説明

抗酸化剤の製造方法

【課題】安全な微生物及び安全な食品素材を利用した発酵法による抗酸化剤の製造法及び発酵法により得られる抗酸化剤を提供することにある。
【解決手段】本発明は、大豆残渣を含有する培地中で酵母を培養し、培養上清から抗酸化剤を採取する、抗酸化剤の製造方法を提供する。また、本発明は、上記製造方法によって得られる高いSOD活性を示す抗酸化剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母を用いた大豆残渣の発酵による抗酸化剤の製造方法およびその製造方法によって得られる高いSOD活性を示す抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性酸素は、肌のしわや張りの低下等の老化の原因になると考えられており、老化を防ぐ方法の一つに活性酸素を除去する方法が知られている。活性酸素消去剤としてスーパーオキシドジスムターゼ(SOD、抗酸化酵素とも呼ばれる)等が用いられてきた。SODにより、活性酸素の発生を抑制する効果があることに加え、活性酸素によって引き起こされる肌荒れやしみ・しわも防ぐことができるといわれている(非特許文献1参照)。
【0003】
そこで、近年、SOD活性を示す抗酸化物質に関して研究されている。例えば、シラカバ抽出組成物(特許文献1参照)やセイヨウトチノキ種子の抽出物(特許文献2参照)等を有効成分とするSOD活性化剤が提案されている。しかし、これらSOD活性化剤がいずれも植物性原料から抽出したものであり、この抽出操作には長時間を要し、天然資源の利用可能性には制限があるため、製造コストは高い。
【0004】
一方、植物由来の抗酸化物質の他にも、乳酸菌などの発酵物に抗酸化効果も見出されている。例えば、特許文献3では広範囲の過酸化物に対して分解特性を示す乳酸菌由来の培養物が提案されている。しかし、当該培養物は、豆麹など分離源から乳酸菌を単離、培養して得られる培養物から回収した菌体を含有する菌体懸濁液であり、過酸化水素などの過酸化物に対して分解特性を示しているにすぎない。過酸化物に対する分解とは、還元性物質による分解であるかもしれないため、必ずSODによる分解であるといえない。また、非特許文献2〜5では、納豆菌や乳酸菌発酵おからから得た発酵物に抗酸化作用があることが開示されている。しかし、これら研究は、おから発酵物のリノール酸体系における抗酸化作用、ヒドロキシラジカル消去能、過酸化水素消去活性などの抗酸化作用に重点が置かれている。SOD活性を有することまでは知られていない。
【0005】
さらに、特許文献4、5では納豆菌発酵グアバ葉由来の抗酸化組成物が提案されている。しかし、その実施例からみれば、グアバ抽出物のみ(試料1)又は米糠、大豆発酵物のみ(試料2)を用いたいずれの場合もSOD活性は低いため、その活性酸素消去効果が充分であるとは言えない。また、当該方法は、同様に、グアバ葉の入手が季節に依存して制限されるため、実用上困難である。
【0006】
上記のように、各種の活性酸素消去能を有する物質が知られているものの、これらの中には、高いSOD活性が見られず、実用化されているものもまだ少ない。
また、ピチア(Pichia)属に属する微生物は、以下のような用途があることが知られている。例えば、メタノールを利用して抗生物質、生物蛋白などの有用な物質を生じること、或いは遺伝子操作の菌として利用することが可能である。
キャンディダ(Candida)属に属する微生物は、以下のような用途があることが知られている。例えば、キャンディダ・バリダ(Candida valida)がリパーゼの生産に用いられる。キャンディダ・メタプシローシス(Candida metapsilosis)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)などが醸酒、グリセリン、食用酵母、有機酸及び酵素剤などの生産、並びに飼料工業にも用いることができる。
しかし、ピチア(Pichia)属又はキャンディダ(Candida)属に属する微生物を用いた大豆残渣発酵による抗酸化剤に関する製造例は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−88109号公報
【特許文献2】特開2007−291069号公報
【特許文献3】特開2009−191276号公報
【特許文献4】特開2004−24004号公報
【特許文献5】特開2004−43505号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】食品機能素材II、2001年4月27日発行、株式会社シーエムシー、44-63頁
【非特許文献2】田村貴起ら、「日本食品科学工学会誌」、1999年、第46巻、第9号、561-569頁
【非特許文献3】渡辺泰成ら、「埼玉県産業技術総合センター研究報告」、2005年、第3巻
【非特許文献4】B.Moktanら、「Food Research International」、2008年、第41巻、586-593頁
【非特許文献5】Y.P. Zhuら、「Food Control」、2008年、第19巻、654-661頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、安全な微生物及び安全な食品素材を利用した発酵法による抗酸化剤の製造法及び発酵法により得られる抗酸化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のことから、本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、大豆残渣を含有する培地中で特定の酵母を培養して、特にピチア・アノマラ(Pichia anomala)、ピチア・グイリエモンディ(Pichia guilliermondii)等のピチア(Pichia)属に属する微生物、或いはキャンディダ・ジラノイデス(Candida zeylanoides)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)及びキャンディダ・メタプシローシス(Candida metapsilosis)等のキャンディダ(Candida)属に属する微生物を培養し、培養液を遠心分離された培養上清の抗酸化能(SOD活性)を高めることができ、さらに、高いSOD活性を示す抗酸化剤を安価で効率良く得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、大豆残渣を含有する培地中で酵母を培養し、培養上清から抗酸化剤を採取する、抗酸化剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記抗酸化剤の製造方法によって得られる高いSOD活性を示す抗酸化剤を提供するものである。
また、本発明は、大豆残渣の酵母による発酵エキスの、抗酸化剤としての使用を提供するものである。
また、本発明は、抗酸化剤の製造のための、大豆残渣の酵母による発酵エキスの使用を提供するものである。
さらに、本発明は、上記抗酸化剤を配合した食品、化粧品、医薬品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る抗酸化剤の製造方法によれば、特定微生物を利用し、食品加工業等の副産物である大豆残渣を培地の主原料として用いることで、抗酸化剤を安価で効率良く得ることができる。当該抗酸化剤は、活性酸素消去効果、特に高いSOD活性を有し、安全性に優れ、取扱いが容易であるため、食品、化粧品や医薬品等の分野への利用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に使用される酵母としては、ピチア(Pichia)属又はキャンディダ(Candida)属に属する微生物が好ましい。
ピチア(Pichia)属に属する微生物としては、ピチア・アノマラ(Pichia anomala)、ピチア・グイリエモンディ(Pichia guilliermondii)、ピチア・ブルトニ(Pichia burtonii)、ピチア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、又はピチア・クルイベリ(Pichia Kluyveri)などが例示される。キャンディダ(Candida)属に属する微生物としては、キャンディダ・ジラノイデス(Candida zeylanoides)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、キャンディダ・メタプシローシス(Candida metapsilosis)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・ホルミイ(Candida holmii)またはキャンディダ・バリダ(Candida valida)などが例示される。また、これらの微生物を常法に基づき得られた変異株も包含する。前記微生物は、大豆残渣を含有する培地中で培養されることで、培養上清から、高いSOD活性を示す抗酸化剤を産生する作用を果たす。この中で、ピチア(Pichia)属に属するピチア・アノマラ(Pichia anomala)又はピチア・グイリエモンディ(Pichia guilliermondii)、或いはキャンディダ(Candida)属に属するキャンディダ・ジラノイデス(Candida zeylanoides)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)又はキャンディダ・メタプシローシス(Candida metapsilosis)を用いると、さらに高い活性酸素消去効果を有する抗酸化剤が得られるので好ましい。
本発明にかかる酵母は、何れも、中国普通微生物保蔵管理中心(CGMCC)及び中国典型培養物保蔵中心(CCTCC)、中国高校工業微生物資源および情報センター(CICIM:Culture & Information Center of Industrial Microorganism of China Universities)などの商業ルートで購入できるものである。
【0014】
本発明の抗酸化剤の製造方法は、上記の微生物を、大豆残渣を含有する培地で培養することで、培養上清から抗酸化剤を得るものである。該方法の詳細を以下に記載する。
【0015】
<培地>
本発明において、液体培地主成分としては、大豆残渣である。他の成分として糖類と水などが含まれる。また、培地にペプトン、酵母粉を適宜添加してもよい。大豆残渣が入手やすい原料であるため、本発明の培地が従来より安価で優れた利点を有する。
本発明で使われる大豆残渣は、大豆を水に浸漬し、水を吸収させて、粉砕、濾過を経て、水を除去して得られたものである。上記したように、特に、食品産業などにおいて豆乳を搾り取った残りかすである大豆残渣、おから等を用いることが可能である。
糖類としては、例えば葡萄糖、麦芽糖、蔗糖などを単独、または混合して使用でき、発酵生産性を高める、及び利用性の観点から葡萄糖を好適に用いることができる。
【0016】
本発明においては、SOD活性を高めるために、培地は、大豆残渣、葡萄糖及び水からなるのが好ましい。培地中に大豆残渣を好ましくは5〜15w/v%、より好ましくは8〜12w/v%、さらに好ましくは10w/v%含有する。大豆残渣の含有量がその範囲に入る場合、高いSOD活性が得られる。また、同様の点から、葡萄糖を好ましくは0.2〜2w/v%、より好ましくは0.8〜1.2w/v%含有する。
以下、上記のような抗酸化剤を製造するために使用する培地を、「抗酸化剤製造培地」と言う。
【0017】
<発酵培養条件>
発酵培養過程においては、上記の1種又は2種以上の微生物を使用することができ、2種以上の微生物を用いる場合は順次または同時に抗酸化剤製造培地に添加する方式で発酵させる。
抗酸化剤を製造するための発酵培養条件としては、酵母の成長に必要な温度・時間を最適化する、及びSOD活性を高める観点から、20〜40℃、より好ましくは27〜35℃の培養温度で、1〜7日、より好ましくは48〜96時間、さらに好ましくは68〜76時間で培養するのが好ましい。
【0018】
<抗酸化剤の回収、精製>
本発明の抗酸化剤は、遠心分離などにより培養液から菌体を除去し、培養上清(以下、大豆残渣の発酵エキスということがある)を回収してそのまま抗酸化剤として利用することができる。また、適宜公知の分離・精製技術、例えば、限外濾過、硫安沈殿等を行うことにより、さらに精製してもよい。
【0019】
本発明において抗酸化剤(即ち、活性酸素消去剤)の抗酸化作用効果、即ち、活性酸素消去効果は、SOD活性値を測定することによって確認される。SOD活性値が大きいほど、SOD活性が高く、活性酸素消去能を高めて、肌の酸化による老化などを抑制できる。本発明における「高いSOD活性」とは、後述の実施例の方法によって測定、計算したSOD活性値が75%以上であることを意味する。ここで、本発明の抗酸化剤(活性酸素消去剤)のSOD活性が、75〜100未満%である場合、中等度の高いSOD活性と判断でき、100〜120%である場合、さらに高いSOD活性と判断できる。
【0020】
本発明の酵母を培養して得た大豆残渣の発酵エキスは、後記実施例に示すように、高いSOD活性を持つことが確認された。この発酵エキスを用いることにより、抗酸化、抗老化などの高い活性酸素消去効果が得られることが分かった。
本発明の酵母を培養して得た大豆残渣の発酵エキスは、抗酸化剤(活性酸素消去剤)としての治療目的又は非治療目的で使用できる。非治療目的の使用には、美容目的の使用や、健康状態の維持のための使用などが含まれる。また、上記の抗酸化剤(活性酸素消去剤)としての、治療目的の使用と、非治療目的の使用は、分けて行うこともできる。
【0021】
また、本発明の酵母を培養して得た大豆残渣の発酵エキスは、抗酸化剤(活性酸素消去剤)を製造するために使用できる。
【0022】
本発明の抗酸化剤(活性酸素消去剤)は、極めて高い活性酸素消去効果を有するとともに安全性が極めて高く、生体の活性酸素の量が増大することによって引き起こされる高血圧、動脈硬化、糖尿病及び癌等の疾病や、美容上の障害となる諸症状の改善および予防に有用である。本発明の活性酵素消去剤は、製剤化したものを通常の食品、化粧品や医薬品に配合して、活性酸素消去効果を付与し、その商品価値を高めることができる。
【0023】
また、食品の剤型としては、例えば、菓子、チョコレート、ガム、飴、飲料等の通常の食品形態を採用することができる。化粧品の剤型としては、例えば、化粧水、乳液、ゲル剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、口紅、軟膏等の皮膚に適用される皮膚外用剤とすることができる。また、医薬品の剤型としては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、乳剤、注射液などにすることができる。これらの食品、化粧品や医薬品には、使用目的に応じた任意の成分を用いることができる。
【0024】
本発明の抗酸化剤(活性酸素消去剤)の配合量は、その形態により適宜変えればよいが、食品、化粧品、医薬品などの全量に対し、固形物に換算して0.001〜10質量%好ましくは0.01〜1質量%配合することができる。0.001質量%未満では十分な活性酸素消去効果は望みにくい。10質量%を越えて配合した場合、逆にその効果の向上は認められにくく不経済である。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるべきものではない。
(実施例1〜実施例8)
(抗酸化剤(活性酸素消去剤)の製造)
大豆残渣から抗酸化剤(活性酸素消去剤)を製造する微生物として、以下の表1のピチア(Pichia)属に属する微生物を使用した。
【0026】
【表1】

【0027】
YPD培地(Yeast Extract Peptone Dextrose Medium)で30℃で培養して得られた上記の菌株を、抗酸化剤製造培地(10w/v%大豆残渣、1w/v%葡萄糖)100mLを含む300mL容三角フラスコに接種し、30℃で72時間培養した。ここで、大豆残渣は大豆を水に入れ、12時間含浸し、大豆に水を十分に吸収させて、水を吸収した大豆を研削して粉砕し、濾過、乾燥を経て調製した。
次に、得られた培養液に対して、3000rpm、10mins遠心分離で菌体を除き、培養上清を回収した。それぞれを試料1〜8とした。
また、コントロールとして、培地のみ(微生物を接種しない)、試料1〜8と同じように培養、処理し、上清を回収して、次のSOD活性の測定に供する。
【0028】
(SOD活性の測定)
SOD活性値は、上記ように得られた試料1〜8及びコントロールに対して、SOD Assay Kit−WST(同仁化学研究所社製)を用い、96穴プレートにて測定する。試薬は、キット付属のものを用いる。
上記試料1〜8及びコントロールを検体として、96穴プレートの"sample"&"Blank2"穴に20μlを移し、"Blank1"&"Blank3" 穴に20μl無菌水を添加する。その後、各穴に、〔WST working solution〕を200μlずつ加え、プレートミキサーでよく撹拌する。"Blank2"&"Blank3"の穴には、〔Dilution buffer〕を20μlずつ加える。"sample"&"Blank1"の穴とにそれぞれ、〔Enzyme working solution〕を20μlずつ加え、十分に混ぜる。37℃で20分間加熱、インキュベートした後、プレートをBioreaderに入れて、450nmにおける吸光値を測定する。
【0029】
次いで、下式により、SOD活性値を算出する。64.11〜75未満%を△(一般SOD活性を有する)、75〜100未満%を○(高いSOD活性を有する)とし、表2及び3に示す。なお、SOD活性の値が高いほど、抗酸化活性が高いことを示す。
【0030】
(数1)
SOD活性(%)=[(AB1−AB3)−(AS−AB2)]/(AB1−AB3)×100
【0031】
S:"sample"穴に、検体を加えて反応を行った場合の吸光度
B1:"Blank1"穴に、検体を添加せずに反応を行った場合の吸光度
B2:"Blank2"穴に、検体自体の吸光度
B3:"Blank3"穴に、プレート自体および〔Dilution buffer〕の持つ吸光度
【0032】
<結果>
この結果を表2及び表3に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
上記結果より、実施例1〜実施例8で得られた何れの試料には高いSOD活性が認められた。
【0036】
(実施例9〜実施例17)
(抗酸化剤(活性酸素消去剤)の製造)
大豆残渣から抗酸化剤(活性酸素消去剤)を製造する微生物として、以下の表4のキャンディダ(Candida)属に属する微生物を使用した。
【0037】
【表4】

【0038】
YPD培地(Yeast Extract Peptone Dextrose Medium)で30℃培養して得られたの上記菌株を、抗酸化剤製造培地(10w/v%大豆残渣、1w/v%葡萄糖)100mLを含む300mL容三角フラスコに接種し、30℃で72時間培養した。ここで、大豆残渣は大豆を水に入れ、12時間含浸し、大豆に水を十分に吸収させて、水を吸収した大豆を研削して粉砕し、濾過、乾燥を経て調製した。
次に、得られた培養液に対して、3000rpm、10mins遠心分離で菌体を除き、培養上清を回収した。それぞれを試料9〜17とした。
また、コントロールとして、培地のみ(微生物を接種しない)、試料9〜17と同じように培養、処理し、上清を回収して、次のSOD活性の測定に供する。
【0039】
(SOD活性の測定)
SOD活性値は、上記ように得られた試料9〜17及びコントロールに対して、SOD Assay Kit−WST(同仁化学研究所社製)を用い、96穴プレートにて測定する。試薬は、キット付属のものを用いる。
上記試料9〜17及びコントロールを検体として、96穴プレートの"sample"&"Blank2"穴に20μlを移し、"Blank1"&"Blank3" 穴に20μl無菌水を添加する。その後、各穴に、〔WST working solution〕を200μlずつ加え、プレートミキサーでよく撹拌する。"Blank2"&"Blank3"の穴には、〔Dilution buffer〕を20μlずつ加える。"sample"&"Blank1"の穴とにそれぞれ、〔Enzyme working solution〕を20μlずつ加え、十分に混ぜる。37℃で20分間加熱、インキュベートした後、プレートをBioreaderに入れて、450nmにおける吸光値を測定する。
【0040】
次いで、下式により、SOD活性値を算出する。64.11〜75未満%を△(一般SOD活性を有する)、75〜100未満%を○(中等度の高いSOD活性を有する)、100〜120%を◎(もっと高いSOD活性を有する)とし、表5及び6に示す。なお、SOD活性の値が高いほど、抗酸化活性が高いことを示す。
【0041】
(数2)
SOD活性(%)=[(AB1−AB3)−(AS−AB2)]/(AB1−AB3)×100
【0042】
S:"sample"穴に、検体を加えて反応を行った場合の吸光度
B1:"Blank1"穴に、検体を添加せずに反応を行った場合の吸光度
B2:"Blank2"穴に、検体自体の吸光度
B3:"Blank3"穴に、プレート自体および〔Dilution buffer〕の持つ吸光度
【0043】
<結果>
結果を表5及び表6に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
上記結果より、実施例9〜17で得られた何れの試料には高いSOD活性が認められた。その中、実施例15〜17でキャンディダ・メタプシローシス(Candida metapsilosis)を用いて得た試料15〜17が最もSOD活性が高いことが分かった。
【0047】
従って、本発明の大豆残渣の発酵エキスは、高いSOD活性を示し、優れた活性酸素消去効果を持ち、さらに、抗酸化剤(活性酸素消去剤)として用い得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のことから、酵母を用いた大豆残渣の発酵による抗酸化剤は、活性酸素消去効果に優れており、化粧品、食品、医薬品などに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆残渣を含有する培地中で酵母を培養し、培養上清から抗酸化剤を採取する、抗酸化剤の製造方法。
【請求項2】
前記酵母は、ピチア(Pichia)属及びキャンディダ(Candida)属に属する微生物から選ばれる少なくとも何れか一種の酵母である、請求項1に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項3】
前記ピチア(Pichia)属に属する微生物が、ピチア・アノマラ(Pichia anomala)又はピチア・グイリエモンディ(Pichia guilliermondii)である、請求項2に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項4】
前記キャンディダ(Candida)属に属する微生物が、キャンディダ・ジラノイデス(Candida zeylanoides)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)又はキャンディダ・メタプシローシス(Candida metapsilosis)である、請求項2に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項5】
前記培地の中に前記大豆残渣を5〜15w/v%含有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項6】
前記培地の中に前記大豆残渣を8〜12w/v%含有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項7】
前記培地の中に前記大豆残渣を10w/v%含有する、請求項1〜6の何れか一項に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項8】
前記培養温度は27〜35℃である、請求項1〜7の何れか一項に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項9】
前記培養時間は1〜7日である、請求項1〜8の何れか一項に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項10】
前記培養して得た培養液を遠心分離により、前記培養上清を抗酸化剤として採取する、請求項1〜9の何れか一項に記載の抗酸化剤の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の製造方法によって得られる高いSOD活性を示す抗酸化剤。
【請求項12】
前記抗酸化剤のSOD活性は、75〜120%である、請求項11に記載の抗酸化剤。
【請求項13】
前記抗酸化剤のSOD活性は、75〜100未満%である、請求項11に記載の抗酸化剤。
【請求項14】
前記抗酸化剤のSOD活性は、100〜120%である、請求項11に記載の抗酸化剤。
【請求項15】
請求項11〜14の何れか一項に記載の抗酸化剤を配合したことを特徴とする食品。
【請求項16】
請求項11〜14の何れか一項に記載の抗酸化剤を配合したことを特徴とする化粧品。
【請求項17】
請求項11〜14の何れか一項に記載の抗酸化剤を配合したことを特徴とする医薬品。

【公開番号】特開2012−140618(P2012−140618A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286047(P2011−286047)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】