説明

抗酸化剤を含有する機能水

【課題】 抗酸化剤を安定して含有する機能水を提供すること。
【解決手段】 従来は、例えば乳酸カルシウムなどのイオン源を添加した後に、通水しながら電解し、アルカリイオン水を得ていた。しかしながら、このアルカリイオン水を中性で使用するには、適当なpH調整剤を用いる必要がある。本発明では、アルカリpHとならないように非隔膜とした電解室を備えて、電気分解した水素ガスを溜め置きし、この水素ガスを高濃度に溶存させた機能水であって、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−200mV以下であり、溶存水素濃度が0.5mg/L以上であり、かつpHが6〜8であって、かつ抗酸化剤を含有する機能水を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化剤を含有する機能水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2003−175390号公報には、電解水素が溶存した機能水が開示されている。この機能水は、純水中に塩化ナトリウムを加え、電導率を100μS/cm以上とした後に、電気分解し、陰極水を中性として得られるものである。
しかしながら、上記機能水の製造には、隔膜を備えた電解槽を使用しているため、陰極水はアルカリ性となり、pH調節が必要となる。このために、リン酸ナトリウムなどを用意しておき添加するのは手間が掛かる。また、pH調節のために陽極水を用いると、陽極水中の活性酸素が加えられてしまうので、好ましくない。
このため、本発明者らは、特開2005−186034号公報に開示された水素水生成装置を開発した。この装置は、陽極と陰極との間を非隔膜状態で、電気分解を行い、発生した水素ガスを溜め置きし、その水素ガスを高濃度に水中に溶解することにより、機能水を調製するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2003−175390号公報
【特許文献2】特開2005−186034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが開発に成功した機能水については、その特性および用途が十分に知られていなかった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、抗酸化剤を安定して含有する機能水を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般にビタミンCに代表される抗酸化剤は高pH領域では非常に不安定であり、従来のアルカリイオン水に抗酸化剤を溶解すると、数時間〜数十時間の後には、抗酸化剤が分解してしまうため、その抗酸化剤の効果を十分に発揮させることが困難であった。ところが、本発明者らの検討によれば、特定の製造法により製造した水を用いることにより、そのように不安定な抗酸化剤を長時間に渡って安定して保持できることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するために、第1の発明に係る機能水は、pHが6から8までの中性水(以下、pHが6〜8までの中性領域にある機能水を「中性水」と略記する)と、該中性水を電気分解し発生した水素ガスを溜め置きして、該中性水に溶存させることで高濃度に水素ガスを含ませた水であって、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−200mV以下であり、溶存水素濃度が0.5mg/L以上であり、かつ抗酸化剤を含有することを特徴とする。
【0006】
上記発明において、前記抗酸化剤は、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、カテキン類、コエンザイムQ10、フラボノイド、アントシアニン、プロアントシアニジン、シリマリン、ヘスペリジン、ルチン、アルファリポ酸、フラバンジェノール、SOD、アルファカロチン、ベータカロチン、セレン、マンガン、亜鉛、システイン、グルタチオン、メラトニン、エンゾジノール、ピクノジェノール、リコペン、ルテインから選ばれる一つまたはそれ以上の物質を含むことが好ましい。
【0007】
本発明に関する機能水を製造する装置では、電解ガスを溜め置きする手法を用いているため、陽極側で発生する活性酸素は自己消失して酸素に戻るか、あるいは後段の活性炭フィルタで除去することで、機能水中に活性酸素が含有することを防止している。
本発明の機能水を使用するについては、例えば経口、注射、点滴、経直腸などの方法を用いて体内に摂取することができる。
【0008】
このうち、経口摂取することが最も好ましい。この場合には、1日あたり、20ミリリットル/キログラム(体重)〜70ミリリットル/キログラム(体重)(好ましくは、40ミリリットル/キログラム(体重)〜50ミリリットル/キログラム(体重))の機能水を飲むことにより摂取を行う。なお、機能水をそのまま飲用するにも、例えば料理用の水として用いることができる。また、機能水は1日に数回に分けて摂取することができる。
機能水の経口摂取が困難な場合には、点滴溶液そのものとして、或いは各種医薬品などを調製するための水として機能水を利用することができる。この場合には、1日あたり、5ミリリットル/キログラム(体重)〜70ミリリットル/キログラム(体重)(好ましくは、15ミリリットル/キログラム(体重)〜30ミリリットル/キログラム(体重))の機能水を点滴することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い溶存水素濃度と低酸化還元電位を示し、高い活性酸素除去能力を備えると共に、一般には分解しやすい抗酸化剤を効率良く保持する活性を備えた新規な機能水が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0011】
<機能水の物理化学的特性>
機能水の調製は、特開2005−186034号公報に開示された技術を用いて作成した装置により行った。この装置及び機能水の特性を次のようにして確認した。
1.調製された機能水の溶存水素濃度および酸化還元電位の測定
電解条件が200mAx6時間、電解圧力が0.04MPa、給水圧力が0.18MPa、水温が27℃の条件で機能水を調製した。この装置から機能水を水量が3.5L/min、空間速度(SV)が140hr−1となる速度で通水したときの時間と、溶存水素・溶存酸素(mg/L)および酸化還元電位(mV)との関係を測定した。
結果を図1に示した。このときの機能水のpHは6.6とほぼ中性であった。
【0012】
2.調製後に放置された装置中の機能水の溶存水素濃度の測定
上記と同様の条件によって、機能水を調製した後に、14℃または16℃において、0.5時間〜60時間の間、装置中に放置された機能水を貯留した装置に通水を行ったときの通水中の溶存水素濃度を測定した。
結果を図2に示した。
【0013】
また、通水量が2.2Lのときの溶存水素量(図2において、ほぼピーク時の溶存水素量に該当する)と、放置時間との関係を図3に示した。
本実施形態に用いた機能水製造装置においては、電解水素を貯留する形式で製造する。このため、装置に通水し始めると、時間に応じて、通水中の溶存水素濃度は減少し、酸化還元電位および溶存酸素濃度は上昇する。
【0014】
一般に、家庭で水道水を飲食用として用いる場合には、通水開始からせいぜい1分間程度(容量として2〜3L程度)で通水処理を完了する。このため、3L程度の量が流れたとき(図1において、約0.8minの位置)に、十分な溶存水素濃度と酸化還元電位とを維持していれば、機能水は、その効能を十分に備えた状態のままである。
図1〜図3によれば、機能水の溶存水素濃度は、そのような一般的な使用条件において、最高で0.8mg/L以上であった。また、このときの酸化還元電位は、−200mVよりも低かった。
【0015】
<機能水の活性酸素除去能確認試験>
次に、純水、アルカリイオン水、及び本実施形態の機能水について、活性酸素除去能を比較した。
アルカリイオン水として、医療認可を受けた製造元の異なる2種類のアルカリイオン整水器を選定し、その整水器によって製造されたものを用いた。これらのアルカリイオン水は、水中に乳酸カルシウムなどのイオン源を加えて電解する従来の方法によって製造されたものである。
また、機能水として、溶存水素濃度が0.8mg/L以上、酸化還元電位が−200mV以下、pHが約7のものを用いた。
【0016】
上記3種類の水中に活性酸素源として過酸化水素を添加し、残存するヒドロキシラジカルをESRで測定した。
結果を図4に示した。なお、2種類のアルカリイオン水では、ほぼ同等の結果が得られたため、図4(B)に代表的なグラフを示した。
図より、ヒドロキシラジカル濃度に該当するピーク値(R)を相対的に比較すると、純水100%に対し、アルカリイオン水では48%であったのに対し、機能水では32%であった。このことから、従来の方法で得られたアルカリイオン水に比べ、本実施形態の機能水は、より強い抗酸化力を持っていることが示された。
【0017】
<ビタミンC保持効果確認試験>
次に、アルカリイオン水と機能水とについて、ビタミンCを保持する効果を比較した。
アルカリイオン水として、医療認可を受けた製造元の異なる2種類のアルカリイオン整水器を選定し、その整水器によって調製されたものを用いた。
また、機能水として、初期水質が溶存水素濃度0.8mg/L、酸化還元電位−200mVのものを用い、この機能水中にビタミンC源としてアスコルビン酸を溶解させた。なお、試験開始時における溶液中の溶存水素濃度は0.5mg/L、酸化還元電位−200mVであった。
アスコルビン酸の初期濃度は、80μMとなるようにアルカリイオン水または機能水によって希釈した。この溶液をバイアルに対して適当量に分注した後、37℃インキュベータに投入した。投入後、6時間及び30時間して、バイアルをインキュベータから取り出し、ビタミンCの酸化を防ぐために50μMジチオスレイトールを添加し、4℃にて保存した。
【0018】
全ての反応が終了後、各サンプル溶液中のビタミンC濃度をHPLCによって測定した。HPCL測定用の移動相として、0.1M KHPO−HPO+0.1mM EDTA−2Naを用いた。
結果を図5に示した。図より、アルカリイオン水では、6時間後に38%、30時間後には14%の残存率となっており、ビタミンCが急速に分解されたことを示した。一方、機能水では、6時間後に96%、30時間後には67%と、非常に良好な残存率を示した。このことより、機能水は、アルカリイオン水に比べて、非常に高いビタミンC保持効果を示すことが分かった。
【0019】
このように、本実施形態によれば、0.5mg/L以上の高い溶存水素濃度、−200mV以下の酸化還元電位、pHが6〜8を示す機能水に抗酸化剤を含有させることにより、長期間に渡って安定して抗酸化剤を保持できることが分かった。このような抗酸化剤含有機能水は、人体の酸化を防止する作用を有していることから、健康を維持するための水として有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】製造装置によって製造された機能水の特性を示すグラフである。
【図2】製造装置によって製造された機能水を0.5時間〜60時間放置した後に通水したときの通水量と溶存水素濃度との関係を示すグラフである。
【図3】図2において、放置時間と、通水量が2.2Lのときの溶存水素量との関係を示すグラフである。
【図4】各溶液中に残存するヒドロキシラジカルをESRで測定したときの結果を示すチャート図である。それぞれ、(A)純水、(B)アルカリイオン水、および(C)機能水の結果を示している。
【図5】各溶液中のビタミンC残存量を示すグラフである。それぞれ、(A)機能水、および(B)アルカリイオン水の結果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが6から8までの中性水と、該中性水を電気分解し発生した水素ガスを溜め置きして、該中性水に溶存させることで高濃度に水素ガスを含ませた水であって、その物理化学的特性は、酸化還元電位が−200mV以下であり、溶存水素濃度が0.5mg/L以上であり、かつ抗酸化剤を含有する機能水。
【請求項2】
前記抗酸化剤は、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、カテキン類、コエンザイムQ10、フラボノイド、アントシアニン、プロアントシアニジン、シリマリン、ヘスペリジン、ルチン、アルファリポ酸、フラバンジェノール、SOD、アルファカロチン、ベータカロチン、セレン、マンガン、亜鉛、システイン、グルタチオン、メラトニン、エンゾジノール、ピクノジェノール、リコペン、ルテインから選ばれる一つまたはそれ以上の物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の機能水。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−253131(P2007−253131A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84378(P2006−84378)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000108580)タカオカ化成工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】