説明

抗菌剤

【課題】耐光性・耐水性に優れ、経時による変色傾向がないか又は少なく、樹脂成形製品や塗料製品等への配合に適した抗菌剤を提供すること。
【解決手段】本発明の抗菌剤は、イオン交換により抗菌性を有する銀錯陽イオンを導入したマガディアイトまたはケニヤアイトを含む抗菌性層状珪酸からなる。錯陽イオンが銀ベンゾトリアゾール錯陽イオン、銀イミダゾール錯陽イオンまたは銀チオ尿素錯陽イオンの少なくとも1つであることが好ましい。抗菌剤は、化粧料組成物、樹脂組成物、塗料等に好適には含有される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌成分の徐放が可能な抗菌剤に関するものである。詳しくは、マガディアイト及び/またはケニヤアイトのアルカリ金属イオンの一部または全部を、銀と電荷を持たない錯化剤との錯陽イオンでイオン交換したマガディアイト及び/またはケニヤアイトのいずれかを含有する抗菌剤に関するものである。より詳細には、抗菌成分として好適にはベンゾトリアゾール銀錯陽イオン、イミダゾール銀錯陽イオンまたは銀チオ尿素錯陽イオンを含有し、耐水性・耐熱性に優れ、長期に渡り抗菌効果を持続できる抗菌剤に関する。また本発明は、化粧料、樹脂成形製品や塗料製品等への配合に適した抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
銀、銅、亜鉛等の金属のイオンは抗菌性を有することが古くから知られている。これらの抗菌性金属成分を無機物粒子に担持させたもの、特にゼオライトやリン酸ジルコニウム等にイオン交換で導入したものが抗菌剤として従来使用されている。また、層状珪酸塩や粘土鉱物にイオン交換で導入することも提案されている。
【0003】
種々の抗菌性金属成分のなかでも、銀成分は抗菌作用や人体に対する安全性に優れたものである。しかし公知の銀含有無機系抗菌剤は、変色傾向を有する点で未だ改善すべき余地がある。
【0004】
即ち、銀を導入したゼオライトや層状珪酸塩は経時により、或いは光や水の作用により、次第に粉末が変色して褐色になる傾向があり、この改善が求められている。銀を導入したリン酸ジルコニウムは変色傾向の少ない粉末であるが、これを配合して成形したプラスチックは微量溶出する銀成分によって変質し、成形物自体が変色する傾向がある。
【0005】
ところで、ホストである層状結晶の層間に、原子、分子、イオンなどのゲストを挿入することは、従来インターカレーションの技術として良く知られている。ホストとゲストの種類の組み合わせが多様なことから、層間化合物には極めて多種類の物質が知られている。珪酸塩もその一つであり、モンモリロナイトやカオリナイトのような多元素で形成される層状粘土鉱物、マガディアイトやケニヤアイトのようなSiO2のユニットだけで形成される層状珪酸または層状珪酸塩などが知られている。
【0006】
前記の層状化合物は、ゲスト種のインターカレーションによって物性の変化や制御が期待でき、新しい機能発現の可能性を有しており、注目を集めている。特に、マガディアイトやケニヤアイトのような層状珪酸または層状珪酸塩は、その構造がSiO2のユニットだけで構成されており、また層表面にシラノール基(≡Si−O−H)が存在する。これらの点において層状珪酸または層状珪酸塩は層状粘土鉱物とは異なり、本発明者らは以前から注目してきた。
【0007】
銀、銅、亜鉛などの抗菌性を有する金属でイオン交換されたマガディアイトやケニヤアイトが提案されている(特許文献1参照)。また、銀、銅、亜鉛イオンでイオン交換された粘土鉱物などの層状珪酸塩が提案されている(特許文献2参照)。フッ素置換層状珪酸塩に銀化合物とピロリン酸を担持させた抗菌性層状珪酸塩が提案されている(特許文献3参照)。更に、粘土鉱物などの層状珪酸塩に含有されるイオン交換可能な金属の少なくとも一部を、銀、銅、亜鉛の中から選ばれる1種の金属のイオンと有機錯化剤との配位化合物で置換してなる抗菌性珪酸塩も提案されている(特許文献4参照)。
【0008】
一方、ベンゾトリアゾール類は樹脂の紫外線等による光劣化に起因する変色、着色の防止剤であり、銀イオンによる樹脂の変色、着色の防止にも効果があり、銀系抗菌剤とベンゾトリアゾール類を組み合わせた組成物出願は数多くある(例えば、特許文献5、6、7参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平3−120221号公報
【特許文献2】特開平2−19308号公報
【特許文献3】特開平11−171704号公報
【特許文献4】特開平3−193707号公報
【特許文献5】特開平7−207061号公報
【特許文献6】特開平6−14979号公報
【特許文献7】特開平11−209533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載の銀イオンでイオン交換されたマガディアイトやケニヤアイトは、銀の変色対策がなく、光や水の作用により、次第に粉末が変色して褐色になる傾向があり、限られた用途にしか使用できない。特許文献2に記載の銀イオンでイオン交換された粘土鉱物などの層状珪酸塩も同様の変色傾向があり、やはり限られた用途にしか使用できない。特許文献3に記載の、フッ素置換層状珪酸塩に銀化合物とピロリン酸を担持させた抗菌性層状珪酸塩は、層状珪酸塩に対して20重量%以上もの酸性ピロリン酸と微量の銀を担持させており、変色傾向は低いようだが、酸性ピロリン酸の存在については無視できない問題である。また、フッ素置換層状珪酸塩は、特許文献3の実施例に記載されているように合成フッ素雲母に該当し、粘土鉱物に分類される。また、合成原料に天然タルクが用いられるため、成分に鉄などの不純物が多いという問題がある。更に、酸に弱く、それによって構造がこわれてフッ素が発生するという問題がある。
【0011】
特許文献4に記載の、粘土鉱物などの層状珪酸塩に、銀イオンと有機錯化剤との配位化合物でイオン交換してなる抗菌性珪酸塩は、同文献の発明の詳細な説明の記載や実施例の記載から判断して粘土鉱物に該当すると考えられる。そして当該粘土鉱物は、それが天然品であるか合成品であるかを問わず粒子が微細であり、かつ膨潤性が強いので、その水分散液は1重量%程度の低濃度でもペースト状になってしまい加工時の取り扱いが難しくなるという問題がある。また、粒子が微細なため乾燥粉末は、樹脂や各種液中への分散が悪く、樹脂フィルムでは「ツブ」が目視で観察されたり、液中への分散では「ママコ」ができ均一分散に長時間が必要となり、塗膜ではやはり「ツブ」が目視で観察されたりする欠点がある。
【0012】
特許文献5、6、7に記載の銀イオンによる樹脂の変色、着色の防止を目的とした組成物は、抗菌剤粉末の変色防止ではなく、主たる成分の樹脂の変色防止であり、本発明とは主旨が異なる。たとえ、樹脂に変色防止剤を添加することで、抗菌剤粉末の変色防止にも効果があるとしても、抗菌剤粉末だけを変色防止処理する方がずっと少ない量の変色防止剤の使用となることは明らかである。
【0013】
従って本発明は、前記したような、銀系ゼオライト抗菌剤の変色問題や、銀イオンによる樹脂の変色問題などの解決を目指し、経時による変色傾向がないか又は少なく、樹脂成形製品や塗料製品等への配合に適した抗菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、マガディアイト及び/またはケニヤアイトのアルカリ金属イオンの少なくとも一部が、銀と電荷を持たない錯化剤との錯陽イオンであるマガディアイト及び/またはケニヤアイトを含有する抗菌剤を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、前記抗菌剤において、抗菌成分としてベンゾトリアゾール銀錯陽イオン、イミダゾール銀錯陽イオンまたは銀チオ尿素錯陽イオンをイオン交換したマガディアイト及び/またはケニヤアイトを含有する抗菌剤を提供するものである。
【0015】
更に本発明は、前記の抗菌剤を含有する化粧料組成物、樹脂組成物、塗料または植物用抗菌剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐光性・耐水性に優れ、経時による変色傾向がないか又は少なく、樹脂成形製品や塗料製品等への配合に適した抗菌剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
(1)〔マガディアイト及びケニヤアイト〕
層状珪酸塩には、カネマイト(NaHSi23・3H2O)、KHSi25、マカタイト(Na2Si49・xH2O)、マガディアイト、ケニヤアイトなどがある。これらのうち本発明においては、製造工程や製品形状の点から、マガディアイト(Magadiite:Na2Si1429・xH2O)及びケニヤアイト(Kenyaite:Na2Si2241・xH2O)を用いている。マガディアイト及びケニヤアイトには天然物もあるが、不純物が少ない等の点で合成品が良い。合成方法に関しては、J. Ceramic Society of Japan,Vol.100,No.3,326−331(1991)に詳細な記載がある。
【0018】
例えば、SiO2:NaOH:H2O=1:0.23:18.5(モル比)の懸濁液をオートクレーブ中150℃で48時間処理するとマガディアイトが得られる。また、SiO2:NaOH:H2O=1:0.23:18.5(モル比)の懸濁液をオートクレーブ中170℃で48時間処理するとケニヤアイトが得られる。NaOHとK2CO3を用いるとケニヤアイトを合成し易い。
【0019】
前記の方法の他にも合成方法はいくつもあり、合成方法についてはなんら限定はない。合成法によってはナトリウムの代わりにカリウムを使用する。その場合には、合成物の化学式は前記の化学式のNaがKに置き換わったものになる。前記の合成方法で得られるマガディアイトやケニヤアイトは、鱗片状の結晶が花弁状、キャベツ状またはアコーディオン状に集合した球状の形態を有する。ここで言う鱗片状とは、狭義の鱗片状のみならず、板状の形態のものを広く包含する。マガディアイトのSEM像の一例を図1に示す。一枚の板(花弁)の厚さは0.05μm程度であり、面の一辺の大きさが1〜3μmのほぼ方形である。このような板が集合して数ミクロンの凝集粒子になっている。この凝集体は、例えばJ. Ceramic Society of Japan, Vol.100,No.6,872−875(1992)に記載されているような化学処理でバラバラにすることができる。また粉砕でも板状にすることができる。
【0020】
前記と別の合成方法として、例えば特開2003−531801号公報に記載の合成方法を用いることもできる。この場合には、凝集していない板状の結晶形状のものが得られる。この公報に記載の合成方法では、コロイダルシリカ懸濁液を加熱する工程において、水酸化ナトリウム/シリカのモル比を0.4〜0.5の範囲とし、且つ水/シリカのモル比を5〜39の範囲としている。加熱温度は140〜170℃である。この方法で合成されたマガディアイトのSEM像の一例を図2に示す。このマガディアイトは、図1に示すものと同様に、その結晶が鱗片状(板状)の形態をしている。しかし、図1に示すものと異なり、鱗片状(板状)の結晶は凝集体を形成しておらず、バラバラな状態になっている。
【0021】
X線回折パターンは、マガディアイトがJCPDS#42−1350に、ケニヤアイトがJCPDS#20−1157にそれぞれ登録がある。
【0022】
本発明においては、マガディアイトまたはケニヤアイトの何れかを用いて抗菌剤を構成することもでき、或いはこれら両者を用いて抗菌剤を構成することもできる。
【0023】
マガディアイトの構造モデルを図3(a)及び(b)に示した。図3(a)は、マガディアイトの構造モデルをc軸方向から見た図であり、図3(b)は横方向から見た図である。図3(a)及び(b)に示すように、マガディアイトにおいては、上向き及び下向きにそれぞれ2個、合計4個のSiO2四面体の基本ユニットから構成される珪酸の単位シートが3枚重なってひとつのシリケート層を構成し、シリケート層とシリケート層の間に水和したナトリウムイオンが存在する。ケニヤアイトでは、単位シートが4枚重なってひとつのシリケート層を構成し、シリケート層とシリケート層の間に水和したナトリウムイオンが存在する。つまりマガディアイト及びケニヤアイトは、その層状構造がSiO2のユニットのみから構成されている層状珪酸又は層状珪酸塩であり、アルミニウム等の金属元素を含有する合成フッ素雲母等の粘土鉱物の範疇には属しないものである。
【0024】
合成されたままのマガディアイトやケニヤアイトでは、イオン交換可能なイオンは図3におけるナトリウムイオンである。合成時にカリウムが使用されたときには図3におけるナトリウムイオンがカリウムイオンに置き換わる。イオン交換容量は、マガディアイトで1.9mmol/g、ケニヤアイトで1.3mmol/gである。粘土鉱物のモンモリロナイトやシリカアルミナゼオライトのような複数金属酸化物によって構成され、構造中の4価/3価、あるいは3価/2価元素置換によって発生する静電場により対イオンを有する化合物とは異なり、マガディアイトやケニヤアイトでは珪酸層がSiO2の単一構造であるためイオン交換可能なイオンの捕捉力は弱く、他種イオンと交換しやすい。同様に、珪酸層と珪酸層の結合も弱く、交換イオン種の大きさに応じて層間の距離を容易に変える性質がある。
【0025】
またマガディアイトやケニヤアイトは、シリカXの名称の層状珪酸とも区別される。シリカXは酸化珪素だけで構成され、イオン交換能を持たない。X線回折パターンは、シリカXがJCPDS#16−380に、シリカX2がJCPDS#31−1234に登録がある。
【0026】
(2)〔銀錯陽イオン〕
銀錯陽イオンは、無電荷の錯化剤と1価または2価の銀イオンからなる錯体で、銀イオン由来の1価または2価の陽電荷を有する。錯化剤としては分子中に窒素を有する有機化合物が知られている。例えば、ピリジン、ビピリジン、フェナントロリン、エチレンジアミン、ジチゾン(黒色化)、ジフェニルカルバジド(紅色)、イミダゾール、ベンゾトリアゾールなどとも銀錯陽イオンを形成する。これらのうちイミダゾールやベンゾトリアゾール以外は取り扱いが難しい。イミダゾールとベンゾトリアゾールが好ましい。また、メチルイミダゾールやジメチルイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾールなどのイミダゾール誘導体も好ましい。メルカプトベンゾトリアゾール、5−メチル−1−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール誘導体も好ましい。そのほかに、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、アミノトリアゾール等のトリアゾール類、ピリチオン、ピコリン酸などのピリジン類、グアニル尿素、グアニルチオ尿素などの尿素類、グリシン、グアニジン、キノリン、トリシン、オキシンやイミン類、トリアジン誘導体、イミダゾリンジオン誘導体なども好ましい。更に、アンモニアも好ましい。
【0027】
銀ベンゾトリアゾール錯陽イオンは、一般には化学式[Ag(C6532+ と記載され、ビス(ベンゾトリアゾール)銀イオンである。アルコールに溶解したベンゾトリアゾールと硝酸銀の反応生成物は硝酸塩の結晶として[Ag(C6532+NO3-塩の形で得られる。ただし、ビス錯イオンが形成されるのは、ベンゾトリアゾール過剰の条件下であって、過剰でない場合はC653/Ag比は1以上2未満となる。水には微溶性だが、硝酸で弱酸性の水では溶解性が高くなる。アルコールには溶解する。
【0028】
銀イミダゾール錯陽イオンは、一般には化学式[Ag(C3422+と記載され、ビス(イミダゾール)銀イオンである。硝酸銀とイミダゾールの反応生成物は硝酸塩の結晶として[Ag(C3422+NO3-塩の形で得られる。ただし、ビス錯イオンが形成されるのは、イミダゾール過剰の条件下であって、過剰でない場合はC342/Ag比は1以上2未満となる。水溶性である。
【0029】
また、銀アンモニア錯陽イオンは化学式[Ag(NH32+であって、ジ(アンミン)銀イオンである。硝酸銀とアンモニアの反応生成物は硝酸塩の結晶として[Ag(NH32+NO3-塩の形で得られる。この場合も同様に、ジアンミン錯イオンが形成されるのは、アンモニア大過剰の条件下である。ジアンミン以外の錯イオンは知られていない。水溶性である。
【0030】
銀は上記のほかにも、分子中に硫黄を有する有機化合物が錯化剤として知られている。たとえば、チオアセトアミド、チオグリセロール、チオジグリコール、チオ尿素、メルカプトエタノール、チアベンダゾールなどが挙げられる。これらの中でもチオ尿素が入手しやすく安価であるので、もっとも好ましい。
【0031】
銀チオ尿素錯陽イオンは化学式[Ag(CH42S)2+であって、ビス(チオ尿素)銀イオンである。硝酸銀とチオ尿素の反応生成物は硝酸塩の結晶として[Ag(CH42S)2+NO3-塩の形で得られる。水溶性である。
【0032】
(3)〔亜鉛イオン、銅イオン、銀イオン〕
本発明では、亜鉛イオン、銅イオン、錯体でない銀イオンなどの抗菌性金属イオンを必要に応じ使用する。これは、(イ)抗菌スペクトルを広げる、(ロ)抗菌性の持続期間を長くする、(ハ)耐候性を改善する、(ニ)耐薬品性を改善するなどの効果がある。銀錯陽イオンと亜鉛イオン、銅イオン、銀イオンのどれを組み合わせるかは目的に応じて任意に選定でき、複数を組み合わせることもできる。特に亜鉛イオンとの組み合わせでは完全白色化ができ好ましい。イオン交換は、銀錯陽イオンと金属イオンの混合溶液を用いてもよく、或いは1種類の溶液毎に順次用いても良い。また、交換容量の全てを銀錯陽イオン及び抗菌性金属イオンで満たす必要はなく、ナトリウムイオンやプロトンを残存させることもできる。目的によっては、ナトリウムイオンやプロトンでなく、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2価金属イオン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルなどの各種金属のイオンとイオン交換しておくことも好ましい。
【0033】
亜鉛イオンは変色傾向がないため、銀錯陽イオン以外の交換イオンの全てと置換することができるが、置換量を任意に設定することが好ましい。重量で示せば、マガディアイトではZnとして0.2〜6重量%であり、ケニヤアイトではZnとして0.2〜4重量%である。
【0034】
銅イオンは元々着色イオンであるので、色調を配慮して任意に置換量を設定すれば良い。重量で示せば、マガディアイトではCuとして0.2〜6重量%であり、ケニヤアイトではCuとして0.2〜4重量%である。
【0035】
錯体でない銀イオンは着色傾向が発現しない程度に少量で使用することが好ましい。重量で示せば、マガディアイトではAgとして0.1〜1重量%であり、ケニヤアイトではAgとして0.1〜1重量%である。銀イオンは亜鉛イオンと組み合わせで使用することが好ましい。
【0036】
前記の各種抗菌性金属イオンは水可溶性塩として用いることが好適であり、当該塩は一般工業薬品や錯体化合物から選ぶことができる。その例としては、亜鉛イオンの場合、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等;銅イオンの場合、硝酸銅、過塩素酸銅、酢酸銅、硫酸銅等;銀イオンの場合、硝酸銀、硫酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、ジアンミン銀硝酸塩、アンミン銀硫酸塩、銀チオ硫酸塩等を挙げることができる。
【0037】
(4)〔イオン交換方法〕
前記の合成方法によって得られたマガディアイトやケニヤアイトの水懸濁液を、ろ過、水洗して、余剰のナトリウムを除去し、再び脱イオン水に分散させ、濃度5〜35重量%の水懸濁液とし、均一に分散するまで充分攪拌を行う。水懸濁液はナトリウムイオンに起因してpH10程度のアルカリ性を示す。従って、金属水酸化物の生成を防ぐために、イオン交換に先立って水懸濁液に予め酸を加えて中和を行いpHを7〜4にしておくことが好ましい。中和にはハロゲンを含まない酸である硝酸や硫酸、酢酸などが好ましい。
【0038】
また、銀錯陽イオンとのイオン交換に先立って、交換当量の半量をベンザルコニウムイオン([RN(CH32CH265]Cl、RはC8〜C18)のような長鎖4級アンモニウムイオンでイオン交換して置換しておくのも好ましい。大きなイオンで層間の距離を広げると、マガディアイトやケニヤアイトは鱗片状の結晶の凝集体がほぐれて、図2に似たような、バラバラな状態になっており、次いで銀錯陽イオンを導入し、鱗片状結晶の抗菌剤を得ることができる。このような鱗片状の結晶は、化粧料組成物、樹脂組成物、塗料などの各種用途に適用した場合に、抗菌性以外の粉体特性を発現することができ好ましい。
【0039】
長鎖4級アンモニウムイオンでイオン交換して置換して層間の距離を広げると、銀錯陽イオンが層間を移動しやすくなり、イオン交換率が高くなり、一方銀錯陽イオンの放出も容易になって抗菌性を高めることができる。
【0040】
このようなアンモニウムイオンとしては、ベンザルコニウムイオンの他にベンゼトニウムイオン、8−キノリノールイオンなどの抗菌性アンモニウムイオンが好ましいが、ドデシルトリメチルアンモニウムイオンのように抗菌性のないアンモニウムイオンでもよい。
【0041】
抗菌性を有する第四級アンモニウムイオンまたは三級アミンイオンとしては、脂肪族第四級アンモニウム塩はカチオン界面活性剤として多量に使用されている。脂肪族第四級アンモニウム塩には、長鎖アルキル基がモノとジのものがある。一般にアルキル鎖長の短いほうが殺菌力が強い。ジアルキルジメチルアンモニウム塩では長鎖アルキル基がデシルのものが殺菌剤で市販されている。ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドは長鎖アルキル基が炭素数16と18の混合物で殺菌消毒剤である。炭素数12から24の混合物は一般名が塩化ベンザルコニウムで、殺菌消毒剤として日本薬局方に収載されている。塩化ベンゼトニウムは脂肪族第四級アンモニウム塩であり、細菌、カビ類に広く抗菌性をもっており、水溶液は殺菌消毒剤として日本薬局方に収載されている。テトラメチルアンモニウム塩も強い殺菌剤であることが広く知られており、水を含む製品の防腐剤として使用されている。塩化セチルピリジニウム等のピリジニウム類は第四級アンモニウム塩であり、殺菌剤として使用されている。8−キノリノール等のキノリノール類は三級アミンであり殺菌性を有する。チアゾリルベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール類も三級アミンであり殺菌性を有する。市販品としては牛脂ジアミンジオレイン酸塩、ヤシジアミンジアジピン酸塩、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどもある。抗菌性を有する第四級アンモニウムイオン及び三級アミンイオンは、これらのうちの何れか1種を用いることもでき、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0042】
イオン交換条件に特に制限はないが、一般に温度は10〜90℃である。カラム式よりはバッチ式が好ましく、バッチ式の場合、一回ないし複数回で行うことができる。この時の塩濃度は一般に0.01〜1モル/Lの範囲が適当である。
【0043】
イオン交換によって、銀錯陽イオンがマガディアイトやケニヤアイトに導入される。また、必要に応じ、抗菌性金属イオンである亜鉛イオン、銅イオン、銀イオン等もイオン交換によって導入される。即ち、イオン交換後のマガディアイト及び/またはケニヤアイトにおいては、銀錯陽イオン以外のイオン交換可能なイオンが、ナトリウムイオン、プロトン、亜鉛イオン、銅イオンまたは銀イオンであることが好ましい。或いは、イオン交換後のマガディアイト及び/またはケニヤアイトにおいては、イオン交換可能なナトリウムイオンの全てが銀錯陽イオンで交換されており、実質的に銀錯陽イオンと珪酸のみからなることも好ましい。
【0044】
イオン交換の終了したマガディアイトやケニヤアイトは、必要によりろ過、水洗した後、室温ないし120℃の温度で乾燥して粉末とする。250℃以上の加熱は構造破壊が起こるため好ましくない。
【0045】
銀錯陽イオンを導入したマガディアイトやケニヤアイトと、抗菌性金属イオンを導入したマガディアイトやケニヤアイトを別々に調製し、両者を混合することもできる。この場合には、混合割合に応じて抗菌性金属イオンの存在率を任意に調節できるという利点がある。また、抗菌性のないマガディアイトやケニヤアイトを更に混合することもできる。
【0046】
マガディアイトやケニヤアイトに導入した銀錯陽イオンは、その錯化剤の融点、昇華温度、分解温度が高くなる。この耐熱性は、インターカレーションによって合成した有機無機複合体ではしばしば観察される現象であり、本発明でも有利な特性である。この耐熱性により本発明の抗菌剤は、樹脂への高温練り込み工程、塗料の焼き付け工程などでの耐久性が高まり、より広い用途での使用が可能となる。
【0047】
本発明の抗菌剤は、銀錯陽イオン等を粒子表面へ展着させる従来の方法と異なり、銀錯陽イオンが層状珪酸中に弱い結合力ではあるが確実に担持されている。これに起因して本発明の抗菌剤は抗菌成分の徐放機能を有し、抗菌作用が長期にわたって安定に持続される。また、展着法による抗菌剤と異なり、本発明の抗菌剤は、粒子表面の抗菌成分に起因する粒子同士の二次凝集がないため、粉体としての取り扱いが容易で、樹脂等への分散性にも優れている。
【0048】
更に、本発明において抗菌性金属成分として銀成分を導入できることは先に述べた通りであるが、銀成分は銀錯陽イオン成分の不足分として導入されるので、銀成分の導入量を、許容される変色に合わせて少量化できる。その結果、本発明の抗菌剤は、銀成分を含有するにもかかわらず、耐変色性に優れたものとなる。
【0049】
本発明の抗菌剤の粒子は、粒子径が1〜500μm、特に1〜50μmであることが、該抗菌剤を、化粧料組成物、樹脂組成物及び樹脂成形品、塗料、植物用殺菌剤などの各種用途に適用した場合に、その分散が均質となる点から好ましい。粒子径は粒子のSEM観察によって測定される。
【0050】
本発明の抗菌剤は、水分が5重量%以下、特に3重量%以下に調整されていることも好ましい。合成されたままのマガディアイトやケニヤアイトでは、イオン交換可能なイオンは図3に示すナトリウムイオンやカリウムイオンであり、これらのイオンは水和イオンとして存在する。その結果、合成されたままのマガディアイトやケニヤアイトは10重量%程度の構造水を有する。一方、銀錯陽イオンは水和しないため、合成されたままのマガディアイトやケニヤアイトをこれらのイオンでイオン交換すると、構造水のない結晶からなる抗菌剤が得られる。当該抗菌剤を樹脂に練り込んだり塗料に配合すると、樹脂製品の高温成形時の脱水による発泡や、塗料における塗膜のフクレ現象を防止することができるという利点がある。従って、水分の量の下限値に特に制限はなく、低ければ低いほど好ましい。尤も、水分の量が0.1重量%程度に低ければ、上述の利点が充分に顕著なものとなる。マガディアイトやケニヤアイトにおける水分の量は、加熱減量から測定される。測定条件は、TG/DTAを用いて170℃までの重量減とする。
【0051】
更に、銀錯陽イオンと長鎖第四級アンモニウムイオンの両方によって高比率でイオン交換された抗菌剤は、抗菌成分の徐放性能が一層高くなり、且つ撥水性を有する。このような特性は、当該抗菌剤を化粧料や植物用殺菌剤に用いた場合に、汗や雨水による流失が防止されるので、抗菌効果の持続に有利である。
【0052】
以上のように、本発明の抗菌剤は、化粧料組成物、樹脂組成物及び該組成物から成形される樹脂成形品、塗料ならびに植物用殺菌剤などに好適に使用できる。
【0053】
本発明の抗菌剤は、種々の形態で抗菌性を必要とする用途に使用できる。この抗菌剤は、その効果性能を損なわない範囲で、公知の改質剤、例えば分散剤、界面活性剤、カップリング剤、変色防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等で表面処理を行うことができる。
【0054】
マガディアイトやケニヤアイトの粒子表面の水酸基は活性が高く、ヘキサメチルジシラザンのようなシリル化剤と水中でも容易に反応するので、当該シリル化剤を用いることでマガディアイトやケニヤアイトの粒子を疎水化粒子とすることができる。乾燥した粒子では、粒子表面の水酸基がカルボン酸やアルコール類のOH基と脱水反応しエステル化が起こる。即ち粒子の表面をエステル化処理することができる。この表面処理のためには、予めナトリウムをプロトンにイオン交換しておくほうが好ましい。長鎖アルキル脂肪酸と反応させて表面処理した粒子も有用である。
【0055】
分散剤としては、特に制限されないが、例えば、以下のワックス類や低融点樹脂類が使用される。
(1)脂肪酸及びその金属塩類:
合成または天然脂肪酸及びそれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、アルミニウム塩など。例えばステアリン酸、オレイン酸等及びそれらのナトリウム塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
(2)アマイド、アミン類:
例えば、エルカ酸アミド、オレイルパルミトアマイド、ステアリルエルカミド、2−ステアロミドエチルステアレート、エチレンビス脂肪酸アマイド、N,N’−オレオイルステアリルエチレンジアミン、N,N’−ビス(2ヒドロキシエチル)アルキル(C12〜C18)アマイド、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)ラウロアマイド、脂肪酸ジエタノールアミン等が挙げられる。
(3)脂肪酸エステル・アルコールエステル類:
例えば、ステアリン酸n−ブチル、水添ロジンメチルエステル、セバチン酸ジブチル(n−ブチル)、セバチン酸ジオクチル(2−エチルヘキシル、n−オクチル共)、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、ジエチレングリコール脂肪酸ジエステル、プロピレングリコール脂肪酸ジエステル等が挙げられる。
(4)ワックス類:
例えば、スパームアセチワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、蜜蝋、木蝋、ラノリン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エポキシ変性ポリエチレンワックス、石油系ワックス等が挙げられる。
(5)低融点樹脂類:
融点或いは軟化点が40〜200℃、特に70〜160℃である各種樹脂、例えば、エポキシ樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン系樹脂、クロマン−インデン樹脂、その他の石油樹脂、アルキッド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、低融点アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、低融点コポリアミド、低融点コポリエステル等を挙げることができる。
【0056】
一方、界面活性剤としては、(イ)第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、ピリジン誘導体等のカチオン系のもの、(ロ)硫酸化油、石ケン、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン系のもの、(ハ)多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等の非イオン系のもの、(ニ)カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系のものが一般に使用可能である。
【0057】
カップリング剤としては、例えば次のものが使用可能である。
(1)シラン系カップリング剤:
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、などのアミノ系シラン。γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などのメタクリロキシ系シラン。
ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、などのビニル系シラン。
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、などのエポキシ系シラン。γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、などのメルカプト系シラン。γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、などのクロロプロピル系シラン。
(2)チタネート系カップリング剤:
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ポリジイソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ポリジノルマルブチルチタネート。
【0058】
無機変色防止剤としては、例えばハイドロタルサイト類、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、含アルミニウムフィロケイ酸塩、アルカリ・アルミニウム複合水酸化物炭酸塩等が挙げられる。
【0059】
本発明の抗菌剤は、他の無機系抗菌剤と併用できる。例えば、抗菌性金属イオンがイオン交換又は担持されたゼオライト、アパタイト、リン酸ジルコニウム、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ガラス等が挙げられる。
【0060】
本発明の抗菌剤は、他の有機系抗菌剤、殺菌剤、防腐剤と併用できる。例えば、ヒノキチオール等のトロポロン類;キトサン類;パラオキシ安息香酸エステル類;安息香酸、デヒドロ酢酸等の有機酸;これら有機酸の塩類;第四級ホスホニウム塩類等を挙げることができる。
【0061】
具体的には、ヒノキチオール、キトサン、安息香酸、安息香酸塩類、イソプロピルメチルフェノール、ウンデシレン酸モノエタノールアミド、塩化セチルピリジニウム、塩化アルキルアミノエチルグリシン、塩化クロルヘキシジン、クレゾール、クロラミン、クロロキシレノール、クロロクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、臭化ドミフェン、ソルビン酸及び塩類、チモール、チラム、デヒドロ酢酸及び塩類、トリクロロカルバニリド、p−オキシ安息香酸エステル、p−クロルフェノール、ハロカルバン、フェノール、ヘキサクロロフェン、ラウロイルサルコシンナトリウム、レゾルシン、ポビドンヨード(ポリビニルピロリドン・ヨウ素錯体)及びそのシクロデキストリン包摂体、ヨウ素・アルキルポリエーテルアルコール錯体、ポリエトキシポリプロポキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加植物油・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪酸・ヨウ素錯体、ポリオキシエチレン付加脂肪アルコール・ヨウ素錯体、脂肪酸アミド・ヨウ素錯体等を挙げることができる。
【0062】
本発明の抗菌剤は、種々の樹脂(重合体)への分散性に優れており、しかも変色傾向も少ないので、各種樹脂(重合体)に配合して、抗菌性を有する樹脂組成物や樹脂成形品、例えば繊維、フィルム、シート、パイプ、パネル、容器、建材、構造材等の分野に用いることができる。また、本発明の抗菌剤を塗料等に配合して、抗菌性塗膜の分野に用いることができる。
【0063】
前記の樹脂としては特に制限はなく広範囲のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィンの如き塩素系樹脂、ポリアミド、ABS樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリビニールアルコール、ポリカーボネート、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン、レーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、ビニリデン、天然及び合成ゴム等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などを挙げることが出来る。なお、これらの樹脂は、共重合体又はグラフトポリマー、または2種以上の混合樹脂であってもよい。特に、前記の樹脂のうち、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂が好ましい。
【0064】
本発明の抗菌剤を塗料に配合する場合、当該塗料の材料としては、例えばボイル油、油ワニス、油性エナメルなどの油性塗料、ニトロセルロースラッカー、アクリルラッカーなどの繊維素誘導体塗料、前記の樹脂材料に記載した熱硬化性樹脂やエラストマー重合体などを塗料タイプにした合成樹脂塗料が挙げられる。
【0065】
樹脂や塗料に配合して使用される材料についても従来から使用されている材料を使用できる。例えば、油脂類、鉱油類、可塑剤、溶剤、無機質充填剤、顔料、体質顔料等を挙げることができる。無機質充填剤としては微粉末シリカ、活性アルミナ、含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛及びそのシリカ質複合体、フィロケイ酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、亜鉛変性ハイドロタルサイト、リチウム・アルミニウム複合水酸化物塩、タルク、クレー、ベントナイト、ドーソナイト、珪藻土、硅砂、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0066】
本発明の抗菌剤が配合された樹脂成形品や塗料としては、いかなる形状のものも含まれる。例えば織布、不織布、網布、編布等の布製品、紙、フィルム等のシート製品、散布剤、スプレー剤等の粉製品、刷毛塗り塗料、スプレー塗料、ローラー塗り塗料、接着剤、シーラント等の液体ないしペースト状製品、板、棒、箱、多孔質体などの具形成形品が挙げられる。
【0067】
本発明の抗菌剤が配合された樹脂成形品や塗料としては、例えば鮮度保持フィルムや衛生材料製品、台所浴用製品、トイレタリー、化粧品、水処理用品、医療器具製品、建材製品、魚網等を挙げることができる。またセメントモルタルに添加、あるいはセメントコンクリートの成形体に塗装して抗菌性のセメントコンクリートの製品を造ることができる。その他、抗菌を目的として種々の製品に応用することができる。
【0068】
本発明の抗菌剤が配合された樹脂組成物において、抗菌剤の樹脂への配合量は、該抗菌剤の物性、特に抗菌成分の担持量、合成樹脂の種類やその用途等によって多様に異なる。多くの場合、樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲であることが好ましい。更に好ましくは0.5〜10重量部である。尤も、マスターバッチとして構成される樹脂組成物にあっては30重量部まで配合することができる。抗菌剤の配合量が0.1重量部未満の場合、樹脂組成物の抗菌作用は実質的に得られない。また配合量の上限値は、多くの場合経済的理由から制限され、実用的範囲として設定される。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例中の各測定値はそれぞれ次の方法によって求めた。また、特に断らない限り「%」は「重量%」を示す。
(a)組成分析:
アルカリ金属及び抗菌性金属はICP(Varian製LIBERTYII型)によって定量した。銀錯陽イオン硝酸塩を導入したマガディアイトは、全有機炭素計(島津製作所製、TOC−5000A)により炭素量を測定し、分子量に換算して定量した。また、下記のTG/DTA測定でも、有機物量、硝酸根量を確認することができた。
(b)粒子の形状:
SEM(日立製作所製S−4500型)により観察した。
(c)X線回折パターン(XRD):
X線回折装置(理学製RINT2400型)を用いた。
(d)銀錯陽イオン硝酸塩の分析及びマガディアイトの水分測定
TG/DTA(熱重量示差熱分析;セイコーインスツルメンス製のTG/DTA6300型)を用いて、昇温速度10℃/minで40〜800℃の重量変化を測定し、170℃までの重量減をマガディアイトの水分量とし、銀錯陽イオン硝酸塩の成分構成は更に高温部分のデータにより検証した。
【0070】
実施例で用いた銀錯陽イオン硝酸塩は以下の方法で作成した。
(A)ベンゾトリアゾール銀硝酸塩の合成
ガラスビーカーを用いて、エタノール40重量部に23.8重量部のベンゾトリアゾール(C653;純正化学製 試薬)を加えて、10分攪拌を行って溶解した。次に17重量部の硝酸銀(AgNO3;純正化学製試薬)と160重量部の純水を加えた。硝酸銀の溶解と白色沈殿の生成が同時に進行し、硝酸銀は3時間の攪拌で溶解し、その後も16時間攪拌を続けた。白色沈殿をろ過、水洗して、50℃で24時間乾燥した。こうして白色の結晶を得た。この結晶は、XRDではベンゾトリアゾールおよびAgNO3の存在は認められず、組成分析及びTG/DTA測定によりベンゾトリアゾール銀硝酸塩([Ag(C653)]+NO3-)の結晶であることを確認した。
【0071】
(B)ビス(イミダゾール)銀硝酸塩の合成
ガラスビーカーを用いて、水350重量部に17重量部の硝酸銀と13.6重量部のイミダゾール(C342;純正化学製 試薬)を加えて、1時間攪拌を行い、白色沈殿の生成した反応液を得た。この懸濁液をろ過して、白色沈殿とろ液を回収した。ろ液はテフロン(登録商標)シャーレに移して50℃で水分を蒸発させて乾固し、僅かに褐色味を帯びた微細な針状結晶を得た。XRDによる分析の結果、この結晶には、イミダゾールおよびAgNO3の存在は認められず、ビス(イミダゾール)銀硝酸塩([Ag(C3422+NO3-)の結晶であることを確認した。
【0072】
(C)ビス(チオ尿素)銀硝酸塩の合成
ガラスビーカーを用いて、水100重量部に10.7重量部のチオ尿素(CH42S;純正化学製 試薬)を加えて、攪拌しつつ50℃に加温して溶解した。次いで、これに12重量部の硝酸銀を加えて攪拌を続けた。30分程で硝酸銀の溶解が完了するのと同時に、別の沈殿が析出した。沈殿をろ過分離し、ろ液をテフロン(登録商標)シャーレに移して50℃で水分を蒸発させて乾固し、無色の針状結晶を得た。沈殿および針状結晶は、いずれもXRDではチオ尿素およびAgNO3の存在は認められず、またいずれも組成分析及びTG/DTA測定によりビス(チオ尿素)銀硝酸塩([Ag(CH42S)2+NO3-)の結晶であることを確認した。
【0073】
(D)ジ(アンミン)銀硝酸塩の合成
ガラスビーカーを用いて、水75重量部にこれに25重量部の硝酸銀を加えて攪拌を続け、30分程で硝酸銀を溶解した。これに28%アンモニア水(純正化学製 試薬)を滴下し、すぐに沈殿が生成し、この沈殿が溶解するまでアンモニア水の滴下を続け透明な溶液を得た。溶液をテフロン(登録商標)シャーレに移して25℃で水分を蒸発させて乾固し、僅かに灰色の結晶を得た。XRDでは硝酸アンモニウムおよびAgNO3の存在は認められず、また組成分析及びTG/DTA測定によりジ(アンミン)銀硝酸塩([Ag(NH32+NO3-)の結晶であることを確認した。
【0074】
〔実施例1〕
(1)マガディアイトの合成
J. Ceramic Society of Japan Vol.100,No.3,326−331(1992)に記載の方法に従った。SiO2:NaOH:H2O=1:0.23:18.5(モル比)の原料組成でマガディアイトを合成した。すなわち、SiO2が30重量%のコロイダルシリカ(日本化学工業(株)製品シリカドール30)200重量部と、試薬のNaOH9.2重量部、水193重量部をオートクレーブに仕込み、150℃で48時間の水熱合成を行った。合成後、固形物を濾過水洗し、120℃で乾燥し、マガディアイト(Na2Si1429・xH2O)を得た。SEM像は、図1に示すように、板厚0.05μmで一片が3μmの方形面をした板状結晶が、花弁状に集合した球状の結晶であった。粒子径は7.0μm、Na2Oは5.8重量%、170℃までの加熱減量は13重量%であった。XRDはJCPDS#42−1350に一致し、面間隔d001は15.6Åであった。
【0075】
(2)マガディアイトのイオン交換
合成したマガディアイト10gをNa量の1倍当量(5.76g)のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色粉末を得た。
【0076】
粉末を一部取り出して濾紙上で室温乾燥して粉末とし、SEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は2.6重量%であった。XRDではビス(イミダゾール)銀硝酸塩のピークはなく、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の13.8Åの大きなピークと、そのd002が6.8Åに現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(C3421.51.0Na1.0Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0077】
〔実施例2〕
0.5等量の交換
純水100mlに攪拌下1.280gのイミダゾールを添加して溶解し、次いで1.598gの硝酸銀を添加して溶解した。硝酸銀の添加と同時に液は白濁した。この白い生成物はイミダゾール銀である。白濁液のpHは6.0であり、これにpHを5.5〜6.0を保つように2%硝酸を滴下して、液が透明になった時点で滴下を止めた。イミダゾール銀の解離に伴ってpHは上昇し15分ほど経過してpHは7.0になった。このイミダゾールと硝酸銀の溶液は24時間攪拌を続け、銀イミダゾール錯陽イオンの錯化反応を完結させた。
【0078】
次いで、実施例1で合成したマガディアイト10gを添加して攪拌分散させ、そのまま室温で24時間攪拌して、Naとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色粉末を得た。また、ろ液は瞬時に淡い褐色となり、反応系が硝酸根過剰のため、錯化されていない銀イオンが一部存在していたことが判明した。
【0079】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は2.6重量%であった。XRDではビス(イミダゾール)銀硝酸塩のピークはなく、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の13.8Åの大きなピークと、そのd002が6.8Åに現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(C3421.50.80.4Na0.8Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0080】
〔実施例3〕
実施例1で合成したマガディアイト10gをNa量の0.5倍当量(2.88g)のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離した後、再び、Na量の0.5倍当量(2.88g)のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色粉末を得た。
【0081】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、図4に示すように、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は0.8重量%であった。XRDではビス(イミダゾール)銀硝酸塩のピークはなく、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の13.6Åの大きなピークと、そのd002が6.8Åに現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(C3421.51.4Na0.6Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0082】
〔実施例4〕
ベンゾトリアゾール銀硝酸塩は水への溶解度が小さいので水メタノール混合液を使用してイオン交換を行った。実施例1で合成したマガディアイト10gをNa量の0.5倍当量(3.84g)のベンゾトリアゾール銀硝酸塩の1:1水メタノール溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンゾトリアゾール銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離した後、再び、Na量の0.5倍当量(3.84g)のベンゾトリアゾール銀硝酸塩の1:1水メタノール溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンゾトリアゾール銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色粉末を得た。
【0083】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。また、ベンゾトリアゾール銀硝酸塩の粒子も1μm以下の微粒子として点在していた。この微粒子以外のマガディアイトのSEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は1.3重量%であった。XRDでは、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の13.4Åの大きなピークと、そのd002が6.7Åに現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。ただし、ベンゾトリアゾール銀硝酸塩はメインピーク位置が13.4Åであるため、XRDでは存否の判断はできなかった。化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(C653)]0.63Na1.37Si1429・xH2Oと[Ag(C653)]NO3の混合物が得られたことを確認した。
【0084】
〔実施例5〕
ビス(チオ尿素)銀硝酸塩([Ag(CH42S)2+NO3-
実施例1で合成したマガディアイト10gをNa量の1倍当量(6.05g)のビス(チオ尿素)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させた。マガディアイトの添加と同時に分散液は黒色となった。そのまま室温で24時間攪拌して、Naとビス(チオ尿素)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して黒色粉末を得た。
【0085】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は2.6重量%であった。XRDではビス(チオ尿素)銀硝酸塩のピークはなく、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の14.0Åの大きなピークが現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(CH42S)21.2Na0.7Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0086】
〔実施例6〕
ジ(アンミン)銀硝酸塩([Ag(NH32+NO3-
実施例1で合成したマガディアイト10gをNa量の0.5倍当量(2.04g)のジ(アンミン)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとジ(アンミン)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し、再び、0.5倍当量(2.04g)のジ(アンミン)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとジ(アンミン)銀をイオン交換させた。次いで、分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して僅かに褐色味の粉末を得た。
【0087】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は5.2重量%であったが、水と同時にアンモニアが蒸発しており、正確な水分量は測定できなかった。XRDではジ(アンミン)銀硝酸塩のピークはなく、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の13.7Åのブロードで大きなピークと、そのd002が6.6Åにブロードに小さく現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(NH321.10.2Na0.7Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0088】
〔実施例7〕
ベンザルコニウムとビス(イミダゾール)銀
実施例1で合成したマガディアイト100gを、Na量の0.5倍当量の塩化ベンザルコニウム(関東化学製、[RN(CH32CH265]Cl、RはC8〜C18)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した。このマガディアイトを、再度0.5倍当量の塩化ベンザルコニウムの水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、IKA社製MF−10型卓上粉砕機で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は3μmであった。また、170℃までの加熱減量は1.9重量%であった。XRDでは、もとのd001の15.6Åはなくなり、新たなd001の32.9Åの大きなピークと、そのd002が16.5Åに現れており、マガディアイトの層間にベンザルコニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、Naは存在せず、(ベンザルコニウム)2Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0089】
このベンザルコニウムが導入されたマガディアイト16.3gをベンザルコニウム量の0.5倍当量(2.88g)のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、ベンザルコニウムとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離した後、再び、0.5倍当量(2.88g)のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、ビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色粉末を得た。
【0090】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は3μmであった。また、170℃までの加熱減量は1.3重量%であった。XRDでは、元のd001の32.9Åの位置に、新たなd001の30.8Åの大きなピークと、そのd002が15.3Åに現れており、面間隔にほとんど変化のないことが確認できた。化学分析及びTG/DTA測定より(ビス(イミダゾール)銀イオン)0.76(ベンザルコニウム)1.23Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入されても、大きなベンザルコニウムイオンによって層間は拡張したままであった。
【0091】
〔実施例8〕
ジ(アンミン)銀とベンザルコニウム
実施例7で作製したベンザルコニウムが導入されたマガディアイト16.3gを、ベンザルコニウム量の0.5倍当量(2.04g)のジ(アンミン)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、ベンザルコニウムとジ(アンミン)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離した後、再び、0.5倍当量(2.04g)のジ(アンミン)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、ジ(アンミン)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して僅かに褐色がかった白色粉末を得た。
【0092】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は3μmであった。また、170℃までの加熱減量は1.3重量%であった。XRDでは、元のd001の32.9Åの位置に、新たなd001の31.0Åの大きなピークと、そのd002が15.0Åに現れており、面間隔にほとんど変化のないことが確認できた。化学分析及びTG/DTA測定より(ジ(アンミン)銀イオン)0.09(ベンザルコニウム)1.89Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入されても、大きなベンザルコニウムイオンによって層間は拡張したままであった。
【0093】
〔実施例9〕
ジ(アンミン)銀と亜鉛
実施例1で合成したマガディアイト10gをNa量の0.5倍当量(モル量では0.25倍)の硝酸亜鉛の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naと亜鉛をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色の粉末を得た。
【0094】
この亜鉛をイオン交換させたマガディアイトをNa量の0.5倍当量のジ(アンミン)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとジ(アンミン)銀をイオン交換させた。次いで、分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して僅かに褐色味の粉末を得た。
【0095】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は2.2重量%であったが、水と同時にアンモニアが蒸発しており、正確な水分量は測定できなかった。XRDではジ(アンミン)銀硝酸塩のピークはなく、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の13.1Åのブロードで大きなピークと、そのd002が6.6Åにブロードに小さく現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンと亜鉛イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より(ジ(アンミン)銀イオン)0.99Zn0.55Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0096】
〔実施例10〕
亜鉛とビス(イミダゾール)銀
実施例1で合成したマガディアイト10gをNa量の0.5倍当量(モル量では0.25倍)の硝酸亜鉛の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naと亜鉛をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色の粉末を得た。
【0097】
この亜鉛をイオン交換させたマガディアイトをNa量の0.5倍当量のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。次いで、分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して白色の粉末を得た。
【0098】
粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は2.5重量%であった。XRDではビス(イミダゾール)銀硝酸塩のピークはなく、元のマガディアイトのd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の13.6Åのブロードで大きなピークと、そのd002が6.8Åにブロードに小さく現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンと亜鉛イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(C3421.50.33Zn0.56Na0.50Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0099】
〔実施例11〕
(1)板状マガディアイトの合成
特開2003−531801号公報に記載の方法に従った。SiO2:NaOH:H2O=1:0.50:18.5(モル比)の原料組成でマガディアイトを合成した。すなわち、SiO2が30重量%のコロイダルシリカ(日本化学工業(株)製品シリカドール30)200重量部と、試薬のNaOH19.6重量部、水203重量部をオートクレーブに仕込み、160℃で24時間の水熱合成を行った。合成後、固形物を濾過水洗し、110℃で乾燥し、マガディアイト(Na2Si1429・xH2O)を得た。SEM像は、図2に示すように、板厚0.1μmで一辺が平均1.0μmの方形面をした板状(鱗片状)結晶であった。この結晶は凝集していなかった。XRDはJCPDS#42−1350に一致し、面間隔d001は15.5Åであった。
【0100】
(2)板状マガディアイトのイオン交換
合成したマガディアイト10gをNa量の1倍当量(5.76g)のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、図2に示したイオン交換前の形状と同じ形状であった。SEM観察による平均粒子径は平均1.0μmであった。また、170℃までの加熱減量は2.7重量%であった。XRDでは元のd001の15.5Åが弱くなり、新たなd001の13.8Åの大きなピークと、そのd002が6.8Åに現れており、マガディアイトの層間に銀錯陽イオンが導入され、面間隔が狭くなっていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より[Ag(C3421.51.0Na1.0Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0101】
〔実施例12〕
(1)ケニヤアイトの合成
J. Ceramic Society of Japan Vol.100,No.3,326−331(1992)に記載の方法に従った。SiO2:NaOH:K2CO3:H2O=1:0.23:0.16:18.5(モル比)の原料組成でケニヤアイトを合成した。すなわち、SiO2が30重量%のコロイダルシリカ(日本化学工業(株)製品シリカドール30)200重量部と、試薬のNaOH9.2重量部、試薬のK2CO322.1重量部、水193重量部をオートクレーブに仕込み、170℃で24時間の水熱合成を行った。合成後、固形物を濾過水洗し、110℃で乾燥し、ケニヤアイト(Na0.970.72Si2241・xH2O)を得た。SEM像は、板厚0.05μmで一片が5μmの方形面をした板状結晶が、花弁状に集合した球状の結晶であった。粒子径は10μm、Na2Oは1.91重量%、K2Oは2.15重量%、170℃までの加熱減量は6.5重量%であった。XRDではJCPDS#20−1157に一致し、面間隔d001は19.7Aであった。
【0102】
(2)ケニヤアイトのイオン交換
合成したケニヤアイト10gをNa量の1倍当量(3.94g)のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Na及びKとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、50℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、花弁状に集合した球状の結晶が部分的に壊れてバラバラになった鱗片状(板状)の結晶の混在する粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は10μmであった。また、170℃までの加熱減量は1.6重量%であった。XRDでは、元のケニヤアイトのd001の19.7Åのピークが弱くなり、新たなd001の17.9Åの大きなピークと、そのd002が9.0Åに現れており、ケニヤアイトの層間に銀錯陽イオンが導入されていることが確認できた。また、化学分析及びTG/DTA測定より、[Ag(C3421.51.18Na0.170.33Si2241・xH2Oが得られたことを確認した。
【0103】
〔実施例13〕
本実施例では、イオン交換によって導入された抗菌成分の徐放性の確認を行った。実施例1で得られたビス(イミダゾール)銀イオン交換マガディアイト粉末及び実施例4で得られたビス(ベンゾトリアゾール)銀イオン交換マガディアイト粉末及び実施例7で得られたベンザルコニウムとビス(イミダゾール)銀イオン交換マガディアイト粉末のそれぞれ0.5gを、ガラスビーカー中の純水50gに投入し50℃で24時間攪拌を続けた。その後、ろ過分離してろ液を回収し、化学分析して溶出した銀の濃度を算出した。その結果、溶出濃度はそれぞれAgとして10ppm及び33ppm及び79ppmであった。
【0104】
〔比較例1〕
本比較例では、膨潤性フッ素置換雲母を使用した抗菌剤を製造した。膨潤性フッ素置換雲母(コープケミカル(株)製のソマシフME−100)5gを、Na量の1.0倍当量のビス(イミダゾール)銀硝酸塩の水溶液100mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとビス(イミダゾール)銀をイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。化学分析の結果、Naの70重量%がビス(イミダゾール)銀に置換されていることを確認した。この粉末について、実施例13と同じく銀の溶出量を測定した。その結果、溶出濃度は1ppm以下であった。
【0105】
〔比較例2〕
本比較例では、モンモリロナイトを使用した抗菌剤を製造した。モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製のクニピアF)5gを、Na量の1.0倍当量の塩化ベンザルコニウム1.35gとビス(イミダゾール)銀硝酸塩水溶液100mlに添加し、分散を行う操作を開始したところ、10分後には全体がペースト状になり、固体をろ過分離することができず、水洗することもできなくなった。
【0106】
〔比較例3〕
本比較例では、特開2000−128521号公報に記載の方法に従い抗菌剤を製造した。第四級アンモニウムイオンとしてドデシルトリメチルアンモニウムを使用した。実施例1で合成したマガディアイト100gを、Na量の1.0倍当量のドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(試薬:東京化成、以下DTMA−Clと記載)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、NaとDTMAをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は10μmであった。XRDでは、もとのd001の15.6Åがなくなり、新たなd001の28.3Åの大きなピークが現れており、マガディアイトの層間にDTMAが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、(DTMA)1.8・Na0.2・Si1429・xH2Oが得られたことを確認した。
【0107】
〔実施例14〕
実施例1ないし12及び比較例3で得られた抗菌剤について、抗菌性試験を行った。試験結果を以下の表1に示す。試験方法は以下の通りである。
A)試験菌
(1)Escherichia coli NBRC 3301 (大腸菌)
(2)Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275 (緑膿菌)
(3)Aspergillus niger IFO 6341 (クロコウジカビ)
(4)Penicillium citrinum IFO 6352 (アオカビ)
B)試験用培地
NA培地:普通寒天培地[栄研化学株式会社]
NB培地:肉エキスを0.2%添加した普通ブイヨン培地[栄研化学株式会社]
PDA培地:ポテトデキストロース寒天培地[栄研化学株式会社]
SDA培地:サブロー寒天培地[栄研化学株式会社]
C)菌液の調製
a)試験菌(1)及び(2)
NA培地で37℃±1℃、24〜48時間培養した試験菌をNB培地に接種し、37℃±1℃、22〜26時間培養した。この培養液をNB培地を用いて1ml当たりの菌数が106〜107となるように調整し、菌液とした。
b)試験菌(3)及び(4)
PDA培地で25℃±1℃、7日間培養後、形成された胞子を0.05%ポリソルベート80添加生理食塩水に懸濁させ、1ml当たりの胞子数が106〜107となるように調整し、菌液とした。
D)試験用平板培地の作成
試験菌(1)及び(2)はNA培地、試験菌(3)及び(4)はSDA培地150mlに菌液10mlをそれぞれ添加、混合し、これらをシャーレに15ml分注して固化させた。さらに、シャーレを室温で30分間放置して培地表面を乾燥させた後、乾熱滅菌(180℃、30分間)した円筒ガラス(直径:12mm)で穴を開け、これを試験用平板培地とした。
E)試験操作
検体を試料とした。試験用平板培地中央の穴全体に試料を充填し、試験菌(1)及び(2)は37℃±1℃、24時間、試験菌(3)及び(4)は25℃±1℃、7日間培養後、試料の周囲のハローの有無を肉眼観察により判定した。なお、菌液の生菌数を試験菌(1)及び(2)はNA培地を用いた混釈平板培養法(37℃±1℃、2日間培養)、試験菌(3)及び(4)はSDA培地を用いた混釈平板培養法(25℃±1℃、7日間培養)により測定し、試験用平板培地1mlあたりの菌濃度に換算した。
【0108】
【表1】

【0109】
〔実施例15及び比較例4〜6〕
本実施例及び比較例では塩化ビニル製シートを製造した。実施例15では、抗菌剤として、実施例1で作成したビス(イミダゾール)銀イオン交換マガディアイトを2重量部配合した。比較例4では、抗菌剤は配合しなかった。比較例5では、ブランクとして、実施例1で得られたNaマガディアイトを配合した。比較例6では、市販の抗菌剤である銀イオン交換ゼオライトを配合した。
【0110】
塩化ビニル製シートは次の方法で製造した。以下の表2に示す配合に係る樹脂組成物をポリ袋中で激しく振騰して混合した。得られた組成物を、表面温度150℃に調節した二本ロールで5分間溶融混練後、シート状に成形し、厚さ1mmで5cm角の塩化ビニルシート試験片を製造した。
【0111】
【表2】

【0112】
前記の塩化ビニルシートについて、以下の方法で耐変色性試験及び抗菌性試験を行った。その結果を表3に示す。
【0113】
〔耐変色性試験〕
塩化ビニルシートの試験片を蛍光灯(60W×2本)の直下1mの位置に置き、30日間暴露後の変色度を下記の評点で評価した。
○:変色しない。
△:やや変色した。
×:激しく変色した。
【0114】
〔抗菌性試験〕
抗菌製品の抗菌力評価試験法(抗菌製品技術協議会)で制定された方法に準拠して評価した。
試験方法:フィルム密着法
評価菌種:大腸菌、緑膿菌、クロコウジカビ、アオカビ
菌液接種時間:24時間(35℃)
菌液接種温度:大腸菌、緑膿菌は35℃、クロコウジカビ、アオカビは25℃
評価:抗菌剤添加樹脂成形品に菌液を接種して、フィルムでカバーして24時間後の菌数を測定し、以下の基準で評価する。
◎:接種菌液からの減少率が1/1000以上。
○:接種菌液からの減少率が1/100以上、1/1000未満。
△:接種菌液からの減少率が1/10以上、1/100未満。
×:接種菌液からの減少率が1/10未満。
フィルムは各菌種毎に同時に3枚を使用し、3枚共に同じ試験結果となった。
【0115】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】イオン交換される前の状態のマガディアイトのSEM像である。
【図2】イオン交換される前の状態の別のマガディアイトのSEM像である。
【図3】イオン交換される前の状態のマガディアイトの構造のモデル図である。
【図4】イオン交換された後の状態のマガディアイトのSEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マガディアイト及び/またはケニヤアイトのアルカリ金属イオンの少なくとも一部が、銀と電荷を持たない錯化剤との錯陽イオンであるマガディアイト及び/またはケニヤアイトを含有する抗菌剤。
【請求項2】
錯陽イオンが銀ベンゾトリアゾール錯陽イオン、銀イミダゾール錯陽イオンまたは銀チオ尿素錯陽イオンの少なくとも1つである請求項1記載の抗菌剤。
【請求項3】
錯陽イオン以外のイオン交換可能なイオンが、ナトリウムイオン、カリウムイオン、プロトン、亜鉛イオン、銅イオンまたは銀イオンであることを特徴とする請求項1または2記載の抗菌剤。
【請求項4】
粒子径が1〜500μmであり、水分が5重量%以下に調整されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の抗菌剤。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載の抗菌剤を含有する化粧料組成物。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れかに記載の抗菌剤を含有する樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし4の何れかに記載の抗菌剤を含有する塗料。
【請求項8】
請求項1ないし4の何れかに記載の抗菌剤を含有する植物用抗菌剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−223917(P2007−223917A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44464(P2006−44464)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】