説明

抗菌消臭剤

【課題】抗菌消臭作用を強化する。
【解決手段】界面活性剤とアミノ酸とを含有させることによって、界面活性剤が有する抗菌作用を阻害することなく、人畜への毒性をアミノ酸により抑制すると共に、核酸を含有させることで、消臭作用を強化し、またアミノ酸及び核酸を、貝類の身から抽出して得たものとすることによって、抗菌及び消臭作用を共に向上させ、更には、水にそのクラスターを細分化する処理を施して、得られた活性水を希釈液として加えたり、前記活性水にアルコールを配合して希釈液とすることによって、浸透性をより高めて、抗菌及び消臭作用を共に更に強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生態系へのリスクを低水準消毒薬(例えば、第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤、クロルヘキシジン等)程度に抑えながらも、高水準消毒薬(例えば、ホルマリン、グルタールアルデヒド、過酢酸製剤等)と同等以上の抗菌作用を発現し、更に消臭作用をも具備した抗菌消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の抗菌剤が提供されているところ、一般に抗菌作用の強いもの程、当然に人畜に対する毒性が高く、それ故使用の目的、対象物、範囲等が限られ、使用者には専門知識が要求され、強力な抗菌作用を示すものについては、誰もが気軽に使用できるものではなかった。
一方、消臭剤についても幾多が提供され、例えば、臭気成分を薬品や微生物、光触媒等を用いて化学的に分解し、又は活性炭、ゼオライト、シリカゲル等を用いて物理的に吸着し、或いは、香料を用いてマスキングするなど多種多様の方法を利用したものが見受けられた。
ところで、病院や老人ホーム等で寝具類や衣服に抗菌処理を施すには、安全に一層の配慮を必要とし、また抗菌と同時に消臭をも求められるが、この様な場合であっても、何人でも気軽に使えて、抗菌と消臭の両作用を共に高い次元で兼ね備えた抗菌消臭剤は、見られなかった。
そこで、本件の発明者等は、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、および豆類の熱水抽出エキス〔豆類を水に浸漬し、砕いて泥状にし、100℃付近で10〜20分加熱し、ついで80℃付近で20〜60分加熱した溶液をろ過後得られる液に水および凝集剤を加え、100℃付近で20〜60分加熱し、固形物を分離して得られる液体(pH4.5前後)〕を含有する抗菌消臭剤(下記特許文献1を参照)を発明した。
この豆類熱水抽出エキスを含有の抗菌消臭剤は、強力な抗菌作用と消臭作用を兼備すると共に、人畜に対する安全性が極めて高く、使い勝手に優れることから、需要者間にて好評を得られ、発明者等は所期の目的を達成した。
【0003】
【特許文献1】特許第3529059号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、細菌類にも種々有り、芽胞を形成しているセレウス菌、炭疽菌、小型細菌等は薬剤に対する抵抗力が高く、また薬剤による殺菌はスクリーニングによる耐性菌出現の可能性を避けることは出来ず、これら抵抗力の高い菌類を駆除するため、安全性を維持しつつもより強力な抗菌消臭剤の開発が望まれた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、界面活性剤とアミノ酸とを含有させることによって、界面活性剤が有する抗菌作用を阻害することなく、人畜への毒性をアミノ酸により抑制すると共に、核酸を含有させることで、消臭作用を強化し、またアミノ酸及び核酸を、貝類の身から抽出して得たものとすることによって、抗菌及び消臭作用を共に向上させ、更には、水にそのクラスターを細分化する処理を施して、得られた活性水を希釈液として加えたり、前記活性水にアルコールを配合して希釈液とすることによって、浸透性をより高めて、抗菌及び消臭作用を共に更に強化する。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明は、界面活性剤と、生体から抽出して得たアミノ酸及び核酸とを含有させて調製したので、界面活性剤は当然に浸透性が高いために、抗菌消臭の対象物、例えば寝具類のシーツや衣服の繊維の極微小の隙間や、細菌類自体の表面の極微小の凹凸、隙間にまで抗菌消臭剤を到達させられ、アミノ酸により、界面活性剤の毒性を抑制しつつも、界面活性剤の抗菌作用と核酸の消臭作用を共に強力に発揮させることが出来る。
従って、抵抗力の高い細菌類にも適用でき、而も安全性が高く、いかなるものにも気軽に使用することが出来て、使い勝手がとても良い。
【0007】
自然界のアミノ酸及び核酸には、多くの種類が確認されているところ、貝類の身を蛋白質分解酵素により分解し、抽出して得たアミノ酸及び核酸は、抗菌と消臭の両作用に優れており、この様なアミノ酸及び核酸を界面活性剤と混合したので、より強力な抗菌消臭剤を得ることが出来る。
【0008】
水にそのクラスターを細分化する処理を施して、得られた活性水を希釈液として加えたので、抗菌消臭剤の浸透性を高めて、抗菌消臭作用の向上を図ることが出来る。
【0009】
活性水にその表面張力を低下させる作用を有するアルコールを配合して希釈液としたので、アルコールにより、希釈液のクラスターがより小さく分断され、抗菌消臭剤の浸透性が一層高まり、抗菌消臭作用の飛躍的な向上を図ることが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の抗菌消臭剤につき詳細に説明する。
本発明の抗菌消臭剤は、界面活性剤と、生体から抽出して得たアミノ酸及び核酸とを含有させて調製したものである。
上記各成分の含有量は、界面活性剤が700mg/l未満の場合、薬剤耐性が最も低い部類とされる一般細菌に対する抗菌効果ですら認められず、280000mg/l超過の場合、下記のアミノ酸含有量の最大値の場合であっても、人畜への毒性を抑制できないため、界面活性剤の含有量としては、700〜280000mg/lの範囲が良い。
又、アミノ酸が400mg/l未満の場合、上記の界面活性剤含有量の最小値の場合であっても、人畜への毒性を抑制できず、150000mg/l超過の場合、アミノ酸が結晶化し、白濁沈殿するため、アミノ酸の含有量としては、400〜150000mg/lの範囲が良い。
そして、核酸は350mg/l未満の場合、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物に対する消臭効果が認められず、130000mg/l超過の場合、核酸が結晶化し、白濁沈殿するため、核酸の含有量としては、350〜130000mg/lの範囲が良い。
【0011】
界面活性剤は、例えば、
1)陽イオン界面活性剤としては、
塩化ベンザルコニウム
〔CAS No.8001−54−5〕
(Benzalkonium chloride)
2)両性イオン界面活性剤としては、
ラウリルアミノプロピオン酸
〔日本化粧品工業連合会表示名称:ラウラミノプロピオン酸〕
(N−Lauryl β−Aminopropionic acid)
3)非イオン系界面活性剤としては、
プロピレングリコール
〔CAS No.57−55−6〕
(Propylene glycol)
等が挙げられ、これらは全て優れた抗菌消臭作用を有する。
【0012】
本発明に用いるアミノ酸及び核酸は、生体に由来のもので、生体を形成している蛋白質を分解し、抽出して得たアミノ酸(即ち,α−アミノ酸)は、界面活性剤の抗菌作用を阻害するこなく、界面活性剤の毒性を抑制する。
又、核酸は、生体の遺伝情報伝達物質として細胞内に存在し、生体から抽出して得た核酸は、優れた消臭作用を発揮する。
【0013】
アミノ酸及び核酸の抽出方法としては、例えば、先ず浅蜊、蛤、牡蠣などの二枚貝の身を貝殻から分離し、洗浄後、精製水に浸漬し、これに蛋白質分解酵素(Protease)を加えると共に、該蛋白質分解酵素が活性を示す最適温度範囲に加熱し、かかる最適温度範囲に保ちながら、24時間程、緩やかに攪拌し、次いで濾過し、濾液として貝類エキスを得れば良い。
この貝類エキス中には、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、グリシルグリシン、アラニン、アルギニン、トリプトファン、メチオニン等のアミノ酸や、イノシン酸、グアニル酸、アデニン、オロチン酸等の核酸が多く含まれる。
これに対し、背景技術として示した上記の豆類の熱水抽出エキス中には、核酸の含有が認められなかった。
【0014】
アミノ酸及び核酸の抽出元を替えて、幾多の試験を行ったところ、貝類の身から抽出されたものが、その抽出量、並びに抽出されたアミノ酸及び核酸の種類が理由と考えられるが、最も優れた抗菌消臭作用を発揮することが判明した。
尚、生体由来のアミノ酸及び核酸は、自然に酸化が進行し、次第にその特性(アミノ酸が具備する界面活性剤の毒性を抑制する作用、核酸が具備する消臭作用)を発揮出来なくなってしまうが、酸化防止剤の添加により、特性劣化を防止すれば良い。
酸化防止剤としては、安全性の点からして、例えば、食品添加物でもあるエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム〔CAS No.6381−92−6〕(Etylenediaminetetraacetic acid disodium salt dihydrate)が良い。
【0015】
上記構成(界面活性剤、アミノ酸及び核酸)に、更に高浸透性の活性水を希釈液として加えても良く、この活性水は、水にそのクラスターを細分化する処理を施して、得られたものである。
通常の水は、水素結合によって、複数の水分子が会合し、集合して、クラスター(水分子の凝集体)を形成しており、集合している水分子数が多くクラスターサイズの大きなもの程、物品の微小な隙間に入り込めないため、当然に浸透性が低く、これに対し、クラスターを分断し、細分化したものでは、浸透性が高くなる。
【0016】
クラスターの分断、細分化の処理方法としては、例えば、電気利用の方法、極微小の気泡を利用する方法、磁気利用の方法等が挙げられる。
電気利用の方法とは、水に食塩等の電解質を極微量添加し、この水溶液に浸漬した電極に印加し、完全に電気分解するのではなく、その前段階で電極周囲に生成した活性水(所謂、アルカリイオン水)を取り出す方法である。
極微小の気泡を利用する方法とは、水中にて極微小の気泡(所謂、マイクロバブルやナノバブル)を生成し、かかる気泡によりクラスターを分断し、活性化する方法である。
そして、磁気利用の方法とは、水の流通経路脇に永久磁石又は電磁石を配置し、水の流通方向に直交する磁力線を水分子に作用させて、水を活性化する方法である。
【0017】
更には、上記活性水にその表面張力を低下させる作用を有するアルコールを配合して希釈液としても良い。
配合するアルコールとしては、脂肪族のアルコール、脂環式化合物のアルコール、芳香族化合物のアルコール、一価のアルコール、或いは、多価のアルコール等、その種類を問わないが、活性水のアルコールによる表面張力の低下には、アルコール分子の水酸基が有する極性が関与するため、この極性を利用するためには、アルコールの構成中、極性を有しない部分が小さい低分子量のアルコールが良く、またアルコールの品質及び入手の安定性、並びに人畜への安全性の点からして、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール等が良い。
配合比としては、重量比で活性水1に対し、アルコールを0.10未満では、表面張力の低下が認められず、0.39を超えてもそれ以上の表面張力の変化が認められないため、活性水とアルコールの配合比は、活性水1に対し、アルコールを0.10〜0.39の範囲が良い。
【0018】
以下に実施例を示し更に詳述する。
先ず、下記の通り、抗菌消臭剤I〜IIIを調製し、各抗菌消臭剤にて抗菌性及び消臭性について、確認試験を行った。
【0019】
抗菌消臭剤I
界面活性剤に、上記背景技術で示した豆類熱水抽出エキスを混合し、酸化防止剤を加え、希釈液として精製水を加えて、下記組成に調製し、本発明品との比較対象として、抗菌消臭剤Iを得た。
・界面活性剤
塩化ベンザルコニウム 2000mg/l
ラウリルアミノプロピオン酸 400mg/l
プロピレングリコール 400mg/l
・豆類熱水抽出エキス
アミノ酸 1600mg/l
・酸化防止剤
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 400mg/l
【0020】
抗菌消臭剤II
界面活性剤に、上記〔0013〕に示した貝類エキスを混合し、酸化防止剤を加え、これに希釈液として、精製水を加えて、下記組成に調製し、抗菌消臭剤IIを得た。
・界面活性剤
塩化ベンザルコニウム 2000mg/l
ラウリルアミノプロピオン酸 400mg/l
プロピレングリコール 400mg/l
・貝類エキス
アミノ酸 1600mg/l
核酸 1400mg/l
・酸化防止剤
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 400mg/l
【0021】
抗菌消臭剤III
界面活性剤に、上記〔0013〕に示した貝類エキスを混合し、酸化防止剤を加え、これに希釈液として、上記〔0017〕の通りに活性水とアルコールを配合したもの、並びに精製水を加えて、下記組成に調製し、抗菌消臭剤IIIを得た。
・界面活性剤
塩化ベンザルコニウム 2000mg/l
ラウリルアミノプロピオン酸 400mg/l
プロピレングリコール 400mg/l
・貝類エキス
アミノ酸 1600mg/l
核酸 1400mg/l
・酸化防止剤
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 400mg/l
【0022】
消臭試験1
先ず、三角フラスコに密栓を施し、密封状態を維持したまま、前記密栓にマイクロシリンジを差込み、該マイクロシリンジにて、予備試験により確認済の所定量のホルムアルデヒドを三角フラスコに注入し、かかるホルムアルデヒドの全量を揮発させて、三角フラスコ内部の空気中のホルムアルデヒドの濃度を5ppmに調製した。
次に、同様に密封状態を維持したまま、マイクロシリンジにて、三角フラスコに抗菌消臭剤Iを0.5ml注入し、30分後に三角フラスコ内部のホルムアルデヒドの濃度をガステックス社ガス検知管(ホルムアルデヒド用No.91L)にて測定した。
又、抗菌消臭剤II及びIII、並びに、抗菌消臭剤を投入しないブランクについても、同条件にて同様に試験を行った。
その結果を下記の表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
消臭試験2
上記の消臭試験1と同様にし、トルエン濃度を120ppmに調製した空気についての消臭試験を行った。
尚、測定にはガステックス社ガス検知管(トルエン用No.122L)を用いた。
その結果を下記の表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
抗菌消臭剤Iは、過去試験により、アンモニアについて、優れた消臭作用を示すことが確認されているが、表1及び2に示す通り、ホルムアルデヒド及びトルエンについては、良好な結果が得られなかった。
これに対し、抗菌消臭剤II及びIIIは、ホルムアルデヒド及びトルエンについて、優れた消臭作用を示し、抗菌消臭剤IIIは、抗菌消臭剤IIより更に優れた消臭作用を示した。
尚、抗菌消臭剤II及びIIIは、他の試験により、アンモニアについても優れた消臭作用を示すことが確認された。
【0027】
抗菌性及びウイルス不活化試験
抗菌消臭剤I、II及びIIIの抗菌作用、並びに、抗菌消臭剤II及びIIIのウイルス不活化作用について、確認試験を行った。
その結果を下記の表3及び4に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
表3に示す通り、抗菌消臭剤I及びIIは、一般細菌と呼ばれる薬剤耐性が比較的低い細菌類に対し、極めて優れた抗菌作用を示し、表4の枯草菌についての結果からして、抗菌消臭剤IIIは、抗菌消臭剤IIよりも抗菌作用が優れており、更には、抗菌消臭剤IIでは、不活化が認められなかったウイルス類についても、抗菌消臭剤IIIは、絶大なる不活化作用を示した。
【0031】
因みに、本発明の抗菌消臭剤中の希釈液は、抗菌消臭剤IIで示した通り、単なる精製水でも良く、より強力な抗菌消臭作用を所望する場合は、上記活性水を希釈液としたり、或いは、活性水にアルコールを配合して希釈液とすれば良く、また抗菌消臭剤IIIで示した通り、活性水とアルコールとの配合液に精製水を混合して希釈液としても良く、精製水と配合液との混合比は、精製水1に対し、配合液が0.05未満では、浸透力の変化乏しく、抗菌作用の向上が認められないため、精製水と配合液の混合比は、精製水1に対し、活性水とアルコールとの配合液を0.05以上が良い。
尚、精製水と活性水とを混合して、希釈液とした抗菌消臭剤は、抗菌消臭剤II及びIIIの略中間の抗菌作用、並びに、ウイルスに対する不活化作用を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤と、生体から抽出して得たアミノ酸及び核酸とを含有させて調製したことを特徴とする抗菌消臭剤。
【請求項2】
アミノ酸及び核酸は、貝類の身を蛋白質分解酵素により分解し、抽出して得たものとしたことを特徴とする請求項1記載の抗菌消臭剤。
【請求項3】
水にそのクラスターを細分化する処理を施して、得られた活性水を希釈液として加えたことを特徴とする請求項1又は2記載の抗菌消臭剤。
【請求項4】
活性水にその表面張力を低下させる作用を有するアルコールを配合して希釈液としたことを特徴とする請求項3記載の抗菌消臭剤。

【公開番号】特開2008−279104(P2008−279104A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126603(P2007−126603)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(504339882)
【出願人】(504339723)
【Fターム(参考)】