930,2860,1710, 1600,1510,1460,1450,1430,1370,1270,1230,1090,1030。元素分析の結果は、炭素69.80%、水素8.98%であった。
【0068】
[化合物13]
【化18】

【0069】
○化合物13の物理化学的性状:
重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.89(3H,t)、1.20-1.87(12H,m)、2.52-2.81(2H,m)、3.30-3.55(4H,m)、3.72-4.00 (4H,m)、5.55(1H,s)、6.65-6.75(2H,m)、6.81(1H,d)。また、本品の赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3390,2930,2860,1600, 1510,1460,1450,1430,1370,1270,1230,1080,1030。元素分析の結果は、炭素69.74%、水素9.47%である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の一般式(1)〜(4)のいずれかで示される化合物は、腫瘍細胞増殖抑制効果を有しており、抗腫瘍剤として医薬品の分野に利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)〜(4)のいずれかで示される化合物を含有することを特徴とする抗腫瘍剤。
【化1】


【化2】


【化3】

【化4】




【公開番号】特開2007−261965(P2007−261965A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86772(P2006−86772)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】